IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京精密の特許一覧

<>
  • 特許-接触式の外径測定装置及び外径測定方法 図1
  • 特許-接触式の外径測定装置及び外径測定方法 図2
  • 特許-接触式の外径測定装置及び外径測定方法 図3
  • 特許-接触式の外径測定装置及び外径測定方法 図4
  • 特許-接触式の外径測定装置及び外径測定方法 図5
  • 特許-接触式の外径測定装置及び外径測定方法 図6
  • 特許-接触式の外径測定装置及び外径測定方法 図7
  • 特許-接触式の外径測定装置及び外径測定方法 図8
  • 特許-接触式の外径測定装置及び外径測定方法 図9
  • 特許-接触式の外径測定装置及び外径測定方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】接触式の外径測定装置及び外径測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/08 20060101AFI20220920BHJP
【FI】
G01B5/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018037191
(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公開番号】P2019152504
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】池村 幸夫
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-201302(JP,A)
【文献】特開平07-012552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 - 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を挿入するガイドと、前記被測定物に測定子を当接して変位量を検出して出力する検出器と、該検出器の出力が入力され前記変位量に基づいて前記被測定物の直径を演算する計測アンプと、を備えた接触式の外径測定装置において、
少なくとも4方向から前記被測定物に前記測定子を当接し、それぞれの方向の前記変位量を検出する前記検出器と、
補正対象の方向に対して90°方向のずれ距離に応じて補正値を求め、前記補正値及び前記補正対象の方向の前記変位量に基づいて前記補正対象の方向における前記被測定物の直径を演算する前記計測アンプと、
を備え
前記計測アンプには、前記被測定物の狙い値の半径TR、及び、前記測定子の半径CR毎に、90°方向のずれ距離を段階的にランク分けして、前記ランク毎にあらかじめ定められた前記補正値がデータベースとして記憶されており、
前記計測アンプは、登録された前記半径TR、及び、前記半径CR、並びに、測定された前記ずれ距離に応じた前記補正値を前記データベースを参照して求める、接触式の外径測定装置。
【請求項2】
ボールコンタクトとされ移動ガイドにそれぞれ固定された前記測定子と、
前記移動ガイドが摺動自在として設置されるレールと、
先端が移動ガイドと当接して前記被測定物の直径が測定範囲となる前記検出器と、
を備えた、請求項1に記載の接触式の外径測定装置。
【請求項3】
Y方向及びX方向に設けられるそれぞれ二つの前記移動ガイドと、
Y方向に設けられたY方向の前記レールと、
X方向に設けられたX方向の前記レールと、
を備え、
Y方向の二つの前記移動ガイドはY方向の前記レールに、X方向の二つの前記移動ガイドはX方向の前記レールに、設置され、
Y方向の二つの前記移動ガイドのうち一方が設置されるレールと他方が設置されるレールとは一体化しており、
X方向の二つの前記移動ガイドのうち一方が設置されるレールと他方が設置されるレールとは一体化している、請求項2に記載の接触式の外径測定装置。
【請求項4】
前記測定子の半径CRを4~6mm、前記被測定物の狙い値の半径TRを15~60mmとして、前記被測定物と前記ガイドとの隙間を片側で片側100~200μmとした、請求項1からのいずれか1項に記載の接触式の外径測定装置。
【請求項5】
被測定物を挿入するガイドと、前記被測定物に測定子を当接して変位量を検出して出力する検出器と、該検出器の出力が入力され前記変位量に基づいて前記被測定物の直径を演算する計測アンプ、を用いる接触式の外径測定方法であって、
少なくとも4方向から前記被測定物に前記測定子を当接し、それぞれの方向の前記変位量を検出し、補正対象の方向に対して90°方向のずれ距離に応じて補正値を求め、前記補正値及び前記補正対象の方向の前記変位量に基づいて前記補正対象の方向における前記被測定物の直径を演算することを含み、
前記計測アンプには、前記被測定物の狙い値の半径TR、及び、前記測定子の半径CR毎に、90°方向のずれ距離を段階的にランク分けして、前記ランク毎にあらかじめ定められた前記補正値がデータベースとして記憶されており、
前記補正値は、登録された前記半径TR、及び、前記半径CR、並びに、測定された前記ずれ距離に応じた前記補正値を前記データベースを参照して求められる、接触式の外径測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば円柱状のワークの外径等を高精度に測定する接触式の外径測定装置及び外径測定方法に関し、特に工作機械等に取り付けて自動測定するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
従来、製品の多様化、商品寿命の短期化といった市場の流れに対応する生産設備の手段として加工機のフレキシブル化、自動化については、小中量、大量生産に関わらず、加工品質の維持、監視など、インライン計測が必要となる。インライン計測は、加工現場での環境下で信頼性の高い、高精度かつ高能率な測定が必要とされる。
【0003】
また、要求される寸法精度や環境などの条件によって接触式、非接触式のインライン計測機を使い分けている。そして、切粉、切削液、温度変動、機械振動などの影響を十分回避するために、接触子をマスタやワークに当接させる接触式の外径測定装置が広く用いられている。
【0004】
そして、接触式の外径測定装置としては、被測定物の内径又は外径を測定するため、一対の測定子を被測定物の内径の2点又は外径の2点に当接させ、測定子間の間隔から被測定物の内径又は外径を測定するものが知られている。
【0005】
インラインでの計測は、加工機の精度、安定性、能率、稼動率などの向上に寄与できるものでなくてはならなく、スクラップと休止時間を低減し、効率を上げるための正確な計測、作業時間削減、を維持しながら計測しなければならない。接触式の外径測定装置としては、零点調整が簡単にでき、小型・シンプルな構造であり、先端部に被測定物に当接される接触子を有する測定レバーを備えた測定ヘッドが知られ、例えば、特許文献1に記載されている。
【0006】
また、高精度の外径測定には、被測定物であるワークの精密な位置決めが必要なこと、ガイドに被測定物を挿入する場合、隙間量が少ないことが必要とされる。そのため、手作業機の場合、搬入出の作業性が悪く、自動機の場合、搬入出設備に精密な位置決め機構、フローティング機構、リリービング機構が必要となる。
【0007】
フローティング機構に関しては、筒状部材に棒状部材を嵌合させる際に、両部材間の相対位置関係が少々不正確でも正確な嵌合が可能なように、挿入側でそのずれを保証して良好な挿入作業を保証することが特許文献2に記載されている。
【0008】
一対の測定子を被測定物の外径の2点に当接させ、測定子間の間隔から被測定物の外径を測定するものにおいて、測定をより正確に行うためには、測定装置に被測定物を設置した際、被測定物の直径位置と測定装置の測定軸線(測定子が移動する軸線)とを一致させるための調整(測定位置調整)が必要とされる。
【0009】
そこで、測定子を被測定物へ所定圧で付勢した状態において、一対の測定子と被測定物とを測定軸線に対して直交しかつ被測定物の径方向と略平行な第1相対移動方向へ相対移動させながら一対の測定子間の間隔を計測する。そして、この一対の測定子間の間隔が最大となる位置に一対の測定子と被測定物とを位置させることが知られ、特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2004-109110号公報
【文献】特開平7-96426号公報
【文献】特開平10-307017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1に記載の測定ヘッドにおいて、接触子としては先端が球面又はボールとなったものが用いられる。そして、球面又はボール接触子がワークに当接されるが、測定ヘッドとワークの間には、径方向のクリアランス(ワークを挿入するための隙間)が必要となる。そして、ワークや測定ヘッドを縦置き姿勢にすると、測定時に傾くことがある。この傾きの向きなどにばらつきがあるため、測定精度が不安定になる。
【0012】
さらに、また、製造ラインでは、ワークを横置き姿勢(中心軸を水平方向に延ばした状態)にして搬送することが一般的である。このため、ワークの径を測定するときには、測定時に一旦ワークを縦置き姿勢にし、測定後に横置き姿勢に戻している。したがって、高精度の外径測定には、被測定物であるワークの精密な位置決めが必要となる。そのため、測定機を構成する部品に高精度が必要となり、コスト高となる。
【0013】
また、ガイドにワークを挿入する場合、高精度に測定するためには、球面又はボール接触子とワークとの隙間量を少なくとも片側20~30μm程度と小さくしなければならない。そのため、測定が手作業機の場合は、搬入出の作業性が悪く、自動機の場合は、搬入出設備に精密な位置決め機構、フローティング機構、リリービング機構が必要となる。ただし、特許文献2に記載のようなフローティング機構は、構造が複雑になり小型化が難しく、かつ部品点数が増加し、コスト増や信頼性の低下を招く恐れがある。
【0014】
さらに、特許文献3に記載のような測定位置調整を行うものでは、精密な位置決めを不要とするためにガイドとワークとの隙間量を大きくすると、調整に要する時間が長くなる。したがって、製造ラインでの作業性が悪くなり、加工されるワークの生産性が劣化し、コスト高となる。
【0015】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、ガイドとワークとの隙間量を比較的に大きくしても高精度で、安定した測定精度、繰り返し精度を確保できるようにして、外径測定時、被測定物であるワークの精密な位置決めを不必要とすることにある。そして、測定機本体のコスト低減、手作業機の搬入出の作業性向上、自動機の搬入出設備の簡素化による生産物であるワークのコスト低減を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する本発明は、被測定物を挿入するガイドと、前記被測定物に測定子を当接して変位量を検出して出力する検出器と、該検出器の出力が入力され前記変位量に基づいて前記被測定物の直径を演算する計測アンプ、を備えた接触式の外径測定装置において、少なくとも4方向から前記被測定物に前記測定子を当接し、それぞれの方向の前記変位量を検出する前記検出器と、補正対象の方向に対して90°方向のずれ距離に応じて補正値を求め、前記補正値及び前記補正対象の方向の前記変位量に基づいて前記補正対象の方向における前記被測定物の直径を演算する前記計測アンプと、を備えたものである。
【0017】
また、上記において、ボールコンタクトとされ移動ガイドにそれぞれ固定された前記測定子と、前記移動ガイドが摺動自在として嵌合または設置されるレールと、先端が移動ガイドと当接して前記被測定物の直径が測定範囲となる前記検出器と、を備えたことが望ましい。
【0018】
さらに、Y方向及びY方向に対して90°方向となるX方向へそれぞれ二つの前記測定子が前記被測定物に当接し、前記補正対象の方向をY方向としX方向の前記ずれ距離を求めて演算したY方向直径と、前記補正対象の方向をX方向としY方向の前記ずれ距離を求めて演算したX方向直径と、を求めて前記被測定物の直径を演算する前記計測アンプを備えたことが望ましい。
【0019】
さらに、Y方向及びX方向に設けられるそれぞれ二つの前記移動ガイドと、Y方向に設けられ一体化されたY方向の前記レールと、X方向に設けられ一体化されたX方向の前記レールと、を備え、Y方向の二つの前記移動ガイドはY方向の前記レールに、X方向の二つの前記移動ガイドはX方向の前記レールに、摺動可能に嵌合または設置され、Y方向の二つの前記移動ガイドのうち一方が設置されるレールと他方が設置されるレールとは一体化しており、X方向の二つの前記移動ガイドのうち一方が設置されるレールと他方が設置されるレールとは一体化していることが望ましい。
【0020】
さらに、前記被測定物の狙い値の半径TRと、前記測定子の半径CRと、を計測アンプに登録し、前記補正値はTR、CR毎に、90°方向のずれ距離に応じて定められたことが望ましい。ただし、TR≫CRならば、前記補正値はTR毎に、90°方向のずれ距離に応じて定められていれば良い。
【0021】
さらに、X方向で測定した位置をX1、X2として、X方向ずれ距離XL=(X1-X2)/2を求め、Y方向で測定した位置Y1と、Y2と、前記被測定物の狙い値の半径TR、前記測定子の半径CR、として、Y方向の補正値ZY、Y方向の直径Ymaxを
【数1】
として求めることが望ましい。ただし、TR≫CRならば、CR=0として良い。
【0022】
さらに、Y方向で測定した位置をY1、Y2として、Y方向ずれ距離YL=(Y1-Y2)/2を求め、X方向で測定した位置X1と、X2と、前記被測定物の狙い値の半径TR、前記測定子の半径CR、として、X方向の補正値ZX、X方向の直径Xmaxを
【数2】
として求めることが望ましい。
【0023】
さらに、上記において、Y方向で測定した位置Y1と、Y2、X方向で測定した位置をX2として、X方向ずれ距離XLを、
【数3】
として求めることが望ましい。
【0024】
また、上記において、前記測定子の半径CRを4~6mm、前記被測定物の狙い値の半径TRを15~60mmとして、前記被測定物と前記ガイドとの隙間を片側で片側100~200μmとしたことが望ましい。
【0025】
本発明は、被測定物を挿入するガイドと、前記被測定物に測定子を当接して変位量を検出して出力する検出器と、該検出器の出力が入力され前記変位量に基づいて前記被測定物の直径を演算する計測アンプ、を備えた接触式の外径測定方法であって、少なくとも4方向から前記被測定物に前記測定子を当接し、それぞれの方向の前記変位量を検出し、補正対象の方向に対して90°方向のずれ距離に応じて補正値を求め、前記補正値及び前記補正対象の方向の前記変位量に基づいて前記補正対象の方向における前記被測定物の直径を演算する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、少なくとも4方向から被測定物に測定子を当接し、それぞれの方向の変位量を検出する。そして、補正対象の方向に対して90°方向のずれ距離に応じて補正値を求める。そして、補正対象の方向における被測定物の直径を演算するので、被測定物であるワーク50とガイド51との隙間量を比較的に大きくしても高精度で、安定した測定精度、繰り返し精度を確保できる。したがって、被測定物の搬入出の作業性向上、自動機の搬入出設備の簡素化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明による一実施形態に係る外径測定装置の概略を示す平面図
図2】一実施形態において、被測定物であるワークを装着した状態を示す側面図
図3】一実施形態において、被測定物であるワークの測定状態を示す側面図
図4】ワーク50をガイド51に装着したときに生じる隙間量を示す側面拡大図
図5】理想中心上にワーク50がある場合のワーク50と測定子との位置関係を示す平面図
図6】理想中心上からワーク50の中心がずれた状態を示す平面図
図7】補正値を求める説明図
図8】3点より補正値を求める場合の説明図
図9】測定点を60°等間隔配置として6方向とした場合のワーク50と測定子との位置関係を示す平面図
図10】測定点を60°等間隔配置として6方向とした場合、理想中心上からワーク50の中心がずれた状態を示す平面図(6点より補正値を求める場合の説明図)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、一実施形態である外径測定装置の概略を示す平面図、図2は、被測定物であるワーク50をガイド51に装着した状態を示す側面図、図3は、測定時の状態を示す側面図、図4は、ワーク50をガイド51に装着したときに生じる隙間量を示す側面拡大図である。
【0029】
円柱状のワークの代表例として、中空の円筒形の内側にはまりこむ円筒形ピストンが挙げられ、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃機関などに用いられる。ピストンの側面はカーブ曲線を付けているので、下側の外径が大きいので、多くのピストンは最大径となる部分を計測してサイズを確認する。計測のポイントが違うと、測定値が変わり指定ポイントを計測する必要がある。
【0030】
図1において、測定対象となるワーク50はワーク50の位置決めを行う円筒形のガイド51の内側に挿入される。高精度の外径測定には、ワーク50の精密な位置決めが必要とされる。従来、ワーク50とガイド51の隙間量を少なくとも片側20~30μm程度と小さくしなければならない。そのため、測定が手作業機の場合は、搬入出の作業性が悪く、自動機の場合は、搬入出設備に精密な位置決め機構、フローティング機構、リリービング機構が必要となる。
【0031】
接触式の外径測定装置は、ワーク50へボールコンタクトとされた測定子1-1、1-2、1-3、1-4を所定の測定圧を与えて接触させ、ワーク50の外径を検出器2-1、2-2、2-3、2-4で測定する。図1では、4方向[図中の方向1(図中ではマルの中に数字の1)、方向2(図中ではマルの中に数字の2)、方向3(図中ではマルの中に数字の3)、方向4(図中ではマルの中に数字の4)の矢印]から測定子1-1、1-2、1-3、1-4がワーク50の外径部へ当接され、測定子1-1、1-2はY方向、測定子1-3、1-4はY方向に対して90°方向となるX方向からワーク50へ当接する。(図1において、検出器2-1、2-2、2-4は記載を省略している。)
【0032】
測定にあたって、ガイド51に挿入されたワーク50とガイド51との間には、図4に示すように隙間がある。そのため、測定圧によりワーク50の位置は理想中心であるガイド51の中心からずれて、つまり、ワーク50の直径位置と外径測定装置の測定軸線(測定子が移動する軸線)とが一致しない状態で測定が行われることになる。この理想中心とワーク50の位置のずれ距離は測定精度へ直接影響する。
【0033】
検出器2-1、2-2、2-3、2-4は、変位量を検出する検出器であり、コアとボビンから差動トランスが構成される差動トランス型、あるいは小型光学スケールが内蔵された小型・省スペースの高精度ペンシル型ゲージが望ましい。
【0034】
ボールコンタクトとされた測定子1-1、1-2、1-3、1-4は、移動ガイド3-1、3-2、3-3、3-4にそれぞれ固定されている。移動ガイド3-1、3-2、3-3、3-4は、下部がベース5に固定されたレール4-1、4-2にそれぞれ摺動自在とされて嵌合されている。レール4-1は、Y方向に設けられ、図中の方向1、方向2で一体化されたY方向のレールである。レール4-2は、X方向に設けられ、図中の方向3、方向4で一体化されたX方向のレールである。
【0035】
移動ガイド3-1、3-2はY方向に、移動ガイド3-3、3-4はX方向に移動可能とされる。レール4-1、4-2とガイド51とは測定軸線として基準となるので、予めレール4-1、4-2それぞれにおける真直度及び平行度、レール4-1とレール4-2の直角度、ガイド51の位置などが高精度に組み立てられている。
【0036】
図2に示すように、検出器2-3、2-4は、先端が移動ガイド3-3、3-4と当接してワーク50の直径が測定範囲となるように、アーム7-3、7-4によってベース5に固定されている。(図2では検出器2-1、2-2、移動ガイド3-1、3-2、アーム7-1、7-2の記載を省略しているが、検出器2-1、2-2も同様にアーム7-1、7-2によってベース5に固定されている。)これにより、移動ガイド3-3、3-4の変位量、つまり、測定子1-3、1-4の変位量が測定される。(測定子1-1、1-2の変位量も同様である。)
【0037】
図2に示すエアシリンダ9-3、9-4は、シリンダ本体9-3-1、9-4-1がシリンダアーム8-3、8-4によってベース5に固定されている。可動部9-3-2、9-4-2はプレート6-3、6-4によって移動ガイド3-3、3-4に固定される。図2の状態では可動部9-3-2、9-4-2とプレート6-3、6-4が係合している。
【0038】
したがって、可動部9-3-2、9-4-2を縮小すれば移動ガイド3-3、3-4及び測定子1-3、1-4をワーク50からリトラクトするように後退する。ワーク50のガイド51への挿入は、このリトラクトした状態、測定子1-3、1-4はワーク50から離れた状態で行われる。(図2ではプレート6-1、6-2、シリンダアーム8-1、8-2、エアシリンダ9-1、9-2、シリンダ本体9-1-1、9-2-1、可動部9-1-2、9-2-2の記載を省略しているが、同様である。)
【0039】
移動ガイド3-3、3-4の間には引張りバネ10-2が取り付けられ、この付勢力がワーク50に対するX方向の測定圧となる。可動部9-3-2、9-4-2は、引張りバネ10-2の付勢力に抗して縮小可能とされている。図2で図示していないが、同様に、移動ガイド3-1、3-2の間には引張りバネ10-1が取り付けられ、引張りバネ10-1の付勢力がワーク50に対するY方向の測定圧となる。
【0040】
図3は、測定時の状態を示し、エアシリンダ9-3の可動部9-3-2が伸長してプレート6-3との係合が解放されている。したがって、移動ガイド3-3、3-4は引張りバネ10-2の付勢力によって近付き、測定子1-3、1-4を被測定物であるワーク50に当接させてワーク50のX方向の測定が行われる。同様に、測定子1-1、1-2を被測定物であるワーク50に当接させてワーク50のY方向の測定が行われる。
【0041】
なお、移動ガイド3-1、3-2、3-3、3-4には調整機構11-1、11-2、11-3、11-4が設けられ、対向する測定子1-1と1-2、さらには1-3と1-4との向きを平行となるように角度の微調整が可能となっている。
【0042】
測定手順は、以下となる。
(1)ワーク50をガイド51に挿入する。
(2)エアシリンダ9-1、9-2、9-3、9-4のそれぞれの可動部9-1-2、9-2-2、9-3-2、9-4-2を伸長させて、測定子1-1、1-2、1-3、1-4をワーク50に当接させ、リトラクトを解除する。
(3)検出器2-1、2-2、2-3、2-4の出力をマイクロプロセッサが内蔵された計測アンプに取り込み、補正の演算を行い測定値とする。
(4)エアシリンダ9-1、9-2、9-3、9-4のそれぞれの可動部9-1-2、9-2-2、9-3-2、9-4-2を縮小して、測定子1-1、1-2、1-3、1-4をワーク50からリトラクトする。
(5)ワーク50をガイド51から取り出す。
【0043】
上記の手順において、測定値に対してワーク50をガイド51に装着したときに生じる隙間量の測定精度への影響を無くすように測定値に対して補正する。これにより、ワーク50とガイド51との隙間量を従来に比べて大きくすることができる。隙間量を大きくすることにより、手順(1)(5)において、手動ならば作業性が向上し、自動機ならば搬入出設備の位置決め精度を下げることができる。そして、測定機本体のコスト低減、搬入出設備の簡素化による生産物であるワークのコスト低減を行うことができる。
【0044】
測定値に対して補正方法を説明する。図5は、理想中心上にワーク50がある場合のワーク50と測定子1-1、1-2、1-3、1-4の位置関係を示す平面図、図6は、理想中心上からワーク50の中心がずれた状態を示す平面図である。図5の状態で、ワーク50の中心位置はガイド51の中心上、つまり、外径測定装置のX方向の測定軸線(測定子が移動する軸線)と、Y方向の測定軸線と、が交差する中心上にあることになる。
【0045】
図6では、X方向にXL、Y方向にYLだけワーク50の中心がずれている。測定子1-1、1-2、1-3、1-4はボールコンタクトなので、その半径(ボールコンタクトする測定子の先端の球状部の半径)をCRとしている。また、測定対象となるワーク50の直径は、予め狙い値(期待値、近似値)として分かっており、その半径をTRとしている。
【0046】
測定前の準備作業の手順は、以下となる。
(1)事前に測定対象となるワーク50の狙い値の半径TR、測定子1-1、1-2、1-3、1-4の半径CR、とを計測アンプ52に登録する。
(2)ワーク50の狙い値の直径を持ち、真円度の高い測定対象の基準となるマスタを理想中心であるガイド51の中心にセットする。
(3)測定手順と同様にしてマスタを検出器2-1、2-2、2-3、2-4で測定し、測定した位置をそれぞれ計測アンプ52に登録する。
以上がワーク50を測定するための測定前の準備作業となる。
【0047】
次に、先に述べた測定手順にしたがって、測定対象となるワーク50をガイド51に挿入する。そして、リトラクトを解除して検出器2-1、2-2、2-3、2-4の出力を計測アンプ52に取り込む。補正手順は、以下となる。
【0048】
Y方向の最大値Ymax(補正された直径の測定値)を演算
(1)検出器2-4で測定した位置をX1、検出器2-3で測定した位置をX2として、ガイド51に挿入されリトラクトが解除されたワーク50の中心と理想中心とのX方向ずれ距離XL=(X1-X2)/2を求める。
【0049】
(2)検出器2-1で測定した位置Y1と、検出器2-2で測定した位置Y2と、X方向ずれ距離をXL、ワーク50の狙い値の半径TR、測定子1-1、1-2、1-3、1-4の半径CR、を用いる。図7は補正値を求める説明図であり、図7を参照して式1によりY方向の補正値ZYを求め、Ymaxを式2により演算して補正値とする。
【数4】
なお、ボールコンタクトとされた測定子1-1、1-2、1-3、1-4は十分に真球度が高いものを使用する。ただし、TR≫CRならば、CR=0として良い。
【0050】
同様に、X方向の最大値Xmax(補正された直径の測定値)を演算
(1)検出器2-1で測定した位置をY1、検出器2-2で測定した位置をY2として、ガイド51に挿入されリトラクトが解除されたワーク50の中心と理想中心とのY方向ずれ距離YL=(Y1-Y2)/2を求める。
【0051】
(2)検出器2-4で測定した位置X1と、検出器2-3で測定した位置X2と、Y方向ずれ距離YL、ワーク50の狙い値の内径TR、測定子1-1、1-2、1-3、1-4の半径CR、を用いて式3によりX方向の補正値ZXを求め、Xmaxを式4により演算して補正値とする。
【数5】
【0052】
上記の補正によって、理想中心とワーク50の位置がずれ量によって、ワーク50の直径が小さく検出されることを防ぐことができる。そして、ワーク50とガイド51の隙間量が大きい場合であっても測定精度を向上できる。ワーク50とガイド51の隙間量を大きくできれば、搬入出の作業性を改善し、搬入出設備に精密な位置決め機構、フローティング機構、リリービング機構を不要とすることができる。
【0053】
具体的には、ワーク50の狙い値の半径TR=20mm、測定子1-1、1-2、1-3、1-4の半径CR=6mm、とし、X方向ずれ距離XLを200μmとすると、式1よりZY=0.8μmとなる。式2より、検出器2-1で測定した位置Y1と、検出器2-2で測定した位置Y2に対して、2ZY=1.6μmだけ補正すれば良いことになる。つまり、この例では、従来において必要とされたワーク50とガイド51との隙間量の5倍以上の隙間量でも良いことになる。
【0054】
なお、本発明者の鋭意研究の結果、測定子1-1、1-2、1-3、1-4の半径CRは4~6mm、ワーク50の狙い値の半径TRを15~60mmとして、従来に必要とされたワーク50とガイド51との隙間量の5倍以上、片側100~200μm程度の隙間量で、1~5μmの補正が実用的であり、誤差が小さく適切であることが判明した。
【0055】
また、補正値ZY、ZXについて、式1、式3によって、演算するとしたが、表1に示すようにデータベース化して定めても良い。つまり、ワーク50の狙い値の内径TR、測定子1-1、1-2、1-3、1-4の半径CRを定めれば、X方向ずれ距離XL、Y方向ずれ距離YLに依存するだけなので、例えば、ワーク50の狙い値の半径TR=20mm、測定子1-1、1-2、1-3、1-4の半径CR=6mmの場合、補正値ZYに対して、
【表1】
として、X方向ずれ距離XLを4段階にランク分けして、それに応じてデータベース化すれば良い。補正値ZXについても同様である。
【0056】
図8は、3点より補正値を求める場合の説明図であり、上記の説明では、検出器2-1、2-2、2-3、2-4による四つの出力を用いて補正値ZYを演算したが、図8のように検出器2-1、2-2、2-3の出力から求めても良い。
【0057】
検出器2-1で測定した位置をY1、検出器2-2で測定した位置をY2、検出器2-3で測定した位置X2の三つの値から円中心を求める。そして、円中心からワーク50の中心と理想中心とのX方向ずれ距離XLを式5により求め、上記と同様に式1よりY方向の補正値ZYを求め、Ymaxを式2により演算して補正値とする。
【数6】
【0058】
測定方向が4方向以外、測定点が四つ以外の場合も同様に補正することができる。
(1)4方向の場合と同様に事前に測定対象となるワーク50の狙い値の半径TR、測定子の半径CR、とを計測アンプ52に登録する。
(2)ワーク50の狙い値の直径を持ち、真円度の高い測定対象の基準となるマスタを理想中心であるガイド51の中心にセットする。
(3)マスタを検出器で測定し、測定した位置をそれぞれ計測アンプ52に登録する。
(4)補正対象の測定方向に対してその他の検出器の値を用い、理想中心から90°方向のX方向ずれ距離XLを求める。
(5)検出器位置Y1と、Y2と、X方向ずれ距離XL、ワーク50の狙い値の内径TR、測定子半径CR、を用いて、式1によりY方向の補正値ZYを求め、Ymaxを式2により演算して補正値とする。
【0059】
図9、10は、測定点を60°等間隔配置として6方向、六つで測定した例を示す。図9は、理想中心上にワーク50がある場合のワーク50と各測定子の位置関係を示す平面図、図10は、理想中心上からワーク50の中心がずれた状態を示す平面図(6点より補正値を求める場合の説明図)である。図でY方向の最大位置Ymaxを求める。
【0060】
(1)A方向におけるワーク50の中心と理想中心との距離XAL=(XA1-XA2)/2として求める。
(2)A方向によるX方向のずれ距離XA=XAL/cos30°とする。
(3)(1)と同様にB方向におけるワーク50の中心と理想中心と距離XBL=(XB1-XB2)/2として求める。
(4)B方向によるX方向のずれ距離XB=XBL/cos30°とする。
(5)XAとXBとにより、X方向のずれ距離XL=(XA+XB)/2として求める。
(6)X方向のずれ距離XLより、式1によりY方向の補正値ZYを求め、Ymaxを式2により演算して補正値とする。
(7)別方向も同様に最大位置を補正値として算出する。
【0061】
上記のように、測定点の数や角度に係らず、補正対象の測定方向に対して、90°方向のずれ距離をその他の検出器を用いて求めれば、同様な補正が可能となる。
【0062】
また、測定方向が4方向以外、測定点が四つ以外の場合においても、表1の説明と同様に、X方向ずれ距離XL、Y方向ずれ距離YLを数段階にランク分けして、補正値ZY、ZXをデータベース化して定めても良い。
【0063】
この場合、補正対象の測定方向(Y方向)に対して、その他の検出器を用い、90°方向(X方向)のずれ距離を求める。そして、90°方向(X方向)のずれ距離に応じて数段階にランク分けして、補正対象の測定方向の補正値を定めておけば良い。なお、補正値は、ワーク50の狙い値の半径TR、測定子の半径CR毎にデータベース化すれば、より汎用性を高めることができる。
【0064】
以上、ワーク50とガイド51の隙間量を大きくしても、ワーク50の中心と、ガイド51の中心(理想中心)とのずれ距離に応じて、補正値を加味して直径測定を行うので、ワーク50の外径が実際より小さく測定されることを防ぐことができる。したがって、被測定物であるワーク50とガイド51の隙間量を大きくしても、高精度な測定が可能となる。また、被測定物の搬入出が容易となる。
【0065】
具体的には従来の測定機の5倍以上の隙間量で繰り返し1μm以下の保障が可能となった。なお、検出器は差動トランスとして説明したが、例えば光方式等の変位測定機であっても同様である。
【0066】
その結果、外径測定装置へワーク50を搬入出するローダーの精度を落とすことができる。そして、自動機の場合、搬入出設備に精密な位置決め機構、フローティング機構、リリービング機構を低価格とすることができる。
【0067】
また、従来の外径測定装置に対して、ずれ距離に応じて補正するだけで良いので、検出器等は代える必要がなく、コスト上昇は最小限で済む。さらに、工作機械や専用機における加工後のワークの測定工程が促進され、作業効率が向上する。
【符号の説明】
【0068】
50…ワーク(被測定物)
51…ガイド
52…計測アンプ
1-1、1-2、1-3、1-4…測定子
2-1、2-2、2-3、2-4…検出器
3-1、3-2、3-3、3-4…移動ガイド
4-1、4-2…レール
5…ベース
6-1、6-2、6-3、6-4…プレート
7-1、7-2、7-3、7-4…アーム
8-1、8-2、8-3、8-4…シリンダアーム
9-1、9-2、9-3、9-4…エアシリンダ
9-1-1、9-2-1、9-3-1、9-4-1…シリンダ本体
9-1-2、9-2-2、9-3-2、9-4-2…可動部
10-1、10-2…引張りバネ
11-1、11-2、11-3、11-4…調整機構
TR…ワーク50の狙い値の半径
CR…測定子の半径
XL…X方向ずれ距離
YL…Y方向ずれ距離
ZY…Y方向の補正値
ZX…X方向の補正値
XAL…A方向におけるワーク50の中心と理想中心との距離
XA…A方向によるX方向(補正対象の方向に対して90°方向)のずれ距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10