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特許7143219粘着シート、絆創膏及びこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】粘着シート、絆創膏及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20220920BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20220920BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20220920BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220920BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20220920BHJP
   A61L 15/16 20060101ALI20220920BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20220920BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20220920BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J7/21
D04H3/16
B32B27/00 M
B32B27/12
A61L15/16 110
A61F13/02 310J
A61F13/02 310M
A61F13/02 310A
A61F13/02 390
C09J7/29
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018550166
(86)(22)【出願日】2017-11-01
(86)【国際出願番号】 JP2017039557
(87)【国際公開番号】W WO2018088303
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2016219235
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城谷 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽平
(72)【発明者】
【氏名】松島 康臣
(72)【発明者】
【氏名】谷口 純一
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/122665(WO,A1)
【文献】特開平06-327756(JP,A)
【文献】特開2003-155459(JP,A)
【文献】特公平01-048019(JP,B2)
【文献】特開2011-121925(JP,A)
【文献】特開昭63-069879(JP,A)
【文献】特開2004-115774(JP,A)
【文献】国際公開第2013/191187(WO,A1)
【文献】特開2004-073232(JP,A)
【文献】特開2000-309764(JP,A)
【文献】特開2007-314584(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014589(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
D04H 3/16
B32B 27/00
A61F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層の不織布である基材層と、
前記1層の基材層に積層された粘着層(ただし、ポリエチレングリコールを含む粘着剤から形成された粘着層、及び、ホットメルト粘着剤から形成された粘着層を除く。)と、
前記1層の基材層の前記粘着層が積層された側とは反対側の面に設けられた耐水性層と、を有する粘着シートであって、
前記粘着層は、貼付面に凹状に形成された複数のクレーター部と、前記複数のクレーター部の間に設けられた平坦部と、を有し、
前記クレーター部の表面は、複数の貫通孔を有し、
前記クレーター部は、平均径が0.04~0.8mmである第1クレーター部を含み、
前記第1クレーター部は、前記貼付面において、単位面積1cmあたり50~500個存在し、
前記不織布は、メルトブロー不織布であり、
前記不織布の平均繊維径は、0.5~20.0μmである、粘着シート。
【請求項2】
前記第1クレーター部は、中心間の距離が500~1000μmとなるように同一直線上に整列するように形成されている、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記貼付面における前記クレーター部の総面積は、前記貼付面の総面積に対して5~50%である、請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記貫通孔は、迷路状である、請求項1~3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シートを備える絆創膏。
【請求項6】
1層の不織布を準備する工程と、
前記1層の不織布上に粘着層(ただし、ポリエチレングリコールを含む粘着剤から形成された粘着層、及び、ホットメルト粘着剤から形成された粘着層を除く。)を積層する工程と、
前記1層の不織布上に前記粘着層を積層した後、温度30~60℃の範囲で養生することにより、前記粘着層の不織布と接する側とは反対側の面である貼付面に、前記1層の不織布側に向かって凹状に形成された複数のクレーター部を形成し、かつ、前記複数のクレーター部の間に平坦部を形成するとともに、前記クレーター部の表面に複数の貫通孔を形成する工程と、
前記1層の不織布の前記粘着層が積層された側とは反対側の面に耐水性層を形成する工程と、
を有する、粘着シートの製造方法。
【請求項7】
前記不織布を準備する工程は、前記不織布をメルトブロー法で形成して準備する、請求項に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項8】
請求項又はに記載の製造方法により粘着シートを製造する工程を含む、絆創膏の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、絆創膏及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用途で使用される絆創膏や粘着包帯、スポーツ用途で使用されるテーピング用テープのように人体の皮膚に直接貼付される粘着テープには、粘着力とともに透湿性や防水性が求められる。このような粘着テープは、例えば支持体に粘着剤層を設けた構造を有しており、粘着テープに良好な透湿性を付与するために、上記支持体や上記粘着剤層に透湿性を付与することが知られている(例えば、特開平07-024049号公報(特許文献1)、特開2007-099936号公報(特許文献2)等)。
【0003】
特許文献1には、不織布に粘着剤を塗布した救急絆創膏用粘着フィルムが記載されている。特許文献1では、不織布に塗布される粘着剤を多孔性とする、粘着剤をパターンコーティングすることにより、透湿性の低下を防止することが記載されている。特許文献2には、支持体層に設けた粘着剤層の粘着面に所定のパターンの凹部を形成して通気性を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-024049号公報
【文献】特開2007-099936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、粘着剤を多孔性とするためには特殊な材料が必要となる。また、特許文献1に記載のように粘着剤をパターンコーティングしたり、特許文献2に記載のように粘着剤層に凹部を形成するためには、専用の設備が必要となり、粘着シートを製造するための工程数が増える等の問題もある。
【0006】
本発明は、特殊な設備を必要とすることなく製造することができ、良好な透湿性を有する粘着シート、絆創膏及びこれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の粘着シート、絆創膏及びこれらの製造方法である。
〔1〕 基材層と、
前記基材層に積層された粘着層とを有する粘着シートであって、
前記粘着層は、貼付面に凹状に形成されたクレーター部を有し、
前記クレーター部の表面は、複数の貫通孔を有する、粘着シート。
〔2〕 前記クレーター部は、平均径が0.04~0.8mmである第1クレーター部を含み、
前記第1クレーター部は、前記貼付面において、単位面積1cmあたり50~500個存在する。
〔3〕 前記貼付面における前記クレーター部の総面積は、前記貼付面の総面積に対して5~50%である。
〔4〕 前記貫通孔は、迷路状である。
〔5〕 前記基材層は不織布を有し、
前記不織布上に前記粘着層が積層されている。
〔6〕 前記不織布は、メルトブロー不織布である。
〔7〕 前記不織布の平均繊維径は、0.5~20.0μmである。
〔8〕 前記基材層の前記粘着層が積層された側とは反対側の面に耐水性層を有する。
〔9〕 前記粘着シートを備える絆創膏。
〔10〕 不織布を準備する工程と、
前記不織布上に粘着層を積層する工程と、
前記粘着層の不織布と接する側とは反対側の面である貼付面に、前記不織布側に向かって凹状に形成されたクレーター部を形成するとともに、前記クレーター部の表面に複数の貫通孔を形成する工程と、
を有する、粘着シートの製造方法。
〔11〕 前記不織布を準備する工程は、前記不織布をメルトブロー法で形成して準備する。
〔12〕 前記製造方法により粘着シートを製造する工程を含む、絆創膏の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、特殊な設備を必要とすることなく製造することができ、良好な透湿性を有する粘着シート、絆創膏及びこれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(A)~(C)は、実施例1で得た粘着シートの粘着層をSEMで撮像した画像を示す図である。
図2】実施例3で得た粘着シートの粘着層をSEMで撮像した画像を示す図である。
図3】比較例で得た粘着シートの粘着層をSEMで撮像した画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<粘着シート>
粘着シートは、粘着層と、粘着層が積層される基材層とを有する。
【0011】
(粘着層)
粘着層は、粘着剤で形成された粘着層を有する。図1に示すように、粘着層は、皮膚表面等へ貼付される際の貼付面は、この貼付面とは反対側の面に向けて凹状に窪むように形成されたクレーター部10を複数有し、クレーター部10とクレーター部10との間に平坦部11を有している。クレーター部の形状は、略円形状、略楕円形状、略三角形状等、特に限定されない。粘着層に形成されるクレーター部の形状は、互いに同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0012】
クレーター部の平均径は特に限定されないが、平均径が0.04~0.8mmであることが好ましく、0.1~0.5mmであることがより好ましい。クレーター部は、上記の範囲外の平均径を有するクレーター部を有していてもよい。粘着層に形成されるクレーター部の平均径は、貼付面のSEM画像から算出される値であり、粘着層の平坦部とクレーター部との境界部分で規定される周によって区画される部分の径をいう。平均径は、SEMで撮像されたクレーター部の画像に基づいて算出する。具体的には、粘着シートの貼付面について、約2mm×2mmをSEMで撮像し、撮像された画像内のクレーター部の、径が最大となる部分を長径とし、径が最小となる部分を短径として、その長さをスケールで測定し、測定された長径及び短径の平均値を算出した。この平均値の算出を、SEMで撮像された上記画像に含まれるすべてのクレーター部について行い、それぞれのクレーター部の上記平均値をさらに平均して、クレーター部の平均径とした。
【0013】
クレーター部は、粘着層の貼付面において、平均径が0.04~0.8mmの範囲にあるクレーター部(第1クレーター部)を単位面積1cmあたり50~500個有していることが好ましく、100~300個有していることがより好ましい。平均径は上記の算出方法で算出することができ、単位面積1cmあたりの個数も、平均径と同様にして、約2mm×2mmをSEMで撮像し、撮像された画像内のクレーター部の数を数え、単位面積1cmあたりに換算して算出することができる。単位面積あたり上記の数のクレーター部が形成されることにより、粘着層に良好な透湿性を付与することができる。また、クレーター部間に、所定の面積の平坦部を形成することができるため、粘着層の貼付面において、粘着力のバラつきが抑制された良好な粘着力を得ることができる。
【0014】
クレーター部は、凹状に形成された表面に複数の貫通孔を有していることが好ましい。貫通孔は、例えば、粘着層が粘着剤部分である骨格部分と骨格部分に囲まれた空隙部分とを有する三次元ネットワーク(網目状)構造を形成することによって形成される。貫通孔の形状は特に限定されず、各クレーター部に形成される貫通孔の個数は複数であればよく、3個以上であることが好ましく、10個以上であることがより好ましい。貫通孔は、クレーター部の表面(貼付面側)から裏面側(貼付面の背面側)に向かって、直線状に連通した孔であってもよく、曲線状に連通した迷路状の孔であってもよく、これらが組み合わさって形成された孔であってもよい。
【0015】
上記のように、クレーター部に形成された複数の貫通孔により、粘着層に空気等の気体の通路を形成することができるため、粘着層に透湿性を付与することができる。一方、クレーター部間に形成される平坦部は、皮膚表面等へ貼付される粘着部分となるため、この平坦部により粘着シートの粘着力を確保することができる。粘着層の貼付面においてクレーター部が占有する総面積は、貼付面の総面積(クレーター部の総面積と平坦部の総面積との合計面積)に対して5~50%であることが好ましく、10~30%であることがより好ましい。クレーター部の総面積を上記の範囲とすることにより、粘着シートに透湿性と粘着力とをバランスよく付与することができる。
【0016】
クレーター部及び平坦部は、粘着層の貼付面における粘着力のバラつきを低減するために、均一に配置されていることが好ましい。具体的には、クレーター部は、クレーター部の中心間の距離(ピッチ)が所定の範囲内となるように間隔を隔てて、粘着層に形成されていることが好ましく、上記ピッチは、500~1000μmであることが好ましく、600~800μmであることがより好ましい。クレーター部は、平均径が0.04~0.8mmの範囲にあるクレーター部が、同一直線上に整列するように形成されていることが好ましい。ここで、同一直線上に整列するとは、100~400μmの幅で表される仮想の直線上に、クレーター部の少なくとも一部が位置して配置されていることをいう。クレーター部は、1の同一直線上に配置されていてもよく、2以上の同一直線上に整列して配置されていてもよい。
【0017】
粘着層を形成するために使用される粘着剤としては、医療用途やスポーツ用途等の粘着シートで通常使用される皮膚に対する刺激が少なく、皮膚に対する粘着性を有するものを使用することができる。具体的には、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、スチレン-イソプレン(SIS)ブロックコポリマー系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等を挙げることができる。粘着層は、平坦部において、10~100μmの厚みを有することが好ましく、30~60μmの厚みを有することがより好ましい。また、粘着層は、平坦部において目付けが10~100g/mであることが好ましく、30~60g/mであることがより好ましい。
【0018】
粘着剤を塗工する時の粘度は、複数の貫通孔を有する凹状のクレーターを粘着層に形成する観点から、1000cP~4000cPであることが好ましく、2000cP~3000cPであることがより好ましい。
【0019】
(基材層)
粘着シートは、粘着層を積層する基材層を有する。基材層は、1層であってもよく、2層以上の積層構造であってもよいが、少なくとも粘着層が積層される層は不織布であることが好ましい。基材層が2層以上である場合、基材層は、不織布の積層体であってもよく、不織布と他の材料(フィルム、紙、発泡体、ネット、織物や編物等の布帛)等との積層体であってもよい。基材層は伸縮性を有することが好ましい。
【0020】
不織布の種類は特に限定されないが、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布、サーマルボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布等を挙げることができる。このうち、不織布をなす繊維の繊維径を小さくできるメルトブロー不織布を用いることが好ましい。メルトブロー不織布は繊維径が小さく、綿密で肌触りがよいため、粘着シートを絆創膏としたときに好適である。粘着層が積層される層として特にメルトブロー不織布を用いることにより、後述する粘着シートの製造方法において、特殊な設備を用いることなく、粘着層にクレーター部や貫通孔を形成することができる。
【0021】
粘着層が積層される層として不織布を用いる場合、後述するように、不織布表面の凹凸や不織布表面の繊維間の空隙に粘着層の一部が落ち込むように、不織布や粘着層の諸特性を調整することで、クレーター部及び貫通孔を形成することができる。クレーター部及び貫通孔を形成するために用いる不織布としては、不織布表面に凹凸を有し、不織布表面の繊維の間には一定の空隙が形成されていることが好ましい。
【0022】
粘着層が積層される層をなす不織布の平均繊維径は、0.5~20.0μmであることが好ましく、3.0~10.0μmであることがより好ましい。不織布の平均繊維径の上記範囲内であれば、繊維間に適度な空隙が生じるため、粘着層を積層した際にクレーター部の表面に複数の貫通孔を設けることができる。不織布の平均繊維径が上記範囲より小さい場合は、繊維同士が密になり、空隙が小さくなるため、上記貫通孔が形成されにくくなる傾向がある。また、不織布の目付けは、10~100g/mであることが好ましく、20~60g/mであることがより好ましく、密度は0.1~0.6g/cmであることが好ましく、0.2~0.4g/cmであることがより好ましい。
【0023】
基材層をなす不織布の材料は、特に限定されないが、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、スチレン系共重合体等を挙げることができる。このうち、基材層に伸縮性を付与するため、エラストマー性の材料を用いることが好ましく、ポリウレタン系エラストマー、スチレンとオレフィンとのブロック共重合体系エラストマー等を用いることがより好ましい。
【0024】
(耐水性層)
粘着シートは、基材層の粘着層が積層された側とは反対側の面に耐水性層を設けてもよい。耐水性層を設けることにより、粘着シートに耐水性や強度を付与することができる。耐水性層は、粘着シートの透湿性を確保するために、透湿フィルムを用いることが好ましい。耐水性層の透湿度は、500g/m・24h以上であることが好ましく、1000g/m・24h以上であることがより好ましい。耐水性層は、厚みが5~50μmであることが好ましく、8~40μmであることがより好ましい。耐水性層の厚みを薄くするほど透湿性を高くすることができる。
【0025】
また、耐水性層は、粘着シートの伸縮性を阻害しないために、伸縮性を有することが好ましい。耐水性層に伸縮性を付与するためには、エラストマーフィルムを用いることが好ましく、ポリウレタン系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、スチレン系共重合体等の熱可塑性エラストマーを用いることがより好ましい。耐水性層は、1層で形成されていてもよく、2層以上で形成されていてもよく、2層以上で形成されている場合は互いに同じ材料で形成されていてもよく、互いに異なる材料で形成されていてもよい。
【0026】
耐水性層を設けることに代えて、あるいは、耐水性層を設けることとともに、基材層の粘着層が積層された側とは反対側の面に撥水処理を施して、基材層への水の浸入を防止するようにしてもよい。撥水処理は、基材層表面に撥水剤やサイズ剤を塗布又は含浸することによって行うことができる。撥水剤としては、例えばシリコン系撥水剤、フッ素系撥水剤、ワックス等を挙げることができ、サイズ剤としては、例えばロジン系、アクリル系等を挙げることができる。
【0027】
(剥離シート)
粘着シートは、粘着層を被覆する剥離シートを備えていてもよい。剥離シートは、皮膚へ貼付する粘着シートに一般的に用いられているものを使用することができる。剥離シートとしては、例えば、紙やフィルム等の表面に、シリコーン樹脂やフッ素系樹脂等の剥離剤をコーティングしたもの等を用いることができる。
【0028】
(粘着シートの物性)
粘着シートは、耐水性層、基材層、粘着層をこの順に設けた構造のものにおいて、透湿度が800g/m・24h以上であることが好ましく、1000g/m・24h以上であることがより好ましい、2000g/m・24h以上であることがさらに好ましい。透湿度は、後述の実施例に記載した測定方法で測定することができる。
【0029】
クレーター部及び貫通孔が形成された粘着シートでは、後述するように、基材層をなす不織布の繊維間の空隙に粘着層の一部が入り込んだ状態とすることができる。粘着層の、不織布の上記空隙への入り込みの程度(浸透量や浸透深さ)は、基材層の不織布と粘着層との界面における粘着力で評価することができる。基材層の不織布と粘着層との粘着力は、JIS L1086測定法で評価することができる。
【0030】
<粘着シートの製造方法>
クレーター部を有し、このクレーター部の表面が複数の貫通孔を有する粘着シートの製造方法は、例えば、次の工程:
不織布を準備する工程と、
前記不織布上に粘着層を積層する工程と、
前記粘着層の不織布と接する側とは反対側の面である貼付面に、前記不織布側に向かって凹状に形成されたクレーター部を形成するとともに、前記クレーター部の表面に複数の貫通孔を形成する工程と、
を有する。ここで、クレーター部及び貫通孔は、例えば、不織布の凹凸面に粘着剤を塗工して養生処理を行うことで形成することができる。
【0031】
基材層となる不織布は、メルトブロー法、スパンボンド法、エアレイド法、サーマルボンド法、スパンレース法、ニードルパンチ法、ケミカルボンド法で製造することができる。このうち、メルトブロー法で製造することが好ましく、メルトブロー法の中でも、溶融吐出装置のダイから加熱溶融した原料樹脂を押出すとともに、高速高温の気流を吹き出して、コンベアネット上に繊維を集積する方法を用いることが特に好ましい。コンベアネット上に繊維を集積するメルトブロー法を用いることにより、粘着層を積層する不織布表面に適度な凹凸を付与することができるため好ましい。コンベアネットに形成された凹凸の間隔は例えば0.5~1.5mmとすることが好ましい。コンベアネットの凸部の高さ、すなわち、コンベアネットを構成する繊維同士が上下に交差する交差点において、下側に位置する繊維の下端から、上側に重なっている繊維の上端までの高さは、例えば0.03~0.1mmとすることが好ましい。なお、コンベアネットを構成する繊維同士はその重なり合う交差点において、互いに潰れ又は湾曲した状態で重なっているため、上記高さは必ずしもコンベアネットをなす繊維の繊維径に一致しない。コンベアネット上に繊維を集積して製造される不織布は、コンベアネットに接する面(コンベアネット面)に粘着層を積層することが好ましい。これは、コンベアネット面にはコンベアネットに起因する凸部が付与されており、粘着層を積層したときにクレーター部が均一な配置で形成されやすくなるためである。
【0032】
不織布上に粘着層を積層するためには、不織布上に粘着剤を塗工してもよく、工程紙に粘着剤を塗工して形成した粘着層を不織布上に転写してもよい。
【0033】
本発明者らは、粘着層を積層する不織布の表面形状、粘着層の物性、及びこれらの組み合わせによっては、不織布上に粘着層を積層した直後又は所定時間経過後(養生後)に、粘着層の一部が不織布側に窪んで粘着層に凹状のクレーター部が形成され、クレーター部の表面に複数の貫通孔が形成されることを見出した。このようなクレーター部や貫通孔が形成される理由は定かではないが次のように推測される。すなわち、不織布上に粘着層を積層した後に、不織布表面の凹凸や繊維間の空隙に沿って粘着層が落ち込み、これにより、粘着層の一部が不織布側に窪んで凹状のクレーター部が形成される。また、落ち込んだクレーター部分の粘着層は、落ち込んでいない平坦部の粘着層に比べて厚みが薄くなっており、この薄くなった部分の粘着層がさらに不織布の繊維間の空隙に落ち込むことにより、粘着層に複数の貫通孔が形成される。
【0034】
上記のような粘着層の落ち込みが生じる要因としては、例えば、不織布表面の凹凸の大きさ、不織布表面の繊維間の空隙の大きさ、不織布表面と粘着剤との親和性の大きさ、粘着層の変形のしやすさ等が考えられ、これらが相互に影響を及ぼすことによって粘着層の落ち込みが発生すると推測される。
【0035】
一例として、後述の実施例に示すように、不織布表面の形状を調整することによって、クレーター部や貫通孔を形成することができると考えられる。例えば、不織布表面に凹凸を形成するためには、不織布の製造時に繊維を捕集して不織布を形成するためのコンベアネット等の捕集体表面の凹凸形状を調整することで、不織布に凹凸を付与することができる。
【0036】
他方、不織布に凹凸を付与する方法として、不織布の製造後にエンボス加工によって凹凸を付与することも考えられる。エンボス加工は不織布を加熱加圧して行う処理であるため、凹凸を付与した部分では、不織布の繊維が圧縮される、繊維が樹脂化される等により、繊維間の空隙が低減されて粘着層の落ち込みが制限される場合がある。そのため、エンボス加工によって凹凸を付与する場合は、加熱加圧によって生じる不織布の溶融量及び/又は圧縮量を調整して、不織布の繊維間の空隙を制御することが好ましい。
【0037】
粘着層の変形のしやすさは、粘着層をなす粘着剤の種類、重量平均分子量、軟化剤等の添加量、粘着層を塗工して形成するときの溶媒の含有量、粘着剤の硬化条件、乾燥温度等を調整することによって調整すればよい。
【0038】
クレーター部及び貫通孔は、基材層の不織布上に粘着層を積層した後、一定時間静置する、又は、温度30~60℃の範囲で養生する等の過程の中で、粘着層が基材層の不織布側に落ち込んで形成される。養生時間は特に限定されるものではないが、3日~2週間程度養生することが好ましい。
【0039】
(耐水性層の形成)
粘着シートの製造方法は、耐水性層を形成する工程を有していてもよい。耐水性層は、例えば、基材層を形成した後、この基材層の表面に耐水性層をなす樹脂を塗工する方法、又は、工程紙の表面に耐水性層をなす樹脂を塗工した樹脂塗工層を形成した後、この樹脂塗工層を基材層表面に転写する方法等で形成すればよい。また、基材層に撥水処理を行う場合は、基材層を形成した後に撥水処理を行えばよい。
【0040】
(剥離シートの形成)
粘着シートの製造方法は、剥離シートを形成する工程を有していてもよい。剥離シートは、基材層の不織布上に粘着層を形成した後にこの粘着層上に積層してもよく、基材層の不織布上に粘着層を転写する際に用いた工程紙を剥離シートとして使用してもよい。
【0041】
<絆創膏>
粘着シートを用いて絆創膏を得ることができる。絆創膏は、粘着シートの粘着層の一部に、創傷面を覆うパッド材を設けたものである。パッド材は、例えば、不織布、ガーゼ、スポンジ等の形態で、セルロース繊維等の天然繊維、再生セルロース繊維、合成繊維等の吸液性を有する材料で形成することができる。
【0042】
<絆創膏の製造方法>
絆創膏は、粘着シートを製造し、粘着シートの粘着層の一部にパッド材を積層して製造することができる。
【実施例
【0043】
[SEMの観察]
SEM(VE-8800、キーエンス社製)を用い、粘着層表面を観察した。
【0044】
[クレーター部の平均径]
クレーター部の平均径は、SEMで撮像されたクレーター部の画像に基づいて算出した。具体的には、約2mm×2mmをSEMで撮像し、撮像された画像内のクレーター部の、径が最大となる部分を長径とし、径が最小となる部分を短径として、その長さをスケールで測定し、測定された長径及び短径の平均値を算出した。この平均値の算出を、SEMで撮像された上記画像に含まれるすべてのクレーター部について行い、それぞれのクレーター部の上記平均値をさらに平均して、クレーター部の平均径とした。
【0045】
[クレーター部の個数の算出]
クレーター部の個数は、SEMで撮像されたクレーター部の画像に基づいて算出した。具体的には、約2mm×2mmをSEMで撮像し、撮像された画像内において、平均径が0.04~0.8mmの範囲にあるクレーター部の数を数え、単位面積1cmあたりに換算して算出した。
【0046】
[透湿性の評価]
耐水性層/不織布層/粘着層がこの順に形成された粘着シートについて、JIS L 1099に準じて、塩化カルシウムを使用しカップ法により測定した。透湿性が800g/m・24h以上である粘着シートを透湿性が良好と判断した。
【0047】
[粘着力の評価]
JIS L1086により測定し、5N/inch以上を良好と判断した。
【0048】
[実施例1]
(不織布の製造)
熱可塑性ポリウレタン(商品名「T1190KS」、DICバイエルポリマー社製)を原料ポリマーとし、一列に配列した直径0.3mmのオリフィスの両側に加熱気体の噴射用スリットを有する溶融吐出装置を用い、溶融温度240℃、1オリフィスあたり0.5g/minの割合で原料ポリマーを吐出し、溶融温度と同じ温度に加熱した加熱空気を噴射用スリットから噴射して原料ポリマーを細化した。細化した微細線状体を溶融吐出装置の下方30cmのコンベアネット上で捕集し、ポリウレタンのメルトブロー不織布を得た。
【0049】
(耐水性層の製造)
ウレタン膜用の配合液(「クリスボンKH-35」(DIC社製)100質量部、ジメチルホルムアミド(DMF)10質量部、メチルエチルケトン(MEK)30質量部、肌色顔料4質量部)を、アプリケーターを用いて乾燥時の塗工量が約11g/mとなるようにポリプロピレン製のウレタン膜用工程紙に塗工して樹脂塗工層を形成した。この樹脂塗工層を130℃で1分乾燥し、ウレタン膜層用工程紙上にウレタン膜(耐水性層)を作製した。
【0050】
ウレタン膜用工程紙上に作製したウレタン膜上に、接着剤(「クリスボン4070」(DIC社製)100質量部、DMF28質量部、「クリスボンDN-950」(DIC社製)15質量部、「クリスボンT-81E」(DIC社製)1質量部)を、32メッシュのグラビアロールコーターで乾燥前の塗布量が約15g/mとなるように塗工して接着剤層を形成した。この接着剤層を130℃で1分乾燥した後、接着剤層上に上記メルトブローン不織布を80℃で熱圧着して積層し、ウレタン膜用工程紙を剥離して、ウレタン膜付きメルトブローン不織布を得た。
【0051】
(粘着層の製造)
粘着剤(「ファインタックCT-4040」(DIC社製)100質量部、トルエン(TOL)20質量部、「コロネート」(東ソー社製)1質量部、粘度200cP)を調製し(粘着剤の粘度2,500cP)、アプリケーターを用いて乾燥前の塗工量が約35g/mとなるように工程紙に塗工して塗工層を形成し、この塗工層(粘着層)を130℃で1分乾燥した。
【0052】
(粘着シートの製造)
上記工程紙上の塗工層(粘着層)に、ウレタン膜付きメルトブローン不織布の不織布面を貼り合わせ、40℃で2週間養生して工程紙付き粘着シートを得た。得られた工程紙付き粘着シートから工程紙を剥離して粘着シートを得、粘着層表面をSEMで観察した。その結果を図1に示す。また、粘着層表面のクレーター部の平均径、粘着シートの透湿性、粘着シートの粘着力を評価した。その結果を表1に示す。
【0053】
図1は粘着層表面を示したものである。図1に示されるように、粘着層にクレーター部が形成され、クレーター部に貫通孔が形成されていることが確認された。また、略同形状かつ略同サイズのクレーター部が、同一直線上に整列するように形成されていることが確認できた。表1に示されるように、粘着シートは透湿性に優れており、粘着力良好であった。
【0054】
[実施例2]
60℃で1週間養生したこと以外は実施例1と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着シートの粘着層表面をSEMで観察し、粘着層表面のクレーター部の平均径、粘着シートの透湿性、粘着シートの粘着力を評価した。その結果を表1に示す。
【0055】
得られた粘着層表面をSEMで観察した結果、粘着層にはクレーター部及び貫通孔が形成されていることが確認された。クレーター部の平均径は、実施例1に比較して小さいものであった。粘着シートの透湿性はおおむね良好であり、粘着力も良好であった。
【0056】
[実施例3]
実施例1と同様にしてポリウレタンのメルトブローン不織布を製造し、この不織布にエンボス加工を行い、凹凸を大きくした不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。得られた粘着層表面をSEMで観察した結果を図2に示す。また、粘着層表面のクレーター部の平均径、粘着シートの透湿性、粘着シートの粘着力を評価した結果を表1に示す。
【0057】
得られた粘着層表面をSEMで観察した結果、粘着層にはクレーター部及び貫通孔が形成されていることが確認された。クレーター部の平均径が1.0mmと大きいため、粘着力は低いものの、良好な透湿性が得られた。
【0058】
[比較例]
実施例1と同様にしてポリウレタンのメルトブローン不織布を製造し、この不織布を平滑ローラで圧縮処理して不織布表面を平坦化した平坦化不織布を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを作製した。得られた粘着層表面をSEMで観察した結果を図3に示す。また、粘着シートの透湿性、粘着シートの粘着力を評価した結果を表1に示す。
【0059】
図3に示されるように、粘着層にクレーター部や貫通孔の存在は確認されなかった。そのため、表1に示されるように、粘着シートは、透湿性に劣るものであった。
【0060】
【表1】
【0061】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の粘着シートは、皮膚表面へ貼付される、絆創膏、粘着包帯、整体等の体型補強又は体型補正用のテープ、テーピング用テープ等として使用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10 クレーター部、11 平坦部
図1
図2
図3