(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】粉末状ポリマーを製造するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/01 20060101AFI20220920BHJP
C08F 20/00 20060101ALI20220920BHJP
B01J 8/24 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
C08F2/01
C08F20/00 510
B01J8/24 311
(21)【出願番号】P 2019547362
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2018054657
(87)【国際公開番号】W WO2018158191
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2021-02-22
(32)【優先日】2017-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン バウアー
(72)【発明者】
【氏名】マークス テネセン
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ボデュアン
(72)【発明者】
【氏名】カトリン バウマン
(72)【発明者】
【氏名】マルコ クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ダイス
(72)【発明者】
【氏名】マークス ミュール
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521962(JP,A)
【文献】特表2008-528748(JP,A)
【文献】国際公開第2015/197359(WO,A1)
【文献】特表平04-504678(JP,A)
【文献】特開昭51-031756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00- 2/60
6/00-246/00
B01J 8/00- 8/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー製造用のモノマー溶液が投入される孔を有する前記モノマー溶液の滴下装置(5)と、該滴下装置(5)の上方にある気体供給箇所(13)と、反応器(1)の外周にある少なくとも1つの気体取出し箇所(19)と、流動層(11)とを有する液滴重合用の反応器(1)を含む、粉末状ポリマーを製造するための装置において、以下の特徴:
- 前記モノマー溶液の前記滴下装置(5)の領域に、気体流における乱流を増加させる装置(31)が配置されていること、
- 前記気体供給箇所(13)の領域に、気体流における乱流を増加させる装置が配置されていること、
- 増加した乱流が生成されるように前記気体供給箇所(13)が形作られていること、
のうち少なくとも1つが満たされて
おり、
前記乱流を増加させる装置(31)が気体ノズル(35)を含み、前記反応器(1)内の乾燥ガス流の力積流量に対する、乱流を生成するすべてのノズルの合計力積流量の比率が0.1~50の範囲にあるか、または、
前記乱流を増加させる装置(31)が気体/液体ノズルまたは液体ノズルを含み、前記滴下装置(5)により供給される前記モノマー溶液の力積流量に対する、乱流を生成するすべてのノズルの合計力積流量の比率が0.1~100の範囲にある
ことを特徴とする、粉末状ポリマーを製造するための装置。
【請求項2】
乱流を増加させるために使用される前記気体/液体ノズルまたは前記液体ノズルが、前記モノマー溶液の前記滴下装置(5)の部分であることを特徴とする、請求項
1記載の装置。
【請求項3】
乱流を増加させるために使用される前記気体ノズル(35)が、前記気体供給箇所(13)の方向に向けられており、そのため、前記気体ノズル(35)から流出する気体流が、前記気体供給箇所(13)からの気体流とは反対に向けられていることを特徴とする、請求項
1記載の装置。
【請求項4】
乱流を増加させるために使用される前記気体ノズル(35)または前記気体/液体ノズルまたは前記液体ノズルの数が、1平方メートルの反応器断面面積あたり0.02~2であることを特徴とする、請求項
1から
3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記乱流を増加させる装置(31)が、前記滴下装置(5)の上方2m~下方2mの間および/または前記気体供給箇所(13)の下方2mまでの領域に配置されていることを特徴とする、請求項1から
4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記乱流を増加させる装置(31)
の前記気体ノズル(35)または前記気体/液体ノズルまたは前記液体ノズルが、前記反応器(1)内で様々な高さに配置されていることを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記気体供給箇所(13)が、5~200cmの直径の孔を有する少なくとも1つの孔付き板を含むことを特徴とする、請求項1から
6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
以下の工程:
(a) モノマー溶液を滴下装置(5)内で液滴化する工程、ここで、生成されたモノマー液滴が反応器(1)を通って落下し、モノマーが少なくとも部分的に反応してポリマーになり、それにより粒子が生成される、
(b) 気体流が前記反応器(1)内で上方から下方に向かって生じるように、前記滴下装置(5)の上方にある気体供給箇所(13)を介して気体を供給する工程、
(c) 工程(a)で生成された前記粒子を流動層(11)内で回収する工程、ここで、該流動層(11)内で、個別の前記粒子におけるポリ(メタ)アクリレートへの反応が完了し、場合によって後架橋が行われる、
(d) 前記流動層(11)から前記粒子を取り出す工程、
を含む、請求項1から
7までのいずれか1項記載の装置内で粉末状ポリマーを製造する方法において、前記滴下装置(5)の領域内の気体流中で流動乱流を増加させ
、
乱流を増加させる気体ノズル(35)を使用し、前記気体供給箇所(13)を介して供給される前記気体の力積流量に対する、前記気体ノズル(35)すべてを通して供給される前記気体の力積流量の比率が、0.1~50の範囲にあるか、または、
乱流を増加させる気体/液体ノズルまたは液体ノズルを使用し、前記滴下装置(5)内で生成される力積流量に対する、前記ノズルすべてにより生成される力積流量の比率が、0.1~100の範囲にある
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項9】
乱流を増加させる気体ノズル(35)を使用し、該気体ノズル(35)からの前記気体の排出速度が、5~1000m/sの範囲にあることを特徴とする、請求項
8記載の方法。
【請求項10】
前記気体ノズル(35)から排出される気体流が、工程(b)で生成される前記反応器(1)内の気体流とは反対方向に向けられていることを特徴とする、請求項
9記載の方法。
【請求項11】
前記気体供給箇所(13)が、5~200cmの直径の孔を有する少なくとも1つの孔付き板を含み、それにより、前記気体が、増加した乱流により前記気体供給箇所(13)から排出されることを特徴とする、請求項
8から
10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記粉末状ポリマーがポリ(メタ)アクリレートであることを特徴とする、請求項
8から
11までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマー溶液が投入される孔を有するポリマー製造用のモノマー溶液の滴下装置と、滴下装置の上方にある気体供給箇所と、反応器の外周にある少なくとも1つの気体取出し箇所と、流動層とを有する液滴重合用の反応器を含む、粉末状ポリマーを製造するための装置を出発点とする。本発明はさらに、このような装置内で粉末状ポリマーを製造する方法に関する。
【0002】
例えば、使用される装置および方法は、おむつ、タンポン、生理用ナプキンおよび別の衛生用品の製造において使用される、または園芸農業における保水剤として使用される吸水性ポリマー、殊にポリ(メタ)アクリレートの製造に適している。
【0003】
吸水性ポリマーの特性は、架橋度により調整することができる。架橋度が上がるほど、ゲル強度が上がり、吸収容量が下がる。このことは、圧力下で吸収性が上がるほど遠心分離保持容量が減少することを意味し、ここで架橋度が非常に高い場合、圧力下での吸収性も再び減少する。
【0004】
適用特性、例えばおむつにおける液体浸透性と圧力下での吸収性を改善するためには、一般的に、吸水性ポリマー粒子を後架橋する。それによって、粒子表面の架橋度だけが上がり、このことによって、圧力下での吸収性と、遠心分離保持容量とを少なくとも部分的に切り離すことができる。この後架橋は、水性ゲル相中で実施することができる。しかしながら、一般的に、粉砕および分級されたポリマー粒子は、その表面において後架橋剤により被覆され、熱により後架橋され、乾燥される。それに適した架橋剤は、親水性ポリマーのカルボキシレート基と共有結合を形成することができる少なくとも2つの基を含有する化合物である。
【0005】
吸水性ポリマー粒子の製造については、様々な方法が公知である。そこで例えば、ポリ(メタ)アクリレートを製造するために使用されるモノマー、および場合によっては添加剤をミキシングニーダーに入れることができ、この中でモノマーが反応して、ポリマーになる。ミキシングニーダー内にある、混練バーを有する回転軸によって、生成するポリマーが引き裂かれて、小塊(Brocken)になる。ニーダーから取り出されたポリマーは、乾燥および粉砕されて、後処理に送られる。代替的な変形例では、さらなる添加剤も含有し得るモノマー溶液の形態にあるモノマーが、液滴重合用の反応器に投入される。モノマー溶液を反応器に投入する際に、モノマー溶液は分裂して液滴になる。液滴形成のメカニズムは、乱流のもしくは層状のジェット分裂であっても、または滴下であってもよい。ここで液滴形成のメカニズムは、モノマー溶液の導入条件および物質特性による。液滴は、反応器内で下方に向かって落ち、ここでモノマーが反応して、ポリマーになる。反応器の下部領域には流動層が存在しており、この流動層の中へと、反応により液滴から生じるポリマー粒子が落ちる。その後、この流動層の中で後反応が起こる。相応する方法は、例えば国際公開第2006/079631号、国際公開第2008/086976号、国際公開第2007/031441号、国際公開第2008/040715号、国際公開第2010/003855号および国際公開第2011/026876号に記載されている。
【0006】
モノマー溶液を投入するための様々な装置を有する滴重合用の反応器は、例えば国際公開第2015/197571号または国際公開第2015/197359号に記載されている。
【0007】
公知の反応器において、液滴濃度および気体温度は、流量の比率に基づいて、反応器断面にわたり変動することがある。この変動により、乾燥に使用される気体の利用性が不完全になる。これは、モノマー溶液が個別の液滴において異なる速さで反応を起こしてポリマーになるという結果をもたらす。
【0008】
よって、本発明の課題は、乾燥ガスと液滴導入されたモノマー溶液との混合の改善が保証され、かつそれに加えて、液滴が反応器断面にわたり均質に分布させられる、粉末状ポリマーを製造するための装置および方法を提供することである。
【0009】
この課題は、ポリマー製造用のモノマー溶液が投入される孔を有するモノマー溶液の滴下装置(5)と、滴下装置の上方にある気体供給箇所と、反応器の外周にある少なくとも1つの気体取出し箇所と、流動層とを有する液滴重合用の反応器を含む、粉末状ポリマーを製造するための装置であって、以下の特徴:
- モノマー溶液の滴下装置の領域に、気体流における乱流を増加させる装置が配置されていること、
- 気体供給箇所の領域に、気体流における乱流を増加させる装置が配置されていること、
- 増加した乱流が生成されるように気体供給箇所が形作られていること、
のうち少なくとも1つが満たされている装置により解決される。
【0010】
さらに、この課題は、以下の工程:
(a) モノマー溶液を滴下装置内で液滴化する工程、ここで、生成されたモノマー液滴が反応器を通って落下し、モノマーが少なくとも部分的に反応してポリマーになり、それにより粒子が生成される、
(b) 気体流が反応器内で上方から下方に向かって生じるように、滴下装置の上方にある気体供給箇所を介して気体を供給する工程、
(c) 工程(a)で生成された粒子を流動層内で回収する工程、ここで、流動層内で、個別の粒子におけるポリマーへの反応が完了し、場合によって後架橋が行われる、
(d) 流動層から粒子を取り出す工程、
を含む、そのような装置内でポリマーを製造する方法であって、滴下装置の領域内の気体流中で流動乱流(Stroemungsturbulenz)を増加させる方法により解決される。
【0011】
後の説明では、反応器内で上方から下方に向かって生成される気体流も乾燥ガス流と称し、気体供給箇所を介して供給される気体も乾燥ガスと称する。
【0012】
乱流を増加させる装置を使用することで、または気体供給箇所を構成することで気体流において達成される流動乱流の増加により、気体供給箇所を介して添加される乾燥ガスと、モノマー溶液からの液滴との混合が、公知の反応器に比べて改善される。良好な混合により乾燥ガスがより良好に利用され、そのため、乾燥ガスをより低い気体導入温度で添加することができる。気体導入温度がより低くなることで、気体を加熱するためのエネルギー必要量が低減され、そのため、公知の反応器を使用する場合よりも、全体としてポリマーを製造するのにより低いエネルギーで済む。
【0013】
モノマー溶液の滴下装置の構成次第では、生成された液滴は、反応器断面にわたりすでに比較的均質に分布しており、したがって乾燥ガスとも混合されている。しかしながら、一般的には、反応器断面にわたり局所的に、液滴濃度および気体温度のばらつきが生じ、これが乾燥ガスの不完全な利用性に繋がる。ここで乾燥ガスの利用性とは、気体の吸水性および放熱性と理解され、ここで、乾燥ガスの利用性が完全である場合、それぞれ反応器断面にわたり、実質的に均質な温度および実質的に均質な水濃度が気体において調整される。それに対して、乾燥ガスの利用性が不完全である場合、温度分布および水濃度は、反応器断面にわたり均質ではない。この効果を最小限に抑えるためには、気相中に所定の流動乱流を生成し、これにより、液滴の分布の均質性を反応器断面にわたり増加させ、乾燥ガスとモノマー溶液からの液滴とのさらにより良好な混合を調整する。その際、流動乱流は小さすぎてもいけない。なぜなら、そうでなければ均質化効果が無視可能なほどになるからである。またこれは大きすぎてもいけない。なぜなら、そうでなければ液滴または粒子が速く反応器壁に到達することがあり、そこで堆積物を形成するからである。
【0014】
乱流を増加させる装置としては、気体流の乱流を増加させることが可能なあらゆる装置を使用することができる。乱流を増加させる装置としては、例えば、滴下装置の上方または下方に配置されたバッフル(Stroemungshindernisse)を使用することができる。あるいは、乱流を増加させるために、気体ノズル、気体/液体ノズルまたは液体ノズルを使用することも可能である。
【0015】
バッフルが使用される場合、乾燥ガスは、バッフルの周囲を流れることにより渦化され、このようにして乱流が増加する。滴下装置を出たモノマー溶液が渦化の発生によりバッフルにおいて堆積物を形成することを防止するために、バッフルは、滴下装置の下方に配置される場合に、理論的垂直投影図において、常に滴下装置の個別の滴下器ユニットの間の隙間にあり、かつ滴下器ユニットにおいて形成された液滴噴流に直接的にぶつからないように置かれることが好ましい。バッフルのサイズおよび数により、流動乱流の程度を調整することができる。適切なバッフルは、例えば、垂直面に対して垂直もしくは実質的に垂直に配置された任意の形状のプレート、例えば、円形、長方形もしくは多角形のプレートであるか、または流れを著しく剥離させ、それにより流動乱流を発生させる任意の別の物体である。さらに、バッフルとして孔付き板を使用しても、または滴下器ユニットをその形状について変形して、これによりさらに乱流を増加させてもよい。
【0016】
あるいは、バッフルは、5~200cm、好ましくは10~100cmの水力直径を有する孔を有する孔付き板も含んでいてもよい。これらの孔は、任意の形状であってもよく、すなわち、例えば円形、多角形または楕円形であってもよい。孔は円形であることが好ましい。孔付き板における孔のサイズにより、一般的な孔付き板において形成されるような、数ミリメートルの直径を有する小さな孔から排出される非常に微細な自由噴流の場合とは異なり、誘導された流動乱流が摩擦によりすぐに散逸することが防止される。このように生成される乱流により、バッフルの場合のように、気相温度および粒子濃度が均質化される。モノマー溶液からの液滴が孔付き板に衝突して堆積物を形成することを理由に、孔付き板を必ず滴下装置の上方に配置する必要があるため、すでに滴下器ユニットの高さで乱流レベルの増加が起こり、これにより液滴噴流が互いに衝突し、それにより合体することがある。これは不所望なほどに幅広い液滴径分布に繋がることがある。
【0017】
気体供給箇所は、例えば1つ以上の孔付き板を有していてもよく、反応器に流入する乾燥ガスの十分に均等な分布が達成されるように構成されることが一般的である。可能な実施形態の参照としては、専門文献、例えばKeith Masters著「Spray Drying Handbook」第5版(1991)または国際公開第91/04776号も参照されたい。
【0018】
増加した乱流が生成されるように気体供給箇所を構成する場合、例えば、少なくとも1つの孔付き板、殊に気体の流れ方向で最後の孔付き板を、先でバッフルについて記載されているように、すなわち、この孔付き板が5~200cm、好ましくは10~100cmの範囲にある水力直径を有する孔を有するように構成することが可能であり、ここでこれらの孔は任意の形状であってもよい。あるいは、気体供給箇所は、流動乱流を生成する1つ以上の気体ノズルも含んでいてもよい。
【0019】
本発明の範囲において、増加した乱流とは、滴下器ユニットの領域におけるまたは滴下器ユニットの下方における気体流の局所的な乱流が、流入する気体が反応器内の平均気体速度に基づき単独で有するであろう平均乱流よりも大きいことを意味する。
【0020】
本発明の範囲において、滴下器ユニットとは、液滴が生成される滴下装置の部分と理解される。滴下器ユニットとしては、例えばスプレーノズルを使用することができる。しかしながら、滴下器ユニットが、モノマー溶液が滴下される孔をその下側に有する滴下器通路をそれぞれ含むと好ましい。ここでこれらの孔は、滴下器通路の下側を形成する孔付き板において形作られていることが特に好ましい。反応器の可能な構成および滴下装置の可能な形状は、例示的には国際公開第2015/197359号に示されている。
【0021】
あるいはまたはさらに、好ましくはあるいは、乱流を増加させるためにノズルも使用することができる。そのために、乱流を増加させる装置は、気体ノズル、気体/液体ノズルまたは液体ノズルを含む。乱流を増加させるために使用されるノズルが気体/液体ノズルまたは液体ノズルである場合、一実施形態において、これらはモノマー溶液の滴下装置の部分である。そのために、増加した乱流は、例えば、滴下器ユニットの液滴噴流の導入の勢いを増加させることにより、または液滴を生成するためのスプレーノズルを使用することにより達成可能である。ただし、どちらも同様に、不所望なほどに幅広い液滴径分布をもたらすことがある。スプレーノズルの使用または液滴噴流速度の増加はさらに、液滴が予定よりも早く反応器壁に到達し、これにより堆積物が形成されるリスクを内包している。
【0022】
乱流を増加させるノズルとして気体ノズルを使用することが特に好ましい。気体ノズルは、ノズル直径および気体排出速度に応じて、ノズルの自由噴流の下流で乱流を誘導する。気体処理量を変えることにより、乱流レベル、ひいては液滴濃度および気相温度の均質化を容易に調整することができる。バッフルと同様に、ノズルを、滴下器ユニットの高さに、または滴下器ユニットの少し下方または上方に置いてもよい。その際、垂直投影図において、ノズルは同様に滴下器ユニットの間の隙間にあり、それにより、液滴噴流がノズルにぶつかり、ノズルにすぐに堆積物が形成されることが防止される。
【0023】
ノズルにより誘導された乱流は、ノズルにより導入される力積流量I
Dにより実質的に求められる。ここで力積流量は、ノズル出口における質量流量と自由噴流の気体速度との積:
【数1】
である。
【0024】
ノズルによる流動乱流の影響について決定的なのは、反応器内の乾燥ガス流の力積流量に対する、ノズルを通して投入される力積流量の比率rTG=ID/ITG、および滴下装置により供給されるモノマー溶液によって投入される力積流量に対する、ノズルを通して投入される力積流量の比率rV=ID/IVである。
【0025】
【0026】
滴下器ユニットにより導入される力積流量は、
【数3】
である。
【0027】
ノズルによる流動乱流の影響を十分に、それでいて強すぎずに達成するためには、比率rTGは、好ましくは0.1~50の範囲、より好ましくは0.2~20の範囲、特に好ましくは0.5~10の範囲にある。同様に、比率rVは、好ましくは0.1~100の範囲、より好ましくは0.2~50の範囲、特に好ましくは0.5~20の範囲にある。
【0028】
乱流を生成するノズルの所望の力積IDは、質量流量およびノズル排出速度のどちらによっても調整可能である。排出速度が非常に高い場合、例えば音速の数倍である場合、たしかに局所的に生じる乱流度は非常に高いが、しかしながら、これは非常に小規模であり、摩擦によりすぐに散逸し、そのため、特に高い排出速度を選択することに利点はない。反対に、非常に高い排出速度により、騒音負荷が高くなり、ノズル流を生成するのに必要な出力がより高くなる。よって、ノズル排出速度は、好ましくは5~1000m/s、より好ましくは10~500m/s、特に好ましくは20~300m/sの範囲で選択される。速度選択の際、必要な質量流量は所望の力積流量から求められる。最終的に、必要なノズル断面はこれから求められる。
【0029】
ノズル断面の形状は、あまり重要ではない。円形の、スロットのような、楕円形の、または場合によって複数の開口部を有するノズルも使用可能である。
【0030】
液滴重合用の反応器のサイズに応じて、合計力積を達成するために、1つ以上の乱流生成ノズルが使用される。乱流は反応器断面にわたり均一に生成されることが望ましいため、反応器のサイズが大きくなるほど、同様により多くのノズルを使用することが有利である。ここで、一定の水力直径を有する反応器の領域における乱流生成ノズル1つあたりの反応器断面面積は、好適には0.5~50m2、好ましくは1~25m2、特に好ましくは2~10m2である。これは、乱流を増加させるために使用される気体ノズル、気体/液体ノズルまたは液体ノズル、殊に気体ノズルの数が、1平方メートルの反応器断面面積あたり0.02~2、より好ましくは0.04~1、殊に0.1~0.5であることを意味する。
【0031】
液滴重合用の反応器が、一定の水力直径を有する中部領域と、下方に向かって増加する水力直径を有する円錐形に形成された反応器ヘッドと、同様に円錐形に構築された下部領域であって、ここで水力直径が上方から下方に向かって減少する下部領域とを含み、滴下装置および乱流を増加させる装置が反応器ヘッド内に配置されている場合、先に挙げたサイズは、一定の水力直径を有する中部領域における反応器断面面積に関連する。
【0032】
乱流を増加させる装置がモノマー溶液の滴下装置の領域に配置されている場合、乱流を増加させる装置は、滴下装置の上方2m~下方2mの間の領域に配置されていることが好ましい。乱流を増加させる装置は、滴下装置の上方1m~下方1mに配置されていることが好ましい。滴下装置が様々な高さで滴下器ユニットを含む場合、乱流を増加させる装置の間隔を特定するために使用される滴下装置の高さとしては、滴下器ユニットが配置されている中部平面が利用される。
【0033】
乱流を増加させる装置が気体供給箇所の領域に配置されている場合、乱流を増加させる装置は、気体供給箇所の下方2mまでに配置されており、特に好ましくは、気体供給箇所の下方10cm~1mの間の領域に配置されている。
【0034】
乱流を増加させる装置、すなわち、気体ノズル、気体/液体ノズルもしくは液体ノズルまたはバッフルは、様々な高さに配置されていてもよい。これは殊に、滴下器ユニットが様々な高さに配置されているか、または組立て技術的な理由により様々な高さが必要とされる場合に有利である。
【0035】
あるいは、乱流を増加させる装置のすべてのバッフル、気体ノズル、気体/液体ノズルまたは液体ノズルも、反応器における1つの高さに配置されていてもよい。これは殊に、滴下器ユニットが同様に1つの高さに配置されている場合に有利である。
【0036】
ノズル、すなわち、気体ノズル、気体/液体ノズルまたは液体ノズルを使用する場合、殊に気体ノズルを、乱流を増加させる装置として使用する場合、下方に向かって垂直にまたは上方に向かって垂直にノズルを方位決めしてもよく、別の方向決めも考えられる。例えば、ノズルを反応器軸の方向に、または外側に僅かに傾けてもよい。同様に、ノズルは、部分的に接線方向を有していてもよい。ただし、例えば接線方向の場合、粒子がノズル流により飛沫同伴され、予定よりも早く反応器壁に到達し、堆積物が形成されるリスクが常に存在していることに注意したい。ノズルが上方に向かって垂直に向けられている場合、すなわち、気体ノズルを通って排出される気体流が乾燥ガス流とは反対に向けられている場合が特に好ましい。このように向けることで、乱流の増加が最大になる。
【0037】
乱流を増加させる装置として使用されるノズルの反応器断面にわたる分布は、滴下器ユニットの配置に応じる。基本的には、ノズルを反応器断面にわたりできるだけ均一に分布させて、できるだけ均一な流動乱流を生成することが有利である。ノズルを滴下器ユニットの水平位置に対して隙間に置いて、ノズル噴流と液滴噴流との間で直接の相互作用をもたらさないことがさらに有利である。同様に、ノズルを滴下器ユニットに対してできるだけ対称に配置することが有利である。配置の非対称性が強い場合、滴下器ユニットの領域における流れ場(Stroemungsfeld)が強く偏向して、液滴噴流がノズルの誘導乱流により広がるのみならず強く偏向して、それにより噴流の衝突が起こることもある。
【0038】
気体が十分にモノマー溶液の滴下装置を通過でき、それにより、均一な気体速度を反応器中で達成できるようにするために、そして装置の周囲を流れる際に気体があまりに大幅に加速および渦化しないようにするためには、反応器において滴下装置に覆われている面の比率が、最も外側の孔を結んだ線により囲まれている面を基準として、50%未満、好ましくは3~30%の範囲にあれば、さらに好ましい。
【0039】
本発明による装置および本発明による方法は、好ましくは吸水性ポリマーを製造するために、殊にポリ(メタ)アクリレートを製造するために使用される。本発明の範囲において、ポリ(メタ)アクリレートとは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ならびにポリアクリレートとポリメタクリレートとからのあらゆる任意の混合物であると理解される。
【0040】
本発明の実施例は図に示してあり、以下の記載においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】滴下装置の下方に乱流を増加させる装置を有する液滴重合用の反応器の縦断面を示す。
【
図2】滴下装置の上方に乱流を増加させる装置を有する液滴重合用の反応器の縦断面を示す。
【
図3】半径方向に延びる様々な長さの滴下器通路およびこれらの通路の間に配置された乱流を増加させる装置の配置を示す。
【
図4】放射状に配置された滴下器通路およびこれらの通路の間に配置された乱流を増加させる装置の配置を示す。
【
図5】長方形に分割された滴下器通路およびこれらの通路の間に配置された乱流を増加させる装置の配置を示す。
【
図6】三角形に分割された滴下器通路およびこれらの通路の間に配置された乱流を増加させる装置の配置を示す。
【
図7】増加した乱流が生成されるように気体供給箇所が構成されている液滴重合用の反応器の上部断面を示す。
【
図8】上に向いた気体ノズルを乱流を増加させる装置として有する液滴重合用の反応器の上部断面を示す。
【
図9】乱流を増加させる装置の使用を伴ったおよび伴わない、粒子滞留時間に応じた粒子温度の標準偏差のプロファイルを示し、ここで、破線で描かれた曲線は、乱流増加を伴った場合を示し、実線で描かれた曲線は、乱流増加を伴わない場合を示す。
【
図10】乱流を増加させる装置の使用を伴ったおよび伴わない、粒子滞留時間に応じた温度全体のプロファイルを示し、ここで、破線で描かれた曲線は、乱流増加を伴った場合を示し、実線で描かれた曲線は、乱流増加を伴わない場合を示す。
【0042】
図1は、液滴重合用の反応器の縦断面を示し、例えばこの反応器は、ポリ(メタ)アクリレート粒子を製造するために使用されることが好ましい。
【0043】
液滴重合用の反応器1は、内部に滴下装置5が収容されている反応器ヘッド3、重合反応が起こる中部領域7、および反応が完了する流動層11を有する下部領域9を含む。
【0044】
ポリ(メタ)アクリレートを製造するための重合反応を実施するために、滴下装置5にモノマー溶液を、モノマー供給部12を介して供給する。滴下装置5が複数の通路を有する場合、各通路に、専用のモノマー供給部12を介してモノマー溶液を供給することが好ましい。モノマー溶液は、滴下装置5内の、
図1には図示されていない孔を通して排出され、分裂してそれぞれ液滴になり、これらの液滴は、反応器内で下方に向かって落ちる。滴下装置5の上方にある第一気体供給箇所13を介して、気体、例えば窒素または空気が反応器1に導入される。ここで気体流は、滴下装置5の孔から排出されるモノマー溶液が分裂してそれぞれ液滴になるのを補助する。さらに、この気体流によって、液滴がそれぞれ触れ合わないように、かつ一体化してより大きな液滴にならないように分離される。
【0045】
一方で反応器の円筒形中部領域7をなるべく短く形作るために、そしてさらに、液滴が反応器1の壁にぶつかるのを回避するために、反応器ヘッド3は好適には、ここで図示されているように円錐形に作り上げられており、ここで滴下装置5は、円筒形領域の上方にある円錐形反応器ヘッド3内に存在している。しかしながら代替的には、反応器を、反応器ヘッド3においても中部領域7にあるような直径で円筒形に形作ることも可能である。しかしながら、反応器ヘッド3を円錐形に形作ることが好ましい。滴下装置5の位置は、モノマー溶液が供給される最も外側の孔と反応器の壁との間に、なおも十分に大きな間隔があり、液滴が壁に衝突するのが防止されるように選択される。そのために、この間隔は、少なくとも50~1500mmの範囲、好ましくは100~1250mmの範囲、殊に200~750mmの範囲にあることが望ましい。当然のことながら、反応器の壁への距離はより大きくてもよい。しかしながら、このことには、間隔が大きくなるほど、反応器断面の利用性が悪化するという欠点がある。
【0046】
供給箇所13を介して供給される気体のさらに良好な利用性を得るためには、本発明による乱流を増加させる装置31をモノマー溶液の滴下装置5の領域において使用する。乱流を増加させる装置により気体の乱流が増加され、そのため、気体と滴下装置5により生成される液滴とのより良好な混合が実現される。これにより、液滴はより均一に水分を気体に放出することができる。さらに、反応器内で液滴の滞留時間にわたりより均一な温度分布が得られる。ここで、乱流を増加させる装置31により形成された乱流には、矢印33が付されている。
【0047】
乱流を増加させる装置31としては、例えば、バッフルまたはノズル、殊に気体ノズル、気体/液体ノズルもしくは液体ノズルを使用することができる。ここに図示される実施形態において、乱流を増加させる装置31としては、気体ノズル35が用いられる。これらは、
図1に図示される実施形態において、滴下装置5の下方に、好ましくは最大で下方2mに配置されている。気体ノズル35から排出される気体噴流37により、気体供給箇所13を介して供給される気体が加速される。同時に、気体ノズル35から排出される気体は減速され、それにより、気体噴流37は偏向および変形され、さらなる乱流が誘導される。ここで、気体供給箇所13により供給される気体と気体ノズル35により供給される気体との間の速度差は、生成される乱流が摩擦の発生により散逸しないように、大きすぎないよう注意すべきである。
【0048】
下部領域9は流動層11で終わり、この層へと、落下の間にモノマー液滴から生成したポリマー粒子が落下する。流動層では、所望の生成物への後反応が起こる。本発明によると、モノマー溶液が滴下される最も外側の孔は、垂直に下方に向かって落ちる液滴が流動層11に落ちるように位置決めされている。このことは例えば、流動層の直径が少なくとも、滴下装置5における最も外側の孔を結んだ線により囲まれる面の直径と同じ大きさであることによって実現され、ここで流動層の断面と、最も外側の孔を結んだ線により形成される面とは、同じ形を有し、2つの面の中心点は、垂直投影図で同じ位置に重なって存在している。流動層11の位置に対して最も外側の孔の位置は、
図1において点線15により図示されている。
【0049】
さらに、液滴が中部領域7においても反応器の壁にぶつかるのを回避するために、滴下装置と気体取出し箇所との中間点の高さにおける流動領域の直径は、流動層の水力直径より少なくとも10%大きい。
【0050】
ここで反応器1は、あらゆる任意の断面形を有することができる。しかしながら、好ましくは、反応器1の断面は円形である。この場合、流動領域の直径は反応器1の直径に相応する。
【0051】
ここで図示する実施形態において、流動層11の上方では、反応器1の直径は増大し、そのため、反応器1は、下部領域9において下から上に円錐形に広がる。このことには、反応器1内で生成したポリマー粒子が壁にぶつかり、壁上で下方に向かって流動層11に滑り込めるという利点がある。さらに、固着物を回避するために、ここでは図示されていないノッカーを備えておくことができ、これらのノッカーにより、反応器の壁が振動し、それによって、付着しているポリマー粒子が剥がれ、流動層11に滑り込む。
【0052】
流動層11を稼動させるための気体供給のために、流動層11の下方にガス分配器17が存在しており、これによって気体が流動層11に吹き込まれる。
【0053】
気体は上からも下からも反応器1に導入されるため、適切な位置で気体を反応器1から取り出す必要がある。そのために、一定の断面を有する中部領域7から、円錐形に下から上に広がる下部領域9への移行部において、少なくとも1つの気体取出し箇所19が配置されている。ここで円筒形中部領域7は、その壁と一緒に、上に向かって円錐形に広がる下部領域9に入り込み、ここで、この位置において円錐形下部領域9の直径は、中部領域7の直径より大きい。こうすることで、中部領域7の壁を取り巻く環状チャンバ21が形成され、気体はこの中に流れ込み、環状チャンバ21と接続している少なくとも1つの気体取出し箇所19を通して抜き取ることができる。
【0054】
流動層11の後反応したポリマー粒子は、流動層の領域にある生成物取出し箇所23を介して取り出される。
【0055】
図2は、代替的な実施形態における液滴重合用の反応器を示す。
【0056】
図1に図示される液滴重合用の反応器1とは異なり、
図2に図示される反応器1においては、乱流を増加させる装置31は、モノマー溶液の滴下装置5の上方に配置されている。
図2においても、例えば、乱流を増加させる気体ノズル35が図示されている。気体ノズル35から排出される気体噴流37により、気体流における乱流が増加し、ここで、気体ノズル35が滴下装置5の上方に配置されている場合、気体ノズル35を滴下装置5の下方に有する
図1に示される変形形態の場合よりも、より高い位置において乱流の増加が開始する。よって、乱流を調整する際に、滴下装置5から出るモノマー液滴が滴下装置5にぶつかって堆積物を形成しないように注意する必要がある。殊に気体ノズル35を使用する場合、乱流は、気体ノズル35から出る気体の速度を変えることにより容易に調整可能である。
【0057】
殊に乱流を増加させる装置31が滴下装置5の下方に配置されている場合、乱流を増加させる装置31に堆積物が形成されることを防止するために、乱流を増加させる装置31の個別のバッフルまたはノズルは、これらが滴下装置5の個別の滴下器ユニットの間に配置されるように位置決めされる。これは例示的には、乱流を増加させる装置31としての気体ノズル35の使用および滴下装置5の滴下器ユニットとしての滴下器通路25の使用について、
図3~6に図示されている。
【0058】
図3では、半径方向に延びる様々な長さの滴下器通路の配置が図示されている。
【0059】
第一の実施形態において、滴下装置は、半径方向に延びる通路25を有する。ここで、通路25の部分は反応器1の中心まで突き出ている。通路24におけるさらなる部分はそれよりも反応器1内に突き出してはいない。反応器1の中心まで半径方向に延びて突き出た通路25の周方向間隔が大きい反応器外部領域において殊に、付加的に通路24が備えられており、これらを通して、モノマー溶液を反応器1に滴下投入することができる。これにより、反応器断面全体にわたり液滴を均一に分布させることが可能になる。
【0060】
乱流を増加させるために使用される個別の気体ノズル35は、通路24、25の間に位置決めされている。ここで、反応器内における均一な乱流、ひいては均一な気体流のために、気体ノズル35は反応器断面にわたり均一に分布している。
【0061】
通路25の相応する放射状の配置は、
図4に図示されている。
【0062】
図3に図示される実施形態および
図4に図示される実施形態のどちらにおいても、通路24、25を水平面に対して角度βで傾けることが可能である。その結果、通路24、25が反応器の中心に向かって上っていると殊に有利である。このように傾けることで、反応器1内で均一な液滴分布が得られ、液滴と反応器壁との予定よりも早い接触が回避される。
【0063】
図5および6は、通路のさらなる可能な配置を示す。ただしこれらにおいては、水平面に対する角度βでの配置を実現することは非常に難しく、そのため、この場合、通路25は水平に延びることが好ましい。
図5は、長方形に分割された配置を示し、この配置では、個別の通路25は、それぞれ互いに90°の角度で配置されており、そのため、通路の交点27により、それぞれ長方形、好ましくは正方形が形成される。
【0064】
図6は、三角形に分割された配置を示す。ここで通路25は、それぞれ互いに60°の角度で配置されており、そのため、通路25の交点27により、それぞれ辺の等しい三角形が形成される。ただしこれは、それぞれ平行に延びる通路が常に等しい大きさの間隔を有することをさらに条件とする。
【0065】
滴下器ユニットとして使用される通路25の配置にかかわらず、バッフルまたはノズル、例えば気体ノズル35は、滴下器ユニットの間に位置決めされて、反応器断面にわたり均一に分布している。ここで長方形の分割または三角形の分割の場合、バッフルまたはノズルの位置は、通路25により形成される長方形または三角形の中心点にそれぞれあることが好ましい。
【0066】
ここで、必要な気体および/または液体供給を、
図3および4に図示されているように通路24、25の間に延在する管路39、または
図5または6に図示されているように通路25の上方に延在する管路39を介して行い、滴下装置5内で生成された液滴が管路39に落下してそこで堆積物を形成することを防止する。
【0067】
当然のことながら、ここに図示される実施形態の代わりに、平行に配置された通路の間の間隔が変わるように、または平行に配置された通路の間の間隔がそれぞれ等しい大きさであるように、また様々な方向に延びる平行に配置された通路の間の間隔が異なるように、通路を配置することも可能である。さらに、通路を互いに任意の別の角度で配置することも可能である。
【0068】
しかしながら、殊に反応器断面が円形である場合、
図3および4に図示されている配置が好ましい。しかしながらここで、通路の数は、反応器の周囲長に応じて変わってもよい。さらに、
図3に示されているように、通路が異なる長さで反応器1内へと突き出るように、通路を異なる長さで形作ることが可能である。しかしながらここで、回転対称配置が常に好ましい。
【0069】
モノマー溶液が反応器へと滴下される孔が形成されていて、モノマー溶液を供給するための通路が下面で終わっている滴下器プレート26の位置は、
図3~6において網掛けされた面により示されている。
【0070】
本発明によると、通路24、25の数は、最も外側の孔に沿った線の周囲長により画定される面積に対する、反応器内における通路24、25または滴下器ヘッドにより覆われた面積の比率が50%未満になるように選択される。これにより、気体が通路24、25を十分に流れ去ることが可能になること、および気体と通路24、25を出る液滴との十分な接触が実現されることが保証される。
【0071】
気体流内に増加した乱流を生成するためのさらなる可能性は、
図7に図示されている。ここでは、
図1~6における実施形態とは異なり、気体供給箇所13は、増加した乱流が生成されるように形作られている。そのために、気体供給箇所13は少なくとも1つの孔付き板41を含み、これを通して気体が導かれる。ここで孔付き板は、5~200cm、好ましくは10~100cmの直径の孔を有する。ここで、複数の孔付き板が互いに重なり合って配置されており、かつ気体の流れ方向で最後の孔付き板が、先に記載のように、5~200cmの直径の孔を少なくとも有すると特に有利である。ここで孔付き板は、個別の孔付き板の孔が互いに正確に重ならないように配置されることが好ましい。これは、互いに上下に重なり合った孔の中心点が1つの垂直線上に位置しないことを意味する。
【0072】
孔の形状は、任意で選択されてもよい。しかしながら、円形の孔が好ましい。
【0073】
増加した乱流が生成されるように気体供給箇所13が形作られる場合、気体流は、すでに滴下装置5の上方で乱流33を有し、これにより、滴下装置5内で生成された液滴が反応器断面にわたり均質に分布する。ただし、乱流の増加は局所的に制限されるべきであり、好ましくは、滴下器ユニットの領域内または下方にのみ生じるべきである。それにより、乾燥ガスと液滴導入されたモノマー溶液との混合の望ましい改善が保証され、液滴が反応器断面にわたり均質に分布し、反応器壁における堆積物の形成のような不所望な効果は起こらない。
【0074】
乱流を増加させる装置の好ましい実施形態は、
図8に図示されている。
【0075】
気体ノズル35が下方に向けられた
図1および2に図示される乱流を増加させる装置とは異なり、
図8において、気体ノズル35は、上方に向かって垂直に向けられている。したがって、気体供給箇所13を介して供給される乾燥ガスの流れ方向とは反対に向けられた気体噴流37が、気体ノズル35からそれぞれ出る。気体が乾燥ガスの流れ方向とは反対に気体ノズル35から排出されることにより、乱流33は滴下装置5の領域で生成される。乾燥ガスが主な気体流であるため、気体流全体は下方に向けられており、乾燥ガス流は、乾燥ガスの流れ方向において、滴下装置5を流れて通過する際にも乱流のままである。気体ノズル35を上方に垂直に向けることにより、流動乱流が、滴下装置5のさらに上流で誘導される。これにより、乾燥ガス流における流動乱流を滴下装置5までより良好に横向きに分布させることができ、したがって、効果的かつ均一に、滴下装置5から排出されるモノマー溶液に影響を与えることもできる。
【0076】
滴下器ユニットの配置にかかわらず、乱流を増加させる装置31のバッフルまたはノズルは、常に液滴がバッフルまたはノズルに落下できないように位置決めされる。さらに、バッフルまたはノズルは、反応器断面にわたり均一に分布されており、そのため、均一な気体流および等しい乱流が反応器断面全体にわたり得られ、それにより、均一な製品ができあがる。
【0077】
実施例
以下の例は、気体流における乱流生成を伴うおよび伴わない、液滴重合反応器の稼働の比較を示す。比較のために、数値での流動シミュレーションを用いて計算により求めた結果を引用した。比較において2つの場合を観察する:
(1) 液滴重合用の反応器を、
図1に図示されているように、乱流を増加させる気体ノズルを16個用いて稼働させ、ここで気体ノズルは、3.8mおよび5.8mの直径をそれぞれ有する2つの理論上の同心円において周囲長にわたり均一に分布しており、滴下器通路に対して対称に配置されており、同心円のそれぞれに8つの気体ノズルが位置決めされている。そのために、
図4に図示される実施形態に相応して放射状に配置された8つの滴下器通路を備える。ノズルすべてを通る気体体積流は、合計7500Nm
3/hである。ノズルは、開口部の直径が45mmである。直径が一定である反応器の中部における直径は、10.3mである。滴下器ユニットの高さにおける反応器の直径は、7.2mである。気体供給箇所13を介して施与される気体体積流は、175000Nm
3/hである。
【0078】
(2) 最初の場合と同じ条件下で液滴重合反応器を稼働させるが、乱流ノズルおよびそれにより供給されるさらなる気体流を用いない。
【0079】
図9は、計算した場合の双方について、粒子滞留時間に対する粒子温度の標準偏差のプロファイルを示し、ここで、乱流を増加させる気体ノズルを用いた第一の場合についてのプロファイルは、破線で図示されており、乱流の増加なしの第二の場合についてのプロファイルは、実線で図示されている。そのために、横軸に粒子滞留時間が秒で図示されており、縦軸に標準偏差が図示されている。標準偏差が大きいほど、粒子が不均等に加熱される。乱流ノズルを用いた稼働の場合、0~6秒の滞留時間範囲において、標準偏差は、乱流ノズルなしの場合よりも5Kまで低い。ここで6秒の滞留時間は、粒子が反応器の下端部にある流動層に到達するのに平均的に必要とする時間に相当する。
【0080】
図10は、粒子滞留時間に応じた、粒子をその軌道に沿って囲む気体の気体温度を示す。ここでも、粒子滞留時間は秒で横軸に図示されている。縦軸は、粒子を囲む気体の温度を℃で示す。ここでも、乱流を増加させる気体ノズルを用いた第一の場合は、破線で図示されており、さらなる乱流の増加なしの第二の場合は、実線で図示されている。乱流を増加させる気体ノズルを用いて稼働させる場合、気体温度はより速く低下し、このことは、粒子が平均的により速く加熱されることを意味する。粒子温度の標準偏差と、粒子をその軌道に沿って囲む気体の気体温度のどちらも、乱流を増加させる気体ノズルを用いた稼働での粒子の乾燥が、より均一かつ速く行われることを示し、これにより、粒子が乾燥状態で反応器の下端部の流動床に到達し、よって、より低い凝集化傾向を有することに繋がる。
【符号の説明】
【0081】
1 液滴重合用の反応器
3 反応器ヘッド
5 滴下装置
7 中部領域
9 下部領域
11 流動層
12 モノマー供給部
13 気体供給箇所
15 流動層を基準とした最も外側の孔の位置
17 ガス分配器
19 気体取出し箇所
21 環状チャンバ
23 生成物取出し箇所
24 通路
25 通路
26 滴下器プレート
27 通路の交点
29 反応器軸
31 乱流を増加させる装置
33 乱流
35 気体ノズル
37 気体噴流
39 管路
41 孔付き板