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特許7143445マーク検出システムにおける測定ビームの所望の波長帯域幅を決定するための帯域幅計算システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】マーク検出システムにおける測定ビームの所望の波長帯域幅を決定するための帯域幅計算システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20220920BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 521
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020565403
(86)(22)【出願日】2019-05-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019061174
(87)【国際公開番号】W WO2019223976
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】18173977.2
(32)【優先日】2018-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ジャ
(72)【発明者】
【氏名】クリンクハメル、ヤコブ、フレドリク、フリソ
(72)【発明者】
【氏名】リ、フア
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-217846(JP,A)
【文献】特開2005-167139(JP,A)
【文献】特開2007-294749(JP,A)
【文献】特開2010-232656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーク検出システムにおける測定ビームの所望の波長帯域幅を決定するための帯域幅計算システムであって、
マークの深さを表すマーク深さ情報を含むマーク形状情報に基づいて、前記所望の波長帯域幅を決定するように構成された処理ユニットを備え
前記処理ユニットは、
前記マーク深さ情報に基づいて、マーク検出誤差関数の周期および/または分散パラメータを決定し、前記マーク検出誤差関数は前記マークの実際の位置と前記マークの決定された位置との間の差を前記測定ビームの波長の関数として表し、
前記周期および/または前記分散パラメータにそれぞれ基づいて、前記所望の波長帯域幅を決定するように構成される、帯域幅計算システム。
【請求項2】
前記処理ユニットは、前記マーク形状情報に基づいて前記測定ビームの成分を含む反射ビームの反射光信号強度を決定し、前記反射光信号強度に基づいて前記所望の波長帯域幅を決定するように構成される、請求項1に記載の帯域幅計算システム。
【請求項3】
マーク検出システムにおける測定ビームの所望の波長帯域幅を決定するための帯域幅計算システムであって、
マークの深さを表すマーク深さ情報を含むマーク形状情報に基づいて、前記所望の波長帯域幅を決定するように構成された処理ユニットを備え、
オブジェクトは基板であり、
前記マーク深さ情報は、前記測定ビームが前記マークの上面から底部反射インタフェースまで移動するように構成されている距離を表す、
域幅計算システム。
【請求項4】
前記距離に、前記測定ビームが前記上面から前記底部反射インタフェースまで移動する材料の屈折率を掛けたものが、1μmより大きい、請求項に記載の帯域幅計算システム。
【請求項5】
オブジェクト上またはオブジェクト内に存在するマークを検出するためのマーク検出システムであって、
請求項1からのいずれかに記載の帯域幅計算システムと、
放射源を収容するように構成された放射源ホルダと、前記放射源を制御するように構成された制御ユニットとを含む放射ユニットであって、前記放射源は前記所望の波長帯域幅に基づいて選択された幅を有する波長帯域幅の放射を含む測定ビームを前記マークに向かって放出するように構成されている、放射ユニットと、
検出ユニットであって、
i.前記マークによって反射される前記測定ビームの成分を含む反射ビームを検出するように構成された検出器と、
ii.前記検出器によって検出された前記反射ビームに基づいて前記マークの位置を決定するように構成された処理ユニットと、を備える検出ユニットと、
を備える、マーク検出システム。
【請求項6】
放射源をさらに備え、
前記測定ビームの波長帯域幅の選択された幅は、10nmから100nmの間、任意選択で15nmから80nmの間、20nmから70nmの間、20nmから40nmの間、または35nmから55nmの間である、
請求項に記載のマーク検出システム。
【請求項7】
オブジェクト上またはオブジェクト内に存在するマークを検出するためのマーク検出システムであって、
i.放射源ホルダと、
ii.前記放射源ホルダ内に配置された放射源であって、選択された幅の波長帯域幅の放射を含む測定ビームを前記マークに向かって放出するように構成された放射源と、
iii.前記放射源を制御するように構成された制御ユニットと、
を備える放射ユニットと、
i.前記マークによって反射される前記測定ビームの成分を含む反射ビームを検出するように構成された検出器と、
ii.前記検出器によって検出された前記反射ビームに基づいて、前記マークの位置を決定するように構成された処理ユニットと、
を備える検出ユニットと、
を備え、
前記波長帯域幅の選択された幅は、10nmから100nmの間、任意選択で15nmから80nmの間、20nmから70nmの間、20nmから40nmの間、または35nmから55nmの間であり、
前記検出ユニットの前記処理ユニットは、前記反射ビームと参照ビームとの間の位相差または正と負の次数の反射ビーム間の位相差に基づいて、前記マークの位置を決定するように構成される、マーク検出システム。
【請求項8】
前記放射ユニットは、複数の放射源ホルダと、その中に配置されるように構成された複数の放射源とを備え、各放射源は、中心波長を含む波長帯域幅の放射を含む測定ビームを前記マークに向かって放出するように構成され、
前記複数の放射源の波長帯域幅は、異なる中心波長および/または異なる幅を含み、
前記検出ユニットの前記処理ユニットはさらに、所望の波長帯域幅に基づいて前記複数の放射源のうちの1つを選択するように構成され、
前記放射ユニットの前記制御ユニットは、選択された放射源を制御して前記測定ビームを放出するように構成される、
請求項に記載のマーク検出システム。
【請求項9】
マーク検出システムにおける測定ビームの所望の波長帯域幅を決定する方法であって、 マークの深さを表すマーク深さ情報を含むマーク形状情報に基づいて前記所望の波長帯域幅を決定することと、
前記マーク深さ情報に基づいてマーク検出誤差関数の周期および/または分散パラメータを決定することであって、前記マーク検出誤差関数は、前記マークの実際の位置と前記マークの決定された位置との間の差を前記測定ビームの波長の関数として表すことと、
前記周期および/または前記分散パラメータにそれぞれ基づいて、前記所望の波長帯域幅を決定することと、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2018年5月24日に出願され、その全体が参照により本書に援用される欧州出願第18173977.2号の優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、マーク検出の技術分野に関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを付与するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用することができる。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)のパターン(「設計レイアウト」または「設計」とも呼ばれる)を、基板(例えばウェハ)上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
半導体製造プロセスが進歩し続けるにつれて、回路素子の寸法は継続的に縮小され、デバイスあたりのトランジスタなどの機能要素の量は、一般に「ムーアの法則」と呼ばれる傾向に従って、数十年にわたって着実に増加している。ムーアの法則に追いつくために、半導体業界はますます小さなフィーチャを作成できる技術を追いかけている。基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、基板上にパターン付与されるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている代表的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm、13.5nmである。4nm~20nmの範囲内、例えば6.7nmまたは13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置を用いて、例えば波長193nmの放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
複雑なデバイスの製造において、典型的には、多くのリソグラフィパターニングステップが実行され、それにより、基板上の連続する層に機能的フィーチャを形成する。したがって、リソグラフィ装置の性能の重要な側面は、(同じ装置または異なるリソグラフィ装置によって)前の層に配置されたフィーチャに関連して、適用されたパターンを正しく正確に配置する能力である。この目的のために、基板には1つ以上のマークのセットが提供される。各マークは、位置センサ(通常は光学位置センサ)を使用して後で位置を測定できる構造である。位置センサは「アライメントセンサ」とも呼ばれ、マークは「アライメントマーク」とも呼ばれる。
【0006】
リソグラフィ装置は、基板上または基板内に提供されるアライメントマークの位置を正確に測定することができる1つ以上(例えば、複数)のアライメントセンサを含むことができる。アライメント(または位置)センサは、回折や干渉などの光学現象を使用して、基板上に形成されたアライメントマークから位置情報を取得することができる。現在のリソグラフィ装置で使用されているアライメントセンサの例は、米国特許第6961116号に記載されている自己参照干渉計に基づいている。例えば米国特許出願公開第2015261097号に開示されているように、位置センサのさまざまな拡張と変更が開発されている。これらすべての文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
マーク、またはアライメントマークは、基板上に設けられる層上または層内に形成されるか、または基板内に(直接)形成される一連のバーを含み得る。バーは規則的な間隔で配置され、格子ラインとして機能するため、マークはよく知られた空間周期(ピッチ)を持つ回折格子と見なすことができる。これらの格子ラインの配置に応じて、マークは、X軸に沿った位置またはY軸(X軸に実質的に垂直に方向付けられている)に沿った位置の測定を可能にするように設計され得る。X軸とY軸の両方に対して+45度および/または-45度に配置されたバーで構成されるマークにより、参照により組み込まれる米国特許出願公開第2009/195768号に記載されている技術を使用して、組み合わされたX軸およびY軸測定が可能となる。
【0008】
アライメントセンサは、各マークを放射のスポットで光学的にスキャンして、正弦波などの周期的に変化する信号を取得する。この信号の位相を分析して、マークの位置、したがって、リソグラフィ装置の基準座標系(基準フレーム)に対して固定されているアライメントセンサに対する基板の位置を決定する。異なる(粗いおよび細かい)マーク寸法に関連して、いわゆる粗いマークおよび細かいマークを設けることができ、それにより、アライメントセンサは、周期信号の異なる周期、ならびに周期内の正確な位置(位相)を区別できる。異なるピッチのマークもこの目的に使用できる。
【0009】
マークの位置を測定することはまた、例えばウェハグリッドの形態で、マークが設けられる基板の変形に関する情報を提供し得る。基板の変形は、例えば、基板を基板テーブルに静電的にクランプすること、および/または基板が放射に曝されたときの基板の加熱によって起こり得る。
【0010】
アライメントマークの位置の決定における不正確さまたはエラーは、基板上に投影されたパターンの不正確さにつながる可能性がある。さらに、満足のいく測定値が得られない場合、アライメントマークが不合格となることがある。単一の基板において非常に多くのアライメントマークが不合格となると、基板が不合格となり、基板の製造が遅くなり、歩留まりが低下する。いわゆる3D-NANDプロセスやファーバックエンドオブライン(FBEOL:Far-Back-End-Of-Line)層などのリソグラフィの最近の開発により、より大きな積み重ね高さを有する基板、例えばより多くの層またはより厚い層を有する基板、がもたらされた。これらの基板の場合、より大きなマーク深さを有するマークが発生する可能性がある。特に、マーク深さが大きい基板では、例えば層の厚さおよび/またはマークの深さの変動のために測定の予測が困難になるアライメントマークの変動が大きくなるだけでなく、より多くの場合、アライメントマークの位置の決定にマークの変形によるエラーが含まれることが分かっている。このような基板の場合、マークの深さ、マークの材質、およびマークの形状は、通常、アライメントプロセスを最適化するように設計されるのではなく、基板を作成するプロセスによって決定される。
【0011】
基板の2つの層からのターゲット間のオーバーレイの測定に関連する、参照により本明細書に組み込まれるWO18010979A1は、よりロバストで信頼性の高い測定を達成するために測定ビームの特定の波長を選択することを提案する。
【0012】
ニコロ・モルガナ等の「ウェハアライメントの品質と堅牢性を調査するための厳密なウェハトポグラフィシミュレーション」、Proc.SPIE 9426、Optical Microlithography XXVIII、94260S(2015年3月26日)は、位相差法ではなくコントラスト法を使用してマークの位置を決定するときに、プロセス変動に対する測定の感度を下げるための広帯域光測定ビームを提案している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、マークの位置を決定するための改善を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的は、マーク検出システムにおける測定ビームの所望の波長帯域幅を決定するための帯域幅計算システムで達成される。帯域幅計算システムは、マーク形状情報に基づいて、所望の波長帯域幅を決定するように構成された処理ユニットを備える。
【0015】
本発明によれば、測定ビームの所望の波長帯域幅は、マークの形状を考慮に入れて計算される。本発明者らは、測定ビームの波長帯域幅をマークの形状にアジャストすることにより、マークがより正確に決定されることを見出した。マークの形状情報は、例えば、マークの深さを表すマーク深さ情報、および/またはマークで使用される材料または前記材料の屈折率を表すマーク材料情報、および/または異なる反射ビームが移動する光路の差を表す光路差情報を含み、マークによって反射された測定ビームの成分、および/またはマークの製造プロセスにおける許容誤差に従ってマークの非対称性またはマークの起こり得る非対称性を表すマーク非対称性情報、および/またはマークの(特にマークの上の)材料、材料および/または厚さおよび/または層数を表すオブジェクト情報を含む。
【0016】
一実施形態では、マーク形状情報は、マークの深さを表すマーク深さ情報を含む。この実施形態によれば、測定ビームの所望の波長帯域幅は、マークの深さを考慮して計算される。本発明者らは、測定ビームの波長帯域幅をマークの深さにアジャストすることにより、マークがより正確に決定されることを見出した。
【0017】
一実施形態では、処理ユニットは、前記マーク深さ情報に基づいて、マーク検出誤差関数の周期および/または分散パラメータを決定するように構成される。前記マーク検出誤差関数は、マークの実際の位置とマークの決定された位置との間の差を測定ビームの波長の関数として表す。処理ユニットは、周期および/または分散パラメータにそれぞれ基づいて、所望の波長帯域幅を決定するよう構成される。マーク検出誤差関数のこれらの特性を考慮に入れることにより、マーク検出誤差を低減できるのが有利である。
【0018】
一実施形態では、処理ユニットは、前記マーク形状情報に基づいて、測定ビームの成分を含む反射ビームの反射光信号強度を決定し、該反射光信号強度に基づいて所望の波長帯域幅を決定するように構成される。適切な波長帯域幅を選択することにより、実質的にすべての測定値が反射ビームを検出するように配置された検出器のセンサの閾値を満たすことを保証でき、それによってマークの不合格を回避する。
【0019】
一実施形態では、帯域幅計算システムは、所望の波長帯域幅に関してオペレータに通知するように構成されたオペレータ情報モジュールをさらに備える。これにより、オペレータはそれに応じて、例えば適切な放射源を選択することによって、測定ビームを配置できる。
【0020】
一実施形態では、帯域幅計算システムは、マーク形状情報を受信するように構成された入力端子をさらに備える。そのようなものとして、マーク深さ情報は、例えば、リソグラフィプロセスの入力モジュールまたは別の処理ユニットから受信できる。
【0021】
一実施形態では、オブジェクトは基板であり、マーク深さ情報は、測定ビームがマークの上面から底部反射インタフェース(界面)まで移動するように構成された距離を表す。本発明は、そのような用途に特に有利である。さらなる実施形態では、測定ビームが前記上面から底部反射インタフェースまで移動する材料の屈折率を乗じた前記距離は、1μmより大きい。本発明者らは、そのような基板について特に、本発明で少なくとも低減することができるマーク検出誤差が発生する可能性があることを見出した。
【0022】
本発明はさらに、オブジェクト上またはオブジェクト内(例えば、1つまたは複数の層によって覆われる)に存在するマークを検出するためのマーク検出システムに関する。マーク検出システムは、本発明に係る帯域幅計算システムと、放射ユニットとを備える。放射ユニットは、放射源を収容するように構成された放射源ホルダと、前記放射源を制御するように構成された制御ユニットとを含む。前記放射源は、所望の波長帯域幅に基づいて選択された幅を有する波長帯域幅の放射を含む測定ビームをマークに向かって放出するように構成されている。マーク検出システムはさらに、マークによって反射される測定ビームの成分を含む反射ビームを検出するように構成された検出器と、検出器によって検出された反射ビームに基づいてマークの位置を決定するように構成された処理ユニットと、を備える検出ユニットとを備える。したがって、本発明は、測定ビームの波長帯域幅の選択された幅が、帯域幅計算システムによって決定される所望の波長帯域幅に基づくマーク検出システムを提供する。そのため、マーク検出誤差が減少し、および/またはより予測可能になる。
【0023】
一実施形態では、マーク検出システムは、放射源をさらに備える。測定ビームの波長帯域幅の選択された幅は、10nmから100nmの間、任意選択で15nmから80nmの間、例えば20nmから70nmの間、例えば20nmから40nmの間、または35nmから55nmの間である。そのような波長帯域幅は、現在使用されている基板のための従来の放射源よりも改善を提供することが見出された。
【0024】
本発明はさらに、オブジェクト上またはオブジェクト内に存在するマークを検出するためのマーク検出システムに関する。このシステムは、放射源ホルダと、放射源ホルダ内に配置された放射源であって、選択された幅の波長帯域幅の放射を含む測定ビームをマークに向かって放出するように構成された放射源と、前記放射源を制御するように構成された制御ユニットとを含む放射ユニットを備える。マーク検出システムは、マークによって反射される測定ビームの成分を含む反射ビームを検出するように構成された検出器と、検出器によって検出された反射ビームに基づいて、マークの位置を決定するように構成された処理ユニットと含む検出ユニットをさらに備える。前記波長帯域幅の選択された幅は、10nmから100nmの間、任意選択で15nmから80nmの間、例えば20nmから70nmの間、例えば20nmから40nmの間、または35nmから55nmの間である。そのような波長帯域幅は、現在使用されている基板の従来の放射源よりも改善を提供することが見出された。
【0025】
本発明に係るマーク検出システムの一実施形態では、放射源は、広帯域ビームを放出するように構成される。放射ユニットは、前記広帯域ビームの光路に配置され、広帯域ビームを測定ビームに変換するように構成されたフィルタをさらに備える。ここで、測定ビームの波長帯域幅の選択された幅は、広帯域ビームの波長帯域幅の幅よりも小さい。有利なことに、放射源は、広帯域放射(例えば白色光)を放出するように構成された標準的な放射源とすることができる。フィルタは、測定ビームに、所望の幅に基づいて選択された幅の波長帯域幅を提供するために用いられる。
【0026】
マーク検出システムが帯域幅計算システムも備えるさらなる実施形態では、フィルタは、測定ビームの波長帯域幅の選択された幅が適応可能であるように調整可能に構成される。帯域幅計算システムの処理ユニットは、さらに、所望の波長帯域幅に基づいてフィルタの動作設定を決定するように構成される。放射ユニットの制御ユニットは、前記動作設定に従ってフィルタを制御するように構成される。有利には、単一の放射源、例えば、広帯域放射を放出し、広範囲の測定ビーム、したがって広範囲のマークに使用できる。
【0027】
一実施形態では、マーク検出システムは、放射源ホルダ内に配置されるように適合された複数の放射源をさらに備える。各放射源は、異なる幅の波長帯域幅で放射を放出するように構成される。そのため、最も適切な放射源を使用することができる。
【0028】
一実施形態では、放射ユニットは、複数の放射源ホルダおよびその中に配置されるように構成された複数の放射源を備える。
各放射源は、中心波長を含む波長帯域幅の放射を含む測定ビームをマークに向かって放出するように構成される。複数の放射源の波長帯域幅は、異なる中心波長および/または異なる幅を含む。帯域幅計算システムの処理ユニットは、所望の波長帯域幅に基づいて複数の放射源のうちの1つを選択するようにさらに構成される。放射ユニットの制御ユニットは、選択された放射源を制御して測定ビームを放出するように構成される。そのため、最も適切な放射源を使用することができる。
【0029】
一実施形態では、検出ユニットの処理ユニットは、反射ビームと参照ビームとの間の位相差に基づいてマークの位置を決定するように構成される。本発明は、測定の精度がマークの深さによって影響されるので、そのような用途において特に有利であることが見出された。
【0030】
本発明はさらに、少なくとも1つのマークを含むオブジェクトの位置を決定するための位置測定システムに関する。このシステムは、オブジェクトの少なくとも1つのマークを検出するように構成された本発明に係るマーク検出システムと、マーク検出システムによって検出された少なくとも1つのマークに基づいてオブジェクトの位置を決定するように構成された処理ユニットとを備える。本発明による測定ビームの波長帯域幅は、位置の決定の精度を高める。
【0031】
本発明はさらに、少なくとも1つのマークを含む基板上にパターンを投影するように構成された投影システムと、基板を保持するように構成された基板サポートと、基板上の少なくとも1つのマークの位置を決定することによって、基板の位置を決定するように構成された本発明に係る位置測定システムとを備えるリソグラフィ装置に関する。本発明に係る測定ビームの波長帯域幅は、基板の位置の決定の精度を高める。
【0032】
一実施形態では、リソグラフィ装置は、位置測定システムによって決定された基板の位置に基づいて基板サポートの動きを制御するように構成された基板位置決めシステムをさらに備える。本発明による測定ビームの波長帯域幅は、基板の位置の決定の精度を向上させ、従って基板サポートの動きを向上させる。
【0033】
本発明はさらに、マーク検出システムにおける測定ビームの所望の波長帯域幅を決定するための方法に関する。この方法は、マーク形状情報に基づいて所望の波長帯域幅を決定することを含む。本発明によれば、測定ビームの所望の波長帯域幅は、マークの形状を考慮して計算される。本発明者らは、測定ビームの波長帯域幅をマークの深さにアジャストすることにより、マークがより正確に決定されることを見出した。
【0034】
一実施形態では、マーク形状情報は、マークの深さを表すマーク深さ情報を含む。マークの深さで所望の波長帯域幅を決定することは特に有利である。
【0035】
一実施形態では、この方法は、前記マーク深さ情報に基づいて、マーク検出誤差関数の周期および/または分散パラメータを決定することをさらに含む。前記マーク検出誤差関数は、マークの実際の位置とマークの決定された位置との間の差を測定ビームの波長の関数として表す。この方法はさらに、前記周期および/または前記分散パラメータにそれぞれ基づいて、所望の波長帯域幅を決定することを含む。マーク検出誤差関数のこれらの特性を考慮に入れることにより、マーク検出誤差を低減できるのが有利である。
【0036】
本発明はさらに、オブジェクト上またはオブジェクト内に存在するマークを検出するための方法に関する。この方法は、本発明による方法に従って測定ビームの所望の波長帯域幅を決定することと、測定ビームをマークに向けて放出することを含む。ここで、測定ビームは、所望の波長帯域幅に基づいて選択された幅を有する波長帯域幅の放射を含む。この方法は、マークによって反射される測定ビームの成分を含む反射ビームを検出することと、前記反射ビームに基づいてマークの位置を決定することをさらに含む。帯域幅計算システムによって決定された所望の波長帯域幅に基づいて測定ビームの波長帯域幅の選択された幅を調整することにより、マーク検出誤差が低減され、および/またはより予測可能となる。
【0037】
本発明はさらに、基板上または基板内のマークを検出するための方法に関する。この方法は、本発明による方法に従って測定ビームの所望の波長帯域幅を決定することと、測定ビームをマークに向けて放出することを含む。測定ビームは、所望の波長帯域幅に基づいて選択された幅の波長帯域幅の放射を含む。前記距離は、マーク深さ情報によって表される。任意選択で、測定ビームが移動する材料の屈折率を乗じた前記距離は、1μmより大きい。この方法は、マークによって反射される測定ビームの成分を含む反射ビームを検出することと、前記反射ビームに基づいてマークの位置を決定することをさらに含む。帯域幅計算システムによって決定された所望の波長帯域幅に基づいて測定ビームの波長帯域幅の選択された幅を調整することにより、マーク検出誤差が低減され、および/またはより予測可能となる。
【0038】
一実施形態では、オブジェクト上またはオブジェクト内のマークを検出するための方法、または基板上または基板内のマークを検出するための方法は、所望の波長帯域幅に基づいてフィルタの動作設定を決定することをさらに含む。前記フィルタは、広帯域ビームの光路に配置され、広帯域ビームを測定ビームに変換するように構成される。測定ビームの波長帯域幅の選択された幅は、広帯域ビームの波長帯域幅の幅よりも小さい。この方法は、前記動作設定に従ってフィルタを制御することをさらに含む。有利なことに、放射源は、広帯域放射(例えば白色光)を放出するように構成された標準的な放射源とすることができる。フィルタは、測定ビームに、所望の幅に基づいて選択された幅の波長帯域幅を提供するために用いられる。
【0039】
一実施形態では、オブジェクト上またはオブジェクト内のマークを検出する方法、または基板上または基板内のマークを検出する方法は、所望の波長帯域幅に基づいて複数の放射源のうちの1つを選択し、測定ビームを放出することをさらに含む。複数の放射源の波長帯域幅は、異なる幅を含む。そのため、最も適切な放射源を使用して、選択した幅を有する波長帯域幅で測定ビームを放射する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の実施形態は、添付の図面を参照して、例としてのみ説明され、同様の符号は、同様の構成要素を示す。
図1】リソグラフィ装置の概略図である。
図2】既知のアライメントセンサの実施形態の概略ブロック図である。
図3a】マークの可能な実施形態を示す図である。
図3b】マークの可能な実施形態を示す図である。
図3c】マークの可能な実施形態を示す図である。
図3d】マークの可能な実施形態を示す図である。
図3e図3dに示されているマークの光路差を示す図である。
図4a】測定ビームの波長の関数としてのマーク検出誤差を示す図である。
図4b】形状は似ているが深さが異なるマークの6つの異なるマーク検出誤差関数を示す図である。それぞれが測定ビームの波長の関数としてのマーク検出誤差を表す。
図4c】形状は似ているが非対称性が増しているマークの5つの異なるマーク検出誤差関数を示す。それぞれが測定ビームの波長の関数としてのマーク検出誤差を表す。
図4d】単一の基板上または単一の基板内のマークから発生する可能性のあるいくつかのマーク検出誤差関数の例を示す図である。
図5a】測定ビームの波長帯域幅の幅の関数としてのマーク検出誤差関数の可能性のある値の例を示す図である。
図5b図5aに示されているマーク検出誤差関数の3σ標準偏差を示す図である。
図5c】測定ビームの波長帯域幅の幅の関数としての反射光信号強度の可能性のある値の例を示す図である。
図6】本発明に係る帯域幅計算システムを示す図である。
図7】本発明に係るマーク検出システムおよび位置測定システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書では、「放射」および「ビーム」という用語は、紫外線(例えば、波長が365、248、193、157または126nm)およびEUV(極端紫外線放射、例えば、約5nm~100nmの範囲の波長を有する)を含むすべてのタイプの電磁放射を包含するために使用される。例えばアライメントセンサにおいて、測定ビームに使用される放射は、例えば850nm以上の波長の放射を含む。本明細書で使用される「レチクル」、「マスク」または「パターニングデバイス」という用語は、入射放射ビームに基板の目標部分に作成されるべきパターンに対応するパターン化された断面を与えるために使用できる一般的なパターニングデバイスを指すと広く解釈され得る。「ライトバルブ」という用語もこの文脈で使用できる。標準的なマスク(透過型または反射型、バイナリ、位相シフト、ハイブリッドなど)に加えて、他のこのようなパターニングデバイスの例には、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDアレイが含まれる。
図1は、本発明によって具体化される、および/または本発明による帯域幅計算システム、マーク検出システムおよび/または位置測定システムを含む、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。このリソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射またはEUV放射)を調整するよう構成される照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構築され、特定のパラメータにしたがってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成される第1位置決め装置PMに接続されるマスクサポート(例えばマスクテーブル)MTと;基板(例えばレジストコートされたウェハ)Wを保持するよう構築され、特定のパラメータにしたがって基板サポートを正確に位置決めするよう構成される第2位置決め装置PWに接続される基板サポート(例えばウェハテーブル)WTと;パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば一以上のダイを含む)目標部分Cに投影するよう構成される投影システム(例えば屈折型投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0042】
動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して、放射源SOからビームを受け取る。照明システムILは、放射を方向付け、放射を成形し、および/または放射を制御するための屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電型および/または他の形式の光学素子といった各種光学素子またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。イルミネータILは、パターニングデバイスMAの平面におけるその断面において所望の空間および角度強度分布を有するように放射ビームBを調整するために使用されてもよい。
【0043】
本明細書において使用する「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、および/または液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁光学システムおよび/または静電光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0044】
リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wの間の隙間を埋めるように、基板の少なくとも一部が比較的高屈折率を有する液体(例えば水)により覆われる形式の装置であってよい。これは、液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技術の詳細については、米国特許第6952253号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
リソグラフィ装置LAはまた、2つ以上の基板サポートWT(「デュアルステージ」とも呼ばれる)を有するタイプのものであり得る。そのような「多段ステージ」のマシンでは、基板サポートWTを並行して使用することができ、および/または基板Wのその後の露光の準備におけるステップを、他の基板サポートWT上の基板Wを他の基板W上のパターンを露光するために使用しながら、基板サポートWTの一方に配置された基板W上で実行することができる。
【0046】
基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは、測定ステージを含み得る。測定ステージは、センサおよび/または洗浄装置を保持するように構成されている。センサは、投影システムPSの特性または放射ビームBの特性を測定するように構成され得る。測定ステージは、複数のセンサを保持し得る。洗浄装置は、リソグラフィ装置の一部、例えば、投影システムPSの一部または液浸液を提供するシステムの一部を洗浄するように構成され得る。測定ステージは、基板サポートWTが投影システムPSから離れているときに、投影システムPSの下に移動することができる。
【0047】
動作中、放射ビームBは、マスクサポートMTに保持されるパターニングデバイス、例えばマスクMAに入射し、パターニングデバイスMA上にあるパターン(設計レイアウト)によりパターン化される。マスクMAの通過後、放射ビームBはビームを基板Wの目標部分Cに合焦させる投影システムPSを通過する。第2位置決め装置PWおよび位置測定システムIFの助けを借りて、例えば、放射ビームBの経路上に異なる目標部分Cがフォーカスされ且つ整列された位置に位置するように基板サポートWTを正確に移動できる。同様に、第1位置決め装置PMおよび場合により別の位置センサ(図1には明示されていない)は、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めするために用いることができる。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示の基板アライメントマークP1,P2は専用のターゲット部分を占めるが、それらはターゲット部分の間のスペースに配置されてもよい。基板アライメントマークP1,P2は、これらがターゲット部分Cの間に位置する場合、スクライブレーンアライメントマークとして知られている。
【0048】
本発明を明確にするために、デカルト座標系が使用される。デカルト座標系には、x軸、y軸、z軸の3つの軸がある。3つの軸のそれぞれは、他の2つの軸に直交している。x軸を中心とした回転は、Rx回転と呼ばれる。y軸を中心とした回転は、Ry回転と呼ばれる。z軸を中心とした回転は、Rz回転と呼ばれる。x軸とy軸は水平面を定義し、z軸は垂直方向である。デカルト座標系は本発明を限定するものではなく、説明のためにのみ使用される。代わりに、円筒座標系などの別の座標系を使用して、本発明を明確にすることができる。デカルト座標系の方向は、例えばz軸が水平面に沿った成分を持つというように、異なってもよい。
【0049】
図2は、例えば参照により組み込まれる米国特許第6961116号に記載されている、既知のアライメントセンサASの実施形態の概略ブロック図である。放射源RSOは、狭帯域幅(例えば幅5nm以下)で1つ以上の波長の放射ビームRBを提供する。放射ビームは、迂回光学系(diverting optics)により基板W上のマークAMなどのマーク上に、照明スポットSPとして迂回される。この例では、迂回光学系は、スポットミラーSMと対物レンズOLで構成されている。マークAMが照射される照明スポットSPは、マーク自体の幅よりも直径がわずかに小さくてよい。
【0050】
マークAMによって回折された放射は、(この例では、対物レンズOLを介して)情報伝達ビームIBにコリメートされる。「回折」という用語は、マークからのゼロ次回折(反射と呼ばれる)を含むことを意図している。例えば上記の米国特許第6961116号に開示されたタイプの自己参照干渉計SRIは、ビームIBをそれ自体と干渉させ、その後、ビームは、光検出器PDによって受信される。放射源RSOによって複数の波長が生成される場合に別個のビームを提供するために、追加の光学系(図示せず)が含まれてもよい。光検出器は、単一の要素であってもよく、または必要に応じて、いくつかのピクセルを含んでもよい。光検出器は、センサアレイを含んでもよい。
【0051】
この例ではスポットミラーSMを含む迂回光学系はまた、マークから反射されるゼロ次放射を遮断するのに役立ち、その結果、情報伝達ビームIBは、マークAMからの高次回折放射のみを含む(これは測定に必須ではないが、信号対雑音比を改善する)。
【0052】
強度信号SIは、処理ユニットPUに供給される。ブロックSRIでの光学的処理とユニットPUでの計算処理の組み合わせにより、基準座標系に対する基板上のX位置とY位置の値が出力される。
【0053】
図示されたタイプの単一の測定は、マークの1つのピッチに対応する特定の範囲内のマークの位置を固定するだけである。これと組み合わせて粗い測定技術を使用して、正弦波のどの周期がマークされた位置を含む周期であるかを識別する。さらに高い精度および/またはマークの堅調な検出のために、マークが作られる材料、およびマークが設けられる上および/または下の材料に関係なく、より粗いおよび/またはより細かいレベルでの同じプロセスが異なる波長で繰り返される。波長は、同時に処理されるように光学的に多重化および逆多重化することができ、および/またはそれらは、時分割または周波数分割によって多重化することができる。
【0054】
この例では、移動するのは基板Wであるが、アライメントセンサおよびスポットSPは静止したままである。したがって、アライメントセンサは、基板Wの移動方向と反対の方向にマークAMを効果的に走査しながら、基準座標系(基準フレーム)に堅固かつ正確に取り付けることができる。基板Wは、基板サポートへの取り付けおよび基板サポートの動きを制御する基板位置決めシステムによって、この動きにおいて制御される。基板サポート位置センサ(例えば、干渉計)は、基板サポート(図示せず)の位置を測定する。一実施形態では、1つ以上の(アライメント)マークが基板サポート上に設けられる。基板サポート上に設けられたマークの位置の測定は、(例えば、アライメントシステムが接続されているフレームに対して)位置センサによって決定された基板サポートの位置を較正することを可能にする。基板上に設けられたアライメントマークの位置の測定により、基板サポートに対する基板の位置を決定することができる。
【0055】
図3a、図3bおよび図3cはそれぞれマーク101a、101b、101cの可能な実施形態を示している。それぞれ、マークはオブジェクト1上に存在しておいり、概略的に図示されている。しかしながら、例えば図2のアライメントマークAMのように、マークについては多くの実施形態が可能であることに留意されたい。図3a~図3cの実施例において、マーク101a、101b、101cは、不透明材料103および第1透明材料104を含む。マーク101bは、第2透明材料106をさらに含み、マーク101cは、第3透明材料を含む。反射インタフェース(界面)102aは、マーク101a、101b、101cの上面にさらに設けられ、一方、別の反射インタフェース102bは、底部反射インタフェースを規定する。反射インタフェース102a、102bは、例えば、その上の材料とその下の材料の間の大きな屈折率差によって形成される。マーク101a、101b、101cに放出される測定ビーム(図示せず)は、部分的に上面の反射インタフェース102aによって反射され、部分的に底部反射インタフェースの反射インタフェース102bによって反射され、結果として、それぞれがマーク101a、101b、101cで反射された測定ビームの成分を含む異なる反射ビームが生じる。実際には、反射はすべての材料から発生する可能性があるが、図に示されている反射インタフェース102a、102bは、支配的な反射ビームを引き起こすことに留意されたい。さらに、本発明の文脈において、反射は回折を含むことを意図しており、反射ビームは回折ビームを含むことを意図していることに留意されたい。従来、測定ビームは、レーザなどの放射源によって放出され、例えば幅が5nm以下などの狭い波長帯域幅の放射を含む。
【0056】
マーク101a、101b、101cは、位相格子として機能し、マーク101a、101b、101cの位置を決定することができる反射ビームの位相変化を引き起こす。マーク101a、101b、101cの形状(ジオメトリ)および適用された材料の屈折率に基づいて、マークの深さは、上面と底面の反射界面との間の距離として定義することができる。光路差105は、異なる反射ビームが移動する光路長の差を表すように定義することができる。前記光路差105は、例えば、マークの深さにビームが通過する材料(例えば透明材料104)の屈折率を掛けたものとして定義できる。ビームが第2透明材料も通過するマーク101bの場合、光路差は、各材料内を移動した距離の合計にそれぞれの屈折率を掛けたものである。
【0057】
図3dは、マーク101dの別の可能な実施形態を示している。この実施形態では、単一の反射インタフェース102bが、底部反射インタフェースとして設けられている。反射インタフェース102の上且つマークの上面の下、すなわち、図3dに垂直に見られるように、マークの深さに実質的に等しく、異なる屈折率を有する第1透明材料104および第2透明材料106が設けられる。第1透明材料105aを通る光路105aは、前記第1透明材料105aを通過した距離に前記第1透明材料105aの屈折率を掛けたものとして定義することができ、第2透明材料105bを通る光路105bは、前記第2透明材料105bを通過した距離に前記第2透明材料105bの屈折率を掛けたものとして定義することができる。図3eに示されているように、光路差105は、光路105aと光路105bとの間の差として定義することができる。
【0058】
図3a~図3dにおいて、矢印105、105a、105bは、光路105を表し、マークの深さは、これらの矢印105、105a、105bによって示される距離にも一致していることに留意されたい。
【0059】
測定ビームの異なる反射ビーム間の光路差105は、例えば前記反射ビームを検出するように配置された検出器のセンサ(例えば図2の光検出器PD)に到達したときの前記反射間の位相差に基づいて、検出器がマーク検出信号を生成することを可能にする。しかしながら、光路差105が測定ビームの波長に等しい場合、反射インタフェース102bによって反射された反射ビームを反射インタフェース102aによって反射された反射ビームと区別することができず、それによってマーク検出誤差がもたらされる。したがって、マーク検出誤差は、測定ビームの波長に依存する。
【0060】
マーク検出誤差は、マークの形状とマークの変形、例えばマークの非対称性、によってさらに影響を受ける。これは、例えばマークの上面の傾き、マークの2つの側壁間の形状または傾きの違い、マークの底面の傾き、および/または材料の不均一性を含む。このようなマークの変形は、測定ビームと反射ビームに影響を及ぼし、マーク検出誤差に影響を与える。この影響は、マークの深さが増すにつれてより関連する。
【0061】
図4aは、任意のマークおよび任意の検出器に対するマーク検出誤差関数201を示している。前記マーク検出誤差関数201は、マークの実際の位置と、測定ビームの波長λの関数としてのマークの決定された位置との間の差として定義されるマーク検出誤差を表す。測定ビームが主に前記波長λの放射を含む場合、任意の波長λについての前記決定された位置は、検出器が決定するであろうマークの位置として定義される。
【0062】
マーク検出誤差関数201は、測定ビームの波長λの関数としてほぼ周期的な形状を有する。その周期201.1は、光路差に依存し、その長さは、例えば以下の式を使用することにより、おおよそ決定することができる。
【数1】
【0063】
例えば、図4bは、前記マークの製造公差内で、同じマーク非対称性を有するが異なるマーク深さ、したがって異なる光路差を有するマークに対する6つの異なるマーク検出誤差関数201a~201fを示す。示されている例では、マークの深さの変動は公称値の±5%以内である。見てわかるように、波長λの関数としてのマーク検出誤差関数201a~201fの周期的形状は、互いに対してシフトされている。さらに、マークの深さが増すと、上記の式(1)の光路差が大きくなるため、周期の長さが短くなる。
【0064】
マーク検出誤差関数201は、スイング曲線と呼ばれることもあり、マークの製造誤差などの他の要因にさらに依存している。図4cは、前記マークの製造公差内で、同じマーク深さを有するが非対称性が増加しているマークに対する5つの異なるマーク検出誤差関数201g~201kを示している。非対称性が大きくなると、異なる反射ビーム間の位相差が大きくなるため、マーク検出誤差が発生する。前記非対称性は、例えば、エッチングおよび/またはデポジションなどのステップを含むマークの製造プロセスの不正確さにつながる特定の処理ツールまたは技術制限に起因します。非対称性は、例えば、マークの傾斜および/または傾斜した側壁を含み、これらは示された例では、両方とも±1%の範囲内にある。図4cは、マーク検出誤差関数201g~201kの最大振幅が、非対称性が増加するにつれて増加することを示している。しかしながら、波長λの関数としての周期的形状の長さは実質的に同じままである。
【0065】
実際には、基板上の(またはその中の)マークは、製造公差内で互いに異なる場合がある。例えば、さまざまなマーク深さの変化とマークの非対称性の変化の組み合わせにより、さまざまなマーク検出エラー関数が生じる。図4dは、単一の基板上または単一の基板内のマークから生じ得るいくつかのマーク検出誤差関数の例を示している。見てわかるように、測定ビームの任意の波長λのマーク検出誤差は大幅に変動する可能性があり、その結果、誤差が大きくなるだけでなく、誤差が予測不能になる。
【0066】
さらに、満足のいく測定値が得られない場合、マークは不合格となる場合がある。これは、例えば、マーク検出誤差が大きすぎる、反射ビームが十分な放射強度を持たない、または検出器が検出された反射ビーム内で周期波(例えば正弦波)を検出できない、などの結果であり得る。実際には、基板は、複数のマーク(例えば70マークまで)を含み得る。いくつかの実施形態では、基板の位置を正確に決定するためにすべてのマークを検出する必要はないが、不合格となるマークが多すぎると、例えばその位置を正確に決定できないため、基板自体が不合格となる可能性がある。次に、基板をリソグラフィマシンから取り外す必要があり、その結果、時間の損失と歩留まりの低下が発生する。
【0067】
図3a~3dにおいて、マーク101a、101b、101c、101dは、オブジェクト10上、例えば基板上に提供される。オブジェクト10は、マーク101a、101b、101c、101dの上面から距離11上に延びている。前記距離11は、例えばオブジェクト10が基板である場合、例えばオブジェクト10に設けられる層が増えるにつれて増加する。前記層が平坦かつ均一にデポジットされる場合、測定ビームおよび反射ビームへの影響は限定される。しかしながら、例えばマーク101a、101b、101c、101dが、上の層がさらされる表面トポロジーを有する場合、これは、測定ビームおよび/または反射ビームに歪みをもたらし、マーク検出誤差および/または反射光信号強度の変動を引き起こす可能性がある。
【0068】
本発明者らは、測定ビームの波長帯域幅を増加させることにより、マーク検出を改善できることを見出した。前記波長帯域幅により多くの波長の放射を含めることにより、マーク検出誤差を均一にすることができる。
【0069】
図5aは、代表的なオブジェクトにおける(例えば基板)100個のマークに対する測定ビームの波長帯域幅(5、10、23、35、45および55nm)の幅の関数としてのマーク検出誤差関数の可能性のある値の例を示す。マークはそれぞれ、製造公差内でマークの深さとマークの非対称性のランダムに生成された組み合わせを有する。図5bは、波長帯域幅(5、10、23、35、45および55nm)の幅の関数としてのこれらのマーク検出誤差関数の3σ標準偏差211を示す。3σ標準偏差211は、マーク検出誤差関数の主値からの標準偏差の3倍以内のマーク検出誤差関数の可能な変動を表しており、可能性のあるマーク検出誤差の99.7%を含む。図5bは、前記3σ標準偏差211が、波長帯域幅の幅が増加するにつれて、それが実質的に安定するまで最初に急激に減少することを示している。3σ標準偏差211の安定は、示された例では、約45nm~50nmの波長帯域幅で発生している。
【0070】
図5cは、図5aで示したのと同じ100個のマークについて、測定ビームの波長帯域幅(5、10、23、35、45および55nm)の幅の関数としての反射光信号強度の可能性のある値の例を示し、基準マークと比較したパーセンテージとして表されている。反射光信号強度は、前記検出器によって検出された反射ビームに基づいて検出器によって生成された信号の強度を表し、マークによって反射された測定ビームの放射を含む。反射光信号強度は、測定ビームの波長、マーク、特にマークの深さ、およびオブジェクト自体、例えばマークの上の層に依存する。反射光信号強度は、前記反射ビームを正しく検出し、特定のマークが不合格となるのを回避するために、反射ビームを検出する検出器、特に検出器のセンサに依存する閾値を超えなければならない。図5cは、マーク検出誤差関数と同様に、反射光信号強度の可能性のある値が、測定ビームの波長帯域幅の幅が増加するにつれて収束することを示している。例えば、図5cの例で使用するセンサの閾値が25%の場合、狭い波長帯域幅での測定は、センサによって正しく検出できない多くのマークを含むであろう。しかしながら、約35nmの幅の波長帯域幅から、実質的にすべてのマークは、閾値を満たす反射光信号強度を有する。
【0071】
本発明者らはさらに、3σ標準偏差が安定する波長帯域幅の幅が、例えば上記の式(1)を使用して決定できるマーク検出誤差関数の周期の長さにほぼ等しいことを見出した。したがって、測定ビームの波長帯域幅の幅を、前記長さ以上にほぼ等しくなるように選択することが有利である。
【0072】
測定ビームの波長帯域幅の幅は、好ましくは制限されることにさらに留意されたい。より広い波長帯域幅は、例えばレンズ収差を含むセンサ誤差が増大することなどにより、信号により多くのノイズを伴い、反射ビームを検出するセンサにとって不利になる可能性がある。したがって、マークに放射される測定ビームが白色光などの広帯域放射を含むことは好ましくない。
【0073】
図6は、マーク検出システムにおける測定ビームの所望の波長帯域幅を決定するための本発明に係る帯域幅計算システム300を示している。帯域幅計算システム300は、マーク形状(ジオメトリ)情報に基づいて所望の波長帯域幅を決定するように構成された処理ユニット302を備える。
【0074】
マーク形状情報302は、例えば、マークの深さを表すマーク深さ情報、および/またはマークで使用される材料または前記材料の屈折率を表すマーク材料情報、および/または異なる反射ビームが移動する光路の差を表す光路差情報を含み、マークによって反射された測定ビームの成分、および/またはマークの製造プロセスにおける許容誤差に従ってマークの非対称性またはマークの起こり得る非対称性を表すマーク非対称性情報、および/またはマークの(特にマークの上の)材料、材料および/または厚さおよび/または層数を表すオブジェクト情報を含む。上記のように、これらのパラメータはすべてマーク検出誤差に影響を与えるので、これらのパラメータのいずれかに基づいて所望の波長帯域幅を決定することにより、前記マーク検出誤差または少なくともその予測可能性を低減することができる。
【0075】
好ましい実施形態では、マーク形状情報302は、少なくともマーク深さ情報302を含む。マーク検出誤差は、測定ビームの波長帯域幅の幅およびマーク深さに依存するので、本発明は、所望の波長帯域幅を決定することによってマーク検出誤差を低減するための解決策を提供する。
【0076】
一実施形態では、処理ユニット302は、前記マーク深さ情報302に基づいてマーク検出誤差関数の周期を決定し、該周期に基づいて所望の波長帯域幅を決定するように構成される。
【0077】
例えば、処理ユニット310は、上記の式(1)を適用して周期を決定することができる。例えば、前記所望の波長帯域幅の選択された幅は、前記周期の前記長さにほぼ等しくてもよい。例えば、前記所望の波長帯域幅の選択された幅は、前記周期の長さの±20%の範囲内、例えば前記周期の長さの±10%の範囲内にある。上で説明したように、本発明者らは、マーク検出誤差がそのような波長帯域幅で著しく減少することを見出した。
【0078】
一実施形態では、処理ユニットは、前記マーク深さ情報302に基づいてマーク検出誤差関数の分散パラメータを決定し、該分散パラメータに基づいて所望の波長帯域幅を決定するように構成される。分散パラメータは、例えば、標準偏差σまたは標準偏差σの3倍、つまり3σ標準偏差であってよい。上で説明したように、適切な波長帯域幅を選択することによって前記分散パラメータを減少させることにより、最大の可能性のあるマーク検出誤差が減少する。
【0079】
一実施形態では、処理ユニットは、前記マーク形状情報302および/またはマーク深さ情報302に基づいて、測定ビームの成分を含む反射ビームの反射光信号強度を決定し、該反射光信号強度に基づいて所望の波長帯域幅を決定するように構成される。上で説明したように、適切な波長帯域幅を選択することにより、実質的にすべての測定値が検出器のセンサの閾値を満たすことを保証でき、それによってマークの不合格を回避できる。
【0080】
一実施形態では、帯域幅計算システム300は、マーク形状情報302を受信するように構成された入力端子301.2を備える。前記入力端子301.2は、例えば、 入力モジュールに有線または無線で接続されてよい。入力モジュールを介して、マークに関する(例えば形状、製造プロセス、および/またはオブジェクトの製造に関する)入力情報を提供することができ、そこから、例えばマーク深さ情報が導出される。前記入力情報は、例えば、オペレータによって、または例えばデータベースへの接続を介して自動的に提供されてよい。入力端子301.2はまた、例えばオブジェクトに対して実行された測定に関する情報、および/またはオブジェクト自体に関する情報、例えばオブジェクトが基板である場合のオブジェクト上の層の数および/または形状に関する情報を提供する、リソグラフィプロセスの他の部分の1つ以上の処理ユニットに接続することができる。
【0081】
図示の実施形態では、処理ユニット301.2は、入力端子301.2を介してマーク深さ情報302を受信するが、処理ユニット301が、例えば入力端子301.2を介して受信したデータに基づいて、マーク深さ情報302および/または光路差情報、および/またはマーク非対称性情報、および/またはオブジェクト情報自体を決定することも可能であることに留意されたい。
【0082】
一実施形態では、帯域幅計算システム300は、所望の波長帯域幅に関してオペレータに通知するように構成されたオペレータ情報モジュール303を備える。示される例では、処理ユニット302は、所望の波長帯域幅信号301.4をオペレータ情報モジュール303の入力端子303.1に送信するための出力端子301.3を備える。オペレータ情報モジュール303は、例えば、所望の波長帯域幅を表すことができる例えばコンピュータのようなデバイスのスクリーンなどの視覚表示モジュールを備えてもよい。所望の波長帯域幅に基づいて、オペレータは、例えば、測定ビームを放射する適切な放射源を選択できる、または、測定ビームの波長帯域幅を決定するフィルタの適切な設定を選択できる。オペレータ情報モジュール303はまた、リソグラフィプロセスの他の部分のために、他の機能を提供し得ることに留意されたい。
【0083】
一実施形態では、オブジェクトは基板であり、マーク深さ情報は、図3a~図3eを参照して説明したように、測定ビームがマークの上面から下部反射インタフェースまで移動するように構成された距離を表す。さらなる実施形態では、測定ビームが通過する材料の屈折率を掛けた前記距離は、1μmよりも大きく、したがって、例えば光路差は、1μmより大きい。特にそのようなマークについては、マークの深さが増加するとマーク検出誤差が増加するので、本発明は有利であることが見出された。
【0084】
図7は、本発明に係る帯域幅計算システム300を含む、オブジェクト401上またはその中に存在するマーク402を検出するための本発明に係るマーク検出システムを概略的に示す。マーク検出システムは、放射源405を収容するように構成された放射源ホルダ(図示せず)と、前記放射源405を制御するように構成された制御ユニット404とを備える放射ユニット403をさらに備える。放射源405は、所望の波長帯域幅に基づいて選択された幅を有する波長帯域幅の放射を含む測定ビーム406をマーク402に向けて放出するように構成される。マーク検出システムは、マーク402によって反射される測定ビーム406の成分を含む反射ビーム410を検出するように構成された検出器411.1を含む検出ユニット411と、検出器411.1によって検出された反射ビーム410に基づいて、マーク402の位置を決定するように構成された処理ユニット411.2とをさらに備える。
【0085】
上に述べたように、本発明は、測定ビーム406の波長帯域幅の選択された幅が、帯域幅計算システム300によって決定される所望の波長帯域幅に基づくマーク検出システムを提供する。その結果、マーク検出誤差が低減される、および/または、より予測可能となる。
【0086】
示される実施形態では、放射ユニット403の制御ユニット404は、帯域幅計算システム300の処理ユニット301の出力端子301.3から所望の波長帯域幅信号301.4を受信するための入力端子404.3を備える。制御ユニット404は、制御信号404.5を放射源405の入力端子405.1に送信するための出力端子404.4をさらに備える。しかしながら、他の構成が可能である。
【0087】
一実施形態では、マーク検出システムは、放射源をさらに含み、測定ビームの波長帯域幅の選択された幅は、10nmから100nmの間、任意選択で15nmから80nmの間、例えば20nmから70nmの間、例えば20nmから40nmの間、または35nmから55nmの間である。そのような波長帯域幅は、現在使用されている基板のための従来の放射源よりも改善を提供することが見出された。通常、測定ビームの波長帯域幅は中心波長を含み、その周囲に例えばガウス曲線に従って残りの放射が提供されることに留意されたい。例えばここで、帯域幅は半値全幅(FWHM)法に従って決定される。つまり、帯域幅の幅は、放出されたエネルギーまたは光強度が最大値の半分に等しくなる2つの波長値の差によって与えられ、これはたとえば中心波長の周囲で生じる。しかしながら、他の配置も可能であり、例えばここで、例えばフィルタを用いて、波長帯域幅内のすべての波長の放出エネルギーは実質的に等しく、波長帯域幅の外側では実質的にゼロである。
【0088】
示される実施形態では、放射ユニット403は、オプションのフィルタ408を含む。この実施形態では、放射源405は、広帯域ビーム407を放出するように構成される。フィルタ408は、前記広帯域ビーム407の光路に配置され、広帯域ビーム407を測定ビーム406に変換する。測定ビーム406の波長帯域幅の選択された幅は、広帯域ビーム407の波長帯域幅の幅よりも小さい。有利には、放射源405は、広帯域放射(例えば白色光)を放出するよう構成された標準放射源とすることができる。フィルタ408は、測定ビーム406に、所望の幅に基づいて選択された幅の波長帯域幅を提供するために使用される。
【0089】
さらなる実施形態では、フィルタ408は、測定ビーム406の波長帯域幅の選択された幅が適応可能であるように、調整可能に構成される。帯域幅計算システム300の処理ユニット301は、所望の波長帯域幅に基づいてフィルタ408の動作設定を決定するように構成され、放射ユニット403の制御ユニット404は、前記動作設定に従ってフィルタ408を制御するように構成される。この実施形態では、波長帯域幅の選択された幅は、所望の波長帯域幅に基づいてフィルタ408を制御することによって制御される。有利には、単一の放射源405、例えば、広帯域放射を放出し、広範囲の測定ビーム、したがって広範囲のマーク406に使用することができる。図示の実施形態では、制御ユニット404は、制御信号404.2をフィルタ408の入力端子408.1に送信するための出力端子404.1を備える。任意選択で、処理ユニット301はまた、測定ビーム406の所望の中心波長を決定するように構成され、これに基づいて、制御ユニットは、フィルタ408を制御するように構成される。
【0090】
一実施形態では、マーク検出システムは、放射源ホルダ内に配置されるように適合された複数の放射源405を含み、各放射源405は、異なる幅の波長帯域幅で放射を放出するように構成される。この実施形態では、複数の放射源405のうち最も適切なものが、所望の波長帯域幅に基づいて選択され、放射源ホルダ内に配置され、測定ビーム406を放出するために使用される。例えば、オペレータ情報モジュールによって通知されたオペレータは、所望の波長帯域幅に基づいて、放射源ホルダに配置される複数の放射源405のうちの1つを選択することができる。例えば、複数の放射源、例えば、4つ、5つ、6つ、またはそれ以上の放射源は、10nmから100nmの間、任意選択で15nmから80nmの間、例えば20nmから70nmの間、例えば20nmから40nmの間、または35nmから55nmの間の幅を有する波長帯域幅で放射を放出するように配置され得る。複数の放射源405のうちの別の1つは、例えば、マーク検出システムが異なるマーク深さのマークを検出するように配置されている場合は、放射源ホルダ内で選択および配置されてよい。
【0091】
一実施形態では、放射ユニット403は、複数の放射源ホルダと、その中に配置されるように構成された複数の放射源405とを含み、各放射源405は、中心波長を含む波長帯域幅の放射を含む測定ビーム406をマーク402に向けて放出するように構成される。複数の放射源405の波長帯域幅は、異なる中心波長および/または異なる幅を含み、帯域幅計算システム300の処理ユニット301は、所望の波長帯域幅に基づいて複数の放射源405のうちの1つを選択するように構成される。放射ユニット403の制御ユニット404は、選択された放射源405を制御して、測定ビーム406を放出するように構成される。有利には、所望の波長帯域幅に基づいて、適切な放射源405を選択することができる。放射源405はすでに放射源ホルダ内に配置されているので、複数の放射源のうちの別の1つが選択されるたびに較正を実行する必要はない。選択された放射源405でのみ放射を放出することが可能であることに留意されたい。しかし、複数の放射源405のより多くまたはすべてで、それぞれの波長帯域幅は重複せずに、同時に放射を放出することも可能である。ここで、検出ユニット411は、マーク402の位置を決定するために、選択された放射源405の測定ビーム406の成分を含む反射ビーム410のみを使用するように配置される。好ましくは、放射源405は、ミラーなどの光学部品を使用して、どの放射源405が選択されているかに関係なく測定ビーム406が同じ光路をたどるように、放射ユニット403内に配置されている。一実施形態では、複数の放射源は、例えば緑、赤、近赤外線、遠赤外線を放出する4つの放射源を備える。この実施形態は、フィルタ408と組み合わせて、またはフィルタ408なしで使用することができることに留意されたい。各光源405に対して個別のフィルタ408を設けることも可能である。
【0092】
一実施形態では、放射ユニット403は、例えば対応する中心波長が実質的に532nmに等しい緑色光、および/または、例えば対応する中心波長が634nmに実質的に等しい赤色光、および/または、例えば対応する中心波長が実質的に776nmに等しい近赤外光、および/または、例えば対応する中心波長が実質的に836nmに等しい遠赤外光の放射を放出するように構成される。
【0093】
一実施形態では、検出器411.1は、反射ビーム410を検出するための1つ以上のセンサ(図示せず)、例えば光検出器を含み得る。一実施形態では、検出ユニット411の処理ユニット411.2は、反射ビーム410と参照ビームとの間の位相差に基づいてマーク402の位置を決定するように構成される。例えば、検出ユニット411は、図2に示されるもののような自己参照干渉計SRIを備えていてもよい。一実施形態では、検出ユニット411の処理ユニット411.2は、正および負の次数の反射ビーム410間の位相差に基づいて、マーク402の位置を決定するように構成される。前記反射ビーム410は、マーク402上で反射または回折された測定ビーム406の成分を含む。正および負の次数の反射ビーム410は、正および負の次数の回折ビームとも呼ばれ得ることに留意されたい。
【0094】
図7に示すマーク検出ユニットは、さらに、図2に示すスポットミラーSMおよび対物レンズOLと同様に機能するスポットミラー451および対物レンズOLを含む迂回光学系を備える。
【0095】
図7に示される帯域幅計算システム300はオペレータ情報モジュールを含まないが、処理ユニット301に第2出力端子を提供することによって、帯域幅計算システムの処理ユニット302と放射ユニット403の制御ユニット404との間の接続と組み合わせてこれを提供することも可能であることに留意されたい。さらに、帯域幅計算システムの処理ユニット301と放射ユニット403の制御ユニット404との間の接続なしに、オペレータ情報モジュールを提供することも可能である。例えば、オペレータは、所望の波長帯域幅に基づいて、適切な放射源405またはフィルタ408の設定を選択することができる。
【0096】
本発明はさらに、帯域幅計算システムを伴わないが、放射源ホルダに配置され、選択された幅を有する波長帯域幅の放射を含む測定ビーム406をマーク402に向けて放出するように構成された放射源405を備えるマーク検出システムに関する。ここで、前記波長帯域幅の選択された幅は、10nmから100nmの間、任意選択で15nmから80nmの間、例えば、20nmから70nmの間、例えば20nmから40nmの間、例えば35nmから55nmの間である。そのような波長帯域幅は、現在使用されている基板のための従来の放射源よりも改善を提供することが見出された。もちろん、特定のオブジェクト401の所望の波長帯域幅を決定し、前記所望の波長帯域幅に近い波長帯域幅を選択することによって、さらなる改善を得ることができる。
【0097】
図7は、少なくとも1つのマーク402を含むオブジェクト401の位置を決定するための本発明に係る位置測定システムをさらに示す。この位置測定システムは、本発明に係るマーク検出システムと、マーク検出システムによって検出された少なくとも1つのマーク402に基づいてオブジェクト401の位置を決定するよう構成された処理ユニット501とを備える。
【0098】
示される実施形態では、検出ユニット411の処理ユニット411.2は、位置測定システムの処理ユニット501の入力端子501.4にマーク検出信号411.3を送信するための出力端子411.4を備える。しかしながら、位置測定システムの処理ユニット501および検出ユニット411の処理ユニット411.2は、単一の処理ユニットとして組み込まれてもよいことに留意されたい。
【0099】
本発明はさらに、例えば図1に示すようなリソグラフィ装置LAに関する。本発明に係るリソグラフィ装置LAは、少なくとも1つのマークを含む基板W上にパターンを投影するように構成された投影システムPSと、基板Wを保持するように構成された基板サポートWTと、基板W上の少なくとも1つのマークの位置を決定することによって基板Wの位置を決定するように構成された本発明に係る位置測定システムとを備える。
【0100】
さらなる実施形態では、リソグラフィ装置LAは、位置測定システムによって決定された基板Wの位置に基づいて基板サポートWTの動きを制御するように構成された基板位置決めシステムを備える。
【0101】
単一の処理ユニットまたは他のユニットが、明細書および特許請求の範囲に記載されたいくつかのアイテム、例えば処理ユニットまたは制御ユニット装置の機能を果たし得ることに留意されたい。同様に、明細書および特許請求の範囲に記載されている単一のアイテムで説明されている機能、例えば処理ユニットまたは制御ユニットは、実際には、複数の構成要素、例えば複数の処理ユニットまたは制御ユニットによって実現され得る。機能間の通信は、既知の方法に従って有線または無線で行うことができる。
【0102】
本明細書では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特定の言及がなされ得るが、本明細書に記載されるリソグラフィ装置は、他の用途を有し得ることを理解するべきである。他の可能な用途には、統合光学システム、磁区メモリ、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどのガイダンスと検出パターンの製造が含まれる。
【0103】
本明細書では、リソグラフィ装置との関連で本発明の実施形態を具体的に参照することができるが、本発明の実施形態は、他の装置で使用することができる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、計測装置、またはウェハ(または他の基板)またはマスク(または他のパターニングデバイス)などの物体を測定または処理する任意の装置の一部を形成することができる。これらの装置は、一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。そのようなリソグラフィツールは、真空条件または周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0104】
上記では、光学リソグラフィの文脈での本発明の実施形態の使用について具体的に言及してきたが、文脈が許せば、本発明は光学リソグラフィに限定されず、その他のアプリケーション、たとえばインプリントリソグラフィでも使用することができる。
【0105】
文脈が許す場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、またはそれらの任意の組み合わせで実装され得る。本発明の実施形態はまた、機械可読媒体に格納された命令として実装され得、これは、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る。機械可読媒体は、機械(例えば、コンピューティングデバイス)によって可読可能な形式で情報を格納または送信するための任意のメカニズムを含み得る。たとえば、機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気的、光学的、音響的または他の形態の伝搬信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号など)、およびその他を含んでよい。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本明細書に記載され得る。しかしながら、そのような説明は単に便宜上のものであり、そのようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、または他のデバイスに起因し、それを行うとアクチュエータや他のデバイスが物理的な世界と相互作用する可能性があることを理解されたい。
【0106】
本発明の特定の実施形態が上記で説明されたが、本発明は、説明された以外の方法で実施されてもよいことが理解されよう。上記の説明は、限定ではなく例示を意図したものである。したがって、以下に記載される特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に変更を加えることができることが当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図3e
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
図6
図7