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特許7143478複合正極活物質、それを採用した正極、リチウム電池及びその製造方法
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  • 特許-複合正極活物質、それを採用した正極、リチウム電池及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-16
(45)【発行日】2022-09-28
(54)【発明の名称】複合正極活物質、それを採用した正極、リチウム電池及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20220920BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20220920BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220920BHJP
   C01G 51/00 20060101ALI20220920BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
C01G51/00 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021091167
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2021190430
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2020-0066015
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】孫 寅赫
(72)【発明者】
【氏名】馬 相國
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲スン▼任
(72)【発明者】
【氏名】金 圭成
(72)【発明者】
【氏名】文 鐘碩
(72)【発明者】
【氏名】アンドレイ・カピロウ
【審査官】石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0037680(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0165463(US,A1)
【文献】特開2012-169217(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102237515(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/05-10/0587
C01G 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム遷移金属酸化物を含むコアと、
前記コアの表面に沿って配置されるシェルと、を含み、
前記シェルが、第1金属酸化物と、炭素材料とを含み、
前記第1金属酸化物が炭素材料マトリックス内に配置され
前記第1金属酸化物がAl (0<z<3)であることを特徴とする複合正極活物質。
【請求項2】
前記シェルが、第2金属酸化物をさらに含み、
前記第2金属酸化物がAl であることを特徴とする請求項に記載の複合正極活物質。
【請求項3】
前記第1金属酸化物は、前記第2金属酸化物の還元生成物であることを特徴とする請求項に記載の複合正極活物質。
【請求項4】
前記シェルの厚みは、1nmないし5μmであることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の複合正極活物質。
【請求項5】
前記コア上にドーピングされる第3金属、または前記コア上にコーティングされる第3金属酸化物をさらに含み、
前記第3金属酸化物上に前記シェルが配置され、
前記第3金属酸化物は、Al、Zr、W及びCoのうち選択される一つ以上の第3金属の酸化物であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の複合正極活物質。
【請求項6】
前記シェルが、前記第1金属酸化物と炭素材料を含む複合体、及び前記複合体のミーリング結果物のうち選択された一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項7】
前記複合体の含量が、複合正極活物質の全体の重量の3wt%以下であることを特徴とする請求項に記載の複合正極活物質。
【請求項8】
前記複合体が、前記第1金属酸化物と異なる組成を有する第2金属酸化物をさらに含むことを特徴とする請求項またはに記載の複合正極活物質。
【請求項9】
前記第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の平均粒径が1nmないし1μmであることを特徴とする請求項に記載の複合正極活物質。
【請求項10】
前記第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の均一度偏差が3%以下であることを特徴とする請求項に記載の複合正極活物質。
【請求項11】
前記炭素材料は、分枝された構造を有し、前記第1金属酸化物が前記分枝された構造内に分布され、
前記分枝された構造は、互いに接触する複数の炭素材料粒子を含むことを特徴とする請求項に記載の複合正極活物質。
【請求項12】
前記炭素材料は、球状構造、前記球状構造が連結された螺旋形構造、及び前記球状構造が凝集されたクラスタ構造のうち選択された一つ以上の構造を有し、
前記第1金属酸化物は、前記球状構造内に分布され、前記球状構造の大きさが50nmないし300nmであり、前記螺旋形構造の大きさが500nmないし100μmであり、前記クラスタ構造の大きさが0.5mmないし10cmであり、
前記複合体は、しわのよった多面体・ボール構造体(faceted-ball structure)または平面構造体であり、前記構造体の内部または表面に、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上が分布され、
前記炭素材料は、第1金属酸化物から10nm以下の距離ほど延長され、少なくとも1ないし20層の炭素材料層を含み、前記炭素材料の総厚は0.6ないし12nmであることを特徴とする請求項に記載の複合正極活物質。
【請求項13】
前記リチウム遷移金属酸化物が下記の化学式1または化学式2で表示されることを特徴とする請求項1に記載の複合正極活物質:
[化1]
LiCo2-b
前記化学式1で、
(1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0.9≦x≦1、0≦y≦0.1及びx+y=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)及びホウ素(B)からなる群から選択された一つ以上であり、Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組み合わせである)
[化2]
LiCoO
【請求項14】
請求項1ないし13のうちいずれか一項に記載の複合正極活物質を含むことを特徴とする正極。
【請求項15】
請求項14に記載の正極を含むことを特徴とするリチウム電池。
【請求項16】
リチウム遷移金属酸化物を提供するステップと、
複合体を提供するステップと、
前記リチウム遷移金属酸化物と複合体を機械的にミーリングするステップと、を含み、
前記複合体が、第1金属酸化物と、炭素材料とを含み、
前記第1金属酸化物が炭素材料マトリックス内に配置され、Al (0<z<3)であることを特徴とする請求項1に記載の複合正極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記複合体の平均粒径が1μmないし20μmであり、前記複合体の含量がリチウム遷移金属酸化物と複合体の全体の重量の3wt%以下であり、
前記複合体を提供するステップは、
2金属酸化物に、炭素供給源気体からなる反応ガスを供給し、熱処理するステップを含み、
前記第2金属酸化物はAl であることを特徴とする請求項16に記載の複合正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合正極活物質、それを採用した正極、リチウム電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の小型化、高性能化に合わせるために、リチウム電池の小型化、軽量化以外に、高エネルギー密度化が重要になっている。すなわち、高容量のリチウム電池が重要になっている。
【0003】
前記用途に合うリチウム電池を具現するために、高容量を有する正極活物質が検討されている。
【0004】
従来のニッケル系正極活物質は、副反応により、寿命特性が低下し、熱安定性も不十分であった。
【0005】
したがって、ニッケル系正極活物質を含み、かつ電池性能の劣化を防止することができる方法が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一側面は、複合正極活物質の副反応を抑制して、電池性能の劣化を防止することができる新規の複合正極活物質を提供することである。
他の側面は、前記複合正極活物質を含む正極を提供することである。
さらに他の側面は、前記正極を採用したリチウム電池を提供することである。
さらに他の側面は、前記複合正極活物質の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一側面により、
リチウム遷移金属酸化物を含むコアと、
前記コアの表面に沿って配置されるシェルと、を含み、
前記シェルが、化学式M(0<a≦3、0<b<4、aが1、2または3であれば、bは整数ではない)で表示される1種以上の第1金属酸化物と、炭素系材料とを含み、
前記第1金属酸化物が炭素系材料マトリックス内に配置され、前記Mは、元素周期律表の第2族ないし第13族、第15族及び第16族のうち選択された一つ以上の金属である複合正極活物質が提供される。
【0008】
他の側面により、
前記複合正極活物質を含む正極が提供される。
【0009】
さらに他の側面により、
前記正極を含むリチウム電池が提供される。
【0010】
さらに他の側面により、
リチウム遷移金属酸化物を提供するステップと、
複合体を提供するステップと、
前記リチウム遷移金属酸化物と複合体を機械的にミーリングするステップと、を含み、
前記複合体が、化学式M(0<a≦3、0<b<4、aが1、2または3であれば、bは整数ではない)で表示される1種以上の第1金属酸化物と、炭素系材料とを含み、
前記第1金属酸化物が炭素系材料マトリックス内に配置され、前記Mは、元素周期律表の第2族ないし第13族、第15族及び第16族のうち選択された一つ以上の金属である複合正極活物質の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、複合正極活物質が、第1金属酸化物と炭素系材料とを含むシェルを含むことにより、リチウム電池の高温及び/または高電圧のサイクル特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一具現例によるリチウム電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、色々な実施形態を有することができるが、特定の実施形態を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。しかし、それらは、本創意的思想を、特定の実施形態について限定するものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むものであると理解されなければならない。
【0014】
以下で使用される用語は、単に特定の実施形態を説明するために使用されたものであり、本創意的思想を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせが存在するということを示すものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性をあらかじめ排除するものではないと理解されなければならない。以下で使用される「/」は、状況により、「及び」とも解釈され、「または」とも解釈される。
【0015】
図面において、多くの層及び領域を明確に表現するために、厚みを拡大したり縮小したりして示した。明細書全体を通じて、類似した部分については、同じ図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、板などの部分が、他の部分の「上」または「上部」にあるというとき、それは、他の部分の真上にある場合だけでなく、その中間に他の部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明するのに使用されるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。該用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0016】
以下、例示的な具現例による複合正極活物質、それを含む正極、リチウム電池及びその製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0017】
該複合正極活物質は、リチウム遷移金属酸化物を含むコアと、前記コアの表面に沿って配置されるシェルと、を含み、前記シェルが、化学式M(0<a≦3、0<b<4、aが1、2または3であれば、bは整数ではない)で表示される1種以上の第1金属酸化物と、炭素系材料とを含み、前記第1金属酸化物が炭素系材料マトリックス内に配置され、前記Mは、元素周期律表の第2族ないし第13族、第15族及び第16族のうち選択された一つ以上の金属である。
【0018】
以下において、一具現例による複合正極活物質が優れた効果を提供する理論的な根拠について説明するが、それは、本創意的思想に対する理解の一助とするためのものであり、いかなる方式によっても、本創意的思想を限定することを意図するものではない。
【0019】
複合正極活物質のコア上に、第1金属酸化物及び炭素系材料を含むシェルが配置される。従来の炭素系材料は凝集されるため、コア上に均一なコーティングが困難である。それに対し、前記複合正極活物質は、炭素系材料マトリックスに配置された複数の第1金属酸化物を含む複合体を使用することにより、炭素系材料の凝集を防止しつつ、コア上に均一なシェルが配置される。したがって、コアと電解液との接触を効果的に遮断することにより、コアと電解質との接触による副反応を防止する。また、電解液によるカチオンミキシングが抑制されることにより、抵抗層の生成が抑制される。また、遷移金属イオンの溶出も抑制される。前記炭素系材料は、例えば、結晶性炭素系材料でもある。該炭素系材料は、例えば、炭素系ナノ構造体でもある。該炭素系材料は、例えば、炭素系二次元ナノ構造体でもある。該炭素系材料は、一例として、グラフェンでもある。その場合、グラフェンを含むシェルは柔軟性を有するので、充放電時に複合正極活物質の体積変化を容易に受容することにより、複合正極活物質の内部のクラック発生が抑制される。炭素系材料は高い電子伝導性を有するので、複合正極活物質と電解液との界面抵抗が減少する。したがって、炭素系材料を含むシェルが導入されるにもかかわらず、リチウム電池の内部抵抗が維持されるか、または減少する。
【0020】
該複合正極活物質のシェルが炭素系材料を含むために、シェルが炭素系導電剤としても同時に作用する。該複合正極活物質のシェルが含む炭素系材料は、グラフェンマトリックスに由来するので、黒鉛系材料に由来した従来の炭素系材料に比べ、相対的に密度が低く、気孔率が高い。該複合正極活物質のシェルが含む炭素系材料のd002面間距離(interplanar distance)は、例えば、3.38Å以上、3.40Å以上、3.45Å以上、3.50Å以上、3.60Å以上、3.80Å以上または4.00Å以上でもある。該複合正極活物質のシェルが含む炭素系材料のd002面間距離は、例えば、3.38ないし4.0Å、3.38ないし3.8Å、3.38ないし3.6Å、3.38ないし3.5Å、または3.38ないし3.45Åでもある。それに反し、黒鉛系材料に由来した従来の炭素系材料のd002面間距離は、例えば、3.38Å以下、または3.35ないし3.38Åでもある。
【0021】
また、第1金属酸化物が耐電圧性を有するので、高電圧での充放電時にコアが含むリチウム遷移金属酸化物の劣化を防止することができる。結果として、複合正極活物質を含むリチウム電池の高温及び/または高電圧のサイクル特性が向上する。シェルは、例えば、1種の第1金属酸化物、または2種以上の相異なる第1金属酸化物を含む。
【0022】
該複合正極活物質において、例えば、シェルの含量は、前記複合正極活物質全体重量の0.5wt%ないし3wt%、0.5wt%ないし2.5wt%、0.5wt%ないし2wt%、または0.5wt%ないし1.5wt%である。また、該第1金属酸化物の含量は、例えば、該複合正極活物質全体重量の0.3wt%ないし1.8wt%、0.3wt%ないし1.5wt%、0.3wt%ないし1.2wt%、または0.3wt%ないし0.9wt%でもある。該複合正極活物質がそのような含量範囲のシェル、及び第1金属酸化物をそれぞれ含むことにより、リチウム電池のサイクル特性がさらに向上される。
【0023】
第1金属酸化物が含む金属は、例えば、Al、Nb、Mg、Sc、Ti、Zr、V、W、Mn、Fe、Co、Pd、Cu、Ag、Zn、Sb及びSeのうち選択された一つ以上でもある。第1金属酸化物は、例えば、Al(0<z<3)、NbO(0<x<2.5)、MgO(0<x<1)、Sc(0<z<3)、TiO(0<y<2)、ZrO(0<y<2)、V(0<z<3)、WO(0<y<2)、MnO(0<y<2)、Fe(0<z<3)、Co(0<w<4)、PdO(0<x<1)、CuO(0<x<1)、AgO(0<x<1)、ZnO(0<x<1)、Sb(0<z<3)及びSeO(0<y<2)のうち選択された一つ以上でもある。炭素系材料マトリックス内に、当該第1金属酸化物が配置されることにより、コア上に配置されたシェルの均一性が向上し、複合正極活物質の耐電圧性がさらに向上する。例えば、シェルは、第1金属酸化物としてAl(0<x<3)を含む。
【0024】
シェルは、化学式M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2または3であれば、cは整数である)で表示される1種以上の第2金属酸化物をさらに含んでもよい。前記Mは、元素周期律表の第2族ないし第13族、第15族及び第16族のうち選択された一つ以上の金属である。例えば、第2金属酸化物は、前記第1金属酸化物と同一の金属を含み、第2金属酸化物のaとcの割合であるc/aが、前記第1金属酸化物のaとbの割合であるb/aに比べてさらに大きい値を有する。例えば、c/a>b/aである。第2金属酸化物は、例えば、Al、NbO、NbO、Nb、MgO、Sc、TiO、ZrO、V、WO、MnO、Fe、Co、PdO、CuO、AgO、ZnO、Sb及びSeOのうちから選択される。第1金属酸化物は、第2金属酸化物の還元生成物である。第2金属酸化物の一部または全部が還元されることにより、第1金属酸化物が得られる。したがって、第1金属酸化物は、第2金属酸化物に比べて酸素含量が低く、金属の酸化数がさらに低い。例えば、シェルは、第1金属酸化物であるAl(0<x<3)及び第2金属酸化物であるAlを含む。
【0025】
複合正極活物質において、例えば、シェルが含む炭素系材料と、コアが含むリチウム遷移金属酸化物の遷移金属とが化学結合を通じて化学的に結合される。シェルが含む炭素系材料の炭素原子(C)と、前記リチウム遷移金属酸化物の遷移金属(Me)は、例えば、酸素原子を媒介としてC-O-Me結合(例えば、C-O-Co結合)を通じて化学的に結合される。シェルが含む炭素系材料と、コアが含むリチウム遷移金属酸化物とが化学結合を通じて化学的に結合されることにより、コアとシェルが複合化される。したがって、炭素系材料とリチウム遷移金属酸化物との単純な物理的混合物と区別される。
【0026】
また、シェルが含む第1金属酸化物と炭素系材料とも化学結合を通じて化学的に結合される。ここで、該化学結合は、例えば、共有結合またはイオン結合である。該共有結合は、例えば、エステル基、エーテル基、カルボニル基、アミド基、カーボネート無水物基及び酸無水物基のうち少なくとも一つを含む結合である。該イオン結合は、例えば、カルボン酸イオン、アンモニウムイオン、アシル陽イオン基などを含む結合である。
【0027】
シェルの厚みは、例えば、1nmないし5μm、1nmないし1μm、1nmないし500nm、1nmないし200nm、1nmないし100nm、1nmないし90nm、1nmないし80nm、1nmないし70nm、1nmないし60nm、1nmないし50nm、1nmないし40nm、1nmないし30nm、1nmないし20nm、または1nmないし10nmである。シェルが当該範囲の厚みを有することにより、複合正極活物質が含むリチウム電池の内部抵抗増加が抑制される。
【0028】
複合正極活物質において、例えば、コア上にドーピングされる第3金属、または前記コア上にコーティングされる第3金属酸化物をさらに含んでもよい。そして、ドーピングされた第3金属上、またはコーティングされた第3金属酸化物上に、前記シェルが配置される。例えば、コアが含むリチウム遷移金属酸化物の表面に第3金属がドーピングされるか、またはリチウム遷移金属酸化物の表面上に第3金属酸化物がコーティングされた後、前記第3金属上及び/または第3金属酸化物上にシェルが配置される。例えば、複合正極活物質は、コアと、前記コア上に配置される中間層と、前記中間層上に配置されるシェルとを含み、前記中間層が第3金属または第3金属酸化物を含む。該第3金属は、Al、Zr、W及びCoのうち選択される一つ以上の金属であり、該第3金属酸化物は、Al、LiO-ZrO、WO、CoO、Co、Coなどである。
【0029】
複合正極活物質が含むシェルは、例えば、第1金属酸化物と、炭素系材料、例えば、グラフェンとを含む複合体、及び前記複合体のミーリング結果物のうち選択された一つ以上を含み、第1金属酸化物が、炭素系材料のマトリックス、例えば、グラフェンマトリックス内に配置される。シェルは、例えば、第1金属酸化物、及び炭素系材料、例えば、グラフェンを含む複合体から製造される。該複合体は、第1金属酸化物以外に、第2金属酸化物をさらに含んでもよい。該複合体は、例えば、2種以上の第1金属酸化物を含む。該複合体は、例えば、2種以上の第1金属酸化物及び2種以上の第2金属酸化物を含む。
【0030】
複合正極活物質が含む複合体の含量は、複合正極活物質の全体の重量の3wt%以下、2wt%以下、1wt%以下、0.5wt%以下、0.2wt%以下である。該複合体の含量は、複合正極活物質の全体の重量の0.01wt%ないし3wt%、0.01wt%ないし1wt%、0.01wt%ないし0.7wt%、0.01wt%ないし0.5wt%、0.01wt%ないし0.2wt%、0.01wt%ないし0.1wt%、または0.03wt%ないし0.07wt%である。複合正極活物質が当該範囲の複合体を含むことにより、複合正極活物質を含むリチウム電池のサイクル特性がさらに向上する。
【0031】
複合体が含む第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の平均粒径は、1nmないし1μm、1nmないし500nm、1nmないし200nm、1nmないし100nm、1nmないし70nm、1nmないし50nm、1nmないし30nm、3nmないし30nm、3nmないし25nm、5nmないし25nm、5nmないし20nm、7nmないし20nm、または7nmないし15nm である。第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物が当該ナノ範囲の粒径を有することにより、該複合体の炭素系材料マトリックス内により均一に分布可能である。したがって、当該複合体が凝集されずにコア上に均一にコーティングされ、シェルを形成することができる。また、第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物が当該範囲の粒径を有することにより、コア上により均一に配置可能である。したがって、コア上に第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物が均一に配置されることにより、耐電圧特性をより効果的に発揮することができる。
【0032】
第1金属酸化物及び第2金属酸化物の平均粒径は、例えば、レーザ回折方式や動的光散乱方式の測定装置を使用して測定する。平均粒径は、例えば、レーザ散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製LA-920)を利用して測定し、体積換算における小粒子側から50%累積された際のメディアン粒径(D50)の値である。
【0033】
複合体が含む第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の均一度偏差が、3%以下、2%以下、または1%以下である。均一度は、例えば、XPS(X-ray photoelectron spectroscopy)により求められる。したがって、複合体内で第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上が3%以下、2%以下、または1%以下の偏差をもって均一に分布されている。
【0034】
複合体が含む炭素系材料は、例えば、分枝された構造(branched structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の金属酸化物が、炭素系材料の分枝された構造内にも分布される。該炭素系材料の分枝された構造は、例えば、互いに接触する複数の炭素系材料粒子を含む。該炭素系材料が分枝された構造を有することにより、多様な伝導性経路を提供することができる。
【0035】
複合体が含む炭素系材料は、例えば、グラフェンでもある。前記グラフェンは、例えば、分枝された構造を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の金属酸化物がグラフェンの分枝された構造内に分布されうる。グラフェンの分枝された構造は、例えば、互いに接触する複数のグラフェン粒子を含む。グラフェンが分枝された構造を有することにより、多様な伝導性経路を提供することができる。
【0036】
複合体が含む炭素系材料は、例えば、球形構造(spherical structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の金属酸化物は、前記球形構造内にも分布される。該炭素系材料の球形構造の大きさは、50nmないし300nmでもある。該球形構造を有する炭素系材料が複数個でもある。該炭素系材料が球形構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0037】
複合体が含む炭素系材料は、例えば、グラフェンでもある。前記グラフェンは、例えば、球状構造を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の金属酸化物が前記球状構造内に分布されうる。グラフェンの球状構造の大きさが50nmないし300nmでもある。球状構造を有するグラフェンが複数個でもある。グラフェンが球状構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0038】
複合体が含む炭素系材料は、例えば、複数の球形構造が連結された螺旋形構造(spiral structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の金属酸化物は、前記螺旋形構造の球形構造内にも分布される。該炭素系材料の螺旋形構造の大きさは、500nmないし100μmでもある。該炭素系材料が螺旋形構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0039】
複合体が含む炭素系材料は、例えば、グラフェンでもある。前記グラフェンは、例えば、複数の球状構造が連結された螺旋形構造を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の金属酸化物が前記螺旋形構造の球状構造内に分布されうる。グラフェンの螺旋形構造の大きさが500nmないし100μmでもある。グラフェンが螺旋形構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0040】
複合体が含む炭素系材料は、例えば、複数の球形構造が凝集されたクラスタ構造(cluster structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の金属酸化物は、前記クラスタ構造の球形構造内にも分布される。該炭素系材料のクラスタ構造の大きさは、0.5μmないし1mmまたは0.5mmないし10cmでもある。該炭素系材料がクラスタ構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0041】
複合体が含む炭素系材料は、例えば、グラフェンでもある。前記グラフェンは、例えば、複数の球状構造が凝集されたクラスタ構造を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上の金属酸化物が前記クラスタ構造の球状構造内に分布されうる。グラフェンのクラスタ構造の大きさが0.5μmないし1mmまたは0.5mmないし10cmでもある。グラフェンがクラスタ構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0042】
複合体は、例えば、しわのよった多面体・ボール構造体(faceted-ball structure)であり、構造体の内部または表面に第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上が分布されうる。複合体が当該多面体・ボール構造体であることにより、複合体がコアの不規則的な表面凹凸上に容易に被覆可能である。
【0043】
複合体は、例えば、平面構造体であり、構造体の内部または表面に第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち選択された一つ以上が分布されうる。該複合体が当該二次元平面構造体であることにより、該複合体がコアの不規則的な表面凹凸上に容易に被覆可能である。
【0044】
複合体が含む炭素系材料は、例えば、グラフェンでもある。前記グラフェンは、第1金属酸化物から10nm以下の距離ほど延長され、少なくとも1ないし20層のグラフェン層を含む。例えば、複数のグラフェン層が積層されることにより、第1金属酸化物上に12nm以下の総厚を有するグラフェンが配置可能である。例えば、グラフェンの総厚は0.6ないし12nmである。
【0045】
複合正極活物質が含むコアは、例えば、下記の化学式1で表示されるリチウム遷移金属酸化物を含む:
[化1]
LiCo2-b
前記化学式1で、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0.9≦x≦1、0≦y≦0.1及びx+y=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)及びホウ素(B)からなる群から選択された一つ以上であり、Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組み合わせである。
【0046】
複合正極活物質が含むコアは、例えば、下記の化学式2で表示されるリチウム遷移金属酸化物を含む:
[化2]
LiCoO
【0047】
他の具現例による正極は、上述の複合正極活物質を含む。正極が上述の複合正極活物質を含むことにより、向上したサイクル特性及び熱安定性を提供する。
【0048】
正極は、例えば、下記の例示的な方法により製造されるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、要求される条件によっても調節される。
【0049】
まず、上述の複合正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合し、正極活物質組成物を準備する。準備された正極活物質組成物を、アルミニウム集電体上に直接コーティング及び乾燥させ、正極活物質層が形成された正極極板を製造する。あるいは、前記正極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、この支持体から剥離して得たフィルムを、前記アルミニウム集電体上にラミネーションし、正極活物質層が形成された正極極板を製造する。
【0050】
導電剤としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素ファイバ;炭素ナノチューブ;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属ファイバまたは金属チューブ;ポリフェニレン誘導体のような伝導性高分子などが使用されるが、それらに限定されず、当該技術分野において、導電剤として使用するものであるならば、いずれも可能である。
【0051】
結合剤としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、前述の高分子の混合物、スチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用され、溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などが使用されるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野で使用するものであるならば、いずれも可能である。
【0052】
正極活物質組成物に、可塑剤または気孔形成剤をさらに付加して、電極板内部に気孔を形成することも可能である。
【0053】
正極に使用される複合正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含量は、リチウム電池で通常使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって、前記導電剤、結合剤及び溶媒のうち一つ以上の省略が可能である。
【0054】
また、正極は、上述の複合正極活物質以外に、他の一般的な正極活物質をさらに含むことが可能である。
【0055】
一般的な正極活物質は、リチウム含有金属酸化物であり、当業界で通常使用されるものであるならば、制限なしにいずれも使用される。例えば、コバルト、マンガン、ニッケル及びそれらの組み合わせから選択される金属と、リチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用することができ、その具体的な例としては、Li1-b(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0≦b≦0.5である);Li1-b2-c(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5及び0≦c≦0.05である);LiE2-b4-c(前記化学式で、0≦b≦0.5及び0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoα(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α≦2である);LiNi1-b-cCo2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiNi1-b-cCo2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiNi1-b-cMnα(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α≦2である);LiNi1-b-cMn2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiNi1-b-cMn2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05及び0<α<2である);LiNi(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5及び0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMn(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5及び0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiIO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうちいずれか一つで表現される化合物を使用することができる。
【0056】
上述の化合物を表現する化学式において、Aは、Ni、Co、Mnまたはそれらの組み合わせであり、Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、Pまたはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mnまたはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、Pまたはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mnまたはそれらの組み合わせであり、Iは、Cr、V、Fe、Sc、Yまたはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはそれらの組み合わせである。
【0057】
上述の化合物の表面にコーティング層が付加された化合物の使用も可能であり、上述の化合物と、コーティング層が付加された化合物との混合物の使用も可能である。上述の化合物の表面に付加されるコーティング層は、例えば、コーティング元素の酸化物・水酸化物、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはそれらの混合物である。コーティング層の形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内で選択される。コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング法、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野の当業者に広く理解される内容であるので、詳細な説明は省略する。
【0058】
さらに他の具現例によるリチウム電池は、上述の複合正極活物質を含む正極を採用する。
【0059】
リチウム電池が、上述の複合正極活物質を含む正極を採用することにより、向上したサイクル特性及び熱安定性を提供する。
【0060】
リチウム電池は、例えば、下記の例示的な方法により製造されるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、要求される条件によっても調節される。
まず、上述の正極の製造方法によって、正極が製造される。
【0061】
次いで、負極が次のように製造される。負極は、例えば、複合正極活物質の代わりに、負極活物質を使用することを除いては、正極と実質的に同様な方法により製造される。また、負極活物質組成物において、導電剤、結合剤及び溶媒は、正極と実質的に同様なものを使用することができる。
【0062】
例えば、負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒を混合して、負極活物質組成物を製造し、それを銅集電体に直接コーティングし、負極極板を製造する。あるいは、製造された負極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングし、この支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅集電体にラミネーションして、負極極板を製造する。
【0063】
負極活物質は、当該技術分野において、リチウム電池の負極活物質として使用するものであるならば、いずれも可能である。例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群から選択された一つ以上を含む。
【0064】
リチウムと合金可能な金属は、例えば、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素またはそれらの組み合わせ元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などである。元素Yは、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poまたはそれらの組み合わせである。
【0065】
前記遷移金属酸化物は、例えば、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などである。
非遷移金属酸化物は、例えば、SnO、SiO(0<x<2)などである。
【0066】
炭素系材料は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはそれらの混合物である。結晶質炭素は、例えば、板状、鱗片状、球状またはファイバ型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛である。非晶質炭素は、例えば、ソフトカーボン(低温焼成炭素)またはハードカーボン、メゾ相ピッチ炭化物、焼成されたコークスなどである。
【0067】
負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含量は、リチウム電池で通常使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって、前記導電剤、結合剤及び溶媒のうち一つ以上の省略が可能である。
【0068】
次いで、前記正極と負極との間に挿入されるセパレータが準備される。
セパレータは、リチウム電池で通常使用されるものであるならば、いずれも可能である。セパレータは、例えば、電解質のイオン移動に対して低抵抗であり、かつ電解液含湿能に優れたものが使用される。セパレータは、例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはそれらの組み合わせのうち選択されたものであり、不織布または織布の形態である。リチウムイオン電池には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使用され、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能に優れたセパレータが使用される。
【0069】
セパレータは、下記の例示的な方法により製造されるが、必ずしもそのような方法に限定されるものではなく、要求される条件によっても調節される。
【0070】
まず、高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合し、セパレータ組成物が準備される。該セパレータ組成物が電極の上部に直接コーティング及び乾燥され、セパレータが形成される。あるいは、該セパレータ組成物が支持体上にキャスティング及び乾燥された後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極の上部にラミネーションされ、セパレータが形成される。
【0071】
セパレータの製造に使用される高分子は、特に限定されず、電極板の結合剤に使用される高分子であるならば、いずれも可能である。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートまたはそれらの混合物などが使用される。
【0072】
次いで、電解質が準備される。
電解質は、例えば、有機電解液である。有機電解液は、例えば、有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造される。
【0073】
有機溶媒は、当該技術分野において有機溶媒として使用するものであるならば、いずれも可能である。該有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物などである。
【0074】
リチウム塩も、当該技術分野においてリチウム塩として使用するものであるならば、いずれも可能である。該リチウム塩は、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ただし、x、yは自然数である)、LiCl、LiIまたはそれらの混合物などである。
【0075】
代案として、電解質は、固体電解質である。該固体電解質は、例えば、ホウ素酸化物、リチウム酸窒化物などであるが、それらに限定されず、当該技術分野において固体電解質として使用するものであるならば、いずれも可能である。該固体電解質は、例えば、スパッタリングなどの方法により、前記負極上に形成されるか、または別途の固体電解質シートが負極上に積層される。
【0076】
図1から分かるように、リチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。正極3、負極2及びセパレータ4が巻き取られるか、または折り畳まれ、電池ケース5に収容される。電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップアセンブリ6で密封され、リチウム電池1が完成される。電池ケース5は、円筒状でもあるが、必ずしもそのような形態に限定されるものではなく、例えば、角形、薄膜型などでもある。
【0077】
ポーチ型リチウム電池は、一つ以上の電池構造体を含む。正極と負極との間にセパレータが配置され、電池構造体が形成される。電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、ポーチに収容及び密封され、ポーチ型リチウム電池が完成される。電池構造体が複数個積層され、電池パックを形成し、そのような電池パックが、高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用される。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両(EV:electric vehicle)などに使用される。
【0078】
リチウム電池は、寿命特性及び高率特性に優れるので、例えば、電気車両(EV)に使用される。例えば、プラグインハイブリッド車両(PHEV: plug-in hybrid electric vehicle)などのハイブリッド車両に使用される。また、多量の電力保存が要求される分野に使用される。例えば、電気自転車、電動工具などに使用される。
【0079】
さらに他の具現例による複合正極活物質の製造方法は、リチウム遷移金属酸化物を提供するステップと、複合体を提供するステップと、リチウム遷移金属酸化物と複合体とを機械的にミーリングするステップと、を含み、複合体が、化学式M(0<a≦3、0<b<4、aは1、2または3であるならば、bは整数ではない)で表示される1種以上の第1金属酸化物と、炭素系材料とを含み、第1金属酸化物が炭素系材料マトリックス内に配置され、前記Mは、元素周期律表の第2族ないし第13族、第15族及び第16族のうち選択された一つ以上の金属である。
【0080】
リチウム遷移金属酸化物が提供される。該リチウム遷移金属酸化物は、例えば、上述の化学式1及び2で表示される化合物である。
【0081】
複合体を提供するステップは、例えば、金属酸化物を含む構造体に炭素供給源気体からなる反応ガスを供給し、熱処理するステップを含む。
【0082】
複合体を提供するステップは、例えば、M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2または3である場合、cが整数である)で表示される1種以上の第2金属酸化物に、炭素供給源気体からなる反応ガスを供給し、熱処理するステップを含み、前記Mは、元素周期律表の第2族ないし第13族、第15族及び第16族のうち選択された一つ以上の金属である。
【0083】
炭素供給源気体は、下記の化学式3で表示される化合物であってもよく、下記の化学式4で表示される化合物と、下記の化学式5で表示される化合物、及び下記の化学式6で表示される酸素含有気体からなる群から選択された一つ以上との混合ガスであってもよい。
[化3]
CnH(2n+2-a)[OH]
前記化学式3で、nは1ないし20、aは0または1であり、
[化4]
CnH2n
前記化学式4で、nは2ないし6であり、
[化5]

前記化学式5で、xは0または1ないし20の整数であり、yは0または1ないし20の整数であり、zは1または2である。
【0084】
化学式3で表示される化合物及び化学式4で表示される化合物が、メタン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール及びプロパノールからなる群から選択された一つ以上である。化学式5で表示される酸素含有気体は、例えば、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、水蒸気(HO)またはその混合物を含む。
【0085】
(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2または3であれば、cは整数である)で表示される第2金属酸化物に、炭素供給源気体からなる反応ガスを供給し、熱処理するステップ以後、窒素、ヘリウム及びアルゴンからなる群から選択された一つ以上の不活性気体を利用した冷却ステップをさらに有してもよい。該冷却ステップは、常温(20ないし25℃)に調節するステップをいう。炭素供給源気体は、窒素、ヘリウム及びアルゴンからなる群から選択された一つ以上の不活性気体を含む。
【0086】
複合体の製造方法において、気相反応によって、炭素系材料が成長する過程は、多様な条件で遂行される。
【0087】
第1条件によれば、例えば、M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2または3であれば、cは整数である)で表示される第2金属酸化物が配置された反応器にまずメタンを供給し、熱処理温度(T)まで昇温処理する。熱処理温度(T)までの昇温時間は10分ないし4時間であり、熱処理温度(T)は700ないし1100℃の範囲である。熱処理温度(T)で反応時間の間熱処理を実施する。反応時間は、例えば、4ないし8時間である。熱処理された結果物を常温に冷却させ、複合体を製造する。熱処理温度(T)から常温まで冷却する過程にかかる時間は、例えば、1ないし5時間である。
【0088】
第2条件によれば、例えば、M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2または3であれば、cは整数である)で表示される第2金属酸化物が配置された反応器にまず水素を供給し、熱処理温度(T)まで昇温処理する。熱処理温度(T)までの昇温時間は10分ないし4時間であり、熱処理温度(T)は700ないし1100℃の範囲である。熱処理温度(T)で一定の反応時間の間熱処理した後、メタンガスを供給し、残りの反応時間の間熱処理を実施する。反応時間は、例えば、4ないし8時間である。熱処理された結果物を常温に冷却させ、複合体を製造する。冷却する過程で窒素を供給する。熱処理温度(T)から常温まで冷却する過程にかかる時間は、例えば、1ないし5時間である。
【0089】
第3条件によれば、例えば、M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2または3であれば、cは整数である)で表示される第2金属酸化物が配置された反応器にまず水素を供給し、熱処理温度(T)まで昇温処理する。熱処理温度(T)までの昇温時間は10分ないし4時間であり、熱処理温度(T)は700ないし1100℃の範囲である。熱処理温度(T)で一定の反応時間の間熱処理した後、メタンと水素との混合ガスを供給し、残りの反応時間の間熱処理を実施する。反応時間は、例えば、4ないし8時間である。熱処理された結果物を常温に冷却させ、複合体を製造する。冷却する過程で窒素を供給する。熱処理温度(T)から常温まで冷却する過程にかかる時間は、例えば、1ないし5時間である。
【0090】
複合体を製造する過程において、炭素供給源気体が水蒸気を含む場合、非常に優れた伝導度を有する複合体が得られる。気体混合物内の水蒸気の含量は制限されず、例えば、炭素供給源気体の全体の100体積%を基準として0.01ないし10体積%である。炭素供給源気体は、例えば、メタン、メタンと不活性気体とを含む混合気体、またはメタンと酸素含有気体とを含む混合気体である。
【0091】
炭素供給源気体は、例えば、メタン、メタンと二酸化炭素との混合気体、またはメタンと二酸化炭素と水蒸気との混合気体である。メタンと二酸化炭素との混合気体において、メタンと二酸化炭素とのモル比は、約1:0.20ないし1:0.50、約1:0.25ないし1:0.45、または約1:0.30ないし1:0.40である。メタンと二酸化炭素と水蒸気との混合気体において、メタンと二酸化炭素と水蒸気とのモル比は、約1:0.20ないし0.50:0.01ないし1.45、約1:0.25ないし0.45:0.10ないし1.35、または約1:0.30ないし0.40:0.50ないし1.0である。
【0092】
炭素供給源気体は、例えば、一酸化炭素または二酸化炭素である。該炭素供給源気体は、例えば、メタンと窒素との混合気体である。メタンと窒素との混合気体において、メタンと窒素とのモル比は、約1:0.20ないし1:0.50、約1:0.25ないし1:0.45、または約1:0.30ないし1:0.40である。該炭素供給源気体は、窒素のような不活性気体を含まない。
【0093】
熱処理圧力は、熱処理温度、気体混合物の組成、及び所望の炭素コーティングの量などを考慮して選択することができる。該熱処理圧力は、流入される気体混合物の量と、流出される気体混合物の量とを調整して制御することができる。該熱処理圧力は、例えば、0.5atm以上、1atm以上、2atm以上、3atm以上、4atm以上または5atm以上である。
【0094】
熱処理時間は、特に制限されず、熱処理温度、熱処理時の圧力、気体混合物の組成、及び所望の炭素コーティングの量によって適切に調節することができる。例えば、熱処理温度での反応時間は、例えば、10分ないし100時間、30分ないし90時間、または50分ないし40時間である。例えば、熱処理時間が長くなるほど、堆積される炭素(例えば、グラフェン)量が多くなり、それによって複合体の電気的物性が向上する。ただし、そのような傾向が時間に必ずしも正比例されるものではない。例えば、所定の時間経過後には、それ以上、炭素(例えば、グラフェン堆積が起こらないか、または堆積率が低くなる。
【0095】
上述の炭素供給源気体の気相反応を通じて、比較的低い温度でも、M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2または3であれば、cは整数である)で表示される第2金属酸化物、及びその還元生成物であるM(0<a≦3、0<b<4、aは1、2または3であれば、bは整数ではない)で表示される第1金属酸化物のうち選択された一つ以上に、均一な炭素系材料コーティング、例えば、グラフェンコーティングを提供することにより、複合体が得られる。
【0096】
複合体は、例えば、球状構造、複数の球状構造が連結された螺旋形構造、複数の球状構造が凝集されたクラスタ構造、及びスポンジ構造のうち選択された一つ以上の構造を有する炭素系材料マトリックス、例えば、グラフェンマトリックスと、前記グラフェンマトリックス内に配置される、M(0<a≦3、0<b<4、aは1、2または3であれば、bは整数ではない)で表示される第1金属酸化物、及びM(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2または3であれば、cは整数である)で表示される第2金属酸化物のうち選択された一つ以上とを含む。
【0097】
次いで、リチウム遷移金属酸化物と複合体とを機械的にミーリングする。ミーリング時にノビルタ(登録商標)ミキサーなどを使用することができる。ミーリング時のミキサーの回転数は、例えば、1000rpmないし2500rpmである。ミーリング速度が1000rpm未満であれば、リチウム遷移金属酸化物と複合体に加えられる剪断力が弱いため、リチウム遷移金属酸化物と複合体が化学結合を形成しがたい。ミーリング速度が速すぎれば、複合化が過度に短時間に行われるため、リチウム遷移金属酸化物上に複合体が均一にコーティングされて均一かつ連続したシェルを形成しがたい。ミーリング時間は、例えば、5分ないし100分、5分ないし60分、または5分ないし30分である。ミーリング時間が短すぎれば、リチウム遷移金属酸化物上に複合体が均一にコーティングされて均一かつ連続したシェルを形成しがたい。ミーリング時間が長すぎれば、生産効率が低下する。複合体の含量は、リチウム遷移金属酸化物と複合体との全体の重量の3wt%以下、2wt%以下または1wt%以下である。例えば、リチウム遷移金属酸化物と複合体との混合物100重量部に対して、複合体の含量は、0.01ないし3重量部、0.1ないし3重量部、0.1ないし2重量部、または0.1ないし1重量部である。
【0098】
リチウム遷移金属酸化物と複合体とを機械的にミーリングするのに使用される複合体の平均粒径(D50)は、例えば、1μmないし20μm、3μmないし15μm、または5μmないし10μmである。
【0099】
以下の実施例及び比較例により、本発明がさらに詳細に述べられる。ただし、実施例は、本発明を例示するためのものであり、それらだけで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0100】
(複合体の製造)
製造例1:Al @Gr複合体
Al粒子(平均粒径:約20nm)を反応器内に位置させた後、反応器内にCHを約300sccm、1atmで約30分間供給した条件で、反応器の内部温度を1000℃に上昇させた。
【0101】
次いで、前記温度で7時間維持して熱処理を遂行した。次いで、反応器の内部温度を常温(20ないし25℃)に調節し、Al粒子及びその還元生成物であるAl(0<z<3)粒子が炭素系材料に埋め込まれた複合体を得た。
複合体が含むアルミナの含量は、60wt%であった。
【0102】
比較製造例1:SiO @Gr複合体
SiO粒子(平均粒径:約15nm)を反応器内に位置させた後、反応器内にCHを約300sccm、1atmで約30分間供給した条件で、反応器の内部温度を1000℃に上昇させた。
【0103】
次いで、前記温度で7時間維持して熱処理を遂行した。次いで、反応器の内部温度を常温(20ないし25℃)に調節し、SiO粒子及びその還元生成物であるSiO(0<y<2)粒子が炭素系材料に埋め込まれた複合体を得た。
【0104】
(複合正極活物質の製造)
実施例1:Al @Gr複合体0.25wt%コーティングLCO(アルミナ0.15wt%)
LiCoO(以下、LCOという)と製造例1で準備された複合体とを、ノビルタ(登録商標)ミキサー(ホソカワミクロン社製)を利用して約1000ないし2500rpmの回転数(第1ミーリング条件)で約5ないし30分間ミーリングを行い、複合正極活物質を得た。
【0105】
LCOと、製造例1により得た複合体との混合重量比は、99.75:0.25であった。
【0106】
実施例2:Al @Gr複合体0.25wt%コーティングLCO(アルミナ0.15wt%)
実施例1の範囲内で回転数を実施例1と異ならせて変更(第2ミーリング条件)したことを除いては、実施例1と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0107】
実施例3:Al @Gr複合体0.25wt%コーティングLCO(アルミナ0.15wt%)
実施例1の範囲内で回転数を実施例1及び2と異ならせて変更(第3ミーリング条件)したことを除いては、実施例1と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0108】
比較例1:bare LCO
LCOをそのまま正極活物質として使用した。
【0109】
比較例2:SiO @Gr複合体0.25wt%コーティングLCO(シリカ0.15wt%)
LiCoO(以下、LCOという)と比較製造例1で準備された複合体とを使用したことを除いては、実施例1と同様な方法でミーリングを行い、複合正極活物質を得た。
LCOと、製造例1により得た複合体との混合重量比は、99.75:0.25であった。
【0110】
比較例3:SiO @Gr複合体0.25wt%コーティングLCO(シリカ0.15wt%)
LCOと、比較製造例1で準備された複合体とを使用したことを除いては、実施例2と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0111】
比較例4:SiO @Gr複合体0.25wt%コーティングLCO(シリカ0.15wt%)
LCOと、比較製造例1で準備された複合体とを使用したことを除いては、実施例3と同様な方法で複合正極活物質を製造した。
【0112】
(リチウム電池(half cell)の製造)
実施例4
(正極の製造)
実施例1で製造された複合正極活物質、炭素導電剤(Denka Black)及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を92:4:4の重量比で混合した混合物を、N-メチルピロリドン(NMP)と共に、メノウ乳鉢で混合し、スラリーを製造した。
15μm厚のアルミニウム集電体上に、前記スラリーをバーコーティングし、常温で乾燥させた後、真空、120℃の条件でもう一度乾燥させ、圧延及びパンチングし、55μm厚の正極板を製造した。
【0113】
(コインセルの製造)
前記で製造された正極板を使用し、リチウム金属を相対電極にして、PTFEセパレータ(separator)と1.3M LiPFが、エチレンカーボネート(EC)+エチルメチルカーボネート(EMC)+ジメチルカーボネート(DMC)(3:4:3の体積比)に溶けている溶液を電解質として使用し、コインセルをそれぞれ製造した。
【0114】
実施例5及び6
実施例1で製造された複合正極活物質の代わりに、実施例2及び3で準備された複合正極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例4と同様な方法でコインセルを製造した。
【0115】
比較例5ないし8
実施例1で製造された複合正極活物質の代わりに、比較例1ないし4で準備された複合正極活物質をそれぞれ使用したことを除いては、実施例4と同様な方法でコインセルを製造した。
【0116】
評価例1:XPSスペクトル評価
製造例1で製造された複合体の製造過程において、経時的にQunatum 2000(Physical Electronics)を使用して、XPSスペクトルを測定した。昇温前、1分経過後、5分経過後、30分経過後、1時間経過後及び4時間経過後の試料についてのC 1s軌道及びAl 2p軌道のXPSスペクトルをそれぞれ測定した。昇温初期には、Al 2p軌道についてのピークのみが表され、C 1s軌道についてのピークは表れていない。30分経過後には、C 1s軌道についてのピークが鮮明に表れ、Al 2p軌道についてのピークの大きさが顕著に減少した。
【0117】
30分経過後には、284.5eV付近で、グラフェンの成長によるC-C結合及びC=C結合に起因したC 1s軌道についてのピークが鮮明に表れた。
【0118】
反応時間が経過するにつれて、アルミニウムの酸化数が減少することにより、Al 2p軌道のピーク位置がさらに低い結合エネルギー(eV)の方にシフトした。
【0119】
したがって、反応が進められるにつれて、Al粒子上にグラフェンが成長し、Alの還元生成物であるAl(0<x<3)が生成されることを確認した。
【0120】
製造例1で製造された複合体試料の10個領域でのXPS分析結果を通じて、炭素及びアルミニウムの平均含量を測定した。測定結果に対し、各領域別のアルミニウム含量の偏差を計算した。アルミニウム含量の偏差を平均値に対する百分率で表し、それを均一度とした。アルミニウム含量の偏差の平均値に対する百分率、すなわち、アルミニウム含量の均一度は、1%であった。したがって、製造例1で製造された複合体内にアルミナが均一に分布されることを確認した。
【0121】
評価例2:SEM、HR-TEM及びSEM-EDX分析
製造例1で製造された複合体、実施例1で製造された複合正極活物質、及び比較例1のbare LCOについての走査電子顕微鏡、高解像度透過電子顕微鏡及びEDX分析を行った。SEM-EDAX分析時、FEI社製の Titan 80-300を使用した。
【0122】
製造例1で製造された複合体は、Al粒子及びその還元生成物であるAl(0<z<3)粒子がグラフェンに埋め込まれた構造を有することを表している。Al粒子及びAl(0<z<3)粒子のうち選択された一つ以上の粒子の外郭にグラフェン層が配置されることを確認した。Al粒子及びAl(0<z<3)粒子のうち選択された一つ以上の粒子は、グラフェンマトリックス内に均一に分散された。Al粒子及びAl(0<z<3)粒子のうち一つ以上の粒径は、約20nmであった。製造例1で製造された複合体の粒径は、約100nmないし200nmであった。
【0123】
実施例1で製造された複合正極活物質において、LCOコア上に、グラフェンを含む複合体により形成されたシェルが配置されることを確認した。
【0124】
比較例1のbare LCO及び実施例1で製造された複合正極活物質についてのSEM-EDAX分析を行った。
【0125】
比較例1のbare LCO複合正極活物質の表面にはアルミニウム(Al)が観察されなかった。それに対し、実施例1の複合正極活物質の表面に分布されたアルミニウム(Al)を確認した。したがって、実施例3の複合正極活物質において、LCOコア上に、製造例1で製造された複合体が均一にコーティングされ、シェルを形成することを確認した。
【0126】
評価例3:常温充放電特性の評価
実施例4ないし6、及び比較例5ないし8で製造されたリチウム電池に対し、25℃で0.1C rateの電流で、電圧が4.55V(対Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.55Vを維持しつつ、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時、電圧が3.0V(対Li)に至るまで、0.1C rateの定電流で放電した(化成(formation)サイクル)。
【0127】
化成サイクルを経たリチウム電池に対し、25℃で0.2C rateの電流で、電圧が4.55V(対Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.55Vを維持しつつ、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時、電圧が3.0V(対Li)に至るまで、0.2C rateの定電流で放電した(初回サイクル)。
【0128】
初回サイクルを経たリチウム電池に対し、25℃で1C rateの電流で、電圧が4.55V(対Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.55Vを維持しつつ、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時、電圧が3.0V(対Li)に至るまで、1C rateの定電流で放電し(二回目サイクル)、そのようなサイクルを50回目サイクルまで同様な条件で反復(50回反復)した。
【0129】
全充放電サイクルにおいて、一回の充電/放電サイクル後、10分間の休止時間を置いた。
【0130】
常温充放電実験結果の一部を下記の表1に示した。50回目サイクルでの容量維持率は、下記の数式1により定義される。
[数1]
容量維持率[%]=[50回目サイクルでの放電容量/初回サイクルでの放電容量]×100
【0131】
【表1】
【0132】
表1から分かるように、実施例4ないし6のリチウム電池は、比較例5ないし7のリチウム電池に比べて、常温寿命特性が向上した。
【0133】
一方、比較例6及び7のリチウム電池は、複合体がコーティングされていない正極活物質を含む比較例5のリチウム電池に比べて、常温寿命特性が類似していた。
【0134】
評価例4:高温及び高電圧充放電特性の評価
実施例4ないし6、及び比較例5ないし8で製造されたリチウム電池に対し、45℃で0.1C rateの電流で、電圧が4.58V(対Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.58Vを維持しつつ、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時、電圧が3.0V(対Li)に至るまで、0.1C rateの定電流で放電した(化成(formation)サイクル)。
【0135】
化成サイクルを経たリチウム電池に対し、45℃で0.2C rateの電流で、電圧が4.58V(対Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.58Vを維持しつつ、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時、電圧が3.0V(対Li)に至るまで、0.2C rateの定電流で放電した(初回サイクル)。
【0136】
初回サイクルを経たリチウム電池に対し、45℃で1C rateの電流で、電圧が4.58V(対Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.58Vを維持しつつ、0.05C rateの電流でカットオフした。次いで、放電時、電圧が3.0V(対Li)に至るまで、1C rateの定電流で放電し(二回目サイクル)、そのようなサイクルを50回目サイクルまで同様な条件で反復(50回反復)した。
【0137】
全充放電サイクルにおいて、一回の充電/放電サイクル後、10分間の休止時間を置いた。
【0138】
高温充放電実験結果の一部を下記の表2に示した。50回目サイクルでの容量維持率は、下記の数式1により定義される。
[数1]
容量維持率[%]=[50回目サイクルでの放電容量/初回サイクルでの放電容量]×100
【0139】
【表2】
【0140】
表2から分かるように、実施例4ないし6のリチウム電池は、比較例5ないし7のリチウム電池に比べて、高温寿命特性が顕著に向上した。
【0141】
一方、比較例6及び7のリチウム電池は、複合体がコーティングされていない複合正極活物質を含む比較例5のリチウム電池に比べて、高温寿命特性がさらに低下した。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、例えば、バッテリ関連の技術分野に適用可能である。
【符号の説明】
【0143】
1 リチウム電池
2 負極
3 正極
4 セパレータ
5 電池ケース
6 キャップアセンブリ
図1