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特許7143885加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法
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  • 特許-加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20220921BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220921BHJP
   B32B 27/22 20060101ALI20220921BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20220921BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20220921BHJP
   B29C 51/14 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B32B27/30 D
B32B27/30 A
B32B27/40
B32B27/22
B29C51/10
B29C51/12
B29C51/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020525633
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2019023339
(87)【国際公開番号】W WO2019240193
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018113189
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(72)【発明者】
【氏名】尾知 修平
(72)【発明者】
【氏名】由上 栞
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敬
(72)【発明者】
【氏名】松田 祥弥
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-1769(JP,A)
【文献】特開平9-141790(JP,A)
【文献】特開平7-24970(JP,A)
【文献】特開平10-183027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B29C51/10
B29C51/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可塑剤を含む基材フィルムと、
ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、及びポリエステルからなる群から選択される1種以上を含む第1層と、
フルオロオレフィンに基づく単位、並びに、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル及びアリルエステルからなる群から選択される1種以上の非フッ素単量体に基づく単位を含む含フッ素重合体を含む第2層と、をこの順に有し、
前記第2層の第1層側の表面の水接触角が前記第1層の第2層側の表面の水接触角よりも大きく、前記第2層の第1層側の表面の水接触角と前記第1層の第2層側の表面の水接触角との差が0度超50度以下であることを特徴とする加飾フィルム。
【請求項2】
前記第2層が、シリコーン系表面調整剤又はフッ素系表面調整剤を含む、請求項1に記載の加飾フィルム。
【請求項3】
前記第2層の第1層側の表面の水接触角と前記第1層の第2層側の表面の水接触角との差が10度以上である、請求項1又は2に記載の加飾フィルム。
【請求項4】
前記第2層の第1層側の表面の水接触角と前記第1層の第2層側の表面の水接触角との差が30度以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項5】
前記含フッ素重合体が架橋構造を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項6】
前記基材フィルムが、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項7】
前記可塑剤の含有量が、前記基材フィルムの全質量に対して、0.5~30質量%である、請求項1~6のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項8】
前記可塑剤が、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、及び、トリメリット酸エステルからなる群から選択される1種以上を含む可塑剤である、請求項1~7のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項9】
自動車外装部品又は自動車内装部品に用いられる3次元成形品を加飾するために用いられる、請求項1~8のいずれか1項に記載の加飾フィルム。
【請求項10】
前記基材フィルム上に積層された、水接触角が60~100度である第1層の表面上に、表面張力が10~40mN/mである組成物を塗布して第2層を形成して、請求項1~9のいずれか1項に記載の加飾フィルムを得る、加飾フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記組成物が、架橋性基を有する含フッ素重合体及び硬化剤を含み、
前記含フッ素重合体が有する架橋性基のモル数に対する、硬化剤が有する架橋性基のモル数の比が0.05~2.0である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記含フッ素重合体の数平均分子量が2,000~50,000である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか1項に記載の加飾フィルムと3次元成形品の被加飾面とを減圧下で圧着して、前記第2層を最表面に有する加飾フィルム付き3次元成形品を得ることを特徴とする加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾フィルム、加飾フィルムの製造方法、及び、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用内外装品等の分野で使用される3次元成形品の表面は、意匠性の付与や表面の保護を目的として、加飾フィルムによる加飾が施される場合がある。特許文献1には、ポリ塩化ビニルを含む層上にフッ素樹脂層を配置する加飾フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-118553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フッ素樹脂層を構成する材料としては、フルオロオレフィンに基づく単位を含む種々の含フッ素重合体が知られている。
本発明者らは、特許文献1を参考にして、可塑剤が含まれる基材フィルム上に所定の含フッ素重合体を含む層を配置したところ、可塑剤が含フッ素重合体を含む層に移行して、含フッ素重合体を含む層が膨潤する場合があるのを知見した。
そこで、基材フィルムと含フッ素重合体を含む層との間に他の層を介在させて、可塑剤の移行を防ごうとしたところ、含フッ素重合体を含む層の密着性が劣る場合があった。
【0005】
本発明は、含フッ素重合体を含む層の膨潤が抑制され、含フッ素重合体を含む層の密着性に優れる加飾フィルムの提供を課題とする。
また、本発明は、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法の提供も課題とする
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により課題を解決できるのを見出した。
(1) 可塑剤を含む基材フィルムと、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、及びポリエステルからなる群から選択される1種以上を含む第1層と、
フルオロオレフィンに基づく単位、並びに、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル及びアリルエステルからなる群から選択される1種以上の非フッ素単量体に基づく単位を含む含フッ素重合体を含む第2層と、をこの順に有し、
前記第2層の第1層側の表面の水接触角が前記第1層の第2層側の表面の水接触角よりも大きく、前記第2層の第1層側の表面の水接触角と前記第1層の第2層側の表面の水接触角との差が0度超50度以下であることを特徴とする加飾フィルム。
【0007】
(2) 前記第2層が、シリコーン系表面調整剤又はフッ素系表面調整剤を含む、(1)に記載の加飾フィルム。
(3) 前記第2層の第1層側の表面の水接触角と前記第1層の第2層側の表面の水接触角との差が10度以上である、(1)又は(2)に記載の加飾フィルム。
(4) 前記第2層の第1層側の表面の水接触角と前記第1層の第2層側の表面の水接触角との差が30度以下である、(1)~(3)のいずれかに記載の加飾フィルム。
(5) 前記含フッ素重合体が架橋構造を有する、(1)~(4)のいずれかに記載の加飾フィルム。
【0008】
(6) 前記基材フィルムが、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、(1)~(5)のいずれかに記載の加飾フィルム。
(7) 前記可塑剤の含有量が、前記基材フィルムの全質量に対して、0.5~30質量%である、(1)~(6)のいずれかに記載の加飾フィルム。
(8) 前記可塑剤が、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、及び、トリメリット酸エステルからなる群から選択される1種以上を含む可塑剤である、(1)~(7)のいずれかに記載の加飾フィルム。
(9) 自動車外装部品又は自動車内装部品に用いられる3次元成形品を加飾するために用いられる、(1)~(8)のいずれかに記載の加飾フィルム。
【0009】
(10) 前記基材フィルム上に積層された、水接触角が60~100度である第1層の表面上に、表面張力が10~40mN/mである組成物を塗布して第2層を形成して、(1)~(9)のいずれかに記載の加飾フィルムを得る、加飾フィルムの製造方法。
(11) 前記組成物が、架橋性基を有する含フッ素重合体及び硬化剤を含み、前記含フッ素重合体が有する架橋性基のモル数に対する、硬化剤が有する架橋性基のモル数の比が0.05~2.0である、(10)に記載の製造方法。
(12) 前記含フッ素重合体の数平均分子量が2,000~50,000である、(11)に記載の製造方法。
(13) 前記(1)~(9)のいずれかに記載の加飾フィルムと3次元成形品の被加飾面とを減圧下で圧着して、前記第2層を最表面に有する加飾フィルム付き3次元成形品を得ることを特徴とする加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、含フッ素重合体を含む層の膨潤が抑制され、含フッ素重合体を含む層の密着性に優れる加飾フィルムを提供できる。
また、本発明によれば、加飾フィルム付き3次元成形品の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の加飾フィルムの層構造の一例を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。同様に、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びメタクリル酸の総称であり、(メタ)アクリルアミドはアクリルアミド及びメタクリルアミドの総称である。また、(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリレートに基づく単位を主とする重合体からなる樹脂を意味する。
単位とは、単量体が重合して直接形成された、上記単量体1分子に基づく原子団と、上記原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。なお、重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、重合体を核磁気共鳴スペクトル(NMR)法により分析して求められる。
酸価と水酸基価は、それぞれ、JIS K 0070-3(1992)の方法に準じて測定される値である。
ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)法で測定される、重合体の中間点ガラス転移温度である。ガラス転移温度はTgともいう。
軟化温度は、JIS K 7196(1991)の方法に準じて測定される値である。
数平均分子量及び重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値である。数平均分子量はMnともいい、重量平均分子量はMwともいう。
【0013】
加飾フィルムの厚さは、渦電流式膜厚計を用いて測定される値である。渦電流式膜厚計としては、例えば、サンコウ電子社製 EDY-5000等を使用できる。加飾フィルムにおける各層の厚さは、エネルギー分散型X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡によって加飾フィルムの断面を観察して得られる各層の厚さの比と、加飾フィルムの厚さとから算出できる。
全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠し、D光源にて測定される値である。
組成物の表面張力は、du Nouy法(リング法)により得られる値である。
組成物の固形分の質量とは、組成物が溶媒を含む場合に、組成物から溶媒を除去した質量である。なお、溶媒以外の組成物の固形分を構成する成分に関して、その性状が液体状であっても、固形分とみなす。なお、組成物の固形分の質量は、組成物1gを130℃で20分加熱した後に残存する質量として求められる。
【0014】
本発明の加飾フィルム(以下、本加飾フィルムともいう。)は、可塑剤を含む基材フィルムと、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、及びポリエステルからなる群から選択される1種以上(以下、特定高分子ともいう。)を含む第1層と、フルオロオレフィンに基づく単位(以下、単位Fともいう。)、並びに、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル及びアリルエステルからなる群から選択される1種以上の単量体(以下、単量体Dともいう。)に基づく単位(以下、単位Dともいう。)を含む含フッ素重合体(以下、含フッ素重合体Fともいう。)を含む第2層と、をこの順に有する。
また、第2層の第1層側の表面の水接触角が第1層の第2層側の表面の水接触角よりも大きく、第2層の第1層側の表面の水接触角と前記第1層の第2層側の表面の水接触角との差が0度超50度以下である。
【0015】
基材フィルム上に第2層が接するように配置されている場合、基材フィルムに含まれる可塑剤が第2層に移動して、第2層が膨潤する場合がある。それに対して、本発明者らは、所定の成分を含む第1層を基材フィルムと第2層との間に配置すると、可塑剤の第2層への移行が抑制されるのを知見した。
ただし、基材フィルムと第2層との間に配置される層の性質によっては、第1層と第2層との密着性が劣る場合がある。そこで、本発明者らは、第2層の第1層側の表面の水接触角と、第1層の第2層側の表面の水接触角とを所定の関係に調整すると、第1層と第2層との密着性が向上するのも知見した。この理由は、必ずしも明らかではないが、第1層に対する第2層の疎水性が特定の状態であることで、第1層と第2層との界面における親和性が向上すると考えられる。さらには、第1層による可塑剤の移行抑制効果により、第1層と第2層との界面に可塑剤が存在しないため、第1層と第2層の密着性が高度なまま保持されると考えられる。
【0016】
まず、本加飾フィルムの構成について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態である加飾フィルム10の層構造を示す概略側面図である。加飾フィルム10は、接合層12、基材フィルム14、第1層16、第2層18を有し、各層がこの順に配置されている。
加飾フィルム10の接合層12と3次元成形品(後述)の被加飾面とを貼着すると、第2層18、第1層16、基材フィルム14、接合層12、3次元成形品の順に配置された加飾フィルム付き3次元成形品が得られる。このように、第2層18は、加飾フィルム付き3次元成形品の最表面に位置する。
【0017】
以下、本加飾フィルムを構成する各部材について詳述する。
【0018】
基材フィルムは、本加飾フィルムを製造する際に、各層を支持するための支持フィルムとして機能する。
基材フィルムを構成する材料の具体例としては、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル・アクリル酸エステル・スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン共重合体)、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂が挙げられる。
中でも、基材フィルムを構成する材料としては、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ABS樹脂及び(メタ)アクリル樹脂からなる群から選択される1種以上が好ましい。特に、基材フィルムを構成する材料が塩化ビニル樹脂である場合に、本発明の効果が最も発揮される。
【0019】
基材フィルムは、可塑剤を含む。可塑剤の具体例としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、トリメリット酸エステル、脂肪酸エステル、エポキシ化合物が挙げられ、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル及びトリメリット酸エステルが好ましく、フタル酸エステル及びアジピン酸エステルが特に好ましい。
基材フィルムは、可塑剤の二種以上を含んでもよい。
フタル酸エステルの具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソノニルが挙げられ、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル及びフタル酸ジイソノニルが好ましい。
アジピン酸エステルの具体例としては、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ブトキシエトキシエチル・ベンジル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル、アジピン酸ジイソデシルが挙げられる。
リン酸エステルの具体例としては、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸ジフェニル-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、トリス(エトキシエトキシエチル)ホスフェートが挙げられる。
トリメリット酸エステルの具体例としては、トリメリット酸トリメチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ-2-エチルヘキシル、トリメリット酸トリイソノニル、トリメリット酸トリイソデシルが挙げられる。
脂肪酸エステルの具体例としては、オレイン酸イソブチルが挙げられる。
エポキシ化合物の具体例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル(エポキシ化脂肪酸オクチルエステル等)が挙げられる。
【0020】
可塑剤の含有量は、基材フィルムの全質量に対して、0.5~30質量%が好ましく、1.0~20質量%がより好ましく、2.0~10質量%が特に好ましい。
本加飾フィルムは、基材フィルムを構成する材料が塩化ビニル樹脂であり、かつ、基材フィルムに含まれる可塑剤が、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル、又は、トリメリット酸エステルである場合に、その効果が顕著に発揮される。
【0021】
基材フィルムの厚さは、10~500μmが好ましく、20~100μmが特に好ましい。
基材フィルムは、少なくとも片面に凹凸模様を有していてもよい。凹凸模様は、エンボス加工、ヘアーライン加工、ケミカルエッチング加工等の加工方法により形成できる。
【0022】
第1層は、基材フィルム上に配置される層であり、基材フィルムに含まれる可塑剤の第2層への移行を抑制するための層である。なお、第1層は、基材フィルム上に接するように配置されていてもよいし、他の層を介して配置されていてもよい。
第1層は、ポリフッ化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、及びポリエステルからなる群から選択される1種以上を含み、第2層に含まれる含フッ素重合体Fを含まない。第2層への可塑剤の移行を抑制するとともに、耐候性にも優れ、基材フィルムを保護する点では、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。基材フィルムとの密着性が優れる点では、ポリエステルが好ましい。
【0023】
第1層は、その基材フィルム側の表面又はその第2層側の表面が金属蒸着されていてもよい。この場合、第1層の外観に金属光沢が付与されるため、本発明の加飾フィルムを自動車内装又は自動車外装用部品に適用するにおいて特に好適である。金属蒸着に用いる金属としては、アルミニウム、錫、銀、インジウム等が挙げられ、電波透過性に優れる点からは、インジウムが好ましい。
【0024】
ポリフッ化ビニリデンとは、フッ化ビニリデンを重合して得られる高分子である。
ポリフッ化ビニリデンは、フッ化ビニリデンの単独重合体であってもよいし、ポリフッ化ビニリデンの特性を損なわない範囲において、フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体の具体例としては、エチレン、プロピレン、イソブテン、ブタジエン等の炭化水素系ビニル単量体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート単量体、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系ビニル単量体、ペルフルオロブテン酸やマレイン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。
なお、ポリフッ化ビニリデンの特性を損なわない範囲とは、上記他の単量体に基づく単位の含有量が、ポリフッ化ビニリデンが含む全単位に対して、70モル%以下であることを意味し、可塑剤への耐性に優れる点から、50モル%未満がより好ましく、5モル%未満がさらに好ましく、3モル%未満が特に好ましい。
ポリフッ化ビニリデンのMwとしては、50,000~5,000,000が好ましく、70,000~500,000が特に好ましい。
【0025】
ポリメチルメタクリレートとは、メチルメタクリレートを重合して得られる高分子である。ポリメチルメタクリレートは、柔軟性に優れ、基材フィルムへの追従性に優れる点で好ましい。
ポリメチルメタクリレートは、メチルメタクリレートの単独重合体であってもよいし、ポリメチルメタクリレートの特性を損なわない範囲において、メチルメタクリレートと他の単量体との共重合体であってもよい。他の単量体の具体例としては、メチルメタクリレート以外の(メタ)アクリレート(エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシ基やエポキシ基を有してよい(メタ)アクリレート等)、不飽和カルボン酸((メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等)、不飽和カルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレンが挙げられる。
なお、ポリメチルメタクリレートの特性を損なわない範囲とは、上記他の単量体に基づく単位の含有量が、ポリメチルメタクリレートが含む全単位に対して、50モル%以下であることを意味し、可塑剤への耐性に優れる点から、20モル%未満であることが好ましい。
ポリメチルメタクリレートのMwとしては、30,000~200,000が好ましく、40,000~150,000が特に好ましい。
【0026】
ポリウレタンとは、ウレタン結合を複数有する高分子である。一般的に、ポリウレタンは、ポリイソシアネートとポリオールとの重付加反応によって得られる。ポリウレタンは、耐薬品性に優れ、可塑剤の第2層への移行を抑制する点で好ましい。
ポリイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート、テトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが挙げられる。
ポリオールの具体例としては、高分子ポリオール(例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール)が挙げられる。
ポリウレタンのMwとしては、50,000~300,000が好ましく、70,000~150,000が特に好ましい。
【0027】
ポリエステルは、多価カルボン酸と多価アルコールとの脱水縮合又は多価カルボン酸と多価カルボン酸エステルのエステル交換反応により得られる高分子である。
多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、フタル酸無水物等が挙げられる。多価カルボン酸としては、基材フィルムとの密着性に優れる点から、イソフタル酸又はテレフタル酸が好ましく、テレフタル酸が特に好ましい。
多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、スピログリコール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。多価アルコールとしては、基材フィルムとの密着性に優れる点から、エチレングリコールが好ましい。
多価カルボン酸エステルとしては、テレフタル酸ジメチル、ナフタレンジカルボン酸ジメチル等が挙げられ、テレフタル酸ジメチルが好ましい。
ポリエステルとしては、基材フィルムとの密着性に優れる点から、ポリエチレンテレフタラートが特に好ましい。
ポリエステルのMwとしては、5,000~100,000が好ましく、10,000~50,000が特に好ましい。
【0028】
第1層中における特定高分子の含有量は、第2層への可塑剤の移行を抑制する点から、第1層全質量に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましい。上限は、通常100質量%である。
特定高分子は、2種以上を併用してもよい。
相溶性に優れる点からは、特定高分子としてポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレートとを併用するのが好ましい。ポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレートとの混合比によって、第1層における耐候性と柔軟性とが共により優れる。ポリフッ化ビニリデンとポリメチルメタクリレートとを併用する場合、ポリフッ化ビニリデンに対するポリメチルメタクリレートの質量比は、0.1~9.5が好ましく、0.9~9.0が特に好ましい。
本加飾フィルムは、第1層を二以上有していてもよい。例えば、ポリエステルを主成分として含む第1層と、ポリウレタンを主成分として含む第1層とが積層されている場合、基材フィルム又は第2層と、第1層と、の密着性がより優れる。
【0029】
第1層は、特定高分子以外の成分を含んでいてもよい。特定高分子以外の成分の具体例としては、フィラー(シリカ等の無機フィラー、樹脂ビーズ等の有機フィラー等)、着色剤(染料、有機顔料、無機顔料、金属又はマイカ等を用いた光輝顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、つや消し剤、脱ガス剤が挙げられる。特に、第1層が着色剤を含む場合、本発明の加飾フィルムの意匠性が優れる。
なお、第1層は、可塑剤を実質的に含まないのが好ましい。実質的に含まないとは、可塑剤の含有量が、第1層の全質量に対して、5質量%以下であることを意味する。第1層における可塑剤の含有量は、第2層への移行を抑制する点から、1質量%以下であるのが好ましい。下限は、通常0質量%である。
【0030】
第1層の厚さは、加飾フィルムの延伸性の点から、2~200μmが好ましく、5~100μmがより好ましい。
【0031】
第1層の第2層側の表面の水接触角は、第1層と第2層との密着性の点から、60~100度が好ましく、70~90度がより好ましい。
上記水接触角は、純水の静的接触角であり、JIS R3257:1999に準拠したθ/2法により測定できる。具体的には、試料の表面上に直径1~2mmの液滴を滴下し、着滴30秒後に、水滴の左右端点と頂点とを結ぶ直線の、試料表面に対する角度θ1を求め、これを2倍して水接触角θ2(θ2=2θ1)を得る。この測定方法にて5回測定して得られる平均値が、目的とする水接触角である。
なお、水接触角θ2は、試料表面上に着滴した状態を写真で撮影後、その写真を拡大して直読又は画像解析により算出できる。測定装置としては、自動接触角計(協和界面科学株式会社製 DM-501等)等を用いることができる。
また、図1に示されるような積層構造を有する加飾フィルムにおいて、第1層の第2層側の表面の水接触角を測定するには、第1層と第2層との界面Lにおいて第1層と第2層とを剥離させて第1層の表面を露出させ、得られた第1層表面における水接触角を測定すればよい。第1層の表面を露出させる場合には、まずエネルギー分散型X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡によって断面観察し、各層の深さを推定した後、剥離強度試験機(例えば、タイプラ・ウィンテス社製 SAICAS EN・NN)等を使用して第2層を除去すれば、均一な第1層表面が得られる。この場合、界面Lから第1層側に2μm以内の面であれば、第1層の第2層側の表面と見なすことができる。
ただし、第1層が均一な層である場合には、第1層を界面Lと平行な任意の面で切断し、得られた切断面における水接触角を測定して得た値を、第1層の第2層側の表面の水接触角とみなしてもよい。ここで、第1層が均一な層であるとは、第1層の第2層側の表面の水接触角と、第1層の基材フィルム側の表面の水接触角との差が5度以下(好ましくは3度以下)であることを意味する。
【0032】
第1層の形成方法の具体例としては、特定高分子を含むフィルム等を基材フィルム上にラミネートする方法が挙げられる。また、他の方法としては、特定高分子を含む溶液を基材フィルム上に塗布して、必要に応じて乾燥処理や加熱処理を施す方法が挙げられる。
【0033】
第2層は、第1層上に配置される層であり、通常、本加飾フィルムの最外層に位置する。第2層を最外層に配置することにより、本加飾フィルムの耐擦傷性が向上する。
第2層は、含フッ素重合体Fを含む。
含フッ素重合体Fは、架橋構造を有していてもよい。含フッ素重合体Fにおける架橋構造は、架橋構造を有さない含フッ素重合体Fが電子線架橋等により架橋して形成される構造であってもよく、架橋性基を有し架橋構造を有さない含フッ素重合体F(以下、含フッ素重合体Fともいう。)が硬化剤等により架橋して形成される構造であってもよい。第2層に含まれる含フッ素重合体Fは、一部が架橋構造を有する含フッ素重合体Fであってもよく、全部が架橋構造を有する含フッ素重合体Fであってもよい。
含フッ素重合体Fが架橋構造を有する場合、かかる含フッ素重合体Fは、含フッ素重合体Fの架橋物であることが好ましい。
なお、第2層が含む含フッ素重合体Fは、通常、非ブロック共重合体である。
【0034】
フルオロオレフィンは、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されたオレフィンである。フルオロオレフィンは、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。フルオロオレフィンの炭素数としては、2~8が好ましく、2~4が特に好ましい。
フルオロオレフィンの具体例としては、CF=CF、CF=CFCl、CF=CHF、CH=CF、CF=CFCF、CF=CHCF、CFCH=CHF、CFCF=CHが挙げられる。フルオロオレフィンとしては、共重合性の点から、CF=CF、CF=CFCl、CFCH=CHF、及びCFCF=CHが好ましく、CF=CF及びCF=CFClがより好ましく、CF=CFClが特に好ましい。
フルオロオレフィンは、2種以上を併用してもよい。
単位Fの含有量は、本加飾フィルムの耐候性の点から、含フッ素重合体Fが含む全単位に対して、20~70モル%が好ましく、40~60モル%がより好ましく、45~55モル%が特に好ましい。
【0035】
単位Dは、含フッ素重合体Fの耐擦傷性に主に寄与すると考えられる。単量体Dは、架橋性基及びフッ素原子を有さない非フッ素単量体であるのが好ましい。
単量体Dとしては、式X-Zで表される単量体が好ましい。
は、CH=CHO-、CH=CHCHO-、CH=CHOC(O)-、又は、CH=CHCHOC(O)-である。Xとしては、フルオロオレフィンとの共重合性及び本加飾フィルムの耐候性の点から、CH=CHO-及びCH=CHOC(O)-が好ましい。
【0036】
は炭素数1~24の炭化水素基である。1価の炭化水素基は、直鎖状であってもよく分岐鎖状であってもよい。また、1価の炭化水素基は、環構造からなっていてもよく、環構造を含んでいてもよい。また、1価の炭化水素基は、1価の飽和炭化水素基であってもよく1価の不飽和炭化水素基であってもよい。
1価の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、及びシクロアルキルアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~10のシクロアルキル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数7~12のアラルキル基、及び炭素数6~10のシクロアルキルアルキル基が特に好ましい。
1価の炭化水素基としては、加飾フィルムの柔軟性を向上させたい点からは、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基が特に好ましい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基が挙げられ、メチル基が好ましい。
シクロアルキル基の具体例としては、シクロヘキシル基が挙げられる。
アラルキル基の具体例としては、ベンジル基が挙げられる。
シクロアルキルアルキル基の具体例としては、シクロヘキシルメチル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基が挙げられる。
なお、シクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基のシクロアルキル部分、アリール基又はアラルキル基のアリール部分の水素原子は、アルキル基で置換されていてもよい。この場合、置換基としてのアルキル基の炭素数は、シクロアルキル基、アリール基、又は、アラルキル基の炭素数には含めない。
【0037】
単量体Dの具体例としては、エチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、酢酸ビニル、ピバル酸ビニル、ネオノナン酸ビニル(HEXION社商品名「ベオバ9」)、ネオデカン酸ビニル(HEXION社商品名「ベオバ10」)、安息香酸ビニル、tert-ブチル安息香酸ビニル、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
単量体Dは、2種以上を併用してもよい。
【0038】
単位Dの含有量は、含フッ素重合体Fが含む全単位に対して、1~60モル%が好ましく、25~40モル%が特に好ましい。
【0039】
含フッ素重合体Fは、本塗膜の硬度及び耐擦傷性、並びに、可塑剤に対する耐膨潤性の点から、架橋構造を有するのが好ましい。含フッ素重合体Fが架橋構造を有すると、第1層に微量に可塑剤が含まれる場合でも、第2層中への移行をより抑制できる。
架橋構造を有する含フッ素重合体Fを製造する方法としては、単位F、単位D、及び、架橋性基を有する単位(以下、単位Cともいう。)を含む含フッ素重合体Fと、硬化剤とを反応させる方法が挙げられる。
なお、含フッ素重合体Fが含む単位F及び単位Dについては、上述した通りである。なお、含フッ素重合体F中における単位F及び単位Dの含有量の好適範囲は、それぞれ上述した含フッ素重合体F中の各単位の含有量の好適範囲と同じである。
【0040】
単位Cは、架橋性基を有する単量体(以下、単量体Cともいう。)に基づく単位であってもよく、単位Cを含む含フッ素重合体Fの架橋性基を、異なる架橋性基に変換させて得られる単位であってもよい。このような単位としては、ヒドロキシ基を有する単位を含む含フッ素重合体Fに、ポリカルボン酸やその酸無水物等を反応させて、ヒドロキシ基の一部又は全部をカルボキシ基に変換させて得られる単位が挙げられる。単位Cは、フッ素原子を有さないことが好ましい。
単位Cにおける架橋性基の具体例としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、アルコキシシリル基、エポキシ基、オキセタニル基が挙げられ、本加飾フィルムの強度が向上する点から、水酸基及びカルボキシ基が好ましい。
【0041】
架橋性基がヒドロキシ基である単量体Cとしては、アリルアルコール、及び、ヒドロキシ基を有する、ビニルエーテル、ビニルエステル、アリルエーテル、アリルエステル、(メタ)アクリレートが挙げられ、アリルアルコール及び式X21-Z21で表される単量体(以下、単量体C1ともいう。)が好ましい。
21は、CH=CHC(O)O-、CH=C(CH)C(O)O-、CH=CHOC(O)-、CH=CHCHOC(O)-、CH=CHO-又はCH=CHCHO-であり、CH=CHO-又はCH=CHCHO-であることが好ましい。
21は、ヒドロキシ基を有する炭素数2~42の1価の有機基である。上記有機基は、直鎖状でもよく、分岐鎖状でもよい。また、上記有機基は、環構造からなっていてもよく、環構造を含んでいてもよい。
上記有機基としては、水酸基を有する炭素数2~6のアルキル基、水酸基を有する炭素数6~8のシクロアルキレン基を含むアルキル基、及び水酸基を有するポリオキシアルキレン基が好ましい。
【0042】
単量体C1の具体例としては、CH=CHO-CH-cycloC10-CHOH、CH=CHCHO-CH-cycloC10-CHOH、CH=CHOCHCHOH、CH=CHCHOCHCHOH、CH=CHOCHCHCHCHOH、CH=CHCHOCHCHCHCHOH、CH=CHOCH-cycloC10-CHO(CHCHO)15Hが挙げられる。なお、「-cycloC10-」はシクロへキシレン基を表し、(-cycloC10-)の結合部位は、通常1,4-である。
単量体C1は、2種以上を併用してもよい。
【0043】
架橋性基がカルボキシ基である単量体Cとしては、不飽和カルボン酸、(メタ)アクリル酸等が挙げられ、式X22-Z22で表される単量体(以下、単量体C2ともいう。)が好ましい。
22は、CH=CH-、CH(CH)=CH-又はCH=C(CH)-であり、CH=CH-又はCH(CH)=CH-であることが好ましい。
22は、カルボキシ基又はカルボキシ基を有する炭素数1~12の1価の飽和炭化水素基であり、カルボキシ基又は炭素数1~10のカルボキシアルキル基であることが好ましい。
【0044】
単量体C2の具体例としては、CH=CHCOOH、CH(CH)=CHCOOH、CH=C(CH)COOH、式CH=CH(CHn2COOHで表される化合物(ただし、n2は1~10の整数を示す。)が挙げられる。
単量体C2は、2種以上を併用してもよい。
【0045】
単量体Cとしては、単量体C1及び単量体C2の一方のみを用いてもよく、両方を用いてもよい。
単位Cの含有量は、第2層の硬度と耐擦傷性とのバランスの点から、含フッ素重合体Fが含む全単位に対して、1~40モル%が好ましく、3~35モル%がより好ましく、5~20モル%が特に好ましい。
含フッ素重合体Fは、上記以外の単位を含んでいてもよい。
含フッ素重合体Fは、本加飾フィルムの耐候性及び耐擦傷性の点から、含フッ素重合体Fが含む全単位に対して、単位Fと単位Dと単位Cとを、この順に20~70モル%、1~60モル%、1~40モル%含むのが好ましい。
【0046】
含フッ素重合体FのTgは、本加飾フィルムの硬度が向上する点から、10~120℃が好ましく、30~100℃がより好ましく、40~80℃が特に好ましい。
含フッ素重合体FのMnは、本加飾フィルムの耐擦傷性の点から、2,000~50,000が好ましく、5,000~20,000がより好ましく、7,000~18,000が特に好ましい。
含フッ素重合体Fが水酸基を有する場合、含フッ素重合体Fの水酸基価は、本加飾フィルムの耐擦傷性及び可塑剤に対する対膨潤性の点から、1~150mgKOH/gが好ましく、5~120mgKOH/gがより好ましく、30~100mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体Fがカルボキシ基を有する場合、含フッ素重合体Fの酸価は、本加飾フィルムの耐擦傷性及び可塑剤に対する対膨潤性の点から、1~150mgKOH/gが好ましく、5~120mgKOH/gがより好ましく、30~100mgKOH/gが特に好ましい。
含フッ素重合体Fは、酸価及び水酸基価の両方を有していてもよく、この場合、酸価及び水酸基価の合計が、1~150mgKOH/gであるのが好ましい。
第1層に対する2層の追従性を向上させる点から、含フッ素重合体Fを2種以上用いてもよい。
【0047】
硬化剤は、架橋性基と反応し得る基を1分子中に2以上有する。硬化剤と、含フッ素重合体Fが含む架橋性基とが反応して、架橋が進行し、第2層が形成される。硬化剤は、架橋性基と反応し得る基を、通常2~30個有する。
含フッ素重合体Fが水酸基を有する場合、硬化剤としては、イソシアネート基又はブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する硬化剤が好ましい。
含フッ素重合体Fがカルボキシ基を有する場合、硬化剤としては、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、又は、β-ヒドロキシアルキルアミド基を、1分子中に2以上有する硬化剤が好ましい。
【0048】
イソシアネート基を1分子中に2以上有する硬化剤としては、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体が好ましい。
ポリイソシアネート単量体としては、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネート誘導体としては、ポリイソシアネート単量体の多量体又は変性体(ビウレット体、イソシアヌレート体、又はアダクト体)が好ましい。
【0049】
脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、リジントリイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートの具体例としては、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0050】
ブロック化イソシアネート基を1分子中に2以上有する硬化剤としては、上述したポリイソシアネート単量体又はポリイソシアネート誘導体が有する2以上のイソシアネート基が、ブロック化剤によってブロックされている硬化剤が好ましい。
ブロック化剤は、活性水素を有する化合物であり、具体例としては、アルコール、フェノール、活性メチレン、アミン、イミン、酸アミド、ラクタム、オキシム、ピラゾール、イミダゾール、イミダゾリン、ピリミジン、グアニジンが挙げられる。
【0051】
エポキシ基を1分子中に2以上有する硬化剤の具体例としては、ビスフェノール型エポキシ化合物(A型、F型、S型等)、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ハイドロキノン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ化合物、ポリプロピレングリコール型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、グリオキザール型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物、脂環式多官能エポキシ化合物、複素環型エポキシ化合物(トリグリシジルイソシアヌレート等)が挙げられる。
【0052】
カルボジイミド基を1分子中に2以上有する硬化剤の具体例としては、脂環族カルボジイミド、脂肪族カルボジイミド、芳香族カルボジイミド、並びに、これらの多量体及び変性体が挙げられる。
【0053】
オキサゾリン基を1分子中に2以上有する硬化剤の具体例としては、2-オキサゾリン基を有する付加重合性オキサゾリン、この付加重合性オキサゾリンの重合体が挙げられる。
【0054】
β-ヒドロキシアルキルアミド基を1分子中に2以上有する硬化剤の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)-アジパミド(PrimidXL-552、EMS社商品名)、N,N,N’,N’-テトラキス-(2-ヒドロキシプロピル)-アジパミド(Primid QM 1260、EMS社製)が挙げられる。
【0055】
含フッ素重合体Fが有する架橋性基のモル数に対する、硬化剤が有する架橋性基のモル数の比(硬化剤が有する架橋性基のモル数/含フッ素重合体Fが有する架橋性基のモル数)は、第1層に対する第2層の追従性の点から、0.05~2.0が好ましく、0.10~1.0がより好ましく、0.15~0.50が更に好ましく、0.20~0.40が好ましい。
特に、上記比を小さくし含フッ素重合体FのMnを小さくした場合、第1層に対する第2層の追従性がより優れる。
【0056】
第2層中における含フッ素重合体Fの含有量は、本加飾フィルムの耐候性の点で、第2層の全質量に対して、70~100質量%が好ましく、80~95質量%が特に好ましい。
含フッ素重合体Fは、2種以上を併用してもよい。
【0057】
第2層は、表面調整剤を含むのが好ましい。第2層に含まれる表面調整剤の種類及び含有量を調整すると、第2層の第1層側の表面の水接触角を適宜調整できる。
表面調整剤としては、第2層の第1層側の表面の水接触角の調整がしやすく、かつ、含フッ素重合体Fとの相溶性にも優れる点で、シリコーン系表面調整剤又はフッ素系表面調整剤が好ましい。シリコーン系表面調整剤とフッ素系表面調整剤とは併用してもよく、それぞれ2種以上を使用してもよい。
シリコーン系表面調整剤とは、ポリジメチルシロキサンに代表されるオルガノポリシロキサン骨格を有する化合物である。シリコーン系表面調整剤としては、第2層の第1層側の表面の水接触角をより高くできる化合物が好ましい。
シリコーン系表面調整剤(シリコーン系レべリング剤)としては、ジメチルポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサンを変性した変性シリコーン、(メタ)アクリル重合体等の高分子が有する側鎖の一部又は全部をオルガノポリシロキサン骨格を有する鎖に変性したものが挙げられる。
変性シリコーンとしては、オルガノポリシロキサン骨格における有機官能基として疎水性の基を有する化合物が好ましく、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フェニル変性ポリシロキサン、シリコーン変性された(メタ)アクリル重合体、シリコーン系セグメントと(メタ)アクリル系セグメントとを有するブロック共重合体等が挙げられる。
なお、セグメントとは部分構造を指し、以下同様である。
【0058】
シリコーン系表面調整剤は、含フッ素重合体Fとの相溶性が向上する点、及び、第2層において含フッ素重合体Fや硬化剤と架橋することで第2層の表面の水接触角を持続させる点から、水酸基等の架橋性基を有していてもよい。この場合、第2層に含まれるシリコーン系表面調整剤は、少なくとも一部が含フッ素重合体Fや硬化剤と架橋していてもよい。
シリコーン系表面調製剤としては、第2層の第1層側の表面の水接触角を好適に調整できる点から、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、水酸基を有するシリコーン変性(メタ)アクリル重合体、及び、シリコーン系セグメントと(メタ)アクリル系セグメントとを有するブロック共重合体が好ましく、水酸基を有するシリコーン変性(メタ)アクリル重合体が特に好ましい。水酸基を有するシリコーン変性(メタ)アクリル重合体の水酸基価としては、1~150mgKOH/gが好ましく、10~50mgKOH/gがより好ましく、20~40mgKOH/gが特に好ましい。
なお、シリコーン系セグメントとは、オルガノポリシロキサン骨格を有する単位からなるセグメントであり、(メタ)アクリル系セグメントとは、(メタ)アクリル単量体を基づく単位からなるセグメントである。
【0059】
シリコーン系表面調整剤としては、以下の化合物が挙げられる。
・Algin Chemie社製の、商品名 AC FS 180、AC FS 360、AC S 20。
・BYK社製の、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(商品名 BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-320、BYK-330、BYK-331、BYK-332、BYK-333、BYK-342、BYK-378、BYK-UV3510、BYK-SILCLEAN3720、BYK-377)、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン(商品名 BYK-320、BYK-326)、BYK社製のポリエステル変性ポリジメチルシロキサン(商品名 BYK-310、BYK-313、BYK-370)、ポリエステル変性ポリメチルアルキルシロキサン(商品名 BYK-315N、BYK-325N)、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン(商品名 BYK-322、BYK-323)、ポリエーテル変性シロキサン(商品名 BYK-345、BYK-346、BYK-347、BYK-348、BYK-349)、シリコーン変性(メタ)アクリル重合体(商品名 BYK-SILCLEAN3700)、ポリエーテル-ポリエステル変性ジメチルシロキサン(商品名 BYK-375)、アクリル官能基を有するポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(商品名 BYK-UV3500、BYK-UV3505、BYK-UV3530)、アクリル官能基を有するポリエステル変性ポリジメチルシロキサン(商品名 BYK-UV3570)、アクリル官能基を有するポリジメチルシロキサン(商品名 BYK-UV3575、BYK-UV3576)。
・日油社製の、シリコーン系セグメントと(メタ)アクリル系セグメントとを有するブロック共重合体(商品名 モディパーFS700、モディパーFS710-1、モディパーFS720、モディパーFS730、モディパーFS770)。
・エボニック社製の、ヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサン(商品名 TEGO PROTECT 5000)。
【0060】
フッ素系表面調整剤とは、アルキル基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたフッ素化アルキル基を有する化合物である。フッ素化アルキル基に含まれる炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましい。
フッ素系表面調整剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルアミノスルホン酸塩、パーフルオロアルキル基・親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基・親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基・(親水性基及び親油性基)含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基・親油性基含有ウレタン、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルアミン化合物、パーフルオロアルキル第四級アンモニウム塩、パーフルオロアルキルベタイン、非解離性パーフルオロアルキル化合物、フッ素系セグメントと(メタ)アクリル系セグメントとを有するブロック共重合体等が挙げられる。フッ素系表面調整剤としては、第2層の第1層側の表面の水接触角を好適に調整できる点から、フッ素系セグメントと(メタ)アクリル系セグメントとを有するブロック共重合体が好ましい。
フッ素系セグメントとは、ペルフルオロアルキル基又はポリフルオロアルキル基を有する単量体に基づく単位からなるセグメントであり、炭素数4~8のペルフルオロアルキル基又はポリフルオロアルキル基を有する単量体に基づく単位からなるセグメントであるのが好ましい。(メタ)アクリル系セグメントは、シリコーン系表面調整剤で記載したセグメントと同様である。
フッ素系表面調整剤としては、日油社製モディパーFシリーズ(F606、F206、F246、F906、F3636、F226等)等が挙げられる。
【0061】
第2層は、シリコーン系表面調整剤及びフッ素系表面調整剤以外の、BYK-350、BYK-352、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358N、BYK-359、BYK-360P、BYK-361N、BYK-364P、BYK-381、BYK-390、BYK-392、BYK-394(全て商品名。BYK社製)等に例示される、Si原子及びF原子を有さないアクリル系表面調整剤を適宜含んでもよい。
【0062】
第2層中のおける表面調整剤の含有量は、本加飾フィルムの耐候性の点で、第2層の全質量に対して、0.5~30質量%が好ましく、1~20質量%が特に好ましい。
【0063】
第2層の層厚は、本加飾フィルムの成形性の点から、1~300μmが好ましく、3~200μmがより好ましく、5~100μmが更に好ましく、10~50μmが特に好ましい。
第2層の全光線透過率は、本発明の加飾フィルム付き3次元成形品の意匠性の点から、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。
【0064】
第2層における第1層側の表面の水接触角は、第1層の第2層側の表面の水接触角よりも大きい。第2層の第1層側の表面の水接触角は、第1層と第2層との密着性の点から、80~130度が好ましく、90~120度がより好ましく、100~110度が特に好ましい。
上記水接触角は純水の静的接触角であり、測定方法は、上述した第2層の第1層側の表面の水接触角の測定方法と同じである。つまり、界面Lにおいて第1層と第2層とを剥離させて第2層の表面を露出させ、得られた第2層表面における水接触角を測定して得られる。
なお、上述と同様に、界面Lから第2層側に2μm以内の面であれば、第2層の第1層側の表面と見なすことができる。
また、第2層が均一な層である場合には、第2層の空気側の表面、又は、第2層を界面Lと並行な任意の面で切断して得られた切断面における水接触角を測定して得た値を、第2層の第1層側の表面の水接触角とみなしてもよい。ここで、第2層が均一な層であるとは、第2層の第1層側の表面の水接触角と、第2層の空気側の表面の水接触角との差が5度以下(好ましくは3度以下)であることを意味する。
なお、第2層の第1層側の表面の水接触角の大きさの調整方法としては、上述したように表面調整剤を用いる方法が挙げられる。
【0065】
第2層の第1層側の表面の水接触角と、第1層の第2層側の表面の水接触角との差(第2層の第1層側の表面の水接触角-第1層の第2層側の表面の水接触角)は、第1層と第2層との密着性の点から、0度超であり、5度以上が好ましく、10度以上が特に好ましい。また、第2層の第1層側の表面の水接触角と、第1層の第2層側の表面の水接触角との差は、第1層と第2層との密着性の点から、50度以下であり、30度以下が好ましく、25度以下が特に好ましい。つまり、第2層の第1層側の表面の水接触角と、第1層の第2層側の表面の水接触角との差は、0度超50度以下であり、5~30度が好ましく、10~25度が特に好ましい。
上記差が上記範囲内であれば、第1層と第2層との密着性に優れる。
【0066】
第2層は、上述した含フッ素重合体Fを含む組成物(以下、組成物(2)ともいう。)を用いて形成するのが好ましい。
組成物(2)中の含フッ素重合体Fの含有量は、本加飾フィルムの耐候性の点から、組成物(2)が含む固形分の全質量に対して、5~90質量%が好ましく、10~80質量%が特に好ましい。
【0067】
なお、組成物(2)が含フッ素重合体Fを含む場合、硬化剤をさらに含むのが好ましい。
組成物(2)が硬化剤を含む場合、硬化剤の含有量は、組成物(2)中の含フッ素重合体F100質量部に対して、10~200質量部が好ましく、50~150質量部が特に好ましい。
【0068】
組成物(2)は、上述した表面調整剤を含むのが好ましい。
組成物(2)が表面調整剤を含む場合、第2層の第1層側の表面の水接触角を調整する点から、表面調整剤の含有量は、組成物(2)中の全固形分に対して、0.1~30質量%が好ましく、1~20質量%が特に好ましい。
【0069】
組成物(2)は、上述した成分以外に、各種媒体(水、有機溶媒等)、フィラー(シリカ等の無機フィラー、樹脂ビーズ等の有機フィラー等)、紫外線吸収剤、つや消し剤、脱ガス剤、充填剤、熱安定剤、増粘剤、分散剤、帯電防止剤、防錆剤、シランカップリング剤、防汚剤、低汚染化処理剤を含んでもよい。
組成物(2)は、溶媒を含むことが好ましい。溶媒は、組成物(2)に含まれる成分に対して不活性な溶媒が使用される。例えば、硬化剤としてイソシアネート基を有する硬化剤が含まれる場合、水酸基等のイソシアネート基と反応し得る基を有しない溶媒が使用される。溶媒としては、ケトン、エステル、炭化水素等の有機溶媒が好ましい。
【0070】
組成物(2)の表面張力は、第1層上に良好に濡れ広がり、第1層と第2層との密着性が向上する点から、10~40mN/mであることが好ましい。組成物(2)の表面張力は、上述した表面調整剤によって調節できる。
【0071】
第2層の形成方法の具体例としては、組成物(2)を第1層上に塗布して塗膜を形成し、次いで得られた塗膜を硬化する方法が挙げられる。
塗布方法の具体例としては、スプレー、アプリケーター、ダイコーター、バーコーター、ロールコーター、コンマコーター、ローラブラシ、はけ、へらを用いた方法が挙げられる。
組成物(2)を塗布した後、組成物(2)中の溶媒を除去するために、乾燥させることが好ましい。
塗膜の硬化は、例えば、加熱処理により実施できる。加熱温度としては、50~250℃が好ましく、60~150℃が特に好ましい。加熱時間は1~60分間が好ましい。
なお、組成物(2)がいわゆる粉体塗料である場合、第2層は、静電塗装等によっても形成できる。
【0072】
本加飾フィルムは、3次元成形品との密着性の点から、基材フィルム側に積層されている接合層を有するのが好ましい。接合層は、基材フィルムと接するように積層されていてもよく、基材フィルムとの間に他の層を有していてもよい。
接合層は、本加飾フィルムと3次元成形品を接合させる層であり、接合性樹脂を含むのが好ましい。接合性樹脂の具体例としては、接着性樹脂、融着性樹脂、粘着性樹脂等が挙げられる。接合層は、例えば、接合性樹脂や、熱等により反応して接合性樹脂となる成分を含む組成物を用いて形成できる。以下、熱等により反応して接合性樹脂となる成分を含む組成物を組成物(a)ともいう。
接合性樹脂としては、熱融着性樹脂及び熱架橋性樹脂が好ましい。熱融着性樹脂の場合は、熱軟化した樹脂を3次元成形品の表面に接した状態で冷却固化させて、その表面に接合できる。熱架橋性樹脂の場合は、樹脂を3次元成形品の表面に接した状態で熱架橋させて、その表面に接合できる。
熱融着性樹脂の具体例としては、軟化温度の低い部分架橋熱融着性樹脂や熱可塑性樹脂が挙げられる。熱融着性樹脂を含む接合層は、熱融着性樹脂や組成物(a)を用いて形成できる。例えば、ポリオールとポリイソシアネートを含む組成物(a)を用いて、熱融着性ポリウレタン樹脂を含む接合層を形成できる。
【0073】
熱融着性樹脂の軟化温度は、本加飾フィルムの耐ブロッキング性及び成形性の点から、20~100℃が好ましく、25~90℃が特に好ましい。
熱融着性樹脂のMwは、接合層の成膜性及び接着性の点から、5,000~150,000が好ましく、6,000~130,000が特に好ましい。
熱融着性樹脂としては、3次元成形品との接着性が優れる点から、熱融着性の、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、ブチラール樹脂等が好ましい。
【0074】
接合性樹脂は、主剤の樹脂と硬化剤を含む熱架橋性樹脂であってもよい。このような熱架橋性樹脂としては、固体ポリオールや固体状のヒドロキシ末端ポリウレタンプレポリマーと、固体ポリイソシアネートや固体ブロック化ポリイソシアネートとを含む熱架橋性ウレタン樹脂、固体ポリエポキシドと固体エポキシ樹脂硬化剤とを含むエポキシ樹脂等が挙げられる。
組成物(a)は、上記熱架橋性樹脂を含んでもよく、熱架橋性樹脂となる成分を含むものであってもよい。
【0075】
接合層は、後述する意匠層の機能を兼ね備えていてもよい。この場合、接合層に着色剤等を含ませれば、意匠層としての機能を兼ね備えた接合層が得られる
【0076】
接合層は、上記以外の成分を含んでいてもよい。上記以外の成分の具体例としては、紫外線吸収剤、光安定剤、硬化触媒、酸化防止剤、表面調整剤、タレ止め剤、増粘剤、消泡剤、導電性充填剤が挙げられる。
接合層の厚さは、接合層の成膜性及び接着性の点から、1~1,000μmが好ましく、4~80μmがより好ましく、10~60μmが特に好ましい。
組成物(a)が含んでよい成分は、上述した接合層が含んでよい成分と同様である。接合性樹脂及び接合層が含んでよい成分は、水や有機溶剤等の溶媒によって組成物(a)中に溶解していてもよく、分散していてもよい。接合層形成剤が溶媒を含む場合、溶媒は接合層形成時に除去される。
【0077】
なお、図1の例では、加飾フィルム10が接合層12を有する場合を挙げて説明したが、本加飾フィルムを3次元成形品に貼着できるのであれば、本加飾フィルムは接合層を有しなくてもよい。
つまり、本加飾フィルムは、基材フィルムと、第1層と、第2層とを少なくとも有すればよい。
【0078】
図1では示していないが、本加飾フィルムの意匠性等を向上させるために、本加飾フィルムは意匠層を有してもよい。意匠層は、3次元成形品に意匠性を付与するための層である。意匠層は、接合層と第2層との間に配置されるのが好ましい。
具体的には、図1の加飾フィルム10が意匠層を有する場合、例えば、接合層12、意匠層、基材フィルム14、第1層16、及び、第2層18の順に配置される態様、並びに、接合層12、基材フィルム14、意匠層、第1層16、及び、第2層18の順に配置される態様が挙げられる。
なお、接合層、基材フィルム、第1層、又は、第2層が意匠層を兼ねていてもよく、この場合には意匠層は設けなくてもよい。
【0079】
意匠層の具体例としては、意匠層を形成するための組成物を用いて形成された層、印刷法によって形成された層、金属蒸着法によって形成された層が挙げられる。
上記組成物に含まれる成分の具体例としては、バインダー樹脂(ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等)、着色剤(染料、有機顔料、無機顔料、金属又はマイカ等を用いた光輝顔料等)、溶媒(水、有機溶媒等)が挙げられる。
印刷法によって形成された層は、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、及び、フレキソ印刷等の各印刷方法に適したインク(例えば、バインダー樹脂、着色剤、溶媒を含む)を用いて形成される。
金属蒸着法によって形成された層は、アルミニウム、インジウム、スズ等の金属を用いて形成される。
意匠層は、必要に応じて上記以外の成分を含んでいてもよく、具体的には、組成物(a)で挙げた成分、上述した組成物(2)で挙げた成分が挙げられる。
意匠層の厚さは、用途に応じて適宜設定すればよい。
【0080】
本加飾フィルムは、例えば以下の方法によって得られる。以下の方法において、積層方法は特に限定されない。
・基材フィルム及び第1層を有し、第1層が最表面に配置されているフィルムの第1層の表面上に、組成物(2)を塗布して第2層を形成して、本加飾フィルムを得る方法。
・基材フィルムを有さず第1層を最表面に有するフィルムの、第1層の表面上に、組成物(2)を塗布して第2層を形成した後、第1層の第2層と反対の面側に基材フィルムを積層して、本加飾フィルムを得る方法。
・基材フィルム及び第1層を有し、第1層が最表面に配置されているフィルムの第1層の表面と、第2層と、を積層して本加飾フィルムを得る方法。
・基材フィルムと、第1層が最表面に配置されているフィルムと、第2層とを、第1層と第2層が接するようにこの順に積層して本加飾フィルムを得る方法。
上記方法のなかでも、第1層と第2層との密着性に優れる点から、基材フィルム上に積層された、水接触角が60~100度である第1層の表面上に、表面張力が10~40mN/mである組成物(2)を塗布して第2層を形成して本加飾フィルムを得るのが好ましい。
【0081】
本加飾フィルムは、被加飾体(例えば、後述の3次元成形品)に意匠性を付与又は被加飾体の表面を保護するために、伸長させて用いられるのが好ましく、1.2倍以上伸長させて用いられるのが特に好ましい。伸長方向及び伸長方法は、3次元成形品の形状、成形時の製造条件等によって適宜選択できる。上記伸長方向は、いずれの方向であってもよく、また上記伸長方法は、いずれの方法であってもよい。つまり、本加飾フィルムの伸長は、所定の一方向又は全方向に本加飾フィルムを引っ張って実施してもよく、また、本加飾フィルムを適宜加熱して膨張させて実施してもよい。
【0082】
本発明の加飾フィルム付き3次元成形品(以下、本成形品ともいう。)は、本加飾フィルムと3次元成形品の被加飾面とを減圧下で圧着して得るのが好ましい。
本成形品の製造方法における減圧下での圧着方法は、真空成形法(オーバーレイ成形法)とも称され、例えば、両面真空成形装置を用いて実施できる。
減圧下とは、標準大気圧より圧力が低い状態を意味する。減圧下の圧力は、70kPa以下が好ましい。
【0083】
また、本成形品は、適宜真空成形法以外の成形方法によって得てもよい。このような成形方法の具体例としては、インモールド成形、インモールド転写成形、インモールド貼合成形、オーバーレイ転写成形、オーバーレイ貼合成形、水圧転写が挙げられる。また、成形前の3次元成形品に本加飾フィルムを圧着したのち、加工して加飾フィルム付き3次元成形品を得てもよい。
【0084】
3次元成形品を構成する材料の具体例としては、ポリプロピレン、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂、ポリカーボネートが挙げられる。
3次元成形品の具体例としては、ドアミラー、フロントアンダースポイラー、リヤーアンダースポイラー、サイドアンダースカート、バンパー、サイドガーニッシュ等の自動車外装部品、センターコンソール、インパネ、ドアスイッチパネル等の自動車内装部品が挙げられる。本加飾フィルムは、上記以外に、ディスプレイの液晶面、壁材、標識看板等にも好適に使用できる。
【0085】
本加飾フィルムは、自動車外装部品又は自動車内装部品に用いられる3次元成形品を加飾するために好適に用いられる。なお、本明細書において加飾とは、物品の表面への意匠性の付与や表面の保護等を意味する。
【0086】
本発明における組成物(2)は、密着性に優れる塗膜を形成できるため、板状の基材に組成物(2)を塗装し、硬化させて塗膜付き基材を得たのち、該塗膜付き基材を真空成形法により真空成形して3次元成形品を得ることもできる。このような3次元成形品の製造方法は、自動車外装部品、特にボンネットやルーフ等の、大面積の部品を製造する場合に好適である。
【実施例
【0087】
以下、例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの例に限定されない。なお、後述する表1中における各成分の配合量は、質量基準を示す。また、例1~7は実施例であり、例8は比較例である。
【0088】
<使用した成分の略称と詳細>
重合体F1:含フッ素重合体が含む全単位に対して、CTFE(クロロトリフルオロエチレン)に基づく単位、EVE(エチルビニルエーテル)に基づく単位、CHVE(シクロヘキシルビニルエーテル)に基づく単位、HBVE(4-ヒドロキシブチルビニルエーテル)に基づく単位をこの順に50モル%、25モル%、15モル%、10モル%含む重合体(水酸基価:52mgKOH/g、Tg:40℃、Mn:20,000)
重合体F2:含フッ素重合体が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位、CHVEに基づく単位、HBVEに基づく単位をこの順に50モル%、39モル%、11モル%含む重合体(水酸基価:50mgKOH/g、Tg:52℃、Mn:10,000)
重合体F3:含フッ素重合体が含む全単位に対して、CTFEに基づく単位、EVEに基づく単位、HBVEに基づく単位をこの順に50モル%、40モル%、10モル%含む重合体(水酸基価:57mgKOH/g、Tg:25℃、Mn:20,000)
溶媒1:酢酸ブチル
溶媒2:キシレン
溶媒3:メチルエチルケトン
硬化剤1:E405-70B(ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、旭化成社製)
硬化剤2:ポリイソシアネートのヌレート体及びビウレット体の混合物
硬化触媒1:ジブチルスズジラウレート(無希釈品)
硬化触媒2:ジブチルスズジラウレート(1,000倍希釈品)
硬化触媒3:U-CAT(10倍希釈品、サンアプロ社商品名)
表面調整剤1:BYK-Silclean3700(BYK社製、25質量%溶液、シリコーン系表面調整剤、水酸基含有シリコーン変性(メタ)アクリル重合体)
表面調整剤2:モディパーF606(日本油脂社製、フッ素系表面調整剤、フッ素系セグメントと(メタ)アクリル系セグメントとを有するブロック共重合体)
表面調整剤3:tego protect 5000N(エボニック社製、シリコーン系表面調整剤、ヒドロキシアルキルポリジメチルシロキサン)
PVDF:ポリフッ化ビニリデン(アルケマ社製)
PMMA:ポリメチルメタクリレート(アルケマ社製)
PU:ポリウレタン(BASF社製、ET-385(商品名))
PET:インジウム蒸着されたポリエチレンテレフタラート
【0089】
<例1~8>
表1の第2層における成分欄に記載の各成分を混合して、組成物(2-1)~(2-8)を得た。
【0090】
基材フィルム(材料:塩化ビニル樹脂、可塑剤:フタル酸ジ-2-エチルヘキシル、可塑剤含有量:基材フィルム全質量に対して、20質量%)の一方の面上に、ポリフッ化ビニリデンからなる第1層をラミネートして積層した。
次に、第1層上に、アプリケーターを用いて組成物(2-1)を塗布し、25℃で乾燥後、80℃にて5分間加熱して硬化させ、膜厚20μmである第2層を形成した。
上記方法により、基材フィルム、第1層、及び、第2層がこの順に積層している加飾フィルム1を得た。
組成物(2-1)を組成物(2-2)~(2-8)に変更し、第1層の材料の種類を表1のように変更した以外は、上記と同様にして、加飾フィルム2~8を得た。
【0091】
<成形品の製造>
両面真空成形装置を用いて、真空成形法により、加飾フィルム1と3次元成形品(ABSパネル)とを減圧下で圧着しながら140℃で1分間加熱して、加飾フィルム付き3次元成形品である成形品1を得た。成形品1は、加飾フィルムの第2層を最表面に有していた。
加飾フィルム1を加飾フィルム2~8に変更した以外は、上記と同様にして、成形品2~8を得た。
【0092】
<評価>
得られた加飾フィルム1~8及び成形品1~8を、後述の評価に供した。得られた結果を表1に示す。なお、表1中、「水接触角の差」は、第2層の第1層側の表面の水接触角から、第1層の第2層側の表面の水接触角を減算して得られた値である。また、「INDEX」は、各例において含まれる重合体F1~F3が有する架橋性基のモル数に対する、硬化剤が有する架橋性基のモル数の比(硬化剤が有する架橋性基のモル数/重合体F1~F3が有する架橋性基のモル数)である。
【0093】
<水接触角>
加飾フィルムにおける第1層と第2層とを、エネルギー分散型X線分析装置を備えた走査型電子顕微鏡によって断面観察し、各層の深さを推定した後、剥離強度試験機(タイプラ・ウィンテス社製 SAICAS EN・NN)によって、第1層と第2層との界面Lで剥離させた。得られた各層(第1層又は第2層)の表面に直径1~2mmの純水を滴下し、着滴30秒後の液滴をビデオカメラで撮影して画像解析した。液滴の端点と頂点を結ぶ直線の、層の表面に対する角度の2倍を静的接触角の値とした。なお、測定は5回行い、5回分の測定値の平均値を表1に記載した。
【0094】
<層間密着性>
JIS6854-1:1999に準じて、加飾フィルムの層間密着性を下記のように評価した。
加飾フィルムを長さ150mm、幅10mmの大きさに切断して、試験用フィルムとした。試験用フィルムの長さ方向の一端から50mmの位置まで、カッターナイフを用いて第1層から第2層を剥離させ、次いで引張試験機を用いて、引っ張り速度50mm/分にて第1層と第2層が90度になるように剥離したときの最大荷重(N/10cm)を測定した。最大荷重の値が大きいほど、加飾フィルムにおける第1層と2層との層間密着性に優れる。
A:最大荷重が10N/cm以上である。
B:最大荷重が10N/cm未満である。
【0095】
<耐膨潤性>
成形品における加飾フィルムの表面上(第2層上)にガーゼ(50mm×50mm)を配置し、上記ガーゼ上から1.0kgの荷重を加え、温度40℃、湿度70%に調整した高温高湿槽にて1週間静置した。その後、加飾フィルム上に配置していたガーゼを剥がし取り、評価前のガーゼの全面積に対する、加飾フィルム上に残存しているガーゼの面積の割合を目視観察し、加飾フィルムの耐膨潤性を下記のように評価した。
A:加飾フィルム上に残存しているガーゼの面積が10%未満である。
B:加飾フィルム上に残存しているガーゼの面積が10%以上である。
【0096】
<耐擦傷性>
スチールウール(#0000)を用いて、成形品における加飾フィルム側の表面を所定の往復回数擦った後、表面を目視観察し、成形品における加飾フィルムの耐擦傷性を下記の基準で評価した。下記基準における往復回数は、第2層の表面に初めて傷が認められた時点の回数である。なお、成形品の表面を擦る際のスチールウールへの荷重は200gであった。
S:15往復以上
A:10往復以上15往復未満
B:10往復未満
【0097】
<追従性>
加飾フィルムにおける、第1層に対する第2層の追従性を、下記のように評価した。第1層と第2層との剥離が初めて生じた時点の伸び率が大きいほど、追従性に優れ、第1層と第2層との層間密着性により優れる。
島津製作所製 オートグラフAGS10KNG、及び島津製作所製 TERMOSTATIC CHAMBER Model:TCRI-200SPを用いて、加飾フィルムサイズ短辺10mm×長辺100mm、チャック間50mm、引っ張り速度50mm/min、引張恒温槽の温度23℃の条件にて長辺方向に引張試験した場合、第1層と第2層との剥離が初めて発生した時点の加飾フィルムの伸び率(引張試験によって第1層と第2層との剥離が初めて発生した時点の加飾フィルムのチャック間長さ/引張試験前のチャック間長さ×100)によって判定した。なお、追従性の試験は例7及び8に対してのみ行った。
S:200%以上
A:160%以上200%未満
B:160%未満
【0098】
【表1】
【0099】
表1に示すように、所定の構成を有する加飾フィルムを用いれば、所望の効果が得られた。
なお、2018年06月13日に出願された日本特許出願2018-113189号の明細書、特許請求の範囲、要約書および図面の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0100】
10 加飾フィルム
12 接合層
14 基材フィルム
16 第1層
18 第2層
図1