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特許7143903巻磁心、合金コアおよび巻磁心の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】巻磁心、合金コアおよび巻磁心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20220921BHJP
   H01F 27/25 20060101ALI20220921BHJP
   H01F 27/245 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01F41/02 A
H01F41/02 C ZNM
H01F27/25
H01F27/245 155
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020571228
(86)(22)【出願日】2020-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2020004275
(87)【国際公開番号】W WO2020162480
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2019018687
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】萩原 和弘
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/062310(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/235800(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190528(WO,A1)
【文献】特開平09-017623(JP,A)
【文献】特開平07-278764(JP,A)
【文献】特開平01-247557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 41/02
H01F 27/25
H01F 27/245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ結晶化が可能な非晶質の軟磁性合金薄帯が巻き回されて形成された巻磁心の内空間に、前記巻磁心を非円形に保持するための第1の内形矯正治具を配置した状態で、前記巻磁心を300℃以上、結晶化開始温度未満の温度で熱処理する第1熱処理工程と、
前記第1の内形矯正治具を外し、少なくとも1つの第2の内形矯正治具を前記巻磁心の内空間に配置した状態で、前記巻磁心を結晶化開始温度以上の温度でナノ結晶化の熱処理をする第2熱処理工程と、
を備え、
前記第2の内形矯正治具の伸びる方向と垂直な断面は、前記第1の内形矯正治具の伸びる方向と垂直な断面よりも小さく、
前記第2熱処理工程の一部期間において、前記巻磁心に対して磁場を印加する、ナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項2】
前記第2熱処理工程において、前記ナノ結晶化の熱処理後、降温時に前記磁場を印加する、請求項1に記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項3】
前記第1熱処理工程において、前記巻磁心を非円形に保持するための外形矯正治具を、前記巻磁心の外側に配置する、請求項1または2に記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項4】
前記第2熱処理工程において、1つの前記第2の内形矯正治具を、前記巻磁心の内空間に配置する、請求項1から3のいずれかに記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項5】
前記ナノ結晶化の熱処理前の状態では、前記1つの第2の内形矯正治具は、前記巻磁心の内空間内において、前記巻磁心と接しないように位置している、請求項4に記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項6】
前記1つの第2の内形矯正治具の前記断面の外周形状と、前記第1の内形矯正治具の断面の外周形状とは、互いに相似である、請求項4に記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項7】
前記1つの第2の内形矯正治具の外周形状は、前記第1の内形矯正治具の外周形状の0.5倍以上0.9倍以下の面積を有する、請求項6に記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項8】
前記第2熱処理工程において、複数の前記第2の内形矯正治具を前記巻磁心の内空間に配置する、請求項1から3のいずれかに記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項9】
前記複数の第2の内形矯正治具は、前記巻磁心の内空間において移動可能である、請求項8に記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項10】
前記ナノ結晶化の熱処理前の状態では、前記複数の第2の内形矯正治具は、前記巻磁心の内空間内において、前記巻磁心と接しないように位置している、請求項8に記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項11】
前記複数の第2の内形矯正治具は、前記巻磁心の軸と垂直な断面において、前記第1の内形矯正治具の前記断面の外周形状と相似な形状と内接しており、
前記相似な形状は、前記第1の内形矯正治具の外周形状の0.5倍以上0.9倍以下の面積を有する、請求項8から10のいずれかに記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項12】
前記第2熱処理工程後に、前記巻磁心に樹脂を含侵させる含侵工程をさらに含む、請求項1から11のいずれかに記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法。
【請求項13】
ナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心であって、
前記ナノ結晶軟磁性合金の組成は下記一般式で表され、
前記巻磁心は非円形形状を有し、
前記巻磁心の100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzが45000以上であり、
前記巻磁心は、前記ナノ結晶軟磁性合金薄帯が積層方向に隣接する前記ナノ結晶軟磁性合金薄帯と、前記巻磁心の前記積層方向の厚さtに対し、0.1t以上離間している部分を有していない、ナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心。
一般式:(Fe 1-a 100-x-y-z-α-β-γ Cu Si M’ α M” β γ (原子%)
ここで、MはCo,Niから選ばれた少なくとも1種の元素であり、M’はNb,Mo,Ta,Ti,Zr,Hf,V,Cr,Mn及びWから選ばれた少なくとも1種の元素、M”はAl,白金族元素,Sc,希土類元素,Zn,Sn,Reから選ばれた少なくとも1種の元素、XはC、Ge、P、Ga、Sb、In、Be、Asから選ばれた少なくとも1種の元素である。
組成比率を規定するa、x、y、z、α、β、およびγは、それぞれ、以下の関係を満足する。
0≦a<0.5
0.1≦x≦3
10≦y≦20
5≦z≦10
0.1≦α≦5
0≦β≦10
0≦γ≦10
【請求項14】
前記巻磁心はレーストラック形状、又はレーストラック形状の少なくとも一方の直線部に凹凸を有する、請求項13に記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心。
【請求項15】
前記巻磁心は、周波数f=10kHz、振幅H=0.05A/mの交流磁場が印加された状態において、室温にて測定した比透磁率μ(10kHz)が80,000以上であり、直流BHループの角形比Br/Bmが50%以下であり、保磁力が1.1A/m以下である、請求項13または14に記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心。
【請求項16】
請求項13から1のいずれかに記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心と、
前記巻磁心に含侵された樹脂と、
を備えた合金コア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ナノ結晶合金からなる軟磁性合金薄帯が巻回された非円形の巻磁心、合金コアおよび巻磁心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体デバイスの高性能化に伴うインバータの高周波化により、電流・電圧制御能力の向上が可能となる反面、インバータが発生するコモンモード電圧に起因する高周波漏れ電流が問題になっている。その抑制の手段として、コモンモードチョークコイルが用いられている。コモンモードチョークコイルは軟磁性材料からなる磁心を有している。これらに用いる磁心として、Fe基やCo基のナノ結晶合金の薄帯から作製した磁心が好適であることが特許文献1に開示されている。ナノ結晶合金はパーマロイやCo基非晶質合金に比べて高い飽和磁束密度を示し、Fe基非晶質合金に比べて高い透磁率を有する。
【0003】
ナノ結晶合金の代表的な組成は、例えば特許文献2に開示されている。ナノ結晶合金を用いた磁心の製造方法の典型例は、所望の組成を有する原料合金の溶湯を急冷して非晶質合金薄帯を生製する工程と、この非晶質合金薄帯を巻回してリング状の巻磁心とする工程と、熱処理によって非晶質合金薄帯を結晶化してナノ結晶組織を有する磁心を得る工程とを含む。
【0004】
ナノ結晶合金からなる磁心は、熱処理時の温度プロファイルや、熱処理時に磁場を特定の方向に印加することにより、透磁率μや角形比等の磁気特性を大きく変えることができる。例えば、特許文献3には、磁場印加の方向を磁心の高さ方向あるいは径方向にすることにより、透磁率μ(50Hz~1kHz)が70,000以上、角形比が30%以下の高透磁率で低角形比の磁心が記載されている。
【0005】
ナノ結晶合金からなる磁心は、一般に円形のものが多用される。円形の磁心は、非晶質合金薄帯を円形に巻回してリング状の巻磁心とした後にナノ結晶化を伴う熱処理(以後、ナノ結晶化熱処理)を経ることで製造される。
【0006】
一方、磁心が使用されるスペースによっては、長方形や楕円等の非円形の磁心が求められることもある。非円形の磁心を製造する場合、巻磁心の内周側を、非円形の内形矯正治具により非円形に矯正した状態でナノ結晶化熱処理を行う。
【0007】
特許文献4は、巻芯に非晶質合金薄帯を巻回した後、結晶化開始温度未満の温度で保持する1次熱処理により薄帯内の応力を緩和した後、巻芯を取り、その後、結晶化開始温度以上温度で、薄帯のナノ結晶化のための2次熱処理を行うナノ結晶化熱処理方法を開示している。特許文献4によれば、この方法によって、熱処理時に生じる応力による磁気特性の低下を抑制することができると、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第2501860号公報
【文献】特公平4-4393号公報
【文献】特開平7-278764号公報
【文献】特開平1-247557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電気自動車の用途等では、コモンモードチョークコイル等の巻磁心は、多数の配線や電子部品が配置された装置内に設置されることがある。その場合、設置される巻磁心はこれらと空間的に干渉しない形状に設計されることがある。具体的には、非円形の巻磁心が求められる場合がある。近年、このような非円形の巻磁心が求められることも多くなっている。
【0010】
本開示は、非円形でありながら円形と同等のインピーダンス特性が得られる、ナノ結晶軟磁性合金薄帯からなる巻磁心、合金コアおよび巻磁心の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の一実施形態に係るナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法は、ナノ結晶化が可能な非晶質の軟磁性合金薄帯が巻き回されて形成された巻磁心の内空間に、前記巻磁心を非円形に保持するための第1の内形矯正治具を配置した状態で、前記巻磁心を300℃以上、結晶化開始温度未満の温度で熱処理する第1熱処理工程と、前記第1の内形矯正治具を外し、少なくとも1つの第2の内形矯正治具を前記巻磁心の内空間に配置した状態で、前記巻磁心を結晶化開始温度以上の温度でナノ結晶化の熱処理をする第2熱処理工程と、を備え、前記第2の内形矯正治具の伸びる方向と垂直な断面は、前記第1の内形矯正治具の伸びる方向と垂直な断面よりも小さく、前記第2熱処理工程の一部期間において、前記巻磁心に対して磁場を印加する。
【0012】
前記第2熱処理工程において、前記ナノ結晶化の熱処理後、降温時に前記磁場を印加してもよい。
【0013】
前記第1熱処理工程において、前記巻磁心を非円形に保持するための外形矯正治具を、前記巻磁心の外側に配置してもよい。
【0014】
前記第2熱処理工程において、1つの前記第2の内形矯正治具を、前記巻磁心の内空間に配置してもよい。
【0015】
前記ナノ結晶化の熱処理前の状態では、前記1つの第2の内形矯正治具は、前記巻磁心の内空間内において、前記巻磁心と接しないように位置していてもよい。
【0016】
前記1つの第2の内形矯正治具の前記断面の外周形状と、前記第1の内形矯正治具の断面の外周形状とは、互いに相似であってもよい。
【0017】
前記1つの第2の内形矯正治具の外周形状は、前記第1の内形矯正治具の外周形状の0.5倍以上0.9倍以下の面積を有していてもよい。
【0018】
前記第2熱処理工程において、複数の前記第2の内形矯正治具を前記巻磁心の内空間に配置してもよい。
【0019】
前記複数の第2の内形矯正治具は、前記巻磁心の内空間において移動可能であってもよい。
【0020】
前記ナノ結晶化の熱処理前の状態では、前記複数の第2の内形矯正治具は、前記巻磁心の内空間内において、前記巻磁心と接しないように位置していてもよい。
【0021】
前記複数の第2の内形矯正治具は、前記巻磁心の軸と垂直な断面において、前記第1の内形矯正治具の前記断面の外周形状と相似な形状と内接しており、前記相似な形状は、前記第1の内形矯正治具の外周形状の0.5倍以上0.9倍以下の面積を有していてもよい。
【0022】
前記第2熱処理工程後に、前記巻磁心に樹脂を含侵させる含侵工程をさらに含んでいてもよい。
【0023】
本開示の一実施形態に係るナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心は、ナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心であって、前記巻磁心は非円形形状を有し、前記巻磁心の100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrzが45000以上である。
【0024】
前記巻磁心はレーストラック形状、又はレーストラック形状の少なくとも一方の直線部に凹凸を有していてもよい。
【0025】
前記巻磁心は、周波数f=10kHz、振幅H=0.05A/mの交流磁場が印加された状態において、室温にて測定した比透磁率μ(10kHz)が80,000以上であり、直流BHループの角形比Br/Bmが50%以下であり、保磁力が1.1A/m以下であってもよい。
【0026】
前記巻磁心は、前記ナノ結晶軟磁性合金薄帯が積層方向に隣接する前記ナノ結晶軟磁性合金薄帯と、前記巻磁心の前記積層方向の厚さtに対し、0.1t以上離間している部分を有していなくてもよい。
【0027】
本開示の一実施形態に係る合金コアは、上記いずれかに記載のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心と、前記巻磁心に含侵された樹脂とを備える。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、非円形でありながら円形と同等のインピーダンス特性が得られる、ナノ結晶軟磁性合金薄帯からなる巻磁心、合金コアおよび巻磁心の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】アモルファスリボンを巻回した状態を示す図である。
図2】外形矯正治具と第1の内形矯正治具により非円形に成形された巻磁心を示す図である。
図3】第2の内形矯正治具が無い状態で磁場中熱処理を行った場合の巻磁心の状態を説明するための図である。
図4】第2の内形矯正治具の形状を説明するための図である。
図5】別の第2の内形矯正治具の形状を説明するための図である。
図6】別の第2の内形矯正治具の形状を説明するための図である。
図7】第1熱処理工程の熱処理条件を説明するための図である。
図8】第2熱処理工程の熱処理条件を説明するための図である。
図9】実施例1における第1熱処理工程の熱処理条件を示す図である。
図10】実施例1における第2熱処理工程の熱処理条件を示す図である。
図11】インピーダンス比透磁率の周波数特性を示す図である。
図12】直流B-H特性を示す図である。
図13】第2の内形矯正治具の大きさを説明する模式図である。
図14】別の第2の内形矯正治具の形状および配置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願発明者は、非円形のナノ結晶軟磁性合金薄帯からなる巻磁心の製造方法について詳細に検討した。本願でいう円形および非円形の巻磁心とは、巻磁心における薄帯の積層方向に平行な断面における巻磁心の外形をいう。薄帯の積層方向は、薄帯の主面に垂直な方向である。また、巻磁心における薄帯の積層方向に平行な断面は、巻磁心の軸に垂直な断面でもある。巻磁心はそれぞれ内空間を有しているので、断面は非円形のリング形状を有する。つまり、本開示の非円形の巻磁心は、非円形のリング形状の断面を有し、その外周および内周は、概ね互いに相似である非円形形状を有する。
【0031】
一般に、非晶質合金薄帯はナノ結晶化する過程で収縮し、薄帯の体積は約1%程度減少する。円形のナノ結晶軟磁性合金薄帯からなる巻磁心の場合、積層方向に平行な巻磁心の断面が円形であるため、薄帯の収縮による応力は、円が収縮するように均一に働くため、薄帯の変形が生じにくい。これに対し、非円形の巻磁心の場合、薄帯の収縮による応力が不均一に働き、変形が生じる場合がある。このため、変形が生じないように、巻磁心の内周側に内形矯正治具を配置した状態でナノ結晶化熱処理を行うことが考えられる。しかし、この場合、薄帯の収縮が抑制されるので、薄帯のナノ結晶化が進むと、収縮の抑制により薄帯に内部磁場が発生する。これにより、予期しない誘導磁気異方性が付与され特性劣化が生じ得る。
【0032】
特許文献4によれば、上述した2段階の熱処理によって、巻芯による特性劣化の影響を抑制することができ、特に、矩形の磁心等を作製する場合にも著しい効果が得られると記載されている。
【0033】
一方、コモンモードチョークコイルの製造時には、電気的および磁気的特性を調整するために、熱処理時に磁場を特定の方向に印加する磁場中熱処理を行う場合がある。磁場の印加は熱処理時においてナノ結晶化が起こる前後の温度やナノ結晶化後の降温時において行われる。これにより、例えば、周波数100kHzでの巻磁心のインピーダンスを高めることが可能となる。
【0034】
しかし、特許文献4の方法に従い、2次熱処理時に磁場を印加する場合、内形矯正治具が無いことによって、巻回されている薄帯の各層間で磁化による反発力が働き、巻磁心が大きく変形するという課題が生じ得ることが分かった。このような課題に鑑み、本開示はナノ結晶軟磁性合金薄帯からなる巻磁心について、非円形でありながら円形と同等のインピーダンス特性を有する製造方法および製品を提供する。
【0035】
以下、本開示の実施形態について説明するが、本開示は、以下の実施形態に限定されない。また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
【0036】
本開示の実施形態は、ナノ結晶化が可能な非晶質の軟磁性合金薄帯が巻き回されて形成された巻磁心の内空間に、前記巻磁心を非円形に保持するための第1の内形矯正治具を配置した状態で、前記巻磁心を300℃以上、結晶化開始温度未満の温度で熱処理する第1熱処理工程と、
前記第1の内形矯正治具を外し、少なくとも1つの第2の内形矯正治具を前記巻磁心の内空間に配置した状態で、前記巻磁心を結晶化開始温度以上の温度でナノ結晶化の熱処理をする第2熱処理工程と、
を備え、
前記第2の内形矯正治具の伸びる方向と垂直な断面は、前記第1の内形矯正治具の伸びる方向と垂直な断面よりも小さく、
前記第2熱処理工程の一部期間において、前記巻磁心に対して磁場を印加する、ナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心の製造方法、である。
【0037】
ナノ結晶合金薄帯を用いた非円形形状の巻磁心の製造において、非円形に形状を保持するための形状矯正治具を配置したままナノ結晶化を伴う熱処理を行うと、ナノ結晶形成時における軟磁性合金薄帯の体積減少に伴い意図しない応力が薄帯間にかかり、磁気特性が劣化する。
【0038】
かかる磁気特性の劣化を低減するためには、上記の第1熱処理工程と、第2熱処理工程を備える製造方法により、ナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心を得ることが有効である。
【0039】
<ナノ結晶化が可能な非晶質の軟磁性合金薄帯>
本実施形態における巻磁心の製造方法は、ナノ結晶化が可能な非晶質の軟磁性合金薄帯が用いられる。この軟磁性合金薄帯は、基本的には、合金溶湯を急冷することによって、所定の組成を有する非晶質合金薄帯が得られる。この非晶質合金薄帯を結晶化開始温度以上の温度でナノ結晶化の熱処理をすることで、ナノ結晶軟磁性合金薄帯が得られる。
【0040】
X線回折および透過電子顕微鏡による分析の結果、微細な結晶粒は、Siなどが固溶した、体心立方格子構造のFeであることがわかっている。Fe基ナノ結晶合金の少なくとも30体積%は、最大寸法で測定した粒径の平均が100nm以下の微細な結晶粒で占められる。また、Fe基ナノ結晶合金のうちで微細結晶粒以外の部分は主に非晶質である。微細結晶粒の割合は80体積%以上であってもよいし、実質的に100体積%であってもよい。
【0041】
本開示の実施形態に用いられるFe基ナノ結晶合金の組成は、以下の一般式で表されるFe基の組成であることが好ましい。
一般式:(Fe1-a100-x-y-z-α-β-γCuSiM’αM”βγ(原子%)
【0042】
ここで、MはCo,Niから選ばれた少なくとも1種の元素であり、M’はNb,Mo,Ta,Ti,Zr,Hf,V,Cr,Mn及びWから選ばれた少なくとも1種の元素、M”はAl,白金族元素,Sc,希土類元素,Zn,Sn,Reから選ばれた少なくとも1種の元素、XはC、Ge、P、Ga、Sb、In、Be、Asから選ばれた少なくとも1種の元素である。
【0043】
組成比率を規定するa、x、y、z、α、β、およびγは、それぞれ、以下の関係を満足することができる。
0≦a<0.5
0.1≦x≦3
10≦y≦20
5≦z≦10
0.1≦α≦5
0≦β≦10
0≦γ≦10
【0044】
以下、好ましい組成について、具体的に説明する。
【0045】
このFe基ナノ結晶合金では、0.1~3原子%のCuを含有する。Cuが0.1原子%より少ないと、Cuの添加によるコア損失の低減および所定のμ’を得る効果がほとんど得られない。一方、Cuが3原子%より多いと、Cu未添加の合金よりもコア損失がかえって大きくなることがある。また、μ’が低下し、所定のμ’が得られない。本開示において、特に好ましいCuの含有量xは0.5~2原子%である。この範囲において、コア損失が特に小さい。
【0046】
Cuの添加により、結晶粒微細化の効果がある。この原因は明らかではないが、次のように考えられる。CuとFeの相互作用パラメータは正であり、固溶度が低く、分離する傾向がある。このため、非晶質状態の合金を加熱すると、Fe原子同士またはCu原子同士が寄り集まりクラスターを形成し、組成ゆらぎが生じる。このため、部分的に結晶化しやすい多数の領域が生じ、そこを核とした微細な結晶粒が生成される。この結晶は、Feを主成分とし、Cuの固溶はほとんどない。従って、結晶化により、Cuは微細結晶粒の周囲にはき出され、結晶粒周辺のCu濃度が高くなる。このため、結晶粒が成長しにくいと考えられる。
【0047】
Cuの添加による結晶粒微細化の作用は、Nb、Mo、Ta、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn及びWから選ばれた少なくとも1種の元素の存在により特に著しくなると考えられる。これらの元素による微細化促進の効果は、特に、Nb、Mo、Ta、Zr、Hfにおいて大きい。これらの元素のうち、Nbを添加した場合に特に結晶粒が微細になりやすく、軟磁気特性も優れた合金が得られる。また、Nbを添加すると、Feを主成分とする微細結晶相が生ずる。そのため、Fe基非晶質合金に比べて磁歪が小さくなり、取り扱い時にFe基ナノ結晶合金に加えられる応力に起因する想定されない磁気異方性を低減することができる。これらの現象も、軟磁気特性が改善される理由のひとつと考えられる。これらの元素は、0.1~5原子%の範囲で含有される。好ましくは2~5原子%の範囲である。0.1原子%未満では結晶粒の微細化が不十分となる可能性がある。5原子%を超えると飽和磁束密度の低下が大きくなる。
【0048】
SiおよびBは、Fe基ナノ結晶合金の結晶粒微細化に特に有用な元素である。Fe基ナノ結晶合金は、例えば、Si、Bの添加効果により非晶質合金を得た後、熱処理により、微細結晶粒を形成させることにより得られる。Siは10~20原子%の範囲で含有される。Si含有量が10原子%未満では合金の非晶質形成能が低く、非晶質を安定して得にくくなる。また、合金の結晶磁気異方性の低下が不十分であるため、優れた軟磁性特性(例えば、低保磁力)が得られにくい。Si含有量が20原子%超では合金の飽和磁束密度の低下が大きく、また、得られた合金が脆化しやすくなる。好ましいSiの下限値は14原子%である。一方、好ましいSiの上限値は18原子%である。
【0049】
なお、Bは5~10原子%の範囲で含有される。Bは非晶質形成に必須の元素であり、B含有量が5原子%未満では非晶質形成能が低く、非晶質を安定して得にくくなる。B含有量が10原子%超では飽和磁束密度の低下が大きい。好ましいBの下限値は6原子%である。一方、好ましいBの上限値は8.5原子%である。
【0050】
このFe基ナノ結晶合金は、C、Ge、P、Ga、Sb、In、Be、Asから選ばれた少なくとも1種の元素を10原子%以下含んでもよいし、0原子%でも良い。これらの元素は、非晶質合金薄帯形成における非晶質化に有効な元素である。これらの元素を、Si、Bと共に添加することにより、合金の非晶質化を助けるとともに、磁歪およびキュリー温度の調整の効果が得られる。
【0051】
また、Al、白金族元素、Sc、希土類元素、Zn、Sn、Reから選ばれた少なくとも1種の元素を10原子%以下含んでもよいし、0原子%でも良い。これらの元素は、耐食性改善、磁気特性改善、磁歪調整の効果を有する。含有量が10原子%を超えると、飽和磁束密度の著しい低下を招く。これらの元素の特に好ましい含有量は8原子%以下である。これらの元素の中で、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptからなる群から選択される少なくとも1種の元素を添加した場合、特に耐食性に優れたナノ結晶軟磁性合金が得られる。
【0052】
残部は不純物を除いて実質的にFeである。Feの一部は、CoやNiによって置換することもできる。上述の一般式におけるM(Coおよび/またはNi)の含有量aは0≦a<0.5である。aが0.3を超えると、コア損失が増加する場合があるため、好ましくは、0≦a≦0.3である。ここで、高いμ’を得るにはa=0が好ましい。
【0053】
本開示の実施形態のナノ結晶合金からなる軟磁性合金薄帯は、例えば、厚さが10μm~25μmのものを用いることができる。この軟磁性合金薄帯は、通常、合金溶湯をロール冷却することで、連続的に製造される。このロール冷却で製造された状態では、非晶質合金薄帯の状態である。このロール冷却で製造される非晶質合金薄帯は、製造上長尺となる。このため、通常は巻回された状態で運搬される。その後、必要により、所定の幅にスリットされる。
【0054】
<第1熱処理工程>
第1熱処理工程では、まず、所定の幅にスリットされた非晶質合金薄帯を図1に示すように円形形状に巻き回して軸Aを有する巻磁心11を形成する巻工程を行う。その後、所望の形状となるように巻磁心11を変形させ、巻磁心11の内空間11i内に、図2に示すように、第1の内形状矯正治具31を配置し、非円形の巻磁心12を形成し、形状の保持を行う。その際、図2に示すように外形矯正治具2a、2bを配置してもよい。この状態では、巻磁心12は、弾性変形によって非円形の形状を有しており、第1の内形矯正治具31および外形矯正治具2a、2bを外すと、巻磁心12は、円形形状に戻ろうとする。第1の内形状矯正治具31は、巻磁心11に挿入された状態で、第1の内形状矯正治具31の伸びる方向Bに垂直な断面において、作製する巻磁心が有する所望の非円形形状と相似な非円形形状を有していることが好ましい。ここで、第1の内形状矯正治具31の伸びる方向Bとは、第1の内形状矯正治具31が巻磁心11に挿入された状態で、巻磁心12の軸Aに平行な方向をいう。後述する第2の内形矯正治具32a、32b、32cの伸びる方向も同様に定義される。
【0055】
本実施形態では非晶質合金薄帯を円形に巻回した後に第1の内形矯正治具を31用いて非円形の形状に保持しているが、非円形形状の第1の内形矯正治具31に直接非晶質合金薄帯を巻き回して、非円形の巻磁心12を形成することもできる。また、本実施形態では、断面の外周が非円形形状の実施例として略三角形の形状を示しているが、本開示の巻磁心はこの形状に限定されるものではなく、巻磁心は略長方形や楕円形状などの形状を有していてもよい。つまり、巻磁心11は、第1の内形矯正治具、若しくは、第1の内形矯正治具と外形矯正治具を用いて保持が可能な任意の非円形の形状を有していてもよい。また、断面形状としてみた場合、巻磁心は、2つの半円を2本の直線部でつないだレーストラック形状を有していてもよいし、レーストラック形状の2本の直線部の一方または両方に外側に向かって凹部または凸部が設けられた形状を有していてもよい。
【0056】
その後、巻磁心12の内空間(穴)12iに、巻磁心12を非円形に保持するための第1の内形矯正治具31が配置された状態で、巻磁心12を300℃以上、結晶化開始温度未満の温度で熱処理する。この第1熱処理工程により、非晶質合金薄帯の巻磁心12は非円形にその形状が固定される。これにより内形矯正治具31が無くとも形状が保持されるようになる。
【0057】
第1熱処理工程は、非反応性雰囲気ガス中で加熱することで、非円形形状に変形されていることに起因する応力が緩和されやすい。第1熱処理工程では窒素ガスを実質的に非反応性雰囲気ガスとして扱える。非反応性雰囲気ガスとして、不活性ガスも使用することもできる。また、水素ガスのような還元性ガスを用いても良い。また、熱処理を真空中で行ってもよい。
【0058】
第1熱処理工程の熱処理の温度(以下、第1熱処理温度)は、300℃以上、結晶化開始温度未満の範囲で選択される。300℃未満で行われると、非円形に形状を固定することができない。また、結晶化開始温度以上であると、ナノ結晶相が形成され、非晶質合金薄帯の体積が減少するため矯正治具との間で予期しない応力が発生し磁気特性の劣化を招く。
【0059】
なお、本願では結晶化開始温度は、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimetry)の測定条件を昇温速度10℃/分で行ったときの、ナノ結晶化の開始による発熱反応が検出される温度として定義される。
【0060】
上記のFe基ナノ結晶合金からなる軟磁性合金薄帯はその結晶化開始温度はおよそ510~550℃の範囲であるため、第1熱処理温度は510℃未満で行われることが好ましい。第1熱処理工程の熱処理の温度プロファイルの概略を図7に示す。第1熱処理温度の上限は500℃が好ましく、480℃がより好ましい。第1熱処理温度が低すぎる場合は応力緩和の進行が緩慢になるため熱処理に時間がかかり、生産性の観点からに望ましくない。第1熱処理温度の下限は300℃であり、好ましくは350℃である。
【0061】
第1熱処理温度の範囲で保持される時間は前記応力緩和が十分行われる時間が必要であり、その下限値は10分が望ましく、より望ましくは30分である。上限値は特に制限されないが、あまりに長時間におよぶと生産性の面で好ましくない。そのため保持される時間の上限は180分が望ましく、より望ましくは90分である。
【0062】
<第2熱処理工程>
第1熱処理工程の後、第1の内形矯正治具31を外し、図4に示すように、第1の内形矯正治具31よりも小さい第2の内形矯正治具32aを、巻磁心12’の内空間12iに配置し、この状態で、巻磁心12’を結晶化開始温度以上の温度でナノ結晶化の熱処理をする第2熱処理工程を行う。この時、外形矯正治具を巻磁心12の外周側に配置してもよい。第1熱処理工程により、巻磁心12’は、内形矯正治具31がなくても、所望の非円形の形状を維持している。言い換えると、第1熱処理により、巻磁心11が塑性変形し、所望の非円形の形状を有する巻磁心12’が得られる。
【0063】
ナノ結晶化を伴う第2熱処理工程を行うと、巻磁心を構成している薄帯が収縮する。具体的には、非晶質合金薄帯は、ナノ結晶化に伴い、厚さ方向および厚さ方向に垂直な直交する2方向の3次元に収縮する。例えば、非晶質合金薄帯の長手方向には、長さ換算で約1%減少する。そのため第1熱処理工程で用いた内形矯正治具31を付けたまま第2熱処理を行うと、ナノ結晶化時に巻磁心に対し応力が印加されることとなる。これに対し、内形矯正治具31を除去すると、ナノ結晶化時にかかる応力の影響を回避することができる。しかし、第2熱処理中に巻磁心に磁場を印加すると、図3に示すように、巻磁心の変形が発生する。具体的には、薄帯が内周側で積層方向に隣接する薄帯から離間し隙間が生じる。例えば、巻磁心12’の積層方向の厚さtに対して、薄帯が積層方向に隣接する薄帯から0.1t以上の隙間Sで離間する部分が1または複数生じる(薄帯のばらつき)。これは印加した磁場によって非晶質薄帯が磁化し、非晶質薄帯間で磁化による反発力が働くことに起因する。特に、巻磁心の直線部Lにおいて、角部Cに比べて非晶質薄帯の変形の自由度があるため、この変形は直線部Lにおいて顕著に発生する。
【0064】
そのため、本開示においては、第1熱処理工程の後に第1の内形矯正治具を取り除き、第1の内形矯正治具よりも小さい第2の内形矯正治具を巻磁心の内空間に少なくとも1つ配置する。これにより第2熱処理工程による磁場中熱処理時における巻磁心の変形は低減しつつ、かつ、ナノ結晶化時にともなう巻磁心の寸法減少による応力の影響も、低減することができる。
【0065】
上述した変形の発生理由から、本発明は断面が非円形の巻磁心であって、特に、断面に直線部分が大きい割合で含まれる巻磁心に特に効果を奏する。例えば、巻磁心の断面の内周形状において、曲率が10m-1以下の直線または曲線部分(半径が10cmよりも大きい円弧または直線)の合計の長さの割合が、内周の全長に対して10%以上である非円形の断面を有する巻磁心に本発明は特に効果を奏する。
【0066】
第2の内形矯正治具は、巻磁心の内径部が変形することを抑制する効果を有するが、その変形抑制効果が第1の内形矯正治具よりも小さい。つまり、第1の内形矯正治具よりも第2の内形矯正治具の方が、巻磁心の収縮変形を許容する。第2の熱処理工程では、巻磁心は収縮する方向への変形が起きる。この場合、その変形を抑制する効果が大きい第1の内形矯正治具をそのまま用いると、その変形を抑制することにより、巻磁心に不要な応力を与え、巻磁心の磁気特性が劣化する。そのため、本開示では、変形抑制効果は有するものの、第1の内形矯正治具よりもその効果が小さい第2の内形矯正治具をあえて用いている。これにより、巻磁心の変形量を2段階で調整でき、かつ、第1と第2の熱処理工程における熱処理温度を変えることで、巻磁心の磁気特性の劣化を抑制するものである。
【0067】
この効果を得るためには、第2の内形矯正治具は、第1の内形矯正治具より小さい外形寸法を備えていることが好ましい。具体的には第2の内形矯正治具の伸びる方向と垂直な断面は第1の内形矯正治具の伸びる方向と垂直な断面よりも小さい。例えば、第2の内形矯正治具の寸法は、第1の内形矯正治具31に対し、0.5%~20%小さいものことが好ましい。この割合は、面積ではなく、長さに対する割合である。より具体的には、第1の内形矯正治具31および第2の内形矯正治具32aの、これらが伸びる方向(巻磁心12、12’に挿入された状態で、巻磁心の軸となる方向)に垂直な断面における外周(外縁)の長さの割合で表される。この断面は、第1の内形矯正治具31および第2の内形矯正治具32aを巻磁心12、12’に挿入した場合において、巻磁心12、12’の形状を定義する面と平行である。以下、内形矯正治具の断面の形状とは、この定義による断面をいう。
【0068】
この長さの減少割合の下限値が0.5%未満であると、第2熱処理工程で、巻磁心12’に不要な応力が付与され、作製した巻磁心の磁気特性が劣化しやすい。下限値は、0.8%が好ましく、1.0%が好ましく、1.5%がより好ましい。一方、上限値が20%を超えると、所望の寸法の巻磁心が得にくい。上限値は、15%が好ましく、10%がより好ましい。
【0069】
第2の内形矯正治具は、1または複数、巻磁心の内空間に配置することができる。1つの第2の内形矯正治具を配置する場合には、第1の内形矯正治具と第2の内形矯正治具の断面形状は互いに相似形であってもよい。複数の第2の内形矯正治具を配置する場合には、第2の内形矯正治具の断面形状は第1の内形矯正治具の断面形状と異なっていてもよい。図4は、第1の内形矯正治具32と相似形の第2の内形矯正治具32a示し、図5図6は、複数の第2の内形矯正治具32b、32cを配置する一例を示す。
【0070】
図4に示すように、1つの第2の内形矯正治具32aを配置する場合には、ナノ結晶化熱処理の前の状態では、第2の内形矯正治具32aが巻磁心と接しないように巻磁心12’の内空間12iに配置および固定されていてもよい。
【0071】
図5図6は、複数の第2の内形矯正治具32b、32cを配置する一例を示す。複数の第2の内形矯正治具32b、32cを配置する場合、ナノ結晶化熱処理の前の状態では、第2の内形矯正治具32b、32cが巻磁心12’と接しないように巻磁心12’の内空間12iに配置および固定されていてもよい。具体的には、第2の内形矯正治具32b、32cは、前記巻磁心の軸と垂直な断面において、第1の内形矯正治具の断面の外周形状と相似な形状32p’と内接して配置されていてもよい。複数の第2の内形矯正治具32b、32cはそれぞれ同じ断面形状を有していてもよいし、一部が異なる断面形状を有していてもよい。いずれの第2の内形矯正治具32a~32cも、特に巻磁心の断面形状の直線部に配置されており、これらの部分において磁場印加時における変形を抑制する。具体的には、薄帯が積層方向に隣接する薄帯から0.1t以上の隙間Sで離間する部分がない巻磁心を得ることが可能である。
【0072】
これらの場合、図13に示すように、上述した第2の内形矯正治具32aの断面の外周形状32pおよび第2の内形矯正治具32b、32cで構成する、第1の内形矯正治具の断面の外周形状と相似な形状32p’は、第1の内側矯正治具の外周形状であり、第1熱処理後の巻磁心の内周形状でもある形状に対して、面積比で0.5倍以上0.9倍以下の面積を有する領域R内にあることが好ましい。形状32pおよび形状32p’は、より好ましくは、第1の内側矯正治具の外周形状に対して、面積比で0.8倍以上0.9倍以下であることが好ましい。
【0073】
また、複数の第2の内形矯正治具を巻磁心の内空間に配置する場合、複数の第2の内形矯正治具が移動可能であれば、ナノ結晶化に伴い巻磁心の薄帯が収縮しても、巻磁心に不要な応力を与え、巻磁心の磁気特性が劣化するのを抑制し得る。このため、例えば図14に示すように、第2の内形矯正治具32dを移動可能な状態で巻磁心12’の内空間12iに配置してもよい。
【0074】
第2熱処理工程において、巻磁心12’にナノ結晶化熱処理を行う。ナノ結晶化熱処理の温度プロファイルの例を図8に示す。ナノ結晶化熱処理は、結晶化開始温度より低い温度Tsから結晶化開始温度以上の温度Teにまで昇温する期間t’を含む。昇温する温度は510℃以上600℃以下の範囲に設定され得る。熱処理温度が510℃より低いか、あるいは600℃よりも高いと、磁歪が大きくなりやすい。熱処理温度が550℃以上600℃以下であれば、さらに磁歪を小さくできる。具体的には、巻磁心の飽和磁歪定数を3ppm以下、さらには2ppm以下、さらには1ppm以下にすることも可能である。
【0075】
なお、ナノ結晶化熱処理において、結晶化開始温度より低い温度からそれ以上に昇温する際、結晶化開始温度での昇温速度は、0.2~1.2℃/分の緩やかな昇温速度で昇温することが好ましい。これにより、ナノ結晶化される際に起こる薄帯の自己発熱による粗大結晶粒の生成を抑制でき、安定したナノ結晶化を行うことができる。なお、結晶化開始温度よりも20℃低温までは、例えば3~5℃/分の昇温速度で比較的急速に昇温しても良い。熱処理に要する時間を短縮し生産性を向上することができる。
【0076】
ナノ結晶化熱処理の際に最高温度で保持される時間は、ナノ結晶相の育成が十分行われる時間が必要であり、10分以上が望ましい。より望ましくは15分以上である。ナノ結晶化熱処理の際に保持される時間の上限は特に制限されないが、あまりに長時間におよぶと生産性が悪化し好ましくない。そのためナノ結晶化熱処理時に保持される時間の上限は180分が望ましく、より望ましくは120分である。ナノ結晶化熱処理時は磁場を印加しないことが好ましい。
【0077】
<磁場印加工程>
第2熱処理工程の一部期間において、前記巻磁心に対して磁場を印加する。例えば、ナノ結晶相の育成を十分行った後、最高温度よりも低い温度へ冷却を行い、冷却中に誘導磁気異方性を付与するために磁場の印加を行う。具体的には、冷却途中の温度で保持し、その後、降温しながら磁場の印加を行うことができる。ここでの保持温度が高くなるほど誘導磁気異方性が強く付加されて透磁率が低下する。つまり、磁場の印加前の保持温度を変えることで透磁率の制御が可能である。ただし、200℃未満の温度では誘導磁気異方性を十分付加させることができず、500℃超の温度ではナノ結晶相の結晶粒成長が促進してしまうため保磁力が増大し軟磁気特性の劣化を招く。そのため、磁場の印加前保持温度は200℃以上500℃以下とすることが好ましい。
【0078】
前記磁場印加前の温度保持時間は5分以上、さらには10分以上とすることが好ましい。また、保持時間の上限は特にないが、10時間以下であれば熱処理に必要な時間を短縮できるので、生産性を向上することができる。
【0079】
磁場を印加する方向は、巻磁心の磁路に対して直交する方向とすることができる。その後、磁場を印加しながら降温させることができる。
【0080】
印加する磁場強度は60kA/m以上であることが望ましく、100kA/m以上であればより望ましい。また磁場の上限は特に限定されないが、400kA/mを超えても、誘導磁気異方性がさらに付与されることはないので、400kA/m以下とすることが好ましい。
【0081】
磁場を印加しながら降温する際、十分低温まで温度が下がるまで磁場を印加し続ける必要がある。200℃以下に低下するまで磁場を印加し続けるのが好ましく、より好ましくは100℃以下である。また、磁場は直流磁場、交流磁場、またはパルス磁場のいずれによるものでもよい。
【0082】
第1熱処理工程および第2熱処理工程は、非反応性雰囲気ガス中で行うことが好ましい。窒素ガス中で熱処理した場合は十分な透磁率が得られ、窒素ガスを実質的に非反応性ガスとして扱える。非反応性ガスとして不活性ガスを使用することもできる。また、水素ガスによる還元雰囲気を用いても良い。また熱処理を真空中で行っても良い。具体的には第1熱処理工程および第2熱処理工程を酸素濃度が10ppm以下の雰囲気中で行うことが好ましい。
【0083】
<ナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心>
本開示の第1の実施形態による巻磁心はナノ結晶軟磁性合金薄帯が巻回された構造を備える。また、上述したように、本開示の非円形の巻磁心は、非円形のリング形状を有し、その外縁および内縁は、概ね互いに相似である非円形形状を有する。また、本開示の巻磁心は、100kHzでのインピーダンス非透磁率μrzが45,000以上と、インピーダンス特性に優れたものとすることができる。また、本開示の巻磁心は、10kHzでは80,000以上、1MHzでは10,000以上と、広い周波数域で高いインピーダンス比透磁率μrzを得ることもできる。
【0084】
このように、本開示による非円形のナノ結晶軟磁性合金薄帯の巻磁心のインピーダンス比透磁率μrzが高い理由は、結晶化を伴う熱処理時に内形矯正治具によりもたらされる応力を低減することでアモルファス薄帯内部に発生する意図しない誘導磁気異方性を軽減できるため、非円形形状においても均一な誘導磁気異方性を実現していることが原因と考える。誘導磁気異方性が均一となることで磁化過程における磁壁移動成分が少ないので、磁気モーメントが高い周波数で追随できると推察される。
【0085】
上記のインピーダンス比透磁率μrzが高い磁心は、コモンモードチョークコア用の磁心として有用であり、例えば導線を巻回したり貫通したりすることでコモンモードチョークとしての機能を有する。
【0086】
コモンモードチョークとしての特性指標はインピーダンス比透磁率μrzを使用することが多い。インピーダンス比透磁率μrzについては、例えばJIS規格C2531(1999年改訂)に記載されている。インピーダンス比透磁率μrzは以下の式(1)に示すように複素比透磁率(μr’-iμr’’)の絶対値に等しいものとして考えることができる(例えば、「磁性材料選択のポイント」、1989年11月10日発行、編者:太田恵造)。
μrz=(μr’+μr’’1/2・・・(1)
【0087】
上記式(1)における複素比透磁率の実部μr’は、磁界に対して位相の遅れがない磁束密度成分を表し、一般に低周波数域におけるインピーダンス比透磁率μrzの大きさに対応する。一方、虚部μr’’は磁界に対する位相の遅れを含む磁束密度成分を表し、磁気エネルギーの損失分に相当する。巻磁心のインピーダンスはインピーダンス比透磁率μrzに比例し、インピーダンス比透磁率μrzが広い周波数帯域で高い値であれば、高いインピーダンスが得られ、コモンモードノイズの除去能力に優れていることになる。
【0088】
また、本開示の巻磁心は、周波数f=10kHz、振幅H=0.05A/mの交流磁場が印加された状態において、室温にて測定した比透磁率μ(10kHz)が80,000以上であり、直流BHループの角形比Br/Bmが50%以下であり、保磁力が1.1A/m以下のものとすることもできる。
【0089】
また本開示の巻磁心は、樹脂を含侵することができる。ナノ結晶による巻磁心はナノ結晶化のための熱処理の際に脆くなるため、機械的安定性を高めるために巻磁心に樹脂が含浸される場合がある。また、非円形の形状を保持するためにも巻磁心に樹脂が含浸される場合がある。この際、樹脂含浸するとナノ結晶合金薄帯に応力が印加され、巻磁心のインピーダンスが変化して顧客の要求に合わなくなるという、特性の設計上の課題がある。
【0090】
本開示のナノ結晶合金磁心は、樹脂を含浸しても、インピーダンス特性の変化を極力小さくすることができる。含浸させる樹脂として、エポキシ系、アクリル系などのものを適宜使用できる。また、これら樹脂を含浸させる際に用いる樹脂溶剤の容量は、樹脂の重量に対して5wt%~40wt%程度として用いることが一般的である。樹脂を含侵させる場合、第2熱処理工程の後、上述した樹脂が溶解した溶液で満たされた容器にナノ結晶合金磁心を浸し、容器からナノ結晶合金磁心を引き上げ、溶媒を乾燥させることによって、ナノ結晶合金磁心と磁心に含侵された樹脂とを備えた合金コアが得られる。
【0091】
<透磁率>
本願における「透磁率」という用語は、「比透磁率」と同義である。また、周波数f=1kHz、振幅H=0.05アンペア/メートル(A/m)の交流磁場が印加された状態において室温にて測定した比透磁率は、μr(1kHz)と表記する。
【0092】
また、インピーダンス比透磁率は、μrzと表記する。なお、インピーダンス比透磁率は、キーサイト社製のインピーダンス/ゲイン・フェーズアナライザ(型番4194A)により測定した。絶縁被覆導線を、巻磁心の中央部に貫通させて、入出力端子に接続し測定した。
【0093】
(実施例1)
原子%で、Cu:1%、Nb:3%、Si:15.5%、B:6.5%、残部Fe及び不可避不純物からなる合金溶湯を単ロ-ル法により急冷し、幅50mm、厚さ14μmのFe基非晶合金薄帯を得た。このFe基非晶合金薄帯を、幅35mmにスリット(裁断)した。
【0094】
このスリットしたFe基非晶合金薄帯を、外径90mm、内径80mmの円形に巻回し(高さ35mm)、巻磁心とした。示差走査熱量計(DSC)での測定により、この合金の結晶化開始温度は529℃であった。
【0095】
その後、円形に巻回された巻磁心に対し、図2に示すように内周側に第1の内形矯正治具31を、外周側に外形矯正治具2a、2bを配置することで略三角形の非円形形状へと変形した。第1の内形矯正治具31と外形矯正治具2a、2bには非磁性の金属であるSUS304を用いた。
【0096】
その後、非円形に矯正された巻磁心に対し、図9に示す温度プロファイルで熱処理を行った。なお、ここで示される温度は、温度コントローラ(チノー社製KP1000C)により制御された熱処理炉内の雰囲気の温度である。第1熱処理は、酸素濃度が10ppm以下(2ppm)の窒素雰囲気中で行った。
【0097】
第1熱処理の温度コントローラの設定は、巻磁心を、90分で室温から450℃まで昇温(昇温速度4.8℃/min)し、30分保持した後、220分かけて100℃以下まで降温(降温速度1.6℃/min)する設定とした。
【0098】
その後、第2熱処理工程を行った。
【0099】
先ず、第1の内形矯正治具を外した。第1熱処理によりアモルファス合金薄帯からなる巻磁心には巻きぐせが与えられているため、第1の内形矯正治具を除去しても巻磁心の形状は維持される。続いて、図4に示すように、第1の内形矯正治具よりも小さい第2の内形矯正治具を巻磁心の内空間に配置した。第2の内形矯正治具は、軸方向に見て、第1の内形矯正治具よりも外形寸法が1%小さい物とした。そのため、アモルファス合金薄帯からなる巻磁心の内周側と第2の内形矯正治具との間には間隙が生じていた。また、外側矯正治具を外さず、外側矯正治具を装着したままとした。
【0100】
その後、図10に示す温度プロファイルで熱処理を行った。温度コントローラの設定として、まず、90分で室温から450℃まで昇温(昇温速度4.8℃/min)し、30分保持した。これにより巻磁心の内部の温度分布は450℃で均一とした。その後、240分で580℃まで昇温(昇温速度0.5℃/min)した。この昇温中529℃近傍にてナノ結晶化が開始し、巻磁心の体積が約1%収縮する。この際、巻磁心と第2の内形矯正治具には間隙を設けていたため、得られる巻磁心には収縮に伴う応力は発生しない。また、0.5℃/minという低速で昇温するため、薄帯がナノ結晶化される際に起こる自己発熱による粗大結晶粒系の生成を抑制でき、安定したナノ結晶化を行うことができる。その後、580℃で30分保持し、160分かけて400℃まで降温(降温速度1.1℃/mim)した。その後400℃にて80分保持することで巻磁心内部の温度分布を400℃で均一とした。この熱処理は、酸素濃度が10ppm以下(2ppm)の窒素雰囲気中で行った。
【0101】
400℃で保持した後、磁場を印加しながら降温(降温速度1.4℃/mim)した。磁場は巻磁心における磁路方向に対して直交する方向(本実施形態では巻磁心の軸方向)に印加した。印加した磁場強度は160kA/mであった。100℃以下に降温するまで磁場が印加されることで誘導磁気異方性が付与される。その後、第2の内形矯正治具と外形矯正治具とを除去した。これにより本実施例の非円形形状の巻磁心を得た。この巻磁心は比透磁率μr’(10kHz)が86,000であった。磁歪は1ppm以下であった。
【0102】
図11は本実施例により得られた巻磁心のインピーダンス比透磁率μrzの周波数特性を示す図である。100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrz(100kHz)は45,000以上(45,441)であった。図12は本実施例により得られた巻磁心の直流B-H曲線を示す図である。保磁力は1A/m以下(0.95A/m)であった。
【0103】
本実施形態のインピーダンス比透磁率μrzの測定値を表1に、その他の特性として、飽和磁束密度Bm、残留磁束密度Br、直流BHループの角型比Br/Bmを表2に記載する。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【0106】
(比較例1)
比較例1として円形の巻磁心を作成した。アモルファス合金薄帯を円形に巻回して巻磁心とした後、外形矯正治具、および、内形矯正治具とも設置せず、円形のままナノ結晶化熱処理を行い、巻磁心を得た。熱処理の条件は、実施例1における第2熱処理工程のナノ結晶化熱処理と同じ条件とした。
【0107】
図11図12、表1、表2に比較例1によって得られた巻磁心の特性を併記する。周波数特性やB-H曲線は実施例1と比較例1はほぼ同じであり、図11図12では実施例1のグラフと重複している。このことから、本実施形態の実施例1の非円形の巻磁心は、円形コアと同等の特性を実現できていることがわかる。
【0108】
(比較例2)
比較例2として、第2熱処理工程において、第1の内形矯正治具を外さず、第1の内形矯正治具を装着したままナノ結晶化熱処理を行って巻磁心を作成した。それ以外については実施例1と同じ製造条件とした。
【0109】
図11図12、表1、表2に比較例2によって得られた磁心の特性を併記する。比較例2による巻磁心の保磁力は1.17A/mであり実施例1よりも大きな値を示している。比較例2による巻磁心の100kHzにおけるインピーダンス比透磁率μrz(100kHz)は37,808しかなく、実施例1よりも低い。また1kHz~10MHzの広い周波数範囲において、比較例2の巻磁心は実施例1よりも低いインピーダンス比透磁率μrzを示している。このことから、実施例1に示す手法を用いることで比較例2よりも高いインピーダンス比透磁率μrzを有する非円形の巻磁心を得ることができることが分かる。
【符号の説明】
【0110】
11:円形の巻磁心、
12:非円形の巻磁心、
2a、2b:外形矯正治具、
31:第1の内形矯正治具、
32a、32b、32c:第2の内形矯正治具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図14