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特許7143965アゾ顔料、インキ、塗料、プラスチック用着色剤、着色成形品、文具・筆記具用着色剤、捺染剤、トナー、カラーフィルタ用分散液・レジスト、及び化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】アゾ顔料、インキ、塗料、プラスチック用着色剤、着色成形品、文具・筆記具用着色剤、捺染剤、トナー、カラーフィルタ用分散液・レジスト、及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/08 20060101AFI20220921BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20220921BHJP
   C09C 3/00 20060101ALI20220921BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20220921BHJP
【FI】
C09B67/08 C
C09B67/20 E
C09C3/00
C09D11/322
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022518294
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 JP2021045264
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2021024126
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 頌悟
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓矢
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-020673(JP,A)
【文献】特開2016-041785(JP,A)
【文献】特開2003-096349(JP,A)
【文献】特開2008-069355(JP,A)
【文献】国際公開第2019/180955(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 67/08
C09B 67/20
C09C 3/00
C09D 11/322
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプロパノール(IPA)中のゼータ電位が-80mV~-30mVであり、アゾ顔料100質量部あたり元素を0.05~2.00質量部含むアゾ顔料。
【請求項2】
X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Fe(atomic%)と、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度C(atomic%)の比(Fe/C)が0.20以下である請求項に記載のアゾ顔料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアゾ顔料を含有するインキ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のアゾ顔料を含有する塗料、プラスチック用着色剤、着色成形品、文具・筆記具用着色剤、捺染剤、トナー、カラーフィルタ用分散液・レジスト、及び化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ顔料および当該アゾ顔料を含むインキ、塗料、プラスチック用着色剤、着色成形品、文具・筆記具用着色剤、捺染剤、トナー、カラーフィルタ用分散液・レジスト、及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
昔からアゾ顔料は、主としてインキ、塗料、トナー、ゴムおよびプラスチックの着色、合成繊維の原液着色、顔料捺染、雑貨の着色に用いられている。その中でもインキなどの印刷用途は、重要である。印刷は、印刷版を作り、その版面に印刷インクを付け、紙、フィルム、布などに転写することで行われる。印刷版には、平版、凹版、凸版、孔版があり、版の形状に応じてオフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷などの印刷方式がある。凹版を用いるグラビア印刷では、多色刷りの場合、通常ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの順に印刷される。また、上記印刷以外にインクを直接用紙に噴きつけることで印刷するインクジェット方式の印刷もある。これらの印刷では、先に刷られた色の上から別の色を重ねて刷るため、鮮明な画像の印刷物を得るためにインキには透明性が求められる。インキの透明性は着色剤である顔料の性能によって左右される。
【0003】
インキの透明性を改善する方法については、例えば、特許文献1に記載のとおり、アゾ顔料では縮合ジスアゾ顔料をソルベントソルトミリングにより微細化する方法が知られている。また、顔料などのコロイド粒子の分散安定や凝集の度合いを評価するパラメータとして、ゼータ電位が様々な分野で利用されており、例えば、特許文献2に記載のとおり、水性溶媒中での顔料粒子のゼータ電位を特定の値とすることで、インクジェットインクの画像の透明性を得る方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-279428公報
【文献】特開2003-96349公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、ジスアゾ顔料を水溶性無機塩及び水溶性溶剤と共に混練して微細化することで、光の散乱が抑えられ、塗膜の透明性が増す。しかし、微細化により顔料粒子の表面積が増大し、ファンデルワールス力による粒子間引力が強くなるため、分散性が悪化し、顔料をインキにしたときの粘度が増大するという問題がある。
【0006】
上記特許文献2では、顔料をインクジェットインク化した後、希釈してゼータ電位を測定している。特許文献2では、顔料分散時に用いる界面活性剤の種類や添加量、電荷を有する添加剤の添加により、ゼータ電位を与えるとしているが、インクの媒質によっては添加剤が顔料粒子から解離するため、所望のゼータ電位に調節することが難しい。特許文献2では、分散後、顔料-樹脂-溶剤-添加剤により分散ネットワークが構成されているため、顔料周りには樹脂や添加剤が存在している。よって、この方法で測定しても、樹脂や添加剤にくるまれた顔料のゼータ電位を測定しているだけであり、純粋に顔料粒子のゼータ電位を測定しているとは言えない。つまり、特許文献2におけるゼータ電位では、顔料における凝集や分散状態を表しているとは言えず、結果として透明性に優れ、低粘度であるインクを得られているとは言えない。
【0007】
よって、本発明の課題は、透明性に優れ、さらに分散性が良く、低粘度であるアゾ顔料およびインキ等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記特許文献2のインクジェットインクに限らずインキの溶剤は、水から疎水性有機溶剤まで様々な極性のものが用いられる。そこで、本発明者らは、検討の結果、親水性基と疎水性基を持つイソプロパノール(IPA)をゼータ電位の測定溶媒に採用した。IPAは水などの親水性溶媒とも、疎水性溶媒とも混和するため、IPA中のゼータ電位は、溶剤がいずれのインキでも使用可能な万能な指標と考えた。また、アゾ顔料は発色団としてアゾ基(-N=N-)を持つ顔料である。アゾ基が強い発色効果を持ち、助色団によって、黄色、橙色、赤色、紫色、青色、茶色まで広範囲に色相を調整できる。これらの利点から、カラーインデックスに登録されている有機顔料のうち、半分以上がアゾ顔料となっている。よって、アゾ顔料の透明性、分散性を改良することは、大変重要である。
【0009】
上記のように本発明者らは、IPA溶剤中でのアゾ顔料のゼータ電位に着目し、さらに検討を進めた結果、当該ゼータ電位を特定の範囲に制御することで、透明性に優れ、分散性が良く、低粘度であるアゾ顔料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
なお、上記特許文献2では、マゼンタ顔料インクを1000倍に希釈し、ゼータ電位を測定している。希釈する媒質について明確な記載はないが、マゼンタ顔料インク作製時、マゼンタ顔料分散液を純水で希釈していることから、ゼータ電位時も純水を使用していると考える。よって特許文献2では、ゼータ電位の測定溶媒に水を使用しており、IPA中のゼータ電位は特許文献2からは容易に想到できない。
【0011】
本発明の詳細なメカニズムは以下のとおりであると考えられる。
顔料粒子はナノレベルの粒子(一次粒子)であるが、粒子間のファンデルワールス力のため一次粒子が凝集し、二次粒子を形成している。顔料を着色成分とするインキを作製する際、分散工程により顔料の二次粒子を一次粒子まで解砕するが、何の工夫もないと粒子間の引力により一次粒子が再凝集してしまう。凝集体は粗大であるため光を散乱させる作用が強く、透明性を落とす原因となる。さらに、凝集体の形成により顔料粒子の運動性が失われ、粒子の間隙に溶媒分子が固定化されるため、粘度が増大する。ここで、IPA中で特定のゼータ電位を持つ顔料を用いる。すると、顔料粒子の電気二重層の反発から粒子同士の接近が抑えられて凝集が防がれるので、良好な分散性・透明性が得られる。顔料粒子に絶対値の大きなゼータ電位を与えるには、粒子表面に何らかの方法で電荷を持つ物質を存在させる必要がある。もっとも単純な方法は、金属塩などイオン性の物質を処理する方法であるが、単に金属塩と顔料を混合するのみでは、顔料粒子から簡単に塩が流出してしまう。そこで、顔料と金属塩の共存下、酸化剤により金属を酸化させ、顔料粒子表面に金属を処理することにした。金属と酸化剤は選択肢が豊富であり、安価な化合物を選択すれば、経済的に有利である。金属と酸化剤との反応は複雑であるため、金属がどのような化合物となっているのか特定することは難しいが、例えば金属が鉄である場合、酸化鉄やオキシ水酸化鉄となっていると推定する。こうして顔料表面上に金属が存在することで、IPA中で特定のゼータ電位を与える。本発明では、顔料粒子の表面に金属が存在することが重要であり、顔料の構造中に金属元素が含まれるのみでは不十分で、顔料表面に金属が露出していなければ、高い透明性と分散性は得られない。
【0012】
即ち本発明は、
『項1. イソプロパノール(IPA)中のゼータ電位が-80mV~-30mVであるアゾ顔料。
項2. 前記アゾ顔料100質量部あたり金属元素を0.05~2.00質量部含む項1に記載のアゾ顔料。
項3. 前記金属元素が鉄元素である項2に記載のアゾ顔料。
項4. X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Fe(atomic%)と、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度C(atomic%)の比(Fe/C)が0.20以下である項3に記載のアゾ顔料。
項5. 項1~4のいずれか1項に記載のアゾ顔料を含有するインキ。
項6. 項1~4のいずれか1項に記載のアゾ顔料を含有する塗料、プラスチック用着色剤、着色成形品、文具・筆記具用着色剤、捺染剤、トナー、カラーフィルタ用分散液・レジスト、及び化粧料。』に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアゾ顔料は、透明性に優れ、分散性が良く、低粘度である。そのため、本発明のアゾ顔料は、インキ(特に印刷インキ、インクジェットインキ)に好適である。また、本発明のアゾ顔料は、インキ用途以外にも塗料、プラスチック用着色剤、文具・筆記具用着色剤、捺染剤、トナー、カラーフィルタ用分散液・レジスト、及び化粧料など各種用途に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
[アゾ顔料]
本発明のアゾ顔料は、イソプロパノール(IPA)中のゼータ電位が-80mV~-30mVである。当該ゼータ電位は、好ましくは-70mV~-35mV、より好ましくは-60mV~-40mVである。IPA中のゼータ電位がこの範囲にあることで、透明性に優れ、分散性が良く、低粘度となる。また、本発明のアゾ顔料は、水中のゼータ電位が例えば-50mV~50mV、好ましくは-25mV~25mV、より好ましくは-10mV~10mVである。ゼータ電位は、電気泳動光散乱測定法によりゼータ電位・粒径・分子量測定システムにて測定することができる。
【0016】
本発明のアゾ顔料は、金属元素(金属)を含むことが好ましい。金属元素(金属)は、金属単体に限らず、酸化物や水酸化物などの金属化合物の形態であってもよい。本発明において金属元素(金属)は、アゾ顔料粒子表面に存在すると推定される。この金属元素(金属)は、単に水などで洗浄しただけでは顔料から除去することはできない。よって、金属元素(金属)は、顔料一次粒子と相互作用を生じ、アゾ顔料の物性に影響を与え、さらにこのアゾ顔料をインキとした際の物性にも影響を与える。
【0017】
上記金属元素の含有量は、例えばアゾ顔料100質量部あたり0.05~2.00質量部、好ましくは0.10~1.80質量部、より好ましくは0.30~1.50質量部である。金属元素の含有量は、酸化物や水酸化物などの金属化合物の形態であっても金属元素単体として換算することとする。金属元素の含有量が上記範囲であると、ゼータ電位を上記の範囲としやすい。金属元素の含有量は、例えば顔料について蛍光X線分光分析やICP発光分光・質量分析を行うことで測定することができる。
【0018】
上記金属元素(金属)としては、例えば鉄、銅、銀、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、コバルト、バナジウム、マンガン、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、カドミウム、インジウム、錫元素が挙げられる。なかでも金属元素(金属)としては鉄元素(鉄)が好ましい。鉄元素は、元素としてFeを含めばよく、鉄酸化物、鉄水酸化物など鉄化合物の形態であってもよい。よって、本発明のアゾ顔料は、鉄元素を上記の範囲で含むことが好ましい。
【0019】
本発明のアゾ顔料が鉄元素(鉄)を含むとき、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Fe(atomic%)と、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度C(atomic%)の比(Fe/C)は、0.20以下(例えば0.0001~0.20)であることが好ましい。また、当該Fe/Cは、より好ましくは0.15以下、更に好ましくは0.10以下である。当該Fe/Cが上記範囲であると、ゼータ電位を上記の範囲としやすい。当該Fe/Cは、例えばX線光電子分光装置にて測定できる。
【0020】
アゾ顔料は、分子内にアゾ基(-N=N-)をもつ有機顔料であればよく、溶性アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料のいずれであってもよい。アゾ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド119、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド136、C.I.ピグメントレッド14、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド147、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド164、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド183、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド200、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド210、C.I.ピグメントレッド211、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド237、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド239、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド243、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド247、C.I.ピグメントレッド253、C.I.ピグメントレッド256、C.I.ピグメントレッド258、C.I.ピグメントレッド266、C.I.ピグメントレッド268、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド48、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド50:1、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド54、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド58、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド60、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド68、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド95、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー10、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー105、C.I.ピグメントイエロー106、C.I.ピグメントイエロー111、C.I.ピグメントイエロー113、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー116、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー124、C.I.ピグメントイエロー126、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー130、C.I.ピグメントイエロー133、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー152、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー165、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー167、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー169、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー170、C.I.ピグメントイエロー172、C.I.ピグメントイエロー174、C.I.ピグメントイエロー175、C.I.ピグメントイエロー176、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー181、C.I.ピグメントイエロー183、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー191:1、C.I.ピグメントイエロー194、C.I.ピグメントイエロー2、C.I.ピグメントイエロー205、C.I.ピグメントイエロー206、C.I.ピグメントイエロー209、C.I.ピグメントイエロー212、C.I.ピグメントイエロー214、C.I.ピグメントイエロー219、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー4、C.I.ピグメントイエロー49、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー6、C.I.ピグメントイエロー60、C.I.ピグメントイエロー61、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー63、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー7、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー75、C.I.ピグメントイエロー77、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー87、C.I.ピグメントイエロー9、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ15、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ17:1、C.I.ピグメントオレンジ19、C.I.ピグメントオレンジ2、C.I.ピグメントオレンジ22、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ3、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ4、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ60、C.I.ピグメントオレンジ62、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ72、C.I.ピグメントオレンジ74、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン32、C.I.ピグメントブラウン5、C.I.ピグメントブルー25、C.I.ピグメントブルー26、C.I.ピグメントバイオレット13、C.I.ピグメントバイオレット17、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット50が挙げられ、単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。
【0021】
アゾ顔料としては、なかでもC.I.ピグメントレッド57:1(PR57:1)、C.I.ピグメントレッド146(PR146)、C.I.ピグメントイエロー13(PY13)、C.I.ピグメントイエロー55(PY55)、C.I.ピグメントイエロー83(PY83)、C.I.ピグメントイエロー180(PY180)、C.I.ピグメントレンジ13(PO13)が好ましい。
【0022】
上記アゾ顔料の一次粒子径は、例えば0.01~1.0μm、好ましくは0.1~0.6μmである。また、上記アゾ顔料の比表面積は、例えば10~150m/g、好ましくは20~100m/gである。一次粒子径や比表面積が上記範囲であると、着色力や分散性に優れた顔料とすることができる。
【0023】
本発明のアゾ顔料は、スルホン酸顔料誘導体、アミノ基含有顔料誘導体、フタルイミドメチル基含有顔料誘導体などの顔料誘導体、分散剤などの高分子、界面活性剤、ロジンなどを含んでいてもよい。また、本発明のアゾ顔料は、無機顔料を含んでいてもよい。無機顔料としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降性硫酸バリウム、カオリン、クレー、アルミナホワイト、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
【0024】
[アゾ顔料の製造方法]
本発明のアゾ顔料は、例えば、1)アゾ顔料の合成、及び2)合成後の顔料表面処理を経て得られる。まず、1)アゾ顔料の合成は、芳香族アミンジアゾニウム塩からなるジアゾ成分と、ジアゾニウム塩を構成する芳香族アミン以外の芳香族化合物からなるカップラー成分とをカップリングすることにより合成できる。ジアゾ成分である芳香族アミンジアゾニウム塩は、芳香族アミンを塩酸で酸性とし、亜硝酸ナトリウム水溶液を添加することで得られる。また、ジアゾ成分とカップラー成分とのカップリングは、水酸化ナトリウムなどを用いたアルカリ条件で行われる。カップリング後に得られたアゾ化合物が溶性アゾ(染料)である場合、カルシウム、バリウムなどの金属塩類の水溶液を加えて不溶化することにより金属でレーキ化されたアゾ顔料としてもよい。1)アゾ顔料の合成では、上記のようにカップリング反応により合成するのではなく、市販のアゾ顔料をそのまま用いてもよい。
【0025】
次に、1)アゾ顔料の合成で得られたアゾ顔料を溶媒に添加、撹拌し顔料スラリーを作製し、次いで顔料スラリーに金属元素と酸化剤を添加、撹拌することにより2)合成後の顔料表面処理を行う。顔料スラリーは、1)アゾ顔料の合成で得られたアゾ顔料を濾過により濾別し、これを溶媒に撹拌することで作製してもよいし、カップリング反応後の反応スラリーをそのまま顔料スラリーとしてもよい。溶媒としては、水および/または有機溶剤を使用することができ、有機溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノールなどを用いることができる。特に、経済性の点から水が好ましい。また、水としては、純水であっても工業用水であっても良く、さらに酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液など緩衝液を使用しても良い。溶媒100質量部に対し、アゾ顔料の添加量は1~30質量部が好ましく、添加量が少ないときは生産性が低く、添加量が多いときは顔料スラリーが高粘度となり撹拌に過大なエネルギーを要するので、2~20質量部がより好ましい。顔料スラリーを作製する工程における温度としては、0℃~100℃が好ましい。また、顔料表面処理工程における温度は、0℃~100℃が好ましく、20℃~80℃がより好ましい。また、顔料表面処理の反応時間としては、10分間~2時間が好ましい。
【0026】
金属元素が鉄元素である場合、金属元素として、硫酸鉄、塩化鉄、フッ化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硝酸鉄、リン酸鉄、ホウ酸鉄、炭酸鉄、酢酸鉄などの鉄化合物を用いることができる。経済性の点から、硫酸鉄、塩化鉄、硝酸鉄が好ましい。鉄としては二価の鉄や三価の鉄を用いることができる。また、鉄化合物は無水物であっても、水和物であってもよい。
【0027】
また、上記酸化剤としては過酸化水素、過マンガン酸塩、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、ペルオキソ二硫酸塩、クロム酸、二クロム酸、オゾンなどを用いることができる。酸化剤としては、なかでも5~60質量%の濃度に水で希釈した過酸化水素が好ましい。金属化合物の使用量は、アゾ顔料100質量部に対して、例えば3~20質量部、好ましくは5~15質量部である。また、酸化剤の使用量は、酸化反応に適した量であればよく、濃度により異なるが、アゾ顔料100質量部に対して、例えば10~100質量部、好ましくは20~80質量部である。
【0028】
金属化合物と酸化剤は、顔料スラリーに同時に添加しても良いし、別々に添加しても良い。同時に添加する場合、予め金属化合物と酸化剤を混合してから添加してもよい。別々に添加する場合、金属化合物を先に添加しても良いし、酸化剤を先に添加しても良い。また、酸化剤を滴下して加えても良いし、一括で添加しても良い。
【0029】
上記の1)、2)を経て得られたアゾ顔料について、必要に応じて、更に粒子径の調整、pH調整、濾過、アルコール洗浄、水洗、乾燥、粉砕など一般的な顔料化処理を行ってもよい。粒子径の調整は、水および/または有機溶剤中でアゾ顔料を、常圧もしくは加圧下、加熱、撹拌し、熟成することで行ってもよく、あるいはアシッドペースト法、アシッドスラリー法、ドライミリング法、ソルベント法、ソルベントミリング法など公知の方法により行ってもよい。また、スルホン酸顔料誘導体、アミノ基含有顔料誘導体、フタルイミドメチル基含有顔料誘導体などの顔料誘導体、分散剤などの高分子、界面活性剤、ロジンなどで顔料粒子表面を処理してもよい。これらの処理は、2)合成後の顔料表面処理の後に実施しても、前に実施してもよい。
【0030】
上記の1)、2)を経て得られたアゾ顔料に、必要に応じて無機顔料を加えて、本発明のアゾ顔料としてもよい。無機顔料としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、沈降性硫酸バリウム、カオリン、クレー、アルミナホワイト、ホワイトカーボンなどが挙げられる。
【0031】
[インキ]
本発明のインキは、上記本発明のアゾ顔料を含む限り特に制限されない。本発明のインキは、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット方式での印刷等の各種用途に用いることができる。本発明のインキは、上記本発明のアゾ顔料を含むため、低粘度であり、顔料の分散性や透明性に優れる。よって、本発明のインキは、平版オフセット印刷用の平版オフセットインキ、グラビア印刷用やフレキソ印刷用に適用できるリキッドインキ、インクジェットインキとして好適に使用することができる。
【0032】
まず、オフセットインキは、平版印刷(湿し水を使用する平版印刷や湿し水を使用しない水無し平版印刷)、凸版印刷、凹版印刷、孔版印刷や、これらの版に付けられたインキをブランケット等の中間転写体に転写した後被印刷体に印刷する転写(オフセット)方式を組み合わせた種々の印刷方式におけるインキをいう。
【0033】
平版オフセットインキは、本発明のアゾ顔料の他、例えば、樹脂ワニス、有機溶剤、動植物油などの油脂、助剤(乾燥抑制剤、ドライヤー、耐摩擦性改良剤等)の成分を含む。平版オフセットインキは、これらの成分を適宜混合し、ロールミル等で練肉分散して製造される。平版オフセット印刷方式に適用できるインキは、5~100Pa・sの比較的粘度の高いインキである。
【0034】
上記の樹脂ワニスに使用される樹脂としては、例えばロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、石油樹脂変性ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ロジンエステル、植物油変性ロジン変性フェノール樹脂、植物油変性ロジンエステル、ポリエステル、アクリル樹脂が挙げられる。有機溶剤としては、炭化水素、アルコール、エステル、ケトン系などのインキに使用される一般的な溶剤が挙げられる。
【0035】
次に、グラビアインキやフレキソインキとして使用されるリキッドインキは、有機溶剤を主溶媒とする有機溶剤型リキッドインキと、水を主溶媒とする水性リキッドインキとに大別される。本発明のアゾ顔料は、有機溶剤型リキッドインキ及び水性リキッドインキ共に適用することができる。
【0036】
リキッドインキは、本発明のアゾ顔料の他、例えば、バインダー樹脂、溶剤、分散剤を含む。溶剤の主成分が有機溶剤である場合、有機溶剤型リキッドインキとなり、溶剤の主成分が水混和性有機溶剤や水などの水性溶剤である場合、水性リキッドインキとなる。
【0037】
リキッドインキは、顔料とバインダー樹脂を添加した混合物を分散機で分散して顔料分散体を得て、得られた顔料分散体に樹脂、溶剤、必要に応じてレベリング剤等の添加剤を加え、撹拌混合することで得られる。リキッドインキのインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。
【0038】
上記バインダー樹脂としては特に制限されず、一般のリキッドインキに使用される、例えばポリウレタン系樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、セルロース、セルロース誘導体、ポリアミド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂を用いることができる。
【0039】
上記有機溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系有機溶剤;ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系が挙げられる。また、上記水混和性有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系;エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系が挙げられる。
【0040】
本発明のインキは、本発明のアゾ顔料を使用するが、そのほかに、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲内で、着色剤として、印刷インキなどの一般的なインキに使用されている有機顔料や無機顔料を併用してもよい。
【0041】
上記有機顔料としては、例えばフタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系等の顔料が挙げられる。また、上記無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏などの白色顔料が挙げられる。
【0042】
上記白色顔料以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、ジルコンが挙げられる。
【0043】
本発明のインキでは更に必要に応じて、ワックス、キレート系架橋剤、体質顔料、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等の各種添加剤を含むこともできる。
【0044】
また、本発明のインキがインクジェットインキである場合は、本発明のアゾ顔料以外に上記の有機顔料および無機顔料、染料(アニオン性アゾ、フタロシアニン、アゾ系金属錯塩等)、樹脂(アクリル系のブロック共重合体、アクリル、マレイン酸、ロジン、エポキシ、シリコーン、ブチラール等の熱可塑性樹脂等)、溶剤(水、ケトン、アルコール、酢酸エチル等)、浸透剤(アルコール、グリコールエーテルなど)、乾燥防止剤(グリセリン、グリコールなど)、pH調整剤(アルコールアミン、NaOH等)、界面活性剤(ノニオン、カチオン、アニオン性等)、導電付与剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防かび剤などを含んでもよい。インクジェットインキは、水性インキであっても油性インキであってもよい。また、インクジェットインキは、ピエゾ方式、サーマル方式いずれの方式であってもよい。
【0045】
[インキ以外の各種用途]
本発明のアゾ顔料は、透明性に優れ、分散性が良く、低粘度であるという優れた物性を有するため、インキ以外の各種用途にも好適に用いることができる。各種用途としては、塗料、プラスチック用着色剤、文具・筆記具用着色剤、着色成形品、捺染剤、トナー、カラーフィルタ用分散液・レジスト、及び化粧料が挙げられる。本発明の塗料、プラスチック用着色剤、文具・筆記具用着色剤、捺染剤、トナー、カラーフィルタ用分散液・レジスト、及び化粧料は、本発明のアゾ顔料を含む。
【0046】
上記塗料は、着色剤として本発明のアゾ顔料を含めばよく、種類は問わず、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などの合成樹脂塗料、油性塗料、水性塗料、粉体塗料、硝酸繊維素樹脂塗料(ラッカー)などに用いることができる。また、用途・目的も問わず、木材用、金属用、ゴム用、プラスチック用などに用いることができる。
【0047】
上記プラスチック用着色剤は、着色剤として本発明のアゾ顔料を含めばよく、種類は問わず、マスターバッチ、着色ペレット・コンパウンド、ドライカラー、ペーストカラー、リキッドマスターバッチなどに用いることができる。また、上記着色成形品は、上記プラスチック用着色剤を含む樹脂を成形したものである。
【0048】
上記文具・筆記具用着色剤は、着色剤として本発明のアゾ顔料を含めばよく、種類は問わず、ボールペン、マーカー、色鉛筆、絵の具、クレヨンなどに用いることができる。
【0049】
上記捺染剤は、着色剤として本発明のアゾ顔料を含めばよく、種類やプリント方式は問わず、手捺染(ハンドプリント・ターンテーブル)、機械捺染(フラットスクリーン、ロータリースクリーン)、浸染等のプリント方式の捺染剤に用いることができる。また、上記以外にも、化学繊維の原料(原液、溶液、ポリマーなど)を直接着色する(いわゆる原液着色)に用いてもよい。
【0050】
上記トナーは、着色剤として本発明のアゾ顔料を含めばよく、レーザープリンター及び複写機(特にカラー印刷のマゼンタ又は黄色)で使用される。
【0051】
カラーフィルタ用分散液・レジストは、液晶などのカラーフィルタに使用される顔料をベースとして溶剤に分散させた分散液、又はそれと感光剤などを含むインキのことであり、上記カラーフィルタ用分散液・レジストは、当該顔料として本発明のアゾ顔料を含む。
【0052】
上記化粧料は、着色剤として本発明のアゾ顔料を含めばよく、種類や用途・目的は問わない。化粧料としては、例えばファンデーション(フェイスカラー、コンシーラーなど)、化粧下地(メークアップベース、プレメークアップなど)、おしろい(フェイスパウダー)、口紅(リップスティック、リップルージュ、リップカラー、リップペンシル、練紅、リップグロス、リップライナーなど)、アイメークアップ(アイシャドウ、アイカラー 、アイライナー、眉墨、アイブローペンシル、アイブローブラッシュ、マスカラ、まつげ化粧料など)、頬化粧料(頬紅、チークカラー、チークルージュなど)、爪化粧料(ネイルエナメル、マニキュア、ネイルカラー、ネイルポリッシュ、ペディキュア、ネイルラッカー、トップコート、ベースコートなど)、毛髪着色料(染毛料、ヘアカラースプレー、ヘアカラースティック、カラーリンス、ヘアマニキュアなど)が挙げられる。
【実施例
【0053】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例及び比較例において特に断りの無い限り、「%」は「質量%」を表すものとする。下記実施例1~9、比較例1~9の方法で各アゾ顔料を合成し、下記の方法でイソプロパノール(IPA)及び水中のゼータ電位、アゾ顔料に含まれる鉄元素量、並びに表面の元素濃度を測定した。
【0054】
本実施例において、IPA中のゼータ電位の測定は、ゼータ電位・粒径・分子量測定システムELSZ-2000Z(大塚電子株式会社製)を使用した。まず、30mLサンプル瓶に測定試料5mgとイソプロパノール(関東化学株式会社製)5mLを量り取り、卓上超音波洗浄器Bransonic M2800-J(ブランソン社製)にて3分間分散させた。続いて、30mLサンプル瓶に測定試料の分散液100μLとイソプロパノール(関東化学株式会社製)10mLを量り取り、Bransonic M2800-Jにて1分間分散させた。作成した測定溶液をフローセルユニットに注入し、ELSZ-2000Zにセルを設置、散乱強度を確認した。散乱強度が測定の適正範囲(10000~50000cps)であれば測定を続行し、適正範囲を外れた場合は、適正範囲内となるよう測定試料の濃度を調節してから測定した。ELSZ-2000Zによる測定条件は下記の通りとし、3回繰り返し測定して平均値をその測定試料のIPA中のゼータ電位とした。
【0055】
[測定条件]
測定温度:25℃
測定待ち時間:300秒
ピンホール:50
積算回数:10回
セル測定位置:0.70/0.35/0.00/-0.35/-0.70
印可電圧:Fixed
印可電圧(固定):100
印可電圧波形タイプ:Auto
定電流:51mA
ローレンツフィット:1peak
ゼータ電位換算式:Huckel
【0056】
本実施例において、水中のゼータ電位の測定は、IPAと同様にELSZ-2000Zを使用した。まず、30mLサンプル瓶に測定試料5mgと純水5mLを量り取り、Bransonic M2800-Jにて15分間分散させた。続いて、30mLサンプル瓶に測定試料の分散液100μLと純水10mLを量り取り、Bransonic M2800-Jにて1分間分散させた。作成した測定溶液をフローセルユニットに注入し、ELSZ-2000Zにセルを設置、散乱強度を確認した。散乱強度が測定の適正範囲(10000~50000cps)であれば測定を続行し、適正範囲を外れた場合は、適正範囲内となるよう測定試料の濃度を調節してから測定した。ELSZ-2000Zによる測定条件は下記の通りとし、3回繰り返し測定して平均値をその測定試料の水中のゼータ電位とした。
【0057】
[測定条件]
測定温度:25℃
測定待ち時間:300秒
ピンホール:50
積算回数:10回
セル測定位置:0.70/0.35/0.00/-0.35/-0.70
印可電圧:Fixed
印可電圧(固定):60
印可電圧波形タイプ:Auto
定電流:51mA
ローレンツフィット:1peak
ゼータ電位換算式:Smoluchows
【0058】
本実施例において、アゾ顔料に含まれる鉄元素量の測定は、エネルギー分散型蛍光X線分析装置PANalytical Epsilon5(スペクトリス株式会社製)を使用した。
【0059】
本実施例において、アゾ顔料粒子の表面の元素濃度の測定は、XPS法(X線光電子分光法)により測定した。測定はX線光電子分光分析装置Quantera SXM(アルバック・ファイ株式会社製)により行った。なお、元素濃度の値は有効数字2桁にて四捨五入した。
【0060】
[測定条件]
X線源:AlKα(モノクロメータ)
測定:ポイント測定(100μm),表面
測定回数:3回
帯電補正:C1s=284.8eV
【0061】
(比較例1)[比較PR57:1-1’の合成]
2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸38.5部を水500部に分散後、35%塩酸25.0部を加え、0℃に保ちながら40%亜硝酸ソーダ水溶液36.8部を滴下し、ジアゾ溶液を得た。次に、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸42.5部を50℃の温水200部に分散後、25%苛性ソーダ水溶液74部を加えてカップラー溶液を得た。カップラー溶液を10℃まで冷却後、撹拌しながら上記ジアゾ溶液を滴下した。10℃で60分間撹拌してカップリング反応を終了させ、染料懸濁液を得た。続いて、得られた染料懸濁液に、10%のガムロジンのNa塩溶液77部(ガムロジンとして7.7部)を添加した。30分撹拌後、72%塩化カルシウム37.4部を水40部に溶解した液を加え、60分撹拌してレーキ化を終了させた。レーキ化反応終了後、25℃で90分間加熱しつつ撹拌し、カルシウムレーキアゾ顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)の水中懸濁液を得た。この懸濁液を85℃まで加熱後、90分間撹拌した後、濾過、水洗し、C.I.ピグメントレッド57:1のウェットケーキを得た。このウェットケーキを110℃で一昼夜乾燥させた後、粉砕して、C.I.ピグメントレッド57:1からなる比較PR57:1-1’を得た。比較PR57:1-1’のイソプロパノール中のゼータ電位は1.2mV、水中のゼータ電位は-5.1mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は18ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは67.7atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0062】
(実施例1)[PR57:1-1の合成]
2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸38.5部を水500部に分散後、35%塩酸25.0部を加え、0℃に保ちながら40%亜硝酸ソーダ水溶液36.8部を滴下し、ジアゾ溶液を得た。次に、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸42.5部を50℃の温水200部に分散後、25%苛性ソーダ水溶液74部を加えてカップラー溶液を得た。カップラー溶液を10℃まで冷却後、撹拌しながら上記ジアゾ溶液を滴下した。10℃で60分間撹拌してカップリング反応を終了させ、染料懸濁液を得た。続いて、得られた染料懸濁液に、10%のガムロジンのNa塩溶液77部(ガムロジンとして7.7部)を添加した。30分撹拌後、72%塩化カルシウム37.4部を水40部に溶解した液を加え、60分撹拌してレーキ化を終了させた。レーキ化反応終了後、25℃で90分間加熱しつつ撹拌し、カルシウムレーキアゾ顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)の水中懸濁液を得た。この懸濁液を85℃まで加熱後、90分間撹拌した後、濾過、水洗し、C.I.ピグメントレッド57:1のウェットケーキを得た。このウェットケーキを水2500部に加え、1時間撹拌する。次いで、硫酸鉄(II)七水和物12.0部を加え、30分間撹拌し、35%過酸化水素37.5部を加え、さらに2時間撹拌する。反応液のpHを25%苛性ソーダ水溶液で8.0に調整し、35%塩化カルシウム水を120部加え、30分間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントレッド57:1からなるPR57:1-1を得た。PR57:1-1のイソプロパノール中のゼータ電位は-65.6mV、水中のゼータ電位は-1.0mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は13780ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.8atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは65.2atomic%、その比Fe/Cは0.012だった。
【0063】
(実施例2)[PR57:1-2の合成]
2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸38.5部を水500部に分散後、35%塩酸25.0部を加え、0℃に保ちながら40%亜硝酸ソーダ水溶液36.8部を滴下し、ジアゾ溶液を得た。次に、2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸42.5部を50℃の温水200部に分散後、25%苛性ソーダ水溶液74部を加えてカップラー溶液を得た。カップラー溶液を10℃まで冷却後、撹拌しながら上記ジアゾ溶液を滴下した。10℃で60分間撹拌してカップリング反応を終了させ、染料懸濁液を得た。続いて、得られた染料懸濁液に、10%のガムロジンのNa塩溶液77部(ガムロジンとして7.7部)を添加した。30分撹拌後、72%塩化カルシウム37.4部を水40部に溶解した液と、硫酸鉄(II)七水和物6.0部を加え、60分撹拌してレーキ化を終了させた。レーキ化反応終了後、25℃で90分間加熱しつつ撹拌し、カルシウムレーキアゾ顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)の水中懸濁液を得た。この懸濁液を85℃まで加熱後、35%過酸化水素37.5部を加え、90分間撹拌した後、濾過、水洗し、C.I.ピグメントレッド57:1のウェットケーキを得た。このウェットケーキを110℃で一昼夜乾燥させた後、粉砕して、C.I.ピグメントレッド57:1からなるPR57:1-2を得た。PR57:1-2のイソプロパノール中のゼータ電位は-33.0mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は630ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは66.8atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0064】
(比較例2)[比較PR146-1’の合成]
N-(4-クロロ-2,5ジメトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-ナフトアミド12.5部を50℃の温水200部に投入した後、ロート油0.6部、25%苛性ソーダ水液16部を加えてカップラー溶液を得た。次に、3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド8.0部を水100部に分散後、35%塩酸10部を加え、0℃に保ちながら40%亜硝酸ソーダ水溶液6部を滴下し、ジアゾ溶液を得た。このジアゾ溶液にカップラー溶液を添加した後、85℃まで加熱し、60分間撹拌した後、濾過、水洗し、C.I.ピグメントレッド146のウェットケーキを得た。このウェットケーキを110℃で一昼夜乾燥させた後、粉砕して、C.I.ピグメントレッド146からなる比較PR146-1’を得た。比較PR146-1’のイソプロパノール中のゼータ電位は-26.0mV、水中のゼータ電位は-33.1mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は61ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは77.7atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0065】
(実施例3)[PR146-1の合成]
N-(4-クロロ-2,5ジメトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-ナフトアミド12.5部を50℃の温水200部に投入した後、ロート油0.6部、25%苛性ソーダ水液16部を加えてカップラー溶液を得た。次に、3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド8.0部を水100部に分散後、35%塩酸10部を加え、0℃に保ちながら40%亜硝酸ソーダ水溶液6部を滴下し、ジアゾ溶液を得た。このジアゾ溶液にカップラー溶液を添加した後、85℃まで加熱し、60分間撹拌した後、濾過、水洗し、C.I.ピグメントレッド146のウェットケーキを得た。このウェットケーキを水500部に加え、1時間撹拌する。次いで、硫酸鉄(II)七水和物0.58部を加え、30分間撹拌し、35%過酸化水素18.0部を加え、さらに2時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントレッド146からなるPR146-1を得た。PR146-1のイソプロパノール中のゼータ電位は-46.3mV、水中のゼータ電位は-30.5mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は1250ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.1atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは77.3atomic%、その比Fe/Cは0.0013だった。
【0066】
(実施例4)[PR146-2の合成]
N-(4-クロロ-2,5ジメトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2-ナフトアミド12.5部を50℃の温水200部に投入した後、ロート油0.6部、25%苛性ソーダ水液16部を加えてカップラー溶液を得た。次に、3-アミノ-4-メトキシベンズアニリド8.0部を水100部に分散後、35%塩酸10部を加え、0℃に保ちながら40%亜硝酸ソーダ水溶液6部を滴下し、ジアゾ溶液を得た。このジアゾ溶液にカップラー溶液を添加した後、85℃まで加熱し、60分間撹拌した後、濾過、水洗し、C.I.ピグメントレッド146のウェットケーキを得た。このウェットケーキを水500部に加え、1時間撹拌する。次いで、硫酸鉄(II)七水和物0.58部を加え、30分間撹拌し、35%過酸化水素18.0部を加え、さらに2時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントレッド146からなるPR146-2を得た。PR146-2のイソプロパノール中のゼータ電位は-68.5mV、水中のゼータ電位は-36.4mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は5900ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.3atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは76.7atomic%、その比Fe/Cは0.0039だった。
【0067】
(比較例3)[比較PY13-1’の合成]
3,3’-ジクロロベンジジンの塩酸塩(3,3’-ジクロロベンジジン250部に相当する量)と35%塩酸316部を水4000部に加え、0℃に冷却後、40%亜硝酸ソーダ水溶液358部を加え、1時間撹拌する。ここに10%スルファミン酸80部を加え、過剰の亜硝酸ソーダを消失させ、3,3’-ジクロロベンジジンのテトラゾ溶液を得た。これとは別に、水7500部にアセト酢酸-m-キシリダイド435部と25%苛性ソーダ水溶液350部を加えて撹拌、溶解させ、次いで10%酢酸1500部を少しずつ加えてカップラー懸濁液とする。次いで、カップラー懸濁液にテトラゾ溶液を15~17℃に保ちながら2時間かけて加える。さらに1時間撹拌後、90℃まで加熱し、2時間撹拌し、濾過、水洗して、C.I.ピグメントイエロー13のウェットケーキを得た。このウェットケーキを110℃で一昼夜乾燥させた後、粉砕して、C.I.ピグメントイエロー13からなる比較PY13-1’を得た。比較PY13-1’のイソプロパノール中のゼータ電位は5.7mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は250ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは76.5atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0068】
(実施例5)[PY13-1の合成]
3,3’-ジクロロベンジジンの塩酸塩(3,3’-ジクロロベンジジン250部に相当する量)と35%塩酸316部を水4000部に加え、0℃に冷却後、40%亜硝酸ソーダ水溶液358部を加え、1時間撹拌する。ここに10%スルファミン酸80部を加え、過剰の亜硝酸ソーダを消失させ、3,3’-ジクロロベンジジンのテトラゾ溶液を得た。これとは別に、水7500部にアセト酢酸-m-キシリダイド435部と25%苛性ソーダ水溶液350部を加えて撹拌、溶解させ、次いで10%酢酸1500部を少しずつ加えてカップラー懸濁液とする。次いで、カップラー懸濁液にテトラゾ溶液を15~17℃に保ちながら2時間かけて加える。さらに1時間撹拌後、90℃まで加熱し、2時間撹拌し、濾過、水洗して、C.I.ピグメントイエロー13のウェットケーキを得た。このウェットケーキを水10000部に加え、1時間撹拌する。次いで、硫酸鉄(II)七水和物43.0部を加え、30分間撹拌し、35%過酸化水素1000部を加え、さらに2時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントイエロー13からなるPY13-1を得た。PY13-1のイソプロパノール中のゼータ電位は-45.1mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は4870ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.2atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは75.9atomic%、その比Fe/Cは0.0026だった。
【0069】
(比較例4)[比較PY83-1’の合成]
3,3’-ジクロロベンジジンの塩酸塩(3,3’-ジクロロベンジジン21.8部に相当する量)と35%塩酸34.3部を水350部に加え、0℃に冷却後、40%亜硝酸ソーダ水溶液31.4部を加え、1時間撹拌する。ここに10%スルファミン酸7.6部を加え、過剰の亜硝酸ソーダを消失させ、3,3’-ジクロロベンジジンのテトラゾ溶液を得た。これとは別に、水400部に4’-クロロ-2’,5’-ジメトキシアセトアセトアニリド49.9部と25%苛性ソーダ水溶液48.0部を加えて撹拌、溶解させ、液量を水で500部に調整し、カップラー溶液を得た。次いで、撹拌機を有する反応容器に水800部、酢酸5.3部を加え、20℃に保ちながら撹拌し、さらに前記カップラー溶液の一部を加え、pH5.5に調整した。ここに、テトラゾ溶液とカップラー溶液を同時に3時間で滴下した。このとき、反応液温度が20℃、pHが5.4~5.6を維持するよう適時氷または5%苛性ソーダ水溶液を添加した。全てのテトラゾ溶液とカップラー溶液を滴下後、5%苛性ソーダ水溶液によりpH11.0に調整し、90℃まで加熱、40分間撹拌した。その後、70℃まで冷却し、35%塩酸でpH6.5に調整して10分間撹拌後、濾過、水洗して、C.I.ピグメントイエロー83のウェットケーキを得た。このウェットケーキを110℃で一昼夜乾燥させた後、粉砕して、C.I.ピグメントイエロー83からなる比較PY83-1’を得た。比較PY83-1’のイソプロパノール中のゼータ電位は17.3mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は185ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは67.5atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0070】
(比較例5)[比較PY83-2’の合成]
3,3’-ジクロロベンジジンの塩酸塩(3,3’-ジクロロベンジジン21.8部に相当する量)と35%塩酸34.3部を水350部に加え、0℃に冷却後、40%亜硝酸ソーダ水溶液31.4部を加え、1時間撹拌する。ここに10%スルファミン酸7.6部を加え、過剰の亜硝酸ソーダを消失させ、3,3’-ジクロロベンジジンのテトラゾ溶液を得た。これとは別に、水400部に4’-クロロ-2’,5’-ジメトキシアセトアセトアニリド49.9部と25%苛性ソーダ水溶液48.0部を加えて撹拌、溶解させ、液量を水で500部に調整し、カップラー溶液を得た。次いで、撹拌機を有する反応容器に水800部、酢酸5.3部を加え、20℃に保ちながら撹拌し、さらに前記カップラー溶液の一部を加え、pH5.5に調整した。ここに、テトラゾ溶液とカップラー溶液を同時に3時間で滴下した。このとき、反応液温度が20℃、pHが5.4~5.6を維持するよう適時氷または5%苛性ソーダ水溶液を添加した。全てのテトラゾ溶液とカップラー溶液を滴下後、5%苛性ソーダ水溶液によりpH11.0に調整し、90℃まで加熱、40分間撹拌した。その後、70℃まで冷却し、35%塩酸でpH6.5に調整して10分間撹拌後、濾過、水洗して、C.I.ピグメントイエロー83のウェットケーキを得た。このウェットケーキを水1500部に加え、1時間撹拌する。次いで、35%過酸化水素100部を加え、さらに2時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントイエロー83からなる比較PY83-2’を得た。比較PY83-2’のイソプロパノール中のゼータ電位は10.8mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は58ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは67.6atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0071】
(実施例6)[PY83-1の合成]
3,3’-ジクロロベンジジンの塩酸塩(3,3’-ジクロロベンジジン21.8部に相当する量)と35%塩酸34.3部を水350部に加え、0℃に冷却後、40%亜硝酸ソーダ水溶液31.4部を加え、1時間撹拌する。ここに10%スルファミン酸7.6部を加え、過剰の亜硝酸ソーダを消失させ、3,3’-ジクロロベンジジンのテトラゾ溶液を得た。これとは別に、水400部に4’-クロロ-2’,5’-ジメトキシアセトアセトアニリド49.9部と25%苛性ソーダ水溶液48.0部を加えて撹拌、溶解させ、液量を水で500部に調整し、カップラー溶液を得た。次いで、撹拌機を有する反応容器に水800部、酢酸5.3部を加え、20℃に保ちながら撹拌し、さらに前記カップラー溶液の一部を加え、pH5.5に調整した。ここに、テトラゾ溶液とカップラー溶液を同時に3時間で滴下した。このとき、反応液温度が20℃、pHが5.4~5.6を維持するよう適時氷または5%苛性ソーダ水溶液を添加した。全てのテトラゾ溶液とカップラー溶液を滴下後、5%苛性ソーダ水溶液によりpH11.0に調整し、90℃まで加熱、40分間撹拌した。その後、70℃まで冷却し、35%塩酸でpH6.5に調整して10分間撹拌後、濾過、水洗して、C.I.ピグメントイエロー83のウェットケーキを得た。このウェットケーキを水1500部に加え、1時間撹拌する。次いで、硫酸鉄(II)七水和物3.0部を加え、30分間撹拌し、35%過酸化水素100部を加え、さらに2時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントイエロー83からなるPY83-1を得た。PY83-1のイソプロパノール中のゼータ電位は-42.2mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は3480ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.1atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは67.1atomic%、その比Fe/Cは0.0015だった。
【0072】
(比較例6)[比較PO13-1’の合成]
3,3’-ジクロロベンジジンの塩酸塩(3,3’-ジクロロベンジジン300部に相当する量)と35%塩酸420部を水4000部に加え、0℃に冷却後、40%亜硝酸ソーダ水溶液430部を加え、1時間撹拌する。ここに10%スルファミン酸100部を加え、過剰の亜硝酸ソーダを消失させ、3,3’-ジクロロベンジジンのテトラゾ溶液を得た。これとは別に、水7500部に3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロン427部と25%苛性ソーダ水溶液520部を加えて撹拌、溶解させ、次いで10%酢酸3000部を少しずつ加え、20%苛性ソーダ水溶液でpH6.5に調整してカップラー懸濁液とする。続いて、カップラー懸濁液にテトラゾ溶液を30~40℃に保ちながら加え、さらに30分間撹拌後、90℃まで加熱し、30分間撹拌、濾過、水洗して、C.I.ピグメントオレンジ13のウェットケーキを得た。このウェットケーキを110℃で一昼夜乾燥させた後、粉砕して、C.I.ピグメントオレンジ13からなる比較PO13-1’を得た。比較PO13-1’のイソプロパノール中のゼータ電位は-25.5mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は87ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは73.5atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0073】
(実施例7)[PO13-1の合成]
3,3’-ジクロロベンジジンの塩酸塩(3,3’-ジクロロベンジジン300部に相当する量)と35%塩酸420部を水4000部に加え、0℃に冷却後、40%亜硝酸ソーダ水溶液430部を加え、1時間撹拌する。ここに10%スルファミン酸100部を加え、過剰の亜硝酸ソーダを消失させ、3,3’-ジクロロベンジジンのテトラゾ溶液を得た。これとは別に、水7500部に3-メチル-1-フェニル-5-ピラゾロン427部と25%苛性ソーダ水溶液520部を加えて撹拌、溶解させ、次いで10%酢酸3000部を少しずつ加え、20%苛性ソーダ水溶液でpH6.5に調整してカップラー懸濁液とする。続いて、カップラー懸濁液にテトラゾ溶液を30~40℃に保ちながら加え、さらに30分間撹拌後、90℃まで加熱し、30分間撹拌、濾過、水洗して、C.I.ピグメントオレンジ13のウェットケーキを得た。このウェットケーキを水10000部に加え、1時間撹拌する。次いで、硫酸鉄(II)七水和物43.0部を加え、30分間撹拌し、35%過酸化水素1000部を加え、さらに2時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントオレンジ13からなるPO13-1を得た。PO13-1のイソプロパノール中のゼータ電位は-45.8mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は4890ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.1atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは71.7atomic%、その比Fe/Cは0.0014だった。
【0074】
(比較例7)[比較PY55-1’の合成]
3,3’-ジクロロベンジジンの塩酸塩(3,3’-ジクロロベンジジン300部に相当する量)と35%塩酸380部を水4000部に加え、0℃に冷却後、40%亜硝酸ソーダ水溶液430部を加え、1時間撹拌する。ここに10%スルファミン酸100部を加え、過剰の亜硝酸ソーダを消失させ、3,3’-ジクロロベンジジンのテトラゾ溶液を得た。これとは別に、水7500部にアセト酢酸-p-トルダイド480部と25%苛性ソーダ水溶液270部を加えて撹拌、溶解させ、次いで10%酢酸1500部を少しずつ加え、カップラー懸濁液とする。続いて、カップラー懸濁液にテトラゾ溶液を2~10℃に保ちながら加え、さらに30分間撹拌後、80℃まで加熱し、30分間撹拌、濾過、水洗して、C.I.ピグメントイエロー55のウェットケーキを得た。このウェットケーキを110℃で一昼夜乾燥させた後、粉砕して、C.I.ピグメントイエロー55からなる比較PY55-1’を得た。比較PY55-1’のイソプロパノール中のゼータ電位は-29.5mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は124ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは73.5atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0075】
(実施例8)[PY55-1の合成]
3,3’-ジクロロベンジジンの塩酸塩(3,3’-ジクロロベンジジン300部に相当する量)と35%塩酸380部を水4000部に加え、0℃に冷却後、40%亜硝酸ソーダ水溶液430部を加え、1時間撹拌する。ここに10%スルファミン酸100部を加え、過剰の亜硝酸ソーダを消失させ、3,3’-ジクロロベンジジンのテトラゾ溶液を得た。これとは別に、水7500部にアセト酢酸-p-トルダイド480部と25%苛性ソーダ水溶液270部を加えて撹拌、溶解させ、次いで10%酢酸1500部を少しずつ加え、カップラー懸濁液とする。続いて、カップラー懸濁液にテトラゾ溶液を2~10℃に保ちながら加え、さらに30分間撹拌後、80℃まで加熱し、30分間撹拌、濾過、水洗して、C.I.ピグメントイエロー55のウェットケーキを得た。このウェットケーキを水10000部に加え、1時間撹拌する。次いで、硫酸鉄(II)七水和物43.0部を加え、30分間撹拌し、35%過酸化水素1000部を加え、さらに2時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントイエロー55からなるPY55-1を得た。PY55-1のイソプロパノール中のゼータ電位は-59.2mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は2410ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.1atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは72.2atomic%、その比Fe/Cは0.0014だった。
【0076】
(比較例8)[比較PY180-1’の合成]
1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)-エタン45部と35%塩酸107.7部を水650部に加え、30分間撹拌後、氷を加えて5℃以下に保ちながら、40%亜硝酸ソーダ水溶液67.4部を滴下し、液量を1300部に水で調整してテトラゾ溶液を得た。これとは別に、5-アセトアセチルアミノ-ベンズイミダゾロン93部を水675部に加え、撹拌しながら25%水酸化ナトリウム水溶液119部を加えて溶解させ、液量を900部に水で調整し、カップラー溶液を得た。次に、90%酢酸6部と水1300部を混合し、温度を20℃に保ちながら、20%苛性ソーダ水溶液でpH6.0に調整する。ここに、テトラゾ溶液とカップラー溶液を同時に3時間で滴下した。このとき、反応液温度が20℃、pHが6.0を維持するよう適時氷または5%苛性ソーダ水溶液を添加した。続いて、90℃に加熱し、1時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥し、C.I.ピグメントイエロー180からなる乾燥顔料塊を得た。この乾燥顔料塊60部と、塩化ナトリウム340部、ジエチレングリコール70部を1L双腕型ニーダー(株式会社吉田製作所製)に投入し、80℃で5時間磨砕した。得られた磨砕混練物を、水2000部に加え、60℃に加熱後、1時間撹拌、濾過、水洗して、C.I.ピグメントイエロー180のウェットケーキを得た。このウェットケーキを110℃で一昼夜乾燥させた後、粉砕して、C.I.ピグメントイエロー180からなる比較PY180-1’を得た。比較PY180-1’のイソプロパノール中のゼータ電位は-12.4mV、水中のゼータ電位は-34.9mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は455ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは69.2atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0077】
(比較例9)[比較PY180-2’の合成]
1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)-エタン45部と35%塩酸107.7部を水650部に加え、30分間撹拌後、氷を加えて5℃以下に保ちながら、40%亜硝酸ソーダ水溶液67.4部を滴下し、液量を1300部に水で調整してテトラゾ溶液を得た。これとは別に、5-アセトアセチルアミノ-ベンズイミダゾロン93部を水675部に加え、撹拌しながら25%水酸化ナトリウム水溶液119部を加えて溶解させ、液量を900部に水で調整し、カップラー溶液を得た。次に、90%酢酸6部と水1300部を混合し、温度を20℃に保ちながら、20%苛性ソーダ水溶液でpH6.0に調整する。ここに、テトラゾ溶液とカップラー溶液を同時に3時間で滴下した。このとき、反応液温度が20℃、pHが6.0を維持するよう適時氷または5%苛性ソーダ水溶液を添加した。続いて、90℃に加熱し、1時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥し、C.I.ピグメントイエロー180からなる乾燥顔料塊を得た。この乾燥顔料塊60部と、塩化ナトリウム340部、ジエチレングリコール70部を1L双腕型ニーダー(株式会社吉田製作所製)に投入し、80℃で5時間磨砕した。得られた磨砕混練物を、水2000部に加え、60℃に加熱後、1時間撹拌、濾過、水洗して、C.I.ピグメントイエロー180のウェットケーキを得た。このウェットケーキを水1000部に加え、1時間撹拌する。次いで、35%過酸化水素70部を加え、さらに2時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントイエロー180からなる比較PY180-2’を得た。比較PY180-2’のイソプロパノール中のゼータ電位は-18.5mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は434ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは68.5atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0078】
(実施例9)[PY180-1の合成]
1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)-エタン45部と35%塩酸107.7部を水650部に加え、30分間撹拌後、氷を加えて5℃以下に保ちながら、40%亜硝酸ソーダ水溶液67.4部を滴下し、液量を1300部に水で調整してテトラゾ溶液を得た。これとは別に、5-アセトアセチルアミノ-ベンズイミダゾロン93部を水675部に加え、撹拌しながら25%水酸化ナトリウム水溶液119部を加えて溶解させ、液量を900部に水で調整し、カップラー溶液を得た。次に、90%酢酸6部と水1300部を混合し、温度を20℃に保ちながら、20%苛性ソーダ水溶液でpH6.0に調整する。ここに、テトラゾ溶液とカップラー溶液を同時に3時間で滴下した。このとき、反応液温度が20℃、pHが6.0を維持するよう適時氷または5%苛性ソーダ水溶液を添加した。続いて、90℃に加熱し、1時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥し、C.I.ピグメントイエロー180からなる乾燥顔料塊を得た。この乾燥顔料塊60部と、塩化ナトリウム340部、ジエチレングリコール70部を1L双腕型ニーダー(株式会社吉田製作所製)に投入し、80℃で5時間磨砕した。得られた磨砕混練物を、水2000部に加え、60℃に加熱後、1時間撹拌、濾過、水洗して、C.I.ピグメントイエロー180のウェットケーキを得た。このウェットケーキを水1000部に加え、1時間撹拌する。次いで、硫酸鉄(II)七水和物2.86部を加え、30分間撹拌し、35%過酸化水素70部を加え、さらに2時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントイエロー180からなるPY180-1を得た。PY180-1のイソプロパノール中のゼータ電位は-38.8mV、水中のゼータ電位は-36.4mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は4460ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.1atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは67.4atomic%、その比Fe/Cは0.0015だった。
【0079】
(比較例10)[比較PR213-1’の合成]
C.I.ピグメントレッド213のウェットケーキ(固形分35.0%、東京色材工業株式会社製)71.5部を水429部に加え、60℃に昇温しながら1時間撹拌した。次いで、60℃でさらに2時間30分撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントレッド213からなる比較PR213-1’を得た。比較PR213-1’のイソプロパノール中のゼータ電位は27.1mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は16ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは75.1atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0080】
(実施例10)[PR213-1の合成]
C.I.ピグメントレッド213のウェットケーキ(固形分35.0%、東京色材工業株式会社製)71.5部を水429部に加え、60℃に昇温しながら1時間撹拌した。次いで、硫酸鉄(II)七水和物1.13部を加え、30分間撹拌し、35%過酸化水素35.7部を加え、1時間撹拌した。さらに、硫酸鉄(II)七水和物0.28部を加え、1時間撹拌した後、濾過、水洗、110℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントレッド213からなるPR213-1を得た。PR213-1のイソプロパノール中のゼータ電位は-38.8mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は505ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.1atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは74.3atomic%、その比Fe/Cは0.0013だった。
【0081】
(比較例11)[比較PO64-1’の合成]
C.I.ピグメントオレンジ64のウェットケーキ(固形分49.3%、Vijay Chemical Industries製)50.7部を水449部に加え、60℃に昇温しながら1時間撹拌した。次いで、60℃でさらに2時間撹拌した後、濾過、水洗、98℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントオレンジ64からなる比較PO64-1’を得た。比較PO64-1’のイソプロパノール中のゼータ電位は2.7mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は20ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.0atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは59.4atomic%、その比Fe/Cは0.00だった。
【0082】
(実施例11)[PO64-1の合成]
C.I.ピグメントオレンジ64のウェットケーキ(固形分49.3%、Vijay Chemical Industries製)50.7部を水449部に加え、次いで硫酸鉄(II)七水和物1.14部を加え、60℃に昇温しながら1時間撹拌した。顔料スラリーに35%過酸化水素35.7部を1時間かけて滴下した後、さらに硫酸鉄(II)七水和物0.29部を加え、1時間撹拌し、濾過、水洗、98℃で一昼夜乾燥、粉砕して、C.I.ピグメントオレンジ64からなるPO64-1を得た。PO64-1のイソプロパノール中のゼータ電位は-41.0mV、アゾ顔料に含まれる鉄元素量は6390ppm、X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Feは0.1atomic%、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度Cは58.1atomic%、その比Fe/Cは0.0017だった。
【0083】
[ポリウレタンインキの作製]
上記実施例1~11、比較例1~11で得られたアゾ顔料それぞれについて、顔料10g、ポリウレタン樹脂サンプレンIB-501(三洋化成工業株式会社製)20g、酢酸エチル13g、イソプロピルアルコール7g、1/8インチスチールビーズ(持木鋼球軸受株式会社製)180gを250mLポリエチレン製広口瓶に入れ、ペイントシェーカー(株式会社東洋精機製作所製)で30分間分散した。その後、ポリウレタン樹脂サンプレンIB-501 35g、酢酸エチル9.75g、イソプロピルアルコール5.25gを追加で広口瓶に加え、ペイントシェーカー(株式会社東洋精機製作所製)で5分間分散し、ポリウレタンインキをそれぞれ得た。
【0084】
(ポリウレタンインキの粘度測定)
得られたポリウレタンインキを20℃恒温槽で1時間以上静置し、R85形粘度計RB85L(東機産業株式会社製)で回転速度6rpmでの粘度を測定した。粘度は小さいほど優れる。
【0085】
(透明性の測定)
得られたポリウレタンインキをPETフィルム ルミラー50T-60(パナック工業株式会社製)にNo.6のバーコーターで展色した。黒色の紙上に、展色フィルムの展色面を下向きに載せ、目視で透明性を判定した。透明性は1~9の9段階で判定し、数字が大きいほど透明性が高く、数字が小さいほど不透明であることを表す。透明性は高いほど優れる。
【0086】
得られた各ポリウレタンインキの粘度、及び展色フィルムの透明性評価を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
上記表1のとおり実施例1-11の本発明のアゾ顔料は、従来から知られている同じ構造のアゾ顔料に比べて、透明性に優れ、粘度も低く分散性に優れることが分かる。よって、本発明のアゾ顔料は、インキ(特に印刷インキ)として好適である。
【要約】
本発明が解決しようとする課題は、透明性に優れ、さらに分散性が良く、低粘度であるアゾ顔料およびインキ等を提供することにある。
本発明のアゾ顔料は、イソプロパノール(IPA)中のゼータ電位が-80mV~-30mVである。前記アゾ顔料100質量部あたり金属元素を0.05~2.00質量部含むことが好ましい。前記金属元素が鉄元素であることが好ましい。X線光電子分光法によるアゾ顔料粒子表面鉄元素濃度Fe(atomic%)と、アゾ顔料粒子表面炭素元素濃度C(atomic%)の比(Fe/C)が0.20以下であることが好ましい。