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特許7144011光モジュールの製造方法及び光モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】光モジュールの製造方法及び光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/132 20060101AFI20220921BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20220921BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20220921BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20220921BHJP
   H01L 31/108 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G02B6/132
G02B6/12 301
H01L31/02 D
H01L31/10 A
H01L31/10 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019137201
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021021788
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】石川 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】中井 哲弥
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 駿
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-182030(JP,A)
【文献】特開2015-220290(JP,A)
【文献】特開2017-191158(JP,A)
【文献】特表2011-512670(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0231714(US,A1)
【文献】AHN, Donghwan, et al.,High performance, waveguide integrated Ge photodetectors,Optics express,米国,OSA,2007年,vol.15, no.7,pp.3916-3921
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
H01L 31/00-31/02
H01L 31/08-31/10
H01L 31/18
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化シリコンコアを有する光導波路及び前記光導波路に接続されたゲルマニウムフォトダイオードを有する光モジュールの製造方法であって、
基板上に酸化シリコンからなる下部クラッド層を形成する工程と、
前記下部クラッド層上に窒化シリコンからなるコア層を形成する工程と、
前記コア層をパターニングして前記窒化シリコンコアを形成する工程と、
前記下部クラッド層上に上部クラッド層を形成して前記窒化シリコンコアを覆う工程と、
前記上部クラッド層に開口を形成して前記窒化シリコンコアの終端部を露出させる工程と、
前記上部クラッド層をマスクとして前記開口から露出する前記窒化シリコンコアの前記終端部の上面に前記ゲルマニウムフォトダイオードを構成するゲルマニウムパターンを選択的に形成する工程とを備え、
前記窒化シリコンコアは、前記光導波路を構成する細線パターンと、前記細線パターンの終端部に形成されたランドパターンとを有し、
前記上部クラッド層の開口は、前記ランドパターンと平面視で重なる位置に形成され、
前記ゲルマニウムパターンは、前記ランドパターンの上面に形成されることを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記ゲルマニウムパターンを選択的に形成する工程は、前記開口の内部を含む前記上部クラッド層の全面にゲルマニウムをCVD法により形成する、請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記基板がバルクシリコン基板である、請求項1又は2に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記ゲルマニウムパターンの平面方向の一端及び他端にp型ドーパント及びn型ドーパントをそれぞれ注入することにより、前記ゲルマニウムパターンに前記基板と平行な横方向のpin接合を形成する工程をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記ゲルマニウムパターンの平面方向の第1及び第2の領域に第1及び第2の金属電極をそれぞれ形成することにより、前記ゲルマニウムパターンに前記基板と平行な横方向のMSM接合を形成する工程をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記開口の面積は前記ランドパターンの面積よりも小さい、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項7】
前記ゲルマニウムパターンは多結晶ゲルマニウムである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に設けられた光導波路と、
前記光導波路に接続されたゲルマニウムフォトダイオードを備え、
前記光導波路は、
前記基板上に形成された酸化シリコンからなる下部クラッド層と、
前記下部クラッド層上に形成された窒化シリコンコアと、
前記窒化シリコンコアを覆うように前記下部クラッド層上に形成された上部クラッド層とを備え、
前記上部クラッド層は、前記窒化シリコンコアの終端部を露出させる開口を有し、
前記ゲルマニウムフォトダイオードは、前記開口から露出する前記窒化シリコンコアの上面に選択的に形成されたゲルマニウムパターンを含み、
前記窒化シリコンコアは、前記光導波路を構成する細線パターンと、前記細線パターンの終端部に形成されたランドパターンとを有し、
前記上部クラッド層の開口は、前記ランドパターンと平面視で重なる位置に形成されており、
前記ゲルマニウムパターンは、前記ランドパターンの上面に形成されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項9】
前記基板がバルクシリコン基板である、請求項8に記載の光モジュール。
【請求項10】
前記ゲルマニウムフォトダイオードは、前記基板と平行な横方向のpin接合を有する、請求項8又は9に記載の光モジュール。
【請求項11】
前記ゲルマニウムフォトダイオードは、前記基板と平行な横方向のMSM接合を有する、請求項請求項8又は9に記載の光モジュール。
【請求項12】
前記開口の面積は前記ランドパターンの面積よりも小さい、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項13】
前記ゲルマニウムパターンは多結晶ゲルマニウムである、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信分野において使用される、光導波路素子とフォトダイオードとを備える光モジュール及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、シリコンフォトニクスを用いた光電子集積技術の開発が進んでいる。シリコンフォトニクスの光電子集積技術の基本光部品は、シリコン(Si)系光導波路とゲルマニウム(Ge)フォトダイオードとから構成される。これまで、シリコン系光導波路としてシリコンリッチな石英系材料であるSiOxをコアに用いたSiOx光導波路とゲルマニウムフォトダイオードとを同一基板上にモノリシックに集積した小型光モジュールが開発され(特許文献1参照)、通信システムへの応用がはじまりつつある。
【0003】
しかしながら、SiOx光導波路とゲルマニウムフォトダイオードから構成された光モジュールにおいて、SiOxの屈折率の制御にはシリコン量の微妙な制御が必要であり、光導波路の特性の再現性が低いという問題がある。
【0004】
そのため、光導波路コアに酸窒化シリコン(SiON)を用いる方法も提案されている。例えば特許文献2には、ゲルマニウムフォトダイオード、シリコンコアからなるシリコン光導波路、及び酸窒化シリコンコアからなる酸窒化シリコン光導波路がこれらの順に接続した光モジュール及びその製造方法が記載されている。この光モジュールは、光導波路を構成する酸窒化シリコンコアが第1酸窒化シリコン層(141)及び第2酸窒化シリコン層(142)から構成されているので、フォトダイオードを構成するゲルマニウムパターンの形成前と後とに分けて酸窒化シリコン層を形成することができる。したがって、ゲルマニウムの選択成長が可能となり、シリコン光導波路、酸窒化光導波路、ゲルマニウムフォトダイオードのモノリシック集積を実現することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5761754号
【文献】特開2017-191158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された従来の光モジュールは、酸化シリコン(SiO)からなる下部クラッド層上に下部シリコンパターンを介してゲルマニウムパターンを形成する必要があり、下部クラッド層及び下部シリコンパターンを形成するためにSOI(Silicon on Insulator)基板が好ましく使用されている。しかしながら、SOI基板はシリコン支持基板上に埋め込み酸化膜(BOX(Buried Oxide)層)を介して単結晶シリコン層が形成されたものであり、バルクシリコン基板と比べると非常に高価であるため、光モジュールの低コスト化を阻害する要因となっている。
【0007】
また、特許文献2に記載された従来の光モジュールでは、下部クラッド層上に形成した下部シリコンパターンが、光導波路コアの一部として使用されている。シリコンは熱光学特性が大きな材料であり、温度変化にともなって屈折率が大きく変化する。そのため、温度変化による通信品質の低下が問題となる。さらに、光モジュールの形成には±1nm以下の加工精度が必要であり、SOI基板上のシリコン層やゲルマニウムパターンをそのような高い加工精度に加工することが難しいという問題がある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、光導波路コアとしてシリコンを使用しない光モジュール、及びSOI基板を用いることなく光導波路及びゲルマニウムフォトダイオードを同一基板上にモノリシック集積することが可能な光モジュールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による光モジュールの製造方法は、窒化シリコンコアを有する光導波路及び前記光導波路に接続されたゲルマニウムフォトダイオードを有する光モジュールの製造方法であって、基板上に酸化シリコンからなる下部クラッド層を形成する工程と、前記下部クラッド層上に窒化シリコンからなるコア層を形成する工程と、前記コア層をパターニングして前記窒化シリコンコアを形成する工程と、前記下部クラッド層上に上部クラッド層を形成して前記窒化シリコンコアを覆う工程と、前記上部クラッド層に開口を形成して前記窒化シリコンコアの終端部を露出させる工程と、前記上部クラッド層をマスクとして前記開口から露出する前記窒化シリコンコアの前記終端部の上面に前記ゲルマニウムフォトダイオードを構成するゲルマニウムパターンを選択的に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、光導波路のコアを窒化シリコンのみで形成できるので、温度変動に対する屈折率変動を小さくできる。
【0011】
前記窒化シリコンコアは、前記光導波路を構成する細線パターンと、前記光導波路の終端部を構成するランドパターンとを有し、前記上部クラッド層の開口は、前記ランドパターンと平面視で重なる位置に形成され、前記ゲルマニウムパターンは、前記ランドパターンの上面に形成されることが好ましい。これによれば、窒化シリコンコアからなる光導波路の終端部にゲルマニウムフォトダイオードを直接形成できる。
【0012】
前記基板はバルクシリコン基板であることが好ましい。光導波路のコアを窒化シリコンコアのみで形成するので、高価なSOI基板を用いる必要がなく、安価で標準的なバルクシリコン基板を用いることができる。したがって、光モジュールの製造コストを低減できる。
【0013】
本発明による光モジュールの製造方法は、前記ゲルマニウムパターンの平面方向の一端及び他端にp型ドーパント及びn型ドーパントをそれぞれ注入することにより、前記ゲルマニウムパターンに前記基板と平行な横方向のpin接合を形成する工程をさらに備えることが好ましい。これによれば、窒化シリコンコアの上面に直接形成されたゲルマニウムパターンを用いてpin型フォトダイオードを実現できる。
【0014】
本発明による光モジュールの製造方法は、前記ゲルマニウムパターンの平面方向の第1及び第2の領域に第1及び第2の金属電極をそれぞれ形成することにより、前記ゲルマニウムパターンに前記基板と平行な横方向のMSM接合を形成する工程をさらに備えることが好ましい。これによれば、窒化シリコンコアの上面に直接形成されたゲルマニウムパターンを用いてMSM型フォトダイオードを実現できる。
【0015】
また、本発明による光モジュールは、上述した本発明による光モジュールの製造方法により製造されたことを特徴とする。本発明によれば、光導波路のコアが窒化シリコンのみからなるので、温度変動に対する屈折率変動を小さくでき、通信品質の信頼性を向上できる。
【0016】
さらにまた、本発明による光モジュールは、基板と、前記基板上に設けられた光導波路と、前記光導波路に接続されたゲルマニウムフォトダイオードを備え、前記光導波路は、前記基板上に形成された酸化シリコンからなる下部クラッド層と、前記下部クラッド層上に形成された窒化シリコンコアと、前記窒化シリコンコアを覆うように前記下部クラッド層上に形成された上部クラッド層とを備え、前記上部クラッド層は、前記窒化シリコンコアの終端部を露出させる開口を有し、前記ゲルマニウムフォトダイオードは、前記開口から露出する前記窒化シリコンコアの上面に選択的に形成されたゲルマニウムパターンを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、光導波路のコアが窒化シリコンのみからなるので、温度変動に対する屈折率変動を小さくでき、通信品質の信頼性を向上できる。
【0018】
本発明において、前記窒化シリコンコアは、前記光導波路を構成する細線パターンと、前記光導波路の終端部を構成するランドパターンとを有し、前記上部クラッド層の開口は、前記ランドパターンと平面視で重なる位置に形成されており、前記ゲルマニウムパターンは、前記ランドパターンの上面に形成されていることが好ましい。この構成によれば、窒化シリコンコアからなる光導波路の終端部にゲルマニウムフォトダイオードを直接形成できる。
【0019】
前記基板はバルクシリコン基板であることが好ましい。光導波路のコアを窒化シリコンコアのみで構成しているので、高価なSOI基板を用いる必要がなく、安価で標準的なバルクシリコン基板を用いることができる。したがって、光モジュールの製造コストを低減できる。
【0020】
前記ゲルマニウムフォトダイオードは、前記基板と平行な横方向のpin接合を有することが好ましい。この構成によれば、窒化シリコンコアの上面に直接形成されたゲルマニウムパターンを用いてpin型フォトダイオードが実現できる。
【0021】
前記ゲルマニウムフォトダイオードは、前記基板と平行な横方向のMSM(Metal-Semiconductor-Metal)接合を有することもまた好ましい。この構成によれば、窒化シリコンコアの上面に直接形成されたゲルマニウムパターンを用いてMSM型フォトダイオードが実現できる。
【0022】
本発明において、前記ゲルマニウムパターンは、前記開口の内部を含む前記上部クラッド層の全面にゲルマニウムをCVD法により形成することにより前記窒化シリコンコア上に選択成長させたものであることが好ましい。これにより、窒化シリコンコア上にゲルマニウムフォトダイオードが形成された信頼性の高い光モジュールを提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光導波路コアとしてシリコンを使用しない光モジュール、及びSOI基板を用いることなく光導波路及びゲルマニウムフォトダイオードを同一基板上にモノリシック集積することが可能な光モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の第1の実施の形態による光モジュールの構成を示す図であって、(a)は略平面図、(b)は(a)のA-A線に沿った略断面図、(c)は(a)のB-B線に沿った略断面図である。
図2図2(a)~(f)は、第1の実施の形態による光モジュールの製造方法の説明図である。
図3図3は、本発明の第2の実施の形態による光モジュールの構成を示す略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の第1の実施の形態による光モジュールの構成を示す図であって、(a)は略平面図、(b)は(a)のA-A線に沿った略断面図、(c)は(a)のB-B線に沿った略断面図である。
【0027】
図1(a)~(c)に示すように、この光モジュール1は、基板10と、基板10上に設けられた光導波路2と、光導波路2の終端部に接続されたゲルマニウムフォトダイオード3とを備えている。光導波路2は、基板10上に形成された酸化シリコン(SiO)からなる下部クラッド層20と、下部クラッド層20上に形成された窒化シリコンコア31と、窒化シリコンコア31を覆うように下部クラッド層20上に形成された上部クラッド層40とで構成されている。
【0028】
ゲルマニウムフォトダイオード3は、上部クラッド層40に形成された開口41から露出する窒化シリコンコア31の上面に形成されたゲルマニウムパターン50を有している。本実施形態によるゲルマニウムパターン50は多結晶ゲルマニウムであるが、単結晶ゲルマニウムであってもよい。ゲルマニウムパターン50の厚さは特に限定されないが、500nm~2μmであることが好ましい。
【0029】
基板10はバルクシリコン基板であることが好ましい。バルクシリコンウェーハを加工して得られるシリコン基板のことを言い、バルクシリコンウェーハは単結晶インゴットを1mm程度の厚さにスライスし、その表面を鏡面研磨して得られるポリッシュト・ウェーハのことを言う。バルクシリコン基板はSOI基板等と比べて安価であり、光デバイスと電子デバイスのモノリシック集積も容易である。
【0030】
本実施形態において下部クラッド層20は基板10の略全面に形成されているが、少なくとも光導波路2の形成領域に形成されていればよい。下部クラッド層20の厚さは、窒化シリコンコア31内に光を閉じ込めることができる限りにおいて特に限定されず、例えば1~20μmとすることができる。
【0031】
窒化シリコンコア31は、下部クラッド層20の上面に選択的に形成された窒化シリコンからなるコアーパターンであり、光導波路2を構成する細線パターン31aと、細線パターンの終端部に形成された略矩形のランドパターン31bとを有している。窒化シリコンは光通信に用いられる1550nm近傍の波長の光に対して透明な材料であるため、光導波路として最適である。また窒化シリコンはアモルファスであるため、多結晶シリコンのように結晶粒界で光が散乱することがなく、光損失が低い光導波路となる。さらに窒化シリコンは熱的に安定しており、熱光学特性が小さく、温度変動に対する屈折率変化も小さいことから、温度変動に対して堅牢な光モジュールが実現できる。
【0032】
上部クラッド層40は酸化シリコン(SiO)からなり、ゲルマニウムフォトダイオード3の形成領域を除いた下部クラッド層20の略全面に形成されており、窒化シリコンコア31の上面及び側面は上部クラッド層40に覆われている。上部クラッド層40は、窒化シリコンコア31のランドパターン31bを露出させる開口41を有し、この開口41内にゲルマニウムフォトダイオード3が形成される。このように、上部クラッド層40は、窒化シリコンコア31に対するクラッド層としてだけでなく、窒化シリコン上に多結晶ゲルマニウムを選択的に堆積させるためのマスクとしての役割も果たしている。上部クラッド層40の厚さは、窒化シリコンコア31内に光を閉じ込めることができる限りにおいて特に限定されず、例えば0.5~10μmとすることができる。
【0033】
ゲルマニウムフォトダイオード3は、窒化シリコンコア31の上面に選択的に形成されたゲルマニウムパターン50を有する。ゲルマニウムパターン50は窒化シリコンコア31の上面に直接形成されたるため、pin接合を縦方向に形成することはできない。そのため、本実施形態によるゲルマニウムフォトダイオード3は、基板と平行な横方向(面内方向)にpin接合を有する。すなわち、ゲルマニウムパターン50は、p型ドーパントがドープされたp領域50pと、n型ドーパントがドープされたn領域50nと、ドーパントがドープされていないi領域50iとを有している。本実施形態において、p領域50p及びn領域50nは、光導波路の延在方向(Y方向)と直交する幅方向(X方向)の一端側及び他端側にそれぞれ設けられており、i領域50iはp領域50pとn領域50nとの間に設けられている。
【0034】
従来の光モジュールのように、ゲルマニウムフォトダイオード、シリコンコア及び酸窒化シリコンコアを順に接続し、シリコンコアの上面にゲルマニウムフォトダイオードを形成する場合、シリコンコアは単結晶シリコンでなければならない。シリコンコアを多結晶シリコンで構成すると、結晶粒界での光の散乱により伝搬損失が大きくなり、光導波路の品質が低下するからである。シリコンコアをアモルファスシリコンで構成すれば、光の散乱を抑えて光導波路の品質の低下を防止することが可能であるが、アモルファスシリコンは高温下で多結晶化しやすく、アモルファス状態を維持することが難しい。
【0035】
シリコンコアが単結晶シリコンからなる場合、単結晶シリコン上にゲルマニウム成長させることにより結晶品質を向上させて、高性能なフォトダイオードを形成することが可能である。しかしながら、光モジュール用フォトダイオードに要求される性能はさほど厳しくなく、暗電流が多少大きくても問題がないため、必ずしもゲルマニウムの結晶品質を向上させる必要はなく、多結晶ゲルマニウムであってもよい。またシリコンコアを単結晶シリコンで構成するためには、高価なSOI基板を用いる必要があり、基板コストが増加する。また、SOI基板の単結晶シリコン層のほとんどがパターニングによって除去されることから、単結晶シリコン層の利用効率が非常に悪い。
【0036】
これに対し、本実施形態のように窒化シリコンからなるコアを用いて光導波路を構成し、窒化シリコンコアの表面にゲルマニウムフォトダイオードを直接形成する場合では、単結晶シリコンは不要である。よって、SOI基板ではなくバルクシリコン基板を使用することができ、基板コストを低減できる。また、窒化シリコンがアモルファスであることから、多結晶シリコンのような結晶粒界が存在しないため、光の散乱が非常に小さい。また、熱的にも安定しているので、光導波路コアに必要な光学特性を安定的に確保することができる。
【0037】
図2(a)~(f)は、第1の実施の形態による光モジュール1の製造方法の説明図である。
【0038】
まず、図2(a)に示すように、基板10を用意し、基板10上に酸化シリコン(SiO)からなる下部クラッド層20を形成する。上記のように、基板10はバルクシリコン基板であることが好ましい。下部クラッド層20の厚さは1~10μmであることが好ましく、熱酸化法、熱CVD法、スパッタリング等により形成することができる。
【0039】
次に、図2(b)に示すように、下部クラッド層20の上面に窒化シリコン(SiN)からなるコア層30を形成する。コア層30の厚さは0.5~10μmであることが好ましく、CVD法、スパッタリング等により形成することができる。
【0040】
次に、図2(c)に示すように、コア層30をフォトリソグラフィー等の技術を用いてパターニングし、窒化シリコンコア31を形成する。上記のように、窒化シリコンコア31は、光導波路2を構成する細線パターン31aと、細線パターン31aの終端部に形成されたランドパターン31bとを有する。
【0041】
次に、図2(d)に示すように、窒化シリコンコア31が形成された下部クラッド層20の上面全体に酸化シリコン(SiO)からなる上部クラッド層40を形成する。上部クラッド層40の厚さは1~10μmであることが好ましく、CVD法、スパッタリング等により形成することができる。
【0042】
次に、図2(e)に示すように、上部クラッド層40に開口41を形成して窒化シリコンコア31のランドパターン31bの上面の一部(中央部)を露出させる。そのため開口41はランドパターン31bと平面視で重なる位置に形成される。開口41の面積はランドパターン31bの面積よりも小さいことが好ましい。
【0043】
次に、図2(f)に示すように、開口41の内部を含む上部クラッド層40の全面にゲルマニウムをCVD法により形成する。ゲルマニウムは結晶成長中の炉内圧を10Pa未満とするUHVCVD法(Ultra-High Vacuum CVD)により形成してもよく、結晶成長中の炉内圧を1×10Pa未満とする減圧CVD法により形成してもよい。あるいは、GeHをソースガスとし、基板温度を600~650℃とする熱CVD法によりゲルマニウムを形成することも可能である。このとき、SiOマスクを構成する上部クラッド層40の質や平坦性が良好であれば、ゲルマニウムは開口41内の窒化シリコンコア31の上面にのみ堆積し、酸化シリコンからなる上部クラッド層40の上面には堆積しない。したがって、ゲルマニウムパターン50を選択的に形成することができる。ゲルマニウムパターン50は多結晶であり、単結晶シリコン上に形成されるゲルマニウムよりも結晶品質は低いため、フォトダイオードの暗電流は少し大きくなるが、フォトダイオードとして動作可能なレベルである。
【0044】
次に、ゲルマニウムパターン50の幅方向の一端側及び他端側にp型ドーパント及びn型ドーパントをイオン注入することによりp領域50p及びn領域50nをそれぞれ形成すると共に、p領域50pとn領域50nとの間にi領域50iを設ける(図1(a)及び(c)参照)。以上により、pin接合を有するゲルマニウムパターン50からなるゲルマニウムフォトダイオード3が完成する。
【0045】
ゲルマニウムパターン50の表面には薄いシリコン層が形成されることが好ましい。ゲルマニウムパターン50を厚さが10nm以下の薄いシリコン層で覆うことにより、ゲルマニウムパターン50の表面を水分等から保護することができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態による光モジュール1は、基板10上に形成された光導波路2とゲルマニウムフォトダイオード3とを備え、光導波路2は窒化シリコンコア31を有し、窒化シリコンコア31の上面にゲルマニウムフォトダイオード3を形成しているので、シリコンコアを省略することができる。よって、SOI基板を使用する必要はなくバルクシリコン基板を用いて光モジュール1を構成することができる。
【0047】
図3は、本発明の第2の実施の形態による光モジュールの構成を示す略断面図である。
【0048】
図3に示すように、この光モジュール1の特徴は、ゲルマニウムフォトダイオード3が基板10と平行な横方向(面内方向)のMSM(Metal-Semiconductor-Metal)接合を有する点にある。ゲルマニウムフォトダイオード3のMSM接合は、ゲルマニウムパターン50の上面の第1の領域に第1の金属電極51aを形成すると共に、第1の領域とは異なる第2の領域に第2の金属電極51bを形成することにより得られる。その他の構成は第1の実施の形態と同様である。第2の実施の形態による光モジュール1は、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0050】
例えば、上記実施形態においては、基板10がシリコン基板である場合を例に挙げたが、ガラス基板やサファイア基板などを用いることも可能である。ただし、光モジュールと電子デバイスを同一基板上に集積することが可能となることからシリコン基板が好ましく、基板コストの低減のためにはバルクシリコン基板が特に好ましい。
【符号の説明】
【0051】
1 光モジュール
2 光導波路
3 ゲルマニウムフォトダイオード
10 基板
20 下部クラッド層
30 コア層
31 窒化シリコンコア
31a 細線パターン
31b ランドパターン
40 上部クラッド層
41 開口
50 ゲルマニウムパターン
50i i領域
50n n領域
50p p領域
51a 第1の金属電極
51b 第2の金属電極
図1
図2
図3