(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】気相成長装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20220921BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220921BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/455
C23C16/52
(21)【出願番号】P 2018211261
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 英樹
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-110570(JP,A)
【文献】特開2017-045927(JP,A)
【文献】特開2007-242875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/455
C23C 16/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n(nは2以上の整数)個の反応室と、
前記n個の反応室に第1のガスと第2のガスとの混合ガスを供給する主ガス供給路と、
前記主ガス供給路から分岐され前
記反応室のそれぞれに接続され
、1本の第1の副ガス供給路と、(n-1)本の第2の副ガス供給路と、を含むn本の副ガス供給路と、
前記主ガス供給路の中の圧力を測定する第1の圧力計と、
前記
第1の副ガス供給
路に設けられた
1個の
主流量コントローラと、
前記第2の副ガス供給路のそれぞれに設けられた(n-1)個の副流量コントローラと、
前記第1の圧力計の測定結果に基づき、前記
主流量コントローラに
第1の流量値を指令する第1の制御回路と、
前記
主流量コントローラ
で測定される流量値
と前記副流量コントローラで測定される流量値の総和のn分の1
である第2の流量値を算出し、前記
副流量コントローラ
のそれぞれに前記
第2の流量値を指令する第2の制御回路と、
を備える気相成長装置。
【請求項2】
前記n個の反応室のそれぞれに接続されたn本の
第2のガス排出路と、
前記n本の
第2のガス排出路に接続された
第1のガス排出路と、
前記
第1のガス排出路に接続された排気ポンプと、
前記
第1のガス排出路の中の圧力を測定する第2の圧力計と、
前記排気ポンプと前記第2の圧力計との間に設けられた圧力調整バルブと、
前記第2の圧力計の測定結果に基づき、前記圧力調整バルブに指令し、前記
第1のガス排出路の中の圧力を制御する第3の制御回路と、
を更に備える請求項1記載の気相成長装置。
【請求項3】
前記主ガス供給路に前記第1のガスを供給する第1のガス供給路と、
前記主ガス供給路に前記第2のガスを供給する第2のガス供給路と、
を更に備える請求項1又は請求項2記載の気相成長装置。
【請求項4】
前記第1の制御回路は、前記主ガス供給路の中の圧力が所定の値となるように前記
主流量コントローラに
前記第1の流量値を指令する請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の気相成長装置。
【請求項5】
n(nは2以上の整数)個の反応室と、
前記n個の反応室にガスを供給する主ガス供給路と、
前記主ガス供給路から分岐され前
記反応室のそれぞれに接続され、
1本の第1の副ガス供給路と、(n-1)本の第2の副ガス供給路と、を含むn本の副ガス供給路と、
前記主ガス供給路の中の圧力を測定する第1の圧力計と、
前記
第1の副ガス供給
路に設けられた
1個の
主流量コントローラと、
前記第2の副ガス供給路のそれぞれに設けられた(n-1)個の副流量コントローラと、
前記第1の圧力計の測定結果に基づき、前記
主流量コントローラに
第1の流量値を指令する第1の制御回路と、
前記
主流量コントローラ
で測定される流量値
と前記副流量コントローラで測定される流量値の総和のn分の1
である第2の流量値を算出し、前記
副流量コントローラ
のそれぞれに前記
第2の流量値を指令する第2の制御回路と、
を備える気相成長装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを供給して基板上に膜を形成する気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高品質な半導体膜を形成する方法として、ウェハ等の基板に気相成長により単結晶膜を成長させるエピタキシャル成長技術がある。エピタキシャル成長技術を用いる気相成長装置では、常圧又は減圧に保持された反応室内の支持部にウェハを載置する。そして、このウェハを加熱しながら、半導体膜の原料となるソースガス等のプロセスガスを、反応室上部の、例えば、シャワープレートからウェハ表面に供給する。ウェハ表面ではソースガスの熱反応が生じ、ウェハ表面にエピタキシャル単結晶膜が成膜される。
【0003】
近年、発光デバイスやパワーデバイスの材料として、GaN(窒化ガリウム)系の半導体デバイスが注目されている。GaN系の半導体を成膜するエピタキシャル成長技術として、有機金属気相成長法(MOCVD法)がある。有機金属気相成長法では、ソースガスとして、例えば、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、トリメチルアルミニウム(TMA)等の有機金属や、アンモニア(NH3)等が用いられる。
【0004】
そして、生産性を向上させるために、複数の反応室を備える気相成長装置が用いられる場合がある。特許文献1には、複数の反応室を備える気相成長装置が記載されている。複数の反応室で、均質な特性の膜を同時形成するためには、それぞれの反応室に供給するプロセスガスの流量を一定に制御することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複数の反応室で均質な特性の膜を同時形成することが可能な気相成長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の気相成長装置は、n(nは2以上の整数)個の反応室と、前記n個の反応室に第1のガスと第2のガスとの混合ガスを供給する主ガス供給路と、前記主ガス供給路から分岐され前記反応室のそれぞれに接続され、1本の第1の副ガス供給路と、(n-1)本の第2の副ガス供給路と、を含むn本の副ガス供給路と、前記主ガス供給路の中の圧力を測定する第1の圧力計と、前記第1の副ガス供給路に設けられた1個の主流量コントローラと、前記第2の副ガス供給路のそれぞれに設けられた(n-1)個の副流量コントローラと、前記第1の圧力計の測定結果に基づき、前記主流量コントローラに第1の流量値を指令する第1の制御回路と、前記主流量コントローラで測定される流量値と前記副流量コントローラで測定される流量値の総和のn分の1である第2の流量値を算出し、前記副流量コントローラのそれぞれに前記第2の流量値を指令する第2の制御回路と、を備える。
【0008】
上記態様の気相成長装置において、前記n個の反応室のそれぞれに接続されたn本の第2のガス排出路と、前記n本の第2のガス排出路に接続された第1のガス排出路と、前記第1のガス排出路に接続された排気ポンプと、前記第1のガス排出路の中の圧力を測定する第2の圧力計と、前記排気ポンプと前記第2の圧力計との間に設けられた圧力調整バルブと、前記第2の圧力計の測定結果に基づき、前記圧力調整バルブに指令し、前記第1のガス排出路の中の圧力を制御する第3の制御回路と、を更に備えることが望ましい。
【0009】
上記態様の気相成長装置において、前記主ガス供給路に前記第1のガスを供給する第1のガス供給路と、前記主ガス供給路に前記第2のガスを供給する第2のガス供給路と、を更に備えることが望ましい。
【0010】
上記態様の気相成長装置において、前記第1の制御回路は、前記主ガス供給路の中の圧力が所定の値となるように前記主流量コントローラに前記第1の流量値を指令することが望ましい。
【0011】
本発明の別の一態様の気相成長装置は、n(nは2以上の整数)個の反応室と、前記n個の反応室にガスを供給する主ガス供給路と、前記主ガス供給路から分岐され前記反応室のそれぞれに接続され、1本の第1の副ガス供給路と、(n-1)本の第2の副ガス供給路と、を含むn本の副ガス供給路と、前記主ガス供給路の中の圧力を測定する第1の圧力計と、前記第1の副ガス供給路に設けられた1個の主流量コントローラと、前記第2の副ガス供給路のそれぞれに設けられた(n-1)個の副流量コントローラと、前記第1の圧力計の測定結果に基づき、前記主流量コントローラに第1の流量値を指令する第1の制御回路と、前記主流量コントローラで測定される流量値と前記副流量コントローラで測定される流量値の総和のn分の1である第2の流量値を算出し、前記副流量コントローラのそれぞれに前記第2の流量値を指令する第2の制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の反応室で均質な特性の膜を同時形成することが可能な気相成長装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1の実施形態の気相成長装置の構成図である。
【
図2】第1の実施形態の気相成長装置の反応室の模式断面図である。
【
図3】第2の実施形態の気相成長装置の構成図である。
【
図4】第3の実施形態の気相成長装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0015】
なお、本明細書中では、気相成長装置が成膜可能に設置された状態での重力方向を「下」と定義し、その逆方向を「上」と定義する。したがって、「下部」とは、基準に対し重力方向の位置、「下方」とは基準に対し重力方向を意味する。そして、「上部」とは、基準に対し重力方向と逆方向の位置、「上方」とは基準に対し重力方向と逆方向を意味する。また、「縦方向」とは重力方向である。
【0016】
また、本明細書中、「プロセスガス」とは、基板上への成膜のために用いられるガスの総称であり、例えば、ソースガス、キャリアガス等を含む概念とする。
【0017】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の気相成長装置は、n(nは2以上の整数)個の反応室と、n個の反応室に第1のガスと第2のガスとの混合ガスを供給する主ガス供給路と、主ガス供給路から分岐されn個の反応室のそれぞれに接続されたn本の副ガス供給路と、主ガス供給路の中の圧力を測定する第1の圧力計と、n本の副ガス供給路のそれぞれに設けられたn個のマスフローコントローラと、第1の圧力計の測定結果に基づき、n個のマスフローコントーラの内の一つである第1のマスフローコントローラに流量値を指令する第1の制御回路と、n個のマスフローコントローラの流量値の総和のn分の1の流量値を算出し、n個のマスフローコントローラの内の第1のマスフローコントローラ以外のマスフローコントローラにn分の1の流量値を指令する第2の制御回路と、を備える。
【0018】
第1の実施形態の気相成長装置は、上記構成を備えることにより、複数の反応室で同時に基板上に膜を形成する際に、各反応室に供給されるプロセスガスの流量が均一になるように制御可能となる。したがって、各反応室で均質な特性の膜を同時形成する可能となる。膜の特性とは、例えば、膜厚や組成である。
【0019】
図1は、第1の実施形態の気相成長装置の構成図である。第1の実施形態の気相成長装置は、MOCVD法(有機金属化学気相成長法)を用いるエピタキシャル成長装置である。エピタキシャル成長装置の反応室の数は、n(nは2以上の整数)個と表すことができる。以下、n=4、すなわち、エピタキシャル成長装置が4個の反応室を備える場合を例に説明する。反応室の数は、4個に限られず、2個以上の任意の数とすることが可能である。
【0020】
第1の実施形態の気相成長装置は、4個の反応室10a、10b、10c、10d、第1のガス供給路11、第2のガス供給路21、第3のガス供給路31、第1の主マスフローコントローラ12、第2の主マスフローコントローラ22、第3の主マスフローコントローラ32、主ガス供給路13、第1の副ガス供給路14a(第1の副ガス供給路)、第2の副ガス供給路14b(第2の副ガス供給路)、第3の副ガス供給路14c(第2の副ガス供給路)、第4の副ガス供給路14d(第2の副ガス供給路)、第1の副マスフローコントローラ15a(主流量コントローラ)、第2の副マスフローコントローラ15b(副流量コントローラ)、第3の副マスフローコントローラ15c(副流量コントローラ)、第4の副マスフローコントローラ15d(副流量コントローラ)、第1の副ガス排出路16a(第2のガス排出路)、第2の副ガス排出路16b(第2のガス排出路)、第3の副ガス排出路16c(第2のガス排出路)、第4の副ガス排出路16d(第2のガス排出路)、主ガス排出路17(第1のガス排出路)、排気ポンプ18、第1の圧力計41、第2の圧力計42、圧力調整バルブ45、第1の制御回路51、第2の制御回路52、第3の制御回路53、を備える。
【0021】
4個の反応室10a、10b、10c、10dは、例えば、それぞれが、縦型の枚葉式の反応室である。
【0022】
第1のガス供給路11、第2のガス供給路21、及び、第3のガス供給路31は、主ガス供給路13に接続される。第1のガス供給路11には、第1の主マスフローコントローラ12が設けられる。第2のガス供給路21には、第2の主マスフローコントローラ22が設けられる。第3のガス供給路31には、第3の主マスフローコントローラ32が設けられる。
【0023】
第1のガス供給路11は、主ガス供給路13に第1のプロセスガス(第1のガス)を供給する。第1のガス供給路11は、例えば、主ガス供給路13にIII族元素の有機金属とキャリアガスを含む第1のプロセスガスを供給する。第1のプロセスガスは、例えば、ウェハ上にIII-V族半導体の膜を形成するための、III族元素を含むガスである。
【0024】
なお、例えば、III族原料では、キャリアガスを原料に接触(バブリング)させて得られる、原料を飽和させたガスを供給する方法をよく用いる。この方法の場合、原料ガスの流量はキャリアガスの流量によって決まる。この方法の場合、例えば第1の主マスフローコントローラ12の代わりに、第1のガス供給路11内の圧力を一定に保つ圧力制御バルブが設けられる。
【0025】
III族元素は、例えば、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)である。また、有機金属は、例えば、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリメチルインジウム(TMI)である。
【0026】
第1の主マスフローコントローラ12は、第1のプロセスガスの流量を制御する機能を有する。
【0027】
第2のガス供給路21は、主ガス供給路13に第2のプロセスガス(第2のガス)を供給する。第2のガス供給路21は、例えば、主ガス供給路13に窒素(N)のソースとなる窒素化合物を含む第2のプロセスガスを供給する。
【0028】
窒素化合物は、例えば、アンモニア(NH3)である。第2のプロセスガスは、例えば、ウェハ上にIII-V族半導体の膜を形成するための、V族元素のソースガスである。V族元素は窒素(N)である。
【0029】
なお、窒素化合物は、活性な窒素化合物であればよく、アンモニアに限らず、ヒドラジン、アルキルヒドラジン、アルキルアミンなどの他の窒素化合物を用いてもよい。
【0030】
第2の主マスフローコントローラ22は、第2のプロセスガスの流量を制御する機能を有する。
【0031】
第3のガス供給路31は、主ガス供給路13に第3のプロセスガスを供給する。第3のプロセスガスは、例えば、第1のプロセスガス、及び、第2のプロセスガスを希釈する希釈ガスである。希釈ガスで、第1のプロセスガス、及び第2のプロセスガスを希釈することにより、反応室10a、10b、10c、10dに供給されるIII族元素及びV族元素の濃度を調整する。希釈ガスは、例えば、水素ガス、窒素ガス、又は、アルゴンガス等の不活性ガス又はこれらの混合ガスである。
【0032】
第3の主マスフローコントローラ32は、第3のプロセスガスの流量を制御する機能を有する。
【0033】
第1のガス供給路11、第2のガス供給路21、及び、第3のガス供給路31は、合流した後、主ガス供給路13に接続される。第1のプロセスガス、第2のプロセスガス、及び、第3のプロセスガスの混合ガスが、主ガス供給路13を流れる。主ガス供給路13は、反応室10a、10b、10c、10dに、第1のプロセスガス、第2のプロセスガス、及び、第3のプロセスガスの混合ガスを供給する。
【0034】
第1の圧力計41は、主ガス供給路13に接続される。第1の圧力計41は、主ガス供給路13の中の圧力を測定する機能を有する。第1の圧力計41の設置される配管系内での位置は、大きな圧損を持つバルブや流量制御装置などを隔てることなく主ガス供給路13に連接される部分であればどこであってもよい。具体的には、
図1の配管系内で、第1の主マスフローコントローラ12、第2の主マスフローコントローラ22、第3の主マスフローコントローラ32、第1の副マスフローコントローラ15a、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、および第4の副マスフローコントローラ15dで囲まれる範囲である。
【0035】
第1の副ガス供給路14a、第2の副ガス供給路14b、第3の副ガス供給路14c、第4の副ガス供給路14dは、主ガス供給路13から分岐される。第1の副ガス供給路14a、第2の副ガス供給路14b、第3の副ガス供給路14c、第4の副ガス供給路14dは、反応室10a、10b、10c、10dのそれぞれに混合ガスを供給する。
【0036】
第1の副ガス供給路14aには、第1の副マスフローコントローラ15a(第1のマスフローコントローラ)が設けられる。第2の副ガス供給路14bには、第2の副マスフローコントローラ15bが設けられる。第3の副ガス供給路14cには、第3の副マスフローコントローラ15cが設けられる。第4の副ガス供給路14dには、第4の副マスフローコントローラ15dが設けられる。
【0037】
第1の副マスフローコントローラ15aは、第1の副ガス供給路14aに流れる混合ガスの流量を制御する機能を有する。第2の副マスフローコントローラ15bは、第2の副ガス供給路14bに流れる混合ガスの流量を制御する機能を有する。第3の副マスフローコントローラ15cは、第3の副ガス供給路14cに流れる混合ガスの流量を制御する機能を有する。第4の副マスフローコントローラ15dは、第4の副ガス供給路14dに流れる混合ガスの流量を制御する機能を有する。また、これらの副マスフローコントローラは、自身の内部を流れるガス流量を計測してその値を第2の制御回路52に出力する。
【0038】
第1の副マスフローコントローラ15a(第1のマスフローコントローラ)、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dには、すべて同一の仕様のマスフローコントローラを用いることが好ましい。
【0039】
第1の制御回路51は、第1の圧力計41の測定結果に基づき、4個の副マスフローコントーラの内の一つである第1の副マスフローコントローラ15aに流量値を指令する機能を有する。第1の制御回路51は、主ガス供給路13の中の圧力が所定の値となるように第1の副マスフローコントローラ15aに流量値を指令する機能を有する。第1の制御回路51は、例えば、主ガス供給路13の中の圧力が所定の値となるように、第1の副マスフローコントローラ15aに流量値を指令する機能を有する。
【0040】
第1の副マスフローコントローラ15aは制御する対象が質量流量(マスフロー)ではなく圧力である。したがって、正確に言えば、マスフローコントローラではなく、圧力コントローラである。しかし、圧力を制御するために、第1の副マスフローコントローラ15a内を流れるガスの流量を制御するため、簡便のためにマスフローコントローラと称する。
【0041】
第1の副マスフローコントローラ15aに求められる機能は、第1の制御回路51の指令に従い自身の内部を流れるガスの流量を制御することで第1の圧力計41の圧力を一定に保つことと、自身の内部を流れるガスの流量を計測してこれを第2の制御回路52に伝達することである。第1の副マスフローコントローラ15aとしては、これらの機能を実現できる任意の構成をとることができる。例えば内部を流れるガス流量を計測して伝達する機能を持つ圧力コントローラを利用することができる。
【0042】
第1の制御回路51は、例えば、Propotional-Integral-Differential制御(PID制御)を行う。
【0043】
第1の制御回路51は、例えば、ハードウェア又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。第1の制御回路51は、例えば、マイクロコンピュータである。
【0044】
第2の制御回路52は、4個の副マスフローコントーラの流量値の総和の4分の1の流量値を算出する機能を有する。すなわち、第2の制御回路52は、第1の副マスフローコントローラ15a、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dの流量値の総和の4分の1の流量値を算出する機能を有する。
【0045】
第2の制御回路52は、4個の副マスフローコントーラの内の第1の副マスフローコントローラ15a以外の3個の副マスフローコントローラに算出した4分の1の流量値を指令する機能を有する。すなわち、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dに、算出した4分の1の流量値を設定値として指令する機能を有する。
【0046】
第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dは、上記4分の1の流量値を設定値として動作する。
【0047】
第2の制御回路52は、例えば、ハードウェア又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。第2の制御回路52は、例えば、マイクロコンピュータである。
【0048】
第1の副ガス排出路16a、第2の副ガス排出路16b、第3の副ガス排出路16c、第4の副ガス排出路16dは、反応室10a、10b、10c、10dのそれぞれに接続される。第1の副ガス排出路16a、第2の副ガス排出路16b、第3の副ガス排出路16c、第4の副ガス排出路16dは、反応室10a、10b、10c、10dから排出される排出ガスの流路となる。
【0049】
主ガス排出路17は、第1の副ガス排出路16a、第2の副ガス排出路16b、第3の副ガス排出路16c、第4の副ガス排出路16dに接続される。
【0050】
排気ポンプ18は、主ガス排出路17に接続される。排気ポンプ18は、反応室10a、10b、10c、10dからガスを吸引する機能を有する。排気ポンプ18は、例えば、真空ポンプである。
【0051】
第2の圧力計42は、主ガス排出路17に接続される。第2の圧力計42は、主ガス排出路17の中の圧力を測定する機能を有する。
【0052】
圧力調整バルブ45は、排気ポンプ18と第2の圧力計42との間に設けられる。圧力調整バルブ45は、反応室10a、10b、10c、10d及び主ガス排出路17の圧力を調整する機能を有する。圧力調整バルブ45は、例えば、バタフライバルブである。
【0053】
第3の制御回路53は、第2の圧力計42の測定結果に基づき、圧力調整バルブ45に指令し、反応室10a、10b、10c、10d及び主ガス排出路17の中の圧力を所定の値に制御する機能を有する。
【0054】
本来、圧力調整バルブ45により制御されるべき圧力は、実際に成膜が行われる各反応炉(10a、10b、10cおよび10d)内の圧力であるが、第2の圧力計42の設置位置での圧力と上記各反応炉内の圧力の差が一定であれば、その差をあらかじめ考慮することで、上記各反応炉内の圧力を所定の値に制御することができる。さらに好ましくは、第2の圧力計42の設置位置での圧力と上記各反応炉内の圧力の差を無視できるほど小さくすることである。上記の圧力の差の好ましい範囲は、0.5kPa以下、さらに好ましくは0.1kPa以下である。
【0055】
上記の好ましい圧力差を実現するためには、用いるガス流量や種類を勘案して、各反応炉と第2の圧力計42との間の配管の径を十分大きくすること、あるいは、配管の長さを十分短くすることなどを行う。また各反応炉から第2の圧力計42にまでの配管の長さをなるべく均一にするなどの方法を用いることもできる。また各反応炉の内の一つの反応炉の圧力計を第2の圧力計42としてもよい。
【0056】
第3の制御回路53は、例えば、ハードウェア又はハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。第3の制御回路53は、例えば、マイクロコンピュータである。
【0057】
図2は、第1の実施形態の気相成長装置の反応室の模式断面図である。4個の反応室10a、10b、10c、10dのうちの一個、例えば、反応室10aを示す。なお、4個の反応室10a、10b、10c、10dは、すべて同一の構成を備えることが望ましい。
【0058】
図2に示すように、第1の実施形態の反応室10aは、例えば、ステンレス製で円筒状中空体の壁面100を備える。反応室10aの上部には、シャワープレート101が設けられる。シャワープレート101は、反応室10a内に、プロセスガスを供給する。
【0059】
また、反応室10a内に、支持部112が設けられる。支持部112は、半導体ウェハ(基板)Wを載置可能である。支持部112は、例えば、中心部に開口部が設けられる環状ホルダ、又は、開口部の設けられないサセプタである。
【0060】
第1の副ガス供給路14aは、シャワープレート101に接続される。シャワープレート101の反応室10a側には、混合ガスを、反応室10a内に噴出するための複数のガス噴出孔が設けられている。
【0061】
また、反応室10aは、回転体ユニット114を備える。回転体ユニット114の上部に支持部112が設けられる。回転体ユニット114は、その回転軸118が、回転駆動機構120に接続される。回転駆動機構120により、支持部112に載置される半導体ウェハWを、例えば、50rpm以上3000rpm以下の回転数で回転させることが可能となっている。
【0062】
また、回転体ユニット114内には、支持部112に載置されたウェハWを加熱する加熱部116を備えている。加熱部116は、例えば、ヒーターである。
【0063】
加熱部116は、回転体ユニット114内に固定して設けられる。加熱部116には、回転軸118の内部を貫通する電極122を介して電力が供給され、加熱部116によりウェハWを加熱制御することができる。また、半導体ウェハWを支持部112から脱着させるために、加熱部116を貫通する突き上げピン(図示せず)が設けられている。
【0064】
更に、反応室10a底部に、ガス排出部126を備える。ガス排出部126は、半導体ウェハW表面でソースガスが反応した後の反応生成物、及び、反応室10aに残留したプロセスガスを反応室10aの外部に排出する。ガス排出部126は、第1の副ガス排出路16a(
図1)に接続される。
【0065】
反応室10aの壁面100には、図示しないウェハ出入口及びゲートバルブが設けられている。ウェハ出入口及びゲートバルブにより、半導体ウェハWを反応室10a内に搬入したり、反応室10a外に搬出したりすることが可能である。
【0066】
第1の実施形態の気相成長方法は、
図1及び
図2のエピタキシャル成長装置を用いる。以下、第1の実施形態の気相成長方法について説明する。シリコン基板の上に窒化ガリウム膜(GaN膜)を形成する場合を例に説明する。
【0067】
まず、4個の反応室10a、10b、10c、10dのそれぞれに、1枚のシリコンウェハWを搬入する。
【0068】
第1のガス供給路11からTMGを含む第1のプロセスガスを、主ガス供給路13に供給する。第1のプロセスガスの流量は、第1の主マスフローコントローラ12で所望の流量に制御される。
【0069】
第2のガス供給路21からアンモニアを含む第2のプロセスガスを、主ガス供給路13に供給する。第2のプロセスガスの流量は、第2の主マスフローコントローラ22で所望の流量に制御される。
【0070】
第3のガス供給路31から水素を含む第3のプロセスガスを、主ガス供給路13に供給する。第3のプロセスガスの流量は、第3の主マスフローコントローラ32で所望の流量に制御される。
【0071】
第1のプロセスガス、第2のプロセスガス、及び、第3のプロセスガスは、主ガス供給路13の中で混合ガスとなる。混合ガスは、第1の副ガス供給路14a、第2の副ガス供給路14b、第3の副ガス供給路14c、第4の副ガス供給路14dを通って、4個の反応室10a、10b、10c、10dに供給される。
【0072】
第1の副ガス供給路14a、第2の副ガス供給路14b、第3の副ガス供給路14c、第4の副ガス供給路14dのそれぞれに、等しい流量の混合ガスが流れるように、気相成長装置は制御される。
【0073】
第1の制御回路51は、第1の圧力計41の測定結果に基づき、4個の副マスフローコントーラの内の一つである第1の副マスフローコントローラ15aに流量値を指令する。第1の制御回路51は、主ガス供給路13の中の圧力が所定の値となるように第1の副マスフローコントローラ15aに流量値を指令する。
【0074】
反応室10a、10b、10c、10dの中の圧力は、GaN膜の形成に必要な所定の圧力に保たれる。反応室10a、10b、10c、10dの中の圧力は、排気ポンプ18、圧力調整バルブ45、第2の圧力計42、及び、第3の制御回路53を用いて、所定の圧力に保たれる。
【0075】
第1の副マスフローコントローラ15a、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dの4個の副マスフローコントローラを動作させるために、副マスフローコントローラの上流側と下流側の圧力には所定の差圧が必要となる。具体的には、第1の圧力計41で測定される第1の圧力P1と、第2の圧力計42で測定される第2の圧力P2との差分(P1-P2)が、所定の圧力範囲に収まることが要求される。
【0076】
第1の制御回路51は、PID制御により、主ガス供給路13の中の圧力P1が所定の値となるように、第1の副マスフローコントローラ15aを制御する。
【0077】
第1の副マスフローコントローラ15a、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dの4個の副マスフローコントローラからは、それぞれの副マスフローコントローラで測定される流量値が、第2の制御回路52に伝達される。
【0078】
第2の制御回路52は、4個の副マスフローコントーラから伝達された流量値の総和の4分の1の流量値を算出する。そして、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dに、算出した4分の1の流量値を設定値として指令する。
【0079】
上記制御方法により、第1の副ガス供給路14a、第2の副ガス供給路14b、第3の副ガス供給路14c、第4の副ガス供給路14dを通る混合ガスは、均等に4分割されることになる。したがって、4個の反応室10a、10b、10c、10dに供給される混合ガスは、均等に4分割されることになる。4個の反応室10a、10b、10c、10dに供給される混合ガスの流量が均一になる。
【0080】
各反応室10a、10b、10c、10dについて設定されるプロセスパラメータの設定値は、各反応室10a、10b、10c、10dで、成長する膜の膜厚及び組成が同一になる値に設定される。例えば、4個の反応室10a、10b、10c、10dの4枚のシリコンウェハWは、同一の回転数、同一の温度に制御される。
【0081】
以上の気相成長方法で、各反応室10a、10b、10c、10dに、混合ガスが供給され、4枚のシリコンウェハWの上にGaN膜が同時形成される。
【0082】
以下、第1の実施形態の気相成長装置及び気相成長方法の作用及び効果について説明する。
【0083】
複数の反応室を用いて、複数の基板上に同時に同じ特性の膜を成長させる場合、各反応室のプロセスパラメータを同じ設定値に設定する。各反応室のプロセスパラメータを同じ設定値に設定することにより、理論的には、複数の基板上に同時に同じ特性の膜を成長させることが可能となる。
【0084】
しかし、各反応室のプロセスパラメータを同じ設定値に設定したとしても、各反応室で成長する膜の特性にばらつきが生じる場合がある。例えば、各反応室に供給されるプロセスガスの流量がばらつくと、各反応室で成長する膜の特性にばらつきが生じる。このため、各反応室に供給されるプロセスガスの流量を均一に制御する必要がある。
【0085】
例えば、プロセスガスを4分割して4個の反応室に供給する場合を考える。主ガス供給路は、4個の副ガス供給路に分割される。主ガス供給路に設けられた主マスフローコントローラでプロセスガスの総流量を所望の流量に制御する。また、4個の副ガス供給路に設けられた副マスフローコントローラで、副ガス供給路に流れるプロセスガスの流量を制御する。
【0086】
例えば、プロセスガスの総流量を4分割した流量値を4個の副マスフローコントローラに設定する。主マスフローコントローラや副マスフローコントローラには、流量制御精度に一定の誤差がある。このため、場合によっては実際の総流量が、4分割した流量値の総和を下回る事態が発生する。この場合、副マスフローコントローラの上流側と下流側の圧力に差がなくなり、副マスフローコントローラが正常に動作せず、流量制御ができなくなる。したがって、各反応室に供給されるプロセスガスの流量が大きくばらつくことになる。よって、少なくとも、副マスフローコントローラの上流側と下流側の圧力には所定の差圧が確保される必要がある。所定の差圧は、例えば、50kPa以上300kPa以下である。
【0087】
第1の実施形態の気相成長装置では、第1の制御回路51は、主ガス供給路13の中の圧力P1が所定の値となるように、第1の副マスフローコントローラ15aに流量値を指令する。主ガス供給路13の中の圧力P1の設定値は、上記の所定の差圧を満たすように決められる。したがって、4個の副マスフローコントローラの上流側と下流側の圧力には所定の差圧が常に確保される。よって、副マスフローコントローラが正常に動作せず、流量制御ができなくなるという事態は生じない。
【0088】
更に、第1の実施形態の気相成長装置では、第2の制御回路52は、4個の副マスフローコントーラから伝達された流量値の総和の4分の1の流量値を算出する。そして、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dに、算出した4分の1の流量値を設定値として指令する。したがって、第1の副ガス供給路14a、第2の副ガス供給路14b、第3の副ガス供給路14c、第4の副ガス供給路14dを通る混合ガスは、均等に4分割されることになる。
【0089】
また、第1の実施形態の気相成長装置では、主ガス供給路13を流れるプロセスガスが混合ガスである。一般にマスフローコントローラは、混合ガスの流量を正確に制御することが困難である。これは、以下の理由による。
【0090】
マスフローコントローラは、細管の中を流れるプロセスガスの流量を、細管に生じる流量に応じた物理的変化を検出して求める。上記の物理的変化の例としては、細管の上流部と下流部での温度差が挙げられる。具体的には、加熱した細管内をプロセスガスが流れない場合には、細管の上流部と下流部で温度差が発生せず、また細管内をプロセスガスが流れる場合にはその流量に比例して上記の温度差が大きくなるのが一般的である。上記の物理的変化を用いて細管内を流れるプロセスガスの流量を求める際、プロセスガスに固有のコンバージョンファクターを用いる。例えば、細管の上流部と下流部の温度差を検出する方式の場合、窒素ガスのコンバージョンファクターを基準値である1とした場合、ヘリウムガスのコンバージョンファクターは1.4となる。このコンバージョンファクターを用いて、測定された流量値を補正しヘリウムガスの流量を求める。
【0091】
プロセスガスが混合ガスの場合、混合ガスの割合や種類により上記コンバージョンファクターが変化する。つまり混合ガスの割合や種類を変化させる場合について上記コンバージョンファクターの決定することは困難になり、したがって混合ガスの流量を正確に求めることが困難となる。
【0092】
上記のような理由から副マスフローコントローラ内の流れるプロセスガスが混合ガスである場合、その流量を正確に求めることはできない。ただし、あるコンバージョンファクターを用いて求めた副マスフローコントローラ内を流れるプロセスガスの流量は、混合ガスの成分比率が変わらなければ正確な流量に比例する。言い換えると、正確な流量は求めることができなくても、副マスフローコントローラ間で流量の比較が可能である。
【0093】
そこで、正確な流量はわからないものの、同じコンバージョンファクターを使って求めた各副マスフローコントローラの流量の総和の4分の1を各副マスフローコントローラの制御値とすることで、正確な流量を知ることなく、総流量の4分の1の流量で各副マスフローコントローラを制御することができる。ただし、第1の副マスフローコントローラ15aは主ガス供給路13の中の圧力P1が定められた設定値になるように第1の副マスフローコントローラ内を流れるガス流量を制御する。
【0094】
具体的には、第2の制御回路52は、4個の副マスフローコントーラから伝達された流量値の総和の4分の1の流量値を算出する。そして、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dに、算出した4分の1の流量値を設定値として指令する。
【0095】
上記のように副マスフローコントローラを制御することで、混合ガスのコンバージョンファクターが未知であったとしても、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dの制御が可能である。言い換えれば、コンバージョンファクターで補正していない流量値を用いた制御が可能となる。
【0096】
なお、上記のように副マスフローコントローラの制御を行う場合、各副マスフローコントローラの流量検出方式が同じものでなければならない。流量検出方式が異なっていると、ガス種が変化する場合に同じコンバージョンファクターを用いることができず、副マスフロー間での混合ガスの流量の比較ができない。さらに好ましくは、各副マスフローコントローラが、最大流量、応答性、ガス流量制御法式、などが同じ仕様のものを用いる。
【0097】
したがって、第1の実施形態の気相成長装置によれば、複数の反応室で同時に複数の基板上に膜を形成する際に、各反応室に供給されるプロセスガスの流量が均一になるように制御可能となる。よって、各反応室で均質な特性の膜を同時形成することが可能となる。
【0098】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の気相成長装置は、n(nは2以上の整数)個の反応室と、n個の反応室にガスを供給する主ガス供給路と、主ガス供給路から分岐されn個の反応室のそれぞれに接続されたn本の副ガス供給路と、主ガス供給路の中の圧力を測定する第1の圧力計と、n本の副ガス供給路のそれぞれに設けられたn個のマスフローコントローラと、第1の圧力計の測定結果に基づき、n個のマスフローコントーラの内の一つである第1のマスフローコントローラに流量値を指令する第1の制御回路と、n個のマスフローコントローラの流量値の総和のn分の1の流量値を算出し、n個のマスフローコントローラの内の第1のマスフローコントローラ以外のマスフローコントローラにn分の1の流量値を指令する第2の制御回路と、を備える。
【0099】
第2の実施形態の気相成長装置は、反応室に供給されるガスが単一組成のガスである点で、第1の実施形態と異なる。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する。
【0100】
図3は、第2の実施形態の気相成長装置の構成図である。各構成は第1の実施形態に対応しているが、第2のガス供給路21,第3のガス供給路31、第2の主マスフローコントローラ22,第3の主マスフローコントローラ32を有しない点で異なる。
【0101】
主ガス供給路13には、第1のガス供給路11より供給され、第1の主マスフローコントローラ12で流量が制御された単一組成のプロセスガスが供給される。プロセスガスは、例えば、シランを含むガスである。例えば、第2の実施形態の気相成長装置を用いて、ウェハW上に多結晶シリコン膜が形成される。
【0102】
第2の実施形態の気相成長装置によれば、第1の実施形態の気相成長装置と同様、複数の反応室で同時に基板上に膜を形成する際に、各反応室に供給されるプロセスガスの流量を均一になるように制御可能となる。よって、各反応室で均質な特性の膜を同時形成することが可能となる。
【0103】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の気相成長装置は、異なる種類のプロセスガスが、各反応室内あるいは反応室の直前で混合される点、及び、異なる種類のプロセスガス毎に分流機構を備える点
で、第1の実施形態の気相成長装置と異なる。具体的には、第1の主プロセスガス、第2の主プロセスガス、及び第3の主プロセスガスの各々を分流してn個の反応炉へ供給し、各プロセスガスは各反応炉内あるいは反応炉の直前で混合される。以下、第1の実施形態と重複する内容については一部記述を省略する。
【0104】
図4は、第3の実施形態の気相成長装置の構成図である。
【0105】
第1のガス供給路11、第2のガス供給路21、及び、第3のガス供給路31は、第1の主ガス供給路13に接続される。第1のプロセスガス(例えばIII族元素の有機金属を含むガス)を供給する第1のガス供給路11には、第1の主マスフローコントローラ12が設けられる。第2のプロセスガス(例えば水素ガス)を供給する第2のガス供給路21には、第2の主マスフローコントローラ22が設けられる。第3のプロセスガス(例えば窒素ガス)を供給する第3のガス供給路31には、第3の主マスフローコントローラ32が設けられる。第1の主ガス供給路13は、反応室10a、10b、10c、10dに、第1のプロセスガス、第2のプロセスガス、及び、第3のプロセスガスの混合ガスである第1の主プロセスガスを供給する。
【0106】
第4のガス供給路211、第5のガス供給路221、及び、第6のガス供給路231は、第2の主ガス供給路213に接続される。第4のプロセスガス(例えばアンモニアNH3)を供給する第4のガス供給路211には、第4の主マスフローコントローラ212が設けられる。第5のプロセスガス(例えば水素ガス)を供給する第5のガス供給路221には、第5の主マスフローコントローラ222が設けられる。第6のプロセスガス(例えば窒素ガス)を供給する第6のガス供給路231には、第6の主マスフローコントローラ232が設けられる。第2の主ガス供給路213は、反応室10a、10b、10c、10dに、第4のプロセスガス、第5のプロセスガス、及び、第6のプロセスガスの混合ガスである第2の主プロセスガスを供給する。
【0107】
第7のガス供給路311、第8のガス供給路321は、第3の主ガス供給路313に接続される。第7のプロセスガス(例えば、水素ガス)を供給する第7のガス供給路311には、第7の主マスフローコントローラ312が設けられる。第8のプロセスガス(例えば、窒素ガス)を供給する第8のガス供給路321には、第8の主マスフローコントローラ322が設けられる。第3の主ガス供給路313は、反応室10a、10b、10c、10dに、第7のプロセスガス、及び、第8のプロセスガスの混合ガスであり、例えば第1の主プロセスガス、及び、第2の主プロセスガスを希釈する希釈ガスである第3の主プロセスガスを供給する。
【0108】
第1の副ガス供給路14a、第2の副ガス供給路14b、第3の副ガス供給路14c、第4の副ガス供給路14dは、第1の主ガス供給路13から分岐される。第1の副ガス供給路14a、第2の副ガス供給路14b、第3の副ガス供給路14c、第4の副ガス供給路14dのそれぞれに、流量を制御する第1の副マスフローコントローラ(第1のマスフローコントローラ)15a、第2の副マスフローコントローラ15b、第3の副マスフローコントローラ15c、第4の副マスフローコントローラ15dが設けられる。
【0109】
同様に、第5の副ガス供給路214a、第6の副ガス供給路214b、第7の副ガス供給路214c、第8の副ガス供給路214dは、第2の主ガス供給路213から分岐される。第5の副ガス供給路214a、第6の副ガス供給路214b、第7の副ガス供給路214c、第8の副ガス供給路214dのそれぞれに、流量を制御する第5の副マスフローコントローラ215a、第6の副マスフローコントローラ215b、第7の副マスフローコントローラ215c、第8の副マスフローコントローラ215dが設けられる。
【0110】
同様に、第9の副ガス供給路314a、第10の副ガス供給路314b、第11の副ガス供給路314c、第12の副ガス供給路314dは、第3の主ガス供給路313から分岐される。第9の副ガス供給路314a、第10の副ガス供給路314b、第11の副ガス供給路314c、第12の副ガス供給路314dのそれぞれに、流量を制御する第9の副マスフローコントローラ315a、第10の副マスフローコントローラ315b、第11の副マスフローコントローラ315c、第12の副マスフローコントローラ315dが設けられる。
【0111】
第1の実施形態と同様に、第1の主ガス供給路13には、第1の圧力計41が設けられ、第1の主ガス供給路13の中の圧力を一定に保つように、第1の制御回路51が第1の副マスフローコントローラ15aを制御する。そして、第1の副マスフローコントローラ15aの流量値は、第2の制御回路52に伝達され、第2の制御回路52で算出された流量設定値で他の副マスフローコントローラを制御する。
【0112】
同様に、第2の主ガス供給路213には、第3の圧力計241が設けられ、第2の主ガス供給路213の中の圧力を一定に保つように、第4の制御回路251が第5の副マスフローコントローラ215aを制御する。そして、第5の副マスフローコントローラ215aの流量値は、第5の制御回路252に伝達され、第5の制御回路252で算出された流量設定値で他の副マスフローコントローラを制御する。
【0113】
同様に、第3の主ガス供給路313には、第4の圧力計341が設けられ、第3の主ガス供給路313の圧力を一定に保つように、第6の制御回路351が第79副マスフローコントローラ315aを制御する。そして、第9の副マスフローコントローラ315aの流量値は、第7の制御回路352に伝達され、第7の制御回路352で算出された流量設定値で他の副マスフローコントローラを制御する。
【0114】
第1の主プロセスガス、第2の主プロセスガス、及び、第3の主プロセスガスは、4個の反応室10a、10b、10c、10dの内部、あるいは直前で混合される。
【0115】
第3の実施形態の気相成長装置によれば、第1の実施形態の気相成長装置と同様、複数の反応室で同時に基板上に膜を形成する際に、各反応室に供給されるプロセスガスの流量が均一になるように制御可能となる。よって、各反応室で均質な特性の膜を同時形成することが可能となる。
【0116】
さらに、第3の実施形態の気相成長装置によれば、第1の主プロセスガス、第2の主プロセスガス、及び、第3の主プロセスガスを反応室の内部、あるいは直前で混合することにより、主プロセスガスの間での化学反応を抑制するなどの効果が期待できる。
【0117】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。上記、実施形態はあくまで、例として挙げられているだけであり、本発明を限定するものではない。また、各実施形態の構成要素を適宜組み合わせても構わない。
【0118】
また上記の実施形態では、複数の反応炉の圧力を制御するために、複数の反応炉からの排気ガスを集合した後の圧力を1つの圧力制御バルブでおこなう例について説明した。しかし、複数の反応炉からの排気ガスを集合する部分より反応炉に近い部分に、反応炉ごとに圧力制御バルブを設けて、反応炉ごとに設けた圧力計によって計測された圧力をもとに、反応炉ごとに圧力制御を行ってもよい。
【0119】
実施形態では、GaN膜及び多結晶シリコン膜を形成する場合を例に説明したが、その他の膜の形成にも本発明を適用することは可能である。
【0120】
実施形態では、気相成長装置について、本発明の説明に直接必要としない部分については記載を省略したが、必要とされる気相成長装置の装置構成等を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての気相成長装置は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0121】
10a~10d 反応室
11 第1のガス供給路
12 第1の主マスフローコントローラ
13 主ガス供給路、第1の主ガス供給路
14a 第1の副ガス供給路
14b 第2の副ガス供給路
14c 第3の副ガス供給路
14d 第4の副ガス供給路
15a 第1の副マスフローコントローラ(第1のマスフローコントローラ)
15b 第2の副マスフローコントローラ
15c 第3の副マスフローコントローラ
15d 第4の副マスフローコントローラ
16a 第1の副ガス排出路
16b 第2の副ガス排出路
16c 第3の副ガス排出路
16d 第4の副ガス排出路
17 主ガス排出路
18 排気ポンプ
21 第2のガス供給路
22 第2の主マスフローコントローラ
31 第3のガス供給路
32 第3の主マスフローコントローラ
41 第1の圧力計
42 第2の圧力計
45 圧力調整バルブ
51 第1の制御回路
52 第2の制御回路
53 第3の制御回路
211 第4のガス供給路
212 第4の主マスフローコントローラ
213 第2の主ガス供給路
214a 第5の副ガス供給路
214b 第6の副ガス供給路
214c 第7の副ガス供給路
214d 第8の副ガス供給路
215a 第5の副マスフローコントローラ
215b 第6の副マスフローコントローラ
215c 第7の副マスフローコントローラ
215d 第8の副マスフローコントローラ
221 第5のガス供給路
222 第5の主マスフローコントローラ
231 第6のガス供給路
232 第6の主マスフローコントローラ
241 第3の圧力計
251 第4の制御回路
252 第5の制御回路
311 第7のガス供給路
321 第8のガス供給路
312 第7の主マスフローコントローラ
313 第3の主ガス供給路
314a 第9の副ガス供給路
314b 第10の副ガス供給路
314c 第11の副ガス供給路
314d 第12の副ガス供給路
315a 第9の副マスフローコントローラ
315b 第10の副マスフローコントローラ
315c 第11の副マスフローコントローラ
315d 第12の副マスフローコントローラ
322 第8の主マスフローコントローラ
341 第4の圧力計
351 第6の制御回路
352 第7の制御回路