IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】水性透明ゲル状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20220921BHJP
   A61K 8/84 20060101ALI20220921BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220921BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/84
A61Q19/00
A61K9/06
A61K47/10
A61K47/18
A61P17/00
A61K8/44
A61K8/34
A61K8/60
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019085261
(22)【出願日】2019-04-26
(65)【公開番号】P2020180090
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 輝一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真由子
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-284664(JP,A)
【文献】特開2018-016591(JP,A)
【文献】特開2018-172305(JP,A)
【文献】特開2019-172583(JP,A)
【文献】特開2019-094280(JP,A)
【文献】特開2017-078047(JP,A)
【文献】特開2016-175871(JP,A)
【文献】特開2017-105766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/90
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物、ベタイン化合物、美白剤、無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤、並びに水を含み、
一般式(1)で表される化合物の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上3質量%以下であり、
ベタイン化合物の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上10質量%以下であり、
無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して5.6質量%以上10質量%以下であり、
美白剤がアルブチンである、水性透明ゲル状組成物。
【化1】

一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、R11-(O-R12)x-で表される基である。R11は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R12は、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を表す。xは、1~500の整数である。Rは、それぞれ独立に、ウレタン結合を有してもよい炭化水素基を表す。Rは、炭素数2~4のアルキレン基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは、同一であっても又は異なっていてもよい。nは、1~500の整数であり、mは、1以上の整数である。
【請求項2】
水に対する、無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤の割合が、1.0質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載の水性透明ゲル状組成物。
【請求項3】
無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤が、無機性値及び有機性値の比を表す値が1.8以上3.3以下の溶剤である、請求項1又は請求項2に記載の水性透明ゲル状組成物。
【請求項4】
無機性値及び有機性値の比を表す値が1.8以上3.3以下の溶剤が、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ブチレングリコール、エタノール、及びプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の水性透明ゲル状組成物。
【請求項5】
ベタイン化合物がトリメチルグリシンである、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の水性透明ゲル状組成物。
【請求項6】
水性透明ゲル状化粧料である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の水性透明ゲル状組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水性透明ゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、食品、医薬品等の分野では、製品に対して粘性又は弾性を付与するために、ゲル化剤が汎用されている。例えば、化粧品の分野では、肌に塗布したときの使用感を高めたり、垂れ落ちを防いだりする等の目的で、ゲル化剤を使用し、「ゲル」と呼ばれる独特の性状を示す化粧料を提供している。
【0003】
ゲル化剤を配合した化粧料としては、例えば、特定の構造を有するコポリマーの混合物をゲル化剤とし、このゲル化剤と水と水溶性アルコール類とを少なくとも含む水性透明ゲル状組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、例えば、アスタキサンチン、トリメチルグリシン及び特定の構造を有する化合物(ゲル化剤)を、水性透明ゲル状組成物全量に対して特定の含有量で含有し、水性透明ゲル状組成物全量に対するNa及びKから選ばれる元素の総含有量が0.05質量%以上である水性透明ゲル状組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
更に、水溶性美白剤成分と会合性ポリマーとを含有し、会合性ポリマーの含有量が0.1質量%~10質量%である美白用皮膚外用剤が知られている(例えば、特許文献3参照)。
加えて、特定の構造を有する化合物(ゲル化剤)と、セラミドと、融点が25℃以下の脂肪酸と、L-アスコルビン酸2-グルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、コウジ酸、エラグ酸、ハイドロキノンβ-D-グルコシド、4-n-ブチルレゾルシノール、5,5’-ジプロピルビフェニル-2,2’-ジオール、トラネキサム酸セチル塩酸塩、trans-4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸、ニコチン酸アミド、及び4-メトキシサリチル酸カリウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の美白剤と、水と、を含み、特定の構造を有する化合物(ゲル化剤)の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上3質量%以下であり、かつ、融点が25℃以下の脂肪酸の含有量が、セラミドの含有量に対して、質量基準で、1倍量以上1000倍量以下である水性透明ゲル状組成物が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-95592号公報
【文献】特許第6284894号公報
【文献】特開2002-284664号公報
【文献】特開2019-14672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、水性透明ゲル状組成物の需要が高まってきている。水性透明ゲル状組成物は、透明度の高いゲル状組成物であることから、高級感を感じられる、見た目が美しいといった外観上の特長を有している。
水性透明ゲル状組成物にはゲル化剤が用いられており、このゲル化剤によるべたつきを抑えるために、例えば、ベタイン化合物が併用される。しかしながら、ベタイン化合物は電解質であることから、高温時(例えば、60℃超え)のベタイン化合物が添加された水性透明ゲル状組成物の安定性が損なわれてしまうことがある。
具体的には、水性透明ゲル状組成物を化粧料として用いた際、使用環境、保存環境、輸送環境等において、60℃を超える高温に晒されることがある。このような高温に晒された場合、ゲル化剤とベタイン化合物とを含む水性透明ゲル状組成物は、分離してしまうことがある。
【0007】
そこで、本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、べたつきが抑えられ、且つ、高温時(60℃超での)の安定性に優れる水性透明ゲル状組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
[1] 下記一般式(1)で表される化合物、ベタイン化合物、無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤、並びに水を含み、
一般式(1)で表される化合物の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上3質量%以下であり、
ベタイン化合物の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上10質量%以下であり、
無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上10質量%以下である、水性透明ゲル状組成物。
【0009】
【化1】
【0010】
一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、R11-(O-R12)x-で表される基である。R11は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R12は、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を表す。xは、1~500の整数である。Rは、それぞれ独立に、ウレタン結合を有してもよい炭化水素基を表す。Rは、炭素数2~4のアルキレン基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは、同一であっても又は異なっていてもよい。nは、1~500の整数であり、mは、1以上の整数である。
【0011】
[2] 水に対する、無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤の割合が、1.0質量%以上20質量%以下である、[1]に記載の水性透明ゲル状組成物。
[3] 無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤が、無機性値及び有機性値の比を表す値が1.8以上3.3以下の溶剤である、[1]又は[2]に記載の水性透明ゲル状組成物。
[4] 無機性値及び有機性値の比を表す値が1.8以上3.3以下の溶剤が、ジプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ブチレングリコール、エタノール、及びプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である、[3]に記載の水性透明ゲル状組成物。
【0012】
[5] ベタイン化合物がトリメチルグリシンである、[1]~[4]のいずれか1つに記載の水性透明ゲル状組成物。
[6] 美白剤を更に含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の水性透明ゲル状組成物。
[7] 美白剤がアルブチンである、[6]に記載の水性透明ゲル状組成物。
[8] 水性透明ゲル状化粧料である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の水性透明ゲル状組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、べたつきが抑えられ、且つ、高温時の安定性に優れる水性透明ゲル状組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した水性透明ゲル状組成物の実施形態の一例について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0015】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示では、段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、水性透明ゲル状組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が水性透明ゲル状組成物中に複数存在する場合には、特に断らない限り、水性透明ゲル状組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0016】
本開示において、乳化物(又は分散組成物)を得る際に使用する「水相」とは、溶媒の種類にかかわらず「油相」に対する語として使用する。水相は、水及び水溶性成分から構成される。ここでいう「水溶性成分」とは、25℃の水に対する溶解度が1質量%以上、即ち、10g/L以上である成分を意味する。
本開示において、「油性成分」とは、25℃の水に対する溶解度が1質量%未満であり、例えば、化粧品の分野で一般に油性成分として使用される成分を意味する。
【0017】
本開示において、水性透明ゲル状組成物における「水性」とは、水を含み、水及び所望により含む水溶性の液体成分の総含有率が、組成物の全量に対して50質量%以上であり、且つ、25℃の水に対する溶解度が1質量%未満の液体成分の含有率が組成物の全量に対して5質量%未満である組成物をいう。ここでいう「水溶性の液体成分」とは、25℃の水に対する対象成分の溶解度が1質量%以上の液体成分をいう。
本開示において、水性透明ゲル状組成物における「ゲル状」とは、測定対象物100gを直径47mm×高さ90mmのガラス製の容器に入れて密封し、25℃で24時間保存した後、硬度計を用いて測定した硬度が1g~1000gを示す状態をいう。
【0018】
本開示において、水性透明ゲル状組成物における「透明」とは、例えば、化粧品、医薬部外品、及び医薬品に適宜設定される保存期間(又は保管期間)において、経時期間を問わず、室温(25℃)で保管した場合に、分光光度計及び光路長0.4cmのセルを用いて測定した、波長625nmにおける吸光度が0.04以下(好ましくは0.03以下、より好ましくは0.02以下)に維持されることをいう。
【0019】
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0020】
<水性透明ゲル状組成物>
本開示の水性透明ゲル状組成物は、一般式(1)で表される化合物、ベタイン化合物、無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤、及び水を含み、一般式(1)で表される化合物の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上3質量%以下であり、ベタイン化合物の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上10質量%以下であり、無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上10質量%以下である、水性透明ゲル状組成物である。
なお、一般式(1)で表される化合物は、以下、適宜「特定化合物」と称し、無機性値及び有機性値の比を表す値が1.3超え3.3以下の溶剤は、以下、適宜「特定溶剤」と称する。ここで、無機性値及び有機性値の比(Inorganic Organic Balance:IOB)を表す値は、以下、「IOB値」と称する。
【0021】
既述のように、ゲル化剤とベタイン化合物とを含む水性透明ゲル状組成物は、60℃を超える高温に晒された場合、分離してしまうことがあり、60℃を超える高温時の安定性に劣る。
本発明者らが、検討を行ったところ、一般式(1)で表される化合物(即ち、特定化合物)及びベタイン化合物に加え、特定のIOB値を有する溶剤(即ち、特定溶剤)を特定量で用いることで、特定化合物によるべたつきを抑えつつも、高温時の安定性が高まることを見出した。
特に、特定溶剤を水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上10質量%以下で配合させることで、透明性も損なわれず、高温時の安定性に優れた、水性透明ゲル状組成物が得られる。
【0022】
ここで、特許文献1~4には、一般式(1)で表される化合物(即ち、特定化合物)を用いた組成物の記載があるものの、特定化合物とベタイン化合物とに加え、特定のIOB値を有する溶剤(即ち、特定溶剤)を特定量用いることは記載されておらず、60℃を超える高温に晒された場合の安定性には劣るものと推測される。
【0023】
以下、本開示の水性透明ゲル状組成物の各成分について、詳細に説明する。
【0024】
〔一般式(1)で表される化合物〕
本開示の水性透明ゲル状組成物は、下記一般式(1)で表される化合物(即ち、特定化合物)を含む。
本開示の水性透明ゲル状組成物において、特定化合物は、ゲルの形成に寄与する。
【0025】
【化2】
【0026】
一般式(1)中、Rは、それぞれ独立に、R11-(O-R12)x-で表される基である。R11は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R12は、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を表す。xは、1~500の整数である。Rは、それぞれ独立に、ウレタン結合を有してもよい炭化水素基を表す。Rは、炭素数2~4のアルキレン基を表し、Rが複数ある場合、複数のRは、同一であっても又は異なっていてもよい。nは、1~500の整数であり、mは、1以上の整数である。
【0027】
特定化合物は、一般式(1)から明らかなように、主鎖にウレタン結合及び親水性のアルキレンオキシ基を有し、かつ、末端に疎水性の炭化水素基を有する、疎水性に変性されたウレタン系コポリマーである。
【0028】
一般式(1)において、Rは、R11-(O-R12)x-で表される基である。2つあるRは、同一であっても又は異なっていてもよい。
11は、炭化水素基を表す。
11で表される炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよく、環状であってもよく、好ましくは分岐を有する脂肪族炭化水素基である。
11で表される炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0029】
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、イソステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2-オクチルドデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-テトラデシルオクタデシル、モノメチル分岐-イソステアリル、デシルテトラデセス等の基が挙げられる。
【0030】
アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等の基が挙げられる。
【0031】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等の基が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等の基が挙げられる。
【0032】
11で表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは8~36であり、より好ましくは12~30である。
12は、炭素数2~4のアルキレン基を表し、炭素数2のアルキレン基(即ち、エチレン基)が好ましい。
xは、1~500の整数であり、好ましくは1~300の整数であり、より好ましくは1~100の整数であり、更に好ましくは5~50の整数であり、特に好ましくは10~40の整数である。
【0033】
一般式(1)において、Rは、それぞれ独立に、ウレタン結合を有してもよい炭化水素基を表す。
で表される炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよく、環状であってもよく、好ましくは直鎖状の脂肪族炭化水素基である。
で表される炭化水素基としては、例えば、既述のR11で表される炭化水素基として記載した、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の脂肪族炭化水素基から水素原子を1つ除いて得られる2価の基が挙げられる。
【0034】
で表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは2~8であり、更に好ましくは4~8であり、特に好ましくは6である。
【0035】
一般式(1)において、Rは、炭素数2~4のアルキレン基を表し、炭素数2のアルキレン基(即ち、エチレン基)が好ましい。
一般式(1)において、Rが複数ある場合、複数のRは、同一であっても又は異なっていてもよい。
【0036】
一般式(1)において、nは、1~500の整数であり、好ましくは1~400の整数であり、より好ましくは10~400の整数であり、更に好ましくは100~300の整数である。
一般式(1)において、mは、1以上の整数であり、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~5である。
【0037】
特定化合物は、例えば、下記の一般式(2)で表される化合物と、下記の一般式(3)で表される化合物と、下記の一般式(4)で表される化合物と、を80℃~90℃で1時間~3時間加熱し、反応させることにより得ることができる。
上記の反応に際しては、原料である、一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、及び一般式(4)で表される化合物を、それぞれの化合物につき、1種用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0038】
【化3】
【0039】
【化4】
【0040】
【化5】
【0041】
一般式(2)におけるRは、一般式(1)におけるRに対応する。
一般式(3)におけるRは、一般式(1)におけるRに対応する。
一般式(4)におけるR及びnは、一般式(1)におけるR及びnに対応する。
【0042】
一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、及び一般式(4)で表される化合物の仕込み比は、特に制限されず、例えば、目的とする特定化合物に応じて、適宜設定することができる。
【0043】
<一般式(1-1)で表される化合物>
一般式(1)で表される化合物としては、下記の一般式(1-1)で表される化合物(以下、適宜「特定化合物(1-1)」と称する。)が好ましい。
【0044】
【化6】
【0045】
一般式(1-1)中、n1は、1~500の整数であり、m1は、1以上の整数であり、x1は、1~500の整数である。
【0046】
一般式(1-1)において、n1は、1~500の整数であり、好ましくは1~400の整数であり、より好ましくは10~400の整数であり、更に好ましくは100~300の整数であり、特に好ましくは240である。
一般式(1-1)において、m1は、1以上の整数であり、好ましくは1~20の整数であり、より好ましくは1~10の整数であり、更に好ましくは1~5の整数であり、特に好ましくは1~3の整数である。
一般式(1-1)において、x1は、1~500の整数であり、好ましくは1~300の整数であり、より好ましくは1~100の整数であり、更に好ましくは5~50の整数であり、特に好ましくは10~40の整数であり、最も好ましくは20である。
【0047】
特定化合物(1-1)としては、特開平9-71766号公報、国際公開第2014/084174号等に記載の化合物が好ましい例として挙げられる。
特定化合物(1-1)としては、特に、ポリエチレングリコール(PEG)-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)コポリマーが好適である。
このようなコポリマーは、商品名「アデカノールGT-700」、「アデカノールGT-730」、「アデカノールGT-930」等として(株)ADEKAから市販されている。
【0048】
本開示の水性透明ゲル状組成物は、特定化合物を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0049】
本開示の水性透明ゲル状組成物における特定化合物の含有率は、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上3質量%以下である。
特定化合物の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上3質量%以下であると、水性透明ゲル状組成物として適当な硬度を実現することができる。
本開示の水性透明ゲル状組成物における特定化合物の含有率は、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、好ましくは1.0質量%以上2.5質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上2.0質量%以下である。
【0050】
〔ベタイン化合物〕
本開示の水性透明ゲル状組成物は、ベタイン化合物を含む。
本開示において「ベタイン化合物」とは、分子中にカチオン性の部位とアニオン性の部位を両方とも有する電解質化合物を表す。
本開示の水性透明ゲル状組成物において、ベタイン化合物は、特定化合物によるべたつきの抑制に寄与する。
【0051】
ベタイン化合物としては、特に制限はないが、トリメチルグリシン、カルニチン、プリリンベタイン、トリゴネリン、レシチン等が挙げられ、化粧料への使用実績等の観点から、トリメチルグリシン、カルニチン、プロリンベタイン等が好ましいものとして挙げられる。
中でも、ベタイン化合物としては、トリメチルグリシン及びカルニチンが好ましく、水性透明ゲル状組成物の塗布時のべたつきを抑制する観点と水性透明ゲル状組成物の塗布後の肌水分量の維持の観点から、トリメチルグリシンが特に好ましい。
【0052】
(トリメチルグリシン)
トリメチルグリシンは、以下に示す構造を有する化合物である。
トリメチルグリシンは、グリシンベタイン、無水ベタイン、又は、単にベタインと称されることがある。なお、トリメチルグリシンの化粧品成分表示名称は、ベタインである。
【0053】
【化7】
【0054】
トリメチルグリシンは、生体内に存在する有機化合物であり、例えば、テンサイ糖蜜からの抽出及び精製により得ることができる。
【0055】
トリメチルグリシンは、市販品としても入手可能であり、旭化成ケミカルズ(株)のアミコート(商品名)、恵比須化学工業(株)のBetafinBP(商品名)等が挙げられる。
【0056】
(カルニチン)
本開示において「カルニチン」とは、4-トリメチルアミノ-3-ヒドロキシ酪酸を意味する。
カルニチンには、立体異性体としてD体とL体とが存在し、これらの混合物としてDL体が知られている。
本開示の水性透明ゲル状組成物には、D体、L体、及びDL体のいずれも用いることができるが、L体又はDL体を用いることが好ましい。
【0057】
また、本開示におけるカルニチンには、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩等のカルニチンの塩、カルニチンアシルエステル等のカルニチンの誘導体なども包含される。
カルニチンとしては、公知の方法、例えば、化学合成法、微生物発酵法等の方法により得られるものを用いることができる。
【0058】
カルニチンは、市販品としても入手可能であり、ILS(株)のL-カルニチン(商品名)、金剛化学(株)の塩化レボカルニチン(商品名)等が挙げられる。
【0059】
本開示の水性透明ゲル状組成物は、ベタイン化合物を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0060】
本開示の水性透明ゲル状組成物におけるベタイン化合物の含有率は、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、1質量%以上10質量%以下であり、1質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上6質量%以下であることが更に好ましい。
ベタイン化合物の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上であると、水性透明ゲル状組成物の特定化合物によるべたつきを抑制しやすくなる。
また、ベタイン化合物の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して10質量%以下であると、経時安定性に優れた水性透明ゲル状組成物が得られやすい。
【0061】
〔IOB値が1.3超え3.3以下の溶剤〕
本開示の水性透明ゲル状組成物は、IOB値が1.3超え3.3以下の溶剤(即ち、特定溶剤)を含む。
本開示において「IOB値」とは、I/O値とも称され、有機概念図に基づき求められる無機性値(Inorganic Value:IV)及び有機性値(Organic Value:OV)の比を表す値として周知である。
本開示における溶剤のIOB値は、[「有機化合物の予測と有機概念図」、藤田(化学の領域11-10)、1957年、p.719~725、及び、「有機概念図による乳化処方設計」日本エマルジョン株式会社、矢口、1985年、p.98]に従って、下記式(I)により求められる。
式(I) IOB値=無機性値(IV)/有機性値(OV)
【0062】
特定溶剤は、IOB値が1.8以上3.3以下の溶剤であることが好ましい。
また、特定溶剤としては、アルコール系溶剤であることが好ましい。
IOB値が1.8以上3.3以下の溶剤として、具体的には、ジプロピレングリコール(IOB値:1.8)、プロピレングリコール(IOB値:3.3)、ペンチレングリコール(IOB値:2.0)、ブチレングリコール(IOB値:2.5)、エタノール(IOB値:2.5)、及びプロピレングリコール(IOB値:3.3)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
中でも、化粧料への使用実績の観点、及び保湿性の付与の観点から、ブチレングリコールが特に好ましい。
【0063】
本開示の水性透明ゲル状組成物は、特定溶剤を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0064】
本開示の水性透明ゲル状組成物における特定溶剤の含有率は、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、1質量%以上10質量%以下であり、1質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、4質量%以上8質量%以下であることが更に好ましい。
特定溶剤の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1質量%以上であると、高温時の安定性に優れる水性透明ゲル状組成物が得られやすくなる。
特定溶剤の含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して10質量%以下であると、透明性に優れる水性透明ゲル状組成物が得られやすくなる。
【0065】
〔水〕
本開示の水性透明ゲル状組成物は、水を含む。
水としては、特に制限はなく、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水(Milli-Q水等)などを使用することができる。なお、Milli-Q水とは、メルク(株)メルクミリポアのMilli-Q水製造装置により得られる超純水である。
水性透明ゲル状組成物に含まれる水としては、不純物が少ないという観点から、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、又は超純水が好ましい。
【0066】
本開示の水性透明ゲル状組成物における水の含有率は、特に制限されず、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、50質量%以上95質量%以下であることが好ましく、55質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。
【0067】
本開示の水性透明ゲル状組成物において、高温時での安定性の観点から、水に対する特定溶剤の割合が1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であることが更に好ましい。
【0068】
〔他の成分〕
本開示の水性透明ゲル状組成物は、効果を損なわない範囲において、必要に応じて、前述した成分以外の成分(以下、「他の成分」と称する。)を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えば、美白剤、セラミド、脂肪酸、アスタキサンチン、酸化防止剤、多価アルコール、及びその他の添加成分が挙げられる。
【0069】
(美白剤)
本開示の水性透明ゲル状組成物は、美白剤を含んでいてもよい。
美白剤は、美白効果(即ち、メラニンの生成を抑制し、シミ、そばかす等を防ぐ効果)を発現しうる化合物である。
美白剤としては、特に制限はないが、例えば、アルブチン(ハイドロキノンβ-D-グルコシド)、L-アスコルビン酸2-グルコシド、L-アスコルビン酸-2-リン酸マグネシウム、L-アスコルビン酸-2-リン酸三ナトリウム、L-アスコルビン酸、3-O-エチルアスコルビン酸、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、コウジ酸、エラグ酸、4-n-ブチルレゾルシノール、5,5’-ジプロピルビフェニル-2,2’-ジオール、トラネキサム酸セチル塩酸塩、trans-4-(アミノメチル)シクロヘキサンカルボン酸、ニコチン酸アミド、及び4-メトキシサリチル酸カリウム塩等が挙げられる。
美白剤としては、例えば、医薬部外品(例えば薬用化粧品)に配合される、美白有効成分として厚生労働省の認可を受けている美白剤が好適に用いることができる。
これらの中でも、美白剤としては、硬度の経時安定性等の観点から、非電解質であることが好ましく、アルブチン、4-n-ブチルレゾルシノール、及びニコチン酸アミドからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、特にアルブチンが好ましい。
【0070】
本開示の水性透明ゲル状組成物は、美白剤を含む場合、美白剤を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0071】
本開示の水性透明ゲル状組成物における美白剤(好ましくは非電解質である美白剤)の含有率は、特に制限されず、美白剤の種類によって、適宜設定することができる。
例えば、美白効果の観点からは、本開示の水性透明ゲル状組成物における美白剤の含有率は、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、0.05質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることが更に好ましい。
また、例えば、水性透明ゲル状組成物の透明性及びその経時安定性の観点からは、本開示の水性透明ゲル状組成物における美白剤の含有率は、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、10.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、4.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0072】
ここで、本開示の水性透明ゲル状組成物において、美白剤としてアルブチンを用いる場合、アルブチンの含有率は、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以上8.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以上5.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0073】
なお、医薬部外品である化粧料(例えば薬用美白化粧品)においては、かかる化粧料の全成分表示において「有効成分」として表記される化合物が、美白効果を発現するために配合された美白剤に該当する。
そのため、医薬部外品である化粧料において、ある化合物が、美白効果を発現するために配合された美白剤であるかどうかの判断(即ち、他の効果又は機能の発現のために配合された化合物であるかどうかの判断)は、全成分表示にて「有効成分」として表記されるか否かにて確認することができる。
【0074】
(セラミド)
本開示の水性透明ゲル状組成物は、セラミドを含んでいてもよい。
セラミドは、天然型セラミドであることが好ましい。
本開示において「天然型セラミド」とは、ヒトの皮膚の角質層に存在するセラミドと同じ構造を有するセラミド(所謂、ヒト型セラミド)のことを意味する。
【0075】
天然型と称される一般的な構造を有するセラミドは、天然物(抽出物)であってもよく、微生物発酵法で得られたセラミドであってもよく、動物由来のセラミドであってもよく、合成物であってもよい。
セラミドは、天然型(D(-)体)の光学活性体であってもよく、非天然型(L(+)体)の光学活性体であってもよく、天然型の光学活性体と非天然型の光学活性体との混合物であってもよい。
セラミドの相対立体配置は、天然型の立体配置でもよく、非天然型の立体配置でもよく、天然型と非天然型との混合物による立体配置でもよい。
【0076】
天然型セラミドの具体例としては、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド7、セラミド8、セラミド9等が挙げられる。
【0077】
天然型セラミドは、市販品としても入手可能である。
天然型セラミドの市販品の例としては、Ceramide I、Ceramide EOP27、Ceramide EOS27、Ceramide III、Ceramide IIIA、Ceramide IIIB、Ceramide IIIC、Ceramide VI(以上、いずれも商品名、Evonik社)、Ceramide TIC-001(商品名、高砂香料工業(株))、CERAMIDE II(商品名、Quest International社)、DS-Ceramide VI、DS-CLA-Phytoceramide、C6-Phytoceramide、DS-ceramide Y3S(以上、いずれも商品名、DOOSAN社)、CERAMIDE 2(商品名、セダーマ社)等が挙げられる。
【0078】
本開示の水性透明ゲル状組成物は、セラミドを含む場合、セラミドを、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0079】
本開示の水性透明ゲル状組成物におけるセラミドの含有率は、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、0.0001質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.0001質量%以上0.1質量%以下であることがより好ましく、0.0001質量%以上0.01質量%以下であることが更に好ましい。
セラミドの含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して0.0001質量%以上であると、水性透明ゲル状組成物がセラミドを含むことで得られる効果(例えば、保湿効果)を奏し得るため好ましい。
また、セラミドの含有率が、水性透明ゲル状組成物の全量に対して1.0質量%以下であると、透明性に優れた水性透明ゲル状組成物が得られるため好ましい。
【0080】
〔脂肪酸〕
本開示の水性透明ゲル状組成物は、脂肪酸を含んでいてもよい。
脂肪酸の中でも、特に、融点が25℃以下である脂肪酸(以下、特定脂肪酸と称する)が好ましい。
特定脂肪酸は、本開示の水性透明ゲル状組成物において、透明性及びその経時安定性に寄与する。また、特定脂肪酸は、水性透明ゲル状組成物の硬度安定性にも寄与する。
なお、「融点が25℃以下である脂肪酸」とは、25℃で液体である脂肪酸を意味する。
【0081】
特定脂肪酸としては、融点が25℃以下である脂肪酸であれば、特に制限はない。
特定脂肪酸は、天然物由来であってもよく、合成品であってもよい。
特定脂肪酸の具体例としては、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。
これらの中でも、特定脂肪酸としては、人体への適用のしやすさの観点から、イソステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪酸が好ましく、水性透明ゲル状組成物の透明性、透明性の経時安定性、及び硬度の経時安定性の観点から、イソステアリン酸及びオレイン酸から選ばれる少なくとも1種の脂肪酸がより好ましく、イソステアリン酸が更に好ましい。
【0082】
本開示の水性透明ゲル状組成物は、脂肪酸(好ましくは特定脂肪酸)を含む場合、脂肪酸を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0083】
本開示の水性透明ゲル状組成物における脂肪酸(好ましくは特定脂肪酸)の含有率は、透明性及びその経時安定性、硬度の経時安定性、及び肌への刺激性の観点から、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、0.01質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であることが更に好ましい。
【0084】
(アスタキサンチン)
本開示の水性透明ゲル状組成物は、アスタキサンチンを含んでいてもよい。
アスタキサンチンは、美白効果、抗酸化効果等に優れるため、本開示の水性透明ゲル状組成物では、アスタキサンチンを更に含むことで、これらの効果が期待できる。
アスタキサンチンは、アスタキサンチン及びその誘導体(例えば、アスタキサンチンのエステル)の少なくとも一方を包含する。本開示では、特に断らない限り、アスタキサンチン及びその誘導体を総称して「アスタキサンチン」という。
【0085】
アスタキサンチンとしては、植物類、藻類、甲殻類、バクテリア等の天然物に由来するアスタキサンチンの他、常法に従って得られるアスタキサンチンの合成品を用いることもできる。
アスタキサンチンは、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌、オキアミ等の培養物から抽出することができる。
本開示の水性透明ゲル状組成物において、アスタキサンチンは、アスタキサンチンを含有する天然物又はその培養物からの分離物又は抽出物として得られるアスタキサンチン含有油として含まれていてもよい。
アスタキサンチン又はアスタキサンチン含有油としては、品質及び生産性の観点から、ヘマトコッカス藻からの抽出物(以下、「ヘマトコッカス藻抽出物」と称する。)、又はオキアミからの抽出物(以下、「オキアミ抽出物」と称する。)に由来するアスタキサンチンが好ましく、オキアミ抽出物に由来するアスタキサンチンが特に好ましい。
オキアミ抽出物に由来するアスタキサンチン(所謂、オキアミ由来のアスタキサンチン)は、例えば、化粧品だけでなく、医薬部外品にも使用することができる。
【0086】
アスタキサンチンとしては、市販品を使用することができる。
ヘマトコッカス藻抽出物の市販品の例としては、富士フイルム(株)のASTOTS(登録商標)-S、ASTOTS(登録商標)-ST、ASTOTS(登録商標)-2.5 O、ASTOTS(登録商標)-5 O、ASTOTS(登録商標)-10 O等、富士化学工業(株)のアスタリール(登録商標)オイル50F、アスタリール(登録商標)オイル5F等、東洋酵素化学(株)のBioAstin(登録商標)SCE7などが挙げられる。
オキアミ抽出物の市販品の例としては、(株)マリン大王のAstax-ST(商品名)等が挙げられる。
【0087】
アスタキサンチン含有油中のアスタキサンチンの含有率は、例えば、水性透明ゲル状組成物を製造する際の取り扱いの観点から、アスタキサンチン含有油の全量に対して、0.001質量%~50質量%であることが好ましく、0.01質量%~25質量%であることがより好ましい。
【0088】
本開示の水性透明ゲル状組成物におけるアスタキサンチンの含有率は、例えば、一重項酸素の消去能(所謂、抗酸化効果)の発現、良好な外観(例えば、透明度)等の観点から、適宜設定することができる。
本開示の水性透明ゲル状組成物におけるアスタキサンチンの含有率は、例えば、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、0.000001質量%~0.01質量%(0.01ppm~100ppm)であることが好ましく、0.000005質量%~0.0075質量%(0.05ppm~75ppm)であることがより好ましく、0.0001質量%~0.005質量%(1ppm~50ppm)であることが更に好ましい。
【0089】
本開示の水性透明ゲル状組成物におけるアスタキサンチンの含有形態は、特に制限されないが、例えば、アスタキサンチンを高濃度で配合することができる点、アスタキサンチンを水性透明ゲル状組成物中で安定に含有させることができる点、及び、水性透明ゲル状組成物の透明度が得易い点から、アスタキサンチンは、水相に分散する乳化粒子に含まれることが好ましい。
特に、製造容易性等の観点から、本開示の水性透明ゲル状組成物は、アスタキサンチンを、アスタキサンチンをはじめとする油性成分が水相に分散した乳化物(アスタキサンチン乳化物)の形態で含むことが好ましい。
アスタキサンチン乳化物に含まれる成分等の詳細については、特開2017-088604号公報の段落[0037]~段落[0061]を参照することができる。また、アスタキサンチン乳化物の調製方法の詳細については、特開2017-088604号公報の段落[0089]~段落[0093]を参照することができる。
アスタキサンチン乳化物の調製方法の具体例は、後述の実施例に示すとおりである。
【0090】
(酸化防止剤)
本開示の水性透明ゲル状組成物は、酸化防止剤を含むことが好ましい。
酸化防止剤としては、特に制限はなく、例えば、化粧品の分野にて通常用いられる酸化防止剤の中から、適宜、選択することができる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物(フェノール系酸化防止剤ともいう)、アスコルビン酸類等を挙げることができる。
【0091】
フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、カテキン、アントシアニン、フラボン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、ルチン、グルコシルルチン等のフラボノイド類;フェルラ酸、クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル等のフェノール酸類等が挙げられる。
【0092】
アスコルビン酸類としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、及びその塩が挙げられる。
ここで、「アスコルビン酸誘導体」とは、pH、熱、光、酸化、酵素等に起因する分解によってアスコルビン酸が生成する化合物を指す。
【0093】
アスコルビン酸類として具体的には、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸Na、L-アスコルビン酸K、L-アスコルビン酸Ca、L-アスコルビン酸リン酸エステル、L-アスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩、L-アスコルビン酸リン酸のナトリウム塩、L-アスコルビン酸硫酸エステル、L-アスコルビン酸硫酸エステル2ナトリウム塩、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、L-アスコルビン酸2-グルコシド、L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル、テトライソパルミチン酸L-アスコルビル等が挙げられる。
【0094】
本開示の水性透明ゲル状組成物は、酸化防止剤を含む場合、酸化防止剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0095】
本開示の水性透明ゲル状組成物が抗酸化剤を含む場合、水性透明ゲル状組成物における酸化防止剤の含有率は、例えば、水性透明ゲル状組成物の透明性の観点から、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、0.01質量%~2.0質量%であることが好ましく、0.1質量%~1.0質量%であることがより好ましい。
【0096】
(多価アルコール)
本開示の水性透明ゲル状組成物は、特定溶剤以外の多価アルコール(即ち、IOB値が1.3以下又は3.3超の多価アルコール)を含んでいてもよい。
本開示の水性透明ゲル状組成物では、多価アルコールを含むことで、保湿性の向上が期待できる。
多価アルコールとしては、グリセリン、エチルへキシルグリセリン、エチレングリコール;還元水あめ、ショ糖、エリスリトール、キシリトール、グルコース、ガラクトース、ソルビトール、マルトトリオース、トレハロース等の多糖類などが挙げられる。
【0097】
本開示の水性透明ゲル状組成物は、多価アルコールを含む場合、多価アルコールを、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0098】
本開示の水性透明ゲル状組成物が多価アルコールを含む場合、水性透明ゲル状組成物における多価アルコールの含有率は、水性透明ゲル状組成物の全量に対して、1質量%~10質量%であることが好ましく、2質量%~8質量%であることがより好ましく、4質量%~8質量%であることが更に好ましい。
【0099】
(その他の添加成分)
本開示の水性透明ゲル状組成物は、化粧品、医薬部外品等において通常用いられる添加成分を適宜、含んでいてもよい。
添加成分としては、例えば、化粧料に使用した際に有用な美容効果(例えば、保湿効果、整肌効果等)を示す機能性成分が挙げられる。
その他、添加成分としては、例えば、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン等の防腐剤、着色剤、増粘剤、水酸化ナトリウム、塩酸等のpH調整剤、緩衝剤、香料、抗菌剤、紫外線吸収剤、活性酸素除去剤、抗微生物剤、抗炎症剤、ミネラルなどが挙げられる。
【0100】
〔水性透明ゲル状組成物の用途〕
本開示の水性透明ゲル状組成物の用途としては、例えば、化粧品(例えば、化粧水、美容液等のスキンケア化粧料)、医薬部外品、及び医薬品の用途が挙げられる。但し、本開示の水性透明ゲル状組成物の用途は、これらに制限されない。
本開示の水性透明ゲル状組成物は、高級感を感じられる、見た目が美しいといった外観上の特長を有し、べたつきが抑えられ、且つ、高温時の安定性に優れるため、化粧品、即ち、水性透明ゲル状化粧料であることが特に好ましい。
【0101】
[水性透明ゲル状組成物の製造方法]
本開示の水性透明ゲル状組成物の製造方法は、特に制限されない。
本開示の水性透明ゲル状組成物は、特定量の特定化合物と、特定量のベタイン化合物と、特定量の特定溶剤と、水と、必要に応じて、他の成分とを用いて、公知の水性透明ゲル状組成物の製造方法に従って、得ることができる。
本開示の水性透明ゲル状組成物の好適な製造方法の一つとしては、特定量の特定化合物と、特定量のベタイン化合物と、特定量の特定溶剤と、水と、を混合すること(以下、適宜「混合工程」と称する。)を含む製造方法が挙げられる。
以下、本開示の水性透明ゲル状組成物の好適な製造方法の一例について説明するが、既述の水性透明ゲル状組成物と共通する事項、例えば、水性透明ゲル状組成物の成分及びその量については、説明を省略する。
【0102】
〔混合工程〕
混合工程では、特定量の特定化合物と、特定量のベタイン化合物と、特定量の特定溶剤と、水と、を混合する。
これらの成分を混合する方法は、特に限定されない。
例えば、特定化合物と、ベタイン化合物と、特定溶剤と、水と、を一括して混合してもよく、水を撹拌しながら、その水中に、特定化合物と、ベタイン化合物と、特定溶剤と、を添加し、混合してもよい。
【0103】
混合手段としては、特に限定されず、市販のいずれの混合手段を用いてもよい。
混合手段としては、スターラー、パドルミキサー、インペラーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。これらの中でも、混合手段としては、ホモミキサー及びディスパーミキサーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0104】
各成分を混合する際の温度は、特に限定されず、適宜設定することができ、通常、4℃~80℃に設定することが好ましく、60℃~80℃に設定することがより好ましい。
各成分を混合する際の撹拌条件は、各成分を十分に混合することができれば、特に限定されず、混合手段に応じて、適宜設定することができる。例えば、混合手段として、ホモミキサーを用いる場合には、通常、500rpm(revolutions per minute;以下、同じ。)~8000rpmで5分間~60分間、各成分を撹拌することができる。
【0105】
本開示の水性透明ゲル状組成物の製造方法は、必要に応じて、混合工程以外の工程(所謂、他の工程)を含んでもよい。
他の工程としては、例えば、脱泡工程、加熱殺菌工程、冷却工程、取り出し工程等が挙げられる。脱泡工程、加熱殺菌工程、冷却工程、取り出し工程等は、当業界で公知の方法を適用すればよい。
【実施例
【0106】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。特に断らない限り、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」である。
【0107】
[水性組成物の調製]
〔実施例1〕
特定化合物として、PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI コポリマー(商品名:アデカノールGT-700、ADEKA社)を1.71質量部と、美白剤として、アルブチンを3.00質量部と、特定脂肪酸として、イソステアリン酸を0.25質量部と、グリセリンを6.00質量部と、トリメチルグリシン〔商品名:アミノコート(登録商標)、旭化成ファインケム(株)〕を4.00質量部と、特定溶剤としてジプロピレングリコールを6.00質量部と、グリセリンを6.00質量部と、フェノキシエタノールを0.50質量部と、エチルヘキシルグリセリン(商品名:アデカノールGE-RF、ADEKA社)を0.20質量部と、アスコルビン酸硫酸2Naを0.20質量部と、グルコシルルチンを0.10質量部と、フェルラ酸を0.10質量部と、純水を50質量部と、を混合し、そこへ更に、適量の1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH7に調整した。
得られた混合物を60℃に加温し、ホモジナイザー(機種名:ホモミキサーHM-310、アズワン(株))を用いて、2000rpmで5分間撹拌した後、40℃に冷却した。
次いで、冷却した混合物に、下記の方法により予め調製したアスタキサンチン含有乳化組成物を0.26質量部と、下記の方法により予め調製したセラミド含有分散組成物を6.00質量部と、を添加し、全量が100質量部となるように純水を更に添加した後、ホモジナイザー(機種名:ホモミキサーHM-310、アズワン(株))を用いて、2000rpmで20分間撹拌した。次いで、撹拌した混合物に対し、真空脱泡を行い、実施例1の水性組成物を得た。
【0108】
<セラミド含有分散組成物の調製>
下記の成分を、室温にて1時間撹拌して、油相組成物を得た。
-油相組成物の組成-
・セラミド3 : 4.8g
・セラミド6 : 5.9g
・オレイン酸 : 1.1g
・エタノール : 412.0g
【0109】
下記の成分を、室温にて1時間撹拌して、水相組成物を得た。
-水相組成物の組成-
・ミリスチン酸ポリグリセリル-10 : 10.7g
・グリセリン : 53.4g
・1,3-ブチレングリコール : 53.4g
・4質量%水酸化ナトリウム溶液 : 3.2g
・純水 : 865.3g
【0110】
得られた油相組成物(油相)と水相組成物(水相)とを、1:7の比率(質量比)で、衝突型であるKM型マイクロミキサー100/100を用いてミクロ混合することにより、分散物を得た。なお、マイクロミキサーの使用条件は、下記の通りである。
【0111】
《マイクロミキサーの使用条件》
-マイクロチャンネル-
・油相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/70μm/100μm/10mm
・水相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/490μm/100μm/10mm
-流量-
外環に水相を21.0ml/min.の流量で導入し、かつ、内環に油相を3.0ml/min.の流量で導入して、ミクロ混合する。
【0112】
得られた分散物を、遠心式薄膜真空蒸発装置(機種名:エバポール CEP-lab、(株)大川原製作所)を使用し、エタノール濃度が0.1質量%以下になるまで、脱溶媒し、総セラミド濃度が1.0質量%になるように濃縮、調整し、セラミド含有分散組成物を得た。
【0113】
<アスタキサンチン含有乳化組成物の調製>
下記の成分を、70℃で1時間加熱し、溶解させることにより、水相組成物を得た。
-水性組成物の組成-
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16) : 3.1g
・モノオレイン酸デカグリセリル(HLB=12) : 6.4g
・グリセリン : 42.0g
・純水 : 27.9g
【0114】
下記の成分を、70℃で1時間加熱し、溶解させることにより、油相組成物を得た。
-油相組成物の組成-
・オキアミ抽出物 : 14.3g
(商品名:Astax-ST、アスタキサンチン:5質量%含有、(株)マリン大王)
・ミックストコフェロール : 4.4g
(商品名:理研Eオイル800、理研ビタミン(株))
・レシチン : 1.9g
(商品名:SLPペースト、辻製油(株))
【0115】
得られた水相組成物を70℃に保ったまま、超音波ホモジナイザー(型式:HP93、(株)エスエムテー)を用いて10000rpmで撹拌し、撹拌している水相組成物の中に、油相組成物を添加して、粗乳化物を得た。
次いで、得られた粗乳化物を約40℃まで冷却し、超高圧乳化装置(機種名:スターバースト、(株)スギノマシン)を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。その後、平均孔径1μmのミクロフィルターを用いてろ過を行い、アスタキサンチン含有乳化組成物(アスタキサンチン含有率:0.715質量%)を得た。
【0116】
得られたアスタキサンチン含有乳化組成物を、1質量%の濃度となるようにミリQ水にて希釈し、粒径アナライザー(型式:FPAR-1000、大塚電子(株))を用いて、分散粒子の粒径を測定したところ、58nm(メジアン径(d50))であった。
【0117】
〔実施例2~実施例15〕
実施例1の水性組成物において、下記表1に記載の組成になるように成分及びその配合量を適宜変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~実施例18の水性組成物を得た。
【0118】
〔比較例1~比較例8〕
実施例1の水性組成物において、下記表2に記載の組成になるように成分及びその配合量を適宜変更したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1~比較例9の水性組成物を得た。
【0119】
[評価及び測定]
実施例1~実施例15及び比較例1~比較例8の各水性組成物を用いて、以下の評価及び測定を行った。
結果については、実施例1~実施例14及び比較例1~比較例8の各水性組成物の組成とともに、表1及び表2に示す。
なお、表1及び表2中の各成分の量の単位は「質量%」であり、水の量にて各水性組成物の全量が100質量%となるようしている。また、表1及び表2中、組成の欄に記載の「-」は、該当する成分を配合していないことを意味する。
【0120】
1.透明性
調製直後の各水性組成物100gを、それぞれ直径47mm×高さ90mmのガラス容器に入れ、キャップをした状態で、25℃で24時間保存した。この25℃で24時間保存した後の各水性組成物を、光路長0.4cmのポリスチレン(PS)製ディスポセルに入れ、セルごと、小型冷却遠心機(型式:CF5RX、日立工機(株)、スイングローター:T4SS31)用いて、4000rpmで2分間遠心分離を行い、脱泡処理した。
脱泡処理後の各水性組成物について、波長625nmの光に対する吸光度を、分光光度計(型式:U-3310、(株)日立製作所)を用いて測定した。得られた吸光度の測定値を、水性組成物の透明性を評価するための指標とした。評価基準を以下に示す。
吸光度の測定値が小さいほど、水性組成物の透明性が優れることを示す。評価結果が「A」であれば、「透明性」の許容内と判断した。
【0121】
~評価基準~
A:吸光度の測定値が0.04以下である。
B:吸光度の測定値が0.04を超える。
【0122】
2.硬度の測定
調製直後の各水性組成物100gを、それぞれ直径47mm×高さ90mmのガラス容器に入れ、キャップをした状態で、25℃で24時間保存した。この25℃で24時間保存した後の各水性組成物の硬度を、レオメーター(機種名:FUDOH REHOMETER、(株)レオテック)を用いて測定した。具体的には、各水性組成物に対して、測定温度25℃の条件下、60mm/分の速度で、直径20mmのアダプターの先端を2kgの荷重で20mm挿入したときに測定される応力のピーク値を、硬度の測定値(単位:g)とした。測定条件の詳細を下記に示す。
【0123】
《測定条件》
アダプター:No.3(直径:20mm)
荷重:2kg
速度:60mm/分
測定温度:25℃
無荷重基底:0.1%
サンプリング間隔:0.02秒
X軸テーブル移動距離:20mm(強制終了:20mm)
【0124】
その結果、実施例1~実施例15及び比較例1~比較例8の各水性組成物は、いずれも硬度の測定値が10g~30gの範囲内であり、本開示でいう「ゲル状」であることが確認された。
【0125】
3.高温安定性の評価
調製直後の各水性組成物100gを、それぞれ直径47mm×高さ90mmのガラス容器に入れ、キャップをした状態で、25℃で24時間保存した。この25℃で24時間保存した後の各水性組成物を、60℃の恒温槽に入れ、24時間保存し、60℃での水性組成物の状態を目視にて確認し、水性組成物の分離の有無を確認した。
続いて、60℃で水性組成物の分離が確認されなかったものに対し、+5℃(65℃)の恒温槽に入れ24時間保存し、目視にて分離の有無を確認した。その後も、水性組成物に分離が確認されなかったものに対し、+5℃ずつ同じ作業を繰り返し行い、水性組成物が分離する温度を求めた。
水性組成物が分離する温度が高い方が、高温安定性に優れると評価した。
【0126】
4.べたつきの評価
調製直後の各水性組成物100gを、それぞれ直径47mm×高さ90mmのガラス容器に入れ、キャップをした状態で、25℃で24時間保存した。この25℃で24時間保存した後の各水性組成物を、化粧料評価の専門パネラー10人に使用してもらい、べたつきの評価を行った。
具体的には、専門パネラーには、顔全面に0.5gの化粧料を、手のひらを使って塗布してもらい、塗布後の顔の頬を手で触ったときの感触で評価した。評価結果が「A」及び「B」であれば、「べたつき」の許容内と判断した。
A:10人中8人~10人が、べたつきはないと評価した。
B:10人中5人~7人が、べたつきはないと評価した。
C:10人中、べたつきがないと評価したのは4人以下であった。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
表1及び表2中、「AA2G」は、L-アスコルビン酸2-グルコシドをいう。
【0130】
表1に示すように、特定量の特定化合物と、特定量のベタイン化合物と、特定量の特定溶剤と、水とを含む、実施例1~実施例15の水性組成物は、いずれも透明性が良好であり、「ゲル状」であることが確認できたことから、水性透明ゲル状組成物であった。
また、実施例1~実施例15の水性組成物(即ち、水性透明ゲル状組成物)は、べたつきがなく、60℃にて分離が見られず、70℃以上の高温にて分離が見られることから、高温時の安定性にも優れていることが分かった。