(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】無電解めっき下地膜形成用組成物
(51)【国際特許分類】
C23C 18/20 20060101AFI20220921BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220921BHJP
C09D 175/06 20060101ALI20220921BHJP
C09D 175/08 20060101ALI20220921BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20220921BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20220921BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20220921BHJP
C08L 75/06 20060101ALI20220921BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20220921BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20220921BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20220921BHJP
C08L 79/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C23C18/20 Z
C09D5/00 D
C09D175/06
C09D175/08
C09D5/24
C09D163/00
C08L101/12
C08L75/06
C08L75/08
C08L75/04
C08L63/00
C08L79/00 A
(21)【出願番号】P 2019529719
(86)(22)【出願日】2018-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2018025933
(87)【国際公開番号】W WO2019013179
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2021-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2017135727
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蜂屋 聡
(72)【発明者】
【氏名】深津 文起
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-034317(JP,A)
【文献】特開2002-026014(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00457180(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-20/08
C09D 1/00-10/00
C09D 101/00-201/10
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)導電性ポリマーと、
(B)ポリエステルポリオール樹脂及びポリエーテルポリオール樹脂からなる群から選択される1以上の樹脂と、
(C)ポリイソシアネート化合物と、
を含む無電解めっき下地膜形成用組成物
であって、
前記無電解めっき下地膜形成用組成物中の不揮発性成分に対する前記(B)成分と前記(C)成分の合計の割合が8~90質量%である、無電解めっき下地膜形成用組成物。
【請求項2】
前記(B)成分中の水酸基に対する前記(C)成分中のイソシアネート基のモル比が0.1~10.0である請求項
1に記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【請求項3】
前記(C)成分がブロックポリイソシアネート化合物である請求項1
又は2に記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【請求項4】
さらにウレタン樹脂を含む請求項1~
3のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【請求項5】
前記(A)成分、前記(C)成分及び前記ウレタン樹脂の合計に対する前記(C)成分の割合が5質量%超である請求項
4に記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【請求項6】
さらにエポキシ樹脂を含む請求項1~
5のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【請求項7】
前記(A)成分が置換又は無置換のポリアニリンである請求項1~
6のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【請求項8】
前記(A)成分が、置換又は無置換のポリアニリンがドーパントによってドープされたポリアニリン複合体である請求項1~
7のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【請求項9】
前記ドーパントが下記式(III)で表されるスルホコハク酸誘導体から生じる有機酸イオンである請求項
8に記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【化6】
(式(III)中、Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基である。m’は、Mの価数である。R
13及びR
14は、それぞれ独立に炭化水素基又は-(R
15O)
r-R
16基である。R
15は、それぞれ独立に炭化水素基又はシリレン基であり、R
16は水素原子、炭化水素基又はR
17
3Si-基であり、rは1以上の整数である。R
17は、それぞれ独立に炭化水素基である。)
【請求項10】
前記スルホコハク酸誘導体がジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムである請求項
9に記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【請求項11】
さらに溶剤を含む請求項1~
10のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物から得られる無電解めっき下地膜。
【請求項13】
基材と、
請求項
12に記載の無電解めっき下地膜と、
金属を含む無電解めっき層と、を含み、
前記無電解めっき層と前記無電解めっき下地膜が接している
めっき積層体。
【請求項14】
前記金属が銅である請求項
13に記載のめっき積層体。
【請求項15】
前記基材が樹脂から構成される請求項
13又は14に記載のめっき積層体。
【請求項16】
前記基材がポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、又はポリフェニレンサルファイド樹脂から構成される請求項
15に記載のめっき積層体。
【請求項17】
請求項1~
11のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物を用いる無電解めっき下地膜の製造方法。
【請求項18】
(i)基材上に、請求項1~
11のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物を用いて無電解めっき下地膜を形成する工程、及び
(ii)前記無電解めっき下地膜上に、金属を含む無電解めっき層を形成する工程を含む
めっき積層体の製造方法。
【請求項19】
前記工程(ii)において、前記無電解めっき下地膜にパラジウムを担持させ、その後、パラジウムを担持させた前記無電解めっき下地膜を無電解めっき液に接触させることにより前記無電解めっき層を形成する請求項
18に記載のめっき積層体の製造方法。
【請求項20】
前記無電解めっき下地膜へのパラジウムの担持を、前記無電解めっき下地膜に塩化パラジウム溶液を接触させることにより行う請求項
19に記載のめっき積層体の製造方法。
【請求項21】
前記無電解めっき液がCu、Ni、Au、Pd、Ag、Sn、Co及びPtからなる群から選択される1以上の金属を含む請求項
19又は20に記載のめっき積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき下地膜形成用組成物、無電解めっき下地膜、めっき積層体、無電解めっき下地膜の製造方法、及びめっき積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ポリマーは、電解コンデンサや電子機器のバックアップ用電池、携帯電話やノート型パソコンに使用されているリチウムイオン電池の電極等に使用されている。例えば導電性ポリマーの一種であるポリアニリンは、その電気的な特性に加え、安価なアニリンから比較的簡便に合成でき、かつ導電性を示す状態で酸素等に対して優れた安定性を示すという利点及び特性を有する。
また、導電性ポリマーには還元力を有するものも多く、この特性を活かした無電解めっきの下地膜としても注目されている。
【0003】
無電解めっきは絶縁性基材上に導電層を形成する優れた技術であるが、従来の技術は基材を限定するものであった。基材を選ばない技術もあるが、めっき層の形成性、密着性及び耐熱性等の特性を十分に満足するものではなかった。
例えば、特許文献1及び2には優れた成形加工性を有する無電解めっき下地膜形成用組成物が開示されているが、成形性に優れる分、耐熱性を必要とする用途には十分ではない場合がある。特許文献3には、無電解めっき膜を形成するための導電性ポリマー微粒子とバインダーを硬化させた塗膜層が開示されているが、導電性ポリマーが微粒子であるため塗膜層の平滑性やパターンの精細度、即ちめっき層の形成性に難点がある。また、特許文献4にはパラジウムコロイド(触媒)を含有する無電解めっき用塗料組成物が開示されているが、触媒が下地膜表面だけではなく内部にも存在してしまうため、十分なめっき層を形成するには高価な触媒を多量に配合する必要があり、高コストとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/019596号
【文献】特開2015-034317号公報
【文献】特開2010-018842号公報
【文献】特開2013-001955号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、めっき層の形成性、基材及びめっき層との密着性、及び耐熱性に優れる無電解めっき下地膜を形成可能な無電解めっき下地膜形成用組成物を提供することである。
【0006】
本発明者らが鋭意検討した結果、導電性ポリマーに特定の成分を組み合わせることで、上述した特性を満足する無電解めっき下地膜形成用組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明によれば、以下の無電解めっき下地膜形成用組成物等が提供される。
1.(A)導電性ポリマーと、
(B)ポリエステルポリオール樹脂及びポリエーテルポリオール樹脂からなる群から選択される1以上の樹脂と、
(C)ポリイソシアネート化合物と、
を含む無電解めっき下地膜形成用組成物。
2.前記無電解めっき下地膜形成用組成物中の不揮発性成分に対する前記(B)成分と前記(C)成分の合計の割合が8~90質量%である1に記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
3.前記(B)成分中の水酸基に対する前記(C)成分中のイソシアネート基のモル比が0.1~10.0である1又は2に記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
4.前記(C)成分がブロックポリイソシアネート化合物である1~3のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
5.さらにウレタン樹脂を含む1~4のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
6.前記(A)成分、前記(C)成分及び前記ウレタン樹脂の合計に対する前記(C)成分の割合が5質量%超である5に記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
7.さらにエポキシ樹脂を含む1~6のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
8.前記(A)成分が置換又は無置換のポリアニリンである1~7のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
9.前記(A)成分が、置換又は無置換のポリアニリンがドーパントによってドープされたポリアニリン複合体である1~8のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
10.前記ドーパントが下記式(III)で表されるスルホコハク酸誘導体から生じる有機酸イオンである9に記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
【化1】
(式(III)中、Mは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基である。m’は、Mの価数である。R
13及びR
14は、それぞれ独立に炭化水素基又は-(R
15O)
r-R
16基である。R
15は、それぞれ独立に炭化水素基又はシリレン基であり、R
16は水素原子、炭化水素基又はR
17
3Si-基であり、rは1以上の整数である。R
17は、それぞれ独立に炭化水素基である。)
11.前記スルホコハク酸誘導体がジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウムである10に記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
12.さらに溶剤を含む1~11のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物。
13.1~12のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物から得られる無電解めっき下地膜。
14.基材と、
13に記載の無電解めっき下地膜と、
金属を含む無電解めっき層と、を含み、
前記無電解めっき層と前記無電解めっき下地膜が接している
めっき積層体。
15.前記金属が銅である14に記載のめっき積層体。
16.前記基材が樹脂から構成される14又は15に記載のめっき積層体。
17.前記基材がポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、又はポリフェニレンサルファイド樹脂から構成される16に記載のめっき積層体。
18.1~12のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物を用いる無電解めっき下地膜の製造方法。
19.(i)基材上に、1~12のいずれかに記載の無電解めっき下地膜形成用組成物を用いて無電解めっき下地膜を形成する工程、及び
(ii)前記無電解めっき下地膜上に、金属を含む無電解めっき層を形成する工程を含む、めっき積層体の製造方法。
20.前記工程(ii)において、前記無電解めっき下地膜にパラジウムを担持させ、その後、パラジウムを担持させた前記無電解めっき下地膜無を電解めっき液に接触させることにより前記無電解めっき層を形成する19に記載のめっき積層体の製造方法。
21.前記無電解めっき下地膜へのパラジウムの担持を、前記無電解めっき下地膜に塩化パラジウム溶液を接触させることにより行う20に記載のめっき積層体の製造方法。
22.前記無電解めっき液がCu、Ni、Au、Pd、Ag、Sn、Co及びPtからなる群から選択される1以上の金属を含む20又は21に記載のめっき積層体の製造方法。
【0007】
本発明によれば、めっき層の形成性、基材及びめっき層との密着性、及び耐熱性に優れる無電解めっき下地膜を形成可能な無電解めっき下地膜形成用組成物が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のめっき積層体の一実施形態の層構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[無電解めっき下地膜形成用組成物]
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、下記(A)~(C)成分を含む。
(A)導電性ポリマー
(B)ポリエステルポリオール樹脂及びポリエーテルポリオール樹脂からなる群から選択される1以上の樹脂
(C)ポリイソシアネート化合物
【0010】
無電解めっきとは、電気分解を行わず、還元剤を用いる自己触媒作用を有する金属のめっき方法であり、例えば無電解銅めっきの場合、溶液中の銅イオンを、ホルムアルデヒド等の還元剤を用いて還元して金属銅被膜を析出させ、析出した金属銅が自己触媒となってさらに銅イオンを金属化し、析出させる化学的プロセスである。本発明の組成物は無電解めっき層の下地膜の形成に用いる。
【0011】
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、上記の成分を有することにより以下の効果を有する。まず、めっき層の形成性に優れる無電解めっき下地膜を形成することができる。即ち、導電性ポリマーが組成物中に分子レベルで溶解しており、めっき下地膜形成後も導電性ポリマーの分散状態が微細に保たれるため、均一性、平滑性に優れるめっき下地膜とすることができ、微細なパターンであってもめっき不良が起きにくい。次に、本発明の組成物から得られる無電解めっき下地膜は基材及びめっき層との密着性が高い。さらに、当該めっき下地膜は耐熱性に優れる。
また、めっき下地膜の表面のみに高価なめっき触媒を付与してめっき層を形成できること、及びめっき下地膜をパターン印刷することによって必要な部分のみにめっき層を形成できる。そのため、例えば銅張積層板でパターン形成に必要なエッチング工程が不要であることから、低コストでめっき積層体を形成することができるという利点も有する。
以下、各成分について説明する。尚、「(X)成分」という場合、例えば市販の試薬を用いる場合であっても、当該試薬中の(X)成分に該当する化合物のみを指すものとし、当該試薬中の他の成分(溶剤等)は含まない。
【0012】
[(A)成分:導電性ポリマー]
導電性ポリマーとしては、置換又は無置換のポリアニリン、置換又は無置換のポリピロール、及び置換又は無置換のポリチオフェン等のπ共役ポリマーが挙げられる。具体的には、π共役ポリマーがドーパントによってドープされているπ共役ポリマー複合体が挙げられ、置換又は無置換のポリアニリンがドーパントによってドープされているポリアニリン複合体、置換又は無置換のポリピロールがドーパントによってドープされているポリピロール複合体、及び置換又は無置換のポリチオフェンがドーパントによってドープされているポリチオフェン複合体等が挙げられ、置換又は無置換のポリアニリンがドーパントによってドープされているポリアニリン複合体が好ましい。
【0013】
導電性ポリマーとして置換又は無置換のポリアニリンを用いる場合について以下説明する。
ポリアニリンの重量平均分子量(以下、分子量という)は、好ましくは20,000以上である。分子量は、好ましくは20,000~500,000であり、より好ましくは20,000~300,000であり、さらに好ましくは20,000~200,000である。重量平均分子量はポリアニリン複合体の分子量ではなく、ポリアニリンの分子量である。
【0014】
分子量分布は、好ましくは1.5以上10.0以下である。導電率の観点からは分子量分布は小さい方が好ましいが、溶剤への溶解性の観点では、分子量分布が広い方が好ましい場合もある。
分子量と分子量分布は、ゲルパーミェションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算で測定する。
【0015】
置換ポリアニリンの置換基としては、例えばメチル基、エチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐の炭化水素基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基(-CF3基)等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
ポリアニリンは、汎用性及び経済性の観点から無置換のポリアニリンが好ましい。
【0016】
置換又は無置換のポリアニリンは、好ましくは塩素原子を含まない酸の存在下で重合して得られるポリアニリンである。塩素原子を含まない酸とは、例えば1族~16族及び18族に属する原子からなる酸である。具体的には、リン酸が挙げられる。塩素原子を含まない酸の存在下で重合して得られるポリアニリンとして、リン酸の存在下で重合して得られるポリアニリンが挙げられる。
塩素原子を含まない酸の存在下で得られたポリアニリンは、ポリアニリン複合体の塩素含有量をより低くすることができる。
【0017】
ポリアニリン複合体のドーパントとしては、例えばブレンステッド酸又はブレンステッド酸の塩から生じるブレンステッド酸イオンが挙げられ、好ましくは有機酸又は有機酸の塩から生じる有機酸イオンであり、さらに好ましくは下記式(I)で示される化合物(プロトン供与体)から生じる有機酸イオンである。
本発明において、ドーパントが特定の酸であると表現する場合、及びドーパントが特定の塩であると表現する場合があるが、いずれも特定の酸又は特定の塩から生じる特定の酸イオンが、上述したπ共役ポリマーにドープするものとする。
【0018】
M(XARn)m (I)
式(I)のMは、水素原子、有機遊離基又は無機遊離基である。
有機遊離基としては、例えば、ピリジニウム基、イミダゾリウム基、アニリニウム基等が挙げられる。無機遊離基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄等が挙げられる。
式(I)のXは、アニオン基であり、例えば-SO3
-基、-PO3
2-基、-PO2(OH)―基、-OPO3
2-基、-OPO2(OH)-基、-COO-基等が挙げられ、好ましくは-SO3
-基である。
【0019】
式(I)のAは、置換又は無置換の炭化水素基(炭素数は例えば1~20)である。
炭化水素基は、鎖状もしくは環状の飽和脂肪族炭化水素基、鎖状もしくは環状の不飽和脂肪族炭化水素基、又は芳香族炭化水素基である。
鎖状の飽和脂肪族炭化水素基としては、直鎖もしくは分岐状のアルキル基(炭素数は例えば1~20)が挙げられる。環状の飽和脂肪族炭化水素基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基(炭素数は例えば3~20)が挙げられる。環状の飽和脂肪族炭化水素基は、複数の環状の飽和脂肪族炭化水素基が縮合していてもよい。例えば、ノルボルニル基、アダマンチル基、縮合したアダマンチル基等が挙げられる。鎖状の不飽和脂肪族炭化水素(炭素数は例えば2~20)としては、直鎖又は分岐状のアルケニル基が挙げられる。環状の不飽和脂肪族炭化水素基(炭素数は例えば3~20)としては、環状アルケニル基が挙げられる。芳香族炭化水素基(炭素数は例えば6~20)としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
【0020】
Aが置換の炭化水素基である場合の置換基は、アルキル基(炭素数は例えば1~20)、シクロアルキル基(炭素数は例えば3~20)、ビニル基、アリル基、アリール基(炭素数は例えば6~20)、アルコキシ基(炭素数は例えば1~20)、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基、シリル基又はエステル結合含有基である。
【0021】
式(I)のRは、Aと結合しており、-H、-R1、-OR1、-COR1、-COOR1、-(C=O)-(COR1)、又は-(C=O)-(COOR1)で表わされる置換基あり、R1は、置換基を含んでもよい炭化水素基、シリル基、アルキルシリル基、-(R2O)x-R3基、又は-(OSiR3
2)x-OR3基である。R2はアルキレン基、R3は炭化水素基であり、xは1以上の整数である。xが2以上の場合、複数のR2はそれぞれ同一でも異なってもよく、複数のR3はそれぞれ同一でも異なってもよい。
【0022】
R1の炭化水素基(炭素数は例えば1~20)としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、エイコサニル基等が挙げられる。炭化水素基は直鎖状であってもよく、また、分岐状であってもよい。
炭化水素基の置換基は、アルキル基(炭素数は例えば1~20)、シクロアルキル基(炭素数は例えば3~20)、ビニル基、アリル基、アリール基(炭素数は例えば6~20)、アルコキシ基(炭素数は例えば1~20)、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、イミノ基、ニトロ基又はエステル結合含有基である。R3の炭化水素基もR1と同様である。
【0023】
R2のアルキレン基(炭素数は例えば1~20)としては、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
式(I)のnは1以上の整数である。nが2以上の場合、複数のRはそれぞれ同一でも異なってもよい。
式(I)のmは、Mの価数/Xの価数である。
【0024】
式(I)で示される化合物としては、ジアルキルベンゼンスルフォン酸、ジアルキルナフタレンスルフォン酸、又はエステル結合を2以上含有する化合物が好ましい。
エステル結合を2以上含有する化合物は、スルホフタール酸エステル、又は下記式(II)で表される化合物がより好ましい。
【化2】
式(II)中、M及びXは、式(I)と同様である。Xは、-SO
3
-基が好ましい。
R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に水素原子、炭化水素基又はR
9
3Si-基である。3つのR
9はそれぞれ独立に炭化水素基である。
R
4、R
5及びR
6が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1~24の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、芳香環を含むアリール基(炭素数は例えば6~20)、アルキルアリール基(炭素数は例えば7~20)等が挙げられる。
R
9の炭化水素基としては、R
4、R
5及びR
6の場合と同様である。
【0025】
式(II)のR7及びR8は、それぞれ独立に、炭化水素基又は-(R10O)q-R11基である。R10は炭化水素基又はシリレン基であり、R11は水素原子、炭化水素基又はR12
3Si-であり、qは1以上の整数である。3つのR12は、それぞれ独立に炭化水素基である。
【0026】
R7及びR8が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、炭素数1~24、好ましくは炭素数4以上の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、芳香環を含むアリール基(炭素数は例えば6~20)、アルキルアリール基(炭素数は例えば7~20)等が挙げられ、具体例としては、例えば、いずれも直鎖又は分岐状の、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
【0027】
R7及びR8における、R10が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、例えば炭素数1~24の直鎖もしくは分岐状のアルキレン基、芳香環を含むアリーレン基(炭素数は例えば6~20)、アルキルアリーレン基(炭素数は例えば7~20)、又はアリールアルキレン基(炭素数は例えば7~20)である。また、R7及びR8における、R11及びR12が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、R4、R5及びR6の場合と同様であり、qは、1~10であることが好ましい。
【0028】
R
7及びR
8が-(R
10O)
q-R
11基である場合の式(II)で表わされる化合物の具体例としては、下記式で表わされる2つの化合物である。
【化3】
(式中、Xは式(I)と同様である。)
【0029】
上記式(II)で表わされる化合物は、下記式(III)で示されるスルホコハク酸誘導体であることがさらに好ましい。
【化4】
式(III)中、Mは、式(I)と同様である。m’は、Mの価数である。
R
13及びR
14は、それぞれ独立に、炭化水素基又は-(R
15O)
r-R
16基である。R
15は炭化水素基又はシリレン基であり、R
16は水素原子、炭化水素基又はR
17
3Si-基であり、rは1以上の整数である。3つのR
17はそれぞれ独立に炭化水素基である。rが2以上の場合、複数のR
15はそれぞれ同一でも異なってもよい。
【0030】
R13及びR14が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、R7及びR8と同様である。
R13及びR14において、R15が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、上記R10と同様である。また、R13及びR14において、R16及びR17が炭化水素基である場合の炭化水素基としては、上記R4、R5及びR6と同様である。
rは、1~10であることが好ましい。
【0031】
R13及びR14が-(R15O)r-R16基である場合の具体例としては、R7及びR8における-(R10O)q-R11と同様である。
R13及びR14の炭化水素基としては、R7及びR8と同様であり、ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、デシル基が好ましい。
【0032】
式(I)で示される化合物としては、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸、ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム(エーロゾルOT)が好ましい。
【0033】
ポリアニリン複合体のドーパントが置換又は無置換のポリアニリンにドープしていることは、紫外・可視・近赤外分光法やX線光電子分光法によって確認することができ、当該ドーパントは、ポリアニリンにキャリアを発生させるに十分な酸性を有していれば、特に化学構造上の制限なく使用できる。
【0034】
ポリアニリンに対するドーパントのドープ率は、好ましくは0.35以上0.65以下であり、より好ましくは0.42以上0.60以下であり、さらに好ましくは0.43以上0.57以下であり、特に好ましくは0.44以上0.55以下である。
ドープ率は(ポリアニリンにドープしているドーパントのモル数)/(ポリアニリンのモノマーユニットのモル数)で定義される。例えば無置換ポリアニリンとドーパントを含むポリアニリン複合体のドープ率が0.5であることは、ポリアニリンのモノマーユニット分子2個に対し、ドーパントが1個ドープしていることを意味する。
【0035】
ドープ率は、ポリアニリン複合体中のドーパントとポリアニリンのモノマーユニットのモル数が測定できれば算出可能である。例えば、ドーパントが有機スルホン酸の場合、ドーパント由来の硫黄原子のモル数と、ポリアニリンのモノマーユニット由来の窒素原子のモル数を、有機元素分析法により定量し、これらの値の比を取ることでドープ率を算出できる。但し、ドープ率の算出方法は、当該手段に限定されない。
【0036】
ポリアニリン複合体は、さらにリンを含んでも含まなくてもよい。
ポリアニリン複合体がリンを含む場合、リンの含有量は例えば10質量ppm以上5000質量ppm以下である。
上記リンの含有量は、ICP発光分光分析法で測定することができる。
また、ポリアニリン複合体は、不純物として第12族元素(例えば亜鉛)を含まないことが好ましい。
【0037】
ポリアニリン複合体は、周知の製造方法で製造することができる。例えば、プロトン供与体、リン酸、及びプロトン供与体とは異なる乳化剤を含み、2つの液相を有する溶液中で、置換又は無置換のアニリンを化学酸化重合することにより製造できる。また、置換又は無置換のアニリン、プロトン供与体、リン酸、及びプロトン供与体とは異なる乳化剤を含み、2つの液相を有する溶液中に、酸化重合剤を加えることにより製造できる。
【0038】
ここで「2つの液相を有する溶液」とは、溶液中に相溶しない2つの液相が存在する状態を意味する。例えば、溶液中に「高極性溶媒の相」と「低極性溶媒の相」が存在する状態、を意味する。
また、「2つの液相を有する溶液」は、片方の液相が連続相であり、他方の液相が分散相である状態も含む。例えば「高極性溶媒の相」が連続相であり「低極性溶媒の相」が分散相である状態、及び「低極性溶媒の相」が連続相であり「高極性溶媒の相」が分散相である状態が含まれる。
上記ポリアニリン複合体の製造方法に用いる高極性溶媒としては、水が好ましく、低極性溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が好ましい。
【0039】
上記プロトン供与体は、好ましくは上記式(I)で表される化合物である。
【0040】
上記乳化剤は、親水性部分がイオン性であるイオン性乳化剤、及び親水性部分が非イオン性である非イオン性乳化剤のどちらでも使用でき、また、1種又は2種以上の乳化剤を混合して使用してもよい。
【0041】
化学酸化重合に用いる酸化剤としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の過酸化物;二クロム酸アンモニウム、過塩素酸アンモニウム、硫酸カリウム鉄(III)、三塩化鉄(III)、二酸化マンガン、ヨウ素酸、過マンガン酸カリウム又はパラトルエンスルホン酸鉄等が使用でき、好ましくは過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩である。
これらは単独で使用してもよいし2種以上を併用してもよい。
【0042】
ポリピロールの分子量、分子量分布、置換ポリピロールの置換基は上記ポリアニリンと同様である。
【0043】
ポリピロール複合体のドーパントとしては、特に制限はなく、一般的にピロール及び/又はピロール誘導体の重合体を含んでなる導電性ポリマーに好適に用いられるアクセプター性ドーパントを適宜使用できる。
代表的なものとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、アリルスルホン酸等のスルホン酸類、過塩素酸、塩素、臭素等のハロゲン類、ルイス酸、プロトン酸等が挙げられる。これらは、酸形態であってよいし、塩形態にあることもできる。モノマーに対する溶解性の観点から好ましいものは、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラエチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロメタンスルホン酸テトラブチルアンモニウム、トリフルオロスルホンイミドテトラブチルアンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等である。
【0044】
ドーパントを使用する場合のドーパントの使用量は、ピロール重合体単位ユニット当たりドーパント0.01~0.3分子となる量が好ましい。0.01分子未満では、十分な導電性パスを形成するに必要なドーパント量としては不十分であり、高い導電性を得ることが難しい。一方、0.3分子を超えて加えてもドープ率は向上しないから、0.3分子を超えるドーパントの添加は経済上好ましくない。ここでピロール重合体単位ユニットとは、ピロールモノマーが重合して得られるピロール重合体のモノマー1分子に対応する繰返し部分のことを指す。
【0045】
ポリチオフェンの分子量、分子量分布、置換ポリチオフェンの置換基は上記ポリアニリンと同様である。置換ポリチオフェンとしては、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が好ましい。
【0046】
ポリチオフェン複合体のドーパントとしては、アニオン系界面活性剤の有機酸イオン、無機酸イオン等が挙げられる。アニオン系界面活性剤の有機酸イオンとしては、スルホン酸系イオン、エステル化された硫酸イオン等が挙げられる。無機酸イオンとしては、硫酸イオン、ハロゲンイオン、硝酸イオン、過塩素酸イオン、ヘキサシアノ鉄酸イオン、リン酸イオン、リンモリブデン酸イオン等が挙げられる。
【0047】
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物における(A)成分の含有量は、(A)~(C)成分の合計に対して、30~85質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましく、さらに好ましくは35~70質量%、特に好ましくは40~70質量%である。
【0048】
[(B)成分:ポリエステルポリオール樹脂及びポリエーテルポリオール樹脂からなる群から選択される1以上の樹脂]
ポリエステルポリオール樹脂は、通常、ポリオールと多価カルボン酸とを重合させることにより得られる。
ポリオールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、3-メチルペンタンジオール、2,4-ジエチルペンタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールA、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価カルボン酸としては、マロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、エンドメチレンヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、シクロペンタンジカルボン酸等が挙げられる。
【0049】
ポリエステルポリオール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは2,000~50,000である。重量平均分子量はGPC法で測定する。
ポリエステルポリオール樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは5~90℃である。TgはDSC法(示差走査熱量測定法)で測定する。
ポリエステルポリオール樹脂の水酸基価は、好ましくは2~70mgKOH/gである。水酸基価は、1gのポリエステルポリオール樹脂と無水酢酸を反応させ、反応で生じた酢酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの質量(mg)から算出する。
【0050】
ポリエーテルポリオール樹脂としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ1-メチルブチレングリコール等を使用できる。
また、上記ポリエーテルポリオールを合成するためのモノマーと、グリセリン,トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール,ソルビトール,トリエタノールアミン等の多価アルコールをゲル化しない範囲で共重合させたポリエーテルポリオールも使用できる。
【0051】
ポリエーテルポリオール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは400~10,000である。
ポリエーテルポリオール樹脂の水酸基価は、好ましくは20~500mgKOH/gである。
ポリエーテルポリオール樹脂の重量平均分子量及び水酸基価の測定方法は、ポリエステルポリオール樹脂で説明したものと同じである。
【0052】
ポリエステルポリオール樹脂及びポリエーテルポリオール樹脂は、どちらか一方を単独で用いてもよいし、両方を併用してもよい。また、各樹脂について1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ポリオール樹脂の中でも、例えば、ポリビニルアセタールを用いた場合、加熱により樹脂が分解することに起因して無電解めっき下地膜の耐熱性が低くなる場合があるが、上述したポリエステルポリオール樹脂及び/又はポリエーテルポリオール樹脂は当該懸念がなく、耐熱性に優れた無電解めっき下地膜を製造することが可能となる。
【0054】
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物における(B)成分の含有量は、(A)~(C)成分の合計に対して、10~65質量%が好ましく、より好ましくは15~60質量%、さらに好ましくは20~60質量%である。
【0055】
[(C)成分:ポリイソシアネート化合物]
ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基(-NCO基)を2個以上有する化合物であり、ポリウレタンの原料となる場合もある。
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物において、(B)成分を(C)成分によって十分に架橋することによってめっき下地膜に優れた耐熱性を付与することができる。
【0056】
ポリイソシアネートは、例えば、R’(-NCO)оで表される化合物である。式中、R’は、メチル、エチル、プロピル、ブチル等の脂肪族炭化水素(炭素数は例えば1~20)、又はベンゼン環、ナフタレン環等の芳香族炭化水素(炭素数は例えば6~20)であり、оは2以上の整数である。
【0057】
ポリイソシアネート化合物として、ブロックポリイソシアネートを使用することが好ましい。
通常、-NCO基は非常に反応性が高いため、その反応性を抑制しコントロールできるように、-NCO基をブロックしてブロックポリイソシアネートとする。ブロックポリイソシアネートは、系内の-NCO基のような反応性基をブロックすることで、反応を抑制し、加熱によりブロック基を脱離させ、反応を開始させる。
【0058】
ポリイソシアネート化合物として、具体的には、旭化成株式会社製のMF-K60BやMF-B60B、17B-60P、TPA-100、TKA-100、P301-75E、24A-100等のHDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系のものが挙げられる。また、DIC株式会社製のD-550、DB-980K、東ソー株式会社製のコロネートBI-301、コロネート2507等も挙げられる。
【0059】
ポリイソシアネート化合物の硬化温度は、80℃以上であることが好ましく、90~180℃であることがより好ましい。ポリイソシアネートの硬化温度が上記範囲であることにより、めっき下地膜の耐熱性を向上させることができる。
ブロックポリイソシアネートの場合、上記硬化温度はブロック基が脱離する温度である。
【0060】
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物における(C)成分の含有量は、(B)成分の化学構造により変化するが、(A)~(C)成分の合計に対して、0.5~30質量%が好ましく、より好ましくは1~25質量%、さらに好ましくは1~20質量%である。また、(A)~(C)成分の合計に対して、例えば、6~30質量%、7~30質量%、8~30質量%としてもよい。
【0061】
また、本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物が後述するウレタン樹脂を含有する場合、(A)成分、(C)成分及びウレタン樹脂の合計に対する(C)成分の割合は5質量%超、6質量%以上又は7質量%以上としてもよい。
【0062】
[(B)成分と(C)成分の量的関係]
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、組成物中の不揮発性成分に対する(B)成分と(C)成分の合計の割合が8~90質量%であると好ましく、10~90質量%であるとより好ましく、10~70質量%であるとさらに好ましく、20~60質量%であると特に好ましい。この範囲であると、めっき下地膜中において架橋構造が十分な割合を占め、かつ、導電性ポリマーがめっき層を形成するために必要な触媒を保持できるため耐熱性とめっき析出性の両者に優れる。
不揮発性成分とは、組成物中の配合成分が化学変化を起こさない範囲で組成物を加熱及び/又は減圧した場合に揮発する成分(揮発性成分)を除いた後に組成物中に残る成分であり、通常、組成物中の溶剤以外の成分である。
【0063】
また、(B)成分中の水酸基に対する(C)成分中のイソシアネート基のモル比(NCO/OH比)は、0.1~10.0であると好ましく、0.6~8.0であるとより好ましく、0.6~5.5であるとさらに好ましい。
NCO/OH比は下記式により計算できる。
NCO/OH比=X/Y
式中、Xはイソシアネート基を有する化合物単位質量当たりのイソシアネート基の数×配合質量である。Yは水酸基を有する化合物単位質量当たりの水酸基数×配合質量である。
【0064】
(C)成分としてブロックポリイソシアネート化合物を用いる場合、加熱によってイソシアネート基を再生し、無電解めっき下地膜組成物中の水酸基と反応して結合を形成する。1分子中に2個以上の重合性基を有する分子同士を反応させると重合体を形成し、イソシアネート基及び/又は水酸基を3個以上の有する化合物同士を反応させると3次元架橋構造を形成する。
架橋反応を十分に進めるためには、組成物中のイソシアネート基の個数と水酸基の個数がほぼ等しいことが好ましい。しかしながら、(A)成分等の架橋反応に寄与しない成分を含む場合には、下地膜中でのイソシアネート基と水酸基の衝突確率が低下して十分に架橋反応が進まないことがある。
ポリエステルポリオール樹脂及び/又はポリエーテルポリオール樹脂と、ポリイソシアネート化合物を比較した場合、ポリイソシアネート化合物の方が、分子量が低く運動性の高いものが多い。従って、両者の衝突確率を高めるには、ポリイソシアネート化合物の割合を増やすことが好ましい。なお、イソシアネート基は、水等によって分解するとアミノ基を生じる。該アミノ基は、残留しているイソシアネート基と反応するので、ポリイソシアネート化合物の割合が多くても架橋反応を阻害することが少ない。
【0065】
[溶剤]
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物に用いる溶剤は、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、ジアセトンアルコール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、エチルカルビトール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ソルベントナフサ、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸n-ブチル、n-ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、テトラリン、2-ブトキシ-2-エトキシエタノール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0066】
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物における溶剤の含有量は、(A)~(C)成分の合計100質量部に対して、50~2000質量部が好ましく、より好ましくは100~1000質量部であり、さらに好ましくは100~600質量部である。
【0067】
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、例えば、溶剤以外の90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上、又は100質量%が、(A)成分、(B)成分及び(C)成分からなってもよい。
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、例えば、溶剤以外の90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.5質量%以上、99.9質量%以上、又は100質量%が、(A)成分、(B)成分及び(C)成分、並びに後述する他の成分のうち1以上の成分(例えばウレタン樹脂)からなってもよい。
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、ポリビニルアセタール樹脂の含有量を例えば1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、又は含まない構成としてもよい。
【0068】
[ウレタン樹脂]
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、さらにウレタン樹脂を含んでもよい。ウレタン樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートとポリオールを反応させて得られるもの等を用いることができる。
【0069】
ポリイソシアネートとしては、少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されず公知のものを使用することができる。
具体的には、例えば、TDI(トリレンジイソシアネート)系、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)系、XDI(キシリレンジイソシアネート)系、NDI(ナフチレン1,5-ジイソシアネート)系、TMXDI(テトラメチレンキシリレンジイソシアネート)系等の芳香族系イソシアネート、IPDI(イソホロンジイソシアネート)系、H12MDI(水添MDI、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート)系、H6XDI(水添XDI)系等の脂環族系イソシアネート、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系、DDI(ダイマー酸ジイソシアネート)系、NBDI(ノルボルネン・ジイソシアネート)系等の脂肪族系イソシアネート等がある。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0070】
また、ポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール類、ポリエチレンアジペート、ポリエチレン-ブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール類、アクリル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリジメチルシロキサン-エチレンオキサイド付加物、ポリジメチルシロキサン-プロピレンオキサイド付加物、ひまし油等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0071】
ウレタン樹脂は柔らかく延伸性があるため、下地膜が架橋構造によって脆くなり過ぎることを抑制できる。
【0072】
ウレタン樹脂としては、具体的に、MAU1008、MAU4308HV、MAU5022、MAU9022等のMAUシリーズ(大日精化工業株式会社製)、ASPU360、ASPU112、ASPU116、ASPU121等のASPUシリーズ(DIC株式会社製)、ハイドランAP-20、AP-30F、AP-40F、WLS-213等のハイドランシリーズ(DIC株式会社製)、ユーコートUX-150、UX-200、UX-310、UWS-145等のユーコートシリーズ(三洋化成社製)、アクリットWBR-2018、WBR-016U、WEM-3008等のアクリットシリーズ(大成ファインケミカル社製)、PTG-RSN(DICグラフィックス社製)等が挙げられる。
【0073】
MAUシリーズは、アミノ基やカルボキシル基等の極性基を導入でき、各種バインダーとの相溶性や接着性を向上することができる。反応性基を有することで、硬化後も柔軟な塗膜形成が可能である。
ASPUシリーズは、溶剤系であり、耐候性、摩耗性、屈曲性向上とともに、反応性基を有することで柔軟かつ強靭な膜を作製することができる。
ハイドランシリーズは、水系であり、種々の溶剤に溶解させて、ASPUシリーズと同等の性能を有することができる。
アクリットシリーズは、反応性基を有していないウレタンエマルジョンである。水系塗料に使用することができる。
【0074】
ウレタン樹脂は、通常、下記式で表される構造を有する。
【化5】
式中、R及びXは、それぞれ独立にウレタン樹脂を合成する際のモノマーに由来する、置換もしくは無置換の2価の芳香族炭化水素基、置換もしくは無置換の2価の脂肪族炭化水素基、又は1以上の置換もしくは無置換の2価の芳香族炭化水素基と1以上の置換もしくは無置換の2価の脂肪族炭化水素基とを任意の順で結合した2価の基である。
2価の芳香族炭化水素基としては、環形成炭素数6~50の芳香族炭化水素基等が挙げられる。具体的には、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
2価の脂肪族炭化水素基としては、炭素数6~50の直鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数6~50の分岐状脂肪族炭化水素基等が挙げられる。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
1以上の2価の芳香族炭化水素基と1以上の2価の脂肪族炭化水素基とを任意の順で結合した2価の基としては、フェニレン基とメチレン基が結合した基、ナフチレン基とエチレン基が結合した基等が挙げられる。
置換基を有する場合の置換基としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基等が挙げられる。
ウレタン樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0075】
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物におけるウレタン樹脂の含有量は、(A)~(C)成分の合計100質量部に対して、1~100質量部が好ましく、より好ましくは5~50質量部である。
【0076】
[エポキシ樹脂]
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、さらにエポキシ樹脂を含んでもよい。エポキシ樹脂は、架橋性化合物であり、樹脂内にあるエポキシ基により架橋反応させ、硬化させることができる。また、所定量のエポキシ樹脂は、優れた耐熱性及び密着性を無電解めっき下地膜に付与する。
【0077】
エポキシ樹脂はフェノール型エポキシ樹脂やフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0078】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂として、例えば、DIC社製のHP4710やHP7200HH、HP7200H、HP7200等が挙げられる。また、ナフタレン型エポキシ樹脂として、例えば、DIC社製のHP4710等が挙げられる。
【0079】
エポキシ樹脂のガラス転移温度は、60~110℃であることが好ましく、70~105℃であることがより好ましく、75~100℃であることがさらに好ましい。
エポキシ樹脂を含有する無電解めっき下地膜形成用組成物を用いて下地膜を形成する場合において、エポキシ樹脂のガラス転移温度が上記範囲であることにより、下地膜の耐熱性及び耐熱衝撃性を向上させることができる。
上記のガラス転移温度を有するエポキシ樹脂をポリアニリン複合体等の導電性ポリマーと混合した組成物を基材に塗布してめっき下地膜を形成することで、無電解めっき後の耐熱試験及び熱衝撃試験において、基材及びめっき被膜に対して優れた密着性を示す。これは、上記ガラス転移温度を有するエポキシ樹脂を添加することで、塗膜強度及び密着強度が高くなるためと考えられる。
【0080】
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物におけるエポキシ樹脂の含有量は、(A)~(C)成分の合計100質量部に対して、0.2~30質量部が好ましく、より好ましくは0.5~15質量部、さらに好ましくは0.7~10質量部である。
一方、本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物はエポキシ樹脂の含有量を少ない構成としてもよく、例えば、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、又は含まない構成としてもよい。
【0081】
[フェノール性化合物]
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、導電性ポリマーとしてポリアニリン複合体を含む場合、さらに電気伝導率の改善効果を有するフェノール性化合物をポリアニリン複合体の一部として含んでいてもよい。
フェノール性化合物は、フェノール性水酸基を有する化合物であれば特に限定されない。フェノール性水酸基を有する化合物とは、フェノール性水酸基を1つ有する化合物、フェノール性水酸基を複数有する化合物、及びフェノール性水酸基を1つ又は複数有する繰り返し単位から構成されるポリマー化合物である。
当該フェノール性化合物としては公知のものを適宜使用することができる。
【0082】
[耐熱安定化剤]
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、導電性ポリマーとしてポリアニリン複合体を含む場合、さらに耐熱安定化剤を含んでいてもよい。
耐熱安定化剤とは、酸性物質又は酸性物質の塩であり、酸性物質は有機酸(有機化合物の酸)、無機酸(無機化合物の酸)のいずれでもよい。また、導電性ポリマー層は、複数の耐熱安定化剤を含んでいてもよい。
【0083】
[他の成分]
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、さらに他の樹脂、無機材料、硬化剤、可塑剤、有機導電材料等の添加剤を含んでもよい。
【0084】
他の樹脂としては、例えば、バインダー基材、マトリックス基材等が挙げられる。
他の樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0085】
また上記樹脂の代わりに、また樹脂と共に、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、又はこれら熱硬化性樹脂を形成し得る前駆体を含んでもよい。
【0086】
無機材料は、例えば、強度、表面硬度、寸法安定性その他の機械的物性の向上、又は導電性等の電気特性を向上する目的で添加される。
無機材料の具体例としては、例えば、シリカ(二酸化ケイ素)、チタニア(二酸化チタン)、アルミナ(酸化アルミニウム)、Sn含有In2O3(ITO)、Zn含有In2O3、In2O3の共置換化合物(4価元素及び2価元素が3価のInに置換した酸化物)、Sb含有SnO2(ATO)、ZnO、Al含有ZnO(AZO)、Ga含有ZnO(GZO)等が挙げられる。
【0087】
硬化剤は、例えば、強度、表面硬度、寸法安定性その他の機械的物性の向上等の目的で添加される。硬化剤の具体例としては、例えば、フェノール樹脂等の熱硬化剤、アクリレート系モノマーと光重合性開始剤による光硬化剤が挙げられる。
【0088】
可塑剤は、例えば、引張強度や曲げ強度等の機械的特性の向上等の目的で添加される。
可塑剤の具体例としては、例えば、フタル酸エステル類やリン酸エステル類が挙げられる。
有機導電材料としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブのような炭素材料等が挙げられる。
【0089】
[無電解めっき下地膜]
本発明の無電解めっき下地膜(層)は、上述した本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物から形成することができる。
無電解めっき下地膜形成用組成物を乾燥して得られる、無電解めっき下地膜の膜厚は0.1μm以上が好ましく、より好ましくは0.2μm以上である。膜厚が0.1μm未満であると、基材とめっき膜の密着力が保持できないため、剥離しやすくなってしまう。また、Pd金属が担持されない領域が多くなる恐れがあり、無電解めっきされない領域が多くなる恐れがある。
膜厚の上限は特にないが、例えば100μm以下、20μm以下、10μm以下である。
【0090】
[無電解めっき下地膜の製造方法]
本発明の無電解めっき下地膜の製造方法は、本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物を用いる。本製造方法は、本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物を用いていれば特に限定されず、例えば、基材の上に本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物をバーコート法により塗工し、乾燥する塗工方法等が挙げられる。
【0091】
[めっき積層体]
本発明のめっき積層体は、基材と、上述した無電解めっき下地膜と、金属を含む無電解めっき層と、を含み、無電解めっき層と無電解めっき下地膜が接している。
【0092】
図1は、本発明のめっき積層体の一実施形態の層構成を示す概略図である。
めっき積層体1は、基材10上に、無電解めっき下地膜20及び無電解めっき層30をこの順に積層して含む。
本発明のめっき積層体は、後述する本発明のめっき積層体の製造方法により製造できる。
【0093】
[基材]
基材は特に限定されず、金属、無機素材(セラミックス、ガラス等)、又は樹脂であってもよい。また、金属を樹脂で完全に覆った基材や、無機系素材と樹脂との複合材(例えば、FRP,ガラスエポキシ複合材)等であってもよい。樹脂の種類としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、フェノール樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂等が挙げられる。
基材の具体例として、例えば易接着処理PET(東洋紡株式会社製A4300)が挙げられる。
【0094】
[無電解めっき層]
無電解めっき層の金属種としては、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、銀、金、白金及びスズ等が挙げられる。また、これらの他にリン、ホウ素、鉄等の元素が含有されていてもよい。形成方法は後述する通りである。
【0095】
[めっき積層体の製造方法]
本発明のめっき積層体の製造方法は、基材上に、本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物を用いて無電解めっき下地膜を形成する工程、及び無電解めっき下地膜上に、金属を含む無電解めっき層を形成する工程を含む。
【0096】
無電解めっき下地膜の形成は、上述した無電解めっき下地膜の製造方法により行うことができる。
下地膜を形成した後、無電解めっき層を形成する前に脱脂工程を行うことが好ましい。
【0097】
脱脂工程は、界面活性剤やアルコール等の溶剤で無電解めっき下地膜表面を脱脂洗浄して濡れ性を改善する。
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性又は非イオン性のものを適宜使用でき、カチオン性界面活性剤が好ましい。カチオン性界面活性剤を用いる場合は、例えばイオン交換水等で1~3%に希釈して用いる。
【0098】
上記無電解めっき下地膜を形成後、好ましくは脱脂工程後、通常、下地膜上に無電解めっきの触媒作用を担うPd金属(触媒金属)を担持させるために、Pd化合物溶液を接触させると好ましい。
Pd化合物溶液を接触させると、ポリアニリン複合体等の導電性ポリマーはPdイオンを吸着し、その還元作用により、PdイオンがPd金属に還元される。尚、還元されたPd、即ち金属状態のPdでなければ、無電解めっきにおける触媒作用を発現しない。
上記単位面積当たりのPd付着量(Pdイオン及びPd金属を含む)は1.7μg/cm2以上であることが好ましく、2.5μg/cm2以上であることがさらに好ましい。
【0099】
Pd化合物としては、塩化パラジウムが好ましい。溶媒としては、塩酸が一般に用いられる。しかしながら、Pdがイオン状態で水溶液中に存在していればよく、塩酸水溶液に限定されない。Pd化合物溶液としては、例えば、0.02%塩化パラジウム-0.01%塩酸水溶液(pH3)が挙げられる。
【0100】
Pd化合物溶液との接触温度は、通常20~50℃、好ましくは30~40℃であり、接触時間は、通常0.1~10分、好ましくは1~5分である。
【0101】
次に、金属を含む層(めっき層)を下地膜上に形成するために、上記で得られた基材を無電解めっき液に接触させる。下地膜と無電解めっき液が接触すると、担持させたPd金属が触媒として働き、下地膜上にめっき層が形成される。
【0102】
無電解めっき液に含まれる金属種としては、上述したように、銅、ニッケル、コバルト、パラジウム、銀、金、白金及びスズ等が挙げられる。また、これらの他にリン、ホウ素、鉄等の元素が含有されていてもよい。
【0103】
無電解めっき液との接触温度は、めっき浴種類や厚み等で異なるが、例えば低温浴であれば20~50℃程度、高温では50~90℃である。
また、無電解めっき液との接触時間もめっき浴種類や厚み等で異なるが、例えば1~120分である。無電解めっきのみでもよく、又は無電解めっきで金属薄膜を設けた後で電解めっきによりさらに同種又は異なる金属膜を設けることも可能である。
【実施例】
【0104】
製造例1
[ポリアニリン複合体の製造]
「エーロゾルOT」(ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム)(AOT)37.8g及びポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル構造を有する非イオン乳化剤である「ソルボンT-20」(東邦化学工業株式会社製)1.47gをトルエン600mLに溶解した溶液を、窒素気流下においた6Lのセパラブルフラスコに入れ、さらにこの溶液に、22.2gのアニリンを加えた。その後、1Mリン酸1800mLを溶液に添加し、トルエンと水の2つの液相を有する溶液の温度を5℃に冷却した。
【0105】
溶液内温が5℃に到達した時点で、毎分390回転で撹拌を行った。65.7gの過硫酸アンモニウムを1Mリン酸600mLに溶解した溶液を、滴下ロートを用いて2時間かけて滴下した。滴下開始から18時間、溶液内温を5℃に保ったまま反応を実施した。その後、反応温度を40℃まで上昇させ、1時間反応を継続した。その後、静置し、トルエン相を分離した。得られたトルエン相にトルエンを1500mL添加し、1Mリン酸500mLで1回、イオン交換水500mLで3回洗浄し、トルエン相を静置分離し、濃度調整のための濃縮を行い、ポリアニリン複合体トルエン溶液900gを得た。このポリアニリン複合体トルエン溶液のポリアニリン複合体濃度は5.7質量%であった。
【0106】
製造例2
製造例1で得たポリアニリン複合体トルエン溶液を、60℃の湯浴で減圧乾燥し、乾固しポリアニリン複合体(粉末)を51.3g得た。
このポリアニリン複合体中のポリアニリン分子の重量平均分子量は72,000g/molであり、分子量分布は2.0であった。
【0107】
実施例1
[無電解めっき下地膜形成用組成物の調製]
ポリエステルポリオール樹脂(日本合成化学工業株式会社製「TP-219」、重量平均分子量:3,000、Tg:40℃、水酸基価:55)1.35g、及びブロックイソシアネート化合物溶液(旭化成株式会社製「MF-K60B」、有効NCO%(wt%)=6.4%、不揮発性成分濃度:60質量%、硬化温度:90℃、以下「MF-K60B」と略記する。)0.86g(不揮発性成分:0.52g)を、テトラリン(関東化学株式会社製)10.90g、2-ブトキシ-2-エトキシエタノール(和光純薬工業株式会社製)8.18g、及び1,3-ジメチルイミダゾリジノン(和光純薬工業株式会社製)2.73gからなる混合溶剤に溶解させた。ポリエステルポリオール樹脂の溶解を確認した後、製造例2で得られたポリアニリン複合体粉末2.48gを加え、溶解させて組成物(無電解めっき下地膜形成用組成物)を得た。組成物の組成等を表1に示す。
【0108】
[めっき積層体の製造]
(印刷・塗布工程)
得られた組成物を、バーコーター(No.16)を用いてポリイミド樹脂フィルム(東レ株式会社製「カプトン300H」)に塗布した。塗膜を150℃で30分間乾燥して硬化させ、めっき下地膜(無電解めっき下地膜)とした。めっき下地膜の膜厚を触針式膜厚計で測定した。膜厚を表2に示す。
めっき下地膜を形成したポリイミド樹脂フィルムを50mm×100mmに切断して試験片とした。
【0109】
(脱脂工程)
上記試験片を、界面活性剤(奥野製薬工業株式会社製「エースクリーン」)の2.5質量%水溶液中へ55℃で5分間浸漬した。その後、試験片の表面を流水で洗浄後、10質量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液に60℃で5分間浸漬した。さらに試験片の表面を流水で洗浄し脱脂処理を行った。
【0110】
(Pd担持工程)
脱脂処理後の試験片全体を、触媒化処理剤アクチベーター(塩酸酸性パラジウム化合物水溶液、奥野製薬工業株式会社製)の20倍希釈液中に30℃で5分間浸漬し、金属Pd担持処理を行った。
【0111】
(めっき層形成工程)
Pd担持処理後の試験片について、無電解銅めっき液(上村工業株式会社製「スルカップELC-SP」)を用いて、60℃で60分間めっき処理を行いめっき層を形成した後、流水洗浄及び温風乾燥(80℃)を行い、めっき積層体を得た。
【0112】
[めっき積層体の評価]
得られためっき積層体について以下の評価を行った。結果を表2に示す。
(密着性)
めっき積層体のめっき層に対してクロスカット試験を行った。具体的に、JIS5600-5-6に準じて、カッターで2mm間隔の格子状の傷を基材まで達するように付し、セロテープ(登録商標)(ニチバン株式会社製)を貼り、90°の角度で剥がして剥離(基材とめっき下地膜の間での剥離、めっき下地膜の破壊、及びめっき下地膜とめっき層の間での剥離を含む)の有無を観察し、以下のように判定した。
○:剥離が観察されなかった。
×:剥離が観察された。
【0113】
(耐熱性)
めっき積層体のめっき層をはんだ浴(260℃)に2分間接触させて変化の有無を観察し、以下のように判定した。
◎:はんだ浴から離した時点で変化が観察されず、かつ、はんだ浴から離した直後に表面を強く擦ってもめっき層が剥がれなかった。
○:はんだ浴から離した時点では変化が観察されなかったが、はんだ浴から離した直後に表面を強くこするとめっき層が剥がれた。
△:はんだ浴から離した時点で剥離や膨れ等の変化が観察された。
【0114】
実施例2,3
無電解めっき下地膜形成用組成物の各成分の配合量を表1に記載のように変更した他は実施例1と同様にめっき積層体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0115】
実施例4
ポリエステルポリオール樹脂として日本合成化学工業株式会社製「TP-249」(重量平均分子量:16,000、Tg:36℃、水酸基価:5.5)を用い、各成分の配合量を表1に記載のように変更した他は実施例1と同様に組成物を調製し、めっき積層体を製造した。結果を表2に示す。
【0116】
実施例5
実施例1の組成物における各成分の配合量を表1の記載のように変更し、さらにウレタン樹脂溶液(大日精化工業株式会社製「MAU1008」、不揮発性成分濃度30質量%)5.69g(不揮発性成分:1.70g)、及び消泡剤(十条ケミカル株式会社製「JA-750」)を混合して組成物を調製した。(A)成分、(C)成分及びウレタン樹脂の合計に対する(C)成分の割合は7.80質量%であった。
【0117】
得られた組成物を、ポリイミド樹脂フィルム(東レ株式会社製「カプトン300H」)上に、スクリーン印刷機を用いて、正方形形状(30mm四方)及び直線パターン(幅:0.1mm、0.5mm及び5mm、長さ:各100mm)に印刷した。印刷物を150℃にて30分間乾燥、硬化させ、めっき下地膜とした。以降の工程は実施例1と同様に行い、めっき積層体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0118】
実施例6~8
無電解めっき下地膜形成用組成物の各成分の配合量を表1に記載のように変更した他は実施例1と同様にめっき積層体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0119】
比較例1
無電解めっき下地膜形成用組成物の各成分の配合量を表1に記載のように変更した他は実施例5と同様にめっき積層体を製造し、評価した。結果を表2に示す。
【0120】
【0121】
【0122】
実施例9
[無電解めっき下地膜形成用組成物の調製]
製造例2で得られたポリアニリン複合体粉末6.45gを2-ブトキシ-2-エトキシエタノール(和光純薬工業株式会社製)11.80g、芳香族溶剤(十条ケミカル株式会社製「#200遅乾溶剤」)5.50gからなる混合溶剤に溶解させた。そこにポリエステルポリオール樹脂溶液(十条ケミカル株式会社製「PL2メジウム」、水酸基価:3.5)8.70g(不揮発性成分:4.00g)、ブロックイソシアネート化合物溶液(十条ケミカル株式会社製「JA-980」、有効NCO%(wt%)=12.5%、硬化温度:150℃)0.87g(不揮発性成分:0.77g)、ウレタン樹脂溶液(MAU1008)6.10g(不揮発性成分:1.83g)、消泡剤(JA-750)0.14gを順次加え均一に混合して組成物(無電解めっき下地膜形成用組成物)を得た。組成物の組成等を表3に示す。
【0123】
[めっき積層体の製造]
(印刷・塗布工程)
調製した組成物をスクリーン印刷機(ニューロング精密工業株式会社製「DP-320」)、スクリーン版(250メッシュ、乳剤厚10μm、印刷パターン50mm×100mmの矩形)を使用してポリイミド樹脂フィルム(東レ株式会社製「カプトン300H」)に印刷した。塗膜を150℃で30分間乾燥して硬化させ、めっき下地膜(無電解めっき下地膜)とした。
無電解めっき下地膜が印刷された部分を切り出して試験片とした。
【0124】
(脱脂工程)
上記試験片を、界面活性剤(奥野製薬工業株式会社製「エースクリーン」)の5.0質量%水溶液中に60℃で5分間浸漬した。その後、試験片の表面を流水で洗浄後、10質量%亜硫酸水素ナトリウム水溶液に60℃で5分間浸漬した。さらに試験片の表面を流水で洗浄し脱脂処理を行った。
【0125】
(Pd担持工程)
脱脂処理後の試験片全体を、触媒化処理剤アクチベーター(塩酸酸性パラジウム化合物水溶液、奥野製薬工業株式会社製)の20倍希釈液中に30℃で5分間浸漬し、金属Pd担持処理を行った。
【0126】
(めっき層形成工程)
Pd担持処理後の試験片について、無電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製「TSP-810無電解銅」)を用いて、55℃で60分間めっき処理を行い、めっき層を形成した後、流水洗浄及び温風乾燥(80℃)を行い、めっき積層体を得た。
得られためっき積層体を実施例1と同様に評価した。結果を表4に示す。
【0127】
実施例10
ポリアニリン複合体粉末を溶解させた溶剤を表3に記載したものに変えた以外は実施例9と同様に無電解めっき下地膜形成用組成物を調製した。以下、実施例9と同様にめっき積層体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0128】
実施例11
[無電解めっき下地膜形成用組成物の調製]
ポリアニリン複合体粉末4.80gを芳香族溶剤(#200遅乾溶剤)0.40g、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル(和光純薬工業株式会社製)9.00g、γブチロラクトン(和光純薬工業株式会社製)6.00gからなる混合溶剤に溶解させた。そこにポリエステルポリオール樹脂溶液(PL2メジウム)11.00g(不揮発性成分:5.06g)、ブロックイソシアネート化合物溶液(JA-980)1.10g(不揮発性成分:0.97g)、ウレタン樹脂溶液(MAU1008)7.60g(不揮発性成分:2.28g)、消泡剤(JA-750)0.10gを順次加え均一に混合して組成物(無電解めっき下地膜形成用組成物)を得た。組成物の組成等を表3に示す。
[めっき積層体の製造、評価]
実施例9と同様にめっき積層体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0129】
実施例12
[無電解めっき下地膜形成用組成物の調製]
ポリアニリン複合体粉末6.45gを芳香族溶剤(#200遅乾溶剤)0.26g、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル8.40g、γブチロラクトン8.64gからなる混合溶剤に溶解させた。そこにポリエステルポリオール樹脂溶液(PL2メジウム)8.70g(不揮発性成分:4.00g)、ブロックイソシアネート化合物溶液(MF-K60B)0.81g(不揮発性成分:0.49g)、ウレタン樹脂溶液(MAU1008)6.10g(不揮発性成分:1.83g)、消泡剤(JA-750)0.14gを順次加え均一に混合して組成物(無電解めっき下地膜形成用組成物)を得た。組成物の組成等を表3に示す。
[めっき積層体の製造、評価]
実施例9と同様にめっき積層体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0130】
実施例13
[無電解めっき下地膜形成用組成物の調製]
ポリアニリン複合体粉末6.45gを芳香族溶剤(#200遅乾溶剤)0.26g、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル8.40g、γブチロラクトン8.64gからなる混合溶剤に溶解させた。そこにポリエステルポリオール樹脂溶液(PL2メジウム)8.70g(不揮発性成分:4.00g)、ブロックイソシアネート化合物溶液(旭化成株式会社製「SBB-70P」、有効NCO%(wt%)=10.3%、硬化温度:110℃)0.65g(不揮発性成分:0.46g)、ウレタン樹脂溶液(MAU1008)6.10g(不揮発性成分:1.83g)、消泡剤(JA-750)0.14gを順次加え均一に混合して組成物(無電解めっき下地膜形成用組成物)を得た。組成物の組成等を表3に示す。
[めっき積層体の製造、評価]
実施例9と同様にめっき積層体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0131】
実施例14
[無電解めっき下地膜形成用組成物の調製]
ポリアニリン複合体粉末6.45gを2-ブトキシ―2―エトキシエタノール11.80g、芳香族溶剤(#200遅乾溶剤)4.50gからなる混合溶剤に溶解させた。そこにポリエステルポリオール樹脂溶液(PL2メジウム)8.70g(不揮発性成分:4.00g)、ブロックイソシアネート化合物溶液(JA-980)1.31g(不揮発性成分:1.15g)、ウレタン樹脂溶液(MAU1008)6.10g(不揮発性成分:1.83g)、消泡剤(JA-750)0.14gを順次加え均一に混合して組成物(無電解めっき下地膜形成用組成物)を得た。組成物の組成等を表3に示す。
[めっき積層体の製造、評価]
実施例9と同様にめっき積層体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0132】
実施例15
[無電解めっき下地膜形成用組成物の調製]
ポリアニリン複合体粉末6.90gを芳香族溶剤(#200遅乾溶剤)0.26g、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル8.40g、γブチロラクトン8.64gからなる混合溶剤に溶解させた。そこにポリエステルポリオール樹脂溶液(PL2メジウム)2.15g(不揮発性成分:1.05g)、ブロックイソシアネート化合物溶液(JA-980)0.20g(不揮発性成分:0.18g)、ウレタン樹脂溶液(MAU1008)15.10g(不揮発性成分:4.53g)、消泡剤(JA-750)0.14gを順次加え均一に混合して組成物(無電解めっき下地膜形成用組成物)を得た。組成物の組成等を表3に示す。
[めっき積層体の製造、評価]
実施例9と同様にめっき積層体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0133】
実施例16
[無電解めっき下地膜形成用組成物の調製]
ポリアニリン複合体粉末6.45gを芳香族溶剤(#200遅乾溶剤)0.26g、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル8.40g、γブチロラクトン8.64gからなる混合溶剤に溶解させた。そこにポリエステルポリオール樹脂溶液(PL2メジウム)8.70g(不揮発性成分:4.00g)、ブロックイソシアネート化合物溶液(MF-K60B)2.17g(不揮発性成分:1.30g)、ウレタン樹脂溶液(MAU1008)6.10g(不揮発性成分:1.83g)、消泡剤(JA-750)0.14gを順次加え均一に混合して組成物(無電解めっき下地膜形成用組成物)を得た。組成物の組成等を表3に示す。
[めっき積層体の製造、評価]
実施例9と同様にめっき積層体を製造し、評価した。結果を表4に示す。
【0134】
【0135】
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の無電解めっき下地膜形成用組成物は、無電解めっきに用いることができる。
【0137】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
この明細書に記載の文献、及び本願のパリ条約による優先権の基礎となる出願の内容を全て援用する。