(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】ペースト状食品入り容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/72 20060101AFI20220921BHJP
B65D 23/02 20060101ALI20220921BHJP
B65D 65/42 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B65D85/72 100
B65D23/02 Z
B65D65/42 C
(21)【出願番号】P 2021188406
(22)【出願日】2021-11-19
【審査請求日】2021-11-29
【審判番号】
【審判請求日】2022-04-11
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】713011603
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(72)【発明者】
【氏名】小野 公裕
(72)【発明者】
【氏名】田中 郁也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢治
(72)【発明者】
【氏名】工藤 章寛
(72)【発明者】
【氏名】金井 和代
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】柳本 幸雄
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0286480(US,A1)
【文献】国際公開第2016/102158(WO,A1)
【文献】特開2021-70489(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170842(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D85/72
B65D65/42
B65D23/02
B65D25/14
B65D1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内面に液状の油が塗布されているペースト状食品入り容器の製造方法であって、
開口部と底部とを有する前記容器を用意し、当該容器の底部を下にして設置する設置ステップと、
前記容器の内面に、HLBが1以上6以下の乳化剤を含む融点が10℃以下の前記油を塗布する塗布ステップと、
前記容器の内部に、前記底部から予め定められた高さまで流動性を有するペースト状食品を充填する充填ステップと、
前記開口部を封止する封止ステップと、
を有し、
前記塗布ステップでは、前記底部の内面から、前記予め定められた高さに対して95%以下の高さの内面に渡る範囲に前記油を塗布
し、
前記ペースト状食品は、生姜、辛子、大蒜等の練りスパイスである、
ペースト状食品入り容器の製造方法。
【請求項2】
前記油は、食用油である、
請求項1に記載のペースト状食品入り容器の製造方法。
【請求項3】
前記油は、菜種油、大豆油、綿実油、とうもろこし油、ゴマ油、及び、オリーブ油の何れか一つである、
請求項2に記載のペースト状食品入り容器の製造方法。
【請求項4】
前記塗布ステップでは、前記底部の内面から、前記予め定められた高さに対して35%超の高さの内面に渡る範囲に前記油を塗布する、
請求項1乃至
3の何れか1項に記載のペースト状食品入り容器の製造方法。
【請求項5】
前記塗布ステップでは、前記底部の内面から、前記予め定められた高さに対して65%超の高さの内面に渡る範囲に前記油を塗布する、
請求項
4に記載のペースト状食品入り容器の製造方法。
【請求項6】
前記塗布ステップでは、前記容器の内面積あたり15g/m
2未満の量で前記油を塗布する、
請求項
5に記載のペースト状食品入り容器の製造方法。
【請求項7】
前記塗布ステップでは、前記容器の内面積あたり10g/m
2未満の量で前記油を塗布する、
請求項
6に記載のペースト状食品入り容器の製造方法。
【請求項8】
前記容器が熱可塑性プラスチック容器である、
請求項1~
7のいずれか1項に記載のペースト状食品入り容器の製造方法。
【請求項9】
前記封止ステップでは、前記開口部よりも幅広で天面が平らに形成されている蓋で前記開口部に着脱自在に閉じることにより、前記開口部を封止する、
請求項1~
8のいずれか1項に記載のペースト状食品入り容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状食品入り容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生姜や、辛子、大蒜等の薬味等が入ったペースト状食品入り容器が知られている。
【0003】
これに関して、特許文献1には、容器の内面に油を塗布すると共に内容物の上端面の周縁部に液溜りを形成することにより、内容物の滑り性を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、消費者にとっては内容物の上端面の液溜りが「油浮き」に見えてしまい、例えば内容物が変化したと思われて、商品イメージが低下してしまうおそれがあった。また、本発明者らは、内容物の滑り性ではなく、内容物を絞り出した後に容器内に内容物が残存してしまうことを課題と考えた。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、内容物を絞り出した後に内容物が残存することを低減するとともに、使用時に油浮きすることを防止することができるペースト状食品入り容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第一態様に係るペースト状食品入り容器の製造方法は、容器の内面に液状の油が塗布されているペースト状食品入り容器の製造方法であって、開口部と底部とを有する前記容器を用意し、当該容器の底部を下にして設置する設置ステップと、前記容器の内面に乳化剤を含む融点が10℃以下の前記油を塗布する塗布ステップと、前記容器の内部に、前記底部から予め定められた高さまで流動性を有するペースト状食品を充填する充填ステップと、前記開口部を封止する封止ステップと、を有し、前記塗布ステップでは、前記底部の内面から、前記予め定められた高さに対して95%以下の高さの内面に渡る範囲に前記油を塗布する。
【0008】
また、本発明の第二態様に係るペースト状食品入り容器の製造方法では、前記乳化剤のHLBは、1以上6以下である。
【0009】
また、本発明の第三態様に係るペースト状食品入り容器の製造方法では、前記油は、食用油である。
【0010】
また、本発明の第四態様に係るペースト状食品入り容器の製造方法では、前記油は、菜種油、大豆油、綿実油、とうもろこし油、ゴマ油、及び、オリーブ油のいずれか一つである。
【0011】
また、本発明の第五態様に係るペースト状食品入り容器の製造方法では、前記ペースト状食品は、ペースト状調味料である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内容物を絞り出した後に内容物が残存することを低減するとともに、使用時に油浮きすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るペースト状食品入り容器を正面から見たときの一部断面図を示す図である。
【
図2】(A)~(D)は、本発明の実施形態に係るペースト状食品入り容器10の製造方法を示す図である。
【
図3】(A)~(B)は、本発明の実施形態に係るペースト状食品入り容器10の保管状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称す場合がある。)について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素及びステップに対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
<ペースト状食品入り容器の構成>
まず、本実施形態に係るペースト状食品入り容器の構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係るペースト状食品入り容器を正面から見たときの一部断面図を示す図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係るペースト状食品入り容器10は、一方向に長い縦長の容器である。このペースト状食品入り容器10は、一方向側に開口部12と、当該一方向とは逆方向に底部14と、を有する。容器10は典型的には熱可塑性プラスチック容器である。開口部12には蓋16が着脱自在に閉じられていることで、開口部12が封止されている。蓋16は、開口部12よりも幅広で天面が平らに形成されている。これにより、
図3で示すように、店舗で陳列する時及び消費者が保管する時は、蓋16を下向きに容器10を倒立させた状態にして取り扱うことができる。容器10を形成する材料は熱可塑性樹脂であり、その中でも容器の形態に成形可能なものであれば特に制限されないが、一般的には、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、中或いは高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、又はこれらの積層体が好ましい。また、積層体にはエチレン・ビニルアルコール共重合体等の酸素バリア層等を設けてもよい。
【0018】
ペースト状食品入り容器10の内部には、流動性を有するペースト状食品18(以下、適宜、「内容物18」という。)が充填されている。ペースト状食品18としては、例えば水分が30%以上、より好ましくは30~90%のものを挙げることができる。具体的には、ペースト状食品18として、生姜、辛子、大蒜等の練りスパイス、このほかケチャップやマヨネーズ等のペースト状調味料等を例示することができる。また、ペースト状食品入り容器10の一部の内面と内容物18との間には液体(液状)の油20が存在している。油20の融点は、10℃以下が好ましく、-20℃以上0℃以下がより好ましい。油20としては、食用油が好ましい。食用油としては、菜種油、大豆油、綿実油、とうもろこし油、ゴマ油、オリーブ油、及び、MCT(Medium Chain Triglyceride、中鎖脂肪酸)の何れか一つが好ましく、乳化剤入り菜種油がより好ましい。
【0019】
このように、ペースト状食品入り容器10は、油20が存在していることで、内容物18を絞り出した後に内容物が残存することを低減できる。この観点から、油20は、乳化剤入り油、より具体的には乳化剤入り菜種油であり、乳化剤のHLB(Hydrophilic-Lipophilic Balance)は1以上6以下であることが好ましい。乳化剤のHLBは、2以上4以下であることがより好ましい。HLBが1以上6以下の乳化剤を含む油とすることで、乳化剤を含まない油やHLBが7以上の乳化剤を含む油よりも、より内容物の残存を低減できる。その理由は定かではないが、こうした親油性の高い乳化剤を含ませることにより、油20が水分を含む内容物と混ざり難く、油20の容器10に対する表面張力が小さくなって内面に均質に拡がり、内容物の表面と容器10の内面の間に存在するからではないかと推察される。また、ペースト状食品入り容器10では、油20が内容物18の液面(端面18A)より上には存在していない。すなわち、ペースト状食品入り容器10では、端面18A上に油浮きがないので、ペースト状食品入り容器10の商品イメージが低下することを抑制できる。
【0020】
<ペースト状食品入り容器の製造方法>
以上のようなペースト状食品入り容器10の製造方法について説明する。
【0021】
図2(A)~(D)は、本実施形態に係るペースト状食品入り容器10の製造方法を示す図である。
【0022】
(設置ステップ)
まずは、
図2(A)に示すように、開口部12と底部14とを有する空容器10Aを用意し、当該空容器10Aの底部14を下にして設置する設置ステップを製造者又はロボットが行う。
【0023】
(塗布ステップ)
次に、
図2(B)に示すように、空容器10Aの内面に油20を塗布する塗布ステップを製造者又はロボットが行う。具体的には、底部14の内面から、予め定められた高さH1(以下、適宜、「充填高さH1」という。)に対して95%以下の高さ(塗布高さH2)の内面に渡る範囲に油20を塗布する。塗布方法としては、製造者又はロボットが、スプレーガンを利用してミスト状に塗布することが好ましい。この塗布ステップでは、底部14の内面から、充填高さH1に対して35%超の高さの内面に渡る範囲に、油20を塗布することが好ましい。また、この塗布ステップでは、底部14の内面から、充填高さH1に対して65%超の高さの内面に渡る範囲に、油20を塗布することがより好ましい。また、塗布ステップでは、空容器10Aの内面積あたり15g/m
2未満の量で油20を塗布することがより好ましい。また、塗布ステップでは、空容器10Aの内面積あたり10g/m
2未満の量で油20を塗布することが更により好ましい。油20を塗布する範囲及び塗布する量を調整することにより、内容物を絞り出した後の残量をより低減できる。
【0024】
(充填ステップ)
次に、
図2(C)に示すように、油20が塗布された空容器10Aの内部に、底部14から予め定められた高さ(充填高さH1)まで流動性を有するペースト状食品18を充填する充填ステップを製造者又はロボットが行う。
【0025】
(封止ステップ)
最後に、
図2(D)に示すように、開口部12をシールして更に蓋16で閉じることで封止する封止ステップを製造者又はロボットが行う。
【0026】
<効果>
以上、本実施形態では、ペースト状食品入り容器の製造方法が、開口部12と底部14とを有する容器10Aを用意し、当該容器10Aの底部14を下にして設置する設置ステップと、容器10Aの内面に乳化剤を含む油を塗布する塗布ステップと、容器10Aの内部に、底部14から予め定められた高さH1まで流動性を有するペースト状食品18を充填する充填ステップと、開口部12を封止する封止ステップと、を有し、塗布ステップでは、底部14の内面から、予め定められた高さH1に対して95%以下の高さH2の内面に渡る範囲に油20を塗布する。
この製造方法によれば、内容物(ペースト状食品)を絞り出した後に内容物18が残存することを低減するとともに、例えば、倒立状態で保管していた後、正立状態に戻してペースト状食品入り容器10を使用する時に油浮きすることを防止することができる。ただし、この効果によって、本実施形態では、正立状態で保管していた後、ペースト状食品入り容器10を使用する場合を排除するものではない。
【0027】
また、本実施形態において、塗布ステップでは、底部14の内面から、予め定められた高さH1に対して35%超の高さの内面に渡る範囲に油20を塗布することが好ましい。
この製造方法によれば、内容物18が残存することを一層低減することができる。
【0028】
また、本実施形態において、塗布ステップでは、底部14の内面から、予め定められた高さH1に対して65%超の高さの内面に渡る範囲に油20を塗布することが好ましい。
この製造方法によれば、内容物18が残存することを一層低減することができる。
【0029】
また、本実施形態において、塗布ステップでは、容器10Aの内面積あたり15g/m2未満の量で油20を塗布することが好ましい。
この製造方法によれば、内容物18が残存することを一層低減することができる。
【0030】
また、本実施形態において、塗布ステップでは、容器10Aの内面積あたり10g/m2未満の量で油20を塗布することが好ましい。
この製造方法によれば、内容物18が残存することを一層低減することができる。
【実施例】
【0031】
<実験例1>
まずは、実験例1について説明する。なお、以下に示す実験例1~3及び参考例1では、低密度ポリエチレン層、中密度ポリエチレン層及び酸素バリア層(エチレン・ビニルアルコール共重合体)を有し、油又は内容物と接する最内層が低密度ポリエチレンであるオレフィン系樹脂の積層体により形成された容器10Aを使用した。
【0032】
実験例1のサンプル1として、空容器10Aの内面に、油を塗布しないものを用意した。実験例1のサンプル2として、空容器10Aの内面全面に、乳化剤を含まない液状のMCTを、スプレーガンを利用してミスト状に塗布した。実験例1のサンプル3として、空容器10Aの内面全面に、乳化剤を含まない液状の菜種油を、スプレーガンを利用してミスト状に塗布した。実験例1のサンプル4として、空容器の内面全面に、HLBが7以上の乳化剤、具体的にはHLBが約8の乳化剤を含む液状の菜種油(以下、「高HLB乳化剤入り菜種油」という。)を、スプレーガンを利用してミスト状に塗布した。実験例1のサンプル5として、空容器の内面全面に、HLBが1以上6以下の乳化剤、具体的にはHLBが約3の乳化剤を含む液状の菜種油(以下、「低HLB乳化剤入り菜種油」という。)を、スプレーガンを利用してミスト状に塗布した。その後、各容器の内部に、流動性を有するペースト状食品(生姜、辛子又は大蒜)を充填した。
次に、サンプル1~5の容器に内容物を通常の使用方法で外部に絞り出した後、内容物の残量の割合を評価した。具体的には、油を塗布しなかったサンプル1の内容物の残量を基準にして、当該基準に対する内容物の残量の割合を算出した。評価結果は、以下の表1の通りとなった。
なお、この際、基準に対する内容物の残量の割合が75%以上である場合を「×」とし、基準に対する内容物18の残量の割合が50%以上75%未満である場合を「△」とし、基準に対する内容物の残量の割合が25%以上50%未満である場合を「〇」とし、基準に対する内容物の残量の割合が25%未満である場合を「◎」として評価した。
【0033】
【0034】
表1の結果から、低HLB乳化剤入り油を容器の内面に塗布することで、乳化剤を含まない油や、高HLB乳化剤入り油を容器の内面に塗布することに比べて、より内容物の残存を低減できることを確認した。
【0035】
<実験例2>
次に、実験例2について説明する。
【0036】
実験例2では、油20としてHLBが約3の乳化剤を含む液状の菜種油を用意し、内容物18と、油20の塗布高さH2と、油20の油量を変化させた27つのサンプルを用意した。具体的には、内容物18を、生姜、辛子、大蒜と変化させた。また、
図2(B)に示すように、充填高さH1に対して約35%の高さを「低位置」とし、充填高さH1に対して約65%の高さを「中位置」とし、充填高さH1に対して約95%の高さを「高位置」としたとき、油20の塗布高さH2をこれらの位置に変化させた。また、油20の油量を、低位置、中位置、及び、高位置において、それぞれ5g/m
2、10g/m
2、15g/m
2と変化させた。
【0037】
以上のように変化させた各サンプルの内容物18を通常の使用方法で外部に絞り出した後、内容物18の残量の割合を評価した。具体的には、油20を塗布しなかったサンプルの残量を基準にして、当該基準に対する内容物18の残量の割合を算出した。評価結果は、以下の表1の通りとなった。
なお、この際、基準に対する内容物18の残量の割合が75%以上である場合を「×」とし、基準に対する内容物18の残量の割合が50%以上75%未満である場合を「△」とし、基準に対する内容物18の残量の割合が25%以上50%未満である場合を「〇」とし、基準に対する内容物18の残量の割合が25%未満である場合を「◎」として評価した。
【0038】
【0039】
表2の結果から、全てのサンプルにおいて、内容物18を絞り出した後に内容物18が残存することを防止できることが確認できた。ここで、塗布位置について考察した場合、中位置のサンプル及び高位置のサンプル、すなわち、底部14の内面から、充填高さH1に対して35%超の高さの内面に渡る範囲に油を塗布したサンプルは、評価結果として「〇」又は「◎」の数が多く、内容物18が残存することを一層低減できるため、低位置に比べて好ましいことが確認できた。また、高位置のサンプル、すなわち、塗布ステップでは、底部14の内面から、充填高さH1に対して65%超の高さの内面に渡る範囲に油を塗布したサンプルでは、評価結果として全て「〇」又は「◎」であり、内容物18が残存することを一層低減できるため、低位置や中位置に比べて更に好ましいことが確認できた。また、油量について考察した場合、5g/m2超のサンプルでは、全て「〇」又は「◎」であり、内容物18が残存することを一層低減できるため、5g/m2以下である場合に比べて好ましいことが確認できた。また、10g/m2超のサンプルでは、すなわち、15g/m2のサンプルでは、「◎」の数が多く、内容物18が残存することを一層低減できるため、10g/m2以下に比べて更に好ましいことが確認できた。
なお、乳化剤を含む油20に変えて乳化剤を含まない油を使用したこと以外は実験例1と同様にしたサンプルでは、「×」のものが確認された。
【0040】
<実験例3>
次に、実験例3について説明する。
【0041】
実験例3では、乳化剤を含む油20の塗布高さH2と、油20の油量を変化させた27つのサンプルを用意した。具体的には、内容物18を、生姜、辛子、大蒜と変化させた。また、
図2(B)に示すように、油20の塗布高さH2を、「低位置」、「中位置」、「高位置」に変化させた。また、油20の油量を、低位置、中位置、及び、高位置において、それぞれ5g/m
2、10g/m
2、15g/m
2と変化させた。
【0042】
以上のように変化させた各サンプルを、
図3(A)に示すように、蓋16が接地面と接した状態、すなわち、倒立状態で3週間保管した後、
図1に示す正立状態に戻して内容物18の端面に油浮きが有るか否かを評価した。評価結果は、以下の表3の通りとなった。
なお、この際、油浮きが有る場合を「×」、油浮きが無い場合を「〇」として評価した。
【0043】
【0044】
表3の結果から、底部14の内面から、高位置以下、すなわち、充填高さH1に対して95%以下の高さの内面に渡る範囲に油20を塗布することで、全てのサンプルで「〇」評価となり、油浮きがないことが確認できた。なお、上記サンプルとは別に、底部14の内面から、高位置超、すなわち、充填高さH1に対して95%超の高さの内面に渡る範囲に油20を塗布したサンプルを用意した場合では、サンプルによっては油浮きが確認できた。これにより、塗布ステップでは、底部14の内面から、充填高さH1に対して95%以下の高さの内面に渡る範囲に油20を塗布することが好ましいことが分かった。
【0045】
<参考例1>
次に、参考例1について説明する。
【0046】
参考例1では、乳化剤を含む油20の塗布高さH2と、油20の油量を変化させた18つのサンプルを用意した。具体的には、内容物18を、生姜、辛子と変化させた。また、
図2(B)に示すように、油20の塗布高さH2を、「低位置」、「中位置」、「高位置」に変化させた。また、油20の油量を、低位置、中位置、及び、高位置において、それぞれ5g/m
2、10g/m
2、15g/m
2と変化させた。
【0047】
以上のように変化させた各サンプルを、
図3(B)に示すように、底部14が接地面と接した状態、すなわち、正立状態で3週間保管した後そのまま、内容物18の端面に油浮きが有るか否かを評価した。評価結果は、以下の表4の通りとなった。
なお、この際、油浮きが有る場合を「×」、油浮きが無い場合を「〇」として評価した。
【0048】
【0049】
表4の結果から、正立状態で保管する場合においては、中位置、すなわち、底部14の内面から、充填高さH1に対して35%超且つ95%未満の高さの内面に渡る範囲の位置に油を塗布すれば、全てのサンプルで「〇」評価となり、油浮きがないことが確認できた。これにより、塗布ステップでは、底部14の内面から、充填高さH1に対して35%超且つ95%未満の高さの内面に渡る範囲に油20を塗布することが好ましいことが分かった。
【0050】
<変形例>
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記の実施形態に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、前述した実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0051】
例えば、上記実施形態では、ペースト状食品入り容器10は、一方向に長い縦長の容器である場合を説明したが、形状やサイズは特に限定されず、一方向の長さと、一方向と直交する長さが同一の容器であってもよい。
【0052】
また、上記実験例1及び2では、ペースト状食品18が生姜、辛子、又は、大蒜である場合を説明したが、ペースト状食品18が他のペースト状食品であっても同様の評価結果となることを確認した。
【符号の説明】
【0053】
10:ペースト状食品入り容器
12:開口部
14:底部
18:ペースト状食品
20:油
【要約】
【課題】内容物を絞り出した後に内容物が残存することを低減するとともに、使用時に油浮きすることを防止する。
【解決手段】容器の内面に液状の油が塗布されているペースト状食品入り容器(10)の製造方法は、容器(10A)の底部(14)を下にして設置する設置ステップと、容器(10A)の内面に乳化剤を含む融点が10℃以下の油(20)を塗布する塗布ステップと、容器(10A)の内部に、底部(14)から予め定められた高さ(H1)まで流動性を有するペースト状食品(18)を充填する充填ステップと、開口部(12)を封止する封止ステップと、を有し、塗布ステップでは、底部(14)の内面から、予め定められた高さ(H1)に対して95%以下の高さの内面に渡る範囲に油(20)を塗布する。
【選択図】
図2