(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】気相成長方法及び気相成長装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20220921BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20220921BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/42
C23C16/44 J
(21)【出願番号】P 2021518340
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2020017333
(87)【国際公開番号】W WO2020226058
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2019088223
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】水島 一郎
(72)【発明者】
【氏名】石井 成明
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-197474(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043446(WO,A1)
【文献】特開2018-186228(JP,A)
【文献】特開2006-086166(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0169411(US,A1)
【文献】特開平08-172083(JP,A)
【文献】特開2005-187842(JP,A)
【文献】米国特許第6063197(US,A)
【文献】特開昭50-043060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C23C 16/42
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応室と、前記反応室からガスを排出する排気ポンプと、前記反応室の中の圧力を調整する圧力調整バルブと、前記反応室と前記圧力調整バルブとの間に設けられる第1の部分及び前記圧力調整バルブと前記排気ポンプとの間に設けられる第2の部分を含む排気配管と、を有する気相成長装置を用いた気相成長方法であって、
前記反応室に第1の基板を搬入し、前記第1の基板を所定温度となるように加熱し、所定流量でプロセスガスを供給し、前記圧力調整バルブを制御して前記反応室の中の圧力を所定圧力に調整することにより前記第1の基板の表面に炭化珪素膜を形成すると共に、少なくとも前記第2の部分に炭素を含む副生成物を堆積し、
前記第1の基板を前記反応室から搬出し、
前記排気配管の中の圧力を制御して、少なくとも前記第2の部分に弗素を含有するガスを含むガスを供給して前記副生成物を除去し、
前記副生成物を除去した後に、前記反応室に第2の基板を搬入し、前記第2の基板の表面に炭化珪素膜を形成する、前記気相成長方法。
【請求項3】
前記排気配管は、除害装置と、前記排気ポンプと前記除害装置との間に設けられる第3の部分を有し、
前記弗素を含有するガスを含むガスを供給する際に、前記第3の部分の中の圧力が大気圧の95%以上かつ前記大気圧に対して陰圧となるように制御する請求項1記載の気相成長方法。
【請求項13】
前記第1の部分及び前記第2の部分の少なくともいずれか一方は、前記副生成物を溜める貯留部を含み、
前記副生成物を除去した後、前記反応室に第2の基板を搬入する前に、前記貯留部を取り外し、前記貯留部の中に残留する前記副生成物を、薬液を用いて除去する請求項1記載の気相成長方法。
【請求項21】
反応室と、前記反応室からガスを排出する排気ポンプと、前記排気ポンプから排出されたガスを除害する除害装置と、前記反応室の中の圧力を調整する圧力調整バルブと、前記反応室と前記圧力調整バルブとの間に設けられる第1の部分、前記圧力調整バルブと前記排気ポンプとの間に設けられる第2の部分、及び前記排気ポンプと前記除害装置との間に設けられる第3の部分を含む排気配管と、を有する気相成長装置を用いた気相成長方法であって、
前記反応室に第1の基板を搬入し、前記第1の基板を所定温度となるように加熱し、所定流量でプロセスガスを供給し、前記圧力調整バルブを制御して前記反応室の中の圧力を所定圧力に調整することにより前記第1の基板の表面に炭化珪素膜を形成すると共に、少なくとも前記第3の部分に炭素を含む副生成物を堆積し、
前記第1の基板を前記反応室から搬出し、
前記第3の部分の中の圧力が大気圧の95%以上かつ前記大気圧に対して陰圧となるように制御して、少なくとも前記第3の部分に弗素を含有するガスを含むガスを供給して前記副生成物を除去し、
前記副生成物を除去した後に、前記反応室に第2の基板を搬入し、
前記第2の基板の表面に炭化珪素膜を形成する、気相成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長の間に弗素を含むガスを用いてクリーニングを行う気相成長方法及び気相成長装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素膜を形成する気相成長装置では、反応室にシリコン(Si)や炭素(C)を含む原料ガスなどのプロセスガスを流し、基板の表面に炭化珪素膜を形成する。反応室で消費されなかったプロセスガスや、プロセスガスの反応により生じたガスを含む排気ガスは、反応室から排気配管、排気ポンプ、除害装置などを通って装置外に排出される。
【0003】
排気ガスは、反応室から排気配管を通過する際に冷却されることで凝縮して、排気配管の内面に液体や固体の副生成物を堆積させる。この副生成物が、排気配管の閉塞の原因になるという問題がある。
【0004】
排気配管が閉塞すると、気相成長装置のメンテナンス作業が必要となり、気相成長装置の稼働率が低下する。また、排気ガスに由来する副生成物には、有害ガスを発生する物質や、発火性がある物質もあり、メンテナンス作業に危険が伴う場合もある。このため、排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去するクリーニング方法が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去する気相成長方法及び気相成長装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の気相成長方法は、反応室と、前記反応室からガスを排出する排気ポンプと、前記反応室の中の圧力を調整する圧力調整バルブと、前記反応室と前記圧力調整バルブとの間に設けられる第1の部分及び前記圧力調整バルブと前記排気ポンプとの間に設けられる第2の部分を含む排気配管と、を有する気相成長装置を用いた気相成長方法であって、前記反応室に第1の基板を搬入し、前記第1の基板を所定温度となるように加熱し、所定流量でプロセスガスを供給し前記圧力調整バルブを制御して前記反応室の中の圧力を所定圧力に調整することにより前記第1の基板の表面に炭化珪素膜を形成すると共に、前記第1の部分及び前記第2の部分の少なくともいずれか一方に炭素を含む副生成物を堆積し、前記第1の基板を前記反応室から搬出し、前記排気配管の中の圧力を制御して、前記排気配管の少なくとも一部に、弗素を含有するガスを含むガスを供給して前記副生成物を除去し、前記副生成物を除去した後に、前記反応室に第2の基板を搬入し、前記第2の基板の表面に炭化珪素膜を形成する、前記気相成長方法である。
【0008】
本発明の一態様の気相成長装置は、反応室と、前記反応室からガスを排出する排気ポンプと、少なくとも前記反応室と前記排気ポンプとの間に設けられた排気配管と、前記排気配管の中に堆積される副生成物の表面を動かす機構と、を備える。
【0009】
本発明の別の一態様の気相成長装置は、反応室と、前記反応室からガスを排出する排気ポンプと、少なくとも前記反応室と前記排気ポンプとの間に設けられ、前記副生成物を溜める貯留部を含む排気配管と、前記貯留部を加熱するヒータと、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去する気相成長方法及び気相成長装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態の気相成長装置の一例の模式図。
【
図3】第1の実施形態の気相成長方法の作用及び効果の説明図。
【
図4】第1の実施形態の変形例の気相成長方法の説明図。
【
図5】第2の実施形態の気相成長装置の一例の模式図。
【
図7】第2の実施形態の気相成長方法及び気相成長装置の作用及び効果の説明図。
【
図8】第3の実施形態の気相成長装置の一例の模式図。
【
図10】第4の実施形態の気相成長装置の一例の模式図。
【
図11】第4の実施形態の気相成長装置の一部の模式断面図。
【
図14】第5の実施形態の気相成長装置の一例の模式図。
【
図16】第5の実施形態の気相成長装置の一例の模式図。
【
図18】第7の実施形態の気相成長装置の一例の模式図。
【
図20】第8の実施形態の気相成長装置の一例の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0013】
本明細書中、同一又は類似の部材について、同一の符号を付す場合がある。
【0014】
本明細書中、気相成長装置が膜の形成が可能に設置された状態での重力方向を「下」と定義し、その逆方向を「上」と定義する。したがって、「下部」とは、基準に対し重力方向の位置、「下方」とは基準に対し重力方向を意味する。そして、「上部」とは、基準に対し重力方向と逆方向の位置、「上方」とは基準に対し重力方向と逆方向を意味する。また、「縦方向」とは重力方向である。
【0015】
また、本明細書中、「プロセスガス」とは、膜の形成のために用いられるガスの総称であり、例えば、ソースガス、アシストガス、ドーパントガス、キャリアガス、及び、それらの混合ガスを含む概念とする。
【0016】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の気相成長方法は、反応室と、反応室からガスを排出する排気ポンプと、反応室の中の圧力を調整する圧力調整バルブと、反応室と圧力調整バルブとの間に設けられる第1の部分及び圧力調整バルブと排気ポンプとの間に設けられる第2の部分を含む排気配管と、を有する気相成長装置を用いた気相成長方法であって、反応室に第1の基板を搬入し、第1の基板を所定温度となるように加熱し、所定流量でプロセスガスを供給し圧力調整バルブを制御して反応室の中の圧力を所定圧力に調整することにより第1の基板の表面に炭化珪素膜を形成すると共に、第1の部分及び第2の部分の少なくともいずれか一方に炭素を含む副生成物を堆積し、第1の基板を反応室から搬出し、排気配管の中の圧力を制御して、排気配管の少なくとも一部に、弗素を含有するガスを含むガスを供給して副生成物を除去し、副生成物を除去した後に、反応室に第2の基板を搬入し、第2の基板の表面に炭化珪素膜を形成する。
【0017】
図1は、第1の実施形態の気相成長装置の一例の模式図である。第1の実施形態の一例の気相成長装置は、炭化珪素膜を形成するための気相成長装置100である。第1の実施形態の気相成長装置100は、ウェハ1枚毎に成膜する縦型の枚葉式のエピタキシャル炭化珪素膜の気相成長装置100である。
【0018】
気相成長装置100は、反応室10、圧力調整バルブ12、排気ポンプ14、除害装置16、第1の排気配管18(第1の部分)、第2の排気配管20(第2の部分)、第3の排気配管22(第3の部分)、第4の排気配管24、クリーニングガス供給管26、圧力制御部28を備える。反応室10は、ガス供給口10a、サセプタ10b、ヒータ10c、ガス排気口10dを有する。第4の排気配管24には、排気ダクト30が接続される。排気配管は、第1の排気配管18、第2の排気配管20、第3の排気配管22、及び、第4の排気配管24を含む。
【0019】
反応室10は、例えば、ステンレス製である。反応室10は、円筒形状の壁を有する。反応室10内でウェハWの表面に炭化珪素膜が形成される。ウェハWは基板の一例である
【0020】
ガス供給口10aは、反応室10の上部に設けられる。ガス供給口10aから、プロセスガスが反応室10内に供給される。
【0021】
プロセスガスは、例えば、シリコン(Si)のソースガス、炭素(C)のソースガス、n型不純物のドーパントガス、及び、キャリアガスを含む混合ガスである。シリコンのソースガスは、例えば、シラン(SiH4)である。炭素のソースガスは、例えば、プロパン(C3H8)である。n型不純物のドーパントガスは、例えば、窒素ガスである。キャリアガスは、例えば、水素ガス、又は、アルゴンガスである。さらに、気相中におけるシリコンのクラスター化を抑制することで高い成膜速度を実現する目的で添加するアシストガスを加えてもいい。アシストガスは、塩素を含むガスであり、例えば、塩化水素ガス(HCl)である。
【0022】
サセプタ10bには、ウェハWが載置可能である。サセプタ10bには、中心部に開口部が設けられていても構わない。サセプタ10bは、ホルダの一例である。
【0023】
ヒータ10cは、サセプタ10bの下に設けられる。ヒータ10cは、サセプタ10bに保持されたウェハWを下方から加熱する。ヒータ10cは、例えば、抵抗加熱ヒータである。
【0024】
ガス排気口10dは、反応室10の下部に設けられる。ガス排気口10dから、排気ガスが排気される。排気ガスは、反応室10で消費されなかったプロセスガスや、プロセスガスの反応により生じたガスを含む。
【0025】
排気ガスは、
図1中の白矢印で示すように、第1の排気配管18、圧力調整バルブ12、第2の排気配管20、排気ポンプ14、第3の排気配管22、除害装置16、第4の排気配管24を通って、気相成長装置100の外に排気される。排気ガスは、更に、排気ダクト30を通って、例えば、気相成長装置100が設置される建屋の外に排気される。排気ダクト30の外は大気圧である。
【0026】
第1の排気配管18は、反応室10と圧力調整バルブ12との間に設けられる。第2の排気配管20は、圧力調整バルブ12と排気ポンプ14との間に設けられる。第3の排気配管22は、排気ポンプ14と除害装置16との間に設けられる。第4の排気配管24は、除害装置16と排気ダクト30との間に設けられる。
【0027】
以下、反応室10の圧力を第0の圧力P0、第1の排気配管18の中の圧力を第1の圧力P1、第2の排気配管20の中の圧力を第2の圧力P2、第3の排気配管22の中の圧力を第3の圧力P3、第4の排気配管24の中の圧力を第4の圧力P4と称する。
【0028】
排気ポンプ14は、反応室10からガスを排出する。排気ポンプ14は、反応室10の中の圧力を低減する。排気ポンプ14は、例えば、真空ポンプである。
【0029】
圧力調整バルブ12は、反応室10の中の圧力を、所望の圧力に調整する。圧力調整バルブ12は、第1の排気配管18の中の第1の圧力P1を調整する。圧力調整バルブ12は、例えば、スロットルバルブである。圧力調整バルブ12は、例えば、バタフライバルブでもよい。
【0030】
圧力制御部28は、例えば、圧力調整バルブ12を制御する。例えば、圧力制御部28からの指令により、圧力調整バルブ12の開度が変化し、反応室10の中の圧力や第1の排気配管18の中の第1の圧力P1が制御される。
【0031】
反応室10の圧力P0と第1の圧力P1は、例えば、図示しない圧力計で計測される。圧力制御部28は、例えば、計測された反応室10の圧力P0や第1の圧力P1の結果を基に、反応室10の圧力P0や第1の圧力P1が所望の圧力となる圧力調整バルブ12の開度を決定する。圧力制御部28は、圧力調整バルブ12の開度が決定した開度となるように、圧力調整バルブ12に指令を発する。
【0032】
第2の圧力P2は、例えば、図示しない圧力計で計測される。例えば、計測された反応室10の圧力P0、第1の圧力P1、及び第2の圧力P2の少なくとも一つの計測結果を基に、反応室10の圧力P0、第1の圧力P1、及び第2の圧力P2の少なくとも一つが所望の圧力となるように排気ポンプ14の排気速度を決定する。ポンプの排気速度は、例えば、ポンプの中のローターの回転速度によって、制御する。
【0033】
除害装置16は、排気ポンプ14と排気ダクト30との間に設けられる。除害装置16は、例えば、燃焼式の除害装置である。あるいは乾式(吸着式)の除害装置でもよい。
【0034】
除害装置16は、反応室10から排気された排気ガスを無害化する。無害化された排気ガスは、気相成長装置100の外部に排出される。
【0035】
クリーニングガス供給管26は、第1の排気配管18に接続される。クリーニングガス供給管26は、第1の排気配管18にクリーニングガスを供給する。クリーニングガスにより、反応室10での成膜が行われていない時に、第1の排気配管18、第2の排気配管20、及び、第3の排気配管22の中に堆積した副生成物が除去される。
【0036】
このとき、ガス供給口10aから、反応室10の中に、例えば窒素やアルゴンなどのパージガスを流して、クリーニングガスが反応室10内に流れないようにする。副生成物のクリーニングによる発熱反応で配管の温度が180℃程度まで上昇しても、主として金属からなる排気配管はエッチングされないが、反応室10内にサセプタ10bやヒータ10cなど、クリーニングによりエッチングされやすい部材があるためである。
【0037】
クリーニングガスは、ガス供給口10aから、反応室10での成膜が行われていない時に、反応室10内を通して第1の排気配管18に供給してもよい。この場合、第1の排気配管18、第2の排気配管20、及び、第3の排気配管22の中に堆積した副生成物に加えて、反応室10内に堆積した副生成物が除去される。この場合には、反応室10内のサセプタ10bやヒータ10cなど、クリーニングによりエッチングされやすい部材がエッチングされることを避けるため、反応室10内の温度が例えば100℃以上に上がらないように、エッチングガスの流量等を制御する必要がある。
【0038】
クリーニングガスは、弗素を含有するガスを含む。クリーニングガスは、例えば、三弗化塩素(ClF3)ガスや弗素(F2)を含む。クリーニングガスは、例えば、三弗化塩素ガスの単ガスであっても、その他のガスとの混合ガスであっても構わない。クリーニングガスは、例えば、三弗化塩素ガスと窒素ガスとの混合ガス、又は、三弗化塩素ガスとアルゴンガスとの混合ガスである。
【0039】
排気ダクト30は、気相成長装置100の外部に設けられる。排気ダクト30は、第4の排気配管24に接続される。排気ダクト30により、第3の排気配管22の中の第3の圧力P3、及び、第4の排気配管24の中の第4の圧力P4が、大気圧程度、あるいは大気圧に対して陰圧に保たれる。
【0040】
次に、第1の実施形態の気相成長方法について説明する。ウェハW上にエピタキシャル成長により炭化珪素膜を形成する場合を例に説明する。
【0041】
なお、第1の実施形態の気相成長方法は、炭化珪素膜の形成に伴い発生する副生成物のクリーニングを行う気相成長方法である。
【0042】
最初に、反応室10の中にウェハW(第1の基板)を搬入し、サセプタ10bの上に載置する。ウェハWは、ヒータ10cにより加熱される。ウェハWは、所定温度となるように加熱される。ウェハWは、例えば、1600℃に加熱される。
【0043】
ガス供給口10aから、所定流量のプロセスガスを反応室10の中に供給する。プロセスガスは、例えば、シラン(SiH4)、プロパン(C3H8)、窒素ガス、水素ガスの混合ガスである。さらに塩化水素ガス(HCl)を加えてもよい。
【0044】
プロセスガスを反応室10の中に供給しながら、排気ポンプ14を用いて反応室10の中の圧力を低く保つ。反応室10の中を減圧状態にする。反応室10の中の圧力は、圧力調整バルブ12を用いて、例えば200Torr等の、所定圧力に調整する。
【0045】
ウェハWの表面に炭化珪素膜がエピタキシャル成長により形成される。
【0046】
炭化珪素膜の成長中、排気ガスは、
図1中の白矢印で示すように、第1の排気配管18、圧力調整バルブ12、第2の排気配管20、排気ポンプ14、第3の排気配管22、除害装置16、第4の排気配管24を通って、気相成長装置100の外に排気される。排気ガスは、更に、排気ダクト30を通って、例えば、気相成長装置100が設置される建屋の外に排気される。
【0047】
排気ガスの中には、反応室10で消費されなかったプロセスガスや、プロセスガスガスの反応により生じたガスを含む。排気ガスは、反応室10から第1の排気配管18、第2の排気配管20、第3の排気配管22を通過する際に冷却されることで凝縮して、第1の排気配管18、第2の排気配管20、第3の排気配管22の内面に液体や固体の副生成物を堆積させる。
【0048】
ウェハWの表面に炭化珪素膜が形成されると共に、少なくとも圧力調整バルブ12の上流側又は下流側に炭素を含む副生成物が堆積する。ウェハWの表面に炭化珪素膜が形成されると共に、第1の排気配管18、及び、第2の排気配管20の少なくともいずれか一方に炭素を含む副生成物が堆積する。
【0049】
副生成物には、例えば、シリコン(Si)、水素(H)を含む高分子化合物が含まれる。また、塩素(Cl)が含まれることもある。シリコン(Si)、水素(H)を含む高分子化合物は、発火性の高い物質である。さらに塩素(Cl)を含む場合はオイリーシランと称され、これも発火性の高い物質である。
【0050】
ウェハWの表面に炭化珪素膜を形成した後、ウェハWを反応室10の外に搬出する。
【0051】
図2は、第1の実施形態の気相成長方法の説明図である。
【0052】
ウェハWを反応室10の外に搬出した後、反応室10の中にダミーウェハDWを搬入し、サセプタ10bの上に載置する。次に、クリーニングガス供給管26から第1の排気配管18の中に、クリーニングガスを供給すると共に、パージガスをガス供給口10aから、反応室10内を通して、第1の排気配管18に供給する。クリーニングガスは、例えば、窒素で希釈した三弗化塩素(ClF3)ガスであり、その流量は、例えば、窒素は500sccm、三弗化塩素は100sccmである。またパージガスは例えば窒素ガスやアルゴンガスであり、その流量は、例えば、500sccmである。
【0053】
クリーニングガスを供給しながら、排気ポンプ14を用いて反応室10、第1の排気配管18及び第2の排気配管20の中の圧力を低く保つ。反応室10、第1の排気配管18、及び第2の排気配管20の中を減圧状態にする。反応室10の圧力は例えば100Torr、第1の排気配管18内の第1の圧力P1は例えば10Torr、第2の排気配管20内の第2の圧力P2は例えば1.0Torrである。
【0054】
あるいは、ウェハWを反応室10の外に搬出した後、反応室10の中にダミーウェハDWを搬入し、サセプタ10bの上に載置する。次に、ガス供給口10aから反応室10を通して第1の排気配管18の中に、クリーニングガスを供給する。クリーニングガスは、例えば、窒素で希釈した三弗化塩素(ClF3)ガスである。その流量は、例えば窒素は1slm、三弗化塩素は100sccmである。
【0055】
クリーニングガスを供給しながら、排気ポンプ14を用いて反応室10、第1の排気配管18及び第2の排気配管20の中の圧力を低く保つ。反応室10、第1の排気配管18及び第2の排気配管20の中を減圧状態にする。反応室10の圧力は例えば100Torr、第1の排気配管18内の第1の圧力P1は例えば50Torr、第2の排気配管20内の第2の圧力P2は例えば1.5Torrである。
【0056】
また、排気ダクト30による排気により、第3の排気配管22及び第4の排気配管24の中の圧力は、大気圧程度に、あるいは大気圧より低く保たれる。第3の排気配管22及び第4の排気配管24の中の圧力は、大気圧程度に、あるいは大気圧に対して陰圧になる。第3の排気配管22の中の第3の圧力P3は、例えば、大気圧の95%以上である。
【0057】
クリーニングガスは、
図2中の黒矢印で示すように、第1の排気配管18、圧力調整バルブ12、第2の排気配管20、排気ポンプ14、第3の排気配管22、除害装置16、第4の排気配管24を通って、気相成長装置100の外に排気される。クリーニングガスは、更に、排気ダクト30を通って、例えば、気相成長装置100が設置される建屋の外に排気される。
【0058】
反応室10の中の圧力を第0の圧力P0、第1の排気配管18の中の圧力を第1の圧力P1、第2の排気配管20の中の圧力を第2の圧力P2、第3の排気配管22の中の圧力を第3の圧力P3、第4の排気配管24の中の圧力を第4の圧力P4、大気圧を大気圧APとした場合に、クリーニングガスによるクリーニング中は、下記式の関係が保たれる。
P0>P1>P2
【0059】
さらに、第1の圧力P1が例えば10Torr以上50Torr以下、第2の圧力P2が例えば1Torr以上5Torr以下となるように制御される。これらの圧力は圧力制御部28からの指令により、圧力調整バルブ12の開度を調整することで、制御される。
【0060】
このとき、例えば、図示しない圧力計で、反応室10の圧力P0と第1の圧力P1を計測する。計測された反応室10の圧力P0と第1の圧力P1の結果を基に、圧力調整バルブ12の開度を調整する。
【0061】
圧力制御部28は、例えば、計測された反応室10の圧力P0と第1の圧力P1の結果を基に、反応室10の圧力P0と第1の圧力P1とが所望の圧力となる圧力調整バルブ12の開度を決定する。圧力制御部28は、圧力調整バルブ12の開度が決定した開度となるように、圧力調整バルブ12に指令を発する。
【0062】
また、例えば、図示しない圧力計で、反応室10の圧力P0と第1の圧力P1と第2の圧力P2を計測する。計測された反応室10の圧力P0と第1の圧力P1の結果を基に、排気ポンプ14の排気速度を調整する。
【0063】
排気ポンプ14の排気速度は、例えば、計測された反応室10の圧力P0と第1の圧力P1と第2の圧力P2の結果を基に、反応室10の第0の圧力P0、第1の圧力P1、及び第2の圧力P2が所定圧力となる排気ポンプ内の例えばローターの回転数を決定する。
【0064】
また、例えば、第3の圧力P3が大気圧の95%以上となるように制御される。排気ダクト30による排気量を調整することで、第3の圧力P3が大気圧APの95%以上となるように制御される。
【0065】
クリーニングガスにより、第1の排気配管18、第2の排気配管20、及び、第3の排気配管22の中に堆積した副生成物が除去される。また、クリーニングガスを反応室10内に流す場合には、反応室10内の副生成物も除去される。
【0066】
クリーニングガスを供給している間、第1の排気配管18、第2の排気配管20、及び、第3の排気配管22の壁はクリーニングガスと副生成物との反応により発熱するが、その温度は、例えば、180℃以下に保たれる。クリーニングガスを供給している間、第1の排気配管18、第2の排気配管20、及び、第3の排気配管22の壁は、必ずしも外部から積極的には加熱しない。
【0067】
クリーニングガスにより、第1の排気配管18、第2の排気配管20、及び、第3の排気配管22の中に堆積した副生成物を除去した後に、反応室10にウェハW(第2の基板)を搬入し、ウェハWの表面に炭化珪素膜を形成する。
【0068】
次に、第1の実施形態の気相成長方法の作用及び効果について説明する。
【0069】
炭化珪素膜を形成する気相成長装置では、反応室にシリコン(Si)や炭素(C)を含む原料ガスなどのプロセスガスを流し、基板の表面に炭化珪素膜を形成する。反応室で消費されなかったプロセスガスや、プロセスガスガスの反応により生じたガスを含む排気ガスは、反応室から排気配管、排気ポンプ、除害装置などを通って装置外に排出される。
【0070】
排気ガスは、反応室から排気配管を通過する際に冷却されることで凝縮して、排気配管の内面に液体や固体の副生成物を堆積させる。この副生成物が、排気配管の閉塞の原因になるという問題がある。
【0071】
排気配管が閉塞すると、気相成長装置のメンテナンス作業が必要となり、気相成長装置の稼働率が低下する。また、排気ガスに副生成物には、有害ガスを発生する物質や、発火性がある物質もあり、メンテナンス作業に危険が伴う場合もある。このため、排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去するクリーニング方法が要求される。
【0072】
例えば、基板の表面にシリコン膜をエピタキシャル成長させる際に、プロセスガスとしてシラン(SiH4)を含むガスを用いる場合がある。この場合、気相成長装置の排気配管には、シリコン(Si)、水素(H)を含む発火性の高い物質である高分子化合物が副生成物として堆積することが知られている。さらに、プロセスガスとして塩素(Cl)を含む場合は、シリコン(Si)、水素(H)、塩素(Cl)を含む高分子化合物が副生成物として堆積することが知られている。さらに塩素(Cl)を含む高分子化合物は、オイリーシランと称され、これも発火性の高い物質である。
【0073】
シリコン(Si)、水素(H)、塩素(Cl)を含む高分子化合物は、三弗化塩素(ClF3)ガスにより、除去することが可能である。
【0074】
例えば、基板の表面に炭化珪素膜をエピタキシャル成長させる際に、プロセスガスとしてシラン(SiH4)と塩素(Cl)を含むガスを用いる場合がある。この場合も、シリコン膜の場合と同様、気相成長装置の排気配管に、シリコン(Si)、水素(H)を含む高分子化合物が副生成物として堆積する。また、プロセスガスには、さらに塩素(Cl)が含まれることもある。この場合、気相成長装置の排気配管に、シリコン(Si)、水素(H)、塩素(Cl)を含む高分子化合物が副生成物として堆積する。
【0075】
図3は、第1の実施形態の気相成長方法の作用及び効果の説明図である。
【0076】
発明者が、シリコン膜をエピタキシャル成長させる場合の副生成物と、炭化珪素膜をエピタキシャル成長させる場合の副生成物を比較した結果、炭化珪素膜の場合は、質量数が200以下の低分子化合物が多く含まれることが明らかになった。また、低分子化合物の中には、炭素が含有されることが明らかになった。炭素は、炭化珪素膜の炭素のソースガスである例えばプロパン(C3H8)に由来すると考えられる。
【0077】
炭素を含む低分子化合物は、例えば、CH4、C2H6、C3H8、CH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4、C2H5Cl、C2H4Cl2、C2H3Cl3、C2H2Cl4、C2HCl5、C2Cl6、C2H4Cl、C2H3Cl、C2H2Cl、C2HCl、C3H7Cl、C3H6Cl、C3H5Cl、C3H4Cl、C3H3Cl、C3H2Cl、C3HCl、C3H、C3Cl等である。
【0078】
さらに、発明者が、炭化珪素膜をエピタキシャル成長させる場合の副生成物の堆積箇所を調査した結果、
図3に示すように、圧力調整バルブ12の上流側の第1の排気配管18の中の圧力調整バルブ12付近、圧力調整バルブ12の下流側の第2の排気配管20の中の圧力調整バルブ12付近、及び排気ポンプ14の下流側の第3の排気配管22の中に、大量の副生成物40が堆積することが明らかになった。例えば、シリコン膜をエピタキシャル成長させる場合の副生成物の堆積箇所は、主に圧力調整バルブ12の上流側の第1の排気配管18の中で、反応室10から離れた、成膜時に温度が上がらない個所である。
【0079】
炭化珪素膜をエピタキシャル成長させる場合には、シリコン膜をエピタキシャル成長させる場合と異なり、反応室から排出される排気ガス中にシリコンよりも軽い原子である炭素が含まれる。このため、排気ガスの飽和蒸気圧が高くなり、高温となる反応室から排気配管に流入しても、容易には液化、あるいは固化されない。副生成物の堆積箇所の差は、上記違いにより生じると考えられる。
【0080】
第2の排気配管20の中の第2の圧力P2は、圧力調整バルブ12によってガスの流路が狭くなるため、第1の排気配管18の中の第1の圧力P1よりも低くなっている。このため、排気ガスが圧力調整バルブ12を通過する際、断熱膨張することで温度が一気に下がる。したがって、圧力調整バルブ12の下流側に副生成物が形成されたと考えられる。
【0081】
副生成物が圧力調整バルブ12の上流側の第1の排気配管18の中の圧力調整バルブ12付近や圧力調整バルブ12の下流側の第2の排気配管20の中の圧力調整バルブ12付近に生成されたのは、圧力調整バルブ12で生成された副生成物が、圧力調整バルブ12の上流側と下流側に流動したためと考えられる。
【0082】
第1の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給する際に、圧力調整バルブ12の上流側の第1の排気配管18の第1の圧力P1が1Torr以上700Torr以下となるように制御される。
【0083】
すなわち、第1の圧力P1が比較的高い圧力に保たれる。第1の圧力P1を比較的高い圧力に保つことにより、クリーニングガスと副生成物40との間の反応が促進される。したがって、圧力調整バルブ12の上流側の第1の排気配管18の中の副生成物40を、効果的に除去することが可能である。
【0084】
圧力調整バルブ12の上流側の第1の排気配管18の中の副生成物を効果的に除去する観点から、第1の圧力P1が10Torr以上であることが好ましい。
【0085】
また、第1の実施形態の気相成長方法において、クリーニングガスを供給する際に、圧力調整バルブ12の下流側の第2の排気配管20の第2の圧力P2が、0.1Torr以上100Torr以下となるように制御される。
【0086】
すなわち、第2の圧力P2が比較的高い圧力に保たれる。第2の圧力P2を比較的高い圧力に保つことにより、クリーニングガスと副生成物40との間の反応が促進される。したがって、圧力調整バルブ12の下流側の第2の排気配管20の中の副生成物40を、効果的に除去することが可能である。
【0087】
圧力調整バルブ12の下流側の第2の排気配管20の中の副生成物を効果的に除去する観点から、1Torr以上であること好ましい。
【0088】
圧力調整バルブ12の下流側の第2の排気配管20の中の副生成物を効果的に除去する観点から、第2の圧力P2が第1の圧力P1の1%以上に制御されることが好ましく、5%以上に制御されることがより好ましく、10%以上に制御されることが更に好ましい。
【0089】
また、炭化珪素膜をエピタキシャル成長させる場合、
図3に示すように、排気ポンプ14と除害装置16との間の第3の排気配管22にも相当量の副生成物40が堆積することが明らかになった。排気ポンプ14の下流側の第3の排気配管22の中に副生成物が見られたのは、排気ポンプ16内部で排気ガスが圧縮され、副生成物が重合して高分子化し、液化あるいは固化しやすくなったためと考えられる。第1の実施形態の気相成長方法では、例えば、クリーニングガスを供給する際に、第3の排気配管22の中の第3の圧力P3が大気圧の95%以上となるように制御する。
【0090】
すなわち、第3の圧力P3が比較的高い圧力に保たれる。第3の圧力P3を比較的高い圧力に保つことにより、クリーニングガスと副生成物との間の反応が促進される。したがって、第3の排気配管22の中の副生成物40を、効果的に除去することが可能である。
【0091】
第3の排気配管22の中の副生成物を、効果的に除去する観点から、第3の排気配管22の中の第3の圧力P3が大気圧の98%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。
【0092】
クリーニングガスを供給する際に、反応室の第0の圧力P0、第1の圧力P1、及び第2の圧力P2をモニタし、モニタした結果を圧力調整バルブ12の開度と排気ポンプ14の排気速度にフィードバックすることが好ましい。第2の圧力P2が安定し、第3の排気配管22の中の副生成物を、安定して除去することが可能になる。
【0093】
クリーニングガスを供給している間、第1の排気配管18、第2の排気配管20、及び、第3の排気配管22の壁の温度は、180℃以下に保たれることが好ましい。また、クリーニングガスを供給している間、第1の排気配管18、第2の排気配管20、及び、第3の排気配管22の壁は、外部から加熱しないことが好ましい。
【0094】
炭素を含む低分子化合物は、例えば、シリコン(Si)、水素(H)、塩素(Cl)を含む高分子化合物と比較して、弗素を含むガスとの反応性が高く、反応時に発生する熱量も大きい。したがって、炭素を含む低分子化合物を含む反応副生成物は、例えば、シリコン(Si)、水素(H)、塩素(Cl)を含む高分子化合物しか含まない反応副生成物と比較して、低温で除去することが可能であり、外部からの加熱を必ずしも行わなくても、クリーニングを効率的に行うことができる。
【0095】
発明者が、三弗化塩素(ClF3)ガスによりクリーニング処理を行った際に排気されるガスを調査した結果、シリコン(Si)、水素(H)、塩素(Cl)を含む高分子化合物しか含まない反応副生成物をクリーニングした場合に含まれるSiF4、SiF3、Cl2、Si2F6、Si2F5以外に、Cを含有するガスであるCF4、CF3Cl、CF2Cl2、CFCl3、CCl4、CHF3、CHF2Cl、CHFCl2、C2H5F、C2H4F2、C2H3F3、C2H2F4、C2H3F2、C2H2F、C2H2F3、C2H2F2、C2H2F、C3H7F、C3H6F2、C3H5F3、C3H5F、C3H5F2、C3H4F、C3H4F2、C4H9F、C4H8F2、C4H7F3、C4H6F4、C4H5F5、C4H8F、C4H7F2、C4H6F3、C4H5F4、C4H4F5、C4H7F、C4H6F2、C4H5F3、C4H4F4、C4H3F5、C4H6F、C4H5F2、C4H4F3、C5H3F2、C5H3F6等が含まれていることが判明した。これらの化合物は、副生成物40に炭素(C)を含んだ化合物が含まれていた結果として生成されたものである。このような炭素と弗素(F)をどちらも含んだ化合物をクリーニング中に生成することで、クリーニング中の化学反応による発熱量を大きくし、配管外部からの加熱を行わなくても効果的なクリーニングを行うことができる。
【0096】
図4は、第1の実施形態の変形例の気相成長方法の説明図である。変形例では、第3の排気配管22に接続されたクリーニングガス供給管32を有する気相成長装置を用いる。
【0097】
図4に示すように、第3の排気配管22に対してクリーニングガス供給管32を設けて、上流の排気ポンプ14側からパージガスを流しながら、このクリーニングガス供給管からクリーニングガス(
図4中の黒矢印)を流す。これにより、排気ポンプ14と除害装置16の間の第3の排気配管22の中の副生成物を効果的に除去することも可能である。
【0098】
以上、第1の実施形態及び変形例の気相成長方法によれば、炭化珪素膜の形成時に排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去することができる。
【0099】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の気相成長方法は、副生成物を除去する際に、副生成物の表面を動かす点で、第1の実施形態の気相成長方法と異なる。第2の実施形態の気相成長方法は、副生成物を除去する際に、第1の部分を振動させることにより、副生成物の表面を動かす。第2の実施形態の気相成長方法は、副生成物を除去する際に、第1の部分を外部から叩くことにより、第1の部分に衝撃を与え、配管を素早く振動させる。第1の部分に衝撃を与え、第1の部分を動かす。
【0100】
第2の実施形態の気相成長装置は、反応室と、反応室からガスを排出する排気ポンプと、少なくとも反応室と排気ポンプとの間に設けられた排気配管と、排気配管の中に堆積される副生成物の表面を動かす機構と、を備える。第2の実施形態の気相成長装置は、排気配管の中に堆積される副生成物の表面を動かす機構を備える点で、第1の実施形態の気相成長装置と異なる。排気配管の中に堆積される副生成物の表面を動かす機構は、叩くことにより排気配管に振動を与える加振装置である。排気配管の中に堆積される副生成物の表面を動かす機構は、叩くことにより排気配管を動かす加振装置である。
【0101】
以下、第1の実施形態と重複する内容については、記述を一部省略する。
【0102】
図5は、第2の実施形態の気相成長装置の一例の模式図である。第2の実施形態の一例の気相成長装置は、炭化珪素膜を形成するための気相成長装置200である。第2の実施形態の気相成長装置200は、ウェハ1枚毎に成膜する縦型の枚葉式のエピタキシャル炭化珪素膜の気相成長装置200である。
【0103】
気相成長装置200は、反応室10、圧力調整バルブ12、排気ポンプ14、除害装置16、第1の排気配管18(第1の部分)、第2の排気配管20(第2の部分)、第3の排気配管22(第3の部分)、第4の排気配管24、クリーニングガス供給管26、圧力制御部28、加振装置42を備える。反応室10は、ガス供給口10a、サセプタ10b、ヒータ10c、ガス排気口10dを有する。第4の排気配管24には、排気ダクト30が接続される。排気配管は、第1の排気配管18、第2の排気配管20、第3の排気配管22、及び、第4の排気配管24を含む。
【0104】
加振装置42は、第1の排気配管18を外部から叩く機能を有する。加振装置42は、例えば、所定の周期、及び、所定の荷重で、第1の排気配管18を叩く。加振装置42は、加振装置42が有するハンマー部42aにより、第1の排気配管18を外部から叩く。
【0105】
図6は、第2の実施形態の気相成長方法の説明図である。
【0106】
第2の実施形態の気相成長方法では、第1の実施形態の気相成長方法と同様に、ウェハWを反応室10の外に搬出した後、反応室10の中にダミーウェハDWを搬入し、サセプタ10bの上に載置する。次に、クリーニングガス供給管26から第1の排気配管18の中に、クリーニングガスを供給すると共に、パージガスをガス供給口10aから、反応室10内を通して、第1の排気配管18に供給する。クリーニングガスは、例えば、窒素で希釈した三弗化塩素(ClF3)ガスである。
【0107】
第2の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、加振装置42を用いて、第1の排気配管18を外部から叩く。加振装置42のハンマー部42aにより、例えば、所定の周期、及び、所定の荷重で、第1の排気配管18を叩く。
【0108】
クリーニングガスを供給しながら、加振装置42を用いて、第1の排気配管18を外部から叩くことにより、第1の排気配管18が動く。第1の排気配管18を外部から叩くことにより、例えば、第1の排気配管18が振動する。
【0109】
加振装置42を用いて、第1の排気配管18を外部から叩くことにより、第1の排気配管18の中に堆積した副生成物40の表面が動く。加振装置42を用いて、第1の排気配管18を外部から叩くことにより、例えば、副生成物40の表面が振動する。
【0110】
第2の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、加振装置42を用いて、第1の排気配管18を外部から叩くことにより、第1の排気配管18の中に堆積した副生成物40の表面が動く。第1の排気配管18の中に堆積した副生成物40の表面が動くことにより、クリーニングガスと副生成物40との反応が促進される。したがって、第1の排気配管18の中に堆積した副生成物40を効果的に除去することが可能となる。
【0111】
図7は、第2の実施形態の気相成長方法及び気相成長装置の作用及び効果の説明図である。
図7は、気相成長装置200の排気配管にクリーニングガスを供給している状態での、排気配管温度の時間変化を示す。
【0112】
図7に示すように、排気配管へのクリーニングガスの供給開始と共に、排気配管の温度が上昇する。排気配管の温度の上昇は、クリーニングガスと副生成物との反応熱の発生による。
【0113】
排気配管の温度は、上昇した後、下降に転ずる。その後、排気配管を叩くと、排気配管の温度が再び上昇する。排気配管の温度が、再度下降に転じた後、排気配管を再度叩くと、排気配管の温度が再び上昇する。
【0114】
図7で観察される排気配管の温度変化は、以下のように説明される。排気配管へクリーニングガスが供給されると、クリーニングガスと副生成物の表面が反応して、副生成物の除去が始まる。クリーニングガスと副生成物の表面の反応が進むと、副生成物の表面に、クリーニングガスと副生成物との反応を阻害する被膜が形成される。副生成物の表面に被膜が形成されると、反応が抑制されることで反応熱の発生は抑制され、排気配管の温度は下降する。
【0115】
副生成物の表面に形成される被膜は、炭素-炭素結合を有する物質であると考えられる。クリーニング後の副生成物の残渣に、炭素-炭素結合を有する物質が存在することが、発明者の残渣のラマン分光分析により明らかになっている。
【0116】
排気配管を叩くことにより、副生成物の表面が動く。排気配管を叩くことにより、副生成物の表面の被膜が動く。副生成物の表面の被膜が動くことにより、被膜が分断され、被膜の間に副生成物が露出する。露出した副生成物とクリーニングガスが反応し、排気配管の温度が上昇する。
【0117】
副生成物の表面に、再度被膜が形成されると、排気配管の温度が、再度下降に転じる。その後、排気配管を叩く度に、被膜が分断され、被膜の間に副生成物が露出し、露出した副生成物とクリーニングガスが反応し、排気配管の温度が上昇する。
【0118】
第2の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、加振装置42を用いて、第1の排気配管18を外部から叩く。第1の排気配管18を外部から叩くことにより、第1の排気配管18が動く。第1の排気配管18が動くことにより、第1の排気配管18の中に堆積した副生成物40の表面が動く。副生成物40の表面が動くことにより、副生成物の表面に被膜が形成されてもすぐに分断される。したがって、クリーニングガスと副生成物40との反応が促進される。よって、副生成物40を効果的に除去することが可能となる。なお、排気配管に振動を与える方法として、加振装置により外部から叩く方法について説明したが、振動を与えられれば加振装置は特に限定されない。加振装置は、排気配管を揺する、振るなどにより配管を素早く動かせればよい。
【0119】
以上、第2の実施形態の気相成長方法及び気相成長装置によれば、炭化珪素膜の形成時に排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去することができる。
【0120】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の気相成長方法は、副生成物を除去する際に、第1の部分に設けられた貯留部を外部から叩くことにより、第1の部分を振動させる点で、第2の実施形態の気相成長方法と異なる。また、第3の実施形態の気相成長装置は、排気配管は貯留部を含み、加振装置は貯留部を叩く点で第2の実施形態の気相成長装置と異なる。
【0121】
以下、第2の実施形態と重複する内容については、記述を一部省略する。
【0122】
図8は、第3の実施形態の気相成長装置の一例の模式図である。第3の実施形態の一例の気相成長装置は、炭化珪素膜を形成するための気相成長装置300である。
【0123】
気相成長装置300は、反応室10、圧力調整バルブ12、排気ポンプ14、除害装置16、第1の排気配管18(第1の部分)、第2の排気配管20(第2の部分)、第3の排気配管22(第3の部分)、第4の排気配管24、クリーニングガス供給管26、圧力制御部28、加振装置42を備える。反応室10は、ガス供給口10a、サセプタ10b、ヒータ10c、ガス排気口10dを有する。第4の排気配管24には、排気ダクト30が接続される。排気配管は、第1の排気配管18、第2の排気配管20、第3の排気配管22、及び、第4の排気配管24を含む。第1の排気配管18は、貯留部18aを含む。
【0124】
貯留部18aは、炭化珪素膜の形成中に第1の排気配管18に堆積する副生成物を溜める機能を有する。
【0125】
加振装置42は、第1の排気配管18の貯留部18aを外部から叩く機能を有する。加振装置42は、例えば、所定の周期、及び、所定の荷重で、貯留部18aを叩く。加振装置42は、加振装置42が有するハンマー部42aにより、貯留部18aを外部から叩く。
【0126】
図9は、第3の実施形態の気相成長方法の説明図である。
【0127】
第3の実施形態の気相成長方法では、第2の実施形態の気相成長方法と同様に、ウェハWを反応室10の外に搬出した後、反応室10の中にダミーウェハDWを搬入し、サセプタ10bの上に載置する。次に、クリーニングガス供給管26から第1の排気配管18の中に、クリーニングガスを供給すると共に、パージガスをガス供給口10aから、反応室10内を通して、第1の排気配管18に供給する。クリーニングガスは、例えば、窒素で希釈した三弗化塩素(ClF3)ガスである。
【0128】
第3の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、加振装置42を用いて、第1の排気配管18の貯留部18aを外部から叩く。加振装置42のハンマー部42aにより、例えば、所定の周期、及び、所定の荷重で、貯留部18aを叩く。
【0129】
クリーニングガスを供給しながら、加振装置42を用いて、貯留部18aを外部から叩くことにより、貯留部18aが動く。貯留部18aを外部から叩くことにより、例えば、貯留部18aが振動する。貯留部18aを外部から叩くことにより、例えば、貯留部18aが動く。
【0130】
クリーニングガスを供給しながら、加振装置42を用いて、貯留部18aを外部から叩くことにより、貯留部18aの中に溜まった副生成物40の表面が動く。例えば、貯留部18aの中に溜まった副生成物40の表面が振動する。
【0131】
第3の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、加振装置42を用いて、貯留部18aを外部から叩くことにより、貯留部18aの中に溜まった副生成物40の表面が動く。副生成物40の表面が動くことにより、副生成物40の表面にクリーニングガスと副生成物40との反応を抑制する被膜が形成されてもすぐに分断される。したがって、クリーニングガスと副生成物40との反応が促進される。よって、副生成物40を効果的に除去することが可能となる。
【0132】
副生成物40を溜める効率を高めるために、
図8に示すように、第1の排気配管18に貯留部18aに向かう傾斜を設けることが好ましい。また、副生成物40を溜める効率を高めるために、貯留部18aの近傍の第1の排気配管18に図示しない冷却器を設けることが好ましい。
【0133】
以上、第3の実施形態の気相成長方法及び気相成長装置によれば、炭化珪素膜の形成時に排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去することができる。
【0134】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の気相成長方法は、副生成物を除去する際に、第1の部分を揺らす点で、第3の実施形態の気相成長方法と異なる。また、第4の実施形態の気相成長装置は、排気配管の中に堆積される副生成物の表面を動かす機構は、排気配管を揺らす揺動装置である点で第3の実施形態の気相成長装置と異なる。
【0135】
以下、第3の実施形態と重複する内容については、記述を一部省略する。
【0136】
図10は、第4の実施形態の気相成長装置の一例の模式図である。第4の実施形態の一例の気相成長装置は、炭化珪素膜を形成するための気相成長装置400である。
【0137】
気相成長装置400は、反応室10、圧力調整バルブ12、排気ポンプ14、除害装置16、第1の排気配管18(第1の部分)、第2の排気配管20(第2の部分)、第3の排気配管22(第3の部分)、第4の排気配管24、クリーニングガス供給管26、圧力制御部28、揺動装置44を備える。反応室10は、ガス供給口10a、サセプタ10b、ヒータ10c、ガス排気口10dを有する。第4の排気配管24には、排気ダクト30が接続される。排気配管は、第1の排気配管18、第2の排気配管20、第3の排気配管22、及び、第4の排気配管24を含む。第1の排気配管18は、貯留部18aを含む。
【0138】
貯留部18aは、炭化珪素膜の形成中に第1の排気配管18に堆積する副生成物を溜める機能を有する。
【0139】
揺動装置44は、第1の排気配管18の貯留部18aを揺らす機能を有する。
【0140】
図11は、第4の実施形態の気相成長装置の一部の模式断面図である。
図11は、第1の排気配管18の模式断面図である。
図11(a)は、
図10のAA’断面図である。
図11(b)は
図10のBB’断面である。
【0141】
揺動装置44は、例えば、回転方向の切り替えが可能な両方向回転型モータを駆動源として、貯留部18aを第1の排気配管18の周方向に揺らすことが可能である。
【0142】
【0143】
第4の実施形態の気相成長方法では、第3の実施形態の気相成長方法と同様に、ウェハWを反応室10の外に搬出した後、反応室10の中にダミーウェハDWを搬入し、サセプタ10bの上に載置する。次に、クリーニングガス供給管26から第1の排気配管18の中に、クリーニングガスを供給すると共に、パージガスをガス供給口10aから、反応室10内を通して、第1の排気配管18に供給する。クリーニングガスは、例えば、窒素で希釈した三弗化塩素(ClF3)ガスである。
【0144】
第4の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、揺動装置44を用いて、第1の排気配管18の貯留部18aを揺らす。例えば、
図13(b)に示すように、揺動装置44を用いて、貯留部18aを第1の排気配管18の周方向に揺らす。
【0145】
揺動装置44を用いて、貯留部18aを揺らすことにより、貯留部18aの中に溜まった副生成物40の表面が動く。貯留部18aの中に溜まった副生成物40の表面が動くことにより、副生成物40の表面にクリーニングガスと副生成物40との反応を抑制する被膜が形成されてもすぐに分断される。したがって、クリーニングガスと副生成物40との反応が促進される。よって、副生成物40を効果的に除去することが可能となる。
【0146】
以上、第4の実施形態の気相成長方法及び気相成長装置によれば、炭化珪素膜の形成時に排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去することができる。
【0147】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の気相成長方法は、副生成物を除去する際に、副生成物を撹拌することにより、副生成物の表面を動かす点で、第3の実施形態の気相成長方法と異なる。また、第5の実施形態の気相成長装置は、排気配管の中に堆積される副生成物の表面を動かす機構は、副生成物を撹拌する撹拌装置である点で第3の実施形態の気相成長装置と異なる。
【0148】
以下、第3の実施形態と重複する内容については、記述を一部省略する。
【0149】
図14は、第5の実施形態の気相成長装置の一例の模式図である。第5の実施形態の一例の気相成長装置は、炭化珪素膜を形成するための気相成長装置500である。
【0150】
気相成長装置500は、反応室10、圧力調整バルブ12、排気ポンプ14、除害装置16、第1の排気配管18(第1の部分)、第2の排気配管20(第2の部分)、第3の排気配管22(第3の部分)、第4の排気配管24、クリーニングガス供給管26、圧力制御部28、撹拌装置46を備える。反応室10は、ガス供給口10a、サセプタ10b、ヒータ10c、ガス排気口10dを有する。第4の排気配管24には、排気ダクト30が接続される。排気配管は、第1の排気配管18、第2の排気配管20、第3の排気配管22、及び、第4の排気配管24を含む。第1の排気配管18は、貯留部18aを含む。
【0151】
貯留部18aは、炭化珪素膜の形成中に第1の排気配管18に堆積する副生成物を溜める機能を有する。
【0152】
撹拌装置46は、第1の排気配管18の貯留部18aに溜まった副生成物を撹拌する機能を有する。撹拌装置46は、撹拌子46aと駆動部46bとを有するマグネティックスターラーである。
【0153】
撹拌子46aは、棒磁石を含む。駆動部46bは、磁石と、磁石を回転させるをモータータを有する。駆動部46bの磁石の回転により、撹拌子46aが回転する。
【0154】
図15は、第5の実施形態の気相成長方法の説明図である。
【0155】
第5の実施形態の気相成長方法では、第3の実施形態の気相成長方法と同様に、ウェハWを反応室10の外に搬出した後、反応室10の中にダミーウェハDWを搬入し、サセプタ10bの上に載置する。次に、クリーニングガス供給管26から第1の排気配管18の中に、クリーニングガスを供給すると共に、パージガスをガス供給口10aから、反応室10内を通して、第1の排気配管18に供給する。クリーニングガスは、例えば、窒素で希釈した三弗化塩素(ClF3)ガスである。
【0156】
第5の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、撹拌装置46を用いて、貯留部18aの中に溜まった副生成物40を撹拌する。駆動部46bの磁石の回転により、撹拌子46aが回転することで、貯留部18aに溜まった副生成物40を撹拌する。
【0157】
第5の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、貯留部18aの中に溜まった副生成物40を撹拌することにより、副生成物40の表面が動く。貯留部18aの中に溜まった副生成物40の表面が動くことにより、副生成物40の表面にクリーニングガスと副生成物40との反応を抑制する被膜が形成されてもすぐに分断される。したがって、クリーニングガスと副生成物40との反応が促進される。よって、副生成物40を効果的に除去することが可能となる。
【0158】
以上、第5の実施形態の気相成長方法及び気相成長装置によれば、炭化珪素膜の形成時に排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去することができる。
【0159】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の気相成長装置は、撹拌装置の構成が異なる点で、第5の実施形態の気相成長装置と異なる。
【0160】
以下、第5の実施形態と重複する内容については、記述を一部省略する。
【0161】
図16は、第6の実施形態の気相成長装置の一例の模式図である。第6の実施形態の一例の気相成長装置は、炭化珪素膜を形成するための気相成長装置600である。
【0162】
撹拌装置46は、第1の排気配管18の貯留部18aに溜まった副生成物を撹拌する機能を有する。撹拌装置46は、撹拌子46a、駆動部46b、及び、回転軸46cを有する。
【0163】
撹拌子46aは、回転軸46cに固定される。駆動部46bは、回転軸46cを回転させるモータを有する。駆動部46bにより回転軸46cを回転させることにより、撹拌子46aが回転する。
【0164】
図17は、第6の実施形態の気相成長方法の説明図である。
【0165】
第6の実施形態の気相成長方法では、第5の実施形態の気相成長方法と同様に、ウェハWを反応室10の外に搬出した後、反応室10の中にダミーウェハDWを搬入し、サセプタ10bの上に載置する。次に、クリーニングガス供給管26から第1の排気配管18の中に、クリーニングガスを供給すると共に、パージガスをガス供給口10aから、反応室10内を通して、第1の排気配管18に供給する。クリーニングガスは、例えば、窒素で希釈した三弗化塩素(ClF3)ガスである。
【0166】
第6の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、撹拌装置46を用いて、貯留部18aの中に溜まった副生成物40を撹拌する。駆動部46bにより、撹拌子46aが回転することで、貯留部18aに溜まった副生成物40を撹拌する。
【0167】
第6の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、貯留部18aの中に溜まった副生成物40を撹拌することにより、副生成物40の表面が動く。貯留部18aの中に溜まった副生成物40の表面が動くことにより、副生成物40の表面にクリーニングガスと副生成物40との反応を抑制する被膜が形成されてもすぐに分断される。したがって、クリーニングガスと副生成物40との反応が促進される。よって、副生成物40を効果的に除去することが可能となる。
【0168】
以上、第6の実施形態の気相成長方法及び気相成長装置によれば、炭化珪素膜の形成時に排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去することができる。
【0169】
(第7の実施形態)
第7の実施形態の気相成長方法は、副生成物を除去する際に、貯留部を加熱する点で、第3の実施形態の気相成長方法と異なる。
【0170】
また、第7の実施形態の気相成長装置は、反応室と、反応室からガスを排出する排気ポンプと、反応室と排気ポンプとの間に設けられ、副生成物を溜める貯留部を含む排気配管と、貯留部を加熱するヒータと、を備える。
【0171】
以下、第3の実施形態と重複する内容については、記述を一部省略する。
【0172】
図18は、第7の実施形態の気相成長装置の一例の模式図である。第7の実施形態の一例の気相成長装置は、炭化珪素膜を形成するための気相成長装置700である。
【0173】
気相成長装置700は、反応室10、圧力調整バルブ12、排気ポンプ14、除害装置16、第1の排気配管18(第1の部分)、第2の排気配管20(第2の部分)、第3の排気配管22(第3の部分)、第4の排気配管24、クリーニングガス供給管26、圧力制御部28、ヒータ48、第1の冷却器50a、第2の冷却器50bを備える。反応室10は、ガス供給口10a、サセプタ10b、ヒータ10c、ガス排気口10dを有する。第4の排気配管24には、排気ダクト30が接続される。排気配管は、第1の排気配管18、第2の排気配管20、第3の排気配管22、及び、第4の排気配管24を含む。第1の排気配管18は、貯留部18aを含む。
【0174】
貯留部18aは、炭化珪素膜の形成中に第1の排気配管18に堆積する副生成物を溜める機能を有する。
【0175】
ヒータ48は、例えば、貯留部18aを囲むように設けられる。ヒータ48は、貯留部18aを加熱する機能を有する。ヒータ48により、例えば、貯留部18aを150℃以上300℃以下の温度に加熱することが可能である。貯留部18aの温度は、例えば、貯留部18aの外側に設けられた温度計により測定することが可能である。
【0176】
第1の冷却器50aは、貯留部18aの反応室10の側の第1の排気配管18に設けられる。第2の冷却器50bは、貯留部18aの排気ポンプ14の側の第1の排気配管18に設けられる。
【0177】
第1の冷却器50a及び第2の冷却器50bは、貯留部18aの上流側及び下流側の第1の排気配管18を冷却する機能を有する。第1の冷却器50a及び第2の冷却器50bは、例えば、水冷式の冷却器である。
【0178】
図19は、第7の実施形態の気相成長方法の説明図である。
【0179】
第7の実施形態の気相成長方法では、第3の実施形態の気相成長方法と同様に、ウェハWを反応室10の外に搬出した後、反応室10の中にダミーウェハDWを搬入し、サセプタ10bの上に載置する。次に、クリーニングガス供給管26から第1の排気配管18の中に、クリーニングガスを供給すると共に、パージガスをガス供給口10aから、反応室10内を通して、第1の排気配管18に供給する。クリーニングガスは、例えば、窒素で希釈した三弗化塩素(ClF3)ガスである。
【0180】
クリーニングガスを供給しながら、ヒータ48を用いて、貯留部18aを加熱する。貯留部18aを加熱することにより、貯留部18aの中に溜まった副生成物40が加熱される。
【0181】
また、クリーニングガスを供給しながら、第1の冷却器50a及び第2の冷却器50bを用いて、貯留部18aの上流側及び下流側の第1の排気配管18を冷却する。
【0182】
第7の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、副生成物40を加熱することにより、クリーニングガスと副生成物40との反応が促進される。よって、副生成物40を効果的に除去することが可能となる。特に、炭素-炭素結合を有する物質が生成された場合は、低温での除去が困難であり、温度を上げることが副生成物40を除去する上で効果的である。
【0183】
また、第7の実施形態の気相成長方法では、クリーニングガスを供給しながら、第1の冷却器50a及び第2の冷却器50bを用いて、貯留部18aの上流側及び下流側の第1の排気配管18を冷却する。ヒータ48による加熱により高温となる貯留部18aの前後を冷却することにより、排気配管等に設けられる耐熱性の低い部材を保護することができる。
【0184】
クリーニングガスと副生成物40との反応を促進する観点から、貯留部18aの温度は150℃以上とすることが好ましく、200℃以上とすることがより好ましく、250℃以上とすることが、更に好ましい。また、耐熱性の低い部材を保護する観点から、貯留部18aの温度は300℃以下とすることが好ましい。
【0185】
以上、第7の実施形態の気相成長方法及び気相成長装置によれば、炭化珪素膜の形成時に排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去することができる。
【0186】
(第8の実施形態)
第8の実施形態の気相成長方法は、副生成物を除去した後、反応室に第2の基板を搬入する前に、貯留部を取り外し、貯留部の中に残留する副生成物を、薬液を用いて除去する点で、第2の実施形態の気相成長方法と異なる。
【0187】
また、第8の実施形態の気相成長装置は、貯留部が、第1の部分から取り外し可能である点で、第2の実施形態の気相成長装置と異なる。
【0188】
以下、第2の実施形態と重複する内容については、記述を一部省略する。
【0189】
図20は、第8の実施形態の気相成長装置の一例の模式図である。第8の実施形態の一例の気相成長装置は、炭化珪素膜を形成するための気相成長装置800である。
【0190】
気相成長装置800は、反応室10、圧力調整バルブ12、排気ポンプ14、除害装置16、第1の排気配管18(第1の部分)、第2の排気配管20(第2の部分)、第3の排気配管22(第3の部分)、第4の排気配管24、クリーニングガス供給管26、圧力制御部28を備える。反応室10は、ガス供給口10a、サセプタ10b、ヒータ10c、ガス排気口10dを有する。第4の排気配管24には、排気ダクト30が接続される。排気配管は、第1の排気配管18、第2の排気配管20、第3の排気配管22、及び、第4の排気配管24を含む。第1の排気配管18は、貯留部18aを含む。
【0191】
貯留部18aは、炭化珪素膜の形成中に第1の排気配管18に堆積する副生成物を溜める機能を有する。貯留部18aは、第1の排気配管18から取り外しが可能である。
【0192】
図21は、第8の実施形態の気相成長方法の説明図である。
【0193】
第8の実施形態の気相成長方法では、第2の実施形態の気相成長方法と同様に、ウェハW(第1の基板)を反応室10の外に搬出した後、反応室10の中にダミーウェハDWを搬入し、サセプタ10bの上に載置する。次に、クリーニングガス供給管26から第1の排気配管18の中に、クリーニングガスを供給すると共に、パージガスをガス供給口10aから、反応室10内を通して、第1の排気配管18に供給する。クリーニングガスは、例えば、窒素で希釈した三弗化塩素(ClF3)ガスである。
【0194】
クリーニングガスを供給することにより、副生成物40を除去した後、反応室10にウェハW(第2の基板)を搬入する前に、貯留部18aを第1の排気配管18から取り外す。そして、貯留部18aに残留した副生成物40を、薬液を用いて除去する。
【0195】
薬液は、例えば、酸性の溶液である。薬液は、例えば、フッ酸、又は、硝酸である。
【0196】
その後、貯留部18aを第1の排気配管18に取り付け、反応室10にウェハW(第2の基板)を搬入する。
【0197】
第8の実施形態の気相成長方法では、薬液を用いて、貯留部18aに残留した副生成物40を除去することで、副生成物40を効果的に除去することが可能となる。特に、炭素-炭素結合を有する物質が生成された場合は、クリーニングガスでの除去が困難であり、薬液を用いて除去することが効果的である。
【0198】
以上、第8の実施形態の気相成長方法及び気相成長装置によれば、炭化珪素膜の形成時に排気配管に堆積した副生成物を効果的に除去することができる。
【0199】
第1ないし第8の実施形態及び変形例では、ウェハ1枚毎に成膜する縦型の枚葉式のエピタキシャル装置を例に説明したが、気相成長装置は、枚葉式のエピタキシャル装置に限られるものではない。例えば、自公転する複数のウェハに同時に成膜するプラネタリー方式のCVD装置や、横型のエピタキシャル装置等にも、本発明を適用することが可能である。
【0200】
第1ないし第8の実施形態及び変形例では、炭化珪素膜の形成の際に、シリコン(Si)のソースガス、及び、炭素(C)のソースガスを混合して、1つのガス供給口10aから反応室10に供給する場合を例に説明したが、例えば、シリコン(Si)のソースガス、及び、炭素(C)のソースガスを異なるガス供給口10aから反応室10に供給することも可能である。
【0201】
第1ないし第8の実施形態及び変形例の気相成長装置のクリーニングは、炭化珪素膜を形成する度に行われなくても構わない。例えば、複数の基板に炭化珪素膜の成膜を行った後に、気相成長装置のクリーニングを行う構成であっても構わない。
【0202】
第2ないし第4の実施形態では、第1の排気配管18(第1の部分)を振動させる形態を例に説明したが、第2の排気配管20(第2の部分)を振動させる形態、又は、第1の排気配管18(第1の部分)及び第2の排気配管20(第2の部分)の両方を振動させる形態とすることも可能である。
【0203】
第2ないし第8の実施形態では、第1の排気配管18(第1の部分)が貯留部18aを含む形態を例に説明したが、第2の排気配管20(第2の部分)が貯留部を含む形態、又は、第1の排気配管18(第1の部分)及び第2の排気配管20(第2の部分)の両方が貯留部を含む形態とすることも可能である。
【0204】
第1ないし第8の実施形態及び変形例では、装置構成や成長方法等、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や成長方法等を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての気相成長方法及び気相成長装置は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。
【符号の説明】
【0205】
10 反応室
10a ガス供給口
10b サセプタ
10c ヒータ
10d ガス排気口
12 圧力調整バルブ
14 排気ポンプ
16 除害装置
18 第1の排気配管(第1の部分)
18a 貯留部
20 第2の排気配管(第2の部分)
22 第3の排気配管(第3の部分)
24 第4の排気配管
26 クリーニングガス供給管
28 圧力制御部
30 排気ダクト
40 副生成物
42 加振装置
42a ハンマー部
44 揺動装置
46 撹拌装置
46a 撹拌子
46b 駆動部
46c 回転軸
48 ヒータ
50a 第1の冷却器
50b 第2の冷却器
100 気相成長装置
200 気相成長装置
300 気相成長装置
400 気相成長装置
500 気相成長装置
600 気相成長装置
700 気相成長装置
800 気相成長装置
AP 大気圧
P0 反応室内の圧力
P1 第1の圧力
P2 第2の圧力
P3 第3の圧力
P4 第4の圧力
W ウェハ(第1の基板、第2の基板)
DW ダミーウェハ