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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】把持装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021550344
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2020026227
(87)【国際公開番号】W WO2021065131
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019179607
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 信彦
(72)【発明者】
【氏名】野地 文雄
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-39919(JP,A)
【文献】実開平6-61485(JP,U)
【文献】特開2000-81911(JP,A)
【文献】特開2015-85479(JP,A)
【文献】米国特許第10150213(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の位置に置かれた部品を把持する把持部と、
前記把持部による前記部品の把持位置を制御する把持位置制御部であって、前記部品には押し当て部が予め設定されており、前記押し当て部とは押し当て方向において逆側の位置を初期の把持位置にする把持位置制御部と、
前記把持部によって前記部品を前記初期の把持位置で把持した状態で、予め設定された設置位置にある基準治具の基準面に対して、前記部品の前記押し当て部を押し当て、かつ、前記部品と前記把持部とを相対的に摺動させることにより、前記把持部と前記基準面との相対的な位置関係に基づいて、前記把持位置を目標位置に修正する把持位置修正部と、
を有し、
前記把持部は、
回転可能な1以上の関節部と、
前記部品を把持したときに前記部品の形状に応じて変形可能な緩衝層と、
前記緩衝層の表面に形成され、前記部品と接触する平滑層と、
を有する把持装置。
【請求項2】
前記把持位置修正部は、前記把持部により把持した前記部品を前記基準面に前記押し当て方向に押し当てることで、前記部品の前記把持位置に加えて、把持姿勢を修正する請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記把持部と前記基準面との相対的な位置関係は、予め設定された、前記基準面からの距離を含む請求項1又は請求項2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記把持位置修正部によって前記把持位置を前記目標位置に修正した後、前記把持部を移動させることにより、前記部品を他の部品に組み付ける組付け制御部を有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項5】
前記把持部によって前記部品を把持する把持力を制御する把持力制御部を備えており、
前記把持位置を修正する際の前記把持部の前記部品に対する第1把持力は、前記部品を前記他の部品に組み付ける際の前記部品に対する第2把持力より弱い請求項4に記載の把持装置。
【請求項6】
前記基準治具は、互いに直交する3軸方向のそれぞれの面を含む請求項1から請求項までのいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項7】
前記3軸方向は、水平2軸方向と垂直1軸方向である請求項に記載の把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、把持装置及び把持装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部品を組み合わせて製品を組み立てる作業を行うロボットが知られている(例えば、特許文献1)。一例として、ロボットは、ワーク(例えば、部品)を把持するハンドを備えたアームを有する把持装置である。
【0003】
特許文献1(特開2015-85480号公報)に記載のロボットは、作業台上のワーク(例えば、部品)を撮像するカメラを備え、カメラにより撮像した画像からワークの位置を認識し、軌道生成部が生成した軌道とエンコーダの情報に基づいて、ハンドの位置を制御する。これにより、ハンドをワークの予め設定された位置で把持させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-85480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1(特開2015-85480号公報)に記載のロボットのように画像からワーク(例えば、部品)の位置を正確に認識するには、画像内の部品の輪郭に相当するエッジを認識するエッジ認識を行う必要がある。しかしながら、画像には解像度の限界があるため、エッジ認識の精度にも限界がある。ワークの大きさが小さいほど、エッジ認識の精度は低下するため、ワーク(例えば、部品)の位置を正確に認識することが難しい。ワークの位置が正確に認識できないと、当然ながら、ロボットのハンドによるワークの把持位置の精度も低下する。
【0006】
そこで、予め設定した位置に部品を設置しておくための専用の位置決めトレイを用いることで、部品の把持位置を制御することも検討されている。この方法によれば、専用の位置決めトレイによって部品の設置位置が正確に決められているため、ロボットに専用の位置決めトレイの位置を予め設定しておけば、部品が設置された位置にハンドを正確に移動させることができる。しかしながら、専用の治具を用いる方法は、部品の大きさ及び形に応じて専用の位置決めトレイを用意する必要があるため、コストを考えると多品種少量生産には適していないという問題がある。また、位置決めトレイに部品を設置するためには、どうしても隙間(例えば、あそび又はクリアランス)が必要であるので、その分、位置決めの精度が悪化するという問題もある。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来と比べて多品種少量生産に適しており、かつ、部品に対する把持位置を正確に位置決めすることが可能な把持装置及び把持装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の把持装置は、任意の位置に置かれた部品を把持する把持部と、把持部による部品の把持位置を制御する把持位置制御部であって、部品には押し当て部が予め設定されており、押し当て部とは押し当て方向において逆側の位置を初期の把持位置にする把持位置制御部と、把持部によって部品を初期の把持位置で把持した状態で、予め設定された設置位置にある基準治具の基準面に対して、部品の押し当て部を押し当て、かつ、部品と把持部とを相対的に摺動させることにより、把持部と基準面との相対的な位置関係に基づいて、把持位置を目標位置に修正する把持位置修正部と、を有する。
【0009】
把持位置修正部は、把持部により把持した部品を基準面に押し当て方向に押し当てることで、部品の把持位置に加えて、把持姿勢を修正することが好ましい。
【0010】
把持部と基準面との相対的な位置関係は、予め設定された、基準面からの距離を含むことが好ましい。
【0011】
把持位置修正部によって把持位置を目標位置に修正した後、把持部を移動させることにより、部品を他の部品に組み付ける組付け制御部を有することが好ましい。
【0012】
把持部によって部品を把持する把持力を制御する把持力制御部を備えており、把持位置を修正する際の把持部の部品に対する第1把持力は、部品を他の部品に組み付ける際の部品に対する第2把持力より弱いことが好ましい。
【0013】
把持部は、回転可能な1以上の関節部を有することが好ましい。
【0014】
把持部は、部品を把持したときに部品の形状に応じて変形可能な緩衝層と、緩衝層の表面に形成され、部品と接触する平滑層と、を有することが好ましい。
【0015】
基準治具は、互いに直交する3軸方向のそれぞれの面を含むことが好ましい。
【0016】
3軸方向は、水平2軸方向と垂直1軸方向であることが好ましい。
【0017】
また、本開示の把持装置は、任意の位置に置かれた部品を把持する把持部と、少なくとも1つのプロセッサと、を備え、部品には押し当て部が予め設定されており、プロセッサは、任意の位置に置かれた部品を、把持部によって把持する把持位置を制御し、かつ、部品の押し当て部とは押し当て方向において逆側の位置を初期の把持位置にし、さらに、把持部によって部品を初期の把持位置で把持した状態で、予め設定された設置位置にある基準治具の基準面に対して、部品の押し当て部を押し当て、かつ、部品と把持部とを相対的に摺動させることにより、把持部と基準面との相対的な位置関係に基づいて、把持位置を目標位置に修正する。
【0018】
本開示の把持装置の制御方法は、任意の位置に置かれた部品を、把持部によって把持する把持位置を制御する把持位置制御工程であって、部品には押し当て部が予め設定されており、押し当て部とは押し当て方向において逆側の位置を初期の把持位置にする把持位置制御工程と、把持部によって部品を初期の把持位置で把持した状態で、予め設定された設置位置にある基準治具の基準面に対して、部品の押し当て部を押し当て、かつ、部品と把持部とを相対的に摺動させることにより、把持部と基準面との相対的な位置関係に基づいて、把持位置を目標位置に修正する把持位置修正工程と、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本開示の技術によれば、従来と比べて多品種少量生産に適しており、かつ、部品に対する把持位置を正確に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の把持装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】把持装置により部品を組み立て部品に組み付ける状態を示す斜視図である。
図3】把持装置の制御装置の電気構成を示すブロック図である。
図4】把持装置のアーム及び把持部を示す側面図である。
図5】把持装置のアーム動作制御部の電気構成を示すブロック図である。
図6】把持装置の画像解析部の機能を示す説明図である。
図7】把持装置の初期把持位置制御部の機能を示す説明図である。
図8】把持装置の把持位置修正部の機能を示す説明図である。
図9】制御装置による準備処理の手順を示すフローチャートである。
図10】制御装置による把持修正処理及び組付処理の手順を示すフローチャートである。
図11A】制御装置による画像解析の工程を示す説明図である。
図11B】制御装置による部品の初期把持位置の設定工程を示す説明図である。
図11C】制御装置による把持部の部品を基準治具に押し当てる工程を示す説明図である。
図11D】制御装置による把持部の部品に対する把持位置を修正する工程を示す説明図である。
図12】把持装置による組み立て部品への部品の組付け工程を示す説明図である。
図13】把持部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1実施形態〕
図1に一例として示すように、把持装置10は、作業台20の上に設けられている。また、作業台20の上には、基準治具21が設置されている。一例として、基準治具21上には部品(例えば、ワーク)22が置かれている。部品22は、例えば、直方体状の部材とされている。また、作業台20には、一例として、他の部品としての組み立て部品24が設置されている。なお、組み立て部品24は、作業台20の外側に設置されていてもよい。
【0022】
図1に示すように、把持装置10は、作業台20に配置された装置本体12と、装置本体12の上部の両端部から延びた左右一対のアーム13と、アーム13の先端部にそれぞれ設けられた把持部14とを備えている。把持部14の少なくとも一方は、基準治具21上に置かれた部品22を把持可能とされている。
【0023】
また、把持装置10は、カメラ15と、把持装置10の各部の動作を制御する制御装置16とを備えている。制御装置16には、一例として、アーム13及び把持部14の動作を制御するアーム動作制御部17が設けられている。カメラ15は、制御装置16と通信可能に接続されており、撮影した画像を制御装置16に送信する。さらに、アーム13及び把持部14は、制御装置16のアーム動作制御部17と電気的に接続されており、制御装置16からの制御信号に基づいて動作する。
【0024】
装置本体12は、作業台20に設置された柱部12Aと、柱部12Aの上部に取り付けられた取付部12Bと、取付部12Bの幅方向の両端部から取付部12Bに対して前方斜め外側に延びた円柱部12Cとを備えている。
【0025】
柱部12Aは、上下方向上側に向かうにしたがって直径が段階的に短くなる形状とされている。取付部12Bは、正面視にて柱部12Aの上部において、幅方向外側に突出するように取り付けられている。円柱部12Cは、取付部12Bから前方斜め外側に左右対称に延びている。なお、装置本体12の形状は、一例であり、第1実施形態の形状に限定されず、変更が可能である。
【0026】
左右一対のアーム13は、左右のそれぞれの円柱部12Cの一端部に取り付けられている。把持部14は、アーム13の長手方向の先端部にそれぞれ設けられている。アーム13の先端部(すなわち、把持部14が取り付けられる側)には、把持部14が他の部品22及び部材等から受ける力を検出する力覚センサ18が設けられている。力覚センサ18により、把持部14を動作させたときの把持部14への他の部材の接触、又は把持部14に把持された部品22への他の部材の接触などが検出される。アーム13及び把持部14については、後に詳述する。
【0027】
カメラ15は、作業台20に設置された基準治具21、部品22、及び組み立て部品24の作業台20上の状況を示す画像を撮影する(図3参照)。カメラ15として、例えば、CCD(Chage Coupled Device)イメージセンサなどが用いられる。
【0028】
基準治具21は、作業台20の予め設定された設定位置に配置されている。基準治具21は、外力を受けても移動しないように作業台20上に固定されている。基準治具21は、互いに直交する3軸方向の基準面21A、基準面21B、及び第3基準面21Cを備えている(図3参照)。より詳細には、一例として、基準治具21は、作業台20と平行な方向に延びる基準面21Aと、基準面21Aに対して直交する方向に延びる基準面21Bと、基準面21A及び基準面21Bに対して直交する方向に延びる基準面21Cとを備えている。基準治具21の基準面21A、基準面21B、及び基準面21Cの3軸方向は、例えば、水平2軸方向と垂直1軸方向(例えば、X方向、Y方向、及びZ方向)とされている。
【0029】
把持装置10は、基準治具21上に置かれた部品22の後述する初期把持位置22B(図7参照)を把持部14により把持した後、把持部14を部品22の初期把持位置22Bから目標位置22C(図8参照)に修正する動作を行う。上記の初期把持位置22Bの設定、及び目標位置22Cの修正の動作については、後に説明する。
【0030】
図2に示すように、組み立て部品24には、部品22が組付けられる凹状の組付け部24Aが設けられている。把持装置10は、把持部14により部品22の目標位置22Cを把持した状態で、アーム13の動作により部品22を組み立て部品24の側に移動させ、部品22を組み立て部品24の組付け部24Aに組み付ける動作を行う。本例において、組み付け部24Aは、直方体状の部品22が嵌合する、断面が四角形の穴である。本例の組み付け動作は、組み付け部24Aに対して部品22を挿入する動作である。部品22は組み付け部24Aに挿入されるため、把持部14は、組み付け動作の際には、部品22において、挿入される挿入部分とは反対側に位置する部分を把持する。把持部14が組み付け動作において把持する部品22の把持部分が目標位置22Cとなる。上記組付け動作については、後に説明する。
【0031】
図3に示すように、制御装置16は、画像取得部31と、画像解析部32と、初期把持位置制御部33と、把持位置修正部34と、組付制御部35と、アーム動作制御部36とを備えている。さらに、制御装置16には、外部記憶装置としてのストレージ37が電気的に接続されている。
【0032】
ストレージ37には、部品情報41、目標位置情報42、及び基準治具情報43が予め格納されている。部品情報41、目標位置情報42、及び基準治具情報43は、例えば、図示しない入力装置又は通信装置を介して予め登録情報として格納されている。
【0033】
部品情報41としては、例えば、部品22の形状、部品22の基準治具21に対する押し当て部22A(図7参照)の位置などが含まれる。基準治具情報43としては、例えば、作業台20上の基準治具21が置かれている範囲、基準治具21の形状、及び基準治具21の基準面21A、21B及び21Cの位置などが含まれる。目標位置情報42としては、例えば、把持部14と基準治具21の基準面21A、21B及び21Cとの位置関係などが含まれる。
【0034】
カメラ15で撮影された画像は、制御装置16に送信される。制御装置16において、画像取得部31は、カメラ15で撮影された画像の情報を取得する。画像取得部31に取得された画像の情報は、画像解析部32に入力される。
【0035】
画像解析部32は、画像取得部31から入力された画像の情報を解析し、画像の情報から、部品22の位置、及び基準治具21の位置などを検出する。画像解析部32で解析された画像解析情報は、初期把持位置制御部33、把持位置修正部34及び組付制御部35に入力される。
【0036】
初期把持位置制御部33は、画像解析部32で解析された画像解析情報から、部品22の初期把持位置を設定する。部品22には、基準治具21に対する押し当て部22A(図7参照)が予め設定されている。
【0037】
初期把持位置制御部33は、押し当て部22Aとは押し当て方向(すなわち、基準治具21への押し当て方向)において逆側の位置を初期把持位置22B(図7参照)として設定する。初期把持位置制御部33は、アーム動作制御部36を通じて、把持部14により部品22の初期把持位置22Bを把持する制御を行う。
【0038】
把持位置修正部34は、把持部14によって部品22を初期把持位置22Bで把持した状態で、基準治具21の基準面21A、21B、及び21Cの少なくとも1つに対して、部品22の押し当て部22Aを押し当てる制御を行う(図8参照)。さらに、把持位置修正部34は、把持部14と部品22とを相対的に摺動させることにより、把持部14と基準面21A、21B、及び21Cのうちの少なくとも1つとの相対的な位置関係(例えば、目標位置情報42に含まれる)に基づいて、把持部14による把持位置を目標位置22Cに修正する制御を行う(図8参照)。把持位置修正部34による制御信号は、アーム動作制御部36に入力される。
【0039】
組付制御部35は、把持部14による把持位置が目標位置22Cに修正された後に、部品22を組み立て部品24に組み付ける制御を行う。
【0040】
アーム動作制御部36は、アーム13及び把持部14の動作を制御する。アーム動作制御部36については、後に説明する。
【0041】
図4には、アーム13及び把持部14の構成が示されている。図4では、正面視にて装置本体12の幅方向左側のアーム13のみが示されているが、正面視にて装置本体12の幅方向右側のアーム13及び把持部14(図1参照)は、左右対称であるので、図示を省略する。
【0042】
図4に示すように、アーム13は、装置本体12側の基端側に位置する上アーム部13Bと、基端側とは反対の先端側に位置する前アーム部13Aと、前アーム部13Aと上アーム部13Bとを接続する第1関節部13Cとを備えている。また、アーム13は、上アーム部13Bと装置本体12の円柱部12Cとを接続する第2関節部13Dを備えている。さらに、アーム13は、前アーム部13Aの先端部に、把持部14が取り付けられるブロック状の取付部13Eを備えている。取付部13Eには、力覚センサ18が設けられている。
【0043】
第1関節部13Cには、前アーム部13Aと上アーム部13Bとを相対的に回転させる第1モータ(例えば、MA1)51が設けられている。第2関節部13Dには、円柱部12Cと上アーム部13Bとを相対的に回転させる第2モータ(例えば、MA2)52が設けられている。
【0044】
把持部14は、アーム13の取付部13Eの幅方向両側に取り付けられた一対のハンド部14A、14Bを備えている。ハンド部14A、14Bは、左右対称な形状をしている。図4において右側のハンド部14Aは、アーム13に対して先端側の末節部44Aと、アーム13側の基節部44Bと、末節部44Aと基節部44Bとを接続する第1関節部44Cとを備えている。さらに、ハンド部14Aは、基節部44Bと取付部13Eとを接続する第2関節部44Dを備えている。
【0045】
第1関節部44Cには、末節部44Aと基節部44Bとを相対的に回転させる第1モータ(例えば、MH1)53が設けられている。第2関節部44Dには、基節部44Bと取付部13Eとを相対的に回転させる第2モータ(例えば、MH2)54が設けられている。
【0046】
図4において左側のハンド部14Bは、アーム13に対して先端側の末節部45Aと、アーム13側の基節部45Bと、末節部45Aと基節部45Bとを接続する第1関節部45Cとを備えている。さらに、ハンド部14Bは、基節部45Bと取付部13Eとを接続する第2関節部45Dを備えている。
【0047】
第1関節部45Cには、末節部45Aと基節部45Bとを相対的に回転させる第3モータ(例えば、MH1)55が設けられている。第2関節部45Dには、基節部45Bと取付部13Eとを相対的に回転させる第4モータ(例えば、MH2)56が設けられている。
【0048】
図5に示すように、アーム動作制御部36は、移動制御部61と、把持力制御部62とを備えている。移動制御部61は、アーム13と把持部14と電気的に接続されている。把持力制御部62は、把持部14に電気的に接続されている。なお、図5では、構成を分かりやすくするため、図4に示す装置本体12の幅方向左側のアーム13及び把持部14のみ図示し、装置本体12の幅方向右側のアーム13及び把持部14(図1参照)は図示を省略している。
【0049】
図5に示すように、移動制御部61は、アーム13の第1モータ51、第2モータ52の回転を制御することで、アーム13の移動方向及び移動量を制御する。移動制御部61によるアーム13の移動方向及び移動量は、例えば、互いに直交する3軸方向(例えば、X方向、Y方向、及びZ方向)の座標軸の位置を設定することによって制御する。
【0050】
移動制御部61は、把持部14の第1モータ53、第2モータ54、第3モータ55、及び第4モータ55の回転を制御することで、把持部14のハンド部14A及び14Bのそれぞれの移動方向及び移動量を制御する。移動制御部61による把持部14のハンド部14A、14Bの移動方向及び移動量は、例えば、互いに直交する3軸方向(例えば、X方向、Y方向、及びZ方向)の座標軸の位置を設定することによって制御する。
【0051】
把持力制御部62は、把持部14の第1モータ53、第2モータ54、第3モータ55、及び第4モータ55の回転を制御することで、把持部14のハンド部14A及び14Bの把持力を制御する。把持部14のハンド部14A及び14Bの把持力は、例えば、弱い把持力である第1把持力と、第1把持力よりも強い把持力である第2把持力の少なくとも2段階に調整可能とされている。第1実施形態では、把持部14の一対のハンド部14A及び14Bで部品22を挟み込む際の第1モータ53、第2モータ54、第3モータ55、及び第4モータ55のトルクを制御することで、把持部14による把持力が調整可能である。
【0052】
より詳細には、把持部14が部品22を把持して部品22を組み立て部品24に組み付ける際には、把持部14のハンド部14A及び14Bの把持力は、第2把持力に調整される。第2把持力は、把持部14のハンド部14A及び14Bで部品22をしっかりと把持可能な強い把持力に設定されている。具体的には、第2把持力は、把持部14が部品22を把持している場合に部品22に対して、組み付け時に組み付け部品24等から外力が加わった場合でも、把持部14から部品22が落下することはもちろん、把持部14が部品22を把持する位置の位置ずれが生じない程度の把持力である。
【0053】
また、把持部14による部品22の把持位置を目標位置22C(図8参照)に修正する際には、把持部14のハンド部14A及び14Bの把持力は、第1把持力に調整される。第1把持力は、把持部14のハンド部14A及び14Bを部品22に対して摺動可能な弱い把持力に設定されている。これにより、把持部14のハンド部14A及び14Bと部品22とを相対的に摺動させ、部品22の把持位置を目標位置22Cに修正することが可能となる。
【0054】
図6に示すように、部品22の組み立てを行う際には、まず、部品22が作業台20上の基準治具21付近の任意の位置に置かれる。カメラ15(図1参照)は、部品22、基準治具21及び組み立て部品24の画像を撮影する。カメラ15で撮影された画像は、画像取得部31(図3参照)に取得され、画像取得部31から画像解析部32に入力される。
【0055】
画像解析部32では、画像の情報が解析され、部品22の位置、部品22の押し当て部22Aの位置、及び基準治具21の位置などを認識する。
【0056】
図7に示すように、画像解析部32で解析された画像解析情報は、初期把持位置制御部33に入力される。また、ストレージ37に格納されている部品情報41及び基準治具情報43は、画像解析部32に入力される(図8参照)。
【0057】
上述したとおり、部品情報41には、部品22の形状に加えて、予め設定された押し当て部22Aの位置を示す情報が含まれている。画像解析部32は、部品情報41に含まれる形状に基づいてパターンマッチングなどの物体認識処理を行うことにより、画像内の部品22の現在位置及び姿勢を認識する。
【0058】
部品情報41に含まれる押し当て部の位置の情報は、例えば、第1に、部品22の形状が直方体形状である場合には、直方体形状の長手方向における一方の端部であることを含んでいる。まだ、第2に、直方体形状の長手方向の一方の端部を特定するための情報を含んでいる。一方の端部を特定するための情報としては、例えば、直方体形状の一方の端部に形状的な特徴又はマークの有無などがある。形状的な特徴としては、例えば端部に切り欠きが設けられている、あるいは端面が凹面又は凸面で形成されているなどである。画像解析部32は、部品情報41に含まれる押し当て部の位置の情報に基づいて、及び部品22の現在位置及び姿勢に基づいて、押し当て部の位置がどの位置にあり、どの方向を向いているかを認識する。画像解析部32は、部品22に関する画像解析情報を初期把持位置制御部33に入力する。
【0059】
図7に示すように、初期把持位置制御部33では、画像解析部32で解析された画像解析情報に基づいて、部品22の初期把持位置22Bを設定する。第1実施形態では、部品22の押し当て部22Aとは基準治具21に対する押し当て方向(例えば、矢印A方向)において逆側の位置を、初期把持位置22Bとする。初期把持位置制御部33は、画像解析部32によって認識された、部品22の現在位置、姿勢、及び押し当て部の位置の情報に基づいて、作業台20上における押し当て部22Aの位置を検出する。また、初期把持位置についても、押し当て部22Aとは押し当て方向の逆側であって、例えば、直方体状の部品22の端部からおおよそ何ミリ程度の位置であるという情報がストレージ37に予め登録されている。初期把持位置制御部33は、こうした初期把持位置に関する情報に基づいて、制御信号をアーム動作制御部36に入力する。アーム動作制御部36は、入力された制御信号に基づいて、把持部14を制御する。
【0060】
さらに、初期把持位置制御部33は、アーム動作制御部36の移動制御部61(図5参照)を制御することで、把持部14により部品22の初期把持位置22Bを把持する。また、把持部14により部品22の初期把持位置22Bを把持する際には、初期把持位置制御部33は、アーム動作制御部36の把持力制御部62(図5参照)を制御することで、例えば、把持部14のハンド部14A及び14Bの把持力を強い把持力である第2把持力に調整する。
【0061】
また、図8に示すように、基準治具情報43は、作業台20上において基準治具21が置かれているおおよその範囲、基準治具21の形状、基準面の位置及び数などを含んでいる。画像解析部32は、基準治具21が置かれているおおよその範囲と、基準治具21の形状の情報とに基づいてパターンマッチングなどの物体認識処理を行うことにより、作業台20上における基準治具21の位置及び姿勢を認識する。また、画像解析部32は、基準面の位置及び数の情報に基づいて、作業台20上における基準面21A、21B及び21Cの位置及び姿勢を認識する。画像解析部32は、基準治具21の画像解析情報を把持位置修正部34に出力する。
【0062】
把持位置修正部34は、基準治具21の画像解析情報に基づいて、基準治具21及び基準治具21の基準面21A、21B、及び21Cを把握する。そして、把持位置修正部34は、把持部14によって部品22を初期把持位置22Bで把持した状態で、基準治具21の基準面21A、21B、及び21Cの少なくとも1つに対して、部品22の押し当て部22Aを押し当てる制御を行う。この制御はアーム動作制御部36を通じて行われる。
【0063】
図8に示すように、アーム動作制御部36(図3参照)によりアーム13及び把持部14の動作が制御される。把持部14は、初期把持位置22Bで把持した部品22を基準治具21の方向に移動する。そして、アーム動作制御部36(図3参照)は、アーム13を制御することにより、例えば、部品22をいったん基準治具21の基準面21Aの上に置く(図8参照)。そして、アーム動作制御部36は、部品22の押し当て部22Aが基準治具21の基準面21B及び22Cのいずれか一方の方向に向くように、部品22の姿勢を調整する。本例では、部品22は、部品22の押し当て部22Aが基準治具21の基準面21Cの方向を向く姿勢に調整される。なお、部品22を基準面21Aの上に置かずに、部品22の姿勢を調整してもよい。
【0064】
また、ストレージ37に格納されている目標位置情報42は、把持位置修正部34に入力される。目標位置情報42としては、把持部14と基準治具21の基準面21A、21B及び21Cの少なくとも1つとの相対的な位置関係が含まれる。把持部14と基準治具21の基準面21A、21B及び21Cの少なくとも1つの位置関係は、予め設定された、基準面21B及び21Cの少なくとも1つからの距離を含む。
【0065】
図8に示すように、把持位置修正部34は、基準治具21に部品22を押し当てる前の段階では、把持部14によって部品22の初期把持位置22Bを把持している(図8中の右側の図を参照)。この状態で、アーム動作制御部36の移動制御部61(図5参照)を制御することで、基準治具21の基準面21Cに部品22の押し当て部22Aを押し当てる(図8中の左側の図の二点鎖線を参照)。このとき、基準治具21の基準面21Cに部品22の押し当て部22Aの端面(例えば、先端面)を面接触させる。
【0066】
把持装置10では、力覚センサ18(図1参照)により、基準治具21の基準面21Cに部品22の押し当て部22Aが押し当てられたことが検出される。力覚センサ18による検出信号に基づき、アーム動作制御部36の把持力制御部62(図5参照)は、把持部14のハンド部14A及び14Bの把持力を弱い把持力である第1把持力に制御する。
【0067】
把持位置修正部34は、把持部14と部品22とを相対的に摺動させることにより、把持部14と基準面21Cとの相対的な位置関係に基づいて、把持部14による把持位置を目標位置22Cに修正する(図8中の左側の図の実線を参照)。把持位置修正部34は、把持部14の現在位置を把握しているため、部品22を基準面21Cに押し当てた段階における、基準面21Cの位置と、部品22の初期把持位置22Bを把持している把持部14との相対的な位置関係については把握している。
【0068】
そのため、把持位置修正部34は、把持部14を部品22に対して矢印B方向に摺動させることにより、把持部14と基準面21Cとの相対的な位置関係に基づいて、把持部14による把持位置を目標位置22Cに修正する。すなわち、把持位置修正部34は、基準面21Cの位置と把持部14との相対的な位置関係が、目標位置情報42に規定される位置関係となるように、把持部14の把持位置を修正する。一例として、一方の基準面21Cからの距離D(図8参照)の位置が目標位置22Cとして設定されている場合は、把持部14の中心線が距離Dとなるように摺動させることで、把持部14による部品22の把持位置を目標位置22Cに修正する。
【0069】
また、基準治具21に部品22を押し当てる際に、基準治具21の基準面21Cと部品22の押し当て部22Aの端面(例えば、先端面)とが面接触するように部品22の姿勢が調整されているため、把持部14に対する部品22の把持位置に加えて、部品22の姿勢が修正される。
【0070】
以下、上記構成による作用について、図9及び図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0071】
図9は、制御装置16が担当する準備処理の流れを示すフローチャートである。図9に示すように、制御装置16は、ストレージ37から部品情報41、基準治具情報43及び目標位置情報42を含む登録情報を取得する(ステップS1002)。
【0072】
制御装置16において、画像取得部31は、ステップS1003において、部品22、基準治具21及び組み立て部品24が置かれた作業台20上の画像(図6参照)、すなわち画像情報を取得する。
【0073】
ステップS1004において、画像解析部32は、画像情報を解析する。画像情報の解析により、例えば、部品22の位置、部品22の押し当て部22Aの位置、及び基準治具21の位置が検出される。こうした画像解析情報及び登録情報は、初期把持位置制御部33及び把持位置修正部34に入力される(ステップS1005)。これにより準備処理が終了する。
【0074】
準備処理が終了後、制御装置16は、図10に示す把持修正処理及び組付処理を実行する。ステップS2002において、初期把持位置制御部33は、画像解析情報に基づいて、アーム動作制御部36を通じてアーム13及び把持部14を制御することによって、把持部14で部品22の初期把持位置22Bを把持させる。図11(A)に示すように、初期把持位置制御部33は、部品22の押し当て部22Aとは基準治具21に対する押し当て方向(例えば、矢印A方向)において逆側の位置を把持部14で把持させる。すなわち、部品22の押し当て部22Aとは押し当て方向(例えば、矢印A方向)において逆側の位置が初期把持位置22Bとなる。把持部14で部品22の初期把持位置22Bを把持する際には、把持部14による把持力は、強い把持力である第2把持力に調整される。
【0075】
初期把持位置制御部33は、図11(B)に示すように、制御装置16は、把持部14で部品22の初期把持位置22Bを把持した状態で、アーム動作制御部36によりアーム13及び把持部14を制御することによって、部品22を基準治具21の基準面21Aの上に置く。その際、制御装置16は、部品22の押し当て部22Aが基準治具21の基準面21Cを向くように部品22の姿勢を調整する(ステップS2003)。
【0076】
把持位置修正部34は、ステップS2004において、図11(C)に示すように、基準治具21の基準面21Cに対して把持部14を押し当て方向(例えば、矢印A方向)に移動する。
【0077】
把持位置修正部34は、画像解析情報に基づいて、図11(C)に示すように、把持部14を押し当て方向(例えば、矢印A方向)に移動することで、基準治具21の基準面21Cに部品22の押し当て部22Aを押し当てる。把持位置修正部34は、アーム13に設けられた力覚センサ18によって、基準治具21の基準面21Cに部品22の押し当て部22Aが押し当てられたことを検出する。この際に、把持位置修正部34は、部品22の押し当て部22Aの端面(例えば、先端面)と基準面21Cとを面接触させることにより、部品22の姿勢を修正する。
【0078】
ステップS2004において、基準治具21の基準面21Cに部品22の押し当て部22Aが押し当てられた場合には、アーム動作制御部36は、ステップS2005において、把持部14の把持力を弱める。第1実施形態では、把持部14の把持力は、第2把持力よりも弱い把持力である第1把持力に調整される。これにより、把持部14と部品22とを相対的に摺動させることが可能となる。なお、把持部14が初期把持位置22Bを把持する段階から第1把持力に調整されていてもよい。
【0079】
把持位置修正部34は、ステップS2006において、把持部14を部品22に対して目標位置22Cに移動させる。図11(D)に示すように、把持部14と部品22とを相対的に摺動させることにより、把持部14による把持位置を初期把持位置22Bから目標位置22Cに修正する。第1実施形態では、基準治具21の基準面21Cからの距離Dの位置が目標位置22Cに設定されており、把持部14の幅方向の中心線を目標位置22Cに移動させる。
【0080】
把持部14の把持位置が目標位置22Cに修正された後、アーム動作制御部36は、ステップS2007において、把持部14の把持力を強める。第1実施形態では、部品22の目標位置22Cを把持する把持部14の把持力は、第1把持力よりも強い把持力である第2把持力に調整される。これにより、把持部14で部品22の目標位置22Cがしっかりと把持される。これにより、制御装置16による把持修正処理を終了する。
【0081】
組付制御部35は、ステップS2008において、把持部14の部品22を組み立て部品24に移動する。制御装置16は、アーム動作制御部36によりアーム13及び把持部14を制御することによって、把持部14の部品22を組み立て部品24に移動する。
【0082】
組付制御部35は、ステップS2009において、把持部14の部品22を組み立て部品24に組み付ける。図12に示すように、把持部14の部品22を矢印C方向に移動させ、部品22を組み立て部品24の凹状の組付け部24Aに組み付ける。これにより、制御装置16による組付処理を終了する。
【0083】
上記の把持装置10では、部品22の基準治具21への押し当て部22Aとは逆側の初期把持位置22Bを把持部14で把持する。さらに、把持部14により把持した部品22の押し当て部22Aを基準治具21の基準面21Cに押し当て方向に押し当てることで、部品22の把持位置を修正する。把持位置の修正は、部品22と把持部14とを相対的に摺動させることにより、把持部14と基準面21Cとの相対的な位置関係に基づいて行われる。制御装置16は、把持部14の位置を把握しており、基準治具21の基準面21Cの位置は画像解析情報に基づいて把握することが可能である。このように把持装置10は、正確に位置を把握することができる把持部14と基準面21Cとの相対的な位置関係に基づいて、把持部14による部品22の把持位置を目標位置22Cに修正する。そのため、部品22の輪郭を画像で検出する場合と比べて、部品22に対する把持部14の把持位置を正確に位置決めすることができる。
【0084】
画像に写る部品22の輪郭から把持位置を正確に検出するためには、画像を高精細にする必要がある。しかし、部品22のサイズが小さくなるほど、解像度の高い高精細な画像が必要になるが、画像の解像度にも限界がある。そのため、部品22のサイズが小さいほど、部品22の輪郭を画像で検出することによって把持位置を位置決めする方法では正確な位置決めが困難になる。本例においても、基準面21Cの位置は画像で検出しているものの、把持位置の最終的な位置決めは、基準面21Cに対して部品22の押し当てを行った場合における、基準面21Cと把持部14との相対的な位置関係によって行われる。部品22が小さい場合でも、小さい部品22の輪郭から求められる位置を位置決めの基準に用いないため、高精細な画像を使用することなく、正確な位置決めが可能になる。
【0085】
また、本開示の技術によれば、部品22をセットしておく専用の位置決めトレイも不要である。そのため、多品種少量生産にも適している。なぜならば、専用の位置決めトレイを使用する場合は、品種ごとに専用の位置決めトレイを使用する必要があるが、多品種少量生産の場合、品種ごとに専用の位置決めトレイを用意することはコスト的に見合わない。したがって、現実問題として専用の位置決めトレイを使用することができないためである。
【0086】
また、把持装置10では、把持部14により把持した部品22を基準治具21の基準面21Cに押し当て方向に押し当てることで、部品22の把持位置に加えて、把持姿勢を修正する。これにより、把持部14に対する部品22の位置をより正確に位置決めすることができる。
【0087】
また、把持装置10では、把持部14と基準面21Cとの相対的な位置関係は、予め設定された、基準面21Cからの距離(一例として、距離D)を含むため、把持部14と部品22との正確な位置合わせがしやすい。
【0088】
また、把持装置10では、把持部14による部品22の把持位置を目標位置22Cに修正した後、把持部14を移動させることにより、部品22を組み立て部品24に組み付ける。このため、部品22を組み立て部品24に組み付ける際の組付け精度が向上する。
【0089】
また、把持装置10では、部品22の把持位置を修正する際の把持部14の部品22に対する第1把持力は、部品22を組み立て部品24に組み付ける際の部品に対する第2把持力より弱い。これにより、部品22と把持部14を相対的に摺動させることで、部品22の把持位置を目標位置22Cに修正することができる。また、部品22を組み立て部品24に組み付ける際には、把持部14で部品22をしっかりと把持することができる。
【0090】
また、把持装置10では、把持部14は、回転可能な1以上の第1関節部44C及び第2関節部44Dを有しているから、把持部14で部品22を把持しやすい。
【0091】
また、基準治具21は、互いに直交する3軸方向のそれぞれの基準面21A、21B、21Cを含むから、把持部14による部品22の把持位置を修正しやすい。また、基準治具21は、水平2軸方向、垂直1軸方向のそれぞれの基準面21A、21B、21Cを含むから、把持部14による部品22の把持位置を修正しやすい。
【0092】
また、把持装置10の制御方法では、部品22を、把持部14によって把持する把持位置を制御する把持位置制御工程であって、部品22の押し当て部22Aとは押し当て方向において逆側の位置を初期把持位置22Bにする把持位置制御工程を備えている。さらに、把持装置10の制御方法では、把持部14によって部品22を初期把持位置22Bで把持した状態で、基準治具21の基準面21Cに対して、部品22の押し当て部22Aを押し当て、かつ、部品22と把持部14とを相対的に摺動させることにより、把持部14と基準面21Cとの相対的な位置関係に基づいて、把持位置を目標位置22Cに修正する把持位置修正工程を備えている。このため、把持装置10の制御方法では、把持部14に対する部品22の把持位置を正確に位置決めることができ、専用の位置決めトレイが不要となるため、多品種少量生産にも適している。
【0093】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態の把持装置について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等を有する場合は、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0094】
図13は、第2実施形態の把持部100の一部の構成を示す。図13に示すように、把持部100は、ハンド部101の末節部101Aの先端部に、接着層102を介して部品22(図1参照)の形状に応じて変形可能な緩衝層103を備えている。さらに、把持部100は、緩衝層103の表面に形成された平滑層104を備えている。
【0095】
緩衝層103は、例えば、発泡樹脂又はゴムなどで形成されており、把持部100で部品22を把持したときに、部品22の形状に応じて緩衝層103が変形する。
【0096】
平滑層104は、例えば、緩衝層103よりも硬く、かつ、滑りやすい樹脂などで形成されている。把持部100により部品22を把持するときに、平滑層104は部品22に直接接触する。第2実施形態では、緩衝層103の表面に平滑層104が直接形成されているが、緩衝層103の表面に接着層を介して平滑層104を設けてもよい。
【0097】
なお、上記構成以外の構成は、第1実施形態の把持装置10と同じである。
【0098】
第2実施形態では、第1実施形態の把持装置10と同様の構成による効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0099】
把持部100は、部品22を把持したときに部品22の形状に応じて変形可能な緩衝層103を備えている。このため、把持部100で部品22を把持した状態で、緩衝層103が部品22の形状に応じて変形する。したがって、部品22の形状に拘わらず、把持部100で部品22を安定して把持することができる。また、把持部100は、緩衝層103の表面に形成された平滑層104を備えているので、把持部100で部品22を把持したときに、平滑層104が部品22と接触する。このため、把持部100による部品22の把持位置を修正する際に、部品22に対して平滑層104が摺動しやすくなる。
【0100】
〔その他〕
なお、第1~第2実施形態において、部品の形状は、変更可能である。部品は、例えば、円形状、楕円形状、又は多角形状の棒材で構成されていてもよい。また、部品は、円錐状、多角錐状の部材で構成されていてもよい。
【0101】
第1~第2実施形態において、装置本体12の形状、把持部14の形状、把持部100の形状、及びアーム13の形状は変更可能である。
【0102】
第1~第2実施形態において、基準治具21の形状は、変更可能である。例えば、少なくとも1以上の基準面を有する基準治具を用いてもよい。
【0103】
上記各実施形態において、初期把持位置制御部33及び把持位置修正部34といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェアを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0104】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0105】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0106】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0107】
以上、本開示の実施例について記述したが、本開示は上記の実施例に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【0108】
日本出願2019-179607の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0109】
10 把持装置
12 装置本体
14 把持部
16 制御装置
21 基準治具
21A 基準面
21B 基準面
21C 基準面
22 部品
22A 押し当て部
22B 初期把持位置
22C 目標位置
24 部品(他の部品)
33 初期把持位置制御部
34 把持位置修正部
35 組付制御部(組付け制御部)
44C 第1関節部
44D 第2関節部
45C 第1関節部
45D 第2関節部
62 把持力制御部
100 把持部
103 緩衝層
104 平滑層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12
図13