(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】シリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物、及びシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着方法
(51)【国際特許分類】
C09D 143/04 20060101AFI20220922BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220922BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20220922BHJP
C09J 5/02 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C09D143/04
C09D5/00 D
C09D7/20
C09J5/02
(21)【出願番号】P 2020546798
(86)(22)【出願日】2019-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2019032533
(87)【国際公開番号】W WO2020054335
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018169840
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 大樹
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-168496(JP,A)
【文献】国際公開第2017/119181(WO,A1)
【文献】特開2001-240750(JP,A)
【文献】特開2006-063092(JP,A)
【文献】特開2003-313332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D,C09J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
2は
tert-ブチル基又はシクロヘキシル基である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)、及び
下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
3は水素原子、又は非置換もしくは置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、R
4は独立して非置換又は置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、nは0≦n≦2を満たす整数である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)を少なくとも含
み、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A):(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)の割合が4:1~100:1(モル比)である共重合体(I)を、溶媒(II)中に含むことを特徴とするシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物
であって、
前記シリコーン樹脂が室温縮合硬化型シリコーンゴム組成物又は付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物であり、該室温縮合硬化型シリコーンゴム組成物又は付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物をポリオレフィン系樹脂からなる基材に接着させるためのものである、シリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
【請求項2】
前記(I)成分の含有量が、(II)成分100質量部に対して0.1~20質量部である請求項1に記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
【請求項3】
前記(II)成分が、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びパラフィン系溶媒から選ばれる1種又は2種以上の混合物である請求項1
又は2に記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
【請求項4】
共重合体(I)の分子量が3,000~200,000である請求項1~
3のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
【請求項5】
共重合体(I)が、単量体単位として(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)のみを含有するものである請求項1~
4のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
【請求項6】
ポリオレフィン系樹脂からなる基材の表面に請求項1~
5のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物を適用して該プライマー組成物層を形成した後、該プライマー組成物層の外表面に、更に、室温縮合硬化型シリコーンゴム組成物及び付加硬化型シリコーンゴム組成物から選ばれるシリコーンゴム組成物を適用して該シリコーンゴム組成物層を形成し、該シリコーンゴム組成物層を硬化してシリコーンゴム硬化物からなるシリコーン樹脂層を形成する工程を有するシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物、特には、室温縮合硬化型シリコーンゴム組成物及び付加硬化型シリコーンゴム組成物から選ばれるシリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム硬化物)等のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂とを接着させるために用いるプライマー組成物、及び該プライマー組成物を用いるシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂は、熱可塑性の汎用樹脂であり、安価で、機械的特性、成形性、耐薬品性、電気特性など多くの優れた性質を有するため、幅広い分野で使用されている。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂はポリマー中に極性基を含まないため極性が低く、且つ結晶性であるため、難接着性材料として知られている。一般的にポリオレフィン系樹脂への接着性を得るためには、表面を薬剤などで化学的に処理する、またはプラズマ処理などの手法で表面を酸化処理するといった種々の方法が知られているが、これらの手法は特殊な装置を必要とする。また、より簡便な方法として、塩素化ポリオレフィンや酸変性塩素化ポリオレフィンをプライマーとして塗布する方法が知られており、一般的にシリコーンシーラント(シリコーン樹脂)とポリオレフィン系樹脂とを接着させる場合、塩素化ポリオレフィンや酸変性塩素化ポリオレフィンからなるプライマーで表面を処理することによって接着性を得る。
【0003】
なお、本発明の先行技術として、例えば、特開2004-210894号公報(特許文献1)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のプライマー組成物は、シリコーン樹脂及びポリオレフィン系樹脂に対する接着性が不十分であり、プライマー組成物の接着性の向上が課題となっていた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、シリコーン樹脂、特には、室温縮合硬化型シリコーンゴム組成物及び付加硬化型シリコーンゴム組成物から選ばれるシリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム硬化物)等のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着において、良好な接着性を与えるプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、炭素数1~12のアルキル基等の一価炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位、及び縮合硬化型又は付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物(シリコーンゴム)等のシリコーン樹脂に結合可能な官能基としてヒドロシリル基(SiH基)を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む共重合体を含むプライマー組成物が、基材としてポリオレフィン系樹脂を使用した場合に良好な接着性を与えるプライマー組成物となることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、下記のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物、及びシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着方法を提供するものである。
<1>
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
2は非置換又は置換の炭素数1~12の一価炭化水素基である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)、及び
下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
3は水素原子、又は非置換もしくは置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、R
4は独立して非置換又は置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、nは0≦n≦2を満たす整数である。)
で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)を少なくとも含む共重合体(I)を、溶媒(II)中に含むことを特徴とするシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
<2>
前記(I)成分における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)におけるR
2が、tert-ブチル基又はシクロヘキシル基である<1>に記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
<3>
前記共重合体(I)における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A):(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)の割合が1:1~1000:1(モル比)である<1>又は<2>に記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
<4>
前記(I)成分の含有量が、(II)成分100質量部に対して0.1~20質量部である<1>~<3>のいずれかに記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
<5>
前記(II)成分が、芳香族炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒及びパラフィン系溶媒から選ばれる1種又は2種以上の混合物である<1>~<4>のいずれかに記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
<6>
前記プライマー組成物が室温縮合硬化型シリコーンゴム組成物又は付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物をポリオレフィン系樹脂からなる基材に接着させるためのものである<1>~<5>のいずれかに記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
<7>
共重合体(I)の分子量が3,000~200,000である<1>~<6>のいずれかに記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
<8>
共重合体(I)が、単量体単位として(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)及び(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)のみを含有するものである<1>~<7>のいずれかに記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物。
<9>
ポリオレフィン系樹脂からなる基材の表面に<1>~<8>のいずれかに記載のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物を適用して該プライマー組成物層を形成した後、該プライマー組成物層の外表面に、更に、室温縮合硬化型シリコーンゴム組成物及び付加硬化型シリコーンゴム組成物から選ばれるシリコーンゴム組成物を適用して該シリコーンゴム組成物層を形成し、該シリコーンゴム組成物層を硬化してシリコーンゴム硬化物からなるシリコーン樹脂層を形成する工程を有するシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプライマー組成物は、室温縮合硬化型シリコーンゴム組成物及び付加硬化型シリコーンゴム組成物から選ばれるシリコーン樹脂組成物の硬化物(シリコーンゴム硬化物)等のシリコーン樹脂、特には、ヒドロシリル化付加反応によって架橋・硬化する付加硬化型シリコーンゴム組成物等の硬化物(付加硬化型シリコーンゴム硬化物)をポリオレフィン系樹脂、特にポリプロピレンに良好に接着させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0011】
[プライマー組成物]
本発明のシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着用プライマー組成物は、
成分(I):後述する所定の(メタ)アクリル共重合体、及び
成分(II):後述する所定の溶媒
を含むものである。
【0012】
<(I)(メタ)アクリル共重合体>
本発明で用いる共重合体(I)は、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)、及び下記一般式(2)で表されるヒドロシリル基(即ち、ケイ素原子に結合した水素原子であるSiH基)を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)を少なくとも含むものである。
【0013】
【化3】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
2は非置換又は置換の炭素数1~12の一価炭化水素基である。)
【0014】
【化4】
(式中、R
1は水素原子またはメチル基、R
3は水素原子、又は非置換もしくは置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、R
4は独立して非置換又は置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、nは0≦n≦2を満たす整数である。)
【0015】
ここで、上記単量体単位(A)の一般式(1)において、R2の非置換又は置換の炭素数1~12の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α-,β-ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基;また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-シアノエチル基等を例示することができる。これらの中でも、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等の炭素数4~6のアルキル基又はシクロアルキル基が好ましく、tert-ブチル基、シクロヘキシル基が特に好ましい。従って、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体単位または(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル単量体単位であることが好ましい。
【0016】
また、上記単量体単位(B)の一般式(2)において、R3は水素原子、又は非置換もしくは置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、好ましくは非置換又は置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であるが、この非置換又は置換の炭素数1~12の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α-,β-ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基;また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-シアノエチル基等を例示することができる。これらの中でも、メチル基、エチル基等のアルキル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0017】
また、前記一般式(2)において、R4は独立して非置換又は置換の炭素数1~12の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、α-,β-ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基;また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、F、Cl、Br等のハロゲン原子やシアノ基等で置換された基、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、2-シアノエチル基等を例示することができる。これらの中でも、メチル基、エチル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基が好ましく、メチル基、フェニル基が特に好ましい。
なお、nは0≦n≦2を満たす整数(即ち、0、1又は2)であり、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0018】
共重合体(I)の分子量は、通常、3,000~200,000、好ましくは5,000~100,000、より好ましくは10,000~80,000程度であることが望ましい。なお、分子量(又は重合度)は、通常、テトラヒドロフラン(THF)等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクトマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均分子量(又は数平均重合度)等として測定することができる。
このとき、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A):(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)の割合(以下、単に(A):(B)の割合と記す。)は1:1~1000:1(モル比)であることが好ましく、更に2:1~500:1、特に4:1~200:1、とりわけ6:1~100:1が好ましい。
なお、共重合体(I)中において、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)の配列には特に制限はなく、この配列はランダム、交互、ブロック等のいずれの形態であってもよいが、通常は、ラジカル重合により生成する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)とのランダム共重合体である。
【0019】
本発明のプライマー組成物中の前記(I)成分の含有量は、(II)成分100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5~15質量部であり、特に1~10質量部、とりわけ3~7.5質量部であることが好ましい。
【0020】
また、共重合体(I)は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)の前駆体である下記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)と(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)の前駆体である下記一般式(4)で表されるヒドロシリル基(SiH基)を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(B)とをラジカル重合に付することにより調製することができる。詳しくは、有機溶媒(好ましくは、後述する溶媒(II)と同じ溶媒)中に、一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)及び一般式(4)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(B)を上記モル比となるように添加し、更に重合開始剤を添加して50~200℃で加熱撹拌することにより、好ましくは溶媒(II)と同じ溶媒中に溶解した形態で、(メタ)アクリル共重合体(I)が得られる。
【0021】
【化5】
(式中、R
1、R
2は上記と同じである。)
【0022】
【化6】
(式中、R
1、R
3、R
4、nは上記と同じである。)
【0023】
一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、メタアクリル酸ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸sec-ブチル、メタアクリル酸tert-ブチル、メタアクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸シクロヘキシルが挙げられる。これらの単量体のうち、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0024】
一般式(4)で表されるヒドロシリル基(SiH基)を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、アクリル酸[3-[トリス(ジオルガノハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]、メタアクリル酸[3-[トリス(ジオルガノハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]、アクリル酸[3-[ビス(ジオルガノハイドロジェンシロキシ)シリル](オルガノ)プロピル]、メタアクリル酸[3-[ビス(ジオルガノハイドロジェンシロキシ)(オルガノ)シリル]プロピル]等であることが好ましく、一般式(4)で表されるヒドロシリル基(SiH基)を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体の具体例としては、アクリル酸[3-[トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]、アクリル酸[3-[トリス(ジエチルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]、アクリル酸[3-[トリス(ジフェニルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]、メタアクリル酸[3-[トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]、メタアクリル酸[3-[トリス(ジエチルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]、メタアクリル酸[3-[トリス(ジフェニルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]、アクリル酸[3-[ビス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル](メチル)プロピル]、アクリル酸[3-[ビス(ジエチルハイドロジェンシロキシ)シリル](メチル)プロピル]、アクリル酸[3-[ビス(ジフェニルハイドロジェンシロキシ)シリル](メチル)プロピル]、メタアクリル酸[3-[ビス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル](メチル)プロピル]、メタアクリル酸[3-[ビス(ジエチルハイドロジェンシロキシ)シリル](メチル)プロピル]、メタアクリル酸[3-[ビス(ジフェニルハイドロジェンシロキシ)シリル](メチル)プロピル]、アクリル酸[3-[ビス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル](エチル)プロピル]、メタアクリル酸[3-[ビス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル](エチル)プロピル]等が挙げられる。これらの単量体のうち、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0025】
また、使用する重合開始剤としては、例えばジ-tert-ブチルペルオキシドなどの有機過酸化物や、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾ系化合物を用いるとよい。重合開始剤の添加量は、全単量体100質量部に対して好ましくは0.1~5.0質量部である。
【0026】
また、共重合体(I)は、一般式(3)で表される単量体と一般式(4)で表される単量体に加えて、上記の単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルを本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよいが、共重合体(I)は、単量体単位として上記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)及び上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)のみを含有するものであることが好ましい。
【0027】
<(II)溶媒>
本発明のプライマー組成物中の成分(II)は、プライマー組成物中の各成分を任意の割合で溶解し、同時に揮発性を有するものであればよい。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;例えば、リグロイン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル系溶媒;例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等のパラフィン系溶媒が例示され、これらは1種単独でも2種以上の混合溶媒としても使用することができる。これらの中で、芳香族炭化水素系溶媒またはエステル系溶媒が好ましく、特にエチルシクロヘキサン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルが好ましい。
【0028】
<その他の成分>
また本発明のプライマー組成物は、上述した成分以外にも、本発明の目的を損なわない範囲において、各種アルコキシシラン及び/又はその部分加水分解縮合物、シランカップリング剤、金属アルコキシド等の1種または2種以上を、任意成分として必要に応じて配合することができる。
【0029】
前記アルコキシシラン又はシランカップリング剤としては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、エチルシリケート、メチルシリケート等のアルコキシシラン類又はその部分加水分解縮合物、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルケニル官能性基含有アルコキシシラン類;γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-2-(アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性基含有アルコキシシラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性基含有アルコキシシラン類;又はイソシアネート官能性基含有アルコキシシラン等のシランカップリング剤(カーボンファンクショナル官能性基含有加水分解性シラン類)を例示することができる。これらのアルコキシシラン又はシランカップリング剤を配合する場合、その配合量は、プライマー組成物全体に対して0.1~20質量%、特に0.1~10質量%の量で配合できる。
【0030】
前記金属アルコキシドとしては、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド等のチタンテトラアルコキシド類に代表されるチタンアルコキシド類;ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラ-n-ブトキシド、ジルコニウムテトラ-tert-ブトキシド等のジルコニウムテトラアルコキシド類に代表されるジルコニウムアルコキシド類などが例示できる。該金属アルコキシドを配合する場合、その配合量は、プライマー組成物全体に対して0.1~20質量%、特に0.1~10質量%で配合することができる。
【0031】
また(メタ)アクリル共重合体(I)成分中のSiH基と付加反応硬化型シリコーン組成物との接着性を向上させるために、付加反応の触媒である白金触媒を本組成物の安定性を損なわない量で添加してもよい。
【0032】
更に、その他の任意成分として補強性充填剤、染料、顔料、耐熱性向上剤、酸化防止剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。
【0033】
本発明のプライマー組成物は、ポリオレフィン系樹脂への濡れ性の良好な(メタ)アクリル酸エステル単量体及び付加硬化型シリコーン樹脂と結合形成が可能なヒドロシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合体を添加することで、プライマーとしてシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂とを良好に接着させることができる。
【0034】
[シリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂との接着方法]
本発明に係るシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂とを接着する方法としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂からなる基材の表面に本発明のプライマー組成物を適用して該プライマー組成物層を形成した後、該プライマー組成物層の外表面に、更に、室温縮合硬化型シリコーンゴム組成物及び付加硬化型シリコーンゴム組成物から選ばれるシリコーンゴム組成物を適用して該シリコーンゴム組成物層を形成し、該シリコーンゴム組成物層を硬化してシリコーンゴム硬化物からなるシリコーン樹脂層を形成することによってシリコーン樹脂とポリオレフィン系樹脂とを接着する方法などが挙げられる。
【0035】
付加硬化型シリコーンゴム組成物の硬化物は、少なくとも、ビニル基含有ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンおよび白金系触媒を含有する付加反応硬化型シリコーン組成物を硬化させることによって得られ、ゴム状弾性体であることが好ましい。該シリコーン組成物には、その他任意成分として、反応制御剤、着色剤、難燃性付与剤、耐熱性向上剤、可塑剤、補強性シリカ、接着付与剤等を添加しても良い。
【0036】
プライマー組成物の製造方法
本発明にかかるプライマー組成物は、上記一般式(3)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(A)と上記一般式(4)で表されるヒドロシリル基(SiH基)を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体(B)とを適当な溶媒中(好ましくは上記溶媒(II)と同じ溶媒中)において、上記した特定のモル比で、重合開始剤を用いて加熱等の手段によってランダム共重合に付し(メタ)アクリル共重合体(I)を調製した後、上記溶媒(II)で規定の濃度に希釈することにより製造することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、常圧は1気圧、室温は25±5℃を意味する。なお、分子量は、実施例及び比較例と同様の条件で調製した各(共)重合体についてのTHFを展開溶媒としたGPC分析におけるポリスチレン換算での数平均分子量を意味する。
【0038】
[実施例1]
常圧で、2,000mLセパラブルフラスコに、酢酸エチル300g、メタアクリル酸シクロヘキシル75.7g(0.45mоl)、メタアクリル酸[3-[トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]19.0g(0.05mоl)、及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(V-59(和光純薬工業(株)製))0.6gを仕込み、80℃で6時間加熱撹拌し、共重合体(I)94.7g((メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A):(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)=90:10(モル比)、単量体単位(A)と単量体単位(B)の配列はランダム、分子量:約50、000)を含む溶液を得た。該共重合体(I)を含む溶液に対して冷却後1200gの酢酸エチルで希釈して、プライマー1を得た。
【0039】
[実施例2]
メタアクリル酸[3-[トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]19.0g(0.05mоl)の代わりに、メタアクリル酸[3-[トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]1.9g(0.005mоl)を使用した以外は実施例1と同様にして、共重合体(I)77.6g((メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A):(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)=99:1(モル比)、単量体単位(A)と単量体単位(B)の配列はランダム、分子量:約40,000)を含む溶液を得た後、該共重合体(I)を含む溶液に対して冷却後1200gの酢酸エチルで希釈して、プライマー2を得た。
【0040】
[実施例3]
メタアクリル酸シクロヘキシル75.7g(0.45mоl)の代わりに、メタアクリル酸tert-ブチル64.0g(0.45mоl)を使用した以外は実施例1と同様にして、共重合体(I)83.0g((メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A):(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)=90:10(モル比)、単量体単位(A)と単量体単位(B)の配列はランダム、分子量:約50,000)を含む溶液を得た後、該共重合体(I)を含む溶液に対して冷却後1200gの酢酸エチルで希釈して、プライマー3を得た。
【0041】
[比較例1]
メタアクリル酸[3-[トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、メタアクリル酸シクロヘキシルの単独重合体75.7g(分子量:約40,000)を含む溶液を得た後、該単独重合体を含む溶液に対して冷却後1200gの酢酸エチルで希釈して、プライマー4を得た。
【0042】
[比較例2]
メタアクリル酸[3-[トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シリル]プロピル]の代わりに、メタアクリル酸[3-(トリメトキシシリル)プロピル]12.4g(0.05mоl)を使用した以外は実施例1と同様にして、ランダム共重合体88.1g(メタアクリル酸シクロヘキシル:メタアクリル酸[3-(トリメトキシシリル)プロピル]=90:10(モル比)、分子量:約50,000)を含む溶液を得た後、ランダム共重合体を含む溶液に対して冷却後1200gの酢酸エチルで希釈して、プライマー5を得た。
【0043】
[試験条件]
上記実施例及び比較例で調製されたプライマー1~5を、それぞれ幅25mm、長さ100mmのポリプロピレン樹脂製の被着体2枚の表面に、はけ塗りにより薄く塗布し、このプライマー塗膜面同士を内側に対向させた2枚の被着体の間に、付加硬化型シリコーンゴム組成物(KE-1825 信越化学工業(株)製)を厚さ1mmとなる様に塗布し、120℃で1時間加熱硬化して、2枚のポリプロピレン樹脂製被着体上にプライマー層を介してシリコーンゴム硬化物層(厚さ1mm)が形成された、接着面積2.5cm2(幅25mm×長さ10mm)、接着厚さ1mmの剪断接着試験体を作製した。
上記のようにして作製した直後の試験体について、JIS K-6249に準じて剪断接着力と凝集破壊率を測定し(せん断接着試験)、80%以上(80~100%)の凝集破壊率であれば〇、50%以上79%以下の凝集破壊率であれば△、49%以下の凝集破壊率であれば×と記録した。
【0044】
【0045】
表1に示されるように、上述の一般式(1)で表される単量体単位及び上述の一般式(2)で表される単量体単位からなる共重合体(I)を含有する実施例1~3のプライマーは、比較例1~2と比べて、ポリプロピレン樹脂に対する接着性が極めて良好であった。
【0046】
以上のことから、特定の(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(A)及び付加硬化型シリコーン樹脂等と結合形成が可能なヒドロシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位(B)からなる共重合体を用いることで、シリコーンゴム硬化物(シリコーン樹脂)とポリオレフィン系樹脂とを良好に接着できる。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。