(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】無線通信装置及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20220922BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20220922BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H04B7/08 800
H04B7/08 600
H04B7/0413
H04L27/26 100
(21)【出願番号】P 2019036240
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304027279
【氏名又は名称】国立大学法人 新潟大学
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 友規
(72)【発明者】
【氏名】大宮 陸
(72)【発明者】
【氏名】石原 浩一
(72)【発明者】
【氏名】林 崇文
(72)【発明者】
【氏名】西森 健太郎
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-134141(JP,A)
【文献】特開平09-331311(JP,A)
【文献】特開2016-010057(JP,A)
【文献】西森 健太郎 他,アナログマルチビームとブラインドアルゴリズムを用いたMassive MIMO伝送,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2016年, Vol.116 No.257,p.89-94,RCS2016-168(2016-10)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/08
H04B 7/0413
H04L 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調された送信信号の1シンボル内で指向性を複数回変化させつつ、前記送信信号を受信するアンテナ
装置と、
前記アンテナ
装置が受信した受信信号
を前記指向性ごとに複数の信号に分割する信号分割部と、
前記信号分割部が分割した複数の信号の中から、受信電力が高くなる信号の組合せ又は相関が低くなる信号の組合せを、所定の閾値に基づいて選択する選択部と、
前記選択部が選択した信号の組合せをMIMO-OFDM復調する復調部と
を有し、
前記アンテナ装置は、
複数のアンテナと、
複数の前記アンテナが受信した信号をそれぞれ入力し、該入力した信号の振幅及び位相を変更し
て出力する複数の振幅位相可変部と、
複数の前記振幅位相可変部が出力した複数の信号を合成し、前記受信信号として出力する合成部と、
複数の前記振幅位相可変部に対して、入力した信号の振幅及び位相を、前記受信信号の包絡線の歪成分
が最小になるようにしつつ、前記受信信号の1シンボル内
で複数回変更
させることによって
、前記指向性を前記受信信号
の1シンボル内で複数回変化させるように制御する制御
部と
を有することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
変調された送信信号の1シンボル内で指向性を複数回変化させつつ、前記送信信号を受信
した受信信号を取得する受信工程と、
前記受信信号を前記指向性ごとに複数の信号に分割する信号分割工程と、
前記信号分割工程で分割した複数の信号の中から、受信電力が高くなる信号の組合せ又は相関が低くなる信号の組合せを、所定の閾値に基づいて選択する選択工程と、
前記選択工程で選択した信号の組合せをMIMO-OFDM復調する復調工程と
を含み、
前記受信工程は、
複数のアンテナで受信したそれぞれの信号の振幅及び位相を変更する振幅位相変更工程と、
前記振幅位相変更工程でそれぞれ振幅及び位相を変更した複数の信号を合成し、前記受信信号とする合成工程と、
前記振幅位相変更工程において、複数の前記アンテナで受信したそれぞれの信号の振幅及び位相を、前記受信信号の包絡線の歪成分
が最小になるようにしつつ、前記受信信号の1シンボル内
で複数回変更することによって
、前記指向性を前記受信信号
の1シンボル内で複数回変化するように制御する制御工
程と
を含むことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5GHz帯の電波を用いた高速無線アクセスシステムとして、IEEE802.11a規格、11n規格、11ac規格に基づく無線LANがある。11a規格では、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式をベースとして、マルチパスフェージング環境での特性を安定化させて、最大54Mbit/sの伝送速度を実現している。さらに、11n規格では、複数アンテナを用いて同一の無線チャネルで空間分割多重を行うMIMO(Multiple Input Multiple Output)や、20MHzの周波数チャネルを2つ同時に利用して40MHzの周波数チャネルを利用するチャネルボンディング技術を用いて、最大600Mbit/sの伝送速度を実現している。また、11acの規格では、20MHzの周波数チャネルを8つまで同時に利用し最大160MHzの周波数チャネルとして利用するチャネルボンディング技術や、同一の無線チャネルで複数の宛先に対して異なる信号を同時伝送する下り回線のマルチユーザMIMO技術等を利用し、11n規格より高速かつ高効率な無線通信を実現している。
【0003】
現在では、伝送速度の向上に加えて伝送効率の向上にも焦点を当てたIEEE802.11ax規格の策定も進められている。11axでは、同時伝送による空間的な周波数再利用の促進、OFDM変調方式の効率改善、また、マルチユーザ伝送として、上下回線のOFDMA伝送と上り回線のマルチユーザMIMO伝送が追加される予定である。
【0004】
また、高速伝送を行うために、CMA(Constant Modulus Algorithm)アダプティブアレーを用いて干渉波を抑制する技術が知られている(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】西森 健太郎、外2名、“QAM信号に対するCMAアダプティブアレーの動作解析”、電子情報通信学会論文誌 B-II、1996年12月、Vol.J79-B-II No.12、p.984-993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図10は、従来の無線基地局の構成の一例を示す。無線基地局4は、複数のアンテナ40、アンテナ40と同数のRF部41、アンテナ40と同数のA/D変換部42及び復調部43を有する。なお、
図10においては、無線基地局4が受信を行うために要する主な機能ブロックのみを記載しており、一般的に無線基地局に搭載されるそれ以外の機能ブロックについては記載していない。
【0007】
アンテナ40は、例えばMIMO-OFDM信号を受信する。アンテナ40は、それぞれRF部41に接続されており、受信したMIMO-OFDM信号をRF部41に対して出力する。
【0008】
RF部41は、それぞれアンテナ40から入力されたMIMO-OFDM信号に対し、増幅・周波数変更・フィルタリングなどのアナログ処理を施し、処理した信号をA/D変換部42に対して出力する。つまり、RF部41は、一般的な無線装置のRFフロントエンドの機能が搭載されている。
【0009】
A/D変換部42は、それぞれRF部41から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号を復調部43に対して出力する。
【0010】
復調部43では、A/D変換部42それぞれから入力された複数のデジタル信号に対し、無線LANシステム等で規定されるMIMO-OFDMの復調処理を行う。
【0011】
このように、従来の無線基地局4では、受信信号に対してMIMO-OFDM復調を行うためには、アンテナ40の数に応じたRF部41及びA/D変換部42が設けられる必要があった。さらに、近年の5Gなどの無線通信システムでは、マッシブMIMO伝送のようにアンテナ数の増大が飛躍的に進んでいるため、RF部及びA/D変換部の増加に伴うコスト・消費電力の増加に関する課題を解決することが求められている。
【0012】
本発明は、受信に用いるアンテナ数及び回路数の少なくともいずれかを削減して複数の信号を受信することができる無線通信装置及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様にかかる無線通信装置は、変調された送信信号の1シンボル内で指向性を複数回変化させつつ、前記送信信号を受信するアンテナ装置と、前記アンテナ装置が受信した受信信号を前記指向性ごとに複数の信号に分割する信号分割部と、前記信号分割部が分割した複数の信号の中から、受信電力が高くなる信号の組合せ又は相関が低くなる信号の組合せを、所定の閾値に基づいて選択する選択部と、前記選択部が選択した信号の組合せをMIMO-OFDM復調する復調部とを有し、前記アンテナ装置は、複数のアンテナと、複数の前記アンテナが受信した信号をそれぞれ入力し、該入力した信号の振幅及び位相を変更して出力する複数の振幅位相可変部と、複数の前記振幅位相可変部が出力した複数の信号を合成し、前記受信信号として出力する合成部と、複数の前記振幅位相可変部に対して、入力した信号の振幅及び位相を、前記受信信号の包絡線の歪成分が最小になるようにしつつ、前記受信信号の1シンボル内で複数回変更させることによって、前記指向性を前記受信信号の1シンボル内で複数回変化させるように制御する制御部とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様にかかる無線通信方法は、変調された送信信号の1シンボル内で指向性を複数回変化させつつ、前記送信信号を受信した受信信号を取得する受信工程と、前記受信信号を前記指向性ごとに複数の信号に分割する信号分割工程と、前記信号分割工程で分割した複数の信号の中から、受信電力が高くなる信号の組合せ又は相関が低くなる信号の組合せを、所定の閾値に基づいて選択する選択工程と、前記選択工程で選択した信号の組合せをMIMO-OFDM復調する復調工程とを含み、前記受信工程は、複数のアンテナで受信したそれぞれの信号の振幅及び位相を変更する振幅位相変更工程と、前記振幅位相変更工程でそれぞれ振幅及び位相を変更した複数の信号を合成し、前記受信信号とする合成工程と、前記振幅位相変更工程において、複数の前記アンテナで受信したそれぞれの信号の振幅及び位相を、前記受信信号の包絡線の歪成分が最小になるようにしつつ、前記受信信号の1シンボル内で複数回変更することによって、前記指向性を前記受信信号の1シンボル内で複数回変化するように制御する制御工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、受信に用いるアンテナ数及び回路数の少なくともいずれかを削減して複数の信号を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態にかかる無線通信システムの構成例を示す図である。
【
図3】一実施形態にかかる無線基地局の構成例を示す図である。
【
図4】合成部が合成した受信信号パターンの一例を示す図である。
【
図6】無線通信システムの上り回線の通信シーケンスの一例を示す図である。
【
図7】
図7(a)は、比較例の受信結果を示す。
図7(b)は、従来の無線基地局の受信結果を示す。
図7(c)は、実施形態にかかる無線基地局の受信結果を示す。
【
図8】
図8(a)は、複数のアンテナ11の第1変形例を示す図である。
図8(b)は、複数のアンテナ11の第2変形例を示す図である。
図8(c)は、複数のアンテナ11の第3変形例を示す図である。
【
図9】一実施形態にかかる無線基地局の変形例の構成例を示す図である。
【
図10】従来の無線基地局の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を用いて無線通信システムの一実施形態を説明する。
【0022】
図1は、一実施形態にかかる無線通信システムの構成例を示す。
図1に示すように、無線通信システムは、例えば、無線通信装置としての無線基地局1と、無線基地局1に対して無線通信可能な範囲であるサービスエリア内に存在するn台の無線端末局2-1~2-nとによって構成される。無線端末局2-1~2-nは、無線基地局1に対して非同期に上り信号を送信する。以下、無線端末局2-1~2-nのいずれかを特定しない場合には、単に無線端末局2と記す。
【0023】
図2は、無線端末局2の構成例を示す。
図2に示すように、無線端末局2は、例えば変調部21、D/A変換部22、RF部23及びアンテナ24を有する。なお、
図2においては、無線端末局2が送信を行うために要する主な機能ブロックのみを記載しており、一般的に無線端末局に搭載されるそれ以外の機能ブロックについては記載していない。
【0024】
変調部21は、例えば無線LANシステム等で規定されるMIMO-OFDMの変調処理を行い、変調した信号をD/A変換部22に対して出力する。
【0025】
D/A変換部22は、変調部21から入力されたデジタル信号をアナログ信号を変更し、RF部23に対して出力する。
【0026】
RF部23は、D/A変換部22から入力され信号に対して、増幅・周波数変更・フィルタリングなどの処理を行い、処理した送信信号をアンテナ24に対して出力する。つまり、RF部23は、一般的な無線通信装置のRFフロントエンドの機能を備える。
【0027】
アンテナ24は、RF部23から入力された送信信号を空中に放射する。
【0028】
図3は、一実施形態にかかる無線基地局1の構成例を示す。
図3に示すように、無線基地局1は、例えば、複数のアンテナ11、複数の振幅位相可変部12、合成部13、RF部14、A/D変換部15、信号分割部16、復調部17及び制御部18を有する。なお、
図3においては、無線基地局1が受信を行うために要する主な機能ブロックのみを記載しており、一般的に無線基地局に搭載されるそれ以外の機能ブロックについては記載していない。
【0029】
複数のアンテナ11は、アレーアンテナを形成しており、無線端末局2-1~2-nが送信する変調された例えばMIMO-OFDM信号などの送信信号を受信する。ここで、アンテナ11は、変調された送信信号の1シンボル内で指向性を複数回(例えばP回)変化させつつ、MIMO-OFDM信号を受信し、振幅位相可変部12に対して出力する。
【0030】
振幅位相可変部12は、アンテナ11が受信した受信信号に対して、制御部18から入力される制御信号に応じて振幅と位相を変更し、調整した信号(受信信号パターン)を合成部13に対して出力する。例えば、振幅位相可変部12は、制御部18の制御に応じて、受信信号の1シンボル内に複数(例えばP個)の受信信号パターンを出力する。
【0031】
合成部13は、振幅位相可変部12が受信信号の1シンボル内で出力した複数(例えばP個)の受信信号パターンを合成し、RF部14に対して出力する。
【0032】
図4は、合成部13が合成した受信信号パターン(アンテナ特性)の一例を示す。例えば、合成部13は、
図4に示したように90°ずつずれた4方向にメインローブ、サイドローブ及びバックローブが生じるように合成を行う。
【0033】
RF部14(
図3)は、合成部13から入力される信号に対して、増幅・周波数変更・フィルタリングなどの処理を行い、処理した信号をA/D変換部15に対して出力する。つまり、RF部14は、一般的な無線通信装置のRFフロントエンドの機能を備える。
【0034】
A/D変換部15は、RF部14から入力されるアナログ信号をデジタル信号に変更し、信号分割部16に対して出力する。また、A/D変換部15は、サンプリング周期を制御部18に対して通知する。ここでは、A/D変換部15は、受信信号のシンボルレート対してP倍の速度でサンプリングを行う。
【0035】
信号分割部16は、A/D変換部15から入力された信号を、制御部18が制御するアンテナ特性ごとに分割し、復調部17に対して出力する。
【0036】
復調部17は、信号分割部16が分割した信号に対し、無線LANシステム等で規定されるMIMO-OFDMの復調処理を行う。
【0037】
制御部18は、無線基地局1を構成する各部を制御する。例えば、制御部18は、アンテナ11が1つのOFDMシンボルの信号を受信する間に、振幅位相可変部12が受信信号の振幅と位相を複数回(例えばP回)変更するように制御を行い、振幅位相可変部12に複数(例えばP個)の受信信号パターンを生成させる。
【0038】
そして、無線基地局1は、アンテナ特性を受信信号の1シンボル内でP回変化させ、A/D変換部15が受信信号のシンボルレート対してP倍の速度でA/D変換を行うと、複数の異なる伝搬特性を持つP個の仮想ブランチを得ることとなる。
【0039】
従来は、1つのOFDMシンボル内に取得したP個の異なる受信信号をアレーデータとしてMIMO-OFDMの復調処理を行うためには、異なる時間における伝搬チャネルを取得する必要があった。
【0040】
そこで、無線基地局1は、一定包絡線アルゴリズム(CMA:Constant Modulus Algorithm)をアレーアンテナのウエイト制御に利用している。CMAでは、送信された信号が一定の包絡線を持つという性質を利用するアレー出力の包絡線の歪成分が最小になるようにウエイトを制御する。
【0041】
図5は、CMAの動作原理の概要を示す。CMAの特徴は、アレーアンテナの出力信号の包絡線を一定にするようにウエイトを制御する。例えば、CMAにおいては、希望波である第1到来波と、第2到来波とを合成して合成波y(アレーアンテナの出力電圧)を生成し、合成波yと所望の包絡線値σを用いて、下式(1)によって表されるCMAの評価関数による評価が行われる。なお、式(1)におけるE[・]は、期待値を求める操作を表す。
【0042】
【0043】
そして、CMAでは、合成波yから第2到来波して、第1到来波を抽出する。上式(1)に示すXは、アレーアンテナの受信信号ベクトルになる。しかし、無線基地局1においては、アレーアンテナから出力される信号が1系統しかない。よって、無線基地局1は、アレーアンテナの異なるアンテナで得られるXの変わりに、異なるアンテナ特性におけるP個の受信信号からなるベクトルを用いる。CMAは、タイミング同期を必要としないアルゴリズムであるため、タイミングの同期や伝搬チャネルの推定を必要としない。なお、CMAの基本的な特徴は、非特許文献1にも記載されている。
【0044】
つまり、制御部18は、受信信号の包絡線の歪成分を最小にするように制御しつつ、受信信号の1シンボル内で振幅位相可変部12が受信信号の振幅及び位相を複数回変更することによって複数の受信信号パターンを出力するように制御している。
【0045】
図6は、一実施形態にかかる無線通信システムにおける上り回線の通信シーケンスの一例を示す。
図6に示すように、一実施形態にかかる無線通信システムでは、例えば無線端末局2-1,2-2が非同期に信号を伝送することが想定される。このとき、無線端末局2-1が送信する信号を希望波である上り回線のMIMO-OFDM信号とすると、無線端末局2-2が送信する信号は干渉信号となる。
【0046】
無線基地局1は、受信ポートが1素子であっても1シンボル内でA/D変換部15がオーバーサンプリングによる変換を行うことにより、複数のアンテナ特性の異なるブランチを得ることができ、受信信号のみで干渉除去を実現するCMAを複数のパターンの異なるブランチに適用することにより、タイミング同期やチャネル推定が不要となる。
【0047】
図7は、無線基地局1が受信して復調する複数の信号と比較例との対比を示す。
図7(a)は、比較例によって複数の信号を受信した場合の受信結果を示す。
図7(b)は、
図10に示した従来の無線基地局によって複数の信号を受信した場合の受信結果を示す。
図7(c)は、一実施形態にかかる無線基地局1によって複数の信号を受信した場合の受信結果を示す。ここでは、無線基地局が、無線端末局からの所望信号1波と他無線局から到来角度差5度で到来する干渉信号1波を同時に受信する環境であるとする。また、変調方式は、QPSK(四位相偏移変調)であるとする。
【0048】
図7(a)に示した比較例では、受信ポート数を1として複数の信号を受信した場合の結果を示しており、一般的に、複数信号を同時に受信する場合、信号数よりも少ない受信ポート数でそれらの信号を復調することはできない。
【0049】
図7(b)に示した従来の無線基地局による受信結果では、例えば4本の受信ポート数で復調しており、受信信号数よりも受信ポート数が多いため、復調が可能(SINR=15.9dB)となっている。
【0050】
図7(c)に示した無線基地局1による受信結果では、受信ポート数が1であるにも関わらず、複数の信号を復調(SINR=15.8dB)できていることがわかる。
【0051】
なお、
図3に示した無線基地局1は、複数のアンテナ11によってアレーアンテナを形成しており、送信されている信号の1シンボル内で指向性を複数回(例えばP回)変化させつつ、MIMO-OFDM信号を受信しているが、以下の他の構成のアンテナ等によって複数のアンテナ特性を生成して信号を受信してもよい。
【0052】
図8は、無線基地局1が有する複数のアンテナ11の変形例を示す。
図8(a)は、複数のアンテナ11の第1変形例を示す。
図8(b)は、複数のアンテナ11の第2変形例を示す。
図8(c)は、複数のアンテナ11の第3変形例を示す。
【0053】
複数のアンテナ11の第1変形例は、複数のアンテナ30を切替スイッチ31によって高速に切替える構成を示している。複数のアンテナ11の第2変形例は、指向性アンテナ32を回転機構33により回転させる構成を示している。複数のアンテナ11の第3変形例は、アンテナ34の周囲を無給電素子35が回転する構成を示している。そして、複数のアンテナ11の第1変形例~第3変形例は、いずれも受信ポートが1系統、又は通信経路数(受信信号数)よりも少ないポート数で受信信号が出力される構成にされている。
【0054】
次に、無線基地局1の変形例について説明する。
【0055】
図9は、一実施形態にかかる無線基地局1の変形例(無線基地局1a)の構成例を示す。
図9に示すように、無線基地局1aは、例えば、複数のアンテナ11、複数の振幅位相可変部12、合成部13、RF部14、A/D変換部15、信号分割部16、復調部17、選択部19及び制御部18を有する。なお、
図9に示した無線基地局1aにおいて、
図1に示した無線基地局1の構成と実質的に同一の構成には同一の符号が付してある。
【0056】
すなわち、無線基地局1aは、上述した無線基地局1に対して選択部19が付加された構成となっている。ここで、選択部19は、信号分割部16が分割した複数の信号それぞれの値に基づいて、信号分割部16が分割した複数の信号の一部を選択する。例えば、選択部19は、所定の閾値が設けられ、受信電力が高くなるブランチや相関が低くなるブランチの組合せを上述したP個の信号からQ個選択する。Qは、P以下の値とする。
【0057】
そして、復調部17は、選択部19が選択した複数の信号の一部をMIMO-OFDM復調する。このように、無線基地局1aは、復調すべき信号の数を選択部19が削減するため、CMAにおけるウエイト制御の収束の高速化を実現可能にされている。
【0058】
このように、無線基地局1及び無線基地局1aは、受信に用いるアンテナ数及び回路数の少なくともいずれかを削減して複数の信号を受信することができる。
【符号の説明】
【0059】
1,1a・・・無線基地局、2-1~2-n・・・無線端末局、11、30,34・・・アンテナ、12・・・振幅位相可変部、13・・・合成部、14・・・RF部、15・・・A/D変換部、16・・・信号分割部、17・・・復調部、18・・・制御部、19・・・選択部、31・・・切替スイッチ、32・・・指向性アンテナ、33・・・回転機構、35・・・無給電素子