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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】鉄栄養状態改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 31/00 20160101AFI20220922BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220922BHJP
   A61K 35/74 20150101ALI20220922BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20220922BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
A23L31/00
A23L33/135
A61K35/74 A
A61K35/744
A61P7/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019527744
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(86)【国際出願番号】 JP2018025365
(87)【国際公開番号】W WO2019009328
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2021-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2017130897
(32)【優先日】2017-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-92
(73)【特許権者】
【識別番号】502285457
【氏名又は名称】学校法人順天堂
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】392003432
【氏名又は名称】東亜薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良雄
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 景植
(72)【発明者】
【氏名】長門 俊介
(72)【発明者】
【氏名】増田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】小野池 智香
(72)【発明者】
【氏名】木元 広実
(72)【発明者】
【氏名】山崎 賢二
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-098442(JP,A)
【文献】大庭理一郎ほか,ブロッコリー乳酸菌飲料の最適製造条件の検討,日本食品科学工学会誌, 2000, vol.47, no.5, p.384-389
【文献】児玉千紘ほか,乳酸菌H61株含有ヨーグルトの継続摂取が若い女性の血液指標等に及ぼす影響,日本臨床栄養学, 2012, vol.34,no.3,p.156「O-047」
【文献】木元広実,新しい機能性をもつ乳酸菌H61株~老化抑制効果によるQOL向上を目ざして~,食品と科学, 2013, vol.55, no.12, p.66-70
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
FSTA/CAplus/AGRICOLA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61株(NITE P-92)の死菌体又はその抽出物を有効成分とする鉄栄養状態改善剤。
【請求項2】
鉄栄養状態の改善が、赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量及びトランスフェリン飽和度から選ばれる1種又は2種以上の血液中成分量の改善である請求項1記載の鉄栄養状態改善剤。
【請求項3】
ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61株(NITE P-92)の死菌体又はその抽出物を有効成分とする鉄栄養状態改善用食品組成物。
【請求項4】
鉄栄養状態の改善が、赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量及びトランスフェリン飽和度から選ばれる1種又は2種以上の血液中成分量の改善である請求項3記載の鉄栄養状態改善用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄栄養状態改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄は、生体内において重要な役割をしており、特に赤血球に含まれるヘモグロビンは、鉄イオンを利用して酵素を運搬している。従って、血液中の鉄分は、主に赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量として測定される。これらの血液中成分の量は、鉄栄養状態として評価される。
【0003】
鉄栄養状態が不足する疾患としては、鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、サラセミア等のヘモグロビン合成障害、巨赤芽球性貧血等のDNA合成障害、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、赤芽球癆、骨髄癆、出血、溶血性貧血等が知られている。
【0004】
鉄栄養状態を改善する手段としては、貧血を招いている基礎疾患の治療、輸血、食事療法等が知られているが、基礎疾患の治療は十分効果を示さない場合や副作用を伴う場合が多い。
【0005】
一方、乳酸菌含有ヨーグルト等のプロバイオティクスには、多くの作用が認められており、本発明者は、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61株(NITE P-92)には、メラニン産生抑制作用、育毛作用、抗糖化作用、老化抑制作用等があることを報告している(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-98442号公報
【文献】特開2015-187171号公報
【文献】特開2006-256993号公報
【文献】特開2015-182954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記H61株の死菌体と鉄栄養状態との関係については報告がない。
本発明の課題は、サプリメント等の形態で容易に摂取できる乳酸菌死菌体を利用した鉄栄養状態改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明者は、前記課題を解決すべく種々の乳酸菌死菌体又はその抽出物を用いて鉄栄養状態に対する作用を検討したところ、前記H61株の死菌体又はその抽出物を摂取することにより、赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量及びトランスフェリン飽和度が有意に上昇し、鉄欠乏性貧血等の鉄栄養状態が低下することによる疾患の改善剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔12〕を提供するものである。
【0010】
〔1〕ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61株(NITE P-92)の死菌体又はその抽出物を有効成分とする鉄栄養状態改善剤。
〔2〕鉄栄養状態の改善が、赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量及びトランスフェリン飽和度から選ばれる1種又は2種以上の血液中成分量の改善である〔1〕記載の鉄栄養状態改善剤。
〔3〕ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61株(NITE P-92)の死菌体又はその抽出物を有効成分とする鉄栄養状態改善用食品組成物。
〔4〕鉄栄養状態の改善が、赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量及びトランスフェリン飽和度から選ばれる1種又は2種以上の血液中成分量の改善である〔3〕記載の鉄栄養状態改善用食品組成物。
〔5〕鉄栄養状態改善剤製造のための、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61株(NITE P-92)の死菌体又はその抽出物の使用。
〔6〕鉄栄養状態の改善が、赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量及びトランスフェリン飽和度から選ばれる1種又は2種以上の血液中成分量の改善である〔5〕記載の使用。
〔7〕ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61株(NITE P-92)の死菌体又はその抽出物の鉄栄養状態改善用食品組成物としての使用。
〔8〕鉄栄養状態の改善が、赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量及びトランスフェリン飽和度から選ばれる1種又は2種以上の血液中成分量の改善である〔7〕記載の使用。
〔9〕鉄栄養状態を改善するための、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61株(NITE P-92)の死菌体又はその抽出物。
〔10〕鉄栄養状態の改善が、赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量及びトランスフェリン飽和度から選ばれる1種又は2種以上の血液中成分量の改善である〔9〕記載の死菌体又はその抽出物。
〔11〕ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス H61株(NITE P-92)の死菌体又はその抽出物を投与することを特徴とする鉄栄養状態の改善方法。
〔12〕鉄栄養状態の改善が、赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量及びトランスフェリン飽和度から選ばれる1種又は2種以上の血液中成分量の改善である〔11〕記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サプリメントのような容易に少量摂取により、血液中の赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量及びトランスフェリン飽和度を増加させることができ、鉄栄養状態、すなわち、鉄欠乏性貧血等種々の貧血症状を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】赤血球数(RBC)に対するH61株摂取の効果を示す。PRE:錠剤摂取前、POST:摂取期間終了後
図2】血清鉄量に対するH61株摂取の効果を示す。PRE:錠剤摂取前、POST:摂取期間終了後
図3】血色素量(Hgb)に対するH61株摂取の効果を示す。PRE:錠剤摂取前、POST:摂取期間終了後
図4】フェリチン量に対するH61株摂取の効果を示す。Placebo:プラセボ群、H61:H61株摂取群、PRE:錠剤摂取前、POST:摂取期間終了後
図5】血清鉄量に対するH61株摂取の効果を示す。Placebo:プラセボ群、H61:H61株摂取群、PRE:錠剤摂取前、POST:摂取期間終了後
図6】トランスフェリン飽和度に対するH61株摂取の効果を示す。Placebo:プラセボ群、H61:H61株摂取群、PRE:錠剤摂取前、POST:摂取期間終了後
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の鉄栄養状態改善剤の有効成分は、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)H61株(以下、単にH61株ともいう)の死菌体又はその抽出物である。この乳酸菌H61株は、前記のように、メラニン産生抑制作用、育毛作用、抗糖化作用、老化抑制作用を有することは知られているが、鉄栄養状態に対する作用は知られていない。
【0014】
H61株は、本発明者が特許文献1~4に報告している乳酸菌株であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センターに受託番号NITE P-92として寄託されている。また、本菌株は国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構の農業生物資源ジーンバンクにもMAFF No.400007として寄託されている。
【0015】
このH61株としては、乳酸菌の培養の常法に従い、任意の条件で培養した後、遠心分離等の手段によって集菌したものを1-2回、好ましくは2回、生理食塩水や滅菌水などで洗浄したものをそのまま用いることができる。また、死菌体としては一般的な加熱滅菌操作による殺菌、滅菌処理物、粉砕物、凍結乾燥粉末、噴霧乾燥粉末などが挙げられる。
【0016】
H61株死菌体の抽出物としては、H61株の生菌体または死菌体を加熱処理した後に通常の方法で抽出するか、加熱処理しない場合には熱水(85~100℃)を用いて通常の方法で抽出することにより得ることができる。例えば代表的には、上記培養物から集菌して得た菌体を生理食塩水で洗浄し、加熱処理をしてから凍結乾燥し、それを抽出溶媒に懸濁し、遠心分離して菌体を除去することによって得ることができる。抽出溶媒としては、生理食塩水、滅菌水、培地などが挙げられる。上記抽出物はそのまま用いても良く、濃縮乾固等して用いても良い。
【0017】
本発明に用いるH61株の死菌体又はその抽出物は、菌体成分や菌体内容物が生体内に吸収されて鉄栄養状態の改善効果を示すものであり、生菌を投与した場合とは明確に相違する。
【0018】
H61株死菌体又はその抽出物は、後記実施例に示すように、経口摂取により、血液中の赤血球数、血清鉄量、ヘモグロビン量、フェリチン量、トランスフェリン飽和度を有意に増加させ、鉄栄養状態を改善する効果を有する。従って、H61株死菌体又はその抽出物は、鉄栄養状態改善剤として有用であり、鉄栄養状態が不足する疾患、例えば鉄欠乏性貧血、鉄芽球性貧血、サラセミア等のヘモグロビン合成障害、巨赤芽球性貧血等のDNA合成障害、骨髄異形成症候群、再生不良性貧血、赤芽球癆、骨髄癆、出血、溶血性貧血等の予防又は症状改善剤として有用である。また、H61株死菌体又はその抽出物は、鉄栄養状態改善用食品組成物としても有用である。
【0019】
なお、赤血球数は、シースフロー電気抵抗方式により測定できる。血清鉄量は、ニトロソPSAP法により測定できる。ヘモグロビン量は、SLS-Hb法により測定できる。フェリチン量は、例えばCLEIA、EIA、ECLIA、LAIA等により測定できる。トランスフェリン飽和度は、例えばTIAにより測定できる。
【0020】
本発明の鉄栄養状態改善剤は、経口投与して使用するのが好ましく、経口投与製剤の剤型としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、糖衣錠、丸剤、細粒剤、散剤、粉剤、徐放性製剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、乳剤、凍結乾燥剤、液剤、エリキシル剤、経口ゼリー剤等が挙げられる。
【0021】
これらの経口投与製剤は、常法によって製造でき、H61株又はその抽出物を単独で使用してもよく、薬学的に許容される担体と組み合わせて使用してもよい。当該薬学的に許容される担体としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等が挙げられる。
【0022】
結合剤としては、例えば、デンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等が挙げられる。
【0023】
崩壊剤としては、例えば、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース、低置換ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
【0024】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート80等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
流動性促進剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
【0025】
本発明の鉄栄養状態改善用食品組成物の形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤等の形態の他、種々の加工食品、飲料の形態が挙げられる。
【0026】
本発明の鉄栄養状態改善剤の投与量はヒトに対しては体重1kgあたり、生菌数2.0~6.5×106cell/日に相当する死菌(またはその抽出物)で十分な効果が期待できるが、多量に摂取しても安全性の面では問題はない。
したがって、1日あたり2.0×106cell/kg以上、通常は2.0~13×106cell/kg、好ましくは2.0~6.5×106cell/kg程度の投与が適当である。
上記の菌体量死菌(またはその抽出物)を含む剤を1日1回、または数回に分けて摂取する。
【実施例
【0027】
以下において、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
実施例1
H61株死菌体を用いて、ヒトの赤血球数、血清鉄量及びヘモグロビン量に対する作用を並行群間比較試験にて検討した。実験参加者は健康な大学男子陸上長距離選手16名(年齢:19.7±1.1歳、身長:170.0±6.5cm、体重:55.4±4.9kg)であった。
実験参加者を無作為に分類し、H61群9名、対照群7名に分類し、H61群は1か月間毎日乳酸菌H61株含有錠剤(6粒)を摂取し、対照群はH61株含有錠剤を摂取しなかった。
試験食品として用いた乳酸菌H61株含有錠剤は、乳酸菌H61含有サプリメント H61-Bio(株式会社健康プラザパル)であり6粒中に、H61発酵エキス250mg(殺菌前の菌数は1.6×108cell)を含有するものであった。
参加者は、錠剤摂取前、摂取開始1か月後(摂取期間終了後)に採血し、赤血球数(RBC)、血色素量(Hgb)、血清鉄を測定した。
測定結果は一般化線形モデルにて、予測変数を、被験者変数は被験者ID、被験者内変数は介入(H61、対照)及び測定日、交互作用は介入×測定日として解析し、推定周辺平均を比較した。有意水準はP<0.05とした。
結果:
図1~3に示すように、H61摂取群では、赤血球数(RBC)、血清鉄、血色素量(Hgb)が有意に上昇し、鉄栄養状態の改善が認められた。一方、対照群では、鉄栄養状態の改善は認められなかった。
【0029】
実施例2
加熱滅菌された乳酸菌H61株含有錠剤もしくはプラセボ錠剤を用いて、ヒトの、フェリチン、血清鉄及びトランスフェリン飽和度に対する作用を二重遮蔽並行群間試験にて検討した。実験参加者は健康な18~25歳の女性50名(年齢:19.9±1.1歳、身長:162.4±6.5cm、体重:57.6±5.7kg)であった。
実験参加者には、第3者により10番毎にBlock化して無作為化した1~50までの試験食品(H61群、プラセボ群とも25名分づつ)を割り付けた。試験参加者は、4週間毎日、朝、夜1錠ずつの計2錠を摂取した。実験参加者は、錠剤摂取前と摂取4週間後(POST)に採血し、フェリチン、血清鉄及びトランスフェリン飽和度を測定した。またこの時の月経周期(卵胞期、黄体期)も記録した。
試験食品は、加熱滅菌された乳酸菌H61株死菌60mgもしくはデキストリンを含有する錠剤であり、試験食品の詳細な組成は表1のとおりであった。
【0030】
【表1】
【0031】
割り付け終了後にH61群の1名が参加を辞退した。試験期間中にプラセボ群の1名が試験食品を紛失してしまった。また、プラセボ群のうち5名が2回目の採血を欠席した。そして、試験食品摂取率が80%未満だった参加者がH61群に1名、プラセボ群に2名おり、試験期間中に鉄剤を摂取してしまった参加者が、H61群に4名、プラセボ群に2名いた。上記の16名は試験を完遂しなかったとして、解析対象から除外した。
試験を完遂した34名の参加者中、開始時の血清鉄が正常範囲を超えていたもの1名(H61群)、試験期間中に風邪・発熱が2日以上あった者4名(H61群)の5名を解析対象から除外し、H61群14名、プラセボ群15名を解析対象とした。
【0032】
測定結果は一般化推定方式にて解析した。比較する変数を従属変数とし、予測変数を、被験者変数は被験者ID、被験者内変数は試験錠剤(H61、プラセボ)、測定日及び月経周期、交互作用は試験錠剤×測定日を必ずいれ、試験錠剤×測定日、試験錠剤×月経周期、測定日×月経周期はQICが小さくなる場合にモデルに加え、一番QICが小さくなるモデルを採択し、従属変数の推定周辺平均を比較した。有意水準はP<0.05とした。
【0033】
結果:
H61群は、フェリチン、血清鉄、トランスフェリン飽和度が摂取前より有意に上昇したが、プラセボ群は、いずれの項目でも改善は認められなかった(図4~6)。したがって、加熱滅菌された乳酸菌H61株には、鉄栄養状態を改善する作用が認められた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6