(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】微小構造体移載装置、スタンプヘッドユニット、微小構造体移載用スタンプ部品及び微小構造体集積部品の移載方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20220922BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20220922BHJP
【FI】
H01L21/68 B
H01L33/00 L
(21)【出願番号】P 2019022527
(22)【出願日】2019-02-12
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】小川 敬典
(72)【発明者】
【氏名】松本 展明
(72)【発明者】
【氏名】上田 修平
(72)【発明者】
【氏名】大堀 敬司
(72)【発明者】
【氏名】大竹 滉平
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-237583(JP,A)
【文献】特開2011-061011(JP,A)
【文献】国際公開第2008/088069(WO,A1)
【文献】特開2018-142713(JP,A)
【文献】特表2016-522585(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0130691(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0123268(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス基板上に少なくともシリコーン系ゴム膜を備えたスタンプ部品と、
前記スタンプ部品の石英ガラス基板面を真空吸引するための孔を有する面を備えたスタンプ部品保持部品と、
前記真空吸引するための孔と真空を保持できる状態で連通接続された排気吸引孔を有し、前記スタンプ部品保持部品と結合固定された管状部品と
を含むことを特徴とするスタンプヘッドユニット。
【請求項2】
前記スタンプ部品保持部品の前記真空吸引するための孔が複数に分割されており、前記石英ガラス基板を複数の点で吸引固定するものであることを特徴とする請求項1に記載のスタンプヘッドユニット。
【請求項3】
前記スタンプ部品保持部品の前記スタンプ部品を装着する面に、前記真空吸引するための孔を介して前記排気吸引孔に接続された溝構造が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスタンプヘッドユニット。
【請求項4】
前記石英ガラス基板が矩形平板であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のスタンプヘッドユニット。
【請求項5】
前記石英ガラス基板に、ファセットが形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のスタンプヘッドユニット。
【請求項6】
前記管状部品がコレット接続部を有することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のスタンプヘッドユニット。
【請求項7】
前記スタンプ部品保持部品のスタンプ部品保持面に前記スタンプ部品の位置を合わせるための凸構造を備えていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のスタンプヘッドユニット。
【請求項8】
前記凸構造が直交した側面を有することを特徴とする請求項7に記載のスタンプヘッドユニット。
【請求項9】
前記スタンプ部品のシリコーン系ゴム膜にアライメントマークを有することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載のスタンプヘッドユニット。
【請求項10】
前記石英ガラス基板が、合成石英ガラスであることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載のスタンプヘッドユニット。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のスタンプヘッドユニットを備えていることを特徴とする微小構造体移載装置。
【請求項12】
スタンプヘッドユニットに取り付けたスタンプ部品のスタンプ面(X-Y直交座標)の位置と、X-Y平面と直交するZ座標位置と、Z軸を中心とする回転角θを調整するための機構を備えることを特徴とする請求項11に記載の微小構造体移載装置。
【請求項13】
スタンプ部品を交換するユニットを備えていることを特徴とする請求項11又は12に記載の微小構造体移載装置。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか1項に記載の微小構造体移載装置を用いて微小構造体を移載する工程を含む微小構造体集積部品の移載方法。
【請求項15】
合成石英ガラス基板上に少なくとも一層以上のシリコーン系ゴム膜が形成されて
おり、合成石英ガラス基板と前記シリコーン系ゴム膜との間に導電性膜を有するものであることを特徴とする微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項16】
前記合成石英ガラス基板の厚みが0.5mm~7mmであることを特徴とする請求項15に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項17】
微小構造体
としてのLED
を移載するものであり、前記シリコーン系ゴム膜の前記微小構造体と接着する面部のシリコーン系ゴムの膜厚の最大値と最小値との差が18μm以下であることを特徴とする請求項15又は16に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項18】
前記導電性膜が、前記合成石英ガラス基板表面上をすべて覆うように形成されていることを特徴とする
請求項15~17のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項19】
前記導電性膜が、導電性材料を含むことを特徴とする
請求項15~18のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項20】
前記導電性材料が、カーボンブラック、カーボンフィラー、カーボンナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、イオン液体の少なくともいずれか一つであることを特徴とする
請求項19に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項21】
前記導電性材料が、少なくとも導電性ポリマーを含んでいることを特徴とする
請求項19に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項22】
前記導電性膜が、導電性シリコーン系ゴム膜であることを特徴とする
請求項15~18のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項23】
前記シリコーン系ゴム膜が、導電性シリコーン系ゴム膜であることを特徴とする請求項15~
22のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項24】
前記導電性シリコーン系ゴム膜が、導電性材料を含むことを特徴とする
請求項22又は23に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項25】
前記導電性シリコーン系ゴム膜に含まれる導電性材料が、カーボンブラック、カーボンフィラー、カーボンナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、イオン液体の少なくともいずれか一つであることを特徴とする
請求項24に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項26】
前記導電性シリコーン系ゴム膜に含まれる導電性材料が、少なくとも導電性ポリマーを含んでいることを特徴とする
請求項24に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項27】
前記シリコーン系ゴム膜表面に一つの凸型形状突起を備えていることを特徴とする請求項15~
26のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項28】
前記シリコーン系ゴム膜表面に二つ以上の凸型形状突起を備えていることを特徴とする請求項15~
26のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項29】
前記二つ以上の凸型形状突起が、二種類以上の異なる高さの凸型形状突起を含むものであることを特徴とする
請求項28に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項30】
前記二つ以上の凸型形状突起が、微小構造体と接触する面部を有し、該面部が二種類以上の異なる面積を有する凸型形状突起を含むものであることを特徴とする
請求項28又は29に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項31】
前記二つ以上の凸型形状突起が、任意に1次元配列又は2次元配列されていることを特徴とする
請求項28~30のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項32】
前記1次元配列又は2次元配列が、一定のピッチの規則性を有する部分を含むことを特徴とする
請求項31に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項33】
前記一定のピッチがディスプレイの画素ピッチの整数倍であることを特徴とする
請求項32に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項34】
前記凸型形状突起の断面形状が台形形状であることを特徴とする
請求項27~33のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項35】
前記凸型形状突起の断面形状が、先端側の方が小さな台形形状である部分を含むことを特徴とする
請求項34に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項36】
前記凸型形状突起の断面形状が2段階以上の階段状の凸型形状であることを特徴とする
請求項27~33のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品。
【請求項37】
請求項15~
36のいずれか1項に記載の微小構造体移載用スタンプ部品を備えた微小構造体移載用スタンプヘッドユニット。
【請求項38】
請求項37に記載のスタンプヘッドユニットを備えた微小構造体移載装置。
【請求項39】
請求項38に記載の微小構造体移載装置を用いて微小構造体を移載する工程を含む微小構造体集積部品の移載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成、若しくは、配置された半導体素子等の微小構造体を別の基板に移載する微小構造体移載装置、これに用いられるスタンプヘッドユニット、微小構造体移載用スタンプ部品及び微小構造体集積部品の移載方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微小化に伴い、半導体素子を用いた電気・電子応用製品の組み立て手段として、スタンプを用いた微小構造体移載技術が注目されている(非特許文献1)。特に、この技術を用いて、一度に一つ、あるいは複数、さらには何万個という大量のミニLED(短辺が100μm以上~数100μmのLED)、あるいは、マイクロLED(短辺が100μm以下、さらには、50μ以下)を移載することにより、サイネージ、TV、医療用、車載、Pad、スマートフォン、スマートウォッチ等のディスプレイ、AR/VRなど用のLEDディスプレイを製造する技術開発が活発になってきている。
【0003】
従来技術としては、特許文献1に平板のPDMS(ポリジメチルシロキサン)ゴムを用いて大量の素子を供給基板から受け取り基板へ輸送ができることが報告されている。
特許文献2には、凸型形状突起を有するPDMSを用いた複合スタンプの構造とスタンプヘッドへの固定方法が示されている。
図14(A)、(B)、(C)、(D)は、従来技術の特許文献2の
図2(A)、(B)、(C)、(D)をそれぞれ示している。
図14(A)~
図14(C)に示されている従来技術の複合スタンプは、スタンプと支持層、ファイバを用いた強化層及び強化リング等を駆使した非常に複雑な構造になっている。これらのスタンプの固定はすべて周辺部を機械的あるいは真空を用いて固定する方法になっている。そのため、位置合わせを含め、交換作業に時間がかかることは明らかであり、量産上の大きな課題になる。
【0004】
図14(D)に示されている従来技術のスタンプは、凸型形状突起を有するスタンプ材料を備えた石英ガラス支持体を真空吸着で固定する構造になっており、前記
図14(A)~(C)の事例と比べると簡便な構造になっている。しかしながら、真空吸着部がリング状のエラストマーで構成されているため、実際の移載動作を繰り返し行なう量産において、供給基板と受け取り基板に押圧する際の変形が生じ位置ズレの原因を生じる。場合によっては真空チャックが外れる可能性も出てくる。このように固定方法に起因した繰り返しスタンプ動作における耐久性低下が大きな問題となる。
【0005】
ここで、実際に4K(3,840×2,160画素)のRGBディスプレイを微小構造体移載装置で作る場合、どれだけの移載回数が必要か試算してみる。RGB3色のLEDを各1個ずつ使って1画素を構成すると仮定すると、3,840×2,160×3=24,883,200個のLEDを移載する必要がある。一回の移載で1万画素(LED:3万個)を移載すると仮定すると、4K-RGBディスプレイパネル一台を作るためには、約830回の移載が必要となる。一つのスタンプ部品が2万回の移載に耐え得るとすると、1つのスタンプ部品で4Kディスプレイをおよそ24台しか作ることができない計算になる。
【0006】
次に、1回の移載に約5秒を要すると仮定すると、2万回動作に要する時間は100,000秒となる。よって、約28時間(100,000秒/3,600秒)に一回、スタンプ交換が必要となる。そのため、簡単にスタンプ交換ができないと装置の稼働率を大きく低下させてしまうことは、明白である。
次に、従来技術を用いて実際の量産を行う場合、スタンプ部は連続して移動動作を繰り返すことになる。スタンプは主にゴム状の材料が使用されるため移載中に装置の中で発生するパーティクルがスタンプ及び支持体に付着することが大きな問題になってくる。パーティクルは大別して、移載する微小構造体からの転写パーティクルと装置内の帯電した浮遊パーティクルの2種類がある。スタンプに付着したパーティクルは、製造歩留まり低下に大きな影響を与えるため、パーティクル低減対策は必要不可欠である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7943941号明細書
【文献】米国特許第7927976号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Matthew A. Meitl, Zheng-Tao Zhu, Vipan Kumar, Keon Jae Lee, Xue Feng, Yonggang Y. Huang, Ilesanmi Adesida, Ralph G. Nuzzo & John A. Rogers,”Transfer printing by kinetic control of adhesion to an elastomeric stamp”, Nature Materials Volume 5, 33-38 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする第1の課題はスタンプの構造と固定方法に関するものである。上記のような従来技術の構成では、スタンプ自体複雑な構造をしており、スタンプヘッドへの交換が難しく時間がかかるという問題を有していた。また、従来技術のスタンプは、スタンプヘッドに固定しても柔軟性を有する構成をしており、固定安定性が低いという問題を有していた。本発明は上記問題点に鑑み、簡便な真空チャック方式で安定に固定可能なスタンプ部品、それを短時間で交換可能なスタンプヘッドユニット、及び、それらを備えた微小構造体移載装置を提供するものである。
本発明が解決しようとする第2の課題は、実際の量産動作時のスタンプへの帯電した浮遊パーティクルの付着である。本発明は、スタンプ及び支持体へのパーティクル付着を低減するための構造を備えたスタンプ部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために本発明の第1の発明は、石英ガラス基板上に少なくともシリコーン系ゴム膜を備えたスタンプ部品と、前記スタンプ部品の石英ガラス基板面を真空吸引するための孔を有する面を備えたスタンプ部品保持部品と、前記真空吸引するための孔と真空を保持できる状態で連通接続された排気吸引孔を有し、前記スタンプ部品保持部品と結合固定された管状部品とを含むことを特徴とするスタンプヘッドユニットを提供する。
このようなものであると、スタンプ部品を短時間に交換可能となり、真空吸引によりスタンプ部品をスタンプ保持部に確実に固定することができる。
【0011】
前記スタンプ部品保持部品の前記真空吸引するための孔は複数に分割されており、前記石英ガラス基板を複数の点で吸引固定するものであるように構成してよい。
このようにすると石英ガラス基板が薄い場合に真空吸引による局所たわみの発生を防止することができるとともに、より安定してスタンプ部品を固定して保持できる。
【0012】
前記スタンプ部品保持部品の前記スタンプ部品を装着する面に、前記真空吸引するための孔を介して前記排気吸引孔に接続された溝構造が形成されているように構成してよい。
このようにすると、移載装置側若しくは周辺機器等の真空吸引度合いは同じでも、吸引力を低減できるため吸引部の局部的反りを防止でき、薄い石英ガラス基板でも用いることができる。
【0013】
前記石英ガラス基板は矩形平板であるとよい。
このように構成すると、X-Y直交軸が明確になり、θ方向のアライメントが取りやすくなる。
【0014】
前記石英ガラス基板には、ファセットが形成されているとよい。
このようにすると、スタンプの形成された石英ガラス基板のθ方向の基準点を持つことができ、ファセットとスタンプの回転位置を間違うことなくスタンプ部品の交換ができるようになる。
【0015】
前記管状部品はコレット接続部を有する構造になっているとよい。
このようにすると、前記スタンプヘッドユニットを移載装置本体に接続する際、スタンプのX-Y平面の法線方向、すなわち、Z方向に正確に接続可能となる。なお、前記スタンプヘッドユニットを移載装置本体に接続する方法はこれに限らず、他の方法でも良い。
【0016】
前記スタンプ部品保持部品のスタンプ部品保持面に前記スタンプ部品の位置を合わせるための凸構造を備えていてよい。
このようにするとスタンプ交換時にスタンプ部品と装着面の位置合わせが簡単にできるようになる。
【0017】
前記凸構造が直交した側面を有する構成になっていてよい。
このようにすると、装着面内のX、Y-2方向の位置合わせが簡単にできる。石英ガラス基板が矩形平板(直方体)の場合、凸構造の直交した側面に前記石英ガラス基板のX、Y-2辺を押し当てるだけで、X、Y、θの粗アライメントが簡単にできる。ファセット位置を矩形の石英ガラス基板頂点の一つに設け、例えば前記ファセットを有する頂点部分を前記凸構造の直交した角に合わせるようにすれば、毎回交換時の取り付け向きエラーを防止でき、その結果交換速度を速めることができる。
【0018】
前記スタンプ部品のシリコーン系ゴム膜にアライメントマークを有する構成にしてよい。
このようにすると、供給基板上のアライメントマークと受け取り基板上のアライメントマークを符合させることで、スタンプ部品と供給基板、及び、スタンプ部品と受け取り基板のX、Y、θの位置アライメントが可能になる。その結果、高精度な微小構造体の移載が可能になる。また、前記アライメントマークは、スタンプ部品を取り付けた際に予め装置原点(X=Y=0)及び原点角(θ=0°)に対してX、Y、θを補正するのにも使用できる。
【0019】
前記石英ガラス基板が、合成石英ガラスであると好ましい。
微小構造体の大きさが小さく、高さが数十μmより小さくなってくる場合、微小構造体を接着するシリコーン系ゴム膜の平坦性が重要になってくる。おおよそ微小構造体の高さ程度以内のバラツキであることが好ましくなってくる。シリコーン系ゴム膜の平坦性を出すためには、その基材である石英ガラス基板の平坦性が大きく影響する。合成石英ガラスの場合はおよそ1μm以下の面内膜厚均一性(TTV:total thickness variation)を実現できるため、合成石英ガラスを用いることにより、スタンプ部品全体の膜厚バラツキを最小化することができる。さらに、合成石英ガラスを使用することのメリットは、微小構造体移載動作を繰りかえす際の熱的安定性が得られることである。すなわち、合成石英ガラス基板は他の石英ガラス基板と比べておよそ1/5の熱膨張係数を有し、動作中の熱歪を少なくできる。特に、凸型形状突起を有するスタンプ部品の場合、熱伸縮による突起位置のずれ・歪(ディストーション)を低減できるため、正確な移載動作が可能となる。
【0020】
本発明の第2の発明は、本発明のスタンプヘッドユニットを備えた微小構造体移載装置である。
本発明の微小構造体移載装置を用いると、真空吸着のON/OFFによりスタンプ部品を簡単に、かつ、短時間に交換可能となり、量産に適した移載装置を実現できる。
特に、スタンプヘッドユニットが物理的に取り付け位置アライメントを提供するための凸構造を備えている場合と、人が手で直接スタンプ部品を交換する場合に有効であり、簡便、かつ、短時間で高精度な交換作業が可能になる。
【0021】
この場合、本発明の微小構造体移載装置が、スタンプヘッドユニットに取り付けたスタンプ部品のスタンプ面(X-Y直交座標)の位置と、X-Y平面と直交するZ座標位置と、Z軸を中心とする回転角θを調整するための機構を備えていると良い。
このようにすると、スタンプヘッドユニットにスタンプ部品を取り付けた後に、スタンプに設けられたアライメントマークを使用して、スタンプ原点と装置原点との位置関係(X、Y、Z、θ)を原点アライメント補正できる。また、スタンプ部品のアライメントマークと供給基板上のアライメントマークを用いてアライメントすることで、スタンプ部品と供給基板のX、Y、θの位置アライメントが可能になる。同様に、スタンプ部品のアライメントマークと受け取り基板上のアライメントマークを用いてアライメントすることにより、スタンプ部品と受け取り基板のX、Y、θの位置アライメントが可能になる。その結果、高精度な微小構造体の移載が可能になる。また、原点アライメント補正をしておくと、供給基板、受け取り基板での精密補正に要する時間を短縮できる。
【0022】
本発明の微小構造体移載装置は、スタンプ部品を交換するためのスタンプ部品交換ユニットを備えた構成であると良い。
スタンプ部品は予めスタンプ部品交換ユニットで粗アライメントしておき、微小構造体移載装置が前記スタンプヘッドユニットを予め指定された位置に移動し、下降動作を行いスタンプ部品に接触する寸前で停止し、その後真空吸着によりスタンプ部品を吸い上げて吸着固定することができる。その後、前記スタンプヘッドユニットを上昇し、所定のスタンバイ位置まで移動して待機すればよい。このようにすると、人がスタンプ部品を手で交換する場合に比べ、著しく迅速かつ高精度で交換作業を行うことができ、量産性が大きく向上する。
【0023】
本発明の第3の発明は、本発明の微小構造体移載装置を用いて微小構造体を移載する工程を含む微小構造体集積部品の移載方法である。
例えば、本発明の微小構造体移載装置を用いて、ディスプレイの画素位置に所望のLEDを移載し、配置固定することにより、ディスプレイの全画素あるいは一部の画素エリアのディスプレイパネルを製造することができる。LED(有機/無機)の代わりに、半導体レーザ、ICチップ、IC及びLSIを複合実装した1次元から3次元のパッケージ、無機若しくは有機の半導体からなる各種機能素子、抵抗、キャパシタ、コイルなど電気回路素子、各種微小センサ素子、MEMS(microelectromechanical system)の各種機能素子及びセンサ等々の微小構造体を本発明の微小構造体移載方法により移載すれば、それら各種機能素子を組み合わせた新たな機能製品、すなわち、微小構造体集積製品を製造することができる。
【0024】
本発明の第4の発明は、合成石英ガラス基板上に少なくとも一層以上のシリコーン系ゴム膜が形成されている微小構造体移載用スタンプ部品である。
合成石英ガラス基板の膜厚均一性(平坦性)はおよそ1μm以下にすることができるため、スタンプ部品全体としての接着面の高さの厚均一性はシリコーン系ゴム膜の膜厚均一性を上げることで最大約1μmまで小さくすることが可能となる。なお、シリコーン系ゴム膜均一性は、移載対象である微小構造体の大きさと高さに応じて必要とされる値を設定すればよい。
【0025】
さらに、合成石英ガラスを使用することの最大のメリットは、微小構造体移載動作を繰りかえす際の熱的安定性が得られることである。すなわち、合成石英ガラス基板は他の石英ガラス基板と比べておよそ1/5の熱膨張係数を有し、動作中の熱歪を低減できる。特に、凸型形状突起を有するスタンプ部品の場合、熱伸縮による突起位置のずれ・歪(ディストーション)を低減できるため、正確な移載動作が可能となる。
【0026】
このように微小構造体との接着面高さバラツキが小さく、熱膨張歪が少ないスタンプ部品を移載装置のスタンプヘッドユニットに装着して使用することにより、複数の微小構造体を一気に移載する場合に安定な接着・移載動作を可能にする。すなわち、平坦な合成石英ガラス基板上に膜厚の均一なシリコーン系ゴム膜が形成されていることにより、微小構造体の移載個数が2個以上の複数の場合、さらには1万個あるいは3万個という数の場合でも微小構造体を一度に移送する際に各微小構造体に均一に接触、押圧することができ、シリコーン系ゴム膜の粘着力とタック力により微小構造体を供給基板上から掴み取ることができる。このように均一な接着ができることにより、移動中の微小構造体の脱落も防止できる。受け取り基板に転写配置する際にも均一面を持ったスタンプ部品が効果を発揮し、受け取り基板上に微小構造体を均一な力で押圧することができる。シリコーン系ゴム膜の粘着力とタック力による接着力よりも強い力で接着する膜を受け取り基板側に形成しておくことで、シリコーン系ゴム膜から微小構造体を取り外すことができる。
【0027】
前記合成石英ガラス基板の厚みが0.5mm~7mmであって良い。
このようにすると、合成石英ガラスウエハやマスクブランクス用等の市販の合成石英ガラス基板を用いることが可能となり、およそ1μm以下の平坦性を入手できる。また同時に、製造コストを低減できるというメリットもある。
【0028】
前記微小構造体がLEDであり、前記シリコーン系ゴム膜の前記微小構造体と接着する面部のシリコーン系ゴムの膜厚の最大値と最小値との差が18μm以下であってよい。
例えば、LEDの厚さが6μmの場合、厚さの3倍の18μm以下の膜厚バラツキのスタンプ部品であることが好ましい。LEDが平坦面上に配置固定されていると仮定すると、この場合、18μm+6μm、すなわち、24μmだけスタンプを押しつけたとき、全てのLEDに前記スタンプ部品の前記シリコーン系ゴム膜が接触する状態になる。したがって、24μm以上の適当な押し込みを行い、圧力をかけることにより、全てのLEDに対して、最低6μm以上押し込んだ場合の前記シリコーン系ゴム膜の接着力(粘着力+タック力)を生み出すことができる。この追加押し込み量は、微小構造体の平面の大きさ、高さ、形状により微妙に異なるため、事前に条件出しを行い決定すればよい。
【0029】
前記微小構造体移載用スタンプ部品は、前記合成石英ガラス基板と前記シリコーン系ゴム膜との間に導電性膜を有していてよい。
このようにすると、最も帯電が集中する石英ガラス表面端部及びその周辺部の帯電を防止できるため、移載装置において数万回の移載動作を繰り返す際に、スタンプ部品周辺に浮遊する帯電パーティクルがスタンプ部品に付着するのを低減できる。
【0030】
前記導電性膜は、前記合成石英ガラス基板表面上をすべて覆うように形成されていてよい。
このようにすると、帯電パーティクルがスタンプ部品に付着することを低減する効果がより十分に発揮されやすくなる。
【0031】
前記導電性膜が、導電性材料を含んでいてよい。
前記導電性材料は、カーボンブラック、カーボンフィラー、カーボンナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、イオン液体の少なくともいずれか一つであることが好ましい。なお、これらの導電材料を複数混合して用いても良い。
【0032】
前記導電性材料は、導電性ポリマーを含んでいることも好ましい。
導電性ポリマーは、例えばポリチオフェン系のポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン系のポリアニリンスルホン酸などを用いれば良い。なお、前記導電性ポリマーに限らず、他の導電性ポリマーを用いてもよい。また、導電性ポリマーと、カーボン系導電材料、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、イオン液体の少なくともいずれか一つの組み合わせを用いてもよい。導電性膜がカーボン系導電材料、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、イオン液体、導電性ポリマー等の導電性材料を含むことにより、導電性材料の添加量を調整することで前記導電性膜の導電率を任意に調整可能となる。
【0033】
前記導電性膜は導電性シリコーン系ゴム膜であってよい。
このようにすると、本発明の効果がより奏されやすくなる。
【0034】
前記シリコーン系ゴム膜は、導電性シリコーン系ゴム膜であってよい。
このようにすると、スタンプ表面全体で帯電を防止できるため、移載装置において数万回の移載動作を繰り返す際に、スタンプ部品周辺に浮遊する帯電パーティクルがスタンプ部品に付着するのを低減することができる。
【0035】
前記導電性シリコーン系ゴム膜は導電性材料を含んでいてよい。
前記導電性シリコーン系ゴム膜に含まれる導電性材料は、カーボンブラック、カーボンフィラー、カーボンナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、イオン液体の少なくともいずれか一つであることが好ましい。なお、これらの導電材料を複数混合して用いても良い。
【0036】
前記導電性シリコーン系ゴム膜に含まれる導電性材料は、少なくとも導電性ポリマーを含んでいることも好ましい。
導電性ポリマーは、例えばポリチオフェン系のポリ(4-スチレンスルホン酸)をドープしたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン系のポリアニリンスルホン酸などを用いれば良い。なお、前記導電性ポリマーに限らず、他の導電性ポリマーを用いてもよい。また、導電性ポリマーと、カーボン系導電材料、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、イオン液体の少なくともいずれか一つの組み合わせを用いてもよい。導電性膜がカーボン系導電材料、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、イオン液体、導電性ポリマー等の導電性材料を含むことにより、導電性材料の添加量を調整することで前記導電性膜の導電率を任意に調整可能となる。
【0037】
前記微小構造体移載用スタンプ部品は、前記シリコーン系ゴム膜表面に一つの凸型形状突起を備えていてよい。
このようにすると、供給基板上に密集して配置されている微小構造体を選択的に接着して掴み取り、受け取り基板上に転写配置することができる。このようなスタンプ部品を用いると、不良の微小構造体の場所に選択的に正常な微小構造体を移載するリペアに使用することができる。
【0038】
前記微小構造体移載用スタンプ部品は、前記シリコーン系ゴム膜表面に二つ以上の凸型形状突起を備えていてよい。
このようにすると、凸型形状突起の位置に対応した二つ以上の微小構造体を一度に移載することができる。
【0039】
前記二つ以上の凸型形状突起が、二種類以上の異なる高さの凸型形状突起を含むものであってよい。
このようにすると、高さの異なる2つの微小構造体を一気に移載することができる。
【0040】
前記二つ以上の凸型形状突起は、微小構造体と接触する面部を有し、該面部が二種類以上の異なる面積を有する凸型形状突起を含むものであってよい。
このようにすると、大きさの異なる2つの微小構造体を一気に移載することができる。
【0041】
前記二つ以上の凸型形状突起は、任意に1次元配列又は2次元配列されていてよい。
このようにして、供給基板上の微小構造体を前記1次元若しくは2次元の配列に対応して取り出せるように二つ以上の凸型形状突起を配置構成しておくと、凸型形状突起の位置に対応した複数の微小構造体を一度に移載することができ、所望のレイアウトで微小構造体を移載可能となる。
【0042】
前記1次元配列又は2次元配列は、一定のピッチの規則性を有する部分を含んでいてよい。
このようにすると、その部分は一定ピッチの1次元配列若しくは2次元配列で複数の微小構造体を一度に移載することができる。
【0043】
前記一定のピッチがディスプレイの画素ピッチの整数倍であってよい。
このようにすると、その整数倍だけ離れた画素に複数の微小構造体を移載できる。この場合、微小構造体がLED素子であれば、LEDディスプレイを作ることができる。
【0044】
前記凸型形状突起の断面形状が台形形状であってよい。
このようにすると、凸型形状突起の耐久性を増大させることができ、一つのスタンプ部品で実現可能な移載回数を増大させることができる。すなわち、一つのスタンプの使用寿命を延ばすことができる。
【0045】
前記凸型形状突起の断面形状が、先端側の方が小さな台形形状である部分を含んでいてよい。
このようにすると、シリコーン系ゴム膜の凸型形状突起が微小構造体に押圧されるとき、凸型形状突起部が一方向に屈曲することなく接着面に均等の圧力を加えることができる。その結果、安定した接着が可能になる。
【0046】
前記凸型形状突起の断面形状が2段階以上の階段状の凸型形状であってよい。
このようにすると、より狭ピッチに微小構造体が配置されている場合でも隣のチップに触れることなく、確実に目的のチップを掴むことが可能となる。また、微小構造体に接着する最先端の凸型形状突起部が、テーパ形状になっている場合と同様の効果も得られる。なお、1段目の突起部分もテーパ形状になっていても良いく、多段階の突起が縦長のアスペクト比を持つ場合には、均一押圧を実現する上で有効である。
【0047】
前記凸型形状突起部の膜厚みが、2つ以上の高さと大きさの異なる微小構造体のそれぞれに対応した高さと大きさを有していると良い。
このようにすると、異なる大きさと高さを持つ微小構造体を一気に移載可能となる。例えば、中央部にLED、周辺部にドライバ回路等を含む周辺回路素子を一気に移載し、組み立てることも可能になる。
【0048】
本発明の第5の発明は、前記微小構造体移載用スタンプ部品を備えた微小構造体移載用スタンプヘッドユニットである。
微小構造体を含む製品を製造する際に、本発明のスタンプヘッドユニットを用いると、前記スタンプ部品を簡便、かつ、高速に交換することが可能となる。その結果、量産性の高い製品製造が可能になる。また、帯電防止構造を備えたスタンプ部品を有する微小構造体移載用スタンプヘッドユニットを用いると、移載動作中のスタンプ部品への浮遊帯電パーティクルの付着を防止できる。その結果、パーティクルによる移載エラーを防止できるため、スタンプ部品の洗浄、あるいは、交換作業の回数を減らすことができるため、結局は、量産性向上に大きく寄与することができる。
【0049】
本発明の第6の発明は、前記スタンプヘッドユニットを備えた微小構造体移載装置である。
微小構造体を含む製品を製造する際に、本発明の微小構造体移載装置を用いると、前記スタンプ部品を簡便、かつ、高速に交換することが可能となる。その結果、量産性の高い製品製造が可能になる。
【0050】
本発明の第7の発明は、前記微小構造体移載装置を用いて微小構造体を移載する工程を含む微小構造体集積部品の移載方法である。
本発明の移載方法では、スタンプ部品交換時間を著しく短縮でき、すなわち、装置のダウンタイムの少ない稼働が可能となり、量産性の高い微小構造体集積製品の製造を実現できる。さらに、本発明の移載方法において前記帯電防止構造を備えたスタンプ部品を用いると、パーティクルに起因する微小構造体移載エラーを防止、低減できる。その結果、微小構造体集積製品の製造量産性を大きく向上させることができる。
【発明の効果】
【0051】
以上のように、本発明は、石英ガラス基板上に少なくともシリコーン系ゴム膜を備えたスタンプ部品と、前記スタンプ部品の石英ガラス基板面を真空吸引するための孔を有する面を備えたスタンプ部品保持部品と、前記真空吸引するための孔と真空を保持できる状態で連通接続された排気吸引管を有し、前記スタンプ部品保持部品と結合固定された管状部品を含むスタンプヘッドユニットを用いることにより、スタンプ部品交換が簡便、かつ、短時間で実施可能となる。その結果、本発明のスタンプヘッドユニットを備えた量産性の高い微小構造体移載装置を提供することができる。したがって、本発明の微小構造体移載装置を用いることにより、短辺が100μm未満のマイクロLEDディスプレイパネルや微小半導体素子を備えた新しい製品を量産性良く製造することができる。
【0052】
また、微小構造体移載装置において、本発明のスタンプヘッドユニットに加え、本発明の導電性材料を用いたスタンプ部品を使用することにより、微小構造体移載中の浮遊帯電パーティクルのスタンプ部品への付着を防止・低減することが可能となる。その結果、スタンプ洗浄やスタンプ交換の頻度を大幅に低減することが可能となり、量産に適した連続稼働を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるスタンプヘッドユニットの構成図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態におけるスタンプヘッドユニットの構成図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態におけるスタンプヘッドユニットの構成図である。
【
図4】本発明の第4の実施形態におけるスタンプヘッドユニットの構成図である。
【
図5】本発明の第5の実施形態におけるスタンプヘッドユニットの構成図である。
【
図6】本発明の第6の実施形態における微小構造体移載装置の動作部分の概略構成図である。
【
図7】本発明の第7の実施形態におけるアライメントマークを備えたスタンプ部品の説明図である。
【
図8】本発明の第8の実施形態におけるスタンプ部品の断面図である。
【
図9】本発明の第9の実施形態における複数種の微小構造体を1度に移載するためのスタンプ部品の断面図である。
【
図10】本発明の第10の実施形態における帯電防止スタンプ部品の構成図である。
【
図11】本発明の第10の実施形態における帯電防止スタンプ部品の別の構成図である。
【
図12】本発明の第11の実施形態における帯電防止スタンプ部品の断面図である。
【
図13】本発明の第11の実施形態における帯電防止スタンプ部品の別の断面図である。
【
図14】米国特許第7927976号明細書の
図2(A)、(B)、(C)、(D)を示している。
【発明を実施するための形態】
【0054】
上述のように、簡便な真空チャック方式で安定に固定可能なスタンプ部品、それを短時間で交換可能なスタンプヘッドユニット、及び、それらを備えた微小構造体移載装置の開発が求められていた。また、スタンプ及び支持体へのパーティクル付着を低減するための構造を備えたスタンプ部品の開発が求められていた。
【0055】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、合成石英ガラス基板上に少なくとも一層以上のシリコーン系ゴム膜が形成されている微小構造体移載用スタンプ部品の石英ガラス基板面を真空吸引のON/OFFにより、前記スタンプ部品を簡単に、かつ、短時間に交換でき、量産に適した移載装置を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0056】
即ち、本発明の第1の発明は、石英ガラス基板上に少なくともシリコーン系ゴム膜を備えたスタンプ部品と、前記スタンプ部品の石英ガラス基板面を真空吸引するための孔を有する面を備えたスタンプ部品保持部品と、前記真空吸引するための孔と真空を保持できる状態で連通接続された排気吸引孔を有し、前記スタンプ部品保持部品と結合固定された管状部品とを含むスタンプヘッドユニットである。
【0057】
本発明の第2の発明は、前記スタンプヘッドユニットを備えている微小構造体移載装置である。
【0058】
本発明の第3の発明は、前記微小構造体移載装置を用いて微小構造体を移載する工程を含む微小構造体集積部品の移載方法である。
【0059】
本発明の第4の発明は、合成石英ガラス基板上に少なくとも一層以上のシリコーン系ゴム膜が形成されている微小構造体移載用スタンプ部品である。
【0060】
本発明の第5の発明は、前記微小構造体移載用スタンプ部品を備えた微小構造体移載用スタンプヘッドユニットである。
【0061】
本発明の第6の発明は、前記スタンプヘッドユニットを備えた微小構造体移載装置である。
【0062】
本発明の第7の発明は、前記微小構造体移載装置を用いて微小構造体を移載する工程を含む微小構造体集積部品の移載方法である。
【0063】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施形態1)
図1は、本発明の第1の実施形態におけるスタンプヘッドユニット100の構成図である。
図1(a)は、スタンプヘッドユニットの断面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のスタンプヘッドユニットを下から見た平面図である。
図1において、1はスタンプ部品保持部品、2は真空吸引孔であり、3はスタンプ部品保持表面、4は管状部品、5は排気吸引孔である。6は石英ガラス基板、7はシリコーン系ゴム膜であり、スタンプ部品13を構成している。
【0064】
前記真空吸引孔2は、前記スタンプ部品保持部品1の内部にあり、スタンプ部品保持表面3まで到達した状態で形成されている。前記管状部品4は、前記スタンプ部品保持部品1の内部に埋没させた状態で、排気吸引孔5と前記真空吸引孔2を真空保持できるように連通接続された状態で前記スタンプ部品保持部品1と結合固定されている。本第1の実施形態では、前記真空吸引孔2はスタンプ部品保持表面3のほぼ中央の1ヶ所に設けられている。このような構造のスタンプヘッドユニットはもちろん量産に使用できるものであり、開発段階でいろいろな大きさのスタンプ部品13を取り換えて使用する場合にも便利である。
【0065】
なお、前記真空吸引孔2及び排気吸引孔5の孔の経路は必ずしも本第1の実施形態のように直線的な接続である必要はなく、少なくとも本第1の実施形態と同等以上の効果が得られるのであれば、どのような形態であっても良い。例えば、真空吸引の排気吸引孔5を配管部品の横方向から取り出す構造であっても良い。
【0066】
上記のように構成すると、排気吸引孔5を通じて真空吸引されることにより、石英ガラス基板6と少なくともシリコーン系ゴム膜7からなるスタンプ部品の石英ガラス基板表面(
図1(a)において、石英ガラス基板6の上面)は、前記スタンプ部品保持表面3に真空吸引により固定保持される。
【0067】
上記の構成の本発明のスタンプヘッドユニットを用いると、石英ガラス基板6上に少なくともシリコーン系ゴム膜7を備えたスタンプ部品を真空吸引のON/OFF動作だけで簡便に脱着できるため、短時間で交換することができる。なお、スタンプ部品は、石英ガラス基板6とシリコーン系ゴム膜7の間に一層あるいは複数層の膜を含んでいても良い。
【0068】
前記管状部品4の前記スタンプ部品保持部品1と結合されていない側は、不図示の微小構造体移載装置のスタンプヘッド可動部に固定されて使用される。その際、不図示の微小構造体移載装置、若しくは、その付属機器として、真空吸引装置を備えている。
【0069】
なお、本発明のスタンプヘッドユニットの管状部品4を微小構造体移載装置のスタンプヘッドに接続固定する方法は、必要な機能・性能を保証するものであれば何でも良いが、コレット接続方式であると簡便に取り付け可能であり、かつ、装着精度が容易に得られる。前記管状部品4は、スタンプ部品保持表面3の法線方向に固定された状態が最も簡便であり、不図示の微小構造体移載装置のスタンプヘッド可動部への接続という観点からも簡便な構造である。本発明のスタンプヘッドユニットを移載装置のスタンプヘッド可動部に取り付けた状態で、シリコーン系ゴム膜7の表面が微小構造体の配置された供給基板と移送先の受け取り基板に対し平行な面をなすように構成されていれば良い。
【0070】
また、シリコーン系ゴム膜7とは、少なくともシロキサン骨格を持つポリマーを含む膜、若しくは、シロキサン骨格と他のポリマー骨格が結合、又は、重合した骨格を持つポリマーを含む膜であり、硬化後ゴム特性を有する膜である。よく知られている単純なものとしては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)があるが、側鎖のメチル基の一部がメチル基以外の官能基を有するもの、シリコーン骨格からなる直鎖、分岐鎖を持つ構造が結合しているもの等さまざまの構造を工夫することで、ゴム特性を最適化することができる。シロキサンの末端に各種官能基を備えたものから縮合重合したもの、別のポリマーとの共重合により作られたコポリマーを作ることによっても、ゴム特性を最適化することができる。
【0071】
石英ガラス基板6の母材、すなわち、SiO2の母材として、ソーダライムガラス、アルカリフリーガラス、溶融石英ガラス、合成石英ガラスなどを用いることが可能であるが、本発明の使用目的に適した高平坦性、高均質性、低熱膨張率、高UV透過率という観点から、合成石英ガラスが最も好ましい。
【0072】
なお、ソーダライムガラスやアルカリフリーガラスは平坦性の点で先ず不合格である。また、溶融石英ガラスは、合成石英ガラスと同等の研磨を施せばほぼ同等の平坦性・表面均一性を得られるが、元々内部に空洞欠陥を含んでいることがあるため、局所的な均一性不良を発生することがある。
【0073】
合成石英ガラス基板の表面均一性は、平坦度がTTVで、およそ0.1μm以下であり、厚み均一性を備えた石英ガラス基板6上にシリコーン系ゴム膜7を均一膜厚で形成することにより、スタンプ部品13(6&7)全体として均一な平面を形成可能となる。
【0074】
石英ガラス基板の厚みは、真空吸着による歪の影響を受け無いように吸引側を最適化すると、およそ0.5mm程度でも使用可能である。スタンプ部品13としてのハンドリングの観点及び機械強度的な観点から考えると、およそ0.5mm以上であることが好ましい。合成石英ガラス基板の膜厚は、実用的におよそ1mm以上あれば真空吸着による変形歪を起こさない。ただし、真空吸着部を分散する等の方法を用いれば約0.5μm以上あれば問題ない。
【0075】
厚み均一性と製造コストの観点から、石英ガラス基板は既に市販されている合成石英ガラスウエハの規格品を用いることが好ましい。例えば、半導体用の合成石英ガラスウエハを利用する場合、厚さ0.7mm、1.2mm、3mm等々、複数の厚みの合成石英ガラス基板がある。また、マスクブランクス用石英ガラス基板を利用する場合、6.35mmの基板など複数種基板がある。なお、上記膜厚の石英ガラス基板をさらに研磨することにより、多少膜厚を薄く調整して使用することは容易である。移載対象である微小構造体の大きさと数から決まるスタンプ部品面の短辺がおよそ7mm以上の場合には、合成石英ガラス基板の膜厚がおよそ7mm以下であれば、面方向に対する厚み方向のアスペクト比が1を切るような形状になり、スタンプヘッドユニットに取り付けた時に安定な取り付けが可能となる。同様に、さらに小さなスタンプの場合には、面方向に対する厚み方向のアスペクト比が1を切るように合成石英ガラスの厚みを選べばよい。
【0076】
スタンプ部品13のサイズとして、およそ数10mm四方~100mm四方程度が実用的である。石英ガラス基板6の実用的な厚みはスタンプ部品13のサイズ(大きさ、高さ)、微小構造体への押圧力などにも依存するため適した厚みの石英ガラス基板を選択することが重要であり、都合により適したものを選べばよい。
【0077】
次に石英ガラスの均質性に由来する合成石英ガラス基板の低熱膨張率の効果について説明する。
シリコーン系ゴム膜7を形成するには、通常膜形成後にヒータ、赤外線照射などで熱硬化させるか、若しくは、UV硬化させるかしてゴム膜にする。熱硬化の場合には石英ガラスの均質性が重要である。石英ガラスが均質であると、熱膨張係数がどの場所でも一定となり、熱硬化後の石英ガラス基板とシリコーン系ゴム膜の界面の応力歪が低減できる。いずれのゴム膜化方法においても、当該用途に対して合成石英ガラスが最も適している。均質なゴム膜が形成できると、平板のシリコーン系ゴム膜スタンプの場合であれば場所による応力歪が低減できるため、シリコーン系ゴム膜のどこで微小構造体を掴んでも均質なタック力を得ることができる。さらに、後述の凸型形状突起を複数以上有するスタンプを形成する場合には、凸型形状突起の位置ズレを最小限にすることができる。それは、移載動作を連続して行う場合に移載位置ずれを最小限に抑制できることを意味する。
【0078】
合成石英ガラスの熱膨張係率は、6.5E-7/℃(0~1,000℃、ソーダライムガラスは約31E-7/℃(0~300℃)、アルカリフリーガラスの場合約33E-7(20~300℃)である。したがって、合成石英ガラスは他のガラスと比べて少なくともおよそ1/5の熱膨張率を有しており、合成石英ガラスを石英ガラス基板6として用いるのが最も好ましい。
【0079】
石英ガラス基板6を用いるもう一つの理由は、シリコーン系ゴム膜をUV硬化できる点にある。特に、合成石英ガラスの光の透過率は、UV硬化に使う波長およそ190nm~およそ400nmのUV光について、90%以上の透過率を有する。合成石英ガラス基板のUV光透過率及びその面内分布の均一性は他の石英ガラスと比べて最も優れており、石英ガラス基板側からUV光を照射してもシリコーン系ゴム膜を均一にUV硬化できる。UV硬化を用いると、熱硬化に比べて硬化による収縮を大幅に低減できるというメリットも得られる。このように、合成石英ガラス基板を用いると、シリコーン系ゴム膜側、石英ガラス基板側のどちらからもUV硬化可能となる。なお、UV硬化に用いる光の最適波長は、厳密にはシリコーン系ゴム膜7の材料組成に依存するが、実用的には365nmのi線高圧水銀ランプ、レーザダイオードなどを用いればよい。
【0080】
以上のように、熱硬化、UV硬化のいずれの方法で作る場合においても、合成石英ガラス基板を用いることにより、他の石英ガラスに比べシリコーン系ゴム膜のスタンプを高精度に、かつ、均質に作ることできる。
【0081】
スタンプ部品保持部品1の材料として、SUS、Cuなどの金属を用いても良い。石英ガラス基板6を真空吸引することを考えると、金属より表面がソフトな樹脂を用いるとさらに良い。例えば、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン等のポリアセタール樹脂、高密度又は超高分子ポリエチレン樹脂、PEEK樹脂等の所謂エンジニアリングプラスチック若しくはスーパーエンジニアリングプラスチックを用いることができる。
【0082】
管状部品4の材料としては、SUS等の金属材料を用いると良い。元々管状配管として用いられた断面の丸い配管を用いても良いし、円筒又は多角形のバルク材料に孔開け加工をして用いても良い。
【0083】
なお、本実施形態において、石英ガラス基板は矩形形状の例を示しているが、円形状、あるいは、多角形形状であっても良い。例えば、円形状の石英ガラス基板の場合、およそ70mm四方以下のスタンプ面が必要な場合、4インチ(直径100mm)の石英ガラス基板上にシリコーン系ゴム膜を所望の形状に形成すればよい。例えば、およそ70mm四方以下~100mm以下のスタンプ面が必要な場合、6インチウエハ(直径150mm)をそのまま使用することも可能である。これに合わせて、スタンプ部品保持面も円形、あるいは、多角形形状にするのも良い。
【0084】
本発明において、微小構造体とは広義にはおよそ数mm以下の微小物体を意味する。具体的には、ICチップ、IC及びLSIを複合実装した1次元から3次元のパッケージ、発光ダイオード(LED)等の無機若しくは有機の半導体からなる素子、抵抗、キャパシタ、コイルなど電気回路素子が微小構造体の対象であり、通常のチップボンダでは取り扱えないサイズの素子が対象となる。特に、LEDの場合、数100μm以下サイズの素子へのニーズが高まっている。
【0085】
前記微小構造体がLEDの場合、短辺が100μm以上~数100μmのLEDの所謂ミニLEDの場合、現在LEDの高さは100μm乃至130μmのものが入手可能である。短辺が100μm未満、さらには、50μm以下の所謂マイクロLEDの場合にはサファイア基板層が除去され、厚さ6μmとなってくる。このような場合、スタンプ部品13の微小構造体と接着する面部の面内バラツキは、LEDの厚さ(高さ)のおよそ数倍程度であることが好ましい。
さらに、電気・電子回路素子以外でも直接真空吸引により掴むことができない微小物体は、本発明の微小構造体移載装置を用いて、任意の移載・組み立てが可能であり、本発明の移載対象である微小構造体となる。
【0086】
シリコーン系ゴム膜の耐久性は無限ではなく、数万回の移載動作で性能が低下するため、交換作業が必要になってくる。従来例の説明の中での計算では、28時間に1スタンプ部品の交換が必要になる。従来技術の場合、この交換作業自体に時間がかかり、交換後の位置確認、ティーチィング作業等の時間を含めると、量産にとっては大変大きなタイムロスとなってしまう。しかしながら、本発明のスタンプヘッドユニットを用いると、スタンプ部品13(6&7)を真空吸引のON/OFF切り替えで、簡単に取り換えることができる。
【0087】
(実施形態2)
図2は、本発明の第2の実施形態におけるスタンプヘッドユニット200の構成図を示すものである。
図2において、1はスタンプ部品保持部品、2は真空吸引孔であり、3はスタンプ部品保持表面、4は管状部品、5は排気吸引孔である。6は石英ガラス基板、7はシリコーン系ゴム膜であり、スタンプ部品13を構成している。
図2(a)は、スタンプヘッドユニットの断面図であり、
図2(b)は、
図2(a)のスタンプヘッドユニットを下から見た平面図である。なお、
図2(b)において、真空吸着孔2を分かりやすくするために、石英ガラス基板6とシリコーン系ゴム膜7は図示していない。
【0088】
本発明の第2の実施形態と本発明の第1の実施形態と異なる部分は、真空吸引孔2が一つではなく複数設けられているところである。本発明の第2の実施形態では、管状部品4の排気吸引孔5につながる複数の小さな真空吸引孔2に分割されている。
図2(b)では、8×6のマトリクス状にレイアウトされている。このように複数の小さなスポットで石英ガラス基板6を真空吸引することで、真空吸引圧力により吸引部の石英ガラス基板が微小に変形することを防止できる。真空吸引圧力は、不図示の真空吸引装置の吸引能力と真空吸引孔2の孔のサイズにより決まるコンダクタンスでおよそ決まるため、石英ガラス基板6が変形しない範囲で、両方を最適化して用いればよい。
なお、真空吸引孔2の数とレイアウトは、使用するスタンプ部品13(6&7)のサイズにより自由に最適化すればよい。
【0089】
このように本発明の第2の実施形態のスタンプヘッドユニットを用いると、真空吸引孔2の大きさとレイアウトを最適化することにより、実用的なおよそ0.5mm以上の厚みの石英ガラス基板において、石英ガラス基板の真空吸引孔位置での局所的微小歪を発生することなくスタンプ部品13の真空吸引が可能になる。また、石英ガラス基板6上に少なくともシリコーン系ゴム膜7を備えたスタンプ部品13を真空吸引のON/OFF動作だけで簡便に脱着できるため、短時間で簡単にスタンプ部品13を交換することができる。また、複数の真空吸引口で保持すれば、より安定してスタンプ部品13を保持部品で固定して保持できる。
【0090】
なお、石英ガラス基板厚みが0.5mm以下であっても、真空吸引孔2の大きさとレイアウトの最適化により石英ガラス基板の真空吸引孔位置での局所的微小歪を発生することなくスタンプ部品13の真空吸引をできるように調整できる。
また、真空吸引孔2のレイアウトの配置範囲を少し小さめに作っておけば、開発段階でいろいろな大きさのスタンプ部品13を取り換えて使用する場合にも便利である。
【0091】
(実施形態3)
図3は、本発明の第3の実施形態におけるスタンプヘッドユニット300の構成図を示すものである。
図3(a)は、スタンプヘッドユニットの断面図であり、
図3(b)は、
図3(a)のスタンプヘッドユニットを下から見た平面図である。なお、
図3(b)において、石英ガラス基板6とシリコーン系ゴム膜7は図示していない。
【0092】
本発明の第3の実施形態と本発明の第1の実施形態と異なる部分は、第1の実施形態の真空吸引孔2が、繋がった溝構造8になっているところである。
3’ は、スタンプ部品保持表面3の一部で、溝構造8を作ることで島状に残った部分である。このような構造にすると、スタンプ部品保持表面3とスタンプ部品保持表面3の一部3’で平面度を保持しながら、石英ガラス基板6を真空吸引できる。
図3において溝の幅は図示の都合上大きく描かれているが、真空吸着する際の吸引圧力が得られ、かつ、真空吸引圧力で0.5mm厚みの石英ガラス基板であっても吸引溝位置で微小変形しないように溝の幅、溝の数、溝の総面積を設計すればよい。
【0093】
このように本発明の第3の実施形態のスタンプヘッドユニット300を用いると、真空吸引孔2の溝構造を最適化することにより、移載動作に必要な十分な吸引力と石英ガラス基板に歪を生じない真空吸引が可能になる。また、石英ガラス基板6上に少なくともシリコーン系ゴム膜7を備えたスタンプ部品13を真空吸引のON/OFF動作だけで簡便に脱着できるため、短時間で簡単に交換することができる。また、安定してスタンプ部品13を保持できる利点もある。
【0094】
なお、石英ガラス基板厚みが0.5mm以下であっても、溝構造の最適化により石英ガラス基板の真空吸引孔位置での局所的微小歪を発生することなくスタンプ部品13の真空吸引をできるように調整できる。
【0095】
また、真空吸引孔2のレイアウトの配置寸法を少し小さめに作っておけば、開発段階でいろいろな大きさのスタンプ部品13を取り換えて使用する場合にも便利である。
【0096】
(実施形態4)
図4は、本発明の第4の実施形態のスタンプヘッドユニット400の構成図を示すものである。
図4(a)は、スタンプヘッドユニットの断面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のスタンプヘッドユニットを下から見た平面図である。
図4において、9は凸型形状突起であり、本第4の実施形態では、シリコーン系ゴム膜が凸型形状突起9を備えた例を示している。凸型形状突起とは、Z軸に平行な断面形状が凸型形状を有する突起を意味する。
10は凸構造部であり、スタンプ部品保持面3に設けられている。
本発明の第4の実施形態と本発明の第1の実施形態と異なる部分は、凸型形状突起9を備えたシリコーン系ゴム膜7と、スタンプ部品保持表面3の凸構造部10である。
【0097】
以下、第1の実施形態と異なる部分について、その機能と効果を説明する。
凸構造部10は、本発明の実施形態のスタンプヘッドユニット400とスタンプ部品13のX、Y、θのアライメントを取るための機構である。
図4においては、X方向とY方向に凸構造が形成され、矩形断面を持った事例を示している。X、Yに方向の凸構造部10が直交した側面を有した状態で結合している。
図4(b)に示されているように、矩形形状の石英ガラス基板6を用いると、凸構造部10の直交部分に石英ガラス基板の頂点を合せることで、容易にX、Y、θのアライメントができる。さらに実用的には、本発明の実施形態のスタンプヘッドユニット400を取り付けた微小構造体移載機の側でさらにファインアライメントを取ることで、高精度な調整が可能となる。
【0098】
このように本発明の第4の実施形態のスタンプヘッドユニット400を用いると、スタンプ部品13の取り付けにおいて、容易にX、Y、θの粗アライメントが取れる。その結果、石英ガラス基板6上に少なくともシリコーン系ゴム膜7を備えたスタンプ部品13を真空吸引のON/OFF動作だけで簡便に脱着できるだけでなく、X、Y、θの粗アライメントを簡単に行いながら、短時間で簡便にスタンプ部品13を交換することができる。本発明の第4の実施形態のスタンプヘッドユニット400は、特に、人が手でスタンプ部品13を交換する場合に有用である。
なお、X方向とY方向の凸構造部は、必ずしも結合している必要はなく、分離していても良い。
【0099】
本実施形態において、石英ガラス基板は矩形形状の例を示しているが、円形状、あるいは、多角形形状であっても良い。円形状の場合は、石英ガラスウエハ基板のファセット又はノッチを使ってアライメントをとれるように、凸構造部10を構成すればよい。
なお、凸型形状部の断面形状は必ずしも矩形である必要はないが、凸型形状部9は少なくとも石英ガラス基板との接する面が、スタンプ部品保持面3におよそ垂直であると好ましい。また、凸型構造部10の高さは、石英ガラス基板6の高さと同じであってもよいが、およそ1/2~2/3程度が好ましい。
【0100】
次に、凸型形状突起9を有するシリコーン系ゴム膜7を用いると、実際に微小構造体移載機に装着して微小間隔で密集して配置された微小構造体を接着し掴みに行く場合、あるいは、掴み取った微小構造体を密集して再配置する場合に、隣接する微小構造体とシリコーン系ゴム膜7との不要な接触をなくすことができる。
【0101】
シリコーン系ゴム膜7が凸型形状突起9を有することは、供給基板に配置固定されたLED等の微小構造体を選択的に接着して、移載することを意図している。この場合、凸型形状突起の高さ以下の押し込み量以下にしないと、選択的接着・移載が実現できない。したがって、仮に凸型形状突起の高さが100μmであるとすると、その高さの80%(80μm)、場合によっては50%(50μm)がそのスタンプ部品13の最大押し込み可能量となる。例えば、追加押し込み量が5μm~10μm程度であれば合計の押し込み量は、29μm~34μmでよく、100μmの高さの凸型形状突起で十分対応できる。また、50μmの高さの凸型形状突起であっても対応可能である。
【0102】
スタンプ部品13の押し込み量の許容量を上げるためのひとつの方法は、突起の高さを高くすることである。また、もう一つの方法は、スタンプ部品13の微小構造体と接着する面部の面内バラツキ(合成石英ガラスと凸型形状突起の合計膜厚バラツキ)を小さくすることである。もちろん、使う側からすると後者の方が好ましい。したがって、例えば6μmの高さのLEDに対しては、スタンプ部品13の微小構造体と接着する面部の面内バラツキはLED高さの2倍の12μmであれば良く、1倍の6μmであればさらに好ましい。なお、このような面内バラツキのスタンプ部品13であれば、ミニLEDの移載にも対応できることは自明である。
【0103】
なお、スタンプ部品13の微小構造体と接着する面部の面内バラツキとは、前記合成石英ガラス基板と前記シリコーン系ゴム膜の微小構造体と接着する面部の合計膜厚バラツキを意味する。また、前記シリコーン系ゴム膜7の微小構造体と接着する面部とは、凸型形状突起9の面を意味する。
【0104】
凸型形状突起9と微小構造体の接着力が受け取り基板と微小構造体の接着力の差が十分に取れるように受け取り基板側の接着材料が構成されている場合、凸型形状突起9がより安定的に微小構造体を掴み取るためには、凸型形状突起9の微小構造体に接する面(接触面)が微小構造体よりも少し大きいサイズに形成されているのが好ましい。例えば、微小構造体の上面サイズが約10μm~100μmとすると、凸型形状突起9の接触面は、任意の方向に少なくとも微小構造体の幅の10%程度以上大きな幅に設計しておくと良い。なお、移載装置のスタンプヘッドユニット移動精度よりも大きい方が好ましい。
【0105】
凸型形状突起9の高さは微小構造体の大きさにも依存するが、微小構造体の高さのおよそ数倍~およそ15倍程度の中で、最適な高さに調整すればよい。例えば微小構造体の高さが6μmの高さであれば、凸型形状突起9の高さを約12μm~約100μmにすればよい。なお、凸型形状突起以外のシリコーン系ゴム膜7部分の膜厚は、使用するシリコーン系ゴム膜の材料特性と微小構造体の大きさに応じて最適化すればよい。
なお、凸型形状突起9の微小構造体との接触面はおよそ平坦な面でよい。
【0106】
ただし、微小構造体が大きい場合に、凸型形状突起9と微小構造体の接着力が十分得られる場合は、微小構造体の面よりも凸型形状突起の接着面の方が小さく構成されていても良い。
なお、本第4の実施形態においては、スタンプ部品交換時のアライメント用の凸構造10と、凸型形状突起9を一つの図面にまとめて実施形態としたが、凸構造部10と凸型形状突起9の効果はそれぞれ独立に作用・機能するものである。
【0107】
(実施形態5)
図5は、本発明の第5の実施形態におけるスタンプヘッドユニット500の構成図を示すものである。
図5(a)は、スタンプヘッドユニットの断面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のスタンプヘッドユニットを下から見た平面図である。6’ は、ファセットであり、
図5(b)を上から見たときに石英ガラス基板6の矩形面の左上の頂点に設けられている。
【0108】
本発明の第5の実施形態と第4の実施形態の違いはファセットの有無のみである。ファセット6’ の位置を
図5(b)のように合わせるだけでθ方向の回転対象の方向に取り付け間違いが発生することが無くなる。その結果、交換作業がさらに効率アップする。
【0109】
なお、本実施形態において、石英ガラス基板は矩形形状の例を示しているが、円形状、あるいは、多角形形状であっても良い。特に、円形状の場合は、石英ガラスウエハ基板のファセット又はノッチを使ってアライメントをとれるように、凸構造部10を構成すればよい。
【0110】
(実施形態6:移載装置)
図6は、本発明の第6の実施形態における微小構造体移載装置110の動作部分の概略構成図を示すものである。
図6(a)は、人の手でスタンプ部品13を交換する場合、
図6(b)は移載装置が自動でスタンプ部品13を交換する場合の概略構成図を示している。
【0111】
図6において、11はスタンプヘッド可動部である。12はスタンプ部品保持部品1と管状部品4からなるスタンプ部品保持部であり、13は石英ガラス基板6と少なくともシリコーン系ゴム膜7からなるスタンプ部品13であり、全体として本発明のスタンプヘッドユニット示している。スタンプ部品保持部12は、スタンプヘッド可動部に接続されている。14は微小構造体、15は微小構造体を供給する供給基板、16は供給基板ステージである。微小構造体14は供給基板15上に配置されて仮固定されている。17は受け取り基板であり、18は受け取り基板ステージである。19はスタンプ部品交換ステージであり、20はスタンプ部品ホルダである。なお、不図示の微小構造体移載装置、若しくは、その付属機器として、真空吸引装置を備えている。真空配管はスタンプ部品保持部12に接続されており、真空排気のON/OFFで切り替えが可能な構成になっている。
【0112】
図6は、あくまでも基本動作を説明するための概略図であり、最小限の構成要素を図示したものである。
図6を用いて、微小構造体の移載動作について、簡単に説明する。
図6(a)を用いて、人の手でスタンプ部品13を交換する場合について説明する。
図6中の(#)、#=1,2,3・・・は、動作のシーケンス番号を示している。
【0113】
先ず、(1)スタンプヘッド可動部11をスタンプ部品13交換位置Aに移動し、スタンプ部品13を手でスタンプ部品保持部12に持っていき、真空をONにして装着固定する。(2)スタンプヘッド可動部11を供給基板ステージ16のある位置Bの所望の位置に移動する。(3)スタンプヘッド可動部11を下降させ供給基板15上に配置されて仮固定された所望の微小構造体14にスタンプ部品13を押圧する。(4)スタンプ部品13で微小構造体14を掴み取り、スタンプヘッド可動部11を上昇させる。(5)その状態を保持してスタンプヘッド可動部11を受け取り基板ステージ18のある位置Cに移動する。(6)スタンプヘッド可動部11を降下させ受け取り基板17上の所望の位置に微小構造体14を押圧する。(7)微小構造体14を受け取り基板17に受け取らせ、スタンプヘッド可動部11を上昇させる。(8)スタンプヘッド可動部11を位置Bに戻す。(3)~(8)の一連の微小構造体移載動作を繰り返し行い、所望の移載動作を完了する。
【0114】
移載動作(4)において供給基板15から微小構造体14を接着して掴み取るためには、微小構造体14が仮固定されている供給基板表面の接着強さより、スタンプ部品13のシリコーン系ゴム膜の接着力、すなわち、「粘着力+タック力」の方が強い状態に設定しておけばよい。また、移載動作(7)において微小構造体14を受け取り基板に受け取らせるためには、スタンプ部品13のシリコーン系ゴム膜の接着力よりも受け取り基板表面の接着強さの方を強く設定しておけばよい。なお、このように接着力だけでスタンプを使った移載動作は可能であるが、例えば、供給基板裏面から供給基板15の表面と微小構造体14の界面にレーザ光を照射し、供給基板15の最表面層を組成破壊して供給基板表面の接着力を選択的に無くす方法など、他の方法を用いてもよい。
【0115】
上記のように移載動作の回数を重ねると、いずれはスタンプの粘着力とタック力が移載動作に必要な接着力よりも低下してしまう。したがって、スタンプの接着力の寿命限界に達する前に、(9)スタンプヘッド可動部11をスタンプ部品交換位置に移動し、真空をOFFにして使用済みのスタンプ部品13を手動で取り外す。その後動作(1)により新しいスタンプ部品13を取り付け、次の移載動作を行うことになる。その際、本発明のスタンプヘッドユニットを用いると、上記に説明したように、真空のON/OFFだけで簡単に交換可能であり、短時間のスタンプ部品13の交換が可能になる。なお、本発明の実施形態4に示すスタンプヘッドユニットを用いると、手で取り付けるにも拘らず、毎回かなりの精度で、X、Y、θの粗アライメントが実現される。
【0116】
次に、
図6(b)を用いて、移載装置が自動でスタンプ部品13を交換する場合について説明する。
図6(a)の手動の場合と異なるのは、
図6(b)の動作(11)と(12)の部分である。スタンプ部品13の自動交換動作は、次のように実行できる。
【0117】
スタンプ部品の装着動作:(11)スタンプヘッド可動部11をスタンプ部品交換位置Aに移動した後、スタンプヘッド可動部11を下降する。スタンプ部品保持部12のスタンプ部品保持部品1の表面がスタンプ部品13の石英ガラス基板表面に接触しない状態で、かつ、できるだけ近い距離までスタンプヘッド可動部11を移動させた状態で、真空をONにすると、スタンプ部品13はスタンプ部品保持部12のスタンプ部品保持部品1の表面に真空吸引されて固定される。その後、(12)スタンプヘッド可動部11を上昇させる。このようにして、スタンプ部品13の自動交換作業を実現できる。なお、スタンプ部品13は、スタンプ部品交換ステージ19上のスタンプ部品ホルダ20上に石英ガラス基板表面が上になるように事前に保持しておけばよい。
【0118】
使用後のスタンプ部品の離脱動作:使用後のスタンプ部品13をスタンプ部品保持部12に装着した状態からのスタンプ交換動作をさせる場合、不図示の位置A、B、C以外の別に設けられた廃棄場所にスタンプヘッド可動部11を移動し、真空をOFFにすれば、スタンプ部品13は外れ、除去できる。その際、スタンプが外れた後に、スタンプ部品保持部品の表面をアルコール等のウエット洗浄若しくはドライエア又はドライ窒素によるドライ洗浄を行うとさらに良い。
【0119】
スタンプ部品13を装着する時のスタンプ部品保持部12をスタンプ部品13に接近させる動作は、次のように2ステップ動作で行うとさらに良い。
(第1ステップ)スタンプ部品保持部12を大きく下降させる粗動作
(第2ステップ)スタンプ部品保持部品1の表面がスタンプ部品13の石英ガラス基板表面に接触しない状態で、かつ、できるだけ近い距離までスタンプヘッド可動部11を移動させた状態にまで接近させる高精度移動動作
【0120】
このようにするとスタンプ部品13への誤接触やスタンプ部品13の破断を防止でき、安全性が向上する。また、第2ステップの高精度移動動作は、スタンプヘッド可動部11側で行っても良いが、スタンプ部品交換ステージ19側で行っても良い。また、より高精度な接近動作を実現するためには、スタンプ部品保持部品の表面とスタンプ部品13の石英ガラス基板表面との距離を計測するセンサを備えておくことが好ましい。例えば、容量センサや前記両表面の間隙を通過するレーザの遮断状況で接近状態を観測するレーザセンサ、画像センサ等を用いればよい。
【0121】
上記のように構成された微小構造体移載装置110を用いて、微小構造体としてLEDを移載すると、LEDディスプレイパネルを製造することができる。すなわち、本発明の微小構造体移載装置を用いて、受け取り基板上にLEDをディスプレイの画素位置となるように所望のLEDを移載し、配置固定することにより、ディスプレイの全画素あるいは一部の画素エリアのディスプレイパネルを製造することができる。LEDの代わりに、ICチップ、IC及びLSIを複合実装した1次元から3次元のパッケージ、無機若しくは有機の半導体からなる各種機能素子、抵抗、キャパシタ、コイルなど電気回路素子、各種微小センサ素子等の微小構造体を本発明の微小構造体移載方法により移載すれば、それら各種機能素子を組み合わせた新たな製品を製造することができる。
【0122】
(実施形態7)
図7は、本発明の第7の実施形態におけるアライメントマークを備えたスタンプ部品の説明図である。
【0123】
図7(a)は第1の事例のスタンプ部品13の断面図を示している。
図7(b)は、第1の事例のスタンプ部品13を下から見た平面図である。
図7(c)は第2の事例のスタンプ部品13の断面図を示している。
図7(d)は、第2の事例のスタンプ部品13を下から見た平面図である。
図7(e)は、アライメントマークパタンの形状例を示している。
【0124】
図7において、21は石英ガラス基板、22はシリコーン系ゴム膜である。23はシリコーン系ゴム膜の表面に形成された凸型形状突起であり、微小構造体を移載するスタンプ部位である。25は、凸型形状突起(スタンプ部位)23のレイアウトされた領域を示している。
図7(a)の24はシリコーン系ゴム膜22の表面に形成された凸型形状突起であり、アライメントマークパタンである。
図7(c)(d)の26はシリコーン系ゴム膜22の内部に形成された凹形状溝であり、アライメントマークパタンである。
【0125】
図7の(a)と(b)は、凸型のアライメントマークが対角線(一点鎖線で示されている)上に形成されている第1の事例を示している。アライメントマークパタン24は、凸型形状突起23のレイアウトされた領域25の外側に形成されている。凸型形状のアライメントマークを使用する場合、アライメントマークパタン24の凸型形状突起の高さは、スタンプ領域25の凸型形状突起の高さより低くしておくことが好ましい。その差は、凸型形状突起23が微小構造体の上部に接触してから押し込む距離よりも大きくとる必要がある。なお、この事例では、アライメントマークパタンに丸型形状を使用しているが、矩形、十字形でもよく、アライメントマークを認識する装置が位置情報を正確に読み取れる形状であれば何でも良い。
【0126】
図7の(c)と(d)は、凹形状溝のアライメントマークパタン26が直交十字線(一点鎖線で示されている)上に形成されている第2の事例を示している。この場合も、アライメントマークパタン26は、凸型形状突起23のレイアウトされた領域25の外側に形成されている。なお、この事例では、アライメントマークに正方形形状を使用しているが、丸形、長方形、十字形でもよく、アライメントマークを認識する装置が位置情報を正確に読み取れる形状であれば何でも良い。
【0127】
図7(e)に示すように、アライメントマークの形状は、丸型形状27、正方形形状28、十字形状29などを用いればよい。アライメントマークパタン25の大きさは、それを検出するシステムの性能に合わせればよい。例えば画像認識であればおよそ100μm程度の大きさであれば十分高精度に認識できる。
【0128】
なお、アライメントマーク位置は必ずしも対角線上、十字線上に配置する必要はなくそれぞれの位置座標が分かっていれば、移載装置のコンピュータ処理で対応できる。絶対位置は、装置の特定の場所を決め、動作前に原点出しをしておけばよい。また、最低2つあるとスタンプ部品13のX、Y、θのアライメントが可能となるため、アライメントマークの数は少なくとも2か所以上必要である。なお、アライメント精度を上げるためには、アライメントマークはできるだけ離れた場所に配置するのが好ましい。
【0129】
このスタンプ部品13を装着した本発明のスタンプヘッドユニットを前記アライメントマークパタン微小構造体移載装置に搭載して使用すると、スタンプ部品13のアライメントマークの位置情報と供給基板上のアライメントマークの位置認識情報と連動して、凸型形状突起23と供給基板上の微小構造体の位置合わせが可能となる。同様に、スタンプ部品13のアライメントマークの位置情報と受け取り基板上のアライメントマークの位置認識情報と連動して、スタンプ部位23と受け取り基板上の微小構造体の位置合わせが可能となる。また、
図6(b)のようにスタンプ部品13を微小構構造体移載装置で自動交換する際に、前記アライメントマークを利用することで、毎回スタンプ部品保持部12(厳密には、スタンプ部品保持部品1のスタンプ部品保持表面3)のほぼ同じ場所にスタンプ部品13を取り付けることができる。
【0130】
このように、微小構構造体移載装置110に、シリコーン系ゴム膜22にアライメントマークを備えたスタンプ部品13を備えたスタンプヘッドユニットを用いると、高精度に微小構造体の移載が可能になる。
以上のように、本発明のアライメントマーク付スタンプ部品を用いた本発明のスタンプヘッドユニットを搭載することにより、高位置精度を備えた微小構造体移載装置が実現される。
【0131】
移載装置は専用の装置であれば最も好ましいが、少なくとも供給ステージ、受け取りステージ、X、Y、Z、θ(Z軸を主軸とする回転座標)に移動動作可能なスタンプヘッド、スタンプヘッドに取り付けるスタンプヘッドユニット、スタンプ部品13を真空吸引するための真空吸引機構、アライメントマーク認識装置とスタンプヘッド移動制御装置を備えている装置であればよい。例えば、デバイス実装に使用されるフリップ・チップ・ボンダーのようなボンダーを改良した装置であっても良い。
【0132】
(実施形態8)
図8は、本発明の第8の実施形態におけるスタンプ部品13の断面図を示している。
図8において、31は石英ガラス基板であり、32及び33はシリコーン系ゴム膜である。34、35、36、及び37は、シリコーン系ゴム膜表面に形成された凸型形状突起であり、これもまたシリコーン系ゴム膜の一部である。
【0133】
図8(a)は、平板のスタンプ部品13の断面図を示している。この場合、石英ガラス基板31の底面からシリコーン系ゴム膜32の表面までの距離が面内で高精度に一定であることが望ましい。その精度は移載対象である微小構造体の高さに依存するが、少なくとも微小構造体の高さ程度以下であることが好ましい。微小構造体の高さの半分以下であればさらに好ましい。例えば、大きさが50μm以下のLEDの場合、高さは6μm~10μm程度である。高さ6μmのLEDの場合に、スタンプの押し込み量をLEDの高さの倍程度を想定すると、石英ガラス基板31とシリコーン系ゴム膜32の厚みを合せた全体の厚みバラツキ(以下、スタンプ全体の厚みバラツキという。)は少なくとも6μm以下である必要がある。石英ガラス基板31に合成石英ガラスを用いると、その厚み精度はTTVで1μm以下であるため、シリコーン系ゴム膜32の厚みバラツキは、5μm以下が必要になる。それ故、スタンプ全体の厚みバラツキが、前記LEDの厚み(6μm)の半分、すなわち、3μm(TTV)以下であればさらに好ましい。
【0134】
このように平坦な石英ガラス基板31上にシリコーン系ゴム膜32が平坦に形成されていることにより、微小構造体が1個の場合だけでなく、2個以上の複数の場合、さらには1万個あるいは3万個という数の微小構造体を一度に移送することができる。
【0135】
図8(b)は、シリコーン系ゴム膜33の表面に凸型形状突起34を1つ備えたスタンプ部品13の断面図を示している。このスタンプは、供給基板上に密集して配置された微小構造体の中から任意に1個の微小構造体を選択して、受け取り基板の所望の位置に移載する場合に用いる。一個一個微小構造体を移載する場合に用いることは言うまでもないが、例えば、微小構造体がLEDなどの電子・電気部品の場合、受け取り基板上の不良個所のリペアに用いることができる。凸型形状突起34の接着面サイズに関して、一つの考え方を次に示す。微小構造体の接着面サイズとして短辺がおよそ100μm以下、さらには50μm以下になってくると、凸型形状突起34の接着面の大きさは少なくとも片側で微小構造体のおよそ5%(両側で10%)程度以上大きなサイズにしておくのが好ましい。このようにすると、接着力を安定に得ることができる。短辺がおよそ100μm以上の接着面サイズの微小構造体に対しては、上記と同様に凸型形状突起34の接着面サイズが微小構造体の接着面サイズよりも少し大きくても良いが、凸型形状突起34の接着面サイズが微小構造体の接着面サイズよりも小さくても移載動作は可能である。
【0136】
凸型形状突起34の高さは、シリコーン系ゴム膜質にも依存するけれども微小構造体の高さのおよそ数倍~およそ5倍程度以上あればよい。しかしながら、最適な凸型形状突起34のサイズは、厳密にはシリコーン系ゴム膜の特性と移載対象である微小構造体の大きさ、形、材質等々に大きく影響されるため、最終的には実際の動作確認により最適化されるべきである。
【0137】
なお、
図8(b)において、凸型形状突起34の断面形状は矩形形状の例が示されているが、必ずしも矩形である必要はない。
【0138】
図8(c)は、シリコーン系ゴム膜の表面に2段階の凸型形状突起35を1つ備えたスタンプ部品13の断面図を示している。したがって、その用途は
図8(b)の場合と同じである。凸型形状突起34を一つだけ備えたスタンプを実際の移載動作に使用する場合、供給基板及び受け取り基板においてスタンプヘッドの押し込み荷重が凸型形状突起34の1点に係るため、凸型形状突起34の寿命が低下するという問題が生じる場合が出てくる。例えば、微小構造体の大きさが例えばおよそ100μm以上と比較的大きい場合には、
図8(b)の凸型形状突起34で十分対応できるが、例えばおよそ100μm以下の微小構造体を移載する場合には凸型形状突起の形状を
図8(c)に示すような2段階の凸型形状突起35にした方が好ましい。またその際2段目の断面形状は台形にすることにより、移載動作を繰り返し使用する場合に耐久性が向上し、凸型形状突起の寿命を延ばすことができる。台形形状は等脚台形であっても良い。受け取り基板上に移載し前記凸型形状突起を取り外す際に、等脚でない場合の方が取り外しやすい場合もある。
【0139】
図8(d)は、シリコーン系ゴム膜の表面に凸型形状突起34を2つ以上の複数個備えたスタンプ部品13の断面図を示している。このようにすると、凸型形状突起34の位置に対応した複数個の微小構造体を1度に移載することができる。凸型形状突起34の大きさについては、基本的に
図8(b)と同じ考え方でデザインすればよいが、最適な凸型形状突起34のサイズは、厳密にはシリコーン系ゴム膜の特性と移載対象である微小構造体の大きさ、形、材質等々に大きく影響されるため、最終的には実際の動作確認により最適化されるべきである。複数の前記凸型形状突起34が、移載先の任意の所望レイアウトで1次元配列若しくは2次元配列されているように構成し、供給基板上の微小構造体も前記1次元若しくは2次元の配列に対応して取り出せるように配置構成しておくと、凸型形状突起34の位置に対応した複数の微小構造体を1度に移載することができ、所望のレイアウトで微小構造体を移載可能となる。
【0140】
前記移載先の任意の所望レイアウトの少なくとも一部が一定のピッチの規則性を持って1次元配列若しくは2次元配列されていると、その部分は一定ピッチの1次元配列若しくは2次元配列で複数の微小構造体を1度に移載することができる。
【0141】
前記の一定のピッチがディスプレイの画素ピッチの整数倍に構成されていると、その整数倍だけ離れた画素に複数の微小構造体を移載できる。この場合、微小構造体がLED素子であれば、LEDディスプレイを作ることができる。
【0142】
供給基板側に既にLEDディスプレイの画素ピッチにR(RED)、G(GREEN)、B(BLUE)の各LEDが配置してある場合、画素ピッチとRGBの各LEDの配置位置に対応した凸型形状突起34を備えたスタンプ部品13を用いることにより、一気に受け取り基板であるディスプレイパネル基板に移載することができる。なお、RGBのLEDを画素単位で一つの凸面で移載するように凸型形状突起を形成してもよい。また、この場合凸型形状突起が無い平板のシリコーンゴム膜を備えたスタンプ部品13を用いても移載可能である。
【0143】
RGBの中の1色のLEDをディスプレーピッチで移載する場合は、凸型形状突起はピッチの整数倍に構成したスタンプ部品13を用い、R―LED、G―LED、B-LEDそれぞれの基板から3回に分けて移載作業をすればよい。1倍ピッチであれば、ある一定の複数画素領域ごとの移載が可能である。一方向にN(N>=2)倍ピッチに凸型形状突起が形成されている場合には、1方向に(N-1)回ピッチをシフトしながら移載することで、LEDディスプレイの画素面を完成することができる。
【0144】
前記整数が1の場合、ディスプレイの画素ピッチそのものになり、少なくともR(RED)、G(GREEN)、B(BLUE)の三原色のLEDをおよそLEDのサイズ分+マージン分だけずらして移載することにより、RGB-LEDディスプレイを作ることができる。前記整数が2以上であっても、ディスプレイ画素ピッチ上に移載可能であるため、LEDディスプレイパネルを組み立てることができる。
【0145】
なお、量子ドット等の波長変換材料を用いて、BLUE-LEDから、RED、GREENの光を取り出す方式の場合、BLUE-LEDだけをR、G、Bに相当する位置に移載すればよい。
【0146】
また、
図8(d)において、凸型形状突起の断面形状は矩形形状の例が示されているが、必ずしも矩形である必要はない。
【0147】
図8(e)は、シリコーン系ゴム膜の表面に断面形状が台形の凸型形状突起36を2つ以上の複数個備えたスタンプ部品13の断面図を示している。このように、凸型形状突起36の断面が台形形状に形成されていると、凸型形状突起36の耐久性を増大させることができ、一つのスタンプ部品13で実現可能な移載回数を増大させることができる。すなわち、一つのスタンプの使用寿命を延ばすことができる。なお、台形形状は等脚台形であっても良い。受け取り基板上に移載し前記凸型形状突起36を取り外す際に、等脚でない場合の方が取り外しやすい場合もある。
【0148】
図8(f)は、シリコーン系ゴム膜の表面に2段階の凸型形状突起37を2つ以上の複数個備えたスタンプ部品13の断面図を示している。このように構成すると、供給基板上により狭ピッチに微小構造体が配置されている場合でも隣のチップに触れることなく、確実に目的のチップを接着し掴むことが可能となる。なお、先端部の断面形状が台形になっていても良い。
【0149】
(実施形態9)
図9は、本発明の第9の実施形態における複数種の微小構造体を1度に移載するためのスタンプ部品13の断面図を示している
【0150】
図9において、41は石英ガラス基板であり、42はシリコーン系ゴム膜である。43~46は、シリコーン系ゴム膜表面に形成された凸型形状突起であり、これもまたシリコーン系ゴム膜の一部である。
【0151】
図9(a)は、シリコーン系ゴム膜42の表面の中央部に形成された一塊の凸型形状突起43は微小構造体を移載するためのスタンプ面を表している。凸型形状突起44はシリコーン系ゴム膜の周辺部に形成された、前記微小構造体よりも大きな微小構造体を移載するためのスタンプ面を表している。このような構成にすると、例えば、供給基板側に中央部分にLED素子を配置し、周辺部にLEDドライバ素子を配置した状態で素子を準備しておいて、両方の素子を一気に移載することが可能となる。
【0152】
図9(b)は、シリコーン系ゴム膜42の表面の中央部に形成された複数の小凸型形状突起45は微小構造体移載するためのスタンプ面を表している。凸型形状突起46はシリコーン系ゴム膜の周辺部に形成された、前記微小構造体よりも大きな構造体を移載するためのスタンプ面を表している。この場合も、2つの高さの異なる微小構造体を一気に移載することができる。
【0153】
なお、凸型形状突起の微小構造体と接着する面は、矩形、円形、楕円形、多角形、あるいは、非対称な形であってもよいが、移載対象の微小構造体の形に対して最も効率よくシリコーン系ゴム膜の接着力を発生する形に最適化して用いればよい。
【0154】
以上の本発明のスタンプ部品を本発明のスタンプヘッドユニットに組み込んで使用すると、スタンプ部品交換が非常に簡単にできるため、移載装置のダウンタイムを大きく短縮することができる。また、用途に応じて
図8から
図9に記載のスタンプ部品を使い分けることで、効率の良い微小構造体移載が可能になる。
【0155】
第1の実施形態の説明の中で述べたように、石英ガラス基板に合成石英ガラスを用いるのが最も好ましい。合成石英ガラス基板を用いることにより、石英ガラス基板の平坦性(およそ1μm以下)が得られるためシリコーン系ゴム膜を含む全体の平坦性が得られる。合成石英ガラスは他の石英ガラス又はガラスと比べて格段に均質であり、低熱膨張率(他の石英ガラスのおよそ1/5以下)であるため、シリコーン系ゴム膜を形成する際に熱硬化による均質なゴム化処理が実現できる。また、実際に連続移載動作に使用した場合にも熱的揺らぎによる微小構造体の位置歪の発生を大きく抑制できる。その上、シリコーン系ゴム膜をUV硬化によりゴム化処理して形成する場合にも190nm~400nmまでの波長領域で90%以上の高透過率を有するため、最もひずみの少ないシリコーン系ゴム膜形成が可能である。特に、凸型形状突起を有するシリコーン系ゴム膜を製作する場合には、凸型形状突起のUV硬化歪を最小化することができる。
【0156】
前記シリコーン系ゴム膜及び付帯する凸型形状の製造は、インジェクションモールド法でも製造可能であるが、量産性の観点から考えるとインプリント法により製造するのが好ましい。
【0157】
また、インジェクションモールド法、インプリント法のいずれの方法においても、シリコーン系ゴム膜は熱硬化により製造可能であるが、成膜後の応力歪を低減するためには熱硬化よりもUV硬化により製造する方が好ましい。
【0158】
(実施形態10)
図10は、本発明の第10の実施形態における帯電防止スタンプ部品の構成図を示すものである。
図10(a)は、スタンプ部品13の断面図であり、
図10(b)は、
図10(a)のスタンプヘッドユニットを上から見た平面図である。
図10において、51は石英ガラス基板であり、53はシリコーン系ゴム膜である。52は石英ガラス基板51とシリコーン系ゴム膜の間に形成された導電性膜であり、導電性膜は石英ガラス基板表面の端部まで全面をカバーしている。
【0159】
実際の移載装置において、一つのスタンプで2万回あるいはそれ以上の移載動作を高速動作で繰り返す場合、スタンプヘッドユニット自体が装置に乱流を発生させ、空気との摩擦で石英ガラス基板表面が帯電しやすくなる。特に、石英ガラスの辺部(尖辺)や頂点部(尖点)に電荷が集中しやすくなる。乱流により発生した浮遊帯電粒子が前記石英ガラス表面及び端面に付着し、供給基板、若しくは、受け取り基板上に輸送され落下する可能性が出てくる。これを防止するためには、石英ガラス表面に導電性膜52を形成して帯電しないようにすることが有効である。
【0160】
前記導電性膜52には、導電性材料を含む膜を用いればよい。前記導電性材料は、カーボンブラック、カーボンフィラー、カーボンナノワイヤ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン等のカーボン系導電材料、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、イオン液体の少なくともいずれか一つを含む状態で用いれば良い。このようにすると、添加量を調整することで前記導電性膜の導電率を任意に調整可能となる。なお、前記導電材料を複数混合して用いても良い。
【0161】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の塩としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の塩;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属の塩等が挙げられる。これらの具体例としては、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiAsF6、LiCl、NaSCN、KSCN、NaCl、NaI、KI等のアルカリ金属塩;Ca(ClO4)2、Ba(ClO4)2等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。低抵抗値と溶解度の点から、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiAsF6、LiCl等のリチウム塩が好ましく、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2が特に好ましい。
【0162】
イオン液体とは、室温(25℃)で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に融点が50℃以下のものをいう。好ましくは-100~30℃、より好ましくは-50~20℃のものをいう。このようなイオン液体は、蒸気圧がない(不揮発性)、高耐熱性、不燃性、化学的安定である等の特性を有するものである。
イオン液体は、4級アンモニウムカチオンとアニオンとからなるものが挙げられる。この4級アンモニウムカチオンは、イミダゾリウム、ピリジニウムまたは式:R4N+[式中、Rは、互いに独立して、水素原子または炭素原子数1~20の有機基である。]で表されるカチオンのいずれかの形態である。
【0163】
前記Rで表される有機基の具体例としては、炭素原子数1~20の一価炭化水素基、アルコキシアルキル基等が挙げられ、より具体的には、メチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル、トリル、キシリル、ナフチル基等のアリール基;ベンジル、フェネチル基等のアラルキル基;シクロペンチル、シクロへキシル、シクロオクチル基等のシクロアルキル基;エトキシエチル基(-CH2CH2OCH2CH3)等のアルコキシアルキル基などが挙げられる。なお、Rで表される有機基のうちの2個が結合して環状構造を形成してもよく、この場合には2個のRが一緒になって2価の有機基を形成する。この2価の有機基の主鎖は、炭素のみで構成されていてもよいし、その中に酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、例えば、2価炭化水素基[例えば、炭素原子数3~10のアルキレン基]、式:-(CH2)c-O-(CH2)d-[式中、cは1~5の整数であり、dは1~5の整数であり、c+dは4~10の整数である。]等が挙げられる。
【0164】
前記R4N+で表されるカチオンの具体例としては、メチルトリn-オクチルアンモニウムカチオン、エトキシエチルメチルピロリジニウムカチオン、エトキシエチルメチルモルホリニウムカチオン等が挙げられる。
【0165】
前記アニオンとしては、特に制限はないが、例えば、AlCl4
-、Al3C18
-、Al2C17
―、ClO4
-、PF6
―、BF4
-、CF3SO3
―、(CF3SO2)2N-、(CF3SO2)3C-が好ましく、PF6
―、BF4
-、CF3SO3
―、(CF3SO2)2N-がより好ましい。
前記導電性材料は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0166】
前記導電性材料として導電性ポリマーを用いて導電性膜52を構成しても良い。このようにすると、導電性ポリマーの添加量を調整することで前記導電性膜の導電率を任意に調整可能となる。導電性ポリマーは、ポリチオフェン系のPEDOT/PSS、ポリアニリン系のポリアニリンスルホン酸などを用いれば良い。なお、前記導電性ポリマーに限らず、他の導電性ポリマーを用いてもよい。また、導電性ポリマーと、カーボン系導電材料、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、イオン液体の少なくともいずれか一つの組み合わせを用いてもよい。
【0167】
前記導電膜52は導電性シリコーン系ゴム膜で構成されていてもよい。前記導電性シリコーン系ゴム膜は前記導電性材料を含んでいてよい。
【0168】
前記石英ガラス基板と前記シリコーン系ゴム膜の間で、かつ、前記石英ガラス基板表面上をすべて覆うように、前記シリコーン系ゴム膜よりも導電性の高い導電性膜が前記石英ガラス基板表面全体に形成されているとよい。このようにすると、前記シリコーン系ゴム膜が前記石英ガラス基板の表面積よりも小さな場合もスタンプの表面全体が導電性となる。また、前記シリコーン系ゴム膜と前記石英ガラス基板の表面積が同じ場合でも、前記シリコーン系ゴム膜よりも導電率の高い導電性膜があることにより、特に電荷の集中しやすい石英ガラス表面端部の帯電を防止できるため、スタンプ部品周辺に浮遊する帯電パーティクルがスタンプ部品13に付着するのを低減することができる。
【0169】
前記導電膜52の表面抵抗は、帯電防止効果を発揮するシート抵抗1E9~1E14Ω/sq.を有していればよい。好ましくは、静電気拡散(消散)効果の出るシート抵抗1E5~1E9Ω/sq.であると良い。さらに好ましくは導電性を呈する1E5Ω/sq.以下であると良い。
【0170】
図11は、本発明の第10の実施形態における帯電防止スタンプ部品の別の構成図を示すものである。
図11(a)は、スタンプ部品13の断面図であり、
図11(b)は、
図11(a)のスタンプヘッドユニットを上から見た平面図である。
図11と
図10の唯一異なる点は、シリコーン系ゴム膜54に凸型形状突起55が形成されている点である。凸型形状の形状は
図8及び
図9で説明したような形状を用いればよく、移載される微小構造体の形や大きさにより最適化すればよい。
【0171】
(実施形態11)
図12は、本発明の第11の実施形態における帯電防止スタンプ部品の断面図を示すものである。
図12において、51は石英ガラス基板、56は導電性シリコーン系ゴム膜である。
【0172】
図12(a)は、石英ガラス基板51上に導電性シリコーン系ゴム膜56が形成された構造をしている。このように、シリコーン系ゴム膜自体が導電性を付加されており、帯電防止効果、静電気拡散(消散)効果、あるいは導電性を有するように構成されることで、スタンプ部のシリコーン系ゴム膜への浮遊帯電粒子の付着を防止することができる。
【0173】
図12(b)は、
図12(a)において、導電性シリコーン系ゴム膜56がカバーしていなかった石英ガラス基板51周辺部を含めて、導電性シリコーン系ゴム膜56が石英ガラス基板の全ての表面をカバーしているスタンプ部品13を示している。このようにすると、石英ガラスの露出部が無いため、スタンプ部品表面の全体への浮遊帯電粒子の付着を防止することができる。
図12(c)は、石英ガラス基板51の表面をすべて導電性膜52でカバーし、さらにその上に少し小さい導電性シリコーン系ゴム膜56を形成したスタンプ部品13を示している。このような構成でも、石英ガラスの露出部が無いため、スタンプ部品表面の全体への浮遊帯電粒子の付着を防止することができる。
【0174】
前記導電性シリコーン系ゴム膜56には、導電性材料を含む膜を用いればよい。前記導電性シリコーン系ゴム膜56に含まれる導電性材料は、カーボンブラック、カーボンフィラー、カーボンナノワイヤ、カーボンナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラフェン等のカーボン系導電材料、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩、イオン液体の少なくともいずれか一つを含む状態で用いれば良い。このようにすると、添加量を調整することで前記導電性シリコーン系ゴム膜56の導電率を任意に調整可能となる。なお、前記導電材料を複数混合して用いても良い。
【0175】
アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、イオン液体については前記されるとおりである。
【0176】
前記導電性シリコーン系ゴム膜56に含まれる導電性材料として、導電性ポリマーを用いても良い。このようにすると、導電性ポリマーの添加量を調整することで前記導電性シリコーン系ゴム膜の導電率を任意に調整可能となる。導電性ポリマーは、ポリチオフェン系のPEDOT/PSS、ポリアニリン系のポリアニリンスルホン酸などを用いれば良い。なお、前記導電性ポリマーに限らず、他の導電性ポリマーを用いてもよい。また、導電性ポリマーと、カーボン系導電材料、アルカリ金属の塩、アルカリ土類金属の塩、イオン液体の少なくともいずれか一つの組み合わせを用いてもよい。
【0177】
前記導電性シリコーン系ゴム膜56の表面抵抗は、帯電防止効果を発揮するシート抵抗1E9~1E14Ω/sq.を有していればよい。好ましくは、静電気拡散(消散)効果の出るシート抵抗1E5~1E9Ω/sq.であると良い。さらに好ましくは導電性を呈する1E5Ω/sq.以下であると良い。
【0178】
図13は、本発明の第11の実施形態における帯電防止スタンプ部品の別の断面図を示すものである。
図13と
図12の唯一異なる点は、導電性シリコーン系ゴム膜57に凸型形状突起58が形成されている点である。なお、凸型形状の形状は
図8及び
図9で説明したような形状を用いればよく、移載される微小構造体の形や大きさにより最適化すればよい。
【0179】
なお、本発明の微小構造体移載装置による移載対象は、これらに限るものではないが、有機若しくは無機のLED、半導体レーザ、ICチップ、IC及びLSIを複合実装した1次元から3次元のパッケージ、無機若しくは有機の半導体からなる各種機能素子、抵抗、キャパシタ、コイルなどの電気回路素子、各種微小センサ素子、MEMS(microelectromechanical system)の各種機能素子及びセンサ等の微小構造体を含む。これらの微小構造体を本発明の微小構造体移載方法により移載すれば、それら各種機能素子を組み合わせた新たな機能製品、すなわち、微小構造体集積製品を製造することができる。
【0180】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0181】
1・・・スタンプ部品保持部品、2・・・真空吸引孔、
3・・・スタンプ部品保持表面、3’・・・スタンプ部品保持表面3の一部、
4・・・管状部品、5・・・排気吸引孔、6・・・石英ガラス基板、
6‘・・・ファセット、7・・・シリコーン系ゴム膜、8・・・溝形構造、
9・・・凸型形状突起、10・・・凸構造部、
11・・・スタンプヘッド可動部、12・・・スタンプ部品保持部、
13・・・スタンプ部品、14・・・微小構造体、
15・・・微小構造体を供給する供給基板、16・・・供給基板ステージ、
17・・・受け取り基板、18・・・受け取り基板ステージ、
19・・・スタンプ部品交換ステージ、20・・・スタンプ部品ホルダ、
21・・・石英ガラス基板、22・・・シリコーン系ゴム膜、
23・・・凸型形状突起、24・・・アライメントマークパタン、
25・・・スタンプ領域、26・・・アライメントマークパタン
31・・・石英ガラス基板、32・・・シリコーン系ゴム膜、
33・・・シリコーン系ゴム膜、34・・・凸型形状突起、
35・・・凸型形状突起、36・・・凸型形状突起、
37・・・凸型形状突起、41・・・石英ガラス基板、
42・・・シリコーン系ゴム膜、43、44、45、46・・・凸型形状突起、
51・・・石英ガラス基板、52・・・導電性膜、
53、54・・・シリコーン系ゴム膜、55・・・凸型形状突起、
56、57・・・導電性シリコーン系ゴム膜、58・・・凸型形状突起
100、200、300、400、500・・・スタンプヘッドユニット、
110・・・微小構造体移載装置