(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】研磨装置、研磨方法、および研磨液供給位置決定プログラムを記録した記録媒体
(51)【国際特許分類】
B24B 37/00 20120101AFI20220922BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220922BHJP
B24B 37/005 20120101ALI20220922BHJP
B24B 37/013 20120101ALI20220922BHJP
【FI】
B24B37/00 K
H01L21/304 622R
B24B37/005 Z
B24B37/013
(21)【出願番号】P 2019029543
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】小畠 厳貴
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝史
(72)【発明者】
【氏名】小菅 隆一
(72)【発明者】
【氏名】曽根 忠一
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-247258(JP,A)
【文献】特開平10-034535(JP,A)
【文献】特開2003-068688(JP,A)
【文献】特開2015-061739(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0027533(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドと、
基板を前記研磨パッドに押し付けて、前記基板を研磨するトップリングと、
前記研磨パッド上に研磨液を扇状に噴射する液体噴射ノズルと、
前記液体噴射ノズルを前記研磨パッドの半径方向に移動させるノズル移動装置と、
前記ノズル移動装置の動作を制御する動作制御部と、を備え、
前記動作制御部は、
プログラムを格納した記憶装置と、
前記プログラムに従って演算を実行する処理装置と、を備えており、
前記プログラムは、
前記液体噴射ノズルによる、前記研磨パッドの半径方向における前記研磨液の供給位置と前記基板の平均研磨レートおよび研磨レートの基板面内分布との間の相関関係を求め、
予め設定された許容平均研磨レートの範囲と前記研磨液の供給位置と前記平均研磨レートとの相関関係に基づいて、前記液体噴射ノズルの移動可能範囲を決定し、
前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、最適な研磨液の供給位置を決定し、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させて、前記基板を研磨する指令を含む、研磨装置。
【請求項2】
前記研磨装置は、前記基板の膜厚を測定する膜厚測定センサを備えており、
前記プログラムは、
前記膜厚測定センサによって、前記基板の残膜分布を測定し、
前記測定された残膜分布と予め設定された目標残膜分布との差分に基づいて、目標研磨量の分布を決定し、
前記目標研磨量分布と前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、最適な研磨液の供給位置を決定し、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させる指令を含む、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記プログラムは、
前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求め、
前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量に相当する
、前記研磨液の供給位置の対象となる目標制御範囲を決定する指令を含む、請求項2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記プログラムは、
前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求め、
前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量に相当する目標研磨レート分布を決定する、請求項2に記載の研磨装置。
【請求項5】
研磨パッド上に研磨液を扇状に噴射する液体噴射ノズルによる、前記研磨パッドの半径方向における研磨液の供給位置と基板の平均研磨レートおよび研磨レートの基板面内分布との間の相関関係を求め、
予め設定された許容平均研磨レートの範囲と前記研磨液の供給位置と前記平均研磨レートとの相関関係から、前記液体噴射ノズルの移動可能範囲を決定し、
前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、最適な研磨液の供給位置を決定し、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させて、前記基板を研磨する、研磨方法。
【請求項6】
前記基板の膜厚を測定する膜厚測定センサによって、前記基板の残膜分布を測定し、
前記測定された残膜分布と予め設定された目標残膜分布との差分に基づいて、目標研磨量の分布を決定し、
前記目標研磨量分布と前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内における最適な研磨液の供給位置を決定し、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させる、請求項5に記載の研磨方法。
【請求項7】
前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求め、
前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量分布に相当する
、前記研磨液の供給位置の対象となる目標制御範囲を決定する、請求項6に記載の研磨方法。
【請求項8】
前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求め、
前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量に相当する目標研磨レート分布を決定する、請求項6に記載の研磨方法。
【請求項9】
研磨パッド上に研磨液を扇状に噴射する液体噴射ノズルによる、前記研磨パッドの半径方向における研磨液の供給位置と基板の平均研磨レートおよび研磨レートの基板面内分布との間の相関関係を求めるステップと、
予め設定された許容平均研磨レートの範囲と前記研磨液の供給位置と前記平均研磨レートとの相関関係に基づいて、前記液体噴射ノズルの移動可能範囲を決定するステップと、
前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、最適な研磨液の供給位置を決定するステップと、
前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させて、前記基板を研磨するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
前記プログラムは、
前記基板の膜厚を測定する膜厚測定センサによって、前記基板の残膜分布を測定するステップと、
前記測定された残膜分布と予め設定された目標残膜分布との差分に基づいて、目標研磨量分布を決定するステップと、
前記目標研磨量分布と前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、最適な研磨液の供給位置を決定するステップと、
前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させるステップと、を含む、請求項9に記載の記録媒体。
【請求項11】
前記プログラムは、
前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求めるステップと、
前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量に相当する
、前記研磨液の供給位置の対象となる目標制御範囲を決定するステップと、を含む、請求項10に記載の記録媒体。
【請求項12】
前記プログラムは、
前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求めるステップと、
前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量に相当する目標研磨レート分布を決定するステップと、を含む、請求項10に記載の記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハなどの基板を研磨する研磨装置および研磨方法に関するものである。
本発明は、研磨液を供給する位置を決定するプログラムを記録した記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、デバイス表面の平坦化技術がますます重要になっている。この平坦化技術のうち、最も重要な技術は、化学的機械研磨(Chemical Mechanical PolishingまたはCMP)である。この化学的機械的研磨(以下、CMPと呼ぶ)は、研磨装置を用いて、シリカ(SiO2)やセリア(CeO2)などの砥粒を含んだ研磨液(スラリー)を研磨パッドに供給しつつ、ウェハなどの基板を研磨面に摺接させて研磨を行うものである。
【0003】
研磨液(スラリー)を研磨パッド上に供給するための研磨液供給ノズル(単管ノズル)を備えた研磨装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。このような研磨装置では、研磨液供給ノズルから研磨パッド上に研磨液を供給しながら、基板の研磨が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-1559号公報
【文献】特開2010-247258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板の研磨レートは、研磨液の流量分布に依存する。したがって、基板の研磨レートの均一性を向上させるために、基板上の研磨液の供給位置を管理することは非常に重要である。しかしながら、単管ノズルである研磨液供給ノズルは、研磨パッド上の狭い範囲に局所的に研磨液を供給する。したがって、このような研磨液供給ノズルを用いると、研磨パッド面内において、研磨液の供給位置の流量分布が大きくなってしまう。これは、基板の研磨レートの分布が生じる要因の一つとなる。
【0006】
また、研磨液を固定位置で供給する場合、研磨パッドの外周側に研磨液を供給すると、多量の研磨液が研磨パッドの外側に排出されてしまい、したがって、基板の研磨レートが低下する。そこで、基板の研磨中に研磨液供給ノズルを揺動させる必要があるが、基板の研磨中では、研磨パッドを支持する研磨テーブルは回転している。したがって、基板の半径方向における研磨液の供給位置の分布は、研磨パッドの円周方向において、均一にはならない。
【0007】
そこで、本発明は、研磨液の供給位置の分布を均一にし、かつ研磨中において研磨液の供給位置を目標研磨量(目標制御範囲もしくは目標研磨レート分布)に対応するように、液体噴射ノズルを移動させることで、基板の研磨レートの均一性を向上させることができる研磨装置および研磨方法を提供することを目的とする。
本発明は、研磨液の供給位置の分布を均一にし、かつ研磨中において研磨液の供給位置を目標研磨量(目標制御範囲もしくは目標研磨レート分布)に対応するように、液体噴射ノズルを移動させることで、基板の研磨レートの均一性を向上させることができるプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、研磨パッドと、基板を前記研磨パッドに押し付けて、前記基板を研磨するトップリングと、前記研磨パッド上に研磨液を扇状に噴射する液体噴射ノズルと、前記液体噴射ノズルを前記研磨パッドの半径方向に移動させるノズル移動装置と、前記ノズル移動装置の動作を制御する動作制御部と、を備え、前記動作制御部は、プログラムを格納した記憶装置と、前記プログラムに従って演算を実行する処理装置と、を備えており、前記プログラムは、前記液体噴射ノズルによる、前記研磨パッドの半径方向における前記研磨液の供給位置と前記基板の平均研磨レートおよび研磨レートの基板面内分布との間の相関関係を求め、予め設定された許容平均研磨レートの範囲と前記研磨液の供給位置と前記平均研磨レートとの相関関係に基づいて、前記液体噴射ノズルの移動可能範囲を決定し、前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、最適な研磨液の供給位置を決定し、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させて、前記基板を研磨する指令を含む、研磨装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記研磨装置は、前記基板の膜厚を測定する膜厚測定センサを備えており、前記プログラムは、前記膜厚測定センサによって、前記基板の残膜分布を測定し、前記測定された残膜分布と予め設定された目標残膜分布との差分に基づいて、目標研磨量の分布を決定し、前記目標研磨量分布と前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、最適な研磨液の供給位置を決定し、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させる指令を含む。
一態様では、前記プログラムは、前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求め、前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量に相当する目標制御範囲を決定する指令を含む。
一態様では、前記プログラムは、前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求め、前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量に相当する目標研磨レート分布を決定する。
【0010】
一態様では、研磨パッド上に研磨液を扇状に噴射する液体噴射ノズルによる、前記研磨パッドの半径方向における研磨液の供給位置と基板の平均研磨レートおよび研磨レートの基板面内分布との間の相関関係を求め、予め設定された許容平均研磨レートの範囲と前記研磨液の供給位置と前記平均研磨レートとの相関関係から、前記液体噴射ノズルの移動可能範囲を決定し、前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、最適な研磨液の供給位置を決定し、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させて、前記基板を研磨する、研磨方法が提供される。
【0011】
一態様では、前記基板の膜厚を測定する膜厚測定センサによって、前記基板の残膜分布を測定し、前記測定された残膜分布と予め設定された目標残膜分布との差分に基づいて、目標研磨量の分布を決定し、前記目標研磨量分布と前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内における最適な研磨液の供給位置を決定し、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させる。
一態様では、前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求め、前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量分布に相当する目標制御範囲を決定する。
一態様では、前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求め、前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量に相当する目標研磨レート分布を決定する。
【0012】
一態様では、研磨パッド上に研磨液を扇状に噴射する液体噴射ノズルによる、前記研磨パッドの半径方向における研磨液の供給位置と基板の平均研磨レートおよび研磨レートの基板面内分布との間の相関関係を求めるステップと、予め設定された許容平均研磨レートの範囲と前記研磨液の供給位置と前記平均研磨レートとの相関関係に基づいて、前記液体噴射ノズルの移動可能範囲を決定するステップと、前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、最適な研磨液の供給位置を決定するステップと、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させて、前記基板を研磨するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。
【0013】
一態様では、前記プログラムは、前記基板の膜厚を測定する膜厚測定センサによって、前記基板の残膜分布を測定するステップと、前記測定された残膜分布と予め設定された目標残膜分布との差分に基づいて、目標研磨量分布を決定するステップと、前記目標研磨量分布と前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、最適な研磨液の供給位置を決定するステップと、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させるステップと、を含む。
一態様では、前記プログラムは、前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求めるステップと、前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量に相当する目標制御範囲を決定するステップと、を含む。
一態様では、前記プログラムは、前記測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布を求めるステップと、前記実際の研磨時における研磨レート分布に基づいて、前記目標研磨量に相当する目標研磨レート分布を決定するステップと、を含む。
【0014】
一参考例では、研磨パッドと、基板を前記研磨パッドに押し付けて、前記基板を研磨するトップリングと、前記研磨パッド上に研磨液を扇状に噴射する液体噴射ノズルと、前記液体噴射ノズルを前記研磨パッドの半径方向に移動させるノズル移動装置と、前記ノズル移動装置の動作を制御する動作制御部と、を備え、前記動作制御部は、プログラムを格納した記憶装置と、前記プログラムに従って演算を実行する処理装置と、を備えており、前記プログラムは、前記液体噴射ノズルによる、前記研磨パッドの半径方向における前記研磨液の供給位置と前記基板の平均研磨レートおよび研磨レートの基板面内分布との間の相関関係を求め、予め設定された許容平均研磨レートの範囲と前記研磨液の供給位置と前記平均研磨レートとの相関関係に基づいて、前記液体噴射ノズルの移動可能範囲を決定し、前記決定された前記液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、前記研磨液の供給位置と前記研磨レートの基板面内分布との相関関係から、最適な研磨液の供給位置を決定し、前記液体噴射ノズルを前記決定された供給位置に移動させて、前記基板を研磨する動作を前記動作制御部に実行させる、研磨装置が提供される。
【発明の効果】
【0015】
動作制御部は、決定された液体噴射ノズルの移動可能範囲内において、研磨液の供給位置と研磨レートの基板面内分布との相関関係から決定された研磨液の供給位置に研磨液を広域的に噴射する液体噴射ノズルを移動させる。したがって、動作制御部は、研磨液の供給位置を目標の研磨量(目標制御範囲もしくは目標研磨レート分布)に対して最適な配置にすることで、基板の研磨レートの均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図2(a)は、
図1のA線方向から見た図であり、
図2(b)は、
図2(a)の汚れ防止カバーを取り外した状態を示す図である。
【
図3】
図3(a)は
図2(a)のB線方向から見た図であり、
図3(b)は
図2(a)のC線方向から見た図である。
【
図4】液体噴射ノズルに連結された第3スラリーライン(第3液体供給ライン)およびフラッシングラインを示す図である。
【
図8】
図8(a)乃至
図8(c)は、研磨液の供給位置と研磨液の液膜分布との関係を示す図である。
【
図9】
図9(a)乃至
図9(c)は、研磨液の液膜分布と基板の研磨レート分布との関係を示す図である。
【
図10】許容平均研磨レートの範囲を示す図である。
【
図11】許容平均研磨レートの範囲と液体噴射ノズルの移動可能範囲との関係を示す図である。
【
図12】
図12(a)は、膜厚測定センサおよび液体噴射ノズルを示す図であり、
図12(b)は、基板の研磨中における動作制御部の動作の一実施形態を示す図である。
【
図13】基板の研磨中における動作制御部の動作の他の実施形態を示す図である。
【
図14】動作制御部の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0018】
図1は、研磨装置PAの一実施形態の平面図である。
図1に示すように、研磨装置PAは、研磨パッド1を支持する研磨テーブル2と、ウェハなどの基板Wを研磨パッド1に押し付けるトップリング(研磨ヘッド)3と、研磨パッド1に液体を供給するための液体供給機構4とを備えている。液体供給機構4から研磨パッド1上に供給される液体は、研磨液(スラリー)または純水(DIW)である。
【0019】
研磨テーブル2は、研磨テーブル2を支持するテーブル軸(図示しない)を介して、研磨テーブル2を回転させるテーブルモータ(図示しない)に連結されている。研磨パッド1は研磨テーブル2の上面に貼付されており、研磨パッド1の上面が基板Wを研磨する研磨面1aを構成している。
【0020】
トップリング3はトップリングシャフト(図示しない)の下端に固定されている。トップリング3は、その下面に真空吸着により基板Wを保持できるように構成されている。トップリングシャフトは、トップリングアーム8内に設置された回転機構(図示しない)に連結されている。トップリング3は、この回転機構によりトップリングシャフトを介して回転される。
【0021】
トップリングアーム8は、トップリングアーム8を旋回させるトップリング旋回軸9に連結されている。トップリング旋回軸9は、研磨パッド1の外側に配置されている。トップリング3、トップリングアーム8、トップリング旋回軸9は、トップリング装置5を構成している。
【0022】
研磨装置PAは、研磨パッド1をドレッシングするためのドレッシング装置10をさらに備えている。ドレッシング装置10は、研磨パッド1の研磨面1aに摺接されるドレッサ15と、ドレッサ15を支持するドレッサアーム11と、ドレッサアーム11を旋回させるドレッサ旋回軸12とを備えている。ドレッサ旋回軸12は、研磨パッド1の外側に配置されている。
【0023】
ドレッサアーム11の旋回に伴って、ドレッサ15は研磨面1a上を揺動する。ドレッサ15の下面は、ダイヤモンド粒子などの多数の砥粒からなるドレッシング面を構成する。ドレッサ15は、研磨面1a上を揺動しながら回転し、研磨パッド1を僅かに削り取ることにより研磨面1aをドレッシングする。研磨パッド1のドレッシング中、液体供給機構4(より具体的には、ドレッシング液供給装置60)は、純水を研磨パッド1の研磨面1a上に供給する。液体供給機構4の構成の詳細については、後述する。
【0024】
研磨装置PAは、霧状の洗浄流体を研磨パッド1の研磨面1aに噴射して研磨面1aを洗浄するアトマイザ20をさらに備えている。洗浄流体は、液体(通常は純水)と気体(例えば、窒素ガスなどの不活性ガス)との混合流体から構成される。アトマイザ20は、研磨パッド1(または研磨テーブル2)の半径方向に沿って延びており、研磨パッド1の研磨面1aの上方に位置している。アトマイザ20は、高圧の洗浄流体を研磨面1aに噴射することにより、研磨パッド1の研磨面1aから研磨屑および研磨液に含まれる砥粒を除去する。
【0025】
以下、液体供給機構4の構成について、図面を参照して説明する。
図2(a)は、
図1のA線方向から見た図であり、
図2(b)は、
図2(a)の汚れ防止カバーを取り外した状態を示す図である。
【0026】
液体供給機構4は、研磨テーブル2の半径方向に移動可能なノズルアーム30と、ノズルアーム30の先端部分30aに配置された第1スラリーノズル31および第2スラリーノズル32と、ノズルアーム30のアーム部分30bに配置された液体噴射ノズル33とを備えている。
【0027】
ノズルアーム30は、ノズルアーム30を移動させるノズル移動装置35に連結されている(
図1参照)。本実施形態では、ノズル移動装置35は、ノズルアーム30を旋回させるように構成されている。したがって、ノズル移動装置35は、ノズル旋回軸と呼ばれてもよい。一実施形態では、ノズル移動装置35は、研磨パッド1の半径方向において、ノズルアーム30を直線状に往復移動させるように構成されてもよい。ノズル移動装置35は、研磨パッド1の外側に配置されている。ノズルアーム30は、ノズル移動装置35の駆動(より具体的には、ノズル移動装置35に連結されたモータ)によって、研磨パッド1の外側にある退避位置と研磨パッド1の上方にある処理位置との間を移動可能に構成されている。
【0028】
図2(a)に示すように、ノズルアーム30が処理位置にあるとき、ノズルアーム30の先端部分30aは、研磨パッド1の中心CLの上方に配置される。したがって、ノズルアーム30の先端部分30aに配置された第1スラリーノズル31および第2スラリーノズル32は、第1スラリーノズル31の噴射口および第2スラリーノズル32の噴射口が研磨パッド1の中心CLに対向するように、研磨パッド1の中心CLの上方に配置される。
【0029】
ノズルアーム30が処理位置にあるとき、液体噴射ノズル33は、その噴射口が研磨パッド1の中心CLと研磨パッド1の外周部1bとの間の領域に対向するように、この領域の上方に配置される。
【0030】
一実施形態では、液体噴射ノズル33は、樹脂から構成されている。液体噴射ノズル33の材質の一例として、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、またはPP(ポリプロピレン)を挙げることができる。
【0031】
液体噴射ノズル33はスラリーAを供給し、第1スラリーノズル31はスラリーBを供給し、第2スラリーノズル32はスラリーCを供給する。スラリーA、スラリーB、およびスラリーCは、それぞれ異なる種類の液体である。
【0032】
図3(a)は
図2(a)のB線方向から見た図であり、
図3(b)は
図2(a)のC線方向から見た図である。
図3(a)に示すように、第1スラリーノズル(第1液体ノズル)31および第2スラリーノズル(第2液体ノズル)32は互いに隣接して配置されている。第1スラリーノズル31はスラリーBが流れる流路が形成された第1スラリーライン(第1液体供給ライン)40に接続されており、第2スラリーノズル32はスラリーCが流れる流路が形成された第2スラリーライン(第2液体供給ライン)41に接続されている。これら第1スラリーライン40および第2スラリーライン41は、ノズルアーム30の内部に配置されている。
【0033】
図2(b)に示すように、液体噴射ノズル33は、ノズルアーム30から下方に延びるノズルホルダー45に取り付けられている。ノズルホルダー45はノズルアーム30に固定されている。本実施形態では、
図2(a)に示すように、ノズルホルダー45は、汚れ防止カバー44によって覆われており、異物のノズルホルダー45および連結部材48への付着は防止される。
【0034】
図2(a)に示すように、液体噴射ノズル33は、第1スラリーノズル31および第2スラリーノズル32よりも研磨パッド1の研磨面1aに近接して配置されている。つまり、研磨パッド1の研磨面1aと液体噴射ノズル33との間の距離は、研磨パッド1の研磨面1aと第1スラリーノズル31および第2スラリーノズル32との間の距離よりも小さい。
【0035】
液体噴射ノズル33は、鉛直方向に対して研磨パッド1の外周部1b側(すなわち、研磨パッド1の中心CLから離間する方向)を向いて傾斜している。一実施形態では、液体噴射ノズル33の傾斜角度は13度である。
【0036】
図4は、液体噴射ノズル33に連結された第3スラリーライン(第3液体供給ライン)46およびフラッシングライン47を示す図である。
図4に示すように、液体噴射ノズル33は、スラリーAが流れる流路が形成された第3スラリーライン46に接続されている。第3スラリーライン46の途中部分には、連結部材48が接続されており、連結部材48には、純水が流れる流路が形成されたフラッシングライン47が接続されている。連結部材48は、フラッシングライン47と第3スラリーライン46との合流部分に設けられている。
【0037】
スラリーAの流れる方向において、連結部材48の上流側は第3スラリーライン46の上流流路と呼ばれてもよく、連結部材48の下流側は第3スラリーライン46の下流流路と呼ばれてもよい。
【0038】
連結部材48は、液体噴射ノズル33に隣接して配置されている。フラッシングライン47および第3スラリーライン46の先端部分(言い換えれば、第3スラリーライン46の下流流路)を流れる純水は、液体噴射ノズル33から噴射される。第3スラリーライン46およびフラッシングライン47のうちのいずれか一方を流れる液体(スラリーAまたは純水)は、液体噴射ノズル33から噴射される。
【0039】
フラッシングライン47を流れる純水は、第3スラリーライン46の先端部分および液体噴射ノズル33を通過して、外部に噴射される。この純水は、第3スラリーライン46の先端部分および液体噴射ノズル33を洗浄するためのフラッシング液体である。フラッシング液体としての純水は、液体噴射ノズル33の内部を勢いよく流れて、第3スラリーライン46の先端部分および液体噴射ノズル33の内部に滞留するスラリーを瞬時に除去する。結果として、第3スラリーライン46の先端部分および液体噴射ノズル33の内部でのスラリーの固着は防止される。
【0040】
連結部材48は、スラリー噴出位置に近接した位置にある液体噴射ノズル33に隣接して配置されている。このような配置により、研磨装置PAは、スラリーを純水に置換する量(すなわち、スラリー置換量)を最小限にすることができ、研磨装置PAのスループット(基板Wの処理枚数)を維持することができる。
【0041】
図5は、液体噴射ノズル33を示す断面図である。
図5に示すように、液体噴射ノズル33は、液体を扇状に噴射する扇形ノズルである。液体噴射ノズル33は、その内面34に形成された液体通過面34a、液体噴射面34b、および液体絞り面34cを有している。
【0042】
液体絞り面34cは、液体通過面34aと液体噴射面34bとの間に配置されている。液体絞り面34cは、液体通過面34aおよび液体噴射面34bに接続されており、テーパー形状を有している。より具体的には、液体絞り面34cは、液体通過面34aから液体噴射面34bに向かって液体噴射ノズル33の内径が徐々に小さくなる形状を有している。
【0043】
液体噴射ノズル33が扇形ノズルである場合、微小な砥粒を含むスラリーが液体噴射ノズル33の内部に固着するおそれがある。本実施形態では、液体噴射ノズル33は、その内面34に形成されたテーパー形状を有する液体絞り面34cを有している。したがって、液体噴射ノズル33の内部のスラリーは、液体絞り面34c上に留まることなく、液体絞り面34c上をスムーズに流れる。このようにして、液体噴射ノズル33の内部でのスラリーの滞留は防止される。結果として、液体噴射ノズル33の内部でのスラリーの固着は防止される。
【0044】
図6は、スラリーAの噴出範囲を示す図である。
図6に示すように、本実施形態では、液体噴射ノズル33から噴射されるスラリーAは、扇状に研磨パッド1の研磨面1a上に供給される。スラリーAは、研磨パッド1の中心CLを含み、かつ研磨パッド1の外周部1bよりも内側の領域に噴射される。一実施形態では、液体噴射ノズル33の噴射角度(言い換えれば、液体噴射ノズル33から噴射されるスラリーAの角度)は、50度から150度の範囲内である。
【0045】
本実施形態によれば、液体噴射ノズル33は、少量のスラリーを広範囲に亘って噴射することができる。したがって、スラリーの使用量を削減することができ、かつ使用するスラリー量に対する基板の研磨レートを向上させることができる。
【0046】
図1に示すように、研磨装置PAは、液体供給機構4(より具体的には、ノズル移動装置35)の動作を制御する動作制御部200を備えている。動作制御部200は、ノズル移動装置35に電気的に接続されている。動作制御部200は、ノズル移動装置35を動作させて、研磨パッド1の半径方向において、液体噴射ノズル33を移動させる。このようにして、動作制御部200は、研磨液の供給位置を変更することができる。なお、
図1に示すように、動作制御部200は、トップリング旋回軸9およびドレッサ旋回軸12にも電気的に接続されており、これらトップリング旋回軸9およびドレッサ旋回軸12の動作を制御する。
【0047】
ノズル移動装置35を含む研磨装置PAの動作は、動作制御部200によって制御される。本実施形態では、動作制御部200は、コンピュータから構成される。
図7は、動作制御部200の構成を示す模式図である。動作制御部200は、プログラムやデータなどが格納される記憶装置210と、記憶装置210に格納されているプログラムに従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングユニット)などの処理装置220と、データ、プログラム、および各種情報を記憶装置210に入力するための入力装置230と、処理結果や処理されたデータを出力するための出力装置240と、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークに接続するための通信装置250を備えている。
【0048】
記憶装置210は、処理装置220がアクセス可能な主記憶装置211と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置212を備えている。主記憶装置211は、例えばランダムアクセスメモリ(RAM)であり、補助記憶装置212は、ハードディスクドライブ(HDD)またはソリッドステートドライブ(SSD)などのストレージ装置である。
【0049】
入力装置230は、キーボード、マウスを備えており、さらに、記録媒体からデータを読み出すための記録媒体読み出し装置232と、記録媒体が接続される記録媒体ポート234を備えている。記録媒体は、非一時的な有形物であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、光ディスク(例えば、CD-ROM、DVD-ROM)や、半導体メモリー(例えば、USBフラッシュドライブ、メモリーカード)である。記録媒体読み出し装置232の例としては、CD-ROMドライブ、DVD-ROMドライブなどの光学ドライブや、メモリーリーダーが挙げられる。記録媒体ポート234の例としては、USBポートが挙げられる。記録媒体に記憶されているプログラムおよび/またはデータは、入力装置230を介して動作制御部200に導入され、記憶装置210の補助記憶装置212に格納される。出力装置240は、ディスプレイ装置241、印刷装置242を備えている。
【0050】
図8(a)乃至
図8(c)は、研磨液の供給位置と研磨液の液膜分布との関係を示す図である。
図9(a)乃至
図9(c)は、研磨液の液膜分布と基板の研磨レートとの関係を示す図である。符号CL1は、研磨パッド1の中心CL(
図1参照)を通る研磨パッド1の中心線を表しており、符号CL2は、基板Wの中心を通る基板Wの中心線を表している。
【0051】
図8(a)に示すように、液体噴射ノズル33が基板Wの中心線CL2よりも研磨パッド1の中心線CL1に近接した位置に配置された状態で、研磨液が噴射されると、研磨パッド1の中心側における研磨液の液膜が厚くなる。以下、本明細書において、
図8(a)に示すように、研磨パッド1の中心側における液体噴射ノズル33の位置を位置Aと呼ぶことがある。
【0052】
図8(b)に示すように、液体噴射ノズル33が基板Wの中心線CL2上に配置された状態で、研磨液が噴射されると、基板Wの中心における研磨液の液膜が厚くなる。以下、本明細書において、
図8(b)に示すように、基板Wの中心の上方における液体噴射ノズル33の位置を位置Bと呼ぶことがある。
【0053】
図8(c)に示すように、液体噴射ノズル33が基板Wの中心線CL2よりも研磨パッド1の外周部1b(
図1参照)側に配置された状態で、研磨液が噴射されると、基板Wの中心線CL2よりも外側における研磨液の液膜が厚くなる。以下、本明細書において、
図8(c)に示すように、研磨パッド1の外周部1b側における液体噴射ノズル33の位置を位置Cと呼ぶことがある。
【0054】
図9(a)乃至
図9(c)において、符号RR1、符号RR2、および符号RR3のそれぞれは、基板Wの平均研磨レートを表している。平均研磨レートRR1は平均研磨レートRR3よりも小さく、平均研磨レートRR3は平均研磨レートRR2よりも小さい(RR2>RR3>RR1)。
【0055】
図9(a)に示すように、液体噴射ノズル33が研磨パッド1の中心側の位置に配置された状態で、研磨液が噴射されると、基板Wの研磨レートの分布は、概ね均一である。
図9(b)に示すように、液体噴射ノズル33が基板Wの中心の上方の位置に配置された状態で、研磨液が噴射されると、基板Wの研磨レートは、基板Wの中心の位置において大きくなる。
図9(c)に示すように、液体噴射ノズル33が研磨パッド1の外周部1b側の位置に配置された状態で、研磨液が噴射されると、基板Wの研磨レートは、基板の中心の位置において小さくなり、基板の中心の周辺の位置において、大きくなる。このように、基板Wの研磨レートの分布は、研磨液が供給される位置によって、異なる。
【0056】
図8(a)乃至
図8(c)および
図9(a)乃至
図9(c)に示すように、液体噴射ノズル33による、研磨パッド1(すなわち、基板W)の半径方向における研磨液の供給位置と、基板Wの平均研磨レートおよび研磨レートの基板面内分布との間には、相関関係が存在している。動作制御部200は、この相関関係を予め求め、相関関係を示すデータを記憶装置210にデータベースとして格納する。
【0057】
コンピュータからなる動作制御部200は、記憶装置210に電気的に格納されたプログラムに従って動作する。すなわち、動作制御部200は、記憶装置210に格納された相関関係と予め設定された許容平均研磨レートの範囲に基づいて、液体噴射ノズル33の移動可能範囲を決定し、決定された液体噴射ノズル33の移動可能範囲内において、液体噴射ノズル33を移動させて、基板Wを研磨するように構成されている。
【0058】
これらステップを動作制御部200に実行させるためのプログラムは、非一時的な有形物であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録され、記録媒体を介して動作制御部200に提供される。または、プログラムは、インターネットまたはローカルエリアネットワークなどの通信ネットワークを介して通信装置250から動作制御部200に入力されてもよい。
【0059】
図10は、許容平均研磨レートの範囲を示す図である。上述したように、動作制御部200は、記憶装置210に格納された、相関関係と予め設定された許容平均研磨レートの範囲を示すデータ(
図10の点線で囲まれた領域参照)に基づいて、液体噴射ノズル33の移動可能範囲を決定する。この許容平均研磨レートの範囲は、動作制御部200の記憶装置210内に入力パラメータとして予め格納されている。基板Wの平均研磨レートは液体噴射ノズル33による半径方向における研磨液の供給位置により異なるが、供給位置によっては平均研磨レートが大きく増加もしくは低下する場合があり、これらの研磨レートの変化は基板Wの処理速度や研磨後の基板Wの洗浄性能等に影響する。よって、液体噴射ノズル33の供給位置による平均研磨レートは一定の許容範囲内に収めることが望ましく、その目的で許容平均研磨レートが設定される。
【0060】
許容平均研磨レートの範囲は、基板Wの研磨条件に応じて、所望の平均研磨レートが含まれるように、設定される。
図10の例で説明すれば、平均研磨レートRR2および平均研磨レートRR3は、許容平均研磨レートの範囲内に含まれているが、平均研磨レートRR1は、許容平均研磨レートの範囲内には含まれていない。したがって、動作制御部200は、基板Wの中心の上方の位置B(
図8(b)参照)から研磨パッド1の外周部1b側の位置C(
図8(c)参照)までの範囲内において、液体噴射ノズル33を移動させる。なお、許容平均研磨レートの例としては、上限値及び下限値が所望の平均研磨レートに対するパーセンテージ(例えば±10%)もしくは差分値(例えば±100A/min)で良い。
【0061】
図11は、許容平均研磨レートの範囲と液体噴射ノズル33の移動可能範囲との関係を示す図である。
図11に示すように、動作制御部200は、平均研磨レートRR2および平均研磨レートRR3を含むように、許容平均研磨レートの範囲を決定する。動作制御部200は、液体噴射ノズル33の位置Bおよび位置Cを含むように、液体噴射ノズル33の移動可能範囲を決定する。
【0062】
図12(a)は、膜厚測定センサ300および液体噴射ノズル33を示す図であり、
図12(b)は、基板Wの研磨中における動作制御部200の動作の一実施形態を示す図である。
図12(a)に示すように、研磨装置PAは、研磨パッド1(および研磨テーブル2)に埋め込まれた膜厚測定センサ300を備えている。膜厚測定センサ300は、基板Wの膜厚を測定するためのセンサである。膜厚測定センサ300の一例として、渦電流センサまたは光学センサを挙げることができる。
【0063】
渦電流センサは、基板Wの渦電流によって形成される鎖交磁束を検出し、検出した鎖交磁束に基づいて基板Wの被処理膜の厚さ(すなわち、被処理膜の残膜分布)を検出するセンサである。光学センサは、基板Wに光を照射し、基板Wから反射する干渉波を測定することによって被処理膜の厚さ(すなわち、被処理膜の残膜分布)を検出するセンサである。
【0064】
膜厚測定センサ300は、動作制御部200に電気的に接続されており、基板Wの膜厚と相関関係を有するセンサデータ(センサ信号)を動作制御部200に送る。膜厚測定センサ300からのセンサデータが動作制御部200に入力されると、動作制御部200は、このセンサデータを基板Wの膜厚値に変換する。なお、膜厚測定センサ300は、あらかじめ設定された設定に従い、研磨終了点を検出し、研磨装置PAによる研磨を終了させるのに使用されてもよい。
【0065】
研磨装置PAが基板Wの研磨を開始すると、動作制御部200は、膜厚測定センサ300によって、基板Wの被処理膜の残膜分布を測定し、測定された残膜分布の時間変化に基づいて、研磨量分布を求める。そして、動作制御部200は、予め設定された目標残膜分布との差分から目標研磨量を決定する。動作制御部200は、決定された目標研磨量に対して、記憶装置210に格納された研磨液の供給位置と研磨レートの基板面内分布との相関関係から、液体噴射ノズル33の移動可能範囲内において、最適な研磨液の供給位置を決定し、液体噴射ノズル33を決定された供給位置に移動させる。
【0066】
より具体的には、
図12(b)に示すように、動作制御部200は、膜厚測定センサ300によって測定された残膜分布の時間変化から、基板Wの研磨レートの分布を求める(
図12(b)の実線参照)。この研磨レートの分布は、基板Wの半径方向における分布である。動作制御部200は、基板Wの研磨レートの分布から、実際の研磨時における平均研磨レートRRFを求め、平均研磨レートRRFに基づいて、目標研磨量に相当する目標制御範囲(
図12(b)の太い点線参照)を決定する。目標制御範囲は、平均研磨レートRRFに対する所定の割合で決定される。目標制御範囲は、平均研磨レートRRFを含む所定の幅を有する範囲である。
【0067】
図13は、基板Wの研磨中における動作制御部200の動作の他の実施形態を示す図である。
図12(b)に示す実施形態では、動作制御部200は、目標制御範囲を決定するが、
図13に示すように、動作制御部200は、膜厚測定センサ300によって測定された残膜分布の時間変化から、実際の研磨時における研磨レートの分布(
図13の実線参照)を求め、この研磨レートに基づいて、目標研磨レート分布(
図13の一点鎖線参照)を決定してもよい。目標研磨レート分布は、上記目標研磨量分布に相当する。
【0068】
一実施形態では、動作制御部200は、測定された残膜分布に基づいて、基板Wの残膜に関する目標制御範囲を決定してもよい。一実施形態では、動作制御部200は、測定された残膜分布に基づいて、基板Wの残膜に関する目標残膜分布を決定してもよい。これら目標制御範囲および目標残膜分布のそれぞれは、目標研磨量分布に相当する。
【0069】
図14は、動作制御部200の動作フローを示すフローチャートである。基板Wの研磨の開始後、動作制御部200は、膜厚測定センサ300によって検出されたセンサデータに基づいて、基板W(より具体的には、被処理膜)の残膜分布を測定し、基板Wの残膜の状態を監視する(
図14のステップS101参照)。次いで、動作制御部200は、測定された残膜分布の時間変化に基づいて、基板Wの研磨レートの分布を算出する(
図14のステップS102参照)。
【0070】
その後、動作制御部200は、算出された研磨レートの分布が目標制御範囲内か否かを判定する(
図14のステップS103参照)。一実施形態では、動作制御部200は、目標研磨レート分布に基づいて判定してもよい。目標制御範囲および目標研磨レート分布の少なくとも1つは、動作制御部200の記憶装置210内に格納されている。
【0071】
研磨レートの分布が目標制御範囲内である場合(
図14のステップS103の「YES」参照)、動作制御部200は、
図14のステップS101に戻り、残膜分布の監視を継続する。研磨レートの分布が目標制御範囲内でない場合、つまり、研磨レートの分布が目標制御範囲外である場合(
図14のステップS103の「NO」参照)、動作制御部200は、液体噴射ノズル33の移動可能範囲内における研磨液供給位置の変更を決定する(
図14のステップS104参照)。
【0072】
研磨液の供給位置の変更は、次のようにして決定される。例えば、基板Wの半径方向における研磨レートの一部が目標制御範囲(または目標研磨レート分布)よりも大きい(または小さい)場合、動作制御部200は、研磨液の供給位置と基板Wの研磨レートの分布との間の相関関係を示すデータに基づいて、研磨レートの一部が小さくなる(または大きくなる)ように、液体噴射ノズル33の移動可能範囲内において、液体噴射ノズル33を移動させる。
【0073】
基板Wの半径方向における研磨レートの複数の部分が目標制御範囲(または目標研磨レート分布)よりも大きい(または小さい)場合、動作制御部200は、研磨レートの最も大きな部分(または研磨レートの最も小さな部分)が最小(または最大)となるように、液体噴射ノズル33の移動可能範囲内において、液体噴射ノズル33を移動させる。
【0074】
このように、動作制御部200は、研磨レートの目標制御範囲(または目標研磨レート分布)からのずれ量に基づいて、研磨レートの極値(極大値または極小値)を求め、この極値が変動するように、研磨液の供給位置を変更する。
【0075】
基板Wの被処理膜の残膜量が極めて小さい場合、これ以上、残膜量を小さくすることができない。したがって、動作制御部200は、研磨レートの最も小さな部分が最大となるように、研磨液の供給位置を変更する。
【0076】
図14のステップS104の後、動作制御部200は、ノズル移動装置35を動作させるために必要な動作信号をノズル移動装置35に入力する(
図14のステップS105参照)。動作制御部200は、ノズル移動装置35を動作させて、研磨液供給位置を変更する(
図14のステップS106参照)。このように、動作制御部200は、現在の研磨レートの分布と目標制御範囲(または目標研磨レート分布)との比較に基づいて、液体噴射ノズル33の位置を変更し、研磨中の基板Wの研磨レートの分布が目標制御範囲内になるように、フィードバック制御を実行する。
【0077】
図14のステップS106の後、動作制御部200は、フィードバック制御を終了してもよいか否かを判定し(
図14のステップS107参照)、動作制御部200がフィードバック制御の終了を許容しない場合(
図14のステップS107の「NO」参照)、動作制御部200は、
図14のステップS101に戻り、残膜分布の監視を継続する。動作制御部200がフィードバック制御の終了を許容する場合(
図14のステップS107の「YES」参照)、動作制御部200は、フィードバック制御を終了する(
図14のステップS108参照)。その後、動作制御部200は、基板Wの研磨を終了する。
【0078】
フィードバック制御に関連するデータ(関連データ)は、研磨レシピ(基板Wを研磨する条件を含む)の生成に必要な情報として、動作制御部200の記憶装置210に入力される。研磨装置PAは、上記研磨レシピに従って、基板Wを研磨する。関連データは、以下に説明するような要素を含んでいる。
【0079】
動作制御部200が膜厚測定センサ300によって測定された残膜分布の時間変化に基づいて、目標研磨量を決定する場合、関連データは、基板Wの目標残膜分布および/または残膜に相当するセンサ信号を含んでもよい。
【0080】
関連データは、液体噴射ノズル33の位置(すなわち、研磨液の供給位置)と基板Wの研磨レートの分布との相関関係、およびこの相関関係に基づいて決定された液体噴射ノズル33の移動可能範囲を含んでもよい。関連データは、研磨レートの目標制御範囲を含んでもよい。
【0081】
研磨装置PAが基板Wの研磨を開始した直後では、研磨状態が安定していないために、動作制御部200は、フィードバック制御を実行するに値する正確なデータを取得することができない場合がある。したがって、関連データは、動作制御部200によるフィードバック制御を開始する時間(開始時間)を含む。この開始時間は、基板Wの研磨を開始した後、何秒後にフィードバック制御を開始するかを決定する時間である。
【0082】
関連データは、フィードバック制御を実行するフィードバック周期を含んでもよい。一実施形態では、このフィードバック周期は、研磨テーブル2の回転、または時間に基づいて決定されてもよい。関連データは、フィードバック制御の有効時間を含んでもよい。一実施形態では、この有効時間は、基板Wの研磨時間以下の任意の時間であってもよく、または、基板Wの残膜に基づいて決定されてもよい。
【0083】
本実施形態によれば、液体噴射ノズル33は、研磨液を局所的に供給する単管ノズルとは異なり、研磨液を広域的に扇状に噴射するように構成されている。したがって、研磨液の供給位置の分布には、ばらつきは生じない。さらに、動作制御部200は、液体噴射ノズル33を揺動する必要はないため、基板Wの半径方向における研磨液の供給位置の分布は、研磨パッド1の円周方向において、均一になる。結果として、基板Wの研磨レートの低下を抑制することができる。
【0084】
動作制御部200は、研磨液を噴射する液体噴射ノズル33の位置を制御する。したがって、液体噴射ノズル33を使用することで、単管ノズルのようにノズルを揺動させることなく、広範囲の研磨液の流量分布を可能とする。さらに、動作制御部200は、許容平均研磨レートの範囲に基づいて決定された液体噴射ノズル33の移動可能範囲内において、液体噴射ノズル33を移動させる。したがって、動作制御部200は、基板Wの研磨レートの均一性を向上させることができる。
【0085】
基板Wの研磨レートは、研磨液の供給位置のみならず、研磨パッド1上に供給される研磨液の流量(供給量)にも依存して変化しうる。したがって、研磨液の供給量と基板Wの研磨レートの分布との間にも、相関関係が存在しており、供給位置と併せて動作制御部200で研磨液の流量を制御してもよい。
【0086】
一実施形態では、動作制御部200は、この相関関係を予め求め、相関関係を示すデータを記憶装置210にデータベースとして格納してもよい。関連データは、この相関関係を示すデータを含んでもよい。この場合、動作制御部200は、液体噴射ノズル33の移動可能範囲内において研磨液供給位置を変更するとともに、研磨液の供給量を変更してもよい。より具体的には、動作制御部200は、第3スラリーライン46(
図4参照)に取り付けられた流量調整装置(図示しない)を動作させて、研磨液の供給量を調整する。
【0087】
基板Wの研磨レートは、研磨液の供給位置のみならず、研磨面1aに対する基板Wの押圧力にも依存して変化しうる。したがって、研磨面1aに対する基板Wの押圧力と基板Wの研磨レートの分布との間には、相関関係が存在しており、供給位置と併せて動作制御部200で基板Wの押圧力を制御してもよい。
【0088】
一実施形態では、動作制御部200は、この相関関係を予め求め、相関関係を示すデータを記憶装置210にデータベースとして格納してもよい。関連データは、この相関関係を示すデータを含んでもよい。この場合、動作制御部200は、液体噴射ノズル33の移動可能範囲内において研磨液供給位置を変更するとともに、研磨面1aに対する基板Wの押圧力を変更してもよい。この押圧力は、トップリング3に設けられた弾性膜(メンブレン)によって形成された複数の圧力室に供給される流体の流量に基づいて変化する。したがって、動作制御部200は、流量調整装置(図示しない)を動作させて、加圧の対象となる圧力室に供給される流体の流量を調整する。
【0089】
本実施形態では、液体噴射ノズル33は、研磨液を扇状に噴射するノズルである。したがって、液体噴射ノズル33が研磨パッド1の研磨面1aに対して傾斜している場合(
図6参照)、基板Wに噴射される研磨液の噴射量は、基板Wの半径方向において、一様ではない。したがって、基板Wの研磨レートは、研磨液の供給位置のみならず、液体噴射ノズル33の研磨面1aに対する傾斜角度にも依存して変化しうる。したがって、液体噴射ノズル33の傾斜角度と基板Wの研磨レートの分布との間には、相関関係が存在しており、供給位置と併せて動作制御部200で液体噴射ノズル33の傾斜角度を制御してもよい。
【0090】
一実施形態では、動作制御部200は、この相関関係を予め求め、相関関係を示すデータを記憶装置210にデータベースとして格納してもよい。関連データは、この相関関係を示すデータを含んでもよい。この場合、動作制御部200は、液体噴射ノズル33の移動可能範囲内において研磨液供給位置を変更するとともに、液体噴射ノズル33の傾斜角度を変更してもよい。より具体的には、動作制御部200は、液体噴射ノズル33の傾斜角度を調整するアクチュエータ(例えば、モータ)によって、液体噴射ノズル33の傾斜角度を変更してもよい。
【0091】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0092】
1 研磨パッド
1a 研磨面
1b 外周部
2 研磨テーブル
3 トップリング(研磨ヘッド)
4 液体供給機構
5 トップリング装置
8 トップリングアーム
9 トップリング旋回軸
10 ドレッシング装置
11 ドレッサアーム
12 ドレッサ旋回軸
15 ドレッサ
20 アトマイザ
30 ノズルアーム
30a 先端部分
30b アーム部分
31 第1スラリーノズル
32 第2スラリーノズル
33 液体噴射ノズル
34 内面
34a 液体通過面
34b 液体噴射面
34c 液体絞り面
35 ノズル移動装置
40 第1スラリーライン
41 第2スラリーライン
44 汚れ防止カバー
45 ノズルホルダー
46 第3スラリーライン
47 フラッシングライン
48 連結部材
60 ドレッシング液供給装置
200 動作制御部
210 記憶装置
211 主記憶装置
212 補助記憶装置
220 処理装置
230 入力装置
232 記録媒体読み出し装置
234 記録媒体ポート
240 出力装置
241 ディスプレイ装置
242 印刷装置
250 通信装置
300 膜厚測定センサ
PA 研磨装置