IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越化学工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】錠剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20220922BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 47/26 20060101ALN20220922BHJP
   A61K 47/02 20060101ALN20220922BHJP
【FI】
A61K9/20
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/26
A61K47/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019102984
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020196677
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】平間 康之
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-270040(JP,A)
【文献】特開2003-261440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/20
A61K 47/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分賦形剤崩壊剤からなる群から選ばれる一つ以上を少なくとも含む粉末組成物に対して、結合剤と水とを少なくとも含む水性組成物を添加しながら、造粒を行うことにより造粒物を得る造粒工程と、
前記造粒物を40~80℃にて乾燥して水分量5.0質量%以下の乾燥された造粒物を得る乾燥工程と、
前記乾燥された造粒物を、80℃を超えて180℃以下の加熱処理してから打錠することにより又は打錠してから80℃を超えて180℃以下の加熱処理することにより錠剤を得る熱処理打錠工程と
を少なくとも含む錠剤の製造方法であって、
前記結合剤が、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選ばれる錠剤の製造方法。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールが、78.0モル%以上のけん化度を有する請求項1に記載の錠剤の製造方法。
【請求項3】
前記賦形剤が、糖、糖アルコール、デンプン、デキストリン、粉末セルロース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム及び硫酸カルシウムからなる群から選ばれる請求項1又は請求項2に記載の錠剤の製造方法。
【請求項4】
前記崩壊剤が、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、部分アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロース及びクロスポビドンからなる群から選ばれる請求項1~3のいずれか1項に記載の錠剤の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理打錠工程の打錠が、滑沢剤を備えた杵及び/又は臼が装着された打錠機を用いる外部滑沢法に基づく請求項1~4のいずれか1項に記載の錠剤の製造方法。
【請求項6】
前記賦形剤が、糖及び/又は糖アルコールであり、前記崩壊剤が、ヒドロキシプロポキシ基の含有量が5~16質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1~5のいずれか1項に記載の錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品又は食品の固形製剤の剤形の一つである錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品又は食品の固形製剤の剤型の一つである錠剤は、粉体を一定の形状に圧縮成形した固形製剤であり、取り扱いが容易である等の利点を有する。特に医薬品分野においては全生産額に占める錠剤の比率は約50%と最も汎用されている。
【0003】
錠剤の製造方法としては、乾式直接打錠法、乾式造粒打錠法、押出造粒打錠法、湿式造粒打錠法等が挙げられる。中でも、湿式造粒打錠法は、活性成分と賦形剤等を混合してそのまま打錠する乾式直接打錠法と比較して工程が複雑であるが、造粒操作により粉体の結合性、流動性及び活性成分の含量均一性を大きく改善することができるため、国内外を問わず汎用される方法である。
湿式造粒打錠法は、活性成分と賦形剤等の混合物に対し、結合剤の溶液や水、エタノール等の適当な溶媒を噴霧又は添加して造粒後、乾燥し、得られた造粒物を打錠して錠剤を得る方法をいう。湿式造粒打錠法には、撹拌造粒機を用いる場合の湿式撹拌造粒打錠法と、流動層造粒機を用いる場合の流動層造粒打錠法とがある。
【0004】
湿式造粒打錠法において、結合剤の溶液を用いずに水やエタノール等の溶媒のみを用いて造粒を行うと、所定の錠剤硬度を有する錠剤が得られない場合やキャッピング、ラミネーティング、スティッキング等の打錠障害が発生する場合があるため、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の結合剤の溶液を用いて造粒を行うことが一般的である。しかし、錠剤硬度を増加させるために結合剤の添加量を増やすと、得られた錠剤の崩壊性が悪化する問題があった。
【0005】
そのため、高い錠剤硬度を有する錠剤を、結合剤の添加量を増やすことなく、また特殊な技術や機器を用いずに製造する方法の開発が望まれている。
例えば、特許文献1においては、(a)融解性結合剤、少なくとも1種の賦形剤、及び医薬的活性剤を組み合わせて錠剤に圧縮する工程、(b)前記結合剤を前記錠剤中で融解させる工程、及び(c)前記結合剤を凝固させる工程を含む、強度が増加した錠剤の製造方法が提案されている。
また、特許文献2においては、薬物と、稀釈剤と、前記薬物及び前記稀釈剤より相対的に融点の低い糖類であるエリスリトールとを含有してなる錠剤の製造法において、(a)薬物と、稀釈剤と、前記薬物及び前記稀釈剤より相対的に融点の低い糖類であるエリスリトールと、成形性の高い糖類及び/又は水溶性高分子である結合剤とを含む錠剤原料を錠剤の形状を維持するために必要な低圧で成形する工程、(b)工程(a)で得られた成形物を、エリスリトールが溶融する温度以上に加熱する工程、(c)工程(b)で加熱により得られた成形物を、溶融したエリスリトールが固化する温度以下に冷却する工程からなる口腔内速崩壊性錠剤の製造法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表平7-503237号公報
【文献】特開2004-292457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1においては、錠剤を空調設備が十分に整備されていない室内に保管した場合、主に夏季に室温が上昇して融解性結合剤が再融解することにより、錠剤硬度や崩壊時間が変化してしまう場合があった。また、特許文献2においては、エリスリトールの溶解とその固化によって、錠剤硬度の改善を試みているものの、崩壊時間が遅延してしまう場合があった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、錠剤の崩壊時間を遅延させることない、硬度及び/又は崩壊性に優れる錠剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、活性成分、賦形剤、及び崩壊剤から選ばれる一つ以上を少なくとも含む粉末組成物に対して、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選ばれる結合剤と水とを少なくとも含む水性組成物を添加しながら造粒を行い、得られた造粒物を加熱処理してから打錠する又は打錠してから加熱処理することにより、錠剤の崩壊時間を遅延させることなく、硬度及び/又は崩壊性に優れる錠剤を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明の1つの態様によれば、活性成分賦形剤崩壊剤からなる群から選ばれる一つ以上を少なくとも含む粉末組成物に対して、結合剤と水とを少なくとも含む水性組成物を添加しながら、造粒を行うことにより造粒物を得る造粒工程と、前記造粒物を40~80℃にて乾燥して水分量5.0質量%以下の乾燥された造粒物を得る乾燥工程と、前記乾燥された造粒物を、80℃を超えて180℃以下の加熱処理してから打錠することにより又は打錠してから80℃を超えて180℃以下の加熱処理することにより錠剤を得る熱処理打錠工程とを少なくとも含む錠剤の製造方法であって、前記結合剤が、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体からなる群から選ばれる錠剤の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、錠剤の崩壊時間を遅延させることなく、硬度及び/又は崩壊性に優れる高品質な錠剤を製造することができるため、錠剤の充填時や輸送時等において割れや欠けの発生を抑制でき、経口投与した際に速やかに薬効を発現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、錠剤の製造方法における活性成分、賦形剤、及び崩壊剤から選ばれる一つ以上を少なくとも含む粉末組成物に対して、結合剤と水とを少なくとも含む水性組成物を添加しながら、造粒を行うことにより造粒物を得る造粒工程について説明する。
粉末組成物は、活性成分、賦形剤、及び崩壊剤から選ばれる一つ以上を少なくとも含む。
活性成分としては、経口投与可能な活性成分であれば特に限定されるものではないが、医薬品に用いられる薬物、並びに栄養機能食品、特定保健用食品及び機能性表示食品等の健康食品に用いられる活性成分等が挙げられる。
医薬品に用いられる薬物としては、中枢神経系薬物、循環器系薬物、呼吸器系薬物、消化器系薬物、抗生物質、鎮咳・去たん剤、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛消炎剤、利尿剤、自律神経作用薬、抗マラリア剤、止潟剤、向精神剤、ビタミン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0011】
中枢神経系薬物としては、ジアゼパム、イデベノン、ナプロキセン、ピロキシカム、インドメタシン、スリンダック、ロラゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、アセトアミノフェン、エテンザミド、ケトプロフェン及びクロルジアゼポキシド等が挙げられる。
循環器系薬物としては、モルシドミン、ビンポセチン、プロプラノロール、メチルドパ、ジピリダモール、フロセミド、トリアムテレン、ニフェジビン、アテノロール、スピロノラクトン、メトプロロール、ピンドロール、カプトプリル、硝酸イソソルビト、塩酸デラプリル、塩酸メクロフェノキサート、塩酸ジルチアゼム、塩酸エチレフリン、ジギトキシン及び塩酸アルプレノロール等が挙げられる。
【0012】
呼吸器系薬物としては、アムレキサノクス、デキストロメトルファン、テオフィリン、プソイドエフェドリン、サルブタモール及びグアイフェネシン等が挙げられる。
消化器系薬物としては、2-[〔3-メチル-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)-2-ピリジル〕メチルスルフィニル]ベンゾイミダゾール及び5-メトキシ-2-〔(4-メトキシ-3,5-ジメチル-2-ピリジル)メチルスルフィニル〕ベンゾイミダゾール等の抗潰瘍作用を有するベンゾイミダゾール系薬物、シメチジン、ラニチジン、塩酸ピレンゼピン、パンクレアチン、ビサコジル及び5-アミノサリチル酸等が挙げられる。
【0013】
抗生物質としては、塩酸タランピシリン、塩酸バカンピシリン、セファクロル及びエリスロマイシン等が挙げられる。
鎮咳・去たん剤としては、塩酸ノスカピン、クエン酸カルベタペンタン、クエン酸イソアミニル及びリン酸ジメモルファン等が挙げられる。
抗ヒスタミン剤としては、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン及び塩酸プロメタジン等が挙げられる。
解熱鎮痛消炎剤としては、イブプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、フルフェナム酸、スルピリン、アスピリン及びケトプロフェン等が挙げられる。
【0014】
利尿剤としては、カフェイン等が挙げられる。
自律神経作用薬としては、リン酸ジヒドロコデイン及びdl-塩酸メチルエフェドリン、硫酸アトロピン、塩化アセチルコリン、ネオスチグミン等が挙げられる。
抗マラリア剤としては、塩酸キニーネ等が挙げられる。
止潟剤としては、塩酸ロペラミド等が挙げられる。
向精神剤としては、クロルプロマジン等が挙げられる。
ビタミン類及びその誘導体としては、ビタミンA、ビタミンB1、フルスルチアミン、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、パントテン酸カルシウム及びトラネキサム酸等が挙げられる。
【0015】
健康食品に用いられる活性成分としては、前記ビタミン類及びその誘導体、ミネラル、カロテノイド、アミノ酸及びその誘導体、植物エキス並びに健康食品素材等が挙げられる。
ミネラルとしては、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄、銅、セレン、クロム、硫黄、ヨウ素等が挙げられる。
カロテノイドとしては、β-カロチン、α-カロチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、リコペン、アスタキサンチン、マルチカロチン等が挙げられる。
【0016】
アミノ酸としては、酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸、中性アミノ酸及び酸性アミノ酸アミド等が挙げられる。
酸性アミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸等が挙げられる。
塩基性アミノ酸としては、リシン、アルギニン及びヒスチジン等が挙げられる。
中性アミノ酸としては、アラニン及びグリシン等の直鎖状の脂肪族アミノ酸、バリン、ロイシン及びイソロイシン等の分岐状の脂肪族アミノ酸、セリン及びトレオニン等のヒドロキシアミノ酸、システイン及びメチオニン等の含硫アミノ酸、フェニルアラニン及びチロシン等の芳香族アミノ酸、トリプトファン等の複素環式アミノ酸及びプロリン等のイミノ酸等が挙げられる。
酸性アミノ酸アミドとしては、アスパラギン及びグルタミン等が挙げられる。
アミノ酸誘導体としては、アセチルグルタミン、アセチルシステイン、カルボキシメチルシステイン、アセチルチロシン、アセチルヒドロキシプロリン、5-ヒドロキシプロリン、グルタチオン、クレアチン、S-アデノシルメチオニン、グリシルグリシン、グリシルグルタミン、ドーパ、アラニルグルタミン、カルニチン及びγ-アミノ酪酸等が挙げられる。
【0017】
植物エキスとしては、アロエ、プロポリス、アガリクス、高麗人参、イチョウ葉、ウコン、クルクミン、発芽玄米、椎茸菌糸体、甜茶、甘茶、メシマコブ、ごま、にんにく、マカ、冬虫夏草、カミツレ及びトウガラシ等が挙げられる。
健康食品素材としては、ローヤルゼリー、食物繊維、プロテイン、ビフィズス菌、乳酸菌、キトサン、酵母、グルコサミン、レシチン、ポリフェノール、動物魚介軟骨、スッポン、ラクトフェリン、シジミ、エイコサペンタエン酸、ゲルマニウム、酵素、クレアチン、カルニチン、クエン酸、ラズベリーケトン、コエンザイムQ10、メチルスルホニルメタン及びリン脂質結合大豆ペプチド等が挙げられる。
【0018】
活性成分の使用量は、後述する錠剤中における活性成分の含量に応じて定めることができる。活性成分は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。また、活性成分は、市販のものを用いることができる。
【0019】
賦形剤としては、白糖、乳糖、グルコース、マルトース等の糖、D-マンニトール、ソルビトール、マルチトール等の糖アルコール、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、デキストリン、粉末セルロース、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム及び硫酸カルシウム等が挙げられる。
賦形剤の使用量は、後述する錠剤中における活性成分の含量に応じて定めることができる。賦形剤は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。また、賦形剤は、市販のものを用いることができる。
【0020】
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン等のデンプン、部分アルファー化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロース及びクロスポビドン等が挙げられる。
低置換度ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシ基の含有量は、崩壊性の観点から、好ましくは5~16質量%、より好ましくは7~15質量%である。低置換度ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシ基の含有量は、第十七改正日本薬局方の「低置換度ヒドロキシプロピルセルロース」の項に収載された定量法によって測定することができる。
崩壊剤の使用量は、目的とする錠剤中における崩壊剤の含量に応じて定めることができる。崩壊剤は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。また、崩壊剤は、市販のものを用いることができる。
【0021】
水性組成物は、結合剤と水とを少なくとも含む。
結合剤は、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、及び酢酸ビニル樹脂・ビニルピロリドン共重合体からなる群から選ばれる。
上述の結合剤は、好ましくは25~180℃の範囲において、融点を有さない固体の結合剤であり、好ましくは80℃を超える温度において、軟化性を発現したり、結合剤の結晶構造における配向性(結晶性)が変化することにより、錠剤における硬度や崩壊性が改善されたと推察される。
【0022】
ポリビニルアルコールにおけるけん化度は、水への溶解性の観点から、好ましくは78.0モル%以上、より好ましくは85.0~99.5モル%である。ポリビニルアルコールにおけるけん化度は、JIS K6726に記載のけん化度測定方法に従い測定することができる。
ポリビニルアルコールにおける4質量%水溶液の20℃における粘度は、結合性と崩壊性の観点から、好ましくは2.0~100.0mPa・s、より好ましくは3.0~50.0mPa・sである。ポリビニルアルコールにおける4質量%水溶液の20℃における粘度は、JIS K6726に記載の粘度測定方法に従い測定することができる。
【0023】
ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシ基の含有量は、特に制限されないが、好ましくは53.4~80.5%、より好ましくは55.0~75.0%である。ヒドロキシプロピルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシ基の含有量は、第十七改正日本薬局方の「ヒドロキシプロピルセルロース」の項に記載の定量法によって測定することができる。
【0024】
ポリビニルピロリドンにおけるK値は、特に制限されないが、好ましくは10~120、より好ましくは15~100である。ポリビニルピロリドンにおけるK値は、第十七改正日本薬局方の「ポビドン」の項に記載のK値測定法によって測定することができる。
【0025】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおけるメトキシ基の含有量は、特に制限されないが、好ましくは16.5~30.0質量%、より好ましくは19.0~30.0質量%である。ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおけるヒドロキシプロポキシ基の含有量は、特に制限されないが、好ましくは4.0~32.0%、より好ましくは4.0~12.0質量%である。ヒドロキシプロピルメチルセルロースにおけるメトキシ基及びヒドロキシプロポキシ基の含有量は、第十七改正日本薬局方の「ヒプロメロース」の項に記載の定量法によって測定することができる。
ヒドロキシプロピルメチルセルロースの2質量%水溶液の20℃における粘度は、結合性と崩壊性の観点から、好ましくは2.0~100.0mPa・s、より好ましくは3.0~50.0mPa・sである。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの2質量%水溶液の20℃における粘度は、第十七改正日本薬局方の「ヒプロメロース」の項に記載の粘度測定法によって測定することができる。
【0026】
メチルセルロースにおけるメトキシ基の含有量は、特に制限されないが、好ましくは26.0~33.0質量%である。メチルセルロースにおけるメトキシ基の含有量は、第十七改正日本薬局方の「メチルセルロース」の項に記載の定量法によって測定することができる。
メチルセルロースの2質量%水溶液の20℃における粘度は、結合性と崩壊性の観点から、好ましくは2.0~100.0mPa・s、より好ましくは3.0~50.0mPa・sである。メチルセルロースの2質量%水溶液の20℃における粘度は、第十七改正日本薬局方の「メチルセルロース」の項に記載の粘度測定法によって測定することができる。
【0027】
カルボキシメチルセルロースナトリウムにおけるナトリウムの含有量は、特に制限されないが、好ましくは6.5~8.5質量%である。カルボキシメチルセルロースナトリウムにおけるナトリウムの含有量は、第十七改正日本薬局方の「カルボキシメチルセルロースナトリウム」の項に記載の定量法によって測定することができる。
【0028】
結合剤としては、崩壊時間の改善効果の観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0029】
結合剤は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。また、結合剤は、市販のものを用いることができる。結合剤の使用量は、錠剤中の含量として後述する。
【0030】
水としては、精製水等が挙げられる。
水の使用量は、特に制限されないが、生産性及び操作性の観点から、結合剤100質量部に対して、好ましくは200~100000質量部、より好ましくは400~75000質量部である。
【0031】
水性組成物には、必要に応じて、活性成分、賦形剤、崩壊剤、添加剤を含めてもよい。また、粉末組成物には、必要に応じて、添加剤を含めてもよい。
添加剤としては、香料、甘味料、流動化剤、及び活性成分の溶解補助剤等が挙げられる。
香料としては、メントール、ハッカ油及びバニリン等が挙げられる。
甘味料としては、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ステビア及びソーマチン等が挙げられる。
流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。
活性成分の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸及びアジピン酸等の有機酸等又はそれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。
添加剤は、必要に応じて2種類以上を併用して用いてもよい。また、添加剤は、市販のものを用いることができる。添加剤の使用量は、錠剤中の含量として後述する。
【0032】
造粒工程は、造粒機を用いることにより行うことができる。造粒機としては、流動層造粒機、撹拌造粒機、転動流動層造粒機、噴霧乾燥造粒機等が挙げられる。
流動層造粒機を使用した場合を例に造粒操作について説明すると、流動層造粒機に活性成分、賦形剤、及び崩壊剤から選ばれる一つ以上を少なくとも含む粉末組成物を仕込み、所定の結合剤と水とを少なくとも含む水性組成物を添加(好ましくは噴霧)しながら、造粒を行うことにより造粒物を得ることができる。
例えば、賦形剤として糖及び/又は糖アルコールを含み、且つ崩壊剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が5~16質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む造粒物は、糖及び/又は糖アルコールを少なくとも含む粉末組成物に対して、所定の結合剤と、水と、糖及び/又は糖アルコールと、ヒドロキシプロポキシ基の含有量が5~16質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを少なくとも含む水性組成物を添加しながら、造粒を行うことにより造粒物を得る造粒工程により得ることができる。水性組成物の糖及び/又は糖アルコールは、造粒物の内部のみならず表面にも存在するが、表面での存在は表面の改質に寄与できる。別の例では、糖及び/又は糖アルコールと、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースとを少なくとも含む粉末組成物に対して、所定の結合剤と、水とを少なくとも含む水性組成物を添加しながら、造粒を行うことにより造粒物を得る造粒工程により得ることができる。
【0033】
造粒物の平均粒子径は、造粒条件により異なるが、打錠性や錠剤の質量ばらつきの観点から、好ましくは40~300μm、より好ましくは45~250μmである。造粒物の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(マスターサイザー3000、Malvern社製)を用いて、Fraunhofer回折理論により、乾式法にて、分散圧2bar、散乱強度2~10%の条件で、体積基準の累積粒度分布曲線の50%累積値に相当する径を測定できる。
【0034】
得られた造粒物は、噴霧と乾燥を同時に行うことができる流動層造粒機を用いて乾燥を行った場合にはさらに乾燥する必要はないが、乾燥を行なわかった場合や乾燥を行うことができない造粒機を使用した場合は、公知の方法により乾燥を行うことが好ましい。
乾燥は、乾燥機(乾燥器)を用いて行うことができる。乾燥機(乾燥器)としては、流動層乾燥機、気流乾燥機、箱型乾燥機、振動乾燥機、自然対流式定温乾燥器、送風定温乾燥器、送風定温恒湿器等が挙げられる。乾燥温度は、好ましくは40~80℃である。
乾燥後の造粒物の水分量は、錠剤の安定性の観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは0.0~1.0質量%である。造粒物の水分量は、加熱乾燥式水分計(MX-50、エー・アンド・デイ社製)を用いて、造粒物の仕込み量5g、加熱温度105℃、加熱時間60分間の条件で測定できる。
【0035】
次に、錠剤の製造方法における前記造粒物を加熱処理してから打錠することにより錠剤を得る又は打錠してから加熱処理することにより錠剤を得る熱処理打錠工程について説明する。
必要に応じて、造粒物は、打錠末に変換してもよい。打錠末は、加熱処理後又は加熱処理前の造粒物に、活性成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、添加剤及び後述する滑沢剤の少なくとも一つを混合する工程により得ることができる。なお、造粒物に結合剤を添加することにより、打錠末を打錠する際の成形性を高めることが期待される。加熱処理後の造粒物を用いた混合工程後は、打錠により錠剤を得ることができ、加熱処理前の造粒物を用いた混合工程後は、打錠してからの加熱処理により錠剤を得ることができる。混合方法は、特に制限されないが、混合機を用いて行うことができる。混合機としては、V型混合機、リボン型混合機、コンテナー型混合機、タンブラー型混合機等が挙げられる。
造粒物に他に添加するものがない場合は、造粒物が打錠末となる。
【0036】
加熱処理は、乾燥機(乾燥器)を用いて行うことができる。乾燥機(乾燥器)としては、流動層乾燥機、気流乾燥機、箱型乾燥機、振動乾燥機、自然対流式定温乾燥器、送風定温乾燥器、送風定温恒湿器等が挙げられる。送風定温乾燥器を用いた場合を例に加熱処理の方法について説明すると、バット等の容器に造粒物(打錠末)又は錠剤を入れ、それを所定の温度に内温を設定した送風定温乾燥器内で所定の時間静置することにより加熱処理を行うことができる。
加熱処理における温度は、錠剤硬度と崩壊時間の改善効果の観点から、好ましくは80℃を超える温度、より好ましくは80℃を超えて180℃以下、更に好ましくは95~180℃、更により好ましくは115~170℃、特に好ましくは135~160℃である。加熱処理を行う時間は、錠剤硬度と崩壊時間の改善の観点から、好ましくは5分間以上、より好ましくは5~120分間、更に好ましくは10~90分間である。
なお、造粒物を加熱処理する場合は、造粒後の乾燥を行った後、乾燥機から取り出すことなく同じ乾燥機中で加熱処理を行ってもよく、造粒物の乾燥と加熱処理を同時に行ってもよい。
【0037】
打錠前の加熱処理を行った打錠末、又は打錠してから加熱処理を行った錠剤は、好ましくは20~40℃まで放冷することが好ましい。加熱処理を行った造粒物(打錠末)又は錠剤の温度は、ポータブル型非接触温度計(PT-3LF、OPTEX社製)を用いて測定できる。
放冷する方法は、特に限定されず、室温下静置してもよく、冷蔵庫等の低温環境下で行ってもよい。また、吸湿を避けるためにデシケーター内や密封容器内で行ってもよい。
加熱処理は、錠剤硬度の改善効果の観点から、打錠してから加熱処理を行うことが好ましい。
【0038】
打錠は、打錠機を用いて行うことができる。打錠機としては、ロータリー式打錠機、単発式打錠機等が挙げられる。熱処理打錠工程のうちの打錠段階は、滑沢剤を用いて行われても良いし、滑沢剤を用いずに行われても良いが、打錠障害を防止する観点から、滑沢剤を用いて行われることが好ましい。
【0039】
滑沢剤の添加方法(以下、「滑沢方法」とも記載する。)としては、内部滑沢法又は外部滑沢法を選択できる。
内部滑沢法は、滑沢剤を含む打錠末を用いて、打錠末接触部に滑沢剤を備えない杵及び臼が装着された打錠機を使用する方法である。一方、外部滑沢法は、滑沢剤を含まない打錠末又は造粒物を用いて、打錠末接触部に滑沢剤を備えた杵及び/又は臼が装着された打錠機を使用する方法である。滑沢方法は、錠剤硬度と崩壊時間の改善効果の観点から、外部滑沢法が好ましい。
【0040】
内部滑沢法を用いて錠剤を製造する場合においては、滑沢剤を含む打錠末をロータリー式打錠機、単発式打錠機等の打錠機を用いて、打錠末を打錠末接触部に滑沢剤を備えない臼へ充填し、上下の打錠末接触部に滑沢剤を備えない杵により所定の圧力で圧縮することにより錠剤を製造できる。
外部滑沢法を用いて錠剤を製造する場合においては、滑沢剤を含まない打錠末又は造粒物を、外部滑沢噴霧システム(ELS-P1、菊水製作所製)を接続したロータリー式打錠機等を用いて、打錠機にセットした打錠末(又は造粒物)接触部に滑沢剤を備えた臼に充填し、上下の打錠末(又は造粒物)接触部に滑沢剤を備えた杵により所定の圧力で圧縮することにより錠剤を製造できる。杵及び臼における打錠末接触部に滑沢剤を備える方法としては、滑沢剤の噴霧や塗布等が挙げられる。
【0041】
滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、パラフィン及びカルナウバロウ等のワックス類及びヒマシ硬化油、菜種硬化油及び牛脂硬化油等の硬化油等が挙げられる。
内部滑沢法にて滑沢剤を使用する場合における滑沢剤の使用量は、打錠障害の抑制、崩壊性及び錠剤硬度と崩壊時間の改善効果の観点から、滑沢剤を含まない錠剤(造粒物又は打錠末)質量100質量部に対して、好ましくは0.2~5.0質量部、より好ましくは0.4~3.0質量部である。
外部滑沢法にて滑沢剤を使用する場合における滑沢剤の使用量は、打錠障害の抑制、崩壊性及び錠剤硬度と崩壊時間の改善効果の観点から、滑沢剤を含まない錠剤(造粒物又は打錠末)質量100質量部に対して、好ましくは0.01~2.0質量部、より好ましくは0.05~1.0質量部である。
打錠時の打錠圧は、錠剤硬度及び打錠障害の観点から、20~400MPaが好ましい。
【0042】
錠剤中における活性成分の含有量は、特に制限されないが、薬効もしくは効能の観点から、好ましくは0.01~98.90質量%である。
錠剤中における賦形剤の含有量は特に制限されないが、錠剤の硬度と崩壊時間を制御する観点から、好ましくは0.00~98.89質量%、より好ましくは0.00~95.00である。
錠剤中における崩壊剤の含有量は、崩壊性、保存安定性の観点から、好ましくは1.0~40.0質量%、より好ましくは2.0~30.0質量%、更に好ましくは2.0~20.0質量%である。
錠剤中における結合剤の含有量は、結合性と崩壊性及び錠剤硬度と崩壊時間の改善効果の観点から、好ましくは0.10~10.00質量%、より好ましくは0.10~6.00質量%、更に好ましくは0.15~5.00質量%である。
錠剤中における添加剤の含有量は、特に制限されないが、錠剤の風味を制御、打錠末の流動性を制御又は活性成分の溶出性を制御する観点から、好ましくは0~10質量%である。
活性成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び添加剤は、上述の錠剤中における含有量の範囲において、粉末組成物、水性組成物のいずれに含めてもよいし、造粒物を得てから、任意に活性成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤及び添加剤を混合して含めてもよい。また、結合剤を水性組成物のみならず、粉末組成物に含めて造粒を行ってもよい。粉末組成物に対して、結合剤と水とを少なくとも含む水性組成物を添加しながら造粒を行い、得られた造粒物を打錠して錠剤を得ることができるからである。
【0043】
錠剤径としては、取り扱い性及び服用性の観点から、好ましくは6~12mmである。
錠剤質量としては、一錠あたり、好ましくは70~700mgである。
錠剤の硬度は、充填時、輸送時又はPTPシートから錠剤を取り出す際に、割れや欠け等を防ぐ観点から、好ましくは50N以上、より好ましくは80~250Nである。錠剤硬度は、錠剤硬度計(TBH-125、ERWEKA製)を用いて、錠剤の直径方向に1mm/秒の速度で荷重をかけ、錠剤が破断したときの最大破断強度として測定できる。
錠剤の崩壊時間は、薬効発現の観点から、好ましくは5分以内、より好ましくは3分以内、更に好ましくは1分以内である。錠剤の崩壊時間は、第十七改正日本薬局方の崩壊試験法(試験液:水、補助盤なし)に従い、崩壊試験器(NT-400、富山産業製)を用いて測定できる。
【実施例
【0044】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
実施例1
精製水144gに結合剤としてけん化度が98.5モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであるポリビニルアルコール(JF-05、日本酢ビ・ポバール社製)6gを溶解し、水性組成物(以下、「バインダー水溶液」とも記載する。)を調製した。
次に、活性成分としてアセトアミノフェン(微粉グレード、山本化学工業社製)60g及び賦形剤としてD-マンニトール(PEARLITOL25C、Roquette社製)219gを流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に仕込み、流動エアー量0.6~0.7m/minにて混合することにより、粉末組成物を得た。
そして、同一装置内において、給気温度80℃、排気温度35~38℃、流動エアー量0.6~0.7m/min、スプレー速度10g/min、スプレーエアー圧200kPaの条件のもとで上記のバインダー水溶液を噴霧しながら、造粒を行うことにより、造粒物を得た。得られた造粒物の平均粒子径は77μmであり、水分量は0.3%であった。
次に、得られた造粒物228gに崩壊剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が11質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース12gを添加し、混合して打錠末を得た。
そして、直径8mm、曲率半径12mmの杵及び穴径8mmの臼をセットした卓上錠剤成形機(単発式打錠機、HANDTAB-100、市橋精機社製)を用いて、杵及び臼表面(粉が接する面)に滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(植物性グレード、太平化学産業社製)を少量付着させた綿棒を用いて塗布した後、打錠末200mgを充填し、打錠圧5.0kN(約99.5MPa)で打錠を行い、質量200.2mgの錠剤状打錠物を得た(外部滑沢法)。
続いて、得られた錠剤状打錠物を錠剤状打錠物同士が重ならないようにシャーレ上に並べ、送風定温恒湿器(DKN402、ヤマト科学社製)中100℃にて60分間加熱処理を行った後、室温のデシケーター内で錠剤の温度が25℃になるまで静置して放冷し、錠剤を製造した。得られた錠剤の錠剤硬度及び崩壊時間を測定した。錠剤の組成、錠剤硬度及び崩壊時間を表1~2に示す。なお、実施例1における変化率は、比較例1に対する変化率である。
【0045】
実施例2
錠剤状打錠物の加熱処理における温度を120℃にした以外は、実施例1と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例2における変化率は、比較例1に対する変化率である。
【0046】
実施例3
錠剤状打錠物の加熱処理における温度を140℃にした以外は、実施例1と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例3における変化率は、比較例1に対する変化率である。
【0047】
実施例4
錠剤状打錠物の加熱処理における時間を10分間にした以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例4における変化率は、比較例1に対する変化率である。
【0048】
実施例5
錠剤状打錠物の加熱処理における時間を30分間にした以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例5における変化率は、比較例1に対する変化率である。
【0049】
実施例6
実施例1と同様の方法にて得た造粒物を、ステンレス製のバットに薄く広げ、送風定温恒湿器(DKN402、ヤマト科学社製)中140℃にて60分間加熱処理を行った後、室温のデシケーター内で造粒物の温度が25℃になるまで静置して放冷し、加熱処理された造粒物を得た。
得られた加熱処理された造粒物228gに崩壊剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が11質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース12gを添加し、混合して打錠末を得た。
そして、実施例1と同様の方法にて打錠を行ったが、打錠後の熱処理を行うことなく、錠剤質量200.2mgの錠剤を製造した。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例6における変化率は、比較例1に対する変化率である。
【0050】
実施例7
実施例1と同様の方法にて得た造粒物228gに崩壊剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が11質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース12gを添加し、混合した後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(植物性グレード、太平化学産業社製)1.2gを添加し、混合して打錠末を得た。
そして、直径8mm、曲率半径12mmの杵及び穴径8mmの臼をセットした卓上錠剤成形機(単発式打錠機、HANDTAB-100、市橋精機製)を用いて、打錠末201mgを充填し、打錠圧5.0kN(約99.5MPa)で打錠を行い、錠剤質量201mgの錠剤状打錠物を得た(内部滑沢法)。
続いて、得られた錠剤状打錠物を送風定温恒湿器(DKN402、ヤマト科学社製)中140℃にて60分間加熱処理した後、室温のデシケーター内で錠剤の温度が25℃になるまで静置して放冷し、錠剤を製造した。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例7における変化率は、比較例2に対する変化率である。
【0051】
実施例8
実施例1と同様の方法にて得た造粒物を、送風定温恒湿器(DKN402、ヤマト科学社製)中140℃にて60分間加熱処理した後、室温のデシケーター内で造粒物の温度が25℃になるまで静置して放冷し、加熱処理された造粒物を得た。
加熱処理された造粒物228gに崩壊剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が11質量%である低置換度ヒドロキシプロピルセルロース12gを添加し、混合した後、滑沢剤としてステアリン酸マグネシウム(植物性グレード、太平化学産業社製)1.2gを混合して打錠末を得た。
そして、実施例7と同様の方法にて打錠を行ったが、打錠後の熱処理を行うことなく、錠剤質量201mgの錠剤を製造した(内部滑沢法)。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例8における変化率は、比較例2に対する変化率である。
【0052】
実施例9
精製水147gにけん化度が98.5モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであるポリビニルアルコール3gを溶解してバインダー水溶液を調製し、流動層造粒装置へのD-マンニトールの仕込み量を222gにした以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた造粒物の平均粒子径は57μmであり、水分量は0.3%であった。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例9における変化率は、比較例3に対する変化率である。
【0053】
実施例10
精製水141gにけん化度が98.5モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであるポリビニルアルコール9gを溶解してバインダー水溶液を調製し、流動層造粒装置へのD-マンニトールの仕込み量を216gにした以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた造粒物の平均粒子径は106μmであり、水分量は0.3%であった。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例10における変化率は、比較例4に対する変化率である。
【0054】
実施例11
結合剤としてけん化度が88.0モル%であり、4質量%水溶液の20℃における粘度が5.0mPa・sであるポリビニルアルコール(JP-05、日本酢ビ・ポバール社製)6gを使用してバインダー水溶液を調製した以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた造粒物の平均粒子径は83μmであり、水分量は0.3%であった。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例11における変化率は、比較例5に対する変化率である。
【0055】
実施例12
D-マンニトールを使用せず、流動エアー量0.6~0.7m/minにて混合することを行わなかったこと以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた造粒物の平均粒子径は87μmであり、水分量は0.2%であった。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例12における変化率は、比較例6に対する変化率である。
【0056】
実施例13
活性成分としてテオフィリン(白鳥製薬社製)60gを使用し、D-マンニトールの仕込み量を219gとした以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた造粒物の平均粒子径は79μmであり、水分量は0.2%であった。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例13における変化率は、比較例7に対する変化率である。
【0057】
実施例14
得られた造粒物228gに崩壊剤としてデンプングリコール酸ナトリウム(Primojel、DFE Pharma社製)12gを添加し、混合した以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例14における変化率は、比較例8に対する変化率である。
【0058】
実施例15
得られた造粒物228gに崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol、FMC社製)12gを添加し、混合した以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例15における変化率は、比較例9に対する変化率である。
【0059】
実施例16
結合剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロース(メトキシ基の含有量:29.0質量%、ヒドロキシプロポキシ基の含有量:9.0質量%、2質量%水溶液の20℃における粘度:6.0mPa・s)を6g使用してバインダー水溶液を調製した以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。なお、得られた造粒物の平均粒子径は58μmであり、水分量は0.3%であった。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した結果を表1~2に示す。なお、実施例16における変化率は、比較例10に対する変化率である。
【0060】
実施例17
結合剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が64質量%であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達製)を6g使用してバインダー水溶液を調製した以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。なお、得られた造粒物の平均粒子径は63μmであり、水分量は0.2%であった。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例17における変化率は、比較例11に対する変化率である。
【0061】
実施例18
結合剤としてK値が30であるポリビニルピロリドン(K30、和光純薬社製)を6g使用してバインダー水溶液を調製した以外は、実施例3と同様の方法にて錠剤を製造した。なお、得られた造粒物の平均粒子径は48μmであり、水分量は0.2%であった。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例18における変化率は、比較例12に対する変化率である。
【0062】
実施例19
精製水499.2gに結合剤としてけん化度が98.5モル%、4質量%水溶液の20℃における粘度が30.0mPa・sであるポリビニルアルコール(JF-10、日本酢ビ・ポバール社製)0.8g及び賦形剤としてD-マンニトール(PEARLITOL25C、Roquette社製)60gを溶解した後、崩壊剤としてヒドロキシプロポキシ基の含有量が8質量%の低置換度ヒドロキシプロピルセルロース40gを添加し、混合することにより、水分散液である水性組成物を調製した。
次に、賦形剤としてD-マンニトール(PEARLITOL25C、Roquette社製)299.2gを流動層造粒機に仕込み、給気温度60℃、排気温度25~28℃、流動エアー量0.6~0.7m/min、スプレー速度12g/min、スプレーエアー圧150kPaの条件のもとで上記の水分散液を噴霧しながら、造粒を行うことにより、造粒物を得た。得られた造粒物の平均粒子径は61μmであり、水分量は0.5%であった。
次に、得られた造粒物192gに活性成分としてアセトアミノフェン(微粉グレード、山本化学工業社製)48gを添加し、混合して打錠末を得た後、実施例1と同様の方法にて打錠を行い、錠剤質量200.2mgの加熱処理に付す錠剤状打錠物を製造した。
続いて、得られた錠剤状打錠物を送風定温恒湿器(DKN402、ヤマト科学社製)中140℃にて60分間加熱した後、デシケーター内で錠剤の温度が25℃になるまで静置して放冷し、錠剤を製造した。得られた錠剤の錠剤硬度と崩壊時間を実施例1と同様の方法にて測定した。結果を表1~2に示す。なお、実施例19における変化率は、比較例13に対する変化率である。
【0063】
比較例1
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例1と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0064】
比較例2
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例7と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0065】
比較例3
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例9と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0066】
比較例4
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例10と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0067】
比較例5
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例11と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0068】
比較例6
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例12と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0069】
比較例7
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例13と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0070】
比較例8
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例14と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0071】
比較例9
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例15と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0072】
比較例10
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例16と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0073】
比較例11
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例17と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0074】
比較例12
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例18と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0075】
比較例13
錠剤状打錠物に対して加熱処理を行わない以外は実施例19と同様の方法にて錠剤を製造し、同様の方法にて錠剤硬度と崩壊時間を測定した。結果を表1~2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
外部滑沢法にて滑沢剤を添加し錠剤状打錠物を得た後、加熱処理を行わずに錠剤状打錠物をそのまま錠剤として用いる比較例1と比較して、外部滑沢法にて滑沢剤を添加し錠剤状打錠物を得た後、錠剤状打錠物に対し加熱処理を行い錠剤として用いる実施例1~5では、錠剤硬度が増加し、かつ崩壊時間が短縮し、錠剤硬度と崩壊時間の両方が改善した。そして、実施例1~3より、加熱処理における温度が高いほど錠剤硬度と崩壊時間の改善効果が大きいことが分かり、実施例3~5より、加熱処理における時間が長いほど錠剤硬度の改善効果が大きいことが知見された。
更に、内部滑沢法にて滑沢剤を添加し錠剤状打錠物を得た後、錠剤状打錠物に対し加熱処理を行い錠剤として用いる実施例7においても、錠剤硬度と崩壊時間の両方が改善した。
実施例3及び7から、錠剤状打錠物に対して加熱処理を行う場合は、内部滑沢法よりも外部滑沢法の方が錠剤硬度と崩壊時間のいずれについてもより高い改善効果を示した。
また、造粒物に対して加熱処理を行った後に外部滑沢法にて滑沢剤を添加して錠剤状打錠物を得て、加熱処理を行わずに錠剤状打錠物をそのまま錠剤として用いる実施例6、造粒物に対して加熱処理を行った後に内部滑沢法にて滑沢剤を添加し打錠末、打錠末から錠剤状打錠物を得た後、加熱処理を行わずに錠剤状打錠物をそのまま錠剤として用いる実施例8では、いずれも錠剤硬度を維持したまま、崩壊時間を改善することができた。
【0079】
錠剤状打錠物中では、所定の結合剤と活性成分、賦形剤、崩壊剤等の粉体が圧密され接触した状態となっている。そのため、錠剤状打錠物を加熱処理した場合は所定の結合剤が軟化して接触している粉体との接着面積が増加してより強固に結合することにより、錠剤硬度が増加したと考えられる(実施例1~5、7、9~19)。一方、造粒物を加熱する場合は、所定の結合剤と粉体の間の空隙が多いため強固な結合を形成できず、錠剤硬度が増加する効果は得られなかったと考えられる(実施例6、8)。
また、一般的に、錠剤が吸水する際に所定の結合剤が溶解して粘度が発現することにより導水性が悪化して崩壊時間は遅延する。結合剤としてポリビニルアルコールを使用した実施例1~15及び19では、錠剤又は造粒物の加熱処理によってポリビニルアルコールが軟化後、結晶性が増加して水への溶解性が低下したことにより、粘度発現が抑制され、崩壊時間が短縮したと考えられる。一方、ポリビニルアルコール以外の結合剤を使用した実施例16、17及び18では、錠剤の加熱処理による所定の結合剤の軟化後に結晶性の変化が生じないため、水への溶解性が維持され、崩壊時間が維持されたと考えられる。
【0080】
内部滑沢法にて滑沢剤を添加し得られた錠剤に対して加熱処理を行う場合は、滑沢剤が錠剤内部に含まれるため、加熱処理によって滑沢剤が錠剤内部に広く展延することにより錠剤の疎水性が増加して崩壊時間の改善効果が阻害されると考えられる(実施例7)。一方、外部滑沢法にて得られた錠剤に対して加熱処理を行う場合は、滑沢剤が錠剤内部に含まれないため、上記阻害効果が生じなかったと考えられる(実施例3)。
また、造粒物に対して加熱処理を行った後に打錠する場合は、内部滑沢法、外部滑沢法のいずれの滑沢方法で滑沢剤を添加しても滑沢剤は加熱されないため、上記阻害効果が生じなかったと考えられる(実施例6、8)。
【0081】
実施例9~11から、所定の結合剤の添加量及びポリビニルアルコールのけん化度によらず錠剤硬度と崩壊時間の両方が改善されることが分かる。また、賦形剤を含まない実施例12、異なる活性成分を用いた実施例13、及び異なる崩壊剤を用いた実施例14、15において錠剤硬度と崩壊時間の改善効果を示したことから、上記改善効果は賦形剤、活性成分、崩壊剤によりもたらされるものではなく、所定の結合剤を含む造粒物又は錠剤に対する加熱処理によりもたらされたと考えられる。
【0082】
所定の結合剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた実施例16、ヒドロキシプロピルセルロースを用いた実施例17、及びポリビニルピロリドンを用いた実施例18では、いずれも崩壊時間を維持したまま錠剤硬度が増加していることが分かり、ポリビニルアルコールは錠剤硬度も崩壊時間も改善される点で優れる。
実施例19から、賦形剤、所定の結合剤及び崩壊剤の複合造粒物に対して活性成分を添加した場合も錠剤硬度と崩壊時間の改善効果を示すことが分かる。