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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】モルタルの製造方法と製造装置
(51)【国際特許分類】
   B28C 7/06 20060101AFI20220922BHJP
   B28C 5/42 20060101ALI20220922BHJP
   B60P 3/16 20060101ALI20220922BHJP
   E01C 19/12 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B28C7/06
B28C5/42
B60P3/16
E01C19/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021087203
(22)【出願日】2021-05-24
(62)【分割の表示】P 2016200241の分割
【原出願日】2016-10-11
(65)【公開番号】P2021120229
(43)【公開日】2021-08-19
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】590002482
【氏名又は名称】株式会社NIPPO
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515114809
【氏名又は名称】株式会社トウザキ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】丑久保 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】小堺 規行
(72)【発明者】
【氏名】東▲崎▼ 匡
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-139309(JP,U)
【文献】特開2015-123693(JP,A)
【文献】特開昭61-217214(JP,A)
【文献】特開平09-216217(JP,A)
【文献】特開2006-175715(JP,A)
【文献】中国実用新案第202805412(CN,U)
【文献】特開平5-208412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
B60P 3/16
E01C 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジテータ車のミキシングドラムに給水管を介して水を供給する工程と、
前記ミキシングドラムへの給水終了後に、前記ミキシングドラムを回転させた状態で、圧送装置を用いてセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を前記ミキシングドラム内に供給する工程と、
前記水とセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体とを混練する工程と、を備え、
投入口を通して前記ミキシングドラム内の中央付近に延びる導入を備えており、前記導入を通してセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を前記ミキシングドラム内に供給するようにし、
前記導入の吐出口の許容設置範囲は、
前記ミキシングドラムの側面視における前記ミキシングドラムの回転軸線方向の一端部から他端部までの全長をLとし、
平面視における前記ミキシングドラムの最大幅をWとすると、
回転軸線方向ではその中心点から両側にそれぞれL/4の長さの範囲内とされ、かつ、幅方向では回転軸線から両側にW/4の範囲内とされていることを特徴とするモルタルの製造方法。
【請求項2】
アジテータ車のミキシングドラムを回転させる工程と、
前記ミキシングドラムを回転させた状態で、給水管を介してを供給すると同時に、セメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を前記アジテータ車のミキシングドラムに圧送装置を用いて供給する工程と、
前記水とセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体とを混練する工程と、を備え、
投入口を通して前記ミキシングドラム内の中央付近に延びる導入を備えており、前記導入を通してセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を前記ミキシングドラム内に供給するようにし、
前記導入の吐出口の許容設置範囲は、
前記ミキシングドラムの側面視における前記ミキシングドラムの回転軸線方向の一端部から他端部までの全長をLとし、
平面視における前記ミキシングドラムの最大幅をWとすると、
回転軸線方向ではその中心点から両側にそれぞれL/4の長さの範囲内とされ、かつ、幅方向では回転軸線から両側にW/4の範囲内とされていることを特徴とするモルタルの製造方法。
【請求項3】
前記水を供給する給水管に流量計を設置し、該流量計によって水の供給量を計測するようにした請求項1または2に記載されたモルタルの製造方法。
【請求項4】
前記セメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を貯留して前記ミキシングドラムに供給する粉体供給手段に重量計を設置し、該重量計によって前記セメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体の供給量を計測するようにした請求項1からのいずれか1項に記載されたモルタルの製造方法。
【請求項5】
回転可能なミキシングドラムを備えたアジテータ車と、
前記ミキシングドラムに水を供給する給水手段と、
回転する前記ミキシングドラムにセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を供給する圧送装置を備えた粉体供給手段と、
前記ミキシングドラムの内部に吐出口を有していて前記粉体供給手段から供給される前記セメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体をミキシングドラム内に吐出する導入と、を備え、
前記ミキシングドラム内に水を供給した後、或いは水の供給と同時に前記セメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を前記導入を通して前記ミキシングドラム内に吐出して混練するように構成され、
前記導入の前記吐出口は、
前記ミキシングドラムの側面視における前記ミキシングドラムの回転軸線方向の一端部から他端部までの全長をLとし、
平面視における前記ミキシングドラムの最大幅をWとすると、
回転軸線方向ではその中心点から両側にそれぞれL/4の長さの範囲内、かつ、幅方向では回転軸線から両側にW/4の範囲内に設けられていることを特徴とするモルタルの製造装置。
【請求項6】
前記導入管は、前記アジテータ車の形状に合わせて長手方向中間部分で屈曲または湾曲している請求項5に記載されたモルタルの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半たわみ性舗装等の施工に用いるセメントミルクを含むモルタルの製造方法と製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空隙率の大きな開粒度タイプのアスファルト舗装体の空隙にセメントミルクを浸透させて硬化させたものを半たわみ性舗装という。半たわみ性舗装はアスファルト舗装の路面を強固にする工法の1つであり、路面に轍等の跡が付き難いように例えば交通量の多い道路や重量物の多い駐車場やコンテナヤード等に設置される。
半たわみ性舗装の施工時に、一般にセメントミルクの製造は施工場所付近で行われる。例えば、セメントミルクの主な製造方法として、セメントと水を大型のポリバケツ内に入れてハンドミキサー等の撹拌機を用いて人力によって混練する製造方法が行われている。 工場で製造したセメントミルクを大きなタンクローリー車に充填して現場まで運搬する方法もあるが、コスト高であった。
【0003】
また、他のセメントミルク製造方法として、例えば特許文献1に記載された方法が提案されている。この方法では、トラック等の荷台の最後尾にミキサー、中間に上面が作業台となる水タンク、前側に集塵機及び発電機を配備し、ポンプで水タンクの水を計量タンクに送って計量する。また、セメント袋を破袋してミキサーに所定量のセメントを投入する作業を行うと共に計量した水も供給し、撹拌羽根を回転させて混練することでセメントミルクが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-175715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、人力によるセメントミルクの製造方法は小規模で投入量が少ないため製造効率が悪かった。
また、特許文献1に記載された大規模な製造方法では、1台のトラックの荷台にミキサーと水タンクとを備え、更にセメントを詰めたフレキシブルコンテナバッグを別のトラック等の荷台からクレーン等で吊り上げて破袋し、ミキサー内に投入する必要があった。その際、投入するセメント粉体がミキサーの投入口付近に付着する等して高品質なセメントミルクができにくいことがあった。しかも、多数の作業員と大型装置等が必要であり、製造効率が悪かった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、高品質のセメントミルク等を含むモルタルを効率よく製造できるようにしたモルタルの製造方法と製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るモルタルの製造方法は、アジテータ車のミキシングドラムに給水管を介して水を供給する工程と、前記ミキシングドラムへの給水終了後に、前記ミキシングドラムを回転させた状態で、圧送装置を用いてセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を前記ミキシングドラム内に供給する工程と、前記水とセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体とを混練する工程と、を備え、投入口を通して前記ミキシングドラム内の中央付近に延びる導入を備えており、前記導入を通してセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を前記ミキシングドラム内に供給するようにし、前記導入の吐出口の許容設置範囲は、前記ミキシングドラムの側面視における前記ミキシングドラムの回転軸線方向の一端部から他端部までの全長をLとし、平面視における前記ミキシングドラムの最大幅をWとすると、回転軸線方向ではその中心点から両側にそれぞれL/4の長さの範囲内とされ、かつ、幅方向では回転軸線から両側にW/4の範囲内とされていることを特徴とする。
本発明によれば、アジテータ車のミキシングドラム内に水を供給した後、ミキシングドラムを回転させながらセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を供給して混練することで揺動する水に粉体を落下させて均一に混合でき、セメントミルク等のモルタルを施工現場等で効率的にしかも大量に製造することができる。
【0008】
本発明に係るモルタルの製造方法は、アジテータ車のミキシングドラムを回転させる工程と、前記ミキシングドラムを回転させた状態で、給水管を介してを供給すると同時に、セメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を前記アジテータ車のミキシングドラムに圧送装置を用いて供給する工程と、前記水とセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体とを混練する工程と、を備え、投入口を通して前記ミキシングドラム内の中央付近に延びる導入を備えており、前記導入を通してセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を前記ミキシングドラム内に供給するようにし、前記導入の吐出口の許容設置範囲は、前記ミキシングドラムの側面視における前記ミキシングドラムの回転軸線方向の一端部から他端部までの全長をLとし、平面視における前記ミキシングドラムの最大幅をWとすると、回転軸線方向ではその中心点から両側にそれぞれL/4の長さの範囲内とされ、かつ、幅方向では回転軸線から両側にW/4の範囲内とされていることを特徴とする。
本発明によれば、アジテータ車の回転するミキシングドラム内に水とセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体とを同時に供給して混練することでセメントミルク等のモルタルを施工現場等で効率的にしかも大量に製造することができる。
【0010】
また、水を供給する給水管に流量計を設置し、該流量計によって水の供給量を計測するようにしてもよい。
ミキシングドラムに供給する水量を給水管の流量計によって計測して所定量で停止するよう管理することができる。
【0011】
また、セメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を貯留してミキシングドラムに供給する粉体供給手段に重量計を設置し、該重量計によってセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体の供給量を計測するようにしてもよい。
粉体供給手段に貯留された粉体の重量を計測することで、粉体供給手段からミキシングドラムに供給する粉体の重量を減算方式によって管理できる。
【0012】
本発明によるモルタルの製造装置は、回転可能なミキシングドラムを備えたアジテータ車と、前記ミキシングドラムに水を供給する給水手段と、回転する前記ミキシングドラムにセメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を供給する圧送装置を備えた粉体供給手段と、前記ミキシングドラムの内部に吐出口を有していて前記粉体供給手段から供給される前記セメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体をミキシングドラム内に吐出する導入と、を備え、前記ミキシングドラム内に水を供給した後、或いは水の供給と同時に前記セメント粉体またはセメント及び細骨材の混合粉体を前記導入を通して前記ミキシングドラム内に吐出して混練するように構成され、前記導入の前記吐出口は、前記ミキシングドラムの側面視における前記ミキシングドラムの回転軸線方向の一端部から他端部までの全長をLとし、平面視における前記ミキシングドラムの最大幅をWとすると、回転軸線方向ではその中心点から両側にそれぞれL/4の長さの範囲内、かつ、幅方向では回転軸線から両側にW/4の範囲内に設けられていることを特徴とする。
また、本発明のモルタルの製造装置は、前記導入管が、前記アジテータ車の形状に合わせて長手方向中間部分で屈曲または湾曲していてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るモルタルの製造方法及び製造装置によれば、回転するミキシングドラム内にセメント粉体や混合粉体を供給するため、粉体と水の混合割合が部分的に不均一になることを防止できてセメントミルク等のモルタルを均一に効率よく製造することができる。 しかも、アジテータ車のミキシングドラムでセメント粉体や混合粉体を混練してセメントミルク等のモルタルを製造できるため、半たわみ性舗装等の施工現場等で効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態によるセメントミルク製造装置を示す側面図である。
図2図1に示すミキシングドラムを備えたアジテータ車の拡大側面図である。
図3図2に示す導入管の図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面面図である。
図4】(a)、(b)はミキシングドラム内の導入管の吐出口の設置範囲を示す説明図であり、(a)はアジテータ車の側面図、(b)は平面図である。
図5】実施形態によるセメントミルクの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるセメントミルク製造方法と製造装置について説明する。
図1は実施形態によるセメントミルク製造装置1を示すものであり、中央に設けたアジテータ車2と、アジテータ車2に給水管3を介して接続された給水車4と、アジテータ車2に粉体供給管5を介して接続されたバラ車6とを備えている。
図2に示すアジテータ車2は、計量された水とセメント粉体(と混和剤等)を練混ぜすることでセメントミルクを製造する車であり、トラック8の荷台に回転軸線O回りに回転可能なミキシングドラム9が設置されている。ミキシングドラム9は内部に設けた撹拌翼(図示せず)によって水とセメント粉体を混練してセメントミルクを製造する回転可能な容器であり、容量は適宜設定できるが、例えば11トン程度の大型が好ましい。
【0016】
ミキシングドラム9の入口には水とセメント粉体をそれぞれ供給するホッパ11が上向きに拡径されて設置され、その両側部には作業者が乗ってホッパ11内を観察したり作業したりするためのステップ12と安全帯を引っ掛けるためのフック(図示せず)が設置されている。また、ホッパ11の下方にはミキシングドラム9で製造されたセメントミルクを荷卸し位置に導くためのシュート13が左右に揺動可能に設置されている。
【0017】
ホッパ11には、粉体供給管5の先端に接続された導入管15が設置されている。導入管15は粉体供給管5から圧送されたセメント粉体やセメント及び細骨材の混合粉体をミキシングドラム9内の回転軸線O方向の中央付近に誘導して吐出するようになっている。図3(a)~(c)は導入管15を示すもので、アジテータ車2の形状に合わせて長手方向中間部分で屈曲または湾曲している。
なお、導入管15は必ずしも屈曲や湾曲をしている必要はない。導入管15について長手方向一端の粉体供給管5との連結部を入口15aとし、他端を吐出口15bとする。
【0018】
導入管15の屈曲部の入口15a側部分に略T字状の上部保持部16が固定され、その頭部両端に一対の係止部16aが形成され、係止部16aでホッパ11の両側部に設けたフックやホッパ11の投入口11aの縁に係止させることができる。また、導入管15の入口15a近傍の下側には下部保持部17が固定され、下部保持部17がホッパ11の投入口11a付近に当接することで導入管15をホッパ11内に安定して保持できる。
導入管15はホッパ11内に挿入されて上部保持部16及び下部保持部17でホッパ11に係止保持された状態で、吐出口15bはミキシングドラム9の回転軸線O方向の中央付近に位置し、吐出される粉体がミキシングドラム9のホッパ11や内奥部の壁面等に付着しないようにした。導入管15の形状や配置は回転するミキシングドラム9の内壁やホッパ11等に接触しなければ適宜位置に設定でき、回転軸線Oから外れて配置してもよい。
【0019】
ここで、導入管15の吐出口15bを設置可能な中央付近の範囲(許容設置範囲S)について図4(a)、(b)により説明する。側面視におけるミキシングドラム9の回転軸線O方向の一端部から他端部までの全長をLとして、平面視におけるミキシングドラム9の最大幅をWとする。そして、吐出口15bの許容設置範囲Sとして、図4(a)に示す回転軸線O方向ではその中心点から両側にそれぞれL/4の長さの範囲内とし、図4(b)に示す幅方向では回転軸線Oから両側にW/4の範囲内として設定する。なお、ミキシングドラム9の高さ方向については制限はなく、ミキシングドラム9の内壁に非接触であればよい。
ミキシングドラム9内における許容配置範囲S内に導入管15の吐出口15bを配置すれば、回転するミキシングドラム9内の中央付近へセメント粉体を供給できる。そのため、その直下で揺動する水に粉体を落下させて均一に撹拌混合でき、粉体がダマになったり混合割合が部分的に不均一になったりしない。
【0020】
導入管15の材質は特に指定はないが、金属製または合成樹脂製、木製またはカーボン製等が挙げられる。強度と耐久性の面からは金属製が好ましい。
導入管15は上部保持部16と下部保持部17等の固定具によって、または導入管15自体をホッパ11の投入口11aに固定しても良い。固定具を用いる場合、例えばシャコ万力などの器具でホッパ11または粉体供給管5に固定することができる。なお、この構成に代えて粉体供給管5を導入管15の内部へ挿入して接続しても良い。
導入管15と粉体供給管5の接続を容易にするために、可塑性を持つ補助管を設けてその一端を導入管15に固定し、補助管の他端をアジテータ車の2の下部で粉体供給管5に接続しても良い。
【0021】
図1において、給水車4は、トラックの荷台に水タンク4aが設置されていて水タンク4a内に給水管3の端部が設置された給水手段である。給水手段として、給水車4に代えて、水道、貯水タンク、散水車等を採用することができる。特に、移動が容易な給水車4または散水車であることが好ましい。給水管3の例えば途中には流量を計測するための流量計20が設置されている。給水量の管理手段として、流量計20に代えて、予め貯水量を計量可能な貯水タンクを設置してもよい。初期の貯水量と供給後の貯水量の差によってミキシングドラム9に供給した水量を計測できる。しかし、給水量の管理手段は給水管3に流量計20を設置して給水を計測してON,OFF制御することが好ましい。
また、給水の動力としては、流量計20と連動した水中ポンプを設置することが好ましい。給水量が一定量に達した時点で水中ポンプへの電力供給を遮断し、供給を止めるシステムがより好ましい。
【0022】
バラ車6は袋詰めされていないセメント粉体等の材料を運搬する車両であり、トラックの荷台に粉体タンク6aが設置されている。バラ車6に接続した粉体供給管5に圧送装置を取り付けて、セメント粉体を粉体供給管5を介してホッパ11に圧送することが好ましい。バラ車6は例えば10t~20t程度のものを採用することが好ましい。また、粉体供給手段として、バラ車6に代えてフレキシブルコンテナやベルトコンベア等を用いてもよく、その場合、セメント粉体等をホッパ11へ直接投入しても良いし、粉体供給管5を介して供給しても良い。
【0023】
また、バラ車6の各タイヤの下に重量計22を設置してセメント粉体の供給量を管理するようにした。バラ車6に代えてフレキシブルコンテナを用いた場合、予めフレキシブルコンテナの重量を計量しておき、供給後に再度重量を計測して重量差によって粉体の供給量を管理するようにしてもよい。
重量計22は、一つの秤で計量する大型の定置型台貫でも良いが、複数の小型の秤で計量すればバラ車6の移動が容易になって好ましい。また、重量計22と無線で連動し、減算方式でセメント粉体の排出量を演算して、自動表示および記録することが可能な管理装置を設置してもよい。
【0024】
本実施形態によるセメントミルク製造装置1は上述した構成を備えており、次にセメントミルク製造方法について図5に示すフローチャートに沿って説明する。
図1において、アジテータ車2を半たわみ性舗装現場に移動させて停車させ、その近傍に給水車4とバラ車6を停車させる。そして、アジテータ車2の空のミキシングドラム9内に給水車4から水中ポンプ等によって給水管3を介して給水が行われる(S100)。ミキシングドラム9への給水量は給水管3に設置した流量計20によって計測できる。
【0025】
ミキシングドラム9への給水終了後にミキシングドラム9の回転をスタートさせて内部に設けた撹拌羽根によって水の揺動を開始させる(S101)。そして、バラ車6内に充填されたセメント粉体を圧送装置によって粉体供給管5を通してミキシングドラム9に圧送する(S102)。粉体供給管5の先端には導入管15が連結されており、導入管15はホッパ11の投入口11aに上部保持部16と下部保持部17によって係止されている。
導入管15の吐出口15bはミキシングドラム9内の回転軸線O方向中央付近に位置するため、供給されるセメント粉体は確実にミキシングドラム9内に貯留された水に落下する。そのため、センメント粉体はミキシングドラム9のホッパ11や内奥部の壁面等に付着したりダマなどを形成したりすることなく水と均一に混合させられる。
【0026】
バラ車6内に収納されたセメント粉体の重量は各タイヤの下に設けた重量計22によって計量されており、重量計22と無線で連動する外部の管理装置により、随時計測されるセメント粉体の重量の減量を減算方式によってセメント粉体排出量として自動計算して表示及び記録する。
そして、ミキシングドラム9内の撹拌羽根によって水とセメント粉体が良く撹拌混練させられる(S103)。こうして、ミキシングドラム9内で水とセメント粉体を良く混練して所定量のセメントミルクを効率よく製造できる。製造されたセメントミルクはシュート13を介して空隙率の大きな開粒度タイプのアスファルト舗装体に投入して充填させ、その空隙に浸透させる(S104)。そして、硬化された半たわみ性舗装は一般の密粒度アスファルト舗装と比較して塑性変形抵抗性、明色性、耐油性及び難燃性に優れている。
【実施例
【0027】
以下に本発明の実施例について説明する。
セッティング段階では、図1に示すように、供水手段として給水車4を使用し、電動ポンプを給水車4の水タンク4aに設置する。水タンク4aの電動ポンプに給水管3として内径φ50mmのジャバラ管を接続し、この給水管3を、流量計20を介してアジテータ車2のホッパ11からミキシングドラム9内へ延ばして設置する。
【0028】
次に、図3に示す例えば鋼板製の導入管15を、図2に示すようにアジテータ車2のホッパ11の投入口11aに固定する。しかも、導入管15の吐出口15bはミキシングドラム9内の許容設置範囲S内の回転軸線O方向中央付近に位置させる。バラ車6の粉体タンク6a内に搭載するセメントとして、例えば住友大阪セメント株式会社製「ニューファンコート」を用い、バラ車6の全ての車輪の下に無線式重量計として、例えば日本製鋼所製「ワイヤレスポータブルスケールZAK-06W」)を設置して、バラ車6内のセメント粉体の重量を計測する。
粉体供給管5として、バラ車6に付属する内径φ100mmのジャバラ管をアジテータ車2の導入管15内部へ挿入して連結する。
【0029】
次に、アジテータ車2を用いたセメントミルクの製造方法について図5に示すフローチャートにより説明する。
まず、表1に示す量の水をミキシングドラム9内へ供給する。水の供給量は給水管3に設置した流量計20を用いて計測する。給水終了後、ミキシングドラム9の撹拌羽根を回転駆動させて、例えば15min-1程度の高速攪拌を開始する。
粉体供給手段として10t~20t程度のバラ車6を使用する。表1に示す量のセメント粉体をバラ車6から粉体供給管5を通して圧送し、導入管15を介してミキシングドラム9内の回転軸線O方向中央付近の吐出口15bから吐出する。セメント粉体の供給量は無線式重量計を用いて減算方式で管理する。
そして、ミキシングドラム9を3分間高速攪拌して(15min-1程度)、セメントミルクを製造し、その後、空隙率の大きな開粒度タイプのアスファルト舗装面の施工箇所へ排出する。
【0030】
【表1】
【0031】
次に製造したセメントミルクの品質を確認する。
本実施例によるセメントミルク製造方法で製造したセメントミルクが、有効であるか否かを確認する。そのため、上述した製造方法で製造したセメントミルクを実施例とし、従来の製造方法である、ハンドミキサーを用いてセメントと水を大型容器内で混合することで製造したセメントミルクを比較例とする。製造したセメントミルクの各配合を表1に示す。
【0032】
次に、表1に示すように製造したセメントミルクの品質を以下の試験方法で求める。
(1)セメント強度:セメントミルク圧縮強度試験方法(JIS A 1108に準ずる)
(2)セメントの流動性:充填モルタルの流動性試験方法(JSCE-F-1999に準ずる)
なお、(1)のセメント強度は実施例と比較例のセメントミルクを、同一の空隙率の大きな開粒度タイプのアスファルト舗装体に所定量充填させた後の養生期間における材齢1日と材齢7日で圧縮強度(N/mm)を測定した。実施例と比較例の品質試験(1)、(2)の結果は、表2に示す通りになった。漏斗時間(秒)は目標値10~14秒に対して実施例と比較例はいずれも許容範囲に収まっている。また、圧縮強度は実施例の方が比較例より高いことを確認できた。
よって、本実施例は、表2に示すように、比較例(従来の製造方法)と同等の品質のセメントミルクを製造できることが証明された。また、表1に示すようにセメントミルクの製造量は実施例の方がはるかに多い。
【0033】
【表2】
【0034】
上述したように、本実施形態によるセメントミルク製造装置1及び製造方法によれば、回転するミキシングドラム9内の中央付近へセメント粉体を供給するため、その直下で揺動する水に粉体を落下させて均一に撹拌混合でき、粉体がダマになったり混合割合が部分的に不均一になったりすることを防止できてセメントミルクを効率よく製造することができる。
しかも、アジテータ車2のミキシングドラム9でセメント粉体を混練してセメントミルクを製造できるため、半たわみ性舗装等の施工現場等で効率的に製造できる。
また、アジテータ車2はセメント粉体をミキシングドラム9内の回転軸線O方向中央付近の水中に落下して均一に混合できるため、均一な混合比のセメントミルクを効率よく製造できる。
【0035】
なお、本発明によるセメントミルク製造方法と製造装置1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、上記実施形態の構成を適宜置換したり変更したりすることができる。以下に、本発明によるセメントミルク製造方法と製造装置1の変形例について説明するが、上述した実施形態と同一または同様な部品や部分等については同一の符号を用いて説明する。
【0036】
上述した実施形態では、セメント粉体と水を撹拌混合したセメントミルクの製造方法と製造装置1について説明したが、本発明はセメントミルクに限定されるものではなく、セメント粉体と砂(細骨材)を混合した混合粉体をバラ車6から粉体供給管5と導入管15を通して圧送してミキシングドラム9に供給して水と混合したモルタルの製造方法や製造装置にも適用できる。セメントミルクをモルタルに含まれる概念と考えれば、細骨材の添加量が0の場合をセメントミルクとすることができる。
【0037】
なお、上述の実施形態によるセメントミルク製造方法では、水とセメント粉体の供給手順として水をミキシングドラム9に供給した後でセメント粉体を供給するようにしたが、本発明はこのような手順に限定されない。例えば水とセメント粉体を同時に供給してもよい。セメント粉体を水より先に供給するとセメント粉体が混練時に固まるおそれがあるが、同時に供給する場合にはそのようなおそれがないため、本発明に含まれる。
【0038】
また、本発明の実施形態では、セメント粉体やセメント及び細骨材の混合粉体をミキシングドラム9内の回転軸線O方向中央付近に供給する導入管15を設置したが、必ずしも導入管15を設置しなくてもよい。この場合には、粉体供給管5の先端をミキシングドラム9のホッパ11内に延ばして、セメント粉体やセメント及び砂の混合粉体がミキシングドラム9の入口付近に付着しないようにすることが好ましい。
また、導入管15に代えて、管体を半割した断面略円弧状のシューター等を取り付けてもよく、これらは導入ガイドを構成する。
【符号の説明】
【0039】
1 セメントミルク製造装置
2 アジテータ車
3 給水管
4 給水車
5 粉体供給管
6 バラ車
9 ミキシングドラム
11 ホッパ
15 導入管
20 流量計
22 重量計
図1
図2
図3
図4
図5