(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】組成物、半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220922BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20220922BHJP
C11D 7/06 20060101ALI20220922BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20220922BHJP
C11D 7/36 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01L21/304 647Z
H01L21/304 622Q
C11D7/26
C11D7/06
C11D7/32
C11D7/36
(21)【出願番号】P 2022050467
(22)【出願日】2022-03-25
【審査請求日】2022-04-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】室 祐継
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 正
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/024714(WO,A1)
【文献】特表2009-531512(JP,A)
【文献】特開2019-059915(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 1/00
H01L 21/02
B08B 3/00
B08B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルビン酸と、
クエン酸と、
アンモニア、有機アミン、及び、第4級アンモニウム化合物、並びに、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1つであるアミン含有化合物と、
ホスホノ基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する特定化合物と、
水とを含み、
25℃におけるpHが4.0~9.0である、組成物。
【請求項2】
ソルビン酸と、
クエン酸と、
アンモニア、有機アミン、及び、第4級アンモニウム化合物、並びに、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1つであるアミン含有化合物と、
ホスホノ基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する特定化合物と、
水とを含み、
25℃におけるpHが4.0~9.0である、組成物。
ただし、前記組成物が、重量平均分子量が2000~900000である重合体を含む場合を除く。
【請求項3】
前記ソルビン酸の含有量に対する前記クエン酸の含有量の比率が、質量比で1~50である、請求項1
又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ソルビン酸の含有量に対する前記アミン含有化合物の含有量の比率が、質量比で10~500である、請求項1
~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記特定化合物が、ホスホノ基を有する化合物を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記特定化合物が、少なくとも2つのホスホノ基を有する化合物を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記アミン含有化合物が、アンモニア、アルカノールアミン、及び、第4級アンモニウム化合物、並びに、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記アミン含有化合物がアルカノールアミンを含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
砥粒を実質的に含まない、請求項1~
8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
25℃における電気伝導度が0.01~30mS/cmである、請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
リン酸イオンの含有量が、前記組成物に対して20質量ppm以下である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
化学機械研磨処理が施された半導体基板の洗浄液に用いられる、請求項1~
11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記半導体基板がタングステンを含む、請求項
12に記載の組成物。
【請求項14】
水で50倍以上希釈してなる希釈液を洗浄液として用いる、請求項
12又は
13に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物を用いて半導体基板を洗浄する工程を有する、半導体素子の製造方法。
【請求項16】
半導体基板に化学機械研磨処理を施す工程と、
請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物、又は、前記組成物を水で希釈してなる希釈液を用いて、前記化学機械研磨処理が施された半導体基板を洗浄する工程と、を有する、
半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、及び、半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge-Coupled Device)及びメモリ等の半導体素子は、フォトリソグラフィー技術を用いて、基板上に微細な電子回路パターンを形成して製造される。具体的には、基板上に、配線材料となる金属膜、エッチング停止層及び層間絶縁層を有する積層体上にレジスト膜を形成し、フォトリソグラフィー工程及びドライエッチング工程(例えば、プラズマエッチング処理等)を実施することにより、半導体素子が製造される。
【0003】
半導体素子の製造において、金属配線膜、バリアメタル及び絶縁膜等を有する半導体基板表面を、研磨微粒子(例えば、シリカ及びアルミナ等)を含む研磨液を用いて平坦化する化学機械研磨処理を行うことがある。化学機械研磨処理では、化学機械研磨処理で使用する研磨微粒子、研磨された配線金属膜及び/又はバリアメタル等に由来する金属成分等の残渣物が、化学機械研磨処理後の半導体基板表面に残存しやすい。
これらの残渣物は、配線間を短絡し、半導体の電気的な特性に悪影響を及ぼし得ることから、半導体基板の表面からこれらの残渣物を除去する洗浄工程が一般的に行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、有機酸化合物を含む少なくとも1つの洗浄剤、洗浄溶液中の微生物の生育を実質的に最小化する若しくは防止する少なくとも1つの防腐剤化合物、及び、少なくとも1つのアミン化合物を含む洗浄溶液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体素子の微細化に伴い、半導体基板用洗浄液等の半導体素子の製造プロセスに用いられる組成物に対しては、より優れる残渣物(例えば、研磨砥粒、金属含有物、有機物、基板材料及びそれらの混合物)の除去性能を有し、基板等の対象物へのダメージ(例えば、金属含有膜の腐食等)が抑制されており、なお且つ、半導体基板において配線等の目的で形成されている金属含有膜の電気特性への影響が抑制されていることが求められている。
【0007】
一方、半導体素子の製造プロセスに用いられる元素種は増加する傾向にあり、新たな元素種に対応するため、強酸性、強アルカリ性、及び、それらの中間にあたる中性を含む幅広いpH域の組成物が求められている。
本発明者らが特許文献1に記載の技術内容に基づいて、中性付近の半導体基板用組成物について検討したところ、製造から所定期間経過した後に使用した際に、半導体基板の金属含有膜(特に、タングステン含有膜)に対する残渣物の除去性能、防腐性、及び、電気特性の劣化抑制の3つの課題の同時解決の点において、改善の余地があることを知見した。
【0008】
そこで、本発明は、製造から所定期間経過後に使用した際にも、残渣物の除去性能、及び、タングステン含有膜の防食性に優れ、更には、タングステン含有膜の電気特性の劣化を抑制できる組成物の提供を課題とする。また、本発明は、半導体素子の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
〔1〕ソルビン酸と、クエン酸と、アンモニア、有機アミン、及び、第4級アンモニウム化合物、並びに、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1つであるアミン含有化合物と、ホスホノ基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する特定化合物と、水とを含み、25℃におけるpHが4.0~9.0である、組成物。
〔2〕 上記ソルビン酸の含有量に対する上記クエン酸の含有量の比率が、質量比で1~50である、〔1〕に記載の組成物。
〔3〕 上記ソルビン酸の含有量に対する上記アミン含有化合物の含有量の比率が、質量比で10~500である、〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕 上記特定化合物が、ホスホノ基を有する化合物を含む、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の組成物。
〔5〕 上記特定化合物が、少なくとも2つのホスホノ基を有する化合物を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の組成物。
〔6〕 上記アミン含有化合物が、アンモニア、アルカノールアミン、及び、第4級アンモニウム化合物、並びに、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1つを含む、〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の組成物。
〔7〕 上記アミン含有化合物がアルカノールアミンを含む、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の組成物。
〔8〕 砥粒を実質的に含まない、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の組成物。
〔9〕 25℃における電気伝導度が0.01~30mS/cmである、〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の組成物。
〔10〕 リン酸イオンの含有量が、上記組成物に対して20質量ppm以下である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の組成物。
〔11〕 化学機械研磨処理が施された半導体基板の洗浄液に用いられる、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の組成物。
〔12〕 上記半導体基板がタングステンを含む、〔11〕に記載の組成物。
〔13〕 水で50倍以上希釈してなる希釈液を洗浄液として用いる、〔11〕又は〔12〕に記載の組成物。
〔14〕 〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の組成物を用いて半導体基板を洗浄する工程を有する、半導体素子の製造方法。
〔15〕 半導体基板に化学機械研磨処理を施す工程と、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の組成物、又は、上記組成物を水で希釈してなる希釈液を用いて、上記化学機械研磨処理が施された半導体基板を洗浄する工程と、を有する、半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、製造から所定期間経過した後に使用した際にも、残渣物の除去性能、及び、タングステン含有膜の防食性に優れ、更には、タングステン含有膜の電気特性の劣化を抑制できる組成物を提供できる。また、本発明は、半導体素子の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態の一例を説明する。
本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施できる。
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「準備」とは、原材料の合成又は調合等の処理により備えることのほか、購入等により所定の物を調達することを含む。
本明細書において、ある成分が2種以上存在する場合、特段の断りがない限り、その成分の「含有量」は、それら2種以上の成分の合計含有量を意味する。
本明細書に記載の化合物において、特段の断りがない限り、構造異性体、光学異性体及び同位体が含まれていてもよい。また、構造異性体、光学異性体及び同位体は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上含まれていてもよい。
【0014】
本明細書において、psiとは、pound-force per square inch(重量ポンド毎平方インチ)を意味し、1psi=6894.76Paを意味する。
本明細書において、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味する。
本明細書において、1Å(オングストローム)は、0.1nmに相当する。
【0015】
本明細書において、特段の断りがない限り、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、又は、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー社製)をカラムとして用い、テトラヒドロフランを溶離液として用い、示差屈折計を検出器として用い、ポリスチレンを標準物質として用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により測定した標準物質のポリスチレンを用いて換算した値である。
本明細書において、特段の断りがない限り、分子量分布を有する化合物の分子量は、重量平均分子量である。
【0016】
本明細書において、「全固形分」とは、水及び有機溶媒等の溶媒以外の組成物に含まれる全ての成分の合計含有量を意味する。
【0017】
[組成物]
本発明の組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、ソルビン酸と、クエン酸と、アンモニア、有機アミン、及び、第4級アンモニウム化合物、並びに、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1つであるアミン含有化合物と、ホスホノ基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する特定化合物と、水とを含む。また、25℃における組成物のpHが4.0~9.0である。
本明細書において、ソルビン酸、クエン酸、上記アミン含有化合物、並びに、上記特定化合物を、それぞれ、「成分A」、「成分B」、「成分C」、及び、「成分D」とも記載する。
【0018】
本発明者らは、組成物が、上記の成分A~Dを含み、且つ、pHが4.0~9.0である場合、残渣物の除去性能、タングステン含有膜の防食性、及び、タングステン含有膜の電気特性の劣化抑制の3つの効果がバランス良く優れることを知見し、本発明を完成させた。
このような組成物により本発明の効果が得られる詳細なメカニズムは不明であるが、本発明者らは以下のように推測している。
半導体素子の製造プロセスに用いられる組成物のpHを4~9の領域に調整した場合、時間の経過に従って、空気中のごく微細な浮遊物等が組成物中に溶解又は蓄積し、結果として組成物が本来持っている残渣除去性及び防食性に影響を及ぼすだけでなく、処理後の被対象物の表面にそれらの微細な残渣が残ってしまうために、電気特性にまで影響を及ぼしてしまうと推測される。
それに対して、本組成物は、上記の成分A~Dを含むことにより、組成物中に混入した上記浮遊物等の影響が抑制されるため、残渣除去性、防食性及び電気特性の低下を抑制できたものと推測される。
本明細書において、残渣物の除去性能、タングステン含有膜の防食性、及び、タングステン含有膜の電気特性の劣化抑制のうち少なくとも1つの効果が優れることを、「本発明の効果が優れる」とも記載する。
【0019】
以下、組成物に含まれる各成分について、説明する。
【0020】
〔成分A(ソルビン酸)〕
組成物は、ソルビン酸(ヘキサジエン酸)を含む。
ソルビン酸は、塩の形態であってもよい。上記塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩等の公知の塩が挙げられる。
【0021】
ソルビン酸の含有量は、特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、組成物の全質量に対して、0.0001~0.1質量%が好ましく、0.001~0.08質量%がより好ましく、0.01~0.08質量%が更に好ましい。
また、ソルビン酸の含有量は、組成物中の全固形分に対して、0.01~30.0質量%が好ましく、0.05~12.0質量%がより好ましい。
【0022】
〔成分B(クエン酸)〕
組成物は、クエン酸を含む。
クエン酸は、塩の形態であってもよい。上記塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及びアンモニウム塩等の公知の塩が挙げられる。
【0023】
クエン酸の含有量は、組成物の全質量に対して、0.001~1.0質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
クエン酸の含有量は、組成物中の全固形分に対して、0.1~1.0質量%が好ましく、0.3~0.6質量%がより好ましい。
【0024】
ソルビン酸の含有量に対するクエン酸の含有量(クエン酸の含有量B/ソルビン酸の含有量B)の比率B/Aは、残渣除去性がより優れる点で、質量比で1~50が好ましく、3~30がより好ましく、4~10が更に好ましい。
【0025】
〔成分C(アミン含有化合物)〕
組成物は、成分Cとしてアンモニア、有機アミン、及び、第4級アンモニウム化合物、並びに、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1つであるアミン含有化合物を含む。
なお、成分Dに含まれる化合物は、成分Cには含まれないものとする。
成分Cは、塩の形態であってもよい。上記の塩としては、例えば、Cl、S、N及びPからなる群より選択される少なくとも1種の非金属が水素と結合してなる無機酸との塩が挙げられ、塩酸塩、硫酸塩、又は硝酸塩が好ましい。また、成分Cは、ソルビン酸、クエン酸及び後述する有機酸等の酸性化合物と塩を形成していてもよい。
【0026】
<アンモニア>
組成物は、成分Cとしてアンモニアを含んでいてもよい。本明細書において、アンモニウムカチオン(NH4
+)、及び、アンモニウムカチオンと対アニオンとの塩(例えば水酸化アンモニウム(NH4OH)等)は、アンモニアに該当するものとする。
【0027】
<有機アミン>
組成物は、成分Cとして有機アミンを含んでいてもよい。
有機アミンは、分子内に、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ基を有する化合物又はその塩である。
【0028】
有機アミンは、鎖状(直鎖状又は分岐鎖状)及び環状のいずれであってもよい。有機アミンは、芳香環を含まないことが好ましい。また、有機アミンは、カルボキシ基を有さないことが好ましい。
有機アミンとしては、例えば、アルカノールアミン、脂環式アミン、並びに、アルカノールアミン及び脂環式アミン以外の脂肪族アミンが挙げられる。
【0029】
アルカノールアミンは、有機アミンのうち、分子内に少なくとも1つのヒドロキシルアルキル基を更に有する化合物である。アルカノールアミンは、第1級~第3級アミノ基のいずれを有していてもよいが、第1級アミノ基を有することが好ましい。
アルカノールアミンが有するアミノ基の数は、例えば1~5個であり、1~3個が好ましい。アルカノールアミンが有するヒドロキシ基の数は、例えば1~5個であり、1~3個がより好ましい。
中でも、アルカノールアミンは、アミノ基として1級アミノ基のみを有することがより好ましい。
【0030】
アルカノールアミンとしては、例えば、モノエタノールアミン(MEA)、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-ジメチルアミノ-2-メチル-1-プロパノール(DMAMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール(AMPDO)、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール(AEPDO)、2-アミノ-1,3-プロパンジオール(2-APDO)、3-アミノ-1,2-プロパンジオール(3-APDO)、3-メチルアミノ-1,2-プロパンジオール(MAPDO)、2-(メチルアミノ)-2-メチル-1-プロパンジオール(N-MAMP)、2-(アミノエトキシ)エタノール(AEE)、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール(AAE)、ジエタノールアミン(DEA)、トリエタノールアミン(TEA)、N-メチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、N-シクロヘキシルエタノールアミン、2-(エチルアミノ)エタノール、プロピルアミノエタノール、ジエチレングリコールアミン(DEGA)、N,N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、N-tert-ブチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、1-ピペリジンエタノール、及び、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジンが挙げられる。
中でも、MEA、Tris、DMAMP、AMP、AMPDO、AEPDO、2-APDO、3-APDO、又は、MAPDOが好ましく、MEA又はTrisがより好ましい。
【0031】
脂環式アミンとしては、例えば、環状アミジン化合物及びピペラジン化合物が挙げられる。なお、アルカノールアミンに含まれる化合物は、脂環式アミンに含まれない。
【0032】
環状アミジン化合物は、環内にアミジン構造(>N-C=N-)を含むヘテロ環を有する化合物である。環状アミジン化合物が有する上記のヘテロ環の環員数は、5~6が好ましく、6がより好ましい。
環状アミジン化合物としては、例えば、ジアザビシクロウンデセン(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン:DBU)、ジアザビシクロノネン(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン:DBN)、3,4,6,7,8,9,10,11-オクタヒドロ-2H-ピリミド[1.2-a]アゾシン、3,4,6,7,8,9-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[1.2-a]ピリミジン、2,5,6,7-テトラヒドロ-3H-ピロロ[1.2-a]イミダゾール、3-エチル-2,3,4,6,7,8,9,10-オクタヒドロピリミド[1.2-a]アゼピン及びクレアチニンが挙げられる。
【0033】
ピペラジン化合物は、シクロヘキサン環の対向する>CH-基が第3級のアミノ基(>N-)に置き換わったヘテロ6員環(ピペラジン環)を有する化合物である。
ピペラジン化合物としては、例えば、ピペラジン、1-メチルピペラジン、2-メチルピペラジン、1-エチルピペラジン、1-プロピルピペラジン、1-ブチルピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2,6-ジメチルピペラジン、1-フェニルピペラジン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン(AEP)、1,4―ビス(2-アミノエチル)ピペラジン(BAEP)、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン(BAPP)及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)が挙げられる。
【0034】
ピペラジン化合物及び環状アミジン化合物以外の脂環式アミンとしては、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の窒素含有5員環又は窒素含有7員環を有する化合物が挙げられる。
【0035】
アルカノールアミン及び脂環式アミン以外の脂肪族アミンとしては、例えば、第1級脂肪族アミン(第1級アミノ基を有する脂肪族アミン)、第2級脂肪族アミン(第2級アミノ基を有する脂肪族アミン)、及び、第3級脂肪族アミン(第3級アミノ基を有する脂肪族アミン)、並びに、これらの塩が挙げられる。
【0036】
第1級脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、n-ブチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、tert-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、n-オクチルアミン及び2-エチルヘキシルアミンが挙げられる。
第2級脂肪族アミンとしては、例えば、エチレンジアミン(EDA)、1,3-プロパンジアミン(PDA)、1,2-プロパンジアミン、1,3-ブタンジアミン及び1,4-ブタンジアミン等のアルキレンジアミン;並びに、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、ビス(アミノプロピル)エチレンジアミン(BAPEDA)及びテトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミンが挙げられる。
第3級脂肪族アミンとしては、例えば、トリメチルアミン及びトリエチルアミン等の第3級アルキルアミン;1,3-ビス(ジメチルアミノ)ブタン等のアルキレンジアミン;並びに、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン等のポリアルキルポリアミンが挙げられる。
【0037】
有機アミンとしては、アルカノールアミンが好ましく、上記の好ましい態様のアルカノールアミンがより好ましい。
【0038】
<第4級アンモニウム化合物>
組成物は、成分Cとして、分子内に少なくとも1つの第4級アンモニウムカチオン基を有する化合物又はその塩である第4級アンモニウム化合物を含んでいてもよい。
第4級アンモニウム化合物は、窒素原子に4つの炭化水素基(好ましくはアルキル基)が置換してなる第4級アンモニウムカチオン基を少なくとも1つ有する化合物又はその塩であれば、特に制限されない。
第4級アンモニウム化合物としては、例えば、第4級アンモニウム水酸化物、第4級アンモニウムフッ化物、第4級アンモニウム臭化物、第4級アンモニウムヨウ化物、第4級アンモニウムの酢酸塩、及び、第4級アンモニウムの炭酸塩が挙げられる。
【0039】
第4級アンモニウム化合物としては、第4級アンモニウム水酸化物が好ましく、下記式(a1)で表される化合物がより好ましい。
【0040】
【0041】
上記式(a1)中、Ra1~Ra4は、それぞれ独立に、炭素数1~16のアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数7~16のアラルキル基、又は、炭素数1~16のヒドロキシアルキル基を示す。Ra1~Ra4の少なくとも2つは、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0042】
上記式(a1)で表される化合物としては、入手し易さの点から、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)、水酸化メチルトリプロピルアンモニウム、水酸化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム(BzTMAH)、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、及び、水酸化スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウムからなる群より選択される化合物が好ましく、TMAH、TEAH、又は、TBAHがより好ましい。
【0043】
成分Cとしては、アンモニア、アルカノールアミン、及び、第4級アンモニウム水酸化物、並びに、それらの塩からなる群より選択される化合物が好ましい。
中でも、配線の電気特性の劣化をより抑制できる点では、アルカノールアミン、及び、第4級アンモニウム水酸化物、並びに、それらの塩からなる群より選択される化合物がより好ましい。
また、金属含有膜の防食性により優れる点では、アンモニア、及び、アルカノールアミン、並びに、それらの塩からなる群より選択される化合物がより好ましい。
成分Cとしては、アルカノールアミン又はその塩が更に好ましく、Trisが特に好ましい。
【0044】
成分Cは、1種単独で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
成分Cの含有量は、組成物の全質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。
成分Cの含有量は、組成物中の全固形分に対して、10~90質量%が好ましく、30~70質量%がより好ましい。
【0045】
ソルビン酸の含有量に対する成分Cの含有量(成分Cの含有量C/ソルビン酸の含有量A)の比率C/Aは、防食性がより優れる点で、質量比で10~500が好ましく、30~300がより好ましく、100~150が更に好ましい。
また、成分Cの含有量に対するクエン酸の含有量(クエン酸の含有量B/成分Cの含有量C)の比率B/Cは、残渣除去性がより優れる点で、質量比で0.01~0.3が好ましく、0.03~0.2がより好ましく、0.04~0.1が更に好ましい。
【0046】
〔成分D〕
組成物は、成分Dとして、ホスホノ基(-PO3H2)及びリン酸基(-PO4H2)からなる群より選択される少なくとも1つの基(以下、「特定基」ともいう。)を有する化合物を含む。
なお、成分Dが有するホスホノ基及びリン酸基は、対イオン又は分子内の他の基と塩を形成していてもよい。
【0047】
成分Dが有する特定基の個数は、特に制限されないが、例えば1~6の整数であり、2~5の整数が好ましく、2又は3がより好ましい。
成分Dの炭素数は、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。下限は特に制限されず、2以上が好ましい。
成分Dとしては、特定基としてホスホノ基を有するホスホノ化合物、及び、特定基としてリン酸基を有するリン酸化合物が挙げられる。
【0048】
ホスホノ化合物は、分子内に少なくとも1つのホスホノ基を有する。ホスホノ化合物が有するホスホノ基の個数は、本発明の効果がより優れる点で、2個以上が好ましい。上限は特に制限されず、例えば6以下の整数であり、5以下の整数が好ましく、4以下の整数がより好ましい。
ホスホノ化合物の炭素数の範囲については、上述の通りである。
【0049】
ホスホノ化合物としては、例えば、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTCA)、4-ホスホノ酪酸、グリシン-N,N-ビス(メチレンホスホン酸)、エチリデンジホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸(HEDPO)、1-ヒドロキシプロピリデン-1,1’-ジホスホン酸、1-ヒドロキシブチリデン-1,1’-ジホスホン酸、エチルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ドデシルアミノビス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)(NTPO)、エチレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)(EDDPO)、1,3-プロピレンジアミンビス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTPO)、エチレンジアミンテトラ(エチレンホスホン酸)、1,3-プロピレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(PDTMP)、1,2-ジアミノプロパンテトラ(メチレンホスホン酸)、1,6-ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DEPPO)、ジエチレントリアミンペンタ(エチレンホスホン酸)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)、及び、トリエチレンテトラミンヘキサ(エチレンホスホン酸)が挙げられる。
ホスホノ化合物としては、HEDPO、NTPO又はEDTPOが好ましく、HEDPOがより好ましい。
【0050】
リン酸化合物としては、分子内に少なくとも1つのリン酸基を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、縮合リン酸及びその塩、並びに、リン酸基(リン酸エステル基)を有する有機化合物が挙げられる。
より具体的なリン酸化合物としては、ピロリン酸、メタリン酸、トリポリリン酸、ヘキサメタリン酸、及び、フィチン酸、並びに、それらの塩が挙げられる。
【0051】
成分Dとしては、本発明の効果がより優れる点で、ホスホノ基を有する化合物が好ましく、少なくとも2つのホスホノ基を有する化合物がより好ましく、2~4個のホスホノ基を有する化合物が更に好ましく、HEDPO又はNTPOが特に好ましい。
【0052】
成分Dは、1種単独で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
成分Dの含有量は、組成物の全質量に対して、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましい。
成分Dの含有量は、組成物中の全固形分に対して、10~90質量%が好ましく、20~50質量%がより好ましい。
【0053】
〔水〕
組成物は水を含む。
水の種類は、半導体基板に影響を及ぼさないものであれば特に制限されず、蒸留水、脱イオン水、及び純水(超純水)が使用できる。不純物をほとんど含まず、半導体基板の製造工程における半導体基板への影響がより少ない点で、純水が好ましい。
【0054】
組成物における水の含有量は、特に制限されず、成分A~D、及び、必要に応じて添加される任意成分(後述)の残部であってよい。
水の含有量は、例えば、組成物の全質量に対して60質量%以上であり、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
上限は特に制限されず、例えば、組成物の全質量に対して、99.9質量%以下であってよく、99質量%以下が好ましい。
【0055】
〔任意成分〕
組成物は、上記成分A~D及び水以外に、任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、防食剤、界面活性剤、キレート剤、pH調整剤、及び、各種添加剤が挙げられる。
以下、任意成分について説明する。
【0056】
<防食剤>
組成物は、防食剤を含んでいてもよい。
防食剤とは、半導体基板が有する金属膜(特に、タングステンを含む金属膜)の露出面の腐食を防止する機能を有する化合物であり、例えば、水溶性重合体が挙げられる。
また、上記成分Cが防食剤としての機能を兼ねていてもよい。
【0057】
水溶性重合体は、重量平均分子量が1000以上である水溶性の化合物である。本明細書において「水溶性」とは、20℃の水100gに溶解する質量が0.1g以上であることを意味する。なお、水溶性重合体には、後述する有機酸、及び、アニオン性界面活性剤として機能する化合物は含まれない。
水溶性重合体としては、例えば、ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリルアミド、及び、ポリスチレンスルホン酸等が挙げられる。
水溶性重合体の重量平均分子量は、1000~100000が好ましく、2000~50000がより好ましく、5000~50000が更に好ましい。
【0058】
組成物は、上記各成分を除く他の防食剤を含んでいてもよい。
他の防食剤としては、例えば、アスコルビン酸化合物、カテコール化合物、ヒドラジド化合物、還元性硫黄化合物、糖類(フルクトース、グルコース及びリボース等)、ポリオール類(エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリン等)、ポリビニルピロリドン、フェナントロリン、フラボノ-ル及びその誘導体、並びに、アントシアニン及びその誘導体が挙げられる。
【0059】
防食剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
組成物が防食剤を含む場合、防食剤の含有量は、組成物の全質量に対して、0.0001~10質量%が好ましく、0.001~3質量%がより好ましい。
組成物が防食剤を含む場合、防食剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.001~30質量%が好ましく、0.01~10質量%がより好ましい。
なお、これらの防食剤は、市販のものを用いてもよいし、公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0060】
<界面活性剤>
組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。
界面活性剤は、1分子中に親水基と疎水基(親油基)とを有する化合物である。界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤が挙げられる。
組成物は、金属膜の腐食防止性能及び研磨砥粒等の残渣物の除去性がより優れる点で、界面活性剤を含むことが好ましい。
【0061】
界面活性剤は、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基及びこれらの組み合わせた基からなる群から選択される少なくとも1つの疎水基を有する場合が多い。
疎水基が芳香族炭化水素基を含む場合、界面活性剤が有する疎水基の炭素数は、6以上が好ましく、10以上がより好ましい。疎水基が芳香族炭化水素基を含まず、脂肪族炭化水素基のみからなる場合、界面活性剤が有する疎水基の炭素数は、9以上が好ましく、13以上がより好ましく、16以上が更に好ましい。疎水基の炭素数の上限としては、20以下が好ましく、18以下がより好ましい。
界面活性剤全体の炭素数は、16~100が好ましい。
【0062】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、エステル型ノニオン性界面活性剤、エーテル型ノニオン性界面活性剤、エステルエーテル型ノニオン性界面活性剤及びアルカノールアミン型ノニオン性界面活性剤が挙げられ、エーテル型ノニオン性界面活性剤が好ましい。
【0063】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、アルキルポリグルコシド(Dow Chemical Company社製のTriton BG-10及びTriton CG-110界面活性剤)、オクチルフェノールエトキシレート(Dow Chemical Company社製のTriton X-114)、シランポリアルキレンオキシド(コポリマー)(Momentive Performance Materials社製のY-17112-SGS試料)、ノニルフェノールエトキシレート(Dow Chemical Company社製のTergitol NP-12、並びに、Triton(登録商標)X-102、X-100、X-45、X-15、BG-10及びCG-119)、Silwet(登録商標)HS-312(Momentive Performance Materials社製)、トリスチリルフェノールエトキシレート(Stepan Company製のMAKON TSP-20)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、脂肪族酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド、BRIJ(登録商標)56(C16H33(OCH2CH2)10OH)、BRIJ(登録商標)58(C16H33(OCH2CH2)20OH)、BRIJ(登録商標)35(C12H25(OCH2CH2)23OH)等のアルコールエトキシレート、アルコール(第1級及び第2級)エトキシレート、アミンエトキシレート、グルコシド、グルカミド、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール-co-プロピレングリコール)、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール(セチル及びステアリルアルコール)、オレイルアルコール、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ノノキシノール-9、グリセロールアルキルエステル、ラウリン酸グリセリル、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル、ポリソルベート、ソルビタンアルキルエステル、スパン、コカミドMEA、コカミドDEA、ドデシルジメチルアミンオキシド、及び、ポリプロピレングリコールのブロックコポリマー、並びに、それらの混合物が挙げられる。
【0064】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、親水基(酸基)として、ホスホノ基を有するホスホン酸系界面活性剤、スルホ基を有するスルホン酸系界面活性剤、カルボキシ基を有するカルボン酸系界面活性剤、及び、硫酸エステル基を有する硫酸エステル系界面活性剤が挙げられる。
【0065】
アニオン界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム等のアルキルベンゼンスルホン酸並びにその塩;プロピルナフタレンスルホン酸及びトリイソプロピルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸並びにその塩;ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸及びアルキルジフェニルエーテルスルホン酸等のアルキルフェニルエーテルジスルホン酸並びにその塩;ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸及びドデシルジフェニルエーテルスルホン酸アンモニウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸並びにその塩;フェノールスルホン酸-ホルマリン縮合体及びその塩;アリールフェノールスルホン酸-ホルマリン縮合体及びその塩;デカンカルボン酸、N-アシルアミノ酸塩及びポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩;アシル化ペプチド;スルホン酸塩;硫酸化オイル、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩及びアルキルアミド硫酸塩等の硫酸エステル塩;リン酸エステル塩;アルキルリン酸塩;ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩;ラウリル硫酸アンモニウム;ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム);ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES);ミレス硫酸ナトリウム;スルホコハク酸ジオクチルナトリウム;オクタンスルホネート;パーフルオロオクタンスルホネート(PFOS);パーフルオロブタンスルホネート;アルキルベンゼンスルホネート;アルキルアリールエーテルホスフェート;アルキルエーテルホスフェート;アルキルカルボキシレート;脂肪酸塩(石鹸);ステアリン酸ナトリウム;ラウロイルサルコシン酸ナトリウム;パーフルオロノナノエート;パーフルオロオクタノエート;並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0066】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキシド及びそれらの混合物が挙げられる。
【0067】
界面活性剤としては、例えば、特開2015-158662号公報の段落[0092]~[0096]、特開2012-151273号公報の段落[0045]~[0046]及び特開2009-147389号公報の段落[0014]~[0020]に記載の化合物も挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0068】
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全質量に対して、0.001~8.0質量%が好ましく、0.005~5.0質量%がより好ましい。
組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、組成物中の全固形分に対して、0.01~50.0質量%が好ましく、0.1~45.0質量%がより好ましい。
【0069】
<キレート剤>
組成物は、キレート剤を含んでいてもよい。
キレート剤は、半導体基板における研磨粒子等の残渣物に含まれる金属とキレート化する機能を有する化合物である。中でも、1分子中に金属イオンと配位結合する官能基(配位基)を2つ以上有する化合物が好ましい。
なお、クエン酸、並びに、上記成分C、上記成分D及び後述する界面活性剤のいずれかに含まれる化合物は、キレート剤には含まれないものとする。
【0070】
キレート剤が有する配位基としては、例えば、酸基が挙げられる。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基及びフェノール性ヒドロキシル基が挙げられる。
キレート剤の炭素数は、15以下が好ましく、12以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。下限は特に制限されないが、2以上が好ましい。
キレート剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0071】
<pH調整剤>
組成物は、組成物のpHを調整及び維持するためにpH調整剤を含んでいてもよい。組成物は、pH調整剤によって後述するpHの範囲に調整してもよい。
pH調整剤としては、上記成分以外の塩基性化合物及び酸性化合物が挙げられる。
【0072】
塩基性化合物としては、塩基性無機化合物が挙げられる。
塩基性無機化合物としては、例えば、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。なお、上記成分C及び防食剤は、塩基性無機化合物には含まれない。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化セシウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム及び水酸化バリウムが挙げられる。
組成物は、塩基性化合物として、上記の化合物以外に、ニトロ、ニトロソ、オキシム、ケトオキシム、アルドオキシム、ニトロン、ラクタム、イソシアニド類、カルボヒドラジド等のヒドラジド類及び尿素からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
また、組成物に含まれる成分C及び防食剤が、組成物のpHを調整する塩基性化合物として機能してもよい。
【0073】
酸性化合物としては、例えば、無機酸及び有機酸が挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、ホウ酸及び六フッ化リン酸が挙げられる。
無機酸としては、塩酸又は硫酸が好ましい。
【0074】
有機酸は、酸性の官能基を有し、水溶液中で酸性(pHが7.0未満)を示す有機化合物である。なお、本明細書において、ソルビン酸、クエン酸、成分D、上記アニオン性界面活性剤、及び、上記のキレート剤は、有機酸に含まれないものとする。
有機酸が有する酸性の官能基としては、例えば、カルボキシ基、及び、スルホ基が挙げられる。有機酸としては、少なくとも1つのカルボキシ基を有するカルボン酸、及び、少なくとも1つのスルホ基を有するスルホン酸が挙げられる。
【0075】
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、及び、酪酸等の低級(炭素数1~4)脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。
スルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、及び、3-ヒドロキシプロパンスルホン酸等の低級(炭素数1~4)脂肪族モノスルホン酸が挙げられる。
また、組成物に含まれる酸性の成分が、組成物のpHを調整する酸性化合物として機能してもよい。
【0076】
pH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上で用いてもよい。
組成物がpH調整剤を含む場合、その含有量は、他の成分の種類及び量、並びに目的とする組成物のpHに応じて選択されるが、組成物の全質量に対して、0.03~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0077】
<添加剤>
組成物は、添加剤として、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、酸化剤、フッ素化合物、及び、有機溶剤が挙げられる。
【0078】
酸化剤としては、例えば、過酸化物、過硫化物(例えば、モノ過硫化物及びジ過硫化物)及び過炭酸塩、これらの酸、並びに、これらの塩が挙げられる。
酸化剤としては、例えば、酸化ハライド(ヨウ素酸、メタ過ヨウ素酸及びオルト過ヨウ素酸等の過ヨウ素酸、並びに、これらの塩)、過ホウ酸、過ホウ酸塩、セリウム化合物及びフェリシアン化物(フェリシアン化カリウム等)が挙げられる。
組成物が酸化剤を含む場合、酸化剤の含有量は、組成物の全質量に対して、0.01~10.0質量%が好ましく、0.05~5.0質量%がより好ましい。
組成物が酸化剤を含む場合、酸化剤の含有量は、組成物中の全固形分に対して、0.1~50.0質量%が好ましく、1.0~30.0質量%がより好ましい。
【0079】
フッ素化合物としては、例えば、特開2005-150236号公報の段落[0013]~[0015]に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
有機溶剤としては、公知の有機溶剤が使用でき、例えば、アルコール及びケトン等の親水性有機溶剤が挙げられる。有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
フッ素化合物及び有機溶剤の使用量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜設定すればよい。
【0080】
上記の各成分の組成物における含有量は、ガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS:Gas Chromatography-Mass Spectrometry)法、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS:Liquid Chromatography-Mass Spectrometry)法及びイオン交換クロマトグラフィー(IC:Ion-exchange Chromatography)法等の公知の方法によって測定できる。
【0081】
〔組成物の物性〕
<pH>
本発明の組成物のpHは、25℃において4.0~9.0である。
組成物のpHは、5.0~7.0が好ましく、5.5~6.5がより好ましい。
組成物のpHは、公知のpHメーター(例えば、東亜ディーケーケー株式会社製「WM-32EP」等)を用いて、JIS Z8802-1984に準拠した方法により測定できる。pHの測定温度は25℃である。
組成物のpHは、ソルビン酸、クエン酸、成分C、成分D、防食剤、界面活性剤及びキレート剤等のpH調整剤の機能を有する成分、並びに、上記のpH調整剤の含有量により、調整できる。
【0082】
<電気伝導度>
組成物の電気伝導度は、特に制限されないが、0.01~30mS/cmが好ましく、0.1~20mS/cmがより好ましく、5~17mS/cmが更に好ましい。
組成物の電気伝導度は、電気伝導率計(例えば、東亜ディーケーケー株式会社製「WM-32EP」等)を用いて測定した25℃における電気伝導度(mS/cm)である。
組成物の電気伝導度は、上記のソルビン酸、クエン酸及び成分C等の組成物中で電離し得る成分の含有量により、調整できる。
【0083】
<金属含有量>
組成物において、液中に不純物として含まれる各金属(Fe、Co、Na、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、Zn、Sn及びAgの金属元素)の含有量(イオン濃度として測定される)は、組成物の全質量に対して5質量ppm以下が好ましく、1質量ppm以下がより好ましい。最先端の半導体素子の製造においては、更に高純度の組成物が求められることが想定されることから、その金属含有量が1質量ppmよりも低い値、つまり、質量ppbオーダー以下が更に好ましく、100質量ppb以下が特に好ましく、10質量ppb未満が最も好ましい。下限としては、0が好ましい。
【0084】
金属含有量の低減方法としては、例えば、組成物を製造する際に使用する原材料の段階又は組成物の製造後の段階において、蒸留及びイオン交換樹脂又はフィルタを用いたろ過等の精製処理を行うことが挙げられる。
他の金属含有量の低減方法としては、原材料又は製造された組成物を収容する容器として、後述する不純物の溶出が少ない容器を用いることが挙げられる。また、組成物の製造時に配管等から金属成分が溶出しないように、配管内壁にフッ素樹脂のライニングを施すことも挙げられる。
【0085】
<リン酸イオンの含有量>
組成物において、残渣除去性、防食性、及び、配線電気特性の鼎立の点で、リン酸イオンの含有量は、組成物の全質量に対して200質量ppm以下が好ましく、50質量ppm以下がより好ましく、20質量ppm以下が更に好ましい。下限としては、組成物の全質量に対して0質量ppmであってよく、0.1質量ppm以上がより好ましい。
なお、上記のリン酸イオンの含有量は、リン酸二水素イオン(H2PO4
-)、リン酸水素イオン(HPO4
2-)、リン酸イオン(PO4
3-)、亜リン酸水素イオン(H2PO3
-)、及び、亜リン酸イオン(HPO3
2-)の合計含有量を意味する。
【0086】
金属含有量の低減方法としては、例えば、組成物を製造する際に使用する原材料の段階又は組成物の製造後の段階において、蒸留及びイオン交換樹脂を用いたろ過等の精製処理を行うことが挙げられる。
【0087】
<粗大粒子>
組成物は、粗大粒子を含んでいてもよいが、その含有量が低いことが好ましい。
粗大粒子とは、粒子の形状を球体とみなした場合における直径(粒径)が0.1μm以上である粒子を意味する。
組成物における粗大粒子の含有量としては、粒径0.1μm以上の粒子の含有量が、組成物1mLあたり10000個以下であることが好ましく、5000個以下であることがより好ましい。下限は、組成物1mLあたり0個以上が好ましく、0.01個以上がより好ましい。
組成物に含まれる粗大粒子は、原料に不純物として含まれる塵、埃、有機固形物及び無機固形物等の粒子、並びに、組成物の調製中に汚染物として持ち込まれる塵、埃、有機固形物及び無機固形物等の粒子であって、最終的に組成物中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
組成物中に存在する粗大粒子の含有量は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して液相で測定できる。
粗大粒子の除去方法としては、例えば、後述するフィルタリング等の精製処理が挙げられる。
【0088】
組成物は、その用途に応じて、砥粒を実質的に含まないことが好ましい。
砥粒とは、後述する化学機械研磨処理に用いる研磨液に含まれる、シリカ及びアルミナ等の材料からなる微粒子である。
本明細書において、砥粒としては、例えば、砥粒の形状を球体とみなした場合における直径(粒径)が10nm以上である粒子が挙げられ、組成物が砥粒を実質的に含まないとは、組成物に含まれる粒径10nm以上の砥粒の含有量が、組成物あたり1質量%以下であることを意味する。
組成物中に存在する砥粒の含有量の測定、及び、砥粒の除去は、それぞれ、粗大粒子の含有量の測定方法、及び、粗大粒子の除去方法に準じて行うことができる。
【0089】
〔組成物の製造〕
組成物は、公知の方法により製造できる。以下、組成物の製造方法について詳述する。
【0090】
<調製工程>
組成物の調製方法は、例えば、上記各成分を混合することにより組成物を製造できる。
上記各成分を混合する順序及び/又はタイミングは特に制限されず、例えば、精製した純水を入れた容器に、成分A~D及び任意成分を順次添加し、撹拌して混合する方法が挙げられる。特に、所望の組成を有する組成物を調製し易いことから、精製した純水を入れた容器に、撹拌下、成分B、成分D及び任意成分を順次添加し、次いで、成分C及び必要に応じてpH調整剤を添加して混合液のpHを調整した後、成分Aを添加し、混合することが好ましい。なお、水及び各成分を容器に添加する場合、一括して添加してもよいし、複数回にわたって分割して添加してもよい。
【0091】
組成物の調製に使用する撹拌装置及び撹拌方法は、撹拌機又は分散機として公知の装置を使用すればよい。撹拌機としては、例えば、工業用ミキサー、可搬型撹拌器、メカニカルスターラー及びマグネチックスターラーが挙げられる。分散機としては、例えば、工業用分散器、ホモジナイザー、超音波分散器及びビーズミルが挙げられる。
【0092】
組成物の調製工程における各成分の混合及び後述する精製処理、並びに、製造された組成物の保管は、40℃以下で行うことが好ましく、30℃以下で行うことがより好ましい。また、下限としては、5℃以上が好ましく、10℃以上がより好ましい。上記の温度範囲で組成物の調製、処理及び/又は保管を行うことにより、長期間安定に性能を維持できる。
【0093】
<精製処理>
組成物を調製するための原料のいずれか1種以上に対して、事前に精製処理を行うことが好ましい。精製処理としては、例えば、蒸留、イオン交換及びろ過(フィルタリング)等の公知の方法が挙げられる。
精製の程度は、原料の純度が99質量%以上となるまで精製することが好ましく、原液の純度が99.9質量%以上となるまで精製することがより好ましい。上限としては、99.9999質量%以下が好ましい。
【0094】
精製処理の方法としては、例えば、原料をイオン交換樹脂又はRO膜(Reverse Osmosis Membrane)等に通液する方法、原料の蒸留及び後述するフィルタリングが挙げられる。
精製処理として、上記精製方法を複数組み合わせて実施してもよい。例えば、原料に対して、RO膜に通液する1次精製を行った後、カチオン交換樹脂、アニオン交換樹脂又は混床型イオン交換樹脂からなる精製装置に通液する2次精製を実施してもよい。
また、精製処理は、複数回実施してもよい。
【0095】
(フィルタリング)
フィルタリングに用いるフィルタとしては、公知のろ過用のフィルタが挙げられる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びテトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、並びに、ポリエチレン及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度又は超高分子量を含む)からなるフィルタが挙げられる。
これらの材料の中でもポリエチレン、ポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)、フッ素樹脂(PTFE及びPFAを含む)及びポリアミド系樹脂(ナイロンを含む)からなる群から選択される材料が好ましく、フッ素樹脂のフィルタがより好ましい。これらの材料により形成されたフィルタを用いて原料のろ過を行うことで、欠陥の原因となりやすい極性の高い異物を効果的に除去できる。
【0096】
フィルタの臨界表面張力としては、70~95mN/mが好ましく、75~85mN/mがより好ましい。なお、フィルタの臨界表面張力の値は、製造メーカーの公称値である。臨界表面張力が上記範囲のフィルタを使用することで、欠陥の原因となり易い極性の高い異物を効果的に除去できる。
フィルタの孔径は、2~20nmが好ましく、2~15nmがより好ましい。この範囲とすることにより、ろ過詰まりを抑えつつ、原料中に含まれる不純物及び凝集物等の微細な異物を確実に除去することが可能となる。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照できる。
【0097】
フィルタリングは1回のみであってもよいし、2回以上行ってもよい。フィルタリングを2回以上行う場合、用いるフィルタは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また、フィルタリングの温度は室温(25℃)以下が好ましく、23℃以下がより好ましく、20℃以下が更に好ましい。また、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましい。上記の温度範囲でフィルタリングを行うことにより、原料中に溶解する粒子性の異物及び不純物の量を低減し、異物及び不純物を効率的に除去できる。
【0098】
<容器>
組成物(後述する希釈液の態様を含む)は、腐食性等が問題とならない限り、任意の容器に充填して保管、運搬及び使用できる。
【0099】
容器としては、半導体用途向けに、容器内のクリーン度が高く、容器の収容部の内壁から各液への不純物の溶出が抑制された容器が好ましい。そのような容器としては、半導体組成物用容器として市販されている各種容器が挙げられ、例えば、アイセロ化学社製の「クリーンボトル」シリーズ及びコダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」等が挙げられ、これらに制限されない。
また、組成物を収容する容器としては、その収容部の内壁等の各液との接液部が、フッ素樹脂(パーフルオロ樹脂)又は防錆及び金属溶出防止処理が施された金属で形成された容器が好ましい。
容器の内壁は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びポリエチレン-ポリプロピレン樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂、若しくはこれとは異なる樹脂又はステンレス、ハステロイ、インコネル及びモネル等、防錆及び金属溶出防止処理が施された金属から形成されることが好ましい。
【0100】
上記の異なる樹脂としては、フッ素樹脂(パーフルオロ樹脂)が好ましい。このように、内壁がフッ素樹脂である容器を用いることで、内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂又はポリエチレン-ポリプロピレン樹脂である容器と比べて、エチレン又はプロピレンのオリゴマーの溶出という不具合の発生を抑制できる。
このような内壁がフッ素樹脂である容器としては、例えば、Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラムが挙げられる。また、特表平3-502677号公報の第4頁、国際公開第2004/016526号明細書の第3頁、並びに、国際公開第99/046309号明細書の第9頁及び16頁等に記載の容器も使用できる。
【0101】
また、容器の内壁には、上記フッ素樹脂以外に、石英及び電解研磨された金属材料(つまり、電解研磨済みの金属材料)も好ましく用いられる。
上記電解研磨された金属材料の製造に用いられる金属材料は、クロム及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1つを含み、クロム及びニッケルの含有量の合計が金属材料全質量に対して25質量%超である金属材料であることが好ましく、例えば、ステンレス鋼及びニッケル-クロム合金が挙げられる。
金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計は、金属材料全質量に対して、30質量%以上がより好ましい。上限としては、90質量%以下が好ましい。
【0102】
金属材料を電解研磨する方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、特開2015-227501号公報の段落[0011]~[0014]及び特開2008-264929号公報の段落[0036]~[0042]等に記載された方法を使用できる。
【0103】
これらの容器は、組成物を充填する前にその内部が洗浄されることが好ましい。洗浄に使用される液体は、その液中における金属不純物量が低減されていることが好ましい。組成物は、製造後にガロン瓶又はコート瓶等の容器にボトリングし、輸送、保管されてもよい。
【0104】
保管における組成物中の成分の変化を防ぐ目的で、容器内を純度99.99995体積%以上の不活性ガス(窒素又はアルゴン等)で置換しておいてもよい。特に含水率が少ないガスが好ましい。また、輸送及び保管に際しては、常温であってもよく、変質を防ぐため、-20℃から20℃の範囲に温度制御してもよい。
【0105】
(クリーンルーム)
組成物の製造、容器の開封及び組成物の充填等を含めた取り扱い、処理分析、並びに、測定は、全てクリーンルームで行うことが好ましい。クリーンルームは、14644-1クリーンルーム基準を満たすことが好ましい。中でも、ISO(国際標準化機構)クラス1、ISOクラス2、ISOクラス3、ISOクラス4、ISOクラス5及びISOクラス6のいずれかを満たすことがより好ましく、ISOクラス1、ISOクラス2、ISOクラス3及びISOクラス4のいずれかを満たすことが更に好ましく、ISOクラス1又はISOクラス2を満たすことが特に好ましく、ISOクラス1を満たすことが最も好ましい。
【0106】
<希釈工程>
上記組成物は、水等の希釈剤を用いて希釈する希釈工程を経た後、希釈された組成物(希釈液)として半導体基板の洗浄に供されてもよい。
なお、希釈液も、本発明の要件を満たす限り、本発明の組成物の一形態である。
【0107】
希釈工程における組成物の希釈率は、各成分の種類及び含有量、並びに、半導体基板等の適用対象に応じて適宜調整すればよいが、希釈前の組成物に対する希釈液の比率(希釈倍率)は、例えば、質量比又は体積比(25℃における体積比)で、10~1000倍であり、30~400倍が好ましく、50~300倍がより好ましい。
特に各種洗浄液として用いる場合、組成物を30倍以上に希釈することが好ましく、50倍以上に希釈することがより好ましく、100倍以上に希釈することが更に好ましい。
また、希釈液の全質量に対する各成分(水は除く)の好適含有量は、例えば、組成物(希釈前の組成物)の全質量に対する各成分の好適含有量として説明した量を、上記範囲の希釈倍率(例えば、100)で除した量である。
【0108】
希釈液のpHの好ましい範囲は、上記組成物のpHの好ましい範囲とそれぞれ同じである。
希釈液の電気伝導度は、特に制限されないが、0.1~1.0mS/cmが好ましく、0.2~0.6mS/cmがより好ましい。
希釈液の電気伝導度の測定方法及び調整方法は、組成物の測定方法及び調整方法と同じである。希釈液の電気伝導度は、希釈率によっても調整できる。
【0109】
組成物を希釈する希釈工程の具体的方法は、上記の組成物の調製工程に準じて行えばよい。希釈工程で使用する撹拌装置及び撹拌方法もまた、上記の組成物の調製工程において挙げた公知の撹拌装置を用いて行えばよい。
【0110】
希釈工程に用いる水に対しては、事前に精製処理を行うことが好ましい。また、希釈工程により得られた希釈液に対して、精製処理を行うことが好ましい。
精製処理としては、上記組成物に対する精製処理として記載した、イオン交換樹脂又はRO膜等を用いたイオン成分低減処理及びフィルタリングを用いた異物除去が挙げられ、これらのうちいずれかの処理を行うことが好ましい。
【0111】
[組成物の用途]
次に、組成物の用途について説明する。
組成物は、半導体素子の製造プロセスに用いられる組成物として使用できる。すなわち、組成物は、半導体素子を製造するためのいずれの工程にも用いることができる。
【0112】
組成物の用途としては、例えば、半導体基板の洗浄に使用される洗浄液(半導体基板用洗浄液)、半導体基板の製造に使用される部材の洗浄に使用される洗浄液(部材用洗浄液)、及び、半導体基板上の金属含有物等の目的物の除去に使用される処理液(半導体基板用処理液)が挙げられる。
【0113】
上記半導体基板用洗浄液としては、半導体基板に適用して半導体基板に付着した金属不純物又は微粒子等の残渣物を除去する目的で用いられる洗浄液であれば特に制限されず、例えば、化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)処理が施された半導体基板用の洗浄液(pCMP洗浄液)、CMP処理が施された半導体基板のバフ洗浄用の洗浄液(バフ洗浄用洗浄液)、バックグラインディングが施された半導体基板の洗浄用の洗浄液、エッチング処理が施された半導体基板用の洗浄液(ポストエッチング残留物洗浄液)、及び、フラックスを用いて電子部品を半田付けした半導体基板又は半田バンプを形成した半導体基板の洗浄液が挙げられる。
【0114】
上記部材用洗浄液としては、例えば、半導体素子の製造プロセスにおいて半導体基板に接触する部材、及び、半導体基板に適用される前の処理液に接触する部材等の対象物を洗浄する洗浄液が挙げられる。より具体的には、CMP処理が施された半導体基板の洗浄に用いられる洗浄ブラシ用の洗浄液(ブラシ用洗浄液)、半導体基板のCMP処理に用いられる研磨パッド用の洗浄液(パッド用洗浄液)、半導体基板の収容容器等の樹脂製品の洗浄用の洗浄液、ガラス基板の洗浄用の洗浄液、及び、機械洗浄用の洗浄液が挙げられる。
が挙げられる。
【0115】
上記半導体基板用処理液としては、半導体基板上の金属含有物を溶解し、除去するエッチング液、感活性光線性又は感放射線性組成物を用いてレジスト膜を形成する工程の前に、感活性光線性又は感放射線性組成物の塗布性を改良するために基板上に塗布されるプリウェット液、及び、半導体基板上に付着した物質をすすぐリンス液等の半導体基板に適用する処理液が挙げられる。
【0116】
組成物は、例えば、上記用途の例示において挙げられた半導体基板、洗浄ブラシ、及び、研磨パッド等の対象物に対して、製造から所定期間が経過した後の組成物を適用する場合においても、残渣物の除去性能に優れるという効果を発揮する。
組成物は、上記用途のうち、1つの用途のみに用いられてもよいし、2以上の用途に用いられてもよい。
【0117】
組成物を上記用途に用いる方法としては、例えば、上記用途の対象物と組成物とを接触させる方法が挙げられる。これにより、対象物の洗浄(対象物上の残渣物の除去等)、又は、対象物が含有する金属含有物の1種以上を除去できる。
より具体的には、組成物を用いて、対象物に付着した残渣物を除去する洗浄方法(例えば、CMPが施された半導体基板を洗浄する方法)が挙げられる。また、組成物を用いて、対象物上の金属含有物を溶解して除去するエッチング処理方法、感活性光線性又は感放射線性組成物を用いてレジスト膜を形成する工程の前に組成物を半導体基板上に塗布するプリウェット処理方法、及び、組成物を用いて半導体基板をすすぐリンス処理方法も挙げられる。
【0118】
〔半導体基板〕
以下、半導体基板について説明する。
以下の説明においては、組成物を半導体基板に接触させて使用する例を代表的に挙げて、半導体基板の構成を説明するが、組成物を適用する態様は以下の説明に制限されず、上記の通り、組成物により洗浄される部材又は組成物により洗浄される部材と接触する処理液が接触する半導体基板が、以下に説明する半導体基板であってもよい。
【0119】
組成物の適用対象物の1つである半導体基板としては、例えば、半導体基板上に金属含有物を有する半導体基板が挙げられる。
本明細書において「半導体基板上」とは、例えば、半導体基板の表裏、側面及び溝内等のいずれも含む。また、半導体基板上の金属含有物とは、半導体基板の表面上に直接金属含有物がある場合のみならず、半導体基板上に他の層を介して金属含有物がある場合も含む。
半導体基板は、金属含有物を2種以上有してもよい。
【0120】
金属含有物は、金属(金属原子)を含む物質であればよい。
金属含有物に含まれる金属としては、例えば、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ru(ルテニウム)、Co(コバルト)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、Cr(クロム)、Hf(ハフニウム)、Os(オスミウム)、Pt(白金)、Ni(ニッケル)、Mn(マンガン)、Zr(ジルコニウム)、Mo(モリブデン)、La(ランタン)及びIr(イリジウム)からなる群から選択される少なくとも1つの金属Mが挙げられる。
金属含有物としては、例えば、金属Mの単体、金属Mを含む合金、金属Mの酸化物、金属Mの窒化物及び金属Mの酸窒化物が挙げられる。金属含有物は、これらの化合物のうちの2種以上を含む混合物であってもよい。また、上記酸化物、窒化物及び酸窒化物は、金属を含む、複合酸化物、複合窒化物及び複合酸窒化物のいずれであってもよい。
金属含有物中の金属原子の含有量は、金属含有物の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。上限としては、100質量%以下が好ましい。
【0121】
半導体基板は、金属Mを含む金属M含有物を有することが好ましく、Cu、Al、W、Co、Ti、Ta、Ru及びMoからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む金属含有物を有することがより好ましく、W、Co、Cu、Al、Ti、Ta及びRuからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む金属含有物を有することが更に好ましく、Wを含むW含有物を有することが特に好ましい。
【0122】
半導体基板としては、例えば、基板を構成するウエハの表面に、金属配線膜、バリアメタル及び絶縁膜を有する半導体基板が挙げられる。
【0123】
基板を構成するウエハとしては、例えば、シリコン(Si)ウエハ、シリコンカーバイド(SiC)ウエハ、シリコンを含む樹脂系ウエハ(ガラスエポキシウエハ)等のシリコン系材料からなるウエハ、ガリウムリン(GaP)ウエハ、ガリウムヒ素(GaAs)ウエハ及びインジウムリン(InP)ウエハが挙げられる。
シリコンウエハとしては、例えば、シリコンウエハに5価の原子(例えば、リン(P)、ヒ素(As)及びアンチモン(Sb)等)をドープしたn型シリコンウエハ、並びに、シリコンウエハに3価の原子(例えば、ホウ素(B)及びガリウム(Ga)等)をドープしたp型シリコンウエハが挙げられる。シリコンウエハのシリコンとしては、例えば、アモルファスシリコン、単結晶シリコン、多結晶シリコン及びポリシリコンが挙げられる。
中でも、シリコンウエハ、シリコンカーバイドウエハ及びシリコンを含む樹脂系ウエハ(ガラスエポキシウエハ)等のシリコン系材料からなるウエハが好ましい。
【0124】
半導体基板は、上記ウエハに絶縁膜を有していてもよい。
絶縁膜としては、例えば、シリコン酸化膜(例えば、二酸化ケイ素(SiO2)膜及びオルトケイ酸テトラエチル(Si(OC2H5)4)膜(TEOS膜)等)、シリコン窒化膜(例えば、窒化シリコン(Si3N4)及び窒化炭化シリコン(SiNC)等)、並びに、低誘電率(Low-k)膜(例えば、炭素ドープ酸化ケイ素(SiOC)膜及びシリコンカーバイド(SiC)膜等)が挙げられ、低誘電率(Low-k)膜が好ましい。
【0125】
半導体基板は、金属配線膜、バリアメタル又はその他の膜として、金属を含む金属膜を有することが多い。
半導体基板が有する金属膜としては、金属Mを含む金属膜が好ましく、Cu、Al、W、Co、Ti、Ta、Ru及びMoからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む金属膜がより好ましく、W、Co、Cu及びRuからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む金属膜が更に好ましい。
W、Co、Cu及びRuからなる群から選択される少なくとも1つの金属を含む金属膜としては、例えば、タングステンを主成分とする膜(W含有膜)、コバルトを主成分とする膜(Co含有膜)、銅を主成分とする膜(Cu含有膜)及びルテニウムを主成分とする膜(Ru含有膜)が挙げられる。
【0126】
中でも、組成物の対象物としては、W含有膜を有する半導体基板が好ましい。
W含有膜としては、例えば、タングステンのみからなる金属膜(W金属膜)及びタングステンと他の金属とからなる合金製の金属膜(W合金金属膜)が挙げられる。タングステン合金金属膜としては、例えば、タングステン-チタン合金金属膜(WTi合金金属膜)及びタングステン-コバルト合金金属膜(WCo合金金属膜)が挙げられる。W含有膜は、例えば、バリアメタル又はビアと配線の接続部に使用される。
【0127】
Cu含有膜としては、例えば、金属銅のみからなる配線膜(Cu配線膜)及び金属銅と他の金属とからなる合金製の配線膜(Cu合金配線膜)が挙げられる。
Co含有膜としては、例えば、金属コバルトのみからなる金属膜(Co金属膜)及び金属コバルトと他の金属とからなる合金製の金属膜(Co合金金属膜)が挙げられる。
Ru含有膜としては、例えば、金属ルテニウムのみからなる金属膜(Ru金属膜)及び金属ルテニウムと他の金属とからなる合金製の金属膜(Ru合金金属膜)が挙げられる。Ru含有膜は、バリアメタルとして使用されることが多い。
【0128】
半導体基板を構成するウエハ上に、上記の金属配線膜、バリアメタル及び絶縁膜を形成する方法としては、通常この分野で行われる方法であれば特に制限はない。
絶縁膜の形成方法としては、例えば、半導体基板を構成するウエハに対して、酸素ガス存在下で熱処理を行うことによりシリコン酸化膜を形成し、次いで、シラン及びアンモニアのガスを流入して、化学気相蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)法によりシリコン窒化膜を形成する方法が挙げられる。
W含有膜、Cu含有膜、Ru含有膜、及び、Co含有膜を形成する方法としては、例えば、上記の絶縁膜を有するウエハ上に、レジスト等の公知の方法で回路を形成し、次いで、鍍金及びCVD法等の方法により、W含有膜、Cu含有膜、Ru含有膜又はCo含有膜を形成する方法が挙げられる。
【0129】
<CMP処理>
半導体基板は、ウエハ上に絶縁膜、バリアメタル及び金属膜を設けた後、CMP処理等の平坦化処理が施された半導体基板であってもよい。
CMP処理とは、一般的には、円形の研磨定盤(プラテン)上に研磨パッドを貼り付け、研磨パッドの表面を研磨微粒子(砥粒)を含む研磨液で浸して、貼り付けた研磨パッドの表面に、金属膜、バリアメタル及び絶縁膜を有する半導体基板の表面を押しつけ、その裏面から所定の圧力(研磨圧力)を加えた状態で、研磨定盤及び基盤の双方を回転させることにより、研磨液に含まれる成分の化学的作用と機械的摩擦による研磨の複合作用で半導体基板の表面を平坦化する処理である。
CMP処理が施された半導体基板の表面には、CMP処理で使用した砥粒(例えば、シリカ及びアルミナ等)、研磨された金属膜及び/又はバリアメタルに由来する金属不純物(金属残渣)等の不純物が残存することがある。また、CMP処理の際に用いた研磨液に由来する有機不純物が残存する場合もある。これらの不純物は、例えば、配線間を短絡させ、半導体基板の電気的特性を劣化させるおそれがあるため、CMP処理が施された半導体基板は、これらの不純物を表面から除去するための洗浄処理に供される。
CMP処理が施された半導体基板としては、精密工学会誌Vol.84、No.3、2018に記載のCMP処理が施された基板が挙げられるが、これに制限されない。
【0130】
CMP処理には、研磨液が用いられる。
CMP処理に用いる研磨液としては、半導体基板の種類、研磨液の組成、及び、除去対象とする残渣物の種類に応じて、公知の研磨液が適宜使用できる。
研磨液としては、鉄イオン及び過酸化水素を含む研磨液、又は、化学修飾されたコロイダルシリカ(例えば、カチオン化修飾及びアニオン化修飾等)を含む研磨液が挙げられる。また、研磨液としては、特開2020-068378号公報、特開2020-015899号公報及び米国特許11043151号に記載の鉄錯体を含む研磨液、並びに、特開2021-082645号公報に記載の化学修飾されたコロイダルシリカを含む研磨液も挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0131】
CMP処理に使用できる研磨パッドは特に制限されない。
研磨パッドの構成材料としては、例えば、熱可塑性樹脂又はエラストマー、及び、ポリウレタン樹脂(より好ましくは発泡ポリウレタン樹脂)が挙げられる。また、ポリウレタン樹脂を含浸させた不織布を含む研磨パッド、及び、表面がスウェード状の研磨パッドも使用できる。親水性がより高く、研磨液が浸漬し易い点で、ポリウレタン樹脂を含む研磨パッドが好ましい。
市販品としては、例えば、JSR株式会社から熱可塑性樹脂又はエラストマー製研磨パッドが入手でき、ニッタ・デュポン社からポリウレタン樹脂製研磨パッドが入手できる。
【0132】
<バフ洗浄>
半導体基板は、CMP処理が施された後、バフ洗浄が施された半導体基板であってもよい。
バフ洗浄は、研磨パッドを用いて半導体基板の表面における不純物を低減する処理である。具体的には、円形のプラテンに貼り付けられた研磨パッドの表面に、CMP処理が施された半導体基板の研磨面を押し付けて研磨パッドと半導体基板とを接触させて、その接触部分にバフ洗浄用洗浄液を供給しながら半導体基板と研磨パッドとを相対的に摺動させる。この処理により、CMP処理が施された半導体基板の表面の不純物が、研磨パッドによる摩擦力及び洗浄液による化学的作用によって、除去される。
【0133】
バフ洗浄用洗浄液としては、半導体基板の種類、並びに、除去対象とする不純物の種類及び量に応じて、公知のバフ洗浄用洗浄液が適宜使用できる。バフ洗浄用洗浄液に含まれる成分としては、例えば、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー、分散媒としての水、及び、硝酸等の酸が挙げられる。
後述するように、バフ洗浄用洗浄液として組成物を用いて、半導体基板にバフ洗浄を施してもよい。
バフ洗浄に使用する研磨装置及び研磨条件等については、半導体基板の種類及び除去対象物等に応じて、公知の装置及び条件から適宜選択できる。バフ洗浄としては、例えば、国際公開第2017/169539号の段落[0085]~[0088]に記載の処理が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0134】
以下、上記の組成物の用途のうち、半導体基板(好ましくはCMP処理が施された半導体基板)用の洗浄液、CMP処理が施された半導体基板の洗浄に用いられるブラシ用洗浄液、半導体基板のCMP処理に用いられる研磨パッド用洗浄液、及び、CMP処理が施された半導体基板のバフ洗浄用洗浄液の各用途について、詳しく説明する。
上記用途に用いるCMP処理が施された半導体基板としては、既に説明した上記の半導体基板であれば特に制限されないが、タングステンを含有する半導体基板が好ましく、W含有膜を有する半導体基板がより好ましい。
【0135】
〔第1用途:CMP処理が施された半導体基板の洗浄〕
組成物は、CMP処理が施された半導体基板を洗浄する工程を有する半導体基板の洗浄方法における半導体基板用洗浄液として用いることができる(以下、「第1用途」ともいう。)。即ち、組成物は、半導体基板にCMP処理を施す工程と、CMP処理が施された半導体基板を洗浄する工程と、を有する半導体素子の製造方法において、CMP処理が施された半導体基板の洗浄に用いる洗浄液として用いることができる。
組成物は、CMP処理された半導体基板に対して行われる公知の方法に適用できる。
第1用途に用いられる組成物は上記希釈工程で得られる希釈液であってもよく、CMP処理が施された半導体基板に希釈液を適用して洗浄する工程を有することも好ましい。
【0136】
CMP処理が施された半導体基板を洗浄する洗浄工程としては、組成物を半導体基板に接触させることにより半導体基板を洗浄する方法であれば特に制限されず、半導体基板に組成物を供給しながらブラシ等の洗浄部材を半導体基板の表面に物理的に接触させて残渣物等を除去するスクラブ組成物に半導体基板を浸漬する浸漬式、半導体基板を回転させながら組成物を滴下するスピン(滴下)式、及び、組成物を噴霧する噴霧(スプレー)式等の半導体素子製造の分野で行われる公知の様式が適宜採用される。
半導体基板の洗浄において、半導体基板の表面に残存する不純物をより低減し、組成物の洗浄能力をより増進するために、機械的撹拌方法を用いてもよい。機械的撹拌方法としては、例えば、半導体基板上で組成物を循環させる方法、半導体基板上で組成物を流過又は噴霧させる方法、及び、超音波又はメガソニックにて組成物を撹拌する方法が挙げられる。
上記洗浄工程は、1回のみ実施してもよく、2回以上実施してもよい。2回以上洗浄する場合には同じ方法を繰り返してもよいし、異なる方法を組み合わせてもよい。
【0137】
半導体基板の洗浄方法としては、枚葉方式及びバッチ方式のいずれであってもよい。
枚葉方式とは、一般的に半導体基板を1枚ずつ処理する方式であり、バッチ方式とは、一般的に複数枚の半導体基板を同時に処理する方式である。
【0138】
半導体基板の洗浄に用いる組成物の温度は、通常この分野で行われる温度であれば特に制限されない。室温(約25℃)で洗浄を行うことが多いが、洗浄性の向上及び部材へのダメージを抑えるために、温度は任意に選択できる。組成物の温度としては、10~60℃が好ましく、15~50℃がより好ましい。
【0139】
半導体基板の洗浄における洗浄時間は、組成物に含まれる成分の種類及び含有量等に応じて適宜変更できる。実用的には、10~120秒間が好ましく、20~90秒間がより好ましく、30~60秒間が更に好ましい。
半導体基板の洗浄工程における組成物の供給量(供給速度)としては、50~5000mL/分が好ましく、500~2000mL/分がより好ましい。
【0140】
第1用途に用いられる組成物の好ましい態様は、以下の通りである。
組成物のpHは、4.0~9.0であり、上記の組成物のpHの好ましい範囲内であることが好ましい。
第1用途に用いられる組成物は、上記希釈工程で得られる希釈液であってもよい。希釈液を用いる場合の希釈倍率は、質量比で10倍以上が好ましく、30倍以上がより好ましく、50倍以上が更に好ましく、100倍以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、1000倍以下が好ましく、400倍以下がより好ましく、300倍以下が更に好ましい。希釈液のpHは、4.0~9.0であり、上記の希釈液のpHの好ましい範囲内であることが好ましい。
組成物におけるソルビン酸の含有量Aに対するクエン酸の含有量の比率B/Aは、1~50が好ましく、上記の比率B/Aの好ましい範囲内であることが好ましい。また、組成物におけるソルビン酸の含有量Aに対する成分Cの含有量の比率C/Aは、10~500が好ましく、上記の比率C/Aの好ましい範囲内であることが好ましい。
組成物の25℃における電気伝導度は、0.05mS/cm以上が好ましく、0.1~20mS/cmがより好ましい。
【0141】
上記の半導体基板の洗浄の後に、半導体基板を溶剤ですすいで清浄する工程(以下、「リンス工程」ともいう。)を行ってもよい。
リンス工程は、半導体基板の洗浄工程の後に連続して行われ、リンス液を用いて5~300秒間にわたってすすぐ工程であることが好ましい。リンス工程は、上記機械的撹拌方法を用いて行ってもよい。
【0142】
リンス液としては、例えば、水(好ましくは脱イオン(DI:De Ionize)水)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリジノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。また、pHが8.0超である水性リンス液(希釈した水性のアンモニア水等)を利用してもよい。
リンス液を半導体基板に接触させる方法としては、上記組成物を半導体基板に接触させる方法を同様に適用できる。
【0143】
また、上記リンス工程の後に、半導体基板を乾燥させる乾燥工程を行ってもよい。
乾燥方法としては、例えば、スピン乾燥法、半導体基板上に乾性ガスを流過させる方法、ホットプレート及び赤外線ランプ等の加熱手段によって基板を加熱する方法、マランゴニ乾燥法、ロタゴニ乾燥法、IPA(イソプロピルアルコール)乾燥法、並びに、これらの任意の組み合わせた方法が挙げられる。
【0144】
〔第2用途:洗浄ブラシの洗浄〕
組成物は、CMP処理が施された半導体基板の洗浄に用いられる洗浄ブラシを洗浄する工程を有する洗浄ブラシの洗浄方法において、ブラシ用洗浄液として用いることができる(以下、「第2用途」ともいう。)。
第2用途の洗浄対象物である洗浄ブラシとしては、半導体基板上の表面に物理的に接触させて残渣物等を除去するスクラブ洗浄に用いられる公知のブラシが挙げられる。
【0145】
洗浄ブラシの形状は特に制限されず、例えば、円筒状のロール型ブラシ及びペンシル型ブラシが挙げられ、ロール型ブラシが好ましい。また、洗浄ブラシは、表面に径方向に突出する多数の円柱型の突起を有することが多い。
洗浄ブラシの構成材料としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、ポリウレタン樹脂、及び、ポリオレフィン樹脂等の水酸基を有するポリマー樹脂が挙げられる。洗浄ブラシとしては、上記ポリマー樹脂のスポンジ状物質からなる洗浄ブラシが好ましく、PVA樹脂からなるスポンジ状物質からなる洗浄ブラシがより好ましい。
洗浄ブラシの市販品としては、例えば、Entegris社製ブラシ(例えば型番「PVP1ARXR1」)、及び、アイオン社製ブラシ(ベルイーター(登録商標)Aシリーズ)が挙げられる。
【0146】
組成物を用いる洗浄ブラシの洗浄方法としては、上記第1用途における半導体基板の洗浄工程として記載した浸漬式及び噴霧式等の、半導体素子製造の分野で行われる公知の様式が適宜採用される。
また、洗浄液の温度及び洗浄時間を含む洗浄条件についても、洗浄ブラシの構成材料等に基づいて、上記半導体基板の洗浄工程における洗浄条件及び公知の洗浄方法を参照して適宜選択できる。
【0147】
第2用途に用いられる組成物の好ましい態様は、以下の通りである。
組成物のpHは、4.0~9.0であり、上記の組成物のpHの好ましい範囲内であることが好ましい。
第2用途に用いられる組成物は、上記希釈工程で得られる希釈液であってもよい。希釈液を用いる場合の希釈倍率は、質量比で10~100倍が好ましく、30~100倍がより好ましい。希釈液のpHは、4.0~9.0であり、上記の希釈液のpHの好ましい範囲内であることが好ましい。
組成物におけるソルビン酸の含有量Aに対するクエン酸の含有量の比率B/Aは、1~50が好ましく、上記の比率B/Aの好ましい範囲内であることが好ましい。また、組成物におけるソルビン酸の含有量Aに対する成分Cの含有量の比率C/Aは、10~500が好ましく、上記の比率C/Aの好ましい範囲内であることが好ましい。
組成物の25℃における電気伝導度は、0.05mS/cm以上が好ましく、0.1~10mS/cmがより好ましい。
【0148】
〔第3用途:研磨パッドの洗浄〕
組成物は、半導体基板のCMP処理に用いられる研磨パッドを洗浄する工程を有する研磨パッドの洗浄方法において、研磨パッド用洗浄液として用いることができる(以下、「第3用途」ともいう。)。
第3用途の洗浄対象物である研磨パッドとしては、半導体基板のCMP処理に用いられる公知の研磨パッドであれば特に制限されず、上記<CMP処理>に記載した研磨パッドが挙げられる。中でも、ポリウレタン樹脂を含む研磨パッドが好ましい。
【0149】
研磨パッドの洗浄方法としては、上記第1用途における半導体基板の洗浄工程として記載した浸漬式及び噴霧式等の、半導体素子製造の分野で行われる公知の様式が適宜採用される。
また、洗浄液の温度及び洗浄時間を含む洗浄条件についても、研磨パッドの構成材料等に基づいて、上記半導体基板の洗浄工程における洗浄条件及び公知の洗浄方法を参照して適宜選択できる。
【0150】
第3用途に用いられる組成物の好ましい態様は、以下の通りである。
組成物のpHは、4.0~9.0であり、上記の組成物のpHの好ましい範囲内であることが好ましい。
第3用途に用いられる組成物は、上記希釈工程で得られる希釈液であってもよい。希釈液を用いる場合の希釈倍率は、質量比で10~100倍が好ましく、30~100倍がより好ましく、50~100倍が更に好ましい。希釈液のpHは、4.0~9.0であり、上記の希釈液のpHの好ましい範囲内であることが好ましい。
組成物におけるソルビン酸の含有量Aに対するクエン酸の含有量の比率B/Aは、1~50が好ましく、上記の比率B/Aの好ましい範囲内であることが好ましい。また、組成物におけるソルビン酸の含有量Aに対する成分Cの含有量の比率C/Aは、10~500が好ましく、上記の比率C/Aの好ましい範囲内であることが好ましい。
組成物の25℃における電気伝導度は、0.05mS/cm以上が好ましく、0.1~10mS/cmがより好ましい。
【0151】
〔第4用途:バフ洗浄〕
組成物は、CMP処理が施された半導体基板の表面に研磨パッドを接触させて、半導体基板の表面を洗浄するバフ洗浄工程を有する半導体基板の洗浄方法において、バフ洗浄用洗浄液として用いることができる(以下、「第4用途」ともいう。)。
第4用途のバフ洗浄の具体的な方法については、上記<バフ洗浄>において既に説明した通りである。また、第4用途のバフ洗浄に用いる研磨パッドについては、上記<CMP処理>において既に説明した通りである。
【0152】
第4用途に用いられる組成物の好ましい態様は、以下の通りである。
組成物のpHは、4.0~9.0であり、上記の組成物のpHの好ましい範囲内であることが好ましい。
第4用途に用いられる組成物は、上記希釈工程で得られる希釈液であってもよい。希釈液を用いる場合の希釈倍率は、質量比で10~100倍が好ましく、30~100倍がより好ましく、50~100倍が更に好ましい。希釈液のpHは、4.0~9.0であり、上記の希釈液のpHの好ましい範囲内であることが好ましい。
組成物におけるソルビン酸の含有量Aに対するクエン酸の含有量の比率B/Aは、1~50が好ましく、上記の比率B/Aの好ましい範囲内であることが好ましい。また、組成物におけるソルビン酸の含有量Aに対する成分Cの含有量の比率C/Aは、10~500が好ましく、上記の比率C/Aの好ましい範囲内であることが好ましい。
組成物の25℃における電気伝導度は、0.05mS/cm以上が好ましく、0.2~20mS/cmがより好ましい。
第4用途に用いられる組成物は、砥粒を実質的に含まないことが好ましい。
【0153】
〔その他の用途〕
組成物は、CMP処理が施された半導体基板の洗浄、CMP処理が施された半導体基板の洗浄に用いられる洗浄ブラシの洗浄、半導体基板のCMP処理に用いられる研磨パッドの洗浄、及び、CMP処理が施された半導体基板のバフ洗浄のいずれの用途とも異なる用途に用いることもできる。
【0154】
<バックグラインディングが施された半導体基板の洗浄>
半導体デバイスの小型化及び薄型化の目的で、半導体基板の回路形成面の反対側の面を研削することにより、ウエハの厚みを減少させる技術(バックグラインディング)が知られている。
組成物は、バックグラインディングが施された半導体基板を洗浄する洗浄工程において、洗浄液として用いることができる。組成物を用いることにより、バックグラインディング及びバックグラインディングに伴うエッチング処理等により生じた残渣物を除去できる。
【0155】
<エッチング処理が施された半導体基板の洗浄>
半導体素子の製造プロセスにおいて、レジストパターンをマスクとしてプラズマエッチングにより半導体基板の金属層及び/又は絶縁層をエッチングする際、フォトレジスト、金属層及び絶縁層に由来する残渣物が半導体基板上に生じる。また、不要となったレジストパターンをプラズマアッシングにより除去する際にも、灰化したフォトレジストに由来する残渣物が半導体基板上に生じる。
組成物は、エッチング処理が施された半導体基板を洗浄する洗浄工程において、洗浄液として用いることができる。組成物を用いることにより、エッチング処理が施された半導体基板上に生じた上記のエッチング残渣物及び/又はアッシング残渣物を除去できる。
【0156】
<半導体基板上のフラックス残渣物の洗浄>
半田付けにより電子部品を半導体基板上に搭載する際、電極又は配線等の金属と半田金属との接続を妨げる酸化物を取り除き、接続を促進するフラックス(促進剤)が用いられる。このようにフラックスを用いて電子部品を半田付けした基板、及び/又は、電子部品を半田付けするための半田バンプをフラックスを用いて形成した基板等には、フラックス由来の残渣物が残存する場合がある。
組成物は、フラックスを用いて電子部品を半田付けした半導体基板、又は、フラックスを用いて半田バンプを形成した半導体基板を洗浄する洗浄液として用いることができる。組成物を用いることにより、上記半導体基板上に残存するフラックス由来の残渣物を除去できる。
【0157】
<エッチング処理が施された半導体基板の洗浄>
半導体素子の製造プロセスにおいて、レジストパターンをマスクとしてプラズマエッチングにより半導体基板の金属層及び/又は絶縁層をエッチングする際、フォトレジスト、金属層及び絶縁層に由来する残渣物が半導体基板上に生じる。また、不要となったレジストパターンをプラズマアッシングにより除去する際にも、灰化したフォトレジストに由来する残渣物が半導体基板上に生じる。
組成物は、エッチング処理が施された半導体基板を洗浄する洗浄工程において、洗浄液として用いることができる。組成物を用いることにより、エッチング処理が施された半導体基板上に生じた上記のエッチング残渣物及び/又はアッシング残渣物を除去できる。
【0158】
<ボンディング処理が施された半導体基板の洗浄>
半導体素子の製造プロセスにおいて、ウエハを所定の大きさに切断(ダイシング)して製造された半導体チップは、ダイシングフィルムにより保持された半導体チップを1つずつピックアップされ、次のボンディング工程に送られる。このダイシングの際、ウエハの切削屑及びダイシングフィルムの切削屑等の異物が半導体チップの表面に付着する。特に、半導体チップの表面に配置された端子を介して基板と接続させるフリップチップボンディング、或いは、半導体チップの上に他の半導体チップを直接ボンディングするダイレクトボンディング等のボンディング工程では、数μm又はそれ以下の微細な異物によりボンディング品質が低下することが知られており、ボンディング工程に供される半導体チップから異物を取り除く処理を洗浄処理が行われる。
本組成物は、ボンディング工程に供される前の半導体チップを洗浄する洗浄工程において、洗浄液として用いることができる。本組成物を用いることにより、ボンディング工程前のダイシング工程で生じた切削屑等の異物を半導体チップから除去できる。
【0159】
<樹脂製品の洗浄>
組成物は、樹脂製品、特に、半導体素子の製造プロセスにおいて半導体基板の収容及び搬送等に使用される樹脂製の容器の洗浄に用いることができる。
半導体基板の収容及び搬送の際、パーティクルの侵入防止及び化学的な汚染防止のため、半導体基板収容用の容器が用いられる。そのような容器としては、例えば、半導体デバイスメーカーにウエハを納入する際に用いられるFOSB(Front Opening Shipping Box)、並びに、ウエハ処理の工程間での搬送のためにウエハを収納するFOUP(Front Opening Unified Pod)及びSMIF(Standard Mechanical Interface)が挙げられる。ここで、半導体基板を容器に収納し、取り出す操作を何度も繰り返し行うと、半導体基板と容器内部との接触により金属不純物が生じることがある。また、半導体素子の製造プロセスにおいて生じ、半導体基板上に残存していた残渣物により、容器内部が汚染されることがある。これらの金属不純物及び残渣物が半導体基板に付着することを防止するために、容器内部が洗浄される。
組成物を上記容器の洗浄に用いることにより、エッチング処理が施された半導体基板上に生じた上記のエッチング残渣物及び/又はアッシング残渣物を除去できる。
【0160】
<ガラス基板の洗浄>
組成物は、ガラス基板、中でも、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ及びタッチパネル等のフラットパネルディスプレイ、並びに、ハードディスクに適するガラス基板を洗浄する洗浄液として用いることができる。組成物を用いることにより、ガラス基板上に残存する金属不純物等の残渣物を除去できる。
【0161】
<エッチング処理>
組成物は、半導体基板上の金属膜を除去するエッチング処理に用いることができる。エッチング処理としては、例えば、組成物を半導体基板に接触させることにより、対象物上の金属含有物を溶解して除去する方法が挙げられる。組成物を半導体基板に接触させる方法は特に制限されず、第1用途において記載した方法が適用できる。
エッチング処理の具体的な態様としては、国際公開第2019/138814号明細書の段落[0049]~[0069]の記載が援用でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0162】
上記用途により組成物を用いて行う処理はいずれも、半導体素子の製造において行われるその他の工程の前又は後に組み合わせて実施してもよい。上記処理を実施する間にその他の工程に組み込んでもよいし、その他の工程の間に上記処理を組み込んでもよい。
その他の工程としては、例えば、金属配線、ゲート構造、ソース構造、ドレイン構造、絶縁層、強磁性層及び/又は非磁性層等の各構造の形成工程(層形成、エッチング、CMP処理及び変成等)、レジストの形成工程、露光工程及び除去工程、熱処理工程、洗浄工程、並びに、検査工程等が挙げられる。
上記処理は、バックエンドプロセス(BEOL:Back end of the line)、ミドルプロセス(MOL:Middle of the line)及びフロントエンドプロセス(FEOL:Front end of the line)のいずれの段階で行ってもよい。
【実施例】
【0163】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、及び割合等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されない。
【0164】
以下の実施例において、組成物のpH及び電気伝導度は、ポータブル電気伝導率・pH計(東亜ディーケーケー株式会社製、「WM-32EP」)を用いて測定した。pHの測定は、JIS Z8802-1984に準拠して25℃において行った。
実施例及び比較例の組成物の製造にあたって、容器の取り扱い、組成物の調製、充填、保管及び分析測定は、全てISOクラス6以下を満たすレベルのクリーンルームで行った。
【0165】
[組成物の原料]
組成物を製造するために、以下の化合物を使用した。なお、実施例で使用した各種成分はいずれも、半導体グレードに分類されるもの、又は、それに準ずる高純度グレードに分類されるものを使用した。
【0166】
・ ソルビン酸
・ クエン酸
【0167】
〔成分C〕
・ Tris(トリスヒドロキシメチルアミノメタン)
・ MEA(モノエタノールアミン)
・ アンモニア
・ TMAH(テトラメチルアンモニウム水酸化物)
【0168】
〔成分D〕
・ HEDPO(1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸)
・ NTPO(ニトリロトリス(メチレンホスホン酸))
・ EDTPO(エチレンジアミンテトラホスホン酸)
・ PBTCA(2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸)
・ フィチン酸
【0169】
本実施例における組成物の製造では、pH調整剤として上記成分Cを使用し、水としては市販の超純水(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用いた。
【0170】
[実施例1]
〔調製例〕
下記の方法に従って、組成物101を調製した。
攪拌下、超純水に、クエン酸及び1-ヒドロキシエチリデン-1,1’-ジホスホン酸(HEDPO)をそれぞれ添加した後、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)を添加し、次いで、クエン酸を添加した。なお、各成分は、表1に記載の配合となる量を添加した。得られた混合液を十分に攪拌することにより、組成物101を得た。
組成物101の調製方法に準じて、表1に示す組成を有する組成物102~116及び比較組成物1~5を、それぞれ製造した。
【0171】
大気圧下、上記の方法で調製された各組成物のサンプル800mLを、「クリーンバリアボトル」(株式会社アイセロ製、容量1L)に移し、容器内上部に大気圧下の空間を残して密閉した。サンプル入りの容器を25℃の暗所環境に14日間保管した。
このようにして得られた保管後のサンプルを以下の性能評価試験に用いた。
【0172】
〔防食性の評価〕
表面にタングステン(W)からなる金属膜を有するウエハ(直径12インチ)をカットし、2cm□のウエハクーポンを準備した。金属膜(W膜)の厚さはおよそ100nmであった。200mLの上記サンプル(25℃)中にウエハクーポンを浸漬し、攪拌回転数250rpmにて撹拌しながら、30分間の浸漬処理を行った。
浸漬処理前後に測定した金属膜の厚さの差分から、浸漬処理により溶解した金属膜の膜厚を算出し、単位時間当たりの金属膜の腐食速度(単位:Å/分)を算出した。
得られた金属膜の腐食速度から、下記の評価基準により、各サンプルのタングステンに対する防食性を評価した。評価結果を表1に示す。
なお、W膜の腐食速度が低いほど、組成物のタングステンに対する腐食抑制性能が優れる。実用上、評価「4」以上が望ましい。
【0173】
(防食性評価基準)
8:腐食速度が0.3Å/分以下
7:腐食速度が0.3Å/分超え0.4Å/分以下
6:腐食速度が0.4Å/分超え0.5Å/分以下
5:腐食速度が0.5Å/分超え0.6Å/分以下
4:腐食速度が0.6Å/分超え0.7Å/分以下
3:腐食速度が0.7Å/分超え0.8Å/分以下
2:腐食速度が0.8Å/分超え1.0Å/分未満
1:腐食速度が1.0Å/分以上
【0174】
〔残渣除去性の評価〕
研磨装置(株式会社荏原製作所製「FREX300II」)を用いて、表面に膜厚5000ÅのCVD-W膜(タングステン膜)を有するシリコンウエハ(直径12インチ)に対して、下記条件でCMP処理を施した。
・ 研磨液:CMPスラリー(商品名「W2000」、キャボット社製)に過酸化水素をスラリーの全質量に対して2質量%添加してなる研磨液
・ テ-ブル回転数: 80rpm
・ ヘッド回転数: 78rpm
・ 研磨圧力: 120hPa
・ 研磨パッド: ロデール・ニッタ株式会社製「IC1400」
・ 研磨液供給速度: 250mL/min
・ 研磨時間: 60秒間
【0175】
室温(25℃)に調整した各サンプルを洗浄液として用いて、上記のCMP処理が施されたウエハの研磨面を30秒間スクラブ洗浄した。その後、洗浄されたウエハを水でリンスし、乾燥(ドライアウト)した。
欠陥検出装置(AMAT社製、ComPlus-II)を用いてウエハの研磨面に存在する欠陥を検出し、各欠陥の種類を、SEM(走査電子顕微鏡)による観測と、EDAX(エネルギー分散型X線分析装置)による構成元素の分析により特定した。これにより、CMP処理による残渣物に基づく欠陥の数を求めた。中央部及び中央部を挟む端部2か所の計3か所における1辺10μmの正方形の観察領域に現れる欠陥を、表面粗さ測定用の原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定し、CMP処理による残渣物に基づく長さ0.1μm以上の欠陥の個数をカウントした。
カウントされた観察領域当たりの欠陥数を加算平均して得られる平均欠陥数から、下記の基準に基づいて各サンプルの半導体基板に対する残渣除去性を評価した。実用上、評価「4」以上が望ましい。
【0176】
(残渣除去性評価基準)
8:観察領域当たりの平均欠陥数が20個未満であった。
7:観察領域当たりの平均欠陥数が20個以上30個未満であった。
6:観察領域当たりの平均欠陥数が30個以上40個未満であった。
5:観察領域当たりの平均欠陥数が40個以上50個未満であった。
4:観察領域当たりの平均欠陥数が50個以上60個未満であった。
3:観察領域当たりの平均欠陥数が60個以上80個未満であった。
2:観察領域当たりの平均欠陥数が80個以上100個未満であった。
1:観察領域当たりの平均欠陥数が100個以上であった。
【0177】
〔配線電気特性の評価〕
上記の残渣除去性の評価試験に記載の方法に従い、表面にW膜を有するシリコンウエハに対して、CMP処理、各サンプルを用いるスクラブ洗浄、リンス、及び、乾燥からなる一連の処理を行った。
上記一連の処理を行う前後において、シリコンウエハのW膜の表面電気抵抗(シート抵抗値)を、シート抵抗測定器(株式会社国際電気セミコンダクターサービス製「VR-120」)を用いて測定した。上記処理前のシート抵抗値(Ω/□)に対する後における上記処理後のシート抵抗値(Ω/□)の変化率({(処理後のW膜のシート抵抗値)-(処理前のW膜のシート抵抗値)}/(処理前のW膜のシート抵抗値)×100)を算出し、下記の基準に基づいてW配線の電気特性への影響を評価した。実用上、評価「4」以上が望ましい。
【0178】
(電気特性評価基準)
8:シート抵抗値の変化率が1%未満。
7:シート抵抗値の変化率が1%以上1.2%未満。
6:シート抵抗値の変化率が1.2%以上1.5%未満。
5:シート抵抗値の変化率が1.5%以上1.7%未満。
4:シート抵抗値の変化率が1.7%以上2.0%未満。
3:シート抵抗値の変化率が2.0%以上2.5%未満。
2:シート抵抗値の変化率が2.5%以上3%未満。
1:シート抵抗値の変化率が3%以上。
【0179】
下記表1に、各組成物の組成及び物性、並びに、上記評価による評価結果を示す。
表中、「量(%)」欄は、組成物の全質量に対する各成分の含有量(単位:質量%)を示す。なお、表中の各成分の含有量は、各成分の化合物としての含有量を示す。また、水は水以外の成分の残部であり、表中では、小数点以下3桁を四捨五入した数値を水の含有量として記載する。
「比率B/A」欄の数値は、ソルビン酸の含有量に対するクエン酸の含有量(クエン酸の含有量/ソルビン酸の含有量)の質量比を示し、「比率C/A」欄の数値は、ソルビン酸の含有量に対する成分Cの含有量(成分Cの含有量/ソルビン酸の含有量)の質量比を示し、「比率B/C」欄の数値は、成分Cの含有量に対するクエン酸の含有量(クエン酸の含有量/成分Cの含有量)の質量比を示す。
「リン酸イオン(ppm)」欄は、各組成物におけるリン酸イオンの含有量(単位:質量ppm)を示す。
「pH」欄の数値は、上記のpHメーターにより測定した組成物の25℃におけるpHを示す。
「電気伝導度(mS/cm)」欄の数値は、上記の電気伝導率計により測定した組成物の電気伝導度(単位:mS/cm)を示す。なお、「電気伝導度(mS/cm)」欄の「*1」は、組成物のpHが低く、電気伝導度が測定不能であったことを意味する。
表中、「-」との表記は、その欄に該当する成分が組成物に含まれていないことを示す。
【0180】
【0181】
上記表に示す結果より、本発明の組成物は、ソルビン酸、クエン酸、成分C及び成分Dのいずれかを含有しない比較組成物1~4、並びに、pHが4.0未満である比較組成物5と比較して、経時後の組成物を用いて半導体基板を洗浄した際の残渣除去性、防食性及び配線電気特性がバランス良く優れるという効果が得られることが確認された。
【0182】
ソルビン酸の含有量が組成物の全質量に対して0.001質量%以上である場合、配線電気特性がより優れ、ソルビン酸の含有量が組成物の全質量に対して0.01質量%以上である場合、残渣除去性及び配線電気特性が更に優れることが確認された(組成物107~109の対比)。
また、成分Dがホスホノ基を有する場合、W膜に対する防食性がより優れることが確認された(組成物107及び113~116の対比)。また、成分Dが少なくとも2つのホスホノ基を有する場合、W膜に対する防食性が更に優れることが確認された(組成物107及び113~115の対比)。
【0183】
[実施例2]
実施例1の調製例に記載の方法に従って、組成物101~106及び110~115を調製した。調製された各組成物を超純水により質量比で100倍に希釈して、組成物201~212をそれぞれ調製した。
大気圧下、上記の方法で調製された各組成物のサンプル800mLを、「クリーンバリアボトル」(株式会社アイセロ製、容量1L)に移し、容器内上部に大気圧下の空間を残して密閉した。サンプル入りの容器を25℃の暗所環境に14日間保管した。
【0184】
得られた保管後の各サンプルを用いて、実施例1に記載の試験方法に従って、防食性、残渣除去性、及び、配線電気特性をそれぞれ評価した。
下記表2に、組成物201~212のpH及び電気伝導度、並びに、上記評価による評価結果を示す。
なお、組成物201~212に含まれる水以外の各成分の含有量は、組成物101~106及び110~115の各成分の含有量の1/100であり、水の含有量は、水以外の各成分の合計含有量を除いた残部であった。また、組成物201~212の比率B/A、比率C/A及び比率B/Cは、組成物101~106及び110~115の比率B/A、比率C/A及び比率B/Cと同じであった。
【0185】
【0186】
上記表に示す結果より、組成物201~212は、組成物101~106及び110~115と同様に、経時後の組成物を用いて半導体基板を洗浄した際の残渣除去性、防食性及び配線電気特性がバランス良く優れることが確認された。
【要約】
【課題】本発明は、製造から所定期間経過後に使用した際にも、残渣物の除去性能、及び、タングステン含有膜の防食性に優れ、更には、タングステン含有膜の電気特性の劣化を抑制できる組成物、並びに、半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】ソルビン酸と、クエン酸と、アンモニア、有機アミン、及び、第4級アンモニウム化合物、並びに、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1つであるアミン含有化合物と、ホスホノ基及びリン酸基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する特定化合物と、水とを含み、25℃におけるpHが4.0~9.0である、組成物。
【選択図】なし