(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】易開封性包装体
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20220926BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20220926BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B65D77/20 H
B32B27/00 H
(21)【出願番号】P 2018085779
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】397028511
【氏名又は名称】東京食品機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391011825
【氏名又は名称】中央化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦口 正樹
(72)【発明者】
【氏名】秦 哲志
(72)【発明者】
【氏名】片岡 亮太
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-335418(JP,A)
【文献】特開2008-179389(JP,A)
【文献】特開2018-012201(JP,A)
【文献】特開2002-178470(JP,A)
【文献】特開2018-020535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/40
B65D 39/00-55/16
B65D 77/20
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋材用積層フィルムに凹部を設けた蓋材成形体と、底材用積層フィルムに凹部を設けた底材成形体とを有する易開封性包装体であって、
前記蓋材用積層フィルムは、外層、ガスバリア層及び
ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を含む層を有し、外気側からこの順に積層され、
前記底材用積層フィルムは、外層、ガスバリア層及び
ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を含む層を有し、外気側からこの順に積層され、
前記蓋材用積層フィルムの総厚が、200μm以上800μm以下であり、
前記蓋材用積層フィルムの前記外層が、150℃での貯蔵弾性率E’が8.0MPa以上であり、
前記蓋材用積層フィルム及び前記底材用積層フィルムの少なくとも一方が、前記
ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を含む層の内側に隣接してイージーピール層を有し、
前記易開封性包装体の封緘強度が、3.0KPa以上25.0KPa以下であ
り、
前記蓋材用積層フィルムの前記ガスバリア層は、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物を含む層及びポリメタキシリレンアジパミド樹脂を含む層少なくとも1層を含み、
前記底材用積層フィルムの前記ガスバリア層がエチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物を含む層及びポリメタキシリレンアジパミド樹脂を含む層の少なくとも1層を含むことを特徴とする易開封性包装体。
【請求項2】
前記蓋材用積層フィルムの前記外層が、前記外層の総質量に対し、40質量%以上のポリブチレンテレフタレート樹脂を含む層又は50質量%以上のポリアミド系樹脂を含む層であることを特徴とする請求項1に記載の易開封性包装体。
【請求項3】
前記蓋材用積層フィルムの前記外層の層厚が5μm以上50μm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の易開封性包装体。
【請求項4】
前記蓋材用積層フィルムの前記外層の内側に隣接して配置され、ポリエステル系樹脂を含む隣接層を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の易開封性包装体。
【請求項5】
前記蓋材用積層フィルムが前記イージーピール層を有し、該イージーピール層は、全体の質量を100質量パーセントとしたとき、50~90質量%の、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸メチル共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、アイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂と、10~50質量%の、ポリブチレン又はポリプロピレンを主成分として含む樹脂と、を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の易開封性包装体。
【請求項6】
前記底材用積層フィルムが前記イージーピール層を有し、該イージーピール層は、全体の質量を100質量パーセントとしたとき、50~90質量%の、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸メチル共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、アイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂と、10~50質量%の、ポリブチレン又はポリプロピレンを主成分として含む樹脂と、を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の易開封性包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、易開封性包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、食品などの内容物を収容包装する包装体は、深絞り成形加工された底材及び底材を覆う蓋材から構成される。蓋材には、主に無延伸フィルムが使用されている。例えば、プロピレン単独重合体を含有する層/プロピレン系重合体を含有する層/イージーピール層を有し、総厚が30~150μm程度の蓋材用無延伸フィルムや、ポリエステル樹脂を含有する層/プロピレン系樹脂を含有する層/イージーピール層を有し、総厚が30~150μm程度の蓋材用無延伸フィルムが提案されている(特許文献1)。
【0003】
更に、近年、食品業界では、環境負荷の低減や資源の有効活用、あるいはコストの削減のため、食品の廃棄ロスの削減が求められている。食品の廃棄ロスを削減するためには、食品の劣化の要因となる酸素流入や雑菌繁殖を抑制し、食品の長期保存を可能にする必要がある。酸素流入や雑菌繁殖を抑制するために、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、無定形ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリスチレン樹脂から選ばれてなる基材に、ガスバリア層及びヒートシール層を有する複合フィルムの外側に、耐熱コーティング膜が形成されたガスパック用蓋材が提案されている(特許文献2)。
【0004】
このような、食品の廃棄ロスの削減や、包装体に収容する食品の長期保存を目的として、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂又はスチレン系樹脂のいずれかを含む基材にガスバリア層を有し、成形用蓋材フィルムとして適切なガスパック用蓋材も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-45884号公報
【文献】特開2000-128200号公報
【文献】特開平11-227125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で提案された無延伸フィルムは、蓋材側からヒートシールをした際に、熱板には非融着であるが、包装体に収容包装する食品にボリュームがある場合を考慮した成形加工用には適していない。
特許文献2で提案されたガスパック用蓋材は、ガスバリア性を有しているが、耐熱コーティング膜に用いられる耐熱コーティング剤が不透明なので、蓋材の外観を損ねる可能性がある。
特許文献1及び特許文献2の蓋材は、熱成型されずにそのまま用いられる。
特許文献3で提案されたガスパック用蓋材は、ガスバリア性及び耐熱性に加えて、成形性も兼ね備えているが、底材とのイージーピール強度が100~800gf/15mmとなっている。しかし、熱成型された腰の硬い蓋材と熱成型された腰の硬い底材とでは、イージーピール強度が測定しづらいため、実際は、熱成型された蓋材と軟質フィルムとをヒートシールし、引張試験を行っている。このため、例えば、熱成型された蓋材と軟質フィルムとのイージーピール強度が400gf/15mm程度の場合、実際に軟質フィルムを熱成型して底材とし、熱成型された蓋材にヒートシールして包装体にしてしまうと、シール強度が強すぎて容易に開封できなかったり、開封できても蓋材にかかる衝撃で蓋材が変形したり、ひいては破壊してしまう可能性がある。熱成型された蓋材と熱成型された底材との開封において蓋材の変形を抑制し、手剥離でも容易に開封できるニーズが高まってきている。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、熱成型された蓋材と熱成型された底材とがヒートシールされた包装体の開封による蓋材の変形を抑制しつつ、開封感に優れた易開封性包装体に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の易開封性包装体は、蓋材用積層フィルムに凹部を設けた蓋材成形体及び底材用積層フィルムに凹部を設けた底材成形体を有し、前記蓋材用積層フィルムは、外層、ガスバリア層及びヒートシール層を有し、外気側からこの順に積層され、前記底材用積層フィルムは、外層、ガスバリア層及びヒートシール層を有し、外気側からこの順に積層され、前記蓋材用積層フィルムの総厚が、200μm以上800μm以下であり、前記蓋材用積層フィルムの前記外層が、150℃での貯蔵弾性率E’が8.0MPa以上であり、前記蓋材用積層フィルム及び前記底材用積層フィルムの少なくとも一方が、前記ヒートシール層の内側に隣接してイージーピール層を有し、前記易開封性包装体の封緘強度が、3.0KPa以上25.0KPa以下であることを特徴とする。
【0008】
前記蓋材用積層フィルムの前記外層が、前記外層の総質量に対し、40質量%以上のポリブチレンテレフタレート樹脂を含む層又は50質量%以上のポリアミド系樹脂を含む層であることが好ましい。
【0009】
前記蓋材用積層フィルムの前記外層の層厚が、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0010】
前記蓋材用積層フィルムの前記外層の内側に隣接して配置され、ポリエステル系樹脂を含む隣接層を有することが好ましい。
【0011】
前記蓋材用積層フィルムの前記ガスバリア層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物を含む層及びポリメタキシリレンアジパミド樹脂を含む層の少なくとも1層を有することが好ましい。
【0012】
前記蓋材用積層フィルムの前記ヒートシール層が、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を含むことが好ましい。
【0013】
前記底材用積層フィルムの前記ガスバリア層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物を含む層及びポリメタキシリレンアジパミド樹脂を含む層の少なくとも1層を有することが好ましい。
【0014】
前記底材用積層フィルムの前記ヒートシール層が、少なくともポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、熱成型された蓋材と熱成型された底材とがヒートシールされた包装体の開封による蓋材の変形を抑制しつつ、開封感に優れた易開封性包装体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る易開封性包装体1の構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る易開封性包装体1が有する蓋材成形体2に使用される蓋材用積層フィルム4の構造を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る易開封性包装体1が有する底材成形体3に使用される底材用積層フィルム5の構造を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明するが、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本実施の形態において、「主成分」とは、各層を構成する樹脂成分全体を基準(100質量%)とした際に、各成分の含有量が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%含むことをいう。
【0019】
また、以下の実施の形態においては、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。また、以下の実施の形態においては、「X以上」(Xは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り、「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、特に断らない限り、「好ましくはYより小さい」の意を包含するものとする。
【0020】
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JIS K 6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0021】
<易開封性包装体>
図1は、本発明の一実施形態に係る易開封性包装体(以下、単に包装体ということがある)1の構造を模式的に示す断面図である。
図1に示す様に、易開封性包装体1は、蓋材成形体2と、底材成形体3とを有する。蓋材成形体2は、後述する蓋材用積層フィルム4に凹部が設けられるように成形されている。底材成形体3は、底材用積層フィルム5に凹部か設けられるように成形されている。底材成形体3は、蓋材用積層フィルム4に凹部が設けられるように成形されていてもよい。蓋材成形体2の凹部と、底材成形体3の凹部は、互いに向かい合わされて、収容凹部INができる。蓋材成形体2の凹部の縁と、底材成形体3の凹部の縁とは、封止されており、外部空間OUTと、収容凹部INとは分けられる。易開封性包装体1は、包装体の自立性や外観上の観点から、成形性と透明性に優れる。また、易開封性包装体1は、ガスバリア性の観点から、蓋材側からのヒートシールが可能である。
【0022】
<蓋材用積層フィルム及び底材用積層フィルム>
図2は、本発明の一実施形態に係る易開封性包装体1が有する蓋材成形体2に使用される蓋材用積層フィルム4の構造を模式的に示す断面図である。
図2に示す様に、蓋材用積層フィルム4は、外層41、隣接層41’、ガスバリア層42及びヒートシール層43を有し、外気側からこの順に積層されている。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態に係る易開封性包装体1の底材成形体3に使用される底材用積層フィルム5の構造を模式的に示す断面図である。
図3に示す様に、底材用積層フィルム5は、外層51、ガスバリア層52、ヒートシール層53及びイージーピール層54を有し、外気側からこの順に積層されている。
【0024】
ただし、蓋材用積層フィルム4は、隣接層41’を有していなくてもよい。
また、蓋材用積層フィルム4は、ヒートシール層43の内側に隣接してイージーピール層44(図示しない)を有していてもよい。
蓋材用積層フィルム4がイージーピール層44を有している場合は、底材用積層フィルム5は、ヒートシール層53の内側に隣接してイージーピール層54を有していてよいし、有していなくてもよい。すなわち、蓋材用積層フィルム4及び底材用積層フィルム5の少なくとも一方がヒートシール層(43、53)の内側にイージーピール層(44、54)を有している。
【0025】
蓋材用積層フィルム4及び底材用積層フィルム5は、その他の層をいずれにも設けても良い。また、蓋材用積層フィルム4及び底材用積層フィルム5は、各層を其々2層以上設けても良い。
【0026】
蓋材用積層フィルム4の総厚は、蓋材成形体2としたときの形状維持などの観点から、200μm以上800μm以下である。底材用積層フィルム5の総厚は、底材成形体4としたときの形状維持などの観点から、200μm以上1000μm以下であることが好ましい。
【0027】
以下、図面を参照して、蓋材用積層フィルム4の各層及び底材用積層フィルム5の各層について順に説明する。
【0028】
<蓋材用積層フィルムの外層>
蓋材用積層フィルム4の外層41は、包装体1の蓋材成形体2となった場合、外気と接触する層であり、主に蓋材用積層フィルム4をヒートシールの際の熱から保護する耐熱性を備える層である。
【0029】
蓋材用積層フィルム4に成形性を付与するためには、フィルムを厚くし、それに伴いヒートシール時の温度を高く設定する必要があるので、蓋材用積層フィルム4は、耐熱性を必要とする。蓋材用積層フィルム4の耐熱性は、蓋材用積層フィルム4の外層41の貯蔵弾性率を指標とする。蓋材用積層フィルム4の外層41の貯蔵弾性率E’は、150℃で8.0MPa以上である。150℃での貯蔵弾性率E’は、20.0MPa以上であることが好ましく、50.0MPa以上であることがより好ましい。150℃での貯蔵弾性率E’が8.0MPa以上であれば、ヒートシールによる蓋材用積層フィルム4の熱変形及び熱板への熱融着を防ぐことができる。上限は特に限定されないが、150℃での貯蔵弾性率E’が1000MPa以下であれば、実用上特に問題なく使用できるため好ましい。
蓋材用積層フィルム4の外層41の貯蔵弾性率E’は、動的粘弾性測定機を用いて、振動周波数:10Hz、昇温速度:3℃/分、歪0.1%の条件で、貯蔵弾性率(E’)を0℃から250℃まで測定し、得られたデータから150℃における貯蔵弾性率(E’)を評価した。
【0030】
蓋材用積層フィルム4の外層41の荷重たわみ温度は、特に限定されないが、蓋材用積層フィルム4のヒートシールによる熱板への熱融着を防ぎ、蓋材用積層フィルム4の剛性を高める観点から、80℃以上(条件:1.80MPa荷重、たわみ量0.25mm)であることが好ましい。
【0031】
蓋材用積層フィルム4の外層41は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、PBT樹脂と略記すことがある。)又はポリアミド樹脂(以下、PAと略記すことがある。)を含むことが好ましい。
【0032】
PBT樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート単独重合体又はポリブチレンテレフタレート共重合体などが挙げられる。
【0033】
ポリブチレンテレフタレート単独重合体は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及びジオール成分として1,4-ブタンジオールを用いて単独重合されたものである。ポリブチレンテレフタレート共重合体としては、テレフタル酸及び1,4-ブタンジオールに、ジカルボン酸成分としてドデカンジオン酸及びジオール成分としてポリテトラメチレングリコール、テトラメチレンオキシドグリコールが共重合されたものなどが挙げられる。これらのPBT樹脂は、それぞれ単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。なかでも、テレフタル酸及び1,4-ブタンジオールを成分とするポリブチレンテレフタレート単独重合体が好ましい。ポリブチレンテレフタレート単独重合体を用いることで、耐熱性を付与する事ができる。
【0034】
PBT樹脂以外のポリエステル系樹脂を含んでいても良い。ポリエステル系樹脂としては、無定形ポリエチレンテレフタレート樹脂、耐熱ポリエチレンテレフタレート樹脂、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエチレンテレフタレート系樹脂が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は、それぞれ単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。剛性及び透明性の観点からは、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0035】
PBT樹脂の質量割合は、外層41の総質量に対して40質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましい。PBT樹脂の質量割合を、外層41の総質量に対して40質量%以上にすることで、ヒートシール時に熱板にとられる事のない耐熱性を付与することができる。上限は特に限定されず、PBT樹脂の質量割合が大きいほど好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0036】
ポリアミド樹脂としては、例えば、3員環以上のラクタムとω―アミノ酸とが重縮合させたもの、ジアミンとジカルボン酸とが共縮重合させたものなどが挙げられる。
ポリアミド樹脂としては具体的に、4ナイロン、6ナイロン、7ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、46ナイロン、66ナイロン、69ナイロン、610ナイロン、611ナイロン、6Tナイロン、6Iナイロン、MXD6ナイロン、6-66ナイロン、6-610ナイロン、6-611ナイロン、6-12ナイロン、6-612ナイロン、6-6Tナイロン、6-6Iナイロン、6-66-610ナイロン、6-66-12ナイロン、6-66-612ナイロン、66-6Tナイロン、66-6Iナイロン、6T-6Iナイロン、66-6T-6Iナイロン等が挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独でも用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。なかでも、ポリアミド樹脂は、耐熱性、コストの観点から、中でも6ナイロンや6-66ナイロンを用いることがとくに好ましい。
【0037】
ポリアミド樹脂の質量割合は、外層41の総質量に対して50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が更に好ましい。ポリアミド樹脂の質量割合を、外層41の総質量に対して50質量%以上にすることで、ヒートシール時に熱板にとられる事のない耐熱性を付与することができる。上限は特に限定されず、ポリアミド樹脂の質量割合が大きいほど好ましく、100質量%が最も好ましい。
【0038】
蓋材用積層フィルム4の外層41の層厚は、下限は5μm以上が好ましい。上限は50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましい。
蓋材用積層フィルム4の外層41の層厚を、下限は5μm以上、上限は50μm以下にすることにより、後述する隣接層を厚く設計し、フィルムに剛性を付与することができる。
【0039】
<蓋材用積層フィルムの隣接層>
蓋材用積層フィルム4は、外層41の内側に隣接して隣接層41’を有していてもよい。隣接層41’を、蓋材用積層フィルム4の外層41とガスバリア層42との間でかつ外層41の内側に隣接して配置させることで、蓋材用積層フィルム4に剛性、強度及び成形性を付与することができる。
【0040】
蓋材用積層フィルム4の隣接層41’は、ポリブチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル系樹脂を含む。ポリブチレンテレフタレート樹脂以外のポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(以下、PET樹脂と略記することがある。)、耐熱ポリエチレンテレフタレート樹脂、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、PET-Gと略記することがある)などが挙げられるが、PET樹脂は、非晶のまま固化させて無定形ポリエチレンテレフタレート樹脂として用いることができるため、低コストで、層厚を大きくしても経済性が良く、蓋材用積層フィルム4に対し、剛性、強度、成形性を十分に付与することも可能である。
【0041】
PET樹脂における多価カルボン酸成分としては、エチレンテレフタレートユニットを構成するテレフタル酸の他、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及び脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0042】
芳香族ジカルボン酸としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、5-tert-ブチルイソフタル酸などのベンゼンジカルボン酸類;2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸類;44-ジカルボキシジフェニル、2,2,6,6-テトラメチルビフェニル-4,4’-ジカルボン酸などのジカルボキシビフェニル類;1,1,3-トリメチル-3-フェニルインデン-4,5-ジカルボン酸およびその置換体;1,2-ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボン酸及びその置換体などが挙げられる。
【0043】
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ピメリン酸、スベリン酸、ウンデカン酸、ドデカンジカルボン酸、ブラシリン酸、テトラデカンジカルボン酸、タプシン酸、ノナデカンジカルボン酸、ドコサンジカルボン酸などが挙げられる。
【0044】
脂環式ジカルボン酸としては、1,4-ジカルボキシシクロヘキサン、1,3-ジカルボキシシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0045】
PET樹脂における多価アルコール成分としては、エチレンテレフタレートユニットを構成するエチレングリコールの他、脂肪族ジオール、脂環式ジオール及び芳香族ジオールが挙げられる。
【0046】
脂肪族ジオールとしては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-n-ブチル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
【0047】
脂環式ジオールとしては、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
【0048】
芳香族ジオールとしては、2,2-ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシジフェニル)プロパン、ビス(4’-β-ヒドロキシエトキシフェニル)スルホンなどのビスフェノール系化合物のエチレンオキサイド付加物;キシリレングリコールなどが挙げられる。
【0049】
又、多価アルコール成分として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどを用いても良い。
【0050】
このような多価カルボン酸成分と多価アルコール成分を用いてPET樹脂を調製するには、成形用共押出フィルムとしての特性を改良するため、1種類以上の多価カルボン酸成分及び1種類以上の多価アルコール成分を組み合わせて調製しても良い。組み合わせる成分の種類および含有量は、所望のフィルム特性、経済性などに基づいて適宜決定することができる。また、PET樹脂は、1種のPET樹脂を単独で用いても良く、2種以上のPET樹脂を混合して用いても良い。
【0051】
経済性の観点から、PET樹脂は、エチレングリコール及びテレフタル酸を成分とするポリエチレンテフタレート単独重合体又はテレフタル酸及びエチレングリコールにそれ以外の多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を共重合させたポリエチレンテフタレート共重合体が好ましい。例えば、PET樹脂におけるエチレンテレフタレートユニットの含有率は、80モル%以上が好ましく、83モル%以上がより好ましく、85モル%以上が更に好ましい。
【0052】
隣接層41’の層厚は、蓋材用積層フィルム4の総厚に対し、上限は40%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。蓋材用積層フィルム4の総厚に対し40%以上にすることにより、良好なコシと耐カール性を付与することができる。下限は、75%以下であることが好ましく、70%以下がより好ましく、65%以下が更に好ましい。
【0053】
<蓋材用積層フィルムのガスバリア層>
蓋材用積層フィルム4のガスバリア層42は、外層41とヒートシール層43との間に配置され、内容物を酸素ガスから保護する酸素ガスバリア性を備える層である。
【0054】
蓋材用積層フィルム4のガスバリア層42は、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(以下、EVOHと略記することがある)を含む層及びポリメタキシレンとアジピン酸との重縮合反応物であるポリメタキシリレンアジパミド樹脂(以下、MXDと略記することがある)を含む層の少なくとも1層を有する。すなわち、蓋材用積層フィルム4のガスバリア層42は、EVOHを含む層、MXDを含む層、又はEVOHを含む層とMXDを含む層とを有する。ガスバリア性の観点からは、EVOHを含む層を有することが好ましく、耐熱性及び耐水性の観点からは、MXDを含む層を有することが好ましい。EVOHを含む層及びMXDを含む層の少なくとも1層を有するガスバリア層を、外層とヒートシール層との間に配置させることで、フィルムに酸素ガスバリア性を付与し、食品の腐敗を防止し、食品の賞味期限を延長することができる。
【0055】
エチレン-酢酸ビニル共重合けん化物のエチレン含有率は、特に限定されるものではないが、フィルム製膜安定性の観点から、下限は27モル%以上が好ましく、32モル%以上がより好ましい。上限は47モル%以下が好ましく、44モル%以下がより好ましい。
【0056】
フィルムの酸素ガス透過率は、食品の劣化抑制の点から、10cc/(m2・day・atm)以下が好ましく、8cc/(m2・day・atm)以下がより好ましい。
【0057】
蓋材用積層フィルム4のガスバリア層42の層厚は、下限は2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。上限は10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、6μm以下が更に好ましい。
蓋材用積層フィルム4のガスバリア層42の層厚を、2μm以上とすることにより、フィルムに十分な酸素ガスバリア性を付与し、且つ安定したフィルム製膜ができる。又、ガスバリア層の層厚を、10μm以下とすることにより、経済性に優れる他、耐ピンホール性の低下が避けられる。
【0058】
<蓋材用積層フィルムのヒートシール層>
蓋材用積層フィルム4のヒートシール層43は、包装体1となった場合、内容物側に配置され、底材成形体3にヒートシールを施す内層である。
【0059】
蓋材用積層フィルム4のヒートシール層43は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂を含む。蓋材用積層フィルム4にヒートシール層43を配し、蓋材成形体2にヒートシール性を付与することで、蓋材成形体2及び底材成形体3はヒートシールされて包装体1とすることができる。
蓋材用積層フィルム4のヒートシール層43は、包装体1としたとき、内容物側に配置されるので、内容物の食品などから出る水分により蓋材の内面が曇るのを抑制することができる観点から、防曇剤を添加することが好ましい。
【0060】
蓋材用積層フィルム4のヒートシール層43に含まれるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン―アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン―アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン―アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン―メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン―メタクリル酸共重合体(EMAA)及びポリプロピレン(PP)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。
【0061】
蓋材用積層フィルム4のヒートシール層43の層厚は、5μm以上200μm以下が好ましい。ヒートシール層43の層厚を5μm以上200μm以下にすることにより、良好なフィルム製膜性、剛性、強度、ヒートシール性、熱板非融着性及びガスバリア性が得られる。
【0062】
<蓋材用積層フィルムのイージーピール層>
蓋材用積層フィルム4は、蓋材用積層フィルム4のヒートシール層43の内側に隣接してイージーピール層44(図示しない)を有していてもよい。蓋材用積層フィルム4のイージーピール層44は所定の凝集力を有するので、包装体1の開封時にイージーピール性を付与することが出来る。
【0063】
蓋材用積層フィルム4のイージーピール層44は、イージーピール性を備えれば特に限定されないが、蓋材用積層フィルム4のイージーピール層44全体の質量を100質量パーセントとしたとき、例えば、以下で示される50~90質量%の樹脂Aと10~50質量%の樹脂Bを有することが好ましい。
樹脂A:低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸メチル共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、アイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
樹脂B:ポリブチレン又はポリプロピレンを主成分として含む。
【0064】
蓋材用積層フィルム4のイージーピール層44の層厚は、特に限定はされないが、例えば、2μm~20μmであることが好ましい。
【0065】
蓋材用積層フィルム4のイージーピール層44が備えるべき効果を損なわない限り、上記列挙した樹脂以外に汎用樹脂成分を添加しても、各種添加剤、例えば、防曇材、身離れ材、帯電防止材、アンチブロッキング材、スリップ材、酸化防止材、メヤニ防止材等を添加してもよい。
蓋材用積層フィルム4のイージーピール層44は、易開封性包装体1としたとき、内容物側に配置されるので、内容物の食品などから出る水分により蓋材の内面が曇るのを抑制することができる観点から、防曇剤を添加することが好ましい。
【0066】
<蓋材用積層フィルムのその他の層>
蓋材用積層フィルム4は、前述の層以外に、他の層を有していてもよい。他の層としては、耐ピンホール性を付与するために、ナイロン6単独重合体など(以下、Nyと略記することがある)を含むナイロン層、層間強度を向上させるために、酸変性ポリオレフィン樹脂などの接着性樹脂(以下、ADと略記することがある)を含む接着層などが挙げられる。
【0067】
<底材用積層フィルムの外層>
底材用積層フィルム5の外層51は、包装体1の底材成形体3となった場合、外気と接触する層である。底材用積層フィルム5の外層51は、加工時に熱板に触れることがないので特別耐熱性を必要としないが、一般的に内容物を底材側に収容するため、強度が必要である。底材用積層フィルム5の外層51としては、ポリスチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を含む層の上に、無延伸ポリプロピレン(以下、CPPと略記することがある)を含むフィルムが外気側になるように積層させたものなどが挙げられるが、ポリスチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂を含む層を、CPPを含むフィルムを積層させずにそのまま用いてもよい。
【0068】
底材用積層フィルム5の外層51の層厚は、下限は200μm以上が好ましい。上限は800μm以下が好ましく、600μm以下がより好ましい。
底材用積層フィルム5の外層51の層厚を、下限は200μm以上、上限は800μm以下にすることにより、底材用積層フィルム5に剛性を付与することができ、包装体としたときのリジット感が向上する。
【0069】
<底材用積層フィルムのガスバリア層>
底材用積層フィルム5のガスバリア層52は、底材用積層フィルム5の外層51とヒートシール層53との間に配置され、内容物を酸素ガスから保護する酸素ガスバリア性を備える層である。
【0070】
底材用積層フィルム5のガスバリア層52は、エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物(以下、EVOHと略記することがある)を含む層及びポリメタキシレンとアジピン酸との重縮合反応物であるポリメタキシリレンアジパミド樹脂(以下、MXDと略記することがある)を含む層の少なくとも1層を有する。すなわち、蓋材用積層フィルム4のガスバリア層42は、EVOHを含む層、MXDを含む層、又はEVOHを含む層とMXDを含む層とを有する。ガスバリア性の観点からは、EVOHを含む層を有することが好ましく、耐熱性及び耐水性の観点からは、MXDを含む層を有することが好ましい。EVOHを含む層及びMXDを含む層の少なくとも1層を有するガスバリア層を、外層とヒートシール層との間に配置させることで、フィルムに酸素ガスバリア性を付与し、食品の腐敗を防止し、食品の賞味期限を延長することができる。
【0071】
エチレン-酢酸ビニル共重合けん化物のエチレン含有率は、特に限定されるものではないが、フィルム製膜安定性の観点から、下限は27モル%以上が好ましく、32モル%以上がより好ましい。上限は47モル%以下が好ましく、44モル%以下がより好ましい。
【0072】
フィルムの酸素ガス透過率は、食品の劣化抑制の点から、10cc/(m2・day・atm)以下が好ましく、8cc/(m2・day・atm)以下がより好ましい。
【0073】
ガスバリア層の層厚は、下限は2μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。上限は10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましく、6μm以下が更に好ましい。
ガスバリア層の層厚を、2μm以上とすることにより、フィルムに十分な酸素ガスバリア性を付与し、且つ安定したフィルム製膜ができる。又、ガスバリア層の層厚を、10μm以下とすることにより、経済性に優れる他、耐ピンホール性の低下が避けられる。
【0074】
<底材用積層フィルムのヒートシール層>
底材用積層フィルム5のヒートシール層53は、包装体1となった場合、内容物側に配置され、蓋材成形体2にヒートシールを施す内層である。
【0075】
底材用積層フィルム5のヒートシール層53は、ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の少なくとも1種のポリオレフィン系樹脂を含む。底材用積層フィルム5にヒートシール層43を配し、底材成形体3にヒートシール性を付与することで、底材成形体3及び蓋材成形体2はヒートシールされて包装体1とすることができる。
底材用積層フィルム5のヒートシール層53は、包装体1としたとき、内容物側に配置されるので、内容物の食品などから出る水分により蓋材の内面が曇るのを抑制することができる観点から、防曇剤を添加することが好ましい。
【0076】
底材用積層フィルム5のヒートシール層53に含まれるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン―アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン―アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン―アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン―メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン―メタクリル酸共重合体(EMAA)及びポリプロピレン(PP)からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂が挙げられる。
【0077】
底材用積層フィルム5のヒートシール層53の層厚は、5μm以上200μm以下が好ましい。ヒートシール層53の層厚を5μm以上200μm以下にすることにより、良好なフィルム製膜性、剛性、強度、ヒートシール性、及びガスバリア性が得られる。
<底材用積層フィルムのイージーピール層>
底材用積層フィルム5は、底材用積層フィルム5のヒートシール層53の内側に隣接してイージーピール層54を有する。底材用積層フィルム5のイージーピール層54は所定の凝集力を有するので、包装体1の開封時にイージーピール性を付与することが出来る。
【0078】
底材用積層フィルム5のイージーピール層54は、イージーピール性を備えれば特に限定されないが、底材用積層フィルム5のイージーピール層54全体の質量を100質量パーセントとしたとき、例えば、以下で示される50~90質量%の樹脂Aと10~50質量%の樹脂Bを有することが好ましい。
樹脂A:低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンーアクリル酸共重合体、エチレンーアクリル酸エチル共重合体、エチレンーメタクリル酸共重合体、エチレンーメタクリル酸メチル共重合体、エチレンーアクリル酸メチル共重合体、アイオノマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
樹脂B:ポリブチレン又はポリプロピレンを主成分として含む。
【0079】
底材用積層フィルム5のイージーピール層54の層厚は、特に限定はされないが、例えば、2μm~20μmであることが好ましい。
【0080】
底材用積層フィルム5のイージーピール層54が備えるべき効果を損なわない限り、上記列挙した樹脂以外に汎用樹脂成分を添加しても、各種添加剤、例えば、防曇材、身離れ材、帯電防止材、アンチブロッキング材、スリップ材、酸化防止材、メヤニ防止材等を添加してもよい。
本発明の易開封性包装体1としたとき、底材用積層フィルム5のイージーピール層54は、内容物側に配置されるので、内容物の食品などから出る水分により蓋材の内面が曇るのを抑制することができる観点から、防曇剤を添加することが好ましい。
【0081】
<底材用積層フィルムのその他の層>
底材用積層フィルム5は、前述の層以外に、他の層を有していてもよい。他の層としては、耐ピンホール性を付与するために、ナイロン6単独重合体など(以下、Nyと略記することがある)を含むナイロン層、層間強度を向上させるために、酸変性ポリオレフィン樹脂などの接着性樹脂(以下、ADと略記することがある)を含む接着層などが挙げられる。
【0082】
<易開封性包装体の開封性>
易開封性包装体1は、蓋材用積層フィルム4のヒートシール層43及び底材用積層フィルム5のヒートシール層53の少なくとも一方の内側に隣接してイージーピール層44、54を設けることで、包装体1に易開封性を付与することができる。
包装体1は、蓋材用積層フィルム4を熱成型した凹部を有する形状で硬質な蓋材成形体2及び底材用積層フィルム5を熱成型した凹部を有する形状で硬質な底材成形体3を使用し、蓋材成形体2の凹部と底材成形体3の凹部を互いに向かい合わせ、蓋材成形体2の凹部の縁と底材成形体3の凹部の縁とをヒートシールさせた形状を有する。また、ヒートシールの際、蓋材成形体2を底材成形体3に嵌合させてヒートシールする場合もある。よって、包装体内部側シール際の嵌合部は、包装体1の内部に位置し、包装体1のシール強度の測定が難しい。
そのため、シール強度の測定は、蓋材成形体2と底材積層フィルム5とのシール強度を、引張試験機を用いて、引張速度200mm/分で測定を行った。
【0083】
ここでは、易開封性包装体1の開封性は、蓋材用積層フィルム4を成形した蓋材成形体2及び底材積層フィルム5を成形した底材成型体3がヒートシールされた包装体1の封緘強度を測定することで評価した。封緘強度で評価する理由は、包装体の開封性は、包装体に使用した蓋材及び底材のシール強度だけではなく、蓋材の材質、厚さ及び形状と底材との一体的相関性に依存するためである。ヒートシールされた包装体1の封緘強度は、3.0KPa以上25.0KPa以下である。封緘強度が、25.0KPa以下であれば、包装体1を容易に開封でき、封緘強度が3.0KPa以上であれば、包装体1から内容物が飛び出さないように密封することが可能である。封緘強度の上限は、20.0KPa以下であることが好ましく、15.0KPa以下であることがより好ましい。封緘強度の下限は、3.0Ka以上であることが好ましく、4.0Ka以上であることがより好ましい。
包装体1の封緘強度は、封緘強度測定器を用いて、包装体1に流量1.0±0.2L/minで空気を送り封緘強度を測定した。
【実施例】
【0084】
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で応用が可能である。
【0085】
<蓋材用積層フィルム及び底材用積層フィルムの作製>
実施例1~8及び比較例1~3に示す層構成の蓋材用積層フィルム及び底材用積層フィルムを、共押出Tダイ法及び熱ラミネート法により作製した。
各層に含まれる樹脂組成の表記には、次の略号を用いた。又、「+」の表記は、含有、「/」の表記は共押出による積層、「//」の表記は熱ラミネートによる積層を意味する。
PBT:ポリブチレンテレフタレート単独重合体
PET:ポリエチレンテレフタレート単独重合体
耐熱PET:スピログリコール共重合ポリエステル系樹脂
PET-G:ポリエチレンテレフタレート-グリコール共重合体
Ny:ナイロン6単独重合体
EVOH:エチレン-酢酸ビニル共重合体けん化物 エチレン32モル%
LDPE:低密度ポリエチレン樹脂
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン樹脂
PP:ポリプロピレン樹脂
CPP:CPPシート
防曇:防曇剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル
AD:不飽和カルボン酸変性ポリエチレン系樹脂
イージーピールA:LLDPE/PB=57質量%/43質量%
イージーピールB:LLDPE/PB=52質量%/48質量%
イージーピールC:LLDPE/PB=63質量%/37質量%
【0086】
<実施例1>
蓋材用積層フィルム 外層:PBT(10μm)[100質量%]/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
【0087】
底材用積層フィルム 外層:CPP(400μm)// PP(11μm)/AD(4μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/AD(4μm)/ヒートシール層:LLDPE(12μm)/イージーピール層:イージーピールA(4μm)
【0088】
<実施例2>
蓋材用積層フィルム 外層:PBT(10μm)[100質量%]/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
【0089】
底材用積層フィルム 外層:CPP(400μm)//PP(11μm)/AD(4μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/AD(4μm)/ヒートシール層:LLDPE(12μm)/イージーピール層:イージーピールB(4μm)
【0090】
<実施例3>
蓋材用積層フィルム 外層:PBT(10μm)[100質量%]/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
【0091】
底材用積層フィルム 外層:CPP(400μm)//PP(11μm)/AD(4μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/AD(4μm)/ヒートシール層:LLDPE(12μm)/イージーピール層:イージーピールC(4μm)
【0092】
<実施例4>
蓋材用積層フィルム 外層:PBT(10μm)[100質量%]/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE(19μm)/イージーピール層:イージーピールA(10μm)、総厚305μm
【0093】
底材用積層フィルム 外層:CPP(400μm)//PP(11μm)/AD(4μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/AD(4μm)/ヒートシール層:LLDPE(16μm)
【0094】
<実施例5>
蓋材用積層フィルム 外層:PBT[80質量%]+耐熱PET[質量%20%](10μm)/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
底材用積層フィルムは、実施例1の底材用積層フィルムと同じものと使用した。
【0095】
<実施例6>
蓋材用積層フィルム 外層:PBT[質量%40%]+PET-G[質量%60%](10μm)/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
【0096】
底材用積層フィルムは、実施例1の底材用積層フィルムと同じものと使用した。
【0097】
<実施例7>
蓋材用積層フィルム 外層:Ny[100質量%]%] [(20μm)/隣接層:PET(226μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(4.5μm)/Ny(3μm)/AD(8.5μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(20μm)、総厚305μm
【0098】
底材用積層フィルムは、実施例1の底材用積層フィルムと同じものと使用した。
【0099】
<実施例8>
蓋材用積層フィルム 外層:Ny(20μm)[100質量%]/隣接層:PET(226μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(4.5μm)/Ny(3μm)/AD(8.5μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(20μm)、総厚305μm
【0100】
底材用積層フィルムは、実施例2の底材用積層フィルムと同じものと使用した。
【0101】
<比較例1>
蓋材用積層フィルム 外層:PET-G(10μm)[100質量%]/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
【0102】
<比較例2>
蓋材用積層フィルム 外層:PP(25μm)[100質量%]/隣接層:PET(226μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(4.5μm)/Ny(3μm)/AD(8.5μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(20μm)、総厚305μm
【0103】
<比較例3>
蓋材用積層フィルム 外層:PBT(10μm)[100質量%]/隣接層:PET(230μm)/AD(15μm)/Ny(3μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/Ny(3μm)/AD(10μm)/ヒートシール層:LDPE+防曇(29μm)、総厚305μm
【0104】
底材用積層フィルム 外層:CPP(400μm)//PP(11μm)/AD(4μm)/ガスバリア層:EVOH(5μm)/AD(4μm)/ヒートシール層:LLDPE(16μm)
【0105】
<蓋材成形体及び底材成形体の作製>
各実施例で作製した蓋材用積層フィルム及び底材用積層フィルムを、輻射式熱成型加工機を用いて、蓋材用として、縦16.3cm、横11.1cm、深さ(高さ)17.5cmの凹部を有する形状に成型し、底材用として、縦16.3cm、横11.0cm、深さ(高さ)22.3cmの凹部を有する形状に成型して、蓋材成形体及び底材成形体を作製した。
【0106】
<易開封性包装体の作製>
蓋材成形体の周辺部と底材用成形体の周辺部とを組み合わせ、シールパッカーのシール機構(ムルチパック社製T-300)を用いて、蓋材成形体の外層側から、165°Cで2.5秒の条件でヒートシールして包装体を作製した。
【0107】
<測定及び評価方法>
上記の通り作製した蓋材用積層フィルム、底材用積層フィルム、蓋材成形体及び包装体を用いて、下記に記載の測定及び評価を実施した。結果を表1に示す。
【0108】
<耐熱性(貯蔵弾性率(E’)>
耐熱性(熱板トラレ)の指標として、貯蔵弾性率(E’)を用いた。
蓋材用積層フィルムの外層に使用した樹脂組成物を単独で40mmφ同方向二軸押出機により混錬し、Tダイより押出し、得られたシート(縦40mm×幅4mm)を動的粘弾性測定機(アイティ計測(株)製、商品名:粘弾性スペクトロメーターDVA-200)を用いて、振動周波数:10Hz、昇温速度:3℃/分、歪0.1%の条件で、貯蔵弾性率(E’)を0℃から250℃まで測定し、得られたデータから150℃における貯蔵弾性率(E’)を評価した。
【0109】
<熱板融着>
深絞り成形機(ムルチバック社、R530)のシール機構を用いて、160℃×2.0秒の条件で、40cm×40cmサイズに切り出した蓋材用積層フィルムの外層側からヒートシールを行い、蓋材用積層フィルムの外層が熱板に融着せず、変形がみられなかったものを「◎」、若干変形が見られたものの融着は見られなかったものを「○」、熱板に融着したものを「×」と評価した。
【0110】
<封緘強度>
封緘強度測定器(株式会社サン科学社製、MODEL:305-BP-J)を用いて、包装体に流量1.0±0.2L/minで空気を送り、包装体の封緘強度を測定し、下記基準で開封性を評価した。
封緘強度が4KPa以上15KPa以下のものを「◎」、封緘強度が3KPa以上4KPa未満または、15KPaを超えて25KPa以下のものを「○」、封緘強度が3KPa未満または、25KPaを超えたものを「×」と評価した。
【0111】
<シール強度>
蓋材成形体及び底材用積層フィルムを、シールパッカーのシール機構(ムルチパック社製T-300)を用いて、蓋材成形体の外層側から、160×2.0秒の条件でヒートシールを行い、ヒートシール部を15mm幅の短冊状に切り出し、試験片を作成した。引張試験機(インストロン社製、3342型試験機)を用いて、引張速度200mm/分でシール強度の測定を行った。
【0112】
【0113】
表1から分かる様に、実施例1~8は、貯蔵弾性率E’が、8.0MPa以上で、熱板融着に関する評価が、蓋材用積層フィルムの外層が熱板に融着せず、変形がみられなかったの「◎」又は若干変形が見られたものの融着は見られなかったの「○」なので、蓋材用積層フィルムは耐熱性を有し、蓋材側からのヒートシールが可能であることが分かった。また、包装体の封緘強度が3.0KPa以上25.0KPa以下であり、開封性も良好であることが分かった。
【0114】
これに対して、外層にPET-GまたはPPが含まれる比較例1及び比較例2においては、貯蔵弾性率E’が、8.0MPa未満で、熱板融着に関する評価が、熱板に融着したの「×」なので、フィルムは耐熱性が劣り、蓋材に成型した際に蓋材側からヒートシールするのに適していないと考えられる。
比較例3においては、封緘強度が40KPaで、25.0KPaを超えるので、開封性良くないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明によれば、蓋材用積層フィルムは、成形性と透明性に優れ、蓋材側からのヒートシールが可能である。また、蓋材用積層フィルム及び底材用積層フィルムの少なくとも一方は、イージーピール性を有する。よって、包装体にすることで、内容物の外観を損ねることなく、十分な密封性と容易な開封性を併せて実現することができる。
【符号の説明】
【0116】
1 易開封性包装体
2 蓋材成形体
3 底材成形体
4 蓋材用積層フィルム
41 外層
41’隣接層
42 ガスバリア層
43 ヒートシール層
5 底材用積層フィルム
51 外層
52 ガスバリア層
53 ヒートシール層
54 イージーピール層