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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】検査治具及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20220926BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
H01L21/78 R
H01L21/66 J
H01L21/66 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018095521
(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公開番号】P2019201143
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花島 聡
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169677(JP,A)
【文献】特開2008-003000(JP,A)
【文献】特開2016-213342(JP,A)
【文献】特開2016-179505(JP,A)
【文献】特開2009-074952(JP,A)
【文献】特開2006-170790(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0089798(KR,A)
【文献】特開平7-039546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ブレードによりウエーハを切削する加工装置の撮像手段のピクセルサイズを測定するための板状の検査治具であって、
表面にパターンと、該パターンの幅を記録した二次元コードと、
を備え
該パターンの幅は、該ウエーハの加工に使用される切削ブレードの刃幅に合わせて形成されていることを特徴とする検査治具。
【請求項2】
該パターンは、幅が異なるものが複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の検査治具。
【請求項3】
制御手段と、保持手段と、加工手段と、撮像手段と、撮像した画像を表示する画面と、を少なくとも備え、切削ブレードによりウエーハを切削する加工装置における該撮像手段のピクセルサイズを測定するための検査方法であって、
表面にパターンと該パターンの幅を記録した二次元コードとを備える検査治具を、該保持手段に保持する保持ステップと、
該二次元コードを該撮像手段で読み取り、該パターンの幅を該制御手段に記憶させる読み取りステップと、
該パターンと該撮像手段とを平行にする平行合わせステップと、
該パターンを撮像して該画面上で該パターンの幅に対応するピクセル数を測定する測定ステップと、
該読み取りステップで読み込んだ該パターンの幅を該測定ステップで測定したピクセル数で割ることでピクセルサイズを算出する算出ステップと、
を備え、
パターンの幅は、該ウエーハの加工に使用される切削ブレードの刃幅に合わせて形成されていることを特徴とする検査方法。
【請求項4】
制御手段と、保持手段と、加工手段と、撮像手段と、撮像した画像を表示する画面と、を少なくとも備える加工装置における該撮像手段のピクセルサイズを測定するための検査方法であって、
表面に幅が異なる複数のパターンと該パターンの幅を記録した二次元コードとを備える検査治具を、該保持手段に保持する保持ステップと、
該二次元コードを該撮像手段で読み取り、該パターンの幅を該制御手段に記憶させる読み取りステップと、
該パターンと該撮像手段とを平行にする平行合わせステップと、
該パターンを撮像して該画面上で該パターンの幅に対応するピクセル数を測定する測定ステップと、
該読み取りステップで読み込んだ該パターンの幅を該測定ステップで測定したピクセル数で割ることでピクセルサイズを算出する算出ステップと、
を備え、
該算出ステップは、各パターンに対応するピクセルサイズを算出し、これら算出したピクセルサイズを平均値とする
ことを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に設けられる撮像手段のピクセルサイズを測定するための検査治具及び検査治具を用いた検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ウエーハ等の被加工物を切削加工する加工装置は、加工装置上で撮像した画像から、チッピングや加工溝の幅を検出するカーフチェックという動作を行う(例えば、特許文献1参照)。この際、チッピングや加工溝の幅の計測には、撮像手段のピクセルサイズ(1ピクセルあたりの長さ;画像分解能ともいう)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平05-326700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記したカーフチェックを正確に行うためには、撮像手段のピクセルサイズを正確に測定する必要がある。しかし、従来の構成では、検査用基準となるパターンを有するウエーハと撮像手段とを相対的に移動させることにより、撮像手段のターゲットとなるパターンを所定距離だけ移動させ、パターンの移動量をピクセルの変化量(移動量)で割ることで加工装置が自動でピクセルサイズを算出するピクセルサイズメジャーという動作を行なっていた。この場合、検査用基準となるパターンを有するウエーハと撮像手段との機械的な移動量に、わずかな誤差が生じると、算出されたピクセルサイズが正確ではなく、ピクセルサイズを用いて計測されるチッピングや加工溝幅が正確でない可能性があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、撮像手段のピクセルサイズを正確に測定することができる検査治具及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、切削ブレードによりウエーハを切削する加工装置の撮像手段のピクセルサイズを測定するための板状の検査治具であって、表面にパターンと、該パターンの幅を記録した二次元コードと、を備え、該パターンの幅は、該ウエーハの加工に使用される切削ブレードの刃幅に合わせて形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、二次元コードを撮像手段で読み取ることにより、二次元コードに記録されたパターンの実際の幅を取得することができるため、このパターンの実際の幅を、該パターンの幅に対応するピクセル数で割ることでピクセルサイズを正確に算出することができる。また、複数の検査治具を有している場合であっても、検査治具に形成されている二次元コードを撮像手段で認識できるので、検査治具の取り間違いを防ぐことができる。さらに、二次元コードにパターンの実際の幅を記録しておくことにより、パターンの幅を予め定めた所定長さに高い精度で作成しなくても、高精度にピクセルサイズを測定することができる。
【0008】
この構成において、該パターンは、幅が異なるものが複数形成されていてもよい。この構成によれば、幅が異なる複数のパターンをそれぞれ撮像してピクセルサイズを算出することにより、例えば、撮像手段のレンズのゆがみ等による誤差を低減することができる。
【0009】
また、本発明は、制御手段と、保持手段と、加工手段と、撮像手段と、撮像した画像を表示する画面と、を少なくとも備え、切削ブレードによりウエーハを切削する加工装置における該撮像手段のピクセルサイズを測定するための検査方法であって、表面にパターンと該パターンの幅を記録した二次元コードとを備える検査治具を、該保持手段に保持する保持ステップと、該二次元コードを該撮像手段で読み取り、該パターンの幅を該制御手段に記憶させる読み取りステップと、該パターンと該撮像手段とを平行にする平行合わせステップと、該パターンを撮像して該画面上で該パターンの幅に対応するピクセル数を測定する測定ステップと、該読み取りステップで読み込んだ該パターンの幅を該測定ステップで測定したピクセル数で割ることでピクセルサイズを算出する算出ステップと、を備え、該パターンの幅は、該ウエーハの加工に使用される切削ブレードの刃幅に合わせて形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、制御手段と、保持手段と、加工手段と、撮像手段と、撮像した画像を表示する画面と、を少なくとも備える加工装置における該撮像手段のピクセルサイズを測定するための検査方法であって、表面に幅が異なる複数のパターンと該パターンの幅を記録した二次元コードとを備える検査治具を、該保持手段に保持する保持ステップと、該二次元コードを該撮像手段で読み取り、該パターンの幅を該制御手段に記憶させる読み取りステップと、該パターンと該撮像手段とを平行にする平行合わせステップと、該パターンを撮像して該画面上で該パターンの幅に対応するピクセル数を測定する測定ステップと、該読み取りステップで読み込んだ該パターンの幅を該測定ステップで測定したピクセル数で割ることでピクセルサイズを算出する算出ステップと、を備え、該算出ステップは、各パターンに対応するピクセルサイズを算出し、これら算出したピクセルサイズを平均値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二次元コードを撮像手段で読み取ることにより、二次元コードに記録されたパターンの実際の幅を取得することができるため、このパターンの実際の幅を、該パターンの幅に対応するピクセル数で割ることでピクセルサイズを正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る検査治具が用いられる加工装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係る検査治具の構成例を示す平面図である。
図3図3は、加工装置の制御手段の構成例を示すブロック図である。
図4図4は、検査方法の手順を示すフローチャートである。
図5図5は、画面に表示された検査治具の画像データの模式図である。
図6図6は、実施形態2に係る検査治具の構成例を示す平面図である。
図7図7は、実施形態3に係る検査治具の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係る検査治具及び検査方法について説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る検査治具が用いられる加工装置の構成例を示す斜視図である。図2は、実施形態1に係る検査治具の構成例を示す平面図である。図3は、加工装置の制御手段の構成例を示すブロック図である。加工装置1は、被加工物としてのウエーハ200を切削加工して、ウエーハ200を個々のチップに分割する装置である。加工装置1は、図1に示すように、チャックテーブル(保持手段)10と、加工手段20と、門型フレーム30と、加工送り手段40と、割り出し送り手段50と、切り込み送り手段60と、撮像手段70と、表示手段74と、制御手段80とを備えている。
【0014】
ウエーハ200は、半導体デバイスや光デバイスが形成された半導体ウエーハ、光デバイスウエーハ、無機材料基板、延性樹脂材料基板、セラミックス基板もしくはガラス基板等の被加工物である。ウエーハ200は、円板状に形成され、その表面に格子状に配列された多数の分割予定ラインと、これら分割予定ラインによって区画された複数の領域とが形成され、各領域にはIC、LSI等のデバイスがそれぞれ形成されている。ウエーハ200は、例えば、粘着テープ201を介して環状フレーム202に支持されている。
【0015】
チャックテーブル10は、装置本体2の上面にX軸方向に設けられた開口部2aに沿って移動可能に配設されている。チャックテーブル10は、保持面11と、複数の保持部12とを備えている。チャックテーブル10は、円板状に形成され、図示しない回転手段により保持面11の中心に直交する回転軸で回転される。保持面11は、チャックテーブル10の鉛直方向の上端面であり、水平面に対して平坦に形成されている。保持面11は、例えばポーラスセラミック等で構成されており、図示しない真空吸引源の負圧により、ウエーハ200を吸引保持する。複数の保持部12は、保持面11の周囲に4箇所配設され、環状フレーム202を挟持して固定する。
【0016】
加工手段20は、チャックテーブル10に保持されたウエーハ200を加工するものである。加工手段20は、装置本体2の上面に設けられた開口部2aをY軸方向に跨ぐように装置本体2に立設された門型フレーム30に、割り出し送り手段50及び切り込み送り手段60を介して固定されている。加工手段20は、切削ブレード21と、スピンドル22と、ハウジング23とを備えている。切削ブレード21は、極薄の円板状かつ環状に形成された切削砥石である。スピンドル22は、その先端に切削ブレード21を着脱可能に装着する。ハウジング23は、図示しないモータ等の駆動源を有しており、Y軸方向の回転軸周りに回転自在にスピンドル22を支持する。スピンドル22を高速回転させて切削ブレード21によりウエーハ200を切削する。
【0017】
加工送り手段40は、チャックテーブル10と加工手段20とをX軸方向に相対移動させるものである。例えば、加工送り手段40は、X軸方向に延在される図示しないボールねじやパルスモータ等の駆動源を有しており、チャックテーブル10を支持する図示しないX軸移動基台をX軸方向に移動させる。なお、開口部2aには、X軸移動基台を覆うカバー部材41と、カバー部材41の前後にX軸方向に延在する蛇腹部材42とが配設されている。
【0018】
割り出し送り手段50は、チャックテーブル10と加工手段20とをY軸方向に相対移動させるものである。例えば、割り出し送り手段50は、Y軸方向に延在された一対のガイドレール51と、ガイドレール51と平行に配設されたボールねじ52と、ボールねじ52に螺合された図示しないナットに固定され、ガイドレール51にスライド自在に配設されたY軸移動基台53と、ボールねじ52を回転させる図示しないパルスモータとを備えている。割り出し送り手段50は、パルスモータによりボールねじ52を回転させることにより、切り込み送り手段60を支持するY軸移動基台53をY軸方向に移動させる。
【0019】
切り込み送り手段60は、チャックテーブル10の保持面11と直交するZ軸方向に加工手段20を移動させるものである。例えば、切り込み送り手段60は、Z軸方向に延在され、Y軸移動基台53に固定された一対のガイドレール61と、ガイドレール61と平行に配設されたボールねじ62と、ボールねじ62に螺合された図示しないナットに固定され、ガイドレール61にスライド自在に配設されたZ軸移動基台63と、ボールねじ62を回転させるパルスモータ64とを備えている。切り込み送り手段60は、パルスモータ64によりボールねじ62を回転させることにより、加工手段20を支持するZ軸移動基台63をZ軸方向に移動させる。
【0020】
撮像手段70は、光学系71と撮像本体72とを一体に備えて構成され、割り出し送り手段50及び切り込み送り手段60を介して門型フレーム30に固定されている。光学系71は、チャックテーブル10に保持されたウエーハ200もしくは検査治具100(後述する)の表面の光学像を取得するものである。光学系71は、一または複数のレンズ(不図示)を組み合わせて構成され、ウエーハ200もしくは検査治具100に対して所定位置に設定され、入射された光を結像して撮像本体72に光学像を形成する。
【0021】
撮像本体72は、光学系71が取得したウエーハ200もしくは検査治具100の光学像を撮像するものであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサを用いたカメラ等である。撮像本体72は、光学像を光電変換して画像データを制御手段80に出力する。
【0022】
表示手段74は、例えばタッチパネルであり、装置本体2の所定位置に配設されている。表示手段74は、撮像手段70が撮像した画像を表示したり、オペレータが加工条件等を入力したりするものである。
【0023】
制御手段80は、加工装置1の各構成要素を制御するものである。例えば、制御手段80は、加工送り手段40、割り出し送り手段50及び切り込み送り手段60のパルスモータを駆動する図示しない駆動回路に接続され、駆動回路を制御してチャックテーブル10のX軸方向の位置や、加工手段20のY軸方向及びZ軸方向の位置を決定する。また、制御手段80は、撮像手段70が撮像した画像データに基づいて、チャックテーブル10上のウエーハ200のチッピングや加工溝の幅を検出するカーフチェックを行う。
【0024】
ところで、カーフチェック時にチッピングや加工溝のサイズを正確に測るためには、撮像手段70のピクセルサイズを正確に求める必要がある。このため、本実施形態では、図2に示す検査治具100を用いて、撮像手段70のピクセルサイズを測定して算出している。
【0025】
検査治具100は、加工装置1に設けられる撮像手段70のピクセルサイズを測定及び算出するための治具である。図2に示すように、検査治具100は、略長方形形状に形成された板体101を備える。この板体101は、熱膨張率の低い材質(例えば石英)で形成されており、板体101の表面には、石英よりも光反射性の強い材料(例えばクロム)が被覆されている。また、板体101の表面には、板体101の長手方向に沿って延びる第一パターン102、第二パターン103、第三パターン104と、これら各パターンの短手方向の幅の実寸法をそれぞれ記録した二次元コード105とが形成されている。
【0026】
第一パターン102、第二パターン103及び第三パターン104は、板体101の表面にエッチング、ダイシングもしくはレーザ加工によって形成される溝であり、被覆したクロムが除去されて溝底の石英が露出している。第一パターン102、第二パターン103及び第三パターン104の短手方向の幅は、ウエーハ200の加工に使用される切削ブレード21の刃幅に合わせてそれぞれ異なって形成されている。本実施形態では、第一パターン102の幅Laは20[μm]に形成され、第二パターン103の幅Lbは10[μm]、第三パターン104の幅Lcは5[μm]に形成されている。
【0027】
二次元コード105は、検査治具100の各種情報を記憶している。本実施形態では、上記した第一パターン102、第二パターン103及び第三パターン104の各幅La、Lb、Lcの実測値が記憶されている。このため、各種パターンの幅を予め定めた所定長さに高い精度で作成する必要がなく、検査治具100の加工性を容易にすることができる。また、本実施形態では、検査治具100の表面に二次元コード105を設けているため、この二次元コード105を撮像手段70で撮影することにより、二次元コード105に記憶された検査治具100の各種情報を取得することができる。このため、例えば、複数の検査治具を有している場合であっても検査治具の取り間違いを防ぐことができる。
【0028】
制御手段80は、検査治具100を用いて、撮像手段70のピクセルサイズを測定及び算出するため、図3に示すように、記憶手段81と、画像読み取り手段82と、測定手段83と、演算手段84とを備える。画像読み取り手段82は、撮像手段70を用いて、検査治具100の表面に形成された二次元コード105の各種情報(各パターンの幅の実測値)を読み取る。記憶手段81は、画像読み取り手段82が二次元コード105から読み取った各パターンの幅の実測値を記憶する。測定手段83は、表示手段74の画面75に表示された、例えば、第一パターン102の幅Laに対応するピクセル数を測定する。演算手段84は、記憶手段81に記憶された、第一パターン102の幅Laの実測値を測定手段83が測定したピクセル数で割ることでピクセルサイズを算出する。算出されたピクセルサイズは、例えば、所定の軸方向(例えばX軸方向)への軸の移動量でピクセルの変化量を割って算出するピクセルサイズメジャー(不図示)の精度が高いことを確認するためなどに利用される。
【0029】
次に、撮像手段70のピクセルサイズを測定するための検査方法について説明する。図4は、検査方法の手順を示すフローチャートである。図5は、画面に表示された検査治具の画像データの模式図である。まず、オペレータは、検査治具100をチャックテーブル10の保持面11に載置して該チャックテーブル10保持する(ステップS1;保持ステップ)。例えば、図2に示すように、検査治具100の長手方向がほぼX軸方向と平行になるように載置される。この場合、検査治具100の表面に形成された第一パターン102(第二パターン103、第三パターン104)もほぼX軸方向に沿って延在する。なお、オペレータが検査治具100をチャックテーブル10上に載置することに限るものではなく、例えば、ウエーハ200を搬送する搬送機構(不図示)を利用してもよい。
【0030】
次に、検査治具100の二次元コード105を撮像手段70で読み取り、検査治具100の第一パターン102、第二パターン103、第三パターン104の各幅の実測値を記憶手段81に記憶させる(ステップS2;読み取りステップ)。この場合、オペレータが加工装置1を操作することにより、制御手段80が加工送り手段40及び割り出し送り手段50を動作させて、検査治具100の二次元コード105上に撮像手段70を配置し、この位置で二次元コード105を撮像する。画像読み取り手段82は、撮像画像から二次元コード105に登録された各パターンの幅の実測値を読み取り、この読み取った各パターンの幅の実測値を記憶手段81に記憶する。この読み取りステップは、少なくとも後述する算出ステップよりも前に実施していればよく、例えば、保持ステップを実施する前に予め二次元コード105に登録された各パターンの幅の実測値を読み取っておいてもよい。
【0031】
次に、検査治具100の第一パターン102を撮像手段70と平行にする(ステップS3;平行合わせステップ)。本実施形態では、例えば、第一パターン102の延在する方向を、撮像手段70に対して検査治具100(チャックテーブル10)が相対的に移動する方向と平行にすることをいう。具体的には、図2に示すように、第一パターン102の延在する方向を、位置を固定した撮像手段70に対して検査治具100(チャックテーブル10)が移動する方向(X軸方向)と平行にする。この場合、制御手段80は、第一パターン102の一方の側壁102aのY座標が少なくとも2点で一致するように、チャックテーブル10を回転させて角度調整を行う。例えば、制御手段80は、第一パターン102の一方の側壁102a上に位置する角部のY座標同士が一致するように、チャックテーブル10を回転させて角度調整を行う。これにより、第一パターン102の延在する方向とX軸方向とが平行になる。なお、図示は省略するが、第一パターン102の延在する方向を、位置を固定した検査治具100(チャックテーブル10)に対して、撮像手段70が移動する方向(Y軸方向)と平行にしてもよい。また、本実施形態では、第一パターン102を例示しているが、他のパターン(第二パターン103もしくは第三パターン104)を用いても良いことは勿論である。
【0032】
次に、検査治具100の第一パターン102を撮像手段70で撮像し、表示手段74の画面75上で第一パターン102の幅に対応するピクセル数を測定する(ステップS4;測定ステップ)。この場合、オペレータが撮像される第一パターン102を指示し、実際に第一パターン102が撮像されていることを確認する。撮像手段70が検査治具100の第一パターン102を撮像すると、図3に示すように、表示手段74の画面75に第一パターン102を含む検査治具100の画像データが表示される。画面75に表示される検査治具100の画像データは、図5に示すように、撮像本体72に設けられた複数の撮像素子が撮像したピクセル(画素)Pの集合体である。本実施形態では、各パターン(第一パターン102)は、板体101の表面と光反射性を異ならせている。このため、測定手段83は、例えば、画像処理を施すことにより、図5に示すように、第一パターン102と板体101の表面とを区分けし、第一パターン102の短手方向に並ぶピクセル数Lpを測定する。この図5の例では、第一パターン102の幅に対応するピクセル数Lpは12[ピクセル]となる。
【0033】
次に、演算手段84は、ピクセルサイズ(単位ピクセルPあたりの長さ)を算出する(ステップS5;算出ステップ)。具体的には、演算手段84は、読み取りステップにおいて、画像読み取り手段82が読み込んだ第一パターン102の幅Laの実測値を、測定ステップにおいて、測定手段83が測定した第一パターン102の幅Laに対応するピクセル数Lpで割ることにより、ピクセルサイズを算出する。
【0034】
さて、撮像手段70のピクセルサイズは、例えば、光学系71のレンズのゆがみ等によって、レンズの中央と外側とで変動する可能性がある。このため、本実施形態では、第一パターン102、第二パターン103及び第三パターン104の幅は、ウエーハ200の加工に使用される切削ブレード21の刃幅に合わせてそれぞれ異なって形成されている。この構成によれば、例えば、刃幅が20[μm]の切削ブレード21を使用する場合には、刃幅に相当する幅を有する第一パターン102を用いてピクセルサイズを算出し、刃幅が5[μm]の切削ブレード21を使用する場合には、刃幅に相当する幅を有する第三パターン104を用いてピクセルサイズを算出することができる。このため、算出されたピクセルサイズを利用して、例えば、切削加工後にカーフチェックを行う場合、レンズのゆがみ等の影響を低減し、正確なカーフチェックを行うことができる。また、上記した構成に限るものではなく、第一パターン102、第二パターン103及び第三パターン104をそれぞれ利用して、各パターンに対応するピクセルサイズを算出し、これら算出したピクセルサイズを平均値とすることでレンズのゆがみ等を考慮したピクセルサイズを算出することができ、正確なカーフチェックを行うことができる。
【0035】
[実施形態2]
次に、実施形態2に係る検査治具100Aについて説明する。図6は、実施形態2に係る検査治具の構成例を示す平面図である。検査治具100Aは、上記した検査治具100と比較して、平行合わせ用の一対の基準パターン106,106を備えている点で構成を異にする。検査治具100と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。一対の基準パターン106,106は、同一の大きさで同一の形状(十字形状)に形成されている。一対の基準パターン106,106は、上記した第一パターン102等の長手方向と平行な方向に並べて配置されている。一対の基準パターン106,106は、上記した第一パターン102等と同様に、板体101の表面にエッチング、ダイシングもしくはレーザ加工によって形成される十字溝であり、被覆したクロムが除去されて溝底の石英が露出している。
【0036】
二次元コード105には、上記した第一パターン102、第二パターン103及び第三パターン104の各幅La、Lb、Lcの実測値とともに、一対の基準パターン106,106と、第一パターン102、第二パターン103及び第三パターン104との距離がそれぞれ記憶されている。
【0037】
上記した平行合わせステップでは、一対の基準パターン106,106が並ぶ方向を、撮像手段70に対して検査治具100A(チャックテーブル10)が相対的に移動する方向と平行とする。この場合、制御手段80は、一方の基準パターン106の所定の角部のY座標と、他方の基準パターン106の所定の角部のY座標とが一致するように、チャックテーブル10を回転させて角度調整を行う。これにより、第一パターン102等の延在する方向とX軸方向とが平行になる。
【0038】
また、本実施形態では、二次元コード105に、一対の基準パターン106,106と、第一パターン102、第二パターン103及び第三パターン104との距離がそれぞれ記憶されているため、例えば、加工装置1が備えるカーフチェックの機能を利用して自動的にピクセルサイズの算出が可能となる。この場合、測定ステップにおいて、基準パターン106から記録された所定距離分移動して、例えば、第一パターン102を撮像し、表示手段74の画面75上で第一パターン102の幅Laに対応するピクセル数を測定する。そして、算出ステップにおいてピクセルサイズを算出する。その後、基準パターン106から記録された所定距離分移動して、例えば、第二パターン103を撮像して第二パターン103の幅Lbに対応するピクセル数を測定してピクセルサイズを算出する。さらに、基準パターン106から記録された所定距離分移動して、例えば、第三パターン104を撮像して第三パターン104の幅Lcに対応するピクセル数を測定してピクセルサイズを算出することもできる。
【0039】
[実施形態3]
次に、実施形態3に係る検査治具100Bについて説明する。図7は、実施形態3に係る検査治具の構成例を示す平面図である。この実施形態3では、検査治具100Bは、円板状の板体101Bを備え、この板体101Bの表面に、一対の第一基準パターン107,107と、一対の第二基準パターン108,108とが形成されている。
【0040】
板体101Bは、形状が円板状とした点で板体101と異なるが材質等は同等である。第一基準パターン107,107は、同一の大きさで同一の形状(十字形状)に形成されている。第二基準パターン108,108は、第一基準パターン107,107よりも小さいが同一の大きさで同一の形状(十字形状)に形成されている。第一基準パターン107,107及び第二基準パターン108,108は、相互に平行となる方向に並んでいる。第一基準パターン107,107及び第二基準パターン108,108は、ウエーハ200の加工に使用される切削ブレード21の刃幅に合わせてそれぞれ異なって形成されている。本実施形態では、第一基準パターン107の幅Ldは20[μm]に形成され、第二基準パターン108の幅Leは5[μm]に形成されている。
【0041】
二次元コード105には、上記した第一基準パターン107及び第二基準パターン108の各幅Ld、Leの実測値とともに、第一基準パターン107,107と、第二基準パターン108,108との距離がそれぞれ記憶されている。
【0042】
上記した平行合わせステップでは、第一基準パターン107,107もしくは第二基準パターン108,108が並ぶ方向を、撮像手段70に対して検査治具100A(チャックテーブル10)が相対的に移動する方向と平行とする。この場合、制御手段80は、例えば、一方の第一基準パターン107の所定の角部のY座標と、他方の第一基準パターン107の所定の角部のY座標とが一致するように、チャックテーブル10を回転させて角度調整を行う。これにより、第一基準パターン107,107が並ぶ方向(第二基準パターン108,108が並ぶ方向)とX軸方向とが平行になる。
【0043】
また、本実施形態では、二次元コード105には、第一基準パターン107,107と、第二基準パターン108,108との距離が記憶されているため、例えば、加工装置1が備えるカーフチェックの機能を利用して自動的にピクセルサイズの算出が可能となる。この場合、第一基準パターン107を利用して平行合わせをした後、第一基準パターン107を撮像し、表示手段74の画面75上で第一基準パターン107の幅Ldに対応するピクセル数を測定してピクセルサイズを算出する。その後、第一基準パターン107から記録された所定距離分移動して、第二基準パターン108を撮像して第二基準パターン108の幅Leに対応するピクセル数を測定してピクセルサイズを算出することもできる。
【0044】
以上、説明したように、本実施形態によれば、二次元コード105を撮像手段70で読み取ることにより、二次元コード105に記録された各パターンの実際の幅を取得することができるため、このパターンの実際の幅を、該パターンの幅に対応するピクセル数で割ることでピクセルサイズを正確に算出することができる。また、複数の検査治具を有している場合であっても、検査治具に形成されている二次元コード105を撮像手段70で認識できるので、検査治具の取り間違いを防ぐことができる。さらに、二次元コード105に各パターンの実際の幅を記録しておくことにより、パターンの幅を予め定めた所定長さに高い精度で作成しなくても、高精度にピクセルサイズを測定することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、上記した各実施形態では、第一パターン102~第三パターン104及び基準パターン106~第二基準パターン108は、板体101、101Bの表面に形成される溝を例示して説明したが、これに限るものではなく、例えば、プリントにより形成された凸部でも良い。また、二次元コード105は、撮像手段70で読み取るため、板体101、101Bの表面に設けることが好ましいが、別途読み取り手段(例えば、バーコードリーダーのような携帯可能なもの)を備える構成であれば、板体101、101Bの裏面や側面に設けて、事前に読み取りステップを実施してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 加工装置
10 チャックテーブル(保持手段)
20 加工手段
21 切削ブレード
70 撮像手段
71 光学系
72 撮像本体
74 表示手段
75 画面
80 制御手段
81 記憶手段
82 画像読み取り手段
83 測定手段
84 演算手段
100、100A、100B 検査治具
101、101B 板体
102 第一パターン
102a 側壁
103 第二パターン
104 第三パターン
105 二次元コード
106 基準パターン
107 第一基準パターン
108 第二基準パターン
200 ウエーハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7