(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ポリ(アミド-イミド)コポリマー、ポリ(アミド-イミド)コポリマー製造用組成物、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む成形品および表示装置
(51)【国際特許分類】
C08G 73/14 20060101AFI20220926BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220926BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220926BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C08G73/14
C08J5/18 CFG
H05B33/14 A
H05B33/02
(21)【出願番号】P 2018168398
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】10-2017-0115219
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0106898
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鄭 ボ ルム
(72)【発明者】
【氏名】張 元 碩
(72)【発明者】
【氏名】朱 京 植
(72)【発明者】
【氏名】安 讚 在
(72)【発明者】
【氏名】▲そう▼ ア 羅
(72)【発明者】
【氏名】池 尚 洙
(72)【発明者】
【氏名】崔 誠 原
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-119867(JP,A)
【文献】特開昭63-112623(JP,A)
【文献】特開2010-102014(JP,A)
【文献】特開平03-139522(JP,A)
【文献】特開2018-119141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/14
C08J 5/18
H01L 51/50
H05B 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミン、下記化学式1で表されるジアミン、下記化学式2で表されるジカルボニル化合物、および下記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物の反応生成物である、ポリ(アミド-イミド)コポリマー
であって、
前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンは、下記化学式4-1で表されるジアミンを含む、ポリ(アミド-イミド)コポリマー:
【化1】
上記化学式1中、
Aは、2以上の炭素数6~30の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2以上の炭素数6~30の芳香族環は、それぞれ独立して、電子吸引性基によって置換されるかまたは非置換のものである;
【化2】
上記化学式2中、
R
3は、置換もしくは非置換のフェニレン基または置換もしくは非置換のビフェニレン基であり、Xは、それぞれ同一であるかまたは異なるハロゲン原子である;
【化3】
上記化学式3中、
R
10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)
2-、-Si(CH
3)
2-、-(CH
2)
p-、-(CF
2)
q-、-C(C
nH
2n+1)
2-、-C(C
nF
2n+1)
2-、-(CH
2)
p-C(C
nH
2n+1)
2-(CH
2)
q-、または-(CH
2)
p-C(C
nF
2n+1)
2-(CH
2)
q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)であり、
R
12およびR
13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、置換もしくは非置換の炭素数6~20の芳香族有機基、-OR
201(ここで、R
201は、炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR
210R
211R
212(ここで、R
210、R
211、およびR
212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0~3の整数である
:
【化4】
上記化学式4-1中のR
k
およびR
l
は、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、R
m
~R
p
は全て水素原子である。
【請求項2】
前記化学式1で表されるジアミンは、2つの炭素数6~12の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2つの炭素数6~12の芳香族環は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~2のハロアルキル基、炭素数2~6のアルカノイル基、および炭素数1~6のエステル基からなる群より選択される少なくとも1種の電子吸引性基で置換されたものである、請求項
1に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項3】
前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式で表されるジアミンからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1
または2に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【化5】
【請求項4】
前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式Aで表されるジアミンを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【化6】
【請求項5】
前記化学式2中のR
3は、フェニレン基であり、前記化学式2中のXは、それぞれ独立して、ClまたはBrである、請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項6】
前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-diphenylsulfone tetracarboxylic dianhydride、DSDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)、および4,4’-オキシジフタル酸無水物(4,4’-oxydiphthalic anhydride、ODPA)からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項7】
前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)および4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項8】
前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーは、前記可視光線領域中の500nm~700nm範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンを、前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーの総質量を基準に、200ppm以下で含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー。
【請求項9】
下記化学式5で表されるジアミン、および下記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むポリ(アミド-イミド)コポリマー製造用組成物:
【化7】
上記化学式5中、
R
1はカルボニル基(-C(=O)-)
であり、
R
eおよびR
fは、互いに連結されてカルボニル基(-C(=O)-)を形成し、
R
b、R
cおよびR
g~R
jは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基
、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基
、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基
であり、
R
3は、置換もしくは非置換のフェニレン基または置換もしくは非置換のビフェニレン基であり、
Aは、
2つのフェニレン環が単結合によって連結されたものであって、それぞれのフェニレン環は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~2のハロアルキル基、炭素数2~6のアルカノイル基、および炭素数1~6のエステル基からなる群より選択される少なくとも1種の電子吸引性基が置換されたものであり、
n1およびn2は、それぞれ独立して、0以上の数であり、n1およびn2は、同時に0ではない;
【化8】
上記化学式3中、
R
10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)
2-、-Si(CH
3)
2-、-(CH
2)
p-、-(CF
2)
q-、-C(C
nH
2n+1)
2-、-C(C
nF
2n+1)
2-、-(CH
2)
p-C(C
nH
2n+1)
2-(CH
2)
q-、または-(CH
2)
p-C(C
nF
2n+1)
2-(CH
2)
q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)であり、
R
12およびR
13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、置換もしくは非置換の炭素数6~20の芳香族有機基、-OR
201(ここで、R
201は、炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR
210R
211R
212(ここで、R
210、R
211、およびR
212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0~3の整数である。
【請求項10】
前記組成物は、下記化学式5-1で表されるジアミンをさらに含む、請求項
9に記載の組成物:
【化9】
前記化学式5-1中、
R
3は、置換もしくは非置換のフェニレン基、または置換もしくは非置換のビフェニレン基であり、
Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立して、2以上の炭素数6~30の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2以上の炭素数6~30の芳香族環は、それぞれ独立して、電子吸引性基によって置換されているかまたは非置換のものであり、
n0は、0以上の数である。
【請求項11】
前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物は、下記化学式3-1で表される化合物と下記化学式3-2で表される化合物との組み合わせを含む、請求項
9または10に記載の組成物。
【化10】
【請求項12】
請求項1~
8のいずれか1項に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー、または請求項
9~11のいずれか1項に記載のポリ(アミド-イミド)コポリマー製造用組成物から製造されるポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む成形品。
【請求項13】
前記成形品はフィルムであり、前記フィルムの色度座標(CIE1931色空間)上のa
*値およびb
*値はそれぞれ-3.0~3.0である、請求項
12に記載の成形品。
【請求項14】
前記成形品はフィルムであり、前記フィルムの透過率は85%以上であり、黄色度は-4.0~3.0である、請求項
12または13に記載の成形品。
【請求項15】
請求項
12~14のいずれか1項に記載の成形品を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(アミド-イミド)コポリマー、ポリ(アミド-イミド)コポリマー製造用組成物、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む成形品、および前記成形品を含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報の深化および大衆化により、多様な情報を視覚化して人間に伝達するディスプレイとして、場所、時間にこだわらず、超軽量であり低電力の薄くて、紙のように軽くて、柔軟なフレキシブル(flexible)ディスプレイに対する必要性が増大している。フレキシブルディスプレイを実現するためにはフレキシブル基板、低温工程用の有機素材および無機素材、フレキシブルエレクトロニクス、封止技術、およびパッケージング技術等が複合的に要求される。
【0003】
フレキシブルディスプレイに適用するための従来のウィンドウカバーガラス(Window Cover Glass)を代替できる透明プラスチックフィルムは、高い屈曲特性(toughness)と光学的特性とが求められる。
【0004】
要求される光学的特性としては、高い光透過率、低いヘイズ(Haze)、低い黄色指数(Yellowness Index:YI)、および耐UV変色度などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、優れた機械的物性および光学的特性を有するポリ(アミド-イミド)コポリマーを提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の目的は、前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造するための組成物を提供することにある。
【0008】
また、本発明のさらに他の目的は、前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む成形品を提供することにある。
【0009】
また、本発明のさらに他の目的は、前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む成形品を含有する表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミン、下記化学式1で表されるジアミン、下記化学式2で表されるジカルボニル化合物、および下記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物の反応生成物である、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを提供する:
【0011】
【0012】
上記化学式1中、
Aは、2以上の炭素数6~30の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2以上の炭素数6~30の芳香族環は、それぞれ独立して、電子吸引性基によって置換されているかまたは非置換のものである;
【0013】
【0014】
上記化学式2中、
R3は、置換もしくは非置換のフェニレン基、または置換もしくは非置換のビフェニレン基であり、Xは、それぞれ同一であるかまたは異なるハロゲン原子である;
【0015】
【0016】
上記化学式3中、
R10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、または-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)であり、
R12およびR13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、置換もしくは非置換の炭素数6~20の芳香族有機基、-OR201(ここで、R201は、炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0~3の整数である。
【0017】
前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンは、可視光線領域中の波長550nm~650nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンであることが好ましい。
【0018】
前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンは、下記化学式4で表されるジアミンを含むことが好ましい。
【0019】
【0020】
上記化学式4中、
R1は、カルボニル基(-C(=O)-)、または-(L1)-N=N-(L2)-で表される基であり、この際、L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数2~20のアルケニレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CF2)q-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、またはこれらの組み合わせであり、
R1がカルボニル基である場合、ReおよびRfは、互いに連結されてカルボニル基(-C(=O)-)を形成し、
Ra~RdおよびRg~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、グリシドキシプロピル基、-OR201基(ここで、R201は炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
Ra~Rdのうちの2つ、またはRg~Rjのうちの2つはアミノ基であり、
R1が-(L1)-N=N-(L2)-で表される基である場合、
Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、グリシドキシプロピル基、-OR201基(ここで、R201は炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
Ra~Reのうちの2つ、またはRf~Rjのうちの2つはアミノ基であることが好ましい。
【0021】
前記可視光線領域中の波長500nm~700nm範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンは、下記化学式4-1で表されるジアミンおよび下記化学式4-2で表されるジアミンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0022】
【0023】
上記化学式4-1および化学式4-2中、
Rk~Rpは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、グリシドキシプロピル基、-OR201(ここで、R201は炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
上記化学式4-2中、
L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数2~20のアルケニレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CF2)q-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、またはこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0024】
上記化学式4-1中および化学式4-2中のRkおよびRlは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、Rm~Rpは全て水素原子であることが好ましい。
【0025】
前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンは、下記化学式4-1で表されるジアミンを含むことが好ましい:
【0026】
【0027】
上記化学式4-1中のRkおよびRlは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、Rm~Rpは全て水素原子であってもよい。
【0028】
上記化学式1で表されるジアミンは、2つの炭素数6~12の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2つの炭素数6~12の芳香族環は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~2のハロアルキル基、炭素数2~6のアルカノイル基、および炭素数2~6のエステル基からなる群より選択される少なくとも1種の電子吸引基(electron withdrawing group)で置換されたものであってもよい。
【0029】
上記化学式1で表されるジアミンは、下記の化学式で表されるジアミンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい:
【0030】
【0031】
前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式Aで表されるジアミンを含むことが好ましい。
【0032】
【0033】
前記化学式2のR3は、フェニレン基であり、Xは、それぞれ独立して、ClまたはBrであることが好ましい。
【0034】
前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-diphenylsulfone tetracarboxylic dianhydride、DSDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)、および4,4’-オキシジフタル酸無水物(4,4’-oxydiphthalic anhydride、ODPA)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0035】
前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)および4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)を含むことが好ましい。
【0036】
前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーは、前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンを、前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーの総質量を基準に、200質量ppm(parts per million)以下で含むことが好ましい。
【0037】
本発明の他の一実施形態は、下記化学式5で表されるジアミン、および下記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むポリ(アミド-イミド)コポリマー製造用組成物を提供する。
【0038】
【0039】
上記化学式5中、
R1はカルボニル基(-C(=O)-)、または-(L1)-N=N-(L2)-で表される基であり、この際、L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数2~20のアルケニレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CF2)q-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、またはこれらの組み合わせであり、
R1がカルボニル基である場合、
ReおよびRfは、互いに連結されてカルボニル基(-C(=O)-)を形成し、
Rb、Rc、およびRg~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、グリシドキシプロピル基、-OR201基(ここで、R201は炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
R1が-(L1)-N=N-(L2)-で表される基である場合、
Rb、Rc、およびRg~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、グリシドキシプロピル基、-OR201基(ここで、R201は炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
R3は、置換もしくは非置換のフェニレン基、または置換もしくは非置換のビフェニレン基であり、
Aは、2以上の炭素数6~30の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2以上の炭素数6~30の芳香族環は、それぞれ独立して、電子吸引性基によって置換されているかまたは非置換のものであり、
n1およびn2は、それぞれ独立して、0以上の数であり、n1およびn2は、同時に0ではない;
【0040】
【0041】
上記化学式3中、
R10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、または-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)であり、
R12およびR13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、置換もしくは非置換の炭素数6~20の芳香族有機基、-OR201(ここで、R201は、炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0~3の整数である。
【0042】
前記組成物は、下記化学式5-1で表されるジアミンをさらに含むことが好ましい:
【0043】
【0044】
前記化学式5-1中、
R3は、置換もしくは非置換のフェニレン基、または置換もしくは非置換のビフェニレン基であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、2以上の炭素数6~30の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2以上の炭素数6~30の芳香族環は、それぞれ独立して、電子吸引性基によって置換されているかまたは非置換のものであり、
n0は、0以上の数である。
【0045】
前記化学式5中のR1はカルボニル基であり、
Rb、Rc、およびRg~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
Aは、2つのフェニレン環が単結合によって連結されたものであって、それぞれのフェニレン環は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~2のハロアルキル基、炭素数2~6のアルカノイル基、および炭素数1~6のエステル基からなる群より選択される少なくとも1種の電子吸引性基が置換されていることが好ましい。
【0046】
前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物は、下記化学式3-1で表される化合物および下記化学式3-2で表される化合物を含むことが好ましい:
【0047】
【0048】
本発明の他の一実施形態は、本発明の一実施形態によるポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む成形品を提供する。
【0049】
前記成形品はフィルムであり、前記フィルムの色度座標(CIE1931色空間)上のa*値およびb*値は、それぞれ-3.0~3.0であることが好ましい。
【0050】
前記成形品はフィルムであり、前記フィルムの透過率は85%以上であり、黄色度は-4.0~3.0であることが好ましい。
【0051】
本発明のさらに他の一実施形態は、本発明の一実施形態による成形品を含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0052】
本発明の一実施形態によるポリ(アミド-イミド)コポリマーは、透過率の減少を最小限にしながら、黄色度が顕著に減少して、優れた機械的物性と共にさらに改善された光学的特性を有する。したがって、本発明の一実施形態によるポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む成形品、例えば、フィルムなどは、表示装置、特にフレキシブル表示装置のウィンドウフィルムなどとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミン化合物のCNAQ、CLAQ、およびDAAQを、それぞれ同じ含有量の範囲で重合するか(実施例1、4、および5)、または単純混合して(比較例6、7、および8)製造したフィルムの透過率減少度合を、上記化合物の何れも含まない比較例1によるフィルムの透過率と比較して示すグラフである。
【
図2】可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミン化合物のCNAQ、CLAQ、およびDAAQを、それぞれ同じ含有量の範囲で重合するか(実施例1、4、および5)、または単純混合(比較例6、7、および8)して製造したフィルムの黄色度の減少程度を、上記化合物の何れも含まない比較例1によるフィルムの黄色度と比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明が制限されず、本発明は後述の請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0055】
本明細書で特別な言及がない限り、“置換”または“置換された”とは、特定化学式内の官能基中の1つ以上の水素原子が、ハロゲン原子(F、Br、ClまたはI)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基{NH2、NH(R100)またはN(R101)(R102)であり、ここで、R100、R101およびR102は、同一であるかまたは互いに異なり、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基である}、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、オキソ基、炭素数1~30のアシル基、炭素数1~30のアルキル基、1つ以上の水素原子がハロゲン原子で置換された炭素数1~30のアルキル基、炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数3~30のシクロアルキル基、炭素数3~30のシクロアルケニル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数1~30のアルコキシ基、および炭素数2~30のヘテロ環基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記置換基は互いに連結されて環を形成することもできる。
【0056】
本明細書で特別な言及がない限り、各官能基は以下のとおりである。“アルキル基”とは炭素数1~30のアルキル基を意味し、好ましくは炭素数1~15のアルキル基を意味する。また、“シクロアルキル基”とは炭素数3~30のシクロアルキル基を意味し、好ましくは炭素数3~18のシクロアルキル基を意味する。さらに“アルコキシ基”とは炭素数1~30のアルコキシ基を意味し、好ましくは炭素数1~18のアルコキシ基を意味する。また、“アリール基”とは炭素数6~30のアリール基を意味し、好ましくは炭素数6~18のアリール基を意味する。また、“アルケニル基”とは1つ以上の二重結合を含む炭素数2~30のアルケニル基を意味し、好ましくは炭素数2~18のアルケニル基を意味する。さらに、“アルキニル基”とは、1つ以上の三重結合を含む炭素数2~30のアルキニル基を意味し、好ましくは炭素数2~18のアルキニル基を意味する。また、“アルキレン基”とは炭素数1~30のアルキレン基を意味し、好ましくは炭素数1~18のアルキレン基を意味する。さらに“アリーレン基”とは炭素数6~30のアリーレン基を意味し、好ましくは炭素数6~16のアリーレン基を意味する。
【0057】
また、本明細書で特別な言及がない限り、各官能基は以下のとおりである。“脂肪族有機基”とは置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニレン基、または置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルキニレン基を意味し、好ましくは置換もしくは非置換の炭素数1~15のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~15のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~15のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数1~15のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~15のアルケニレン基、または置換もしくは非置換の炭素数2~15のアルキニレン基を意味する。また、“脂環式有機基(脂環式基)”とは、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルケニレン基、または置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキニレン基を意味し、好ましくは置換もしくは非置換の炭素数3~15のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のシクロアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数3~15のシクロアルケニレン基、または置換もしくは非置換の炭素数3~15のシクロアルキニレン基を意味する。さらに、“芳香族有機基”とは、1つの芳香族環、2以上の芳香族環が共に縮合環をなすもの、または2以上の芳香族環が、単結合、または、フルオレニレン基、-O-、-S-、C-(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-(ここで、pの範囲は1≦p≦10である)、-(CF2)q-(ここで、qの範囲は1≦q≦10である)、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、および-C(=O)NH-から選択される官能基で連結されたものを含む、炭素数6~30の基、例えば、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリーレン基を意味し、好ましくは置換もしくは非置換の炭素数6~16のアリール基、または置換もしくは非置換のフェニレン基などの炭素数6~16のアリーレン基を意味する。また、“ヘテロ環基”とはO、S、N、P、Si、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるヘテロ原子を1つの環内に1~3個含む、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキニレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロアリーレン基を意味し、好ましくはO、S、N、P、Siおよびこれらの組み合わせからなる群より選択されるヘテロ原子を1つの環内に1~3個含む、置換もしくは非置換の炭素数2~15のヘテロシクロアルキル基、置換または非置換の炭素数2~15のヘテロシクロアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~15のヘテロシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~15のヘテロシクロアルケニレン基、置換または非置換の炭素数2~15のヘテロシクロアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~15のヘテロシクロアルキニレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~15のヘテロアリール基、または置換もしくは非置換の炭素数2~15のヘテロアリーレン基を意味する。
【0058】
本明細書で特別な言及がない限り、“組み合わせ”とは混合または共重合を意味する。
【0059】
本明細書(化学式)で“*”は、他の原子(隣接した原子)と連結される部分を意味する。
【0060】
スマートホンやタブレットPCのようなモバイル機器を、軽くて、撓むか、曲げられるモバイル機器に転換する研究が行われている。これにより、モバイル機器の最上段の硬いガラスを代替できる、曲げることが可能であり、高硬度の、透明なディスプレイ用ウィンドウフィルムが必要とされている。
【0061】
樹脂フィルムをウィンドウフィルムとして使用するためには、優れた機械的物性および光学的特性が求められる。要求される光学的特性としては高い透過率、低い黄色指数(YI)、低い耐UV変色度、低いヘイズ(haze)、および低い屈折率(低反射率)などがある。
【0062】
ポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーは、優れた機械的特性、および光学的特性を有していて、有機発光ダイオード(OLED)、液晶ディスプレイ(LCD)などのディスプレイ装置用基板として広く使用されている。このようなポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを含むフィルムを、フレキシブルディスプレイ用ウィンドウフィルムとして使用するためには、さらに高い機械的物性、例えば、優れた表面硬度および屈曲特性などと、より優れた光学的特性、例えば、さらに高い透過率、およびさらに低い黄色指数(YI)などとが求められる。しかし、ポリイミドまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーを含むフィルムの機械的特性と光学的特性、特に引張強度および表面硬度のような機械的物性と黄色指数などの光学的特性とは、互いにトレードオフの関係にあり、この両方の物性を同時に改善することは難しい。
【0063】
従来、ポリイミドの黄色度を調節するために、ポリイミドの鎖間隔を広くするか、ポリイミドの電子共有を妨害するために架橋結合を形成するか、電気陰性度の高い分子(F、Clなど)を導入するなどの方法が使用された。または、青色染料または顔料をポリイミド溶液に混合して成膜するか、既に製造されたポリイミドフィルムの上に青色層をコーティングして黄色度を低くする方法も開発された。しかし、青色染料または顔料をポリイミド溶液などに単純混合する場合、染料の不均一混合または染料が固まる現象を引き起こされる分散性の問題が存在し、また、フィルムを構成する高分子と染料または顔料の相溶性が劣る場合、時間の経過につれて染料や顔料がフィルムの表面に溶出するという問題がある。製造されたポリイミドフィルムの上に青色層をコーティングする方法では、工程増加による収率低下およびコーティング層剥離などの問題が存在し、また、工程追加による製造コストの上昇、および光学フィルムにおいて重要視される外観特性が、追加の工程によって不良になることがある。さらに、既存のフィルムとコーティング層を構成する物質または溶媒との相溶性の問題による工程の問題が発生することがある。一方、ポリイミドの鎖間距離を増やすか電子陰性度の高い原子を導入する場合、ポリイミド間の電子共有を阻害するようになって、ポリイミドフィルムなどの機械的強度、例えば、表面硬度などを下げてしまうことがある。
【0064】
よって、本発明者らは、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの高い機械的物性を維持しながらも、より優れた光学的特性、特に、透過率の減少を最小限にしながらも、より低い黄色度を示す新たなポリ(アミド-イミド)コポリマー、およびこれを製造できる組成物を開発しようと鋭意検討した。その結果、芳香族テトラカルボン酸二無水物、芳香族ジアミン、および芳香族ジカルボニル化合物を含むポリ(アミド-イミド)コポリマー製造用組成物に、可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンを極少量添加した組成物から製造したポリ(アミド-イミド)コポリマーが、優れた機械的物性を維持しながらも、透過率の減少が殆どなく、顕著に低い黄色度を実現することができることを発見して本発明を完成させた。
【0065】
例えば、前記組成物から製造されるポリ(アミド-イミド)コポリマーは、色度座標(CIE1931色空間)上のa*値およびb*値が、例えばそれぞれ-3.0~3.0、例えばそれぞれ-2.5~2.5、例えばそれぞれ-2.0~2.0、例えばそれぞれ-1.5~1.5、例えばそれぞれ-1.0~1.0、例えばそれぞれ-0.5~0.5であり得る。L*a*b*表色系は、明度を表わすL値と、色と彩度を表わす色度a*値およびb*値を示し、ここで+a*は赤色、-a*は緑色、+b*は黄色、-b*は青色を示し、黄色を示す+b*が減少するにつれて黄色度が減少する。したがって、上記範囲のa*およびb*値を有する、本発明の一実施形態によるポリ(アミド-イミド)コポリマーは、350nm~750nm波長範囲で85%以上の透過率を示し、黄色度(YI)は、例えば-4.0~3.0、例えば-3.5~3.0、例えば-3.0~2.5、例えば-2.5~2.5、例えば-2.0~2.0、例えば-1.5~2.0、例えば-1.5~1.5、例えば-1.5~1.0、例えば-1.0~1.0の範囲であって、透過率がほとんど減少しない範囲で、黄色度(YI)を顕著に低減できる。
【0066】
よって、本発明の一実施形態によれば、可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミン、下記化学式1で表されるジアミン、下記化学式2で表されるジカルボニル化合物、および下記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物の反応生成物であるポリ(アミド-イミド)コポリマーを提供する。
【0067】
【0068】
上記化学式1中、
Aは、2以上の炭素数6~30の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2以上の炭素数6~30の芳香族環は、それぞれ独立して、電子吸引性基によって置換されているかまたは非置換のものである。
【0069】
【0070】
上記化学式2中、
R3は、置換もしくは非置換のフェニレン基または置換もしくは非置換のビフェニレン基であり、Xは、それぞれ同一であるかまたは異なるハロゲン原子である。
【0071】
【0072】
上記化学式3中、
R10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、または-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)であり、
R12およびR13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、置換もしくは非置換の炭素数6~20の芳香族有機基、-OR201(ここで、R201は、炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0~3の整数である。
【0073】
前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンは、可視光線領域中の波長550nm~650nmの範囲、例えば、可視光線領域中の波長580nm~630nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンであることが好ましい。
【0074】
前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンは、下記化学式4で表されるジアミンを含むことが好ましい。
【0075】
【0076】
上記化学式4中、
R1はカルボニル基(-C(=O)-)、または-(L1)-N=N-(L2)-で表される基であり、この際、L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数2~20のアルケニレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CF2)q-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、またはこれらの組み合わせであり、
R1がカルボニル基である場合、
ReおよびRfは、互いに連結されてカルボニル基(-C(=O)-)を形成し、
Ra~RdおよびRg~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、グリシドキシプロピル基、-OR201(ここで、R201は炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
Ra~Rdのうちの2つ、またはRg~Rjのうちの2つはアミノ基であり、
R1が-(L1)-N=N-(L2)-で表される基である場合、
Ra~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、グリシドキシプロピル基、-OR201(ここで、R201は炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
Ra~Reのうちの2つ、またはRf~Rjのうちの2つはアミノ基である。
【0077】
前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンは、下記化学式4-1で表されるジアミンおよび下記化学式4-2で表されるジアミンの少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0078】
【0079】
上記化学式4-1および化学式4-2中、
Rk~Rpは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、グリシドキシプロピル基、-OR201(ここで、R201は炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212はそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
上記化学式4-2中、
L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数2~20のアルケニレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CF2)q-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、またはこれらの組み合わせである。
【0080】
上記化学式4-1および化学式4-2のRkおよびRlは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、Rm~Rpは、全て水素原子であることが好ましい。
【0081】
本発明の一実施形態によれば、前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンは、下記化学式4-1で表されるジアミンを含むことが好ましい。
【0082】
【0083】
上記化学式4-1中のRkおよびRlは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、Rm~Rpは全て水素原子である。
【0084】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式4-1で表されるジアミンは、下記化学式4-1a、化学式4-1b、または化学式4-1cで表されるジアミンであることが好ましいが、これらに制限されない。
【0085】
【0086】
前記化学式4-1aで表される化合物の可視光線領域中の最大吸収波長は約623nmであり、前記化学式4-1bで表される化合物の可視光性領域中の最大吸収波長は約605nmであり、前記化学式4-1cで表される化合物の可視光線領域中の最大吸収波長は約582nmである。
【0087】
前記化学式4-1a、化学式4-1b、および化学式4-1cで表される化合物は、東京化成工業株式会社、アルドリッチ社などから商業的に購入できる化合物であり、当業者に知られた製造方法により製造することもできる。
【0088】
前記化学式1で表されるジアミンは、2つの炭素数6~12の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2つの炭素数6~12の芳香族環は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~2のハロアルキル基、炭素数2~6のアルカノイル基、および炭素数1~6のエステル基からなる群より選択される少なくとも1種の電子吸引性基で置換されたものであることが好ましい。
【0089】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表されるジアミンの各芳香族環に置換されうる電子吸引性基は、ハロゲン原子、-CF3、-CCl3、-CBr3、および-CI3からなる群より選択される基であることが好ましい。
【0090】
前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式で表されるジアミンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0091】
【0092】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式1で表されるジアミンは、下記化学式Aで表される化合物、すなわち2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)を含むことが好ましい。
【0093】
【0094】
前記化学式2中のR3は、フェニレン基であり、Xは、それぞれ独立して、ClまたはBrであることが好ましい。
【0095】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式2で表される化合物は、テレフタル酸クロリド(terephthaloic dichloride:TPCl)であり得る。
【0096】
前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物は、例えば、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-diphenylsulfone tetracarboxylic dianhydride、DSDA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)、および4,4’-オキシジフタル酸無水物(4,4’-oxydiphthalic anhydride、ODPA)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましいが、これらに制限されない。
【0097】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物は、前記化学式3のR10が単結合であり、n7およびn8が0である化合物、すなわち、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(3,3’,4,4’-biphenyl tetracarboxylic dianhydride、BPDA)ならびに、前記化学式4のR10が-C(CnF2n+1)2-(ここで、1≦n≦10)で表される基であり、n7およびn8が0である化合物、例えば、R10が-C(CF3)2-であり、n7およびn8が0である化合物、すなわち、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(4,4’-(hexafluoroisopropylidene)diphthalic anhydride、6FDA)を含むことが好ましい。
【0098】
前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンおよび前記化学式1で表されるジアミンのうちの一つ以上は、前記化学式2で表されるジカルボニル化合物と反応して、ポリ(アミド-イミド)コポリマーに含まれるアミド構造単位を形成することができる。また、前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンと前記化学式1で表されるジアミンのうちの一つ以上は、前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物と反応して、ポリ(アミド-イミド)コポリマーに含まれるイミド構造単位を形成することができる。
【0099】
ポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造する一般的な方法では、ジカルボン酸クロリドのようなジカルボニル化合物、例えば、前記化学式2で表される化合物を、ジアミン、例えば、前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換もしくは非置換の芳香族ジアミンおよび/または前記化学式1で表されるジアミンと反応させてアミド構造単位を形成する。ここに、追加のジアミン、例えば、前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換もしくは非置換の芳香族ジアミンおよび/または前記化学式1で表されるジアミンと、テトラカルボン酸二無水物、例えば、前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物とを反応させることによって、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とによるアミド酸構造単位を生成すると同時に、上記で形成されたアミド構造単位とアミド酸構造単位とが連結されることによって、ポリ(アミド-アミド酸)コポリマーが形成される。このように形成されたポリ(アミド-アミド酸)コポリマーは、熱的方法または化学的方法によって、部分的または全体的にイミド化して、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを形成する。このようなポリ(アミド-イミド)コポリマーの製造方法は、当業者によく知られている。
【0100】
本発明の一実施形態によれば、前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンが前記化学式4で表される化合物であって、前記化学式4中のRaおよびRdがアミノ基である場合、前記化学式4で表されるジアミンと前記化学式2で表されるジカルボニル化合物とを反応させて製造されるアミド構造単位は、下記化学式7で表すことができ、前記化学式1で表されるジアミンと前記化学式2で表されるジカルボニル化合物とを反応させて製造されるアミド構造単位は、下記化学式8で表すことができる:
【0101】
【0102】
上記化学式7中、
R3は、前記化学式2で定義したとおりであり、
R1、Rb、RcおよびRg~Rjは、それぞれ独立して、前記化学式3で定義したとおりである。
【0103】
【0104】
上記化学式8中、
R3は、前記化学式2で定義したとおりであり、Aは、前記化学式1で定義したとおりである。
【0105】
また、前記化学式4で表されるジアミンと前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物とを反応させて製造されるイミド構造単位は、下記化学式9で表すことができ、前記化学式1で表されるジアミンと前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物とを反応させて製造されるイミド構造単位は、下記化学式10で表すことができる。
【0106】
【0107】
上記化学式9中、
R10、R12、R13、n7およびn8は、前記化学式3で定義したとおりであり、
R1、Rb、RcおよびRg~Rjは、それぞれ独立して、前記化学式4で定義したとおりである。
【0108】
【0109】
上記化学式10中、
Aは、前記化学式1で定義したとおりであり、
R10、R12、R13、n7およびn8は、前記化学式3で定義したとおりである。
【0110】
したがって、本発明の一実施形態によるポリ(アミド-イミド)コポリマーは、前記化学式7で表される構造単位および前記化学式8で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種のアミド構造単位と、前記化学式9で表される構造単位および前記化学式10で表される構造単位からなる群より選択される少なくとも1種のイミド構造単位を含むことができる。しかし、前記化学式7で表されるアミド構造単位および前記化学式9で表されるイミド構造単位のみからなるか、または前記化学式8で表されるアミド構造単位および前記化学式10で表されるイミド構造単位のみからなるのではない。
【0111】
本発明の一実施形態によれば、前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンは、製造されるポリ(アミド-イミド)コポリマーの総質量を基準に、例えば200質量ppm(parts per million)以下、例えば150質量ppm以下、例えば100質量ppm以下、例えば90質量ppm以下、例えば80質量ppm以下、例えば70質量ppm以下、例えば60質量ppm以下、例えば50質量ppm以下、例えば40質量ppm以下、例えば30質量ppm以下、例えば20質量ppm以下、例えば15質量ppm以下、例えば10質量ppm以下で含まれ、例えば5質量ppm以上で含まれ得る。
【0112】
前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンを上記の含有量の範囲で含み、前記化学式1で表されるジアミン、前記化学式2で表されるジカルボニル化合物、および前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物と反応させて製造されるポリ(アミド-イミド)コポリマーは、透過率がほとんど減少しない反面、黄色度(YI)が顕著に低くなる。例えば、前記可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミン、例えば、前記化学式4-1aで表される化合物を、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの質量に対して約150ppm含んで製造されるポリ(アミド-イミド)コポリマーを含むフィルムは、波長350nm~750nmの範囲での透過率が85%を超え、黄色度が-4.0であって黄色を全く帯びない。また、前記化学式4-1aで表される化合物を、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの質量に対して約80ppm含んで製造されるポリ(アミド-イミド)コポリマーを含むフィルムは、透過率が87%を超え、黄色度(YI)は-1.0を超え、前記化学式4-1aで表される化合物をポリ(アミド-イミド)コポリマーの質量に対して約40ppm含んで製造されるポリ(アミド-イミド)コポリマーを含むフィルムは、透過率が約88%であり、黄色度(YI)は0.5未満である。
【0113】
このように、可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンをポリ(アミド-イミド)コポリマー製造用単量体として前記のような含有量の範囲で含んで製造されるポリ(アミド-イミド)コポリマーは、前記ジアミンがポリ(アミド-イミド)コポリマーの全体質量を基準に非常に少ない量で含まれることによって、前記ポリ(アミド-イミド)コポリマーが有する優れた機械的物性にはほとんど影響を与えずに、黄色度(YI)などの光学的特性のみを顕著に改善することができるという点で非常に有用である。したがって、このように光学的特性がさらに改善された本発明の一実施形態によるポリ(アミド-イミド)コポリマーは、表示装置、例えば、フレキシブル表示装置のウィンドウフィルムなどとして有用である。
【0114】
一方、後述の実施例から分かるように、本発明の一実施形態による可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンをポリ(アミド-イミド)コポリマー製造用モノマーと共に重合反応させてポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造するのではなく、前記ジアミンを単純に既に製造されたポリ(アミド-イミド)コポリマーまたはその前駆体と共に混合した混合物からポリ(アミド-イミド)コポリマーの成形品、例えば、ポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムなどを製造する場合、黄色度(YI)の減少は少ないのに対して、透過率が顕著に低下することが分かる。すなわち、可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンを他のモノマーと共に重合せず、製造されたポリ(アミド-イミド)コポリマーまたはポリ(アミド-イミド)コポリマーの前駆体と単純混合したポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む成形品は、本発明の一実施形態によるポリ(アミド-イミド)コポリマーのような光学的特性の改善効果が得られない。
【0115】
一方、本発明の一実施形態によるポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造する際に、可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンを除いた残りのポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造するための単量体の含有量は、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの用途によって所望の機械的物性および光学的特性を有するための適切な含有量の範囲に調節して含まれ得る。例えば、ポリ(アミド-イミド)コポリマー内の所望のアミド構造単位およびイミド構造単位の含有量比によって、前記化学式2で表されるジカルボニル化合物と前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物との含有量比を、1:99~99:1のモル比範囲で適切に調節することができる。例えば、前記化学式2で表されるジカルボニル化合物と前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物とは、10:90~90:10のモル比、例えば、20:80~80:20のモル比、例えば、30:70~70:30のモル比、例えば、40:60~60:40のモル比で含まれ得る。
【0116】
本発明の他の一実施形態によれば、下記化学式5で表されるジアミン、および下記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物を含むポリ(アミド-イミド)コポリマー製造用組成物を提供する:
【0117】
【0118】
上記化学式5中、
R1はカルボニル基(-C(=O)-)、または-(L1)-N=N-(L2)-で表される基であり、この際、L1およびL2は、それぞれ独立して、単結合、炭素数1~20のアルキレン基、炭素数2~20のアルケニレン基、炭素数3~20のシクロアルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CF2)q-(ここで、1≦q≦10)、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、またはこれらの組み合わせであり、
R1がカルボニル基である場合、
ReおよびRfは、互いに連結されてカルボニル基(-C(=O)-)を形成し、
Rb、RcおよびRg~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、グリシドキシプロピル基、-OR201(ここで、R201は炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
R1が-(L1)-N=N-(L2)-で表される基である場合、
Rb、RcおよびRg~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、グリシドキシプロピル基、-OR201(ここで、R201は炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
R3は、置換もしくは非置換のフェニレン基または置換もしくは非置換のビフェニレン基であり、
Aは、2以上の炭素数6~30の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2以上の炭素数6~30の芳香族環は、それぞれ独立して、電子吸引性基によって置換されているかまたは非置換のものであり、
n1およびn2は、それぞれ独立して、0以上の数であり、n1およびn2は、同時に0ではない;
【0119】
【0120】
上記化学式3中、
R10は、単結合、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-C(=O)NH-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-(CH2)p-、-(CF2)q-、-C(CnH2n+1)2-、-C(CnF2n+1)2-、-(CH2)p-C(CnH2n+1)2-(CH2)q-、または-(CH2)p-C(CnF2n+1)2-(CH2)q-(ここで、1≦n≦10、1≦p≦10、および1≦q≦10)であり、
R12およびR13は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、置換もしくは非置換の炭素数6~20の芳香族有機基、-OR201(ここで、R201は、炭素数1~10の脂肪族有機基)、または-SiR210R211R212(ここで、R210、R211、およびR212は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~10の脂肪族有機基)であり、
n7およびn8は、それぞれ独立して、0~3の整数である。
【0121】
前記組成物は、下記化学式5-1で表されるジアミンをさらに含むことが好ましい:
【0122】
【0123】
前記化学式5-1中、
R3は、置換もしくは非置換のフェニレン基、または置換もしくは非置換のビフェニレン基であり、
Ar1およびAr2は、それぞれ独立して、2以上の炭素数6~30の芳香族環が単結合によって連結されたものであって、前記2以上の炭素数6~30の芳香族環は、それぞれ独立して、電子吸引性基によって置換されているかまたは非置換のものであり、
n0は、0以上の数である。
【0124】
前述のように、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造する一般的な方法では、ジカルボニル化合物をジアミンと反応させてアミド構造単位を形成し、ここに追加のジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを添加して反応させることによって、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物によるアミド酸構造単位の生成と同時に、形成されたアミド構造単位とアミド酸構造単位とが連結されることによって、ポリ(アミド-アミド酸)コポリマーが形成されるようにする。しかしながら、アミド構造単位の生成過程では、HClのようなハロゲン化水素(HX:Xはハロゲン原子)の副反応物が生成されることがあり、このように生成されたハロゲン化水素副反応物は、装置の腐食を招くので除去しなければならず、このために第3級アミンのようなHXスカベンジャー(scavenger)が添加される。HXスカベンジャーを添加すると、HX塩(HX Salts)が形成される(下記反応式1参照)。この際、形成されたHX塩を除去せずに、それからフィルムなどを製造すれば、製造されたフィルムにおいて深刻な光学的特性の低下が発生することがある。したがって、従来のポリ(アミド-イミド)コポリマーの製造方法では、HX塩を除去するための追加の沈殿工程が必要であり、これは全体の工程時間およびコストを増加させ、また製造されるポリ(アミド-イミド)コポリマーの最終収率を減少させる結果をもたらす。
【0125】
【0126】
しかしながら、上記のような沈殿工程を含むポリ(アミド-イミド)コポリマーの製造方法と異なり、ジアミンとジカルボニル化合物とを反応させて、アミド基を含み両末端がアミノ基であるオリゴマー(以下、‘アミド基含有オリゴマー’とも称する)を先ず製造した後、これをジアミン単量体として、テトラカルボン酸二無水物と反応させることによってポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造する方法によっても、本発明の一実施形態によるポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造することができる。後者のポリ(アミド-イミド)コポリマーの製造方法によれば、従来のポリ(アミド-イミド)コポリマーの製造方法で含まれるHX塩除去のための沈殿工程を省略できるため、全体の工程時間および費用が減少するだけでなく、製造されるポリ(アミド-イミド)コポリマーの最終収率を増加させることができる。それだけでなく、既存のポリ(アミド-イミド)コポリマーの製造方法では、溶解度の問題のためにアミド構造単位の含有量を一定範囲以上に増加させることが難しく、またそれから製造されるコポリマーフィルムの光学的特性も低下してしまう。一方、本発明による新たな製造方法では、HX塩が生成されず、したがって、アミド構造単位の含有量を増加させても、イミド化過程でそれによる溶解度減少の問題がほとんど発生しない。したがって、このような方法で製造されたポリ(アミド-イミド)コポリマーを含む成形品は、光学的特性の低下がほとんどなく、機械的特性をさらに改善する効果を有し得る。
【0127】
よって、本発明の一実施形態では、ジアミンとジカルボニル化合物とを反応させて製造できるアミド構造単位を含有するオリゴマーとして、前記化学式5で表されるオリゴマーをジアミン単量体として含み、ここにオリゴマーのジアミンと反応してイミド構造単位を形成する前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物、および前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物と反応してイミド構造単位を形成する追加のジアミンである置換または非置換の上記化学式1で表されるジアミンを含むポリ(アミド-イミド)コポリマー製造用組成物を提供する。
【0128】
前記化学式5で表される化合物は、前記化学式2で表されるジカルボニル化合物を、可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミン、例えば、化学式4中のRaおよびRdがアミノ基である化合物、および選択的に、化学式5-1で表されるジアミンを反応させて製造することができる。前記化学式5-1中のn0が0である場合、この化合物は前記化学式1で表されるジアミンと同一であることができる。前記反応において、添加するジアミン全体の量を、上記化学式2で表されるジカルボニル化合物より多くすることによって、両末端がアミノ基であるオリゴマー形態の化合物を製造することができる。
【0129】
前記化学式5のR1はカルボニル基であり、Rb、Rc、およびRg~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、シアノ基、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基であり、Aは2つのフェニレン環が単結合によって連結されたものであって、それぞれのフェニレン環には、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~2のハロアルキル基、炭素数1~6のアルカノイル基、および炭素数1~6のエステル基からなる群より選択される少なくとも1種の電子吸引性基が置換され得る。
【0130】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式5のR1はカルボニル基であり、Rb、Rc、およびRg~Rjは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、Aは2つのフェニレン環が単結合によって連結されたものであって、それぞれのフェニレン環は、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、および炭素数1~2のハロアルキル基からなる群より選択される少なくとも1種の電子吸引基が置換され得る。
【0131】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式5中のR1はカルボニル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、または置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基であり、Rg~Rjは、全て水素原子または重水素原子であり、Aは、2つのフェニレン環が単結合によって連結されたものであって、それぞれのフェニレン環が、全て1つずつの同一であるかまたは互いに異なる炭素数1~2のハロアルキル基で置換され得る。
【0132】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式5中のAは、下記化学式6で表される基であり得る:
【0133】
【0134】
上記化学式6中、
R6およびR7は、それぞれ独立して、-CF3、-CCl3、-CBr3、-CI3、-NO2、-CN、-COCH3、および-CO2C2H5からなる群より選択される電子吸引性基であり、
R8およびR9は、同一であるかまたは互いに異なり、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基(-OR204、ここでR204は、炭素数1~10の脂肪族有機基である)、シリル基(-SiR205R206R207、ここでR205、R206およびR207は、同一であるかまたは互いに異なり、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~10の脂肪族有機基である)、置換もしくは非置換の炭素数1~10の脂肪族有機基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20の芳香族有機基であり、
n3は、1~4の整数であり、n5は、0~3の整数であり、n3+n5は、1~4の整数であり、
n4は、1~4の整数であり、n6は、0~3の整数であり、n4+n6は、1~4の整数である。
【0135】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式6中のR6およびR7は、全て-CF3であり、n3およびn4はそれぞれ1であり、n6およびn7は全て0であり得る。
【0136】
また、前記化学式5中のR3は、非置換のフェニレン基またはビフェニレン基であり得る。
【0137】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物は、下記化学式3-1で表される化合物および下記化学式3-2で表される化合物の少なくとも一方を含むものであるか、または本発明の一実施形態によれば、前記化学式3で表されるテトラカルボン酸二無水物は、下記化学式3-1で表される化合物および下記化学式3-2で表される化合物の両方を含むものであるが、これらに制限されない。
【0138】
【0139】
上記化学式3-1で表される化合物は、6FDAであり得、前記化学式3-2で表される化合物は、s-BPDA、a-BPDA、i-BPDAのうちの少なくとも1種であることが好ましく、s-BPDAであることがより好ましい。
【0140】
上記の組成物からポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造した後、これを公知の乾湿式法、乾式法、湿式法などを用いて、フィルムとして製造することができる。例えば、乾湿式法によってフィルムを製造する場合、上記組成物を含む溶液を口金から、ドラム、エンドレスベルトなどの支持体上に押し出して膜として形成し、次いでかかる膜から溶媒を蒸発させ、膜が自己保持性を有するまで乾燥する。乾燥は、常温、例えば、25℃~150℃の温度で、膜を1時間以内に昇温処理して行うことができる。その後、乾燥された膜を10℃/minの速度で昇温させながら250℃~300℃で5分~30分間加熱することによってポリイミドフィルムを得ることができる。
【0141】
乾燥工程で用いられるドラムおよびエンドレスベルトの表面が平滑であれば、表面が平滑な膜が得られる。乾燥工程を終えた膜は支持体から剥離され、湿式工程に導入されて、脱塩、脱溶媒などが行われ、また延伸、乾燥、および熱処理などを行って最終のフィルムとして形成され得る。
【0142】
前記熱処理は、好ましくは200℃~500℃、より好ましくは250℃~400℃の温度で、数秒~数分間行うことができる。
【0143】
前記熱処理後の膜は、徐々に冷却することが好ましく、例えば、50℃/秒以下の速度で冷却することが好ましい。
【0144】
前記膜は、単層で形成することもでき、複数層で形成することもできる。
【実施例】
【0145】
以下、実施例および比較例を通じて本発明の実施形態をより詳細に説明する。下記の実施例および比較例は、説明の目的のためのものであり、本発明の範囲がこれによって制限されるわけではない。
【0146】
[合成例:オリゴマー形態のジアミン製造]
(合成例1:CNAQを含むアミド構造単位を70モル%含有するオリゴマー形態のジアミンの製造)
TPCl(テレフタル酸ジクロリド)、下記化学式4-1aで表されるCNAQ(1,4-ジアミノ-2,3-ジシアノ-アントラキノン)、およびTFDB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine))を反応させて、下記化学式11で表されるアラミド構造を形成するアミド構造単位を含有するオリゴマー形態のジアミンを製造した。
【0147】
【0148】
(上記化学式11中、n1およびn2は、それぞれ独立して、0以上の数であり、n1およびn2は、同時に0ではない。)
具体的には、丸底フラスコに溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide、DMAc)600gを入れ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)0.99モル当量(31.1g)、前記化学式4-1aで表されるジアミン0.08モル当量(0.23g)、およびピリジン1.4モル当量(10.8g)を溶かした後、50mlのDMAcを追加的に添加して、残っているTFDBを完全に溶かした。生成した溶液に、TPCl(terephthaloic dichloride)0.7モル当量(13.9g)を4回に分けて混合し、15分間激しく攪拌した。
【0149】
得られた溶液を窒素雰囲気で2時間攪拌した後、350gのNaClを含有した7LのNaCl溶液に入れて10分間攪拌した。固形物をろ過し、5Lの脱イオン水で2回にわたって再懸濁および再ろ過した。濾過器上の最終ろ過物を適切に加圧して残存する水を最大限除去し、90℃、真空下で48時間乾燥して、アミド構造単位を70モル%含有するオリゴマー形態のジアミンを得た。製造されたアミド構造単位を含有するオリゴマーの数平均分子量は1,400であった。
【0150】
(合成例2:CLAQを含むアミド構造単位を70モル%含有するオリゴマー形態のジアミンの製造)
TPCl(テレフタル酸ジクロリド)と、下記化学式4-1bで表されるCLAQ(1,4-ジアミノ-2,3-ジクロロ-アントラキノン)、およびTFDB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine))を反応させて、下記化学式12で表されるアラミド構造を形成するアミド構造単位を含有するオリゴマー形態のジアミンを製造した。
【0151】
【0152】
(上記化学式12中、n1およびn2は、それぞれ独立して、0以上の数であり、n1およびn2は、同時に0ではない。)
具体的には、丸底フラスコに溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)600gを入れ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)0.99モル当量(31.1g)、前記化学式4-1bで表されるジアミン 0.08モル当量(0.24g)、およびピリジン 1.4モル当量(10.8g)を溶かした後、50mlのDMAcを追加的に添加して、残っているTFDBを完全に溶かした。生成した溶液に、TPCl(terephthaloic dichloride) 0.7モル当量(13.9g)を4回に分けて混合し、15分間激しく攪拌した。
【0153】
得られた溶液を窒素雰囲気下で2時間攪拌した後、350gのNaClを含有した7LのNaCl溶液に入れて10分間攪拌した。固形物をろ過し、5Lの脱イオン水で2回にわたって再懸濁および再ろ過した。濾過器上の最終ろ過物を適切に加圧して残存する水を最大限除去し、90℃、真空下で48時間乾燥して、アミド構造単位を70モル%含有するオリゴマー形態のジアミンを得た。製造されたアミド構造単位を含有するオリゴマーの数平均分子量は1,400であった。
【0154】
(合成例3:DAAQを含むアミド構造単位を70モル%含有するオリゴマーの形態であるジアミンの製造)
TPCl(テレフタル酸ジクロリド)と、下記化学式4-1cで表されるDAAQ(1,4-ジアミノ-アントラキノン)、およびTFDB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine))を反応させて、下記化学式13で表されるアラミド構造を形成するアミド構造単位を含有するオリゴマー形態のジアミンを製造した。
【0155】
【0156】
(上記化学式13中、n1およびn2は、それぞれ独立して、0以上の数であり、n1およびn2は、同時に0ではない。)
具体的に、丸底フラスコに溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)600gを入れ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)0.99モル当量(31.1g)、前記化学式4-1cで表されるジアミン 0.08モル当量(0.19g)、およびピリジン 1.4モル当量(10.8g)を溶かした後、50mlのDMAcを追加的に添加して、残っているTFDBを完全に溶かした。生成した溶液に、TPCl(terephthaloic dichloride)0.7モル当量(13.9g)を4回に分けて混合し、15分間激しく攪拌した。
【0157】
得られた溶液を窒素雰囲気下で2時間攪拌した後、350gのNaClを含有した7LのNaCl溶液に入れて10分間攪拌した。固形物をろ過し、5Lの脱イオン水で2回にわたって再懸濁および再ろ過した。濾過器上の最終ろ過物を適切に加圧して残存する水を最大限除去し、90℃、真空下で48時間乾燥して、アミド構造単位を70モル%含有するオリゴマー形態のジアミンを得た。製造されたアミド構造単位を含有するオリゴマーの数平均分子量は1,400であった。
【0158】
(合成例4:CNAQを含みアミド構造単位を30モル%含有するオリゴマー形態のジアミンの製造)
合成例1と同様の方法で、TPCl(テレフタル酸ジクロリド)、下記化学式4-1aで表されるCNAQ(1,4-ジアミノ-2,3-ジシアノ-アントラキノン)、およびTFDB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine))を反応させて、下記化学式11で表されるアラミド構造を形成するアミド構造単位を含有するオリゴマー形態のジアミンを製造し、アミド構造単位を30モル%含有するオリゴマー形態のジアミンを得た。
【0159】
【0160】
(上記化学式11中、n1およびn2は、それぞれ独立して、0以上の数であり、n1およびn2は、同時に0ではない。)
具体的に、丸底フラスコに溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)600gを入れ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)0.99モル当量(37.4g)、前記化学式4-1aで表されるジアミン 0.27モル当量(0.27g)、およびピリジン 1.4モル当量(5.6g)を溶かした後、50mlのDMAcを追加的に添加して、残っているTFDBを完全に溶かした。生成した溶液に、TPCl(terephthaloic dichloride)0.3モル当量(7.2g)を4回に分けて混合し、15分間激しく攪拌した。
【0161】
得られた溶液を窒素雰囲気下で2時間攪拌した後、350gのNaClを含有した7LのNaCl溶液に入れて10分間攪拌した。固形物をろ過し、5Lの脱イオン水で2回にわたって再懸濁および再ろ過した。濾過器上の最終ろ過物を適切に加圧して残存する水を最大限除去し、90℃、真空下で48時間乾燥して、アミド構造単位を30モル%含有するオリゴマー形態のジアミンを得た。製造されたアミド構造単位を含有するオリゴマーの数平均分子量は1,200であった。
【0162】
(合成例5:アントラキノン化合物を含まないアミド構造単位を70モル%含有するオリゴマー形態のジアミンの製造)
上記合成例1と類似するが、波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンを含まず、下記反応式2に従って、TPCl(テレフタル酸ジクロリド)およびTFDB(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine))のみを反応させて、アラミド構造を形成するアミド構造単位を含有するオリゴマー形態のジアミンを製造した。
【0163】
【0164】
具体的には、丸底フラスコに溶媒としてN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)600gを入れ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)1モル当量(31.1g)、およびピリジン 1.4モル当量(10.8g)を溶かした後、50mlのDMAcを追加的に添加して、残っているTFDBを完全に溶かした。生成した溶液に、TPCl(terephthaloic dichloride)0.7モル当量(13.9g)を4回に分けて混合し、15分間激しく攪拌した。
【0165】
得られた溶液を窒素雰囲気下で2時間攪拌した後、350gのNaClを含有した7LのNaCl溶液に入れて10分間攪拌した。固形物をろ過し、5Lの脱イオン水で2回にわたって再懸濁および再ろ過した。濾過器上の最終ろ過物を適切に加圧して残存する水を最大限除去し、90℃、真空下で48時間乾燥して、上記反応式2に記載された生成物としてアミド構造単位を30モル%含有するオリゴマー形態のジアミンを得た。製造されたアミド構造単位を含有するオリゴマーの数平均分子量は1,400であった。
【0166】
[実施例および比較例:ポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムの製造]
(実施例1:CNAQを40質量ppm含有するポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムの製造)
機械的攪拌機および窒素流入口を備えた250mlの四つ口二重壁反応器に、窒素を通過させながら106gのジメチルアセトアミド(DMAc)を添加して温度を25℃に調整した後、上記合成例1で製造したオリゴマー形態のジアミン 0.19gと、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)10.9gとを溶解して、この溶液を25℃に維持した。その後、BPDA 4.5g、および6FDA 8.3gを添加して48時間攪拌した後、ピリジン 4.1g、および無水酢酸5.2gを添加して24時間攪拌し、固形分濃度が16質量%であるポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を得た。
【0167】
反応が終了した後、上記で得られた溶液をガラス板に塗布してキャスティングし、100℃のホットプレートで40分乾燥した。その後、フィルムをガラス板から分離してファーネスに入れ、室温から277℃まで10℃/minの昇温速度で加熱して約25分間維持した後、徐々に冷却してポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを得た。
【0168】
(実施例2:CNAQを80ppm含有するポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムの製造)
実施例1と同様の方法で、合成例1で製造したオリゴマー形態のジアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)、BPDA、および6FDAを用いて固形分濃度が16質量%であるポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を製造した。前記ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液内のCNAQの含有量がポリ(アミド-アミド酸)コポリマーの質量を基準に80質量ppmになるように調整して、ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を製造した。
【0169】
上記で得られた溶液をガラス板に塗布してキャスティングし、100℃のホットプレートで40分乾燥した。その後、フィルムをガラス板から分離してファーネスに入れ、室温から277℃まで10℃/minの昇温速度で加熱して約25分間維持した後、徐々に冷却してポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを得た。
【0170】
(実施例3:CNAQを150質量ppm含有するポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムの製造)
実施例1と同様の方法で、合成例1で製造したオリゴマー形態のジアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)、BPDA、および6FDAを用いて固形分濃度が16質量%であるポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を製造した。前記ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー内のCNAQの含有量がポリ(アミド-アミド酸)コポリマーの質量を基準に150質量ppmになるように調整して、ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を製造した。
【0171】
上記で得られた溶液をガラス板に塗布してキャスティングし、100℃のホットプレートで40分乾燥した。その後、フィルムをガラス板から分離してファーネスに入れ、室温から277℃まで10℃/minの昇温速度で加熱して約25分間維持した後、徐々に冷却してポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを得た。
【0172】
(実施例4:CLAQを40質量ppm含有するポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムの製造)
機械的攪拌機および窒素流入口を備えた250mlの四つ口二重壁反応器に、窒素を通過させながら106gのジメチルアセトアミド(DMAc)を添加して温度を25℃に調整した後、前記合成例2で製造したオリゴマー形態のジアミン0.19g、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)10.9gを溶解して、この溶液を25℃に維持した。その後、BPDA 4.5g、および6FDA 8.3gを添加して48時間攪拌した後、ピリジン 4.0g、および無水酢酸 5.2gを添加して24時間攪拌し、固形分濃度が16質量%であるポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を得た。
【0173】
反応が終了した後、前記得られた溶液をガラス板に塗布してキャスティングし、100℃のホットプレートで40分乾燥する。その後、フィルムをガラス板から分離してファーネスに入れ、室温から277℃まで10℃/minの昇温速度で加熱して約25分間維持した後、徐々に冷却してポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを得た。
【0174】
(実施例5:DAAQを40ppm含有するポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムの製造)
機械的攪拌機および窒素流入口を備えた250mlの四つ口二重壁反応器に、窒素を通過させながら106gのジメチルアセトアミド(DMAc)を添加して温度を25℃に調整した。前記合成例3で製造したオリゴマー形態のジアミン 0.24g、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)10.9gを溶解して、この溶液を25℃に維持した。その後、BPDA 4.5g、および6FDA 8.3gを添加して48時間攪拌した後、ピリジン 4.0g、および無水酢酸 5.2gを添加して24時間攪拌し、固形分濃度が16質量%であるポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を得た。
【0175】
上記で得られた溶液をガラス板に塗布してキャスティングし、100℃のホットプレートで40分乾燥した。その後、フィルムをガラス板から分離してファーネスに入れ、室温から277℃まで10℃/minの昇温速度で加熱して約25分間維持した後、徐々に冷却してポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを得た。
【0176】
(実施例6:CNAQを20質量ppm含有するポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムの製造)
実施例1と同様の方法で、合成例1で製造したオリゴマー形態のジアミン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)、BPDA、および6FDAを用いて固形分濃度が16質量%であるポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を製造した。前記ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー中のCNAQの含有量がポリ(アミド-アミド酸)コポリマーの質量を基準に20質量ppmになるように調整して、ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を製造した。
【0177】
上記で得られた溶液をガラス板に塗布してキャスティングし、100℃のホットプレートで40分乾燥した。その後、フィルムをガラス板から分離してファーネスに入れ、室温から277℃まで10℃/minの昇温速度で加熱して約25分間維持した後、徐々に冷却してポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを得た。
【0178】
(実施例7:CNAQを40質量ppm含有するポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムの製造)
機械的攪拌機および窒素流入口を備えた250mlの四つ口二重壁反応器に、窒素を通過させながら106gのジメチルアセトアミド(DMAc)を添加して温度を25℃に調整した。前記合成例4で製造したオリゴマー形態のジアミン0.17g、および2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2’-bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)10.9gを溶解して、この溶液を25℃に維持した。その後、BPDA 4.5g、および6FDA 8.4gを添加して48時間攪拌した後、ピリジン 4.0g、および無水酢酸 5.2gを添加して24時間攪拌し、固形分濃度が16質量%であるポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を得た。
【0179】
上記で得られた溶液をガラス板に塗布してキャスティングし、100℃のホットプレートで40分乾燥した。その後、フィルムをガラス板から分離してファーネスに入れ、室温から277℃まで10℃/minの昇温速度で加熱して約25分間維持した後、徐々に冷却してポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを得た。
【0180】
(比較例1および比較例2:可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する芳香族ジアミンを含まないポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムの製造)
機械的攪拌機および窒素流入口を備えた250mlの四つ口二重壁反応器に、窒素を通過させながら106gのジメチルアセトアミド(DMAc)を添加して温度を25℃に調整した。前記合成例5で製造したオリゴマー形態のジアミン 11gを溶解して、この溶液を25℃に維持した。その後、BPDA 2.6g、および6FDA 4.7gを添加して48時間攪拌した後、ピリジン 2.3g、および無水酢酸 3gを添加して24時間攪拌し、固形分濃度が16質量%であるポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液を得た。
【0181】
上記で得られた溶液をガラス板に塗布してキャスティングし、100℃のホットプレートで40分乾燥した。その後、フィルムをガラス板から分離してファーネスに入れ、室温から277℃まで10℃/minの昇温速度で加熱して約25分間維持した後、徐々に冷却してポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを得た。この時、製造されたフィルムの厚さが51μmであるフィルムを比較例1によるフィルムとし、厚さが78μmであるフィルムを比較例2によるフィルムとする。すなわち、比較例1および比較例2もフィルムはフィルム厚さのみが異なり、その他の組成などは全て同じである。
【0182】
(比較例3:青色染料を含むバックコーティング層を有するフィルムの製造)
比較例1および比較例2と同様にしてポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを製造し、製造されたフィルムに、青色染料が30質量ppm含まれているシロキサン樹脂を含むバックコーティング層を積層したフィルムを製造した。具体的には、比較例1および2と同様にしてポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを製造し、フィルム厚さを81μmとした。ここに、青色染料を30質量ppm含むシロキサン樹脂を含有するバックコーティング用組成物を塗布した後に硬化して、厚さ100nmのバックコーティング層が形成された積層フィルムを製造した。
【0183】
(比較例4:紫色顔料を30質量ppm混合して製造したフィルム)
比較例1および比較例2と同様にして、ポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを製造した。ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液に紫色顔料であるジオキサジンバイオレットを、ポリ(アミド-アミド酸)コポリマーの固形分質量を基準に30質量ppmの含有量となるように混合した後、比較例1と同様に熱処理してフィルムとして製造した。
【0184】
(比較例5:CNAQを30質量ppm混合して製造したフィルム)
比較例1および比較例2と同様にして、ポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを製造した。ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液に前記化学式4-1aで表されるジアミン(CNAQ)を、ポリ(アミド-アミド酸)コポリマーの固形分質量を基準に30質量ppmの含有量となるように混合した後、比較例1と同様に熱処理してフィルムとして製造した。
【0185】
(比較例6:CNAQを40質量ppm混合して製造したフィルム)
比較例1および比較例2と同様にして、ポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを製造した。ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液に前記化学式4-1aで表されるジアミン(CNAQ)を、ポリ(アミド-アミド酸)コポリマーの固形分質量を基準に40質量ppmの含有量となるように混合した後、比較例1と同様に熱処理してフィルムとして製造した。
【0186】
(比較例7:CLAQを40質量ppm混合して製造したフィルム)
比較例1および比較例2と同様にして、ポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを製造した。ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液に前記化学式4-1bで表されるジアミン(CLAQ)を、ポリ(アミド-アミド酸)コポリマーの固形分質量を基準に40質量ppmの含有量となるように混合した後、比較例1と同様に熱処理してフィルムとして製造した。
【0187】
(比較例8:DAAQを40質量ppm混合して製造したフィルム)
比較例1および比較例2と同様にして、ポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを製造した。ポリ(アミド-アミド酸)コポリマー溶液に前記化学式4-1cで表されるジアミン(DAAQ)を、ポリ(アミド-アミド酸)コポリマーの固形分質量を基準に40質量ppmの含有量となるように混合した後、比較例1と同様に熱処理してフィルムとして製造した。
【0188】
[評価]
実施例1~実施例7および比較例1~比較例8によって製造されたポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムにおいて、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造するための単量体であるTFDB、TPCl、6FDA、およびBPDAを除いた、追加のジアミン、すなわち波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンである前記化学式4-1a~4-1cで表される化合物、または青色染料または紫色顔料の含有量、ポリ(アミド-イミド)コポリマー中のアミド構造単位の含有量(モル%)、フィルム厚さ、透過率、黄色度(YI)、ヘイズ、および色度座標(CIE1931色空間)上のL*、a*、およびb*の値を下記表1に示す。
【0189】
透過率(波長350nm~750nmの範囲での透過率)、黄色度(YI)、ヘイズ(haze)、および色度座標上(CIE)のL*、a*、およびb*の値は、それぞれ、厚さ50μmフィルムを基準に、コニカミノルタ株式会社製、分光側色計CM-3600dを用いて測定し、ASTM E313に従って測定した。測定値を下記表1に示す。
【0190】
【0191】
表1から明らかなように、可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンである、前記化学式4-1a~4-1cで表される化合物のうちの一つを、ポリ(アミド-イミド)コポリマー製造のための他のモノマーと共に重合反応させて製造されたポリ(アミド-イミド)コポリマーから製造された実施例1~実施例7によって製造されたフィルムは、全て透過率が85%以上であり、黄色度(YI)が-4.0~2の範囲内にあり、色度座標(CIE1931色空間)上のa*値が-2~1未満であり、b*値が-1.5~1未満であった。これにより、高い透過率を維持しながらも、黄色度(YI)が顕著に低くなって光学的特性がさらに改善されたことが分かる。これら実施例によるフィルムの光学的特性の改善効果は、化学式4-1a~4-1cで表される化合物を含まず、TFDB、TPCl、BPDAおよび6FDAのみを重合して製造された比較例1および比較例2のフィルムと比較すると明確に分かる。具体的には、前記の化合物を150質量ppmまで増加させて重合した実施例3を除いて、残りの実施例によるフィルムの透過率は、比較例1および比較例2の透過率に比べて、1.5%以内で減少幅が小さいのに対して、黄色度は、0.5~2以上減少していることが分かる。このような黄色度の減少は、色度座標(CIE1931色空間)上のa*およびb*値の減少による結果であると言える。すなわち、実施例1~7によるフィルムは、a*値が-1.4~0.32であり、b*値が-1.35~0.81であって、これらはそれぞれ比較例1と比較例2のa*値-0.18および-0.47と、b*値1.33および1.93と比較して、特にb*値が顕著に減少することによる結果であると言える。色度座標(CIE1931色空間)でb*値がマイナス側に低くなるほど青色を示し、b*値がプラス側に高くなるほど黄色を帯びる。
【0192】
一方、比較例3によるフィルムは、ポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルム自体は追加のジアミンや染料を含まない代わりに、青色染料が30質量ppm含まれているバックコーティング層を追加積層したフィルムである。このフィルムの透過率は87.7%であり、黄色度は0.7程度であって、バックコーティング層を追加せず類似の厚さで製造された比較例2のフィルムに比べて、黄色度が顕著に減少して光学的特性が改善されることが分かる。しかし、比較例3のフィルムは、ポリ(アミド-イミド)コポリマーフィルムを製造した後、追加工程によりバックコーティング層を形成しなければならず、それによる工程上の煩雑さ、製造時間が増加し製造コストが上昇する問題、および製品の収率が低下し、不良率が増加するなどの問題が発生することがある。
【0193】
比較例4によるフィルムは、可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンではない公知の紫色顔料のジオキサジンバイオレットを、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの質量に対して30質量ppmの濃度で単純混合して製造したフィルムであって、このフィルムの透過率は86.4%であり、黄色度は2である。
【0194】
比較例4によるフィルムを比較例3によるバックコーティング層を形成したフィルムと比較すれば、バックコーティング層に含まれている青色染料の含有量と紫色顔料の含有量は、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの質量に対して30質量ppmであって同一である。また、厚さも比較例3と比較例4のフィルムが同一に81μmである。黄色度は、比較例3のフィルムが2.0であり、比較例4のフィルムが1.8である。透過率は、比較例3が比較例4より高い結果を示すが、全体的に両方のフィルムの光学的特性が類似していることを示している。
【0195】
一方、化学式4-1aで表されるCNAQを、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの質量に対して20質量ppm添加して重合させた実施例6によるフィルムは、CNAQの含有量が比較例3や比較例4に含まれている青色染料または紫色顔料の含有量に比べてさらに少ないにもかかわらず、透過率は88.3%であってはるかに高く示された。また、黄色度は1.0であって顕著に減少している。実施例6によるフィルムの色度座標(CIE1931色空間)上のb*値は、0.81であって、比較例3の0.78に比べて高くても、比較例4の1.29に比べて顕著に低い結果を示す。これにより、実施例6によるフィルムの黄色度は比較例3よりはやや高いが、比較例4のフィルムに比べては黄色度が顕著に改善されることが分かる。すなわち、同一または類似の含有量の染料などを追加的に含んでも、これを単純に混合した場合に比べて、本願実施例のように、他のモノマーと共に重合して含む場合、透過率および黄色度のような光学的特性が顕著に改善されることが分かる。
【0196】
化学式4-1aで表される化合物(CNAQ)、化学式4-1bで表される化合物(CLAQ)、および化学式4-1cで表される化合物(DAAQ)をそれぞれ40質量ppmの同じ量で含み、これをそれぞれ重合するかまたは単純混合する点で差があり、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを構成する他のモノマーの成分は全て同じである実施例1と比較例6、実施例4と比較例7、および実施例5と比較例8によって製造されたフィルムの透過率および黄色度の減少幅を、上記化合物の何れも含まない比較例1によるフィルムの透過率および黄色度と比較して、
図1および
図2のグラフにそれぞれ示す。
【0197】
図1から分かるように、化合物4-1a(CNAQ)、化合物4-1b(CLAQ)、および化合物4-1c(DAAQ)を重合して製造した実施例1、実施例4、および実施例5によるフィルムは、これら化合物の何れも含まない比較例1によるフィルムに比べて、透過率が1%以内の範囲で小幅の減少が見られた反面、これら化合物を単純混合して製造した比較例6、比較例7、および比較例8によるフィルムは、比較例1に比べて透過率が 0.97%~1.61%程度にさらに多く減少することが分かる。すなわち、本発明の一実施形態によるフィルムの透過率の減少幅が、上記化合物を単純混合して製造したフィルムの透過率の減少幅より小さいということが分かる。
【0198】
また、
図2から、化合物4-1a(CNAQ)、化合物4-1b(CLAQ)、および化合物4-1c(DAAQ)を重合して製造した実施例1、実施例4、および実施例5によるフィルムは、比較例1によるフィルムに比べて、黄色度が最小0.69から最大1.89まで著しく減少する。しかし、上記化合物を単純混合して製造した比較例6、比較例7、および比較例8によるフィルムは、比較例1に比べて黄色度が最大1.48減少する。これにより、実施例によるフィルムに比べて、比較例のフィルムは黄色度の減少効果が少ないということが分かる。すなわち、本発明の一実施形態によるフィルムの黄色度の減少幅は、上記化合物を単純混合して製造したフィルムの黄色度の減少幅よりはるかに大きいということが分かる。
【0199】
結論として、本発明の一実施形態による可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンを、モノマー成分として共に重合させて製造したフィルムは、透過率の減少は最小限にしながら、黄色度を著しく減少させることによってフィルムの光学的特性を顕著に改善することができるのが分かる。また、可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミン成分は、ポリ(アミド-イミド)コポリマーの質量に対して、例えば200ppm以下、例えば150ppm以下、例えば100ppm以下、例えば70ppm以下、例えば60ppm以下などのように、他のモノマー成分に比べて非常に少量で含まれることによって、ポリ(アミド-イミド)コポリマーを製造する他のモノマー成分の含有量に影響を与えず、公知のポリ(アミド-イミド)コポリマーが有する優れた機械的物性をそのまま維持することができる。すなわち、本発明の一実施形態による可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンを、モノマー成分として共に重合させて製造したポリ(アミド-イミド)コポリマーおよびこれを含む成形品は、優れた機械的特性を維持しながらも光学的特性を顕著に改善することができるという、トレードオフの関係にある両方の物性を同時に改善する効果がある。
【0200】
一方、実施例1~7のように、追加のジアミンを他のモノマーと共に重合させて製造したフィルムは、時間が経過してもこれら追加成分が析出する問題がないのに対して、比較例4~8によるフィルムは、顔料または上記化合物がポリ(アミド-イミド)コポリマーに単純混合されることによって、時間の経過につれてこれら顔料または化合物がポリマーから分離されて析出する問題があることがある。これにより、時間の経過につれて、所望の光学的特性の改善効果が維持されないことがある。
【0201】
以上のように、本発明の一実施形態による可視光線領域中の波長500nm~700nmの範囲で最大吸収波長を有する置換または非置換の芳香族ジアミンを、モノマー成分として共に重合させて製造したポリ(アミド-イミド)コポリマーおよびこれを含む成形品は、製造工程が単純で容易でありながらも優れた機械的物性を維持しかつ光学的特性を顕著に改善することができる。したがって、このような成形品は、表示装置、特にフレキシブル表示装置の高硬度ウィンドウフィルムとして有用である。