(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/10 20060101AFI20220926BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20220926BHJP
B24B 41/06 20120101ALI20220926BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20220926BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20220926BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
B24B49/10
B24B49/16
B24B41/06 Z
B24B27/06 M
B23Q17/09 G
B23Q17/09 A
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2018179221
(22)【出願日】2018-09-25
【審査請求日】2021-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒木田 久志
(72)【発明者】
【氏名】神長 拓也
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170743(JP,A)
【文献】特開2006-245439(JP,A)
【文献】実開平04-133558(JP,U)
【文献】米国特許第06241435(US,B1)
【文献】特開2007-208114(JP,A)
【文献】特開2015-168013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/10
B24B 49/16
B24B 41/06
B24B 27/06
B23Q 17/09
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面で被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、スピンドルにブレードマウントで固定された切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する切削ユニットと、を備える切削装置であって、
該切削ブレードに発生する弾性波をとらえるマウント部AEセンサが該ブレードマウントに装着され、
該被加工物に発生する弾性波をとらえるテーブル部AEセンサが該チャックテーブルに装着され
、
該テーブル部AEセンサ及び該マウント部AEセンサから取得した各弾性波の各電圧信号に基づいて、該切削ユニットの作用によって発生するトラブルを検知したか否かを判定し、該トラブルを検知した場合、該被加工物のトラブルの発生を検知したか、該切削ユニットのトラブルの発生を検知したかを判定する判定部を有する、切削装置。
【請求項2】
該判定部は、該テーブル部AEセンサから取得した弾性波の電圧信号に基づいて該トラブルを検知した場合、該被加工物のトラブルの発生を検知したと判定し、該マウント部AEセンサから取得した弾性波の電圧信号に基づいて該トラブルを検知した場合、該切削ユニットのトラブルの発生を検知したと判定する、請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該切削ユニットは、第1の切削ユニットと第2の切削ユニットとを有し、各切削ユニットの該切削ブレードは該マウント部AEセンサが装着された該ブレードマウントで該切削ユニットに装着され
、
該判定部は、該テーブル部AEセンサ及び該各切削ユニットの該マウント部AEセンサから取得した各弾性波の各電圧信号に基づいて、該各切削ユニットの作用によって発生するトラブルを検知したか否かを判定し、該トラブルを検知した場合、該被加工物のトラブルの発生を検知したか、該切削ユニットのどちらに近い側において該切削ユニットのトラブルの発生を検知したかを判定する、請求項1
または2に記載の切削装置。
【請求項4】
該判定部は、該テーブル部AEセンサから取得した弾性波の電圧信号に基づいて該トラブルを検知した場合、該被加工物のトラブルの発生を検知したと判定し、さらに、各切削ユニットの該マウント部AEセンサから取得した弾性波の電圧信号に基づいて、該切削ユニットのどちらに近い側で該被加工物に異常が発生しているかを判定する、請求項3に記載の切削装置。
【請求項5】
該チャックテーブルは、上面に載置面を有するテーブルベースと、該テーブルベースの該載置面に下面が密着して着脱自在に固定され上面の該保持面で被加工物を吸引保持する保持テーブルと、を備え、該保持テーブルに発生する弾性波を検出する該テーブル部AEセンサが該テーブルベースに配設され、該保持テーブルは、該被加工物の大きさの変更に対応して交換される請求項1
から4のいずれか1項に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルを備えた切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種半導体基板や樹脂パッケージ基板、ガラス基板やセラミックス基板などの被加工物を切削ブレードで切削する加工技術が知られている。切削加工によって発生するトラブル、例えば、砥石の目詰まり・目潰れによる被加工物の欠けやクラックは、それぞれ被加工物の切削加工が完了した後、検査工程で発覚するため、最悪の場合、複数枚にわたって連続的にトラブルが発生してしまう事がある。そのため、切削加工中にトラブルの発生をいち早く検出したり、その予兆を検出してトラブルを未然に防いだりという目的の下、切削ブレードをスピンドルに固定するブレードマウントにAEセンサを搭載し、切削加工中に切削ブレードに発生する弾性波を検出する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、切削加工中に被加工物に発生した異常を切削ブレードを介してとらえる場合、検出する弾性波が小さいので、かかる異常をとらえることが困難であるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、弾性波を検出することによって切削加工中に被加工物に発生した異常をより精度よくとらえることを可能にする切削装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る切削装置は、保持面で被加工物を吸引保持するチャックテーブルと、スピンドルにブレードマウントで固定された切削ブレードで該チャックテーブルに保持された被加工物を加工する切削ユニットと、を備える切削装置であって、該切削ブレードに発生する弾性波をとらえるマウント部AEセンサが該ブレードマウントに装着され、該被加工物に発生する弾性波をとらえるテーブル部AEセンサが該チャックテーブルに装着され、該テーブル部AEセンサ及び該マウント部AEセンサから取得した各弾性波の各電圧信号に基づいて、該切削ユニットの作用によって発生するトラブルを検知したか否かを判定し、該トラブルを検知した場合、該被加工物のトラブルの発生を検知したか、該切削ユニットのトラブルの発生を検知したかを判定する判定部を有するものである。また、該判定部は、該テーブル部AEセンサから取得した弾性波の電圧信号に基づいて該トラブルを検知した場合、該被加工物のトラブルの発生を検知したと判定し、該マウント部AEセンサから取得した弾性波の電圧信号に基づいて該トラブルを検知した場合、該切削ユニットのトラブルの発生を検知したと判定してもよい。
【0007】
この構成において、該切削ユニットは、第1の切削ユニットと第2の切削ユニットとを有し、各切削ユニットの該切削ブレードは該マウント部AEセンサが装着された該ブレードマウントで該切削ユニットに装着され、該判定部は、該テーブル部AEセンサ及び該各切削ユニットの該マウント部AEセンサから取得した各弾性波の各電圧信号に基づいて、該各切削ユニットの作用によって発生するトラブルを検知したか否かを判定し、該トラブルを検知した場合、該被加工物のトラブルの発生を検知したか、該切削ユニットのどちらに近い側において該切削ユニットのトラブルの発生を検知したかを判定する構成としてもよい。また、該判定部は、該テーブル部AEセンサから取得した弾性波の電圧信号に基づいて該トラブルを検知した場合、該被加工物のトラブルの発生を検知したと判定し、さらに、各切削ユニットの該マウント部AEセンサから取得した弾性波の電圧信号に基づいて、該切削ユニットのどちらに近い側で該被加工物に異常が発生しているかを判定してもよい。
【0008】
これらの構成において、該チャックテーブルは、上面に載置面を有するテーブルベースと、該テーブルベースの該載置面に下面が密着して着脱自在に固定され上面の該保持面で被加工物を吸引保持する保持テーブルと、を備え、該保持テーブルに発生する弾性波を検出する該テーブル部AEセンサが該テーブルベースに配設され、該保持テーブルは、該被加工物の大きさの変更に対応して交換される構成としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る切削装置は、切削ユニットの作用等によって被加工物に発生する振動はチャックテーブルに装着したテーブル部AEセンサでとらえ、切削ブレードの異常による振動はブレードマウントに装着したマウント部AEセンサでとらえるため、切削加工中に被加工物に発生した異常をより精度よくとらえることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る切削装置を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の切削装置の切削ユニットを分解して示す斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の切削装置のチャックテーブルの部分側断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の切削装置のチャックテーブルに保持された被加工物を1枚の切削ブレードで切削加工する動作を説明する部分側断面図である。
【
図6】
図6は、
図1の切削装置のチャックテーブルに保持された被加工物を2枚の切削ブレードで切削加工する動作を説明する部分側断面図である。
【
図7】
図7は、
図1の切削装置において検出される弾性波の振動信号の一例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、
図7中のVIII部を拡大して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0012】
〔実施形態〕
図1は、実施形態に係る切削装置を示す斜視図である。
図2は、
図1の切削装置の切削ユニットを分解して示す斜視図である。
図3は、
図3の切削ユニットの要部の断面図である。
図4は、
図1の切削装置のチャックテーブルの部分側断面図である。
図5は、
図1の切削装置のチャックテーブルに保持された被加工物を1枚の切削ブレードで切削加工する動作を説明する部分側断面図である。
図6は、
図1の切削装置のチャックテーブルに保持された被加工物を2枚の切削ブレードで切削加工する動作を説明する部分側断面図である。なお、以下の説明に用いられるX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、互いに垂直であるものとする。
【0013】
まず、実施形態に係る切削装置2によって切削加工される被加工物100について説明する。被加工物100は、
図1に示すように、シリコン、サファイア、ガリウムなどを基板101とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハである。被加工物100は、基板101の表面102に形成された複数の分割予定ライン103によって格子状に区画された領域にデバイス104が形成されている。
【0014】
被加工物100は、表面102の裏側の裏面105に基板101より径の大きい粘着テープであるダイシングテープ106が貼着され、ダイシングテープ106の外周に環状のフレーム107が貼着される。すなわち、被加工物100は、環状のフレーム107の開口にダイシングテープ106を介して支持されている。本実施形態では、被加工物100とダイシングテープ106と環状のフレーム107とを備えてフレームユニット108が構成される。また、被加工物100と環状のフレーム107との間にはダイシングテープ106の環状領域106Aが形成される。
【0015】
なお、被加工物100の基板101の材質、形状、構造、大きさ等に制限はなく、例えば、セラミックス、樹脂、金属等の材料でなる任意の形状の基板を被加工物として用いることもできる。また、デバイス104の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。さらに、被加工物100の基板101の表面102に、機能層としてのLow-k層ともいう低誘電率絶縁体被膜を積層し、低誘電率絶縁体被膜がデバイス104を構成する回路を支持した構成としてもよい。
【0016】
次に、実施形態に係る切削装置2について説明する。切削装置2は、
図1に示すように、各構成要素が搭載される基台4を備えている。基台4の上面には、加工送りユニットであるX軸移動機構6が設けられている。X軸移動機構6は、加工送り方向であるX軸方向に概ね平行な一対のX軸ガイドレール8を備えており、X軸ガイドレール8には、X軸移動テーブル10がスライド可能に取り付けられている。
【0017】
X軸移動テーブル10の下面側には、不図示のナット部が設けられており、このナット部には、X軸ガイドレール8に平行なX軸ボールねじ12が螺合されている。X軸ボールねじ12の一端部には、X軸パルスモータ14が連結されている。X軸パルスモータ14でX軸ボールねじ12を回転させることで、X軸移動テーブル10は、X軸ガイドレール8に沿ってX軸方向に移動する。このX軸移動機構6には、X軸移動テーブル10のX軸方向の位置を測定する不図示のX軸測定ユニットが設けられている。
【0018】
このX軸移動機構6でX軸移動テーブル10をX軸方向に移動させれば、X軸移動テーブル10の上方に配置されるθテーブル16を介して、チャックテーブル3は加工送りされる。なお、X軸移動テーブル10を含むX軸移動機構6の上方は、テーブルカバー18及び不図示の蛇腹状カバーによって覆われている。
【0019】
X軸移動テーブル10の表面側である上面側には、θテーブル16が設けられている。θテーブル16は、モータ等の不図示の回転駆動源を備え、上方に配置されるチャックテーブル3を切り込み送り方向であるZ軸方向に概ね平行な回転軸の周りに回転させる。
【0020】
切削装置2は、
図1に示すように、X軸移動テーブル10の上面側にθテーブル16を介して設けられた、保持面33で被加工物100を吸引保持するチャックテーブル3を備える。
【0021】
また、X軸移動テーブル10の近傍には、
図1に示すように、切削加工の際に使用される純水等の切削液の廃液等を一時的に貯留するウォーターケース19が設けられている。ウォーターケース19内に貯留された廃液は、不図示のドレーン等を介して切削装置2の外部に排出される。チャックテーブル3に近接する位置には、被加工物100をチャックテーブル3へと搬送する不図示の搬送機構が設けられている。
【0022】
基台4の上面には、
図1に示すように、X軸移動機構6を跨ぐ門型の支持構造40が配置されている。支持構造40の前面上部には、それぞれ割り出し送りユニット及び切り込み送りユニットとして機能する2組の切削ユニット移動機構42が設けられている。各切削ユニット移動機構42は、支持構造40の前面に配置され、割り出し送り方向、すなわち
図1における左右方向であるY軸方向に概ね平行な一対のY軸ガイドレール44を共通に備えている。Y軸ガイドレール44には、各切削ユニット移動機構42を構成するY軸移動プレート46がスライド可能に取り付けられている。
【0023】
各Y軸移動プレート46の裏面側には、不図示のナット部が設けられており、このナット部には、Y軸ガイドレール44に概ね平行なY軸ボールねじ48がそれぞれ螺合されている。各Y軸ボールねじ48の一端部には、Y軸パルスモータ50が連結されている。Y軸パルスモータ50でY軸ボールねじ48を回転させれば、Y軸移動プレート46は、Y軸ガイドレール44に沿ってY軸方向に移動する。
【0024】
各Y軸移動プレート46の表面である前面には、Z軸方向に概ね平行な一対のZ軸ガイドレール52が設けられている。Z軸ガイドレール52には、Z軸移動プレート54がスライド可能に取り付けられている。
【0025】
各Z軸移動プレート54の裏面側には、不図示のナット部が設けられており、このナット部には、Z軸ガイドレール52に平行なZ軸ボールねじ56がそれぞれ螺合されている。各Z軸ボールねじ56の一端部には、Z軸パルスモータ58が連結されている。Z軸パルスモータ58でZ軸ボールねじ56を回転させれば、Z軸移動プレート54は、Z軸ガイドレール52に沿ってZ軸方向に移動する。
【0026】
各切削ユニット移動機構42には、Y軸移動プレート46のY軸方向の位置を測定する不図示のY軸測定ユニットが設けられている。また、各切削ユニット移動機構42には、Z軸移動プレート54のZ軸方向の位置を測定する不図示のZ軸測定ユニットが設けられている。
【0027】
切削ユニット60は、第1の切削ユニット60-1と、第2の切削ユニット60-2とを有し、
図1の右側に示された一方のZ軸移動プレート54の下部には、チャックテーブル3に保持された被加工物100を切削加工するための第1の切削ユニット60-1が固定されており、
図1の左側に示された一方のZ軸移動プレート54の下部には、チャックテーブル3に保持された被加工物100を切削加工するための第2の切削ユニット60-2が固定されている。
【0028】
以下、第1の切削ユニット60-1に関する各部を第2の切削ユニット60-2に関する各部に対して区別する場合には、符号の後ろに「-1」を付して記し、第2の切削ユニット60-2に関する各部を第1の切削ユニット60-1に関する各部に対して区別する場合には、符号の後ろに「-2」を付して記す。第1の切削ユニット60-1と第2の切削ユニット60-2とを区別する必要がない場合には、対応する各部を、双方に共通のものであるとして、符号の後ろに「-1」も「-2」も付さずに適宜省略して記す。
【0029】
切削ユニット60に隣接する位置には、被加工物100を撮像するための撮像ユニットであるカメラ62が設けられている。各切削ユニット移動機構42で、Y軸移動プレート46をY軸方向に移動させれば、切削ユニット60及びカメラ62は割り出し送りされ、Z軸移動プレート54をZ軸方向に移動させれば、切削ユニット60及びカメラ62は切り込み送りされる。
【0030】
なお、切削ユニット60及びカメラ62に対するチャックテーブル3等のX軸方向の位置は、上述したX軸測定ユニットで測定される。また、チャックテーブル3等に対する切削ユニット60及びカメラ62のY軸方向の位置は、上述したY軸測定ユニットで測定される。さらに、チャックテーブル3等に対する切削ユニット60及びカメラ62のZ軸方向の位置は、上述したZ軸測定ユニットで測定される。
【0031】
切削装置2は、
図5に示すように、スピンドル64にブレードマウント71で固定された切削ブレード66で、チャックテーブル3に保持された被加工物100を切削加工する切削ユニット60を備える。
【0032】
切削ユニット60は、
図2及び
図3に示すように、スピンドルハウジング63と、スピンドル64と、切削ブレード66と、ブレードマウント71と、円環状のナット72と、を備える。
【0033】
スピンドルハウジング63は、切削ユニット移動機構42によりZ方向に移動自在に設けられた略円筒状のハウジング本体81と、ハウジング本体81の一端側に固定された円環状のハウジングカバー82とを備える。ハウジング本体81は、スピンドル64を軸心回りに回転自在に収容する。
【0034】
ハウジングカバー82の中央には、内側にスピンドル64の一端側を通す円形の開口83が形成されている。ハウジングカバー82は、
図3に示すように、ハウジング本体81の一端側にネジ84により固定される。
【0035】
スピンドル64の一端側は、ハウジング本体81の一端部から外部に突出している。スピンドル64の他端側には、スピンドル64を回転させるための不図示のモータが連結されている。また、スピンドル64の一端部の外周に、ブレードマウント71が装着される。
【0036】
ブレードマウント71は、スピンドル64の一端部の外周に取り付けられる円筒状の円筒部75と、円筒部75の外周面から径方向外向きに延出したフランジ部76とを備える。ブレードマウント71は、円筒部75内にスピンドル64の一端部が嵌め込まれ、ワッシャ88内を通ったボルト89がスピンドル64の一端部にねじ込まれることにより、スピンドル64に固定される。
【0037】
切削ブレード66は、いわゆるハブブレードであり、円盤状の支持基台85の外周に固定されて、被加工物100を切削する円環状の切り刃86を備える。切り刃86は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。なお、切削ブレード66として、切り刃86のみで構成されたワッシャーブレードを用いてもよい。
【0038】
切削ブレード66は、ブレードマウント71の円筒部75を内側に通して、フランジ部76の表面上に重ねられ、ナット72が円筒部75の外周にねじ込まれて、ブレードマウント71とナット72との間に保持されて、スピンドル64に固定される。ブレードマウント71とナット72とは、互いの間に切削ブレード66を挟んで把持し、ブレードマウント71がスピンドル64の一端部に固定され、ナット72がブレードマウント71に固定されることで、切削ブレード66をスピンドル64に固定する。
【0039】
スピンドル64の回転軸は、X軸方向及びZ軸方向に対して概ね垂直であり、Y軸方向に対して概ね平行である。切削ブレード66は、スピンドル64を介して伝達される回転駆動源のトルクによって回転する。切削ブレード66の回転動作により、
図5及び
図6に示すように、被加工物100には、分割予定ライン103に沿って切削溝が形成されて、各デバイス104に個片化される。
【0040】
また、切削ブレード66の近傍には、
図1、
図5及び
図6に示すように、被加工物100や切削ブレード66等に純水等の切削液を供給する切削液供給ノズル68が設けられている。切削ブレード66の下方には、
図1に示すように、Z軸方向において切削ブレード66の下側の先端である下端の高さ、すなわち位置を検出するブレード位置検出ユニット69が配置されている。切削ユニット60の各構成要素は、被加工物100の切削加工の条件等に合わせて、制御ユニット39により制御される。
【0041】
ブレードマウント71には、
図3に示すように、切削ブレード66に発生する弾性波98(
図7参照)をとらえるマウント部AE(Acoustic Emission)センサ91が装着されている。マウント部AEセンサ91は、より詳細には、ブレードマウント71のフランジ部76の内部に、切削ブレード66の切り刃86に沿って設けられている。マウント部AEセンサ91は、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zi,Ti)O
3)、リチウムナイオベート(LiNbO
3)、リチウムタンタレート(LiTaO
3)等の材料で形成されており、切削ブレード66の振動を振動信号である電圧に変換する。このように、マウント部AEセンサ91は、切削ブレード66に発生する異常な振動をとらえ、検出する。
【0042】
ブレードマウント71及びスピンドルハウジング63には、
図3に示すように、マウント部AEセンサ91によってとらえられた切削ブレード66の振動に基づく振動信号をブレードマウント71側からスピンドルハウジング63側に伝送する非接触型の伝送路92が設けられている。
【0043】
非接触型の伝送路92は、マウント部AEセンサ91に接続された第1のインダクタ94と、第1のインダクタ94に対して所定の間隔で対向する第2のインダクタ95とを備える。第1のインダクタ94及び第2のインダクタ95は、実施形態において、導線が巻回された円環状のコイルであり、それぞれ、ブレードマウント71及びハウジングカバー82に固定されている。
【0044】
第1のインダクタ94と第2のインダクタ95とは対向しており、磁気的に結合されている。そのため、マウント部AEセンサ91が発生した電圧は、第1のインダクタ94と第2のインダクタ95との相互誘導によって、第2のインダクタ95側に伝送される。第2のインダクタ95は、制御ユニット39に接続している。
【0045】
すなわち、切削装置2が備える切削ユニット60は、
図6に示すように、第1の切削ユニット60-1と、第2の切削ユニット60-2とを有し、第1の切削ユニット60-1の切削ブレード66-1は、マウント部AEセンサ91-1が装着されたブレードマウント71-1で、第1の切削ユニット60-1においてスピンドルハウジング63-1に収容されたスピンドル64-1の一端側に装着され、第2の切削ユニット60-2の切削ブレード66-2は、マウント部AEセンサ91-2が装着されたブレードマウント71-2で、第2の切削ユニット60-2においてスピンドルハウジング63-2に収容されたスピンドル64-2の一端側に装着される。
【0046】
切削装置2が備えるチャックテーブル3は、
図1、
図4、
図5及び
図6に示すように、本体部21の上面に平坦な載置面23を有するテーブルベース20と、テーブルベース20の載置面23に平坦な下面34が密着して着脱自在に固定され上面の平坦な保持面33で被加工物100を吸引保持する保持テーブル30と、備えて構成される。
【0047】
テーブルベース20は、金属等の導体によって形成されており、
図1、
図4及び
図5に示すように、保持テーブル30を載置して支持及び固定する本体部21と、この本体部21の外周部に配置されてフレームユニット108のフレーム107を保持して固定する4つのフレーム保持部であるクランプ22とを備える。テーブルベース20は、その本体部21の上面に、保持テーブル30を載置して支持する平坦な載置面23を有する。
【0048】
クランプ22は、本体部21に対して径方向に移動可能に設けられており、被加工物100及びフレームユニット108の径方向の大きさに応じて使い分けられる保持テーブル30の径方向の大きさに基づいて、適宜移動して用いられる。
【0049】
テーブルベース20は、
図4、
図5及び
図6に示すように、本体部21の内部に、テーブルベース20の載置面23に載置された保持テーブル30の下面34に負圧を作用させ、テーブルベース20に保持テーブル30を着脱自在に固定する保持テーブル吸引路24と、載置面23に載置された保持テーブル30の保持面吸引路36に連通し負圧を作用させる被加工物吸引路25と、が形成されている。テーブルベース20の本体部21の載置面23には、これらの保持テーブル吸引路24と、被加工物吸引路25と、が開口している。
【0050】
テーブルベース20の本体部21の載置面23とは反対側には、
図4、
図5及び
図6に示すように、保持テーブル吸引路24が第1開閉バルブ26を介して吸引源28に接続されている。また、テーブルベース20の本体部21の載置面23とは反対側には、同様に、被加工物吸引路25が第2開閉バルブ27を介して吸引源28に接続されている。吸引源28は、保持テーブル吸引路24を介して、テーブルベース20の載置面23に負圧を供給する。また、吸引源28は、被加工物吸引路25及び保持面吸引路36を介して、保持テーブル30においてダイシングテープ106を介して被加工物100を保持する保持面33に負圧を供給する。
【0051】
また、切削ユニット60の作用等に伴って被加工物100に発生する弾性波97(
図7参照)を、テーブルベース20の載置面23に載置された保持テーブル30を介して検出するテーブル部AEセンサ29が、
図1、
図4、
図5及び
図6に示すように、テーブルベース20に配設されている。テーブル部AEセンサ29は、テーブルベース20の本体部21の内部の載置面23に沿って配置されている。テーブル部AEセンサ29は、上述したマウント部AEセンサ91と同様の材料で形成されており、被加工物100の振動を振動信号である電圧に変換する。このように、テーブル部AEセンサ29は、切削ユニット60の作用など各種応力によって被加工物100やチャックテーブル3に発生する振動をとらえ、検出する。
【0052】
保持テーブル30は、
図1、
図4、
図5及び
図6に示すように、上面に平坦な保持面33を構成する吸着部31と、平坦な下面34を構成するテーブル本体32とを備える。
【0053】
吸着部31は、テーブル本体32の上面中央部の窪み部35に嵌め込まれている。吸着部31は、多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミックス等から構成されて、保持面33全体で、フレームユニット108を吸引保持する。
【0054】
テーブル本体32は、金属等の導体により円板形状に形成されており、上面中央部に窪み部35が形成されている。また、テーブル本体32は、内部に、吸着部31を介して保持面33に載置されたフレームユニット108のダイシングテープ106側に負圧を作用させ、保持テーブル30に被加工物100を着脱自在に保持する保持面吸引路36が、形成されている。テーブル本体32の下面34及び窪み部35には、この保持面吸引路36が開口している。
【0055】
テーブルベース20の載置面23と保持テーブル30の下面34との間には、被加工物吸引路25と保持面吸引路36とを密封状態で連通するシール部材38が設けられている。シール部材38は、テーブルベース20側が被加工物吸引路25の載置面23側の開口部に設けられたシール部材嵌込部25aに嵌め込まれ、保持テーブル30側が保持面吸引路36の下面34側の開口部に設けられたシール部材嵌込部36aに嵌め込まれている。
【0056】
保持テーブル30は、被加工物100及びフレームユニット108のサイズや種類ごとに交換して用いられる。保持テーブル30は、
図4に示すように、被加工物100及びフレームユニット108の径方向の大きさが比較的小さい場合に用いられる保持テーブル30-1と、被加工物100及びフレームユニット108の径が比較的大きい場合に用いられる30-2とが例示される。保持テーブル30-1及び保持テーブル30-2は、径方向の大きさを除くその他の構成は、同じである。
【0057】
テーブルベース20の載置面23に保持テーブル30の下面34を載せて位置合わせし、吸引源28の負圧をテーブルベース20の載置面23に作用させれば、
図5及び
図6に示すように、平坦な載置面23と平坦な下面34とが互いに負圧密着し、保持テーブル30は、テーブルベース20に固定される。さらに、保持テーブル30の保持面33にフレームユニット108のダイシングテープ106側を載せて位置合わせし、吸引源28の負圧を保持テーブル30の保持面33に作用させれば、
図5及び
図6に示すように、平坦な保持面33とフレームユニット108のダイシングテープ106の下側の面とが互いに負圧密着し、フレームユニット108は、保持テーブル30に固定される。
【0058】
本実施形態では、保持テーブル30として多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミックス等から構成された吸着部31とテーブル本体32とを備える形態を例示したがこれに限るものではなく、例えば、吸引源28の負圧を保持テーブル30の保持面33に作用させる吸引溝を形成した構成としてもよい。
【0059】
また、クランプ22は、
図5及び
図6に示すように、保持テーブル30にフレームユニット108を固定する場合、保持テーブル30の保持面33よりもフレーム107を鉛直方向下側に引き落として保持する。これにより、ダイシングテープ106は保持面33に密着されるため、被加工物100は、ダイシングテープ106を介して保持面33に強固に支持される。
【0060】
切削装置2は、
図1、
図3、
図4、
図5及び
図6に示すように、被加工物100の加工条件等に合わせて、切削装置2を構成する構成要素をそれぞれ制御する制御ユニット39を備える。制御ユニット39は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インタフェース装置とを有し、コンピュータプログラムを実行可能なコンピュータである。
【0061】
制御ユニット39の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムをRAM上で実行して、切削装置2を制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号を入出力インタフェース装置を介して切削装置2の各構成要素に出力する。また、制御ユニット39は、切削加工の動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、オペレータが切削装置2の動作指示及び切削加工内容情報などを入力する際に用いる図示しない入力ユニットとが接続されている。
【0062】
制御ユニット39は、テーブル部AEセンサ29が検出した弾性波97と、マウント部AEセンサ91が検出した弾性波98とに基づいて、切削ユニット60の作用や各種応力によって発生する状態(トラブル)、例えば、切削ブレード66の破損や砥石の目詰まり・目潰れまたは切削液供給ノズル68等の接触等による被加工物100の欠けやクラック等を検知したか否かを判定する判定部39-1を有する。判定部39-1の機能は、制御ユニット39の演算処理装置が記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを実行することにより、実現される。
【0063】
制御ユニット39は、
図4、
図5及び
図6に示すように、テーブル部AEセンサ29に接続して、テーブル部AEセンサ29が検出した弾性波97の電圧信号(
図7参照)を取得する。また、制御ユニット39は、
図5及び
図6に示すように、マウント部AEセンサ91-1,91-2に接続して、マウント部AEセンサ91-1,91-2がそれぞれ検出した弾性波98-1,98-2との電圧信号(
図7参照)を取得する。
【0064】
図7は、
図1の切削装置において検出される弾性波の振動信号の一例を示すグラフである。
図8は、
図7中のVIII部を拡大して示すグラフである。
図9は、
図7中のIX部を拡大して示すグラフである。
【0065】
図7に示すグラフは、上段がテーブル部AEセンサ29が検出した弾性波97の電圧信号を示しており、中段がマウント部AEセンサ91-1が検出した弾性波98-1の電圧信号を示しており、下段がマウント部AEセンサ91-2が検出した弾性波98-2の電圧信号を示している。
図7に示すグラフは、上段、中段及び下段のいずれも、横軸が時間[単位;秒]であり、縦軸が電圧[単位;V]である。
図7に示すグラフは、時間T1において、特徴的な電圧信号を示しており、中段と下段における時間T1付近の拡大図を
図8及び
図9に示している。
【0066】
制御ユニット39の判定部39-1は、テーブル部AEセンサ29及びマウント部AEセンサ91-1,91-2から取得した弾性波97及び弾性波98-1,98-2の各電圧信号に基づいて、まず、各電圧信号の電圧が基準値に対して正方向または負方向のいずれかに第1閾値V1を超えているか否かを判定する。制御ユニット39の判定部39-1は、各電圧信号の電圧がいずれも第1閾値V1を超えていないと判定した場合、切削ユニット60の作用等によって発生するトラブル、例えば、切削ブレード66の破損や砥石の目詰まり・目潰れまたは切削液供給ノズル68等の接触等による被加工物100の欠けやクラック等のトラブルの発生を検知していないと判定して、切削ユニット60を構成する各構成要素の動作を継続させる。
【0067】
一方、制御ユニット39の判定部39-1は、各電圧信号の電圧の少なくとも1つが第1閾値V1を超えたと判定した場合、発生するトラブル、例えば、切削ブレード66の破損や砥石の目詰まり・目潰れまたは切削液供給ノズル68等の接触等による被加工物100の欠けやクラック等を検知したと判定して、切削ユニット60を構成する各構成要素の動作を停止させる。例えば、制御ユニット39の判定部39-1は、
図7のグラフに示す弾性波97及び弾性波98-1,98-2の各電圧信号を取得した場合、弾性波97の電圧信号の電圧が、時間T1付近において第1閾値V1を超えているので、これに基づき、切削ブレード66の破損や砥石の目詰まり・目潰れまたは切削液供給ノズル68等の接触等による被加工物100の欠けやクラック等のトラブルの発生を検知したと判定して、切削ユニット60を構成する各構成要素の動作を停止させる。
【0068】
そして、制御ユニット39の判定部39-1は、各電圧信号の電圧の少なくとも1つが第1閾値V1を超えたと判定した場合、どの各電圧信号の電圧が第1閾値V1を超えたかを判定する。例えば、制御ユニット39の判定部39-1は、
図7のグラフに示す弾性波97及び弾性波98-1,98-2の各電圧信号を取得した場合、弾性波97の電圧信号の電圧が、時間T1付近において第1閾値V1を超えているので、これに基づいて、電圧信号の電圧が第1閾値V1を超えた対象が弾性波97である旨を判定する。
【0069】
そして、制御ユニット39の判定部39-1は、電圧信号の電圧が第1閾値V1を超えた対象が弾性波97である場合、被加工物100の欠けやクラック等のトラブルの発生を検知したと判定し、さらに、弾性波98-1,98-2のどちらの電圧信号の電圧が第2閾値V2を超えたかを判定し、この判定結果に基づいて、切削ユニット60-1,60-2のどちらに近い側で、被加工物100の欠けやクラック等のトラブルの発生が生じた可能性が高いかを判定する。例えば、制御ユニット39の判定部39-1は、
図7のグラフに示す弾性波97及び弾性波98-1,98-2の各電圧信号を取得した場合、
図8及び
図9に示すように、電圧信号の電圧が第2閾値V2を超えた対象が弾性波98-2である旨を判定し、この判定結果に基づいて、切削ユニット60-2に近い側で、被加工物100の欠けやクラック等のトラブルの発生が生じた可能性が高い旨を判定する。
【0070】
一方、制御ユニット39の判定部39-1は、電圧信号の電圧が第1閾値V1を超えた対象が弾性波98-1,98-2のどちらかである場合、この判定結果に基づいて、対応する切削ユニット60-1,60-2のどちらか近い側において、切削ブレード66-1,66-2の破損や目詰まり・目潰れ等のトラブルの発生を検知したと判定する。
【0071】
このように、制御ユニット39の判定部39-1は、切削ユニット60の作用等によって発生するトラブルがどの時間に起き、どのような種類であり、どのような場所で起きたかを、詳細に高い精度で判定することができる。
【0072】
制御ユニット39には、オペレータから入力ユニットを介して入力される保持テーブル30のサイズや種類が登録される。例えば、制御ユニット39には、保持テーブル30として径方向の大きさが比較的小さい
図4に示す保持テーブル30-1を用いる場合、オペレータにより、保持テーブル30-1のサイズや種類が登録される。オペレータは、制御ユニット39への保持テーブル30-1のサイズや種類の登録に併せて、クランプ22の本体部21に対する位置を保持テーブル30-1のサイズや種類に応じた位置である中心軸側へ移動させる。また、制御ユニット39には、保持テーブル30として径方向の大きさが比較的大きい
図4に示す保持テーブル30-2を用いる場合、オペレータにより、保持テーブル30-2のサイズや種類が登録される。オペレータは、制御ユニット39への保持テーブル30-2のサイズや種類の登録に併せて、クランプ22の本体部21に対する位置を保持テーブル30-2のサイズや種類に応じた位置である外周側へ移動させる。
【0073】
制御ユニット39は、第1開閉バルブ26の開閉を制御することで保持テーブル吸引路24を吸引するか否かを切り替えることにより、テーブルベース20の載置面23における保持テーブル30の固定か否かを切り替える。また、制御ユニット39は、第2開閉バルブ27の開閉を制御することで被加工物吸引路25を吸引するか否かを切り替えることにより、保持テーブル30の保持面33において被加工物100を保持するか否かを切り替える。
【0074】
このように、実施形態に係る切削装置2は、保持面33で被加工物100を吸引保持するチャックテーブル3と、スピンドル64にブレードマウント71で固定された切削ブレード66でチャックテーブル3に保持された被加工物100を加工する切削ユニット60と、を備え、切削ブレード66に発生する弾性波98をとらえるマウント部AEセンサ91がブレードマウント71に装着され、被加工物100に発生する弾性波97をとらえるテーブル部AEセンサ29がチャックテーブル3に装着されるものである。このため、実施形態に係る切削装置2は、被加工物100に発生する振動はチャックテーブル3に装着したテーブル部AEセンサ29でとらえ、切削ブレード66に発生する異常な振動はブレードマウント71に装着したマウント部AEセンサ91でとらえるため、切削加工中に被加工物100に発生した異常をより精度よくとらえる、どのような異常も検出することができるという効果を奏する。
【0075】
また、実施形態に係る切削装置2は、切削ユニット60が、第1の切削ユニット60-1と第2の切削ユニット60-2とを有し、各切削ユニット60-1,60-2の切削ブレード66-1,66-2はマウント部AEセンサ91-1,91-2が装着されたブレードマウント71-1,71-2で切削ユニット60-1,60-2に装着される構成である。このため、実施形態に係る切削装置2は、マウント部AEセンサ91-1,91-2がそれぞれ検出した弾性波98-1,98-2に基づいて、切削ブレード66-1,66-2のそれぞれに近い側で発生した異常を個別に検知することができるので、切削ブレード66-1,66-2のどちらに近い側で異常が発生しているかを判別することができるという効果を奏する。
【0076】
また、実施形態に係る切削装置2は、チャックテーブル3が、上面に載置面23を有するテーブルベース20と、テーブルベース20の載置面23に下面34が密着して着脱自在に固定され上面の保持面33で被加工物100を吸引保持する保持テーブル30と、を備え、切削ユニット60の作用等によって保持テーブル30に発生する弾性波97を検出するテーブル部AEセンサ29がテーブルベース20に配設され、保持テーブル30が被加工物100の大きさの変更に対応して交換される構成である。このため、実施形態に係る切削装置2は、保持テーブル30にテーブル部AEセンサ29を内蔵する必要がなく、かつ、保持テーブル30に保持された被加工物100に発生する弾性波97を精度良くとらえることができるという効果を奏する。また、実施形態に係る切削装置2は、テーブル部AEセンサ29がテーブルベース20に配設されているので、保持テーブル30を被加工物100のサイズや種類に応じて変更する度に、保持テーブル30毎にAEセンサを設ける必要がないという効果を奏する。
【0077】
また、実施形態に係る切削装置2は、保持テーブル30が、内部に下面34と保持面33とを連通させる保持面吸引路36を備え、テーブルベース20の載置面23には、保持テーブル30の下面34に負圧を作用させテーブルベース20に保持テーブル30を着脱自在に固定する保持テーブル吸引路24と、載置面23に載置された保持テーブル30の保持面吸引路36に連通し負圧を作用させる被加工物吸引路25と、が開口している。このため、実施形態に係る切削装置2は、保持テーブル吸引路24を介して負圧を作用させることで容易にテーブルベース20に保持テーブル30を着脱自在に固定することができるとともに、被加工物吸引路25及び保持面吸引路36を介して負圧を作用させることで容易に保持テーブル30に被加工物100を着脱自在に固定することができる。
【0078】
また、実施形態に係る切削装置2は、被加工物吸引路25及び保持面吸引路36がテーブルベース20の回転軸の中央に設けられた貫通穴の内部に設けられているので、保持テーブル30の径方向の大きさに依らず、被加工物吸引路25と保持面吸引路36とを容易に連通させることができる。また、実施形態に係る切削装置2は、被加工物吸引路25の載置面23側の開口部にシール部材38を嵌め込むシール部材嵌込部25aが設けられており、なおかつ、保持面吸引路36の下面34側の開口部にシール部材38を嵌め込むシール部材嵌込部36aが設けられているので、保持テーブル30の径方向の大きさに依らず、シール部材38を介して、被加工物吸引路25と保持面吸引路36とをより好適に連通させることができる。
【0079】
また、実施形態に係る切削装置2は、保持テーブル吸引路24がテーブルベース20の回転軸に平行に、テーブルベース20の外周から径方向に離れた位置に設けられているので、保持テーブル30の径方向の大きさに依らず、好適に保持テーブル30の下面34を密着させて着脱自在に固定することができる。
【0080】
なお、本発明は、上記実施形態等の記載に制限されず種々変更して実施可能である。その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0081】
2 切削装置
3 チャックテーブル
20 テーブルベース
23 載置面
24 保持テーブル吸引路
25 被加工物吸引路
25a,36a シール部材嵌込部
29 テーブル部AEセンサ
30,30-1,30-2 保持テーブル
33 保持面
34 下面
36 保持面吸引路
38 シール部材
39 制御ユニット
39-1 判定部
60,60-1,60-2 切削ユニット
64,64-1,64-2 スピンドル
66,66-1,66-2 切削ブレード
71,71-1,71-2 ブレードマウント
91,91-1,91-2 マウント部AEセンサ
97,98,98-1,98-2 弾性波
100 被加工物