(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】被覆粒子
(51)【国際特許分類】
C04B 35/628 20060101AFI20220926BHJP
C04B 35/565 20060101ALI20220926BHJP
C01B 13/14 20060101ALI20220926BHJP
C01B 32/956 20170101ALI20220926BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20220926BHJP
C09C 1/28 20060101ALI20220926BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C04B35/628 020
C04B35/565
C01B13/14 A
C01B32/956
C09C3/06
C09C1/28
C09D17/00
(21)【出願番号】P 2019013109
(22)【出願日】2019-01-29
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田口 創万
(72)【発明者】
【氏名】鴨志田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】中村 友昭
(72)【発明者】
【氏名】三輪 直也
(72)【発明者】
【氏名】芦▲高▼ 圭史
【審査官】中村 浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/033577(WO,A1)
【文献】米国特許第05165996(US,A)
【文献】特開昭62-138362(JP,A)
【文献】特開平09-012373(JP,A)
【文献】特開平10-237579(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065956(WO,A1)
【文献】特開2012-106888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
C01B 13/14
C01B 32/956
C01F 7/00- 7/788
C09C 3/06
C09C 1/28
C09D 17/00
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC粒子に対して酸化層除去処理をして、単位表面積あたりのSiO
2
の量が0.150mg/m
2
を超えない、SiC粒子とする酸化層除去工程と、
前記酸化層除去処理後のSiC粒子、アルミン酸ナトリウムおよび水を含む分散液のpHを9以上12以下の範囲として、前記酸化層除去処理後のSiC粒子の表面に水酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆粒子を形成する被覆層形成工程と、
を有し、
前記被覆層形成工程における被覆方法は、下記の被覆方法1または下記の被覆方法2であり、
前記酸化層除去処理後のSiC粒子と、前記
酸化層除去処理後のSiC粒子を被覆する被覆層とを含み、
前記被覆層は、水酸化アルミニウムを含み、かつ、
前記
酸化層除去処理後のSiC粒子の単位表面積あたりの
SiO
2
の量が0.150mg/m
2を超えない、被覆粒子
の製造方法:
被覆方法1:前記酸化層除去処理後のSiC粒子、アルカリおよび水を含み、pHが9以上12以下である原料分散液(1)と、アルミン酸ナトリウムおよび水を含む原料溶液(2)と、をそれぞれ準備する工程(A)と、前記原料分散液(1)に、前記原料溶液(2)と、酸とを添加して、pHを9以上12以下の範囲に維持し、前記酸化層除去処理後のSiC粒子の表面に水酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆粒子を形成する工程(B)と、を有する方法;
被覆方法2:前記酸化層除去処理後のSiC粒子、アルミン酸ナトリウムおよび水を含む原料分散液(3)を準備する工程(C)と、前記工程(C)で準備された原料分散液に酸を添加して、pHを10以上12以下の範囲とすることにより、前記酸化層除去処理後のSiC粒子の表面に水酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆粒子を形成する工程(D)と、を有する方法。
【請求項2】
前記被覆方法1において、前記アルカリは、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾール、トリアゾールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項3】
前記酸化層除去処理において前記SiC粒子の酸化層除去が開始されてから、前記被覆層形成工程において前記被覆粒子が形成されるまで、前記SiC粒子、前記酸化層除去後のSiC粒子および前記被覆粒子が分散媒中に分散された状態を維持する、請求項1または2に記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項4】
前記酸化層除去処理は、フッ化水素酸を含む溶液による処理、アルカリ性の溶液による処理、Na
2
SO
4
の加熱水溶液による処理、またはNa
2
SO
3
水溶液による処理である、請求項1~3のいずれか1項に記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ性の溶液による処理は、前記SiC粒子の水系分散液に水酸化ナトリウムを添加して、pH12.5以上で浸漬時間72時間以上、常温にて経過させる処理である、請求項4に記載の被覆粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の
被覆粒子の製造方法における被覆処理の結果、前記被覆粒子と、分散媒とを含む、分散液
を得ることを含む、分散液の製造方法。
【請求項7】
前記分散媒を、他の分散媒へと置換することを含む、請求項6に記載の分散液の製造方法。
【請求項8】
他の成分をさらに添加することを含む、請求項6または7に記載の分散液の製造方法。
【請求項9】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の
被覆粒子の製造方法によって前記被覆粒子を製造することと、下記(i)、(ii)または(iii)とを含む、前記被覆粒子を含む組成物からなる、成形体
の製造方法:
(i)前記被覆粒子と、樹脂と、分散媒とを含む分散液の塗布すること、
(ii)前記被覆粒子と、熱可塑性樹脂とを混合し、焼成温度以下で熔融して得られる樹脂組成物の溶融物を冷却すること、
(iii)前記被覆粒子と、熱硬化性樹脂とを混合した後、加熱して熱硬化性樹脂の重合・硬化反応を進行させること。
【請求項10】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の
被覆粒子の製造方法によって前記被覆粒子
を製造すること、または請求項
9に記載の成形体
の製造方法によって、前記成形体を製造することと、
前記被覆粒子または前記成形体を焼成することを含む、焼結体
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は被覆粒子、これを含む分散体および成形体、ならびにこれを用いて形成される焼結体に関する。
【背景技術】
【0002】
無機粒子は、その種類に応じて、高硬度であること、高温耐熱性、機械的強度、耐衝撃性、耐摩耗性、耐酸化性または耐食性に優れること、熱膨張係数が小さいこと等の優れた特性を有することから、研磨用組成物や、高温構造部材をはじめとして、種々の用途での応用が期待されている。
【0003】
無機粒子の応用に際しては、所望の組成物や材料を形成するに当たり、無機粒子を分散媒やポリマー材料の媒体中に分散して用いることや、セラミックス粒子等の他の材料と混合して用いることが検討されている。また、無機粒子を含む分散体や混合物、およびこれらより形成される成形体等の機能向上のため、所望の機能を付与しうる材料で無機粒子を被覆して被覆粒子とした上で、当該被覆粒子を分散、混合を行うことが検討されている。
【0004】
特許文献1には、無機粒子であるSiC粉体の表面を、焼成によって設けられた、厚みが10nm以上500nm以下のアルミナ等の酸化物被膜によって被覆することで、SiC粉体の絶縁性が向上しうることが開示されている。また、かかる粉体を含むことで、複合組成物の耐熱性、高熱伝導性および高絶縁性が実現しうることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に係る技術では、SiC粒子や被覆層が本来有する特性が発揮されないこと、一例としては、分散性が不十分であり、焼結体の機械的強度が不十分となること等が問題となっていた。
【0007】
そこで本発明は、無機粒子と、当該無機粒子を被覆する被覆層とを有する被覆粒子において、高い分散性や良好な焼結体を得られること等、当該無機粒子や当該被覆層の構成材料が本来有する特性を良好に発揮させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、本発明者らは鋭意研究を積み重ねた。その結果、被覆粒子を構成する無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量を一定以下とすることで、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の上記課題は、以下の手段によって解決される;
無機酸化物を形成しうる無機物を少なくとも表面に含む無機粒子と、前記無機粒子を被覆する被覆層とを含み、
前記無機粒子の単位表面積あたりの前記無機酸化物の量が0.150mg/m2を超えない、被覆粒子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、無機酸化物を形成しうる無機物を少なくとも表面に含む無機粒子と、無機粒子を被覆する被覆層とを有する被覆粒子において、高い分散性や良好な焼結体を得られること等、当該無機粒子や当該被覆層の構成材料が本来有する特性を良好に発揮させうる手段を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
【0012】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0013】
<被覆粒子>
本発明の一形態は、無機酸化物を形成しうる無機物を少なくとも表面に含む無機粒子と、前記無機粒子を被覆する被覆層とを含み、前記無機粒子の単位表面積あたりの前記無機酸化物の量が0.150mg/m2を超えない、被覆粒子に関する。
【0014】
本発明者らは、本発明によって上記課題が解決されるメカニズムを以下のように推定している。
【0015】
無機酸化物を形成しうる無機物を少なくとも表面に含む無機粒子は、自然酸化されて、その表面に無機酸化物からなる酸化層を形成する。この酸化層が無機粒子と被覆層との間に存在することで、被覆粒子中において無機粒子を本来構成する無機物と被覆層の構成材料との接触が妨げられる場合がある。また、焼成時に被覆層および無機粒子の構成が変化する中で、被覆粒子同士が接触する際に、無機粒子を本来構成する無機物同士の接触が妨げられる場合がある。これらの場合、無機粒子や被覆層の構成材料は、本来有する特性を発揮することができない。
【0016】
一方、本発明の一形態に係る被覆粒子では、無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量が一定以下である。このことは、無機粒子の表面に形成される酸化層の薄さが薄く、面積が小さいことを意味する。このとき、被覆粒子中において無機粒子を本来構成する無機物と被覆層の構成材料との接触が妨げられることが少ない。また、焼成時に被覆層および無機粒子の構成が変化する中で、被覆粒子同士が接触する際にも、無機粒子を本来構成する無機物同士の接触が妨げられることが少ない。したがって、本発明の一形態に係る被覆粒子では、無機粒子や被覆層の構成材料は、本来有する特性を発揮することができる。
【0017】
なお、上記メカニズムは推測に基づくものであり、その正誤が本発明の技術的範囲に影響を及ぼすものではない。
【0018】
本明細書において、「被覆粒子」とは、無機粒子の少なくとも一部が被覆層によって被覆されている粒子を表す。
【0019】
また、本明細書において、複数の被覆粒子を主成分として含む粒子の集合体を「被覆粒子粉体」とも称する。なお、本明細書では、便宜上「粉体」との用語を用いているが、当該用語は粉末状(乾燥状態)の物質のみを表すものではなく、分散媒中に分散された状態で存在し、分散媒を揮発させた際に粉末状として得られうる物質をも表すものとする。
【0020】
被覆粒子のpH4.5のゼータ電位は、分散性の指標となる。当該ゼータ電位の絶対値の値が大きくなるに従い、分散性がより向上することを表す。ゼータ電位の絶対値は、20mV以上であることが好ましく、30mV以上がより好ましく、40mV以上であることがさらに好ましい。上記範囲であると、被覆粒子分散媒や樹脂等の媒体に分散させた際に、分散性がより向上する。pH4.5のゼータ電位は、pH4.5であるゼータ電位測定液(被覆粒子粉体の水分散液)を調製し、ゼータ電位測定装置(Malvern Instruments製、商品名「Zetasizer nano ZSP」)にて当該ゼータ電位測定液を測定することで求めることができる。ここで、pHは、株式会社堀場製作所製のpHメーター(型番:F-71)で測定することができる。なお、pH4.5のゼータ電位の測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0021】
被覆粒子の水分散液の粘度もまた、分散性の指標となる。当該粘度の値が小さくなるに従い、分散性がより向上することを表す。粘度は、40mPa・s以下であることが好ましく、35mPa・s以下であることがより好ましく、30mPa・s以下であることがさらに好ましい(下限0mPa・s超)。上記範囲であると、被覆粒子分散媒や樹脂等の媒体に分散させた際に、分散性がより向上する。粘度は、粘度測定液(被覆粒子粉体の12質量%水分散液、すなわち、分散液の総質量に対する、被覆粒子の含有量が12質量%の水分散液)を調製し、測定時の環境温度25℃にて、東機産業株式会社製のTVB10H型粘度計を用いて、H2ローターの回転数が100rpmである条件下で測定することで求めることができる。なお、粘度の測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0022】
ここで、ゼータ電位が上記範囲であると、被覆粒子自身の静電的は二次凝集がより抑制され、粘度が上記範囲であると、被覆粒子の一次粒子または二次粒子の状態における分散液としての分散性がより向上する。これより、被覆粒子の分散性の向上との観点から、被覆粒子は、上記ゼータ電位の範囲を示し、かつ上記粘度の範囲を示すことが特に好ましい。
【0023】
被覆粒子の平均二次粒子径の上限は、特に制限されないが、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、2μm以下であることがさらに好ましく、1μm以下であることが特に好ましく、0.5μm以下であることが最も好ましい。上記範囲であると、被覆粒子を分散媒や樹脂等の媒体に分散させた際に、分散性がより向上する。また、被覆SiC粒子粉体の平均二次粒子径の下限は、特に制限されないが、0.03μm以上であることが好ましく、0.03μm超であることがより好ましく、0.05μm以上であることがさらに好ましく、0.05μm超であることがよりさらに好ましく、0.1μm以上であることが特に好ましく、0.1μm超であることが最も好ましい。上記範囲であると、粒子径分布がより小さくなり、分散媒中における凝集がより生じ難くなり、分散性がより向上する。ここで、被覆粒子の平均二次粒子径の値は、測定の適正濃度となるよう被覆粒子(被覆粒子粉体)を分散媒に分散させた分散体において、株式会社堀場製作所製の散乱式粒子径分布測定装置LA-950により測定することができる。
【0024】
なお、後述するように、本発明の一形態に係る被覆粒子において、特に好ましい無機粒子は炭化珪素粒子(SiC粒子)であり、特に好ましい被覆層は水酸化アルミニウムを含む被覆層である。すなわち、本発明の特に好ましい一形態に係る被覆粒子は、水酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆SiC粒子(以下、単に「水酸化アルミニウム被覆SiC粒子」とも称する)である。
【0025】
以下、本発明の一形態に係る被覆粒子を構成する各構成要素について詳細に説明する。ただし、本発明は以下で説明するものに限定されるものではない。
【0026】
(無機粒子)
本発明の一形態に係る被覆粒子は、無機酸化物を形成しうる無機物を少なくとも表面に含む無機粒子(本明細書において、単に「無機粒子」とも称する)を含む。
【0027】
無機粒子を構成する無機酸化物を形成しうる無機物としては、特に制限されず、公知のものを用いることができる。例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、鉛(Pb)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銀(Ag)、チタン(Ti)等の各種金属や金属合金、ケイ素(Si)、窒化珪素(SiN)、炭化珪素(SiC)、窒化炭化珪素(SiCN)、硼素(B)、窒化硼素(BN)、炭化硼素(BC)、炭窒化硼素(BCN)等が挙げられる。
【0028】
また、無機粒子としては、無機酸化物を形成しうる無機物を少なくとも表面に含むものであれば、特に制限されず公知の粒子を用いることができる。すなわち、無機粒子は、単一層より形成されるものであっても、コア-シェル構造のような内部と外部との組成が異なるものであってもよいが、より良好な特性を有するとの観点から、単一層より形成されるものであることが好ましい。
【0029】
したがって、無機粒子の好ましい例としては、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、鉛(Pb)、クロム粒子(Cr)、コバルト(Co)、銀(Ag)、チタン(Ti)等の各種金属粒子またはこれらの組み合わせからなる合金粒子、ケイ素粒子(Si粒子)、窒化珪素粒子(SiN粒子)、炭化珪素粒子(SiC粒子)、窒化炭化珪素粒子(SiCN粒子)、硼素粒子(B粒子)、窒化硼素(BN粒子)、炭化硼素(BC粒子)、炭窒化硼素(BCN粒子)等が挙げられる。これらの中でも、Si粒子、SiN粒子、SiC粒子、SiCN粒子、B粒子、BN粒子、BC粒子、BCN粒子がより好ましく、SiC粒子がさらに好ましい。SiC粒子は、高硬度であり、高温耐熱性、機械的強度、耐衝撃性、耐摩耗性、耐酸化性および耐食性に優れ、熱膨張係数が小さいことから、研磨用組成物や、高温構造部材をはじめとして、種々の用途で用いられうる。
【0030】
ここで、無機粒子が上記金属または合金酸化物である場合、酸化層を形成する無機酸化物としては、これらに含まれる金属元素の金属酸化物等が挙げられる。無機粒子がSi粒子、SiN粒子、SiC粒子、SiCN粒子である場合、酸化層を形成する酸化物としては、酸化珪素(SiO2)等が挙げられる。無機粒子がB粒子、BN粒子、BC粒子、BCN粒子である場合、酸化層を形成する酸化物としては、酸化硼素(B2O3)等が挙げられる。
【0031】
これより、本発明の好ましい一形態では、無機粒子は、炭化珪素粒子(SiC粒子)であり、無機酸化物は、酸化珪素(SiO2)である。
【0032】
本発明の一形態に係る被覆粒子において、無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量は、0.150mg/m2を超えない。無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量が0.150mg/m2超過であると、無機粒子や被覆層の構成材料は、本来有する特性を発揮することができず、例えば、被覆粒子を含む焼結体の焼結により高温が必要となり、焼成条件がより厳しくなることや、良好な焼結体が得られないこと等の問題が生じるからである。これより、無機粒子や被覆層の構成材料の機能をより良好に発揮させるとの観点から、無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量の上限は、小さいほど好ましく、0.150mg/m2以下であることが好ましく、0.100mg/m2以下であることがより好ましく、0.050mg/m2以下であることがさらに好ましい(下限0mg/m2)。ここで、無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量は、無機粒子を構成する無機物や無機酸化物の種類に応じて公知の方法により測定することができる。例えば、無機酸化物が酸化珪素である場合は、JIS R1616:2007の遊離二酸化珪素の定量方法に基づいて、分光光度計(株式会社島津製作所製、型番:UVmini-1240)により測定することができる。なお、無機粒子がSiC粒子であり、無機酸化物がSiO2である場合の測定方法の詳細は、実施例に記載する。
【0033】
無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量は、後述する酸化層除去処理における処理の強度や処理時間、酸化層除去処理後に乾燥粉末の状態とするか否か、または当該乾燥粉末の大気中への放置時間等によって制御することができる。
【0034】
無機粒子の平均一次粒子径の上限は、特に制限されないが、10μm未満であることが好ましく、5μm未満であることがより好ましく、2μm未満であることさらに好ましく、1μm未満であることが特に好ましく、0.5μm未満であることが最も好ましい。上記範囲であると、酸化層がより形成されやすくなることから、本発明がより有用となる。また、被覆粒子を分散媒や樹脂等の媒体に分散させた際に、分散性がより向上する。また、無機粒子の平均一次粒子径の下限は、特に制限されないが、0.03μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。上記範囲であると、被覆粒子の特性をより良好に発揮させることができる。無機粒子の平均一次粒子径の値は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡(SEM) SU8000を用いて撮影を行い、株式会社マウンテック製の画像解析式粒度分布ソフトウェア MacViewを用いて、粒子100個の体積平均粒子径として算出することができる。
【0035】
無機粒子の平均二次粒子径の上限は、特に制限されないが、10μm未満であることが好ましく、5μm未満であることがより好ましく、2μm未満であることがさらに好ましく、1μm未満であることが特に好ましく、0.5μm未満であることが最も好ましい。上記範囲であると、被覆粒子分散媒や樹脂等の媒体に分散させた際に、分散性がより向上する。また、無機粒子の平均二次粒子径の下限は、特に制限されないが、0.03μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。上記範囲であると、無機粒子の被覆をより効率的に行うことができる。無機粒子の平均二次粒子径の値は、株式会社堀場製作所製の散乱式粒子径分布測定装置LA-950により測定することができる。
【0036】
無機粒子は、市販品を、そのまま、または後述する酸化層除去処理をして用いてもよいし、合成品(製造品)を用いてもよい。
【0037】
無機粒子が市販品である場合、SiC粒子としては、例えば、株式会社フジミインコーポレーテッド製 GC#40000、GC8000S等を後述する酸化層除去処理して用いることができる。
【0038】
無機粒子が合成品(製造品)である場合、無機粒子は、乾燥状態の粒子を経由しない方法によって、分散媒中で製造されたものであることが好ましい。また、分散媒は、後述する被覆層形成工程の被覆方法1に係る工程(A)における原料分散液(1)の調製において用いられるものを単独または二種以上を混合して用いることができる。これらの中でも水を含むものが好ましく、水(好ましくは純水)であることがより好ましい。
【0039】
乾燥状態の粒子を経由しない無機粒子の製造方法としては、特に制限されず、公知の方法を使用することができるが、例えば、以下の分散媒中での無機粗粉の粉砕工程を含む方法が挙げられる。
【0040】
[分散媒中での無機粗粉の粉砕工程]
分散媒中での無機粗粉の粉砕工程では、まず、無機粒子の目的とする平均一次粒子径よりも大きな平均一次粒子径を有する無機粒子(本明細書において、無機粗粉とも称する)を準備する。次いで、当該無機粗粉と分散媒とを、粉砕装置に投入し、目的とする平均一次粒子径を有する無機粒子の回収が可能な粉砕条件で粉砕を行う。
【0041】
粉砕装置としては、ボールミル、ローラーミル、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、アトライター等が挙げられる。これらの中でも、粉砕後の無機粒子の均一性および当該粒子の分散媒中での分散性の向上との観点から、ボールミルで行うことが好ましい。ボールミルとしては、特に制限されないが、例えば、株式会社テックジャム製 製品名ポットミル回転台 ANZ-10D等を用いることができる。また、ボールミルに用いるボールとしては、特に制限されないが、例えば、アルミナボール等が挙げられる。ボールの直径は、無機粗粉や目的とする無機粒子の平均一次粒子径等に応じて適宜選択すればよい。
【0042】
粉砕条件は、使用する粉砕装置において、例えば、投入する無機粗粉と分散媒との質量比、粉砕時間、または回転数等と、粉砕後の無機粒子の平均一次粒子径や粒子径分布との関係を予め確認することで決定することができる。
【0043】
投入する無機粗粉と分散媒との量は、特に制限されないが、粉砕後の無機粒子の均一性および生産効率の観点から、無機粗粉と分散媒との総質量に対して、無機粗粉の投入量が20質量%以下であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましく、18質量%以下であることがさらに好ましく、16質量%以下であることが特に好ましい(下限0質量%超)。
【0044】
無機粗粉の粉砕後、乾燥工程を挟まずに、必要に応じて、粉砕後に得られる無機粒子および分散媒を含む分散体を、ボールミル中から分級塔と呼ばれる円錐型の分級を行う設備へと投入し、粒子の沈降時間の差を利用して、目的の粒度部分の無機粒子および分散媒を含む分散体部分のみを回収してもよい。ただし、特に必要がない場合は分級を行わなくてもよい。
【0045】
その後、回収後の無機粒子および分散媒を含む分散体をビーカー中で静置し、無機粒子が完全に沈降した後、上澄み部分の分散媒を、分散体中の無機粒子の濃度が所望の濃度となるように回収する。このようにして無機粒子および分散媒を含む分散液を調製することで、乾燥状態の粒子を経由せずに、無機粒子を製造することができる。
【0046】
無機粒子は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いられうる。
【0047】
(被覆層)
本発明の一形態に係る被覆粒子は、無機粒子を被覆する被覆層を含む。本願明細書では、被覆層には、無機粒子が酸化されることによって形成されうる酸化層は含まれないものとする。被覆層は、その構成材料の種類に応じて、被覆粒子に対して種々の機能を付与することができる。
【0048】
被覆層の構成材料は、特に制限されず、公知の材料を用いることができる。すなわち、被覆層は、有機物であっても、無機物であってもよい。これらの中でも、より良好な特性を有するとの観点から、被覆層は、無機粒子の少なくとも表面に含まれる無機物および当該無機粒子の酸化によって形成されうる無機酸化物以外の無機物を含むことが好ましい。
【0049】
また、被覆層に含まれうる無機物は、金属元素を含むことが好ましい。金属元素としては、特に制限されないが、例えば、上記無機粒子を構成する無機物として挙げた金属と同様のものを用いることができる。これらの中でも、被覆層に含まれうる無機物は、アルミニウム元素を含むことがより好ましい。アルミニウム元素を含む被覆層は、無機粒子に対して、絶縁性を付与する機能や、成形体を製造する際の焼結助剤としての機能や、研磨用組成物に使用した際の研磨特性を向上させる機能を付与することができる。
【0050】
被覆層中のアルミニウム元素は、アルミニウム化合物の形で含有されることが好ましい。アルミニウム化合物は、特に制限されず公知の化合物を適宜採用することができるが、これらの中でも酸化アルミニウム前駆体であることが特に好ましい。すなわち、本発明の好ましい一形態に係る被覆層では、被覆層に含まれうる無機物は、アルミニウム元素を含む酸化アルミニウム前駆体を含む。当該被覆層中の酸化アルミニウム前駆体は、被覆粒子の焼成時に酸化アルミニウムへと変化する。酸化アルミニウムは、良好な焼結助剤として機能する。そして、被覆層中の酸化アルミニウム前駆体を被覆粒子の焼成時に酸化アルミニウムへと変化させる方法を用いることで、より優れた特性を有する被覆粒子の焼結体を形成することができる。
【0051】
ただし、酸化アルミニウムは、酸化アルミニウム前駆体よりも凝集が生じ易い。これより、焼成前の状態で酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆粒子は、酸化アルミニウムの凝集を介して、被覆粒子の凝集がより進行している場合がある。よって、被覆粒子は被覆層が焼成によって酸化アルミニウムへと変化するものであることが好ましく、被覆層は、酸化アルミニウムを実質的に含まないことが好ましい。この場合、被覆粒子を分散媒や樹脂等の媒体に分散させた際に、分散性がより向上する。
【0052】
なお、本願明細書において、「酸化アルミニウムを実質的に含まない」とは、被覆粒子のEELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)分析において、酸化アルミニウムのEELS標準スペクトルに特有のスペクトル形状が明確に観察されないことを表す。ここで、EELS分析は、FEI社製TITAN80-300を用いて行うことができる。
【0053】
酸化アルミニウム前駆体として使用できるアルミニウム化合物としては、特に制限されないが、例えば、水酸化アルミニウム;酸化水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミニウムミョウバン、ギ酸アルミニウム、安息香酸アルミニウム、リノール酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、パルミチン酸アルミニウム、サリチル酸アルミニウム、没食子酸アルミニウム等のアルミニウム塩;トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリブトキシアルミニウム等のアルミニウムアルコキシド;トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、トリ-n-オクチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物等が挙げられる。これらは水和物の形態で用いられてもよい。これらの中でも、その前駆体を用いた被覆層形成時において、被覆粒子の凝集が発生し難いとの観点から、水酸化アルミニウムが好ましい。すなわち、本発明の好ましい一形態に係る被覆粒子は、被覆層が酸化アルミニウム前駆体を含み、当該酸化アルミニウム前駆体は、水酸化アルミニウムを含むことが好ましい。水酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆粒子は、アルミニウム化合物に由来する機能を有しつつ、被覆粒子を分散媒や樹脂等の媒体に分散させた際に、より高い分散性を示す。
【0054】
また、被覆層は、本発明の効果を損なわない限り、他の成分を含んでいてもよい。
【0055】
被覆層がアルミニウム元素を含むことは、被覆粒子をSEM(Scanning Electron Microscope)-EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)観察およびEELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)分析することで確認することができる。なお、測定方法の詳細は実施例に記載する。
【0056】
被覆層の膜厚は、被覆による粒子の存在状態の変化のため直接測定することは困難である場合もありうるが、無機粒子の単位表面積当たりの被覆層の構成材料の質量から判断することができる。また、無機粒子の単位表面積当たりの被覆層に含まれる特定の元素の質量から判断することもできる。そして、一般的に被覆層の膜厚が増加するほど、ゼータ電位の等電点が大きくなる傾向があることから、被覆層の膜厚は、被覆粒子の等電点から判断することができる。
【0057】
(被覆粒子の製造方法)
本発明の一形態に係る被覆粒子の製造方法は、特に制限されないが、以下の無機粒子の準備工程、及び被覆層の形成工程を含むことが好ましい。
【0058】
[無機粒子の準備工程]
前述のように、本発明の一形態に係る被覆粒子において、無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量は、0.150mg/m2を超えない。これより、本発明の一形態に係る被覆粒子の製造方法としては、例えば、単位表面積あたりの無機酸化物の量が0.150mg/m2を超えない無機粒子を準備した後、当該無機粒子を後述する被覆層の形成工程にて被覆する方法等が挙げられる。
【0059】
無機酸化物を形成しうる無機物を少なくとも表面に含む無機粒子は、通常、自然酸化されることで酸化層が形成される結果、単位表面積あたりの無機酸化物の量が0.150mg/m2超過となる。これより、自然酸化された無機粒子を原料(原料無機粒子)として使用する場合、酸化層除去処理が必要となる。なお、本明細書において、酸化層除去処理を行う工程を「酸化層除去工程」と称する。
【0060】
酸化層除去工程で使用される酸化層除去方法としては、特に制限されず、公知の方法を使用することができる。例えば、公知の無機酸化物の溶解方法等を使用することができ、酸化層が酸化珪素を含む層である場合には、例えば、フッ化水素酸を含む溶液による処理(フッ化水素酸処理)や、アルカリ性の溶液による処理(アルカリ処理)、Na2SO4の加熱水溶液による処理や、Na2SO3水溶液による処理等が挙げられる。これらの中でも、フッ化水素酸処理またはアルカリ処理が好ましく、アルカリ処理がより好ましい。
【0061】
SiC粒子表面に存在している酸化珪素層の除去方法の好ましい一例としては、アルカリ処理方法である、SiC粒子の水系分散液(分散媒として水を含む分散液、好ましくは分散媒として水のみを含む水分散液)に水酸化ナトリウムを添加して、pH12.5以上で浸漬時間72時間以上、常温にて経過させる方法が挙げられる。当該方法により、SiC粒子表面に存在する酸化珪素はイオン化され、SiC粒子表面から除去される。アルカリとしては、他の公知のアルカリを用いてもよく、例えば、水酸化カリウム等を用いてもよい。ここで、アルカリ処理におけるアルカリ溶液のpHの下限は、13以上であることがより好ましい。上記範囲であると、酸化層の除去をより効率的に行うことができる。また、当該pHの上限は、特に制限されないが、安全性、経済性の観点から、15以下であることが好ましい。また、アルカリ処理における浸漬時間の下限は、120時間以上であることがより好ましい。上記範囲であると、酸化層の除去をより確実に行うことができる。また、当該浸漬時間の上限は、特に制限されないが、168時間以下であることが好ましい。この範囲であると、酸化層の除去をより効率的に行うことができる。
【0062】
また、SiC粒子表面に存在している酸化珪素層の除去方法の他の好ましい一例としては、フッ化水素処理による方法等が挙げられる。
【0063】
[被覆層形成工程]
無機粒子の被覆方法は、特に制限されず、公知の方法を使用することができる。
【0064】
以下、被覆粒子の製造方法の一例として、無機粒子がSiC粒子であり、被覆層がアルミニウム化合物またはその前駆体を含む場合における方法を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0065】
被覆層中のアルミニウム元素がアルミニウム化合物の形で含有される場合、SiC粒子と、被覆層に含まれるアルミニウム化合物またはその前駆体と、分散媒とを含む分散液の状態で被覆を進行させる方法であることが好ましい。
【0066】
ここで、被覆は、SiC粒子と、被覆層に含まれるアルミニウム化合物またはその前駆体と、分散媒とを含む分散液のpH(被覆段階のpH)を所定の範囲内に制御した上で、一定期間維持することによって行うことが好ましい。被覆段階のpH範囲の下限は、特に制限されないが、7超であることが好ましく、9以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましい。上記範囲であると、SiC粒子の凝集の発生を抑制し、SiC粒子の分散性をより良好に維持しつつ被覆を進行させることができる。また、被覆段階のpH範囲の上限は、特に制限されないが、12以下であることが好ましく、11.5以下であることがより好ましく、11以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、被覆処理における不可避不純物の発生がより低減され、製造される被覆SiC被覆粒子の純度がより高まる。
【0067】
この被覆方法は、SiC粒子の酸化反応や還元反応、酸化層の除去反応に関するものではないことから、被覆処理の前後において、SiC粒子の単位表面積あたりの酸化珪素の量(無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量)を変化させるものではない。
【0068】
被覆段階のpHの制御は、公知のpH調整剤で行うことができるが、酸またはアルカリで行うことが好ましい。酸としては、特に制限されないが、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、塩酸等の無機酸(特に硝酸、硫酸、塩酸等の無機強酸)、酢酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、フタル酸等の有機酸等が挙げられる。これらの中でも、より少ない添加量で目的の達成が可能であり、他の元素の混入の可能性が低い高純度品が容易に入手可能であるとの観点から、無機強酸であることが好ましく、硝酸、硫酸、塩酸であることがより好ましい。これらの酸は、単独でもまたは2種以上混合しても用いられうる。また、アルカリとしては、特に制限されないが、例えば、アンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾール、トリアゾール等が挙げられる。これらの中でも、例えば、被覆層に含まれるアルミニウム化合物の前駆体がアルミン酸ナトリウムである場合、被覆処理における不可避不純物の発生が少ないとの観点から、水酸化ナトリウムであることが好ましい。これらのアルカリは、単独でもまたは2種以上混合しても用いられうる。
【0069】
本発明の特に好ましい一形態に係る被覆粒子は、前述のように、水酸化アルミニウム被覆SiC粒子である。その被覆方法は、特に制限されないが、好ましい一例としては、SiC粒子、アルミン酸ナトリウムおよび水を含む分散液のpHを9以上12以下の範囲として、SiC粒子の表面に水酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆粒子を形成する方法が挙げられる。ここで、水酸化アルミニウム被覆SiC粒子は、分散媒中に分散された状態で製造されてもよく、またはその後分散媒を取り除く工程を経て製造されていてもよい。
【0070】
かような被覆方法の中でも、例えば、下記の被覆方法1または被覆方法2が好ましく、下記の被覆方法1が特に好ましい。
【0071】
被覆方法1:SiC粒子、アルカリおよび水を含み、pHが9以上12以下である原料分散液(1)と、アルミン酸ナトリウムおよび水を含む原料溶液(2)と、をそれぞれ準備する工程(A)と、前記原料分散液(1)に、前記原料溶液(2)と、酸とを添加して、pHを9以上12以下の範囲に維持し、前記SiC粒子の表面に水酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆粒子を形成する工程(B)と、を有する方法。
【0072】
被覆方法2:SiC粒子、アルミン酸ナトリウムおよび水を含む原料分散液(3)を準備する工程(C)と、工程(C)で準備された原料分散液に酸を添加して、pHを10以上pH12以下の範囲とすることにより、SiC粒子の表面に水酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆粒子を形成する工程(D)と、を有する方法。
【0073】
以下、特に好ましい被覆方法である、被覆方法1について詳細に説明する。
【0074】
≪工程(A)≫
被覆方法1は、SiC粒子、アルカリおよび水を含み、pHが9以上12以下である原料分散液(1)と、アルミン酸ナトリウムおよび水を含む原料溶液(2)と、をそれぞれ準備する工程(A)を有する。
【0075】
原料分散液(1)の調製方法としては、特に限定されないが、例えば、SiC粒子の水系分散液(分散媒として水を含む分散液、好ましくは分散媒として水のみを含む水分散液)にアルカリを添加する方法等が挙げられる。
【0076】
原料分散液(1)の調製方法において、原料分散液(1)中のSiC粒子の含有量は、特に制限されないが、生産性の観点から、原料分散液(1)の総質量に対して、8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。また、原料分散液(1)中のSiC粒子の含有量は、特に制限されないが、分散性の観点から、原料分散液(1)の総質量に対して、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
【0077】
原料分散液(1)の調製方法において、アルカリとしては、特に制限されず、例えば、被覆段階のpHの制御に用いられるpH調整剤として挙げたものが用いられうる。アルカリの使用量は、特に制限されず、原料分散液(1)のpHが所定の9以上12以下になるように使用量を調整すればよい。
【0078】
原料分散液(1)は、分散媒として水を含む。水は、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。例えば、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下である水が好ましい。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、水としては、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。ここで、原料分散液(1)中の水の含有量は、水酸化アルミニウムによるSiC粒子の被覆をより良好に進行させるとの観点から、原料分散液(1)の総質量に対して、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい(上限100質量%未満)。また、分散媒は、水以外の溶剤を含んでいてもよく、水以外の溶剤は有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、アセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の水と混和する有機溶媒が挙げられる。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いられうる。
【0079】
原料溶液(2)の調製方法としては、特に限定されないが、例えば、水にアルミン酸ナトリウムを添加する方法等が挙げられる。水に、アルミン酸ナトリウムを分散させる手順、方法、およびアルカリを添加する手順、方法としては、特に制限されず、公知の手順、方法が用いられうる。原料溶液(2)におけるアルミン酸ナトリウムの含有量は、特に制限されないが、原料溶液(2)の総質量に対して、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0080】
≪工程(B)≫
被覆方法1は、工程(A)で準備された原料分散液(1)に、原料溶液(2)と、酸とを添加して、pHを9以上12以下の範囲に維持し、前記SiC粒子の表面に水酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆粒子を形成する工程(B)を有する。本工程(B)では、水酸化アルミニウム被覆SiC粒子が製造される。
【0081】
原料分散液(1)に原料溶液(2)と、酸とを添加する方法は、pHを9以上12以下に維持できれば(すなわち、アルミン酸イオンの濃度が過剰にならなければ)特に制限されず、例えば、原料溶液(2)と酸とを同時に添加する方法や、原料溶液(2)と酸とを少しずつ交互に添加する方法が挙げられる。
【0082】
原料溶液(2)の添加量は、特に制限されないが、原料溶液(2)中において、SiC粒子100質量部に対するアルミン酸ナトリウムの添加量が7質量部以上となる量であることが好ましく、20質量部以上となる量であることがより好ましく、22質量部以上であることがさらに好ましい。上記範囲であると、SiC粒子を水酸化アルミニウム(Al(OH)3)で十分に被覆することができ、水酸化アルミニウムに由来する機能がより向上する。また、原料溶液(2)の添加量は、特に制限されないが、原料溶液(2)中において、SiC粒子100質量部に対するアルミン酸ナトリウムの含有量が800質量部以下となる量であることが好ましく、400質量部以下となる量であることがより好ましく、100質量部以下となる量であることがさらに好ましく、50質量部以下となる量であることが特に好ましい。ある程度被覆が進むと被覆による得られる効果は一定となるため、原料溶液(2)の添加量を所定量以下とすることで、経済性および生産効率がより向上する。
【0083】
酸の使用量は、特に制限されず、原料分散液(1)と原料溶液(2)とを混合してなる分散液のpHが9以上12以下になるように使用量を調整すればよい。ここで、上記酸は水溶液の形態で添加することが好ましく、その水溶液中の酸の濃度は、特に制限されないが、1質量%以上であることが好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。上記範囲であると、酸を含む水溶液の添加量より減少させることができ、生産性がより向上する。また、水溶液中の酸の濃度は、特に制限されないが、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲であると、腐食性がより低くなり設備負荷がより小さくなる。
【0084】
また、原料溶液(2)と酸とを添加する速度(添加速度)は、特に制限されず、pH9以上12以下の範囲し、かつその後のpHの維持が容易となるよう適宜調整すればよい。
【0085】
工程(B)におけるpHが9以上12以下の範囲である状態の維持時間は1分以上であることが好ましく、30分以上であることがより好ましく、50分以上であることがさらに好ましく、60分以上であることが特に好ましい。上記範囲であると、SiC粒子を水酸化アルミニウムでより十分に被覆することができ、水酸化アルミニウムに由来する機能がより向上する。また、上記範囲であると、被覆粒子を分散媒や樹脂等の媒体に分散させた際に、分散性がより向上する。また、工程(B)におけるpHが9以上12以下の範囲である状態の維持時間は200分以下であることが好ましく、150分以下であることがより好ましく、120分以下であることがさらに好ましく、90分以下であることが特に好ましい。ある程度被覆が進むと被覆により得られる効果は一定となるため、維持時間がこの範囲であると、経済性および生産効率がより向上する。
【0086】
工程(B)における好ましいpH範囲は、上記説明した被覆段階のpH範囲と同様である。
【0087】
工程(B)を経ることで、水酸化アルミニウム被覆SiC粒子および分散媒を含む分散液の形態で水酸化アルミニウム被覆SiC粒子が製造される。製造される分散液から水酸化アルミニウム被覆SiC粒子を取り出したい場合は、公知の手順、方法を用いて分散媒や不純物等を除去することができる。
【0088】
工程(B)の後、さらに酸を添加して、pHを9未満とすることが好ましい。
【0089】
≪被覆層形成工程におけるその他の工程≫
上記の被覆方法1では、工程(A)および工程(B)以外のその他の工程をさらに有していてもよく、工程(A)および工程(B)において、他の操作に係る段階をさらに有していてもよい。
【0090】
また、上記の被覆方法2では、工程(C)および工程(D)以外のその他の工程をさらに有していてもよく、工程(C)および工程(D)において、他の操作に係る段階をさらに有していてもよい。
【0091】
なお、上記の被覆方法1において、各工程で用いられる溶液または分散液は、本発明の効果を損なわない限り、他の成分を含んでいてもよい。
【0092】
[その他の工程]
本発明の一形態に係る被覆粒子の製造方法は、上記で説明した無機粒子の準備工程および被覆層形成工程以外にも、他の工程をさらに有していてもよい。
【0093】
[好ましい形態に係る製造方法]
本発明の好ましい一形態に係る被覆粒子の製造方法としては、
SiC粒子に対して酸化層除去処理をして、単位表面積あたりのSiO2の量が0.150mg/m2を超えない、SiC粒子とする酸化層除去工程と、
酸化層除去処理後のSiC粒子、アルミン酸ナトリウムおよび水を含む分散液のpHを9以上12以下の範囲として、SiC粒子の表面に水酸化アルミニウムを含む被覆層を有する被覆粒子を形成する被覆層形成工程と、
を有する方法が挙げられる。当該方法によれば、より高い分散性を有し、より低い焼成温度等のより容易な条件で良好な特性を発揮する焼成体が得られる被覆粒子を製造することができる。ここで、酸化層除去工程および被覆層形成工程の好ましい態様は、それぞれ前述したとおりである。
【0094】
なお、酸化層除去処理を行うSiC粒子は、単位表面積あたりのSiO2の量が0.150mg/m2超過であっても、0.150mg/m2以下であってもよい。単位表面積あたりのSiO2の量が0.150mg/m2以下である場合は、SiO2量をさらに減少させることができるからである。
【0095】
また、被覆粒子の製造方法において、上記の酸化層除去処理が開始されてから、上記の被覆層の形成処理が完了するまでの間、原料である無機粒子及び製造される被覆粒子は、一度も乾燥粉末の状態とされることなく、分散媒中に存在することがより好ましい。
【0096】
すなわち、本発明のより好ましい一形態に係る被覆粒子の製造方法としては、上記好ましい一形態に係る製造方法において、酸化層除去処理においてSiC粒子の酸化層除去が開始されてから、被覆層形成工程において被覆粒子が形成されるまで、SiC粒子および被覆粒子が分散媒中に分散された状態を維持する方法が挙げられる。当該方法によれば、自然酸化による無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量の増加を抑制することができ、より高い分散性を有し、より低い焼成温度等のより容易な条件で良好な特性を発揮する焼成体が得られる被覆粒子を製造することができる。
【0097】
そして、上記製造方法において、酸化層除去工程の前に、乾燥状態の粒子を経由しない方法によって、無機粒子を分散媒中で製造する、分散媒中での無機粗粉の粉砕工程をさらに含むことがさらに好ましい。
【0098】
すなわち、本発明のさらに好ましい一形態に係る被覆粒子の製造方法としては、上記好ましい一形態に係る製造方法において、酸化層除去工程の前に、分散媒中でSiC粗粉を粉砕して、単位表面積あたりのSiO2の量が0.150mg/m2超過である、SiC粒子を製造する、分散媒中での無機粗粉の粉砕工程をさらに有し、かつ、分散媒中での無機粗粉の粉砕工程におけるSiC粒子の製造から、被覆層形成工程において被覆粒子が形成されるまで、SiC粗粉、SiC粒子および被覆粒子が分散媒中に分散された状態を維持する方法が挙げられる。当該方法によれば、極めて高い分散性を有し、さらに低い焼成温度等のさらに容易な条件で良好な特性を発揮する焼成体が得られる被覆粒子を製造することができる。
【0099】
また、酸化層除去工程の後、被覆層形成工程の前に、乾燥状態の粒子を経由しない方法によって、酸化層除去後の無機粒子(無機粗粉)を用いて無機粒子を分散媒中で製造する、分散媒中での無機粗粉の粉砕工程をさらに含んでいてもよい。
【0100】
すなわち、本発明のさらに好ましい他の一形態に係る被覆粒子の製造方法としては、上記好ましい一形態に係る製造方法において、酸化層除去工程の後、被覆層形成工程の前に、分散媒中で単位表面積あたりのSiO2の量が0.150mg/m2以下である、SiC粒子(酸化層除去後SiC粗粉)を粉砕して、単位表面積あたりのSiO2の量が0.150mg/m2以下である、SiC粒子を製造する、分散媒中での無機粗粉の粉砕工程をさらに有し、かつ、酸化層除去処理においてSiC粒子(SiC粗粉)の酸化層除去が開始されてから、被覆層形成工程において被覆粒子が形成されるまで、SiC粗粉、SiC粒子および被覆粒子が分散媒中に分散された状態を維持する方法が挙げられる。当該方法によれば、極めて高い分散性を有し、さらに低い焼成温度等のさらに容易な条件で良好な特性を発揮する焼成体が得られる被覆粒子を製造することができる。
【0101】
なお、上記の被覆粒子の製造方法において、pHは、株式会社堀場製作所製のpHメーター(型番:F-71)で測定することができる。
【0102】
<分散液>
本発明の他の一形態は、上記の被覆粒子と、分散媒とを含む、分散液に関する。当該分散液は、例えば、良好な特性を有する未焼成成形体、焼結体の原料分散液として好ましく用いられうる。また、高い研磨特性を有する研磨用組成物として好ましく用いられうる。ただし、当該分散液の用途はこれらに限定されるものではない。
【0103】
(分散媒)
本発明の一形態に係る分散液は、分散媒を含む。分散媒は、水を含むことが好ましく、水のみであることがより好ましい。水は、不純物をできる限り含有しない水が好ましい。例えば、遷移金属イオンの合計含有量が100ppb以下である水が好ましい。ここで、水の純度は、例えば、イオン交換樹脂を用いる不純物イオンの除去、フィルタによる異物の除去、蒸留等の操作によって高めることができる。具体的には、水としては、例えば、脱イオン水(イオン交換水)、純水、超純水、蒸留水などを用いることが好ましい。また、分散媒は、水以外の溶剤を含んでいてもよく、水以外の溶剤は有機溶剤であることが好ましい。有機溶媒としては、例えば、アセトン、アセトニトリル、エタノール、メタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール等の水と混和する有機溶が挙げられる。分散媒は、水と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。これら有機溶媒は、単独でもまたは2種以上組み合わせても用いられうる。
【0104】
(他の成分)
本発明の一形態に係る分散液は、本発明の効果を損なわない限り、他の成分を含んでいてもよい。他の成分は、特に制限されないが、樹脂、他の粒子またはpH調整剤であることが特に好ましい。樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂を使用することができる。他の粒子としては、特に制限されず、公知の有機粒子または無機粒子を使用することができる。また、pH調整剤としては、特に制限されず、所望のpHを達成することができる公知のpH調整剤が適宜用いられうる。pH調整剤としては、例えば、上記の被覆粒子の製造方法における被覆層形成工程の説明において、被覆段階のpHの制御に用いられるpH調整剤として挙げたものが用いられうる。
【0105】
(分散液の製造方法)
被覆粒子の製造方法において、被覆処理の結果、被覆粒子および分散媒を含む分散液が得られる場合、当該方法をそのまま本発明の一形態に係る分散液の製造方法としてもよい。また、当該方法により被覆処理の結果得られる分散液の分散媒を、他の分散媒へと置換することによって目的の分散液を製造してもよい。例えば、製造される分散液から公知の手順、方法を用いて分散媒や不純物等を除去して被覆粒子を取り出した後、所望の分散媒に、被覆粒子を分散させてもよい。分散媒に、被覆粒子を分散させる手順、方法としては、特に制限されず、公知の手順、方法が用いられうる。なお、これらの方法により製造される分散液に、必要に応じて他の成分を添加して目的の分散液を製造してもよい。
【0106】
<成形体>
本発明のその他の一形態は、上記の被覆粒子を含む組成物からなる成形体に関する。上記の被覆粒子は、良好な特性を有する成形体を形成することができる。また、当該成形体は、良好な特性を有する焼結体の原料として好ましく用いられうる。なお、本明細書において、「成形体」とは、一定の形体を有しうるものであればよく、例えば、上記被覆粒子を樹脂内に分散させてなる分散体も成形体に含まれるものとする。
【0107】
組成物に含まれる他の材料としては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。例えば、公知のマトリクス材料等が挙げられる。ここで、公知のマトリクス材料としては、特に制限されないが、例えば、公知の熱可塑性樹脂や公知の熱硬化性樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0108】
成形体の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を使用することができる。例えば、上記被覆粒子と、樹脂と、分散媒とを含む分散液の塗布する方法、上記被覆粒子と、熱可塑性樹脂とを混合し、焼成温度以下で熔融して得られる樹脂組成物の溶融物を冷却する方法、上記被覆粒子と、熱硬化性樹脂(樹脂前駆体)とを混合した後、加熱して熱硬化性樹脂の重合・硬化反応を進行させる方法等が挙げられる。
【0109】
<焼結体>
本発明のさらなる他の一形態は、上記の被覆粒子、または上記の成形体の焼結体に関する。上記の被覆粒子は、焼成時に被覆層および無機粒子の構成が変化し、当該被覆粒子同士が接触する際にも、無機粒子を本来構成する無機物同士接触が妨げられることが少ない。これより、無機粒子の粒成長が促進され、結晶粒子径をより大きく、結晶粒界をより少なくすることができ、より低い焼成温度等のより容易な条件で良好な特性を発揮する焼成体を形成することができる。
【0110】
焼成時に被覆粒子の無機粒子の粒成長が抑制されないことが好ましいことから、焼結体は、断面の結晶粒子径がより大きいことが好ましい。かような焼結体は、より良好な特性を発揮することができる。
【0111】
ここで、焼結体の断面は、焼結体を切断・ラップ研磨した後、煮沸した村上試薬(KOH:K3Fe(CN)6:H2O=1:1:2(質量比))中に所定時間浸漬させてエッチングし、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡(SEM) SU8000を用いて撮影を行うことで観察することができる。また、焼結体の断面の平均結晶粒子径(μm)は、上記撮影した画像について、株式会社マウンテック製の画像解析式粒度分布ソフトウェア MacViewを用いて、粒子100個の体積平均粒子径を算出することで求めることができる。
【0112】
また、焼結体は、その製造に用いられる被覆粒子の原料である無機粒子の平均一次粒子径の値を焼結前の平均一次粒子径(μm)としたとき、下記式に従い算出される焼結による粒子成長率は、250%以上が好ましく、400%以上がより好ましく、500%以上がさらに好ましい。上記範囲であると、断面の結晶粒子径が十分に大きいといえる。
【0113】
【0114】
焼結体の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を使用することができる。例えば、被覆粒子の分散液を所定時間乾燥させた後、メノウ乳鉢にて解砕・篩通しをすることで各粒子の乾燥粉末を得た後、当該乾燥粉末をカーボン製の焼成冶具に所定量充填し、真空ホットプレス機(富士電波工業株式会社製)にて焼成することで製造することができる。また、焼成条件についても、公知の条件を採用することができ、上記の被覆粒子(被覆層や無機粒子)や成形体が有する他の材料の種類によって適宜調整することができる。ここで、無機粒子がSiC粒子であり、被覆層が水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を含む場合における焼成条件の例としては、焼成温度は、1400℃以上であることが挙げられる。また、焼成時間は、1時間以上であることが挙げられる。そして、焼成時の雰囲気は、アルゴン雰囲気下であることが挙げられる。また、加圧条件は、一軸加圧にて5MPa以上加圧すること等が挙げられる。ただし、この場合においても、焼成条件はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0115】
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
【0116】
以下、pHは、株式会社堀場製作所製のpHメーター(型番:F-71)で測定した値を示す。
【0117】
<被覆粒子の製造>
(SiC粒子の準備)
[SiC粒子A]
平均一次粒子径0.7μmのSiC粗粉と純水とを、SiC粗粉と水との総質量に対して、SiC粗紛の投入量が18質量%となるようボールミル中に投入し、目的とする平均一次粒子径を有するSiC粒子の回収が可能な粉砕条件で粉砕を行った。次いで、乾燥工程を挟まずに、粉砕後のSiC粒子の水分散液を、ボールミル中から分級塔と呼ばれる円錐型の分級を行う設備へと投入し、粒子の沈降時間の差を利用して、目的の粒度部分のSiC粒子(平均一次粒子径0.30μm)の水分散液部分のみを回収した。そして、回収後のSiC粒子の水分散液をビーカー中で静置し、SiC粒子が完全に沈降した後、上澄み部分の水を、水分散液中のSiC粒子の濃度が20質量%となるように回収することで、SiC粒子の20質量%水分散液1(アルカリ処理前)を準備した。
【0118】
次いで、得られた水分散液1に対して、12.5質量%NaOH水溶液(溶液の総質量に対するNaOHの含有量が12.5質量%の水溶液)をpH12.5以上となるよう添加した。その後、得られた分散液を25℃で72時間経過するまで撹拌することで、酸化層除去処理を行った。そして、アルカリ処理後の分散液を、モジュールにて電導度が1000μS/cm以下になるまで水洗を行い、酸化層除去処理後のSiC粒子であるSiC粒子Aの20質量%水分散液2(アルカリ処理後)を調製した。
【0119】
ここで、SiC粒子の平均一次粒子径の値は、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡(SEM) SU8000を用いて撮影を行い、株式会社マウンテック製の画像解析式粒度分布ソフトウェア MacViewを用いて、粒子100個の体積平均粒子径として算出した値である。
【0120】
[SiC粒子B]
上記SiC粒子Aの準備と同様にして、SiC粒子の20質量%水分散液2(アルカリ処理後)を得た後、大気中にて、215℃で34時間加熱することで乾燥処理を行い、分散媒である水を除去して、SiC粒子Bを得た。
【0121】
[SiC粒子C]
上記SiC粒子Aの準備と同様にして、SiC粒子の20質量%水分散液1(アルカリ処理前)を得た後、大気中にて、215℃で34時間加熱することで乾燥処理を行い、分散媒である水を除去して、SiC粒子Cを得た。
【0122】
(SiC粒子の単位表面積あたりのSiO2の量の測定)
上記得られたSiC粒子Aの20質量%水分散液2、ならびにSiC粒子BおよびSiC粒子Cについて、前処理として105℃の恒温槽で12時間乾燥して、各SiC粒子を得た。その後、SiC粒子を乳鉢で擂り潰し、あらかじめ重量を測定したセル(Wa’(g))にSiC粒子を約0.2g入れて重量を測定した(Wb’(g))後、5分以上、比表面積測定計(株式会社島津製作所製、FlowSorb II)の加温部で180℃に保温した。その後、測定部に装着し、脱気時の吸着面積(A[m2])を計測した。当該A値を用いて、下記式により、比表面積SA[m2/g]を求めた。各SiC粒子のBET比表面積は32.3m2/gであった。
【0123】
【0124】
上記式中、SAは、SiC粒子のBET比表面積(m2/g)を表し;
Aは、脱気時の吸着面積(m2)を表し;
Wa’は、セルの重量(g)を表し;
Wb’は、試料(SiC粒子)およびセルの合計重量(g)を表す。
【0125】
また、別途、上記得られたSiC粒子Aの20質量%水分散液2、ならびに上記得られたSiC粒子BおよびSiC粒子Cを水に分散させてなる、SiC粒子Bの20質量%水分散液およびSiC粒子Cの20質量%水分散液を準備した。続いて、JIS R1616:2007の遊離二酸化珪素の定量方法において、各SiC粒子の20質量%水分散液(各SiC粒子)を135±5℃で2時間乾燥する工程を行わなかった以外の部分については当該定量方法に基づき、分光光度計(株式会社島津製作所製 型番:UVmini-1240)を用いて、各SiC粒子の単位表面積あたりのSiO2の量を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0126】
【0127】
なお、上記測定では、SiC粒子Bの20質量%水分散液およびSiC粒子Cの20質量%水分散液は、SiC粒子BおよびSiC粒子Cの製造後、7日以内に水分散液としたものを用いた。
【0128】
また、上記測定は、SiC粒子Aの20質量%水分散液2の調製、SiC粒子Bの20質量%水分散液、およびSiC粒子Cの20質量%水分散液の調製後、120日以内に行った。しかしながら、水分散液の状態では、通常、SiC粒子の自然酸化は抑制されることから、例えば、調整から6ヵ月後に行った場合でも同様の結果が得られると考えている。
【0129】
(被覆層の形成)
[被覆粒子1]
上記得られたSiC粒子Aの20質量%水分散液2に対して、1M NaOH水溶液をpH10.0となるように添加した。また、アルミン酸ナトリウムの30質量%水分散液を調製した。次いで、前記得られたpH10.0のSiC粒子Aの水分散液に対して、SiC粒子A 100質量部に対するアルミン酸ナトリウムが25質量部となる量の前記得られたアルミン酸ナトリウムの30質量%水分散液と、9.9質量%塩酸水溶液とを、pHが9.0以上12.0以下の範囲が保持されるよう、撹拌しながら45分間かけて添加した。続いて、得られた分散液をさらに45分撹拌した後、pH10.5となるよう9.9質量%塩酸水溶液を添加し、その後、pH3.0となるよう9.9質量%塩酸をさらに添加することで、被覆粒子1を含む分散液を調製した。
【0130】
なお、被覆粒子1において、SiC粒子Aの準備の開始から被覆粒子1を含む分散液の調製までの間、原料であるSiC粗粉、SiC粒子Aおよびこれより形成される被覆粒子1は、一度も乾燥粉末の状態とされることなく、分散媒中に存在していた。
【0131】
[被覆粒子2]
上記得られたSiC粒子Bを分散媒である水に添加して、SiC粒子Bの20質量%水分散液を調整した後、当該分散液に対して、1M NaOH水溶液をpH10.0となるよう添加した。また、アルミン酸ナトリウムの30質量%水分散液を準備した。次いで、前記得られたpH10.0のSiC粒子Bの水分散液に対して、SiC粒子B 100質量部に対するアルミン酸ナトリウムが25質量部となる量の前記得られたアルミン酸ナトリウムの30質量%水分散液と、9.9質量%塩酸水溶液とを、pHが9.0以上12.0以下の範囲が保持されるよう、撹拌しながら45分間かけて添加した。続いて、得られた分散液をさらに45分撹拌した後、pH10.5となるよう9.9質量%塩酸水溶液を添加し、その後、pH3.0となるよう9.9質量%塩酸をさらに添加することで、被覆粒子2を含む分散液を調製した。
【0132】
なお、上記測定では、SiC粒子Bの20質量%水分散液は、SiC粒子Bの製造後、7日以内に水分散液としたものを用いた。
【0133】
<被覆粒子の評価>
(被覆粒子の組成および構造分析)
上記得られた被覆粒子1を含む分散液および被覆粒子2を含む分散液をそれぞれ約2mL採取し、フィルタ(ニュークリポア 5μm)(WHATMAN製)上に滴下した。続いて、吸引濾過を行い、その後、純水10mLを用いてフィルタ上で各被覆粒子を洗浄し、乾燥させることで、各被覆粒子の乾燥粉末(乾燥された被覆粒子粉体)を得た。そして、これらの乾燥粉末をSiウエーハ上に採取して、株式会社日立ハイテクノロジーズ製、走査型電子顕微鏡(SEM) SU8000を用いて、SEM(Scanning Electron Microscope)-EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)観察を行った。
【0134】
また、得られた各乾燥粉末をカーボンテープ上に採取して、FEI社製TITAN80-300を用いて、EELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)分析を行った。
【0135】
ここで、各乾燥粉末のSEM-EDX観察において、観察対象の元素としてC、Al、Oを選択した際に、AlのEDXスペクトルが観察されること、ならびにC、AlおよびOのEDXスペクトルが観察される位置と、SEM観察像における粒子が観察される位置とが明確に対応することが確認された。これより、各被覆粒子は、SiC粒子がAlおよびOを含む成分によって被覆されている構造を有すると判断した。
【0136】
また、各乾燥粉末のEELS分析において、観察されたEELSスペクトルが、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)のEELS標準スペクトルに特有のスペクトル形状(Alや他のAlおよびOを含む化合物のスペクトルとは異なる形状)を有することが確認されたことから、各被覆粒子の被覆層において、AlおよびOを含む成分は、Al(OH)3の状態として存在するものを含むと判断した。
【0137】
以上より、被覆粒子1および2は、共にSiC粒子と、SiC粒子を被覆する被覆層とを含む被覆粒子であり、当該被覆層がAl(OH)3を含むと判断した。
【0138】
(ゼータ電位測定)
上記SiC粒子の準備で得られた、SiC粒子Aの20質量%水分散液2、ならびに上記被覆粒子の製造で得られた、被覆粒子1を含む分散液および被覆粒子2を含む分散液を純水で希釈し、pH調整剤として0.01M以上0.1M以下のNaOHおよびHClを用いて、pH4.5である各ゼータ電位測定液(各粒子粉体の水分散液)を調製した。
【0139】
ゼータ電位は、Malvern Instruments製のゼータ電位測定装置(商品名「Zetasizer nano ZSP」)で測定した。ここで、ゼータ電位は、測定粒子条件として一般的なアルミナの代表値である屈折率1.760、吸収率0.300を使用して測定を行った。得られた測定結果を、下記基準に従い評価した。ゼータ電位の絶対値が大きいほど、分散性が良好であることを示す。ここで、無機粒子がSiC粒子であり、被覆層が水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を含む場合、◎および○が良好な結果を示すものとした。これらの結果を表2に示す。
【0140】
[評価基準]
◎:ゼータ電位の絶対値が30mV以上である;
○:ゼータ電位の絶対値が20mV以上30mV未満である;
△:ゼータ電位の絶対値が20mV未満である。
【0141】
(粘度の測定)
上記SiC粒子の準備で得られた、SiC粒子Aの20質量%水分散液2、ならびに上記被覆粒子の製造で得られた、被覆粒子1を含む分散液および被覆粒子2を含む分散液を純水で希釈し、各粒子の12質量%水分散液である各粘度測定液を調製した。
【0142】
続いて、上記調製した水分散液を軽く手攪拌した後、東機産業株式会社製のTVB10H型粘度計にて、H2ローターの回転数が100rpmである条件下で当該水分散液の粘度を測定した。また測定時の環境温度は25℃とした。粘度の値が小さいほど、分散性が良好であることを示す。ここで、無機粒子がSiC粒子であり、被覆層が水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を含む場合、◎および○が良好な結果を示すものとした。これらの結果を表2に示す。
【0143】
[評価基準]
◎:粘度が35mPa・s未満である;
○:粘度が35mPa・s以上40mPa・s未満である;
△:粘度が40mPa・s以上である。
【0144】
(焼結時の粒成長)
[焼結体の製造]
上記SiC粒子の準備で得られた、SiC粒子Aの20質量%水分散液2、ならびに上記被覆粒子の製造で得られた、被覆粒子1を含む分散液および被覆粒子2を含む分散液を準備した。
【0145】
続いて、各粒子の分散液を所定時間乾燥させた後、メノウ乳鉢にて解砕・篩通しをすることで各粒子の乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末をカーボン製の焼成冶具に所定量充填し、真空ホットプレス機(富士電波工業製)にて焼成温度1400℃以上、焼成時間1時間以上、アルゴン雰囲気下、一軸加圧にて5MPa以上加圧させることで、SiC焼結体を得た。
【0146】
[焼結体の破断面の観察および焼結による粒子成長率]
得られたSiC焼結体を切断・ラップ研磨した後、煮沸した村上試薬(KOH:K3Fe(CN)6:H2O=1:1:2(質量比))中に所定時間浸漬させてエッチングした。続いて、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡(SEM) SU8000を用いて撮影を行い、SiC焼結体の破断面(切断面)を観察した。また、撮影した画像について、株式会社マウンテック製の画像解析式粒度分布ソフトウェア MacViewを用いて、粒子100個の体積平均粒子径を算出し、SiC焼結体の平均結晶粒子径(μm)の値とした。
【0147】
また、上記SiC粒子の準備で得られた、SiC粒子Aの20質量%水分散液、および上記被覆粒子2の被覆層形成に際して調製した、SiC粒子Bの20質量%水分散液を準備した。次いで、株式会社日立ハイテクノロジーズ製のSEM SU8000を用いて撮影を行い、株式会社マウンテック製の画像解析式粒度分布ソフトウェア MacViewを用いて、粒子100個の体積平均粒子径を算出し、焼結体における焼結前の平均一次粒子径(μm)の値とした。
【0148】
ここで、被覆粒子1の原料であるSiC粒子Aについての当該体積平均粒子径の値を、被覆粒子1を用いて形成したSiC焼結体における焼結前の平均一次粒子径の値とした。また、被覆粒子2の原料であるSiC粒子Bについての当該体積平均粒子径の値を、被覆粒子2を用いて形成したSiC焼結体における焼結前の平均一次粒子径の値とした。
【0149】
そして、下記式に従い、SiC焼結体の焼結による粒子成長率(%)を算出した。
【0150】
【0151】
各SiC焼結体についての焼結による粒子成長率(%)を下記表2に示す。ここで、焼結による粒子成長率が250%以上であると、結晶粒子径が大きいと判断した。
【0152】
【0153】
なお、前述のように、SiC粒子Aおよびこれより形成される被覆粒子1は、一度も乾燥粉末の状態とされることなく、分散媒中に存在していた。また、分散媒中に存在する間は、通常、SiC粒子Aの単位表面積あたりのSiO2の量は変化しないと考えられ、また被覆反応はSiC粒子の酸化を生じさせるものではない。これらのことから、被覆前後でSiC粒子Aの単位表面積あたりのSiO2の量は変化しないと推測される。
【0154】
表1の結果から、無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量が少ない被覆粒子を得るためには、無機粒子の製造過程において、酸化層除去処理後、分散液中の無機粒子を乾燥して乾燥粉末の状態としないことが好ましいことが確認された。
【0155】
また、表2の結果から、無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量が少ない被覆粒子は、焼結時の粒成長を促進され、結晶粒子径が大きくなり、また分散性も良好となることが確認された。粒成長が大きな焼結体は、より高い強度を有すると考えられる。一方、無機粒子の単位表面積あたりの無機酸化物の量が多い被覆粒子は、焼結時の粒成長が抑制され、結晶粒子径が小さくなることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の一形態に係る被覆粒子は、無機粒子を使用しうる種々の分野での利用が期待されている。例えば、研磨分野や、電子機器分野、高温構造部材分野をはじめとして、種々の分野での使用が期待されている。これらの中でも、絶縁性部材、超硬セラミックス製造時の焼結助剤、研磨用組成物としての応用が特に期待されている。ただし、本発明の一形態に係る被覆粒子の利用分野は、これらに限定されるものではない。