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特許7145893ウエハ保持装置上におけるめっきの遠隔検知
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ウエハ保持装置上におけるめっきの遠隔検知
(51)【国際特許分類】
   C25D 17/08 20060101AFI20220926BHJP
   C25D 7/12 20060101ALI20220926BHJP
   C25D 17/06 20060101ALI20220926BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C25D17/08 S
C25D7/12
C25D17/06 C
C25D21/12 Z
C25D21/12 C
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019570905
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018039827
(87)【国際公開番号】W WO2019006009
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-19
(31)【優先権主張番号】15/638,131
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アロラ・ラジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヘール・ジャレド
(72)【発明者】
【氏名】マルケッティ・ジェイソン・ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー・スティーブン・ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ジブリダ・ジェームズ・アール.
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-196555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 17/08
C25D 7/12
C25D 17/06
C25D 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気めっき装置であって、
電気めっき過程で電解質を保持するように構成されている電解質容器と、
電気めっき過程で基板を支持するように構成されている基板ホルダであって、環形状を有し、前記基板をその周縁で支持し、カップおよびリップシールを備え、センサ標的領域を含む、基板ホルダと、前記カップは底面および内壁を有し、前記リップシールは前記カップの前記内壁の最上部に配置されており、
前記センサ標的領域を標的とする光源を備えているめっきセンサであって、(i)望ましくない金属析出物が存在する前記センサ標的領域上の領域と、(ii)望ましくない金属析出物が存在しない前記センサ標的領域上の領域とを区別する、めっきセンサと、を備え、前記センサ標的領域は、前記リップシールまたは前記カップの前記内壁にある、電気めっき装置。
【請求項2】
請求項に記載の電気めっき装置であって、前記センサ標的領域は、前記カップの前記内壁と前記リップシールの両方にある、電気めっき装置。
【請求項3】
請求項1または請求項に記載の電気めっき装置であって、ドリップシールドをさらに備え、前記めっきセンサは、前記ドリップシールドに配置されている、電気めっき装置。
【請求項4】
請求項に記載の電気めっき装置であって、前記ドリップシールドは、壁および前記基板ホルダが挿入され適合する中央開口部を有する、電気めっき装置。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電気めっき装置であって、前記めっきセンサは、色系のセンサ、強度系のセンサ、またはカメラである、電気めっき装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電気めっき装置であって、前記基板ホルダ全体と適合する位置調整器具をさらに備え、前記位置調整器具は、第1の部分および第2の部分を有し、前記第1の部分および第2の部分は、前記めっきセンサによって測定された特性に関して互いに区別できる、電気めっき装置。
【請求項7】
請求項に記載の電気めっき装置であって、前記基板ホルダは、カップおよびリップシールを備え、前記カップは、底面および内壁を有し、前記リップシールは、前記カップの前記内壁の最上部に配置され、前記位置調整器具の前記第1の部分は、前記めっきセンサが前記リップシール上の金属析出物の有無を検知するように、前記リップシール近接する、電気めっき装置。
【請求項8】
請求項に記載の電気めっき装置であって、前記基板ホルダは、カップおよびリップシールを備え、前記カップは、底面および内壁を有し、前記リップシールは、前記カップの前記内壁の最上部に配置され、前記位置調整器具の前記第1の部分は、前記めっきセンサが前記カップの前記内壁上の金属析出物の有無を検知するように、前記カップの前記内壁に近接する、電気めっき装置。
【請求項9】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の電気めっき装置であって、前記センサ標的領域を乾燥させるドライヤをさらに備えている、電気めっき装置。
【請求項10】
請求項に記載の電気めっき装置であって、前記めっきセンサを使用して前記望ましくない金属析出物の有無を検知する前に、前記センサ標的領域を乾燥させるために実行可能な命令を有するコントローラをさらに備えている、電気めっき装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の電気めっき装置であって、前記基板ホルダは、前記めっきセンサに対して回転可能である、電気めっき装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の電気めっき装置であって、前記センサ標的領域に流体を送給するように構成されている入口をさらに有する、電気めっき装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電気めっき装置であって、前記めっきセンサを使用して前記センサ標的領域内の前記望ましくない金属析出物の有無を検知した後、かつ前記電気めっき装置を使用して新しい基板に電気めっきする前に、前記センサ標的領域を流体で湿潤させるために実行可能な命令を有するコントローラをさらに備えている、電気めっき装置。
【請求項14】
電気めっき装置に対するドリップシールドであって、
前記電気めっき装置における電解質容器と実質的にほぼ同じ直径を有する周壁と、
前記電気めっき装置の基板ホルダが挿入され適合可能な中央開口部であって、周壁によって画定される、中央開口部と、
前記周壁に配置されているめっきセンサと
を備える、ドリップシールド。
【請求項15】
請求項14に記載のドリップシールドであって、前記ドリップシールドは、前記めっきセンサの近傍にシャッタを備え、前記シャッタは、前記めっきセンサを前記電気めっき装置の前記電解質容器から物理的に分離するために閉じることができる、ドリップシールド。
【請求項16】
請求項14に記載のドリップシールドであって、前記ドリップシールドは、前記めっきセンサの近傍に窓を有し、前記めっきセンサは、前記ドリップシールドの窓を介して検知できる、ドリップシールド。
【請求項17】
請求項14に記載のドリップシールドであって、前記ドリップシールドは、前記めっきセンサの近傍の前記周壁に周上開口部を有し、前記めっきセンサは前記周上開口部を介して検知できる、ドリップシールド。
【請求項18】
電気めっき装置の基板ホルダ上の望ましくない金属析出物の有無を検知する方法であって、
前記基板ホルダを検知位置に配置し、前記基板ホルダはセンサ標的領域を有し、
前記センサ標的領域内の望ましくない金属析出物の有無を検知する光源を有するめっきセンサを操作し、前記めっきセンサおよび前記センサ標的領域は、前記めっきセンサの照準線が前記電気めっき装置全体に及ぶように、前記電気めっき装置の両側に対面して配置されること、
を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、名称を「REMOTE DETECTION OF PLATING ON WAFER HOLDING APPARATUS」とする2017年6月29日に出願された米国特許出願第15/638,131号の利益および優先権を主張し、その全容は参照によりあらゆる目的のために本願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造および処理における近年の進歩により、半導体デバイスに多種多様な材料を析出させる電気めっきの使用が増加している。このような材料として、電気めっき銅、ニッケル、およびスズ‐銀合金が挙げられる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書の特定の実施形態は、電気めっき装置の基板ホルダ上の望ましくない金属析出物の有無を検知する方法、装置、およびドリップシールドに関する。
【0004】
本明細書の実施形態の1つの態様では、電気めっき装置が提供される。電気めっき装置は、電気めっき過程で電解質を保持するように構成されている電解質容器と、電気めっき過程で基板を支持するように構成されている基板ホルダであって、環形状を有し、基板をその周縁で支持し、センサ標的領域を含む、基板ホルダと、センサ標的領域を標的とする光源を備えているめっきセンサであって、(i)望ましくない金属析出物が存在するセンサ標的領域上の領域と、(ii)望ましくない金属析出物が存在しないセンサ標的領域上の領域とを区別する、めっきセンサとを備えている。
【0005】
様々な実施形態では、基板ホルダは、カップおよびリップシールを備え、カップは、底面および内壁を有し、リップシールは、カップの内壁の最上部に配置される。いくつかのこのような事例では、センサ標的領域は、リップシールにある。他の事例では、センサ標的領域は、カップの内壁にある。特定の事例では、センサ標的領域は、カップの内壁とリップシールの両方にある。
【0006】
電気めっき装置はさらに、ドリップシールドを備えていてよい。めっきセンサは、ドリップシールドに配置されてよい。ドリップシールドは、壁および基板ホルダが挿入され、適合する中央開口部を有していてよい。壁は、中央開口部を画定する周壁としてよい。特定の実施形態では、装置は、ドリップシールドを備え、めっきセンサは、ドリップシールドに配置される。これらの事例または他の事例では、ドリップシールドは、壁および基板ホルダが挿入され適合する中央開口部を有していてよい。めっきセンサは、様々な種類のセンサとしてよい。例えば、めっきセンサは、色系のセンサ、強度系のセンサ、またはカメラとしてよい。
【0007】
1つの実施形態では、電気めっき装置はさらに、基板ホルダ全体と適合する位置調整器具を備え、位置調整器具は、第1の部分および第2の部分を有し、第1の部分および第2の部分は、めっきセンサによって測定された特性に関して互いに区別できるものである。いくつかのこのような実施形態では、基板ホルダは、カップおよびリップシールを備え、カップは、底面および内壁を有し、リップシールは、カップの内壁の最上部に配置され、位置調整器具の第1の部分は、めっきセンサがリップシール上の金属析出物の有無を検知するように、リップシールに近接する。別の実施形態では、基板ホルダは、カップおよびリップシールを備え、カップは、底面および内壁を有し、リップシールは、カップの内壁の最上部に配置され、位置調整器具の第1の部分は、めっきセンサがカップの内壁上の金属析出物の有無を検知するように、カップの内壁に近接する。
【0008】
電気めっき装置はさらに、センサ標的領域を乾燥させるドライヤを備えていてよい。いくつかのこのような事例では、電気めっき装置はさらに、めっきセンサを使用して望ましくない金属析出物の有無を検知する前に、センサ標的領域を乾燥させるために実行可能な命令を有するコントローラを備えていてよい。これらの態様または他の態様では、基板ホルダは、めっきセンサに対して回転可能としてよい。多くの実施形態では、電気めっき装置は、センサ標的領域に流体を送給するように構成されている入口を有する。いくつかのこのような事例では、電気めっき装置はさらに、めっきセンサを使用してセンサ標的領域内の望ましくない金属析出物の有無を検知した後、かつ電気めっき装置を使用して新しい基板に電気めっきする前に、センサ標的領域を流体で湿潤させるために実行可能な命令を有するコントローラを備えていてよい。
【0009】
本明細書の実施形態の別の態様では、電気めっき装置に対するドリップシールドが提供される。ドリップシールドは、電気めっき装置における電解質容器と実質的にほぼ同じ直径を有する周壁と、電気めっき装置の基板ホルダが挿入され適合可能な中央開口部であって、周壁によって画定される、中央開口部と、周壁に取り付けられるめっきセンサとを備える。
【0010】
いくつかの実施形態では、ドリップシールドは、めっきセンサの近傍にシャッタを備え、シャッタは、めっきセンサを電気めっき装置の電解質容器から物理的に分離するために閉じることができる。いくつかの事例では、ドリップシールドは、めっきセンサの近傍に窓を有し、めっきセンサは、ドリップシールドの窓を介して検知できる。いくつかの実施態様では、ドリップシールドは、めっきセンサの近傍の周壁に周上開口部を有し、めっきセンサはこの周上開口部を介して検知できる。
【0011】
開示した実施形態の別の態様では、電気めっき装置の基板ホルダ上の望ましくない金属析出物の有無を検知する方法が提供される。本方法は、基板ホルダを検知位置に配置し、基板ホルダはセンサ標的領域を有し、センサ標的領域内の望ましくない金属析出物の有無を検知する光源を有するめっきセンサを操作し、めっきセンサおよびセンサ標的領域は、めっきセンサの照準線が電気めっき装置全体に及ぶように、電気めっき装置の両側に対面して配置されることを備える。
【0012】
これらの特徴および他の特徴を添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】望ましくない金属析出物を有する電気めっき装置の基板ホルダを示す図である。
【0014】
図2A】めっきセンサを設置した電気めっき装置の一部の簡易図である。
【0015】
図2B】基板ホルダの拡大断面図である。
図2C図2Bの基板ホルダの拡大前面図である。
【0016】
図3A】めっきセンサおよび洗浄アームを設置した電気めっき装置の一部を示す図であり、洗浄アームがドライヤを備えている図である。
【0017】
図3B図3Aに示す洗浄アームおよびドライヤの拡大図である。
【0018】
図4A】特定の実施形態によるめっきセンサと組み合わせて使用してよい位置調整器具の正面図である。
図4B】特定の実施形態によるめっきセンサと組み合わせて使用してよい位置調整器具の側面図である。
【0019】
図4C図4Aおよび図4Bに示す位置調整器具の側面図であり、位置調整器具が基板ホルダのカップの上から設置されている図である。
【0020】
図4D】電気めっき装置の一部の上面図であり、めっきセンサが図4A図4Cに示す位置調整器具と同一線上にある様子を示す図である。
【0021】
図5】特定の実施形態に従って基板ホルダ上の望ましくない金属析出物の有無を検知する方法を説明するフローチャートである。
【0022】
図6A】電気めっき装置の一部、特にめっきセンサが設置されているドリップシールドを示す図である。
図6B】電気めっき装置の一部、特にめっきセンサが設置されているドリップシールドを示す図である。
【0023】
図7A】本明細書に記載の方法を確実に用いて基板ホルダ上の望ましくない金属析出物の有無(およびその度合い)を検知できることを証明する実験結果である。
図7B】本明細書に記載の方法を確実に用いて基板ホルダ上の望ましくない金属析出物の有無(およびその度合い)を検知できることを証明する実験結果である。
【0024】
図8】電気めっき装置の簡易図である。
【0025】
図9】マルチステーション電気めっき装置を上から見た図である。
図10】マルチステーション電気めっき装置を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書では、「半導体ウエハ」、「ウエハ」、「基板」、「ウエハ基板」、および「部分的に製造された集積回路」という用語は、置換可能に使用される。当業者は、「部分的に製造された集積回路」という用語は、数々の集積回路製造段階のいずれかでのシリコンウエハを指すことがあることを理解するであろう。半導体デバイス産業で使用されるウエハまたは基板は、通常、直径が200mm、または300mm、または450mmである。さらに、「電解質」、「めっき浴」、「浴」および「めっき溶液」という用語は、入れ替え可能に使用される。以下の詳細な説明は、実施形態がウエハ上で実施されると仮定している。ただし、実施形態は限定されるものではない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、および材料のものとしてよい。半導体ウエハのほかにも、開示した実施形態を利用して差し支えない他のワークピースとして、プリント回路基板、磁気記録媒体、磁気記録センサ、ミラー、光学素子、マイクロメカニカルデバイスなどの様々な物品が挙げられる。
【0027】
以下の説明では、提示する実施形態を徹底して理解してもらうために、多数の具体的な詳細を記載している。開示した実施形態は、これらの具体的な詳細の一部または全体がなくとも実施されてよい。また、開示した実施形態を無駄に不明瞭にしないように、公知の処理操作は詳細には説明していない。開示した実施形態は、具体的な実施形態と併せて説明されているが、これは開示した実施形態を限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。
【0028】
本明細書での考察は、カップおよびリップシールで作製した基板ホルダに焦点を当てているが、他の構成を使用してもよい。全般的に、本明細書で「カップ底部」または「基板ホルダ底部」という用語を使用している場合、これらの用語は、あらゆるウエハホルダの底部を対象とすることを意図しており、ウエハホルダが図面に描いた通りのカップで作製されているかどうかは問わない。ウエハホルダの底面は、全般的に、電気めっき溶液の中を向いているウエハホルダの側である。ウエハホルダの底面は、通常、実質的にめっきされる基板の面と同じ方向に向けられ、多くの場合、ウエハに対して名目上平面である。ウエハホルダのカップは、内壁(内面と称することもある)も有していてよく、内壁は、基板ホルダの底面から上向きに、鉛直方向または直角に延在していてよい。内壁は、直径が基板の直径よりもわずかに小さい環状としてよい。通常、基板ホルダは、(基板ホルダが基板のエッジを支持するように)基板の周部分に沿って配置され、基板から径方向外向きに延在している。本明細書で使用しているように、リップシールという用語は、全般的にウエハホルダの一部分を指し、この部分は、ウエハのエッジと係合し、ウエハのめっき面全体を電気めっき溶液に露光している最中にウエハホルダの内部を電気めっき溶液から保護するシールとなる(ウエハと接続するための電気接触部を含む)。リップシールは、基板ホルダのカップの内壁の最上部に位置していてよい。多種多様なリップシールの設計のいずれを使用してもよい。
【0029】
簡略化し明瞭にするため、本明細書の例のほとんどは、ウエハ面を下向きにした「噴水式(fountain)」めっき装置に関する。このような装置では、めっきするワークピース(通常は半導体ウエハまたはその他の基板)は、一般に実質的に水平な向きで(これは場合によっては、めっきプロセスの一部または全体で実際の水平線から数度の変動があってよい)、めっき中に回転させるように給電されてよく、一般に鉛直上向きの電解質対流パターンを生成する。ウエハの中心からエッジへの衝突流の質量の統合と、回転するウエハのエッジでの中心に対するより高い固有の角速度とが、径方向に増大するせん断(ウエハに平行な)流れパターンを生み出す。電気めっきの前およびその最中にウエハを適所に保持するために、カップおよび円錐材の構成を有するクラムシェル型の電気めっき装置が使用されることがよくある。クラムシェルおよび噴水式のめっきセル/装置の例として、米国カリフォルニア州フリーモント所在のLam Research社が製造販売する電気めっきシステムのSabre(登録商標)グループが挙げられる。このほか、クラムシェル噴水式電気めっきシステムは、例えば2001年8月10日に出願された米国特許第6,800,187号、および2010年2月11日に出願された米国特許第8,308,931号に記載されており、両文献の全容を参照により本願に組み込む。本明細書の説明は、主にウエハおよびホルダの面を下にしてその場の地面の平面に平行な向きに焦点を当てているが、他の向き、例えば地面に対して傾斜しているか垂直である向きなどが排除されるわけではなく、それも構想に含まれることが理解される。
【0030】
さらに、本明細書での考察および例は、全般的に、スズ/銀の堆積を検知することに焦点を当てているが、実施形態は、検知器が焦点を当てる領域にある任意の材料の存在を検知するために実施されてよい。
【0031】
基板ホルダへの望ましくない金属の析出
より多くのフィーチャをウエハのエッジ近くに備えるようにウエハが設計されるにつれて、リップシールおよびカップ底部における不要な金属の析出に伴う問題が深刻になっており、ウエハは特にこのようなめっきに影響を受ける傾向がある。さらに、エッジ近くにフィーチャがあることで、ウエハホルダおよびシールでの不要な析出物の生成が促進される。エッジ近くのフィーチャとリップシールのめっきとの干渉は、エッジ近くのフィーチャの密度が高い場合に遥かに大きくなる。よりエッジ近くのフィーチャへと向かう潮流は、単一のウエハから得られる半導体デバイスの数を最大にしたいという願望からきている。
【0032】
本明細書で提示する例では、電気めっき装置は、めっき過程でウエハを支持するカップを備えている。カップは、ウエハの外周部を支持することによってウエハを適所に保持する。したがってカップは、その中心に大きな開口を有し、開口の直径は、ウエハの直径よりもわずかに小さい。図1は、カップ102を備えているウエハ配置システム101を示している。特定の事例では、カップ102は、粘着特性のない材料、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF、例えばフランスのコロンブ所在のArkema社によるKynar(登録商標))またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE、例えばデラウェア州ウィルミントン所在のDupont社によるTeflon(登録商標))、シリコーン、またはケイ素および酸素のガラス状セラミックの非粘性材料、例えばCuisinartの「Ceramica(商標)」Thermolon(商標)などでコーティングされてよい。
【0033】
1つの例では、カップ102は、底面103および内壁104(内面104とも称する)を有する。内壁104は、鉛直方向に、実質的にはカップ102の底面103に対して垂直に向けられてよい。内壁104は、鉛直ではない角度に向けられてもよい。内壁104は、特定の事例では、高さが約1.0~1.5mmとしてよい。リップシール105が内壁104の最上部に配置され、めっき過程でウエハと係合し、これが周沿いのシールを形成する。リップシール105は、いくつかの実施形態では、高さが約0.75~1.5mmとしてよい。電気めっき中、リップシール105は、リップシール105の径方向外側に位置している電気接触部(図示せず)を保護する。カップの内壁104の底部では、カップ102は、径方向外側に水平に(径方向外側にウエハに平行に)延在している。この水平方向の面は、カップ102の底面103である。
【0034】
カップ自体への望ましくないめっきは、カップ102がリップシール105と接触しているところのカップの内壁104で最初に始まるが、めっきは、この内壁104を下に向かい、カップ102の角に沿い、カップ102の底面103を径方向外側に進行する可能性がある。望ましくない金属析出物を要素106として示している。望ましくない金属析出物106が底面103に達した場合、重大な製造欠陥が起こるおそれがあり、カップ102の底面103にめっきがある間に処理されるウエハは、台無しになることが多いか、あるいは歩留まりが決めて低い。カップ底部のめっきおよび成長に移行する原因の一部は、リップシール104と比較して金属の方がカップ102(特に底面103)に付着しやすいからである。カップ102の底面103および他の部分は、金属がこの面に付着するのを阻止しやすいように、フッ素化ポリマーコーティング材(例えばポリテトラフルオロエチレン、PTFE)などの非粘着性コーティング材でコーティングされてよいが、析出物は依然として時折底面103に形成される可能性がある。多くの場合、一旦めっきが始まって底面103に発現すると、析出率は実質的に増加し、析出はすぐに制御不能になり、底面103全体がめっきされるおそれがある。
【0035】
半導体製造プロセスの終わりに向けてスズ‐銀合金が(例えば、スズと銀のはんだ接点として)析出されることが多いため、スズと銀の析出プロセスで使用されるウエハは、通常きわめて高価で、製造プロセス全体のうちこの点に達する前に多くの処理動作を経たものである。したがって、基板ホルダ上にあるめっきを検知し損なうと(これは歩留まりの低い、または仕様を外れたウエハの製造につながりかねない)、特に費用がかかる可能性がある。
【0036】
特定の理論に限定されるものではないが、少なくとも部分的に、原子のスズと原子の銀とでは還元電位が著しく異なる結果、スズ‐銀合金の不要な析出が起こると考えられている。さらに、リップシールとウエハの境界で最初にスズのめっき(わずかな銀含有量で)によって不要な析出の成長が起こり、その後、リップシールおよびカップの表面での置換反応(Sn+2Ag+→Sn2++2Ag)によって、(酸化状態が+2の)スズの各原子に対して(酸化状態が+1の)2つの銀原子が置換され、不要な膜の容積で対応する成長が起こると考えられている。ここで再び、特定の理論に限定されるものではないが、還元電位が著しく異なり、例えば還元電位の差が約100mV以上である金属から形成された他の金属または合金の析出物は、電気めっきアセンブリのリップシールおよびカップに不要な金属析出物を含む同じまたは同様の問題につながりかねないと考えられている。
【0037】
カップの底面および内面にある金属析出物は、(1)電流および電位の分布に局所的な変動があるために、望ましくない析出物近くの領域では局所的に不均一になるほか、(2)ウエハ全体にわたって析出された膜の平均厚さが減少するという両方の事態につながるおそれがある。したがって、歩留まりの損失は、浮遊金属粒子の生成に関係しているだけでなく、ウエハ自体へのめっきを目的とする電荷の排除または「電流シンク」も原因である。初めの影響は一般に、望ましくないめっきが局所的に発生した辺りのウエハの領域に対する局所的なもので、電流は、基板のエッジ近くのフィーチャからカップの底面および内面に流れ、エッジ近くのフィーチャが所望しているよりも薄くなる。カップにある望ましくないめっきの範囲が広がると、カップ自体にめっきされる電流の総量が、ウエハ全体をめっきするのに必要な電流の総量と比較して大きくなるため、2つ目の影響(ウエハ全体にわたる所望のめっきの平均厚さよりも薄い)が起こる。したがって、ウエハにめっきされたフィーチャの平均厚さは、目標の平均厚さを下回る。
【0038】
開放面積(電気めっきを所望している面積)の大きさが小さい基板は、開放面積の大きさが大きい基板と比較して、基板ホルダ上にある望ましくないめっきの存在により影響されやすい。このような開放面積が小さい/フィーチャ密度が低い基板は、カップにある望ましくないめっき面積と所望する基板めっき面積との比が比較的高いために、いっそう影響されやすい。換言すれば、基板に電流を送給すべき面積が小さいため、望ましくないめっきがカップにある場合にこの電流のかなりの量を誘導し直しやすい。逆に、開放面積が大きく/フィーチャ密度が高い基板であれば、電流の送給が望まれる面積は大きくなる。このように、カップに望ましくないめっきができ始めるのは、ウエハに送給される電流の比較的少ない一部から引き起こされる。いずれの場合でも、少量のめっきをできる限り迅速に瞬時に検知して、目標の均一性または平均厚さでめっきしないウエハ処理を避けることが有益である。
【0039】
上記のいずれのめっきの問題でも、金属析出物は、(めっきを所望する)ウエハの表面から電流を実際に排除し、電流を金属析出物自体に誘導し直すため(そこではその析出箇所にさらに多くのめっきが発生するという望ましくないことが起こる)、有害な作用が起こる。メモリデバイスに比較的少ないI/O数の隆起部が形成されるなど、多くのスズ/銀析出プロセスでは、ウエハの開放面積(例えば電流が誘導されるように意図されていてめっきが発生する面積)の大きさは、きわめて小さくなり得る(例えばウエハの面の約0.5~3%)。したがって、電流はウエハのかなり小さい面積に誘導され、この面積は、カップにある金属析出物の大きさとほぼ同じとしてよい。部分的には、この2つの面積は大きさがほぼ同じであるため、ウエハの開放面積に誘導されるべきである釣り合いのとれた大量の電流が、代わりにカップの析出物に誘導される。そのため、カップの底面または内面に少量でもめっきが形成されると、そのフィーチャの周囲でウエハのめっきに多大な影響を及ぼす可能性がある。そのうえ、析出物が十分に大きければ、ウエハ全体のめっき厚さに影響を及ぼす可能性がある。もちろん、これは、ウエハの多くのダイまたはすべてのダイに欠陥をもたらす可能性がある。300mmのウエハを支持するカップの底面の面積は、通常およそ200cm2である。300mmのウエハの露光面積は、約700cm2である。300mmのウエハが、ウエハ表面の小さい一部、例えば1%を露光するようにマスクされている場合、ウエハのめっき面積は約7cm2である。カップ底部のきわめて小さい一部、例えばカップ底部の約0.5%のみ、または約1×1cmの区画(1cm2)が最終的にめっきされた場合、ウエハの平均めっき率は、相当低くなることがあり、例えば約14%(100*1cm2/7cm2=14%)低くなることがある。
【0040】
望ましくない金属析出物を除去する洗浄プロセス
不要なスズ/銀が堆積すると際立った問題につながりかねないため、スズ/銀の析出物を検知し、その後リップシールおよびカップ底部から除去または洗浄するか、あるいはカップ底部およびリップシールを取り換えることが重要である。望ましくない析出物を除去するために様々な洗浄技術を用いてよい。一部の事例では、洗浄は自動で行われてよい。他の事例では、洗浄は手動で開始され、かつ/または実施されてよい。基板ホルダを洗浄する例示的な技術が、以下の米国特許および米国特許出願でさらに考察され記載されており、それぞれの文献の全容を参照により本願に組み込む。名称を「AUTOMATED CLEANING OF WAFER PLATING ASSEMBLY」とする米国特許第9,221,081号、名称を「CLEANING ELECTROPLATING SUBSTRATE HOLDERS USING REVERSE CURRENT DEPLATING」とする米国特許第9,476,139号、および2013年3月28日に出願された名称を「METHODS AND APPARATUSES FOR CLEANING ELECTROPLATING SUBSTRATE HOLDERS」とする米国特許出願第13/852,767号。
【0041】
一旦カップの底面にめっきが発生すると、析出物を自動洗浄プロセスで除去することはできず、代わりに、カップを科学的にエッチングするための浸漬または手動スワイプなどの別のプロセスで除去しなければならない(例えば塩化水素を含むか含まない濃硝酸の化学溶液混合物を用いて析出物を手動で除去する)。このように、このような析出物が成長してカップの底面に達する前に除去することがきわめて有益である。
【0042】
いくつかの実施形態では、洗浄技術は、カップのリップシール/底面/内壁の方向に洗浄液(例えば脱イオン水または他の洗浄液)のジェットを噴射することを伴う。洗浄液は、基板ホルダおよび洗浄液のジェットが互いに対して回転するとスズ/銀の堆積物を除去する。
【0043】
様々に異なる洗浄剤/洗浄液を使用してよい。いくつかの実施形態では、洗浄剤の選定は、除去すべき望ましくない析出物の組成に左右される。例えば、望ましくないスズ‐銀合金の析出物の除去には、スズおよび銀の金属と塩の両方が酸化可能かつ/または可溶性である酸化酸性溶液をうまく利用してよい。そのため、いくつかの実施形態では、洗浄剤は、酸剤および/または酸化剤を含んでいてよい。スズ‐銀合金の析出物を除去するための適切な洗浄剤または洗浄液の特定の一例が、硝酸溶液である。このような溶液は、例えば硝酸濃度が、約5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、35重量%、または50重量%またはそれよりも高い、またはこれらのおよその濃度のいずれか1つまたはそれ未満である、またはこれらの濃度の任意の組で規定した範囲内としてよい。いくつかの実施形態では、洗浄剤/洗浄溶液には、例えば硝酸と塩酸とを合わせたものなどの複数の酸を用いてよく(すなわち王水を形成するため)、両方の酸は、上記の濃度のいずれか、または上記の濃度範囲内で存在している。ただし、他の酸および酸の組み合わせも、同じく上記の濃度のいずれか、または上記の濃度範囲内で用いてよい。いくつかの実施形態では、洗浄剤は、金属錯化剤としてよく、通常は、除去する析出物を構成している金属を錯化する能力がある錯化剤が選定される。例えば、洗浄剤として選定される錯化剤は、シュウ酸イオンとしてよい。なぜならシュウ酸イオンはスズを錯化するからである。いくつかの実施形態では、様々なメルカプト誘導体化合物などの洗浄剤として銀錯化剤を選定してよい。
【0044】
1つの代替となる洗浄方法は、中に洗浄液を含んでいる洗浄ディスクを回転させることを含み、回転の結果、洗浄液がディスクの周にある孔から放出される。すると洗浄溶液は、基板ホルダと接触して望ましくない析出物を除去する。いくつかの実施形態では、ディスクは、実質的に環状の上面、実質的に環状の下面、上面と下面を接合する実質的に環状のエッジ、およびエッジで開口している複数の孔を有していてよい。ディスクは、ディスクの内部に広がる内部領域も有していてよい。いくつかの実施形態では、孔は、洗浄剤と孔の内面との間の接着力によって洗浄剤が孔の内部に保持されるような寸法である。このような洗浄ディスクを使用する1つの方法は、洗浄剤を洗浄ディスクの複数の孔に入れ、洗浄ディスクを半導体処理装置の中に設置し、ディスクを回転させるか、あるいは洗浄剤を複数の孔から放出させるようにディスクを操作して、装置の要素が放出された洗浄剤と接触するようにすることを伴ってよい。したがって、この洗浄技術および装置は、米国特許第9,221,081号にさらに詳細に記載されており、上述のとおり参照により組み込まれた。
【0045】
別の代替となる自動洗浄技術は、逆電流でめっきを剥離することを伴う。このような洗浄は、通常どおり処理した基板と同様に、電気めっきカップに洗浄(めっき剥離)ディスクを設置することを伴う。洗浄ディスクの前面は、カップの表面にある析出物への電気接続部を形成する耐腐食性の導電性材料を含んでいる。ディスクは、カップ内でシールされ、めっき溶液に浸漬される。次に、逆電流(すなわち、基板に材料をめっきするのに通常使用される電流とは反対の電流)がディスクの前面の導電面に印加されて析出物のめっき剥離を開始する。カップ内でのシーリングの圧縮は、洗浄中に変化してリップシールを様々に変形させ、析出物との新たな電気接続部を形成してよい。この洗浄技術は、米国特許第9,476,139号にさらに詳細に記載されており、上述の通り参照により組み込まれた。
【0046】
自動洗浄を実施する前に、全体的に手動で洗浄を行った。オペレータは、濃硝酸溶液、または金属堆積物を除去するために金属を溶解できる他の試薬に浸漬させた綿棒を使用する。オペレータは、リップシールおよびカップ底部を視覚で検査して金属が完全に除去されていることを確認できた。もちろん、これは時間のかかる非効率なプロセスであり、オペレータにとって危険な可能性もあった。自動洗浄はこれらの問題を解消しており、以前の手動の技術よりも大幅に進歩している。しかしながら、自動洗浄を実施した場合、堆積物を定期的に視覚で検査するオペレータがいないため、カップに望ましくない析出物が形成された後でもウエハの処理を続行するおそれがあり、これらの貴重なウエハの損失につながりかねない。オペレータは定期的にめっき装置を検査しに入ってきてよいが、オペレータは、時間の制約およびその他の様々な要因により堆積物をチェックする可能性が限定されている。そのため、視覚による検査を例えば1日に1回か2回のみ行ってよい。視覚による検査を行うまでに、多くの貴重なウエハは、カップ底部がめっきされた状態ですでに処理されてしまっているおそれがあり、これらの高価なウエハの損失(または低歩留まり)になってしまう。この難点を考慮すると、望ましくない析出物を自動で検知し洗浄することが特に重要である。
【0047】
自動洗浄は、本明細書に記載した理由から有利であるが、洗浄の最適なタイミング/回数を決定するのは困難なことがある。例えば、基板を洗浄している間は基板を処理するのに電気めっきセルを使用することはできないため、洗浄をあまり頻繁に行うと処理高が低下する可能性がある。一方、洗浄を十分頻繁に行わなければ、多くの貴重なウエハが劣悪な条件で処理される可能性があり、このようなウエハの損失または低歩留まりにつながる。そのため、電気めっき装置にある望ましくないめっきの存在を検知することが有益である。このように、ウエハホルダを洗浄するかどうか、そしていつ洗浄するのかという決定は、ウエハホルダの清潔さに直接基づくことができる。同様に、本明細書に記載した検知方法は、洗浄操作が成功したことを確認するために、洗浄操作の後に実施できる。
【0048】
基板ホルダにある望ましくない金属析出物を検知する方法および装置
本明細書の特定の実施形態では、基板ホルダに残留金属析出物があるかどうか、そしてどの程度あるかを検知する方法を提供する。これらの方法は、洗浄操作と同時、または洗浄操作の直前または直後に実施してよいが、めっきが発生していない場合はいつでも実施してよい。特定の事例では、本検知方法は、自動洗浄プロセスを行うたびに(例えば洗浄プロセスを起動させるために洗浄プロセスの前に、かつ/または洗浄プロセスが成功したことを確認するために洗浄プロセスの後に)実施される。他の事例では、本検知方法は、これよりも多いまたは少ない頻度で実施される。例えば、検知は、各ウエハを処理した後、特定数のウエハを処理した後、特定量の電荷(例えばクーロンで測定)が電着プロセス中に移動した後、または電着プロセス中に特定の総量または厚さの膜が析出された後に行ってよい。
【0049】
図2Aは、めっきセンサ201を設置してある電気めっきセル200の上部分を示している。図2Bは、図2Aに示したカップ202の拡大断面図であり、カップは、底面203、内壁204、およびリップシール205を有する。図2Aでは、符号2Bと表記した破線の円は、図2Bに描いた装置の部分を強調している。図2Cは、カップ202の拡大正面図であり、電気接触部210を示している。電気めっき過程では、ウエハはカップ202内で面を下向きにして支持される。カップ202の位置は、カップ202および基板を電気めっきセル200に入っている電解質に対して昇降させるリスト機構によって制御される。電気めっきセル200は、ドリップシールド207を備えており、ドリップシールドは上下が開いている。ウエハがカップ202に搭載された後、リフト機構は、カップ202をドリップシールド207に通して下降させてから、ウエハを電解質に浸漬させる。この例では、めっきセンサ201は、ドリップシールド27の壁に設置されている。めっきセンサ201の照準線は符号218と表記されている。
【0050】
この配置は数々の理由で有利である。例えば、めっきセンサ201は、ドリップシールド207に設置されているため、めっき化学物質から遮蔽される。このような化学物質は、光学センサの光学系に影響を及ぼす可能性があり、質の低い(例えば再現性のない)測定につながる。さらには、このような化学物質に暴露されると、センサの寿命が短くなるおそれがある。そのため、めっきセンサ201をめっき化学物質の近傍から取り除くことによって、これらの化学物質に関連する問題を最小限に抑えられるか回避できる。いくつかの事例では、ドリップシールド207は、めっきセンサ201とめっき化学物質との間で一時的または恒久的な物理的障壁となってよい。一時的な物理的障壁の場合、シャッタを使用してよい。シャッタは、電気めっきを行っている間、およびそれ以外のめっきセンサ不使用時は、閉じたままでよい。恒久的な物理的障壁の場合、ドリップシールド207は、めっきセンサ201が測定する際に通る窓を有していてよい。いくつかの他の事例では、ドリップシールド207は、めっきセンサ201が測定する際に通る切り欠き部を有していてよく、切り欠き部は、めっきセンサ201とめっき化学物質との間でいかなる物理的障壁にもならない。めっきセンサ201とめっき化学物質との間にできる距離は、前述した利点を達成するのに十分なものとしてよいが、物理的障壁/窓を使用するとこれらの利点を強化し得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、めっきセンサがめっき化学物質で汚染される可能性を低減するために特定の追加の工程を入れてよい。いくつかの事例では、汚染がより起こりそうな時間にわたって(例えば検知を行っているとき、または基板ホルダがめっき位置から上昇しているとき)めっきセンサ全体にガスを流してよい。これらの事例または他の事例では、めっきセンサ(またはめっきセンサの一部、例えばレンズ)は、疎水性かつ/または耐酸化性のコーティングを含んでいてよい。これらの工程は、めっきセンサをさらに保護する可能性があり、めっきセンサの耐用年数が延びる。
【0052】
めっきセンサ201をドリップシールド207に設置する別の利点は、このように設置することによって、検知する析出物の近傍に設置されているめっきセンサ(例えば、カップ下のわずかな距離の所からカップの底面にある望ましくない析出物を検知するめっき検知器、またはカップのどこかにある望ましくない析出物をわずかに離れた距離から検知するスイングアームに配置されためっき検知器で、これは2014年2月12日に出願された米国特許出願第14/178,804号に記載されており、上記のとおり参照により組み込まれた)と比較して、めっきセンサ201の焦点深度が比較的深くなることである。図2Aに示したように、めっきセンサ201は、めっきセンサ201の反対側の電気めっきセル全体にわたって位置している析出物を検知する。電気めっきセルの直径は比較的大きいため、めっきセンサ201の焦点深度は比較的大きくなる。焦点深度が深いほど、ウエハ保持装置の偏心率による信号損失を低減することによって測定の質が上がる(例えば再現性が上がる)。いくつかの事例では、めっきセンサ201は、図2Aに示した位置と同じような位置になるように、装置の別の部分に配置されてよい。ドリップシールド自体は、必要ではないが、いくつかの実施形態ではめっきセンサに対して便利な装着点となる。
【0053】
特定の事例では、めっきセンサとめっきセンサが検知する領域(以下にさらに詳細に説明するように、めっきセンサの反対側のリップシールにある)との間の距離は、少なくとも約200mm、または少なくとも約250mm、または少なくとも約300mm、または少なくとも約400mm、または少なくとも約450mmである。この距離は、電気めっきされているウエハの直径とおよそ一致していてよい。基板が水平方向にめっきされる多くの場合、めっきセンサは、センサビームが実質的に鉛直よりも水平になるように(例えば水平線から約30度未満)、電気めっきセルの直径全体にわたって検知する。
【0054】
多くの様々な種類のめっきセンサを使用してよい。めっきセンサの例として、色系のセンサ、強度系のセンサ、視覚系のカメラ/センサ(これは、望ましくない析出物を検知する画像認識/分類方法と組み合わせて使用してよい)、この任意の組み合わせが挙げられるがこれに限定されない。めっきセンサは、デジタル、アナログ、またはこの何らかの組み合わせとしてよい。特定の例では、めっきセンサは、(1)センサ標的領域を照明する光学系、および(2)照明されたセンサ標的領域から信号を収集する光学系を備えている。
【0055】
センサ標的領域を照明する光学系は、通常、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード、ランプなどの光源を備えている。いくつかの事例では、光を光源からセンサ標的領域に誘導するために光ファイバケーブルを使用してよい。照明されたセンサ標的領域から信号を収集する光学系は、通常、光学センサを備えている。光学センサは、例えば光学センサが光起電性センサまたは光電子放出センサである場合、照明されたときに電気を生成してよい。他の事例では、例えば光学センサがフォトレジスタ、光伝導体などである場合、光学センサは、照明されたときに電気特性が変化してよい。光学センサの一般的な例として、光電子装置、フォトダイオード、フォトレジスタ、光伝導体、近接光センサ、光起電性光センサ、光電子放出センサなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0056】
めっきセンサの的となる領域は、センサ標的領域と称してよい。様々な実施形態では、センサ標的領域は、リップシールの領域および/またはカップの内壁(例えば図2Aの内壁204)の領域である。センサ標的領域は、以下でさらに詳細に考察するように、望ましくない金属析出物によってもたらされる信号と対照的な信号をもたらすように設計されてよい。
【0057】
センサ標的領域を照明する光学系およびセンサ標的領域から信号を収集する光学系は、単一の要素にまとめてもよいし、あるいは互いに別々に用意してもよい。図2A図3A図4D図6A、および図6Bに示した例では、照明光学系および収集光学系は、めっきセンサ(要素201、301、401、および601)にまとめて用意される。いくつかの他の事例では、図示しためっきセンサは、収集光学系を備えていてよいが、照明光学系は他の場所(例えばセンサ標的領域への照準線があるどこか)に用意される。上記の理由から、収集光学系(場合によっては照明光学系も)をセンサ標的領域から比較的離れた所に配置することが有利である。
【0058】
1つの実施形態では、めっきセンサは、小さいスポットサイズのコントラストセンサである。このようなセンサは、装置の各領域を照明しているときに受信する信号強度に基づいて、望ましくないめっきがある場合とない場合の装置の領域どうしを区別する。1つの例では、リップシールおよび/またはカップの内壁にあるセンサ標的領域は、照明されたときにコントラストセンサに比較的強い信号をもたらすように、白色(または光の色)としてよい。逆に、望ましくない金属析出物は、暗い傾向があり、照明されたときにコントラストセンサに比較的弱い信号をもたらす。望ましくない金属析出物がある領域と望ましくない析出物がない領域とを区別するために閾値信号を識別できる。
【0059】
センサ標的領域の乾燥
基板に電気めっきした後は、基板ホルダのリップシールおよびカップに湿気がおよそ30分間残っているのが一般的である。この湿気は、測定の質/再現性に影響を及ぼす可能性がある。装置が乾燥するのを待たずに高質の測定を得るために、ドライヤを用意してセンサ標的領域(乾燥が必要な任意の他の領域も)から湿気を迅速に除去できる。ドライヤは、洗浄アセンブリ(例えばリップシール/カップを洗浄する場所へスイングする洗浄アーム)に組み込まれてもよいし、別の機構に備わっていてもよい(洗浄アームと同様のスイングアーム、または別の金具に備わっていてもよい)。様々な実施形態では、ドライヤは、ガス(例えばN2、不活性ガス、空気など)をセンサ標的領域に向けて送給するノズルおよび供給線を備えている。いくつかの事例では、ドライヤは、リップシールおよび/またはカップの内壁に加えてカップの底部を乾燥させてよい。
【0060】
図3Aは、めっきセンサ301がドリップシールド307に設置されている電気めっきセル300の一部を示しており、ドライヤ313が洗浄アセンブリ311に組み込まれている。めっきセンサ301の照準線は、符号318で表記されている。図3Aでは、カップ302は、洗浄位置(例えば電解質に浸漬させずに洗浄アームがカップ302の下に移動できるように、ドリップシールド307の中で、電解質の上に下がった位置)に示されており、これは乾燥位置と同じとしてよい。洗浄アセンブリ311は、スイングアーム312を備え、これは図3Bでより明確に示されている。この例では、洗浄アセンブリ311のスイングアーム312は、洗浄ヘッド314、ガス線315、およびノズル316を備えている。ガス線315およびノズル316は、ドライヤ313を形成する。いくつかの事例では、スイングアーム312に追加の流体線および流体ノズルを備えて洗浄液を送給してよい。同様の例では、洗浄ヘッド314は第1のスイングアームに備わり、ドライヤ313は第2のスイングアーム(図示せず)に備わっている。(1つまたは複数の)スイングアームは、カップに対して動いてよく、それによってスイングアームはカップ全体に沿って洗浄し、かつ/または乾燥させる。1つの実施形態では、カップは回転するが、(1つまたは複数の)スイングアームは静止したままである。別の実施形態では、カップは静止したままだが、(1つまたは複数の)スイングアームはカップ全体の周りにくるように回転する。別の実施形態では、これらの動きの組み合わせを使用する。
【0061】
いくつかの事例では、センサ標的領域を乾燥させることは、後でウエハに対して実施するめっきプロセスに有害な作用となる可能性がある。このような場合、乾燥/検知後にめっきされる最初のウエハは、その後に処理されるウエハと比較して実質的に不均一になるという「最初のウエハ」の影響を受けることがある。後に処理されるウエハは、最初のウエハと比較して異なるめっき条件に置かれる。なぜなら、装置の関連領域が、最初のウエハの処理過程で再度湿潤させた状態になるからである。最初のウエハの影響は、検知操作後に最初のウエハを処理する前に単純にセンサ標的領域(および湿気を必要とする任意の他の領域)を再度湿潤させることによって排除できる。いくつかの事例では、洗浄アセンブリを使用して装置を再度湿潤させてよい。他の事例では、このために別の流体線/流体ノズルを備えてよい。
【0062】
めっきセンサの位置調整
めっきセンサは、検知前にセンサ標的領域に焦点が当たるように位置調整されてよい。めっきセンサは、設置時に最初に位置調整してよく、その後、使用するたびに再び位置調整してよい。最初の位置調整は、めっきセンサをドリップシールドに配置するために行ってよく、その後の位置調整は、センサ標的領域がめっきセンサと同一線上になるように基板ホルダのリフト機構を配置するために行ってよい。
【0063】
特定の例では、めっきセンサは、めっきセンサとドリップシールドとの間の相対運動を可能にする調整式の取り付け金具を用いてドリップシールドに設置されてよい。このような金具の例として、ねじ、ロッド、スナップ、ファスナなどが挙げられる。1つの実施形態では、めっきセンサは、ドリップシールド上でのめっきセンサの相対的な鉛直位置を制御するねじを1つ以上用いてドリップシールドに取り付けられる。ねじをどちらかの方向に回すことによって、めっきセンサは、ドリップシールド上を上下に動く。これらの実施形態または他の実施形態では、めっきセンサは、ドリップシールド上でのめっきセンサの相対的な水平/周上位置を制御するねじを1つ以上用いてドリップシールドに取り付けられてよい。ねじをどちらかの方向に回すことによってめっきセンサは、ドリップシールド周りを左右に動く。任意の調整式の装着金具を使用してよい。めっきセンサは、ドリップシールドの切り欠き部または窓を介して検知するように配置されてよい。めっきセンサをドリップシールドにおおまかに配置した後、代替部品の金具(例えば基板ホルダの位置を制御するリフト機構)を用いてめっきセンサをセンサ標的領域に対して位置調整してよく、これは処理中にこれらの要素を位置調整する必要があるたびに行ってよい。
【0064】
前述したように、いくつかの事例では、センサ標的領域は、リップシール上の領域および/またはカップの内壁上の領域である。特定の実施形態では、センサ標的領域は、リップシールにあり、リップシールの高さとほぼ同じかこれよりも低い高さである。別の実施形態では、センサ標的領域は、カップの内壁にあり、カップの内壁の高さとほぼ同じかこれよりも低い高さである。さらに別の実施形態では、センサ標的領域は、リップシールとカップの内壁の両方にあり、リップシールおよびカップの内壁の高さとほぼ同じか、両者の高さを合わせたものよりも低い高さである。小さいセンサ標的領域を使用すると、収集データ中の背景ノイズが最小に抑えられる。
【0065】
図4A図4Dは、切り欠き部421を有する位置調整器具420を描いている。図4Aは、位置調整器具420の正面図を示し、図4Bは、位置調整器具420の側面図を示し、図4Cは、カップ402に設置された位置調整器具420の側面図を描き、図4Dは、めっきセンサ401の反対側でカップ402に設置された位置調整器具420の上面図を示している。めっきセンサ401の照準線は、符号418で表記されている。位置調整器具420は、図4Cに示したように切り欠き部421がめっきセンサ401からの照準線418と同一線上になるように、カップ402に配置される。切り欠き部421の位置は、センサ標的領域の位置を決定する。例えば、センサ標的領域がカップ402のリップシールにあることを所望する場合、切り欠き部421は、比較的高く配置されてよく、センサ標的領域がカップの内壁402にあることを所望する場合、切り欠き部421は、比較的低く配置されてよい(カップの内壁はカップのリップシールの下にあるため)。
【0066】
1つの例では、位置調整器具は、位置調整器具およびカップが互いに対して動かないように、カップに固定して取り付けられてよい。このような場合、位置調整器具を使用して、各検知プロセスの最初の段階でめっきセンサおよびセンサ標的領域を位置調整してよい。この最初の位置調整の後、基板ホルダアセンブリに対するリフト機構は、カップが回転する間、カップを所望の位置調整する高さに維持する。この回転により、めっきセンサは、リップシール全体および/またはカップの内壁全体にわたって検知できる。カップが回転すると、位置調整器具はカップとともに回転する。別の例では、カップが位置調整器具に対して動くように位置調整器具はカップよりも上に取り付けられてよい。例えば、カップは、位置調整器具の下で回転/摺動してよい。このような場合、位置調整器具は、検知プロセス全体を通してめっきセンサの照準線と同一線上のままとしてよく、その間カップは、リップシール全体および/またはカップの内壁全体をめっきセンサによって評価できるように位置調整器具の下で回転する。様々な実施形態では、位置調整器具は、カップよりも上で取り外し可能に取り付けられてよい。位置調整器具は、必要に応じて取り付けられ、取り外されてよい。例えば、位置調整器具は、装置を使用して1つ以上の基板に電気めっきした後にカップに取り付けられてよい。位置調整器具は、基板ホルダ/センサ標的領域がめっきセンサと同一線上になるまで、または検知が完了するまで取り付けられたままとしてよい。この時点で、位置調整器具を取り外してよい。位置調整器具の設置および取り外しは、追加の基板を処理する際に必要に応じて繰り返すことができる。位置調整器具を取り外し可能に取り付けることによって、位置調整器具が電気めっきプロセスと干渉しないことを確実にできる。
【0067】
位置調整器具は、その前面が位置調整器具のどの部分をめっきセンサと同一線上にするのかに応じて強いコントラスト信号を出すように設計されてよい。このコントラストは、吸収、反射、散乱などに違いがあってよい。位置調整器具/基板ホルダ/センサ標的領域が正確にめっきセンサと同一線上にあるとき、第1の信号が生成され、位置調整器具/基板ホルダ/センサ標的領域がめっきセンサと同一線上にないとき、第1の信号と対照となる第2の信号が生成される。1つの例では、位置調整器具は、位置調整器具を設置するときにめっきセンサとセンサ標的領域との間の照準線に配置される第1の部分(例えば高さがセンサ標的領域と同じまたはそれ未満の部分)と、第1の部分の上および/または下に鉛直方向に配置される(いくつかの事例では、第1の部分を包囲している)第2の部分を含み、第1の部分および第2の部分は、めっきセンサによって測定された特性に関して互いに対照である。例えば、第1の部分は白色としてよく、第2の部分は黒色としてよい(区別できる色/特性を任意の組で使用してよい)。代わりに、位置調整器具の第1の部分は、めっきセンサがセンサ標的領域で直接特性を検知することを可能にする切り欠き部としてよい。位置調整器具の第1の部分が切り欠き部である1つの例では、センサ標的領域(例えばリップシールおよび/またはカップの内壁)は白色で、位置調整器具の前面は黒色である。これ以外の対照的な色/特性の組み合わせも使用してよい。図4A図4Cに関して、第1の部分は、切り欠き部421としてよく、第2の部分は、位置調整器具420の前面の残りの領域としてよい。同様の例では、切り欠き部421は、位置調整器具の前面の残りの領域と対照をなす一領域(例えば白色領域)に代えてよい。一般には、位置調整器具/基板ホルダ/センサ標的領域がめっきセンサと同一線上にあることを示す信号は、位置調整器具の表面からの信号、またはセンサ標的領域の表面からの信号としてよい。
【0068】
センサ標的領域をめっきセンサと同一線上にするために、めっきセンサは、カップが様々な鉛直方向の位置を動くときに一連の測定を行う。いくつかの事例では、これは自動で行われてよい。カップは、基板ホルダアセンブリの鉛直位置を制御するリフト機構を用いて動かされてよい。その際、位置調整の位置は、受信した信号の最高(または最低)強度に基づいて設定される。この位置で、めっきセンサの照準線は、位置調整器具の第1の部分と同一線上になり、これは、めっきセンサが鉛直方向でもセンサ標的領域と同一線上にあることを示している。この例は、めっきセンサはコントラストセンサであるが、他の種類のセンサに対して同様の位置調整方法を用いてよいことを前提としている。同様の実施形態では、カップは、静止したままであってよく、めっきセンサの位置は、その照準線が位置調整器具の第1の部分と同一線上になるように調整されてよい。
【0069】
位置調整器具は、多くの異なる材料で作製されてよい。多くの事例では、位置調整器具は、熱可塑性材料で作製されてよい。例示的な材料として、ポリカーボネート、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニルスルホン(PPSF)、フルオロエラストマー(FKMエラストマー)、およびこれらの材料の混合/合金/接合アセンブリが挙げられるが、これに限定されない。ABS材料には、ABS-M30(標準のABSよりも強い)、ABS-ESD7(静電気散逸性材料であるアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン-静電(static)-散逸性(dissipative))など、多種類のものがある。他の例の熱可塑性材料として、Ultem9085、ポリカーボネートISO、ポリカーボネート-ABS混合物などが挙げられる。多くの実施形態では、位置調整器具は、3次元印刷技術によって製造されてよい。このような技術は、位置調整モデルのコンピュータによる3次元モデルを準備し、印刷材料(例えば上記の熱可塑性材料のいずれか)を高温に加熱し、加熱した印刷材料を吐出させて3次元モデルに準拠する位置調整器具を形成することを伴ってよい。
【0070】
例示的なフローチャート
図5は、基板ホルダにある望ましくない金属析出物の有無を定期的または断続的に検知しながら基板を処理する方法を描いているフローチャートである。本方法は、操作500から始まり、この操作ではめっきセンサが動作することを検証する。この検証は、めっきセンサが2つの区別できる信号を受信するように基板ホルダをめっきセンサに対して動かすことを伴ってよい。このような区別できる信号は、めっきセンサが正しく接続されていて正常に機能していることを保証するものである。センサが1つの信号レベルしか検知できない場合、センサケーブルが正しく接続されていないか、あるいはめっきセンサが正常に機能していないことを示していることがある。
【0071】
図6Aおよび図6Bは、2つの位置にある電気めっき装置の一部を示し、この位置は、図5の操作500の検証過程で使用してよいものである。電気めっき装置は、めっきセンサ601が設置されているドリップシールド607を備えている。めっきセンサ601の照準線は符号618で表記されている。図6Aでは、カップ602およびめっきセンサ601は、第1の相対位置にあり、めっきセンサ601の照準線は、カップ602の下を通っている。図6Bでは、カップ602およびめっきセンサ601は、第2の相対位置にあり、めっきセンサ601の照準線は、カップのセンサ標的領域上(例えばリップシールおよび/またはカップの内壁)に当たっている。めっきセンサ601は、図6Aおよび図6Bに示した2つの位置で区別できる信号を測定する必要がある。めっきセンサがデジタルコントラストセンサである1つの例では、センサの出力は、図6Aの第1の相対位置で「オン」を読み取り、図6Bの第2の相対位置で「オフ」を読み取る(またはこの逆)。
【0072】
装置が図4A図4Dに関して記載した位置調整器具を備えているいくつかの事例では、図5の操作500での検証は、(1)第1の相対位置で、めっきセンサの照準線が位置調整器具の切り欠き部を通り抜けてセンサ標的領域に当たるように、かつ(2)第2の相対位置で、めっきセンサの照準線が、位置調整器具の前面の切り欠き部以外の領域に当たるか、または図6Aに示したようにカップの下を通るかのいずれかになるように、カップ/位置調整器具をめっきセンサに対して動かすことによって行ってよい。このようにして、めっきセンサおよびセンサ標的領域が正しく同一線上になって機能していることを検証できる。めっきセンサが、第1の相対位置で受信した信号と第2の相対位置で受信した信号との差を検知できない場合、それはめっきセンサが正常に機能していないことを示しており、検査、修理または取り換えが必要である。
【0073】
操作500での検証の後、カップを検知位置に配置し、めっきセンサは、操作501をひと通り完全に行ってセンサ標的領域をスキャンすることによって基準線のスキャンを行う。位置調整器具を使用する場合、例えば図4A図4Dに記載したように、カップを検知位置に配置することは、上記の位置調整プロセスを伴ってよい。例えば、カップを、めっきセンサの照準線が位置調整器具の切り欠き部と同一線上にある(したがって、リップシールおよび/またはカップの内壁にあるセンサ標的領域とも同一線上にある)ことを示す、めっきセンサで最大の信号を得る位置に動かしてよい。
【0074】
多くの場合、めっきセンサは、ドリップシールドに取り付けられ、測定中は実質的に静止したままである。このような場合、基板ホルダは、めっきセンサがセンサ標的領域の全長に沿って(例えばリップシールおよび/またはカップの内壁全体に沿って)スキャンできるように回転してよい。いくつかの他の事例では、めっきセンサは、基板ホルダが静止したままでセンサ標的領域全体のスキャンを可能にした状態で動いてよい。基準線のスキャンは、その後のスキャンを比較するのに有用となることがある。操作501は、例えば新しいリップシールまたはカップを設置したときに、断続的に実施してよい。
【0075】
操作503では、新しいウエハを搭載し、処理し、その後、電気めっき装置の電気めっきセルから取り除く。操作505では、望ましくない金属析出物の検知を開始するかどうかを決定する。操作505で検知を所望しない場合、本方法は操作503を繰り返してよく、追加のウエハを搭載し、処理し、その後、取り除く。操作505で検知を所望する場合、本方法は操作507を続行し、カップを乾燥位置に配置し、センサ標的領域を乾燥させる。基板ホルダアセンブリの鉛直位置を制御するリフト機構は、カップの位置を制御するのに使用してよい。図3Aおよび図3Bは、1つの実施形態による乾燥位置にあるカップ302を示している。これらの例では、カップ302は、乾燥位置にあるとき、ドリップシールド307の中または下にある。カップ302は、スイングアーム312が下を通れるように十分高く配置される。スイングアーム312は、センサ標的領域を乾燥させるドライヤ313を備えている。ドライヤ313は、ガス流(例えばN2、不活性ガス、空気など)を標的領域に向けて送給してこの領域を乾燥させてよい。カップ302は、センサ標的領域の長さ/周囲全体を乾燥させられるようにドライヤ313に対して回転する。
【0076】
図5に戻ると、本方法は操作509を続行し、めっきセンサが動作していることを検証する。操作509での検証は、操作500での検証と同様であり、簡略化のためこの説明は繰り返さない。次に、操作511では、カップを検知位置に配置し、その後、めっきセンサに対して回転させながら、めっきセンサを使用してセンサ標的領域にある望ましくない、すなわち、不所望の金属析出物の有無を検知する。操作511でカップを検知位置に配置するのは、操作501でカップを検知位置に配置するのと同様であり、簡略化のためこの説明は繰り返さない。同じように、めっきセンサとカップとの間の相対的な回転は、操作511および500と同様であり、この説明は繰り返さない。操作511での検知は、操作501での基準線のスキャンによる検知と同じだが、望ましくない金属析出物が存在していることがある点を除く。めっきセンサは、望ましくないめっきがある領域と望ましくないめっきがない領域とを、それぞれの領域から受信した信号に基づいて区別する。
【0077】
操作515では、検知を繰り返す必要があるかどうかを判断する。いくつかの事例では、2回目のスキャンを実行して検知結果を確認することが有益なことがある。検知を繰り返すことを所望する場合、本方法は操作511から始めて繰り返す。検知を繰り返すことを所望しない場合、本方法は操作517を続行し、検知結果を分析する。いくつかの事例では、めっきセンサからのデータを分析して、(1)それぞれの望ましくない金属析出物の長さおよび/または最長の望ましくない金属析出物の長さ、および/または(2)望ましくない金属析出物で覆われているセンサ標的領域の割合を明らかにしてよい。これらの値を操作519の仕様と比較してよい。仕様は、許容範囲内の量の望ましくないめっきに対して閾値を設定してよい(例えば特定の長さ未満の析出物は許容範囲内であってよく、かつ/または特定の割合未満でめっきされているセンサ標的領域は許容範囲内であってよい)。これらの閾値は、用途ごとに特有のものであり、いくつかの事例では経験に基づいて決定されてよい。1つの例では、閾値の最大析出物の長さは、約0.5cm、または約1cmである(この長さよりも大きい析出物は仕様外)。これらの例または他の例では、めっきされているセンサ標的領域の閾値の割合は、約10%、または約20%としてよい(これらの値よりも大きい割合は仕様外)。
【0078】
操作519で結果が仕様の範囲内ではない場合、センサ標的領域(例えばリップシールおよび/またはカップの内壁)に析出した望ましくない金属が過剰にあることを意味する。このような場合、本方法は、操作523を続行してよく、何らかの修正作業を行う。様々な可能な修正作業として、(1)アラームを鳴らす、あるいはオペレータに警告する、(2)関連する電気めっきセルをオフラインにし、一時的にウエハがそれ以上そこで処理されないようにする、(3)ウエハを他の使用可能な電気めっきセルに移す、(4)リップシールおよび/またはカップの内壁の一部の標的洗浄を実施する(例えば手動または自動いずれかの洗浄方法を用いて)、(5)リップシールおよび/またはカップの内壁全体の完全洗浄を実施する(例えば手動または自動いずれかの洗浄方法を用いて)、(6)標的洗浄または完全洗浄が成功したことを確認するためにセンサ標的領域を再スキャンする、(7)必要であればリップシールおよび/またはカップを取り換える、ならびに(8)望ましくない金属析出物を検知する直前に処理された疑わしいウエハに目印を付け、かつ/または検査することが挙げられるが、これに限定されない。
【0079】
操作519で結果が仕様範囲内である場合、その検知結果は、センサ標的領域(例えばリップシールおよび/またはカップの内壁)がまだ十分にきれいであることを示している。このような場合、本方法は操作521を続行してよく、センサ標的領域(および装置の任意の他の関連部分)を再度湿潤させる。この再度湿潤させるのは、流体(例えば水、脱イオン水、電解質など)をリップシールおよび/またはカップの内壁に向けて送給することで達成してよい。この再度湿潤させることにより、めっきによって湿潤している部分を含む装置へのめっきから生じる最初のウエハの影響を低減または回避する。装置の関連部分を再度湿潤させた後、本方法は操作503を続行し、新しいウエハを搭載し、処理し、その後、電気めっき装置から取り除く。本方法は、任意数の基板を処理するために何回繰り返してもよい。
【0080】
図5に示した操作の数は、いくつかの実施形態では省略してよい。1つの例では、検知方法は、単に操作511、517、および519を伴うものである。残りの操作は、どのような組み合わせで含まれても省略されてもよい。このような操作は、本方法を改善し、さらに信頼性の高い結果につなげ、電気めっき条件が改善される可能性があるが、開示した実施形態を実施するのに必要ではない。
【0081】
図7Aおよび図7Bは、基板ホルダのカップにある望ましくない金属析出物を検知するためにめっきセンサを使用した場合の実験結果を示している。この例では、めっきセンサは、デジタルコントラストセンサであった。図7Aに関して、グラフは、基板ホルダ上の様々な角度でめっきセンサが受信した信号を描いている。この例では、5Vの信号は、望ましくない金属析出物があることを示し、0Vの信号は、望ましくない金属析出物がないことを示している。図7Bは、10回スキャンした特定の電気めっき装置に対する測定結果(望ましくない金属析出物でめっきされているセンサ標的領域の割合)を示す表である。異なるスキャンどうしの間で電気めっき装置に変更は加えなかった。測定の信頼性があるかどうかを判断するためにスキャンを繰り返した。図7Bに示したように、結果は信頼性があるもので、標準偏差が0.15%のみであったことを示している。これらの結果は、センサ標的領域に望ましくない金属析出物がある/ない度合いを確実に検知するために、開示した方法を用いてよいことを証明している。
【0082】
図7Aに示したデータのようなめっきセンサからのデータは、めっきセンサデータをセンサ標的領域の指定部分と相関させる回転軸エンコーダからの情報と組み合わせることができる。回転軸エンコーダは、(例えば基板/カップに沿った)角度位置をアナログまたはデジタルコードに変換して、ユーザが基板/基板ホルダの特定領域を確実に指定できるようにする。めっきセンサデータを回転軸エンコーダからの情報と組み合わせることによって、ユーザは、正確にカップのどこに問題があるのかを判断できる。いくつかの事例では、この場所固有のデータを使用して影響を受けた領域の標的洗浄を引き起こしてよい。
【0083】
さらに、場所固有のデータは、ウエハの性能と相関していてよい。1つの例では、場所固有のデータは、ウエハの均一性データと相関している。このような相関を使用して、有用な傾向を特定できる。いくつかの事例では、リップシールの有効寿命を予測し、かつ/またはリップシールをメンテナンスする(例えば洗浄する、手動で洗浄する、取り換えるなど)必要がある時期を予測するために、第一原理モデル、機械学習アルゴリズムなどを用いる。これらのモデルは、以下で説明するようなマルチステーション電気めっき装置の各電気めっきセルに適用してよい。
【0084】
装置
本明細書に記載の方法は、任意の適切な装置で実施されてよい。適切な装置として、処理操作を達成するための機械設備、およびこの実施形態による処理操作を制御する命令を含むシステムコントローラが挙げられる。例えば、いくつかの実施形態では、機械設備は、処理機械に含まれる1つ以上の処理ステーションを含んでいてよい。
【0085】
図8は、電気めっきが発生することがある電気めっきセルの一例を紹介している。図8は、上記のめっきセンサを示していないが、そのようなめっきセンサを例えばめっき浴803に適合する/めっき浴の上に適合するドリップシールドに備えるように、図8に示した装置を修正できることが理解される。多くの場合、電気めっき装置は、基板(例えばウエハ)を中で処理する電気めっきセルを1つ以上備えている。明瞭性を維持するため、図8には1つの電気めっきセルしか示していない。ボトムアップ式の電気めっきを最適化するために、電解質に添加剤(例えば促進剤、抑制剤、およびレベラ)を加えるが、添加剤を含む電解質は、望ましくない形でアノードと反応するおそれがある。したがって、めっきセルのアノード領域およびカソード領域は、異なる組成のめっき溶液を領域ごとに使用してよいように、膜によって分離されることがある。カソード領域内のめっき溶液は、カソード液と呼ばれ、アノード領域内のめっき溶液は、アノード液と呼ばれる。アノード液およびカソード液をめっき装置に導入するために、数々の工学的設計が使用可能である。
【0086】
図8を参照すると、1つの実施形態による電気めっき装置801を図式化した断面図が示されている。めっき浴803は、(本明細書で提示する組成を有する)めっき溶液を収容しており、これをレベル805で示している。この容器のカソード液部分は、基板をカソード液に受け入れるように適応している。ウエハ807をめっき溶液に浸漬し、例えば回転スピンドル811に取り付けた「クラムシェル」基板ホルダ809で保持し、回転スピンドルによってクラムシェル基板ホルダ809をウエハ807と一緒に回転させる。本発明で使用するのに適した態様を有するクラムシェル型のめっき装置の概要が、Pattonらに発行された米国特許第6,156,167号、およびReidらに発行された米国特許第6,800,187号に詳細に説明され、両文献の全容を参照により本願に組み込まれる。
【0087】
アノード813をめっき浴803内でウエハの下に配置し、膜815、好ましくはイオン選択膜によってウエハ領域から隔離する。例えば、Nafion(商標)カチオン交換膜(CEM)を使用してよい。アノード膜の下の領域は、「アノードチャンバ」と呼ばれることが多い。イオン選択アノード膜815は、めっきセルのアノード領域とカソード領域との間でイオンの連絡を可能にすると同時に、アノードで生成した粒子がウエハの近傍に進入したウエハを汚染するのを防止する。アノード膜は、めっきプロセスの過程で電流の流れを再分配し、それによってめっきの均一性を向上させるのにも有用である。適切なアノード膜の詳細な説明が、Reidらに発行された米国特許第6,126,798号および同第6,569,299号に記載され、両文献の全容を参照により本願に組み込む。これらの用途には、カチオン交換膜などのイオン交換膜がとりわけ適している。これらの膜は通常、スルホン酸基を含有する過フッ素化共重合体(例えばNafion(商標))などのアイオノマ材料、スルホン化ポリイミド、およびカチオン交換に適しているものとして当業者に公知のその他の材料で作製される。適切なNafion(商標)膜を選択した例として、Dupont de Nemours Coから入手可能なN324膜およびN424膜が挙げられる。
【0088】
めっき過程では、めっき溶液からのイオンは基板に析出される。金属イオンは、拡散障壁層を通ってTSVホールまたは他のフィーチャの中に拡散しなければならない。拡散を補助する典型的な方法が、ポンプ817によって提供される電気めっき溶液の対流を介した方法である。代わりに、ウエハの回転とともに、振動撹拌部材または音波撹拌部材を使用してよい。例えば、振動変換器808をクラムシェル基板ホルダ809に装着してよい。
【0089】
めっき溶液は、ポンプ817によってめっき浴803に連続的に提供される。一般に、めっき溶液は、アノード膜815および拡散板819を通って上向きにウエハ807の中心まで流れ、その後、ウエハ807を径方向外向きに横切っていく。めっき溶液は、めっき浴803の側面から浴のアノード領域の中に供給されてもよい。次にめっき溶液は、めっき浴803からオーバーフロー槽821へ溢れ出る。次にめっき溶液は、濾過されて(図示せず)ポンプ817に戻り、めっき溶液の再循環を完了する。めっきセルの特定の構成では、アノードが収容されているめっきセル部分に別の電解質を循環させた状態で、あまり透過させない膜またはイオン選択膜を使用して主要めっき溶液との混合を防ぐ。
【0090】
基準電極831が、めっき浴803の外側の別のチャンバ833内に位置していて、このチャンバは、主要めっき浴803から溢れる流れによって満たされる。代わりに、いくつかの実施形態では、基準電極は、できる限りに基板表面の近くに配置され、基準電極チャンバは、毛細管を介して、または別の方法で、ウエハ基板の側面に接続されるかウエハ基板の下に直接接続される。いくつかの好適な実施形態では、装置はさらに、ウエハの周縁に接続する接触感知リードを含み、このリードは、ウエハの周縁で金属シード層の電位を検知するがウエハには電流を一切流さないように構成される。
【0091】
基準電極831は通常、制御された電位での電気めっきを所望するときに用いられる。基準電極831は、水銀/硫酸水銀、塩化銀、飽和カロメル、または銅金属など、広く使用されている多様な種類のうちの1つとしてよい。いくつかの実施形態では、より正確に電位を測定するために、基準電極に加えて、ウエハ807と直接接触する接触感知リードを使用してよい(図示せず)。
【0092】
ウエハ807への電流の流れを制御するために、DC電源835を使用できる。電源835は、1つ以上のスリップリング、ブラシおよび接触点(図示せず)を介してウエハ807に電気的に接続された負の出力リード839を有する。電源835の正の出力リード841は、めっき浴803内に位置しているアノード813に電気的に接続される。電源835、基準電極831、および接触感知リード(図示せず)をシステムコントローラ847に接続でき、システムコントローラは、その他の機能のうち、電気めっきセルの要素にもたらされる電流および電位の調整を可能にする。例えば、コントローラは、電位を制御したレジームおよび電流を制御したレジームで電気めっきできるようにしてよい。コントローラは、めっきセルの様々な要素に印加する必要がある電流および電圧のレベル、ならびにこれらのレベルを変更する必要がある時点を指定するプログラム命令を含んでいてよい。順方向電流を印加するとき、電源835は、アノード813に対して負の電位を有するようにウエハ807にバイアスをかける。これによって電流がアノード813からウエハ807に流れ、ウエハの表面(カソード)で電気化学的還元(例えば、Cu2++2e=Cu0)が起こり、その結果、ウエハの表面に電気伝導層(例えば銅)が析出される。不活性アノード814をめっき浴803内のウエハ807の下に設置し、膜815でウエハ領域から分離してよい。
【0093】
装置は、めっき溶液の温度を指定レベルに維持するためのヒータ845をさらに備えていてよい。めっき溶液は、熱をめっき浴の他の要素に伝達するために使用されてよい。例えば、ウエハ807をめっき浴の中に搭載するとき、ヒータ845およびポンプ817をオンにして、装置全体の温度が実質的に均一になるまでめっき溶液を電気めっき装置801全体に循環させてよい。1つの実施形態では、ヒータは、システムコントローラ847に接続される。システムコントローラ847は、電気めっき装置内のめっき溶液温度のフィードバックを受け取って、さらに過熱する必要があるかを判断するために熱電対に接続されてよい。
【0094】
コントローラは通常、1つ以上の記憶装置および1つ以上のプロセッサを備えている。プロセッサは、CPUまたはコンピュータ、アナログおよび/またはデジタル入力/出力接続部、ステッパモータの制御盤などを備えていてよい。いくつかの実施形態では、コントローラは、電気めっき装置の全活動を制御する。本実施形態に従って処理操作を制御する命令を含む非一時的な機械可読媒体をシステムコントローラに結合してよい。
【0095】
通常は、コントローラ847に関連付けられたユーザインターフェースがある。ユーザインターフェースとして、表示画面、装置および/または処理条件のグラフィックソフトウェアディスプレイ、ならびにポインティングディバイス、キーボード、タッチ画面、マイクロフォンなどのユーザ入力デバイスを挙げてよい。電気めっき処理を制御するためのコンピュータプログラムコードは、任意の従来のコンピュータ可読プログラム言語、例えば、アセンブリ言語、C、C++、Pascal、Fortranなどで記述できる。プログラムのなかで特定されたタスクを実施するために、コンパイル済みのオブジェクトコードまたはスクリプトがプロセッサによって実行される。本明細書の実施形態に従って使用してよいめっき装置の1つの例が、Lam Research社のSabreの機械である。より大きい電着装置を形成する構成要素で電着を実施できる。
【0096】
図9は、例示的な電着装置の概略上面図である。電着装置900は、3つの別々の電気めっきモジュール902、904、および906を備えることができる。電着装置900は、様々な処理操作用に構成されている3つの別々のモジュール912、914、および916も備えることができる。例えば、いくつかの実施形態では、モジュール912、914、および916の1つ以上は、スピンリンスドライ(SRD)モジュールとしてよい。他の実施形態では、モジュール912、914、および916の1つ以上は、電気充填後モジュール(PEM)としてよく、各モジュールは、基板が電気めっきモジュール902、904、および906のうちの1つによって処理された後に、基板のエッジベベル除去、裏面エッチング、および酸洗浄などの機能を実施するように構成される。
【0097】
電着装置900は、中央電着チャンバ924を備えている。中央電着チャンバ924は、電気めっきモジュール902、904、および906で電気めっき溶液として使用された化学溶液を保持するチャンバである。電着装置900は、電気めっき溶液への添加剤を格納し送給してよいドージングシステム926も備えている。化学物質希釈モジュール922は、エッチング剤として使用する化学物質を格納し混合してよい。濾過兼ポンプ輸送ユニット928は、中央電着チャンバ924の電気めっき溶液を濾過し、その溶液を電気めっきモジュールにポンプ輸送してよい。
【0098】
システムコントローラ930は、電着装置900を操作するのに必要な電子機器およびインターフェースの制御を提供する。システムコントローラ930(1つ以上の物理的または論理的コントローラを含んでいてよい)は、電気めっき装置900の特性の一部またはすべてを制御する。
【0099】
プロセスを監視するための信号は、システムコントローラ930のアナログ入力接続および/またはデジタル入力接続によって様々な処理ツールセンサから提供されてよい。処理を制御するための信号は、処理ツールのアナログおよびデジタル出力接続に出力されてよい。監視されてよい処理ツールセンサの非限定的な例として、質量流コントローラ、圧力センサ(圧力計など)、熱電対、光学位置センサなどが挙げられる。処理条件を維持するために、適切にプログラムされたフィードバックおよび制御アルゴリズムがこれらのセンサからのデータとともに使用されてよい。
【0100】
ハンドオフツール940が、カセット942またはカセット944などの基板カセットから基板を選択してよい。カセット942または944は、フープ(FOUP:Front Opening Unified Pod)としてよい。FOUPは、制御された環境で基板を確実かつ安全に保持し、適切な搭載ポートおよびロボット取扱いシステムを装備したツールで処理または測定するために基板を取り出せるように設計された筐体である。ハンドオフツール940は、真空装着または何らかの他の装着機構を使用して基板を保持してよい。
【0101】
ハンドオフツール940は、ウエハ取扱いステーション932、カセット942もしくは944、移送ステーション950、またはアライナー948とインターフェースしてよい。移送ステーション950から、ハンドオフツール946が基板へアクセスできてよい。移送ステーション950は、ハンドオフツール940および946がアライナー948を通過せずに基板の受け渡しをしてよいスロットまたは位置としてよい。ただし、いくつかの実施形態では、電気めっきモジュールに正確に送るためにハンドオフツール946上で基板を正しく位置調整することを確実にするために、ハンドオフツール946は、基板をアライナー948と同一線上にしてよい。ハンドオフツール946は、電気めっきモジュール902、904、または906のうちの1つまたは様々な処理操作用に構成されている3つの別々のモジュール912、914、および916のうちの1つに基板を送ってもよい。
【0102】
上記の本方法に従った処理操作の一例を以下のように進めてよい。(1)電気めっきモジュール904にある基板上で銅または別の材料を電着する。(2)モジュール912のSRDで基板をすすいで乾燥させる。そして(3)モジュール914でエッジベベル除去を実施する。
【0103】
めっき、すすぎ、乾燥、PEM処理操作を連続して行って基板の効果的なサイクルを可能にするように構成されている装置は、製造環境で使用するための実装に有用となり得る。これを達成するために、モジュール912をスピンリンスドライヤおよびエッジベベル除去チャンバとして構成できる。このようなモジュール912であれば、基板は、銅めっき操作およびEBR操作のために電気めっきモジュール904とモジュール912との間で搬送させる必要があるだけである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の本方法は、電気めっき装置およびステッパを含むシステムで実装される。
【0104】
電着装置1000の代替実施形態を図10に概略的に示している。この実施形態では、電着装置1000は、電気めっきセル1007を1セット有し、それぞれの電気めっきセルが電気めっき浴を収容し、ペア構成または複数の「対」構成になっている。電気めっき自体に加えて、電着装置1000は、多様な他の電気めっき関連の処理およびサブ工程、例えばスピンとすすぎ、スピンと乾燥、金属およびシリコンの湿式エッチング、無電解析出、事前湿潤および事前化学処理、還元、アニール、フォトレジスト剥離、および表面の事前活性化などを実施してよい。電着装置1000は、図10では概略的に上から見下ろした様子が示され、この図では単一のレベルまたは「階」のみが見えているが、このような装置、例えばNovellus Sabre(商標)3Dツールは、互いに「積み重なった」2レベル以上を有することができ、それぞれが同じまたは異なる種類の処理ステーションを有している可能性があることは当業者には容易に理解されるはずである。
【0105】
ここで再度図10を参照すると、電気めっきされる基板1006は、一般に、フロントエンドで搭載するFOUP1001を通して電着装置1000に送られ、この例では、スピンドル1003によって多次元的に駆動される基板1006を、アクセス可能なステーション(2つのフロントエンドアクセス可能なステーション1004)のうちの1つのステーションからもう一方のステーションへ移動させることができる伸縮可能なフロントエンドロボット1002を介して、FOUPから電着装置1000の主な基板処理領域に持ってこられる。また、この例では、2つのフロントエンドアクセス可能なステーション1008が示されている。フロントエンドアクセス可能なステーション1004および1008は、例えば、事前処理ステーション、およびスピンリンスドライ(SRD)ステーションを含んでいてよい。フロントエンドロボット1002の側方から側方への横の動きは、ロボットの軌道1002aを利用して達成される。各々の基板1006は、モータ(図示せず)に接続したスピンドル1003によって駆動されるカップ/円錐アセンブリ(図示せず)によって保持されてよく、モータは、取り付けブラケット1009に装着されてよい。また、この例で示されているのは、4「対」の電気めっきセル1007、すなわち合計8つの電気めっきセル1007である。電着装置1000の特性の一部またはすべてを制御するためにシステムコントローラ(図示せず)を電着装置1000に結合してよい。システムコントローラは、本明細書で前述した処理に従って命令を実行するようにプログラムされるか、あるいはそのように構成されてよい。
【0106】
システムコントローラ
いくつかの実施態様では、コントローラはシステムの一部であり、システムは、上記の実施例の一部としてよい。このようなシステムは、1つまたは複数の処理ツール、1つまたは複数のチャンバ、処理用の1つまたは複数のプラットフォーム、および/または特定の処理構成要素(ウエハペデスタル、ガス流システムなど)を含む半導体処理装置を備えることができる。これらのシステムは、半導体ウエハまたは基板を処理する前、その間、およびその後にシステムの動作を制御する電子機器と一体化していてよい。電子機器は、「コントローラ」と呼ばれてよく、1つまたは複数のシステムの様々な構成要素またはサブパーツを制御してよい。コントローラは、システムの処理要件および/または種類に応じて、処理ガスの供給、温度設定(例えば加熱および/または冷却)、圧力設定、真空設定、電力設定、高周波(RF)発生ツールの設定、RF整合回路の設定、周波数設定、流量設定、流体供給の設定、電位および動作の設定、ツールおよびその他の移送ツールの中へまたはそこからのウエハ移送および/または特定のシステムに接続されているか、特定のシステムのインターフェースとなっているロードロックなど、本明細書に開示したいずれかの処理を制御するようにプログラムされてよい。特定の例では、システムコントローラは、基板ホルダの位置を制御する。システムコントローラは、基板ホルダを必要に応じてめっき位置、洗浄位置、乾燥位置、および/または検知位置に配置するようリフト機構に命令してよい。また、システムコントローラは、本明細書に記載した方法を実施するのに必要な測定を行うようめっきセンサに命令してもよい。また、システムコントローラは、めっきセンサで測定を行う前にセンサ標的領域を乾燥させ、かつ/またはめっきセンサで測定を行った後かつ新しいウエハを処理する前にセンサ標的領域を再度湿潤するよう装置に命令してもよい。
【0107】
概して、コントローラは、命令を受け、命令を発し、動作を制御し、洗浄動作を可能にし、エンドポイント測定を可能にするなどを行う、様々な集積回路、論理回路、メモリ、および/またはソフトウェアを有する電子機器であると定義されてよい。集積回路は、プログラム命令を格納するファームウェア形態のチップ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)と定義されるチップ、および/または1つ以上のマイクロプロセッサ、またはプログラム命令(例えばソフトウェア)を実行するマイクロコントローラを備えていてよい。プログラム命令は、半導体ウエハ上で、もしくは半導体ウエハ用に、またはシステムに対して、特定の処理を実行する動作パラメータを定義する様々な個別の設定(またはプログラムファイル)の形態でコントローラへと伝達される命令としてよい。動作パラメータは、いくつかの実施形態では、1つ以上の層、材料、金属、酸化物、シリコン、二酸化シリコン、表面、回路、および/またはウエハのダイを製造する過程で1つ以上の処理工程を達成するために処理エンジニアによって定義されたレシピの一部としてよい。
【0108】
コントローラは、いくつかの実施態様では、システムと一体化し、システムと接続している、あるいはシステムとネットワーク接続されている、またはこれらを組み合わせた状態であるコンピュータの一部であってもよいし、このコンピュータに接続していてもよい。例えば、コントローラは、「クラウド」にあってもよいし、あるいはウエハ処理の遠隔アクセスを可能にできるファブホストコンピュータシステムの全体または一部であってもよい。コンピュータは、製造動作の現在の進捗を監視し、過去の製造動作の履歴を調査し、複数の製造動作から傾向または性能メトリックを調査し、現在の処理のパラメータを変更し、処理ステップを設定して現在の処理に従い、または新しい処理を始めるために、システムへの遠隔アクセスを可能にしてよい。いくつかの例では、リモートコンピュータ(例えばサーバ)は、ネットワークを介してシステムに処理レシピを提供でき、このネットワークは、ローカルネットワークまたはインターネットを含んでいてよい。リモートコンピュータは、パラメータおよび/または設定の入力またはプログラミングを可能にするユーザインターフェースを含んでいてよく、それらのパラメータおよび設定はその後、リモートコンピュータからシステムへ伝達される。いくつかの例では、コントローラは、1つ以上の動作中に実行される各々の処理工程に対するパラメータを指定するデータ形態の命令を受け取る。パラメータは、実行される処理の種類、およびコントローラがインターフェースするか制御するように構成されるツールの種類に対して固有のものとしてよいと理解すべきである。そのため、前述したように、一緒にネットワーク化され、本明細書に記載した処理および制御などの共通の目的に向かって機能する1つ以上の別個のコントローラを備えることなどによってコントローラを分散してよい。このようにするために分散したコントローラの例が、(例えばプラットホームレベルで、またはリモートコンピュータの一部として)遠隔地に位置する1つ以上の集積回路と通信するチャンバ上にあって、組み合わさってこのチャンバ上の処理を制御する1つ以上の集積回路であろう。
【0109】
非限定的に、例としてのシステムには、プラズマエッチングチャンバまたはモジュール、析出チャンバまたはモジュール、スピンリンスチャンバまたはモジュール、金属めっきチャンバまたはモジュール、洗浄チャンバまたはモジュール、ベベルエッジエッチングチャンバまたはモジュール、物理蒸着(PVD)チャンバまたはモジュール、化学蒸着(CVD)チャンバまたはモジュール、原子層析出(ALD)チャンバまたはモジュール、原子層エッチング(ALE)チャンバまたはモジュール、イオン注入チャンバまたはモジュール、トラックチャンバまたはモジュール、ならびに、半導体ウエハの製造および/または生産に関連するか使用されてよい任意のその他の半導体処理システムがあってよい。
【0110】
上記のように、ツールによって実行される1つまたは複数の処理工程に応じて、コントローラは、他のツール回路もしくはモジュール、他のツール構成要素、クラスタツール、他のツールインタフェース、隣接するツール、近隣のツール、工場全体に位置するツール、主コンピュータ、別のコントローラ、または、ウエハの容器を、半導体製造工場内のツール位置および/または搭載ポートへ運び、そこから運び出す材料輸送に使用されるツールのうちの1つ以上のツールと通信することがあってよい。
【0111】
上記の様々なハードウェアおよび方法の実施形態は、例えば、半導体デバイス、ディスプレイ、LED、光発電パネルなどを製造または生産するために、リソグラフィパターン形成のツールまたはプロセスと併せて使用されてよい。必須ではないが、通常このようなツール/プロセスは、一般的な製造施設で一緒に使用または実行される。
【0112】
膜のリソグラフィパターニングは通常、以下の工程の一部またはすべてを含み、各工程は、多くの可能なツールを用いて実現される。(1)スピンオンツールまたはスプレーオンツールを使用してフォトレジストをワークピース、例えば上に窒化ケイ素膜が形成されている基板に塗布する工程。(2)ホットプレートまたは加熱炉または他の適切な硬化ツールを使用してフォトレジストを硬化させる工程。(3)ウエハステッパなどのツールを用いてフォトレジストを可視光線または紫外線またはX線に暴露する工程。(4)レジストを選択的に除去することでウェットベンチまたはスプレー現像機などのツールを使用してパターニングするようにレジストを現像する工程。(5)ドライエッチングツールまたはプラズマ支援エッチングツールを使用してレジストパターンを下地膜またはワークピースに転写する工程。そして(6)RFプラズマレジスト剥離剤またはマイクロ波プラズマレジスト剥離剤などのツールを使用してレジストを除去する工程。いくつかの実施形態では、アッシング可能なハードマスク層(アモルファス炭素層など)および別の適切なハードマスク(反射防止層など)が、フォトレジストを塗布する前に析出されてよい。
【0113】
本明細書に記載した構成および/または手法は、例示的な性質のものであり、多くの変形例が可能であるため、これらの具体的な実施形態または例を限定する意味に捉えてはならないことを理解されたい。本明細書に記載した具体的なルーチンまたは方法は、任意の数の処理工法の1つ以上を代表するものとしてよい。よって、説明した様々な行為を、説明した順序で実施しても、他の順序で実施しても、並行して実施してもよいし、あるいはいくつかの事例では省略してもよい。同じように、上記のプロセスの順序は変更されてよい。本明細書には特定の参照文献を参照により組み込んでいる。そのような参考文献でなされたいかなる免責事項または否認も、本明細書に記載の実施形態に必ずしも適用されるわけではないことが理解される。同様に、そのような参考文献で必要に応じて説明されている特徴は、本明細書の実施形態では省略されてよい。
【0114】
本開示の主題は、本明細書に開示した様々なプロセス、システムおよび構成、および他の特徴、機能、行為、および/または特性のあらゆる新規かつ非自明なコンビネーションおよびサブコンビネーション、ならびにそのありとあらゆる均等物を包含する。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10