(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】異なる焼結点を有する、異なる材料のノードおよび繊維を有する焼結多孔質材料、ならびに調製および使用の関連する方法
(51)【国際特許分類】
C22C 47/14 20060101AFI20220926BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220926BHJP
C22C 1/08 20060101ALI20220926BHJP
C22C 33/02 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C22C47/14
B22F1/00 M
B22F1/00 T
C22C1/08 F
C22C33/02 102
(21)【出願番号】P 2020525852
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 US2018059025
(87)【国際公開番号】W WO2019094300
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-07-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-25
(32)【優先日】2017-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ゼラー, ロバート エス.
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】井上 猛
【審判官】市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-84351(JP,A)
【文献】特表2014-510836(JP,A)
【文献】特開昭58-84905(JP,A)
【文献】特開2016-194116(JP,A)
【文献】鈴木 寿、粉体の焼結、粉体および粉末冶金、1966年10月25日、第13巻5号、p.209-220
【文献】松山 芳治、三谷 裕康、鈴木 寿、総説 粉末冶金学、1972年4月20日、p.112-115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 47/00-49/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続金属ノードにおいて接続された細長い金属繊維を含む金属マトリックスを含む多孔質焼結金属体であって、マトリックスが、
第1の焼結点を有する第1の金属材料を含む、接続金属ノード;
第1の焼結点より大きい第2の焼結点を有する、第2の金属材料の細長い金属繊維を含み;
接続金属ノードは、細長い金属繊維に融合して、接続金属ノードによって接続されかつ接続金属ノード間に延びる細長い金属繊維を含む、相互に接続された金属マトリックスを形成し、
0.25~0.60平方メートル/グラムの表面積(BET)を有し、
第2の焼結点が、第1の焼結点より少なくとも200℃高く、
第1の焼結点が
、大気圧で530~630℃の範囲である、
多孔質焼結金属体。
【請求項2】
30~70重量パーセントの第1の金属材料、および
70~30重量パーセントの第2の金属材料
を含む、請求項1に記載の多孔質焼結金属体。
【請求項3】
第1の焼結点と第2の焼結点の間の差が、250~350℃の範囲である、請求項1に記載の多孔質焼結金属体。
【請求項4】
第1の金属材料がニッケルまたはニッケル合金である、請求項1に記載の多孔質焼結金属体。
【請求項5】
第2の金属材料がステンレス鋼である、請求項1に記載の多孔質焼結金属体。
【請求項6】
70~90パーセントの範囲の気孔率を有する、請求項1に記載の多孔質焼結金属体。
【請求項7】
0.30~0.50平方メートル/グラムの表面積(BET)を有する、請求項1に記載の多孔質焼結金属体。
【請求項8】
接続金属ノードにおいて接続された細長い金属繊維を含む金属マトリックスを形成する方法であって、
第1の焼結点を有する第1の金属材料の粉末金属粒子、第2の焼結点を有する第2の金属材料の細長い金属繊維粒子を含み、第2の焼結点は第1の焼結点を上回る、金属粒子のブレンドを提供すること;および
第1の焼結点を上回る温度でブレンドを焼結させて、粉末金属材料を焼結させ、粉末金属粒子を焼結させることによって形成された接続金属ノードにおいて接続された細長い金属繊維を含む、金属マトリックスを形成すること
を含み、
第2の焼結点が、第1の焼結点より少なくとも200℃高く、
第1の焼結点が
、大気圧で530~630℃の範囲であり、
ブレンドが、1立方センチメートル当たり0.6グラム未満の見掛け密度を有する、
金属マトリックスを形成する方法。
【請求項9】
第1の焼結点を有する粉末金属粒子;および
第2の焼結点を有する第2の金属材料の細長い金属繊維粒子
を含む金属材料のブレンドであって、第2の焼結点は第1の焼結点より少なくとも200℃高く、第1の焼結点が
大気圧で530~630℃の範囲であり、ブレンドは1立方センチメートル当たり0.6グラム未満の見掛け密度を有する、金属材料のブレンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年11月8日に出願された米国仮特許出願第62/583,137号の利益および優先権を主張し、その全体は、すべての目的について参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
記載される発明は、多孔質焼結金属体の分野での技術、多孔質焼結金属体を作り、使用する方法、および高効率(高いLRV)ろ過を必要とする用途を含む、流体のろ過を含む商業的用途で多孔質焼結金属体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多孔質焼結金属体は、エレクトロニクスおよび半導体製造産業、ならびに処理に高純度な材料を必要とする他の産業で使用される、材料のろ過を含む様々な用途での使用が見出されている。例えば、半導体およびマイクロエレクトロニクス産業では、インラインフィルターは、流体から粒子状物質を除去して、粒子状物質の製造プロセスへの導入を防ぐために使用されることが多い。流体は、ガスまたは液体の形態であってもよい。
【0004】
多孔質焼結体のいくつかの例は、フィルター用途での使用について記載されてきた。これらの焼結体のある特定の例は、型を使用して調製されて、金属粒子および有機バインダーを含む造形物を形成する。造形物は型から取り出され、有機バインダーを除去するために処理され、続いて加熱(すなわち、焼結)される。例えば、米国特許第6,964,817号、および第7,195,735号を参照されたい。金属繊維材料を焼結させることによって調製された多孔質焼結体の別の例は、米国特許第8,673,065号(Mott Corporationに譲渡された)に記載されている。
【発明の概要】
【0005】
ガス状流体を含む、工業用流体の流れのろ過に使用するために、多孔質焼結体の様々な例が開発されてきた一方で、工業的処理の変化する需要が、これらのタイプのフィルターおよびろ過方法の性能要件を増加させ続けている。半導体およびマイクロエレクトロニクスデバイスは、より小さくより速い製品へと開発され続けている。次世代のこれらのデバイスを製造するたびに、原料でのより高レベルな純度およびより低レベルな汚染物質への要求が増加する可能性がある。
【0006】
多孔質焼結体の様々な特徴が、フィルターとしての多孔体の有用性に影響を与えると考えられる。半導体処理で使用されるガス状材料のろ過では、ガス状流体は、およそ大気圧(例えば、2気圧未満)、または大気圧未満(例えば、真空状態)の圧力で供給され得る。ガス状流体を使用するプロセスは、ミクロンスケール粒子の非常に高い除去率、例えば、ろ過工程の「対数減少値」(LRV)による測定で少なくとも3、4、5、7、または9が要求され得る。これらのガス状材料をろ過するプロセスはまた、比較的低い流量、例えば、10、5または2標準リットル/分(slpm)未満で実施され得る。一般的事項として、これらおよび類似の使用では、(同等の除去効率を備えた)高度に多孔質で低減された厚みを有するフィルターが、それほど多孔質でないまたはより厚い本体と比較して好ましい可能性がある。より小さい全表面積(BETによって測定される)も有する、比較的より薄いフィルター本体は、ろ過中に本体にわたって発生する圧力損失が、より大きな厚みを備える類似のフィルターの圧力損失と比較して比較的より低いことに起因して、好ましい可能性がある。圧力損失は、フィルター本体の厚みに正比例する。比較的より薄いフィルター本体、および焼結体での有機材料の不存在によって、例えば、有機バインダーの使用によって有機材料がフィルター中に存在する場合に起こり得る、ガス発生の恐れも低減される。より大きな、すなわちより厚いフィルター本体は、一般に本体の複雑性およびコストの増加を必要とする恐れがあり、典型的にはより大きな質量を有する。また、圧力損失が気孔率に指数関数的に比例するので、(同等の除去効率とすれば)より高い気孔率のフィルター本体がより低い気孔率のフィルター本体より好ましい。
【0007】
本明細書によれば、新規で進歩性のある多孔質焼結体が特定および生成され、ガスろ過媒体(すなわち、多孔質フィルター本体)として有用であることが見出された。本発明の多孔質焼結体は、サブミクロンろ過性能を保持しながら、低い圧力損失で流体のガス状流れをろ過するのに効果的であり得る。多孔質フィルター本体は、様々な比較的低いガス速度で、少なくとも3、5、7、または9の高いLRV値を達成するために有用であり得る。
【0008】
一態様では、本発明は、接続金属ノードにおいて接続された金属繊維を含む相互に接続された金属マトリックスを含む多孔質焼結金属体に関する。マトリックスは、第1の焼結点を有する第1の金属材料を含む、接続金属ノード;および、第1の焼結点より大きい第2の焼結点を有する、第2の金属材料の細長い金属繊維を含む。接続金属ノードは、細長い金属繊維に融合して、接続金属ノードによって接続されかつ接続金属ノード間に延びる細長い金属繊維を含む、相互に接続された金属マトリックスを形成する。
【0009】
別の態様では、本発明は、記載されている多孔質焼結金属体をフィルターとして使用する方法に関する。
【0010】
なお別の態様では、本発明は、記載されている金属マトリックスを形成する方法に関する。方法は、第1の焼結点を有する第1の金属材料の粉末金属粒子;および第1の焼結点を上回る(より高い)第2の焼結点を有する第2の焼結点の細長い金属繊維粒子を含む、金属材料のブレンドを提供することを含む。方法は、第1の焼結点を上回る温度でブレンドを焼結させて、粉末金属材料を焼結させることによって形成された接続金属ノードにおいて接続された、細長い金属繊維を含む金属マトリックスを形成することも含む。
【0011】
別の態様では、本発明は、第1の焼結点を有する粉末金属粒子、および第2の焼結点を有する第2の金属材料の細長い金属繊維粒子を含む、金属材料のブレンドに関する。第2の焼結点は第1の焼結点を上回り、ブレンドは1立方センチメートル当たり0.6グラム未満の見掛け密度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】低い圧力差で、記載されているフィルター膜を通る流量のグラフである。
【
図2】記載されているフィルター膜についての、流速に対する(LRVに関する)フィルター有効性のグラフである。
【
図3A】記載されているマトリックスの顕微鏡写真である。
【
図3B】記載されているマトリックスの顕微鏡写真である。
【
図3C】記載されているマトリックスの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載されるのは、様々な流体の流れをろ過するフィルター本体として使用するのに効果的な、新規の多孔質焼結体である。多孔質焼結体は、接続金属ノードによって接続されかつ接続金属ノード間に延びる細長い金属繊維から作られた、多孔質金属マトリックスを含む。接続金属ノードはマトリックス内に形成され、接続金属ノードが、金属繊維および接続金属ノードを繊維状マトリックスの形態で一緒に効果的に保持するように、焼結によって細長い金属繊維に取り付けられる。さらに記載されているのは、多孔質焼結体を調製する新規で進歩性のある方法、および記載されている多孔質焼結体を流体の流れをろ過することに使用することを含む用途で、多孔質焼結体を使用する新規で進歩性のある方法である。
【0014】
記載されている多孔質焼結体は、焼結金属材料の接続金属ノードによって一緒に接続された(例えば、「相互に接続された」)、細長い金属繊維を含む(例えば、含む、からなる、またはから本質的になる)、金属マトリックス(または単に「マトリックス」)を含む。接続金属ノードは、細長い金属繊維粒子および金属粉末粒子を含む金属材料のブレンドを焼結させることを含む方法によって、細長い繊維に融合または結合される。ブレンドは焼結してマトリックスを形成し、焼結後に、2つの異なるタイプの粒子を含有するブレンドを焼結させ、金属粉末粒子を細長い金属繊維粒子に融合させることによって形成される、接続金属ノード間に延びる細長い金属繊維を、マトリックスは含む。
【0015】
本明細書で使用する「焼結」という用語は、多孔質焼結金属構造、例えば、金属フィルター膜として使用され得るタイプの多孔質焼結金属膜の技術分野で使用される場合に、この用語に与えられる意味と一致する意味を有する。それと一致して、「焼結」という用語は、金属材料の1つまたは複数の異なるタイプ(大きさ、組成、形状など)の小さな粒子の集合を、粒子に熱および任意選択の圧力を加えることによって、一緒に結合(例えば、「溶着」、「融合」)し、その結果、1つまたは複数の金属材料の少なくとも1つは、金属の結合によって、加熱された粒子を一緒に融合する、すなわち溶着するのに十分高い温度へ到達させるが、いずれの粒子も溶融しない(すなわち、金属材料のいずれも溶融温度に到達しない)温度に粒子は到達する、プロセスを指すために使用することができる。このプロセスは、金属を溶融することなく金属材料を液化点に加熱することによって、金属材料の多孔質なかたまりの形成を可能にする。焼結された金属は、金属が他の金属粒子に溶融することなく融合することができる温度に加熱され、熱を除去すると、融合した金属粒子の固体片を形成する。本明細書で使用する場合、金属材料の「焼結点」は、金属材料が焼結され得る温度、すなわち、例えば特定の圧力、例えば大気圧で、金属材料の粒子が金属材料の他の粒子に付着し始め、同じ金属材料または異なる金属材料の別の粒子に融合することができる温度であり、金属材料の焼結点は、通常、金属が液体になる温度を意味する金属の溶融温度未満である。
【0016】
本明細書によれば、接続金属ノードは「第1の焼結点」を有する第1の金属材料から作られ、細長い金属繊維は「第2の焼結点」を有する第2の金属材料から作られる。第2の焼結点は、第1の焼結点より高い温度である。本出願者は、第1および第2の金属材料の焼結点の差を備える、記載されている第1および第2の金属材料を使用することにより、やはり本明細書に記載の新規で進歩性のある方法によって、記載されている多孔質焼結体を調製することができることを発見した。
【0017】
焼結によってマトリックスを調製する例示的方法によれば、2つまたはそれ以上の異なる金属材料の金属粒子のブレンドから、マトリックスを調製することができ、ブレンドは:第1の焼結点を有し、焼結温度に加熱するとマトリックスの接続金属ノードを形成する、第1の金属材料の粉末金属粒子;および第2の焼結点を有し、マトリックスの細長い金属繊維を形成する、第2の金属材料の細長い金属繊維粒子を含む。第1の金属材料および第2の金属材料を含む金属粒子のブレンドは、焼結する前に、任意選択で、かつ好ましくは、任意の有機材料、例えば、有機バインダーの非存在下で、最初に成型される。金属粒子のブレンドは、第1の焼結点と少なくとも同じくらい高いが、第2の焼結点未満であり得る焼結温度に、まだ型の中で加熱することができる。
【0018】
金属粒子のブレンドの加熱は、ブレンドの少なくとも1つのタイプの粒子の焼結を引き起こし、焼結金属マトリックスを生成する。具体的には、ブレンドは、第1の金属材料と第2の金属材料の両方の溶融温度未満である焼結温度に加熱され、その結果、加熱工程中にブレンドのどちらの金属材料も溶融しない、すなわち、液化しない。溶融する代わりに、第1の金属材料の粉末の金属粒子は、第1の金属材料の焼結点より高い温度に加熱されて、金属粉末粒子が、細長い金属繊維粒子を含むブレンドの他の粒子に、付着、すなわち、結合または融合することを可能にするまたは引き起こす温度に到達する。任意選択で、かつ好ましくは、細長い金属繊維粒子の温度は、第2の焼結点未満のままである。
【0019】
金属粒子のブレンドを焼結させることによって金属マトリックスを形成するのに重要なことは、第1の金属材料の焼結点と第2の金属材料の焼結点の差である。細長い金属繊維粒子が、それらの焼結点(すなわち第2の金属材料の焼結点)へ到達することを必要とせずまたは引き起こすことなく、第1の金属材料の金属粉末の粒子が細長い金属粒子に焼結および結合(または融合)する焼結温度に、2つの異なる金属材料のブレンドが加熱されることを可能にするほど、その差は十分に大きくあるべきである。
【0020】
記載されている金属粒子のある特定の例示的ブレンドによれば、第2の焼結点は、第1の焼結点より少なくとも50、100、または200℃大きくてもよく、例えば第1の焼結点と第2の焼結点の間の差は、250~350℃の範囲であり得る。
【0021】
マトリックスの接続金属ノードの第1の金属材料の非限定的な例としては、ステンレス鋼、他の鉄および鋼合金、ニッケルおよびニッケル合金、チタンおよびチタン合金が挙げられる。接続金属ノードの金属材料の焼結点は、本明細書に記載の、細長い金属繊維の焼結点未満である任意の焼結点であり得る。金属材料、例えば、ステンレス鋼、他の鋼合金、ニッケル、ニッケル合金の焼結点の例は、530~900℃の範囲、例えば、530~630℃であり得る。
【0022】
マトリックスの細長い金属繊維に有用な第2の金属材料の例としては、ステンレス鋼、他の鉄および鋼合金、ニッケルおよびニッケル合金、チタンおよびチタン合金が挙げられる。細長い金属繊維の金属材料の焼結点は、本明細書に記載される、第1の金属材料の焼結点を上回る、任意の焼結点であり得る。細長い金属繊維として使用する金属材料、例えば、ステンレス鋼、他の鋼合金の焼結点の例は、850~950℃の範囲、例えば、850~1200の範囲、例えば900~1100℃の範囲であり得る。
【0023】
第2の金属材料の量と比較した、マトリックス中の第1の金属材料の相対量は、記載されている多孔質焼結体を生成するのに効果的な、好ましくは本明細書に記載の物理的特性およびろ過性能特性(例えば、気孔率、表面積(BET)、粒子保持)を示す、任意の相対量であり得る。マトリックス中の第1の金属材料と第2の金属材料の、有用な(重量による)相対量の例は、約30:70~約70対30であり得る。いくつかの例示的マトリックスでは、好ましい量は、約60:40~約40対60、または約45:55~約55:45の範囲であり得る。これらおよび他の実施形態では、マトリックスは、他の金属材料および少量を超える量の非金属材料、例えば、有機バインダーを必要とせず、特に排除してもよい。例示的マトリックスは、非金属、有機材料を排除して、金属材料、例えば、第1の金属材料および第2の金属材料からなる、または本質的になることができる。金属材料、例えば、第1の金属材料および第2の金属材料から本質的になると言われるマトリックスは、金属材料、およびマトリックスの全重量に対して1重量パーセント以下の任意の非金属(例えば、有機)材料、例えば、マトリックスの全重量に対して0.5、0.1、または0.01重量パーセント以下の非金属材料を含有するマトリックスを指す。
【0024】
フィルター膜(別名「フィルター本体」)として、特に、低流量、低圧力損失、およびおよそ大気圧または減圧で、ガス状流体の流れのろ過で使用して、高いLRV除去効率を達成するために、多孔質焼結体は、厚み、気孔率、密度、表面積(BET)、および前面面積を含む、様々な有用なまたは好ましい物理的形態および物理的特性を有することができる。
【0025】
フィルター膜として使用するのに好ましい多孔質焼結体は、比較的薄くすることができ、例えば、大きさが比較的小さい厚みを有することができる。低減された厚みは、低減された質量および使用中のフィルターにわたる低減された圧力損失を含む、フィルター膜のある特定の所望の特性をもたらすことができる。さらに真空、例えば、減圧状態で使用される場合、フィルター膜の低減された厚み(したがって、質量)によって、ろ過のためにフィルター膜を通って通過するガス状流体の流れの中へ、フィルター膜の任意の材料がガス放出される可能性を低減することができる。その結果、フィルター膜としての使用に適合した有用なまたは好ましい多孔質焼結体は、3ミリメートル未満、例えば2ミリメートル未満、または1ミリメートル未満、例えば、約0.2~約1.5または1.7ミリメートルの範囲である厚みを有することができる。対照的に、ガス状流体のろ過に使用される現在市販の様々な多孔質焼結体は、典型的には実質的により大きな厚み、例えば、少なくとも3、4、5、または6ミリメートルの厚みを有する。フィルター本体のより大きな厚みは、比較的より高い流量(例えば、50標準リットル/分を超える)での使用を可能にし、それでも高いLRVを達成するが、より大きな圧力損失およびより大きな質量という欠点を有する。
【0026】
記載されている多孔質焼結体は、多孔質焼結体が、例えば、フィルター膜として所望の使用に効果的であり得る気孔率を有することができる。フィルター膜として使用するために、特にガス状流体の流れを、低流量で、低いまたは非常に低い圧力損失で、およびおよそ大気圧または減圧でろ過するのに使用するために、多孔質焼結体は、好ましくは比較的高い気孔率、例えば少なくとも70パーセントの気孔率、例えば75~90パーセントの範囲、例えば、78~85パーセントの範囲の気孔率を有することができる。本明細書、および多孔質焼結体の技術分野で使用する場合、多孔質焼結体の「気孔率」(時に、空隙率とも呼ばれる)は、本体の全体積のパーセントとしての本体中の空隙(すなわち、「空の」)空間の尺度であり、本体の全体積に対する本体の空隙体積の割合として計算される。0パーセントの気孔率を有する本体は、完全に固体である。
【0027】
記載されている多孔質焼結体の表面積は、所望の使用にとって、例えば、フィルター膜として、焼結体が効果的であることができる任意のものであり得る。フィルター膜として使用するために、特にガス状流体の流れを、低流量で、低い圧力損失で、およびおよそ大気圧または減圧でろ過するのに使用するために、比較的低いがそれでも商業的に許容できる流量で、かつフィルターにわたる非常に低い圧力損失で、多孔質焼結体を通過するガス状流体をろ過する場合に、0.060ミクロンの最大透過粒径(most penetration particle size)(MPPS)で測定された所望の除去効率(例えば、少なくとも3、4、7、または9のLRV)をもたらす表面積(BET)を、多孔質焼結体は好ましくは有することができる。フィルター用のMPPSを決定するための方法および技法は、K.W.Lee & B.Y.H.Liu,“On the Minimum Efficiency and the Most Penetrating Particle Size for Fibrous Filters,”Journal of the Air Pollution Control Association Vol.30,Iss.4,1980に記載されている。本明細書の例示的多孔質焼結体では、有用なMPPSの例は、およそ0.060ミクロンであり得る。
【0028】
多孔体の技術分野で公知であるように、表面積(BET)は、ガス分子の固体表面での物理吸着を伴う、Brunauer、EmmettおよびTellerによって規定された理論を使用して計算された、本体の質量当たりの多孔体の表面積を指す。本明細書に記載の多孔体に限定することなく、記載されている多孔質焼結体の本明細書で好ましい表面積(BET)は、0.25~0.60平方メートル/グラム、例えば0.3~0.5平方メートル/グラムの範囲であり得る。これらの範囲と異なる表面積(BET)値も、特定の多孔質焼結体の他の構造的特徴;ろ過されるガス状流れの特徴;および所望の粒子除去効率(LRVによって測定される)次第で有用であり得る。
【0029】
記載されている多孔質焼結体から作られたフィルター膜は、有用な前面面積を含むことができ、前面面積は好ましくは十分大きくて、記載されている低い圧力損失、フィルターを通る流体の低い流量(面積当たり)、および所望の除去効率(LRVによって測定される)を含む、記載されている他の性能特徴を可能にする。例示的な多孔質焼結体は、平らなシート形態である、または代わりに三次元形状、例えば、カップ、コーン、チューブ、もしくは閉端のチューブ(別名「閉じた円柱」、1つの閉じた端と1つの開いた端を有するチューブまたは円柱を意味する)の形態である、フィルター膜へ構築することができる。記載されている(任意の形状の)フィルター膜の前面面積は、使用中に流体が通過するフィルター膜の面積を指す。フィルター本体の特別の例は、3~10インチの範囲の長さ、0.75~2インチの範囲の直径、および0.3~2ミリメートルの範囲の厚みを有する、閉じた円柱フィルター本体であり得る。
【0030】
任意選択で、かつ有利には、第1の金属材料から作られた接続金属ノード、および第2の金属材料から作られた細長い金属繊維を有する、記載されている多孔質焼結体は、比較的高い熱を伝達する能力を有することができる。焼結によって多孔性金属体を調製する好ましい方法に由来する全体構造に起因して、金属体のマトリックスは、非常に高度に相互連結しており、多孔体全体にわたって比較的良好な熱を伝達する能力を提供する。比較的高い熱伝達特性は、多孔質焼結体のフィルター膜としての用途にとって有用または有利であり得て、使用中にフィルター膜が加熱されるともに、フィルターの有効性を改善する。
【0031】
記載されている多孔質焼結体は、フィルター膜として使用して、フィルター膜を通過する流体の流れから粒子または汚染を除去することができる。流体はガスまたは液体であってもよく、本明細書で好ましいフィルター本体の例は、ガス状流体をろ過するのに有用である。ガス状流体は、ろ過を必要とする任意のガス状流体であってもよく、工業的化学物質、例えば、半導体製品またはマイクロエレクトロニクス製品を処理または製造するために使用されるガス状化学物質を含有するガス状流体を含む。多孔質焼結体は、篩分けまたは非篩分けろ過メカニズムによって、流体の流れから効果的に粒子を除去することができる。流体がガス状流体である場合、ろ過は主に非篩分けろ過メカニズムによって起こり得る。
【0032】
記載されているフィルター膜を使用して流体をろ過する工程中のガス状流体の圧力は、典型的には、およそ大気圧、または大気圧未満の範囲で所望の通りであり得る。有用な圧力(およそ大気圧と考えられる)の例は、30ポンド/平方インチ(絶対圧力)(psia)、例えば、20psia未満であり得る。半導体またはマイクロエレクトロニクスデバイス処理システムに材料を供給する多くのろ過用途に対して、ガス状流体は、およそ大気圧または減圧で供給される。例えば、ガス状流体をろ過する本発明の方法は、約16psia以下、例えば、0.01~15.5psiaの範囲の圧力を有する、ガス状流体の流れをろ過することを含むことができる。
【0033】
フィルター膜使用中の、記載されているフィルター膜の厚みにわたる(フィルターの上流側とフィルターの下流側の間の)圧力差(または「圧力損失」)は、(例えば、流体の所与の流量の)ろ過工程中の、所望の効果(例えば、粒子保持)を可能にし、商業的に実現可能でもある、任意の圧力差であり得る。薄い厚みを有する非常に多孔質なフィルター膜とともに、ガス状流体の比較的低い流量を使用して、本明細書の好ましい方法は、比較的低い圧力差をもたらすことができる。半導体またはマイクロエレクトロニクスデバイスの処理で使用する、化学物質をろ過する様々な用途に対して、フィルター膜にわたる圧力差は、約5ポンド/平方インチ差圧(psid)未満、好ましくは約2、1、0.5未満、または0.3、0.1、もしくは0.05ポンド/平方インチ差圧(psid)未満であることができ、それでもフィルターを通した流体の有用な流れを可能にしている。
図1は、本明細書に記載の例示的フィルター膜を使用した、低い圧力差での面積当たりの例示的流量を示している。
【0034】
ろ過工程中にフィルター膜を通って流れるガス状流体の量は、ろ過工程中の所望の効果(例えば、粒子保持)を可能にし、商業的に実現可能でもある量であり得る。半導体またはマイクロエレクトロニクスデバイスの処理で使用する、化学物質をろ過する様々な用途に対して、フィルター膜を通る流体の流れ(フィルターの前面面積当たり、時間当たりの流れの体積で表現される)は、約5標準リットル/分(slpm)/平方センチメートル未満、例えば2、1、0.5、0.3、0.2、または0.1slpm/平方センチメートル未満であり得る。有用なまたは好ましいフィルター構造の例として、1ミリメートル未満である厚み(例えば、約0.7ミリメートルの厚み)、および90パーセント未満(例えば、81.5パーセント)である気孔率を有するフィルター膜は、少なくとも10標準リットル/分/平方センチメートルの流体(例えば、20℃の試験流体としての空気)の流量を可能とし得る。フィルター膜特性に対するこの流量は、膜特性に対する、または(類似もしくは代わりの物理特性を備える)他の同等のフィルター膜に対する、記載されている多孔質膜のフロー特性の基準であり得、使用中にフィルター膜を通る流量は、実質的により低い可能性がある。
【0035】
記載されているフィルター膜を通る流体の流れの温度は、商業的に効果的なろ過を可能にする任意の温度であり得る。半導体またはマイクロエレクトロニクスデバイスの処理で使用する、化学物質をろ過する様々な用途に対して、温度はほぼ室温(例えば、30℃)、またはそれより高い、例えば、少なくとも100、150、または200℃の温度であってもよい。
【0036】
本明細書の記載と一致して、フィルター膜を使用して除去効率を含む所望のろ過性能を達成するのに好適な任意の流量および任意の圧力で、ガス状流体はろ過工程中に提供され得る。本明細書で有用なまたは好ましいろ過方法に対して、ガス状流体は、比較的低流量および低い圧力、例えば、約1気圧の範囲、または1気圧未満の圧力で、フィルター膜を通って流れることができる。除去効率は、好ましくは比較的高い、例えば、0.060ミクロン(MPPS)の粒子に対して、少なくとも3、4、5、7、または9の対数減少値をもたらすようであり得る。
図2のグラフは、流速に対する、(0.060ミクロンの粒子について)粒子除去有効性を示している。
【0037】
フィルター膜として使用される本焼結金属体を用い、フィルター膜を通るガス状流体の選択された(比較的低い)流量に基づいて、本発明の例示的方法は、対数減少値(「LRV」)として測定される少なくとも3、4、5、7、または9のろ過効率(「除去効率」)を実現することができる。対数減少値(LRV)は、2つの数の比の対数として定義され、多孔質膜の粒子保持特性を特徴づけるために使用することができる。本発明の場合、この比は、ろ過中にフィルターの上流面でフィルター膜に衝突する粒子の数と、フィルターの下流で検出された粒子の数の比である。その結果、7というLRV値は、10
7個の粒子の挑戦(challenge)および1個の下流粒子の検出を指し、この比の対数は7である。試験は、0.060ミクロンのまわりに中心を持った粒度分布を備える、数百万の粒子を含有するエアロゾルを発生させ、本発明のバージョンで多孔質焼結体から作られたフィルターを通してこのエアロゾルを通過させ、凝縮核カウンター(CNC)を使用して通過した粒子の数を数えることによって、行われる。フィルター膜のLRV値は、フィルター膜を通るガス状流体の流量に依存するであろう。より低い流量で、より高いLRV値を達成することができる。多孔質焼結体のバージョンでは、多孔質焼結体に挑戦するために、0.060ミクロンのまわりに中心を持った粒度分布を備える数百万の粒子をエアロゾルとして使用した場合、LRVは3、4、または5より大きい。他のいくつかのバージョンでは、多孔質焼結体に挑戦するために、0.060ミクロンのまわりに中心を持った粒度分布を備える数百万の粒子をエアロゾルとして使用した場合、多孔質焼結体のLRVは6~9の間である。多孔質焼結体のさらに別のバージョンでは、多孔質焼結体に挑戦するために、0.060ミクロンのまわりに中心を持った粒度分布を備える数百万の粒子をエアロゾルとして使用した場合、多孔質焼結体のLRVは7~9の間である。
図2は、速度に対する、記載されているフィルター膜のフィルター有効性の非限定的な例を示すグラフである。
【0038】
記載されているフィルター膜によって効果的にろ過することができる流体のタイプは、流体から高い割合の任意の粒子または他のタイプの汚染物質または望まれない材料を削除するために、例えば、デバイス前駆体を含む、半導体デバイスまたはマイクロエレクトロニクスデバイスを製造するプロセスで、流体、典型的にはガス状流体を使用するために、望ましくろ過される任意のタイプの流体であり得る。流体は、低い圧力、例えばおよそ大気圧または減圧で典型的には提供され、本明細書に記載の低流量で提供され使用され得る。例示的な例としては、以下の非限定的なガス:シラン、メチルシラン、トリメチルシラン、水素、メタン、窒素、一酸化炭素、ジボラン、BP3、アルシン、ホスフィン、ホスゲン、塩素、BCl3、BF3、B2H6、B2D6、六フッ化タングステン、フッ化水素、塩化水素、ヨウ化水素、臭化水素、ゲルマン、アンモニア、スチビン、硫化水素、シアン化水素、セレン化水素、テルル化水素、重水素化水素化物、トリメチルスチビン、三フッ化リン、五フッ化ヒ素、オルトケイ酸テトラエチル、ハロゲン化物(塩素、臭素、ヨウ素、およびフッ素)、ガス状化合物、例えば、NF3、ClF3、GeF4、SiF4、AsF5、有機化合物、有機金属化合物、炭化水素、および有機金属V族化合物、例えば、(CH3)3Sbが挙げられる。これらの化合物のそれぞれついて、すべての同位体は考えられる。通常、これらのガス種の1つまたは複数は、キャリアガス、例えば、不活性ガスと組み合わせて扱われる。
【0039】
記載されている金属マトリックスを含有する、記載されている焼結金属体を調製する例示的方法によれば、2つの異なるタイプの金属粒子のブレンドを成型および焼結させることによって、焼結金属体を調製することができる。第1のタイプの金属粒子は、第1の焼結点を有する第1の金属材料の粉末金属粒子の集合である。第2のタイプの金属粒子は、第1の焼結点より高い第2の焼結点を有する、第2の金属材料の細長い金属繊維粒子の集合である。一般に、2つのタイプの粒子をブレンドして、均一にブレンドされた粒子の混合物を形成する。次に、金属粒子のブレンドを成型して所望の形状を形成し、次に、第1の焼結点より高く(好ましくは)第2の焼結点未満である焼結温度に加熱することができる。金属粒子のブレンドの加熱は、粉末形態を有する第1のタイプの金属粒子の焼結を引き起こす。粉末粒子が、細長い金属繊維粒子を含むブレンドの他の粒子に付着する、すなわち、結合または融合を可能にするまたは引き起こす、第1の焼結点を上回る温度に、第1の金属材料の金属粒子は到達する。金属繊維粒子の表面へ付着または融合する粉末の金属粒子は、本明細書に記載の焼結金属マトリックスの接続金属ノードになり、ノードにおける第1の金属材料の金属接続によって、金属繊維粒子を一緒にしっかりと結合する。マトリックス10の顕微鏡写真である
図3Aおよび
図3Bを参照すると、金属接続ノード20が細長い金属繊維22を接続していることを見ることができる。
【0040】
第1の金属粒子、すなわち、「粉末粒子」または「金属粉末粒子」は、金属粉末粒子が記載されている焼結金属体を調製するのに有用であることを可能にする、大きさおよび形状特性、ならびに所望の焼結点を示すように選択することができ、金属粉末粒子は、焼結工程中に焼結して、ブレンドの他の粒子(細長い金属粒子を含む)に融合し、焼結マトリックスの接続金属ノードを形成する。第1の金属粒子は、所望の焼結点(すなわち、「第1の焼結点」)を示す第1の金属材料から作ることができ、金属材料は、鉄、クロム、ニッケル、およびこれらの合金または組み合わせから選択される。好ましい第1の金属材料は、ニッケル合金であり得る。
【0041】
第1の金属粒子は粉末の形態であり、第1の金属材料の小さな(ミクロンまたはサブミクロンスケール)粒子の集合を指す。粉末の金属粒子は、記載されているブレンドおよび記載されている方法での使用を可能にする形状を有することができ、それは粒子が焼結の際にマトリックスの接続金属ノードを形成するのに効果的である。金属粉末の第1の金属粒子の形状は、実質的に丸い、例えば球状、または個々の粒子のアスペクト比が例えば約5:1を越えない、不規則でわずかに分岐していることができる。粒子は有用な粒径(平均粒径)、例えば、20または10ミクロン未満の範囲、例えば、約1~3ミクロンの間の範囲の平均粒径を有することができる。
【0042】
第1の金属粒子の粉末は、任意の有用な見掛け密度(AD)を有してもよい。比較的低いADを有する粉末は、典型的には、第1の金属粒子および第2の金属粒子のブレンドを成型し焼結させることによって高い気孔率を示す、記載されている焼結マトリックスを生成するのに有用または好ましくあり得る。例えば、記載されているブレンドで使用される第1の金属粒子の粉末は、1立方センチメートル当たり1グラム(g/cc)未満、例えば、0.90未満、0.80、または0.70g/cc未満の見掛け密度を有してもよい。公知のように、粉末または顆粒の見掛け(かさ)密度は、体積は中間および中空の空間を含んで、所与の体積に対する粉末または顆粒の集合の質量を指す。見掛け(かさ)密度を測定する方法は周知であり、ASTM B703-17「アーノルドメーターを使用した金属粉末および関連化合物の見掛け密度の標準的試験方法(Standard Test Method for Apparent Density of Metal Powders and Related Compounds Using the Arnold Meter)」を含む。
【0043】
細長い第2の金属粒子は、第2の金属粒子が記載されている焼結金属体を調製する際に有用になり得る、大きさおよび形状特性ならびに所望の焼結点を示すように、選択することができる。第1の金属粒子を焼結させて焼結金属マトリックスの接続金属ノードを形成するのに効果的である、焼結工程中に焼結することを、第2の金属粒子は必要とせず;第2の金属粒子は任意選択である程度の焼結を経験してもよいが、第2の金属粒子の焼結は必要ではない。第2の金属粒子は、所望の焼結点(すなわち、「第2の焼結点」)を示す第2の金属材料から作ることができ、金属材料は、鉄、クロム、ニッケル、およびこれらの合金または組合せから選択される。好ましい第2の金属材料は、鉄合金、例えば、1つのタイプのステンレス鋼であり得る。
【0044】
第2の金属粒子は、小さな(ミクロンまたはサブミクロンスケール)粒子の集合の形態であり、粒子は細長い軸を含むように形成され、粒子は「繊維」(別名「ストランド」、「柱状物(pillar)」、「フィラメント」等)の形態を有すると考えることができる。第2の金属粒子は、マトリックスの接続金属ノードによって一緒に接続された焼結金属マトリックスの金属繊維を形成するのに効果的な、記載されているブレンドおよび記載されている方法で使用することを可能にする形状を有することができる。第2の金属粒子は細長く、少なくとも10:1、例えば、少なくとも20:1、例えば、25:1~125:1の範囲であるアスペクト比(長さと幅の比)を有してもよい。粒子は、有用な粒径(平均粒径)、例えば、10または20ミクロン未満、例えば、約1~3ミクロンの間の範囲である平均粒径を有することができる。
【0045】
第2の金属粒子の集合は、任意の有用な見掛け密度(AD)を有してもよく、好ましくは、記載されている、高い気孔率を示す焼結マトリックスの生成を促進する、比較的低い見掛け密度を有することができる。例えば、記載されているブレンドで使用される第2の金属粒子の集合は、約0.5g/cc未満、例えば、0.40未満、0.30、または0.20g/cc未満である見掛け密度を有してもよい。
【0046】
第1および第2の金属粒子から焼結金属マトリックスを生成するために、第1の金属粒子および第2の金属粒子を一緒にブレンドして、実質的に均一な様式で分散した粒子の混合物を形成する。ブレンドは、記載されている焼結体を生成するのに効果的な任意の相対量で、第1の金属粒子および第2の金属粒子を含む(例えば、含む、からなる、から本質的になる)ことができる。ブレンド中の第1の金属粒子と第2の金属粒子の有用な(重量による)相対量の例は、約30:70~約70対30であり得る。いくつかの例示的マトリックスでは、好ましい量は、約60:40~40対60、または約45:55~55:45の範囲であってもよい。金属材料、例えば、第2の金属材料および第1の金属材料から本質的になる金属粒子のブレンドは、非現実的な量を越える任意の他の材料、例えば、非金属(有機)材料、例えば、有機バインダー、例えば、(成型および焼結した)ブレンドの全重量に対して1重量パーセント以下の有機材料、または(成型および焼結した)ブレンドの全重量に対して、0.5、0.1、もしくは0.01重量パーセント以下の有機材料を含有していない、金属材料のブレンドを指す。
【0047】
第1および第2の金属粒子を組み合わせて、2つの異なるタイプの金属粒子を含む集合(「粉末」)を生成し、次にブレンドを成型し焼結することができる。2つのタイプの金属粒子を最初に組み合わせた場合、ブレンドは、第1の金属粒子と第2の金属粒子の見掛け密度の中間である見掛け密度(AD)を有するであろう。例えば、ADは、1立方センチメートル当たり約0.2~0.7の範囲、例えば、0.3~0.6グラム(例えば、ASTM B703-17を使用)の間であり得る。
【0048】
ブレンドを型に入れ、所望の程度まで圧縮することができる。型では、ブレンドの密度、すなわち「型密度」は、1立方センチメートル当たり約0.3~0.8、例えば、0.4~0.7グラムの範囲であってもよい。型密度のこれらの範囲は、ブレンドの「タップ密度」、これは金属粉末の技術分野で公知の密度測定である、と類似している可能性がある。タップ密度を測定する方法は周知であり、ASTM B527-15「金属粉末および化合物のタップ密度の標準的な試験方法(Standard Test Method for Tap Density of Metal Powders and Compounds)」を含む。
【0049】
ブレンドを成型するのに使用する型は、型の任意の形態であることができ、型の支持構造内でブレンドを焼結する際、焼結したブレンドと型の支持構造の間で実質的な量の付着をもたらさない材料であり得る。有利には、多孔質焼結体を形成する他の方法に比べて、記載されているブレンドは、有機材料、例えば、有機バインダーがブレンドに含まれることを必要とせずに、型内で、形成し、成型し、焼結することができる。さらに有利には、ブレンドは、型で(未焼結の)成型体に形成し、未焼結の成型体を型から焼結用の異なる位置へ移動させることなく、同じ型で焼結することができる。多孔質焼結体を形成する従前の方法によれば、型で本体を形成し、次に型から未焼結体を取り出し、異なる位置、例えば、次に成型体を焼結させることができる支持体(例えば、マンドレルまたはロッド)に未焼結体を配置する工程を方法が含むので、有機バインダーがしばしばまたは典型的に使用される。
【0050】
対照的に、本明細書の焼結金属体、例えば、必ずしも閉じた円柱の形態ではないが、フィルター膜を形成する例示的方法は、例えば、ニッケル合金の金属粉末の形態である第1の金属粒子、および細長いステンレス鋼粒子の形態である第2の金属粒子を含む、本明細書に概して記載のブレンドを提供することを含むことができる。第1および第2の粒子はブレンドされ、次に管状(閉じた円柱)の型を使用して、薄壁で高気孔率、低見掛け密度の成型体に形成され得る。成型体は型の支持構造で熱処理され、その結果、第1の金属材料(例えば、ニッケル合金)はよく焼結され、一方で第2の金属材料(例えば、ステンレス鋼合金)は大部分が不変である。第1の金属材料は第2の金属材料に融合し、第2の金属材料のステンレス鋼の細長い繊維間に金属の結合を形成する、第1の材料の接続金属ノードを生成し、自立焼結金属マトリックス体を形成する。