(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20220926BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20220926BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2020546072
(86)(22)【出願日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 JP2019035882
(87)【国際公開番号】W WO2020054800
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】P 2018170735
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019100243
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】山田 直良
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 達也
(72)【発明者】
【氏名】大室 克文
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006439(JP,A)
【文献】特開2006-301605(JP,A)
【文献】特開2010-230742(JP,A)
【文献】特開2008-268778(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1335
G02F 1/13363
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第一偏光子、光学異方性層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に有する液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極により、前記基板に対し平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルは、250ppi以上の画面解像度となる画素を有し、
前記画素は、それぞれ少なくとも、青色、緑色、および赤色のサブピクセルを有し、
前記サブピクセルは、少なくとも一辺が前記第一偏光子の吸収軸または前記第二偏光子の吸収軸とのなす角が0°より大きく5°以下であるシェブロン構造を有し、
前記液晶セルの可視光域における偏光解消度が以下の式(1)および式(2)を満た
し、
前記光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーションRe1(550)、および、波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth1(550)が、以下の式(3)および式(4)を満たす、液晶表示装置。
式(1):DI_blue(φ=0°、θ=60°)/DI_red(φ=0°、θ=60°)>0.80
式(2):DI_blue(φ=90°、θ=60°)/DI_red(φ=90°、θ=60°)>0.80
DI_blue(φ=0°、θ=60°)は、前記液晶表示装置における視認側の偏光子の吸収軸方位で、かつ、前記液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長400~500nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表し、DI_red(φ=0°、θ=60°)は、前記液晶表示装置における視認側の偏光子の吸収軸方位で、かつ、前記液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長600~700nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表し、DI_blue(φ=90°、θ=60°)は、前記液晶表示装置における視認側の偏光子の透過軸方位で、かつ、前記液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長400~500nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表し、DI_red(φ=90°、θ=60°)は、前記液晶表示装置における視認側の偏光子の透過軸方位で、かつ、前記液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長600~700nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表す。
式(3):200nm≦Re1(550)≦400nm
式(4):-40nm≦Rth1(550)≦40nm
【請求項2】
少なくとも、第一偏光子、光学異方性層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に有する液晶表示装置であって、
前記液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、前記一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、前記電極により、前記基板に対し平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
前記液晶セルは、250ppi以上の画面解像度となる画素を有し、
前記画素は、それぞれ少なくとも、青色、緑色、および赤色のサブピクセルを有し、
前記サブピクセルは、少なくとも一辺が前記第一偏光子の吸収軸または前記第二偏光子の吸収軸とのなす角が0°より大きく5°以下であるシェブロン構造を有し、
前記液晶セルの可視光域における偏光解消度が以下の式(1)および式(2)を満たし、
前記光学異方性層が、第一光学異方性層と第二光学異方性層との積層体であり、
前記第一光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーションRe1(550)、および波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth1(550)が、以下の式(5)および(6)を満たし、
前記第二光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーションRe2(550)、および波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth2(550)が、以下の式(7)および(8)を満たす、液晶表示装置。
式(1):DI_blue(φ=0°、θ=60°)/DI_red(φ=0°、θ=60°)>0.80
式(2):DI_blue(φ=90°、θ=60°)/DI_red(φ=90°、θ=60°)>0.80
DI_blue(φ=0°、θ=60°)は、前記液晶表示装置における視認側の偏光子の吸収軸方位で、かつ、前記液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長400~500nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表し、DI_red(φ=0°、θ=60°)は、前記液晶表示装置における視認側の偏光子の吸収軸方位で、かつ、前記液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長600~700nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表し、DI_blue(φ=90°、θ=60°)は、前記液晶表示装置における視認側の偏光子の透過軸方位で、かつ、前記液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長400~500nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表し、DI_red(φ=90°、θ=60°)は、前記液晶表示装置における視認側の偏光子の透過軸方位で、かつ、前記液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長600~700nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表す。
式(5):80nm≦Re1(550)≦200nm
式(6):20nm≦Rth1(550)≦150nm
式(7):0nm≦Re2(550)≦40nm
式(8):-160nm≦Rth2(550)≦-40nm
【請求項3】
前記第一光学異方性層が正のAプレートであり、前記第二光学異方性層が正のCプレートである、請求項
2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記第一光学異方性層および前記第二光学異方性層の少なくとも一方が、液晶性化合物が配向した状態で固定化されたフィルムである、請求項
2または
3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記液晶層の波長550nmにおけるΔndが、330nm以下である、請求項
1~4のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記光学異方性層が、ポリビニルアルコール系接着剤を介して前記第一偏光子と直接接着されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
前記光学異方性層が、活性エネルギー線の照射または加熱により硬化する硬化性接着剤組成物を介して前記第一偏光子と直接接着されている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項8】
中央部で折れ曲がった屈曲構造である前記シェブロン構造の外形線を構成する辺のうち、前記中央部を通る屈曲線を構成する一辺が、前記第一偏光子の吸収軸または前記第二偏光子の吸収軸とのなす角が0°より大きく5°以下である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IPS(In-Plane Switching)型およびFFS(Fringe Field Switching)型の液晶表示装置は、TN(Twisted Nematic)型およびVA(Vertical Alignment)型のように上下基板間に電界を印加し、液晶性化合物の立ち上がりによって駆動するモードではなく、基板面にほぼ平行な成分を含む電界によって液晶性化合物を基板面内方向に応答させる横電界方式と言われる方式(モード)である。
IPS型およびFFS型は、その構造から原理的に視野角への制限が少ない方式であるため、視野角が広い上に色度変移および色調変化が少ないといった特性を持つ駆動方式として知られている。
【0003】
これらの横電界方式の液晶表示装置に関しては、特許文献1において、黒表示の斜め方向における色味変化を低減するために、偏光板、液晶層、カラーフィルター、および、光学補償部材を組み合わせた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、液晶セルに備えられるカラーフィルター層の厚さ方向のリタデーションRthや、光学補償部材の複屈折などを適切に調整することによって、偏光子の吸収軸からずれた方位の斜め方向から見た場合の光漏れを低減し、液晶表示装置の黒表示の視野角特性を改善する方法が記載されている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の方法を用いた場合、偏光子の吸収軸からずれた方位の斜め方向から見た場合の光漏れを低減することはできるものの、偏光子の吸収軸の方位の斜め方向から見た場合の光漏れについては、全く低減することができないことがわかった。そのため、特許文献1に記載の方法では、液晶表示装置の黒表示の視野角特性の改善は不十分である。さらに、特許文献1に記載の方法では、偏光子の吸収軸の方位と、偏光子の吸収軸からずれた方位とで黒表示の光漏れの色味が異なり、かえって表示品位を悪化させる場合があることがわかった。
【0006】
また、本発明者らはさらに検討を重ねた結果、偏光子の吸収軸の方位の斜め方向から見た場合の光漏れの色味と、偏光子の透過軸の方位(すなわち、吸収軸と直交する方位)の斜め方向から見た場合の光漏れの色味が、一方において青味がかって視認され、もう一方において赤味がかって視認される場合があることがわかった。そのため、方位によって光漏れの色味が青~赤まで連続的に変化することになり、黒表示の表示品位を著しく低下させることがわかった。
さらに、上記の問題は、250ppiを超える画面解像度を有し、高画質な画像表示を可能とする液晶表示装置において、特に顕著に問題として認識されることがわかった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、偏光子の吸収軸からずれた方位だけでなく、すべての方位において斜め方向から視認した際の光漏れの色味変化を抑制し、黒表示において高い表示品位を有する液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0009】
[1] 少なくとも第一偏光子、光学異方性層、液晶セル、および、第二偏光子をこの順に有する液晶表示装置であって、
液晶セルは、少なくとも一方が電極を有する対向配置された一対の基板と、一対の基板間に配置され、配向制御された液晶性化合物を含む液晶層とを有し、電極により、基板に対し平行な成分を持つ電界を形成する、IPS方式またはFFS方式の液晶セルであり、
液晶セルは250ppi以上の画面解像度となる画素を有し、
画素は、それぞれ少なくとも、青色、緑色、および赤色のサブピクセルを有し、
サブピクセルは、少なくとも一辺が第一偏光子の吸収軸または第二偏光子の吸収軸とのなす角が0°より大きく5°以下であるシェブロン構造を有し、
液晶セルの可視光域における偏光解消度が後述する式(1)および式(2)を満たす、液晶表示装置。
[2] 液晶層の波長550nmにおけるΔndが、330nm以下である、[1]に記載の液晶表示装置。
[3] 光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーションRe1(550)、および、波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth1(550)が、後述する式(3)および式(4)を満たす、[1]または[2]に記載の液晶表示装置。
[4] 光学異方性層が、第一光学異方性層と第二光学異方性層との積層体であり、第一光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーションRe1(550)、および波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth1(550)が、以下の式(5)および(6)を満たし、第二光学異方性層の波長550nmにおける面内レターデーションRe2(550)、および波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth2(550)が、後述する式(7)および(8)を満たす、[1]または[2]に記載の液晶表示装置。
[5] 第一光学異方性層が正のAプレートであり、第二光学異方性層が正のCプレートである、[4]に記載の液晶表示装置。
[6] 第一光学異方性層と第二光学異方性層の少なくとも一方が、液晶性化合物が配向した状態で固定化されたフィルムである、[4]または[5]に記載の液晶表示装置。
[7] 光学異方性層が、ポリビニルアルコール系接着剤を介して第一偏光子と直接接着されている、[1]~[6]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[8] 光学異方性層が、活性エネルギー線の照射または加熱により硬化する硬化性接着剤組成物を介して第一偏光子と直接接着されている、[1]~[6]のいずれかに記載の液晶表示装置。
[9] 中央部で折れ曲がった屈曲構造であるシェブロン構造の外形線を構成する辺のうち、中央部を通る屈曲線を構成する一辺が、第一偏光子の吸収軸または第二偏光子の吸収軸とのなす角が0°より大きく5°以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、偏光子の吸収軸からずれた方位だけでなく、すべての方位において斜め方向から視認した際の光漏れの色味変化を抑制し、黒表示において高い表示品位を有する液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明における偏光解消度の測定法を示す模式図である。
【
図2】本発明の液晶表示装置の第1の実施形態の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明における偏光解消度の測定法を示す模式図である。
【
図4】液晶セル中のサブピクセルを説明するための図である。
【
図5】サブピクセルの形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0013】
また、本明細書において、偏光板とは、偏光子の少なくとも一方の表面に保護層または機能層が配置されたものをいい、偏光子と偏光板は区別して用いる。
【0014】
また、本明細書において、平行および直交とは、厳密な意味での平行および直交を意味するのではなく、それぞれ、平行または直交から±5°の範囲を意味する。
【0015】
本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。特に記載がないとき、波長λは550nmとする。
本明細書において、Re(λ)およびRth(λ)は、AxoScan OPMF-1(オプトサイエンス社製)を用い、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((nx+ny+nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2-nz)×dが算出される。
【0016】
本発明において、屈折率nxおよびnyは、それぞれ、光学部材の面内方向における屈折率であり、通常、nxが遅相軸方位の屈折率、nyが進相軸方位(すなわち、遅相軸と直交する方位)の屈折率である。また、nzは厚み方向における屈折率である。nx、ny、およびnzは、アッベ屈折計(NAR-4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定できる。
また、波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR-M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルタとの組合せで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することもできる。
【0017】
本明細書において、偏光解消度とは、光学部材に直線偏光が入射された際、出射光が非偏光に変換される割合を意味する。すなわち、偏光解消度がDIであるとした場合、偏光度1の直線偏光が入射されると、出射光の偏光度は(1-DI)となる。
ここで、偏光解消度DIは無次元量であり、入射光の各波長に対して定義される。
【0018】
本明細書において偏光解消度を測定する手順を、
図1を用いて説明する。
まず、測定の対象となる光学部材100の両面に、偏光子101および102を平行に配置する。このとき、偏光子101および102は光学部材100に接触しておらず、それぞれ、ステッピングモーターなどを用いて、偏光子面の面内で回転させられるようになっている。
次に、偏光子102の光学部材100の側とは反対の側に、白色面光源14を設置する。白色面光源14としては、例えば、市販の液晶表示装置から取り出したバックライトユニットなどを用いることができる。
次に、偏光子101の光学部材100の側とは反対の側に、分光輝度計103を設置する。分光輝度計103としては、例えば、株式会社トプコンテクノハウス製の分光放射計SR-UL2などを用いることができる。
図1の配置において、偏光子101および偏光子102を回転させて、光学部材100、偏光子101および102を透過する光量が最も小さくなる角度を決定する。このときの分光放射輝度を各波長λにおいて測定し、L_min1(λ)とする。次に、偏光子101を回転させて、光量が最大となる角度を決定し、このときの分光放射輝度をL_max1(λ)とする。得られた測定値から、以下の式(9)を用いて、
図1の配置での各波長λにおけるコントラストCR1(λ)を算出する。
式(9):CR1(λ)=L_max1(λ)/L_min1(λ)
【0019】
本明細書においては、波長λは400nm~700nmの範囲で、1nmキザミで測定している。
次に、
図1の配置から光学部材100を取り除き、偏光子101および偏光子102からなる配置とし、上記と同様に光量が最小となる角度での分光放射輝度L_min2(λ)、および、光量が最大となる角度での分光放射輝度L_max2(λ)を測定する。次に、以下の式(10)を用いて、偏光子のみのコントラストCR2(λ)を算出する。
式(10):CR2(λ)=L_max2(λ)/L_min2(λ)
【0020】
以上の測定値より、光学部材100の偏光解消度DIは、各波長λにおいて以下の式(11)で算出される。
式(11):DI(λ)=2×(1/CR1(λ)-1/CR2(λ))
なお、液層セルの可視光域における偏光解消度を測定する際には、光学部材100として液晶セルを用いて測定を行う。
【0021】
本明細書においては、偏光解消度DIは各波長λにおいて定義される。また、波長400nm~500nmにおける偏光解消度の平均値を、DI_blueと表記し、波長600nm~700nmにおける偏光解消度の平均値を、DI_redと表記する。
また、斜め方向からの視認における偏光解消度は、光学部材100をその角度から見るように、分光輝度計103の位置および角度を調整し、上記と同様に測定できる。
例えば、光学部材100の法線方向から60°をなす角度における偏光解消度を測定する際には、
図3に示すように、分光輝度計103を法線方向から60°の位置に配置して、上記と同様に測定を行う。より具体的には、例えば、液晶表示装置における視認側の偏光子の吸収軸方位で、かつ、液晶セルの法線方向から60°をなす角度における偏光解消度を測定する際には、液晶セルが液晶表示装置中に配置された場合における、液晶表示装置中の視認側の偏光子の吸収軸方位でかつ液晶セルの法線方向から60°をなす角度になる位置と液晶セルとの位置関係と同様の位置関係となるように、
図3における分光輝度計103の位置を測定対象である液晶セルに対して配置して、上記と同様の測定を行う。
【0022】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。
図2に示す液晶表示装置は、第一偏光板16(第一偏光子の保護層1、第一偏光子2、第二光学異方性層4、第一光学異方性層5)、液晶セル17(液晶セルの上側基板7、液晶層8、液晶セルの下側基板9)、第二偏光板18(第二偏光子の液晶セル側保護層10、第二偏光子11、第二偏光子のバックライト側保護層13)、およびその外側にバックライトユニット14を有する。液晶セル17は、上側基板7と下側基板9と、これらに挟持される液晶層8とを含む。
なお、
図2は本実施形態の一例であり、バックライトユニットが第二偏光板18の外側ではなく、第一偏光板16の外側に配置される構成であっても、同様に本発明の効果を得ることができる。
【0023】
(偏光子の保護層)
偏光子の保護層1、10、13は、第一偏光子2、および第二偏光子11の保護のために設けられる。
保護層の種類は特に制限されないが、例えば、セルロースアシレート、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、環状ポリオレフィン、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、および、ポリエステルなどのフィルムが挙げられる。なかでも、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィン、ポリアクリレートフィルム、または、ポリメタクリレートフィルムが好ましい。また、市販品のセルロースアセテートフィルム(例えば、富士フイルム株式会社製の「TD80U」や「Z-TAC」など)も挙げられる。
第一偏光板16および第二偏光板18は、保護層を片面のみに有していても、両面に有していてもよい。また、保護層は1層のみの形態であっても、2層以上が積層された形態であってもよい。
【0024】
保護層の厚みは特に制限されないが、液晶表示装置の薄型化の点から、80μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。下限は特に制限されないが、機械的強度の点から、1μm以上が好ましい。
【0025】
(第一偏光子および第二偏光子)
第一偏光子2および第二偏光子11の種類は特に制限はなく、公知のものを使用できる。
本発明では、通常用いられる直線偏光子を利用できる。直線偏光子は、バインダーとヨウ素若しくは二色性色素とからなる偏光子、または、塗布型偏光子が好ましい。
直線偏光子におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素および二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、または、二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。現在、市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素または二色性色素の溶液に浸漬し、ヨウ素または二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されることが一般的である。
【0026】
第一偏光子2および第二偏光子11の厚みは特に制限されないが、液晶表示装置の薄型化の点から、30μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。特に、液晶表示装置の使用時および耐久試験時において、各部材間の寸法変化の違いにより、偏光板に亀裂および破断などの外観不良が発生することを抑止する点から、第一偏光子2および第二偏光子11の厚みは10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、3μm以下がさらに好ましい。第一偏光子2および第二偏光子11の厚みの下限は特に制限されないが、機械的強度の点から、2μm以上が好ましい。
【0027】
(光学異方性層)
光学異方性層15は、第一偏光板16を構成する部材の一部であり、液晶セル17の光学補償のために用いられる。また、前述の保護層を兼ねることもできる。光学異方性層15は1層または2層以上で構成されるが、本発明においては1層または2層で構成されることが好ましい。2層で構成される場合には、光学異方性層15は第一光学異方性層5と第二光学異方性層4との積層体である。
図2には、光学異方性層15が2層からなる場合が図示されている。
光学異方性層15の厚みは、液晶表示装置の薄型化の点から、光学特性、機械物性、および、製造適性を損ねない限りは薄いことが好ましく、具体的には、1~150μmが好ましく、1~70μmがより好ましく、1~30μmがさらに好ましい。特に、液晶表示装置の使用時および耐久試験時において、各部材間の寸法変化の違いにより、偏光板に亀裂および破断などの外観不良が発生することを抑止する点から、光学異方性層15の厚みは1~7μmが好ましく、1~5μmがより好ましい。
【0028】
光学異方性層15は、製造のしやすさなどの点から、ポリマーフィルム、または、液晶性組成物を用いて形成されるフィルムであることが好ましい。
ポリマーフィルムとしては、セルロースアシレート系フィルム、シクロオレフィン系ポリマーフィルム(シクロオレフィン系ポリマーを用いたポリマーフィルム)、または、アクリル系ポリマーフィルムが好ましい。アクリル系ポリマーフィルムとしては、ラクトン環単位、無水マレイン酸単位、および、グルタル酸無水物単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含むアクリル系ポリマーを含むことが好ましい。
【0029】
また、液晶性組成物を用いて形成されるフィルムとしては、液晶性化合物が配向した状態で固定化したフィルムが好ましい。なかでも、重合性基を有する液晶性化合物を含む組成物を塗布して塗膜を形成し、塗膜中の液晶性化合物を配向させて、硬化処理を施して液晶性化合物の配向を固定化してなるフィルムがより好ましい。
液晶性化合物としては、棒状液晶性化合物および円盤状液晶性化合物が挙げられ、配向状態を固定化するために重合性基を有していることが好ましい。
【0030】
光学異方性層15が液晶性組成物を用いて形成されるフィルムである場合には、配向膜を用いて上記フィルムを形成してもよい。
配向膜は、一般的にはポリマーを主成分とする。配向膜用ポリマー材料としては、多数の文献に記載があり、多数の市販品を入手できる。利用されるポリマー材料は、ポリビニルアルコールまたはポリイミド、および、その誘導体が好ましい。特に、変性または未変性のポリビニルアルコールが好ましい。本発明に使用可能な配向膜については、WO01/088574号パンフレットの43頁24行~49頁8行、特許第3907735号公報の段落[0071]~[0095]に記載の変性ポリビニルアルコールなどを参照できる。なお、前述の配向膜には、通常、公知のラビング処理が施される。
配向膜の厚さは、薄い方が好ましいが、光学異方性層形成のための配向能の付与、および、フィルムの表面凹凸を緩和して均一な膜厚の光学異方性層を形成するという点から、ある程度の厚みが必要となる。具体的には、配向膜の厚さは、0.01~10μmが好ましく、0.01~1μmがより好ましく、0.01~0.5μmがさらに好ましい。
また、本発明では光配向膜を利用することも好ましい。光配向膜としては特に限定されないが、WO2005/096041号パンフレットの段落[0024]~[0043]に記載のものやRolic echnologies社製の商品名LPP-JP265CPなどを好適に挙げられる。
【0031】
(光学異方性層が1層からなる場合)
光学異方性層15が1層からなる場合、光学異方性層15の波長550nmにおける面内レターデーションRe1(550)、および、波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth1(550)は、以下の式(3)および(4)を満たすことが好ましい。
式(3):200nm≦Re1(550)≦400nm
式(4):-40nm≦Rth1(550)≦40nm
また、光学異方性層15は、以下の式(12)および(13)を満たすことがより好ましい。
式(12):280nm≦Re1(550)≦320nm
式(13):-20nm≦Rth1(550)≦20nm
【0032】
また、光学異方性層15が1層からなる場合、光学異方性層15の遅相軸の方位は、第一偏光子の吸収軸の方位と直交方向であることが好ましい。
【0033】
1層からなる光学異方性層15は、例えば、ポリマーフィルムを延伸することによって得られる。具体的には、例えば、芳香族アシル基で置換されたセルロースアシレートであるセルロースアセテートベンゾエートを用いたフィルムの場合、セルロースアセテートベンゾエートを溶媒に溶解させたドープを成膜用の金属支持体上に流延し、溶媒を乾燥してフィルムを得て、得られたフィルムを1.3~1.9倍程度の大きな延伸倍率で延伸してセルロース分子鎖を配向させる方法が挙げられる。
また、例えば、特開平5-157911号公報、特開2006-072309号公報、および、特開2007-298960号公報に記載のように、高分子フィルムの片面または両面に収縮性フィルムを貼り合わせて、加熱延伸することにより作製することも可能である。
【0034】
光学異方性層15は、Re1およびRth1が逆分散の波長分散性を示すことも好ましい。
ここで、逆分散の波長分散性とは、Re1(λ)およびRth1(λ)が、波長λが大きくなるに従って大きな値となることを言う。
【0035】
(光学異方性層が2層からなる場合)
光学異方性層15が2層からなる場合、第一光学異方性層5がnx>ny≧nzの2軸フィルム(B-プレートまたは正のAプレート)、第二光学異方性層4がnx≒ny<nzの[準]一軸性フィルム(正の[準]Cプレート)であることが好ましい。
具体的には、第一光学異方性層5の、波長550nmにおける面内レターデーションRe1(550)、および、波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth1(550)が、以下の式(5)および(6)を満たし、第二光学異方性層4の、波長550nmにおける面内レターデーションRe2(550)、および、波長550nmにおける厚み方向のレターデーションRth2(550)が、以下の式(7)および(8)を満たすことが好ましい。
式(5):80nm≦Re1(550)≦200nm
式(6):20nm≦Rth1(550)≦150nm
式(7):0nm≦Re2(550)≦40nm
式(8):-160nm≦Rth2(550)≦-40nm
【0036】
また、第一光学異方性層5が、以下の式(14)および式(15)を満たし、第二光学異方性層4が、以下の式(16)および式(17)を満たすことがより好ましい。
式(14):100nm≦Re1(550)≦150nm
式(15):50nm≦Rth1(550)≦120nm
式(16):0nm≦Re2(550)≦20nm
式(17):-140nm≦Rth2(550)≦-80nm
本実施形態においては、第一光学異方性層5が液晶セル17の側、第二光学異方性層4が第一偏光子2の側に配置される。なお、第一光学異方性層と第二光学異方性層の位置関係は、
図2の態様と逆でもよい。
【0037】
また、光学異方性層15が2層からなる場合、第一光学異方性層5の遅相軸の方位は、第一偏光子の吸収軸の方位と平行であることが好ましい。
【0038】
第一光学異方性層5は、溶融成膜方式および溶液成膜方式などの適宜な方式で製造したポリマーフィルム(例えば、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、および、ポリカーボネートフィルム)であってもよい。ポリマーフィルムは、例えば、ロールの周速制御による縦延伸方式、テンターによる横延伸方式、および、二軸延伸方式などにより、延伸処理することにより得られる。より具体的には、特開2005-338767号公報の記載を参照することができる。
また、第一光学異方性層5は、配向により2軸性を示す重合性基を有する液晶性化合物を含む液晶性組成物から形成されるポリマーであってもよい。
また、第一光学異方性層5は、液晶性化合物の配向状態を固定して所望の位相差を有する層であってもよい。
第一光学異方性層5は、液晶性化合物が配向した状態で固定化したフィルムであることが好ましく、棒状液晶性化合物が基板面に対して水平方向に配向した状態で固定化したフィルムであることがより好ましい。
液晶性化合物としては、逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物が好ましい。例えば、WO2017/043438号パンフレットに記載される逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物が挙げられる。
第一光学異方性層5の厚みは、1~80μmが好ましく、1~40μmがより好ましく、1~25μmがさらに好ましい。
【0039】
第一光学異方性層5は、正のAプレート(ポジティブAプレート)であることが好ましい。
本明細書において、正のAプレートは以下のように定義する。正のAプレートは、フィルムの面内遅相軸方向(面内での屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、面内遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、以下の式(18)の関係を満たすものである。なお、ポジティブAプレートはRthが正の値を示す。
式(18):nx>ny≒nz
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。「実質的に同一」とは、例えば、(ny-nz)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、-10~10nm、好ましくは-5~5nmの場合も「ny≒nz」に含まれる。
【0040】
第二光学異方性層4は、ポリマーフィルム(例えば、セルロースアシレートフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、および、ポリカーボネートフィルム)であってもよい。なお、ポリマーフィルムは、面内レターデーションを発現させない様に成膜し、熱収縮フィルムなどを用いて厚み(nz)方向に延伸する方法で得ることができる。
また、第二光学異方性層4は、液晶性化合物の配向状態を固定して所望の位相差を有する層であってもよい。
第二光学異方性層4は、液晶性化合物が配向した状態で固定化したフィルムであることが好ましく、棒状液晶性化合物が基板面に対して垂直方向に配向した状態で固定化したフィルムであることがより好ましい。
液晶性化合物としては、逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物が好ましい。例えば、WO2017/043438号パンフレットに記載される逆分散の波長分散性を示す液晶性化合物が挙げられる。
第二光学異方性層の厚みは、1~80μmが好ましく、1~40μmがより好ましく、1~25μmがさらに好ましい。
【0041】
第二光学異方性層4は、正のCプレート(ポジティブCプレート)であることが好ましい。
なお、本明細書において、正のCプレートは以下のように定義する。正のCプレートは、フィルムの面内遅相軸方向(面内での屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、面内遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をny、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、以下の式(19)の関係を満たすものである。なお、ポジティブCプレートはRthが負の値を示す。
式(19):nx≒ny<nz
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。「実質的に同一」とは、例えば、(nx-ny)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、-10~10nm、好ましくは-5~5nmの場合も「nx≒ny」に含まれる。
【0042】
また、液晶表示装置の使用時および耐久試験時において、各部材間の寸法変化の違いにより、偏光板に亀裂および破断などの外観不良が発生することを抑止する点から、第一光学異方性層5および第二光学異方性層4は、ともに液晶性化合物が配向した状態で固定化したフィルムであることが好ましい。液晶性化合物を用いると、光学異方性層15の厚みを7μm以下とすることが容易となる。
【0043】
(第一偏光板)
第一偏光板16は、上述した光学異方性層15と第一偏光子2とを少なくとも有する。第一偏光子2の、光学異方性層15と逆側の表面には、保護層1を設けてもよいし、硬化樹脂層を配置してもよいし、液晶表示装置の別の部材と直接貼りあわせてもよい。
【0044】
第一偏光子2、保護層1、および光学異方性層15の積層には、例えば、接着剤を用いることができる。接着剤としては、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液からなる接着剤、または、活性エネルギー線の照射または加熱により硬化する硬化性接着剤組成物が好ましい。硬化性接着剤組成物としては、カチオン重合性化合物を含有する硬化性接着剤組成物、および、ラジカル重合性化合物を含有する硬化性接着剤組成物などが挙げられる。
接着剤層の厚さは、0.01~20μmが好ましく、0.01~10μmがより好ましく、0.05~5μmがさらに好ましい。接着剤層の厚さがこの範囲にあれば、積層される保護層または光学異方性層と偏光子との間に浮きや剥がれを生じず、実用上問題のない接着力が得られる。
【0045】
第一偏光板16の厚みは、液晶表示装置を薄型化する点から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。
【0046】
また、液晶表示装置の使用時および耐久試験時において、各部材間の寸法変化の違いにより、偏光板に亀裂および破断などの外観不良が発生することを抑止する点から、第一偏光子2および光学異方性層15の厚みは、ともに7μm以下が好ましい。さらに、同様の点から、第一偏光子2および光学異方性層15の同一方向における線膨張係数および湿度寸法変化率が近しいことが好ましい。特に、第一偏光子2の吸収軸と直交する方位(すなわち、透過軸の方位)において、線膨張係数および湿度寸法変化率が近しいことが好ましい。具体的には、第一偏光子2の吸収軸と直交する方位における、第一偏光子2と光学異方性層15の線膨張係数の差異は、20ppm/℃以下が好ましく、10ppm/℃以下がより好ましい。
【0047】
また、第一偏光板16は、二色性色素および液晶性化合物を含んでなる第一偏光子2と、液晶性化合物が配向した状態で固定化したフィルムである光学異方性層15とを有することも好ましい。このとき、偏光子および光学異方性層をともに薄くすることが容易であり、かつ、偏光子および光学異方性層の線膨張係数および湿度寸法変化率を近しい値とすることが容易となる。二色性色素および液晶性化合物を含んでなる偏光子は、例えば、特開2018-120229号公報などを参照して作製できる。
【0048】
第一偏光板16は、液晶セル17に対して、視認側に設置されていてもよいし、バックライト側に設置されていてもよい。どちらの場合でも、同様に本発明の効果を得ることができる。
図2には、第一偏光板16が視認側に設置される場合が図示されている。
【0049】
第一偏光板16は、粘着剤を用いて液晶セル17に貼合することができる。液晶表示装置の使用時および耐久試験時において、各部材間の寸法変化の違いにより、偏光板に亀裂および破断などの外観不良が発生することを抑止する点から、粘着剤の厚みは薄い方が好ましく、具体的には、20μm以下が好ましい。また、同様の点から、20℃における粘着剤の貯蔵弾性率は、0.5MPa以上が好ましい。また、80℃における粘着剤の貯蔵弾性率は、0.2MPa以上が好ましい。
【0050】
(第二偏光板)
第二偏光板18は、液晶セル17に対し、第一偏光板16とは反対側の面に配置される偏光板である。
第二偏光板18は、少なくとも第二偏光子11を含んでいれば特にその構成は限定されない。第二偏光子11としては、上述した第一偏光子2で例示した偏光子を使用でき、その厚みの好適範囲も上述の通りである。
なお、第一偏光板16の表面の法線方向から観察したとき、第一偏光板16中の第一偏光子2の吸収軸3と、第二偏光板18中の第二偏光子11の吸収軸12とのなす角は、直交であることが好ましい。
【0051】
第二偏光板18においては、第二偏光子11以外に、保護層などが含まれていてもよい。特に、液晶セル17の側に保護層を設ける場合には、保護層はレターデーションが小さいフィルムであることが好ましい。液晶セル17の側の保護層の面内レターデーションRe(550)は、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、2nm以下がさらに好ましい。膜厚方向のレターデーションRth(550)は、10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、2nm以下がさらに好ましい。
【0052】
(液晶セル)
本発明の液晶セル17は、横電界方式であるIPSモードまたはFFSモードの液晶セルである。
IPSモードの液晶セルは、電圧無印加時に液晶層中の液晶性化合物(特に、棒状液晶性化合物が好ましい)が実質的に面内に水平に配向しており、電圧印加によって液晶性化合物の配向方向を変えることでスイッチングすることが特徴である。具体的には、特開2004-365941号公報、特開2004-012731号公報、特開2004-215620号公報、特開2002-221726号公報、特開2002-055341号公報、および、特開2003-195333号公報に記載のものなどを参照できる。これらのモードは黒表示時に液晶性化合物が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶性化合物を上側基板7および下側基板9の表面に対して平行配向させて、黒表示を実現する。
FFSモードは、IPSモードと同様に基板の表面に対して液晶性化合物が常に水平であるようにスイッチングするモードであり、基板の表面に対して水平方向の横電界を用いて液晶分子をスイッチングさせる。一般的に、FFSモードはベタ電極と層間絶縁膜とくし歯電極を有しており、電界方向がIPSとは異なる特徴を有している。
【0053】
液晶層8中の液晶性化合物は、白表示時および黒表示時のいずれも基板の表面に対して水平に配向していることが理想的であるが、低傾斜角で傾斜配向していてもよい。一般に、液晶セルの基板を布でラビングし、液晶層を配向する場合、液晶性化合物は基板界面に対し低傾斜角で傾斜配向しており、UV(Ultraviolet)光をガラス基板に照射することにより液晶層を配向する場合(光配向)、液晶性化合物は水平に近い配向をする。黒表示時の斜め方向からの視認における、方位による色味変化を抑制する点から、光配向を用いることが好ましい。
液晶セル内の液晶性化合物の遅相軸(黒表示時の遅相軸)と、第二偏光子の吸収軸とが平行になるよう配置されることが好ましい。
【0054】
液晶セル17の構成としては、少なくとも上記液晶層8、および液晶層8を挟むように2枚の上側基板7および下側基板9が配置されていればよく、他の部材が含まれていてもよい。また、少なくとも一方の基板の表面上に透明電極が配置されていてもよい。なお、後述するように、少なくとも一方の基板の表面上には、サブピクセル電極として透明電極が配置されていてもよい。
また、液晶セルには、カラーフィルター層およびTFT(Thin Film Transistor)層が含まれていてもよい。カラーフィルター層およびTFT層の位置は特に制限されず、上側基板7または下側基板9のいずれかの表面に配置されることが一般的である。カラーフィルター層およびTFT層は、上側基板7と下側基板9との間に配置されることが好ましい。
【0055】
液晶セル17は、少なくとも青色、緑色、および赤色のサブピクセルからなる画素を有し、250ppi以上の画面解像度を有する。
なお、画像解像度の上限は特に制限されないが、1000ppi以下の場合が多い。
ここで、画面解像度が250ppi以上であるとは、液晶セル17の縦方向または横方向の一辺において、長さ1インチ(約2.54mm)当たり250個以上の画素を有していることを意味する。
画面解像度が250ppi以上であることにより、本発明の液晶表示装置は画像表示において非常に高い表示品位を有している。
【0056】
また、液晶セル17は、可視光域における偏光解消度が以下の式(1)および式(2)を満たす。
式(1):DI_blue(φ=0°、θ=60°)/DI_red(φ=0°、θ=60°)>0.80
式(2):DI_blue(φ=90°、θ=60°)/DI_red(φ=90°、θ=60°)>0.80
ここで、DI_blueおよびDI_redは、それぞれ、液晶セルの波長400~500nmおよび600~700nmにおける偏光解消度の平均値であり、DI(φ=0°、θ=60°)およびDI(φ=90°、θ=60°)は、それぞれ、液晶表示装置における視認側の偏光子の吸収軸方位および透過軸方位で、液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、液晶セル17の偏光解消度を表す。
つまり、DI_blue(φ=0°、θ=60°)は、液晶表示装置における視認側の偏光子の吸収軸方位で、かつ、液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長400~500nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表し、DI_red(φ=0°、θ=60°)は、液晶表示装置における視認側の偏光子の吸収軸方位で、かつ、液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長600~700nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表し、DI_blue(φ=90°、θ=60°)は、液晶表示装置における視認側の偏光子の透過軸方位で、かつ、液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長400~500nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表し、DI_red(φ=90°、θ=60°)は、液晶表示装置における視認側の偏光子の透過軸方位で、かつ、液晶セルの法線方向から60°をなす角度における、波長600~700nmにおける液晶セルの偏光解消度の平均値を表す。
液晶セル17の偏光解消度が上記の式(1)および式(2)を満たすことによって、本発明の液晶表示装置は、黒表示時の斜め方向からの視認における、方位による色味変化が抑制される。特に、方位により光漏れが赤味がかって視認されることを抑制できる。
【0057】
黒表示の斜め方向からの視認において、方位により光漏れが赤味がかって視認されることをさらに抑制する点から、液晶セル17の可視光域における偏光解消度は、以下の式(20)または式(21)を満たすことが好ましく、式(22)または式(23)を満たすことがより好ましい。
式(20):DI_blue(φ=0°、θ=60°)/DI_red(φ=0°、θ=60°)>1.00
式(21):DI_blue(φ=90°、θ=60°)/DI_red(φ=90°、θ=60°)>1.00
式(22):DI_blue(φ=0°、θ=60°)/DI_red(φ=0°、θ=60°)>1.20
式(23):DI_blue(φ=90°、θ=60°)/DI_red(φ=90°、θ=60°)>1.20
【0058】
DI_blue(φ=0°、θ=60°)/DI_red(φ=0°、θ=60°)の上限は特に制限されないが、1.50未満である場合が多い。
DI_blue(φ=90°、θ=60°)/DI_red(φ=90°、θ=60°)の上限は特に制限されないが、1.50未満である場合が多い。
【0059】
液晶セル17の各サブピクセルは、少なくとも一辺(好ましくは、後述する屈曲線を構成する辺)が第一偏光子2の吸収軸または第二偏光子11の吸収軸とのなす角が0°より大きく5°以下であるシェブロン構造を有する。
通常、IPSモードまたはFFSモードの液晶セルは、偏光子の吸収軸とのなす角が5°よりも大きな角度である辺を有するシェブロン構造を有することが一般的である。これにより、電圧印加時に液晶性化合物の配向方向が回転する方位が制限され、白表示時において斜め方向から視認した場合の色味変化を抑制できる。
一方、本発明者らの検討によれば、シェブロン構造の少なくとも一辺(好ましくは、後述する屈曲線を構成する辺)と偏光子の吸収軸とのなす角が5°よりも大きいと、液晶セルの斜め方向における偏光解消度が方位によって大きく変化し、黒表示時の斜め方向からの視認における、方位による色味変化が大きくなってしまうことがわかった。本発明者らは、シェブロン構造の少なくとも一辺との偏光子の吸収軸とのなす角が大きいと、液晶層において、画素の端部で液晶性化合物の配向方向の揺らぎが大きくなり、それにより液晶性化合物の配向方位で偏光解消度が大きくなってしまうことが要因のひとつであると推定している。そのため、前述の通り、各サブピクセルのシェブロン構造の少なくとも一辺と偏光子の吸収軸とのなす角は0°より大きく5°以下であることが好ましい。
【0060】
図4に、液晶セル17の各サブピクセルの一実施形態の模式図を示す。
図4に示すように、液晶セルの一画素は、破線で囲われたように、赤色のサブピクセル30R、緑色のサブピクセル30G、および、青色のサブピクセル30Bより構成されている。
赤色のサブピクセルとは、赤色のカラーフィルター層(以後、「RCF」ともいう。)が配置されたサブピクセルに該当し、緑色のサブピクセルとは、緑色のカラーフィルター層(以後、「GCF」ともいう。)が配置されたサブピクセルに該当し、青色のサブピクセルとは、青色のカラーフィルター層(以後、「BCF」ともいう。)が配置されたサブピクセルに該当する。つまり、各色のサブピクセルは、各色に対応するカラーフィルター層を含む。
BCFは青色領域(波長420~490nm)に最大透過率を示すカラーフィルター層であり、GCFは緑色領域(波長495~570nm)に最大透過率を示すカラーフィルター層であり、RCFは青色領域(波長580~700nm)に最大透過率を示すカラーフィルター層である。
なお、
図4において、赤色のサブピクセル30R、緑色のサブピクセル30G、および、青色のサブピクセル30B以外の領域には、通常、ブラックマトリックスが配置されている場合が多い。
【0061】
図4においては、画素は赤色のサブピクセル30R、緑色のサブピクセル30G、および、青色のサブピクセル30Bから構成されていたが、他の色のサブピクセルを更に有していてもよい。
【0062】
図4に示すように、各サブピクセル(赤色のサブピクセル30R、緑色のサブピクセル30G、および、青色のサブピクセル30B)は、いわゆるシェブロン構造を有している。
なお、サブピクセルがシェブロン構造を有するとは、サブピクセル部分に電界を印加するための電極(サブピクセル電極)がシェブロン構造を有することを意味する。サブピクセル電極は、液晶セルに含まれる対向配置された一対の基板の少なくとも一方に配置される。サブピクセル電極は、透明電極であることが好ましい。
また、
図4に示すように、サブピクセルに含まれるカラーフィルター層の形状も、サブピクセル電極に対応したシェブロン構造であることが好ましい。
【0063】
シェブロン構造とは、
図4に示すように、“く”の字型に屈曲した構造(折れ曲がった構造)である。言い換えると、シェブロン構造とは、
図4に示すように、中央部(C)で折れ曲がった屈曲構造を有するサブピクセルである。より詳細には、
図5に示すように、サブピクセル30(赤色のサブピクセル30R、緑色のサブピクセル30G、および、青色のサブピクセル30B)は、平行四辺形状の第1部分40と、第1部分40と同一構造(合同)の平行四辺形状の第2部分42とが、同じ長さの互いの一辺を共有するように結合して形成される屈曲構造を有する。言い換えれば、サブピクセル30は、第1部分40の第2部分42と共有する一辺と平行でない辺(
図5中の辺32および辺34)、および、第2部分42の第1部分41と共有する一辺と平行でない辺(
図5中、辺36および辺38)とのなす角(図中の角度A1)が、180°未満となる構造を有する。サブピクセル30の角度A1の大きさ(屈曲角度)は特に制限されないが、170°以上180°未満が好ましい。
なお、上記平行四辺形状とは、その全体形状が略平行四辺形の形をしていればよく、一部(例えば、平行四辺形の一つの角部)に欠けや、凸部などがあってもよい。また、上記平行四辺形状とは、4つの角の全てが等しい長方形状および正方形状は含まない。
【0064】
図4に示すように、液晶セル17において、各サブピクセルは互いに隣接して配置されている。つまり、シェブロン構造の外形線を構成する辺のうち、屈曲線(折れ曲がり線)(
図5中の辺32および辺36で構成される線、および、辺34および辺38で構成される線)を構成する辺同士が互いに平行となるように、サブピクセル同士が配置されている。上記屈曲線は、中央部で折れ曲がった屈曲構造であるシェブロン構造の中央部を通る屈曲線である。
より詳細には、
図5に示すサブピクセル30中の第1部分40の第2部分42と共有する一辺と平行でない辺(
図5中の辺32および辺34)、および、第2部分42の第1部分41と共有する一辺と平行でない辺(
図5中、辺36および辺38)が、サブピクセル間において平行となるように、サブピクセル同士が配置される。
【0065】
また、上述したように、液晶セル17の各サブピクセルは、少なくとも一辺(好ましくは、後述する屈曲線を構成する辺)が第一偏光子2の吸収軸または第二偏光子11の吸収軸とのなす角が0°より大きく5°以下であるシェブロン構造を有する。
上記構造の詳細を、
図5を用いて説明する。
図5中の紙面の上下方向に延びる黒色矢印は、偏光子の吸収軸を表す。本発明においては、シェブロン構造の外形線を構成する辺のうち、屈曲線(折れ曲がり線)(
図5中の辺32および辺36で構成される線、および、辺34および辺38で構成される線)を構成する辺(
図5中の辺32、辺34、辺36、および、辺38)と、偏光子の吸収軸とのなす角が0°より大きく5°以下であることが好ましい。より具体的には、
図5に示すサブピクセル30中の第1部分40の第2部分42と共有する一辺と平行でない辺(
図5中の辺32および辺34)、および、第2部分42の第1部分41と共有する一辺と平行でない辺(
図5中、辺36および辺38)と、偏光子の吸収軸とのなす角(
図5中の角度A2)が0°より大きく5°以下であることが好ましい。
なお、液晶表示装置中の2つの偏光子のうち、バックライト側に配置される偏光子の吸収軸と上記屈曲線を構成する辺とのなす角が、0°より大きく5°以下であることが好ましい。
【0066】
また、本発明者らの検討によれば、サブピクセルにおけるシェブロン構造と同様に、カラーフィルター層におけるスペーサーの構造も、黒表示時の斜め方向からの視認における、方位による色味変化の要因となり得ることがわかった。具体的には、例えば、赤色のサブピクセル領域のみにスペーサーが存在した場合、赤色のサブピクセルのみで液晶層の液晶性化合物の配向方向の揺らぎが大きくなってしまい、それにより液晶性化合物の配向方位で赤色の偏光解消度が大きくなってしまうことがあると推定している。
ここで、スペーサーとは、液晶セルにおいて、2枚の基板間の距離を一定に保つために設けられる柱材である。スペーサーは、通常カラーフィルター層のブラックマトリクス上に形成されるが、スペーサーの大きさによっては、一部がサブピクセルの領域に存在してしまうことがある。
上記の理由から、カラーフィルター層におけるスペーサーは、赤色、緑色、および青色のサブピクセルの領域に存在しないことが理想的であり、スペーサーがサブピクセルの領域に存在する場合には、全ての色のサブピクセル領域に均等の面積比で存在するか、少なくとも赤色のサブピクセル領域および青色のサブピクセル領域に均等の面積比で存在することが好ましい。
【0067】
また、本発明者らの検討によれば、液晶セル17の偏光解消度は、シェブロン構造の角度や、スペーサーの位置を調整する以外に、例えば、カラーフィルター層の偏光解消度を調整することによっても変化させることができる。具体的には、カラーフィルターの青色画素領域の偏光解消度を、赤色領域の偏光解消度に対して相対的に大きくすることによって、式(1)および式(2)を満たすようにすることができる。カラーフィルター層の偏光解消度は、カラーフィルター層にわずかな散乱性を付与することで大きくすることができる。例えば、カラーフィルター層に顔料系の色材を用いると、染料系の色材を用いた場合に比べて偏光解消度を大きくすることができる。
【0068】
また、本発明者らの検討によれば、液晶セル17の偏光解消度は、液晶層8のΔndを調整することによっても変化させることができる。具体的には、液晶層8の波長550nmにおけるΔndを360nmよりも小さくすることによって、DI_blueがDI_redに対し、相対的に大きくなる傾向があることがわかった。液晶層8のΔndは、330nm以下が好ましく、300nm以下がより好ましい。
【実施例】
【0069】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、および、操作などは本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0070】
<IPSモード液晶セルの作製>
2枚のガラス基板の間に液晶層を有するIPSモード液晶セルを作製した。液晶セルを形成する際に、ガラス基板に対して特開2005-351924号公報の実施例11を参考に光配向処理を実施して配向層を形成し、液晶セル内の液晶性化合物を配向させた。液晶性化合物の基板面とのチルト角は0.1°であった。液晶層中の液晶性化合物のΔnは、波長550nmにおいて0.08625であり、基板の間隔(ギャップ;d)を調整することによりΔndを調整した。また、液晶セルの視認側の基板上に、青色、緑色、および赤色のサブピクセルからなる画素を有するカラーフィルター層を形成した。カラーフィルター層の形成にあたっては、特開2010-044285号公報を参照し、緑色、および赤色のサブピクセル中のカラーフィルター層が顔料系の色材を有し、青色のサブピクセルが染料系の色材を有してなる液晶セル171および172を作製した。また、特開2015-068852号公報を参照し、赤色のサブピクセル中のカラーフィルター層がイエロー染料を含む色材を有し、緑色、および青色のサブピクセルが顔料系の色材を有してなる液晶セル173を作製した。また、液晶セル171~173の画面解像度は260ppiとし、各サブピクセルの形状(サブピクセル電極およびカラーフィルター層の形状)は、
図4および5に示すようなシェブロン構造であった。また、後述する<液晶表示装置の作製>の際には、シェブロン構造を構成する一辺が、第二偏光子の吸収軸方位となす角が4°となるように、液晶セルと視認側偏光子とを貼り合わせた。より具体的には、シェブロン構造の外形線を構成する辺のうち、屈曲線を構成する一辺が、第二偏光子(バックライト側偏光子)の吸収軸方位とのなす角が4°であった。言い換えると、各サブピクセルは
図4および5に示す形状であり、
図5に示すように、サブピクセル中の第1部分の第2部分と共有する一辺と平行でない辺(
図5中の辺32および辺34)、および、第2部分の第1部分と共有する一辺と平行でない辺(
図5中、辺36および辺38)と、第二偏光子の吸収軸とのなす角(
図5中の角度A2)は、4°であった。
次に、アップル社製タブレット端末iPad(登録商標)(9.7インチ)を分解し、液晶パネルを取り出して、両面の偏光板を剥離した。こうして得た液晶セルを、液晶セル174として使用した。
液晶セル171~174の主な特性は表1に示す通りであった。
【0071】
【0072】
<光学異方性層151(2層構成)の作製>
酢酸ブチル/メチルエチルケトン(80質量部/20質量部)に対して、下記共重合体C3を8.4質量部と、下記熱酸発生剤D1を0.3質量部添加し、光配向膜用塗布液1を調製した。
【0073】
・共重合体C3(重量平均分子量:40,000)(以下、化合物)
【0074】
【0075】
・熱酸発生剤D1(以下、化合物)
【0076】
【0077】
保護フィルムの片側の面に、先に調製した光配向膜用塗布液1をバーコーターで塗布した。塗布後、80℃のホットプレート上で5分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ0.2μmの光異性化組成物層を形成した。得られた光異性化組成物層に対して偏光紫外線を照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、光配向膜を形成した。
【0078】
下記組成の液晶層形成用組成物1を調製した。
【0079】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶層形成用組成物1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶性化合物R2 42.00質量部
・下記液晶性化合物R3 42.00質量部
・下記重合性化合物B2 16.00質量部
・下記重合開始剤P3 0.50質量部
・下記界面活性剤S3 0.15質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA-200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0080】
液晶性化合物R2
【0081】
【0082】
液晶性化合物R3
【0083】
【0084】
重合性化合物B2
【0085】
【0086】
重合開始剤P3
【0087】
【0088】
界面活性剤S3(式中、a、bおよびcは、それぞれ、a/b/c=66/26/8(各繰り返し単位のモル%)を表す。)
【0089】
【0090】
次いで、光配向膜上に、先に調製した液晶層形成用組成物1をバーコーターで塗布し、組成物層を形成した。形成した組成物層をホットプレート上で110℃まで加熱した後、60℃に冷却させて配向を安定化させた。その後、60℃に保ち、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(500mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)によって配向を固定化し、厚さ2μmの第一光学異方性層を作製した。得られた第一光学異方性層の面内レターデーションはRe(550)=140nmであり、Rth(550)=70nmであった。また、Re(450)/Re(550)は0.86であり、逆分散の波長分散性を有していた。
【0091】
上記作製した第一光学異方性層の塗布側の面を放電量150W・min/m2でコロナ処理を行い、以下の液晶層形成用組成物2を用いて、上記と同様の手順で、第一光学異方性層上に第二光学異方性層を作製し、光学異方性層151を得た。第二光学異方性層の厚みは、厚み方向のレターデーションがRth(550)=-110nmとなるように調整された。また、第二光学異方性層のRth(450)/Rth(550)は0.95であり、逆分散の波長分散性を有していた。また、第二光学異方性層のRe(550)は、0nmであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
液晶層形成用組成物2
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶性化合物R1 50.0質量部
・下記液晶性化合物R2 33.3質量部
・下記液晶性化合物R3 16.7質量部
・下記化合物B1 1.5質量部
・下記単量体K1 4.0質量部
・下記重合開始剤P1 5.0質量部
・下記重合開始剤P2 2.0質量部
・下記界面活性剤S1 0.4質量部
・下記界面活性剤S2 0.5質量部
・アセトン 200.0質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 50.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0092】
液晶性化合物R1
下記液晶性化合物(RA)(RB)(RC)の83:15:2(質量比)の混合物
【0093】
【0094】
液晶性化合物R2
【0095】
【0096】
液晶性化合物R3
【0097】
【0098】
化合物B1
【0099】
【0100】
単量体K1:A-TMMT(新中村化学工業株式会社)
【0101】
重合開始剤P1
【0102】
【0103】
重合開始剤P2
【0104】
【0105】
界面活性剤S1(Mw:15k、各繰り返し単位中のカッコの右側に記載の数値は、構全繰り返し単位に対する各繰り返し単位の質量%を表す。)
【0106】
【0107】
界面活性剤S2(重量平均分子量:11,200)(各繰り返し単位中のカッコの右側に記載の数値は、全繰り返し単位に対する各繰り返し単位のモル%を表す。)
【0108】
【0109】
光学異方性層151の第一光学異方性層の遅相軸と直交する方位(すなわち、進相軸の方位)における線膨張係数を、株式会社日立ハイテクサイエンス製熱分析装置TMA/SS6100を用いて測定したところ、38ppm/℃であった。
【0110】
<光学異方性層152(1層構成)の作製>
特開2006-72309号公報の実施例1に示されるサンプルに対して、膜厚調整を行い、光学異方性層152を作製した。
光学異方性層152の位相差をAxoScanで測定した結果、Re(550)=280nm、Rth(550)=0nm、Re(450)/Re(550)=1.00、Re(550)/Re(650)=1.00であった。
また、光学異方性層152の遅相軸の方位における線膨張係数は、73ppm/℃であった。
【0111】
<第一偏光板161の作製>
富士フイルム株式会社製のセルロースアセテートフィルム「TD80U」を、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に55℃で3分間浸漬した。次に、得られたフィルムを室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。さらに、得られたフィルムを、再度、室温の水洗浴槽中で洗浄した後、100℃の温風で乾燥し、けん化処理を行った。
上記の手順でけん化処理を行ったTD80Uと、ポリビニルアルコール系偏光子、および光学異方性層151を、偏光子の吸収軸と光学異方性層151の遅相軸が平行になるように、接着剤を用いて貼り合わせた。このとき、光学異方性層151の第二光学異方性層側が偏光子側になるように貼り合せた。また、接着剤はPVA((株)クラレ製、PVA-117H)3%水溶液を用いた。次に、光学異方性層151の支持体として用いたZ-TACを剥離し、第一偏光板161を作製した。
なお、用いたポリビニルアルコール系偏光子の厚みは24μmであり、吸収軸と直交する方位の線膨張係数は、50ppm/℃であった。すなわち、吸収軸と直交する方位における、偏光子と光学異方性層151との線膨張係数の差異は、12ppm/℃であった。
【0112】
<第一偏光板162の作製>
上記と同様の手順でけん化処理を行ったTD80Uと、ポリビニルアルコール系偏光子、および光学異方性層152を、偏光子の吸収軸と光学異方性層152の遅相軸が直交になるように、接着剤を用いて貼り合わせた。接着剤はPVA((株)クラレ製、PVA-117H)3%水溶液を用いた。このようにして、第一偏光板162を作製した。
なお、用いたポリビニルアルコール系偏光子の厚みは24μmであり、吸収軸と直交する方位の線膨張係数は、50ppm/℃であった。すなわち、吸収軸と直交する方位における、偏光子と光学異方性層152との線膨張係数の差異は、23ppm/℃であった。
【0113】
<第一偏光板163の作製>
厚み7μmのポリビニルアルコール系偏光子を用いた以外は、第一偏光板161と同様にして、第一偏光板163を作製した。なお、厚み7μmのポリビニルアルコール系偏光子の吸収軸と直交する方位の線膨張係数は、46ppm/℃であった。すなわち、吸収軸と直交する方位における、偏光子と光学異方性層151との線膨張係数の差異は、8ppm/℃であった。
【0114】
<第二偏光板181の作製>
上記と同様の手順でけん化処理を行ったTD80Uと、ポリビニルアルコール系偏光子、および上記と同様の手順でけん化処理を行ったZ-TACを同様に貼り合わせて、第二偏光板181を作製した。
なお、用いたポリビニルアルコール系偏光子の厚みは24μmであり、吸収軸と直交する方位の線膨張係数は、50ppm/℃であった。
【0115】
<液晶表示装置の作製>
上記作製した液晶セルの両面に、それぞれ上記第一偏光板および第二偏光板を、総研科学社製の粘着剤シートSK2057を用いて貼り合わせた。このとき、第一偏光板は光学異方性層が液晶セルの側となるように貼り合わせ、第二偏光板はZ-TACが液晶セルの側となるように貼り合わせた。また、液晶セル内の液晶性化合物の遅相軸(黒表示時の遅相軸)と、第二偏光子の吸収軸とが平行になるように貼り合わせた。また、第一偏光板中の第一偏光子の吸収軸と、第二偏光板中の第二偏光子の吸収軸とのなす角は、直交であった。
なお、粘着剤シートSK2057の貯蔵弾性率を、アイティー計測制御株式会社製動的粘弾性測定装置DVA-220を用いて測定したところ、20℃において0.45MPa、80℃において0.18MPaであった。
次に、アップル社製のディスプレイ一体型コンピュータiMacのディスプレイを分解し、取り出したバックライトの上に、作製した液晶セルを、いずれも第一偏光板の側が視認側となるように設置した。このようにして、表2に示す実施例1~7および比較例1の液晶表示装置を作製した。
また、粘着剤シートをSK1478に変えた以外は、上記と同様にして、実施例8および9の液晶表示装置を作製した。
なお、粘着剤シートSK2057の貯蔵弾性率は、20℃において0.79MPa、80℃において0.35MPaであった。
次に、液晶セル173の両面に、第二偏光板181(すなわち、光学異方性層を有さない偏光板)を貼合した以外は、その他の実施例と同様にして、比較例2の液晶表示装置を作製した。
【0116】
<液晶表示装置の評価>
作製した実施例および比較例の液晶表示装置を暗室に設置し、電圧を印加しない状態(すなわち、黒表示の状態)でバックライトを点灯させた。この状態における液晶表示装置の光漏れを、株式会社トプコンテクノハウス製分光輝度計SR-UL2を用いて測定した。このとき、分光輝度計は、液晶セルの垂直方向からの角度が60°であり、方位角が視認側偏光子の吸収軸の方位に対し0°~180°の範囲で、15°キザミで変化するように位置および角度を調整しながら、測定した。得られた測定値から、光漏れのCIELUV色空間における色度u’およびv’を算出した。次に、測定したすべての方位角において、u’の差Δu’が最大となる方位角の組を決定し、そのときのΔu’の大きさ、Δu’_maxを、斜め方向からの視認における、方位による色味変化の指標とした。
Δu’_maxは、0.010以下である場合、良好な視野角特性となり、0.005以下である場合、非常に良好な視野角特性となった。
また、実施例および比較例の液晶表示装置の耐久性を、-35℃および70℃を30分ずつ交互に繰り返すヒートサイクル試験にて評価した。300サイクルを繰り返した時点で、視認側偏光板の外観を目視確認し、以下の基準で評価した。実施例および比較例の評価結果を表2の「評価」欄に示す。
<評価基準>
A:偏光板の前面にわたって亀裂または破断が生じていない。
B:偏光板の端部にのみ、亀裂または破断が生じている。
C:偏光板の中央部におよぶ亀裂または破断が、1箇所に生じている。
D:偏光板の中央部におよぶ亀裂または破断が、複数箇所に生じている。
【0117】
【0118】
表2に示すように、本発明の液晶表示装置であれば、所望の効果が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0119】
1 第一偏光板の保護層
2 第一偏光子
3 第一偏光子の吸収軸
4 第二光学異方性層
5 第一光学異方性層
6 第一光学異方性層の遅相軸
7 液晶セルの上側基板
8 液晶性化合物(液晶層)
9 液晶セルの下側基板
10 第二偏光板の液晶セル側保護層
11 第二偏光子
12 第二偏光子の吸収軸
13 第二偏光板のバックライト側保護層
14 バックライトユニット
15 光学異方性層
16 第一偏光板
17 液晶セル
18 第二偏光板
30 サブピクセル
30R 赤色サブピクセル
30G 緑色のサブピクセル
30B 青色のサブピクセル
32,34,36,38 辺
40 第1部分
42 第2部分
100 偏光解消度を測定する光学部材
101 偏光解消度の測定に用いる偏光子
102 偏光解消度の測定に用いる偏光子
103 分光輝度計