(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】送受電システムおよび受電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/20 20160101AFI20220926BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20220926BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J50/80
(21)【出願番号】P 2021103489
(22)【出願日】2021-06-22
(62)【分割の表示】P 2017059961の分割
【原出願日】2017-03-24
【審査請求日】2021-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2016062871
(32)【優先日】2016-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小原 大輝
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-078171(JP,A)
【文献】特開2012-165633(JP,A)
【文献】特開2012-005185(JP,A)
【文献】特開2011-120443(JP,A)
【文献】特開2012-147657(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136257(WO,A1)
【文献】特開2018-133857(JP,A)
【文献】特開2014-225984(JP,A)
【文献】特開2014-007864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00 -50/90
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を送電する送電装置と、前記送電装置から送電された電力を受電する受電装置とを有
し、特性インピーダンスを有する送受電システムにおいて、
前記送電装置は、
MHz帯域の高周波電源によって構成され、電力を生成する電源手段と、
前記受電装置に対して
前記電源手段によって生成された電力を送電する送電手段
と、を有し、
前記受電装置は、
前記送電装置の前記送電手段から送電された電力を受電する受電手段と、
前記受電手段によって受電された電力を直流電力に整流する整流手段と、
前記受電手段と前記整流手段との間に配置され、その前後のインピーダンスを整合する整合手段と、
前記整流手段によって得られた直流電力を入力し、スイッチングによって異なる電圧の直流電力に変換して負荷に供給する変換手段と、
前記整合手段を制御するとともに、前記変換手段の入力抵抗が所定の値になるように、前記変換手段のスイッチングのデューティ比を制御
し、前記変換手段の出力電力に関する情報を前記送電装置に送信する受電側制御手段と、を有し、
前記整合手段は、前記受電手段と前記整流手段の間に直列に接続された第1可変リアクタンスと、該第1可変リアクタンスに直列接続される第1固定リアクタンスと、前記受電手段または前記整流手段と並列に接続された第2可変リアクタンスと、該第2可変リアクタンスに並列接続される第2固定リアクタンスを有し、
前記受電側制御手段は、前記第1可変リアクタンスを制御することで、前記第1可変リアクタンス以降のインピーダンスを調整するとともに、前記第2可変リアクタンスを制御することで、前記第2可変リアクタンス以前のインピーダンスを調整
し、
前記送電装置は、
前記受電側制御手段から前記変換手段の出力電圧に関する情報を受信し、該情報に基づいて前記変換手段の出力電圧が所定の値になるように前記送電手段を制御する送電側制御手段をさらに有する
ことを特徴とする送受電システム。
【請求項2】
前記受電側制御手段は、前記変換手段の前記入力抵抗の値を検出し、当該値に基づいて、前記入力抵抗が所定の値になるように、前記変換手段のデューティ比を制御することを特徴とする請求項1に記載の送受電システム。
【請求項3】
前記受電側制御手段は、前記負荷の抵抗値を検出し、前記負荷の抵抗値と前記入力抵抗との関係に基づいて、前記入力抵抗が所定の値になるように、前記変換手段のデューティ比を制御することを特徴とする請求項1に記載の送受電システム。
【請求項4】
前記送電側制御手段は、前記受電側制御手段から前記変換手段の出力電圧に関する情報を受信し、該情報に基づいて前記変換手段の出力電圧が所定の値になるように前記電源手段の出力電力を制御することを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか1項に記載の送受電システム。
【請求項5】
前記変換手段はスイッチングコンバータによって構成されることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の送受電システム。
【請求項6】
前記送電装置は前記受電装置に対して無線で電力を伝送することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の送受電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受電システムおよび受電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電装置と受電装置を有し、これらの間を無線で電力を伝送する送受電システムとしては、例えば、特許文献1に開示された技術がある。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、負荷に印加される直流電圧および直流電流を検出し、検出したこれらの値に基づいて、送電側の整合回路を調整することで、送電効率を改善する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術では、可変コンデンサや可変コイルを有する整合回路のインピーダンスを調整することで、送電効率の改善を図っているが、このような可変コンデンサや可変コイルは、例えば、素子値を調整するためのアクチュエータが必要になるとともに、素子自体がある程度の大きさを有することから、装置の小型化の阻害要因となるという問題点がある。また、可変コイルは銅損または鉄損等の損失が大きいことから、システム全体としての損失が大きくなるという問題がある。さらに、機械的な制御を行うことから、負荷の消費電力が時々刻々と変化する場合には、制御が追いつかない場合があるという問題点もある。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、効率良く電力を送電するとともに、装置の小型化に資することが可能な送受電システムおよび受電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、電力を送電する送電装置と、前記送電装置から送電された電力を受電する受電装置とを有する送受電システムにおいて、前記送電装置は、前記受電装置に対して電力を送電する送電手段を有し、前記受電装置は、前記送電装置の前記送電手段から送電された電力を受電する受電手段と、前記受電手段によって受電された電力を直流電力に整流する整流手段と、前記整流手段によって得られた直流電力を入力し、スイッチングによって異なる電圧の直流電力に変換して負荷に供給する変換手段と、前記変換手段の入力抵抗が所定の値になるように、前記変換手段の前記スイッチングのデューティ比を制御する受電側制御手段と、を有する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、どのような負荷が接続された場合でも、効率良く電力を送電するとともに、装置の小型化に資することが可能になる。
【0008】
また、本発明は、前記受電側制御手段は、前記変換手段の前記入力抵抗の値を検出し、当該値に基づいて、前記入力抵抗が所定の値になるように、前記変換手段のデューティ比を制御することを特徴とする。
このような構成によれば、入力抵抗の値を直接参照することで、送電装置と受電装置間のインピーダンスの整合を確実に行うことで、効率良く電力を伝送することができる。
【0009】
また、本発明は、前記受電側制御手段は、前記負荷の抵抗値を検出し、前記負荷の抵抗と前記入力抵抗との関係に基づいて、前記入力抵抗が所定の値になるように、前記変換手段のデューティ比を制御することを特徴とする。
このような構成によれば、負荷の抵抗と入力抵抗との関係に基づいて入力抵抗が一定となるように制御することで、送電装置と受電装置間のインピーダンスの整合を確実に行うことで、効率良く電力を伝送することができる。
【0010】
また、本発明は、前記変換手段の出力電圧が所定の値になるように前記送電手段を制御する送電側制御手段をさらに有することを特徴とする。
このような構成によれば、出力電圧を一定にすることで、負荷にかかる負担を軽減することができる。
【0011】
また、本発明は、前記変換手段はスイッチングコンバータによって構成されることを特徴とする。
このような構成によれば、スイッチングコンバータを有する受電装置に対して効率良く電力を伝送することができる。
【0012】
また、本発明は、前記送電装置は前記受電装置に対して無線で電力を伝送することを特徴とする。
このような構成によれば、無線によって電力を伝送する場合でも、効率良く伝送することができる。
【0013】
また、本発明は、電力を送電する送電装置と、前記送電装置から送電された電力を受電する受電装置とを有する送受電システムの前記受電装置において、前記送電装置から送電された電力を受電する受電手段と、前記受電手段によって受電された電力を直流電力に整流する整流手段と、前記整流手段によって得られた直流電力を入力し、スイッチングによって異なる電圧の直流電力に変換して負荷に供給する変換手段と、前記変換手段の入力抵抗が所定の値になるように、前記変換手段のスイッチングのデューティ比を制御する受電側制御手段と、を有する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、どのような負荷が接続された場合でも、効率良く電力を送電するとともに、装置の小型化に資することが可能になる。
【0014】
また、本発明は、電力を送電する送電装置と、前記送電装置から送電された電力を受電する受電装置とを有する送受電システムにおいて、前記送電装置は、前記受電装置に対して電力を送電する送電手段を有し、前記受電装置は、前記送電装置の前記送電手段から送電された電力を受電する受電手段と、負荷が接続され、前記受電手段によって受電された電力を前記負荷に供給する供給手段と、前記受電手段と前記供給手段との間に配置され、その前後のインピーダンスを整合する整合手段と、前記整合手段を制御する受電側制御手段と、を有し、前記負荷が接続された前記供給手段を前記整合手段側から見たインピーダンスは略一定である、ことを特徴とする。
このような構成によれば、効率良く電力を送電するとともに、装置を小型化することが可能となる。
【0015】
また、本発明は、前記整合手段は、前記受電手段と前記供給手段の間に直列に接続された第1可変リアクタンスと、前記受電手段または前記供給手段と並列に接続された第2可変リアクタンスを有し、前記受電側制御手段は、前記第1可変リアクタンスを制御することで、前記第1可変リアクタンス以降のインピーダンスを調整するとともに、前記第2可変リアクタンスを制御することで、前記第2可変リアクタンス以前のインピーダンスを調整することを特徴とする。
このような構成によれば、2つの可変リアクタンスを調整することで、インピーダンスの整合を図ることができる。
【0016】
また、本発明は、前記第1可変リアクタンスに直列接続される第1固定リアクタンスと、前記第2可変リアクタンスに並列接続される第2固定リアクタンスの少なくとも一方を有することを特徴とする。
このような構成によれば、2つのリアクタンスの調整範囲を狭くすることができるので、インピーダンスの整合を確実に行うことができる。
【0017】
また、本発明は、前記供給手段は、前記受電手段によって受電された電力を直流電力に整流する整流手段と、前記整流手段によって得られた直流電力を入力し、スイッチングによって異なる電圧の直流電力に変換して前記負荷に供給する変換手段とを有し、前記受電側制御手段は、前記変換手段の入力抵抗が所定の値になるように、前記変換手段のスイッチングのデューティ比を制御する、ことを特徴とする。
このような構成によれば、負荷のインピーダンスを一定に保つことで、インピーダンスの整合を確実に行うことができる。
【0018】
また、本発明は、電力を送電する送電装置と、前記送電装置から送電された電力を受電する受電装置とを有する送受電システムの前記受電装置において、前記送電装置から送電された電力を受電する受電手段と、負荷が接続され、前記受電手段によって受電された電力を前記負荷に供給する供給手段と、前記受電手段と前記供給手段との間に配置され、その前後のインピーダンスを整合する整合手段と、前記整合手段を制御する受電側制御手段と、を有し、前記負荷が接続された前記供給手段を前記整合手段側から見たインピーダンスは略一定である、ことを特徴とする。
このような構成によれば、効率良く電力を送電するとともに、装置を小型化することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、効率良く電力を送電するとともに、装置の小型化に資することが可能な送受電システムおよび受電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る送受電システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】従来の送受電システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の効果を説明するための、
図2に示す従来の送受電システムの構成例における可変整合器51を固定整合器22に置き換えた受電装置20を示す図である。
【
図4】
図3において、負荷が変化した場合の整流器からの入力抵抗の変化を示す図である。
【
図5】
図3に示す構成における、カプラ21から整合器22側をみたインピーダンスのスミスチャートである。
【
図6】
図1において、負荷が変化した場合のSWコンバータの入力抵抗の変化を示す図である。
【
図7】
図6に示す場合における、カプラ21から整合器22側をみたインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図8】
図1に示す第1実施形態の受電装置において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る送受電システムの構成例を示すブロック図である。
【
図10】
図1において、負荷が変化した場合のSWコンバータの出力電圧の変化を示す図である。
【
図11】
図9において、RF電源の出力を制御しない場合のSWコンバータの入力抵抗の変化を示す図である。
【
図12】
図11に示す場合における、カプラ21から整合器22側をみたインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図13】
図9において、RF電源の出力を制御しない場合のSWコンバータの出力電圧の変化を示す図である。
【
図14】
図9において、RF電源の出力を制御する場合のSWコンバータの入力抵抗の変化を示す図である。
【
図15】
図14に示す場合における、カプラ21から整合器22側をみたインピーダンスのスミスチャートを示す図である。
【
図16】
図9において、RF電源の出力を制御する場合のSWコンバータの出力電圧の変化を示す図である。
【
図17】
図9に示す第2実施形態の受電装置において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図18】
図9に示す第2実施形態の送電装置において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図19】本発明の第3実施形態に係る送受電システムの構成例を示すブロック図である。
【
図21】
図19においてカプラ間の距離が変化した場合のインピーダンスの軌跡を示すスミスチャートである。
【
図22】
図21の5mmの場合においてインピーダンス整合を行う場合の手順を示す図である。
【
図23】第3実施形態におけるインピーダンス整合を行う場合の手順を示す図である。
【
図24】従来技術におけるインピーダンス整合を行う場合の手順を示す図である。
【
図25】
図19に示す第3実施形態において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図26】
図19に示す第3実施形態においてZcap=25Ωとし、Zp,Zs1を調整した場合の結果を示す図である。
【
図27】
図19に示す第3実施形態においてZcap=50Ωとし、Zp,Zs1を調整した場合の結果を示す図である。
【
図28】
図19に示す第3実施形態においてZcap=100Ωとし、Zp,Zs1を調整した場合の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
(A)本発明の第1実施形態の構成の説明
図1は、本発明の第1実施形態に係る送受電システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示す送受電システム1は、送電装置10および受電装置20を有しており、送電装置10から無線により受電装置20に電力を送電する。
図1の例では、送電装置10は、RF(Radio Frequency)電源11およびカプラ12を有している。また、受電装置20は、カプラ21、整合器22、整流器23、SW(スイッチング)コンバータ24、負荷25、受電側制御部26、および、電圧・電流検出部27を有している。
【0023】
ここで、RF電源11は、例えば、MHz帯域の高周波電源によって構成され、高周波の交流電力を生成してカプラ12に供給する。カプラ12は、例えば、2枚の矩形電極およびコイルによって構成され、RF電源11が出力する電力の周波数を共振周波数に持ち、電界によって電力をカプラ21に送電する。
【0024】
カプラ21は、例えば、2枚の矩形電極およびコイルによって構成され、カプラ12と同じ共振周波数を有し、カプラ12から電界によって送電された電力を受電して、整合器22以降の回路に供給する。整合器22は、例えば、コンデンサ素子よって構成され、カプラ21から整合器22側をみたインピーダンスが、システムが有する特性インピーダンスと整合するように調整する。なお、整合器22は、例えば、素子値が固定のコンデンサ素子が、はしご形に接続されて構成されている。
【0025】
整流器23は、例えば、ダイオードによるブリッジ回路によって構成され、整合器22から出力される交流電力を直流電力に変換して出力する。
【0026】
SWコンバータ24は、整流器23から供給される直流電力を受電側制御部26の制御に応じてスイッチングし、異なる電圧の直流電力に変換して出力する。
【0027】
負荷25は、例えば、二次電池を充電する充電装置またはパーソナルコンピュータ等によって構成される。なお、本明細書中では、負荷25としては、消費電力が時間的に変動するものを想定している。
【0028】
受電側制御部26は、電圧・電流検出部27によって検出された、SWコンバータ24の入力電圧および入力電流に基づいてSWコンバータ24の入力抵抗を算出し、この入力抵抗に基づいてSWコンバータ24を制御する。
【0029】
電圧・電流検出部27は、SWコンバータ24の入力電圧および入力電流を検出し、受電側制御部26に供給する。
【0030】
(B)本発明の第1実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の第1実施形態の動作について説明する。なお、以下では、
図2を参照して、従来技術の動作について説明した後に、本発明の第1実施形態の動作について説明する。
【0031】
図2は、従来技術の構成を示す図である。なお、
図2において、
図1と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図2では、
図1と比較すると、送電装置10では、可変整合器41が追加されている。これ以外は、
図2と同様の構成とされている。ここで、可変整合器41は、例えば、可変コイルおよび可変コンデンサによって構成され、これらの可変要素を調整することで、送電装置10のインピーダンスを調整する。
【0032】
一方、受電装置20では、整合器22、SWコンバータ24、受電側制御部26、および、電圧・電流検出部27が除外され、可変整合器51が追加されている。これら以外の構成は
図1と同様である。ここで、可変整合器51は、例えば、可変コイルおよび可変コンデンサによって構成され、これらの可変要素を調整することで、受電装置20のインピーダンスを調整する。
【0033】
図2に示す従来構成では、RF電源11とカプラ12との間は可変整合器41によってインピーダンスが調整され、RF電源11から出力される高周波電力は、受電装置20に対して送電される。受電装置20では、カプラ21と整流器23との間は可変整合器51によってインピーダンス調整され、カプラ12が送電した電力を、カプラ21が受電し、受電した高周波電力は、整流器23によって直流電力に変換された後、負荷25に供給される。
【0034】
ところで、
図2に示す従来の送受電システムでは、負荷25の値が変動した場合、送電装置10から見た、受電装置20のインピーダンスが変化することから、送電した電力の一部が反射され、送電装置10に戻される場合がある。このような場合には、RF電源11に対して反射された電力が入力されるので、伝送効率が低下したり、反射電力の大きさによってはRF電源11が損傷されたりすることがある。そこで、負荷25が変動した場合には、可変整合器41または可変整合器51を調整して、インピーダンスを整合させることが行われていた。しかしながら、このような調整を自動的に行うためには、可変整合器41,51の可変要素を調整するためのアクチュエータが必要になり、また、機械的な要素が動作することから、調整には時間を要するという問題点がある。
【0035】
そこで、本発明の第1実施形態では、
図1に示す負荷25が変動した場合には、SWコンバータ24のスイッチングのデューティ比を調整することで、SWコンバータ24の入力抵抗が一定になるように制御する。このような構成によれば、インピーダンスの整合を機械的な要素で行う必要がなくなるので、
図2に示す可変整合器41,51を除外することができる。また、SWコンバータ24の入力抵抗を任意に設定することができるので、整合器22としては、コイルを有しない、素子値が固定のコンデンサを用いることができる。コンデンサは、コイルに比較すると損失が小さいので、システム全体の伝送効率を向上させることができる。
【0036】
図1に示す第1実施形態の動作について、以下に詳細に説明する。
図1に示す第1実施形態では、電圧・電流検出部27がSWコンバータ24の入力電圧および入力電流から入力抵抗を算出し、算出した入力抵抗に基づいて、SWコンバータ24のスイッチングのデューティ比を制御する。なお、
図1に示すシステムが有する特性インピーダンスは、例えば、50Ωとする。SWコンバータ24の入力抵抗は所定の値、例えば、10Ωとする。
【0037】
SWコンバータ24のデューティ比をDとし、SWコンバータ24の入力抵抗をRinとし、負荷25の抵抗をRloadとすると、これらの間にはRin=Rload/D2の関係が成り立つ。このため、負荷25の抵抗の増加に起因して、電圧・電流検出部27によって検出される入力抵抗Rinが、所定の入力抵抗である10Ωよりも増加した場合には、デューティ比Dを増加させることで入力抵抗Rinが10Ωになるように制御することができる。
【0038】
一方、負荷25の抵抗の減少に起因して、電圧・電流検出部27によって検出される入力抵抗Rinが、所定の入力抵抗である10Ωよりも減少した場合には、デューティ比Dを減少させることで入力抵抗Rinが10Ωになるように制御することができる。
【0039】
そこで、
図1に示す第1実施形態では、電圧・電流検出部27が所定の間隔でSWコンバータ24の入力電圧および入力電流を検出し、検出結果を受電側制御部26に供給する。受電側制御部26は、電圧・電流検出部27から供給される入力電圧Vinおよび入力電流Iinから入力抵抗Rin(=Vin/Iin)を算出する。そして、算出した入力抵抗Rinが所定の入力抵抗である10Ωよりも大きい場合にはSWコンバータ24のスイッチングのデューティ比を増加する制御を行い、入力抵抗Rinが所定の入力抵抗である10Ωよりも小さい場合にはSWコンバータ24のスイッチングのデューティ比を減少する制御を行う。これにより、SWコンバータ24の入力抵抗Rinを所定の入力抵抗である10Ωに保つことができるので、整合器22の素子値を固定して構成することができ、カプラ21から整合器22側をみたインピーダンスをシステムが有する特性インピーダンス、例えば50Ωと一致させることができるので、送電装置10への電力の反射が発生することを抑制できる。
【0040】
つぎに、
図4~
図8を参照して、本実施形態の測定結果について説明する。まず、
図3は、本発明の効果を説明するための、
図2に示す従来の送受電システムの構成例における可変整合器51を固定整合器22に置き換えた受電装置20を示す図である。また、
図4は、
図3に示す構成において、負荷25、例えば、電子負荷の抵抗値を15Ωから50Ωまで変化した設定値と、負荷25への入力電流・電圧を実測し算出した入力抵抗との関係を示す図である。また、
図5は、
図3に示す構成における、カプラ21から整合器22側をみたインピーダンスを50Ωで規格化したスミスチャート上に示している。
図4に示すように負荷25が15Ωから50Ωまで変化した際、
図5に示したようにカプラ21から整合器22側をみたインピーダンスは50Ωで規格化したスミスチャート上において中心1.0付近から外れた位置に存在する。
【0041】
図6~
図8は、第1実施形態の測定結果を示す図である。
図6は、
図1に示す第1実施形態において、負荷25を15Ωから50Ωまで変化させた場合のSWコンバータ24の入力抵抗の変化を示している。なお、
図6~
図8において、RF電源11の周波数は13.56MHzで、出力電力は20Wであるとする。また、整合器22としては、素子値が固定の1000pFのコンデンサと、550pFのコンデンサをはしご形に接続したものを用いるものとする。この
図6に示すように、第1実施形態では、負荷25が変化した場合でも、SWコンバータ24の入力抵抗は略一定で変化しない。また、
図7は、
図6におけるカプラ21から整合器22側をみたインピーダンスを50Ωで規格化したスミスチャート上に示している。この
図7に示すように、負荷25を15Ωから50Ωまで変化させた場合でも、軌跡は中心にある特性インピーダンス付近に存在している。
【0042】
以上に説明したように、本発明の第1実施形態によれば、負荷25が変化した場合でも、SWコンバータ24の入力抵抗を略一定に保つことができるので、送電装置10への電力の反射を抑制することができる。また、第1実施形態では、整合器22として素子値が固定のコンデンサをはしご形に接続したものを用いることができるので、装置が大型化することを抑制できるとともに、効率の良い伝送を行うことができる。
【0043】
つぎに、
図8を参照して、
図1に示す第1実施形態において実行される処理の一例について説明する。
図8に示す処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0044】
ステップS10では、受電側制御部26は、電圧・電流検出部27の出力を参照し、SWコンバータ24の入力電圧Vinを検出する。
【0045】
ステップS11では、受電側制御部26は、電圧・電流検出部27の出力を参照し、SWコンバータ24の入力電流Iinを検出する。
【0046】
ステップS12では、受電側制御部26は、ステップS10で検出した入力電圧VinとステップS11で検出した入力電流Iinに基づいて、SWコンバータ24の入力抵抗Rin(=Vin/Iin)を算出する。
【0047】
ステップS13では、受電側制御部26は、ステップS12で算出した入力抵抗Rinが所定の入力抵抗である10Ωより大きいか否かを判定し、Rin>10Ωを満たす場合(ステップS13:Y)にはステップS14に進み、それ以外の場合(ステップS13:N)にはステップS15に進む。例えば、負荷25の抵抗値の増加に起因して、入力抵抗Rinが10Ωよりも大きくなった場合にはYと判定してステップS14に進む。
【0048】
ステップS14では、受電側制御部26は、SWコンバータ24のスイッチングのデューティ比Dを所定量(例えば、1%)増加する制御を行う。この結果、入力抵抗Rinが減少する。
【0049】
ステップS15では、受電側制御部26は、ステップS12で算出した入力抵抗Rinが所定の入力抵抗である10Ωより小さいか否かを判定し、Rin<10Ωを満たす場合(ステップS15:Y)にはステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS15:N)にはステップS17に進む。例えば、負荷25の抵抗値の減少に起因して、入力抵抗Rinが10Ωよりも小さくなった場合にはYと判定してステップS16に進む。
【0050】
ステップS16では、受電側制御部26は、SWコンバータ24のスイッチングのデューティ比Dを所定量(例えば、1%)減少する制御を行う。この結果、入力抵抗Rinが増加する。
【0051】
ステップS17では、受電側制御部26は、処理を終了するか否かの判定をし、処理を終了しないと判定した場合(ステップS17:N)にはステップS10に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS17:Y)には処理を終了する。
【0052】
以上の処理によれば、SWコンバータ24の入力抵抗Rinが10Ωより小さくなった場合にはステップS13でYと判定され、ステップS14においてSWコンバータ24のデューティ比が増加される。一方、SWコンバータ24の入力抵抗Rinが10Ωより大きくなった場合にはステップS15でYと判定され、ステップS16においてSWコンバータ24のデューティ比が減少される処理が実行される。以上のような処理は繰り返し実行されるので、入力抵抗Rinが10Ωと等しくなるまでは、デューティ比が減少または増加される。これにより、SWコンバータ24の入力抵抗Rinが10Ωになるように制御される。
【0053】
(C)本発明の第2実施形態の構成の説明
つぎに、本発明の第2実施形態について説明する。
図9は、本発明の第2実施形態の構成例を示す図である。
図9において、
図1と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図9では、
図1と比較すると、送電装置10には受信部13および送電側制御部14が追加されている。また、受電装置20には、送信部28が追加されている。これら以外の構成は、
図1の場合と同様である。
【0054】
ここで、受信部13は、受電装置20の送信部28から送信された情報を受信して送電側制御部14に供給する。送電側制御部14は、受信部13から供給される情報に基づいて、RF電源11を制御する。受電装置20の送信部28は、受電側制御部26から供給される情報を、例えば、光または電波等によって受信部13に伝送する。また、
図9では、電圧・電流検出部27は、SWコンバータ24の入力電圧および入力電流だけでなく、SWコンバータ24の出力電圧を検出して、受電側制御部26に供給する。
【0055】
(D)本発明の第2実施形態の動作の説明
図9に示す第2実施形態では、基本的な動作は、
図1と同様であるが、電圧・電流検出部27がSWコンバータ24の出力電圧を検出し、受電側制御部26が出力電圧に関する情報を、送信部28を介して送電装置10に送信し、送電装置10では送電側制御部14が受信部13を介してこの情報を受信し、この情報に基づいてRF電源11の出力を制御する点が異なっている。
【0056】
以上のような制御を行う理由は、つぎの通りである。すなわち、
図1に示す第1実施形態では、SWコンバータ24の出力電圧が負荷25の変動に応じて変化するという課題がある。
図10は、第1実施形態において、負荷25を15Ωから50Ωまで変化させた場合のSWコンバータ24の出力電圧を示している。この
図10に示すように、負荷25を15Ωから50Ωに変化させると、第1実施形態では、出力電圧は約10Vから約24Vに変化する。このため、負荷25が電源電圧の変動に弱い場合には問題となる。そこで、第2実施形態では、SWコンバータ24のデューティ比を変更した場合でも、出力電圧が変化しないように制御することを特徴としている。
【0057】
より詳細に説明する。SWコンバータ24の入力電力をPin(伝送損失および変換損失が無いと仮定した場合の電力であり、RF電源11の供給電力と等しい)とし、出力電圧をVoutとし、負荷25の定格電圧をVdcとし、消費電力をPloadとするとき、これらの間には、以下の式(1)が成立する。なお、SQRT()は括弧内の平方根を求める関数である。
【0058】
Vout=Vdc×SQRT(Pin/Pload) ・・・(1)
【0059】
この式(1)より、出力電圧Voutを、負荷25の定格電圧Vdcと同じにするためには、Pin=Ploadとなるように、RF電源11の出力電力を制御すればよい。
【0060】
そこで、第2実施形態では、SWコンバータ24の出力電圧Voutが負荷25の定格電圧Vdcよりも高くなった場合には、RF電源11の出力電力を低く設定し、SWコンバータ24の出力電圧Voutが定格電圧Vdcよりも低くなった場合には、RF電源11の出力電力を高く設定する。これにより、SWコンバータ24の入力抵抗を一定に保つだけでなく、SWコンバータ24の出力電圧Voutを定格電圧Vdcと略同じ状態に保つことができる。
【0061】
つぎに、
図11~
図16を参照して、第2実施形態の実測結果について説明する。
図11~
図13は、
図9に示す第2実施形態において、RF電源11の電力を調整しない場合の測定結果を示している。なお、この測定では、RF電源11は、出力インピーダンスが50Ωで、周波数が13.56MHzで、出力電力は20Wとされている。また、整合器22は、素子値が固定の550pFのコンデンサがと1000pFのコンデンサがはしご形に接続されて構成される。また、負荷25は、15Ωから50Ωの間で変化するものとする。
【0062】
図11は、負荷25が15Ωから50Ωの間で変化した場合における、SWコンバータ24の入力抵抗の変化を示している。
図11に示すように、負荷25が変化した場合でも、SWコンバータ24の入力抵抗は殆ど変化しない。
図12は、この場合のカプラ21から整合器22側をみたインピーダンスを50Ωで規格化したスミスチャート上に示している。
図12に示すように、スミスチャートでは、軌跡が1付近に存在するので、電力の反射は殆ど発生しない。
【0063】
図13は、負荷25が15Ωから50Ωの間で変化した場合における、SWコンバータ24の出力電圧の変化を示す図である。この
図13に示すように、負荷25が変化すると、出力電圧は約13Vから約23Vの間で変化している。
【0064】
図14~
図16は、
図9に示す第2実施形態において、RF電源11の電力を調整する場合の測定結果を示している。なお、測定条件は、前述したRF電源11の電力を調整しない場合と同様である。
図14は、負荷25が15Ωから50Ωの間で変化した場合における、SWコンバータ24の入力抵抗の変化を示している。
図14に示すように、負荷25が変化した場合でも、SWコンバータ24の入力抵抗は殆ど変化しない。
図15は、その場合のカプラ21から整合器22側をみたインピーダンスを50Ωで規格化したスミスチャートに示している。
図15に示すように、スミスチャートでは、軌跡が1付近に存在することから、電力の反射は殆ど生じない。
【0065】
図16は、負荷25が15Ωから50Ωの間で変化した場合における、SWコンバータ24の出力電圧の変化を示す図である。この
図16に示すように、第2実施形態では、負荷25が変化した場合でも、出力電圧は約21V付近を推移し、
図13に示すように、負荷25に比例するように増加する関係は失われている。
【0066】
以上に説明したように、本発明の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、負荷25が変動した場合でもSWコンバータ24の入力抵抗は殆ど変化しないことから、カプラ21から整合器22側をみたインピーダンスは50Ωで規格化したスミスチャートの中心に位置し、インピーダンスの不整合による電力の反射を防止することができる。また、整合器22としては、素子値が固定のコンデンサを用いることができることから、可変素子を用いた場合に比較して、アクチュエータ等を使用しなくてもよいため、装置のサイズを小型化できる。また、整合器22の整合素子としてコイルを用いた場合に比較すると、銅損や鉄損等の損失を無くすることで、効率を高めることができる。さらに、第2実施形態では、SWコンバータ24の出力電圧を一定に保つことができるので、電源電圧の変動に弱い負荷25に対しても電力を供給することができる。
【0067】
最後に、
図17および
図18を参照して、
図9に示す第2実施形態において実行される処理の一例について説明する。
図17は、
図9に示す第2実施形態の受電装置20において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、
図17において、
図8と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図17では、
図8と比較すると、ステップS20の処理が追加されている。それ以外の処理は、
図8と同様であるので、ステップS20の処理を中心に説明する。
【0068】
ステップS15でNと判定されるか、または、ステップS16の処理が終了すると、ステップS20の処理に進む。
【0069】
ステップS20では、受電側制御部26は、電圧・電流検出部27の出力を参照して、SWコンバータ24の出力電圧Voutを検出し、送信部28を介して送電装置10に送信する。例えば、SWコンバータ24の出力電圧として、20Vが検出された場合には、この20Vを示す情報を、送信部28を介して送電装置10に送信する。
【0070】
つぎに、
図18を参照して、
図9に示す第2実施形態の送電装置10において実行される処理の一例について説明する。
図18に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0071】
ステップS30では、受電側制御部26は、
図17のステップS20の処理によって送信部28が送信した、SWコンバータ24の出力電圧Voutに関する情報を受信する。先程の例では、出力電圧として20Vを受信する。
【0072】
ステップS31では、受電側制御部26は、ステップS30で受信したVoutの値が、負荷25の定格電圧Vdcよりも大きいか否かを判定し、Vout>Vdcが成立する場合(ステップS31:Y)にはステップS32に進み、それ以外の場合(ステップS31:N)にはステップS33に進む。例えば、定格電圧Vdcが21Vである場合において、ステップS30において受信したVoutの値が20Vである場合にはNと判定してステップS33に進む。
【0073】
ステップS32では、受電側制御部26は、RF電源11の給電電力Pinを所定量減少する制御を実行する。例えば、受電側制御部26は、RF電源11の給電電力を1W低下させる。なお、1Wは一例であって、これ以外の値でもよい。
【0074】
ステップS33では、受電側制御部26は、ステップS30で受信したVoutの値が、負荷25の定格電圧Vdcよりも小さいか否かを判定し、Vout<Vdcが成立する場合(ステップS33:Y)にはステップS34に進み、それ以外の場合(ステップS33:N)にはステップS35に進む。例えば、定格電圧Vdcが21Vである場合において、ステップS30において受信したVoutの値が20Vである場合にはYと判定してステップS34に進む。
【0075】
ステップS34では、受電側制御部26は、RF電源11の給電電力Pinを所定量増加させる制御を実行する。例えば、受電側制御部26は、RF電源11の給電電力を1W増加させる。なお、1Wは一例であって、これ以外の値でもよい。
【0076】
ステップS35では、受電側制御部26は、処理を終了するか否かを判定し、終了しないと判定した場合(ステップS35:N)にはステップS30に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS35:Y)には処理を終了する。
【0077】
以上の処理によれば、
図9を参照して説明した、第2実施形態の動作を実現することができる。
【0078】
(E)本発明の第3実施形態の構成の説明
図19は、本発明の第3実施形態の構成例を示す図である。なお、
図19において、
図1と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
図19では、
図1と比較すると、整合器22が受電側制御部26において制御可能に構成されている。これ以外の構成は、
図1と同様である。
【0079】
図20は、
図19の詳細な構成例を示している。
図20に示すように、整合器22は、可変リアクタンス221および可変リアクタンス222を主要な構成要素としている。なお、カプラ出力インピーダンス120(Zcap)は、カプラ12およびカプラ21を整合器22側から見た場合のインピーダンスを示している。
【0080】
ここで、可変リアクタンス221は、例えば、バラクタダイオード等によって構成され、受電側制御部26によってその素子値が制御される。可変リアクタンス222は、例えば、バラクタダイオード等によって構成され、受電側制御部26によってその素子値が制御される。
【0081】
なお、これら以外の構成は、
図1と同様である。請求の範囲に記載した「供給手段」は、整流器23およびSW24に対応するものである。
【0082】
(F)本発明の第3実施形態の動作の説明
つぎに、本発明の第3実施形態の動作について説明する。
図21は、
図19に示す構成において、カプラ12とカプラ21との間の距離を、35mmから115mmへ変化させた場合における、カプラ出力インピーダンス120の変化を示すスミスチャートである。
図21に示すように、カプラ12とカプラ21との間の距離が変化した場合には、カプラ出力インピーダンス120が変化する。この結果、整流器23以降のインピーダンスが一定である場合でも、カプラ21と整合器22との間でインピーダンスの整合が取れなくなり、電力の反射が生じてしまう。
【0083】
そこで、本発明の第3実施形態では、整合器22を調整することで、カプラ出力インピーダンス120(整合器22の前段におけるインピーダンス)が変化した場合であっても、インピーダンスの整合を図ることにより、電力の反射を低減することができる。
【0084】
つぎに、
図22を参照して詳細な動作について説明する。
図20に示すように、可変リアクタンス222の入力側(
図22の左側)からカプラ21側を見たインピーダンスをZ
in’とし、可変リアクタンス222の入力側から可変リアクタンス222側を見たインピーダンスをZ
RX’とし、整流器23の入力側から整流器23側を見たインピーダンス(整合器22の後段におけるインピーダンス)をZ
RXとする。
【0085】
第3実施形態では、例えば、カプラ12とカプラ21の位置関係の変化に応じてインピーダンスZin’が変化した場合には、受電側制御部26は、インピーダンスZin’とインピーダンスZRX’とが複素共役の関係、すなわち、Zin’=ZRX’*となるように、可変リアクタンス221および可変リアクタンス222を調整することでインピーダンスの整合を図る。これにより、反射の発生を低減する。
【0086】
例えば、
図22において、カプラ12とカプラ21の間の距離が55mmである場合を例に挙げて説明する。この場合、受電側制御部26は、Z
in’が定コンダクタンス円(g
in=real(Y
in))(二点鎖線で示す円。なお、Yin=1/Zin’)上で、real(1/Y
in)=r
RXとなるように可変リアクタンス221を調整する。ここで、r
RXは、定レジスタンス円(r
RX=real(Z
RX))(一点鎖線で示す円)を示している。すなわち、受電側制御部26は、55mmと記した四角形で示すZ
in’が符号Aを付した星印の位置に移動するように制御する。
【0087】
また、受電側制御部26は、ZRX’が定レジスタンス円(rRX=real(ZRX))上において、real(1/ZRX’)=ginとなるように可変リアクタンス222を制御する。すなわち、受電側制御部26は、ZRX’が符号Bを付した星印の位置から符号Cを付した星印の位置に移動するように制御する。
【0088】
以上の動作により、インピーダンスZin’とインピーダンスZRX’とが複素共役の関係、すなわち、Zin’=ZRX’*となるので、これらの間における電力の反射を低減することができる。
【0089】
なお、本発明の第3実施形態では、第1および第2実施形態と同様に、整流器23以降のインピーダンスが一定になるように制御していることから、整流器23以降のインピーダンスが一定ではない(負荷の変動に応じてインピーダンスが変化する)従来技術に比較して、制御を簡易化することができる。
図23および
図24は、インピーダンスZ
in’がリアクタンス成分を有しない場合におけるインピーダンス整合の動作を第3実施形態と従来技術の場合で比較するための図である。
図23に示すように、第3実施形態では、インピーダンスZ
in’の移動先は、一点鎖線で示す定レジスタンス円上であり、また、インピーダンスZ
RX’の移動は一点鎖線で示す定レジスタンス円に沿って行うことができる。このため、簡易な構成および制御によって、インピーダンスの整合を図ることができる。
【0090】
一方、
図24に示すように、整流器23以降のインピーダンスが一定ではない従来技術の場合、インピーダンスZ
in’の移動先は、インピーダンスZ
RX’の位置に応じて異なることから調整が煩雑となり、また、調整のための制御も複雑となる。
【0091】
このため、本発明の第3実施形態によれば、例えば、カプラ12およびカプラ21の位置関係が変化した場合でも、これらの間における電力の反射を、簡単な構成および制御で確実に低減することができる。
【0092】
つぎに、
図25を参照して、第3実施形態において実行される処理の詳細について説明する。
図25は、
図19に示す受電側制御部26において実行される処理の一例を説明するためのフローチャートである。なお、
図25の処理は、カプラ12とカプラ21の間で送電が開始された場合に開始される。このフローチャートが開始されると、以下のステップが実行される。
【0093】
ステップS50では、受電側制御部26は、インピーダンスZin’を検出する。例えば、カプラ21から出力される電圧および電流に基づいてインピーダンスZin’を検出する。
【0094】
ステップS51では、受電側制御部26は、ステップS50で検出したインピーダンス
Zin’の実部であるreal(Zin’)を算出する。
【0095】
ステップS52では、受電側制御部26は、ステップS51で算出したインピーダンスZin’の実部であるreal(Zin’)が、rRXよりも大きいか否かを判定し、real(Zin’)>rRXが成立する場合(ステップS52:Y)には、ステップS53に進み、それ以外の場合(ステップS52:N)にはステップS54に進む。なお、rRX=real(ZRX)である。
【0096】
ステップS53では、受電側制御部26は、可変リアクタンス221を所定量減少させる制御を行う。
【0097】
ステップS54では、受電側制御部26は、ステップS51で算出したインピーダンスZin’の実部であるreal(Zin’)が、rRXよりも小さいか否かを判定し、real(Zin’)<rRXが成立する場合(ステップS54:Y)には、ステップS55に進み、それ以外の場合(ステップS54:N)にはステップS56に進む。
【0098】
ステップS55では、受電側制御部26は、可変リアクタンス221を所定量増加させる制御を行う。
【0099】
ステップS56では、受電側制御部26は、処理を終了するか否かを判定し、終了すると判定した場合(ステップS56:Y)にはステップS57に進み、それ以外の場合(ステップS56:N)にはステップS50に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。なお、処理を終了するか否かの判断としては、例えば、real(Zin’)とrRXの差分値が所定の閾値Th1未満となった場合にはYと判定してステップS57に進むようにすることができる。
【0100】
ステップS57では、受電側制御部26は、インピーダンスZRX’を検出する。例えば、可変リアクタンス222に入力される電圧および電流に基づいてインピーダンスZRX’を検出する。
【0101】
ステップS58では、受電側制御部26は、ステップS57で検出したインピーダンスZRX’の逆数の実部であるreal(1/ZRX’)を算出する。
【0102】
ステップS59では、受電側制御部26は、ステップS57で算出したインピーダンスZRX’の逆数である1/ZRX’の実部であるreal(1/ZRX’)が、インピーダンスZin’の逆数である1/Zin’の実部であるreal(1/Zin’)よりも大きいか否かを判定し、real(1/ZRX’)>real(1/Zin’)が成立する場合(ステップS59:Y)には、ステップS60に進み、それ以外の場合(ステップS59:N)にはステップS61に進む。
【0103】
ステップS60では、受電側制御部26は、可変リアクタンス222を所定量増加させる制御を行う。
【0104】
ステップS61では、受電側制御部26は、ステップS57で算出したインピーダンスZRX’の逆数である1/ZRX’の実部であるreal(1/ZRX’)が、インピーダンスZin’の逆数である1/Zin’の実部であるreal(1/Zin’)よりも小さいか否かを判定し、real(1/ZRX’)<real(1/Zin’)が成立する場合(ステップS61:Y)には、ステップS62に進み、それ以外の場合(ステップS61:N)にはステップS63に進む。
【0105】
ステップS62では、受電側制御部26は、可変リアクタンス222を所定量減少させる制御を行う。
【0106】
ステップS63では、受電側制御部26は、処理を終了するか否かを判定し、終了すると判定した場合(ステップS63:Y)には処理を終了し、それ以外の場合(ステップS63:N)にはステップS57に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。なお、処理を終了するか否かの判断としては、例えば、real(1/ZRX’)とreal(1/Zin’)の差分値が所定の閾値Th2未満となった場合にはYと判定して処理を終了することができる。
【0107】
つぎに、第3実施形態のシミュレーション結果について説明する。
図26~
図28は、
図29に示す回路構成におけるシミュレーション結果を示す図である。ここで、
図29に示す構成では、
図20に示す構成に対して、固定リアクタンス223を追加している。ここで、可変リアクタンス222は、
図20と同様に、例えば、バラクタダイオード等によって構成される。また、固定リアクタンス223は、例えば、素子値が固定であるインダクタ等によって構成される。なお、負荷25は、25Ωであるとする。
【0108】
図26は、Z
cap=25Ωであり、Z
s2=1μHである場合に、Z
pとZ
s1を調整した際の結果を示している。このとき、
図29に示すように、カプラ21側から整合器22を見たインピーダンスをZ(Z
RX,Z
S,Z
P)とし、可変リアクタンス221側から可変リアクタンス222側を見たインピーダンスをZ(Z
RX,Z
S)とし、固定リアクタンス223側から終端抵抗を見たインピーダンスをZ(Z
RX)とした場合、これらは
図26のスミスチャート上に四角形で表される。また、星形はZ
capを示している。ここで、Z(Z
RX)は7.74-j15.5Ωであり、Z(Z
RX,Z
S)は11.2+j10.8Ωであり、Z(Z
RX,Z
S,Z
P)は22.2-j0Ωである。また、破線はZ(Z
RX)とZ(Z
RX,Z
S)およびZ(Z
RX,Z
S)とZ(Z
RX,Z
S,Z
P)の直近を通る等抵抗円および等コンダクタンス円を示している。
【0109】
図27は、Z
cap=50Ωであり、Z
s2=1μHである場合に、Z
pとZ
s1を調整した際の結果を示している。前述の場合と同様に、
図29において、カプラ21側から整合器22を見たインピーダンスをZ(Z
RX,Z
S,Z
P)とし、可変リアクタンス221側から可変リアクタンス222側を見たインピーダンスをZ(Z
RX,Z
S)とし、固定リアクタンス223側から終端抵抗を見たインピーダンスをZ(Z
RX)とした場合、これらは
図27のスミスチャート上に四角形で表される。また、星形はZ
capを示している。ここで、Z(Z
RX)は8.16-j16.3Ωであり、Z(Z
RX,Z
S)は12.3+j20.1Ωであり、Z(Z
RX,Z
S,Z
P)は50.2+j4.3Ωである。また、破線はZ(Z
RX)とZ(Z
RX,Z
S)およびZ(Z
RX,Z
S)とZ(Z
RX,Z
S,Z
P)の直近を通る等抵抗円および等コンダクタンス円を示している。
【0110】
図28は、Z
cap=100Ωであり、Z
s2=1μHである場合に、Z
pとZ
s1を調整した際の結果を示している。前述の場合と同様に、
図29において、カプラ21側から整合器22を見たインピーダンスをZ(Z
RX,Z
S,Z
P)とし、可変リアクタンス221側から可変リアクタンス222側を見たインピーダンスをZ(Z
RX,Z
S)とし、固定リアクタンス223側から終端抵抗を見たインピーダンスをZ(Z
RX)とした場合、これらは
図28のスミスチャート上に四角形で表される。また、星形はZ
capを示している。ここで、Z(Z
RX)は7.75-j15.5Ωであり、Z(Z
RX,Z
S)は12.2+j30.6Ωであり、Z(Z
RX,Z
S,Z
P)は100+j8.56Ωである。また、破線はZ(Z
RX)とZ(Z
RX,Z
S)およびZ(Z
RX,Z
S)とZ(Z
RX,Z
S,Z
P)の直近を通る等抵抗円および等コンダクタンス円を示している。
【0111】
図26~
図28に示すように、第3実施形態によれば、カプラ12およびカプラ21のインピーダンスが変化した場合でも、可変リアクタンス221および可変リアクタンス222を調整することで、インピーダンスの整合を図ることができるので、電力の反射を低減することができる。
【0112】
なお、
図29に示す構成では、固定リアクタンス223を追加するようにしたが、例えば、
図30に示すように固定リアクタンス224を可変リアクタンス221に対して並列に接続するようにしてもよい。このような構成によれば、固定リアクタンス224および固定リアクタンス223を基準とし、可変リアクタンス221および可変リアクタンス222によって微調整することができるので、可変リアクタンス221および可変リアクタンス222の可動域を狭くするとともに、調整の処理を簡易化することができる。なお、
図30に示す構成において、固定リアクタンス223を除外する構成としてもよい。
【0113】
また、
図20、
図29、および、
図30では、並列接続される可変リアクタンス221が前段で、直列接続される可変リアクタンス222が後段に配置されるようにしたが、直列接続される可変リアクタンス222が前段で、並列接続される可変リアクタンス221が後段に配置されるようにしてもよい。また、固定リアクタンス223および固定リアクタンス224については、可変リアクタンス221および可変リアクタンス222に付随してその位置を変更するようにすればよい。
【0114】
また、第3実施形態では、整合器22以降の構成は、第1および第2実施形態と同様としたが、整合器22の後段に接続する負荷として、インピーダンスが一定である負荷を接続するようにしてもよい。すなわち、整流器23およびSW24に代えて、インピーダンスが一定である負荷を接続するようにしてもよい。なお、インピーダンスが一定である負荷としては、例えば、抵抗性の負荷(例えば、ライトや電熱器等)がある。また、シリーズレギュレータまたはシャントレギュレータ等のレギュレータを用いることで、負荷のインピーダンスを一定に制御するようにしてもよい。
【0115】
(G)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、送電装置10と受電装置20の間は電界によって電力を送電するようにしたが、磁界によって伝送するようにしてもよい。また、無線で伝送するのではなく、有線によって伝送するようにしてもよい。
【0116】
また、
図1に示す第1実施形態および
図9に示す第2実施形態では、SWコンバータ24の入力抵抗を算出し、算出した入力抵抗に基づいて、SWコンバータ24のスイッチングのデューティ比を制御するようにしたが、これ以外にも、負荷25の入力抵抗を求めて、求めた入力抵抗に基づいてSWコンバータ24のスイッチングのデューティ比を制御するようにしてもよい。
【0117】
より詳細には、前述したように、SWコンバータ24のデューティ比をDとし、SWコンバータ24の入力抵抗をRinとし、負荷25の抵抗をRloadとすると、これらの間にはRin=Rload/D2の関係が成り立つ。そこで、電圧・電流検出部27によって、SWコンバータ24の出力電圧Voutおよび出力電流Ioutを検出し、これらに基づいて負荷25の抵抗Rload(=Vout/Iout)を求める。そして、Rloadが変化した場合には、Rinが所望の値(例えば、10Ω)になるように、Dの値を制御することで、負荷25の変動に拘わらずRinを一定に保つことができる。
【0118】
また、
図9に示す第2実施形態では、送信部28は、電圧・電流検出部27から供給される、SWコンバータ24の出力電圧Voutを示す情報を送信するようにしたが、例えば、出力電圧Voutと、定格電圧Vdcの差分値を計算して送信するようにしてもよい。
【0119】
また、
図9に示す第2実施形態では、SWコンバータ24の出力電圧Voutを検出し、出力電圧Voutが定格電圧Vdcと等しくなるように制御するようにしたが、前述した式(1)に基づいて、Pin=Poutとなるように、RF電源11を制御するようにしてもよい。より詳細には、電圧・電流検出部27によって、SWコンバータ24の出力電圧Voutおよび出力電流Ioutを検出し、これらに基づいて負荷25に供給される出力電力Pout(=Vout×Iout)を受電側制御部26が求める。そして、求めた出力電力Poutに関する情報を、受電側制御部26が、送信部28を介して送電装置10に送信する。送電装置10では、受信部13を介して送電側制御部14が出力電力Poutに関する情報を受信し、RF電源11の供給電力Pinが、受信した出力電力Poutと等しくなるように制御する。これにより、負荷25に供給される電圧を定格電圧Vdcと略等しくなるようにすることができる。
【0120】
また、
図9に示す第2実施形態において、電圧・電流検出部27がSWコンバータ24の出力電圧を検出し、出力電圧Voutが定格電圧Vdcと等しくなるようにSWコンバータ24のスイッチングのデューティ比Dを制御するようにし、SWコンバータ24の入力電圧Vinを電圧・電流検出部27によって検出し、受電側制御部26が入力電圧に関する情報を、送信部28を介して送電装置10に送信し、送電装置10では送電側制御部14が受信部13を介してこの情報を受信し、この情報に基づいてRF電源11の出力を制御するようにしてもよい。
【0121】
より詳細に説明する。SWコンバータ24の入力抵抗をRin、入力電圧Vin、入力電力をPinとすると、これらの間には、以下の式(2)が成立する。
【0122】
Vin=SQRT(Pin×Rin)・・・(2)
【0123】
この式(2)より、ある入力電力Pinに対し、Rinが所望の値(例えば、10Ω)となるような入力電圧Vinが存在する。これより、電圧・電流検出部27が検出したSWコンバータ24の入力電圧Vinおよび入力電流Iinより、SWコンバータ24の入力抵抗Rinを算出し、Rinが所望の値(例えば、10Ω)となるように入力電力Pinを制御することは、式(2)の関係に基づきRinが所望の値(例えば、10Ω)となるような入力電圧Vinとなるように、入力電力Pinを制御することは、等価的である。
【符号の説明】
【0124】
1 送受電システム
10 送電装置
11 RF電源
12 カプラ(送電手段)
13 受信部
14 送電側制御部(送電側制御手段)
20 受電装置
21 カプラ(受電手段)
22 整合器
23 整流器(整流手段、供給手段)
24 SWコンバータ(変換手段、供給手段)
25 負荷
26 受電側制御部(受電側制御手段)
27 電圧・電流検出部
28 送信部
221,222 可変リアクタンス
223,224 固定リアクタンス