(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-22
(45)【発行日】2022-10-03
(54)【発明の名称】ジオール化合物、ポリカーボネートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 43/295 20060101AFI20220926BHJP
C07D 493/04 20060101ALI20220926BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20220926BHJP
【FI】
C07C43/295 C CSP
C07D493/04 101D
C08G64/04
(21)【出願番号】P 2021502807
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 KR2019011852
(87)【国際公開番号】W WO2020055178
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0110537
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ヨン-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ホン、ムホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、キ-チェ
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108059722(CN,A)
【文献】特開2015-151513(JP,A)
【文献】特開2010-138366(JP,A)
【文献】特表2018-509486(JP,A)
【文献】特開2017-071775(JP,A)
【文献】特開昭60-112823(JP,A)
【文献】国際公開第2012/073970(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0037304(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 43/295
C08G 64/04
C07D 493/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される、ジオール化合物。
【化18】
前記化学式1において、
Rは、
下記化学式の一つで表され、
【化19】
nおよびmは、それぞれ独立して1~1,000の整数である。
【請求項2】
下記化学式1で表されるジオール化合物、下記化学式2で表される化合物、およびカーボネート前駆体由来の繰り返し単位を含む、ポリカーボネート。
【化20】
前記化学式1において、
Rは、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、又はナフタレンの2価基であるか、又は非置換の、若しくはC
1-10アルキルで置換されたC
3-20シクロアルキレン、又は非置換の、若しくはC
1-10アルキルで置換されたC
3-20ヘテロシクロアルキレンであり、
nおよびmは、それぞれ独立して1~1,000の整数であり、
【化21】
前記化学式2において、
R
1~R
4は、それぞれ独立して水素、C
1-10アルキル、C
1-10アルコキシ、又はハロゲンであり、
Zは、非置換の、若しくはフェニルで置換されたC
1-10アルキレン、非置換の、若しくはC
1-10アルキルで置換されたC
3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO
2、又はCOである。
【請求項3】
前記Rは、下記化学式の一つで表される、
請求項2に記載のポリカーボネート。
【化22】
【請求項4】
R
1~R
4は、それぞれ独立して水素、又はC
1-4アルキルである、
請求項2または3に記載のポリカーボネート。
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物由来繰り返し単位と、化学式2で表される化合物由来繰り返し単位のモル比は、99:1~1:99である、
請求項2~4のいずれか一項に記載のポリカーボネート。
【請求項6】
PSスタンダード(Standard)を用いてGPCで測定した前記ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)は、15,000~50,000g/molである、
請求項2~5のいずれか一項に記載のポリカーボネート。
【請求項7】
下記化学式3で表される繰り返し単位を含む、
請求項2~6のいずれか一項に記載のポリカーボネート。
【化23】
前記化学式3において、
R、n、およびmは、前記化学式1で定義したとおりである。
【請求項8】
下記化学式4で表される繰り返し単位を含む、
請求項2~7のいずれか一項に記載のポリカーボネート。
【化24】
前記化学式4において、
R
1~R
4、およびZは、前記化学式2で定義したとおりである。
【請求項9】
前記ポリカーボネートのASTM D256(1/8inch,Notched Izod)に基づいて23℃で測定したIzod常温衝撃強度は100~1,000J/mである、
請求項2~8のいずれか一項に記載のポリカーボネート。
【請求項10】
前記ポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、153~190℃である、
請求項2~9のいずれか一項に記載のポリカーボネート。
【請求項11】
前記ポリカーボネートの鉛筆硬度は、ASTM D3363に基づいて50gの荷重で45度角度で測定したときB、又はHBである、
請求項2~10のいずれか一項に記載のポリカーボネート。
【請求項12】
下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される芳香族ジオール化合物、およびカーボネート前駆体を含む組成物を重合する段階を含む、ポリカーボネートの製造方法。
【化25】
前記化学式1において、
Rは、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、又はナフタレンの2価基であるか、又は非置換の、若しくはC
1-10アルキルで置換されたC
3-20シクロアルキレン、又は非置換の、若しくはC
1-10アルキルで置換されたC
3-20ヘテロシクロアルキレンであり、
nおよびmは、それぞれ独立して1~1,000の整数であり、
【化26】
前記化学式2において、
R
1~R
4は、それぞれ独立して水素、C
1-10アルキル、C
1-10アルコキシ、又はハロゲンであり、
Zは、非置換の、若しくはフェニルで置換されたC
1-10アルキレン、非置換の、若しくはC
1-10アルキルで置換されたC
3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO
2、又はCOである。
【請求項13】
前記Rは、下記化学式の一つで表される、
請求項12に記載のポリカーボネートの製造方法。
【化27】
【請求項14】
前記化学式2で表される芳香族ジオール化合物は、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンおよび
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタンからなる群より選択された1つ以上の化合物である、
請求項12または13に記載のポリカーボネートの製造方法:
【請求項15】
前記重合は、溶融重合方法によって行われる、
請求項12~14のいずれか一項に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項16】
前記溶融重合時カーボネート前駆体として炭酸ジエステル化合物を使用する、
請求項15に記載のポリカーボネートの製造方法。
【請求項17】
請求項2ないし11のいずれか一項に記載のポリカーボネートを用いて製造される、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2018年9月14日付韓国特許出願第10-2018-0110537号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ジオール化合物、ポリカーボネートおよびその製造方法に関する。より具体的には、機械的物性に優れながらも、難燃性、耐熱性、透明性、硬度などが向上した新規な構造のポリカーボネートを製造できるジオール化合物、それを用いて製造されるポリカーボネートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、優れた衝撃強度、寸法安定性、耐熱性および透明性などの物性により電機電子製品の外装材、自動車部品、建築素材、光学部品などの分野に多様に使われている高分子素材である。
【0004】
このようなポリカーボネート樹脂は、最近ガラスおよびレンズへの適用など応用分野の拡大につれ、ポリカーボネート樹脂固有の物性は維持しながらも耐候性と屈折率などが向上した新規な構造のポリカーボネートの開発が求められている。
【0005】
そのため、2種以上の互いに異なる構造の芳香族ジオールを共重合して構造が異なる単位体をポリカーボネートの主鎖に導入して所望する物性を得ようとする研究が試みられている。しかし、多くの技術は生産単価が高く、耐化学性や衝撃強度などが増加すると逆に透明性が低下し、透明性が向上すると耐化学性や衝撃強度などが低下するなどの限界がある。
【0006】
そこで、硬度などの機械的物性に優れながらも難燃性、耐熱性、透明性、硬度および耐衝撃性にも優れた新規な構造のポリカーボネートに対する研究開発がまだ必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、機械的物性に優れながらも、難燃性、耐熱性、硬度および耐衝撃性に優れるポリカーボネートを製造できるジオール化合物、それを用いて製造されるポリカーボネートおよびその製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、化学式1で表されるジオール化合物を提供する。
【0009】
また、本発明は、化学式1で表されるジオール化合物、化学式2で表される化合物、およびカーボネート前駆体由来の繰り返し単位を含む、ポリカーボネートを提供する。
【0010】
また、本発明は、化学式1で表されるジオール化合物、化学式2で表される化合物、およびカーボネート前駆体を含む組成物を重合する段階を含む、ポリカーボネートの製造方法を提供する。
【0011】
以下発明の具体的な実施形態によるジオール化合物、ポリカーボネート、その製造方法についてより詳細に説明する。
【0012】
発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表されるジオール化合物を提供する:
【0013】
【0014】
前記化学式1において、
Rは、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、又はナフタレンの2価基であるか、又は非置換されるか若しくはC1-10アルキルで置換されたC3-20シクロアルキレン、又は非置換されるか若しくはC1-10アルキルで置換されたC3-20ヘテロシクロアルキレンであり、
nおよびmは、それぞれ独立して1~1,000の整数である。
【0015】
前記化学式1で表されるジオール化合物は、ポリフェニレンエーテル(polyphenylene oxide)系化合物であり、両末端がヒドロキシ基(hydroxy)に変形されてポリカーボネート重合のジオール単量体化合物として作用することができる。前記化学式1で表される化合物は、多様なアリーレン、シクロアルキレン、又はヘテロシクロアルキレン官能基を含んで該当官能基の特性に応じて、それを含んでポリカーボネート重合時の物性向上効果を奏することができ、特に優れた難燃性、耐熱性、透明性、耐衝撃性などの特性を付与することができる。
【0016】
本明細書におけるアルキル基は、炭素数1~10、又は炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖のアルキル基でありうる。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書におけるシクロアルキレンは、炭素数3~20、又は炭素数3~15の単環式、多環式、又は縮合式シクロアルキレン基でありうる。シクロアルキレン基の具体的な例としては、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカンなどがあるが、これらに限定されない。
【0018】
本明細書におけるヘテロシクロアルキレンは、シクロアルキレン基を構成する炭素原子のうち1個以上の炭素原子がN、O、P、Si、Sおよびこれらの組み合わせで構成される群より選ばれた一つ以上のヘテロ原子で置換されたものを意味する。
【0019】
前記化学式1において、Rの具体的な例として下記化合物が挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない:
【0020】
【0021】
前記化学式1の化合物は、両末端がヒドロキシ基に変形されたポリフェニレンエーテル系化合物であり、ポリカーボネート重合時単独で、又は他のジオール化合物と共に使用され得、ポリフェニレンエーテルによって優れた耐熱性およびRの多様な置換基構造による高硬度の効果を奏することができる。
【0022】
より詳細には、本発明の化学式1で表されるジオール化合物に由来した繰り返し単位を含むポリカーボネートは、知られているポリカーボネート構造に前記化学式1の変形ポリフェニレンエーテルの構造から由来する繰り返し単位を含むことによって、ポリカーボネート鎖の自由体積(free volume)が減少して耐熱性が向上できるとともに、ポリフェニレンエーテルによってR置換基のsegment rotationが制限されてポリカーボネートの硬度(hardness)が向上する効果を奏することができる。
【0023】
本発明の一実施例によれば、ポリカーボネートの耐熱性と硬度向上に及ぼす影響を考慮すると、前記化学式1のnおよびmは、それぞれ5以上、又は10以上、又は14以上であり、かつ1,000以下、又は500以下、又は300以下、又は100以下の整数でありうる。万一、nおよびmが過度に大きくなると、前記化学式1の化合物の溶解度が低下してポリカーボネートの生産性や加工性などに良くなく、逆にnおよびmが過度に小さくなるとポリカーボネートの耐熱性および/又は硬度などが充分でない。
【0024】
本発明の一実施例によれば、前記化学式1の化合物の重量平均分子量(Mw)は、目的と用途に合わせて適宜調節でき、PSスタンダード(Standard)を用いてGPCで測定した重量平均分子量(Mw)が500g/mol以上、又は1,000g/mol以上、又は1,500g/mol以上であり、かつ10,000g/mol以下、又は5,000g/mol以下、又は3,000g/mol以下でありうる。
【0025】
前記化学式1の化合物は知られている有機化合物の製造方法により製造することができ、例えば、下記のような反応式1により酸化性カップリング重合(oxidative coupling polymerization)反応によって製造することができる。前記化学式1の化合物の製造方法は、後述する実施例でより具体化して説明する。
【0026】
【0027】
前記反応式1において、R、nおよびmの定義は化学式1のとおりである。
【0028】
本発明の他の一実施形態によれば、下記化学式1で表されるジオール化合物、下記化学式2で表される化合物、およびカーボネート前駆体由来の繰り返し単位を含む、ポリカーボネートを提供する。
【0029】
【0030】
前記化学式1において、
Rは、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、又はナフタレンの2価基であるか、又は非置換されるか若しくはC1-10アルキルで置換されたC3-20シクロアルキレン、又は非置換されるか若しくはC1-10アルキルで置換されたC3-20ヘテロシクロアルキレンであり、
nおよびmは、それぞれ独立して1~1,000の整数である。
【0031】
【0032】
前記化学式2において、
R1~R4は、それぞれ独立して水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、又はハロゲンであり、
Zは、非置換されるか若しくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換されるか若しくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、又はCOである。
【0033】
前記化学式1に関する説明および具体的な例示化合物は上述したとおりである。
【0034】
本発明のポリカーボネートは、前記化学式1および化学式2で表される化合物由来繰り返し単位のみからなるか、又はこれに加え、他の芳香族ジオール化合物から由来した繰り返し単位を追加でさらに含み得る。
【0035】
前記化学式2において、前記R1~R4は、それぞれ独立して水素、又はC1-4アルキルでありうる。又は前記R1~R4は、それぞれ独立して水素、メチル、クロロ、又はブロモでありうる。
【0036】
また、前記化学式2において、Zは、それぞれ独立して非置換されるか若しくはフェニルで置換された直鎖又は分枝鎖のC1-10アルキレンであり、より好ましくは、メチレン、エタン-1,1-ジイル、プロパン-2,2-ジイル、ブタン-2,2-ジイル、1-フェニルエタン-1,1-ジイル、又はジフェニルメチレンでありうる。
【0037】
本発明の一実施形態によるポリカーボネートは、下記のような化学式3で表される繰り返し単位を含み得る:
【0038】
【0039】
前記化学式3において、
R、n、およびmは、前記化学式1で定義したとおりである。
【0040】
また、本発明の一実施形態によるポリカーボネートは、下記のような化学式4で表される繰り返し単位を含み得る:
【0041】
【0042】
前記化学式4において、
R1~R4、およびZは、前記化学式2で定義したとおりである。
【0043】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、耐熱性、硬度、および難燃性に優れる特徴があり、化学式2で表される繰り返し単位は、透明性に優れる特徴があり、前記化学式1および2で表される繰り返し単位のモル比を調整して所望する物性のポリカーボネートを製造することができる。
【0044】
本発明のポリカーボネートが前記化学式1で表される繰り返し単位に加えて化学式2で表される繰り返し単位をさらに含む時、そのモル比は、特に制限されず、例えば前記化学式1で表される繰り返し単位および化学式2で表される繰り返し単位のモル比は、99:1~1:99である。具体的な一実施例において、前記化学式1で表される繰り返し単位および化学式2で表される繰り返し単位のモル比は、50:50~3:97、又は30:70~5:95、又は15:85~10:90でありうる。化学式1のモル比が過度に低くなると、ポリカーボネートの耐熱性、硬度および難燃性が充分でなく、逆に化学式1のモル比が過度に高くなると、ポリカーボネートの透明性又は衝撃強度が低下したり、反応性が低下してポリカーボネートの生産性が低下しうる。
【0045】
前記ポリカーボネートの重量平均分子量(Mw)は、目的と用途に合わせて適宜調整することができ、PSスタンダード(Standard)を用いてGPCで測定した重量平均分子量(Mw)が15,000g/mol以上、又は20,000g/mol以上、又は28,000g/mol以上であり、かつ50,000g/mol以下、又は40,000g/mol以下、又は33,000g/mol以下でありうる。具体的な一実施例において、重量平均分子量(Mw)が過度に低いと、ポリカーボネートの機械的物性が充分でなく、重量平均分子量(Mw)が過度に高いとポリカーボネートの生産性が低下しうる。
【0046】
また、前記ポリカーボネートのASTM D1238(300℃、1.2kg条件)に基づいて測定したメルトインデックス(melt index)は目的と用途に合わせて適宜調整することができ、1g/10min以上、又は3g/10min以上、又は8g/10min以上であり、かつ100g/10min以下、又は30g/10min以下、又は15g/10min以下でありうる。
【0047】
また、前記ポリカーボネートのASTM D256(1/8inch,Notched Izod)に基づいて23℃で測定したIzod常温衝撃強度は、100J/m以上、又は130J/m以上、又は140J/m以上、又は145J/m以上、又は150J/m以上であり、かつ1,000J/m以下、又は500J/m以下、又は300J/m以下、又は250J/m以下、又は200J/m以下でありうる。
【0048】
また、前記ポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、153℃以上、154℃以上、又は155℃以上であり、かつ190℃以下、又は180℃以下、又は170℃以下、又は168℃以下、又は165℃以下で高い耐熱性を示すことができる。
【0049】
また、前記ポリカーボネートの鉛筆硬度は、ASTM D3363に基づいて50gの荷重で45度角度で測定したときB、又はHBで高硬度を示すことができる。
【0050】
一方、発明のまた他の実施形態によれば、下記化学式1で表される化合物、下記化学式2で表される芳香族ジオール化合物、およびカーボネート前駆体を含む組成物を重合する段階を含む、前記ポリカーボネートの製造方法を提供することができる:
【0051】
【0052】
前記化学式1において、
Rは、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、又はナフタレンの2価基であるか、又は非置換されるか若しくはC1-10アルキルで置換されたC3-20シクロアルキレン、又は非置換されるか若しくはC1-10アルキルで置換されたC3-20ヘテロシクロアルキレンであり、
nおよびmは、それぞれ独立して1~1,000の整数である。
【0053】
【0054】
前記化学式2において、
R1~R4は、それぞれ独立して水素、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ、又はハロゲンであり、
Zは、非置換されるか若しくはフェニルで置換されたC1-10アルキレン、非置換されるか若しくはC1-10アルキルで置換されたC3-15シクロアルキレン、O、S、SO、SO2、又はCOである。
【0055】
前記化学式1において、Rの具体的な例として下記化合物が挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない:
【0056】
【0057】
前記化学式1に関する説明および具体的な例示化合物は前述したとおりである。
【0058】
前記化学式2で表される芳香族ジオール化合物の具体的な例としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタンからなる群より選択された1種以上の化合物を含み得る。
【0059】
また、前記カーボネート前駆体は、前記化学式1で表される化合物および前記化学式2で表される化合物を連結する役割をするものであり、その具体的な例としては、ホスゲン、トリホスゲン、ジホスゲン、ブロモホスゲン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m-クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート又はビスハロホルメートが挙げられる。
【0060】
前記化学式1で表される化合物に加え、化学式2で表される芳香族ジオール化合物およびカーボネート前駆体を含む組成物を用いてポリカーボネートを重合する方法で、一実施形態によれば、前記三種類の前駆体化合物を含む組成物に対して一度に重合工程を遂行することができる。
【0061】
この時、前記化学式1で表される化合物は、前記組成物100重量%に対して1重量%以上、2重量%以上、又は3重量%以上であり、15重量%以下、12重量%以下、又は10重量%以下で使用することができる。
【0062】
また、前記化学式2で表される芳香族ジオール化合物は、前記組成物100重量%に対して40重量%以上、50重量%以上、又は55重量%以上であり、80重量%以下、75重量%以下、又は70重量%以下を使用することができる。
【0063】
また、前記カーボネート前駆体は、前記組成物100重量%に対して10重量%以上、15重量%以上、又は20重量%で、50重量%以下、40重量%以下、又は35重量%以下で使用することができる。
【0064】
この時、前記重合は、界面重合又は溶融重合方法のいずれの方法で行ってもよい。
【0065】
界面重合時の前記重合温度は、0℃~40℃、反応時間は10分~5時間が好ましい。また、反応中のpHは、9以上又は11以上を維持することが好ましい。
【0066】
前記重合に使用できる溶媒としては、当業界でポリカーボネートの重合に使われてる溶媒であれば、特に制限されず、一例としてメチレンクロリド、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0067】
また、前記重合は、酸結合剤の存在下で行うことが好ましく、前記酸結合剤として水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物又はピリジンなどのアミン化合物を使用することができる。
【0068】
また、前記重合時のポリカーボネートの分子量調整のために、分子量調整剤の存在下に重合することが好ましい。前記分子量調整剤としてC1-20アルキルフェノールを使用することができ、その具体的な例としてp-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、デシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール又はトリアコンチルフェノールが挙げられる。前記分子量調整剤は、重合開始前、重合開始中又は重合開始後に投入されうる。前記分子量調整剤は、前記芳香族ジオール化合物100重量部に対して0.01~10重量部、好ましくは0.1~6重量部を使用することができ、この範囲内で所望する分子量を得ることができる。
【0069】
また、前記重合反応の促進のために、トリエチルアミン、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド、テトラ-n-ブチルホスホニウムブロミドなどの3次アミン化合物、4次アンモニウム化合物、4次ホスホニウム化合物などのような反応促進剤を追加で使用することができる。
【0070】
前記重合は、溶融重合方法で行われることが好ましい。
【0071】
前記界面重合方法は、重合体を溶媒に溶解させながら重合するので、洗浄、中和などの重合体の精製に多くの努力と時間が必要である。しかし、溶融重合はエステル交換反応による重合方法であり、界面重合方法より安くポリカーボネートを製造できる利点を有し、ホスゲン又はメチレンクロリドのような毒性物質を使用せず環境にやさしいため最近数年間注目されている。
【0072】
前記溶融方法によってポリカーボネートを製造する方法は、ジオール化合物および炭酸ジエステルを触媒の存在下で高温減圧条件で反応させてエステル交換反応を行う方式で行うことができる。前記触媒としては金属化合物触媒系と非金属化合物触媒系などで公知の触媒を使用することができる。
【0073】
前記エステル交換反応に使われる出発原料物質として使用可能な炭酸ジエステル化合物としてはジアリール化合物の炭酸塩、ジアルキル化合物の炭酸塩、又はアルキルアリール化合物の炭酸塩などを例に挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0074】
前記ジオール化合物および炭酸ジエステルは、炭酸ジエステル/ジオール化合物が0.9~1.5、好ましくは0.95~1.20、より好ましくは0.98~1.20のモル比で含まれ得る。
【0075】
本発明のエステル交換反応によりポリカーボネート樹脂の製造において必要に応じて末端停止剤、分枝剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに使用することができる。
【0076】
前記末端停止剤、分枝剤、酸化防止剤などは粉末、液体、気体などの状態で添加することができ、これらは収得されるポリカーボネート樹脂の品質を向上させる作用をする。
【0077】
前記エステル交換反応時の反応圧力は、特に制限されず、使用された単量体の蒸気圧、および反応温度に応じて調整できるが、通常反応初期には1~10気圧の大気圧(常圧)になる加圧状態になるようにし、反応後期には減圧状態になるようにして最終的に0.1~100mbarになるようにする。
【0078】
また、エステル交換反応時の反応時間は、目標の分子量になるまで行うことができ、通常0.2~10時間実施する。
【0079】
前記エステル交換反応は、通常不活性溶媒の部材下に行われるが、必要に応じて収得されたポリカーボネート樹脂の1~150重量%の不活性溶媒の存在下で行うこともできる。前記不活性溶媒としては、ジフェニルエーテル、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ベンゾフェノン、ポリフェニレンエーテル、ジクロロベンゼン、メチルナフタレンなどの芳香族化合物;又はトリシクロ(5,2,10)デカン、シクロオクタン、シクロデカンなどのシクロアルカンなどを使用することができる。
【0080】
また、必要に応じて不活性気体の雰囲気下で行ってもよく、前記不活性気体としては、アルゴン、二酸化炭素、一酸化二窒素、窒素などの気体;クロロフルオロ炭化水素、エタン又はプロパンのようなアルカン、又はエチレン又はプロピレンのようなアルケンなどがある。
【0081】
前記のような条件でエステル交換反応が行われることによって、使用された炭酸ジエステルに相応するフェノール類、アルコール類、又はこれらのエステル類;および不活性溶媒が反応基から脱離する。このような脱離物は分離、精製、および再生することができる。前記エステル交換反応は任意の装置を用いて回分式又は連続式で行われることができる。
【0082】
この時、エステル交換反応の反応装置は、通常の攪拌機能を有するものであれば使用可能であり、反応後期で粘度が上昇して高粘度型の攪拌機能を有するもの方が良い。
【0083】
また、反応器の好ましい類型は容器型、又は押出機型である。
【0084】
また、予備重合時の反応圧力は、0.1mbar~100mbarで実施することが好ましく、さらに好ましくは1mbar~10mbarで実施する。前記反応圧力が0.1~100mbarの範囲の場合は、出発原料物質である炭酸ジエステルが蒸留除去されずエステル交換反応系内の組成が変化せず、副生するモノヒドロキシ化合物が蒸留除去されて反応の進行が円滑に行われる点でより良い。
【0085】
発明のまた他の実施形態によれば、前記ポリカーボネートで製造される成形品を提供することができる。上述したように、前記化学式1で表される化合物由来繰り返し単位を含むポリカーボネートは機械的物性に優れながらも、難燃性、耐熱性、透明性も向上して従来に使用されていたポリカーボネートで製造される成形品に比べて応用分野が広い。また、前記化学式1および2で表される化合物繰り返し単位のモル比を調整して所望する物性のポリカーボネートを製造することができる。
【0086】
前記成形品は、本発明によるポリカーボネートの他に、必要に応じて酸化防止剤、可塑剤、帯電防止剤、核剤、難燃剤、滑剤、衝撃補強剤、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、顔料および染料からなる群より選択された1種以上をさらに含み得る。
【0087】
前記成形品方法の一例として、本発明によるポリカーボネートとその他添加剤をミキサーを用いてよく混合した後、押出機で押出成形してペレットに製造し、前記ペレットを乾燥させた後に射出成形機で射出する段階を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1】実施例1で製造した化合物の1H-NMRグラフである。
【
図2】実施例1で製造したコポリカーボネートの1H-NMRグラフである。
【
図3】実施例2で製造した化合物の1H-NMRグラフである。
【
図4】実施例2で製造したコポリカーボネートの1H-NMRグラフである。
【
図5】実施例3で製造した化合物の1H-NMRグラフである。
【
図6】実施例3で製造したコポリカーボネートの1H-NMRグラフである。
【
図7】実施例4で製造した化合物の1H-NMRグラフである。
【
図8】実施例4で製造したコポリカーボネートの1H-NMRグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0089】
[発明の効果]
本発明によれば、機械的物性に優れながらも、難燃性、耐熱性、耐衝撃性、および硬度が向上した新規な構造のポリカーボネートおよびその製造方法を提供することができる。
【0090】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は、下記の実施例によって限定されない。
【0091】
<実施例>
実施例1
(1)単量体4,4’-(((1,4-phenylenebis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)の製造
【0092】
【0093】
1.5リットル丸底フラスコに臭化銅(CuBr)0.6gに溶媒トルエン300mlとピリジン40mlを入れ、酸素を注入しながら常温で約5時間攪拌した。そして、トルエン40mlに2,6-dimethylphenol 40.1gとハイドロキノン(hydroquinone) 2.6gをフラスコに投入した後、酸素を注入しながら約30℃で一晩(overnight)反応を行った。そして、反応物をseparation funnelに入れてトルエン200mlと水200mlを追加で投入して有機層反応物を別に分離した。得られた有機物はメタノール1500mlと35% HCl溶液5ml混合溶媒に入れて反応物を沈殿させた。沈殿した反応物は110℃の真空乾燥オーブンに入れて溶媒を完全に除去して約34.2gの白色粉末形態の表題の化合物を収得した。(Mw=2,000g/mol,n,m=14~18)
前記化合物の1H-NMRは、
図1に示した。
【0094】
(2)コポリカーボネートの製造
窒素パージとコンデンサが備えられ、サーキュレータ(circulator)で常温維持が可能な2L重合反応器に水1784g、NaOH 385g、BPA(bisphenol A) 233gを入れ、窒素雰囲気下に混合して溶解した。ここにPTBP(para-tert butylphenol) 4.3gと前記(1)段階で製造した4,4’-(((1,4-phenylenebis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)化合物26.3gをMC(methylene chloride)で別に溶解して重合反応器に入れた。その次、TPG(triphosgene) 130gをMCに溶かして20% NaOH水溶液でpHを11以上に維持させて1時間ゆっくり投入して反応させた後、10分後にTEA(triethylamine) 46gを入れてカップリング(coupling)反応をさせた。総反応時間1時間20分が経過した後、35% HCl溶液でpHを4以下に下げてTEAを除去し、蒸溜水で3回洗浄して生成された重合体のpHを6~7中性に合わせた。このように得た重合体をメタノールとヘキサン混合溶液で再沈殿させて収得した後、これを120℃で乾燥して最終コポリカーボネートを得た(化学式1:化学式2のモル比=約10:90)。
【0095】
このように製造したコポリカーボネートの1H-NMRは、
図2に示した。
【0096】
実施例2
(1)単量体4,4’-((([1,1’-biphenyl]-4,4’-diylbis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)の製造
【0097】
【0098】
実施例1の(1)単量体の製造で、hydroquinone 1.3gの代わりに(1,1’-biphenyl)-4,4’-diol 4.5gを使用することを除いては、前記実施例1と同様の方法で約32.1gの黄色粉末形態の表題の化合物を収得した。(Mw=2,200g/mol,n,m=12~18)
前記化合物の1H-NMRは、
図3に示した。
【0099】
(2)コポリカーボネートの製造
実施例1の(2)コポリカーボネートの製造で、4,4’-(((1,4-phenylenebis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)化合物26.3gの代わりに4,4’-((([1,1’-biphenyl]-4,4’-diylbis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol) 26.3gを使用したことを除いては前記実施例1と同様の方法でコポリカーボネート樹脂を製造した(化学式1:化学式2のモル比=約10:90)。
【0100】
このように製造したコポリカーボネートの1H-NMRは、
図4に示した。
【0101】
実施例3
(1)単量体4,4’-(((naphthalene-2,6-diylbis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)の製造
【0102】
【0103】
実施例1の(1)単量体の製造で、hydroquinone 1.3gの代わりにnaphthalene-2,6-diol 1.9gを使用することを除いては、前記実施例1と同様の方法で約32.9gの黄色粉末形態の表題の化合物を収得した。 (Mw=2,100g/mol,n,m=14~18)
前記化合物の1H-NMRは、
図5に示した。
【0104】
(2)コポリカーボネートの製造
実施例1の(2)コポリカーボネートの製造で、4,4’-(((1,4-phenylenebis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)化合物26.3gの代わりに4,4’-(((naphthalene-2,6-diylbis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol) 26.3gを使用したことを除いては前記実施例1と同様の方法でコポリカーボネート樹脂を製造した(化学式1:化学式2のモル比=約10:90)。
【0105】
このように製造したコポリカーボネートの1H-NMRは、
図6に示した。
【0106】
実施例4
(1)単量体4,4’-((((hexahydrofuro[3,2-b]furan-3,6-diyl)bis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)の製造
【0107】
【0108】
実施例1の(1)単量体の製造で、hydroquinone 1.3gの代わりにisosorbide (roquette,POLYSORB(R)) 1.8gを使用することを除いては、前記実施例1と同様の方法で約35.3gの白色粉末形態の表題の化合物を収得した。(Mw=2,000g/mol,n,m=14~18)
前記化合物の1H-NMRは、
図7に示した。
【0109】
(2)コポリカーボネートの製造
実施例1の(2)コポリカーボネートの製造で、4,4’-(((1,4-phenylenebis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)化合物26.3gの代わりに4,4’-((((hexahydrofuro[3,2-b]furan-3,6-diyl)bis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol) 26.3gを使用したことを除いては前記実施例1と同様の方法でコポリカーボネート樹脂を製造した(化学式1:化学式2のモル比=約10:90)。
【0110】
このように製造したコポリカーボネートの1H-NMRは、
図8に示した。
【0111】
比較例1
商用化されたポリカーボネートとして製品名LUPOY PC P1300-10(LG社) 90wt%と下記化学式5の一般PPO(polyphenylene oxide,Mw=2,000g/mol) 10wt%をHAAKE Mini CTW押出機を用いて混合してペレット化した。
【0112】
【0113】
比較例2
実施例1の(2)コポリカーボネートの製造で、4,4’-(((1,4-phenylenebis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)化合物26.3gの代わりに下記化学式5の一般PPO(polyphenylene oxide) 26.3gを使用したことを除いては前記実施例1と同様の方法でコポリカーボネート樹脂を製造した。
【0114】
【0115】
比較例3
(1)単量体4,4’-((((propane-2,2-diylbis(4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)の製造
【0116】
【0117】
実施例1の(1)単量体の製造で、hydroquinone 1.3gの代わりにBisphenol A(BPA) 2.7gを使用することを除いては前記実施例1と同様の方法で約37.8gの白色粉末形態の表題の化合物を収得した。(Mw=2,300g/mol,n,m=14~18)
(2)コポリカーボネートの製造
実施例1の(2)コポリカーボネートの製造で、4,4’-(((1,4-phenylenebis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol)化合物26.3gの代わりに4,4’-((((propane-2,2-diylbis(4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethyl-4,1-phenylene))bis(oxy))bis(2,6-dimethylphenol) 26.3gを使用したことを除いては前記実施例1と同様の方法でコポリカーボネート樹脂を製造した。
【0118】
実験例:ポリカーボネートの物性評価
前記実施例および比較例で製造したそれぞれのポリカーボネート樹脂100重量部に対して、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファート0.050重量部、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート0.010重量部、ペンタエリスリトールテトラステアレート0.030重量部を添加し、ベント付きHAAKE Mini CTWを用いてペレット化した後、HAAKE Minijet射出成形機を用いてシリンダ温度300℃、金型温度120℃で射出成形して試験片を製造した。
【0119】
このような射出試験片又はコポリカーボネートの特性を下記の方法で測定し、その結果を表1に示した。
【0120】
*繰り返し単位:Varian 500MHzを用いて1H-NMRで測定した。
【0121】
*重量平均分子量(g/mol):Agilent 1200 seriesを用いて、ポリスチレンスタンダード(PS standard)で検量して測定した。
【0122】
*流れ性(MI):ASTM D1238(300℃、1.2kg条件)に基づいて測定した。
【0123】
*Izod常温衝撃強度(J/m):ASTM D256(1/8inch,Notched Izod)に基づいて23℃で測定した。
【0124】
*ガラス転移温度(Tg,℃):DSC(TA Instrument)装備を用いてガラス転移温度を測定した。
【0125】
*鉛筆硬度:鉛筆硬度計(Cometech)を用いてASTM D3363に基づいて50gの荷重で45度角度で2B、B,HB強度の鉛筆で測定した。
【0126】
【0127】
表1を参照すると、一般のPPOをポリカーボネートと単にブレンドした比較例1、および置換基Rを含まない単なるPPOを用いてポリカーボネート樹脂を製造した比較例2と比較し、本発明の化学式1のジオール化合物から由来する繰り返し単位を含むポリカーボネートは、153℃以上の非常に高いガラス転移温度を示し、耐熱性が顕著に向上することを確認した。
【0128】
また、比較例1ないしの鉛筆硬度が2Bであることに比べ、本発明のポリカーボネートはB又はHBで高硬度を示した。
【0129】
これをまとめると、本発明の化学式1のジオール化合物から由来する繰り返し単位を含むポリカーボネートは、一般のPPO化合物をポリカーボネートとブレンドしたり共に重合した化合物に比べて、向上した耐熱性、耐衝撃性および高硬度を同時に達成できることを確認することができた。