(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】粘着樹脂及びこれを含む光学部材用粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 20/10 20060101AFI20220927BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20220927BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220927BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20220927BHJP
C09J 11/00 20060101ALI20220927BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20220927BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220927BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C08F20/10
C09J133/00
C09J11/06
C09J133/06
C09J11/00
C09J7/38
G02B5/30
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2020565813
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(86)【国際出願番号】 KR2019014333
(87)【国際公開番号】W WO2020116782
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】10-2018-0156716
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミン・キ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・スク・キム
(72)【発明者】
【氏名】キ・ヨン・キム
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-052251(JP,A)
【文献】特開2017-052252(JP,A)
【文献】特開2008-174612(JP,A)
【文献】特開2008-310116(JP,A)
【文献】特開2017-111322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 20/10
C09J 133/00
C09J 11/06
C09J 133/06
C09J 11/00
C09J 7/38
G02B 5/30
G02F 1/1335
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記[化学式1]で表される単量体、
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体、及び
アルキル(メタ)アクリレート系単量体を含む単量体混合物を重合して形成されるアクリル系共重合体を含
み、
前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体が、ヒドロキシ基含有単量体、又はカルボキシ基含有単量体である、粘着樹脂。
【化1】
化学式1において、
F
1は、-COOH、又は-SH、
X
1は、単結合、-O-、-NH-、炭素数1~10のアルキレン基、又はこれらの組み合わせ、
X
2は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、-OCO-、又はこれらの組み合わせ、
R
1は、水素又は炭素数1から4のアルキル基、
R
2は、単結合又は炭素数1~10のアルキレン基、
R
3は、炭素数6~20の3価のアリール又は炭素数1~10の3価の飽和炭化水素である。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体は、重量平均分子量が500,000g/molから1,500,000g/molである、請求項1に記載の粘着樹脂。
【請求項3】
前記アクリル系共重合体は、分枝状(branch)高分子構造を有する、請求項1又は2に記載の粘着樹脂。
【請求項4】
化学式1で表される単量体は、下記化学式1-3又は1-4で表される化合物からなる群から選択された1種以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着樹脂。
【化2】
【化3】
【請求項5】
前記単量体混合物は、[化学式1]で表される単量体を前記単量体混合物100重量部に対して0.01から1重量部で含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着樹脂。
【請求項6】
前記単量体混合物は、前記単量体混合物100重量部に対して、
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体84重量部から99.89重量部と、
架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体0.1から15重量部と、
[化学式1]で表される単量体0.01から1重量部と、を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の粘着樹脂。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載の粘着樹脂;及び多官能性硬化剤を含む光学部材用粘着剤組成物。
【請求項8】
前記多官能性硬化剤は、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、及び金属キレート系化合物からなる群から選択される1種以上を含む、請求項7に記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項9】
前記多官能性硬化剤は、粘着樹脂100重量部に対して0.01から1重量部で含まれる、請求項7又は8に記載の光学部材用粘着剤組成物。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の前記光学部材用粘着剤組成物の硬化物を含む粘着層を含む偏光板。
【請求項11】
請求項10に記載の偏光板を含むディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月7日付で出願された韓国特許出願第10-2018-0156716号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、粘着樹脂及びこれを含む光学部材用粘着剤に関する。より詳細には、本発明は、高温露出時にも物性の変化が大きくなく、長時間使用時にも高い耐久性を維持できる粘着樹脂、及びこれを含む光学部材用粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に液晶表示装置(Liquid crystal display device、LCD)には液晶を含んでいる液晶セルと偏光板が備えられ、液晶セルと偏光板を付着するために粘着層が用いられる。このような粘着層を形成する粘着剤としては、アクリル系樹脂、ゴム類、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、又はEVA(エチレンビニルアセテート;Ethylene Vinyl Acetate)等が用いられており、この中でも透明性、酸化抵抗性及び黄変抵抗性があるアクリル系樹脂をベースにする粘着剤が多く用いられている。
【0004】
一方、最近の偏光板を含むディスプレイ装置は、携帯用、車両搭載用、屋外計量器用、コンピュータ、テレビ等のような多様な製品に用いられており、その適用分野がますます拡大している傾向である。適用分野が多様になるにつれて、ディスプレイ装置が用いられる環境も厳しくなっており、これによって高温、高湿及び/又は温度や湿度の変化が激しい環境でも高い耐久性を有することが要求されている。これにより、ディスプレイ装置に適用される粘着剤もまた高温や高湿環境に長時間露出された場合にも、優れた粘着物性を維持する必要性がある。しかし、現在まで開発された粘着剤では前記のような要求を十分に満たしていない。よって、厳しい環境でも高耐久性を具現できる粘着剤組成物の開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記のような問題点を解決するためのもので、高温露出時にも物性の変化が大きくなく、長時間使用時にも高い耐久性を維持できる粘着樹脂、及びこれを含む光学部材用粘着剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面において、本発明は、下記[化学式1]で表される単量体、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体、及びアルキル(メタ)アクリレート系単量体を含む単量体混合物を重合して形成されるアクリル系共重合体を含む粘着樹脂を提供する。
【化1】
【0007】
前記化学式1において、F1は、-OH、-COOH、又は-SH、X1は、単結合、-O-、-NH-、炭素数1~10のアルキレン基、又はこれらの組み合わせ、X2は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、-COO-又はこれらの組み合わせ、R1は、水素又は炭素数1から4のアルキル基、R2は、単結合又は炭素数1~10のアルキレン基、R3は、炭素数6~20の3価のアリール又は炭素数1~10の3価のアルキルである。
【0008】
他の側面において、本発明は、前記本発明による粘着樹脂及び多官能性硬化剤を含む光学部材用粘着剤組成物を提供する。
【0009】
また他の側面において、本発明は、前記光学部材用粘着剤組成物の硬化物を含む粘着層を含む偏光板及びこれを含むディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のように、[化学式1]で表される単量体を原料物質として含めて共重合体を製造する場合、複数の架橋点(multi-crosslinking point)を有し、分枝状高分子構造を有する共重合体を形成するようになる。その結果、本発明の粘着樹脂は、同一の重量平均分子量を有する直鎖状共重合体を含む粘着樹脂に比べて低い粘度を有し、高い架橋度を有して高温及び/又は高湿環境に長期間露出されても粘着物性の変化が大きくないため高耐久性を具現できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に対して具体的に説明する。
【0012】
本明細書上で言及した「含む」、「有する」、「からなる」等が用いられる場合、「~だけ」が用いられない以上、他の部分が追加されてよい。構成要素を単数で表現した場合、特に明示的な記載事項がない限り複数を含む場合を含む。
【0013】
構成要素を解釈することにおいて、別途の明示的な記載がないとしても誤差範囲を含むものと解釈する。
【0014】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの総称である。例えば、(メタ)アクリレートは、メタクリレートとアクリレートを含み、(メタ)アクリル酸はアクリル酸とメタクリル酸を含む。
【0015】
本明細書において、範囲を示す「XからY」は「X以上Y以下」を意味する。
【0016】
本明細書において、「分枝状高分子構造」は、互いに他の方向に成長された2個以上の長い鎖を有する高分子構造を意味する。
【0017】
本発明者は、高温及び/又は高湿環境下で長期間露出されても優れた耐久性を維持できる粘着剤組成物を開発するために研究を繰り返した結果、アクリル系共重合体製造時に特定単量体を共に用いることで、複数の架橋点(multi-crosslinking point)を有し、分枝状高分子構造を有する共重合体を形成でき、このような共重合体を用いる場合、前記のような目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
【0018】
以下、本発明によるアクリル系粘着剤組成物に対して具体的に説明する。
【0019】
粘着樹脂
本発明による粘着樹脂は、下記[化学式1]で表される単量体、架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体及びアルキル(メタ)アクリレート系単量体を含む単量体混合物を重合して形成されるアクリル系共重合体を含む。
【化2】
【0020】
化学式1において、F1は、-OH、-COOH、又は-SHであり、X1は、単結合、-O-、-NH-、炭素数1~10のアルキレン基、又はこれらの組み合わせであり、X2は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、-COO-又はこれらの組み合わせであり、R1は、水素又は炭素数1から4のアルキル基であり、R2は、単結合又は炭素数1~10のアルキレン基であり、R3は、炭素数6~20の3価のアリール又は炭素数1~10の3価のアルキルである。
【0021】
前記[化学式1]で表される単量体は、架橋が可能な官能基F1を含み、両末端に重合反応が可能な二重結合を含む化合物である。このような[化学式1]で表される単量体を原料として用いる場合、後述する架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体の架橋性官能基と前記[化学式1]のF1官能基が架橋点として作用し、複数の架橋点(multi-crosslinking point)を有するアクリル系共重合体を製造でき、これによって粘着剤組成物の架橋度が高くなるため高い耐久性を具現できる。
【0022】
また、前記[化学式1]で表される単量体は、2個以上のエチレン基を有しているため、フリーラジカル重合でそれぞれラジカル形成が可能であり、これによって互いに異なる方向に鎖が成長できるため、成長方向が異なる2個以上の鎖を有する分枝状高分子が形成されるようになる。このような分枝状高分子構造を有するアクリル系共重合体は、同一の重量平均分子量を有する直鎖状高分子構造のアクリル系共重合体に比べて低い粘度特性を有するため、コーティング液内の固形分含量を上げても優れたコーティング性を具現できる。
【0023】
前記[化学式1]で表される単量体の具体的な例としては、下記化学式1-1から1-4で表される化合物からなる群から選択された1種以上が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0024】
一方、前記[化学式1]で表される単量体は、単量体混合物100重量部に対して0.01から1重量部、好ましくは0.05から1重量部、より好ましくは0.1から0.5重量部で含まれてよい。[化学式1]で表される単量体の含量が0.01重量部未満の場合には耐久性向上効果が微々であり、1重量部を超過する場合には重合反応時に架橋反応が行われて分子量及び粘度上昇を制御しにくい。
【0025】
次に、前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体は、粘着剤の耐久性、粘着力及び凝集力を向上させるためのもので、例えば、ヒドロキシ基含有単量体、カルボキシ基含有単量体又は窒素含有単量体等が挙げられるが、これに限定されるものではない。前記ヒドロキシ基含有単量体の具体的な例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート又は2-ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、前記カルボキシ基含有単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二重体、イタコン酸、マレイン酸及びマレイン酸無水物等が挙げられ、前記窒素含有単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン又はN-ビニルカプロラクタム等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
前記架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物100重量部に対して0.1から15重量部、好ましくは1から10重量部、より好ましくは1から5重量部の含量で含まれてよい。架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体の含量が前記範囲を満たす時、より優れた粘着力及び耐久性を得ることができる。
【0027】
次に、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、炭素数1から14のアルキル基を含むのが好ましい。アルキル(メタ)アクリレート系単量体に含まれるアルキル基があまりにも長くなると粘着剤の凝集力が低下し、ガラス転移温度(Tg)や粘着性調節が難しくなるからである。例えば、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレートが挙げられ、本発明では前記のうち1種又は2種以上の混合を用いてよい。
【0028】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、単量体混合物100重量部に対して、84重量部から99.89重量部、好ましくは89から98.95重量部、より好ましくは94.5から98.9重量部の含量で含まれてよい。アルキル(メタ)アクリレート系単量体の含量が前記範囲を満たす時、優れた粘着力及び耐久性を得ることができる。
【0029】
一具体例によれば、前記アクリル系共重合体は、単量体混合物100重量部に対して、84重量部から99.89重量部のアルキル(メタ)アクリレート系単量体、0.1から15重量部の架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体及び0.01から1重量部の[化学式1]で表される単量体を含む単量体混合物を重合して形成されるものであってよい。
【0030】
本発明によるアクリル系共重合体は、上述したそれぞれの単量体を混合して単量体混合物を製造した後、これを重合することで製造されてよい。このとき、前記重合方法は特に限定されず、当該技術分野に知られている多様な重合方法、例えば、溶液重合、光重合、バルク重合、懸濁重合又は乳化重合等のような重合法が用いられてよい。前記重合時に重合開始剤、分子量調節剤等がさらに添加されてよく、各成分の投入時期は特に限定されない。すなわち、前記成分は一括投入されてもよく、数回に分けて分割投入されてもよい。
【0031】
本発明では、特に、溶液重合法を用いてアクリル系共重合体を製造でき、溶液重合は、それぞれの単量体が均一に混合された状態で開始剤、分子量調節剤等を添加し、50℃から140℃の重合温度で行うのが好ましい。この過程で用いられ得る開始剤の例としては、アゾビスイソブチロニトリル又はアゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等のようなアゾ系開始剤;及び/又は過酸化ベンゾイル又は過酸化アセチル等のような過酸化物のような通常の開始剤が挙げられ、前記のうち1種又は2種以上の混合を用いてよいが、これに制限されるものではない。また、前記分子量調節剤としては、t-ドデシルメルカプタン、又はn-ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、ジペンテン、又はt-テルペンのテルペン類、クロロホルム、又は四塩化炭素のハロゲン化炭化水素、又はペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)等を用いてよいが、これに制限されるものではない。
【0032】
前記のように製造された本発明のアクリル系共重合体は、重量平均分子量が500,000から1,500,000g/mol、好ましくは800,000から1,500,000g/molである。アクリル系共重合体の重量平均分子量が500,000g/mol未満の場合には硬化効率低下によって粘着剤の凝集力が不足するため再剥離特性が低下され、高温又は高温/高湿環境下での耐久性が下がるという問題点があり、1,500,000g/molを超過する場合には、粘度が高いためコーティング性が低下され均一な粘着層を製造しにくくなり得る。
【0033】
また、本発明のアクリル系共重合体は分枝状(branched)高分子構造を有する。分枝状高分子構造を有するアクリル系共重合体は、同一の重量平均分子量を有する直鎖状高分子構造を有するアクリル系共重合体に比べて低い粘度特性を有するため、これを含む粘着樹脂は固形分含量が高い場合にも優れたコーティング性を具現できる。
【0034】
粘着剤組成物
次に、本発明による粘着剤組成物に対して説明する。
【0035】
本発明による粘着剤組成物は、上述した本発明による粘着樹脂と多官能性硬化剤を含む。粘着樹脂に対しては上述したため、以下では多官能性硬化剤に対して説明する。
【0036】
前記多官能性硬化剤は、被着体との界面接着力を向上させるためのもので、その種類が特に制限されず、当該技術分野で用いられる多様な硬化剤、例えば、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物、及び金属キレート系化合物からなる群から選択される1種以上が用いられてよい。
【0037】
前記イソシアネート系化合物としては、当該技術分野に知られた通常のものを用いてよく、例えば、トルエンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4-ジイソシアネート、1,3-ビスイソシアナトメチルシクロヘキサン、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トルエンジイソシアネート、トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトリレンジイソシアネートアダクト、トリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネートアダクト、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビストリイソシアネート、これらのポリオール(トリメチロールプロパン)又はこれらの混合物等を用いてよい。
【0038】
前記エポキシ系化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’-テトラグリシジルエチレンジアミン、グリセリンジグリシジルエーテル又はこれらの混合物等を用いてよい。
【0039】
前記アジリジン系化合物としては、例えば、N,N’-トルエン-2.4-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキシド又はこれらの混合物等を用いてよい。
【0040】
前記金属キレート系化合物としては、例えば、アルミニウム、鉄、亜鉛、スズ、チタン、アンチモン、マグネシウム及び/又はバナジウムのような多価金属がアセチルアセトン又はアセト酢酸エチル等に配位している化合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0041】
前記多官能性硬化剤は、粘着樹脂100重量部に対して0.01から1重量部、好ましくは0.01から0.5重量部で含まれるのが好ましい。前記多官能性硬化剤の含量が0.01重量部未満の場合には、被着体との密着性向上効果が微々であり、1重量部を超過する場合には粘着剤物性の経時変化が発生し得る。
【0042】
一方、本発明の粘着剤組成物は、物性調節のために上述した成分以外に、溶媒、シランカップリング剤、架橋触媒剤、粘着性付与樹脂、添加剤等と他の成分をさらに含んでよい。
【0043】
本発明の粘着剤組成物は、粘度調節のための溶媒をさらに含んでよい。このとき、前記溶媒は、例えば、酢酸エチル、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、n-ヘキサン、n-オクタン、n-ヘプタン、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これに限定されるものではない。前記溶媒は、粘着剤組成物内の固形分含量が30重量%以上、好ましくは30から60重量%になるようにする量で含まれてよい。
【0044】
また、本発明の粘着剤組成物はシランカップリング剤をさらに含んでよい。
【0045】
シランカップリング剤は、粘着剤とガラス基板の間の密着性及び接着安定性を向上させ、耐熱性及び耐湿性を改善し、また高温及び/又は高湿条件下で粘着剤が長期間放置された場合に接着信頼性を向上させる作用をする。本発明で用いられ得るシランカップリング剤の例としては、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-アセトアセテートプロピルトリメトキシシラン、γ-アセトアセテートプロピルトリエトキシシラン、β-シアノアセチルトリメトキシシラン、β-シアノアセチルトリエトキシシラン、アセトキシアセトトリメトキシシランが挙げられ、前記のうち1種又は2種以上の混合を用いてよい。本発明では、アセトアセテート基又はβ-シアノアセチル基を有するシランカップリング剤を用いるのが好ましいが、これに制限されるのではない。
【0046】
例えば、前記シランカップリング剤は、下記化学式2で表される化合物であってよい。
[化学式2]
(Ra)nSi(Rb)4-n
前記化学式2において、Raは、β-シアノアセチル基、アセトアセチル基又はアセトアセチルアルキル基であり、Rbは、アルコキシ基であり、nは、1から3の整数である。このとき、前記化学式2に含まれるアルキル基又はアルコキシ基は、炭素数が1~20、1~16、1~12、1~8又は1~4であってよく、直鎖又は分枝鎖の形態であってよい。
【0047】
前記化学式2で表される化合物の具体的な例としては、アセトアセチルプロピルトリメトキシシラン、アセトアセチルプロピルトリエトキシシラン、ベータ-シアノアセチルトリメトキシシラン又はベータ-シアノアセチルトリエトキシシラン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
本発明の組成物としてシラン系カップリング剤は、粘着樹脂100重量部に対して0.01重量部から5重量部、好ましくは0.01重量部から1重量部の量で含まれてよい。カップリング剤の含量が0.01重量部未満であれば、粘着力増加効果が微々であり、5重量部を超過すると、耐久性が低下される恐れがある。
【0049】
本発明の粘着剤組成物はまた、架橋触媒剤をさらに含んでよい。前記架橋触媒剤は、粘着層の硬化(架橋)促進のためのもので、粘着剤組成物に架橋触媒剤を含む場合、基材面にコーティング、乾燥した後に別途のエイジング(熟成)工程を行わなくても良いという長所がある。前記架橋触媒剤としては、例えば、ビス(トリ-n-ブチルスズ)オキサイド、ビス(トリ-n-ブチルスズ)スルフェート、ジ-n-ブチルジフェニルスズ、ジ-n-ブチルスズビス(アセチルアセトネート)、ジ-n-ブチルスズビス(2-エチルヘキサノエート)、ジ-n-ブチルスズジクロリド、ジ-n-ブチルスズジラウレート、ジ-n-ブチルスズオキシド、ジメチルジフェニルスズ、ジメチルスズジクロリド、ジフェニルスズジクロリド、ジフェニルスズオキシド、ヘキサ-n-ブチルスズ、ヘキサフェニルスズ、テトラ-n-ブチルスズ、テトラフェニルスズ、スズ(II)アセテート、スズ(II)アセチルアセトネート、塩化スズ(II)、ヨウ化スズ(II)、スズ(II)オキサレート等が用いられてよいが、これに限定されるものではない。
【0050】
一方、前記架橋触媒剤は、粘着樹脂100重量部に対して0.001重量部から0.5重量部、好ましくは0.001重量部から0.1重量部の量で含まれてよい。架橋触媒剤の含量が0.001重量部未満であれば、硬化促進効果が微々であり、0.5重量部を超過すると、耐久性が低下される恐れがある。
【0051】
本発明の粘着剤組成物はまた、粘着性能の調節の観点で、粘着樹脂100重量部に対して1重量部から100重量部の粘着性付与樹脂をさらに含んでよい。このような粘着性付与樹脂の種類は特に限定されず、例えば、(水添)炭化水素系樹脂、(水添)ロジン樹脂、(水添)ロジンエステル樹脂、(水添)テルペン樹脂、(水添)テルペンフェノール樹脂、重合ロジン樹脂又は重合ロジンエステル樹脂等の一種又は二種以上の混合物を用いてよい。前記粘着性付与樹脂の含量が1重量部より小さければ、添加効果が微々である恐れがあり、100重量部を超過すると、相溶性及び/又は凝集力向上効果が低下される恐れがある。
【0052】
本発明の粘着剤組成物はまた、発明の効果に影響を与えない範囲で、エポキシ樹脂、硬化剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、呈色剤、補強剤、充填剤、消泡剤、界面活性剤及び可塑剤からなる群から選択された一つ以上の添加剤をさらに含んでよい。
【0053】
前記のような成分を含む本発明による粘着剤組成物は、同一水準の重量平均分子量を有する直鎖状高分子構造のアクリル系共重合体を用いる従来の粘着剤組成物に比べて低い粘度特性を有する。これにより、粘着剤組成物内の固形分含量が高い場合にも優れたコーティング性を具現できる。具体的には、本発明による粘着剤組成物は、固形分含量が20~30重量%の場合、23℃での粘度が3,000cP以下、好ましくは1000cPから3,000cP程度で低く現れる。このとき、前記固形分含量は、本発明の粘着剤組成物がコーティング液等の形態で製造され、粘着剤の製造過程に適用される時点での固形分含量を意味してよい。このように、本発明の粘着剤組成物を用いると、コーティング性が低下されることなくコーティング液内での固形分含量を上げることができ、生産性に優れるだけでなく、厚さ等の精密制御が可能である。
【0054】
前記のような本発明の粘着剤組成物は、ディスプレイ等に適用される光学部材用粘着剤として有用に用いることができ、特に偏光板と液晶パネルを付着するための用途、すなわち、偏光板用粘着剤として有用に用いられ得る。
【0055】
偏光板
次に、本発明による偏光板に対して説明する。
【0056】
本発明による偏光板は、偏光フィルム;及び前記偏光フィルムの一面又は両面に形成され、前述した本発明による粘着剤組成物の硬化物を含む粘着層を含む。
【0057】
本発明で用いる偏光フィルムの種類は特に制限されず、この分野で公知された一般的な種類を採用してよい。例えば、前記偏光フィルムは、偏光子;及び前記偏光子の一面又は両面に形成された保護フィルムを含んでよい。
【0058】
本発明の偏光板に含まれる偏光子の種類は特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール系偏光子等のようにこの分野で公知されている一般的な種類を制限なく採用してよい。
【0059】
偏光子は、色々な方向に振動しながら入射される光から一方向に震動する光だけを抽出できる機能性フィルム又はシートである。このような偏光子は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに異色性色素が吸着配向されている形態であってよい。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリビニルアセテート系樹脂をゲル化して得ることができる。この場合、用いられ得るポリビニルアセテート系樹脂には、ビニルアセテートの単独重合体はもちろん、ビニルアセテート及び前記と共重合可能な他の単量体の共重合体も含まれてよい。前記でビニルアセテートと共重合可能な単量体の例としては、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類及びアンモニウム基を有するアクリルアミド類等の一種又は二種以上の混合が挙げられるが、これに制限されるものではない。ポリビニルアルコール系樹脂のゲル化度は、通常85モル%から100モル%程度、好ましくは98モル%以上であってよい。前記ポリビニルアルコール系樹脂はさらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等も用いられてよい。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000から10,000程度、好ましくは1,500から5,000程度であってよい。
【0060】
前記のようなポリビニルアルコール系樹脂を除膜し、偏光子の円盤フィルムとして用いてよい。ポリビニルアルコール系樹脂を除膜する方法は、特に限定されず、この分野で公知されている一般的な方法を用いてよい。
【0061】
ポリビニルアルコール系樹脂で除膜された円盤フィルムの厚さは特に制限されず、例えば、1μmから150μmの範囲内で適切に制御されてよい。延伸の容易性等を考慮し、前記円盤フィルムの厚さは10μm以上に制御されてよい。
【0062】
偏光子は、前記のようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを延伸(ex.一軸延伸)する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色し、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸(boric acid)水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液で処理後に水洗する工程等を経て製造してよい。前記で二色性色素としては、ヨウ素(iodine)や二色性の有機染料等が用いられてよい。
【0063】
本発明の偏光フィルムは、また、前記偏光子の一面又は両面に形成された保護フィルムをさらに含んでよい。本発明の偏光板に含まれ得る保護フィルムの種類は特に制限されず、例えば、トリアセチルセルロースのようなセルロース系フィルム;ポリカーボネートフィルム又はポリエチレンテレフタレートフィルムのようなポリエステル系フィルム;ポリエテルスルホン系フィルム;及び/又はポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム又はシクロ系やノルボルネン構造を有するポリオレフィンフィルム又はエチレンプロピレン共重合体のようなポリオレフィン系フィルム等で構成される保護フィルムが積層された多層フィルムとして形成されてよい。このとき、前記保護フィルムの厚さもまた特に制限されず、通常の厚さで形成してよい。
【0064】
一方、本発明で偏光フィルムに粘着層を形成する方法は特に制限されず、例えば、前記フィルム又は素子にバーコーター等の通常の手段で粘着剤組成物(コーティング液)を塗布して硬化させる方法、又は粘着剤組成物を一旦剥離性基材の表面に塗布して硬化させた後に、形成された粘着層を偏光フィルム又は素子の表面に転写する方法等を用いてよい。
【0065】
本発明で粘着層の形成過程は、また、粘着剤組成物(コーティング液)内部の揮発成分又は反応残留物のような気泡誘発成分を十分に除去した後、行うのが好ましい。これにより、粘着剤の架橋密度又は分子量等があまりにも低くて弾性率が下がり、高温状態でガラス板及び粘着層の間に存在する気泡が大きくなって内部で散乱体を形成する問題点等を防止できる。
【0066】
一方、前記偏光板の製造時に本発明の粘着剤組成物を硬化させる方法もまた特に限定されず、当該技術分野に知られている通常の硬化方法を介して行われてよい。例えば、前記硬化は、加熱等を介して塗布された粘着剤組成物内の架橋性官能基と多官能性架橋剤の間に架橋反応が誘発され得る温度に維持させる方法で行われてよい。
【0067】
本発明の偏光板はまた、保護層、反射層、防眩層、位相差板、広視野角補償フィルム及び輝度向上フィルムからなる群から選択された一つ以上の機能性層をさらに含んでよい。
【0068】
ディスプレイ装置
次に、本発明のディスプレイ装置に対して説明する。
【0069】
本発明のディスプレイ装置は、前記の本発明による偏光板を含む。
【0070】
より具体的には、前記ディスプレイ装置は、発明による偏光板が一面又は両面に接合されている液晶パネルを含む液晶表示装置であってよい。このとき、前記液晶パネルの種類は特に限定されない。本発明では、例えば、その種類に制限されず、TN(ねじれネマチック;Twisted Neumatic)型、STN(超ねじれネマチック;Super Twisted Neumatic)型、F(強誘電;ferroelectric)型及びPD(ポリマー分散LCD;polymer dispersed LCD)型等を含めたF各種受動行列方式;2端子型(two terminal)及び3端子型(three terminal)を含めた各種能動行列方式;横電界型(IPS mode)パネル及び垂直配向型(VA mode)パネルを含めた公知の液晶パネルが全て適用されてよい。また、本発明の液晶表示装置に含まれるそれ以外のその他構成の種類及びその製造方法も特に限定されず、この分野の一般的な構成を制限なく採用して用いてよい。
【実施例】
【0071】
以下、具体的な実施例を介して本発明をより詳しく説明する。
【0072】
実施例1
窒素ガスが還流され、温度調節が容易なように冷却装置を設置した3L反応器にブチルアクリレート(BA)98重量部、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1.6重量部、化学式1-3で表される単量体0.4重量部を含む単量体混合物を投入し、溶剤として酢酸エチル(EAc)60重量部を投入した。次いで、酸素除去のために窒素ガスを60分間パージング(purging)した後、温度を70℃に維持した。その後、重合開始剤としてアゾビス(2-4-ジメチルバレロニトリル(V-65、製造社:Wako)0.02重量部を投入して反応させ、アクリル系共重合体Aを製造した。
【0073】
前記のように製造された100重量部のアクリル系共重合体Aに多官能性硬化剤(coronate L、ニッポンポリウレタン社製)0.2重量部、架橋触媒剤(ジ-n-ブチルスズジラウレート、シグマアルドリッチ)0.01重量部、シランカップリング剤(ベータ-シアノアセチル基含有シランカップリング剤、LG化学、M812)0.2重量部を配合し、固形分含量が25重量%になるように酢酸エチルで希釈した後、均一に混合して粘着剤組成物(コーティング液)を製造した。
【0074】
製造された粘着剤組成物を離型処理された38μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム(離型PET)の離型処理面に、乾燥後の厚さが23μmになるように塗布してから乾燥させ、粘着性コーティング層を形成した。その後、粘着性コーティング層を偏光板にラミネートして粘着層を含む偏光板を製造した。
【0075】
実施例2~9及び比較例1~4
アクリル共重合体製造時に用いられた単量体の種類及び含量を下記表1及び表2に記載された通りに変更し、必要に応じて分子量調節剤としてn-ドデシルメルカプタン(n-DDM、シグマアルドリッチ)を添加した点を除いては、実施例1と同一の方法でアクリル系共重合体B~Kを製造した。
【0076】
その後、前記のように製造された100重量部のアクリル系共重合体B~Kに多官能性硬化剤(coronate L、ニッポンポリウレタン社製)、架橋触媒剤(ジ-n-ブチルスズジラウレート、シグマアルドリッチ)、シランカップリング剤(ベータ-シアノアセチル基含有シランカップリング剤、LG化学、M812)を表1及び表2に記載された含量で配合し、固形分含量が表1及び表2に記載された通りになるように酢酸エチルに希釈した後、均一に混合して粘着剤組成物(コーティング液)を製造した。
【0077】
製造された粘着剤組成物を離型処理された38μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム(離型PET)の離型処理面に、乾燥後の厚さが23μmになるように塗布してから乾燥させ、粘着性コーティング層を形成した。その後、粘着性コーティング層を偏光板にラミネートして粘着層を含む偏光板を製造した。
【0078】
前記実施例1~9及び比較例1から4により製造されたアクリル系共重合体、粘着剤組成物及び偏光板の物性を下記の方法で測定し、測定結果は下記表1及び表2に示した。
【0079】
物性測定方法
1.重量平均分子量:
実施例及び比較例により製造されたアクリル系共重合体の重量平均分子量をGPCを用いて下記条件で測定した。検量線の製作にはAgilent systemの標準ポリスチレンを用いた。
【0080】
<測定条件>
測定器:Agilent GPC(Agulent 1200 series、米国)
カラム:PL Mixed B 2個連結
コラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
濃度:~1mg/mL(100μL注入)
【0081】
2.高分子構造
実施例及び比較例により製造されたアクリル系共重合体の高分子構造を下記のような方法で評価した。
【0082】
先ず、高分子構造を評価しようとするアクリル系共重合体(以下、「評価対象共重合体」とする)で用いられたものと同一の種類のアルキル(メタ)アクリレート系単量体及び架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体を混合して単量体混合物を製造した。このとき、前記単量体混合物内の架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体の含量が評価対象共重合体内の架橋性官能基を有する(メタ)アクリル系単量体の含量と同一になるようにした。その後、前記単量体混合物を重合して評価対象共重合体と同等水準の重量平均分子量(誤差範囲±5%)を有するアクリル系共重合体(以下、「基準共重合体」とする)を製造した。
【0083】
以後、前記基準共重合体と評価対象共重合体のそれぞれに酢酸エチル溶媒を添加して固形分の濃度が20~30%になるように粘度水準に合わせて調節した後、粘度を測定した。前記のように測定された評価対象共重合体の粘度が基準共重合体の粘度より確実に低い粘度(例えば、30%以上低い場合)を有する場合には分枝状高分子構造を有するものと評価し、それ以外の場合には直鎖状高分子構造を有するものと評価した。
【0084】
3.コーティング固形分含量(単位:%)
コーティング固形分は下記のような方法で測定した。
【0085】
先ず、アルミニウムディッシュ(aluminium dish)の重さ(A)を測定した後、実施例又は比較例で製造された粘着剤組成物を0.3~0.5g程度の量(乾燥前の試料の重さ:S)で採取して重さが測定されたアルミニウムディッシュに入れた。このとき、アルミニウムディッシュを含めた乾燥前の試料の重さB(A+S)を測定する。その後、重合禁止剤(hydroquinone)が溶解された酢酸エチル溶液(重合禁止剤の濃度0.5重量%)をピペットを用いて前記粘着剤組成物に極少量添加し、これを150℃のオーブンで30分程度乾燥させて溶媒を除去した。以後、前記乾燥した試料を常温で15分から30分程度冷やしてからアルミニウムディッシュの重さAを含めた乾燥後の試料の重さCを含めた重さを測定し、下記式(1)によってコーティング固形分を測定した。
式(1):コーティング固形分(%)={(C-A)/(B-A)}×100
【0086】
前記式(1)において、Aは、アルミニウムディッシュの重さ(単位:g)であり、Cは、アルミニウムディッシュの重さAを含めた乾燥後の試料の重さ(単位:g)であり、Bは、アルミニウムディッシュの重さAを含めた乾燥前の試料の重さ(単位:g)である。
【0087】
4.コーティング粘度(単位:cP)
粘着剤組成物のコーティング粘度は、測定器(Brookfield digital viscometer、RV DV2T)を用いて下記手続きにより評価した。
【0088】
250mLのペットボトル(PE bottle)に粘着剤組成物を220mL程度入れ、溶剤が揮発されないように蓋を閉めてパラフィルム等で十分に密封した以後、恒温/恒湿(23℃、50%相対湿度)条件で十分に放置して気泡を除去した。その後、密封及び蓋を除去してから粘着剤組成物に気泡が生じないようにスピンドル(spindle)を斜めに入れて、前記スピンドルを粘度計に連結し、粘着剤組成物の液面がスピンドルのホームに合うように調節した。以後、トルク(Torque)が20%(±1%)になるrpm条件で粘度を測定した。
【0089】
5.クリープ距離(Creep、単位:μm)
実施例及び比較例により製造された偏光板を幅10mm、長さ10mmのサイズに裁断して試料を製造した。次いで、粘着層に付着された離型PETフィルムを剥離し、JIS Z 0237規定によって2kgのローラを用いて偏光板を無アルカリガラスに付着し、測定用試料を製造した。その後、前記測定用試料を恒温恒湿条件(23℃、50% R.H.)で5日間保管した後、TA装置(Texture Analyzer、イギリスのStable Micro Systems社製)を用いてそれぞれのクリープ距離を測定した。具体的には、前記クリープ距離は、1,000gの荷重で1,000秒間測定用試料の偏光板を引っ張った時、前記偏光板がガラス基板から押された距離(単位:μm)で測定した。
【0090】
6.常温粘着力(単位:gf/25mm)
実施例及び比較例により製造された偏光板を恒温恒湿条件(23℃、50% R.H.)でそれぞれ5日間保管した後、幅25mm、長さ100mmになるように裁断して試料を製造した。次いで、粘着層に付着された離型PETフィルムを剥離し、JIS Z 0237規定によって2kgのローラを用いて偏光板を無アルカリガラスに付着し、測定用試料を製造した。
【0091】
前記測定用試料を恒温恒湿条件(23℃、50% R.H.)で4時間保管した。その後、TA装置(Texture Analyzer、イギリスのStable Micro Systems社製)を用いて剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で前記偏光板を引っ張りガラス基板から偏光板を完全に分離させるのに要求される力を測定し、常温粘着力(単位:gf/25mm)を測定した。
【0092】
また、前記測定用試料を恒温恒湿条件(23℃、50% R.H.)で4時間保管してから80℃で24時間熟成(aging)した後、TA装置(Texture Analyzer、イギリスのStable Micro Systems社製)を用いて剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で前記偏光板を引っ張りガラス基板から偏光板を完全に分離させるのに要求される力を測定し、熟成後の常温粘着力(単位:gf/25mm)を測定した。
【0093】
7.耐久性評価
実施例及び比較例により製造された偏光板を180mm×250mm(長さ×幅)の大きさで裁断してサンプルを製造し、前記サンプルをガラス基板上に付着して測定用試料を製作した。
【0094】
前記測定用試料を90℃でそれぞれ500時間及び1000時間放置した後、気泡又は剥離の発生有無を観察して耐熱性を評価した。
【0095】
また、前記測定用試料を85℃の温度及び85% R.H.の相対湿度条件下で500時間放置した後、気泡又は剥離の発生有無を観察して耐湿熱性を評価した。
<評価基準>
OK:気泡及び剥離発生なし
NG:気泡及び/又は剥離発生
【0096】
【0097】
【0098】
前記表1及び2に示された通り、[化学式1]で表される単量体を導入したアクリル系共重合体を含む粘着樹脂を用いた実施例1~9の粘着剤組成物は、比較例1~4の粘着剤組成物に比べて高温及び高温/高湿環境での耐久性に優れるだけでなく、粘着層物性の経時変化が少なかった。