(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】連続基板上に材料を堆積する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/54 20060101AFI20220927BHJP
C23C 14/56 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C23C16/54
C23C14/56 A
(21)【出願番号】P 2018563020
(86)(22)【出願日】2017-06-02
(86)【国際出願番号】 US2017035728
(87)【国際公開番号】W WO2017210583
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-26
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イシカワ, デーヴィッド マサユキ
(72)【発明者】
【氏名】バロウズ, ブライアン エイチ.
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-505564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0170496(US,A1)
【文献】特開昭52-085549(JP,A)
【文献】特開2010-174370(JP,A)
【文献】特開昭56-049040(JP,A)
【文献】特開昭61-263120(JP,A)
【文献】特開2002-356751(JP,A)
【文献】特開平01-283362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/54
C23C 14/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続基板を処理するための装置であって、
前記装置は、
第1の空間を有する第1のチャンバと、
前記第1の空間に流体連結された第2の空間を有する第2のチャンバと、
複数の処理チャンバであって、それぞれが前記第1のチャンバと前記第2のチャンバの間に処理経路を規定する処理空間を有し、各処理チャンバの前記処理空間は互いに、並びに前記第1の空間及び前記第2の空間に流体連結されており、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び前記複数の処理チャンバは、前記第1のチャンバから前記複数の処理チャンバを通って前記第2のチャンバに延びる連続基板を処理するように構成されて
おり、各処理チャンバが、それぞれの隣接する処理チャンバの処理空間に流体連結された第3の空間を有する第3のチャンバによって分離されており、前記第3のチャンバが、駆動される複数のローラを
含む、複数の処理チャンバと、
前記第1のチャンバの前記第1の空間内を移動可能な第1のキャリッジと、
前記第1の空間内に移動可能に配置された第1のロボットアセンブリと、
前記複数の処理チャンバを通って移動可能に配置された移送アセンブリと、
前記第2の空間内に移動可能に配置された第2のロボットアセンブリと、
前記第2のチャンバの前記第2の空間内で移動可能な第2のキャリッジであって、前記第1のロボットアセンブリ、前記移送アセンブリ、及び前記第2のロボットアセンブリが、前記第1のキャリッジ上に回転可能に配置された第1のスプール上にある連続基板の最初の部分を、前記複数の処理チャンバを通って、前記第2のキャリッジ上に配置された回転可能なスプールまで移送するように動作する、第2のキャリッジと
を備える、装置。
【請求項2】
前記連続基板がセラミック繊維のトウであり、前記複数の処理チャンバのうちの少なくとも1つが化学気相堆積チャンバまたは化学気相含浸チャンバである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のチャンバに連結された第4のチャンバであって、前記第1のチャンバに流体連結されている第4の空間を有し、前記第1のチャンバに対して選択的に密封可能である第4のチャンバをさらに備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記複数の処理チャンバの各処理空間が、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバの間に直線的に位置している、請求項1または2に記載の装置。
【請求項5】
前記複数の処理チャンバが前記第1のチャンバの上に積み上げられており、前記第2のチャンバが前記複数の処理チャンバの上に積み上げられている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
各処理空間が互いに対して平行に位置している、請求項1または2に記載の装置。
【請求項7】
前記第1のチャンバから前記複数の処理チャンバを通る前記第2のチャンバまでの前記処理経路が蛇行しているか、または前記第1のチャンバから前記複数の処理チャンバを通る前記第2のチャンバまでの前記処理経路が非直線的である、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
各処理空間が互いに対して角度をもって位置している、請求項1または2に記載の装置。
【請求項9】
前記角度及び前記角度の転換方向が、前記複数の処理チャンバの連続する処理空間それぞれの間で同一である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
連続基板を処理するための装置であって、
第1の空間を有する第1のチャンバと、
前記第1の空間に流体連結された第2の空間を有する第2のチャンバと、
複数の処理チャンバであって、それぞれが前記第1のチャンバと前記第2のチャンバの間に処理経路を規定する処理空間を有し、各処理チャンバの前記処理空間は互いに、並びに前記第1の空間及び前記第2の空間に流体連結されており、前記第1のチャンバ、前記第2のチャンバ、及び前記複数の処理チャンバは、前記第1のチャンバから前記複数の処理チャンバを通って前記第2のチャンバに延びる連続基板を処理するように構成されている、複数の処理チャンバと、
前記第1のチャンバの前記第1の空間内を移動可能な第1のキャリッジと、
前記第1の空間内に移動可能に配置された第1のロボットアセンブリと、
前記複数の処理チャンバを通って移動可能に配置された移送アセンブリと、
前記第2の空間内に移動可能に配置された第2のロボットアセンブリと、
前記第2のチャンバの前記第2の空間内で移動可能な第2のキャリッジであって、前記第1のロボットアセンブリ、前記移送アセンブリ、及び前記第2のロボットアセンブリが、前記第1のキャリッジ上に回転可能に配置された第1のスプール上にある連続基板の最初の部分を、前記複数の処理チャンバを通って、前記第2のキャリッジ上に配置された回転可能なスプールまで移送するように動作する、第2のキャリッジと
を備える、装置。
【請求項11】
前記第1のロボットアセンブリが、
前記第1のチャンバの内側の側壁に連結された第1の支持ビームと、
前記第1の支持ビームに移動可能に連結された第1の端部を有する第1の作動アームであって、前記第1の作動アームは第1の位置と第2の位置との間で移動可能であり、前記第2の位置では、前記第1の作動アームの第1の側壁と第1の底部とによって規定される第1の溝を有する前記第1の作動アームの第2の端部は、前記処理チャンバの前記処理空間内にあり、前記第1の溝は、前記連続基板の第1の端部が取り付けられたロッドを保持するように構成されている、第1の作動アームとを備え、
前記移送アセンブリが、
前記処理チャンバの内側の側壁に連結された第2の支持ビームと、
第2の作動アームであって、前記第2の支持ビームに移動可能に連結された第1の端部及び、前記第2の作動アームの第2の側壁と第2の底部とによって規定される第2の溝を有する第2の端部を有し、前記第2の溝は前記第1の作動アームから前記ロッドを受容するように構成されており、前記第2の作動アームは、前記処理チャンバ内の前記第1のチャンバに近い第1の位置から、前記処理チャンバ内の前記第2のチャンバに近い第2の位置まで移動可能である、第2の作動アームとを備え、
前記第2のロボットアセンブリが、
前記第2のチャンバの内側の側壁に連結された第3の支持ビームと、
第3の作動アームであって、前記第3の支持ビームに移動可能に連結された第1の端部及び、前記第3の作動アームの第3の側壁と第3の底部とによって規定される第3の溝を有する第2の端部を有し、前記第3の作動アームは、前記第2の空間内の第1の位置から第2の位置まで移動可能であり、前記第3の作動アームの前記第2の端部は、前記処理空間内の前記第2の作動アームから前記ロッドを受容する前記第1の位置にある、第3の作動アームとを備える、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
連続基板を処理する方法であって、
第1のチャンバから複数の処理チャンバを通って第2のチャンバまで連続基板を給送することであって、
前記第1のチャンバが移動可能な第1のキャリッジ及び第1のロボットアセンブリを備え、前記第2のチャンバが移動可能な第2のキャリッジ及び第2のロボットアセンブリを備え、移送アセンブリが前記複数の処理チャンバを通って移動可能に配置され、
前記第1のロボットアセンブリ、前記移送アセンブリ、及び前記第2のロボットアセンブリが、前記第1のキャリッジ上に回転可能に配置された第1のスプール上にある前記連続基板の最初の部分を、前記複数の処理チャンバを通って、前記第2のキャリッジ上に配置された第2のスプールまで移送するように動作し、
前記連続基板が前記第1のチャンバ内の
前記第1のスプールから送り出されて前記第2のチャンバ内の
前記第2のスプールに巻き取られる、連続基板を給送することと、
前記複数の処理チャンバ内でセラミックまたは金属の材料を前記連続基板上に堆積することとを
含む、方法。
【請求項13】
前記連続基板が繊維の束であり、前記セラミックまたは金属の材料を前記連続基板上に堆積することが化学気相堆積または化学気相含浸処理を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、概して連続トウ処理システムに関し、具体的には、例えば指向性蒸着または化学気相含浸を用いた、繊維といったトウ材料上に被覆を堆積するための連続トウ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック基複合材(CMC)は、セラミック母材中に埋め込まれたセラミック繊維からなる。CMCは、高温下及び酸化環境での使用が禁じられた、従来型の産業用セラミックスの限界に対処するために開発された。アルミナ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びジルコニアを含む従来型の非強化の産業用セラミックスは、耐亀裂性が低く、したがって機械的荷重下及び熱機械的荷重下で、容易に破壊が生じる。これらの材料的な限界は、マルチストランドの長セラミック繊維を結合して、破断伸び、破壊靭性、耐熱衝撃性、及び耐動的疲労性の向上を可能にすることによって、対処することができる。
【0003】
典型的には炭化ケイ素(SiC)繊維である非酸化物多結晶セラミック繊維は、セラミック基複合材(CMC)中の連続長構造強化材として使用される。CMC製造用のSiC系セラミック繊維は、小さい直径と、高い熱伝導率と、低い表面粗さと、炭素フリーの表面を有する。さらに、SiC系セラミック繊維は、製造されたままの状態で、高温下、高機械応力下、及び酸化環境において、高い引張強度を有する。
【0004】
化学気相含浸(CVI)は、セラミック繊維上に薄型共形封入層の形態の環境障壁を作り出すために使用される。一般的に、被覆済み繊維は、未被覆の繊維に対して機械的、熱的、及び化学的な利点を有する。SiC系繊維の表面上に施された、窒化ホウ素(BN)及び炭素を含む亀裂偏向する界面被覆によって、高温下におけるSiC系繊維の耐酸化性が向上する。典型的には、窒化ホウ素(BN)及び炭素を含む亀裂偏向する界面被覆といった障壁材料は、セラミック繊維を各堆積システムに移送するための真空破壊によって分離された個別の堆積システムを使って、複数の連続する被覆処理(即ち各層につき1つの被覆処理)で、セラミック繊維上に堆積される。しかし、個別の堆積システムを使って複数の連続するステップで被覆を堆積することは、時間がかかり、費用がかかり、非効率的である。
【0005】
その結果、発明者らは、トウ材料といった連続基板上に被覆を堆積するための処理システムの改良を行った。
【発明の概要】
【0006】
連続基板上に材料を堆積する方法及び装置が、本明細書で提供される。ある実施形態では、連続基板を処理するための装置は、第1の空間を有する第1のチャンバと、第1の空間に流体連結された第2の空間を有する第2のチャンバと、複数の処理チャンバであって、それぞれが第1のチャンバと第2のチャンバの間に処理経路を規定する処理空間を有し、各処理チャンバの処理空間は互いに、並びに第1の空間及び第2の空間に流体連結されており、第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び複数の処理チャンバは、第1のチャンバから複数の処理チャンバを通って第2のチャンバに延びる連続基板を処理するように構成されている、複数の処理チャンバとを含む。
【0007】
ある実施形態では、基板を処理するための装置は、第1の空間を有する第1のチャンバと、第1の空間に流体連結された第2の空間を有する第2のチャンバと、複数の処理チャンバであって、それぞれが第1のチャンバと第2のチャンバの間に処理経路を規定する処理空間を有し、各処理チャンバの処理空間は互いに、並びに第1の空間及び第2の空間に流体連結されており、第1のチャンバ、第2のチャンバ、及び複数の処理チャンバは、第1のチャンバから複数の処理チャンバを通って第2のチャンバに延びる連続基板を処理するように構成されている、複数の処理チャンバと、第1のチャンバの第1の空間内でスプールを回転可能に支持するように構成された移動可能な第1のキャリッジと、第1のチャンバの第1の空間内に移動可能に配置された第1のロボットアセンブリと、複数の処理チャンバを通って移動可能に配置された移送アセンブリと、第2の空間内に移動可能に配置された第2のロボットアセンブリと、第2のチャンバの第2の空間内でスプールを回転可能に支持するように構成された移動可能な第2のキャリッジであって、第1のロボットアセンブリ、移送アセンブリ、及び第2のロボットアセンブリが、第1のキャリッジ上に回転可能に配置された第1のスプール上にある連続基板の最初の部分を、複数の処理チャンバを通って、第2のキャリッジ上に配置された回転可能なスプールまで移送するように動作する、第2のキャリッジとを含む。
【0008】
ある実施形態では、連続基板を処理する方法は、第1のチャンバから複数の処理チャンバを通って第2のチャンバまで連続基板を給送することであって、連続基板が第1のチャンバ内の第1のスプールから送り出されて(unwound)第2のチャンバ内の第2のスプールに巻き取られる、連続基板を給送することと、複数の処理チャンバ内でセラミックまたは金属の材料を連続基板上に堆積することとを含む。
【0009】
本開示の他の実施形態及びさらなる実施形態について、以下で説明する。
【0010】
上記で簡潔に要約し、下記でより詳細に述べる本開示の実施形態は、添付の図面に示す本開示の例示的な実施形態を参照することによって、理解することができる。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実施形態を許容し得ることから、添付の図面は、この開示の典型的な実施形態のみを例示しているのであり、従って、範囲を限定していると見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本開示のある実施形態による、連続基板上に材料を堆積する装置の例を示す。
【
図1B】本開示のある実施形態による、連続基板上に材料を堆積する装置の例を示す。
【
図1C】本開示のある実施形態による、連続基板上に材料を堆積する装置の例を示す。
【
図1D】本開示のある実施形態による、連続基板上に材料を堆積する装置の例を示す。
【
図1E】本開示のある実施形態による、連続基板上に材料を堆積する装置の例を示す。
【
図1F】本開示のある実施形態による、連続基板上に材料を堆積する装置の例を示す。
【
図1G】本開示のある実施形態による、連続基板上に材料を堆積する装置の例を示す。
【
図2】本発明のある実施形態による、連続基板上に材料を堆積する装置用の自動供給装置を示す。
【0012】
分かりやすくするため、可能な場合には、各図面に共通する同一の要素を指し示すのに同一の参照番号が使用されている。図面は縮尺どおりには描かれておらず、明確にするために単純化されていることがある。一実施形態の要素及び特徴は、さらなる記述がなくても、他の実施形態に有益に組み込まれ得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態は、有利には、連続基板上に材料を堆積するための改良された装置を提供する。本開示の実施形態は、有利には、連続基板上に複数の被覆を堆積するための、時間、費用、及び効率性を改善する。具体的には、本開示の実施形態は、有利には、非酸化物多結晶セラミック繊維(例えば炭化ケイ素(SiC)繊維)を含むトウといったトウを含む連続基板上に、複数の被覆を堆積するための、時間、費用、及び効率性を改善する。
【0014】
図1A-
図1Gは、本開示のある実施形態による、連続基板上に材料を堆積するための装置100の例を示す。本書で使用する場合、連続基板とは、堆積処理が行われる処理チャンバの境界を越えて延び且つ処理チャンバを通って移動し、それによって、処理チャンバ内に完全に内包される基板に実施される個別のバッチ処理とは異なり、基板の終端に到達するまで処理が無限に続く、基板を指す。ある実施形態では、連続基板は、一般的にトウと呼ばれている、連続したフィラメントまたは繊維、例えばセラミック繊維(例えばアルミナ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ジルコニア)の束である。
【0015】
図1A-
図1Gに示すとおり、装置100は、第1の空間104を有する第1のチャンバ102と、第1の空間104に流体連結された第2の空間108を有する第2のチャンバ106とを有する。装置100は、複数の処理チャンバ110を備える。各処理チャンバ110は、第1のチャンバ102と第2のチャンバ106の間に処理経路114を規定する、処理空間112を有する。各処理チャンバ110の処理空間112は、互いに、並びに第1の空間104及び第2の空間108と、流体連結している。言い換えれば、第1の処理空間104から、処理空間112のそれぞれを通って、第2の処理空間108まで、連続した、流体連結された経路が存在している。ある実施形態では、各処理空間110は、セラミック繊維上に薄型共形封入層の形態の障壁を作り出すのに適切な、化学気相堆積チャンバまたは化学気相含浸チャンバである。各処理チャンバは、連続基板が各処理チャンバ110を通過する際に、連続基板上に種々の材料を堆積するように構成されていることができる。例えば、処理チャンバ110は、連続基板上に1つ以上のセラミック層または金属層を堆積するように構成されていることができる。特定の一実施形態によると、第1の処理チャンバ110は、連続基板上に窒化ホウ素(BN)を堆積するように構成されていることができ、続く第2の処理チャンバ110は、連続基板上に窒化ケイ素ホウ素(SiBN)を堆積するように構成されていることができ、続く第3の処理チャンバ110は、連続基板上に窒化ケイ素(SiN)を堆積するように構成されていることができる。
【0016】
図1A-
図1Gは3つの処理チャンバ110を有する装置100を示しているが、連続基板即ちトウ上に堆積しようとする被覆の数に応じて、3つよりも多いかまたは少ない処理チャンバ110が使用されてもよい。
【0017】
ある実施形態では、
図1A、
図1B、及び
図1Cに示すとおり、各処理空間112は、第1の処理チャンバ102と第2の処理チャンバ106の間に直線的に位置しており、第1の処理チャンバ102と第2の処理チャンバ106の間に直線的な処理経路114が設けられている。ある実施形態では、
図1A及び
図1Cに示すとおり、複数の処理チャンバ110が第1の処理チャンバ102の上に垂直に積み上げられ、第2のチャンバ106が複数の処理チャンバ110の上に積み上げられており、それによって、処理経路114は第1の処理チャンバ102から第2の処理チャンバ106へと直線的に上昇している。ある実施形態では、
図1Bに示すように、複数の処理空間110が水平に、第1の処理チャンバ102と第2の処理チャンバ106との間に並んで位置しており、それによって処理経路114は、第1の処理チャンバ102から第2の処理チャンバ106まで、水平に進んでいる。
図1A、
図1B、及び
図1Cに示す実施形態は、有利には、処理経路114の方向転換をなくすことによって、トウに損傷を与えるリスクを低減し、損傷したトウ材料がシステム機構内で引っかかるのを低減する。
図1A、
図1B、及び
図1Cに示す実施形態は、有利には、処理チャンバ110の保守の簡便性もまた向上させる。
【0018】
ある実施形態では、
図1D及び
図1Eに示すように、各処理空間112は互いに平行に位置しており、連続基板が移動するコースが反転している。
図1D及び
図1Eでは、第1のチャンバ102から複数の処理チャンバ110を通って第2のチャンバ106に至る処理経路114は、蛇行している。本書で使用する場合、蛇行という用語は、曲がりくねった経路、たとえば「S」字形状または「S」字形状の反復で移動することを意味する。
図1D及び
図1Eに示すとおり、トウは、第1のチャンバ102から第1の処理チャンバ110を通って、第1の方向に処理経路114に沿って移動する。トウは、転換チャンバ120内で方向を反転し、処理経路114に沿って、第1の方向とは反対の第2の方向に、第2の処理チャンバ110を通って進み続ける。トウは、別の転換チャンバ120内で再び方向を反転し、処理経路114に沿って、第2の方向とは反対の第3の方向に、第3の処理チャンバ110を通って進み続ける。
図1D及び
図1Eは、第3の処理チャンバ110を通る蛇行する処理経路114を示しているが、3つよりも多いかまたは少ない処理チャンバ110が使用されていて、処理経路114が、上記の態様で3つよりも多いかまたは少ない処理チャンバを通って曲がりくねっていてもよい。加えて、各方向転換は、180°でなくてもよい。
図1D及び
図1Eに示す実施形態は、有利には、装置100の設置面積を削減する。
【0019】
ある実施形態では、
図1Fに示すとおり、各処理空間112は互いに対して角度をもって(例えば非線形的に)位置している。例えばある実施形態では、
図1Fに示すとおり、新たな処理チャンバ110への移送のたびごとに、連続基板の方向転換が組み込まれていてよい。ある実施形態では、方向転換は、続けて同じ方向に進むものであってよい。例えば、
図1Fに示すとおり、各処理チャンバ110間の方向転換は約45°であり、それによって最初の処理方向と最後の処理方向とが垂直(即ち、方向転換の総体が90°)になってよい。各処理チャンバ間の角度、及び/または処理方向の全体的な変化は、方向の変化の量と、システムの全体的な接地面積とを均衡させるようにして選択され得る。
図1Fの実施形態は、有利には、
図1D-
図1Eに示される実施形態(即ち方向の反転)と比べて、処理経路114の方向転換を低減するものであり、処理チャンバ110の保守の簡便性も、また向上させる。同様に、
図1Gは、少なくとも1つの処理チャンバ110が残りの処理チャンバ110からずれており、それによって処理経路114の方向転換を最小限に抑える一方で設置面積が削減されている、実施形態を示す。
【0020】
例えば
図1A、
図1B、
図1F、及び
図1Gに示すある実施形態では、各処理チャンバ110は、それぞれ隣接する処理チャンバ110の処理空間112に流体連結されている第4の空間118を有する第4
のチャンバ116によって、隣接する処理チャンバ110から分離されている。第4のチャンバ116は、
駆動される複数
のローラを含む。トウは、トウ内の個別の繊維を互いに対して動かすローラの間を通過し、それによって処理チャンバ110内で実施される化学気相含浸処理の効率性が向上する。
【0021】
ある実施形態では、
図1Aに示すとおり、第1のチャンバ102に第3のチャンバ122が連結されている。第3のチャンバ122は、第1の空間104に流体連結された第3の空間124を有する。第1のチャンバ102と第3のチャンバ122との間に、第1のバルブ126が配置されている。バルブ126は、閉鎖時には、第1の空間104を第3の空間124から密封する。バルブ126は、スリットバルブなどといった任意の適切なバルブであってよい。
【0022】
第3のチャンバ122は、第1のチャンバに対する副室(antechamber)の役割を果たす。トウといった連続基板は、リール上に設けられており、第3のチャンバ122を経由して第1のチャンバ102内に置かれる。トウはスプールから送り出され、処理システムを通って第2のチャンバ106まで移動し、そこで第2のスプールに巻き付く。
【0023】
ある実施形態では、
図1Aに示すとおり、第2のチャンバ106に第5のチャンバ128が連結されている。第5のチャンバ128は、第2の空間108に流体連結された第5の空間130を有する。第2のチャンバ106と第5のチャンバ128との間に、バルブ132が配置されている。バルブ132は、閉鎖時には、第2の空間108を第5の空間130から密封する。バルブ132は、スリットバルブなどといった任意の適切なバルブであってよい。第5のチャンバ128は、第2のチャンバ106に対する副室の役割を果たす。
【0024】
具体的に示されていないが、
図1B-
図1Fの実施形態もまた、処理システムとの間の連続基板のローディングとアンローディングを容易にするため、上記の態様による副室(即ち第3のチャンバ122及び第5のチャンバ128)、並びにバルブ126、132を有していてよい。
【0025】
ある実施形態では、装置100は、トウといった連続基板を、第1のチャンバ102(例えば未処理のトウが巻き付けられている第1のスプール)から処理チャンバ110を通って第2のチャンバ106(例えば処理済みのトウを巻き付けるための第2のスプール)まで、自動的に移送するシステム200を備える。システム200は、第1のチャンバ102の第1の空間104内に、第1のキャリッジ(搬送部材)202を備える。第1のキャリッジ202は、第3のチャンバ(例えば副室、またはローディングチャンバ)と第1のチャンバ102の間をスライドすることができる。第1のキャリッジ202は第1のスプール204を保持しており、スプールには、連続基板、即ちトウが巻き付けられている。第1のスプール204は、トウを送り出すために第1のスプール204を回転する、モータに接続されている。第1のスプール204が第1の空間104内に入ると、第3のチャンバ122及び第5のチャンバ128に至るバルブ126、132が密封される。第1のチャンバ102及び第2のチャンバ106内のスリットバルブ268は開放され、第1の空間104及び第2の空間108、並びに介在するあらゆる空間(即ち処理空間112及び第4の空間118)がポンプによって真空に引かれる。
【0026】
連続基板、例えばトウの固定されていない端部(loose ends)は、ロッド206に取り付けられている。ロッド206は、石英ロッドであってよい。連続基板を保持するロッド206の、各処理空間を通って第2のチャンバ106に至る移送を開始するため、第1のロボットアセンブリ208が使用される。第1のロボットアセンブリは、第1のチャンバ102の内側の側壁に連結された第1の支持ビーム210、並びに、第1の支持ビーム210に移動可能に連結された第1の端部214及び第1の作動アーム212の第1の側壁220と第1の底部222によって規定される第1の溝218を有する第2の端部216を有する、第1の作動アーム212を備える。第1の作動アーム212は、ロッド206を第1の位置224から第2の位置226に動かす。第2の位置226では、第1の作動アーム212の第2の端部216は、処理チャンバ110の処理空間112内にある。トウの給送作業中にロッド206のためのクリアランスを設けるため、介在する処理チャンバ110の処理空間112内に配置されたあらゆる処理キットが引っ込められていてよい。
【0027】
システム200は、処理チャンバ110の内側の側壁に連結された第2の支持ビーム230、並びに、第2の支持ビーム230に移動可能に連結された第1の端部234及び第2の作動アーム232の第2の側壁238と第2の底部240によって規定される第2の溝236を有する第2の端部235を有する第2の作動アーム232を備える、移送アセンブリ228をさらに備える。第1の作動アーム212は、ロッド206を第2の作動アーム232まで移送し、第1の位置224まで戻る。第1のチャンバ102と第2のチャンバ106の間でロッドが移動するための間隙を空けるため、(図示していない処理キット部品または他の内部部品といった)処理空間112内の処理チャンバの一部は、処理チャンバ110の側壁に向かって引っ込むことができる。ロッド206が第1のチャンバ102から第2のチャンバ106へと移送されると、処理空間112内にある処理チャンバの引っ込んでいた部分は、元の位置に戻る。第2の作動アーム232は、処理チャンバ110内の第1のチャンバ102に近い第1の位置242から、処理チャンバ110内の第2のチャンバ106に近い第2の位置244まで、ロッド206を動かす。ある実施形態では、第2の作動アーム232は、処理チャンバ110内の第1のチャンバ102に近い第1の位置242から、例えば第2のまたは第3の処理チャンバ110などといった)後続する処理チャンバ110内の第2のチャンバ106に近い第2の位置244まで、ロッド206を動かす。ある実施形態では、処理チャンバ110が垂直に積み上げられているときには、第2の作動アーム232は、第1の位置242から第2の位置244までロッド206を持ち上げる。
【0028】
システム200は、処理チャンバ110から第2のチャンバ106までロッド206(及びロッド206に取り付けられた連続基板)の移動を継続するための、第2のロボットアセンブリ245をさらに備える。ある実施形態では、第2のロボットアセンブリは、第2のチャンバ106の内側の側壁に連結された第3の支持ビーム246、並びに、第3の支持ビーム246に移動可能に連結された第1の端部250及び第3の作動アーム248の第3の側壁256と第3の底部258によって規定される第3の溝254を有する第2の端部252を有する、第3の作動アーム248を備える。第2のチャンバ106内の第1の位置260では、第3の作動アーム248の第2の端部252は、処理チャンバ110の処理空間112内にある。第2の作動アーム232は、ロッド206を第3の作動アーム248まで移送し、第1の位置242まで戻る。第3の作動アーム248は、第2の空間108内の、第1の位置260から第2の位置262まで移動する。
【0029】
システム200はさらに、第2のチャンバ106の第2の空間108内に、第2のキャリッジ264を備える。第2のキャリッジ264は、第5のチャンバ128(例えば副室、またはアンローディングチャンバ)と第2のチャンバ106の間をスライドすることができる。第2のキャリッジ264は、第2のスプール266を保持する。第2のスプール266はモータに連結されており、ロッド206を第3の作動アーム248と係合させるため、及びロッド206を第3の作動アーム248から取り外すため、回転する。例えば、第2のスプール266は、第2のスプール266が回転する際にロッド206を受容して捕捉するようにサイズ決めされた、凹部267を含んでいてよい。第2のスプール266は、連続基板(例えばトウ)を第2のスプール266に巻き取るために回転する。(トウといった)連続基板270を第2のスプール266に巻き取るのに先立って、第1のキャリッジ202及び第2のキャリッジ264は、連続基板270を処理チャンバ110の処理空間112内でセンタリングする。第1のスプール204及び第2のスプール266が同時に回転し、固定されていないトウの後端が第1のスプール204から解放されて第2のスプール266に巻き取られるまで、処理空間112内で堆積が進行する。続いて、処理ガスが停止され、第1のチャンバ102及び第2のチャンバ106内のスリットバルブ268が閉鎖され、第3のチャンバ122及び第5のチャンバ128がベントされて、被覆されたトウが付いた第2のスプール266がシステム200から取り外される。
【0030】
上記は本開示の実施形態を対象としているが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態及びさらなる実施形態が考案されてよい。