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特許71466462,3-不飽和アルコールを製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】2,3-不飽和アルコールを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/141 20060101AFI20220927BHJP
   C07C 33/02 20060101ALI20220927BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20220927BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C07C29/141
C07C33/02
C11B9/00 C
C07B61/00 300
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018563920
(86)(22)【出願日】2017-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2017063654
(87)【国際公開番号】W WO2017211784
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】16173352.2
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ズエンド,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】グラーラ,ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】クラウゼ,ヴォルフガング
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-206248(JP,A)
【文献】国際公開第2007/029667(WO,A1)
【文献】特表2010-531323(JP,A)
【文献】特開昭56-034641(JP,A)
【文献】特開昭58-027642(JP,A)
【文献】特開2003-245555(JP,A)
【文献】GORGAS, N. et al.,Highly Efficient and Selective Hydrogenation of Aldehydes: A Well-Defined Fe(II) Catalyst Exhibits Noble-Metal Activity,ACS Catalysis,2016年,6(4),pp. 2664-2672
【文献】第5版 実験化学講座 14 有機化合物の合成 II -アルコール・アミン-,丸善株式会社,2005年,pp. 23-27
【文献】ZSIGMOND, A. et al.,Selective hydrogenations on heterogenized ruthenium complexes,Journal of Catalysis,2004年,227(2),pp. 428-435
【文献】BATA, P. et al.,Use of heterogenized metal complexes in hydrogenation reactions: comparison of hydrogenation and CTH reactions,Research on Chemical Intermediates,2015年,41(12),pp. 9281-9294
【文献】TAKABE, K. et al.,Highly stereoselective synthesis of nerol and geraniol,Chemistry Letters,1977年,pp. 1025-1026
【文献】合成香料 化学と商品知識,増補改訂版,2005年,pp. 63-71
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C11B9/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の不飽和アルコール
【化1】
[式中、
R1及びR2の一方が、1つの二重結合を含むC4~C10-アルケニルであり、他方がメチルであり、
R3が水素である]
の製造方法であって、少なくとも75重量%の式(II)の不飽和アルデヒド
【化2】
[式中、R1、R2及びR3は上記に定義された意味を有する]
を含む抽出物組成物を、触媒及び第三級アミンの存在下における水素化にかけるステップを含み、
第三級アミンがトリ(C1~C20-アルキル)アミンから選択され、
第三級アミンが、液体反応混合物の全量に対して0.001~0.7重量%の範囲の量で使用され
触媒が、不活性な支持体材料に担持させたルテニウムを含み、さらに鉄を含む不均一系の担持触媒である、方法。
【請求項2】
第三級アミンが、液体反応混合物の全量に対して0.005~0.5重量%の範囲の量で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第三級アミンが、液体反応混合物の全量に対して0.01~0.2重量%の範囲の量で使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第三級アミンがトリメチルアミンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の不飽和アルコールがゲラニオールであり、式(II)の不飽和アルデヒドがゲラニアールである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(I)の不飽和アルコールがネロールであり、式(II)の不飽和アルデヒドがネラールである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
抽出物組成物が、少なくとも90%のネラールを含むシトラールである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
得られた未精製生成物の水素化後のネロール含有量が、85重量%より高く、水素化後のゲラニオール含有量が、9重量%以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
水素化後に得られた未精製生成物を精留ステップにかけ、90%を超える純度のネロールを得る、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
水素化後に得られた未精製生成物を精留ステップにかけ、副生成物であるシトロネロール及びネロール異性体の全体レベルが10重量%未満であるネロール化合物を得る、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
いずれの場合にも全重量に対して94~98重量%のネロール、及び2~6重量%の、シトロネロール及びネロール異性体を合わせた副生成物を含む、組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物の芳香化学物質としての使用。
【請求項13】
フレグランス又は芳香物質組成物であって、
a)請求項11に記載の組成物、
b)場合により、成分a)と異なる少なくとも1つの別の芳香化学物質、及び
c)場合により、少なくとも1つの希釈剤
を含むが、ただし、該フレグランス又は芳香物質組成物が、成分b)又はc)の少なくとも1つを含むことを条件とする、フレグランス又は芳香物質組成物。
【請求項14】
生成物のにおい若しくはフレーバーを付与し、かつ/又はフレッシュ、シトラス、パウダリー及びスムース調のローズフローラルノートで強化する方法であって、生成物を官能上有効な量の請求項11に記載の組成物と接触させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α,β-不飽和カルボニル化合物、特にネラール又はゲラニアールを少量の第三級アミンの存在下で選択的接触水素化して、対応する不飽和アルコール、特にネロール又はゲラニオールを得る方法に関する。α,β-不飽和カルボニル化合物は、反応液に、抽出物組成物の主要成分、例えば特にシトラールとして導入される。本発明はさらに、本発明の方法によって得られうる不飽和アルコール、本発明の方法によって得られうるネロール化合物を含むフレグランス又は芳香物質組成物、生成物のにおい又はフレーバーを付与及び/又は強化する方法、さらには本発明の方法によって得られうるネロール化合物を含む賦香又はフレーバー付けされた生成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
ネロール及びゲラニオールは、特ににおい物質として使用される価値ある芳香化学物質である。それらはシトロネロール及び2-フェニルエタノールと共に、いわゆるローズアルコールに属する。ローズアルコールは、ローズ油の主要な構成要素であり、ローズアコードを作成するのに重要な芳香化学物質である。ネロールはフレッシュ及びグリーンノートを与えるが、ゲラニオールの香りのほうは丸みがあり、より果物の香りがあるので、ネロールが特に重要であることが多い。
【0003】
以下により詳細に述べるように、α,β-不飽和カルボニル化合物、例えば特にシトラールを接触水素化し、それぞれの不飽和アルコール、例えば特にネロールとゲラニオールの混合物を得る公知の方法には、選択性が不十分であるという難点がある。したがって、それらは、例えば過剰水素化又はオレフィン異性化に由来する望ましくない副生物を高レベルで生じる。先行技術の方法は、ネロールの沸点と実質的に等しい沸点を有するいくつかの副生物を相当量生じることにより、それらを精留によって所期の生成物ネロールから完全に分離し、したがってネロールを純粋な形で得ることが不可能になるので、特に不利である。これらの副生物は、一方では主にシトロネロールであり、他方では式III~Vのネロール異性体であり、これらはそれぞれ、水素化反応時に副反応として起こる過剰水素化及び異性化方法に由来するものである。
【0004】
【化1】
【0005】
さらに、先行技術の水素化方法には、ネロールとゲラニオールの混合物の形成を引き起こすという難点もあることが多い。混合物の形成は、ある状況、例えば混合物の成分を精留などの方法により容易に分離することができる場合、又は混合物自体が望ましい特性を有する場合に有利なことがあるとしても、ネロールとゲラニオールの混合物の形成はネロールの生成に不利である。上述のように、ネロールは、精留時に様々な重要な副生物と共蒸留される。ゲラニオールは、蒸留によってネロールから容易に分離することができるが、反応混合物中に存在している共蒸留不純物のシトロネロール及びネロール異性体III~Vは精留時にネロール画分において濃縮されるので、ゲラニオールがネロール混合物中に存在すると、精留により得られるネロールの純度を低下させる影響がある。
【0006】
先行技術の水素化方法は、上記の副生物のレベルを低減するために少なくともほぼ完全な転化をさせない又は十分な転化に達する前に慣例的に終結させるという点で、制限されることも多い。しかし、不完全な転化は収率の低下を引き起こすだけでなく、得られた生成物には相当な量の未反応の抽出物が混入しているという悪影響ももたらす。ネラール及びゲラニアールは、極めて精巧な精留技法によってしか、ネロールから分離することができないため、シトラールの水素化の転化率は、好ましくはできる限り高くあるべきである(ネラールは、当技術分野においてcis-シトラール及びシトラールBとしても公知であり、ゲラニアールは、trans-シトラール及びシトラールAとしても公知である)。
【0007】
結論として、特異性が改善され、さらには転化率が向上された、α,β-不飽和カルボニル化合物、例えば特にシトラールの対応する不飽和アルコール、例えば特にネロール及び/又はゲラニオールへの転化をもたらす水素化方法が求められ続けている。
【0008】
ネラールを含む抽出物組成物から始める水素化の選択性の1つの尺度は、ネロール、ゲラニオール、シトロネロール、ネロール異性体III~V、cis-シトラール、trans-シトラール、及びシトロネラールから本質的になる抽出物組成物に由来するすべての化合物を合わせた量に対するネロールの量の百分率と定義される「水素化後のネロール含有量」である。それに照らして、「水素化後のゲラニオール含有量」は定義される。
【0009】
ネラールを含む抽出物組成物から始める水素化の選択性の第2の尺度は、水素化が完了した後に得られた未精製生成物内のネロール、シトロネロール及びネロール異性体III~Vを合わせた量に対するネロールの量の百分率と定義される「精留によって達成し得るネロール純度」である。したがって、最終の反応混合物に、精留によって除去することができない副生物、すなわちシトロネロール及びネロール異性体III~Vが少量しか含まれていない場合、精留によって達成し得るネロール純度は100%に近い。逆に言えば、最終の反応混合物に、中程度の量のシトロネロール及びネロール異性体III~Vが含まれている場合、精留によって達成し得るネロール純度は100%より実質的に低い。さらに、最終の反応混合物に、それら自体精留によってネロールから分離し得る他の生成物、例えばゲラニオール、cis-シトラール、又はtrans-シトラールが大量に含まれ、副生成物、例えばシトロネロール又はネロール異性体III~Vが少量含まれている場合、精留によって達成し得るネロール純度は、分離不可能な副生物が精留時にネロール画分に濃縮されるので、やはり100%より実質的に低い。
【0010】
ネロールの生成に効率的な方法では、「水素化後のネロール含有量」及び「精留によって達成し得るネロール純度」は両方とも、できる限り高く、理想を言えば100%に近くあるべきである。
【0011】
水素化触媒の選択性を高める試みとして、シトラールをネロール及び/又はゲラニオールに転化する先行技術の以下の方法では、活性を低減し、選択性を向上させる塩基が使用される。しかし、これらの方法には、大規模製造にとってやはり難点がある。
【0012】
Sonavaneらは、CoO-ZrO2触媒、水素供与体である2-プロパノール及び等モル量の水酸化カリウムの存在下で、ネラールを水素化して、カラムクロマトグラフィーによる精製を行った後にそれほど高くない収率71%でネロールを得ることを開示している(Synlett、2004年、1巻、146~148頁)。中程度の収率とカラムクロマトグラフィー精製ステップの使用の両方によって、この方法が生産規模の方法に適したものではなくなる。
【0013】
US2011/0201819及びUS2011/0201820には、α,β-不飽和カルボニル化合物を均質銅触媒、モノ-又はジホスフィン及び塩基の存在下で水素化して、対応するアルコールを得る方法が開示されている。
【0014】
WO2015/004088には、シトラールを、塩基及び生産規模の転化にほとんど適していない触媒である複雑なアミノ-アミド-遷移金属錯体の存在下でネロール/ゲラニオール混合物に移動水素化する方法が開示されている。
【0015】
EP1930075には、不飽和アルコールを対応する不飽和アルデヒド、例えばシトラールから製造するのに有用である酸素含有ガリウム化合物を含む水素化触媒が開示されている。しかし、シトラールを水素化して、ネロール/ゲラニオール混合物を得る方法についてEP1930075に報告されている転化率は、むしろ凡庸である。
【0016】
EP1317959、EP0024648、EP0071787及びEP1318128にはすべて、貴金属触媒又はルテニウム/鉄触媒を使用して、不飽和カルボニル化合物を対応する不飽和アルコールに転化する接触水素化が開示されている。どの場合にも、水素化は、不飽和カルボニル化合物の最初の量に対して少なくとも1重量%の第三級アミンの存在下で実施される。しかしながら、4つの文献はいずれも、カルボニル基と共役している二重結合に影響を及ぼす水素化時に起こるE/Z-異性化副反応に取り組んでいない。したがって、これらの文献には、最初のネラール/ゲラニアール比と得られる混合物のネロール/ゲラニオール比の関係を遵守することなく、シトラールをネロール/ゲラニオール混合物に水素化する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】US2011/0201819
【文献】US2011/0201820
【文献】WO2015/004088
【文献】EP1930075
【文献】EP1317959
【文献】EP0024648
【文献】EP0071787
【文献】EP1318128
【非特許文献】
【0018】
【文献】Sonavaneら、Synlett、2004年、1巻、146~148頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、2,3-不飽和アルコール、特にネロール又はゲラニオールのそれぞれの不飽和アルデヒド、特にcis-シトラール又はtrans-シトラールから始める製造を可能にする経済的に魅力的な接触水素化方法を提供することである。方法は、実施が容易であり、工業規模の生産に適しているべきである。その方法は、特に高率で所望の不飽和アルコールに選択的転化することができるべきであり、比較的安価であり、取扱いが容易であり、再生可能である触媒のみを要するべきである。
【0020】
目的は、以下に詳細に記載されている方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、式(I)の不飽和アルコール
【化2】
[式中、
R1及びR2はそれぞれ互いに独立して、水素;無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R4で置換されているC1~C20-アルキル;1、2、3、4又は5つの二重結合を含み、無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R5で置換されているC2~C20-アルケニル;無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されているアリール;並びに互いに独立して、N、NRa、O及びSから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を環員として含む3、4、5、6又は7員の飽和、部分不飽和又は芳香族のヘテロ環式環であって、無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されているヘテロ環式環から選択されるが、ただし、R1及びR2は互いに異なることを条件とし、
R3は、水素及びC1~C4-アルキルから選択され、
R4は、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C3~C7-シクロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-アルコキシカルボニル、C1~C4-アルキルカルボニルオキシ、-NR7aR7b、及び無置換であってもよい又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されていてもよいアリールから選択され、
R5は、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-アルコキシカルボニル、C1~C4-アルキルカルボニルオキシ、-NR7aR7b、及び無置換であってもよい又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されていてもよいアリールから選択され、
R6は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル、C1~C4-アルコキシ及び-NR7aR7bから選択され、
R7a及びR7bはそれぞれ互いに独立して、水素、C1~C6-アルキル、C3~C7-シクロアルキル、C1~C6-アルコキシ、C2~C6-アルケニル、C(=O)R8、C(=O)OR9、フェニル及びベンジルから選択され、あるいは
R7a及びR7bは一緒になって、結合している窒素原子と組み合わさって、3、4、5、6、7又は8員の飽和、部分不飽和又は芳香族の環を形成するC2~C7-アルキレン鎖を表し、ここで、アルキレン鎖が、互いに独立して、O、S及びNRbから選択される1又は2個のヘテロ原子を含んでいてもよく、アルキレン鎖が、ハロゲン、C1~C6-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C6-アルコキシから選択される同一の又は異なる1、2、3又は4つの基で場合により置換されていてもよく、
R8は、水素、C1~C6-アルキル、C2~C6-アルケニル、C3~C7-シクロアルキルから選択され、ここで、最後に記述された3つの基が、無置換であってもよく、又はヒドロキシル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1若しくは2つの基で置換されていてもよく、
R9は、C1~C6-アルキル、C2~C6-アルケニル、C3~C7-シクロアルキルから選択され、ここで、最後に記述された3つの基が、無置換であってもよく、又はヒドロキシル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1若しくは2つの基で置換されていてもよく、
Raは、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択され、
Rbは、水素、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択される]
の製造方法であって、少なくとも75重量%の式(II)の不飽和アルデヒド
【化3】
[式中、R1、R2及びR3は上記に定義された意味を有する]
を含む抽出物組成物を、触媒及び第三級アミンの存在下における水素化にかけるステップを含み、
第三級アミンが、液体反応混合物の全量に対して0.001~0.7重量%の範囲の量で使用される方法を提供する。
【0022】
本発明の第1の実施形態は、式(I)の不飽和アルコール
【化4】
[式中、
R1及びR2はそれぞれ互いに独立して、水素;無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R4で置換されているC1~C20-アルキル;1、2、3、4又は5つの二重結合を含み、無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R5で置換されているC2~C20-アルケニル;無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されているアリール;並びに互いに独立して、N、NRa、O及びSから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を環員として含む3、4、5、6又は7員の飽和、部分不飽和又は芳香族のヘテロ環式環であって、無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されているヘテロ環式環から選択されるが、ただし、R1及びR2は互いに異なることを条件とし、
R3は、水素及びC1~C4-アルキルから選択され、
R4は、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C3~C7-シクロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-アルコキシカルボニル、C1~C4-アルキルカルボニルオキシ、-NR7aR7b、及び無置換であってもよい又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されていてもよいアリールから選択され、
R5は、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-アルコキシカルボニル、C1~C4-アルキルカルボニルオキシ、-NR7aR7b、及び無置換であってもよい又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されていてもよいアリールから選択され、
R6は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル、C1~C4-アルコキシ及び-NR7aR7bから選択され、
R7a及びR7bはそれぞれ互いに独立して、水素、C1~C6-アルキル、C3~C7-シクロアルキル、C1~C6-アルコキシ、C2~C6-アルケニル、C(=O)R8、C(=O)OR9、フェニル及びベンジルから選択され、あるいは
R7a及びR7bは一緒になって、結合している窒素原子と組み合わさって、3、4、5、6、7又は8員の飽和、部分不飽和又は芳香族の環を形成するC2~C7-アルキレン鎖を表し、ここで、アルキレン鎖が、互いに独立して、O、S及びNRbから選択される1又は2個のヘテロ原子を含んでいてもよく、アルキレン鎖が、ハロゲン、C1~C6-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C6-アルコキシから選択される同一の又は異なる1、2、3又は4つの基で場合により置換されていてもよく、
R8は、水素、C1~C6-アルキル、C2~C6-アルケニル、C3~C7-シクロアルキルから選択され、ここで、最後に記述された3つの基が、無置換であってもよく、又はヒドロキシル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1若しくは2つの基で置換されていてもよく、
R9は、C1~C6-アルキル、C2~C6-アルケニル、C3~C7-シクロアルキルから選択され、ここで、最後に記述された3つの基が、無置換であってもよく、又はヒドロキシル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1若しくは2つの基で置換されていてもよく、
Raは、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択され、
Rbは、水素、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択される]
の製造方法であって、少なくとも75重量%の式(II)の不飽和アルデヒド
【化5】
[式中、R1、R2及びR3は上記に定義された意味を有する]
を含む抽出物組成物を、触媒及び第三級アミンの存在下における水素化にかけるステップを含み、
第三級アミンが、液体反応混合物の全量に対して0.001~1重量%未満の範囲の量、好ましくは0.002~0.75重量%の範囲の量で使用される方法に関する。
【0023】
本発明の第1の実施形態の特別な変形は、式(I)の不飽和アルコール
【化6】
[式中、
R1及びR2はそれぞれ互いに独立して、水素;無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R4で置換されているC1~C20-アルキル;1、2、3、4又は5つの二重結合を含み、無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R5で置換されているC2~C20-アルケニル;無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されているアリール;並びに互いに独立して、N、NRa、O及びSから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を環員として含む3、4、5、6又は7員の飽和、部分不飽和又は芳香族のヘテロ環式環であって、無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されているヘテロ環式環から選択されるが、ただし、R1及びR2は互いに異なることを条件とし、
R3は、水素及びC1~C4-アルキルから選択され、
R4は、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C3~C7-シクロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-アルコキシカルボニル、C1~C4-アルキルカルボニルオキシ、-NR7aR7b、及び無置換であってもよい又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されていてもよいアリールから選択され、
R5は、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル、C1~C4-アルコキシ、C1~C4-アルコキシカルボニル、C1~C4-アルキルカルボニルオキシ、-NR7aR7b、及び無置換であってもよい又は同一の若しくは異なる1~5つの基R6で置換されていてもよいアリールから選択され、
R6は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル、C1~C4-アルコキシ及び-NR7aR7bから選択され、
R7a及びR7bはそれぞれ互いに独立して、水素、C1~C6-アルキル、C3~C7-シクロアルキル、C1~C6-アルコキシ、C2~C6-アルケニル、C(=O)R8、C(=O)OR9、フェニル及びベンジルから選択され、あるいは
R7a及びR7bは一緒になって、結合している窒素原子と組み合わさって、3、4、5、6、7又は8員の飽和、部分不飽和又は芳香族の環を形成するC2~C7-アルキレン鎖を表し、ここで、アルキレン鎖が、互いに独立して、O、S及びNRbから選択される1又は2個のヘテロ原子を含んでいてもよく、アルキレン鎖が、ハロゲン、C1~C6-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C6-アルコキシから選択される同一の又は異なる1、2、3又は4つの基で場合により置換されていてもよく、
R8は、水素、C1~C6-アルキル、C2~C6-アルケニル、C3~C7-シクロアルキルから選択され、ここで、最後に記述された3つの基が、無置換であってもよく、又はヒドロキシル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1若しくは2つの基で置換されていてもよく、
R9は、C1~C6-アルキル、C2~C6-アルケニル、C3~C7-シクロアルキルから選択され、ここで、最後に記述された3つの基が、無置換であってもよく、又はヒドロキシル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1若しくは2つの基で置換されていてもよく、
Raは、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択され、
Rbは、水素、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択される]
の製造方法であって、少なくとも75重量%の式(II)の不飽和アルデヒド
【化7】
[式中、R1、R2及びR3は上記に定義された意味を有する]
を含む抽出物組成物を、触媒及び第三級アミンの存在下における水素化にかけるステップを含み、
第三級アミンが、液体反応混合物の全量に対して0.001~0.7重量%の範囲の量で使用される方法に関する。
【0024】
本発明の第2の実施形態は、触媒が不均一系触媒である、実施形態1による方法に関する。
【0025】
本発明の第3の実施形態は、不均一系触媒が、不活性な支持体材料に担持させたルテニウムを含む担持触媒である、実施形態2による方法に関する。
【0026】
本発明の第4の実施形態は、担持触媒がさらに鉄を含む、実施形態3による方法に関する。
【0027】
本発明の第5の実施形態は、担持触媒のルテニウム含有量が、触媒の乾燥重量に対して0.1~10重量%の範囲である、実施形態3又は4による方法に関する。
【0028】
本発明の第6の実施形態は、担持触媒の鉄含有量が、触媒の乾燥重量に対して0.1~5重量%の範囲である、実施形態4又は5による方法に関する。
【0029】
本発明の第7の実施形態は、担持触媒が、以下のステップ
a)支持体材料を水に懸濁するステップ、
b)ルテニウム及び場合により鉄をそれらの金属塩の溶液の形で同時に添加するステップ、
c)塩基を添加することによって、ルテニウム及び当てはまる場合には鉄を本質的にそれらの水酸化物の形で支持体上に沈殿させるステップ、
d)負荷された支持体を懸濁液の水性相から分離するステップ、
e)負荷された支持体を乾燥させるステップ、
f)負荷された支持体を、600℃未満の温度で水素化条件にかけるステップ、及び
g)得られた触媒を低引火性の液体下でコンディショニングする、又は
得られた触媒を希薄酸素流で不動態化する、又は
得られた触媒を希薄酸素流で不動態化し、触媒を低引火性の液体下でコンディショニングするステップ
を含む方法によって製造される、実施形態3から6のいずれか1つによる方法に関する。
【0030】
本発明の第8の実施形態は、ステップf)の還元が、100~600℃未満、好ましくは120~400℃未満、特に150~250℃の範囲の温度で実施される、実施形態7による方法に関する。
【0031】
本発明の第9の実施形態は、支持体材料が、炭素、アルミナ及びシリカから選択され、好ましくは炭素である、実施形態3から8のいずれか1つによる方法に関する。
【0032】
本発明の第10の実施形態は、第三級アミンが、液体反応混合物の全量に対して0.005~0.5重量%、好ましくは0.01~0.2重量%の範囲の量で使用される、先行する実施形態のいずれか1つによる方法に関する。
【0033】
本発明の第11の実施形態は、第三級アミンが、トリ(C1~C20-アルキル)アミンから選択され、好ましくはトリメチルアミンである、先行する実施形態のいずれか1つによる方法に関する。
【0034】
本発明の第12の実施形態は、好ましくはC1~C8-アルカノールから選択され、特にメタノールであるプロトン性有機溶媒の存在下で、水素化が実施される、先行する実施形態のいずれか1つによる方法に関する。
【0035】
本発明の第13の実施形態は、水素化が、40~150℃、好ましくは50~90℃の範囲の温度で実施される、先行する実施形態のいずれか1つによる方法に関する。
【0036】
本発明の第14の実施形態は、水素化が、10~200バール、好ましくは20~100バールの範囲の圧力で実施される、先行する実施形態のいずれか1つによる方法に関する。
【0037】
本発明の第15の実施形態は、水素化が不連続に実施される、先行する実施形態のいずれか1つによる方法に関する。
【0038】
本発明の第16の実施形態は、水素化において使用される不均一系触媒が、先に少なくとも1回の水素化反応において使用された再生触媒である、実施形態15による方法に関する。
【0039】
本発明の第17の実施形態は、触媒が入っている水素化容器を水素ガスでパージし、容器内が所望の反応圧力及び温度に到達して初めて、抽出物組成物を第三級アミンと接触させる、実施形態15又は16による方法に関する。
【0040】
本発明の第18の実施形態は、水素化反応の過程を通じて、抽出物組成物が反応混合物に連続的又は断続的に添加される、実施形態15から17のいずれか1つによる方法に関する。
【0041】
本発明の第19の実施形態は、
R1及びR2の一方が、C2~C10-アルキル又は1つの二重結合を含むC2~C10-アルケニルであり、他方が水素又はメチルであり、
R3が水素である、
先行する実施形態のいずれか1つによる方法に関する。
【0042】
本発明の第20の実施形態は、
R1及びR2の一方が、1つの二重結合を含むC4~C10-アルケニルであり、他方がメチルであり、
R3が水素である、
先行する実施形態のいずれか1つによる方法に関する。
【0043】
本発明の第21の実施形態は、式(I)の不飽和アルコールがゲラニオールであり、式(II)の不飽和アルデヒドがゲラニアールである、先行する実施形態のいずれか1つによる方法に関する。
【0044】
本発明の第22の実施形態は、式(I)の不飽和アルコールがネロールであり、式(II)の不飽和アルデヒドがネラールである、実施形態1から20のいずれか1つによる方法に関する。
【0045】
本発明の第23の実施形態は、抽出物組成物がシトラールである、実施形態21又は22による方法に関する。
【0046】
本発明の第24の実施形態は、シトラールが、少なくとも90%、好ましくは少なくとも99重量%のネラールを含む、実施形態23による方法に関する。
【0047】
本発明の第25の実施形態は、得られた未精製生成物の水素化後のネロール含有量が、85重量%より高い、好ましくは90重量%より高く、水素化後のゲラニオール含有量が、9重量%以下、好ましくは6重量%以下である、実施形態24による方法に関する。
【0048】
本発明の第26の実施形態は、水素化後に得られた未精製生成物を精留ステップにかけ、90%を超える、好ましくは94%を超える、特に96%を超える純度のネロールを得る、実施形態22から25のいずれか1つによる方法に関する。
【0049】
本発明の第27の実施形態は、水素化後に得られた未精製生成物を精留ステップにかけ、副生成物であるシトロネロール及びネロール異性体の全体レベルが10重量%未満、好ましくは6重量%未満、特に2~4重量%であるネロール化合物を得る、実施形態22から26のいずれか1つによる方法に関する。
【0050】
本発明の第28の実施形態は、いずれの場合にもネロール化合物の全重量に対して94~98重量%、好ましくは96~98重量%のネロール、及び2~6重量%、好ましくは2~4重量%の、シトロネロール及びネロール異性体を合わせた副生成物を含む、実施形態27による方法によって得られうるネロール化合物に関する。
【0051】
本発明の第29の実施形態は、実施形態28によるネロール化合物の芳香化学物質、特ににおい物質としての使用に関する。
【0052】
本発明の第30の実施形態は、香料、洗浄剤及び清浄剤、化粧料組成物、ボディケア組成物、衛生物品、口腔及び歯科衛生用の製品、香りのディスペンサー並びにフレグランスから選択される組成物における、実施形態29による使用に関する。
【0053】
本発明の第31の実施形態は、フレッシュ、シトラス、パウダリー、及びスムース調である、放散するインパクトのあるローズフローラルノートを生成する、実施形態29又は30による使用に関する。
【0054】
本発明の第32の実施形態は、
a)実施形態28によるネロール化合物、
b)場合により、成分a)と異なる少なくとも1つの別の芳香化学物質、及び
c)場合により、少なくとも1つの希釈剤
を含むが、ただし、組成物が、成分b)又はc)の少なくとも1つを含むことを条件とする、フレグランス又は芳香物質組成物に関する。
【0055】
本発明の第33の実施形態は、組成物の全重量に対して0.1~70重量%、好ましくは1~50重量%の重量分率で成分a)を含む、実施形態32による組成物に関する。
【0056】
本発明の第34の実施形態は、生成物のにおい若しくはフレーバーを付与し、かつ/又はフレッシュ、シトラス、パウダリー及びスムース調のローズフローラルノートで強化する方法であって、生成物を、官能上有効な量の実施形態28によるネロール化合物と接触させる方法に関する。
【0057】
本発明の第35の実施形態は、賦香又は芳香付けされた生成物であって、官能上有効な量の実施形態28によるネロール化合物を含むか、又は官能上有効な量の実施形態32及び33のどちらかに定義されるフレグランス若しくは芳香物質組成物を含む生成物に関する。
【0058】
本発明の第36の実施形態は、香りのディスペンサー及びフレグランス香料、洗浄剤及び清浄剤、化粧料組成物、ボディケア組成物、衛生物品、口腔及び歯科衛生用の製品、医薬組成物並びに作物保護組成物から選択される、実施形態35による生成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明による方法は、一連の利点を伴う。第一に、式IIの不飽和アルデヒドを主として含む抽出物組成物から始めることで、式Iの不飽和アルコールを高収率で与え、副生物は低レベルである。特に、精留によって除去することができないそれらの副生物、すなわちシトロネロール及びネロール異性体の形成は、著しく低減される。また、本方法では、複雑な水素化触媒ではなく、容易に利用可能な水素化触媒のみ必要とされ、さらに、触媒が多くの再使用サイクルにわたってその活性を維持することが可能になる。結論として、本発明の方法により、式Iの所望のアルコールの容易で効率的及び経済的な生産が可能になる。
【0060】
可変部の上記の定義に記載されている有機部分は、ハロゲンという用語のように、個々の基のメンバーについて個々に列挙しているものの総称である。接頭辞Cn~Cmは、いずれの場合にも、基における可能な炭素原子数を示す。
【0061】
本明細書において用語「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを指す。
【0062】
本明細書、さらにC1~C4-アルキルカルボニルオキシにおいて用語「C1~Cn-アルキル」とは、1~n個、例えば1~10個の炭素原子、好ましくは1~6個の炭素原子、特に1~4個の炭素原子を有する分枝状又は非分枝状の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、ヘキシル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1-エチルブチル、2-エチルブチル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,2,2-トリメチルプロピル、1-エチル-1-メチルプロピル、1-エチル-2-メチルプロピル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル及びデシル並びにそれらの異性体を指す。C1~C4-アルキルは、例えばメチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル、ブチル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル又は1,1-ジメチルエチルを意味する。
【0063】
用語「C1~Cn-アルコキシ」は、酸素原子を介して結合している、上記に定義したC1~Cn-アルキル基である。C1~C2-アルコキシは、メトキシ又はエトキシである。C1~C4-アルコキシは、例えばメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、ブトキシ、1-メチルプロポキシ(sec-ブトキシ)、2-メチルプロポキシ(イソブトキシ)又は1,1-ジメチルエトキシ(tert-ブトキシ)である。C1~C6-アルコキシは、C1~C4-アルコキシについて記載された意味を包含し、さらに、例えばペントキシ、1-メチルブトキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、1,1-ジメチルプロポキシ、1,2-ジメチルプロポキシ、2,2-ジメチルプロポキシ、1-エチルプロポキシ、ヘキソキシ、1-メチルペントキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、4-メチルペントキシ、1,1-ジメチルブトキシ、1,2-ジメチルブトキシ、1,3-ジメチルブトキシ、2,2-ジメチルブトキシ、2,3-ジメチルブトキシ、3,3-ジメチルブトキシ、1-エチルブトキシ、2-エチルブトキシ、1,1,2-トリメチルプロポキシ、1,2,2-トリメチルプロポキシ、1-エチル-1-メチルプロポキシ又は1-エチル-2-メチルプロポキシを包含する。
【0064】
本明細書において用語「C2~Cn-アルケニル」は、2~m個、例えば2~20個又は2~6個の炭素原子及びいずれかの位置にC=C-二重結合を有する直鎖状又は分枝状のエチレン性不飽和炭化水素基、例えばエテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチル-エテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-メチル-1-ブテニル、2-メチル-1-ブテニル、3-メチル-1-ブテニル、1-メチル-2-ブテニル、2-メチル-2-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-メチル-3-ブテニル、2-メチル-3-ブテニル、3-メチル-3-ブテニル、1,1-ジメチル-2-プロペニル、1,2-ジメチル-1-プロペニル、1,2-ジメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-プロペニル、1-エチル-2-プロペニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、5-ヘキセニル、1-メチル-1-ペンテニル、2-メチル-1-ペンテニル、3-メチル-1-ペンテニル、4-メチル-1-ペンテニル、1-メチル-2-ペンテニル、2-メチル-2-ペンテニル、3-メチル-2-ペンテニル、4-メチル-2-ペンテニル、1-メチル-3-ペンテニル、2-メチル-3-ペンテニル、3-メチル-3-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-メチル-4-ペンテニル、2-メチル-4-ペンテニル、3-メチル-4-ペンテニル、4-メチル-4-ペンテニル、1,1-ジメチル-2-ブテニル、1,1-ジメチル-3-ブテニル、1,2-ジメチル-1-ブテニル、1,2-ジメチル-2-ブテニル、1,2-ジメチル-3-ブテニル、1,3-ジメチル-1-ブテニル、1,3-ジメチル-2-ブテニル、1,3-ジメチル-3-ブテニル、2,2-ジメチル-3-ブテニル、2,3-ジメチル-1-ブテニル、2,3-ジメチル-2-ブテニル、2,3-ジメチル-3-ブテニル、3,3-ジメチル-1-ブテニル、3,3-ジメチル-2-ブテニル、1-エチル-1-ブテニル、1-エチル-2-ブテニル、1-エチル-3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、2-エチル-2-ブテニル、2-エチル-3-ブテニル、1,1,2-トリメチル-2-プロペニル、1-エチル-1-メチル-2-プロペニル、1-エチル-2-メチル-1-プロペニル及び1-エチル-2-メチル-2-プロペニルを表す。
【0065】
本明細書において用語「1、2、3、4又は5つの二重結合を含むC2~C20-アルケニル」は、2~20個の炭素原子及び1~5つまでのC=C-二重結合を有する直鎖状又は分枝状のエチレン性不飽和炭化水素基を表し、炭素原子のそれぞれが関与する二重結合は1つ以下である。1つの二重結合を含むC2~C20-アルケニルは、例えばC2~Cn-アルケニルについて上記に記載したものの1つであり、2つの二重結合を含むC2~C20-アルケニルは、例えば1,3-ブタジエニル、1,4-ペンタジエニル、1,3-ペンタジエニル、2,4-ペンタジエニル、2-メチル-1,3-ブタジエニル、1,5-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,3-ヘキサジエニル、2,5-ヘキサジエニル、3,5-ヘキサジエニル、2,4-ヘキサジエニル、2-メチル-1,3-ペンタジエニル又は4-メチル-1,3-ペンタジエニルであり、3つの二重結合を含むC2~C20-アルケニルは、例えば1,3,5-ヘキサトリエニル、1,3,6-ヘプタトリエニル、1,4,7-オクタトリエニル又は2-メチル-1,3,5-ヘキサトリエニルであり、4つの二重結合を含むC2~C20-アルケニルは、例えば1,3,5,7-オクタテトラエニル、1,3,5,8-ノナテトラエニル、1,4,7,10-ウンデカテトラエニル又は2-エチル-1,3,6,8-ノナテトラエニルであり、5つの二重結合を含むC2~C20-アルケニルは、例えば1,3,5,7,9-デカペンタエニル、1,4,6,8,10-ウンデカペンタエニル、1,4,6,9,11-ドデカペンタエニル又は2-エテニル-1,3,5,8-ノナテトラエニルである。
【0066】
本明細書において用語「C3~C7-シクロアルキル」とは、単環式及び二環式の3~7員飽和脂環式基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル及びビシクロ[3.1.1]ヘプチルを指す。好ましくは、用語シクロアルキルは、単環式飽和炭化水素基を表す。
【0067】
用語「C1~C4-アルコキシカルボニル」は、カルボニル基を介して結合している、上記に定義したC1~C4-アルコキシ基である。C1~C2-アルコキシカルボニルは、メトキシカルボニル又はエトキシカルボニルである。C1~C4-アルコキシは、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、n-プロポキシカルボニル、1-メチルエトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、1-メチルプロポキシカルボニル、2-メチルプロポキシカルボニル又は1,1-ジメチルエトキシカルボニルである。
【0068】
用語「C1~C4-アルキルカルボニルオキシ」は、カルボニルオキシ基(-C(=O)-O-)を介して結合している、上記に定義したC1~C4-アルキル基である。C1~C2-アルキルカルボニルオキシは、メチルカルボニルオキシ又はエチルカルボニルオキシである。C1~C4-アルキルカルボニルオキシは、例えばメチルカルボニルオキシ、エチルカルボニルオキシ、n-プロピルカルボニルオキシ、1-メチルエチルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、1-メチルプロピルカルボニルオキシ、2-メチルプロピルカルボニルオキシ又は1,1-ジメチルエチルカルボニルオキシである。
【0069】
本明細書において用語「アリール」とは、芳香族炭化水素基、例えばナフチル、又は特にフェニルを指す。
【0070】
本明細書において用語「互いから独立して、N、NRa、O及びSから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を環員として含む3、4、5、6又は7員の飽和、部分不飽和又は芳香族のヘテロ環式環」とは、単環式基を指し、単環式基が、飽和、部分不飽和又は芳香族である。ヘテロ環式基は、炭素環員を介して又は窒素環員を介して分子の残部に結合していてもよい。
【0071】
3、4、5、6又は7員の飽和ヘテロ環式環の例としては、オキシラニル、アジリジニル、アゼチジニル、2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチエニル、3-テトラヒドロチエニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、3-ピラゾリジニル、4-ピラゾリジニル、5-ピラゾリジニル、2-イミダゾリジニル、4-イミダゾリジニル、2-オキサゾリジニル、4-オキサゾリジニル、5-オキサゾリジニル、3-イソオキサゾリジニル、4-イソオキサゾリジニル、5-イソオキサゾリジニル、2-チアゾリジニル、4-チアゾリジニル、5-チアゾリジニル、3-イソチアゾリジニル、4-イソチアゾリジニル、5-イソチアゾリジニル、1,2,4-オキサジアゾリジン-3-イル、1,2,4-オキサジアゾリジン-5-イル、1,2,4-チアジアゾリジン-3-イル、1,2,4-チアジアゾリジン-5-イル、1,2,4-トリアゾリジン-3-イル、1,3,4-オキサジアゾリジン-2-イル、1,3,4-チアジアゾリジン-2-イル、1,3,4-トリアゾリジン-2-イル、2-テトラヒドロピラニル、4-テトラヒドロピラニル、1,3-ジオキサン-5-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-ピペリジニル、3-ヘキサヒドロピリダジニル、4-ヘキサヒドロピリダジニル、2-ヘキサヒドロピリミジニル、4-ヘキサヒドロピリミジニル、5-ヘキサヒドロピリミジニル、2-ピペラジニル、1,3,5-ヘキサヒドロトリアジン-2-イル及び1,2,4-ヘキサヒドロトリアジン-3-イル、2-モルホリニル、3-モルホリニル、2-チオモルホリニル、3-チオモルホリニル、1-オキソチオモルホリン-2-イル、1-オキソチオモルホリン-3-イル、1,1-ジオキソチオモルホリン-2-イル、1,1-ジオキソチオモルホリン-3-イル、ヘキサヒドロアゼピン-1-、-2-、-3-又は-4-イル、ヘキサヒドロオキセピニル、ヘキサヒドロ-1,3-ジアゼピニル、ヘキサヒドロ-1,4-ジアゼピニル、ヘキサヒドロ-1,3-オキサゼピニル、ヘキサヒドロ-1,4-オキサゼピニル、ヘキサヒドロ-1,3-ジオキセピニル、ヘキサヒドロ-1,4-ジオキセピニルなどが挙げられる。
【0072】
3、4、5、6又は7員の部分不飽和ヘテロ環式環の例としては、2,3-ジヒドロフラ-2-イル、2,3-ジヒドロフラ-3-イル、2,4-ジヒドロフラ-2-イル、2,4-ジヒドロフラ-3-イル、2,3-ジヒドロチエン-2-イル、2,3-ジヒドロチエン-3-イル、2,4-ジヒドロチエン-2-イル、2,4-ジヒドロチエン-3-イル、2-ピロリン-2-イル、2-ピロリン-3-イル、3 ピロリン-2-イル、3-ピロリン-3-イル、2-イソオキサゾリン-3-イル、3-イソオキサゾリン-3-イル、4-イソオキサゾリン-3-イル、2-イソオキサゾリン-4-イル、3-イソオキサゾリン-4-イル、4-イソオキサゾリン-4-イル、2-イソオキサゾリン-5-イル、3-イソオキサゾリン-5-イル、4-イソオキサゾリン-5-イル、2-イソチアゾリン-3-イル、3-イソチアゾリン-3-イル、4-イソチアゾリン-3-イル、2-イソチアゾリン-4-イル、3-イソチアゾリン-4-イル、4-イソチアゾリン-4-イル、2-イソチアゾリン-5-イル、3-イソチアゾリン-5-イル、4-イソチアゾリン-5-イル、2,3 ジヒドロピラゾール-1-イル、2,3-ジヒドロピラゾール-2-イル、2,3-ジヒドロピラゾール-3-イル、2,3-ジヒドロピラゾール-4-イル、2,3-ジヒドロピラゾール-5-イル、3,4-ジヒドロピラゾール-1-イル、3,4-ジヒドロピラゾール-3-イル、3,4-ジヒドロピラゾール-4-イル、3,4-ジヒドロピラゾール-5-イル、4,5-ジヒドロピラゾール-1-イル、4,5-ジヒドロピラゾール-3-イル、4,5-ジヒドロピラゾール-4-イル、4,5-ジヒドロピラゾール-5-イル、2,3-ジヒドロオキサゾール-2-イル、2,3-ジヒドロオキサゾール-3-イル、2,3-ジヒドロオキサゾール-4-イル、2,3-ジヒドロオキサゾール-5-イル、3,4-ジヒドロオキサゾール-2-イル、3,4-ジヒドロオキサゾール-3-イル、3,4-ジヒドロオキサゾール-4-イル、3,4-ジヒドロオキサゾール-5-イル、3,4-ジヒドロオキサゾール-2-イル、3,4-ジヒドロオキサゾール-3-イル、3,4-ジヒドロオキサゾール-4-イル、2-、3-、4-、5-又は6-ジ-又はテトラヒドロピリジニル、3-ジ-又はテトラヒドロピリダジニル、4-ジ-又はテトラヒドロピリダジニル、2-ジ-又はテトラヒドロピリミジニル、4-ジ-又はテトラヒドロピリミジニル、5-ジ-又はテトラヒドロピリミジニル、ジ-又はテトラヒドロピラジニル、1,3,5-ジ-又はテトラヒドロトリアジン-2-イル、1,2,4-ジ-又はテトラヒドロトリアジン-3-イル、2,3,4,5-テトラヒドロ[1H]アゼピン-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-又は-7-イル、3,4,5,6-テトラヒドロ[2H]アゼピン-2-、-3-、-4-、-5-、-6-又は-7-イル、2,3,4,7テトラヒドロ[1H]アゼピン-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-又は-7-イル、2,3,6,7テトラヒドロ[1H]アゼピン-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-又は-7-イル、テトラヒドロオキセピニル、例えば2,3,4,5-テトラヒドロ[1H]オキセピン-2-、-3-、-4-、-5-、-6-又は-7-イル、2,3,4,7-テトラヒドロ[1H]オキセピン-2-、-3-、-4-、-5-、-6-又は-7-イル、2,3,6,7-テトラヒドロ[1H]オキセピン-2-、-3-、-4-、-5-、-6-又は-7-イル、テトラヒドロ-1,3-ジアゼピニル、テトラヒドロ-1,4-ジアゼピニル、テトラヒドロ-1,3-オキサゼピニル、テトラヒドロ-1,4-オキサゼピニル、テトラヒドロ-1,3-ジオキセピニル及びテトラヒドロ-1,4-ジオキセピニルが挙げられる。
【0073】
ヘテロ芳香族環、ヘテロアリール又はヘタリールとも呼ばれる、5又は6員の芳香族ヘテロ環式環の例としては、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル、5-ピラゾリル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、1,3,4-トリアゾール-2-イル、2-ピリジニル、3-ピリジニル、4-ピリジニル、3-ピリダジニル、4-ピリダジニル、2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル及び2-ピラジニルが挙げられる。
【0074】
「C1~C7-アルキレン鎖」は、1~7個の炭素原子を有する2価の分枝状又は好ましくは非分枝状若しくは直鎖状の飽和脂肪族鎖、例えば-CH2-、-CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2CH2-、及び-CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2-である。
【0075】
本明細書において用語「結合している窒素原子と組み合わさって、3、4、5、6、7又は8員の飽和、部分不飽和又は芳香族の環を形成するC2~C7-アルキレン鎖であって、ここで、アルキレン鎖が、互いに独立して、O、S及びNRbから選択される1又は2個のヘテロ原子を含んでいてもよい」とは、単環式基を指し、単環式基が、飽和、部分不飽和又は芳香族である。ヘテロ環式基は、C2~C7-アルキレン鎖が結合し、したがって環員となる窒素を介して分子の残部に結合している。例としては、窒素原子を介して結合している「互いから独立して、N、NRa、O及びSから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を環員として含む3、4、5、6又は7員の飽和、部分不飽和又は芳香族のヘテロ環式環」について上記に記載したヘテロ環式環のそれらである。
【0076】
本明細書において用語「液体反応混合物」とは、すべての液体成分並びにそれに溶解しているあらゆる固体成分、例えば溶媒並びに液体又は溶解している抽出物、生成物及び副生成物を含む反応混合物の液体部分を指す。
【0077】
本明細書において用語「シトラール」とは、大部分、すなわち通常少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%の程度まで、任意の割合のネラールとゲラニアールの混合物からなる組成物を指す。
【0078】
本発明の好ましい実施形態は、式Iの化合物
[式中、
R1及びR2の一方は、
- 無置換である又はヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1~5つの基で置換されているC1~C20-アルキル、
- 1、2、3又は4つの二重結合を含み、無置換である又はヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1~5つの基で置換されているC2~C20-アルケニル、並びに
- 無置換である又はヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C1~C4-アルキル、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1~5つの基で置換されているアリール
から選択され、R1及びR2の他方は、
- 水素、並びに
- 無置換である又はヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C3~C7-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1~3つの基で置換されているC1~C10-アルキル
から選択され、
R3は、水素及びC1~C4-アルキルから選択される]
の製造に関する。
【0079】
本発明の別の好ましい実施形態は、式Iの化合物
[式中、
R1及びR2の一方は、
- 無置換である又はヒドロキシル、ハロゲン、C3~C6-シクロアルキル及びC1~C4-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1~3つの基で置換されているC1~C15-アルキル、並びに
- 1、2又は3つの二重結合を含み、無置換である又はヒドロキシル、ハロゲン、C1~C4-アルキル及びC1~C3-アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1~3つの基で置換されているC2~C15-アルケニル
から選択され、R1及びR2の他方は、水素及び無置換C1~C4-アルキル
から選択され、
R3は、水素及びC1~C4-アルキルから選択される]
の製造に関する。
【0080】
本発明の別の好ましい実施形態は、式Iの化合物
[式中、
R1及びR2の一方は、C2~C10-アルキル又は1つの二重結合を含むC2~C10-アルケニルであり、
他方は水素又はメチルであり、
R3は水素である]
の製造に関する。
【0081】
本発明の特に好ましい実施形態は、式Iの化合物
[式中、
R1及びR2の一方は、1つの二重結合を含むC4~C10-アルケニルであり、
他方はメチルであり、
R3は水素である]
の製造に関する。
【0082】
上記の4つの実施形態のそれぞれに従って、式IIの不飽和アルデヒドのそれぞれの可変部R1、R2及びR3は、同じ好ましい意味を有する。
【0083】
本発明の具体的に好ましい実施形態(以降、実施形態Aと呼ばれる)は、式Iの不飽和アルコールがゲラニオールであり、式IIの不飽和アルデヒドがゲラニアールである、方法に関する。
【0084】
本発明の別の具体的に好ましい実施形態(以降、実施形態Bと呼ばれる)は、式Iの不飽和アルコールがネロールであり、式IIの不飽和アルデヒドがネラールである、方法に関する。
【0085】
実施形態Aの方法及び実施形態Bの方法において、好ましくは抽出物組成物としてシトラールが使用される。
【0086】
実施形態Aによる方法において、式IIの不飽和アルデヒドとして少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%、具体的には少なくとも99重量%のゲラニアールを含むシトラールを抽出物組成物として使用することが好ましい。実施形態Aの方法において、少なくとも80重量%のゲラニアール及び少なくとも15重量%のネラール、より好ましくは少なくとも90重量%のゲラニアール及び少なくとも5重量%のネラール、さらにより好ましくは少なくとも95重量%のゲラニアール及び5重量%までのネラール、特に少なくとも98重量%のゲラニアール及び2重量%までのネラール、具体的には少なくとも99重量%のゲラニアール及び1重量%までのネラールを含むシトラールを使用することが特に好ましい。
【0087】
実施形態Bによる方法において、式IIの不飽和アルデヒドとして少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも85重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%、具体的には少なくとも99重量%のネラールを含むシトラールを抽出物組成物として使用することが好ましい。実施形態Bの方法において、少なくとも80重量%のネラール及び少なくとも15重量%のゲラニアール、より好ましくは少なくとも90重量%のネラール及び少なくとも5重量%のゲラニアール、さらにより好ましくは少なくとも95重量%のネラール及び5重量%までのゲラニアール、特に少なくとも98重量%のネラール及び2重量%までのゲラニアール、具体的には少なくとも99重量%のネラール及び1重量%までのゲラニアールを含むシトラールを使用することが特に好ましい。
【0088】
連続、半連続又はバッチ方式に適合することができるので、本発明の式Iの2,3-不飽和アルコールを製造する本発明の方法の水素化は、そのような反応にとって慣例である反応容器で行われる。適当な反応容器の例は、典型的には加熱装置、反応物質を混合するための撹拌装置、及び反応混合物の温度を制御するための温度計を装備した、オートクレーブ及びEP1318128に記載されているタイプの気泡塔である。
【0089】
本発明による方法は、対応する式IIのアルデヒドの接触水素化により、式Iの2,3-不飽和アルコールに転化するステップを含む。転化は、アルコールIと還元剤である水素を触媒及び第三級アミンの存在下に適当な反応条件下で反応させることによって行われる。
【0090】
本発明の方法において使用される触媒は、原則として、水素源として気体水素を使用する水素化反応によるアルデヒドの対応するアルコールへの転化を触媒することができる任意の触媒であってよい。典型的には、少なくとも1つの遷移金属、特に周期表(CAS版)のIVB、VIIIB又はIB族の1つ、例えばジルコニウム、パラジウム、白金、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、イリジウム、ルテニウム又は銅を含む、均質又は不均一系触媒である。これらの金属は、単独で又は組み合わせて、それらの塩、酸化物又は錯体の1つの形で、あるいは金属の形で触媒中に存在し得る。
【0091】
本発明の一実施形態において、触媒は、活性金属としてルテニウムをその金属の形で、その酸化物若しくは塩の形で、又はそれらの混合物を含む。触媒は、ルテニウムだけでなく、1つ以上の追加の遷移金属を含んでもよい。したがって、この実施形態の特に好ましい態様によれば、触媒は、ルテニウムのほかに、別の活性金属として鉄をその金属の形で、その酸化物若しくは塩の1つの形で、又はそれらの混合物をさらに含む。
【0092】
ルテニウム及び他の金属に関する重量のデータは、金属が金属の形で存在しているかそれともそれらの酸化物又は塩の形で存在しているかに関係なく、金属の重量を指す。
【0093】
本発明の好ましい実施形態において、触媒は不均一系触媒であり、典型的には完全触媒又は担持触媒である。完全触媒は、元素又は酸化物の形の活性金属が活性の形の触媒の少なくとも50重量%、特に少なくとも80重量%を構成する触媒である。担持触媒は、活性金属が不活性な支持体材料に担持されている触媒である。担持触媒において、活性金属の量は、主に、触媒の乾燥重量に対して0.05重量%~15重量%、好ましくは0.1~10重量%、特に1~7重量%の範囲である。適当な支持体材料としては、炭素、例えば活性炭、炭化ケイ素、シリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、アルミナ及びアルミノシリケート、例えばゼオライトが挙げられる。好ましくは、支持体材料は、比表面積が、DIN 66131に従ってN2吸着により決定して、少なくとも10m2/g、特に50~2000m2/gである。支持体材料は、好ましくは炭素、アルミナ及びシリカからなる群から選択され、特に炭素、例えば具体的には活性炭である。
【0094】
本発明の好ましい実施形態において、本発明による方法において好ましく使用される不均一系触媒は、不活性な支持体材料に担持させたルテニウムを含む担持触媒である。この実施形態の特に好ましい態様によれば、担持触媒は、やはり支持体材料に担持させた別の遷移金属をさらに含む。別の遷移金属は、好ましくは鉄である。さらに、担持触媒のルテニウム含有量は、いずれの場合にも触媒の乾燥重量に対して、好ましくは0.1~10重量%、特に1~7重量%の範囲であり、一方で鉄が触媒中に含まれている場合にその鉄含有量は、好ましくは0.1~5重量%、特に0.1~3重量%の範囲である。
【0095】
担持触媒は、粉末の形で使用することができる。一般に、そのような粉末は、1~200μm、特に1~100μmの範囲の粒径を有する。粉末状触媒は、特に触媒が水素化対象の反応混合物に懸濁されているとき適している。触媒が固定触媒床において使用される場合、例えば球体、錠剤、円柱、子縄、環又は中空円柱、星、小片の形状などを有することがある造形体を使用することが慣例である。これらの造形体の寸法は、典型的には0.5mm~25mmの範囲内で異なる。頻繁に、押出物直径1~5mm及び押出物長さ2~25mmの触媒押出物が使用される。
【0096】
本発明の特に好ましい実施形態において、本発明による方法において使用される触媒は、炭素担体、特に活性炭である支持体材料に担持させたルテニウムと鉄とを両方含む。そのような触媒は、典型的には粉末の形で使用される。
【0097】
1つ以上の遷移金属を含む本発明による触媒は、当技術分野において周知である慣例の方法によって製造することができる。ルテニウム及び場合により鉄を含む本明細書において好ましい担持触媒は、好ましくはEP1317959で開示された方法、特に2015年10月5日に出願された未公開の欧州特許出願第15188361.8号で開示された方法によって得られる。両文献は、参照により本明細書に組み込まれる。要するに、以下のステップを含む前記方法:
a)支持体材料を水に懸濁するステップ、
b)ルテニウム及び場合により鉄をそれらの金属塩の溶液の形で同時に添加するステップ、
c)塩基を添加することによって、ルテニウム及び当てはまる場合には鉄を本質的にそれらの水酸化物の形で支持体上に沈殿させるステップ、
d)負荷された支持体を懸濁液の水性相から分離するステップ、
e)負荷された支持体を乾燥させるステップ、
f)負荷された支持体を、600℃未満の温度で水素化条件にかけるステップ、及び
g)得られた触媒を低引火性の液体下でコンディショニングする、又は
得られた触媒を希薄酸素流で不動態化する、又は
得られた触媒を希薄酸素流で不動態化し、触媒を低引火性の液体下でコンディショニングするステップ。
【0098】
ステップa)において使用される支持体材料は、典型的には微細化された形、例えば粉末活性炭である。ステップa)において得られる水性懸濁液は、そのままでステップb)において使用してもよく、又はことによると、酸、例えば硝酸を添加することによって、7未満、特に6未満のpH値に調整してもよく、若しくは塩基、例えば水酸化ナトリウムを添加することによって、7を超える、特に8を超えるpH値に調整してもよい。
【0099】
ステップb)において、ルテニウム塩及び当てはまる場合には鉄塩の添加は、好ましくは高い懸濁温度、特に50~95℃の温度、具体的には70~90℃の温度で実施される。ルテニウム及び鉄の適当な塩としては、それらの塩化物、硝酸塩、ニトロシル硝酸塩、酢酸塩、酸化物、水酸化物及びアセチルアセトネート、例えば特に塩化ルテニウム、ニトロシル硝酸ルテニウム、塩化鉄及び硝酸鉄が挙げられる。
【0100】
ステップc)において、塩基、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、尿素、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウム、特に水酸化ナトリウムを、典型的には、ステップb)において得られた懸濁液に、6~14の範囲、好ましくは8~12の範囲、特に8~10の範囲のpH値に到達するまでゆっくりと添加する。塩基は、好ましくは高温、特に50~95℃の温度、具体的には70~90℃の温度を有する懸濁液に添加される。
【0101】
ステップd)において、負荷された支持体を、好ましくはろ過により分離し、次いで得られたろ過ケークを、ステップe)において通常減圧下又は不活性ガス雰囲気中で乾燥する。
【0102】
ステップf)において、ステップe)において得られた材料を、不活性ガス、例えば窒素でことによると希釈された水素流中で還元する。水素流の水素含有量は、典型的には5~100体積%、好ましくは5~50体積%、特に5~25体積%の範囲である。
【0103】
ステップf)における還元は、好ましくは100~600℃未満、好ましくは150~550℃未満、特に180~520℃の範囲の温度で実施される。
【0104】
本発明の一実施形態において、ステップf)における還元は、400~600℃未満、好ましくは450~550℃、特に480~520℃の範囲の温度で実施される。
【0105】
本発明の好ましい実施形態において、ステップf)における還元は、100~400℃、好ましくは120~300、特に150~250℃、特に180~220℃、具体的には190~210℃の温度で実施される。
【0106】
ステップg)において、ステップf)において得られた触媒を、典型的には40℃未満の温度まで冷却した後、低引火性の液体、例えば水中でコンディショニングしてもよい。あるいは又はそのようなコンディショニングに加えて、不動態化方法をステップf)において実施することができる。本発明の一実施形態によれば、不動態化は、希釈された酸素流によって通常10~30℃の範囲の温度、例えば周囲温度で行われる。好ましい希釈された酸素流は、酸素含有量が50体積%未満、特に25体積%未満、特に好ましい10体積%未満、特に5体積%未満、具体的には約1体積%である。酸素を希釈するには、典型的には不活性ガス、例えば窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン又は二酸化炭素、好ましくは窒素が使用される。
【0107】
ステップa)において、粉末材料の代わりに、造形体、例えば押出物、子縄、球体などが使用される点以外は、懸濁液触媒について上記に記載された方法と同様にして、固定床式触媒が製造される。これらの造形体の特徴的寸法(直径、長さなど)は、一般に1mmを超える。造形体を水に分散するとき、摩擦を最小限に抑えるために、それらが曝露される機械的ストレスを最小限に抑えるように注意を払うべきである。弱接着性の細粒子を分離するために、造形体を触媒として使用する前に水で洗浄することが有利である。
【0108】
本発明の方法において使用される第三級アミンは、原則としてどんな第三級アミンでもよいが、精留により式Iの生成物から容易に分離可能なものが好ましい。式Iの生成物がネロールである場合、好ましい第三級アミンは、ネロールの沸点より実質的に低い又は高い沸点を有し、特に好ましい第三級アミンは1バールの圧力で180℃未満の沸点を有する。第三級アミンは、EP0071787で開示されたものから選択されてよく、通常第三級脂肪族アミン、例えば場合により置換されているトリアルキルアミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン及びトリエタノールアミン、又は場合により置換されているN,N-ジアルキルシクロアルキルアミン、例えばN,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジアルキルアリールアルキルアミン、例えばN,N-ジメチルベンジルアミン、ヘテロ環式芳香族アミン、例えばピリジン、3-クロロピリジン、2-メトキシピリジン、コリジン、2,2'-ビピリジン及びフェナントロリン、N-アルキル置換ヘテロ環式アミン、例えばN-メチルピペリジン及びN-メチルモルホリン、並びに第三級混合アルキル-アリールアミン、例えばN,N-ジメチルアニリンから選択される。
【0109】
本発明の好ましい実施形態によれば、第三級アミンは、トリ(C1~C20-アルキル)アミン、より好ましくはトリ(C1~C5-アルキル)アミン、特にトリ(C1~C3-アルキル)アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン又はN,N-ジメチルエチルアミンから選択され、具体的にはトリメチルアミンである。
【0110】
水素化は、典型的には半連続又は不連続方式で実施されるが、あるいは、ことによると連続方式で実施してもよい。好ましくは、水素化は、不連続に、すなわちバッチ方式で実施される。
【0111】
反応物質、触媒及び第三級アミンを、原則として、互いに任意の所望の順序で接触させることができる。例えば、不飽和アルデヒドIIを含む抽出物組成物を最初に投入することができ、次いで第三級アミンを添加し、又は逆に、最初に第三級アミンを投入し、アルデヒドIIと混和することができ、いずれの場合にも、抽出物組成物及び第三級アミンを適切な場合はことによると溶解又は分散された形で添加してもよい。あるいは、アルデヒドII及び第三級アミンを、反応容器に同時に投入することもできる。水素ガスは、アルデヒドII又は第三級アミンの添加の前、後又は最中に容器を加圧することによって添加される。同様に、触媒は、アルデヒドII又は第三級アミンの前、後又はそれと一緒に添加される。
【0112】
特に抽出物組成物がシトラールである場合、第三級アミンの存在下における抽出物組成物の滞留時間を最小限に抑えることが好ましいことが明らかになってきた。したがって、水素化が不連続方式で行われる場合、抽出物組成物と第三級アミンの接触は、好ましくは水素化反応が開始される前ではなく、又は早くても、水素化反応が開始される直前であり、すなわち特に、水素化の開始の直後、それと同時、又はせいぜい少し前である。したがって、本発明の好ましい実施形態において、触媒が入っている容器を水素ガスでパージし、容器内が所望の反応圧力及び温度に到達して初めて、抽出物組成物を第三級アミンと接触させる。これは、例えば、触媒を添加し、反応容器を水素でパージ及び加圧し、容器の内部を所望の温度に設定し、抽出物組成物又は第三級アミンを任意の順序で添加し、その直後に初めて、それぞれ第三級アミン又は抽出物組成物を添加することによって成し遂げることができる。特に好ましい実施形態において、触媒を添加し、容器を水素でパージ及び加圧し、容器の内部温度を設定するステップは任意の順序で実施され、次いで抽出物組成物及び第三級アミンは別々に直に連続して添加される。水素化の開始前に第三級アミンを抽出物組成物と接触させる必要がある場合、低温、例えば40℃未満で行うことが好ましい。
【0113】
抽出物組成物と第三級アミンの接触を低減する別の措置として、水素化反応の過程を通じて、抽出物組成物を反応混合物に連続的又は断続的に添加することができる。このように、抽出物組成物の所期の全量は、全部が一度に添加されないが、その代わりに反応の時間にわたって徐々に添加される。
【0114】
本発明の別の態様によれば、抽出物組成物と第三級アミンの接触を低減する上記の2つの措置を組み合わせて適用することもできる。そのような手法は、例えば、触媒の添加、水素による反応容器のパージ及び加圧、並びに容器の内部温度の設定を任意の順序で行い、次いで第三級アミンを添加し、その直後に抽出物組成物を徐々に添加し始めることによって実現することができる。
【0115】
本発明の方法の水素化反応は、水素化条件下において不活性である溶媒の存在下で実施しても実施しなくてもよい。好ましくは、水素化は、そのような溶媒、特にプロトン性有機溶媒の存在下で実施される。本発明の好ましい実施形態において、有機溶媒は、C1~C8-アルカノール、特にメタノール、エタノール及びイソプロパノールから選択され、具体的にはメタノールである。
【0116】
溶媒は、典型的には、水素化反応液に、いずれの場合にも液体反応混合物の全重量に対して0~50重量%の量、好ましくは5~40重量%の量、特に10~30重量%の量、具体的には15~25重量%の量で添加される。
【0117】
溶媒は、水素化反応において使用される場合、典型的には第三級アミンと共に、第三級アミンを溶媒に溶解することによって得られる溶液の形で添加される。
【0118】
本発明の好ましい実施形態において、第三級アミンは、いずれの場合にも液体反応混合物の全量に対して0.005~0.5重量%、特に0.01~0.2重量%、具体的には0.05~0.15重量%の範囲の量で使用される。
【0119】
本発明の別の好ましい実施形態において、本発明の方法の水素化において使用される触媒は、本明細書の以上に記載される担持触媒、特に本明細書に好ましいと記載される担持触媒であり、いずれの場合にも反応混合物の全重量に対して0.1~10重量%、好ましくは0.2~5重量%、特に0.5~3重量%、具体的には0.8~2重量%の量で使用される。この文脈において「反応混合物」は、水素化反応混合物の液体及び固体の構成要素を含むように意図されている。
【0120】
水素化は、典型的には1~250バールの範囲、好ましくは10~200バールの範囲、より好ましくは20~100バールの範囲、特に30~75バールの範囲、具体的には40~60バールの範囲の水素圧力で実施される。
【0121】
水素化に使用される水素は、純粋な形で、又は所望の場合、他の、好ましくは不活性ガス、例えば窒素又はアルゴンとの混合物の形でも使用することができる。水素を希釈されていない形で使用することが好ましい。
【0122】
水素化は、典型的には10~200℃の範囲、好ましくは10~200℃の範囲、より好ましくは40~150℃の範囲、特に50~90℃の範囲、具体的には60~80℃の範囲の温度で実施される。
【0123】
触媒の活性は、特に不均一系触媒である場合、通常バッチ形式で実施される水素化時において著しくは変化しないことが、本発明の方法の際だった利点である。したがって、触媒を、その後不連続な1回以上の実行において再使用することができる。すなわち、触媒は再生可能である。特に上記の担持触媒がルテニウム及び鉄を含む場合は、1回以上の再使用によって、典型的には触媒の選択性が改善されることさえ明らかになった。したがって、本発明の好ましい実施形態において、以前に少なくとも1回、特に少なくとも2回水素化反応において使用された再生触媒である不均一系触媒が、本発明の水素化において使用される。
【0124】
本発明の方法の水素化において得られた反応混合物の後処理及び式Iの生成物の単離は、慣例の方式、例えばろ過、水性抽出後処理で、又は例えば減圧下における蒸留分離によって行われる。そのような措置又はそれらの組合せを適用することによって、式Iの生成物を十分な純度で得ることができ、追加の精製ステップの必要がなくなる。あるいは、さらなる精製は、当技術分野においてよく使用される方法、例えばクロマトグラフィーによって成し遂げることができる。
【0125】
好ましくは、後処理及び式Iの生成物の単離は、触媒を濾去し、次いで典型的には再生し、揮発性成分、例えば溶媒及び第三級アミンを例えば蒸発により除去し、最後に式Iの生成物を真空精留により単離することによって行われる。
【0126】
本発明の実施形態Bによる方法において、特にシトラールが抽出物組成物として使用される場合、水素化後のネロール含有量、すなわち、水素化の完了並びにその後の触媒及び揮発性成分の除去の後のネロール含有量が、好ましくは85重量%より高い、より好ましくは90重量%、特に92重量%より高い未精製生成物が得られる。さらに、前記未精製生成物は、水素化後のゲラニオール含有量が好ましくは9重量%以下、より好ましくは6重量%以下、特に4重量%以下である。
【0127】
本発明の実施形態Bによる方法において、特にシトラールが抽出物組成物として使用される場合、水素化の完了後に得られた未精製生成物は、本明細書の以上に定義した精留によって達成し得るネロール純度が典型的には90%を超え、好ましくは93%を超え、より好ましくは94%を超え、特に95%を超え、具体的には96%を超える。したがって、本発明の好ましい実施形態において、実施形態Bによる方法の水素化並びにことによるとその後の触媒及び揮発性成分の除去の後に得られた未精製生成物を精留ステップにかけると、90%を超え、好ましくは93%を超え、より好ましくは94%を超え、特に95%を超え、具体的には96%を超える純度のネロールが得られる。
【0128】
本発明のさらに好ましい実施形態において、実施形態Bによる方法の水素化並びにことによるとその後の触媒及び揮発性成分の除去において得られた未精製生成物を精留ステップにかけると、副生成物であるシトロネロール及び式III~Vのネロール異性体の全体レベルがいずれの場合にもネロール化合物の全重量に対して10重量%未満、好ましくは7重量%未満、より好ましくは6重量%未満、特に5重量%未満、具体的には4重量%未満、例えば特に好ましくは2~4重量%の範囲であるネロール化合物が得られる。
【0129】
別の態様において、本発明は、最終の精留ステップ後に本発明の方法によって得られうるネロール化合物、特に以降「ネロール化合物A」と呼ばれるネロール化合物であって、いずれの場合にもネロール化合物の全重量に対して90重量%を超え、好ましくは93重量%を超え、より好ましくは95重量%を超え、具体的には96重量%を超える量のネロールを含むことを特徴とするネロール化合物を提供する。本発明の好ましい実施形態において、ネロール化合物Aは、いずれの場合にもネロール化合物の全重量に対して94~98重量%、好ましくは95~98重量%、より好ましくは96~98重量%のネロール、及び2~6重量%、好ましくは2~5重量%、より好ましくは2~4重量%のシトロネロール及び式III~Vのネロール異性体を合わせた副生成物を含む。
【0130】
ネロール含有量が少なくとも90重量%を超えるネロール化合物Aの場合は、ローズフローラル及びフレッシュ、シトラス様ノートの香りを生成するのに適しているという点で非常に有利な嗅覚特性を有する新規化合物が、芳香化学物質、特ににおい物質として使用するために提供される。
【0131】
したがって、本発明の好ましい実施形態は、本発明の方法によって得られうるネロール化合物Aの芳香化学物質、特ににおい物質としての使用を対象にする。フレーバー付け又はにおい付け対象の組成物、例えば香料、洗浄剤及び清浄剤、化粧料組成物、ボディケア組成物、衛生物品、口腔及び歯科衛生用の製品、香りのディスペンサー並びにフレグランスにおけるネロール化合物Aのそのような使用が特に好ましい。フレッシュ、シトラス、パウダリー、及びスムース調である、放散するインパクトのあるローズフローラルノートを生成するためのネロール化合物Aの、特にフレーバー付け又はにおい付け対象の組成物、例えば上記に記載したものの1つにおけるそのような使用も特に好ましい。
【0132】
別の態様において、本発明は、フレグランス又は芳香物質組成物であって、
a)本発明の方法によって得られうるネロール化合物A、
b)場合により、成分a)と異なる少なくとも1つの別の芳香化学物質、及び
c)場合により、少なくとも1つの希釈剤
を含むが、ただし、組成物が、成分b)又はc)の少なくとも1つを含むことを条件とする組成物を提供する。
【0133】
好ましくは、本発明によるフレグランス又は芳香物質組成物は、組成物の全重量に対して0.1~95重量%、より好ましくは0.1~90重量%、特に0.1~80重量%の重量分率の成分a)を含む。
【0134】
より好ましくは、本発明によるフレグランス又は芳香物質組成物は、組成物の全重量に対して0.1~70重量%、より好ましくは1~50重量%の重量分率の成分a)を含む。特定の実施形態において、本発明によるフレグランス又は芳香物質組成物は、組成物の全重量に対して2~30重量%、さらに具体的には3~15重量%の重量分率の成分a)を含む。
【0135】
本発明のフレグランス又は芳香物質組成物は、成分b)として、成分a)と異なる1つ以上の追加のフレグランス物質(複数可)も場合により含むことがある。本発明のフレグランス又は芳香物質組成物は、成分c)として、1つ以上の希釈剤(複数可)も場合により含むことがある。さらに、本発明のフレグランス又は芳香物質組成物は、フレグランス又は芳香物質組成物においてよくみられる材料として当業者に公知である別の構成要素も場合により含むことがある。
【0136】
好ましい実施形態において、本発明によるフレグランス又は芳香物質組成物は、成分a)を単独の芳香化学物質として含む。
【0137】
さらに好ましい実施形態において、本発明によるフレグランス又は芳香物質組成物は、本発明の方法によって得られうるネロール化合物Aの他に、成分b)として少なくとも1つの別の芳香化学物質を含む。
【0138】
成分b)のオプションの芳香化学物質として、本発明のフレグランス又は芳香物質組成物中に含めることに適している物質の例は、例えばS. Arctander、Perfume and Flavor Materials、I及びII巻、Montclair, N.J.、1969年、自費出版、又はK. Bauer、D. Garbe及びH. Surburg、Common Fragrance and Flavor Materials、第4版、Wiley-VCH, Weinheim、2001年でみることができ、例えば以下の物質とすることができる。
【0139】
天然原料からの抽出物、例えば精油、固結物、アブソリュート、樹脂、樹脂性物質、バルサム、チンキ、例えばアンバーグリスチンキ、アミリス油、アンゲリカシード油、当帰油、アニシード油、吉草油、メボウキ油、トリーモスアブソリュート、ベイ油、ヨモギ油、ベンゾイン樹脂、ベルガモット油、ビーズワックスアブソリュート、バーチタール油、苦扁桃油、セイバリー油、ブチュリーフ油、カブリューバ油、ケード油、カルムス油(calmus oil)、カンファー油、カナンガ油、カルダモン油、カスカリラ油、カッシア油、カッシアアブソリュート、カストリウムアブソリュート、ニオイヒバ油、シダーウッド油、シスタス油、シトロネラ油、レモン油、コパイババルサム、コパイババルサム油、コリアンダー油、コスタス根油、クミン油、サイプレス油、ダバナ油、ディルウィード油、ディルシード油、オードブルートアブソリュート、オークモスアブソリュート、エレミ油、タラゴン油、ユーカリシトリオドーラ油、ユーカリ油、ウイキョウ油、松葉油、ガルバヌム油、ガルバヌム樹脂、ゼラニウム油、グレープフルーツ油、グアイアックウッド油、ガージャンバルサム、ガージャンバルサム油、ヘリクリスムアブソリュート、ヘリクリスム油、ショウキョウ油、アイリス根アブソリュート、アイリス根油、ジャスミンアブソリュート、カルムス油、青カモミール油、ローマンカモミール油、キャロットシード油、カスカリラ油、松葉油、スペアミント油、キャラウェー油、ラブダナム油、ラブダナムアブソリュート、ラブダナム樹脂、ラバンジンアブソリュート、ラバンジン油、ラベンダーアブソリュート、ラベンダー油、レモングラス油、ロベージ油、蒸留ライム油、圧搾ライム油、リナロオール油、リトシーキュービバ油、ローレルリーフ油、メース油、マヨラナ油、マンダリン油、マソイアバーク油、ミモザアブソリュート、ムスクシード油、ムスクチンキ、クラリセージ油、ナツメグ油、ミルラアブソリュート、ミルラ油、ミルテ油、チョウジ葉油、チョウジ花油、ネロリ油、オリバナムアブソリュート、オリバナム油、オポパナックス油、オレンジブロッサムアブソリュート、オレンジ油、オリガヌム油、パルマローザ油、パチョリ油、エゴマ油、ペルーバルサム油、パセリ葉油、パセリシード油、プチグレン油、ハッカ油、ペパー油、ピメント油、パイン油、ペニローヤル油、ローズアブソリュート、ローズウッド油、ローズ油、ローズマリー油、ダルマチアンセージ油、スパニッシュセージ油、ビャクダン油、セロリシード油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、スチラックス油、タジェート油、ファーニードル油、ティーツリー油、テレビン油、タイム油、トルーバルサム、トンカアブソリュート、ツベローズアブソリュート、バニラエキス、バイオレットリーフアブソリュート、バーベナ油、ベチバー油、ジュニパーベリー油、ワインリーズ油、ヨモギ油、ウインターグリーン油、イランイラン油、ヒソップ油、シベットアブソリュート、ケイ葉油、ケイヒ油、及びそれらの画分、又はそれらから単離された材料;
【0140】
炭化水素の群からの個々のフレグランス、例えば3-カレン、アルファ-ピネン、ベータ-ピネン、アルファ-テルピネン、ガンマ-テルピネン、p-シメン、ビサボレン、カンフェン、カリオフィレン、セドレン、ファルネセン、リモネン、ロンギホレン、ミルセン、オシメン、バレンセン、(E,Z)-1,3,5-ウンデカトリエン、スチレン、ジフェニルメタン、
【0141】
脂肪族アルコール、例えばヘキサノール、オクタノール、3-オクタノール、2,6-ジメチルヘプタノール、2-メチル-2-ヘプタノール、2-メチル-2-オクタノール、(E)-2-ヘキセノール、(E)-及び(Z)-3-ヘキセノール、1-オクテン-3-オール、3,4,5,6,6-ペンタメチル-3/4-ヘプテン-2-オールと3,5,6,6-テトラメチル-4-メチレンヘプタン-2-オールの混合物、(E,Z)-2,6-ノナジエノール、3,7-ジメチル-7-メトキシオクタン-2-オール、9-デセノール、10-ウンデセノール、4-メチル-3-デセン-5-オール;
【0142】
脂肪族アルデヒド及びそれらのアセタール、例えばヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ウンデカナール、ドデカナール、トリデカナール、2-メチルオクタナール、2-メチルノナナール、(E)-2-ヘキセナール、(Z)-4-ヘプテナール、2,6-ジメチル-5-ヘプテナール、10-ウンデセナール、(E)-4-デセナール、2-ドデセナール、2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール、2,6,10-トリメチル-5,9-ウンデカジエナール、ヘプタナールジエチルアセタール、1,1-ジメトキシ-2,2,5-トリメチル-4-ヘキセン、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、(E/Z)-1-(1-メトキシプロポキシ)-ヘキサ-3-エン、脂肪族ケトン及びそれらのオキシム、例えば2-ヘプタノン、2-オクタノン、3-オクタノン、2-ノナノン、5-メチル-3-ヘプタノン、5-メチル-3-ヘプタノンオキシム、2,4,4,7-テトラメチル-6-オクテン-3-オン、6-メチル-5-ヘプテン-2-オン;
【0143】
脂肪族硫黄含有化合物、例えば3-メチルチオヘキサノール、3-メチルチオヘキシルアセテート、3-メルカプトヘキサノール、3-メルカプトヘキシルアセテート、3-メルカプトヘキシルブチレート、3-アセチルチオヘキシルアセテート、1-メンテン-8-チオール、
【0144】
脂肪族ニトリル、例えば2-ノネンニトリル、2-ウンデセンニトリル、2-トリデセンニトリル、3,12-トリデカジエンニトリル、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエンニトリル、3,7-ジメチル-6-オクテンニトリル;
【0145】
脂肪族カルボン酸のエステル、例えばギ酸(E)-及び(Z)-3-ヘキセニル、アセト酢酸エチル、酢酸イソアミル、酢酸ヘキシル、酢酸3,5,5-トリメチルヘキシル、酢酸3-メチル-2-ブテニル、酢酸(E)-2-ヘキセニル、酢酸(E)-及び(Z)-3-ヘキセニル、酢酸オクチル、酢酸3-オクチル、酢酸1-オクテン-3-イル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、酪酸ヘキシル、イソ酪酸(E)-及び(Z)-3-ヘキセニル、クロトン酸ヘキシル、イソ吉草酸エチル、2-メチルペンタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘキサン酸アリル、ヘプタン酸エチル、ヘプタン酸アリル、オクタン酸エチル、(E,Z)-2,4-デカジエン酸エチル、2-オクチン酸メチル、メチル2-ノニネート、2-イソアミルオキシ酢酸アリル、3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン酸メチル、クロトン酸4-メチル-2-ペンチル;
【0146】
非環式テルペンアルコール、例えばゲラニオール、ネロール、シトロネロール、リナロオール、ラバンジュロール、ネロリドール、ファルネソール、テトラヒドロリナロオール、2,6-ジメチル-7-オクテン-2-オール、2,6-ジメチルオクタン-2-オール、2-メチル-6-メチレン-7-オクテン-2-オール、2,6-ジメチル-5,7-オクタジエン-2-オール、2,6-ジメチル-3,5-オクタジエン-2-オール、3,7-ジメチル-4,6-オクタジエン-3-オール、3,7-ジメチル-1,5,7-オクタトリエン-3-オール、2,6-ジメチル-2,5,7-オクタトリエン-1-オール、並びにそれらのギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、イソ酪酸エステル、酪酸エステル、イソ吉草酸エステル、ペンタン酸エステル、ヘキサン酸エステル、クロトン酸エステル、チグリン酸エステル及び3-メチル-2-ブタン酸エステル;
【0147】
非環式テルペンアルデヒド及びケトン、例えばゲラニアール、ネラール、シトロネラール、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、7-メトキシ-3,7-ジメチルオクタナール、2,6,10-トリメチル-9-ウンデセナール、ゲラニルアセトン、並びにゲラニアール、ネラール、7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナールのジメチル及びジエチルアセタール、環式テルペンアルコール、例えばメントール、イソプレゴール、アルファ-テルピネオール、テルピン-4-オール、メンタン-8-オール、メンタン-1-オール、メンタン-7-オール、ボルネオール、イソボルネオール、リナロールオキシド、ノポール、セドロール、アンブリノール、ベチベロール、グアジョール、並びにそれらのギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、イソ酪酸エステル、酪酸エステル、イソ吉草酸エステル、ペンタン酸エステル、ヘキサン酸エステル、クロトン酸エステル、チグリン酸エステル及び3-メチル-2-ブタン酸エステル;
【0148】
環式テルペンアルデヒド及びケトン、例えばメントン、イソメントン、8-メルカプトメンタン-3-オン、カルボン、ショウノウ、フェンコン、アルファ-イオノン、ベータ-イオノン、アルファ-n-メチルイオノン、ベータ-n-メチルイオノン、アルファ-イソメチルイオノン、ベータ-イソメチルイオノン、アルファ-イロン、アルファ-ダマスコン、アルファ-ダマセノン、ベータ-ダマスコン、ベータ-ダマセノン、デルタ-ダマスコン、デルタ-ダマセノン、ガンマ-ダマスコン、ガンマ-ダマセノン、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、1,3,4,6,7,8a-ヘキサヒドロ-1,1,5,5-テトラメチル-2H-2,4a-メタノナフタレン-8(5H)-オン、2-メチル-4-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール、ノートカトン、ジヒドロノートカトン、4,6,8-メガスチグマトリエン-3-オン、アルファ-シネンサール、ベータ-シネンサール、アセチル化シダーウッド油(メチルセドリルケトン);
【0149】
環式アルコール、例えば4-tert-ブチルシクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、3-イソカンフィルシクロヘキサノール、2,6,9-トリメチル-Z2,Z5,E9-シクロドデカトリエン-1-オール、2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール;
脂環式アルコール、例えばアルファ-3,3-トリメチルシクロヘキシルメタノール、1-(4-イソプロピルシクロヘキシル)エタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)ブタノール、2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-2-ブテン-1-オール、2-エチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-2-ブテン-1-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)ペンタン-2-オール、3-メチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、3,3-ジメチル-5-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンタ-1-イル)-4-ペンテン-2-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ペンタン-3-オール、1-(2,2,6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オール;
【0150】
環式及び脂環式エーテル、例えばシネオール、セドリルメチルエーテル、シクロドデシルメチルエーテル、1,1-ジメトキシシクロドデカン、(エトキシメトキシ)シクロドデカン、アルファ-セドレンエポキシド、3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、3a-エチル-6,6,9a-トリメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン、1,5,9-トリメチル-13-オキサビシクロ-[10.1.0]トリデカ-4,8-ジエン、ローズオキシド、ジヒドロローズオキシド、2-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-5-メチル-5-(1-メチルプロピル)-1,3-ジオキサン;
【0151】
環式及び大環式ケトン、例えば4-tert-ブチルシクロヘキサノン、2,2,5-トリメチル-5-ペンチルシクロペンタノン、2-ヘプチルシクロペンタノン、2-ペンチルシクロペンタノン、2-ヒドロキシ-3-メチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-cis-2-ペンテン-1-イル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-2-ペンチル-2-シクロペンテン-1-オン、3-メチル-4-シクロペンタデセノン、3-メチル-5-シクロペンタデセノン、3-メチルシクロペンタデカノン、4-(1-エトキシビニル)-3,3,5,5-テトラメチルシクロヘキサノン、4-tert-ペンチルシクロヘキサノン、5-シクロヘキサデセン-1-オン、6,7-ジヒドロ-1,1,2,3,3-ペンタメチル-4(5H)-インダノン、8-シクロヘキサデセン-1-オン、7-シクロヘキサデセン-1-オン、(7/8)-シクロヘキサデセン-1-オン、9-シクロヘプタデセン-1-オン、シクロペンタデカノン、シクロヘキサデカノン;
【0152】
脂環式アルデヒド、例えば2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルバルデヒド、2-メチル-4-(2,2,6-トリメチルシクロヘキセン-1-イル)-2-ブテナール、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド、4-(4-メチル-3-ペンテン-1-イル)-3-シクロヘキセンカルバルデヒド;
【0153】
脂環式ケトン、例えば1-(3,3-ジメチルシクロヘキシル)-4-ペンテン-1-オン、2,2-ジメチル-1-(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-プロパノン、1-(5,5-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-4-ペンテン-1-オン、2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2-ナフタレニルメチルケトン、メチル2,6,10-トリメチル-2,5,9-シクロドデカトリエニルケトン、tert-ブチル(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)ケトン;
【0154】
環式アルコールのエステル、例えば酢酸2-tert-ブチルシクロヘキシル、酢酸4-tert-ブチルシクロヘキシル、酢酸2-tert-ペンチルシクロヘキシル、酢酸4-tert-ペンチルシクロヘキシル、酢酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル、酢酸デカヒドロ-2-ナフチル、クロトン酸2-シクロペンチルシクロペンチル、酢酸3-ペンチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル、酢酸デカヒドロ-2,5,5,8a-テトラメチル-2-ナフチル、酢酸4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5又は6-インデニル、プロピオン酸4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5又は6-インデニル、イソ酪酸4,7-メタノ-3a,4,5,6,7,7a-ヘキサヒドロ-5又は6-インデニル、酢酸4,7-メタノオクタヒドロ-5又は6-インデニル;
【0155】
脂環式アルコールのエステル、例えばクロトン酸1-シクロヘキシルエチル;
【0156】
脂環式カルボン酸のエステル、例えば3-シクロヘキシルプロピオン酸アリル、シクロヘキシルオキシ酢酸アリル、ジヒドロジャスモン酸cis-及びtrans-メチル、ジャスモン酸cis-及びtrans-メチル、2-ヘキシル-3-オキソシクロペンタンカルボン酸メチル、2-エチル-6,6-ジメチル-2-シクロヘキセンカルボン酸エチル、2,3,6,6-テトラメチル-2-シクロヘキセンカルボン酸エチル、2-メチル-1,3-ジオキソラン-2-酢酸エチル;
【0157】
芳香脂肪族アルコール、例えばベンジルアルコール、1-フェニルエチルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、3-フェニルプロパノール、2-フェニルプロパノール、2-フェノキシエタノール、2,2-ジメチル-3-フェニルプロパノール、2,2-ジメチル-3-(3-メチルフェニル)プロパノール、1,1-ジメチル-2-フェニルエチルアルコール、1,1-ジメチル-3-フェニルプロパノール、1-エチル-1-メチル-3-フェニルプロパノール、2-メチル-5-フェニルペンタノール、3-メチル-5-フェニルペンタノール、3-フェニル-2-プロペン-1-オール、4-メトキシベンジルアルコール、1-(4-イソプロピルフェニル)エタノール;
【0158】
芳香脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸のエステル、例えば酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、イソ酪酸ベンジル、イソ吉草酸ベンジル、酢酸2-フェニルエチル、プロピオン酸2-フェニルエチル、イソ酪酸2-フェニルエチル、イソ吉草酸2-フェニルエチル、酢酸1-フェニルエチル、酢酸アルファ-トリクロロメチルベンジル、酢酸アルファ,アルファ-ジメチルフェニルエチル、酪酸アルファ,アルファ-ジメチルフェニルエチル、酢酸シンナミル、イソ酪酸2-フェノキシエチル、酢酸4-メトキシベンジル;
【0159】
芳香脂肪族エーテル、例えば2-フェニルエチルメチルエーテル、2-フェニルエチルイソアミルエーテル、2-フェニルエチル1-エトキシエチルエーテル、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドジエチルアセタール、ヒドラトロパアルデヒドジメチルアセタール、フェニルアセトアルデヒドグリセロールアセタール、2,4,6-トリメチル-4-フェニル-1,3-ジオキサン、4,4a,5,9b-テトラヒドロインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン、4,4a,5,9b-テトラヒドロ-2,4-ジメチルインデノ[1,2-d]-m-ジオキシン;
【0160】
芳香族及び芳香脂肪族アルデヒド、例えばベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、3-フェニルプロパナール、ヒドラトロパアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、4-メチルフェニルアセトアルデヒド、3-(4-エチルフェニル)-2,2-ジメチルプロパナール、2-メチル-3-(4-イソプロピルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-イソブチルフェニル)プロパナール、3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール、シンナムアルデヒド、アルファ-ブチルシンナムアルデヒド、アルファ-アミルシンナムアルデヒド、アルファ-ヘキシルシンナムアルデヒド、3-メチル-5-フェニルペンタナール、4-メトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、4-ヒドロキシ-3-エトキシベンズアルデヒド、3,4-メチレンジオキシベンズアルデヒド、3,4-ジメトキシベンズアルデヒド、2-メチル-3-(4-メトキシフェニル)プロパナール、2-メチル-3-(4-メチレンジオキシフェニル)プロパナール;
【0161】
芳香族及び芳香脂肪族ケトン、例えばアセトフェノン、4-メチルアセトフェノン、4-メトキシアセトフェノン、4-tert-ブチル-2,6-ジメチルアセトフェノン、4-フェニル-2-ブタノン、4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン、1-(2-ナフタレニル)エタノン、2-ベンゾフラニルエタノン、(3-メチル-2-ベンゾフラニル)エタノン、ベンゾフェノン、1,1,2,3,3,6-ヘキサメチル-5-インダニルメチルケトン、6-tert-ブチル-1,1-ジメチル-4-インダニルメチルケトン、1-[2,3-ジヒドロ-1,1,2,6-テトラメチル-3-(1-メチルエチル)-1H-5-インデニル]エタノン、5',6',7',8'-テトラヒドロ-3',5',5',6',8',8'-ヘキサメチル-2-アセトナフトン;
【0162】
芳香族及び芳香脂肪族カルボン酸並びにそれらのエステル、例えば安息香酸、フェニル酢酸、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ヘキシル、安息香酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、フェニル酢酸エチル、フェニル酢酸ゲラニル、フェニル酢酸フェニルエチル、ケイ皮酸メチル、ケイ皮酸エチル、ケイ皮酸ベンジル、ケイ皮酸フェニルエチル、ケイ皮酸シンナミル、フェノキシ酢酸アリル、サリチル酸メチル、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ヘキシル、サリチル酸シクロヘキシル、サリチル酸cis-3-ヘキセニル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸フェニルエチル、2,4-ジヒドロキシ-3,6-ジメチル安息香酸メチル、3-フェニルグリシド酸エチル、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル;
【0163】
窒素含有芳香族化合物、例えば2,4,6-トリニトロ-1,3-ジメチル-5-tert-ブチルベンゼン、3,5-ジニトロ-2,6-ジメチル-4-tert-ブチルアセトフェノン、シンナモニトリル、3-メチル-5-フェニル-2-ペンテノニトリル、3-メチル-5-フェニルペンタノニトリル、アントラニル酸メチル、N-メチルアントラニル酸メチル、アントラニル酸メチルと7-ヒドロキシ-3,7-ジメチルオクタナール、2-メチル-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパナール又は2,4-ジメチル-3-シクロヘキセンカルバルデヒドとのシッフ塩基、6-イソプロピルキノリン、6-イソブチルキノリン、6-sec-ブチルキノリン、2-(3-フェニルプロピル)ピリジン、インドール、スカトール、2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン、2-イソブチル-3-メトキシピラジン;
【0164】
フェノール、フェニルエーテル及びフェニルエステル、例えばエストラゴール、アネトール、オイゲノール、オイゲニルメチルエーテル、イソオイゲノール、イソオイゲニルメチルエーテル、チモール、カルバクロール、ジフェニルエーテル、ベータ-ナフチルメチルエーテル、ベータ-ナフチルエチルエーテル、ベータ-ナフチルイソブチルエーテル、1,4-ジメトキシベンゼン、酢酸オイゲニル、2-メトキシ-4-メチルフェノール、2-エトキシ-5-(1-プロペニル)フェノール、フェニル酢酸p-クレシル;
【0165】
ヘテロ環化合物、例えば2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-2H-フラン-3-オン、2-エチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-2H-フラン-3-オン、3-ヒドロキシ-2-メチル-4H-ピラン-4-オン、2-エチル-3-ヒドロキシ-4H-ピラン-4-オン;
【0166】
ローズピラン、例えばテトラヒドロ-4-メチル-2-フェニル-2H-ピラン、3,6-ジヒドロ-4-メチル-2-フェニル-2H-ピラン;
【0167】
ラクトン、例えば1,4-オクタノリド、3-メチル-1,4-オクタノリド、1,4-ノナノリド、1,4-デカノリド、8-デセン-1,4-オリド、1,4-ウンデカノリド、1,4-ドデカノリド、1,5-デカノリド、1,5-ドデカノリド、4-メチル-1,4-デカノリド、1,15-ペンタデカノリド、cis-及びtrans-11-ペンタデセン-1,15-オリド、cis-及びtrans-12-ペンタデセン-1,15-オリド、1,16-ヘキサデカノリド、9-ヘキサデセン-1,16-オリド、10-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、11-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、12-オキサ-1,16-ヘキサデカノリド、1,12-ドデカン二酸エチレン、1,13-トリデカン二酸エチレン、クマリン、2,3-ジヒドロクマリン、オクタヒドロクマリン。
【0168】
ネロール化合物Aのほかに、本発明のフレグランス又は芳香物質組成物に場合により含まれてもよい別の芳香化学物質は、好ましくはフローラル及び/又はハーバルなローズの香りを有する公知の範囲の物質、例えば特に天然ローズ油、ローズオキシド、ジヒドロローズオキシド、式III~Vのネロール異性体、ゲラニオール、ジフェニルエーテル、ローズピラン、例えばテトラヒドロ-4-メチル-2-フェニル-2H-ピラン及び3,6-ジヒドロ-4-メチル-2-フェニル-2H-ピラン、3-メチル-5-フェニル-ペンタノール、アルファ-ダマスコン、アルファ-ダマセノン、ベータ-ダマスコン、ベータ-ダマセノン、デルタ-ダマスコン、デルタ-ダマセノン、ガンマ-ダマスコン、ガンマ-ダマセノン並びにシトロネロールから選択される。
【0169】
成分b)が本発明のフレグランス又は芳香物質組成物中に存在するとしても、成分a)と成分b)の重量比は、好ましくは100:1~1:100、より好ましくは50:1~1:50、特に25:1~1:25の範囲である。
【0170】
フレグランス又は芳香物質組成物は、少なくとも1つの成分c)の希釈剤を場合により含むことができる。適当な希釈剤は、個別に又は2つ以上の希釈剤の混合物として使用することができる。適当な希釈剤は、フレグランス又はフレーバー用の溶媒として慣例的に使用されるものである。
【0171】
好ましくは、フレグランス又は芳香物質組成物は、成分c)の希釈剤(複数可)として、20℃及び1013mbarにおいて液体である化合物を少なくとも1つ含む。
【0172】
成分a)のネロール化合物Aは、存在する場合、成分c)に対する溶解度が、20℃において少なくとも0.1mg/mlであることも好ましく、20℃において少なくとも0.5mg/mlであることが特に好ましい。さらに、存在する場合、成分b)の化合物の1つ以上は、成分c)に対する溶解度が、好ましくは20℃において少なくとも0.1mg/ml、特に20℃において少なくとも0.5mg/mlである。
【0173】
成分c)の希釈剤(複数可)は、好ましくは脂肪族及び脂環式のモノアルコール、ポリオール、鎖式脂肪族エーテル、環状エーテル、ポリオールモノ-及びポリエーテル、それらのエステル及び混合物から選択される。
【0174】
適当な脂肪族及び脂環式モノアルコールは、例えばエタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール及びシクロヘキサノールである。
【0175】
適当なポリオールは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール又はグリセロールである。
【0176】
適当な鎖式脂肪族エーテル及び環状エーテルは、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン又はモルホリンである。
【0177】
適当なポリオールモノ-及びポリエーテルは、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル又はジエチレングリコールモノエチルエーテルである。
【0178】
適当なエステルは、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酪酸エチル、乳酸エチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、クエン酸トリエチル、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ジエチル、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のジアルキルエステル、具体的には1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(Hexamoll(登録商標) DINCH、BASF SE)などである。
【0179】
本発明は、生成物のにおい若しくはフレーバーを付与し、かつ/又はフレッシュ、シトラス、パウダリー及びスムース調のローズフローラルノートで強化する方法であって、生成物を、官能上有効な量の本発明の方法によって得られうるネロール化合物Aと接触させる方法も提供する。
【0180】
本方法に従って、生成物とネロール化合物Aの接触は、そのような目的のために当技術分野において周知である手順を使用して、ネロール化合物Aを生成物に組み込むこと又はそれを生成物に適用することによって達成される。この文脈では、ネロール化合物Aは、そのままの形態(neat form)でも、本発明のフレグランス又は芳香物質組成物の形態でも使用することができる。
【0181】
本発明の文脈において、官能上有効な量は、所期の適用時に、香りの印象を使用者又は消費者にもたらすのに十分な量を意味すると理解されるものとする。本発明の方法によって得られうるネロール化合物Aを使用するとき、これは、具体的にはローズフローラルノートを伴う心地良いシトラス調のにおいの印象である。
【0182】
本発明は、賦香又は芳香付けされた生成物であって、官能上有効な量の本発明の方法によって得られうるネロール化合物Aを含む、又は官能上有効な量の本明細書の以上に定義した本発明のフレグランス若しくは芳香物質組成物を含む生成物をさらに提供する。前記賦香又は芳香付けされた生成物は、好ましくは生成物のにおい又はフレーバーを付与及び/又は強化する上記の方法によって得られる。
【0183】
上記の本発明の方法によって、原則として任意の所望の生成物を賦香又は芳香付けすることができる。この点で、賦香又は芳香付けされた生成物及び賦香又は芳香付けする対象の生成物は、好ましくは香りのディスペンサー及びフレグランス香料、洗浄剤及び清浄剤、化粧料組成物、ボディケア組成物、衛生物品、口腔及び歯科衛生用の製品、医薬組成物並びに作物保護組成物から選択される。これらの生成物群の例を以下に示す。
【0184】
香りのディスペンサーの例は、例えば固体担体に吸着されることがある液体又はゲル様の形の空気清浄剤である。
【0185】
フレグランス香料の例は、例えば香料抽出物、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロン、オードソリッド、エクストレイトパルファム、エアロゾル噴霧剤、香り付けされた清浄剤及び油である。
【0186】
洗浄剤の例は、例えば液体洗浄剤、粉末洗浄剤、洗濯前処理剤、例えば漂白剤、浸漬剤及びしみ抜き剤、布地用柔軟剤、洗濯石けん並びに洗濯錠剤である。
【0187】
清浄剤の例は、例えば賦香された酸性、アルカリ性及び中性の清浄剤、例えば床用清浄剤、窓用清浄剤、皿洗い用洗浄剤、浴室及びサニタリー用清浄剤、スカーリングミルク、固体及び液体のトイレ用清浄剤、粉末及びフォームのじゅうたん用清浄剤、ワックス及び光沢剤、例えば家具用光沢剤、床用ワックス、靴用クリーム剤、消毒剤、表面消毒剤及びサニタリー用清浄剤、ブレーキ用清浄剤、パイプ用清浄剤、水あか除去剤、グリル及びオーブン用清浄剤、藻及びコケ除去剤、カビ除去剤並びにファサード清浄剤である。
【0188】
化粧料組成物の例は、例えば水中油型、油中水型及び水中油中水型の化粧用乳液、例えばスキンクリーム及びローション、顔用クリーム及びローション、日焼け止めクリーム及びローション、アフターサンクリーム及びローション、手用クリーム及びローション、足用クリーム及びローション、脱毛クリーム及びローション、ひげそり後用クリーム及びローション、日焼け用クリーム及びローション、さらには美粧化粧品、例えばアイシャドー、マニキュア液、メーキャップ、口紅及びマスカラである。
【0189】
ボディケア組成物の例は、例えばひげそり後用品、ひげそり前用生成物、スプラッシュコロン、固体及び液体石けん、シャワー用ゲル、シャンプー、ひげそり用石けん、ひげそり用フォーム、入浴剤オイル、ヘアケア生成物、例えばヘアスプレー、ヘア用ゲル、ヘア用セッティングローション、ヘアコンディショナー、ヘアシャンプー、ヘア用永久及び半永久着色剤、ヘア整形用組成物、例えばコールドパーマ及びヘア用スムージング組成物、ヘアトニック、ヘアクリーム及びヘアローション、消臭剤及び制汗剤、例えばわきの下用噴霧剤、回転塗布剤、消臭剤スティック及び消臭剤クリームである。
【0190】
衛生物品の例は、例えばロウソク、ランプ油、線香、殺虫剤、忌避剤、噴射剤、サビ除去剤、賦香されたフレッシュニングワイプ、わきの下用パッド、乳児用おむつ、生理用ナプキン、トイレットペーパー、化粧用ワイプ、ポケットティッシュ及び食洗機用消臭剤である。
【0191】
口腔及び歯科衛生用の製品の例は、例えば歯磨きペースト及びデンタルフロスである。
【0192】
医薬組成物の例は、ヒト又は動物を処置するのに有用な任意の組成物であり、一方で作物保護組成物の例は、作物を特に雑草、昆虫及び/又は菌から保護するのに有用な任意の組成物である。
【0193】
下記の実施例は、本発明を例示するのに役立つものであって、決して本発明を限定するものではない。
【実施例
【0194】
担持触媒の製造
[実施例1]
触媒Aの製造(EP1317959、実施例1Dと類似している)
110gの活性炭Norit SX Plus(登録商標)をさらに前処理することなく、2Lの水が入っているフラスコに撹拌下で導入し、懸濁し、80℃まで加熱還流した。次いで、NaOH水溶液(1mol/l)を添加することによって、pHを9まで上げた。1時間以内に、300mLのニトロシル硝酸ルテニウムと硝酸鉄の溶液(5.85gのRu及び1.17gのFeに対応する濃度)を80℃で滴下して加えるが、NaOH水溶液を同時に添加することによって、pHを約9に維持する。撹拌を80℃で1時間続け、次いで混合物を冷却した。冷懸濁液をろ過し、40Lの水で洗浄し、次いで真空乾燥キャビネット中、80℃で16時間乾燥した。次いで、乾燥した粉末を、回転式球体オーブン中、水素70%及び窒素30%からなる気流で500℃において3時間還元した。還元が終わってから、窒素中で冷却し、触媒を窒素中酸素1%の混合気体で不動態化した。触媒は、Ru含有量が5.0重量%、Fe含有量が1.0重量%、Na含有量が0.036重量%であった。
【0195】
[実施例2]
触媒Bの製造
(未公開特許出願EP1588361.8、実施例1Dと類似している)
110gの活性炭Norit SX Plus(登録商標)をさらに前処理することなく、2Lの水が入っているフラスコに撹拌下で導入し、懸濁し、80℃まで加熱還流した。次いで、NaOH水溶液(1mol/l)を添加することによって、pHを9まで上げた。1時間以内に、300mLのニトロシル硝酸ルテニウムと硝酸鉄の溶液(5.85gのRu及び1.17gのFeに対応する濃度)を80℃で滴下して加えるが、NaOH水溶液を同時に添加することによって、pHを約9に維持する。撹拌を80℃で1時間続け、次いで混合物を冷却した。冷懸濁液をろ過し、40Lの水で洗浄し、次いで真空乾燥キャビネット中、80℃で16時間乾燥した。次いで、乾燥した粉末を、回転式球体オーブン中、水素70%及び窒素30%からなる気流で200℃において3時間還元した。還元が終わってから、窒素中で冷却し、触媒を窒素中酸素1%の混合気体で不動態化した。触媒は、Ru含有量が5.0重量%、Fe含有量が1.0重量%、Na含有量が0.036重量%であった。
【0196】
実施例1及び2で製造した触媒A及びBを、連続して少なくとも2回水素化で使用してから再生された形でのみ以下の水素化反応において使用した(比較例3を除く)。
【0197】
シトラールの水素化
GC分析は、Restekの長さ60m、内径0.32mm及び膜厚1.0μmのStabilwaxカラムを使用して、インジェクター温度260℃、検出器温度300℃のFID検出器、及びオーブンプログラム:開始温度125℃、ランプ5℃/分で160℃まで上昇、30分等温、ランプ10℃/分で235℃まで上昇、20分等温で行った。
【0198】
[実施例3]
再生触媒B(2.4g)が入っている内部容積300mLのオートクレーブに、98.4%のネラール及び0.2%のゲラニアール(GCで測定した面積%)を含むシトラール(120g)、並びにトリメチルアミン(150mg)のメタノール(29.9g)溶液を別々に直に連続して添加した。その後直ちに、水素を圧力50バールに到達するまでオートクレーブに導入し、次いで水素流速を最初に1時間当たり16標準リットル(sl/時)に設定した。同時に、撹拌機のスイッチを入れ、内部温度を70℃に調整した。過剰の水素を、排気弁を経由して連続的に放出した。1時間後に、水素流速を6sl/時まで下げ、さらに6時間たった後、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の組成(GCで測定した面積%)を有した:ネラール:0.2%、ゲラニアール:0.1%、シトロネロール:2.2%、ネロール異性体:2.3%、ネロール:85.5%、ゲラニオール:8.5%。先に本明細書に定義した水素化後のネロール含有量は85.5%であった。先に本明細書に定義した精留によって達成し得るネロール純度は95.0%であった。
【0199】
[実施例4]
水素化を3回、以下の手順に従ってそれぞれ60℃、70℃及び80℃の温度で実施した。
【0200】
再生触媒B(2.4g)が入っている内部容積300mLのオートクレーブに、水素を圧力50バールに到達するまで導入した。次いで、水素流速を最初に16sl/時に設定した。同時に、撹拌機のスイッチを入れ、ヒーターを所期の温度に設定した。それぞれ所望の温度に到達したら、99.2%のネラール及び0.1%のゲラニアールを含むシトラール(120g)、並びにトリメチルアミン(150mg)のメタノール(29.9g)溶液を別々に直に連続して、オートクレーブに添加した。過剰の水素を、排気弁を経由して連続的に放出した。1時間後に、水素流速を6sl/時まで下げ、さらに6時間たった後、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。いずれの場合にも、揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の表1に列挙する組成(GCで測定した面積%)を有した。
【0201】
【表1】
【0202】
[実施例5]
同じ触媒を、本発明によらず3回使用し、次いですべて本発明によって続けて29回の水素化で使用した、一連の試験を実施した。
【0203】
最初の3回の水素化を(本発明によらず)以下の通り実施した。
触媒B(2.4g)が入っている内部容積300mLのオートクレーブに、48.0%のネラール及び48.4%のゲラニアールを含むシトラール(120g)、並びにトリメチルアミン(5g)のメタノール(25g)溶液を別々に直に連続して添加した。その後直ちに、水素を圧力50バールに到達するまでオートクレーブに導入し、次いで水素流速を最初に16sl/時に設定した。同時に、撹拌機のスイッチを入れ、約45分後に所望の内部温度70℃に到達するようにヒーターを設定した。1時間後に、水素流速を6sl/時まで下げた。過剰の水素を、排気弁を経由して連続的に放出した。次いで、全反応時間の4~5時間後に、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の表2、実行1、2、及び3に列挙する組成(GCで測定した面積%)を有した。
【0204】
その後の本発明による水素化を、以下の通り実施した。
再生触媒B(2.4g)が入っている内部容積300mLのオートクレーブに、99.1%のネラール及び0.2%のゲラニアールを含むシトラール(120g)を添加した。トリメチルアミン(150mg)のメタノール(29.9g)溶液を別々に直に連続して、オートクレーブに添加した。その後直ちに、水素を圧力50バールに到達するまでオートクレーブに導入し、次いで水素流速を最初に16sl/時に設定した。同時に、撹拌機のスイッチを入れ、約45分後に所望の内部温度70℃に到達するようにヒーターを設定した。1~3時間後、水素流速を6sl/時まで下げた(実行12、13及び14においては、後に水素流速を3sl/時まで下げた)。過剰の水素を、排気弁を経由して連続的に放出した。次いで、全反応時間の7時間後に、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。4回、5回、6回、15回、20回、及び30回の実行において、揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の表2に列挙する組成(GCで測定した面積%)を有した。
【0205】
【表2】
【0206】
表2から、ネラールの一貫したほぼ完全な消費と精留によって達成し得る一貫した優れたネロール純度との両方から明らかであるように、触媒の活性は、30回の水素化実行のすべてを通して実際には変わらないままであり、その特異性はわずかに変化したのみであったことがわかる。
【0207】
[実施例6]
内部容積300mLのオートクレーブに、再生触媒A(2.3g)を投入し、その後オートクレーブに水素を圧力50バールに到達するまで導入した。次いで、水素流速を16sl/時に設定した。同時に、撹拌機のスイッチを入れ、内部温度を70℃に調整した。引き続いて、99.2%のネラール及び0.1%のゲラニアールを含むシトラール(30g)の最初の一部分、並びにトリメチルアミン(180mg)のメタノール(29.8g)溶液を別々に直に連続して、オートクレーブに添加した。シトラールの追加の一部分(3回×30g)を、それぞれ反応時間の1.5時間、3時間及び4.5時間後にオートクレーブに導入した。過剰の水素を、排気弁を経由して連続的に放出した。全反応時間の7時間後に、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の組成(GCで測定した面積%)を有した:ネラール:0.6%、ゲラニアール:0.0%、シトロネロール:2.8%、ネロール異性体:1.6%、ネロール:90.0%、ゲラニオール:3.9%。先に本明細書に定義した水素化後のネロール含有量は90.0%であった。先に本明細書に定義した精留によって達成し得るネロール純度は95.3%であった。
【0208】
引き続いて、回転バンド蒸留塔を蒸留器温度117~118℃、頭部真空度20mbar及び還流と留出の比5:1で使用して、未精製生成物を精留した。ネロール画分を頭部温度115℃で回収した。
【0209】
ネロール画分の調香師による嗅覚評価は、ネロールの香りが、温和な(warm)ゲラニオール効果を伴い優良であることを明らかにした。
【0210】
[実施例7]
内部容積300mLのオートクレーブに、再生触媒A(2.3g)を投入し、その後オートクレーブに水素を圧力50バールに到達するまで導入した。次いで、水素流速を16sl/時に設定した。同時に、撹拌機のスイッチを入れ、内部温度を70℃に調整した。引き続いて、99.2%のネラール及び0.1%のゲラニアールを含むシトラール(30g)の最初の一部分、並びにトリメチルアミン(180mg)のメタノール(29.8g)溶液を別々に直に連続して、オートクレーブに添加した。シトラールの追加の一部分(3回×30g)を、それぞれ反応時間の1.5時間、3時間及び4.5時間後にオートクレーブに導入した。過剰の水素を、排気弁を経由して連続的に放出した。全反応時間の6.5時間後に、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の組成(GCで測定した面積%)を有した:ネラール:2.9%、ゲラニアール:0.0%、シトロネロール:2.4%、ネロール異性体:1.3%、ネロール 87.9%、ゲラニオール:4.4%。先に本明細書に定義した水素化後のネロール含有量は87.9%であった。先に本明細書に定義した精留によって達成し得るネロール純度は95.9%であった。
【0211】
引き続いて、回転バンド蒸留塔を蒸留器温度121℃、頭部真空度20mbar及び還流と留出の比10:1で使用して、未精製生成物を精留した。ネロール画分を頭部温度114℃で回収した。
【0212】
ネロール画分の調香師による嗅覚評価は、ネロールの香りが、丸みがあり、ローズ調であり、非常に長く持続し、優良であることを明らかにした。
【0213】
[実施例8]
水素化を3回、以下の手順に従ってそれぞれ1.77、0.59及び0.24重量%の量のトリメチルアミンを使用して実施した。
【0214】
触媒A(2.3g)が入っている内部容積300mLのオートクレーブに、水素を圧力50バールに到達するまで導入した。水素流速を最初に16sl/時に設定した。同時に、撹拌機のスイッチを入れ、ヒーターを70℃に設定した。内部温度が70℃に到達したら、99.2%のネラール及び0.1%のゲラニアールを含むシトラール(120g)、並びにトリメチルアミン(2.7、0.9又は0.36g)のメタノール溶液(30g)を別々に直に連続して、オートクレーブに添加した。1.5時間後、又は0.36gのトリメチルアミンを使用した場合には2.5時間後に、水素流速を6sl/時に下げた。過剰の水素を、排気弁を経由して放出した。全反応時間の7時間後に、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。いずれの場合にも、揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の表3に列挙する組成(GCで測定した面積%)を有した。
【0215】
【表3】
【0216】
表3から、トリメチルアミンの量の低減によって、所望のネロールの収率が顕著に高くなり、望ましくないゲラニオールの収率が下がり、ネロールの収率は、ゲラニアールの収率が低下したのとほぼ同じ程度に上昇したことが明らかである。したがって、特に、液体反応混合物の全量に対して1重量%を超える量のトリメチルアミンによって、共役二重結合のE/Z-異性化が大いに高まるため、望ましくない副生成物ゲラニアールの比率が実質的に高くなる。
【0217】
比較例1
触媒A(2.3g)が入っている内部容積300mLのオートクレーブに、水素を圧力50バールに到達するまで導入した。水素流速を最初に16sl/時に設定した。同時に、撹拌機のスイッチを入れ、ヒーターを70℃に設定した。内部温度が70℃に到達したら、99.2%のネラール及び0.1%のゲラニアールを含むシトラール(120g)、並びにトリメチルアミン(1.8g)のメタノール(28.2g)溶液を別々に直に連続して、オートクレーブに添加した。1.5時間後に、水素流速を6sl/時まで下げた。過剰の水素を、排気弁を経由して連続的に放出した。さらに3.5時間後に、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の組成(GCで測定した面積%)を有した:ネラール:0.0%、ゲラニアール:0.0%、シトロネロール:2.9%、ネロール異性体:2.0%、ネロール:73.4%、ゲラニオール:20.9%。先に本明細書に定義した水素化後のネロール含有量は73.4%であった。先に本明細書に定義した精留によって達成し得るネロール純度は93.7%であった。
【0218】
比較例2
再生触媒A(2.3g)が入っている内部容積300mLのオートクレーブに、99.2%のネラール及び0.1%のゲラニアールを含むシトラール(120g)、並びにトリメチルアミン(5.4g)のメタノール(24.6g)溶液を別々に直に連続して投入した。その後直ちに、水素を圧力50バールに到達するまでオートクレーブに導入し、次いで水素流速を最初に16sl/時に設定した。同時に、撹拌機のスイッチを入れ、内部温度を70℃に調整した。1.5時間後に、水素流速を6sl/時まで下げた。過剰の水素を、排気弁を経由して連続的に放出した。次いで、全反応時間の6時間後に、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の組成(GCで測定した面積%)を有した:ネラール:0.0%、ゲラニアール:0.0%、シトロネロール:3.1%、ネロール異性体:1.9%、ネロール:62.9%、ゲラニオール:31.5%。先に本明細書に定義した水素化後のネロール含有量は62.9%であった。先に本明細書に定義した精留によって達成し得るネロール純度は92.8%であった。
【0219】
比較例1及び2からわかるように、本発明によって必要とされた量より高い量のトリメチルアミンを使用すると、水素化反応の特異性が顕著に低下し、したがって、ネロールの収率が許容できないほど低くなる。また、精留によって達成し得るネロール純度はあまりよくなかった。
【0220】
比較例3
触媒A(2.3g)が入っている内部容積300mLのオートクレーブに、水素を圧力50バールに到達するまで導入した。水素流速を最初に16sl/時に設定した。同時に、撹拌機のスイッチを入れ、ヒーターを100℃に設定した。内部温度が100℃に到達したら、99.2%のネラール及び0.1%のゲラニアールを含むシトラール(109g、70.0体積%)、並びにトリメチルアミン(3.3g、3.0体積%)のメタノール(37.3g、27.0体積%)溶液を別々に直に連続して、オートクレーブに添加した。過剰の水素を、排気弁を経由して放出した。全反応時間の1.2時間後に、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の組成(GCで測定した面積%)を有した:ネラール 0.3%、ゲラニアール:0.1%、シトロネロール:3.3%、ネロール異性体:3.1%、ネロール:54.4%、ゲラニオール:37.2%。本明細書の以上に定義した精留によって達成し得るネロール純度は89.5%であった。
【0221】
比較例3は、3体積%の量のトリメチルアミンを使用する、シトラールの不連続水素化が記載されているEP1317959の実施例に相当する。上記に記載のデータからわかるように、トリメチルアミン含有量が高いと、ゲラニオールの異性化が大いに高まるため、ネロールの収率が非常に低くなる。
【0222】
比較例4
同じ触媒を続けて7回の水素化で使用した、一連の試験を実施した。
【0223】
最初の6回の水素化を以下の通り実施した。
内部容積300mLのオートクレーブに、新鮮な触媒B(2.4g)を投入し、次いで水素を圧力50バールに到達するまで導入した。水素流速を最初に16sl/時に設定した。同時に、撹拌機及びヒーターのスイッチを入れた。内部温度が70℃に到達したら、98.6%のネラール及び0.6%のゲラニアールを含むシトラール(120g)、並びにメタノール(30g)を別々に直に連続して、オートクレーブに添加した。過剰の水素を、排気弁を経由して連続的に放出した。1時間後に、水素流速を6sl/時まで下げ、さらに6時間たった後、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。水素化の各実行において、揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の表4に列挙する組成(GCで測定した面積%)を有した。
【0224】
7回目の水素化は本発明によるものであり、以下の通り実施した。
再生触媒B(2.4g)が入っている内部容積300mLのオートクレーブに、水素を圧力50バールに到達するまで導入した。水素流速を最初に16sl/時に設定した。同時に、撹拌機及びヒーターのスイッチを入れた。内部温度が70℃に到達したら、98.6%のネラール及び0.6%のゲラニアールを含むシトラール(120g)、並びにトリメチルアミン(180mg)のメタノール(29.8g)溶液を別々に直に連続して、オートクレーブに添加した。過剰の水素を、排気弁を経由して連続的に放出した。1時間後に、水素流速を6sl/時まで下げ、さらに6時間たった後、反応混合物をオートクレーブから取り出し、フリットでろ過することによって、水素化を終結させた。揮発性成分、例えばメタノール及びトリメチルアミンを蒸発により除去した後に得られた未精製生成物は、以下の表4に列挙する組成(GCで測定した面積%)を有した。
【0225】
【表4】
【0226】
表4から、第三級アミンが欠落していると、4回目の水素化実行後にネラールの消費率が明瞭に低下するので、触媒の活性が急激に低下したことがわかる。本発明の方法に従って少量のトリメチルアミンを添加すると、触媒の活性が回復したこともわかる。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
式(I)の不飽和アルコール
【化8】
[式中、
R 1 及びR 2 はそれぞれ互いに独立して、水素;無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R 4 で置換されているC 1 ~C 20 -アルキル;1、2、3、4又は5つの二重結合を含み、無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R 5 で置換されているC 2 ~C 20 -アルケニル;無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R 6 で置換されているアリール;並びに互いに独立して、N、NR a 、O及びSから選択される1、2又は3個のヘテロ原子を環員として含む3、4、5、6又は7員の飽和、部分不飽和又は芳香族のヘテロ環式環であって、無置換である又は同一の若しくは異なる1~5つの基R 6 で置換されているヘテロ環式環から選択されるが、ただし、R 1 及びR 2 は互いに異なることを条件とし、
R 3 は、水素及びC 1 ~C 4 -アルキルから選択され、
R 4 は、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C 3 ~C 7 -シクロアルキル、C 1 ~C 4 -アルコキシ、C 1 ~C 4 -アルコキシカルボニル、C 1 ~C 4 -アルキルカルボニルオキシ、-NR 7a R 7b 、及び無置換であってもよい又は同一の若しくは異なる1~5つの基R 6 で置換されていてもよいアリールから選択され、
R 5 は、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C 1 ~C 4 -アルキル、C 3 ~C 7 -シクロアルキル、C 1 ~C 4 -アルコキシ、C 1 ~C 4 -アルコキシカルボニル、C 1 ~C 4 -アルキルカルボニルオキシ、-NR 7a R 7b 、及び無置換であってもよい又は同一の若しくは異なる1~5つの基R 6 で置換されていてもよいアリールから選択され、
R 6 は、シアノ、ニトロ、ハロゲン、C 1 ~C 4 -アルキル、C 3 ~C 7 -シクロアルキル、C 1 ~C 4 -アルコキシ及び-NR 7a R 7b から選択され、
R 7a 及びR 7b はそれぞれ互いに独立して、水素、C 1 ~C 6 -アルキル、C 3 ~C 7 -シクロアルキル、C 1 ~C 6 -アルコキシ、C 2 ~C 6 -アルケニル、C(=O)R 8 、C(=O)OR 9 、フェニル及びベンジルから選択され、あるいは
R 7a 及びR 7b は一緒になって、結合している窒素原子と組み合わさって、3、4、5、6、7又は8員の飽和、部分不飽和又は芳香族の環を形成するC 2 ~C 7 -アルキレン鎖を表し、ここで、アルキレン鎖が、互いに独立して、O、S及びNR b から選択される1又は2個のヘテロ原子を含んでいてもよく、アルキレン鎖が、ハロゲン、C 1 ~C 6 -アルキル、C 3 ~C 7 -シクロアルキル及びC 1 ~C 6 -アルコキシから選択される同一の又は異なる1、2、3又は4つの基で場合により置換されていてもよく、
R 8 は、水素、C 1 ~C 6 -アルキル、C 2 ~C 6 -アルケニル、C 3 ~C 7 -シクロアルキルから選択され、ここで、最後に記述された3つの基が、無置換であってもよく、又はヒドロキシル及びC 1 ~C 4 -アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1若しくは2つの基で置換されていてもよく、
R 9 は、C 1 ~C 6 -アルキル、C 2 ~C 6 -アルケニル、C 3 ~C 7 -シクロアルキルから選択され、ここで、最後に記述された3つの基が、無置換であってもよく、又はヒドロキシル及びC 1 ~C 4 -アルコキシから選択される同一の若しくは異なる1若しくは2つの基で置換されていてもよく、
R a は、C 1 ~C 4 -アルキル、C 3 ~C 7 -シクロアルキル及びC 1 ~C 4 -アルコキシから選択され、R b は、水素、C 1 ~C 4 -アルキル、C 3 ~C 7 -シクロアルキル及びC 1 ~C 4 -アルコキシから選択される]
の製造方法であって、少なくとも75重量%の式(II)の不飽和アルデヒド
【化9】
[式中、R 1 、R 2 及びR 3 は上記に定義された意味を有する]
を含む抽出物組成物を、触媒及び第三級アミンの存在下における水素化にかけるステップを含み、
第三級アミンが、液体反応混合物の全量に対して0.001~0.7重量%の範囲の量で使用される方法。
(実施形態2)
触媒が不均一系触媒である、実施形態1に記載の方法。
(実施形態3)
不均一系触媒が、不活性な支持体材料に担持させたルテニウムを含む担持触媒である、実施形態2に記載の方法。
(実施形態4)
担持触媒がさらに鉄を含む、実施形態3に記載の方法。
(実施形態5)
第三級アミンが、液体反応混合物の全量に対して0.005~0.5重量%、好ましくは0.01~0.2重量%の範囲の量で使用される、実施形態1から4のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態6)
第三級アミンがトリ(C 1 ~C 20 -アルキル)アミンから選択され、好ましくはトリメチルアミンである、実施形態1から5のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態7)
R 1 及びR 2 の一方が、1つの二重結合を含むC 4 ~C 10 -アルケニルであり、他方がメチルであり、
R 3 が水素である、
実施形態1から6のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態8)
式(I)の不飽和アルコールがゲラニオールであり、式(II)の不飽和アルデヒドがゲラニアールである、実施形態1から7のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態9)
式(I)の不飽和アルコールがネロールであり、式(II)の不飽和アルデヒドがネラールである、実施形態1から7のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態10)
抽出物組成物が、少なくとも90%、好ましくは少なくとも99重量%のネラールを含むシトラールである、実施形態9に記載の方法。
(実施形態11)
得られた未精製生成物の水素化後のネロール含有量が、85重量%より高い、好ましくは90重量%より高く、水素化後のゲラニオール含有量が、9重量%以下、好ましくは6重量%以下である、実施形態10に記載の方法。
(実施形態12)
水素化後に得られた未精製生成物を精留ステップにかけ、90%を超え、好ましくは94%を超え、特に96%を超える純度のネロールを得る、実施形態9から11のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態13)
水素化後に得られた未精製生成物を精留ステップにかけ、副生成物であるシトロネロール及びネロール異性体の全体レベルが10重量%未満、好ましくは6重量%未満、特に2~4重量%であるネロール化合物を得る、実施形態9から12のいずれか一項に記載の方法。
(実施形態14)
実施形態13に記載の方法によって得られうるネロール化合物であって、いずれの場合にもネロール化合物の全重量に対して94~98重量%、好ましくは96~98重量%のネロール、及び2~6重量%、好ましくは2~4重量%の、シトロネロール及びネロール異性体を合わせた副生成物を含むネロール化合物。
(実施形態15)
実施形態14に記載のネロール化合物の芳香化学物質、特ににおい物質としての使用。
(実施形態16)
フレグランス又は芳香物質組成物であって、
a)実施形態14に記載のネロール化合物、
b)場合により、成分a)と異なる少なくとも1つの別の芳香化学物質、及び
c)場合により、少なくとも1つの希釈剤
を含むが、ただし、組成物が、成分b)又はc)の少なくとも1つを含むことを条件とする、フレグランス又は芳香物質組成物。
(実施形態17)
生成物のにおい若しくはフレーバーを付与し、かつ/又はフレッシュ、シトラス、パウダリー及びスムース調のローズフローラルノートで強化する方法であって、生成物を官能上有効な量の実施形態14に記載のネロール化合物と接触させる方法。