(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】紙葉類積層体のほぐし装置及びほぐし方法
(51)【国際特許分類】
B65H 3/48 20060101AFI20220927BHJP
B65H 3/54 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
B65H3/48 320B
B65H3/54 330
(21)【出願番号】P 2019055337
(22)【出願日】2019-03-22
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早川 光治
(72)【発明者】
【氏名】白井 実
(72)【発明者】
【氏名】安田 茂
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-011732(JP,A)
【文献】特開2001-122458(JP,A)
【文献】特開2017-088324(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0021399(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 3/54
B65H 3/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を重ねた積層体を、略垂直方向に重ねた状態で収納する収納部と、
当該収納部に収納された積層体の上下端を挟持する挟持部と、
前記積層体の側面部に沿って略垂直方向に走査することで積層体の端部に接触して気流を供給する接触・気流供給部と、
前記積層体の上端部を押える押圧部と、
を備えた紙葉類積層体のほぐし装置。
【請求項2】
前記紙葉類積層体の上下端を挟持する部位が、前記紙葉類積層体の所定端部側であって、前記接触・気流供給部において走査する積層体側面部が、前記所定端部の紙葉類中心に対して反対側の側面部である請求項1に記載の紙葉類積層体のほぐし装置。
【請求項3】
前記接触・気流供給部が前記紙葉類の積層体の側面部に接触する凸状部を有する請求項1又は2に記載の紙葉類積層体のほぐし装置。
【請求項4】
紙葉類の積層体を略垂直方向に重ねた状態で収納する手段と、
前記積層体の上下端を挟持する手段と、
前記挟持された積層体の側面部に沿って略垂直方向に走査し積層体の端部に接触して気流を供給する手段と、
前記積層体の上部を押える手段と、
を含む、紙葉類積層体のほぐし方法。
【請求項5】
前記紙葉類積層体の上下端を挟持する部位が、前記紙葉類積層体の所定端部側であって、前記接触して気流供給する手段において走査する積層体側面部が、前記所定端部の紙葉類中心に対して反対側の側面部である請求項4に記載の紙葉類積層体のほぐし方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類を多数重ねた積層体についてその重なり状態をほぐし、一枚ごとに使用する場合に有用な紙葉類積層体のほぐし装置及びほぐし方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の紙葉類を積層した積層体から一枚ごとに紙葉類を取り出し所定位置に配置することが必要な場合は様々な物品の工業的生産において必要とされることが多い。
例えば、即席カップ麺の製造においてはコンベア上で搬送されているカップ状容器の上部に蓋部を載置してこれをヒートシールしてカップ状容器の開口部を封鎖する場合が多い。
ここで、当該蓋部(リッド部)は、吸着パッド等によって一枚づつピックアップされてカップ状容器に載置されて利用されるが、このように製造ラインにおいて使用される前に当該蓋部が多数積層された積層体として製造ラインに供給される。
この場合、当該蓋部の積層体のほぐれ状態が悪いと、同時に複数枚を取り出してしまう等の問題が発生する。このような問題を回避するために、蓋部の積層体のほぐし状態を予め確保しておくことは重要なステップとなっている。
このような蓋部を含む紙葉類の積層体をほぐすための装置として、例えば、以下の特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
一方、上記特許文献1に記載の方法においては、対象とする紙葉類が蓋等の場合、重なり状態が強固であるため、処理後においてもほぐれ状態が不十分であることも予想される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者らは、紙葉類を多数重ねた積層体について、その重なり状態をほぐすための新たな装置及び方法を開発することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの鋭意研究の結果、紙葉類積層体を収納するとともに、当該積層体を上下端面において挟持すると共に、当該積層体の側面部に沿って走査して積層体の端部に接触しつつ気流を供給するとともに、必要に応じて、前記積層体の上端部を押える方法が有効であることを見出した。
すなわち、本願第一の発明は、
“紙葉類を重ねた積層体を、略垂直方向に重ねた状態で収納する収納部と、
当該収納部に収納された積層体の上下端を挟持する挟持部と、
前記積層体の側面部に沿って略垂直方向に走査することで積層体の端部に接触しつつ気流を供給する接触・気流供給部と、
前記積層体の上端部を押圧可能な押圧部と、
を備えた紙葉類積層体のほぐし装置。“、である。
【0007】
次に、前記紙葉類積層体の上下端を挟持する部位が、前記紙葉類の中心位置ではなく偏心位置、すなわち、特定の端部に近い側にあることが好ましく、また、この場合、当該端部の紙葉類の中心に対して反対側の側面部において、前記気流供給による走査を行うことが好ましい。
すなわち、本願第二の発明は、
“前記紙葉類積層体の上下端を挟持する部位が、前記紙葉類積層体の所定端部側であって、前記接触・気流供給部において走査する積層体側面部が、前記所定端部の紙葉類中心に対して反対側の側面部である請求項1に記載の紙葉類積層体のほぐし装置。”、である。
【0008】
次に、前記気流供給部が紙葉類の積層体に側面部に接触する凸状部を有することが好ましい。すなわち、本願第三の発明は、
“前記接触・気流供給部が前記紙葉類の積層体の側面部に接触する凸状部を有する請求項1又は2に記載の紙葉類積層体のほぐし装置。”、である。
【0009】
次に、本出願人らは、請求項1に記載の装置において実現するほぐし処理の方法についても意図している。
すなわち、本願第四の発明は、
“紙葉類の積層体を略垂直方向に重ねた状態で収納する手段と、
前記積層体の上下端を挟持する手段と、
前記積層体の上部を押える手段と、
前記挟持された積層体の側面部に沿って略垂直方向に走査し積層体の端部に接触しつつ気流を供給する手段と、
を含む、紙葉類積層体のほぐし方法。
“、である。
【0010】
さらに、本出願人は、請求項2に記載の装置において実現するほぐし処理の方法についても意図している。
すなわち、本願第五の発明は、
“前記紙葉類積層体の上下端を挟持する部位が、前記紙葉類積層体の所定端部側であって、前記接触して気流供給する手段において走査する積層体側面部が、前記所定端部の紙葉類中心に対して反対側の側面部である請求項4に記載の紙葉類積層体のほぐし方法。”、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のほぐし装置を利用することでアルミキャップ(リッド)等の紙葉類を多数重ねた積層体について、その重なり状態を好適にほぐすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一の実施態様のほぐし装置全体の側面及び平面の透視図である。
【
図2】本発明の第一の実施態様の収納部の側面及び平面の透視図である。
【
図3】本発明の第一の実施態様の挟持部の側面の透視図である。
【
図4】本発明の第一の実施態様の接触・気流供給部の側面の透視図である。
【
図5】本発明の第一の実施態様の積層体付近の各構成を示した側面透視図である。
【
図6】本発明の第一の実施態様の押圧部の側面の透視図である。
【
図7】本発明の第一の実施態様のほぐし装置による積層体のほぐし過程を示した第一図である。
【
図8】本発明の第一の実施態様のほぐし装置による積層体のほぐし過程を示した第二図である。
【
図9】本発明の第一の実施態様のほぐし装置による積層体のほぐし過程を示した第三図である。
【
図10】本発明の第一の実施態様のほぐし装置による積層体のほぐし過程を示した第四図である。
【
図11】本発明の第一の実施態様のほぐし装置による積層体のほぐし過程を示した第五図である。
【符号の説明】
【0013】
1 ほぐし装置
3 収納部
5 接触・気流供給部
7 押圧部
9 挟持部
11 収納部の基台
13 収納ユニット
15 座台
17 支柱
19 挟持部の基台
21 ハンドユニット
23 支持ユニット
25 接触・気流供給部の基台
27 固定レール部
29 スライダー
31 接触・気流供給ユニット
33 接触・気流供給ピース
35 凸部
37 気流吹出し口
39 押圧部の枠体
41 押圧ピース
43 押圧部の伸縮ロッド
CS 紙葉類の積層体(リッドの積層体)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の第一の実施態様について説明する。尚、本願発明は以下の実施態様に限定されるものではいことは勿論である。
図1は本発明の紙葉類積層体のほぐし装置の第一実施態様の平面図(
図1(a)及び側面図(
図1(b))である。尚、当該図においては透視図であり、ボルトやナット部も適宜示している。
図1に示すように本願第一の実施態様のほぐし装置1は、積層体の収納部3を中央に有している。その紙面左側に接触・気流供給部5及び積層体の上端面を押える押圧部7と、紙面右側の部分に積層体CSの上下端を挟持する挟持部9を有している。
【0015】
そして、中央の積層体の収納部3に収納された積層体CSに対して、右側の上下端の挟持部9が積層体の上端面と下端面を挟持するとともに、紙面左側の接触・気流供給部5が積層体CSの側面部に接触及び気流供給を行うことによりほぐし処理を行う。また、押圧部7が積層体の対する接触・気流供給の進行に伴い積層体の上端面の押えを制御しながら紙葉類の積層体CSのほぐし工程が進行する。
以下に具体的に説明する。
【0016】
〇紙葉類
本発明に言う紙葉類の積層体とは、紙等の薄板状の物質が積層したものをいう。通常このような積層体は、積層される紙葉類同士が密着して一体化していることが多いため、一枚ごとに取り出すことが困難になっていることが多い。本発明においてはこのような密着状態をほぐして生産ライン等において一枚ごとに紙葉類を取り出すことが可能とするために用いられる。
【0017】
ここで本発明にいう紙葉類とは、材質は紙に限らず、他の素材であってもよいことは勿論である。さらに、当該複数素材の積層体であってもよい。例えば、即席カップ麺の製造において利用される紙層、アルミニウム層、プラスチック層等を有するアルミキャップ(リッド)の積層体に対して好適に利用することができる。
また、積層体の枚数は特に限定されない。但し、一般的は概ね100~1000枚程度が具体例として挙げられる。
【0018】
〇積層体の収納部
本発明の第一の実施態様においては、紙葉類を多数重ねた積層体CSを、略垂直方向に重ねた状態で収納する収納部3を有している。本収納部3に紙葉類積層体を収納し、ほぐし工程が実施される。
本発明の第一の実施態様において当該収納部3は、基台11と当該基台の上に設けられた紙葉類の積層体の収納ユニット13からなっており、当該収納ユニット13は紙葉類を載置する座台15と当該座部の四隅より上方に伸びる4本の支柱17によって形成されている。
【0019】
次に、前記座台15は、
図1(a)に示すように紙面左右の領域が欠失しており、紙葉類の積層体の左右部分が露出可能なように構成されている。
さらに4本の支柱は、周廻りに配置されており、紙葉類の積層体が収納された場合に当該積層体の多くの部分が露出するようになっている。
当該紙葉類積層体の露出部に対して以下に述べる上下端の挟持及び接触・気流供給等が施される。
【0020】
〇挟持部
本発明における紙葉類の積層体の上下端の挟持部9は、紙葉類を多数重ねた積層体をその上下端部の間において挟持するための構成であり、
図1に示すように基台19を有し、当該基台19の上部よりハンドユニット21が水平方向にロッドによる伸縮可能に構成されている。
すなわち、挟持部においては、積層体を挟持する一対のハンドユニット21が装備されており、必要に応じて当該ハンドユニット21が上下間の間隔を狭めたり拡げたりできるようになっている。また、ハンドユニットによる挟持の際に、挟持する位置を規制するために積層体の側面部を支持する支持ユニット23を有している。
【0021】
紙葉類の積層体のほぐし工程を実施する際には、当該ハンドユニット及び支持ユニットが積層体の収納部に接近して、前記収納部から露出した積層体の上下端面を挟持する。
尚、当該ハンドユニット及び支持ユニットは基台から水平方向に伸縮ロッドによって伸縮可能となるように構成されている。
また、前記紙葉類積層体の挟持する部分は、紙葉類積層体の一方の所定端部側とすることができる。
図1に示すように紙葉類の中央部より一方の所定端部側とし、後述する気流供給によるほぐしを当該端部の紙葉類中心に対して反対側の側面部とすることでほぐしを効果的に行うことができる。
具体的には、
図1の場合、紙葉類積層体の一端である紙面右側を挟持し、他端である紙面左側の側面部に沿って気流供給により走査する方法が有効である。
【0022】
〇接触・気流供給部
本発明においては、上述の積層体の収納部に収納された積層体の一部を前記上下端の挟持部9が挟持した状態で紙葉類の側面部に沿って略垂直方向に接触しながら気流を供給し走査する。
図1、
図4に示すように本発明の第一の実施態様においては、固定された基台25に対して垂直方向に設けられた固定レール部27が設けられており、当該固定レール部27に装着されたスライダー29は電動で上下に移動可能となっている。そして、当該スライダーに接触・気流供給ユニット31が装着されている。当該接触・気流供給ユニット31には、
図5に示すように接触・気流供給ピース33が装着されている。当該接触・気流供給ピース33には2カ所の凸部35と2カ所の気流吹出し口37が設けられている。具体的には、2カ所の凸部35が直列に設けられている。また、当該それぞれの凸部下に気流吹出し口37が設けられている。そして、別途コンプレッサーから吹出し口37に気流が供給されるようになっている。尚、気流については空気、窒素等種々の気体を利用することができる。
【0023】
次に、接触・気流供給部5における走査の向きは紙葉類の積層体CSの下端から上端に向かう方向に設定されている。具体的には
図6に示すように紙葉類の積層体に対して下端部から上端部に向かって接触・気流供給部が移動し、その際、接触・気流供給ピースの凸部35が積層体に接触しながら上方に移動することで重なった紙葉類同士の端部の重なった状態を解除させながら、同時に吹出し口37より気流が供給されることによって紙同士の間の重なり状態をほぐすことができる。
尚、本第一の実施態様においては、接触部と気流供給部が一体の部品(ピース)となった態様を示しているが、本態様に限定されるものではなく、例えば、接触及び気流供給が別の部品となっている場合でもよいことは勿論である。さらに、接触と気流供給の両方を兼ねる部品であってもよいことは勿論である。
【0024】
このように積層体の側面部に沿って接触・気流供給ユニット31が走査して移動することで、接触・気流供給ピースの凸部が接触しながら気流供給することによって紙葉類の重なりをほぐして一枚ごとに取り出し易くすることができる。
【0025】
〇積層体の上端部に対する押圧部
本発明においては、収納部3に収納した積層体CSに対して、ほぐし処理を実施する際に当該積層体の上端部を押える押圧部7を有する。
本発明の第一の実施態様においては、
図1に示すように気流供給部と共通する基台25を利用している。そして、当該基台25の下方部に押圧部7が装着されている。当該押圧部7は所定の枠体39に支持された押圧ピース41が収納部3に収容された積層体の上端部を押えることができるように構成されている。
【0026】
また、当該押圧ピース41の上下方向の移動は、前記枠体39の下方部に装着された垂直方向に伸縮可能な一対のロッド43によってその移動が制御されている。
当該押圧部7が無いとほぐしの進行に伴って積層体CSの積層状態が乱れる場合があり、これを防止することができる。
当該押圧部7による積層体上端部の押えはほぐし処理の実施中において継続しておくことも可能であるが、以下のようにほぐしの進行に応じて押え状態を制御する方法も可能である。
【0027】
すなわち、ほぐし処理の際に接触・気流供給部が移動するが、ほぐし処理の進行状況に応じて、上端部の押え状態を変えることで、より効率的なほぐし工程を実現することができる。
具体的には、ほぐし工程の開始前においては上端部を押えておき、ほぐし工程の開始、すなわち、上述の接触・気流供給部5の走査が開始すると、当該押圧部の押圧ピース41を上昇させて、押えを解除する。
さらに、ほぐし工程が進行し、積層体のほぐしが積層体全体のうち1/2~2/3程度が完了した状態で押圧ピース41を再度下降させて、積層体CSの上端部を押圧し、積層体を最後までほぐしほぐしを完了させる。
このように押圧部による積層体上端部の押え状態をほぐしの状況に応じて適宜、調整することが好ましい。
【0028】
〇本願発明の装置の動作について
以下の本発明の第一の実施態様のほぐし装置の動作について図面を参照しながら説明する。但し、以下の動作については単に一例を示したものであり、これに限定されるものではない。
図8に示すように、紙葉類の積層体CSを収納部3に収容するとともに、挟持部9からハンドユニット21が伸長し積層体の上下端部を挟持する。
また、接触・気流供給部5は、スライダー29が下降した状態に位置している。次に押圧部7においては、前記積層体の上端部を押圧ピースが押えるように下降する。
【0029】
次に
図9に示すように接触・気流供給部が上昇して、その際、接触・気流供給ピース33の凸部35が積層体に接触しながら上方に移動することで重なった紙葉類同士の端部の重なった状態を解除させながら、同時に気流が供給されることによって紙同士の間の重なり状態をほぐすことができる。
また、紙葉類の積層体CSについて下端側からほぐれ始めたと同時に上端部の押圧ピース41が上昇する。
【0030】
次に、
図10に示すように接触・気流供給ピース33が上昇を続け紙葉類の積層体のほぐし工程を継続する。
次に
図11に示すように紙葉類の積層体の高さの2/3程度(残り1/3程度)で上端部の押圧ピース41が再び下降して上端部を押える。そして、当該押えた状態で、さらに接触・気流供給ピース33が上昇を続け、ほぐし工程を継続する。さらに、
図12に示すように積層体のほぐしを最後まで完了する。