(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】ズームレンズおよび撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20220927BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20220927BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
(21)【出願番号】P 2019171642
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大田 基在
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148758(JP,A)
【文献】特開2019-148760(JP,A)
【文献】特開2020-012870(JP,A)
【文献】特開2020-085934(JP,A)
【文献】特開2020-085935(JP,A)
【文献】特開2017-215406(JP,A)
【文献】国際公開第2014/073187(WO,A1)
【文献】特開平07-248449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00-17/08
G02B 21/02-21/04
G02B 25/00-25/04
CODE V
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、変倍の際に像面に対して固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍の際に光軸に沿って移動する負の屈折力を有する第2レンズ群と、変倍の際に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第3レンズ群と、変倍の際に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第4レンズ群と、変倍の際に像面に対して固定されている正の屈折力を有する第5レンズ群とからなり、
変倍の際に隣り合うレンズ群の間隔が全て変化し、
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に、1枚の負レンズと、5枚の正レンズとからなり、
前記第2レンズ群は少なくとも1枚の正レンズを含み、
前記第1レンズ群の前記負レンズのd線に対する屈折率をNd1、
前記第1レンズ群の前記負レンズのd線基準のアッベ数をνd1、
前記第1レンズ群の前記負レンズのg線とF線間の部分分散比をθgF1
、
前記第2レンズ群に含まれる全ての正レンズのd線基準のアッベ数の最大値をνd2pとした場合、
1.8<Nd1<1.85 (1)
38<νd1<46 (2)
0.55<θgF1<0.58 (3)
65<νd2p<110 (4)
で表される条件式(1)、(2)
、(3)
および(4)を満足するズームレンズ。
【請求項2】
無限遠物体に合焦した状態における前記第1レンズ群の焦点距離をfG1、
前記第1レンズ群の前記負レンズの焦点距離をfL1とした場合、
-0.9<fG1/fL1<-0.65 (5)
で表される条件式(5)を満足する請求項
1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第1レンズ群は、物体側から像側へ順に、合焦の際に像面に対して固定されている第1aレンズ群と、合焦の際に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第1bレンズ群と、合焦の際に前記第1bレンズ群との相互間隔を変化させて光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第1cレンズ群とからなる請求項1
又は2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第1aレンズ群は、物体側から像側へ順に、1枚の負レンズと、2枚の正レンズとからなり、
前記第1bレンズ群は、2枚の正レンズからなり、
前記第1cレンズ群は、1枚の正レンズからなる請求項
3に記載のズームレンズ。
【請求項5】
無限遠物体に合焦した状態における前記第1レンズ群の焦点距離をfG1、
前記第1aレンズ群の焦点距離をfG1aとした場合、
-0.035<fG1/fG1a<0.045 (6)
で表される条件式(6)を満足する請求項
3又は
4に記載のズームレンズ。
【請求項6】
無限遠物体に合焦した状態における広角端から望遠端への変倍の際に、前記第3レンズ群および前記第4レンズ群を合成してなる第34合成レンズ群と、前記第2レンズ群とは、それぞれの横倍率が-1倍の点を同時に通り、前記第3レンズ群は常に物体側に移動する請求項1から
5のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
無限遠物体に合焦した状態において、
前記第34合成レンズ群の望遠端での焦点距離をfG34t、
前記第2レンズ群の焦点距離をfG2とした場合、
-4<fG34t/fG2<-3 (7)
で表される条件式(7)を満足する請求項
6に記載のズームレンズ。
【請求項8】
無限遠物体に合焦した状態において、
前記第3レンズ群の焦点距離をfG3、
前記第2レンズ群の焦点距離をfG2とした場合、
-10<fG3/fG2<-4 (8)
で表される条件式(8)を満足する請求項1から
7のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項9】
無限遠物体に合焦した状態において、
前記第1レンズ群の焦点距離をfG1、
前記第2レンズ群の焦点距離をfG2とした場合、
-12<fG1/fG2<-8 (9)
で表される条件式(9)を満足する請求項1から
8のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項10】
前記第5レンズ群は、像ぶれ補正の際に光軸と交差する方向に移動する防振群を備えている請求項1から
9のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項11】
1.81<Nd1<1.85 (1-1)
で表される条件式(1-1)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項12】
40<νd1<45 (2-1)
で表される条件式(2-1)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項13】
0.55<θgF1<0.57 (3-1)
で表される条件式(3-1)を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項14】
70<νd2p<106 (4-1)
で表される条件式(4-1)を満足する請求項
1に記載のズームレンズ。
【請求項15】
-0.8<fG1/fL1<-0.65 (5-1)
で表される条件式(5-1)を満足する請求項
2に記載のズームレンズ。
【請求項16】
-0.02<fG1/fG1a<0.02 (6-1)
で表される条件式(6-1)を満足する請求項
5に記載のズームレンズ。
【請求項17】
-3.6<fG34t/fG2<-3.1 (7-1)
で表される条件式(7-1)を満足する請求項
7に記載のズームレンズ。
【請求項18】
-9<fG3/fG2<-5 (8-1)
で表される条件式(8-1)を満足する請求項
8に記載のズームレンズ。
【請求項19】
請求項1から
18のいずれか1項に記載のズームレンズを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、ズームレンズ、および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放送用カメラ、映画撮影用カメラ、およびデジタルカメラ等に使用可能なレンズ系として、変倍の際に相互間隔が変化する複数のレンズ群からなるズームレンズが提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、物体側から像側へ順に、変倍のためには移動せず合焦に際して移動する正の屈折力を有する第1レンズ群、広角端から望遠端への変倍に際して像側に移動する負の屈折力を有する第2レンズ群、および最も像側に配置され変倍のためには移動しないリレーレンズ群を有するズームレンズが記載されている。下記特許文献2には、物体側から像側へ順に、ズーミングのためには不動の正の屈折力の第1レンズ群、ズーミングに際して像側へ移動する負の屈折力の第2レンズ群、ズーミングに際して移動するレンズ群、開口絞り、およびズーミングのためには不動のレンズ群から構成されたズームレンズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-116182号公報
【文献】特開2017-215406号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の技術に係る一つの実施形態は、小型化および高倍率化を達成可能であり、良好な光学性能を有するズームレンズ、およびこのズームレンズを備えた撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の技術の一態様に係るズームレンズは、物体側から像側へ順に、変倍の際に像面に対して固定されている正の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍の際に光軸に沿って移動する負の屈折力を有する第2レンズ群と、変倍の際に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第3レンズ群と、変倍の際に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第4レンズ群と、変倍の際に像面に対して固定されている正の屈折力を有する第5レンズ群とからなり、変倍の際に隣り合うレンズ群の間隔が全て変化し、第1レンズ群は、物体側から像側へ順に、1枚の負レンズと、5枚の正レンズとからなり、第1レンズ群の負レンズのd線に対する屈折率をNd1、第1レンズ群の負レンズのd線基準のアッベ数をνd1、第1レンズ群の負レンズのg線とF線間の部分分散比をθgF1とした場合、下記条件式(1)、(2)、および(3)を満足する。
1.8<Nd1<1.85 (1)
38<νd1<46 (2)
0.55<θgF1<0.58 (3)
【0007】
上記態様のズームレンズは、さらに下記条件式(1-1)、(2-1)、および(3-1)の少なくとも1つを満足することが好ましい。
1.81<Nd1<1.85 (1-1)
40<νd1<45 (2-1)
0.55<θgF1<0.57 (3-1)
【0008】
第2レンズ群は少なくとも1枚の正レンズを含み、第2レンズ群に含まれる全ての正レンズのd線基準のアッベ数の最大値をνd2pとした場合、下記条件式(4)を満足することが好ましく、下記条件式(4-1)を満足することがより好ましい。
65<νd2p<110 (4)
70<νd2p<106 (4-1)
【0009】
無限遠物体に合焦した状態における第1レンズ群の焦点距離をfG1、第1レンズ群の負レンズの焦点距離をfL1とした場合、下記条件式(5)を満足することが好ましく、下記条件式(5-1)を満足することがより好ましい。
-0.9<fG1/fL1<-0.65 (5)
-0.8<fG1/fL1<-0.65 (5-1)
【0010】
第1レンズ群は、物体側から像側へ順に、合焦の際に像面に対して固定されている第1aレンズ群と、合焦の際に光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第1bレンズ群と、合焦の際に第1bレンズ群との相互間隔を変化させて光軸に沿って移動する正の屈折力を有する第1cレンズ群とからなることが好ましい。その場合、第1aレンズ群は、物体側から像側へ順に、1枚の負レンズと、2枚の正レンズとからなり、第1bレンズ群は、2枚の正レンズからなり、第1cレンズ群は、1枚の正レンズからなることが好ましい。また、無限遠物体に合焦した状態における第1レンズ群の焦点距離をfG1、第1aレンズ群の焦点距離をfG1aとした場合、下記条件式(6)を満足することが好ましく、下記条件式(6-1)を満足することがより好ましい。
-0.035<fG1/fG1a<0.045 (6)
-0.02<fG1/fG1a<0.02 (6-1)
【0011】
無限遠物体に合焦した状態における広角端から望遠端への変倍の際に、第3レンズ群および第4レンズ群を合成してなる第34合成レンズ群と、第2レンズ群とは、それぞれの横倍率が-1倍の点を同時に通り、第3レンズ群は常に物体側に移動することが好ましい。その場合、無限遠物体に合焦した状態において、第34合成レンズ群の望遠端での焦点距離をfG34t、第2レンズ群の焦点距離をfG2とした場合、下記条件式(7)を満足することが好ましく、下記条件式(7-1)を満足することがより好ましい。
-4<fG34t/fG2<-3 (7)
-3.6<fG34t/fG2<-3.1 (7-1)
【0012】
無限遠物体に合焦した状態において、第3レンズ群の焦点距離をfG3、第2レンズ群の焦点距離をfG2とした場合、下記条件式(8)を満足することが好ましく、下記条件式(8-1)を満足することがより好ましい。
-10<fG3/fG2<-4 (8)
-9<fG3/fG2<-5 (8-1)
【0013】
無限遠物体に合焦した状態において、第1レンズ群の焦点距離をfG1、第2レンズ群の焦点距離をfG2とした場合、下記条件式(9)を満足することが好ましい。
-12<fG1/fG2<-8 (9)
【0014】
第5レンズ群は、像ぶれ補正の際に光軸と交差する方向に移動する防振群を備えていることが好ましい。
【0015】
本開示の技術の別の態様に係る撮像装置は、本開示の上記態様のズームレンズを備えている。
【0016】
なお、本明細書の「~からなり」、「~からなる」は、挙げられた構成要素以外に、実質的に屈折力を有さないレンズ、並びに、絞り、フィルタ、およびカバーガラス等のレンズ以外の光学要素、並びに、レンズフランジ、レンズバレル、撮像素子、および手振れ補正機構等の機構部分、等が含まれていてもよいことを意図する。
【0017】
なお、本明細書の「正の屈折力を有する~群」は、群全体として正の屈折力を有することを意味する。同様に「負の屈折力を有する~群」は、群全体として負の屈折力を有することを意味する。「正の屈折力を有するレンズ」と「正レンズ」とは同義である。「負の屈折力を有するレンズ」と「負レンズ」とは同義である。「~レンズ群」および「防振群」は、複数のレンズからなる構成に限らず、1枚のみのレンズからなる構成としてもよい。
【0018】
複合非球面レンズ(球面レンズと、その球面レンズ上に形成された非球面形状の膜とが一体的に構成されて、全体として1つの非球面レンズとして機能するレンズ)は、接合レンズとは見なさず、1枚のレンズとして扱う。非球面を含むレンズに関する、屈折力の符号、および面形状は、特に断りが無い限り、近軸領域で考えることにする。
【0019】
条件式で用いている「焦点距離」は、近軸焦点距離である。条件式で用いている値は、部分分散比以外、無限遠物体に合焦した状態において、d線を基準とした場合の値である。あるレンズのg線とF線間の部分分散比θgFとは、g線、F線、およびC線に対するそのレンズの屈折率をそれぞれNg、NF、およびNCとした場合に、θgF=(Ng-NF)/(NF-NC)で定義される。本明細書に記載の「d線」、「C線」、「F線」、および「g線」は輝線であり、d線の波長は587.56nm(ナノメートル)、C線の波長は656.27nm(ナノメートル)、F線の波長は486.13nm(ナノメートル)、g線の波長は435.84nm(ナノメートル)である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の実施例1のズームレンズに対応し、本開示の一実施形態に係るズームレンズの構成の断面図と移動軌跡を示す図である。
【
図2】
図1に示すズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
【
図3】本開示の実施例1のズームレンズの各収差図である。
【
図4】本開示の実施例2のズームレンズの構成の断面図と移動軌跡を示す図である。
【
図5】本開示の実施例2のズームレンズの各収差図である。
【
図6】本開示の実施例3のズームレンズの構成の断面図と移動軌跡を示す図である。
【
図7】本開示の実施例3のズームレンズの各収差図である。
【
図8】本開示の実施例4のズームレンズの構成の断面図と移動軌跡を示す図である。
【
図9】本開示の実施例4のズームレンズの各収差図である。
【
図10】本開示の実施例5のズームレンズの構成の断面図と移動軌跡を示す図である。
【
図11】本開示の実施例5のズームレンズの各収差図である。
【
図12】本開示の一実施形態に係る撮像装置の概略的な構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の技術に係る実施形態の一例について図面を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るズームレンズの広角端における構成を示す断面図と移動軌跡を示す図である。
図2は、このズームレンズの構成と光束を示す断面図である。
図1および
図2に示す例は後述の実施例1のズームレンズに対応している。
図1の断面図および
図2では、無限遠物体に合焦している状態を示し、左側が物体側、右側が像側である。
図2では、「WIDE」と付した上段に広角端状態を示し、「MIDDLE」と付した中段に中間焦点距離状態を示し、「TELE」と付した下段に望遠端状態を示す。
図2では、光束として、広角端状態における軸上光束waおよび最大画角の光束wb、中間焦点距離状態における軸上光束maおよび最大画角の光束mb、望遠端状態における軸上光束taおよび最大画角の光束tbを示す。以下では主に
図1を参照しながら本開示の一実施形態に係るズームレンズについて説明する。
【0022】
図1では、ズームレンズが撮像装置に適用されることを想定して、ズームレンズと像面Simとの間に入射面と出射面が平行の光学部材PPが配置された例を示している。光学部材PPは、各種フィルタ、カバーガラス、およびプリズム等を想定した部材である。各種フィルタとは例えば、ローパスフィルタ、赤外線カットフィルタ、および特定の波長域をカットするフィルタ等である。光学部材PPは屈折力を有しない部材であり、光学部材PPを省略した構成も可能である。
【0023】
ズームレンズは、光軸Zに沿って物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5とからなる。変倍の際に、第1レンズ群G1および第5レンズ群G5は像面Simに対して固定されており、第2レンズ群G2と、第3レンズ群G3と、第4レンズ群G4とは、光軸Zに沿って移動し、隣り合うレンズ群の間隔は全て変化する。最も物体側に正の屈折力を有するレンズ群を配置し、変倍の際に間隔が変化する5つのレンズ群からなり、上記のように構成することによって、小型化および高倍率化の両立に有利な構成となる。また、第1レンズ群G1と第5レンズ群G5とを変倍の際に固定されている構成とすることによって、最も物体側のレンズ面から最も像側のレンズ面までの距離が変倍の際に変化せず、レンズ系の重心の変動を小さくすることができるため、撮影の際の利便性を高めることができる。
【0024】
図1では、第2レンズ群G2、第3レンズ群G3、および第4レンズ群G4の下にそれぞれ、広角端から望遠端へ変倍する際の各レンズ群の移動軌跡を模式的に実線の矢印で示している。また、
図1では移動軌跡の始点および終点それぞれに対応する広角端および望遠端をそれぞれ「WIDE」および「TELE」で示している。
【0025】
図1の例の各レンズ群は以下に述べるレンズから構成されている。すなわち、第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、レンズL11~L16の6枚のレンズからなる。第2レンズ群G2は、物体側から像側へ順に、レンズL21~L27の7枚のレンズからなる。第3レンズ群G3は、物体側から像側へ順に、レンズL31~L33の3枚のレンズからなる。第4レンズ群G4は、物体側から像側へ順に、レンズL41~L44の4枚のレンズからなる。第5レンズ群G5は、物体側から像側へ順に、開口絞りStと、レンズL51~L63の13枚のレンズからなる。
図1の開口絞りStは形状を示しているのではなく、光軸方向の位置を示している。
【0026】
第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、1枚の負レンズと、5枚の正レンズとからなるように構成される。最も物体側に負レンズを配置することによって広角化に有利となる。1次の色収差を抑制するためには負正それぞれの屈折力を強くする必要があるが、そうすると球面収差が多く発生してしまう。そこで、第1レンズ群G1が5枚の正レンズを含むように構成することによって正の屈折力を分割し、球面収差の発生を抑制することができる。
【0027】
第1レンズ群G1の負レンズは以下に述べるように材料が選択される。第1レンズ群G1の負レンズのd線に対する屈折率をNd1とした場合、下記条件式(1)を満足するように構成される。条件式(1)の下限以下とならないようにすることによって、歪曲収差の抑制に有利となる。条件式(1)の上限以上とならないようにすることによって、g線とF線間の部分分散比の小さな材料を選択しやすくなり、2次色収差の抑制に有利となる。さらに下記条件式(1-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができ、下記条件式(1-2)を満足する構成とすれば、さらにより良好な特性とすることができる。
1.8<Nd1<1.85 (1)
1.81<Nd1<1.85 (1-1)
1.81<Nd1<1.84 (1-2)
【0028】
第1レンズ群G1の負レンズのd線基準のアッベ数をνd1とした場合、下記条件式(2)を満足するように構成される。条件式(2)の下限以下とならないようにすることによって、g線とF線間の部分分散比の小さな材料を選択しやすくなり、2次色収差の抑制に有利となる。条件式(2)の上限以上とならないようにすることによって、1次色収差の抑制に有利となる。さらに下記条件式(2-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができ、下記条件式(2-2)を満足する構成とすれば、さらにより良好な特性とすることができる。
38<νd1<46 (2)
40<νd1<45 (2-1)
42<νd1<44 (2-2)
【0029】
第1レンズ群G1の負レンズのg線とF線間の部分分散比をθgF1とした場合、下記条件式(3)を満足するように構成される。条件式(3)の下限以下とならないようにすることによって、d線基準のアッベ数の小さな材料を選択しやすくなり、1次色収差の抑制に有利となる。条件式(3)の上限以上とならないようにすることによって、2次色収差の抑制に有利となる。さらに下記条件式(3-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができ、下記条件式(3-2)を満足する構成とすれば、さらにより良好な特性とすることができる。
0.55<θgF1<0.58 (3)
0.55<θgF1<0.57 (3-1)
0.56<θgF1<0.57 (3-2)
【0030】
次に、本開示の技術に係るズームレンズの好ましい構成について述べる。無限遠物体に合焦した状態における第1レンズ群G1の焦点距離をfG1、第1レンズ群G1の負レンズの焦点距離をfL1とした場合、下記条件式(5)を満足することが好ましい。条件式(5)の下限以下とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の負レンズの屈折力が強くなり過ぎないため、広角端の負の歪曲収差の抑制に有利となる。条件式(5)の上限以上とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の負レンズの屈折力が弱くなり過ぎないため、軸上色収差の補正および球面収差の補正に有利となる。さらに下記条件式(5-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができ、下記条件式(5-2)を満足する構成とすれば、さらにより良好な特性とすることができる。
-0.9<fG1/fL1<-0.65 (5)
-0.8<fG1/fL1<-0.65 (5-1)
-0.75<fG1/fL1<-0.65 (5-2)
【0031】
第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、合焦の際に像面Simに対して固定されている第1aレンズ群G1aと、合焦の際に光軸Zに沿って移動する正の屈折力を有する第1bレンズ群G1bと、合焦の際に第1bレンズ群G1bとの相互間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する正の屈折力を有する第1cレンズ群G1cとからなるように構成することが好ましい。このように構成することによって、合焦の際の望遠側の球面収差の変動を低減することが容易となる。
【0032】
一例として、
図1のズームレンズでは、第1aレンズ群G1aはレンズL11~L13からなり、第1bレンズ群G1bはレンズL14~L15からなり、第1cレンズ群G1cはレンズL16からなる。
図1の第1bレンズ群G1bおよび第1cレンズ群G1cそれぞれの下に記入された水平方向の両矢印は、第1bレンズ群G1bおよび第1cレンズ群G1cが合焦の際に移動するレンズ群(以下、フォーカスレンズ群という)であることを示す。
【0033】
図1に示すように、第1aレンズ群G1aは物体側から像側へ順に1枚の負レンズと2枚の正レンズとからなり、第1bレンズ群G1bは2枚の正レンズからなり、第1cレンズ群G1cは1枚の正レンズからなるように構成することが好ましい。このようにした場合は、第1aレンズ群G1aの最も物体側に負レンズを配置することによって、この負レンズから像側へ向かう主光線が光軸Zとなす角度をより小さくできるので広角化に有利となる。また、この負レンズに連続して正レンズを配置することによって、第1aレンズ群G1aの残存収差を抑制し、物体距離の変動に伴う望遠側の球面収差の変動を抑制することに有利となる。さらに、第1aレンズ群G1aが含む正レンズを2枚とすることによって上記効果を高めることができる。
【0034】
第1bレンズ群G1bおよび第1cレンズ群G1cについては、フォーカスレンズ群が有する正の屈折力を第1bレンズ群G1bおよび第1cレンズ群G1cの計3枚の正レンズで分割することによって、合焦の際の望遠側の球面収差の変動をより低減することができる。また、フォーカスレンズ群の正の屈折力を分割する正レンズの枚数を3枚とすることによって、この枚数を4枚以上にした場合に比べて、第1レンズ群G1の有効径をより小さくすることができる。3枚の正レンズのうち、第1bレンズ群G1bに2枚の正レンズ、第1cレンズ群G1cに1枚の正レンズとなるように配分することによって、第1bレンズ群G1bの屈折力を第1cレンズ群G1cの屈折力よりも強くすることができる。これによって、第1bレンズ群G1bに主な合焦作用を持たせ、第1cレンズ群G1cに像面湾曲の補正作用を持たせることができる。
【0035】
第1レンズ群G1が、上記の第1aレンズ群G1aと、第1bレンズ群G1bと、第1cレンズ群G1cとからなる構成において、無限遠物体に合焦した状態における第1レンズ群G1の焦点距離をfG1、第1aレンズ群G1aの焦点距離をfG1aとした場合、下記条件式(6)を満足することが好ましい。条件式(6)を満足することによって、合焦の際の望遠端の球面収差の変動を抑制することに有利となる。さらに下記条件式(6-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができ、下記条件式(6-2)を満足する構成とすれば、さらにより良好な特性とすることができる。
-0.035<fG1/fG1a<0.045 (6)
-0.02<fG1/fG1a<0.02 (6-1)
-0.006<fG1/fG1a<0.003 (6-2)
【0036】
無限遠物体に合焦した状態において、第1レンズ群G1の焦点距離をfG1、第2レンズ群G2の焦点距離をfG2とした場合、下記条件式(9)を満足することが好ましい。条件式(9)の下限以下とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の屈折力が弱くなり過ぎないため、第1レンズ群G1はより物体側に像点を形成することができる。通常、第2レンズ群G2のズームストローク(変倍の際の移動範囲)は、第1レンズ群G1の最も像側の面から第1レンズ群G1が形成する像点までの範囲内にあるように設定されるので、条件式(9)の下限以下とならないようにすることによって、第2レンズ群G2のズームストロークの長大化を抑制することができる。これによって、高倍率化および全長の短縮化の両立が容易になる。あるいは、条件式(9)の下限以下とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が強くなり過ぎないため、変倍の際の球面収差等の諸収差の変動を抑制することに有利となる。条件式(9)の上限以上とならないようにすることによって、第1レンズ群G1の屈折力が強くなり過ぎないため、第1レンズ群G1はより像側に像点を形成することができるので、第2レンズ群G2のズームストロークが短くなり過ぎることがない。これによって、光線の曲がりを緩やかにできるので、高倍率化および高性能化の両立が容易になる。あるいは、条件式(9)の上限以上とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が弱くなり過ぎないため、高倍率化および全長の短縮化の両立が容易になる。さらに下記条件式(9-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができ、下記条件式(9-2)を満足する構成とすれば、さらにより良好な特性とすることができる。
-12<fG1/fG2<-8 (9)
-11<fG1/fG2<-9 (9-1)
-10.5<fG1/fG2<-9.5 (9-2)
【0037】
第2レンズ群G2は少なくとも1枚の正レンズを含み、第2レンズ群G2に含まれる全ての正レンズのd線基準のアッベ数の最大値をνd2pとした場合、下記条件式(4)を満足することが好ましい。条件式(4)の下限以下とならないようにすることによって、第1レンズ群G1によって広角端でプラス側に発生する短波長の倍率色収差を、第2レンズ群G2によって補正することができる。条件式(4)の上限以上とならないようにすることによって、d線基準のアッベ数がνd2pとなる第2レンズ群G2の正レンズの屈折率が低くなり過ぎないため、この正レンズの曲率の絶対値が大きくなり過ぎることがなく、したがって厚みが厚くなるのを抑制することができる。これによって、ズームストロークの確保に有利となるので、高倍率化に有利となる。さらに下記条件式(4-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができ、下記条件式(4-2)を満足する構成とすれば、さらにより良好な特性とすることができる。
65<νd2p<110 (4)
70<νd2p<106 (4-1)
80<νd2p<103 (4-2)
【0038】
第3レンズ群G3は、正レンズである単レンズと、いずれか一方が正レンズで他方が負レンズの2枚のレンズが接合された接合レンズとからなるように構成することが好ましい。いずれか一方が正レンズで他方が負レンズの2枚のレンズが接合された接合レンズは、物体側から順に正レンズと負レンズとが接合された接合レンズでもよく、物体側から順に負レンズと正レンズとが接合された接合レンズでもよい。第3レンズ群G3がこのような接合レンズを有することによって、変倍の際の軸上色収差の変動を良好に抑制することができる。また、第3レンズ群G3を3枚構成にすることによって、省スペース化してズームストロークを確保することができるので、高倍率化および全長の短縮化の両立が容易になる。
【0039】
無限遠物体に合焦した状態において、第3レンズ群G3の焦点距離をfG3、第2レンズ群G2の焦点距離をfG2とした場合、下記条件式(8)を満足することが好ましい。条件式(8)の下限以下とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が強くなり過ぎないため、変倍の際の球面収差等の諸収差の変動を抑制することに有利となる。あるいは、第3レンズ群G3の屈折力が弱くなり過ぎないため、第3レンズ群G3のズームストロークの増加を抑制でき、高倍率化および全長の短縮化の両立が容易になる。条件式(8)の上限以上とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が弱くなり過ぎないため、第2レンズ群G2のズームストロークの増加を抑制でき、高倍率化および全長の短縮化の両立が容易になる。あるいは、第3レンズ群G3の屈折力が強くなり過ぎないため、変倍の際の諸収差の変動を抑制することに有利となる。さらに下記条件式(8-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができ、下記条件式(8-2)を満足する構成とすれば、さらにより良好な特性とすることができる。
-10<fG3/fG2<-4 (8)
-9<fG3/fG2<-5 (8-1)
-8<fG3/fG2<-6 (8-2)
【0040】
無限遠物体に合焦した状態における広角端から望遠端への変倍の際に、第3レンズ群G3および第4レンズ群G4を合成してなる第34合成レンズ群と、第2レンズ群G2とは、それぞれの横倍率が-1倍の点を同時に通り、第3レンズ群G3は常に物体側に移動することが好ましい。このようにした場合は、第34合成レンズ群の変倍効率が高いため、高倍率化に適したズームレンズとなる。
図1の移動軌跡の図では、第34合成レンズ群の横倍率、および第2移動レンズ群の横倍率が-1倍になるズーム位置を「β=-1」で示している。
【0041】
第34合成レンズ群と第2レンズ群G2とがそれぞれの横倍率が-1倍の点を同時に通る構成において、無限遠物体に合焦した状態での、第34合成レンズ群の望遠端での焦点距離をfG34t、第2レンズ群G2の焦点距離をfG2とした場合、下記条件式(7)を満足することが好ましい。条件式(7)の下限以下とならないようにすることによって、第2レンズ群G2の屈折力が強くなり過ぎないため、変倍の際の球面収差等の諸収差の変動を抑制することに有利となる。条件式(7)の上限以上とならないようにすることによって、第34合成レンズ群の屈折力が強くなり過ぎないため、望遠端での球面収差の悪化を抑制することに有利となる。さらに下記条件式(7-1)を満足する構成とすれば、より良好な特性とすることができ、下記条件式(7-2)を満足する構成とすれば、さらにより良好な特性とすることができる。
-4<fG34t/fG2<-3 (7)
-3.6<fG34t/fG2<-3.1 (7-1)
-3.3<fG34t/fG2<-3.1 (7-2)
【0042】
第5レンズ群G5の最も物体側には開口絞りStが配置されていることが好ましい。このようにした場合は、第5レンズ群G5の最も物体側よりも像側に開口絞りStが配置された場合に比べて、第1レンズ群G1の最も物体側のレンズの有効径を小径化することが容易になる。
【0043】
第5レンズ群G5は、像ぶれ補正の際に光軸Zと交差する方向に移動する防振群を備えていることが好ましい。変倍の際に不動の第5レンズ群G5は変倍の際に主光線の通り方が不変のため、第5レンズ群G5が防振群を備えることによって、ズーム全域で像ぶれ補正の性能を良好に確保することができる。
図1の例では、防振群はレンズL51~L53の3枚のレンズからなる。
図1のレンズL51~L53の下に記入された鉛直方向の両矢印は、レンズL51~L53が防振群であることを示す。
【0044】
第5レンズ群G5の最も物体側に開口絞りStが配置され、防振群が第5レンズ群G5の最も物体側のレンズ群であるように構成することが好ましい。このようにした場合は、軸上光束の外縁光線の高さと軸外光束の外縁光線の高さが近くなるため、画角ゼロから高画角まで像ぶれ補正の際の収差変動を均一性高く抑えることができる。
【0045】
なお、
図1に示す例は一例であり、各レンズ群を構成するレンズの枚数は、
図1に示す例と異なる枚数とすることも可能である。
【0046】
上述した好ましい構成および可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。本開示の技術によれば、小型化および高倍率化を達成し、良好な光学性能を有するズームレンズを実現することが可能である。なお、ここでいう「高倍率」とは、ズームの倍率が100倍以上であることを意味する。
【0047】
次に、本開示のズームレンズの数値実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1のズームレンズの構成と移動軌跡は
図1に示しており、その図示方法と構成は上述したとおりであるので、ここでは重複説明を一部省略する。実施例1のズームレンズは、物体側から像側へ順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、正の屈折力を有する第4レンズ群G4と、正の屈折力を有する第5レンズ群G5とからなる。変倍の際に、第1レンズ群G1と第5レンズ群G5とは像面Simに対して固定されており、第2レンズ群G2と第3レンズ群G3と第4レンズ群G4とは隣り合うレンズ群との間隔を変化させて光軸Zに沿って移動する。第1レンズ群G1は、物体側から像側へ順に、第1aレンズ群G1aと、第1bレンズ群G1bと、第1cレンズ群G1cとからなる。合焦の際に、第1bレンズ群G1bおよび第1cレンズ群G1cは相互間隔を変化させて光軸Zに沿って移動し、その他のレンズ群は全て像面Simに対して固定されている。第1aレンズ群G1aは3枚のレンズからなり、第1bレンズ群G1bは2枚のレンズからなり、第1cレンズ群G1cは1枚のレンズからなる。第2レンズ群G2は7枚のレンズからなる。第3レンズ群G3は3枚のレンズからなる。第4レンズ群G4は4枚のレンズからなる。第5レンズ群G5は、物体側から像側へ順に、開口絞りStと、13枚のレンズとからなる。防振群は、第5レンズ群G5の物体側から1番目、2番目、および3番目の3枚のレンズからなる。以上が実施例1のズームレンズの概要である。
【0048】
実施例1のズームレンズについて、基本レンズデータを表1Aおよび表1Bに、諸元と可変面間隔を表2に、非球面係数を表3に示す。ここでは、1つの表の長大化を避けるため基本レンズデータを表1Aおよび表1Bの2つの表に分けて表示している。表1Aには第1レンズ群G1から第4レンズ群G4までを示し、表1Bには第5レンズ群G5および光学部材PPを示す。表1A、表1B、および表2には、無限遠物体に合焦した状態におけるデータを示す。
【0049】
表1Aおよび表1Bにおいて、Snの欄には最も物体側の面を第1面とし像側に向かうに従い1つずつ番号を増加させた場合の面番号を示し、Rの欄には各面の曲率半径を示し、Dの欄には各面とその像側に隣接する面との光軸上の面間隔を示す。Ndの欄には各構成要素のd線に対する屈折率を示し、νdの欄には各構成要素のd線基準のアッベ数を示し、θgFの欄には各構成要素のg線とF線間の部分分散比を示す。
【0050】
表1Aおよび表1Bでは、物体側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を正、像側に凸面を向けた形状の面の曲率半径の符号を負としている。表1Bには開口絞りStおよび光学部材PPも合わせて示している。表1Bでは開口絞りStに相当する面の面番号の欄に面番号と(St)という語句を記載している。表1Aおよび表1Bでは、変倍の際の可変面間隔についてはDD[ ]という記号を用い、[ ]の中にこの間隔の物体側の面番号を付してDの欄に記入している。
【0051】
表2に、ズームの倍率Zr、焦点距離f、空気換算距離でのバックフォーカスBf、FナンバーFNo.、最大全画角2ω、および、変倍の際の可変面間隔をd線基準で示す。2ωの欄の(°)は単位が度であることを意味する。表2では、広角端状態、中間焦点距離状態、望遠端状態の各値をそれぞれWIDE、MIDDLE、TELEと表記した欄に示している。
【0052】
基本レンズデータでは、非球面の面番号には*印を付しており、非球面の曲率半径の欄には近軸の曲率半径の数値を記載している。表3において、Snの欄には非球面の面番号を示し、KAおよびAm(m=3、4、5、・・・16)の欄には各非球面についての非球面係数の数値を示す。表3の非球面係数の数値の「E±n」(n:整数)は「×10±n」を意味する。KAおよびAmは下式で表される非球面式における非球面係数である。
Zd=C×h2/{1+(1-KA×C2×h2)1/2}+ΣAm×hm
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に
下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からレンズ面までの距離)
C:近軸曲率半径の逆数
KA、Am:非球面係数
であり、非球面式のΣはmに関する総和を意味する。
【0053】
各表のデータにおいて、角度の単位としては度を用い、長さの単位としてはmm(ミリメートル)を用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることもできる。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
図3に、実施例1のズームレンズの無限遠物体に合焦した状態の各収差図を示す。
図3では左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、および倍率色収差を示す。
図3では「WIDE」と付した上段に広角端状態の収差を示し、「MIDDLE」と付した中段に中間焦点距離状態の収差を示し、「TELE」と付した下段に望遠端状態の収差を示す。球面収差図では、d線、C線、F線、およびg線における収差をそれぞれ実線、長破線、短破線、および一点鎖線で示す。非点収差図では、サジタル方向のd線における収差を実線で示し、タンジェンシャル方向のd線における収差を短破線で示す。歪曲収差図ではd線における収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、F線、およびg線における収差をそれぞれ長破線、短破線、および一点鎖線で示す。球面収差図のFNo.はFナンバーを意味し、その他の収差図のωは半画角を意味する。
【0059】
上記の実施例1に関する各データの記号、意味、記載方法、および図示方法は、特に断りが無い限り以下の実施例においても同様であるので、以下では重複説明を省略する。
【0060】
[実施例2]
実施例2のズームレンズの構成と移動軌跡を
図4に示す。実施例2のズームレンズは、実施例1のズームレンズの概要と同様の構成を有する。実施例2のズームレンズについて、基本レンズデータを表4Aおよび表4Bに、諸元と可変面間隔を表5に、非球面係数を表6に、各収差図を
図5に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
[実施例3]
実施例3のズームレンズの構成と移動軌跡を
図6に示す。実施例3のズームレンズは、実施例1のズームレンズの概要と同様の構成を有する。実施例3のズームレンズについて、基本レンズデータを表7Aおよび表7Bに、諸元と可変面間隔を表8に、非球面係数を表9に、各収差図を
図7に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
[実施例4]
実施例4のズームレンズの構成と移動軌跡を
図8に示す。実施例4のズームレンズは、実施例1のズームレンズの概要と同様の構成を有する。実施例4のズームレンズについて、基本レンズデータを表10Aおよび表10Bに、諸元と可変面間隔を表11に、非球面係数を表12に、各収差図を
図9に示す。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
[実施例5]
実施例5のズームレンズの構成と移動軌跡を
図10に示す。実施例5のズームレンズは、実施例1のズームレンズの概要と同様の構成を有する。実施例5のズームレンズについて、基本レンズデータを表13Aおよび表13Bに、諸元と可変面間隔を表14に、非球面係数を表15に、各収差図を
図11に示す。
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
表16に、実施例1~5のズームレンズの条件式(1)~(9)の対応値を示す。
【表16】
【0081】
以上説明したデータからわかるように、実施例1~5のズームレンズは、小型に構成されながらも、ズームの倍率が120倍以上であり、高倍率化を達成しており、諸収差が良好に補正されて高い光学性能を実現している。
【0082】
次に、本開示の実施形態に係る撮像装置について説明する。
図12に、本開示の実施形態の撮像装置の一例として、本開示の実施形態に係るズームレンズ1を用いた撮像装置100の概略構成図を示す。撮像装置100としては、例えば、放送用カメラ、映画撮影用カメラ、ビデオカメラ、および監視用カメラ等を挙げることができる。
【0083】
撮像装置100は、ズームレンズ1と、ズームレンズ1の像側に配置されたフィルタ2と、フィルタ2の像側に配置された撮像素子3とを備えている。なお、
図12では、ズームレンズ1が備える複数のレンズを概略的に図示している。
【0084】
撮像素子3はズームレンズ1により形成される光学像を電気信号に変換するものであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いることができる。撮像素子3は、その撮像面がズームレンズ1の像面に一致するように配置される。
【0085】
撮像装置100はまた、撮像素子3からの出力信号を演算処理する信号処理部5と、信号処理部5により形成された像を表示する表示部6と、ズームレンズ1の変倍を制御する変倍制御部7と、ズームレンズ1の合焦を制御する合焦制御部8とを備える。なお、
図12では1つの撮像素子3のみ図示しているが、3つの撮像素子を有するいわゆる3板方式の撮像装置としてもよい。
【0086】
以上、実施形態および実施例を挙げて本開示の技術を説明したが、本開示の技術は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、および非球面係数等は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得る。
【符号の説明】
【0087】
1 ズームレンズ
2 フィルタ
3 撮像素子
5 信号処理部
6 表示部
7 変倍制御部
8 合焦制御部
100 撮像装置
G1 第1レンズ群
G1a 第1aレンズ群
G1b 第1bレンズ群
G1c 第1cレンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
G4 第4レンズ群
G5 第5レンズ群
L11~L16、L21~L27、L31~L33、L41~L44、L51~L63 レンズ
ma、ta、wa 軸上光束
mb、tb、wb 最大画角の光束
PP 光学部材
Sim 像面
St 開口絞り
Z 光軸