(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/50 20060101AFI20220927BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20220927BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20220927BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220927BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220927BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20220927BHJP
C08G 59/30 20060101ALI20220927BHJP
C08G 59/32 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
C08G59/50
C09K3/10 L
C09K3/10 G
C09K3/10 Z
C09J163/00
C09J11/06
H01L23/30 R
C08G59/30
C08G59/32
(21)【出願番号】P 2019534486
(86)(22)【出願日】2018-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2018028393
(87)【国際公開番号】W WO2019026822
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2017148546
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017149253
(32)【優先日】2017-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞田 翔平
(72)【発明者】
【氏名】福田 矩章
(72)【発明者】
【氏名】針▲崎▼ 良太
(72)【発明者】
【氏名】山本 勝政
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/086368(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/041325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1-iia):
【化1】
(式中、X
ii
は、飽和炭化水素環若しくは不飽和炭化水素環、又は飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2~6個縮合した構造を有する環、から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、あるいは式(2
g
-iia):
【化2】
(式中、Yは、結合手、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、-SO-、又は-SO
2
-を示す。)で表される2価の基を示し、
R
1
は同一又は異なって、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
R
2
は同一又は異なって、炭素数1~18のアルキレン基を示し、この基は、ケイ素原子に直接結合した炭素原子を除く一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
R
3
は同一又は異なって、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
mは4を示し、
nは0~3の整数を示す。)
で表されるエポキシ樹脂、並びに
式(1-iiia):
【化3】
(式中、X
iii
は、飽和炭化水素環若しくは不飽和炭化水素環、又は飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2~6個縮合した構造を有する環、から3個の水素原子を除いて得られる3価の基、又は式(2
g
-iiia):
【化4】
(式中、Yは、前記に同じ。)で表される3価の基を示し、
R
1
、R
2
、R
3
、m、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂
からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂、及び
脂環式ポリアミン及び芳香族ポリアミンからなる群より選択される少なくとも1種のアミン系硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記飽和炭化水素環が炭素数4~8の飽和炭化水素環であり、
前記不飽和炭化水素環が炭素数4~8の不飽和炭化水素環である、
請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂が、
式(1-IIb):
【化5】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、X
ii
、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂、並びに
式(1-IIIa):
【化6】
(式中、R
1
、R
2
、R
3
、X
iii
、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂
からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
さらに硬化促進剤を含有する請求項
1~3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
硬化促進剤が、アルミニウムを含む化合物、3フッ化ホウ素とアミン化合物との錯体、及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとアミン化合物との錯体、からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
アミン系硬化剤が
、炭素数が3~20の脂環式ポリアミン、及び炭素数6~30の芳香族ポリアミンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物又は請求項7に記載の硬化物が用いられている構造材料、半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、層間絶縁膜、接着層、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、又はプリント基板材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物、その製造方法、及び該組成物の用途等に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂とアミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物は、硬化性に優れる、比較的低粘度で取扱性が良好である、機械的強度の高い硬化物が得られる等の特徴がある。このため、例えば電子材料の分野においては電子部品のモールドアンダーフィル材等として、また例えば、構造材料の分野ではガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、アラミド繊維強化プラスチック(AFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-2953号公報
【文献】英国特許第1123960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エポキシ樹脂とアミン系硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物は、例えば上述の優れた特徴を有するものの、耐水性に劣るという問題があった。耐水性に劣るエポキシ樹脂組成物を用いた場合、材料物性の低下が引き起こされるおそれがある。
【0005】
例えば、電子材料の分野では、エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体チップをほこりや水分などの外部ストレスから保護するため、モールドアンダーフィル材を用いた封止が行われる。前記モールドアンダーフィル材の耐水性が不十分である場合、はんだリフロー時にモールドアンダーフィル材とチップの界面で剥離が生じ、電気的特性不良が生じる。
【0006】
また、構造材料の分野では、エポキシ樹脂組成物をマトリックス樹脂として用いたGFRP、CFRP等の繊維強化プラスチックが、航空機の主翼や自動車部品として利用されている。しかしながら、前記マトリックス樹脂の耐水性が不十分である場合、吸湿による材料物性の変化が著しく、信頼性の乏しい材料となってしまう。
【0007】
これらの課題の解決に向け、耐水性を改良したエポキシ樹脂組成物が提案されている。例えば特許文献1において、吸水率が低く、耐熱水性が良好なエポキシ樹脂組成物が提案されている。しかし、当該エポキシ樹脂組成物の耐水性は未だ充分とはいえない。
【0008】
本発明は、エポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を含有し且つ優れた耐水性を有するエポキシ樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、ケイ素原子を含む特定のエポキシ樹脂、及びアミン系硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物が、硬化後に優れた耐水性を有することを見出した。
【0010】
本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
式(1):
【0011】
【0012】
(式中、X環は
飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環、あるいは
飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2~6個縮合又は2個連結した構造を有する環
であり、
RXa、RXb、RXc、及びRXdは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルケニル基、ハロゲン原子、又は式(3):
【0013】
【0014】
(式中、R1は同一又は異なって、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
R2は、炭素数1~18のアルキレン基を示し、この基は、ケイ素原子に直接結合した炭素原子を除く一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
R3は同一又は異なって、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
mは0~6の整数を示し、
nは0~3の整数を示す。)で表される基を示し、
但し、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、少なくとも1つは式(3)で表される基であり、
X環を構成する炭化水素環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子に結合した水素原子が、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルケニル基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
で表されるエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
項2.
前記飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2個連結した構造を有する環が、
式(2):
【0015】
【0016】
(式中、X1環及びX2環は、同一又は異なって、飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環を示し、Yは、結合手、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、-SO-、又は-SO2-を示す。)で表される環である、項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
項3.
前記飽和炭化水素環が炭素数4~8の飽和炭化水素環であり、
前記不飽和炭化水素環が炭素数4~8の不飽和炭化水素環である、
項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
項4.
式(1-iia):
【0017】
【0018】
(式中、Xiiは、飽和炭化水素環若しくは不飽和炭化水素環、又は飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2~6個縮合した構造を有する環、から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、あるいは式(2g-iia):
【0019】
【0020】
(式中、Yは、結合手、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、-SO-、又は-SO2-を示す。)で表される2価の基を示し、
R1は同一又は異なって、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
R2は同一又は異なって、炭素数1~18のアルキレン基を示し、この基は、ケイ素原子に直接結合した炭素原子を除く一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
R3は同一又は異なって、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよく、
mは0~6の整数を示し、
nは0~3の整数を示す。)
で表されるエポキシ樹脂、並びに
式(1-iiia):
【0021】
【0022】
(式中、Xiiiは、飽和炭化水素環若しくは不飽和炭化水素環、又は飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2~6個縮合した構造を有する環、から3個の水素原子を除いて得られる3価の基、又は式(2g-iiia):
【0023】
【0024】
(式中、Yは、前記に同じ。)で表される3価の基を示し、
R1、R2、R3、m、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂
からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂、及びアミン系硬化剤を含有する項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
項5.
さらに硬化促進剤を含有する項1~4のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
項6.
アミン系硬化剤が、炭素数が2~20の鎖状脂肪族ポリアミン、炭素数が3~20の脂環式ポリアミン、及び炭素数6~30の芳香族ポリアミンからなる群より選択される少なくとも1種である、項1~5のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物。
項7.
項1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
項8.
項1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物又は項7に記載の硬化物が用いられている構造材料、半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、層間絶縁膜、接着層、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、又はプリント基板材料。
項9.
構造材料、半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、層間絶縁膜、接着層、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、又はプリント基板材料の用途に用いられる項1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物又は項7に記載の硬化物。
項10.
構造材料、半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、層間絶縁膜、接着層、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、又はプリント基板材料を製造するための項1~6のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物又は項7に記載の硬化物の使用。
【発明の効果】
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、その硬化物が優れた耐水性を有している。そのため、本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば、構造材料(繊維強化プラスチック、構造接着剤等)、半導体封止体、液状封止材、ポッティング材、シール材、層間絶縁膜、接着層、カバーレイフィルム、電磁波シールドフィルム、プリント基板材料等の広範な用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0027】
本発明に包含されるエポキシ樹脂組成物は、式(1):
【0028】
【0029】
で表されるエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を含有する。
【0030】
式(1)において、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルケニル基、ハロゲン原子、又は式(3):
【0031】
【0032】
で表される基(以下「式(3)の基」ということがある)を示す。なお、以下、低級アルキル基、低級アルコキシ基、及び低級アルケニル基をまとめて、「低級炭素置換基」ということがある。本発明においては、低級炭素置換基の中でも、低級アルキル基又は低級アルコキシ基がより好ましい。本明細書において、低級とは、炭素数1~6(1、2、3、4、5、又は6)を意味する。
【0033】
但し、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、少なくとも1つは式(3)の基である。言い換えれば、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、3つが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基で1つが式(3)の基であるか、2つが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基で2つが式(3)の基であるか、1つが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基で3つが式(3)の基であるか、あるいは全てが式(3)の基である。より具体的には、例えば、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、(i)RXa、RXb及びRXcが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXdが式(3)の基であるか、(ii)RXa及びRXbが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXc及びRXdが式(3)の基であるか、(iii)RXaが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXb、RXc、及びRXdが式(3)の基であるか、あるいは(iv)RXa、RXb、RXc、及びRXdの全てが式(3)の基であり得る。なお、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、式(3)の基でないものは、水素原子又は低級炭素置換基であることが、より好ましい。
【0034】
式(1)において、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、同一又は異なってよく、従って、(i)RXa、RXb及びRXcが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXdが式(3)の基である場合においては、RXa、RXb及びRXcが同一又は異なってよく、(ii)RXa及びRXbが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXc及びRXdが式(3)の基である場合においては、RXa及びRXbが同一又は異なってよく、RXc及びRXdも同一又は異なってよく、(iii)RXaが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基でRXb、RXc、及びRXdが式(3)の基である場合においては、RXb、RXc、及びRXdが同一又は異なってよく、(iv)RXa、RXb、RXc、及びRXdの全てが式(3)の基である場合においては、RXa、RXb、RXc、及びRXdが同一又は異なってよい。なお、これらいずれの場合においても、式(3)の基が同一であることが好ましい。
【0035】
また、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、2又は3個がハロゲン原子又は低級炭素置換基である場合には、これらのハロゲン原子又は低級炭素置換基も同一又は異なってよく、この場合においては、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、2又は3個が、同一の低級炭素置換基であることがさらに好ましい。
【0036】
低級炭素置換基のうち、好ましくは低級アルキル基又は低級アルコキシ基である。低級アルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等が好ましく例示できる。低級アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が好ましく例示できる。
【0037】
また、本明細書において、ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であり、好ましくはフッ素原子、塩素原子、又は臭素原子であり、より好ましくはフッ素原子又は臭素原子である。
【0038】
式(1)において、X環は飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環、あるいは飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2~6個縮合又は2個連結した構造を有する環を表す。 本明細書において、飽和炭化水素環としては、例えば炭素数4~8(4、5、6、7、又は8)の飽和炭化水素環が好ましく、より具体的にはシクロペンタン環、シクロヘキサン環等が特に好ましく例示される。また、本明細書において、不飽和炭化水素環としては、例えば炭素数4~8(4、5、6、7、又は8)の不飽和炭化水素環が好ましく、より具体的にはベンゼン環等が特に好ましく例示される。また、本明細書において、飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2~6個縮合した構造を有する環としては、飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2、3、又は4個縮合した環が好ましく、2又は3個縮合した環がより好ましい。より具体的には、例えば、デカヒドロナフタレン環、アダマンタン環、ナフタレン環、フェナントレン環、アントラセン環、ピレン環、トリフェニレン環、テトラリン環、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン環、ノルボルネン環等が挙げられる。
【0039】
なお、本明細書では、飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環、あるいは飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2~6個縮合した構造を有する環を、まとめて「炭化水素環」と呼ぶことがある。
【0040】
飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2個連結した構造を有する環としては、式(2):
【0041】
【0042】
で表される環が好ましい。
【0043】
式(2)において、X1環及びX2環は、同一又は異なって、飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環を示す。すなわち、X1環及びX2環は、両方とも飽和炭化水素環であるか、両方とも不飽和炭化水素環であるか、一方が飽和炭化水素環でもう一方が不飽和炭化水素環である。X1環及びX2環が、両方とも飽和炭化水素環であるか、両方とも不飽和炭化水素環であることが好ましい。例えば、X1環及びX2環は、両方がベンゼン環、両方がシクロヘキサン環、又は一方がベンゼン環でもう一方がシクロヘキサン環、であることが好ましく、両方がベンゼン環であることがより好ましい。
【0044】
また、Yは、結合手、炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、-SO-、又は-SO2-を示す。ここでの炭素数1~6のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等が例示できる。また、置換基である炭素数1~4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基等が例示できる。炭素数1~4のアルキル基で置換された炭素数1~6のアルキレン基としては、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH2C(CH3)2CH2-等が好ましく例示できる。Yは好ましくは、結合手、酸素原子、メチレン基、ジメチルメチレン基、-S-、-SO2-であり、より好ましくは、結合手、ジメチルメチレン基、酸素原子、-SO2-である。
【0045】
式(2)で表わされる環はRXa、RXb、RXc、及びRXdで置換されている。式(1)中のX環が式(2)で表される環であって、RXa~RXdのうち3つが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基で、1つが式(3)の基である場合、X1環及びX2環のいずれが式(3)の基で置換されていてもよい。また、この場合、式(2)で表わされる環は0、1、2、又は3つのハロゲン原子又は低級炭素置換基で置換されるところ、ハロゲン原子又は低級炭素置換基の(X1環の置換数:X2環の置換数)は(1:0)、(0:1)、(2:0)、(1:1)、(0:2)、(3:0)、(2:1)、(1:2)、又は(0:3)であり得る。RXa~RXdのうち2つが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基で、2つが式(3)の基である場合、X1環及びX2環のいずれかが2つの式(3)の基で置換されていてもよく、X1環及びX2環が1つずつ式(3)の基で置換されていてもよく、X1環及びX2環が1つずつ式(3)の基で置換されていることが好ましい。この場合、式(2)で表わされる環は0、1、又は2つのハロゲン原子又は低級炭素置換基で置換されるところ、ハロゲン原子又は低級炭素置換基の(X1環の置換数:X2環の置換数)は(1:0)、(0:1)、(2:0)、(1:1)、又は(0:2)であり得る。RXa~RXdのうち1つが水素原子、ハロゲン原子又は低級炭素置換基で、3つが式(3)の基である場合、X1環及びX2環のいずれかが3つの式(3)の基で置換されていてもよく、X1環が2つX2環が1つの式(3)の基で置換されていてもよく、X1環が1つX2環が2つの式(3)の基で置換されていてもよく、X1環が2つX2環が1つの式(3)の基で置換されている又はX1環が1つX2環が2つの式(3)の基で置換されていることが好ましい。この場合、式(2)で表わされる環は0又は1つのハロゲン原子又は低級炭素置換基で置換されるところ、ハロゲン原子又は低級炭素置換基の(X1環の置換数:X2環の置換数)は(1:0)、又は(0:1)であり得る。RXa~RXdの全てが式(3)の基である場合、X1環及びX2環のいずれかが4つの式(3)の基で置換されていてもよく、X1環が3つX2環が1つの式(3)の基で置換されていてもよく、X1環が1つX2環が3つの式(3)の基で置換されていてもよく、X1環が2つX2環が2つの式(3)の基で置換されていてもよく、X1環が2つX2環が2つの式(3)の基で置換されていることが好ましい。 式(1)の一部である基である、式(1’):
【0046】
【0047】
(式(1’)中、X環は前記に同じ。)
で示される4価の基として、特に好ましくは以下の式で表される基が挙げられる。すなわち、
【0048】
【0049】
又は
【0050】
【0051】
又は
【0052】
【0053】
(式(2g)中、Yは前記に同じ。)
で表される基である。
【0054】
式(3)において、R1は同一又は異なって、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子(好ましくは酸素原子)で置換されていてもよい。当該一部の炭素原子は、ケイ素原子に直接結合していない炭素原子であることが好ましい。また、当該置換されていてもよい一部の炭素原子は、1又は複数(例えば2、3、4、5、又は6)個の炭素原子であり、好ましくは1個の炭素原子である。
【0055】
なお、式(1)で表されるエポキシ樹脂において、合成の簡便さの観点等から同一ケイ素原子に結合したR1は同一であることが好ましい。また、式(1)において存在する全てのR1が同一であることがより好ましい。
【0056】
R1で示される炭素数1~18のアルキル基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。好ましくは炭素数1~10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0057】
R1で示される炭素数2~9のアルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、アリル基、2-プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2~4のアルケニル基である。
【0058】
R1で示されるシクロアルキル基としては、3~8員環のシクロアルキル基が挙げられ、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0059】
R1で示されるアリール基としては、単環又は二環のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。好ましくはフェニル基である。
【0060】
R1で示されるアラルキル基としては、アリール基(特にフェニル基)で置換された炭素数1~4のアルキル基が挙げられ、例えば、ベンジル基、α-フェネチル基、β-フェネチル基、β-メチルフェネチル基等が挙げられる。
【0061】
R1は、特に好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0062】
式(3)において、R2は、炭素数1~18のアルキレン基を示す。当該アルキレン基は、直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基であり、好ましくは直鎖状のアルキレン基である。例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、ジエチルメチレン基、ジメチレン基(-CH2CH2-)、トリメチレン基(-CH2CH2CH2-)、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基等が挙げられる。例えば、炭素数2~18のアルキレン基、好ましくは炭素数2~10のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2~8のアルキレン基であり、さらに好ましくは炭素数2~6のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数2~5のアルキレン基である。
【0063】
前記炭素数1~18のアルキレン基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子(好ましくは酸素原子)で置換されていてもよい。当該一部の炭素原子は、ケイ素原子及び3~8員環又はエポキシ環のいずれにも直接結合していない炭素原子であることが好ましい。また、当該置換されていてもよい一部の炭素原子は、1又は複数(例えば2、3、4、5、又は6)個の炭素原子であり、好ましくは1個の炭素原子である。当該基としては、R2のケイ素原子に結合する側を(*)とした場合に、例えば、(*)-炭素数2~9のアルキレン-O-炭素数1~8のアルキレン-、好ましくは(*)-炭素数2~4のアルキレン-O-炭素数1~3のアルキレン-、より好ましくは(*)-炭素数2~4のアルキレン-O-炭素数1~2のアルキレン-、特に好ましくは(*)-炭素数3のアルキレン-O-メチレン-が挙げられる。具体的には、例えば、(*)-(CH2)2-O-CH2-、(*)-(CH2)3-O-CH2-、(*)-(CH2)3-O-(CH2)2-、(*)-(CH2)5-O-(CH2)4-などが挙げられ、これらの中でも(*)-(CH2)3-O-CH2-が好ましい。
【0064】
式(3)において、mは0~6の整数(すなわち0、1、2、3、4、5、又は6)を示す。また、nは0~3の整数(すなわち、0、1、2、又は3)を示す。ここで、式(3)のR2が結合している基(ケイ素原子に結合していない側)を式(4)で示す(以下、「式(4)の基」ということがある)と、以下のようになる。
【0065】
【0066】
式(4)の基について、mが1~6の整数である場合を具体的に構造式で記載すると、m=1の場合は
【0067】
【0068】
m=2の場合は
【0069】
【0070】
m=3の場合は
【0071】
【0072】
m=4の場合は
【0073】
【0074】
m=5の場合は
【0075】
【0076】
m=6の場合は
【0077】
【0078】
と示される。
【0079】
式(4)の基は、mが0の場合には、エポキシ環のみが残り、nは0~3の整数を示すため、以下のいずれかの基を示す。
【0080】
【0081】
式(3)において、R2及びR3は、3~8員環又はエポキシ環に結合する。なお、nは3~8員環又はエポキシ環に結合するR3の数を示している。
【0082】
式(3)において、R3は同一又は異なって、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を示し、これらの基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよい。当該一部の炭素原子は、3~8員環又はエポキシ環に直接結合していない炭素原子であることが好ましい。また、当該置換されていてもよい一部の炭素原子は、1又は複数(例えば2、3、4、5、又は6)個の炭素原子であり得、好ましくは1個の炭素原子である。
【0083】
R3で示される炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~9のアルケニル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基はそれぞれ、上記R1で示される対応する置換基と同様のものが挙げられる。
【0084】
R3として、好ましくは炭素数1~3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0085】
中でも好ましい式(3)の基の例として、R1、R2、R3、m、及びnは前記に同じであって、且つ、R1が全て同一であり、R3が(複数存在する場合には)全て同一である基が挙げられる。当該基は、式(1)で表されるエポキシ樹脂には1、2、3又は4存在し、それぞれの基が同一又は異なってよく、同一であることが好ましい。
【0086】
また式(4)の基として、特に好ましい具体例としては、R3は前記に同じであり、mが0、1、2、3又は4を示し、nが0、1又は2を示す基が挙げられ、なかでもより好ましくは、例えば以下の基(いずれもR3は前記に同じ)が挙げられる。
【0087】
【0088】
式(4)の基は、式(1)で表されるエポキシ樹脂には1,2、3又は4存在するが、それぞれの基が同一又は異なってよく、同一であることが好ましい。
【0089】
また、X環を構成する炭化水素環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子に結合した水素原子は、低級炭素置換基又はハロゲン原子(好ましくは低級炭素置換基)で置換されていてもよい。つまり、X環が飽和炭化水素環又は不飽和炭化水素環、あるいは飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2~6個縮合した構造を有する環である場合は、これらの環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子に結合した水素原子は、低級炭素置換基又はハロゲン原子(好ましくは低級炭素置換基)で置換されていてもよく、またX環が飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環が2個連結した構造を有する環である場合は、これら連結された飽和炭化水素環及び/又は不飽和炭化水素環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子に結合した水素原子は、低級炭素置換基又はハロゲン原子(好ましくは低級炭素置換基)で置換されていてもよい。なお、X環が式(2)で表される環である場合をより具体的に説明すると、X1環及びX2環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子に結合した水素原子は、低級炭素置換基又はハロゲン原子(好ましくは低級炭素置換基)で置換されていてもよい、といえる。
【0090】
本明細書においては、X環を構成する炭化水素環を構成する炭素原子であって且つRXa、RXb、RXc、及びRXdが結合していない炭素原子を「RXa-d非結合炭素原子」ということがある。
【0091】
RXa-d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されていてもよい低級炭素置換基又はハロゲン原子は、1つのRXa-d非結合炭素原子に1つだけ結合することが好ましい。つまり、RXa-d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換される場合においては、RXa-d非結合炭素原子に結合した水素原子のうち1つの水素原子だけが低級炭素置換基又はハロゲン原子で置換されることが好ましい。また、当該置換の数(すなわち低級炭素置換基及びハロゲン原子の合計)は、RXa-d非結合炭素原子の数より少ないことが好ましい。当該置換の数は、より具体的には1~6(1、2、3、4、5、又は6)が好ましく、1~4がより好ましく、1~2がさらに好ましい。また、特にX環が式(2)で表される環である場合には、置換される水素原子はYが結合していない炭素原子に結合した水素原子であることが好ましい。
【0092】
RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち少なくとも1つが低級炭素置換基であって、且つRXa-d非結合炭素原子に低級炭素置換基が少なくとも1つ結合する場合、全ての低級炭素置換基が同一であることが好ましい。つまり、RXa、RXb、RXc、及びRXd中に低級炭素置換基が存在し、且つRXa-d非結合炭素原子に結合する低級炭素置換基が存在する場合、全ての低級炭素置換基が同一であることが好ましい。また、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち少なくとも1つがハロゲン原子であって、且つRXa-d非結合炭素原子にハロゲン原子が少なくとも1つ結合する場合、全てのハロゲン原子が同一であることが好ましい。つまり、RXa、RXb、RXc、及びRXd中にハロゲン原子が存在し、且つRXa-d非結合炭素原子に結合するハロゲン原子が存在する場合、全てのハロゲン原子が同一であることが好ましい。
【0093】
さらに具体的に説明すると、例えば、上記式(1’)で表される4価の基が
【0094】
【0095】
である場合、式(1)で表されるエポキシ樹脂として、式(1-X1)
【0096】
【0097】
(式(1-X1)中、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RXg1及びRXg2は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂を好ましく例示できる。式(1-X1)において、RXa、RXb、RXc、RXd、RXg1及びRXg2が、それぞれ、ベンゼン環上の異なる炭素原子に結合していることがより好ましい。式(1-X1)で表されるエポキシ樹脂の中でも、RXg1及びRXg2が水素原子であるものが好ましい。
【0098】
式(1-X1)で表されるエポキシ樹脂の中でも、さらに好ましいものとして式(1-X1a):
【0099】
【0100】
(式(1-X1a)中、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RXg1及びRXg2は、前記に同じ。)で表されるエポキシ樹脂や、式(1-X1b):
【0101】
【0102】
(式(1-X1b)中、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RXg1及びRXg2は、前記に同じ。)で表されるエポキシ樹脂が、例示できる。
【0103】
式(1-X1a)で表されるエポキシ樹脂の中でも、例えば、RXa及びRXbが水素原子でRXc及びRXdが式(3)の基であり、RXg1及びRXg2が水素原子である場合や、RXa及びRXcが水素原子でRXb及びRXdが式(3)の基であり、RXg1及びRXg2が水素原子である場合がより好ましい。
【0104】
また、式(1-X1b)で表されるエポキシ樹脂の中でも、例えば、RXaが水素原子でRXb、RXc及びRXdが式(3)の基であり、RXg1及びRXg2が水素原子である場合がより好ましい。
【0105】
また、上記式(1’)で表される4価の基が
【0106】
【0107】
(式(2g)中、Yは前記に同じ。)
で表される基である場合、式(1)で表されるエポキシ樹脂として、式(1-X2)
【0108】
【0109】
(式(1-X2)中、Yは前記に同じであり、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RX11、RX12、及びRX13並びにRX21、RX22、及びRX23は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂も好ましく例示できる。式(1-X2)において、RXa、RXc、RX11、RX12、及びRX13が、それぞれ異なる炭素原子に結合していることがより好ましく、また、RXb、RXd、RX21、RX22、及びRX23が、それぞれ異なる炭素原子に結合していることがより好ましい。また、RXa、RXb、RXc、RXd、RX11、RX12、RX13、RX21、RX22、及びRX23は、いずれもYが結合した炭素原子には結合しない。
【0110】
式(1-X2)で表されるエポキシ樹脂の中でも、さらに好ましいものとして式(1-X2a):
【0111】
【0112】
(式(1-X2a)中、Yは前記に同じであり、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RX11、RX12、及びRX13並びにRX21、RX22、及びRX23は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂や、式(1-X2b):
【0113】
【0114】
(式(1-X2b)中、Yは前記に同じであり、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RX11、RX12、及びRX13並びにRX21、RX22、及びRX23は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂や、式(1-X2c):
【0115】
【0116】
(式(1-X2c)中、Yは前記に同じであり、RXa、RXb、RXc、及びRXdは、前記に同じであり、RX11、RX12、及びRX13並びにRX21、RX22、及びRX23は、同一又は異なって、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又は低級アルケニル基を示す。)で表されるエポキシ樹脂が、例示出来る。
【0117】
式(1-X2a)で表されるエポキシ樹脂の中でも、例えば、RXa、RXb、RXc、及びRXdが式(3)の基であり、RX11及びRX21が低級炭素置換基であり、RX12、RX13、RX22、及びRX23が水素原子である場合が好ましい。中でも、Yが炭素数1~4のアルキル基で置換されていてもよい炭素数1~6のアルキレン基(特に-C(CH3)2-)であり、RXa、RXb、RXc、及びRXdが式(3)の基であり、RX11及びRX21が低級アルコキシ基であり、RX12、RX13、RX22、及びRX23が水素原子である場合が特に好ましい。これらの場合において、RXa、RXb、RXc、及びRXdの式(3)の基が全て同一であり、RX11及びRX21の低級炭素置換基が同一である場合が、より好ましい。
【0118】
また、式(1-X2b)で表されるエポキシ樹脂の中でも、例えば、RXa及びRXbが水素原子でRXc及びRXdが式(3)の基であり、RX11、RX12、RX13、RX21、RX22、及びRX23は水素原子の場合が好ましい。この場合において、RXc及びRXdの式(3)の基が同一である場合が、より好ましい。
【0119】
また、式(1-X2c)で表されるエポキシ樹脂の中でも、例えば、RXaが水素原子でRXb、RXc及びRXdが式(3)の基であり、RX11、RX12、RX13、RX21、RX22、及びRX23は水素原子の場合が好ましい。この場合において、RXb、RXc及びRXdの式(3)の基が同一である場合が、より好ましい。
【0120】
本明細書において、式(1)におけるX環、RXa、RXb、RXc、及びRXd、並びに式(3)の基におけるR1、R2、R3、m、及びnに関する説明は、式(4)の基についての説明も含め、いずれも任意に組み合わせることができ、その組み合わせにより示されるいずれのエポキシ樹脂も本発明に用いることができる。
【0121】
式(1)において、(iia)RXa-d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されておらず、且つ、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、RXa及びRXbが水素原子でRXc及びRXdが式(3)の基であるか、(iiia)RXa-d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されておらず、且つ、RXa、RXb、RXc、及びRXdのうち、RXaが水素原子でRXb、RXc、及びRXdが式(3)の基であるか、あるいは(iva)RXa-d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されておらず、且つ、RXa、RXb、RXc、及びRXdの全てが式(3)の基であり得る。
【0122】
(iia)の場合、式(1)で示されるエポキシ樹脂は、次の式(1-iia):
【0123】
【0124】
〔式中、Xiiは、炭化水素環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、又は式(2g-iia):
【0125】
【0126】
(式中、Yは、前記に同じ。)で表される2価の基を示し、
R1、R2、R3、m、及びnは前記に同じ。〕
で表されるエポキシ樹脂を好ましく包含する。なお、R1、R2、R3、m、及びnは、いずれも、それぞれ同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
【0127】
Xiiで示される2価の基として、好ましくはシクロヘキサン-1,4-ジイル基、1,4-フェニレン基が挙げられ、より好ましくは1,4-フェニレン基である。
【0128】
式(2g-iia)で表される2価の基のうち好ましくは、式(2g-iia’):
【0129】
【0130】
(式中、Yは前記に同じ。)
で表される基である。
【0131】
式(2g-iia’)において、Yが結合手、ジメチルメチレン基、酸素原子、又は-SO2-である基が特に好ましい。
【0132】
Xiiとして、中でも好ましくはシクロヘキサン-1,4-ジイル基、1,4-フェニレン基、式(2g-iia’)が挙げられ、より好ましくは1,4-フェニレン基である。
【0133】
例えば、式(1-iia)において、mは同一で0、1、2、3、又は4(特に好ましくは、mは同一で0又は4)、nは同一で0(すなわち、R3により環は置換されていない)を、Xiiは炭化水素環(特に好ましくはベンゼン環)から2個の水素原子を除いて得られる2価の基を、R1は同一で炭素数1~3のアルキル基を、R2は同一でケイ素原子及び3~6員環又はエポキシ環のいずれにも直接結合していない1個の炭素原子が酸素原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルキレン基を、それぞれ示すことで表されるエポキシ樹脂を、より好ましく本発明に用いることができる。
【0134】
(iiia)の場合、式(1)で示されるエポキシ樹脂は、次の式(1-iiia):
【0135】
【0136】
〔式中、Xiiiは、炭化水素環から3個の水素原子を除いて得られる3価の基、又は式(2g-iiia):
【0137】
【0138】
(式中、Yは、前記に同じ。)で表される3価の基を示し、
R1、R2、R3、m、及びnは前記に同じ。〕
で表されるエポキシ樹脂を好ましく包含する。なお、R1、R2、R3、m、及びnは、いずれも、それぞれ同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
【0139】
Xiiiで示される3価の基として、好ましくは以下の基:
【0140】
【0141】
が挙げられる。
【0142】
式(2g-iiia)で表される3価の基のうち好ましくは、式(2g-iiia’):
【0143】
【0144】
(式中、Yは前記に同じ。)
で表される基である。
【0145】
式(2g-iiia’)において、Yが結合手、ジメチルメチレン基、酸素原子、又は-SO2-である基が特に好ましい。
【0146】
例えば、式(1-iiia)において、mは同一で0、1、2、3、又は4(特に好ましくは、mは同一で0又は4)、nは同一で0(すなわち、R3により環は置換されていない)を、Xiiiは炭化水素環(特に好ましくはベンゼン環)から3個の水素原子を除いて得られる3価の基を、R1は同一で炭素数1~3のアルキル基を、R2は同一でケイ素原子及び3~6員環又はエポキシ環のいずれにも直接結合していない1個の炭素原子が酸素原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルキレン基を、それぞれ示すことで表されるエポキシ樹脂を、より好ましく本発明に用いることができる。
【0147】
(iva)の場合、式(1)で示されるエポキシ樹脂は、次の式(1-iva):
【0148】
【0149】
〔式中、Xivは、前記(1’)で示される4価の基であって、且つX環においてRXa-d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されていない基を示し、R1、R2、R3、m、及びnは前記に同じ。〕
で表されるエポキシ樹脂を包含する。なお、R1、R2、R3、m、及びnは、いずれも、それぞれ同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
【0150】
Xivで示される4価の基として、好ましくは以下の基:
【0151】
【0152】
が挙げられる。
【0153】
Xivで示される4価の基として、式(2g)で表される4価の基であってRXa-d非結合炭素原子に結合した水素原子が置換されていない基のうち、好ましくは、式(2g-iva’):
【0154】
【0155】
(式中、Yは前記に同じ。)
で表される基が挙げられる。
【0156】
式(2g-iva’)において、Yが結合手、ジメチルメチレン基、酸素原子、又は-SO2-である基が特に好ましい。
【0157】
例えば、式(1-iva)において、mは同一で0、1、2、3、又は4(特に好ましくは、mは同一で0又は4)、nは同一で0(すなわち、R3により環は置換されていない)を、Xivは炭化水素環(特に好ましくはベンゼン環)から4個の水素原子を除いて得られる4価の基を、R1は同一で炭素数1~3のアルキル基を、R2は同一でケイ素原子及び3~6員環又はエポキシ環のいずれにも直接結合していない1個の炭素原子が酸素原子で置換されていてもよい炭素数2~6のアルキレン基を、それぞれ示すことで表されるエポキシ樹脂を、より好ましく本発明に用いることができる。
【0158】
式(1)で表されるエポキシ樹脂のうち、さらに好ましいものとして、具体的には、例えば、式(1-IIa):
【0159】
【0160】
(式中、R1、R2、及びXiiは前記に同じ。)
で表される化合物が挙げられる。
【0161】
式(1-IIa)で表される化合物の中でも、Xiiが、1,4-フェニレン基又は式(2g-iia’)で表される基(好ましくは1,4-フェニレン基)であり、R1が同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数1~3のアルキル基(特にメチル基)であり、R2が同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数2~6のアルキレン基、(*)-(CH2)2-O-CH2-、(*)-(CH2)3-O-CH2-、(*)-(CH2)3-O-(CH2)2-、又は(*)-(CH2)5-O-(CH2)4-である化合物が好ましい。なお、上記同様、(*)はR2のケイ素原子に結合する側を示す。
上記式(1-IIa)で表されるエポキシ樹脂のうち、さらに好ましいものとして、式(1-IIa1):
【0162】
【0163】
(式中、R1及びXiiは前記に同じ。)
又は式(1-IIa2):
【0164】
【0165】
(式中、R1及びXiiは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂が例示できる。なお、R1は同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
【0166】
式(1-IIa1)又は(1-IIa2)において、R1は、同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数1~3のアルキル基(特にメチル基)であり、Xiiは、1,4-フェニレン基又は式(2g-iia’)で表される基であるものがより好ましい。
【0167】
また、式(1)で表されるエポキシ樹脂のうち、より好ましいものとして、例えば、式(1-IIb):
【0168】
【0169】
(式中、R1、R2、R3、Xii、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂を挙げることもできる。なお、R1、R2、R3、及びnは、いずれも、それぞれ同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
式(1-IIb)において、Xiiが1,4-フェニレン基又は式(2g-iia’)で表される基(好ましくは1,4-フェニレン基)であり、R1が同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数1~3のアルキル基(特にメチル基)であり、nが共に0(すなわち環はR3で置換されていない)であり、R2が同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数2~6のアルキレン基(好ましくはジメチレン基:-(CH2)2-)であるものがより好ましい。
【0170】
また、式(1)で表されるエポキシ樹脂のうち、より好ましいものとして、さらに例えば、式(1-IIIa):
【0171】
【0172】
(式中、R1、R2、R3、Xiii、及びnは前記に同じ。)
で表されるエポキシ樹脂を挙げることもできる。なお、R1、R2、R3、及びnは、いずれも、それぞれ同一又は異なっていてよく、同一であることが好ましい。
式(1-IIIa)において、Xiiiが
【0173】
【0174】
若しくは
【0175】
【0176】
又は式(2g-iiia’)で表される基であり、R1が同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数1~3のアルキル基(特にメチル基)であり、nが共に0(すなわち環はR3で置換されていない)であり、R2が同一又は異なって(好ましくは同一で)炭素数2~6のアルキレン基(好ましくはジメチレン基:-(CH2)2-)であるものがより好ましい。
【0177】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、式(1)で表されるエポキシ樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0178】
式(1)で表されるエポキシ樹脂は、公知の方法に基づいて又は準じて、例えば特許文献2(英国特許第1123960号公報)等の記載に基づいて又は準じて、製造することができる。また例えば、次の反応式で表される反応により式(1-iia)で示されるエポキシ樹脂を製造することができる。
【0179】
【0180】
(式中、R2Aは、炭素数2~18のアルケニル基であり、この基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子で置換されていてもよい。R1、R2、R3、及びXiiは前記に同じ。)
R2Aで示される炭素数2~18のアルケニル基としては、直鎖又は分岐鎖状のアルケニル基であり、直鎖状が好ましい。具体的には、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノルボルネニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられる。好ましくは炭素数2~10のアルケニル基であり、より好ましくは炭素数2~8のアルケニル基であり、さらに好ましくは炭素数2~6のアルケニル基であり、特に好ましくはビニル基、アリル基又はブテニル基である。なお、当該アルケニル基は、α-アルケニル基であることが好ましい。
【0181】
これらの炭素数2~18のアルケニル基は、一部の炭素原子が、酸素原子及び窒素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子(好ましくは酸素原子)で置換されていてもよい。当該一部の炭素原子は、エポキシ環に直接結合していない炭素原子であることが好ましい。また、当該置換されてもよい一部の炭素原子は、1又は複数(例えば2、3、4、5、又は6)個の炭素原子であり、好ましくは1個の炭素原子である。当該基としては、例えば、炭素数2~9アルケニル-O-炭素数1~8アルキレン-、好ましくは炭素数2~4アルケニル-O-炭素数1~3アルキレン-、より好ましくは炭素数2~4アルケニル-O-炭素数1~2アルキレン-、特に好ましくは炭素数3アルケニル-O-CH2-が挙げられる。より具体的には、例えば、CH2=CH-O-CH2-、CH2=CH-CH2-O-CH2-、CH2=CH-CH2-O-(CH2)2-、CH2=CH-(CH2)3-O-(CH2)4-などが挙げられ、これらの中でもCH2=CH-CH2-O-CH2-(アリルオキシメチル基)が好ましい。
【0182】
式(1-iia)で表されるエポキシ樹脂は、式(5-iia)で表される化合物と式(6)で表される化合物をヒドロシリル化反応させて製造することができる。ヒドロシリル化反応は、通常、触媒の存在下、溶媒の存在下又は非存在下で実施することができる。また、式(5-iia)で表される化合物にかえて、式(5-iiia):
【0183】
【0184】
(式中、R1及びXiiiは前記に同じ。)
又は式(5-iva):
【0185】
【0186】
(式中、R1及びXivは前記に同じ。)
又は式(5-ia):
【0187】
【0188】
(式中、Xiは炭化水素環から1個の水素原子を除いて得られる1価の基を示し、R1は前記に同じ。)
で表される化合物を用いることにより、上記式(1-iiia)又は(1-iva)で表されるエポキシ樹脂や1個の式(3)の基が炭化水素環に結合した構造を有するエポキシ樹脂を製造することもできる。また、これらの化合物の構造において、Xi~Xivが、それぞれ、X環から1個の水素原子を除いて得られる1価の基、X環から2個の水素原子を除いて得られる2価の基、X環から3個の水素原子を除いて得られる3価の基、又はX環から4個の水素原子を除いて得られる4価の基、に置換された構造の化合物を用いることで、式(1)で示される種々の化合物を製造することができる。
【0189】
ヒドロシリル化反応に用いられる触媒は、公知の触媒でよく、例えば、白金カーボン、塩化白金酸、白金のオレフィン錯体、白金のアルケニルシロキサン錯体、白金のカルボニル錯体等の白金系触媒;トリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム等のロジウム系触媒;ビス(シクロオクタジエニル)ジクロロイリジウム等のイリジウム系触媒が挙げられる。上記の触媒は溶媒和物(例えば、水和物、アルコール和物等)の形態であってもよく、また使用にあたり触媒をアルコール(例えば、エタノール等)に溶解して溶液の形態で用いることもできる。なお触媒は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0190】
触媒の使用量は、触媒としての有効量でよく、例えば、上記式(5-ia)、(5-iia)、(5-iiia)、又は(5-iva)で表される化合物と式(6)で表される化合物との合計量100質量部に対して 0.00001~20質量部、好ましくは0.0005~5質量部である。
【0191】
前記ヒドロシリル化反応は溶媒を用いなくても進行するが、溶媒を用いることにより穏和な条件で反応を行うことができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0192】
式(6)で表される化合物の使用量は、例えば、式(5-ia)、(5-iia)、(5-iiia)、又は(5-iva)で表される化合物中のSi-H基1モルに対して、通常、0.5~2モル、好ましくは0.6~1.5モル、さらに好ましくは0.8~1.2モルである。
【0193】
反応温度は、通常0℃~150℃、好ましくは10℃~120℃であり、反応時間は、通常1時間~24時間程度である。
【0194】
反応終了後、反応液から溶媒を留去するなど、公知の単離手法を用いることにより、式(1)で表されるエポキシ樹脂を得ることができる。
【0195】
本発明に用いられるアミン系硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂硬化剤として使用されている公知のものを適宜選択して使用することができる。例えば、アミノ基を1分子中に2個以上(例えば2、3、又は4個)有する化合物が好適である。このような化合物として、例えば鎖状脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン等の化合物が挙げられ、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミンがより好ましく挙げられる。なお、ここでは、ポリアミンとはアミノ基を2個以上(例えば、2、3、4、5、又は6個)持つ炭化水素、という意味で用いている。アミノ基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基、又は第3級アミノ基であってよく、第1級アミノ基及び第2級アミノ基の合計が、2個以上(例えば、2、3、4、5、又は6個)であることがより好ましい。またポリアミンには、炭素原子、水素原子、窒素原子以外の原子が含まれていてもよく、例えば酸素原子及び/又は硫黄原子が含まれていてもよい。
【0196】
前記鎖状脂肪族ポリアミンとしては、例えば、炭素数が2~20(2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)の鎖状脂肪族ポリアミンが好ましく、より具体的には、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジプロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
【0197】
前記脂環式ポリアミンとしては、例えば、炭素数が3~20(3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)の脂環式ポリアミンが好ましく、より具体的には、N-アミノエチルピペラジン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、4、4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、4、4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0198】
前記芳香族ポリアミンとしては、例えば、炭素数6~30(6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、又は24、25、26、27、28、29、又は30)の芳香族ポリアミンが好ましく、より具体的には、m-キシリレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(2-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-イソプロピルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-クロロアニリン)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-イソプロピル-6-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-エチル-6-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(2-ブロモ-6-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(N-メチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(N-エチルアニリン)、4,4’-メチレンビス(N-sec-ブチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジクロヘキシリデンアニリン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジアニリン、4,4’-(9-フルオレニリデン)ビス(N-メチルアニリン)、4,4’-ジアミノベンズアニリド、4,4’-オキシジアニリン、2,4-ビス(4-アミノフェニルメチル)アニリン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4-メチル-m-フェニレンジアミン、2-メチル-m-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、2-クロロ-p-フェニレンジアミン、2,4,6-トリメチル-m-フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン(2,4-ジエチル-6-メチル-m-フェニレンジアミンと4,6-ジエチル-2-メチル-m-フェニレンジアミンの混合物など)、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン[6-メチル-2,4-ビス(メチルチオ)-m-フェニレンジアミンと2-メチル-4,6-ビス(メチルチオ)-m-フェニレンジアミンの混合物等]、4,6-ジメチル-m-フェニレンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、α,α-ビス(4-アミノフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ビス(m-アミノフェニル)ベンゼン等が挙げられる。
【0199】
入手性の観点から、前記アミン系硬化剤は、炭素数が2~20の鎖状脂肪族ポリアミン、炭素数が3~20の脂環式ポリアミン及び炭素数6~30の芳香族ポリアミンが好ましく、なかでもジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ジプロピレンジアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、4、4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジエチルトルエンジアミン(2,4-ジエチル-6-メチル-m-フェニレンジアミンと4,6-ジエチル-2-メチル-m-フェニレンジアミンの混合物など)、m-キシリレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミンがより好ましい。
【0200】
より優れた耐水性を有する(特に、より低吸水率の)硬化物を得るという観点からはイソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン及びジエチルトルエンジアミン、4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミンが好ましい。
【0201】
アミン系硬化剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0202】
アミン系硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対してアミン系硬化剤中の活性水素基の当量が0.5~1.5当量となる割合で使用することが好ましく、0.8~1.2当量となることがさらに好ましい。
【0203】
エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂に対するアミン系硬化剤配合量は、エポキシ樹脂中のエポキシ基とアミン系硬化剤の活性水素基との当量比により適宜調整できる。例えば、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂100質量部に対してアミン系硬化剤は、1~100質量部配合することができ、好ましくは2~90質量部、より好ましくは3~80質量部配合することができる。
【0204】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに硬化促進剤を含有することが好ましい。
前記硬化促進剤としては、アミン系硬化剤を用いてエポキシ化合物を硬化させる際の硬化速度を促進させる際に一般に使用される硬化促進剤を用いることができ、例えば、第三級アミン、第三級アミン塩、イミダゾール類、有機リン系化合物、第四級アンモニウム塩、第四級ホスホニウム塩、第四級アルソニウム塩、第三級スルホニウム塩、第三級セレノニウム塩、第二級ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩、強酸エステル、ルイス酸、ルイス酸とルイス塩基の錯体等を用いることができる。硬化促進剤は1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、強酸のオニウム塩、強酸エステル、ルイス酸とルイス塩基の錯体等は潜在性酸触媒とも称される。
【0205】
前記第三級アミンとしては、例えば、ラウリルジメチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアニリン、(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン-5(DBN)等が挙げられる。
【0206】
前記第三級アミン塩としては、例えば、前記第三級アミンのカルボン酸塩、スルホン酸塩、無機酸塩などが挙げられる。カルボン酸塩としては、オクチル酸塩等の炭素数1~30(特に、炭素数1~10)のカルボン酸の塩(特に、脂肪酸の塩)などが挙げられる。スルホン酸塩としては、p-トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩などが挙げられる。第三級アミン塩の代表的な例として、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)の塩(例えば、p-トルエンスルホン酸塩、オクチル酸塩)等が挙げられる。
【0207】
前記イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0208】
前記有機リン系化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、亜リン酸トリフェニル等が挙げられる。
【0209】
前記第四級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミドなどが挙げられる。また、第四級アンモニウムカチオンの、カウンターイオンとして、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホネートイオン(p-トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、4-クロロベンゼンスルホネートイオン、ドデシルベンゼンスルホネートイオン、メタンスルホネートイオン、トリフルオロメタンスルホネートイオン等)、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモネートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等を有する第四級アンモニウム塩を用いることもできる。
【0210】
前記第四級ホスホニウム塩としては、例えば、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、テトラブチルホスホニウムラウリン酸塩、テトラブチルホスホニウムミリスチン酸塩、テトラブチルホスホニウムパルミチン酸塩、テトラブチルホスホニウムカチオンとビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸及び/又はメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸のアニオンとの塩、テトラブチルホスホニウムカチオンと1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸のアニオンとの塩などが挙げられる。また、第四級ホスホニウム塩としては、カウンターイオンとして、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホネートイオン(p-トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、4-クロロベンゼンスルホネートイオン、ドデシルベンゼンスルホネートイオン、メタンスルホネートイオン、トリフルオロメタンスルホネートイオン等)、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモネートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等を有する第四級ホスホニウム塩を用いることもできる。
【0211】
前記第四級アルソニウム塩、前記第三級スルホニウム塩、前記第三級セレノニウム塩、前記第二級ヨードニウム塩、前記ジアゾニウム塩としては、それぞれ、カウンターイオンとして、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホネートイオン(p-トルエンスルホネートイオン、ベンゼンスルホネートイオン、4-クロロベンゼンスルホネートイオン、ドデシルベンゼンスルホネートイオン、メタンスルホネートイオン、トリフルオロメタンスルホネートイオン等)、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ヘキサフルオロアンチモネートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等を有する塩等が挙げられる。
【0212】
前記第三級スルホニウム塩としては、下記式:
【0213】
【0214】
(式中、R4は水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数1~12のアルキル基を示し、R5a及びR5bは、同一又は異なって、炭素数1~12のアルキル基、ベンジル基、ハロゲノベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、メトキシベンジル基、クロロベンジル基、ジクロロベンジル基、トリクロロベンジル基、ニトロベンジル基、ジニトロベンジル基、トリニトロベンジル基、ナフチルメチル基(α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基)、ビニルベンジル基、シンナミル基を示し、R6は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、ヒドロキシル基、又は-O-R7を示し、R7はメチル基、アセチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンゾイル基、フェノキシカルボニル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、又はトリフルオロアセチル基を示し、
Zは、PF6、SbF6、ハロゲン原子(例えばF、Cl、Br)、(C6F5)4B、(C2F5)2F4P、(C2F5)3F3P、又は(C2F5)4F2Pを示す。なお、Zが(C6F5)4Bを示す場合のZ-はテトラキスペンタフルオロフェニルボレートを示す。)
で表されるスルホニウム塩が好ましい。当該式における炭素数1~12(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12)のアルキル基としては、炭素数1~8のアルキル基がより好ましく、炭素数1~6のアルキル基がさらに好ましい。また、直鎖又は分岐鎖状アルキル基であってよい。より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
【0215】
また、例えば、R4が水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を示し、R5aが炭素数1~4のアルキル基、ベンジル基、ハロゲノベンジル基、メチルベンジル基、ジメチルベンジル基、トリメチルベンジル基、メトキシベンジル基、クロロベンジル基、ジクロロベンジル基、トリクロロベンジル基、ニトロベンジル基、ジニトロベンジル基、トリニトロベンジル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、ビニルベンジル基、又はシンナミル基を示し、R5bが炭素数1~4のアルキル基、ベンジル基又はナフチルメチル基を示し、R6が水素原子、ヒドロキシル基、又は-O-R7を示し、R7はメチル基、又はアセチル基を示すことがより好ましい。
【0216】
当該式で表される第三級スルホニウム塩で、市販されているものとしては、三新化学工業社製サンエイドSI-60、SI-60L、SI-80、SI-80L、SI-100、SI-100Lなどが例示される。
【0217】
またさらに、第三級スルホニウム塩として、例えば下記式:
【0218】
【0219】
(式中、Zは前記に同じ。)
又は
【0220】
【0221】
(式中、Zは前記に同じ。)
で表される化合物も好ましく用いることができる。
【0222】
前記強酸エステルとしては、例えば、硫酸エステル、スルホン酸エステル、りん酸エステル、ホスフィン酸エステル、ホスホン酸エステル等が挙げられる。
【0223】
前記ルイス酸としては電子対を受容する性質を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば、ホウ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、スズ、ガリウム、インジウム、タリウム、スカンジウム、イッテルビウム、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、ニッケル、鉄、銅等の原子を含む化合物が挙げられる。なかでも入手性の観点からホウ素、アルミニウム、チタン、亜鉛、スズを含む化合物が好ましい。
【0224】
ホウ素を含む化合物としては例えば、3ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、ホウ酸エステル及び式Aで表される化合物等が挙げられる。
【0225】
前記3ハロゲン化ホウ素としては例えば、3フッ化ホウ素、3塩化ホウ素、3臭化ホウ素等が挙げられる。ホウ酸エステルとしてはホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリフェニル、フェニルホウ酸等が挙げられる。
【0226】
式Aで表される化合物は、具体的には、下記式A:
【0227】
【0228】
(式中、Rは、同一又は異なって、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。hは1~5の整数であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。jは1以上の整数であり、kは0以上の整数であり、j+k=3を満たす。)で表される化合物である。
【0229】
ここでの炭化水素基は、炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましい。炭子数1~20の炭化水素基は、全体として炭素原子が1~20であれば限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1または2以上が他の有機基又はハロゲン原子によって置換された基であっても良い。この場合の他の有機基としては、アルキル基(Rで表される炭化水素基がアルキル基である場合には、置換後の炭化水素基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基等が挙げられる。
【0230】
上記式におけるhは1、2、3、4、又は5であり、同一又は異なって、芳香環に結合しているフッ素原子の数を表す。hは好ましくは2~5であり、より好ましくは3~5であり、さらに好ましくは5である。
【0231】
また、jは1以上の整数であり、kは0以上の整数であり、j+k=3を満たす。すなわち、上記ルイス酸は、フッ素原子が結合した芳香環が少なくとも1つ、ホウ素原子に結合したものである。jはより好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3、すなわち、フッ素原子が結合した芳香環がホウ素原子に3つ結合している形態である。
【0232】
アルミニウムを含む化合物としては例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリターシャリーブチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジフェノキシメチルアルミニウム、アルミニウム(III)アセチルアセトナート、塩化アルミニウム、エチルアルミニウムジクロライド、メチルアルミニウム-ビス(2,6-ジ-tブチル-4-メチルフェノキシド)等が挙げられる。
【0233】
チタンを含む化合物としては例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラフェノキシチタン、ジイソプロポキシ・ビスアセチルアセトナトチタン、カテコール2分子がチタンに結合したビス(1,2ベンゼンジオキシ)チタン、2,2’-ビフェノール2分子がチタンに結合したビス(2,2’ビフェニルジオキシ)チタン、サリチル酸2分子がチタンに結合したビス(2-オキシベンゾイロキシ)チタン、テトラターシャリーブトキシチタン等が挙げられる。
【0234】
亜鉛を含む化合物としては例えば、塩化亜鉛(II)、オクチル酸亜鉛等が挙げられる。
【0235】
スズを含む化合物としては例えば、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、オクチル酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ等が挙げられる。
【0236】
好ましいルイス酸としては、3フッ化ホウ素、3塩化ホウ素、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン(TPB)、ビス(ペンタフルオロフェニル)フェニルボラン、ペンタフルオロフェニル-ジフェニルボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、アルミニウム(III)アセチルアセトナート、塩化アルミニウム、塩化亜鉛(II)、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)等が挙げられる。
【0237】
ルイス酸とルイス塩基との錯体としては例えば、ホウ素を含む化合物とアミン化合物の錯体が挙げられる。当該錯体に含まれるホウ素を含む化合物としては例えば、上述したルイス酸として使用できる化合物を好適に用いることができる。また、当該錯体に含まれる好ましいアミン化合物としては例えば、エチルアミン、イソプロピルアミン、アニリン、ベンジルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジベンジルアミン、ジメチルオクチルアミン、ピペリジン及びWO2012/036164に記載される、次の各項に記載されるピペリジン構造を有する化合物等が好ましく例示される。なお、炭素数1~6は炭素数1、2、3、4、5又は6を示し、炭素数1~20は炭素数1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20を示し、炭素数3~10は炭素数3、4、5、6、7、8、9又は10を示し、炭素数6~14は炭素数6、7、8、9、10、11、12、13又は14を示す。
項1n.
下記式で表されるピペリジン構造を有するアミン化合物。
【0238】
【0239】
[式中、R1N~R5Nは、同一又は異なって水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す]
項2n.
上記アミン化合物が下記式で表されるピペリジン構造を有する項1nに記載のアミン化合物。
【0240】
【0241】
[式中、R1N~R5Nは上記と同義を示し;XNは、-O-基、-(C=O)-基、-NR7N-基(R7Nは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す)、-O(C=O)-基、-(C=O)O-基、-NH(C=O)-基または-(C=O)NH-基を示す]項3n.
上記アミン化合物が、下記式で表されるものである項1nに記載のアミン化合物。
【0242】
【0243】
[式中、
R1N~R5Nは上記と同義を示し;
XNとZNは、同一又は異なって、-O-基、-(C=O)-基、-NR7N-基(R7Nは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を示す)、-O(C=O)-基、-(C=O)O-基、-NH(C=O)-基または-(C=O)NH-基を示し;
YNは置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基を示し;
R6Nは、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または上記ピペリジン構造を示し;
炭素数1~20のアルキレン基が有していてもよい置換基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数3~10のシクロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基および置換基を有していてもよい炭素数6~14のアリール基からなる群より選択される1以上を示し;
炭素数6~14のアリール基が有していてもよい置換基は、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基および炭素数1~6のアルコキシ基からなる群より選択される1以上を示す]
項4n.
上記アミン化合物が、下記式で表されるものである項1nに記載のアミン化合物。
【0244】
【0245】
[式中、R8N~R11Nのうち少なくとも1(すなわち1、2、3又は4)は上記ピペリジン構造を示し、残りは炭素数1~20のアルキル基を示す]
項5n.
上記アミン化合物がポリマーである項1nに記載のアミン化合物。
項6n.
上記アミン化合物が、下記式で表されるものである項1nに記載のアミン化合物。
【0246】
【0247】
[式中、R1N~R5Nは上記と同義を示す]
中でも好ましい具体的なアミン化合物の例を構造式で次に示す。例えば、上記項3nに記載のアミン化合物の好ましい例として、次の化合物が挙げられる。
【0248】
【0249】
また、上記項4nに記載のアミン化合物の好ましい例として、次の化合物が挙げられる。
【0250】
【0251】
また、上記項5nに記載のアミン化合物の好ましい例として、次の化合物が挙げられる。
【0252】
【0253】
また、上記項6nに記載のアミン化合物の好ましい例として、次の化合物が挙げられる。
【0254】
【0255】
これらの中でも特に好ましいアミン化合物として、ピペリジン及び表1に記載のアミン化合物が挙げられる。
【0256】
【0257】
当該錯体としては例えば、3フッ化ホウ素とピペリジン等のアミン化合物との錯体及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとピペリジン等のアミン化合物との錯体が好ましい。また、WO2012/036164に記載のホウ素を含む化合物とアミン化合物の錯体を好ましく用いることができる。WO2012/036164の明細書および/または図面に記載される内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0258】
当該錯体は市販品を用いることもできる。例えば、ステラケミファ社製の3フッ化ホウ素ピペリジン、日本触媒社製のFX-TP-BC-PCシリーズを用いることができる。
【0259】
好ましい硬化促進剤の例としては、アルミニウムを含む化合物、3フッ化ホウ素とピペリジン等のアミン化合物との錯体、及びトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとピペリジン等のアミン化合物との錯体が挙げられる。
【0260】
硬化促進剤の配合量は本発明の効果を発揮できる範囲であれば特に制限されない。アミン系硬化剤の種類によっても異なるが、例えば、アミン系硬化剤100質量部に対して、0.1~60質量部、好ましくは1~50質量部、さらに好ましくは2~45質量部である。また、硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂組成物中のエポキシ樹脂100質量部に対して、例えば、0.2~20質量部、好ましくは0.5~16質量部、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0261】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、式(1)で表されるエポキシ樹脂は単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、上述の通りアミン系硬化剤および硬化促進剤も単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0262】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記式(1)表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を含有していてもよい。該エポキシ樹脂としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロ型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0263】
式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂を配合する場合、式(1)で表されるエポキシ樹脂と、式(1)で表されるエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂との配合比率は、質量比で、例えば100:0~20:80であり、好ましくは100:0~30:70であり、より好ましくは100:0~40:60である。
【0264】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明の目的や効果を損なわない範囲で、必要に応じてフィラー、その他の硬化剤、熱可塑性樹脂、添加剤等を含有してもよい。
【0265】
前記フィラーとしては、該フィラーとしては、組成物及び硬化物において必要とされる流動性、耐熱性、低熱膨張性、機械特性、硬度、耐擦傷性及び接着性などを考慮し、単独で、又は複数種を混合して用いることができる。例えば、シリカ(より具体的には結晶性シリカ、溶融シリカ、球状溶融シリカ等)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、酸化インジウム、アルミナ、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム(ITO)などの無機化合物が挙げられる。また、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、亜鉛、ステンレスなどの金属が挙げられる。また、モンモリロナイト、タルク、マイカ、ベーマイト、カオリン、スメクタイト、ゾノライト、バーキュライト、セリサイトなどの鉱物が挙げられる。その他のフィラーとしては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブなどの炭素化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーンなどの各種ガラスなどを挙げることができる。また、フィラーは粉体をそのまま使用してもよく、樹脂中に分散させたものを用いてもよい。
【0266】
前記その他の硬化剤としては、例えば、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、メルカプタン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤などが挙げられる。前記その他の硬化剤は、単独で用いてもよく、また、求める特性に応じて使い分けることが可能であり、2種以上を併用してもよい。
【0267】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアセタール樹脂、およびこれらが酸変性されたもの等が挙げられる。
【0268】
前記添加剤としては、例えば、酸化防止剤、無機蛍光体、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、溶剤、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等が挙げられる。
【0269】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、式(1)で表されるエポキシ樹脂及びアミン系硬化剤並びにさらに必要に応じて他の成分を混合することにより製造することができる。混合方法は、均一に混合できる方法であれば特に限定はない。本発明のエポキシ樹脂組成物には、必要に応じ、本発明の効果に悪影響を与えない範囲で溶剤(例えば、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン等)を添加してもよい。
【0270】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化することにより硬化物(すなわち、当該エポキシ樹脂組成物の硬化物)を得ることができる。硬化の方法は、特に限定されず、例えば、該組成物を加熱硬化することで実施できる。硬化温度は、通常室温~300℃であり、硬化時間は、組成液によって異なり、通常30分~1週間まで幅広く設定することができる。
【0271】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例】
【0272】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【0273】
製造例1(エポキシ樹脂Aの製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた200mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、アリルグリシジルエーテル5.9g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2質量%エタノール溶液0.05g、トルエン100gを仕込み、液温を70℃まで昇温させた。次いで、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン5.0gを15分間で滴下した後、90℃で4時間攪拌した。トルエンを蒸留により除去することで、無色透明液体の1,4-ビス[(2,3-エポキシプロピルオキシプロピル)ジメチルシリル]ベンゼン(エポキシ樹脂A)10.3g(エポキシ当量211g/eq)を取得した。
【0274】
製造例2(エポキシ樹脂Bの製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた200mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,2-エポキシ-5-ヘキセン5.0g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2質量%エタノール溶液0.05g、トルエン100gを仕込み、液温を70℃まで昇温させた。次いで、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン5.0gを15分間で滴下し、その後、90℃で5時間攪拌した。トルエンを蒸留により除去することで、無色透明液体の1,4-ビス[(2,3-エポキシブチル)ジメチルシリル]ベンゼン(エポキシ樹脂B)9.5g(エポキシ当量195g/eq)を取得した。
【0275】
製造例3(エポキシ樹脂Cの製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた200mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン6.4g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2質量%エタノール溶液0.05g、トルエン100gを仕込み、液温を70℃まで昇温させた。次いで、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼン5.0gを15分間で滴下し、その後、90℃で4時間攪拌した。トルエンを蒸留により除去することで、無色透明液体の1,4-ビス{[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]ジメチルシリル}ベンゼン(エポキシ樹脂C)10.8g(エポキシ当量221g/eq)を取得した。
【0276】
製造例4(エポキシ樹脂Dの製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた500mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン4.3g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2質量%エタノール溶液0.05g、トルエン250gを仕込み、液温を70℃まで昇温させた。次いで、ビス[(p-ジメチルシリル)フェニル]エーテル5.0gを15分間で滴下し、その後、90℃で6時間攪拌した。トルエンを蒸留により除去することで、無色透明液体の4,4’-ビス{[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]ジメチルシリル}ジフェニルエーテル(エポキシ樹脂D)8.9g(エポキシ当量267g/eq)を取得した。
【0277】
製造例5(エポキシ樹脂Eの製造)
攪拌機、温度計及び冷却器を備え付けた500mL容の四つ口フラスコに、窒素雰囲気下で、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン7.4g、ヘキサクロロ白金酸六水和物の2質量%エタノール溶液0.05g、トルエン250gを仕込み、液温を70℃まで昇温させた。次いで、1,3,5-トリス(ジメチルシリル)ベンゼン5.0gを15分間で滴下し、その後、90℃で6時間攪拌した。トルエンを蒸留により除去することで、無色透明液体の1,3,5-トリス{[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]ジメチルシリル}ベンゼン(エポキシ樹脂E)11.8g(エポキシ当量208g/eq)を取得した。
【0278】
実施例、比較例
表2及び表3に記載した配合量の各成分をカップに秤量し、加温・攪拌し均一混合させ、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0279】
表2及び表3中の各成分は以下の通りである。なお、表2及び表3の各成分の数値は、質量部を示す。
【0280】
・エポキシ樹脂F:三菱化学社製Bis-A型エポキシ樹脂(グレード828)(エポキシ当量189g/eq)
・エポキシ樹脂G:ダイセル社製脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P;一般名は3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)(エポキシ当量137g/eq)
・アミン系硬化剤A:テトラエチレンペンタミン(東京化成工業社製)
アミン系硬化剤B:イソホロンジアミン(東京化成工業社製)
アミン系硬化剤C:ALBEMARLE社製エタキュア100(一般名;ジエチルトルエンジアミン)
アミン系硬化剤D:日本化薬社製カヤハードA-A(一般名;4,4’-メチレンビス(2-エチルアニリン))
アミン系硬化剤E:4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(東京化成工業社製)
・硬化促進剤A:3フッ化ホウ素ピペリジン(ステラケミファ社製)
硬化促進剤B:FX-TP-BC-PC-AD-57130(日本触媒社製)
硬化促進剤C:アルミニウム(III)アセチルアセトナート(東京化成工業社製)
【0281】
得られた各実施例及び比較例のエポキシ樹脂組成物について、以下の項目について評価した。なお、各評価の結果を表2及び表3に併せて示す。
【0282】
(1)吸水率
実施例及び比較例で得られたエポキシ樹脂組成物を樹脂製モールド(厚さ2mm)に流し込み、120℃で1時間、150℃で1時間、200℃で4時間加熱して硬化させ、幅20mm×長さ30mm×厚み2mmのサイズに切り出し、吸水率測定用の試験片とした。得られた試験片を98℃の熱水中に24時間浸漬し(吸水試験)、吸水させて下記の式に基づき吸水率(%)を算出した。
【0283】
吸水率(%) = (吸水後の試験片の質量-吸水前の試験片の質量)/(吸水前の試験片の質量)×100
【0284】
(2)吸水試験前後でのガラス転移温度の変化率
吸水試験前後の試験片をTAインスツル社製動的粘弾性測定装置「RSG-G2」を用いて、引張モード、昇温速度10℃/minで貯蔵弾性率及び損失弾性率を測定した。下記式にてTanδを算出し、Tanδの値が極大値となるときの温度をガラス転移温度とした。吸水試験前後でのガラス転移温度の変化率を下記の式より算出し、95%以上を◎、90%以上95%未満を○、90%未満を×と評価した。
【0285】
Tanδ = (損失弾性率/貯蔵弾性率)
ガラス転移温度の変化率(%) = (吸水試験後のガラス転移温度/吸水試験前のガラス転移温度)×100
【0286】
(3)吸水試験前後での貯蔵弾性率の変化率
吸水試験前後の試験片をTAインスツル社製動的粘弾性測定装置「RSG-G2」を用いて、引張モード、昇温速度10℃/minで貯蔵弾性率を測定した。吸水試験前後での弾性率の変化率を下記の式より算出し、95%以上を◎、90%以上95%未満を○、90%未満を×と評価した。
【0287】
貯蔵弾性率の変化率(%) = (吸水試験後の30℃での貯蔵弾性率/吸水試験前の30℃での貯蔵弾性率)×100
【0288】
【0289】