IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-26
(45)【発行日】2022-10-04
(54)【発明の名称】凹凸構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/10 20060101AFI20220927BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20220927BHJP
【FI】
B29C39/10
B29C59/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021508704
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2019041275
(87)【国際公開番号】W WO2020194817
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2019059494
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渕上 裕次郎
(72)【発明者】
【氏名】市川 健次
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼原 崇喜
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-252113(JP,A)
【文献】特開2013-123884(JP,A)
【文献】国際公開第2013/089223(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0050347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/00-39/44
B29C 59/00-59/18
B29C 33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸パターンを有する第1のパターン原盤の凹部に第1の硬化性樹脂が充填され、前記凹部に充填された前記第1の硬化性樹脂のメニスカスが前記第1のパターン原盤の表面から突出し、かつ前記メニスカスが互いに孤立した状態で存在している第1の樹脂充填パターン原盤、凹凸パターンを有する第2のパターン原盤の凹部に第2の硬化性樹脂が充填され、前記凹部に充填された前記第2の硬化性樹脂のメニスカスが前記第2のパターン原盤の表面から突出し、かつ前記メニスカスが互いに孤立した状態で存在している第2の樹脂充填パターン原盤、及び、基材を準備し、
前記第1のパターン原盤の表面における前記凹部の幅Lに対し、前記第1のパターン原盤における前記メニスカスの高さHが、L/100≦H≦L/10を満たし、
前記第2のパターン原盤の表面における前記凹部の幅Lに対し、前記第2のパターン原盤における前記メニスカスの高さHが、L/100≦H≦L/10を満たし、
前記第1の硬化性樹脂及び前記第2の硬化性樹脂の20℃における粘度は、それぞれ独立に0.4Pa・s~1.2Pa・sであり、
前記第1の樹脂充填パターン原盤における前記メニスカスと前記基材の一方の面とを接触させた状態で前記第1の硬化性樹脂を硬化させ、前記第1の硬化性樹脂の硬化後に前記第1のパターン原盤を離型し、前記第2の樹脂充填パターン原盤における前記メニスカスと前記基材の他方の面とを接触させた状態で前記第2の硬化性樹脂を硬化させ、前記第2の硬化性樹脂の硬化後に前記第2のパターン原盤を離型することにより、前記一方の面に前記第1のパターン原盤の前記凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第1の硬化樹脂が形成され、かつ前記他方の面に前記第2のパターン原盤の前記凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第2の硬化樹脂が形成された凹凸構造体を製造する凹凸構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の硬化性樹脂及び前記第2の硬化性樹脂は、光硬化性樹脂である請求項1に記載の凹凸構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第1のパターン原盤の表面における前記凹部の幅Lに対し、前記第1のパターン原盤の凹部の深さDが、D>L/2を満たし、
前記第2のパターン原盤の表面における前記凹部の幅Lに対し、前記第2のパターン原盤の凹部の深さDが、D>L/2を満たす請求項1又は請求項2に記載の凹凸構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の樹脂充填パターン原盤における前記第1のパターン原盤と前記一方の面とを接触させずに、前記第1の樹脂充填パターン原盤における前記メニスカスと前記一方の面とを接触させ、
前記第2の樹脂充填パターン原盤における前記第2のパターン原盤と前記他方の面とを接触させずに、前記第2の樹脂充填パターン原盤における前記メニスカスと前記他方の面とを接触させる請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の凹凸構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第1の樹脂充填パターン原盤における前記メニスカスと前記一方の面とを接触させ、前記第2の樹脂充填パターン原盤における前記メニスカスと前記他方の面とを接触させた状態で前記第1のパターン原盤に充填された前記第1の硬化性樹脂及び前記第2のパターン原盤に充填された前記第2の硬化性樹脂を硬化させた後に、前記第1のパターン原盤及び前記第2のパターン原盤を離型することにより、前記凹凸構造体を製造する請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の凹凸構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の硬化性樹脂及び前記第2の硬化性樹脂の20℃における表面張力は、それぞれ独立に30mN/m~40mN/mである請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の凹凸構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、凹凸構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に微細な凹凸パターンが形成された成形品を製造する方法としてインプリント技術が知られており、種々の検討がされている。
【0003】
例えば、特開平5-238196号公報には、電離放射線硬化性樹脂をロール凹版の少なくとも凹部に充填させると共に上記樹脂にフィルム基材を接触させ上記樹脂がフィルム基材とロール凹版の間に保持されている状態で電離放射線を照射して上記樹脂を硬化させて形成した凹凸模様を有する賦型シートが開示されている。
【0004】
例えば、特開2005-53004号公報には、多角形状、多面形状、或いは円滑な略半球形状の微細形状に施された凹刻模様を有する金型を用い、金型の凹刻模様に透光性を有する紫外線硬化型樹脂を充填せしめる工程と、紫外線硬化型樹脂に透光性を有する合成樹脂シートを圧着せしめる工程と、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ合成樹脂シートと一体化させる工程と、紫外線硬化型樹脂と一体化した合成樹脂シートを金型から剥離する工程と、金属光沢層を設ける工程とを有する高輝度成型品の製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開平5-238196号公報及び特開2005-53004号公報では、凹部を有するロール凹版又は凹刻模様を有する金型に硬化性樹脂を充填させる際に、ロール凹版又は金型の表面にも硬化性樹脂が付着してしまう。そのため、ロール凹版又は金型の表面に硬化性樹脂が付着した状態でフィルム基材又は合成樹脂シートを圧着し、硬化させた樹脂をフィルム基材又は合成樹脂シートに転写させた場合、転写された凸形状パターン間をつなぐ残膜が発生するおそれがある。この残膜が発生している場合、硬化収縮による歪みが発生しやすいという問題がある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基材における残膜の発生が抑制された凹凸構造体を製造する凹凸構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 凹凸パターンを有する第1のパターン原盤の凹部に第1の硬化性樹脂が充填され、上記凹部に充填された上記第1の硬化性樹脂のメニスカスが上記第1のパターン原盤の表面から突出し、かつ上記メニスカスが互いに孤立した状態で存在している第1の樹脂充填パターン原盤、凹凸パターンを有する第2のパターン原盤の凹部に第2の硬化性樹脂が充填され、上記凹部に充填された上記第2の硬化性樹脂のメニスカスが上記第2のパターン原盤の表面から突出し、かつ上記メニスカスが互いに孤立した状態で存在している第2の樹脂充填パターン原盤、及び、基材を準備し、
上記第1の樹脂充填パターン原盤における上記メニスカスと上記基材の一方の面とを接触させた状態で上記第1の硬化性樹脂を硬化させ、上記第1の硬化性樹脂の硬化後に上記第1のパターン原盤を離型し、上記第2の樹脂充填パターン原盤における上記メニスカスと上記基材の他方の面とを接触させた状態で上記第2の硬化性樹脂を硬化させ、上記第2の硬化性樹脂の硬化後に上記第2のパターン原盤を離型することにより、上記一方の面に上記第1のパターン原盤の上記凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第1の硬化樹脂が形成され、かつ上記他方の面に上記第2のパターン原盤の上記凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第2の硬化樹脂が形成された凹凸構造体を製造する凹凸構造体の製造方法。
<2> 上記第1の硬化性樹脂及び上記第2の硬化性樹脂は、光硬化性樹脂である上記<1>に記載の凹凸構造体の製造方法。
<3> 上記第1のパターン原盤の表面における上記凹部の幅Lに対し、上記第1のパターン原盤の凹部の深さDが、D>L/2を満たし、
上記第2のパターン原盤の表面における上記凹部の幅Lに対し、上記第2のパターン原盤の凹部の深さDが、D>L/2を満たす上記<1>又は<2>に記載の凹凸構造体の製造方法。
<4> 上記第1のパターン原盤の表面における上記凹部の幅Lに対し、上記第1のパターン原盤における上記メニスカスの高さHが、L/100≦H≦L/10を満たし、
上記第2のパターン原盤の表面における上記凹部の幅Lに対し、上記第2のパターン原盤における上記メニスカスの高さHが、L/100≦H≦L/10を満たす上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の凹凸構造体の製造方法。
<5> 上記第1の樹脂充填パターン原盤における上記第1のパターン原盤と上記一方の面とを接触させずに、上記第1の樹脂充填パターン原盤における上記メニスカスと上記一方の面とを接触させ、
上記第2の樹脂充填パターン原盤における上記第2のパターン原盤と上記他方の面とを接触させずに、上記第2の樹脂充填パターン原盤における上記メニスカスと上記他方の面とを接触させる上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の凹凸構造体の製造方法。
<6> 上記第1の樹脂充填パターン原盤における上記メニスカスと上記一方の面とを接触させ、上記第2の樹脂充填パターン原盤における上記メニスカスと上記他方の面とを接触させた状態で上記第1のパターン原盤に充填された上記第1の硬化性樹脂及び上記第2のパターン原盤に充填された上記第2の硬化性樹脂を硬化させた後に、上記第1のパターン原盤及び上記第2のパターン原盤を離型することにより、上記凹凸構造体を製造する上記<1>~<5>のいずれか1つに記載の凹凸構造体の製造方法。
<7> 上記第1の硬化性樹脂及び上記第2の硬化性樹脂の20℃における表面張力は、それぞれ独立に30mN/m~40mN/mである上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の凹凸構造体の製造方法。
<8> 上記第1の硬化性樹脂及び上記第2の硬化性樹脂の20℃における粘度は、それぞれ独立に0.4Pa・s~1.2Pa・sである上記<1>~<7>のいずれか1つに記載の凹凸構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、基材における残膜の発生が抑制された凹凸構造体を製造する凹凸構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、本開示の凹凸構造体の製造方法で用いる第1のパターン原盤の断面を模式的に示す図である。
図1B図1Bは、第1の硬化性樹脂が充填された第1のパターン原盤の断面を模式的に示す図である。
図1C図1Cは、メニスカスと基材の一方の面とを接触させた構成の断面を模式的に示す図である。
図1D図1Dは、凹凸形状を有する基材の断面を模式的に示す図である。
図1E図1Eは、第2の硬化性樹脂が充填された第2のパターン原盤の断面を模式的に示す図である。
図1F図1Fは、メニスカスと基材の他方の面とを接触させた構成の断面を模式的に示す図である。
図1G図1Gは、本開示の凹凸構造体の製造方法で製造される凹凸構造体の断面を模式的に示す図である。
図2図2は、本開示の凹凸構造体の製造方法にて、凹部に第1の硬化性樹脂を充填する方法の一例を模式的に示す図である。
図3図3は、本開示の凹凸構造体の製造方法にて、凹部に第1の硬化性樹脂を充填する方法の他の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本開示の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語である。
特に限定しない限りにおいて、本開示において硬化性樹脂中の各成分は、1種単独で含まれていてもよいし、2種以上を併用してもよいものとする。
更に、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係は図面の内容に限定されない。
【0011】
本発明の一実施形態の凹凸構造体の製造方法は、凹凸パターンを有する第1のパターン原盤の凹部に第1の硬化性樹脂が充填され、上記凹部に充填された上記第1の硬化性樹脂のメニスカスが上記第1のパターン原盤の表面から突出し、かつ上記メニスカスが互いに孤立した状態で存在している第1の樹脂充填パターン原盤、凹凸パターンを有する第2のパターン原盤の凹部に第2の硬化性樹脂が充填され、上記凹部に充填された上記第2の硬化性樹脂のメニスカスが上記第2のパターン原盤の表面から突出し、かつ上記メニスカスが互いに孤立した状態で存在している第2の樹脂充填パターン原盤、及び、基材を準備し、上記第1の樹脂充填パターン原盤における上記メニスカスと上記基材の一方の面とを接触させた状態で上記第1の硬化性樹脂を硬化させ、上記第1の硬化性樹脂の硬化後に上記第1のパターン原盤を離型し、上記第2の樹脂充填パターン原盤における上記メニスカスと上記基材の他方の面とを接触させた状態で上記第2の硬化性樹脂を硬化させ、上記第2の硬化性樹脂の硬化後に上記第2のパターン原盤を離型することにより、上記一方の面に上記第1のパターン原盤の上記凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第1の硬化樹脂が形成され、かつ上記他方の面に上記第2のパターン原盤の上記凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第2の硬化樹脂が形成された凹凸構造体を製造する方法である。
【0012】
本開示の凹凸構造体の製造方法では、凹凸パターンを有する第1のパターン原盤(以下、単に「第1のパターン原盤」とも称する。)の凹部に充填された第1の硬化性樹脂のメニスカスが、第1のパターン原盤の表面から突出し、互いに孤立した状態で存在している、第1の樹脂充填パターン原盤(以下、単に「第1の樹脂充填パターン原盤」とも称する。)を準備する。これにより、第1の硬化性樹脂のメニスカスと基材の一方の面とを接触させた状態で第1の硬化性樹脂を硬化させた際に、基材上に形成された、第1のパターン原盤の凹部に対応する凸部の間をつなぐ残膜の発生を抑制することができる。さらに、基材の一方の面上に形成された、凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第1の硬化樹脂の硬化収縮による歪みが抑制される。
【0013】
さらに、本開示の凹凸構造体の製造方法では、凹凸パターンを有する第2のパターン原盤(以下、単に「第2のパターン原盤」とも称する。)の凹部に充填された第2の硬化性樹脂のメニスカスが、第2のパターン原盤の表面から突出し、互いに孤立した状態で存在している、第2の樹脂充填パターン原盤(以下、単に「第2の樹脂充填パターン原盤」とも称する。)を準備する。これにより、第2の硬化性樹脂のメニスカスと基材の他方の面とを接触させた状態で第2の硬化性樹脂を硬化させた際に、基材上に形成された、第2のパターン原盤の凹部に対応する凸部の間をつなぐ残膜の発生を抑制することができる。さらに、基材の他方の面上に形成された、凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第2の硬化樹脂の硬化収縮による歪みが抑制される。また、本開示の凹凸構造体の製造方法では、基材の一方の面及び他方の面に凹凸形状を有する、第1の硬化樹脂及び第2の硬化樹脂がそれぞれ形成するため、第1の硬化樹脂及び第2の硬化樹脂の硬化収縮による影響が相殺された凹凸構造体を製造することも可能である。
【0014】
以上により、本開示の凹凸構造体の製造方法では、基材における残膜の発生が抑制された凹凸構造体を製造することができる。さらに、基材上に形成された第1の硬化樹脂及び第2の硬化樹脂の硬化収縮による歪みが抑制され、製造される凹凸構造体の形状の再現性も向上すると考えられる。
【0015】
パターン原盤の凹部に充填された硬化性樹脂のメニスカスが、互いに孤立した状態で存在している構成としては、例えば、隣接するメニスカスの間をつなぐ硬化性樹脂が凹部の周辺部に存在していない構成が挙げられる。隣接するメニスカスの間をつなぐ硬化性樹脂が凹部の周辺部に存在している場合、パターン原盤の凹部に充填された硬化性樹脂のメニスカスが、互いに孤立した状態で存在している構成には該当しない。
【0016】
(凹凸パターンを有するパターン原盤)
本開示の凹凸構造体の製造方法では、凹凸パターンを有する第1のパターン原盤及び凹凸パターンを有する第2のパターン原盤を用いる。第1のパターン原盤を用い、凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第1の硬化樹脂を基材の一方の面上に形成し、第2のパターン原盤を用い、凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第2の硬化樹脂を基材の他方の面上に形成することにより、凹凸構造体を製造する。以下、図1A図1Gを用いて第1のパターン原盤の好ましい形態について説明する。なお、第2のパターン原盤の好ましい形態については、第1のパターン原盤の好ましい形態と同様であるため、その説明を省略する。例えば、第1のパターン原盤における、凹部の幅L、凹部の深さD、及びメニスカスの高さHは、それぞれ第2のパターン原盤における、凹部の幅L、凹部の深さD、及びメニスカスの高さHと読み替えてもよい。また、第1のパターン原盤及び第2のパターン原盤のとる形態は、それぞれ独立であり、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0017】
図1Aに示すように、第1のパターン原盤1は、複数の凹部2を備える凹凸パターンを有する。
【0018】
第1のパターン原盤1の表面における凹部2の幅Lは、メニスカス6の高さを確保する点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、10μm~100μmがさらに好ましい。
【0019】
凹部2の幅は、深さ方向において変動してもよく、例えば、凹部2の幅は、第1のパターン原盤1の表面から深さ方向に進むにつれて小さくなってもよい。
【0020】
第1のパターン原盤1における凹部2の深さDは、1μm~50μmが好ましく、10μm~20μmがより好ましい。凹部2の深さDが50μm以下であることにより、パターン原盤1の離型性に優れる。
【0021】
第1のパターン原盤1の表面における凹部2の幅Lに対し、凹部2の深さDは、D>L/2であることが好ましく、L/2<D<3Lであることがより好ましい。
【0022】
凹凸パターンのピッチPは、残膜の発生を好適に抑制する点から、P>L/4であることが好ましく、P>Lであることがより好ましく、P>1.5Lであることがさらに好ましい。また、凹凸パターンのピッチPは、P<3Lであってもよい。凹凸パターンのピッチは、凹部2の底が平坦な場合は、隣接する2つの凹部2の底の中心部間の距離を指し、凹部2の底が尖っている場合は、隣接する2つの凹部2の底の先端部間の距離を指す。
【0023】
第1のパターン原盤1の材質としては、例えば、グラファイト(C)、シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、窒化シリコン(SiN)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、石英等の無機物、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の有機物が挙げられる。
【0024】
第1のパターン原盤1の凹凸パターンを有する面は、離型処理が施されていることが好ましい。離型処理により、凹凸パターンを有する面に第1の硬化性樹脂5が付着しにくくなり、凹部2に充填された第1の硬化性樹脂5のメニスカス6を互いに孤立した状態で存在させやすくなる。さらに、第1の硬化性樹脂5の硬化後に第1のパターン原盤1を離型しやすくなる。
【0025】
離型処理としては、第1のパターン原盤1の凹凸パターンを有する面に離型剤を付与する処理が挙げられる。離型剤としては、公知のものを用いればよく、例えば、公知のフッ素系樹脂、炭化水素系潤滑剤、フッ素系潤滑剤、フッ素系シランカップリング剤等が挙げられる。
また、離型剤は、1種類のみを使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
第1のパターン原盤1(凹凸構造体作製前)の接触角としては、水に対して90°~180°であることが好ましく、90°~140°であることがより好ましい。接触角は、全自動接触角計DM-701(協和界面科学株式会社製)を用いて測定すればよい。
【0027】
第1のパターン原盤1は、例えば、上述した材質の成形体の表面に凹凸パターンを形成することにより得られる。凹凸パターンを形成する際は、例えば、リソグラフィ、電子ビーム加工、イオンビーム加工、陽極酸化などを材料の表面に施せばよい。
【0028】
第1のパターン原盤1の凹部2には、図1Bに示すように、第1の硬化性樹脂5が充填される。そして、凹部2に充填された第1の硬化性樹脂5のメニスカス6が第1のパターン原盤1の表面から突出し、かつメニスカス6が互いに孤立した状態とした第1の樹脂充填パターン原盤1Aを準備する。図1Bに示す第1の樹脂充填パターン原盤1Aを準備する方法の例については、後述する。
【0029】
(第1の硬化性樹脂)
本開示の凹凸構造体の製造方法にて用いられる第1の硬化性樹脂としては、インプリント技術で用いられる硬化性樹脂であれば特に限定されない。以下、第1の硬化性樹脂の好ましい形態について説明する。なお、第2の硬化性樹脂の好ましい形態については、第1の硬化性樹脂の好ましい形態と同様であるため、その説明を省略する。また、第1の硬化性樹脂及び第2の硬化性樹脂のとる形態は、それぞれ独立であり、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0030】
第1の硬化性樹脂としては、例えば、活性エネルギー線で硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、熱で硬化する熱硬化性樹脂等が挙げられる。
活性エネルギー線としては、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外光線、電子線等が挙げられる。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂としては、紫外線、可視光線、赤外光線等の光で硬化する光硬化性樹脂が好ましく、中でも紫外線で硬化する光硬化性樹脂が好ましい。
【0031】
光硬化性樹脂としては、重合性不飽和結合及びエポキシ基の少なくとも一方を含む樹脂が挙げられ、より具体的には、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0032】
光硬化性樹脂は、重合性不飽和結合及びエポキシ基の少なくとも一方を含む重合性モノマー、光重合開始剤等を含んでいてもよい。また、光硬化性樹脂等の硬化性樹脂は、必要に応じて、カップリング剤、有機溶剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、チキソ性付与剤、レベリング剤、着色剤、無機質充填剤等を含んでいてもよい。
【0033】
第1の硬化性樹脂5の20℃における表面張力は、30mN/m~40mN/mであることが好ましく、31mN/m~38mN/mであることがより好ましく、31mN/m~35mN/mであることがさらに好ましい。第1の硬化性樹脂5の20℃における表面張力が30mN/m以上であることにより、第1のパターン原盤1の表面から突出するメニスカス6を形成しやすい傾向にある。第1の硬化性樹脂5の20℃における表面張力が40mN/m以下であることにより、第1のパターン原盤1に対する第1の硬化性樹脂5の充填性が高い傾向にある。
【0034】
表面張力は、表面張力計を用いて測定される。表面張力計としては、例えば、協和界面科学株式会社製の表面張力計(商品名:Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z)を好適に用いることができる。但し、表面張力計は、これに限定されない。
【0035】
第1の硬化性樹脂5の20℃における粘度は、0.4Pa・s~1.2Pa・sであることが好ましく、0.4Pa・s~1.0Pa・sであることがより好ましく、0.4Pa・s~0.8Pa・sであることがさらに好ましい。第1の硬化性樹脂5の20℃における粘度が0.4Pa・s以上であることにより、第1のパターン原盤1の表面から突出するメニスカス6を形成しやすい傾向にある。第1の硬化性樹脂5の20℃における粘度が1.2Pa・s以下であることにより、第1のパターン原盤1に対する第1の硬化性樹脂5の充填性が高い傾向にある。
【0036】
粘度は、粘度計を用いて測定される。粘度計としては、例えば、東機産業株式会社製の粘度計(商品名:VISCOMETER TVE-25)を好適に用いることができる。但し、粘度計は、これに限定されない。
【0037】
第1のパターン原盤1の表面における凹部2の幅Lに対し、メニスカス6の高さHは、L/100≦H≦L/10を満たすことが好ましく、L/20≦H≦L/10を満たすことがより好ましい。例えば、第1の硬化性樹脂5の粘度、表面張力等を調節することにより、メニスカス6の高さHを調節することができる。具体的には、第1の硬化性樹脂5の粘度及び表面張力の少なくとも一方を大きくことによりメニスカス6の高さHを大きくできる傾向にある。
【0038】
メニスカス6の高さHは、基材10に対してメニスカス6を十分に接触させて硬化後の第1の硬化樹脂8と基材10の一方の面との密着性を高める点、及び残膜の発生を好適に抑制する点から、0.1μm~5μmであることが好ましく、0.1μm~1μmであることがより好ましい。
【0039】
図1Cに示すように凹部2に第1の硬化性樹脂5を充填し、メニスカス6を形成した後、メニスカス6と基材10の一方の面とを接触させる。このとき、基材10の一方の面における残膜を好適に抑制する点から、第1のパターン原盤1と基材10の一方の面とを接触させずに、メニスカス6と基材10の一方の面とを接触させることが好ましい。
【0040】
(基材)
本開示の凹凸構造体の製造方法にて用いられる基材10としては、インプリント技術で用いられる基材であれば特に限定されない。基材の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ガラス等が挙げられる。
【0041】
また、第1の硬化性樹脂5が光により硬化する光硬化性樹脂の場合、基材10及び第1のパターン原盤1の少なくとも一方は、光透過性を有することが好ましい。これにより、基材10側又は第1のパターン原盤1側から光を照射して第1の硬化性樹脂5を硬化させることができる。
光透過性を有するとは、第1の硬化性樹脂5が吸収する波長域の光を基材10及び第1のパターン原盤1の少なくとも一方が透過することを意味する。
【0042】
基材10の形状としては、特に限定されず、基板状、フィルム状、シート状などが挙げられる。シート状の基材10を用いる場合、ロールトゥロール方式での連続プロセスにて凹凸構造体を製造してもよい。
【0043】
基材10の厚さとしては、特に限定されず、10μm~10mmであることが好ましく、200μm~10mmであることがより好ましい。
【0044】
また、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の特性の改良を目的として、基材10の表面に、コーティング、コロナ処理等が施されていてもよい。
【0045】
メニスカス6と基材10の一方の面とを接触させた後、例えば、図1Cに示すように、第1のパターン原盤1のメニスカス6と基材10の一方の面とが接触している側とは反対側から紫外線等の光を第1のパターン原盤1の凹部2に充填された第1の硬化性樹脂5に照射し、第1の硬化性樹脂5を硬化させる。図1C中の矢印は、紫外線の照射方向を表す。
【0046】
第1の硬化性樹脂5の硬化後に第1のパターン原盤1を離型することにより、図1Dに示すように、第1のパターン原盤1の凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第1の硬化樹脂8が基材10の一方の面上に形成された凹凸形状を有する基材20を得ることができる。凹凸形状を有する基材20では、基材の一方の面側にて、凸形状の第1の硬化樹脂8の間をつなぐ残膜の発生が抑制されている。
【0047】
次に、図1Eに示すように、第2のパターン原盤11の凹部に第2の硬化性樹脂15を充填させ、凹部に充填された第2の硬化性樹脂15のメニスカス16が第2のパターン原盤11の表面から突出し、かつメニスカス16が互いに孤立した状態とした第2の樹脂充填パターン原盤11Aを準備する。図1Dに示す第2の樹脂充填パターン原盤11Aを準備する方法は、後述する図1Bに示す第1の樹脂充填パターン原盤1Aを準備する方法と同様である。
【0048】
図1Fに示すように凹部に第2の硬化性樹脂15を充填し、メニスカス16を形成した後、メニスカス16と基材10の他方の面とを接触させる。このとき、基材10の他方の面における残膜を好適に抑制する点から、第2のパターン原盤11と基材10の他方の面とを接触させずに、メニスカス16と基材10の他方の面とを接触させることが好ましい。
【0049】
メニスカス6と基材10の他方の面とを接触させた後、例えば、図1Fに示すように、第2のパターン原盤11のメニスカス16と基材10の他方の面とが接触している側とは反対側から紫外線等の光を第2のパターン原盤11の凹部に充填された第2の硬化性樹脂15に照射し、第1の硬化性樹脂15を硬化させる。図1F中の矢印は、紫外線の照射方向を表す。
【0050】
第2の硬化性樹脂15の硬化後に第2のパターン原盤11を離型することにより、図1Gに示すように、第1の硬化樹脂8が基材10の一方の面上に形成され、かつ第2のパターン原盤11の凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する第2の硬化樹脂18が基材10の他方の面上に形成された凹凸構造体30を得ることができる。凹凸構造体30では、基材の他方の面側にて、凸形状の第2の硬化樹脂18の間をつなぐ残膜の発生が抑制されている。
【0051】
なお、図1Cに示すように第1の硬化性樹脂5を硬化させた後に、図1Fに示すように第2の硬化性樹脂15を硬化させているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、第1の硬化性樹脂の硬化と第2の硬化性樹脂の硬化とを同時並行して行ってもよい。
【0052】
第1の硬化性樹脂の硬化と第2の硬化性樹脂の硬化とを同時並行して行う場合、第1の樹脂充填パターン原盤1Aにおけるメニスカス6と基材10の一方の面とを接触させ、第2の樹脂充填パターン原盤11Aにおけるメニスカス16と基材10の他方の面とを接触させる。次いで、第1のパターン原盤1に充填された第1の硬化性樹脂5及び第2のパターン原盤11に充填された第2の硬化性樹脂15を硬化させた後に、第1のパターン原盤1及び第2のパターン原盤11を離型すればよい。これにより、効率よく凹凸構造体30を製造できる。また、基材10の厚さが100μm以下と比較的薄い場合、第1の硬化性樹脂5の硬化と第2の硬化性樹脂15の硬化とを同時並行して行うことが好ましい。通常、基材10の厚さが薄い場合には、樹脂の硬化収縮による影響を受けやすくなるが、第1の硬化性樹脂5の硬化と第2の硬化性樹脂15の硬化とを同時並行することで、第1の硬化樹脂8及び第2の硬化樹脂18の硬化収縮による影響が相殺される。
【0053】
また、図1Fでは、図1Dにて得られた凹凸形状を有する基材20を反転させて、図1Cと同じ方向である鉛直下方向から鉛直上方向に向かって活性エネルギー線である紫外線を照射しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図1Dにて得られた凹凸形状を有する基材20を反転させずに、基材10の他方の面を鉛直上側とし、メニスカス6と基材10の他方の面とを接触させた後、図1Cと逆方向である鉛直上方向から鉛直下方向に向かって活性エネルギー線である紫外線を第2のパターン原盤11の凹部に充填された第2の硬化性樹脂15に照射してもよい。
【0054】
図1Gで得られる凹凸構造体30は、基材10の一方の面に形成された第1の硬化樹脂8のパターンと、基材10の他方の面に形成された第2の硬化樹脂18のパターンとは、基材10の厚さ方向と直交する基材10の対称面に対して上下対称となっているが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、第1の硬化樹脂8のパターンと、第2の硬化樹脂18のパターンとは、前述の基材10の対称面に対して非対称であってもよく、それぞれ任意のパターンであってもよい。
【0055】
(第1の樹脂充填パターン原盤を準備する方法1)
図1Bに示す第1の樹脂充填パターン原盤1Aを準備する方法について説明する。まず、方法1では、第1のパターン原盤1の表面に第1の硬化性樹脂5を付与し、付与した第1の硬化性樹脂5を凹部2に充填させ、凹部2に充填されずに第1のパターン原盤1の凹凸パターンを有する面に残存する第1の硬化性樹脂5を除去することにより、第1の樹脂充填パターン原盤1Aを得ることができる。以下、図2を用いて説明する。
【0056】
まず、図2の(a)に示すように、凹凸パターンを有する第1のパターン原盤1を準備する。
【0057】
次に、図2の(b)に示すように、第1のパターン原盤1の凹凸パターンを有する面の凹凸パターンが形成されていない領域に滴下手段3を用いて第1の硬化性樹脂5を滴下する。そして、図2の(c)及び(d)に示すように、第1のパターン原盤1に付着した第1の硬化性樹脂5にブレード4を接触させた状態で矢印X方向にブレード4を移動させて第1のパターン原盤1の凹凸パターン上に第1の硬化性樹脂5を展開させる。なお、スプレーコート、バーコート、スピンコート、ロールコート等により、第1のパターン原盤1の凹凸パターンを有する面の凹凸パターン上に第1の硬化性樹脂5を付与してもよい。
【0058】
第1のパターン原盤1の凹凸パターンを有する面に滴下又は付与する第1の硬化性樹脂5の量としては、第1のパターン原盤1の表面から突出するメニスカス6を好適に形成する点から、後述するように凹凸パターン上の第1の硬化性樹脂5を凹部2に充填させた際に、凹部2に硬化性樹脂がフル充填され、凹部2に充填されなかった硬化性樹脂5が凹凸パターンを有する面上に付着する程度の量であることが好ましい。
【0059】
パターン原盤1の凹凸パターン上に硬化性樹脂5を展開させた後、図2の(e)に示すように、減圧条件下に第1のパターン原盤1を曝すことにより、凹部2に第1の硬化性樹脂5を充填させてもよい。これにより、凹部2に第1の硬化性樹脂5を充填させた際に凹部2内での気泡の発生等を抑制でき、凹部2に第1の硬化性樹脂5を十分に充填することができる。減圧条件としては、例えば、0.1Pa以下の雰囲気であればよい。凹部2に第1の硬化性樹脂5を充填させた第1のパターン原盤1では、凹凸パターンを有する面上に凹部2に充填されなかった第1の硬化性樹脂5が付着している。
【0060】
次に、図2の(f)に示すように、第1のパターン原盤1の凹凸パターン上に展開された第1の硬化性樹脂5にブレード4を接触させた状態で矢印X方向にブレード4を移動させることにより、凹凸パターン上の第1の硬化性樹脂5を掻きとって第1のパターン原盤1の凹凸パターン上から除去する。これにより、図2の(g)に示すように、凹部2に第1の硬化性樹脂5が充填され、さらにメニスカス6が第1のパターン原盤1の表面から突出する。
【0061】
凹凸パターンを有する面上に付着した第1の硬化性樹脂5を好適に除去する点から、第1の硬化性樹脂5の凝集速度よりもブレード4の掻きとり速度を小さくすることが好ましい。ブレード4の掻きとり速度としては、例えば、1mm/秒以下であってもよい。ブレード4の掻きとり速度は、第1の硬化性樹脂5の粘度、表面張力等に応じて適宜調節してもよく、例えば、20℃での表面張力が38mN/mであり、20℃での粘度が1.105Pa・sである第1の硬化性樹脂5を用いた場合、0.1mm/秒以下であることが好ましく、メニスカス6の形成及び生産性の点から、0.05mm/秒~0.1mm/秒であることがより好ましい。凹凸パターンを有する面上に付着した第1の硬化性樹脂5を好適に除去する点から、第1の硬化性樹脂5の粘度が高い場合、第1の硬化性樹脂5の表面張力が大きい場合等にて、ブレード4の掻きとり速度を小さくしてもよい。
凹凸パターンを有する面上に付着した第1の硬化性樹脂5を好適に除去することにより、メニスカス6の高さHよりも厚さの大きい第1の硬化性樹脂5がメニスカス6と孤立して凹凸パターンを有する面上に残存することが抑制できる。これにより、メニスカス6と基材10とを接触させようとする際に、メニスカス6よりも先にメニスカス6と孤立して存在する第1の硬化性樹脂5が基材10と接触してしまうことが抑制できるため、好適に凹凸構造体30を製造することができる。
【0062】
ブレード4の材質、凹凸パターン上の第1の硬化性樹脂5を掻きとるときのブレード4の角度及び印加荷重としては、凹凸パターン上の第1の硬化性樹脂5を掻きとって第1のパターン原盤1の凹凸パターン上から除去することができれば特に制限されない。
【0063】
図2の(h)に示すように、第1のパターン原盤1の凹凸パターン上から除去した第1の硬化性樹脂5を、吸着手段7を用いて第1のパターン原盤1から除去する。これにより、第1の樹脂充填パターン原盤1Aを得ることができる。
【0064】
(樹脂充填パターン原盤1Aを準備する方法2)
図1Bに示す樹脂充填パターン原盤1Aを準備する別の方法について説明する。方法2では、第1のパターン原盤1を第1の硬化性樹脂5に浸漬させて第1の硬化性樹脂5を凹部2に充填させ、水平方向と交差する方向に第1のパターン原盤1を第1の硬化性樹脂5から引き上げることにより、第1の樹脂充填パターン原盤1Aを得る。以下、図3を用いて説明する。
【0065】
まず、治具21に、凹凸パターンを有する面を露出させて固定した第1のパターン原盤1を鉛直方向下側に移動させて容器に貯留した第1の硬化性樹脂5に浸漬させて第1の硬化性樹脂5を凹部2に充填させる。
【0066】
次に、図3の(a)及び(b)に示すように、治具21に固定した第1のパターン原盤1を鉛直方向上側(矢印Y方向)に移動させることにより、第1のパターン原盤1を第1の硬化性樹脂5から引き上げる。これにより、第1の樹脂充填パターン原盤1Aを得ることができる。なお、第1のパターン原盤1を第1の硬化性樹脂5から引き上げる方向としては、鉛直方向上側に限定されず、水平方向と交差する方向であればよく、例えば、水平面から鉛直方向に向かって60°~90°傾斜していてもよい。
【0067】
凹凸パターンを有する面上に付着した第1の硬化性樹脂5を好適に除去する点から、第1の硬化性樹脂5の凝集速度(図3の(b)中の矢印Z方向の速度)よりも第1のパターン原盤1の引き上げ速度(図3の(b)中の矢印Y方向の速度)を小さくすることが好ましい。第1のパターン原盤1の引き上げ速度としては、例えば、1mm/秒以下であってもよい。第1のパターン原盤1の引き上げ速度は、第1の硬化性樹脂5の粘度、表面張力等に応じて適宜調節してもよく、例えば、20℃での表面張力が38mN/mであり、20℃での粘度が1.105Pa・sである第1の硬化性樹脂5を用いた場合、0.1mm/秒以下であることが好ましく、メニスカス6の形成及び生産性の点から、0.05mm/秒~0.1mm/秒であることがより好ましい。凹凸パターンを有する面上に付着した第1の硬化性樹脂5を好適に除去する点から、第1の硬化性樹脂5の粘度が高い場合、第1の硬化性樹脂5の表面張力が大きい場合等にて、第1のパターン原盤1の引き上げ速度を小さくしてもよい。
凹凸パターンを有する面上に付着した第1の硬化性樹脂5を好適に除去することにより、メニスカス6の高さHよりも厚さの大きい第1の硬化性樹脂5がメニスカス6と孤立して凹凸パターンを有する面上に残存することが抑制できる。これにより、メニスカス6と基材10とを接触させようとする際に、メニスカス6よりも先にメニスカス6と孤立して存在する第1の硬化性樹脂5が基材10と接触してしまうことが抑制できるため、好適に凹凸構造体30を製造することができる。
【0068】
本開示の凹凸構造体の製造方法により得られる凹凸構造体は、例えば、光学デバイス、反応デバイス、バイオデバイス等として用いることができる。例えば、凹凸構造体の凹部を反応場とすることにより、反応デバイス、バイオデバイス等として用いることができる。
【実施例
【0069】
以下、本発明の実施形態を具体的な実施例を示して具体的に説明する。但し、本発明の実施形態は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではなく、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。
【0070】
実施例及び比較例では、以下に示すパターン原盤及び硬化性樹脂塗布液を用いた。硬化性樹脂塗布液としては、後述の塗布液A、塗布液B及びこれらの混合物を用いた。
<パターン原盤>
材質及び大きさ:6インチシリコンウエハ
凹凸パターンの加工方法:レーザー直接描画及び反応性イオンエッチング
凹凸パターンの形成領域:30mm×30mm
凹凸パターン:ピッチ 20μm、凹部の幅L(L及びL) 10μm、凹部の深さD(D及びD) 16μm
パターン原盤の凹凸パターン側の離型処理:離型剤(商品名:オプツール HD-1100、ダイキン工業株式会社)の付与
<硬化性樹脂塗布液>
塗布液A:商品名:PAK-01(東洋合成株式会社、20℃での表面張力:29mN/m、20℃での粘度:0.056Pa・s)
塗布液B:商品名:PAK-WCL101(東洋合成株式会社、20℃での表面張力:38mN/m、20℃での粘度:1.105Pa・s)
【0071】
[実施例1及び比較例1~比較例3]
塗布液A及び塗布液Bを用い、以下の表1に示す粘度及び表面張力を示す硬化性樹脂塗布液を準備した。硬化性樹脂塗布液の粘度及び表面張力は、前述のようにして20℃にて測定した値である。比較例2及び比較例3では、塗布液A及び塗布液Bの混合比率を変更した硬化性樹脂塗布液を準備した。
【0072】
(凹部への硬化性樹脂塗布液の充填)
実施例1及び比較例1~3では、図2に示す手順に従い、パターン原盤の凹部への硬化性樹脂塗布液の充填を20℃で行った。用いたブレード、ブレードの使用条件(凹凸パターン上の硬化性樹脂塗布液を掻きとるときのブレードの使用条件)、及び減圧条件としては以下の通りである。また、実施例及び各比較例において、ブレードを用いて硬化性樹脂塗布液を掻きとる前にて、全ての凹部に硬化性樹脂塗布液が充填され、さらに、凹凸パターンの形成領域上の全体に凹部に充填されなかった硬化性樹脂塗布液が付着する程度の量である1mL~2mLの硬化性樹脂塗布液を使用した。
<ブレード>
セラミックドクターブレード(富士商興株式会社製)
<ブレードの使用条件>
印加荷重:1N
凹凸パターンを有する面に対するブレード角度:45°
掻きとり速度:0.1mm/秒(硬化性樹脂塗布液の凝集速度>ブレードの掻きとり速度)又は1.0mm/秒(硬化性樹脂塗布液の凝集速度<ブレードの掻きとり速度)
<減圧条件>
0.1Paの雰囲気
【0073】
(メニスカスの有無及び高さの確認)
ブレードを用いて硬化性樹脂塗布液を掻きとった後にプラスのメニスカス(パターン原盤の表面から突出するメニスカス)の有無及びメニスカスの高さを3D表面粗さ/形状測定機NewView(Zygo社製)を用いて確認した。
結果を表1に示す。なお、メニスカスの有無については、互いに孤立したプラスのメニスカス(パターン原盤の表面から突出するメニスカス)ができた場合を「有り」とし、互いに孤立したプラスのメニスカスができなかった場合を「無し」とした。
実施例1では、パターン原盤上の硬化性樹脂塗布液を除去することができ、互いに孤立したプラスのメニスカスが確認できた。
比較例1及び2では、パターン原盤上の硬化性樹脂塗布液を除去することはできたが、互いに孤立したプラスのメニスカスができていなかった。
比較例3では、ブレードを用いて硬化性樹脂塗布液を掻きとった後においても凹凸パターンを有する面上に付着した硬化性樹脂塗布液を十分に除去できず、凹部に充填された硬化性樹脂塗布液と、凹凸パターンを有する面上に付着した硬化性樹脂塗布液とがつながっていた。そのため、比較例3では、互いに孤立したプラスのメニスカスを形成することができなかった。
【0074】
(凹凸構造体の製造)
実施例1における樹脂充填パターン原盤である凹部に硬化性樹脂塗布液を充填したパターン原盤を2つ準備し、さらに縦30mm×横30mm×厚さ725mmの基材(シリコンウエハ、コバレントマテリアル社製)を用い、凹凸構造体を以下のようにして製造した。
まず、凹部に硬化性樹脂塗布液を充填したパターン原盤の凹部が形成された面と基材の一方の面とを対面させた状態で位置あわせをした。実施例1では、基材の一方の面とパターン原盤のメニスカスが形成された側の面とを接触させずに基材の一方の面とメニスカスとを接触させた状態で、基材におけるパターン原盤側の面とは反対側から紫外線を照射量2000mJ/cmの条件でパターン原盤に充填された硬化性樹脂塗布液に照射して硬化性樹脂塗布液を硬化させた。その後、パターン原盤を離型することにより、パターン原盤の凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する硬化樹脂が基材の一方の面上に形成された凹凸形状を有する基材を得た。
【0075】
次に、凹部に硬化性樹脂塗布液を充填したパターン原盤の凹部が形成された面と基材の他方の面とを対面させた状態で位置あわせをした。実施例1では、基材の他方の面とパターン原盤のメニスカスが形成された側の面とを接触させずに基材の他方の面とメニスカスとを接触させた状態で、前述と同様の操作を行い、硬化性樹脂塗布液を硬化させ、さらにパターン原盤を離型することにより、基材の一方の面上に硬化樹脂が形成され、かつパターン原盤の凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する硬化樹脂が基材の他方の面上に形成された凹凸構造体を得た。
【0076】
比較例1及び比較例2についても、凹部に硬化性樹脂塗布液を充填したパターン原盤、及び実施例1にて用いた基材を用い、凹凸構造体の製造を以下のようにして試みた。
まず、凹部に硬化性樹脂塗布液を充填したパターン原盤の凹部が形成された面と基材の一方の面とを対面させた状態で位置あわせをした。比較例1及び2では、互いに孤立したプラスのメニスカスができていなかったため、凹部に充填された硬化性樹脂塗布液と基材とを十分に密着させることができなかった。さらに、比較例1及び2では、パターン原盤と基材とを接触させた状態で実施例1と同様にして硬化性樹脂塗布液を硬化させた後にパターン原盤を離型したが、硬化樹脂が基材上に十分に密着しなかったため、凹凸形状を有する基材が得られなかった。凹凸形状を有する基材が得られなかったため、凹凸構造体の製造を断念した。
【0077】
比較例3についても、凹部に硬化性樹脂塗布液を充填したパターン原盤を二つ準備し、さらに実施例1にて用いた基材を用い、凹凸構造体の製造を以下のようにして試みた。
まず、凹部に硬化性樹脂塗布液を充填したパターン原盤の凹部が形成された面と基材の一方の面とを対面させた状態で位置あわせをした。比較例3では、凹凸パターンを有する面上に付着した硬化性樹脂塗布液と基材の一方の面とを接触させた状態で実施例1と同様にして硬化性樹脂塗布液を硬化させた後にパターン原盤を離型することにより、パターン原盤の凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する硬化樹脂が基材の一方の面上に形成された凹凸形状を有する基材を得た。
【0078】
次に、比較例3にて、凹部に硬化性樹脂塗布液を充填したパターン原盤の凹部が形成された面と基材の他方の面とを対面させた状態で位置あわせをした。凹凸パターンを有する面上に付着した硬化性樹脂塗布液と基材の他方の面とを接触させた状態で実施例1と同様にして硬化性樹脂塗布液を硬化させた後にパターン原盤を離型することにより、基材の一方の面上に硬化樹脂が形成され、かつパターン原盤の凹凸パターンに対応する凹凸形状を有する硬化樹脂が基材の他方の面上に形成された凹凸構造体を得た。
【0079】
(凹凸構造体での残膜の確認)
凹凸構造体が得られた実施例1及び比較例3について、凹凸構造体での残膜の有無を3D表面粗さ/形状測定機NewView(Zygo社製)を用いて確認した。
なお、残膜有り及び残膜無しの基準は以下の通りである。
-評価基準-
残膜あり・・・隣接する凸形状の硬化樹脂の間をつなぐ硬化樹脂の薄膜が基材の面上に一部でも付着している。
残膜なし・・・隣接する凸形状の硬化樹脂の間をつなぐ硬化樹脂の薄膜が基材の面上に付着していない。
結果を表1に示す。
【0080】
【表1】
【0081】
[実施例2~5及び比較例4~6]
塗布液A及び塗布液Bを用い、以下の表2に示す粘度及び表面張力を示す硬化性樹脂塗布液を準備した。硬化性樹脂塗布液の粘度及び表面張力は、前述のようにして20℃にて測定した値である。実施例2~4並びに比較例5及び比較例6では、塗布液A及び塗布液Bの混合比率を変更した硬化性樹脂塗布液を準備した。
【0082】
(凹部への硬化性樹脂塗布液の充填)
実施例2~5及び比較例4~6では、図3に示すようにパターン原盤の凹凸パターンの形成領域全面が硬化性樹脂塗布液と接触するように、パターン原盤を硬化性樹脂塗布液に浸漬させてパターン原盤の凹部への硬化性樹脂塗布液の充填を20℃で行った。パターン原盤の引き上げ条件としては、以下の通りである。
<パターン原盤の引き上げ条件>
引き上げ方向:鉛直方向上側
引き上げ速度:0.1mm/秒(硬化性樹脂塗布液の凝集速度>パターン原盤の引き上げ速度)又は1.0mm/秒(硬化性樹脂塗布液の凝集速度<パターン原盤の引き上げ速度)
【0083】
パターン原盤を硬化性樹脂塗布液から引き上げた後にプラスのメニスカス(パターン原盤の表面から突出するメニスカス)の有無を確認した。
結果を表2に示す。なお、メニスカスの有無の評価方法については、前述の実施例1及び比較例1~比較例3と同様である。
実施例2~5では、パターン原盤上の硬化性樹脂塗布液を除去することができ、互いに孤立したプラスのメニスカスが確認できた。
比較例4及び5では、パターン原盤上の硬化性樹脂塗布液を除去することはできたが、互いに孤立したプラスのメニスカスができていなかった。
比較例6では、凹部に充填された硬化性樹脂塗布液と、凹凸パターンを有する面上に付着した硬化性樹脂塗布液とがつながっていた。そのため、比較例6では、互いに孤立したプラスのメニスカスを形成することができなかった。
【0084】
(凹凸構造体の製造)
実施例2~5では、実施例1と同様の方法により凹凸構造体を得た。
比較例4及び5では、実施例1と同様の方法により凹凸構造体を製造しようと試みたが、比較例1及び2と同様に硬化樹脂が基材の一方の面上に十分に密着しなかったため、凹凸形状を有する基材が得られず、凹凸構造体の製造を断念した。
比較例6では、比較例3と同様の方法により凹凸構造体を得た。
【0085】
(凹凸構造体での残膜の確認)
凹凸構造体が得られた実施例2~5及び比較例6について、実施例1及び比較例3と同様、凹凸構造体での残膜の有無を3D表面粗さ/形状測定機NewView(Zygo社製)を用いて確認した。
結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
表1及び表2に示すように、実施例1~5では、基材の両面にて残膜が抑制された凹凸構造体を製造することができた。
一方、比較例1、2、4及び5では、凹凸構造体を製造することができなかった。
比較例3及び6では、凹凸構造体を製造することはできたが、隣接する凸形状の硬化樹脂の間をつなぐ硬化樹脂の薄膜が基材の両面上に付着しており、残膜を抑制することができなかった。
【0088】
2019年3月26日に出願された日本国特許出願2019-59494の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0089】
1 第1のパターン原盤
1A 第1の樹脂充填パターン原盤
2 凹部
3 滴下手段
4 ブレード
5 第1の硬化性樹脂
6、16 メニスカス
7 吸着手段
8 第1の硬化樹脂
10 基材
11 第2のパターン原盤
11A 第1の樹脂充填パターン原盤
15 第2の硬化性樹脂
18 第2の硬化樹脂
20 凹凸形状を有する基材
21 治具
30 凹凸構造体
凹部の幅
凹部の深さ
メニスカスの高さ
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2
図3