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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ジャイロセンサの較正方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 19/00 20130101AFI20220928BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20220928BHJP
   G08G 1/16 20060101ALN20220928BHJP
【FI】
G01C19/00 Z
G01C21/28
G08G1/16 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018106836
(22)【出願日】2018-06-04
(65)【公開番号】P2019211304
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-02-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【弁理士】
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036114(JP,A)
【文献】特開平02-247521(JP,A)
【文献】特開平10-207540(JP,A)
【文献】特開2008-122252(JP,A)
【文献】米国特許第05341130(US,A)
【文献】独国特許出願公開第04034965(DE,A1)
【文献】特開平08-114455(JP,A)
【文献】特開平04-062419(JP,A)
【文献】特開2006-209567(JP,A)
【文献】特開2011-112500(JP,A)
【文献】特開2011-123631(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 19/00
G01C 21/28
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向の軸回りに生じる回転方向の角速度を計測するジャイロセンサを備える車両における当該ジャイロセンサの較正方法であって、
道路に敷設された磁気マーカに対する車両の横ずれ量を検出する横ずれ量検出処理と、
少なくとも2個の磁気マーカが敷設された敷設箇所を車両が通過する際、当該少なくとも2個の磁気マーカについて前記横ずれ量検出処理が検出した横ずれ量を入力値とする演算処理により車両の方位を推定する方位推定処理と、
道路に沿って離れた2箇所の前記敷設箇所を車両が通過する際、各敷設箇所について前記方位推定処理により推定された車両の方位の差分である車両回転角を利用してジャイロセンサを較正する較正処理と、を実施するジャイロセンサの較正方法。
【請求項2】
請求項1において、道路に沿って離れた2箇所の前記敷設箇所を車両が通過する間の前記ジャイロセンサの計測値を時間的に積分する積分処理を実施し、
前記較正処理では、前記車両回転角と、前記積分処理による積分値である計測回転角と、の差分が小さくなるようにジャイロセンサを較正するジャイロセンサの較正方法。
【請求項3】
請求項1または2において、道路に沿って離れた2箇所の前記敷設箇所に敷設された少なくとも2個の磁気マーカのうち、予め定められた序列の磁気マーカは、道路の方向における車両の位置を特定するために利用される磁気マーカである一方、他の磁気マーカは、車両の方位を推定するための磁気マーカであって前記車両の位置を特定するために利用されることがない、ジャイロセンサの較正方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項において、前記敷設箇所に配置された磁気マーカの少なくともいずれかには、当該敷設箇所に配置された前記少なくとも2個の磁気マーカを結ぶ線分の方向を特定可能なマーカ方位情報を提供する情報提供部が付設されているジャイロセンサの較正方法。
【請求項5】
請求項4において、前記情報提供部は、前記磁気マーカに取り付けられた無線タグであるジャイロセンサの較正方法。
【請求項6】
請求項4または5において、前記敷設箇所に配置された磁気マーカのうち、前記方位推定処理において車両の方位の推定に利用される磁気マーカに対して上流側に位置するいずれかの磁気マーカに、前記情報提供部が付設され、
当該情報提供部は、前記較正処理を実行可能であるか否かの情報を含む前記マーカ方位情報を提供し、
前記横ずれ量検出処理は、前記較正処理を実行可能である旨の情報が前記マーカ方位情報に含まれていることを前提として、前記情報提供部が付設された磁気マーカを検出した後、下流側に位置する磁気マーカの検出を試みて前記方位推定処理による車両の方位の推定を可能とする一方、
前記較正処理を実行可能である旨の情報が前記マーカ方位情報に含まれていない場合には、前記情報提供部が付設された磁気マーカを検出した後、下流側に位置する磁気マーカの検出を試みないジャイロセンサの較正方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項において、前記敷設箇所では、絶対方位が既知の方位に沿って2個の磁気マーカが配置されているジャイロセンサの較正方法。
【請求項8】
請求項7において、前記敷設箇所では、L字状をなすように3個の磁気マーカが配置されており、L字状の縦の線及び横の線が絶対方位が既知の方位に沿っているジャイロセンサの較正方法。
【請求項9】
請求項7または8において、絶対方位が既知の方位に沿って配置された2個の磁気マーカについて、当該2個の磁気マーカの磁極性に応じて絶対方位を特定可能であるジャイロセンサの較正方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項において、前記方位推定処理は、前記敷設箇所において前記少なくとも2個の磁気マーカが配置された方位に対する車両の方位のずれ角を推定可能であり、
車両が備える加速度センサが計測した加速度を時間的に積分することで速度を推定する処理と、
前記少なくとも2個の磁気マーカのうちのいずれか2個の磁気マーカの間隔と前記車両の方位のずれ角とに基づき、当該いずれか2個の磁気マーカを通過する際の車両の移動距離を推定する処理と、
当該いずれか2個の磁気マーカを通過するのに要した時間により、当該いずれか2個の磁気マーカを通過する際の車両の移動距離を除して求められる車両の速度と、前記速度を推定する処理により推定された速度と、の比較により前記加速度センサを較正する処理と、を含むジャイロセンサの較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が備えるジャイロセンサの較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナビゲーションシステムや、アンチスキッドコントロールなどの車両制御システムや、自動運転システムなどが組み込まれた車両が増えている。これらのシステムでは、車両の姿勢(方位)や車両の姿勢変化などを精度高く推定する必要がある。そこで、これらのシステムが組み込まれた車両の多くでは、鉛直方向の軸回りの車両の回転方向(ヨー方向)の角速度を計測するジャイロセンサが採用されている(例えば下記の特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-91412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、車両が直進している状態、すなわちヨー方向の角速度が発生していない状態でのジャイロセンサの計測値であるゼロ点は、時間経過、あるいは温度変動や振動などの環境条件によって変動(ドリフト)することがある。このようにジャイロセンサの出力特性は、時間経過や環境条件によって変動することがあり、計測精度を維持できなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ジャイロセンサの計測精度を高く維持するためのジャイロセンサの較正方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鉛直方向の軸回りに生じる回転方向の角速度を計測するジャイロセンサを備える車両における当該ジャイロセンサの較正方法であって、
道路に敷設された磁気マーカに対する車両の横ずれ量を検出する横ずれ量検出処理と、
少なくとも2個の磁気マーカが敷設された敷設箇所を車両が通過する際、当該少なくとも2個の磁気マーカについて前記横ずれ量検出処理が検出した横ずれ量を入力値とする演算処理により車両の方位を推定する方位推定処理と、
該方位推定処理により推定された車両の方位を利用してジャイロセンサを較正する較正処理と、を実施するジャイロセンサの較正方法にある。
【発明の効果】
【0007】
本発明のジャイロセンサの較正方法は、道路に敷設された磁気マーカを利用して車両の方位を検出し、ジャイロセンサの較正に利用する方法である。道路に敷設された磁気マーカを利用して検出される車両の方位は、ジャイロセンサとは相違し、時間経過や温度変化などの影響を受けるおそれが少ない。それ故、磁気マーカを利用して検出される車両の方位を利用すれば、ジャイロセンサを確実性高く較正できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1における、計測ユニットを取り付けた車両を見込む正面図。
図2】実施例1における、マーカシステムの構成を示す説明図。
図3】実施例1における、磁気マーカの説明図。
図4】実施例1における、磁気マーカの敷設態様を示す説明図。
図5】実施例1における、RFIDタグの正面図。
図6】実施例1における、磁気マーカを通過する際の進行方向の磁気計測値の変化を例示する説明図。
図7】実施例1における、車幅方向に配列された磁気センサCnによる車幅方向の磁気計測値の分布を例示する説明図。
図8】実施例1における、車両の全体動作の流れを示すフロー図。
図9】実施例1における、マーカシステムによる自車位置の特定方法の説明図。
図10】実施例1における、走行ルートに対する自車位置の偏差ΔDを示す説明図。
図11】実施例1における、ジャイロセンサの較正方法を説明するためのフロー図。
図12】実施例1における、車両方位Vdの検出方法の説明図。
図13】実施例2における、車両方位Vdの検出方法の説明図。
図14】実施例3における、ジャイロセンサの較正方法を説明するためのフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、高精度に自車位置(車両の位置)を特定するためのマーカシステム1を自動運転システム6に組み合わせた例である。特に、本例のマーカシステム1は、磁気マーカ10を利用してジャイロセンサを較正する機能を有し、慣性航法の精度を高く維持可能である点に技術的特徴のひとつを有している。この内容について、図1図12を用いて説明する。
【0010】
マーカシステム1は、図1及び図2のごとく、磁気検出等を行う計測ユニット2、磁気マーカ10の敷設位置を表すマーカ情報を取得する位置情報取得部の一例であるタグリーダ34、及び自車位置を特定するための演算処理を実行する測位部をなす制御ユニット32、を含んで構成されている。
【0011】
このマーカシステム1を組み合わせる自動運転システム6(図2)は、自動運転制御を実行する車両ECU61と、詳細な3次元地図データ(3Dマップデータ)を格納する地図データベース(地図DB)65と、を含んで構成されている。車両ECU61は、マーカシステム1が特定した自車位置を制御入力値として、図示しないステアリング操舵ユニットやエンジンスロットルやブレーキなどを制御して車両5を自動走行させる。なお、図1では、自動運転システム6の図示を省略している。
【0012】
以下、道路に敷設される磁気マーカ10を概説した後、計測ユニット2、タグリーダ34、制御ユニット32の内容を説明する。
【0013】
磁気マーカ10は、図3及び図4のごとく、車両5が走行する道路の路面100Sに敷設される道路マーカである。この磁気マーカ10は、直径20mm、高さ28mmの柱状をなし、路面100S(図1)に設けた孔に収容された状態で敷設される。磁気マーカ10をなす磁石は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させたフェライトプラスチックマグネットであり、最大エネルギー積(BHmax)=6.4kJ/mという特性を備えている。
【0014】
本例の磁気マーカ10の仕様の一部を表1に示す。
【表1】
この磁気マーカ10は、計測ユニット2の取付け高さとして想定される範囲100~250mmの上限の250mm高さにおいて、8μT(マイクロテスラ)の磁束密度の磁気を作用する。また、この磁気マーカ10では、表面における磁気の強さを表す表面磁束密度Gsが45mTとなっている。
【0015】
磁気マーカ10は、図4のごとく、左右のレーンマークで区分された車線100の中央に沿う例えば10m間隔の敷設箇所10Fに2個ずつ配置されている。各敷設箇所10Fでは、車線100の中央に沿う方向(道路の方向)に沿って2m間隔で2個の磁気マーカ10U・Dが配置されている。以下、磁気マーカ10U・Dの2mの間隔をマーカスパンMという。また、2個の磁気マーカ10U・Dを結ぶ線分の方向を方位dirという。詳しくは後述するが、マーカシステム1では、この方位dirを基準として車両方位(車両の方位)を特定でき、ジャイロセンサ223を較正できる。
【0016】
各敷設箇所10Fに配置された2個の磁気マーカ10U・Dのうち、敷設箇所10Fにおける道路の上流側の磁気マーカ10Uは、車両位置を特定するために利用される。この上流側の磁気マーカ10Uには、無線により情報を出力する無線タグであるRFID(Radio Frequency IDentification)タグ15が付設されている(図3参照。)。
【0017】
RFIDタグ15は、無線による外部給電により動作し磁気マーカ10Uに関するマーカ情報を送信する。マーカ情報には、対応する磁気マーカ10Uの敷設位置を表す位置データや、方位dir(図4)を表す方位データ(方位dirを特定可能なマーカ方位情報の一例)等が含まれている。なお、敷設箇所10Fに配置された2個の磁気マーカ10のうち、下流側に位置する磁気マーカ10Dは、方位dirを規定するための磁気マーカであり、RFIDタグ15が付設されていない。
【0018】
ここで、上記のように磁気マーカ10の磁石は、酸化鉄の磁粉を高分子材料中に分散させたものである。この磁石は、導電性が低く無線給電時に渦電流等が生じ難い。それ故、磁気マーカ10に付設されたRFIDタグ15は、無線伝送された電力を効率良く受電できる。
【0019】
情報提供部の一例をなすRFIDタグ15は、例えばPET(Polyethylene terephthalate)フィルムから切り出したタグシート150(図5)の表面にICチップ157を実装した電子部品である。タグシート150の表面には、ループコイル151及びアンテナ153の印刷パターンが設けられている。ループコイル151は、外部からの電磁誘導によって励磁電流が発生する受電コイルである。アンテナ153は、マーカ情報を無線送信するための送信アンテナである。RFIDタグ15は、磁気マーカ10Uの路面100S側の表面に配置されている。
【0020】
次に、車両5が備える計測ユニット2、タグリーダ34、制御ユニット32について説明する。
計測ユニット2は、図1及び図2のごとく、磁気検出部であるセンサアレイ21と、相対位置推定部の一例であるIMU(Inertial Measurement Unit)22と、が一体化されたユニットである。細長い棒状をなす計測ユニット2は、路面100Sと対面する状態で、例えばフロントバンパーの内側等に取り付けられる。本例の車両5の場合、路面100Sを基準とした計測ユニット2の取付け高さが200mmとなっている。
【0021】
計測ユニット2のセンサアレイ21は、一直線上に配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数)と、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路212と、を備えている。なお、センサアレイ21では、15個の磁気センサCnが10cmの等間隔で配置されている。検出ユニット2は、センサアレイ21における磁気センサCnの配列方向が車幅方向に一致するように車両5に取り付けられる。
【0022】
磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magneto Impedance Effect)を利用して磁気を検出するセンサである。磁気センサCnでは、アモルファスワイヤなどの図示しない感磁体が直交する2軸方向に沿って配置され、これにより直交する2軸方向に作用する磁気の検出が可能となっている。なお、本例では、進行方向及び車幅方向の磁気成分を検出できるように磁気センサCnがセンサアレイ21に組み込まれている。
【0023】
磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±0.6mTであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02μTという高感度のセンサである。本例では、車両5の高速走行に対応できるよう、計測ユニット2の各磁気センサCnによる磁気計測の周期が3kHzに設定されている。
【0024】
磁気センサCnの仕様の一部を表2に示す。
【表2】
【0025】
上記のように、磁気マーカ10は、磁気センサCnの取付け高さとして想定する範囲100~250mmにおいて8μT以上の磁束密度の磁気を作用できる。磁束密度8μT以上の磁気を作用する磁気マーカ10であれば、磁束分解能が0.02μTの磁気センサCnを用いて確実性高く検出可能である。
【0026】
センサアレイ21の検出処理回路212(図2)は、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理などを実行する演算回路である。この検出処理回路212は、各種の演算を実行するCPU(central processing unit)のほか、ROM(read only memory)やRAM(random access memory)などのメモリ素子等を利用して構成されている。
【0027】
検出処理回路212は、各磁気センサCnが出力するセンサ信号を3kHz周期で取得してマーカ検出処理を実行する。そして、マーカ検出処理の検出結果を制御ユニット32に入力する。詳しくは後述するが、このマーカ検出処理では、磁気マーカ10の検出に加えて、検出した磁気マーカ10に対する車両5の横ずれ量の計測する横ずれ量検出処理がが行われる。
【0028】
計測ユニット2に組み込まれたIMU22(図2)は、慣性航法により車両5の相対位置を推定する慣性航法ユニットである。IMU22は、方位を計測する電子コンパスである磁気センサ221と、加速度を計測する加速度センサ222と、角速度を計測するジャイロセンサ223と、を備えている。ジャイロセンサ223は、鉛直方向の軸回りの回転方向の角速度を計測するように車両5に取り付けられている。ジャイロセンサ223が計測した角速度を、磁気センサ221が計測する方位に組み合わせれば、車両5の方位を高精度に推定可能である。
【0029】
IMU22は、加速度の二階積分により変位量を演算し、車両5の方位に沿って変位量を積算することで基準位置に対する相対位置を演算する。IMU22が推定する相対位置を利用すれば、隣り合う磁気マーカ10Uの中間に車両5が位置するときにも自車位置の推定が可能になる。
【0030】
前記タグリーダ34は、磁気マーカ10Uの表面に配置されたRFIDタグ15と無線で通信する通信ユニットである。タグリーダ34は、RFIDタグ15の動作に必要な電力を無線で送電し、RFIDタグ15が送信するマーカ情報を受信する。マーカ情報としては、上記の通り、対応する磁気マーカ10Uの敷設位置(絶対位置)を表す位置データ、敷設箇所10Fにおける磁気マーカ10U・Dを結ぶ線分の方位dirを表す方位データ等がある。
【0031】
前記制御ユニット32は、計測ユニット2やタグリーダ34を制御すると共に、車両5の位置である自車位置をリアルタイムで特定するユニットである。制御ユニット32は、車両5の自動運転システム6を構成する車両ECU61に自車位置を入力する。
【0032】
制御ユニット32は、各種の演算を実行するCPUのほか、ROMやRAMなどのメモリ素子等が実装された電子基板(図示略)を備えている。制御ユニット32が自車位置を特定する方法は、RFIDタグ15が付設された磁気マーカ10Uに車両5が到達したときと、隣り合う磁気マーカ10Uの中間に車両5が位置するときと、で相違している。詳しくは後述するが、制御ユニット32は、前者の場合、磁気マーカ10Uに付設されたRFIDタグ15から受信したマーカ情報を利用して自車位置を特定する。一方、後者の場合には、慣性航法により推定した車両5の相対位置に基づいて自車位置を特定する。
【0033】
次に、本例の(1)マーカシステム1によるマーカ検出処理、及び(2)マーカシステム1を含む車両5の全体動作の流れを説明した後、(3)ジャイロセンサ223の較正方法について説明する。
(1)マーカ検出処理
マーカ検出処理は、計測ユニット2のセンサアレイ21が実行する処理である。センサアレイ21は、上記の通り、磁気センサCnを用いて3kHzの周期でマーカ検出処理を実行する。
【0034】
上記のごとく、磁気センサCnは、車両5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測するように構成されている。例えばこの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、図6のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、車両5の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、計測ユニット2が磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212は、このように計測ユニット2が磁気マーカ10の真上に位置し進行方向の磁気計測値のゼロクロスが生じたときに磁気マーカ10を検出したと判断する。
【0035】
また、例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ10の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定すると、車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ10を挟んだ両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。15個の磁気センサCnを車幅方向に配列した計測ユニット2の場合には、磁気マーカ10を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気の正負が異なってくる(図7)。
【0036】
計測ユニット2の各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値を例示する図6の分布に基づけば、車幅方向の磁気の正負が反転するゼロクロスZcを挟んで隣り合う2つの磁気センサCnの中間の位置、あるいは検出する車幅方向の磁気がゼロであって両外側の磁気センサCnの正負が反転している磁気センサCnの直下の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。検出処理回路212は、計測ユニット2の中央の位置(磁気センサC8の位置)に対する磁気マーカ10の車幅方向の位置の偏差を上記の横ずれ量として計測する(横ずれ量検出処理)。例えば、図7の場合であれば、ゼロクロスZcの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、磁気マーカ10の横ずれ量は、車幅方向において計測ユニット2の中央に位置するC8を基準として(9.5-8)×10cmとなる。
【0037】
(2)車両の全体動作
次に、図8図10を参照してマーカシステム1と自動運転システム6とを備える車両5の全体動作について説明する。
自動運転システム6において走行ルートが設定されると(S101)、3Dマップデータを記憶する地図DB65から対応するデータが読み出されて自動運転の制御目標となる詳細なルートデータが設定される(S102)。ルートデータは、例えば図9中の破線で示すように、少なくとも絶対位置のデータで表される地点の連なりを含むデータである。
【0038】
一方、自動運転で車両5が走行する制御モード下におけるマーカシステム1は、上記のセンサアレイ21によるマーカ検出処理を繰り返し実行する(S201)。いずれかの敷設箇所10Fの上流側に位置する磁気マーカ10Uを検出できたときには(S202:YES)、RFIDタグ15が出力するマーカ情報を受信する(S223)。そして、マーカ情報に含まれる位置データが表す磁気マーカ10Uの敷設位置を基準として、マーカ検出処理で計測ユニット2が計測した横ずれ量の分だけオフセットさせた位置を自車位置(図9中の△印で例示)として特定する(S204)。
【0039】
なお、センサアレイ21によって検出された磁気マーカ10が、敷設位置の上流側の磁気マーカ10Uであるか下流側の磁気マーカ10Dであるかの判定は、前回位置データ(マーカ情報)を受信したRFIDタグ15付きの磁気マーカ10Uの敷設位置からの距離等で判定すればよい。
【0040】
一方、隣り合う磁気マーカ10Uの中間に車両5が位置しており、磁気マーカ10Uを検出できないときには(S202:NO)、直近で検出された磁気マーカ10Uの敷設位置に基づいて特定された自車位置(図9中の△印の位置)を基準位置とし、慣性航法により車両5の相対位置を推定する。具体的には、上記の通り、計測ユニット2に組み込まれたIMU22による計測加速度の二階積分により変位量を演算し、ジャイロセンサ223により検出された車両5の進行方向変化や計測方位に沿って変位量を積算することで上記の基準位置に対する車両5の相対位置を推定する。そして、図9に例示するように、この相対位置の分だけ基準位置から移動させた×印の位置を自車位置として特定する。なお、図9では、この相対位置を表すベクトルの一例を矢印で示している。
【0041】
マーカシステム1が特定した自車位置(図9中の△印及び×印の位置)は、自動運転システム6の車両ECU61に入力され、図10で破線で示す制御目標値のルートデータに対する偏差ΔDが算出される(S103)。車両ECU61は、この偏差ΔDに基づいてステアリング制御、スロットル制御などの車両制御を実行し(S104)、自動走行を実現する。
【0042】
(3)ジャイロセンサの較正方法
上記のごとく本例のマーカシステム1では、磁気マーカ10の各敷設箇所10Fにおいて、マーカスパンM=2mの間隔で2個の磁気マーカ10U・Dが配置されている(図4参照。)。2個の磁気マーカ10U・Dを結ぶ線分の方位dirは、車線100の中央に沿う方向、すなわち道路の方向に一致している。この方位dirは、敷設箇所10Fの上流側の磁気マーカ10Uに付設されたRFIDタグ15が方位データ(マーカ情報)として出力(無線送信)する。
【0043】
マーカシステム1では、各敷設箇所10Fにおいて、方位dirを基準として車両5の向きである車両方位Vdを特定できる。そして、2箇所の敷設箇所(地点)10Fにおける車両方位Vdを利用してジャイロセンサ223を較正可能である。この較正方法の流れについて、図11のフロー図を参照して説明する。
【0044】
車両5の走行中の状態において、制御ユニット32は、センサアレイ21を制御することにより、横ずれ量検出処理を含むマーカ検出処理P1を繰り返し実行する(S101:NO)。車両5が1箇所目の敷設箇所10Fに到達して、上流側の磁気マーカ10Uが検出されたとき(S101:YES)、制御ユニット32は、タグリーダ34を制御することによりRFIDタグ15が記憶するマーカ情報の読取を実行する(S102)。
【0045】
また、制御ユニット32は、センサアレイ21を制御してマーカ検出処理P1を再開する。制御ユニット32は、下流側の磁気マーカ10Dを検出するまでマーカ検出処理P1を繰り返し実行させる(S103:NO)。そして、下流側の磁気マーカ10Dが検出されたとき(S103:YES)、制御ユニット32は、マーカ検出処理P1により磁気マーカ10U・Dについてそれぞれ計測された横ずれ量OF1、OF2(図12)を利用して車両方位Vdを演算する(S104、方位推定処理)。以下、1箇所目の敷設箇所10Fにおいて演算された車両方位をVd(1)とし、2箇所目の敷設箇所10Fに対応する車両方位をVd(2)とする。
【0046】
具体的には、制御ユニット32は、図12のごとく、2個の磁気マーカ10U・Dに対する横ずれ量OF1、OF2に基づいて、方位dirに対する車両方位(進行方向)Vdのずれ角Axを次式により演算する。ここで、方位dirは、マーカ情報に含まれる方位データが表す絶対方位である。車両方位Vdは、方位dirを基準としてずれ角Axの分だけヨー方向(鉛直方向の軸回りの回転方向)にずらした方位として特定できる。
【0047】
横ずれ量の変化 OFd=|OF2-OF1|
ずれ角 Ax=arcsin(OFd/M)
ここで、横ずれ量OF1、OF2は、車両5の幅方向中央を境に正または負の値となるよう定義される。
【0048】
また、制御ユニット32は、1箇所目の敷設箇所10Fの下流側の磁気センサ10Dの検出に応じて、ジャイロセンサ223の計測値である角速度の時間的な積分処理を開始する(S105、積分処理)。なお、この積分処理は、2箇所の敷設箇所10Fを通過する間のヨー方向の回転角である計測回転角を求めるための演算処理である。制御ユニット32は、2箇所目の敷設箇所10Fの下流側の磁気マーカ10Dが検出されるまでこの積分処理を継続する。
【0049】
1箇所目の敷設箇所10Fを通過した後、制御ユニット32は、センサアレイ21を制御してマーカ検出処理P1を再開する。このマーカ検出処理P1は、2箇所目の敷設箇所10Fの磁気マーカ10が検出されるまで繰り返し実行される(S106:NO)。
【0050】
2箇所目の敷設箇所10Fの上流側に位置する磁気マーカ10Uが検出されたとき(S106:YES)、制御ユニット32は、タグリーダ34を制御することでRFIDタグ15からのマーカ情報の読取を実行する(S107)。また、制御ユニット32は、下流側の磁気マーカ10Dを検出できるよう、センサアレイ21を制御することでマーカ検出処理P1を繰り返し実行する(S108:NO)。そして、敷設箇所10Fの下流側に位置する磁気マーカ10Dを検出できたとき(S108:YES)、制御ユニット32は上記と同様に、2個の磁気マーカ10U・Dに対する横ずれ量OF1、OF2(図12)に基づいて、車両方位Vd(2)を演算する(S109、方位推定処理)。
【0051】
制御ユニット32は、車両5がいずれか2箇所の敷設箇所10Fで演算し特定した車両方位Vd(1)・Vd(2)の差分(車両方位の変化量)を、車両回転角として算出する(S110、差分演算処理)。また、制御ユニット32は、ジャイロセンサ223が計測した角速度の時間的な積分処理を終了し、この積分値である計測回転角(回転角)を演算する(S111、積分処理)。そして、制御ユニット32は、車両回転角と計測回転角とを比較し(S112)、ジャイロセンサ223の較正処理P2を実施する。
【0052】
ここで、ジャイロセンサ223の較正処理P2の内容について説明する。ヨー方向の回転がゼロであれば(ゼロ点)、理想的には、ジャイロセンサ223が計測する角速度はゼロ(deg/秒)となるはずである。しかしながら、経時変化や温度変化等の影響に応じて、ジャイロセンサ223のゼロ点がずれることがあり、ゼロ点でジャイロセンサ223が出力する角速度がゼロにならないことが多い。このゼロ点のずれ量は、角速度を時間的に積分する際の積分定数として現れる。そこで、上記の車両回転角と計測回転角との差分がゼロに近くなる(差分が小さくなる)ような積分定数を見つけることで、ゼロ点のずれ量を特定できる。ゼロ点のずれ量を特定できた場合、ジャイロセンサ223が出力する計測値(角速度)につき、そのずれ量を相殺できるように計測値を一律にオフセットさせると良い。このようにジャイロセンサ223を較正すれば、ジャイロセンサ223が出力する角速度の精度を向上できる。
【0053】
さらに、図12中のずれ角Axに基づけば、マーカスパンMの2個の磁気マーカ10の通過に要する車両5の移動距離Dを算出でき、車速を高精度に算出できる。ここで、上流側の磁気マーカ10Uを検出したタイミングをt1、下流側の磁気マーカ10Dを検出したタイミングをt2とする。
移動距離 D=M×cosAx
車速 V=D/(t2-t1)
【0054】
2個の磁気マーカ10の通過に応じて上記のように演算される車速Vを利用すれば、IMU22による計測加速度を積分して求められる速度(車速)の誤差を特定できる。そして、このように車速の誤差を特定できれば、加速度を計測する加速度センサ222の較正が可能になる。
【0055】
以上のように、本例のマーカシステム1は、磁気マーカ10を利用して自車位置を特定するシステムである。このマーカシステム1では、GPS電波等の受信を前提としないので、例えばトンネルやビルの谷間などGPS電波が受信できなかったり不安定になる場所であっても位置精度が不安定になることがない。マーカシステム1によれば、環境によらず精度の高い運転支援制御を実現できる。
【0056】
このマーカシステム1では、高精度に車両位置を特定するため、慣性航法を実現するIMU22の精度を高く維持する必要がある。特に、ジャイロセンサ223や加速度センサ222等のセンサについては、経時変化や温度変化等に応じて計測値がシフトする可能性があるので、随時適切に較正する必要がある。
【0057】
本例のマーカシステム1では、道路に敷設された磁気マーカ10を利用してジャイロセンサ223や加速度センサ222等の較正が可能である。道路の路面100Sに固定され、方位dirが既知の2個の磁気マーカ10U・Dを利用すれば、ヨー方向の車両方位Vdを高精度に特定可能である。高精度で特定された車両方位Vdに基づけば、ヨー方向の角速度を計測するジャイロセンサ223を確実性高く較正できる。
【0058】
さらに、敷設箇所10Fにおいて2mのマーカスパンMの間隔をあけて配置された2個の磁気マーカ10U・Dを利用すれば、車速Vを高精度に特定可能である。精度の高い車速Vを利用すれば、2階積分による車速を演算するための元データとなる加速度を計測する加速度センサ222の較正が可能である。
【0059】
なお、本例の較正方法は、敷設箇所10Fを通過する際、操舵角の変化が十分に少ないことを前提にしている。敷設箇所10Fを通過する際に急なステアリング操作が行われ、操舵角が変化した場合には、ジャイロセンサ223の較正処理P2をキャンセルすることも良い。
【0060】
本例では、磁気マーカ10Uに付設されたRFIDタグ15が、位置データや方位データを含むマーカ情報を送信する構成例を示している。これに代えて、RFIDタグ15が送信するタグIDを利用して参照可能なマーカデータベースを採用することも良い。マーカデータベースには、敷設箇所10Fの2個の磁気マーカ10U・Dのうちの少なくともいずれかの敷設位置を表す位置データや、2個の磁気マーカ10U・Dを結ぶ線分の絶対方位dirを表す方位データなどを、タグIDを紐付けて記録すると良い。タグIDを利用してマーカデータベースを参照すれば、対応する磁気マーカ10の敷設位置や、その敷設箇所10Fにおける2個の磁気マーカ10U・Dを結ぶ絶対方位dirを取得できる。マーカデータベースは、車両5が通信可能なサーバ装置に設けることも良く、車両5の記憶領域に設けることも良い。
【0061】
本例では、各敷設箇所10Fに2個ずつ磁気マーカ10が配置された構成例を示したが、3個以上の磁気マーカ10を直線的に配置することも良い。
2個の磁気マーカ10を道路の方向に沿って配置した本例の構成に代えて、南北方向や東西方向など基準方向に沿って複数の磁気マーカ10を配置しても良い。図12のように車両方位を特定する際、車両方位Vdに対して2個の磁気マーカ10を結ぶ方位dirが直角に近づくと、横ずれ量の計測が難しくなり車両方位Vdの演算精度が低下する傾向にある。そこで、車両方位Vdの演算に利用する磁気マーカ10の配置方向を選択できるよう、L字状に3個の磁気マーカ10を配置することも良い。L字状の縦の線、横の線をそれぞれ、南北、東西の方向に一致させると良い。
【0062】
南北の方向、東西の方向のうち、道路の方向に対して平行に近い側の方向に沿って磁気マーカ10を配置する一方、いずれの方向であるかの区別を磁極性によって識別可能に構成しても良い。例えば、2個の磁気マーカ10の磁極性について、N極-N極が南北の方向、S極-S極が東西の方向を表すようにしても良い。
【0063】
(実施例2)
本例は、実施例1に基づいて、車両方位Vdの特定方法を変更したマーカシステム1の例である。本例は、車両5の前後に2mの間隔をあけてセンサアレイ21が配置されている点において、実施例1とは相違している。そして、このようなセンサアレイ21の配置の相違により、車両方位Vdの特定方法が実施例1とは相違している。この内容について図13を参照して説明する。なお、実施例1の説明に用いた図2図4も適宜、参照する。
【0064】
本例のマーカシステム1では、図13のごとく、車両5におけるセンサアレイ21の配置間隔(センサスパンS)と、敷設箇所10Fにおける磁気マーカ10の配置間隔(マーカスパンM)と、が一致している。そのため、車両5が敷設箇所10Fを通過する際には、前後のセンサアレイ21がほぼ同時に2つの磁気マーカ10U・Dを検出できる。
【0065】
本例では、前後のセンサアレイ21が磁気マーカ10U・Dについて計測した横ずれ量OF1、OF2に基づいて、車両方位Vdが演算される。具体的には、2個の磁気マーカ10U・Dを結ぶ線分の方位dirに対する車両方位(進行方向)のずれ角Axは次式により演算可能である。そして、車両方位Vdは、方位dirを基準としてずれ角Axの分だけヨー方向にずらした方位として特定できる。
【0066】
横ずれ量の変化 OFd=|OF2-OF1|
ずれ角 Ax=arcsin(OFd/M)
【0067】
このような車両方位Vdの特定方法を採用する場合、車両5の移動(時間の経過)が必要ではないので、ステアリング操作による誤差が生じるおそれが少ない。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
【0068】
(実施例3)
本例は、実施例1の構成に基づいて、ジャイロセンサ223の較正処理の内容を変更した例である。この内容について、図14を参照して説明する。なお、実施例1の説明に用いた図2図4も適宜、参照する。
本例のジャイロセンサ223の較正処理は、例えば勾配の変化が0.01%未満であって、曲率半径が3000m以上の平坦な直線の道路に設けられた敷設箇所10Fに限って実行可能である。この敷設箇所10Fに配置された上流側の磁気マーカ10Uに付設されたRFIDタグ15が送信するマーカ情報には、実施例1と同様の位置データや方位データに加えて、上記の平坦な直線道路であって本例の較正処理を実行可能である旨の情報が含まれている。
【0069】
ここで、本例のマーカシステム1によるジャイロセンサの較正処理の流れについて、図14のフロー図を参照して説明する。
車両5が走行中の状態において、車両が備える制御ユニット32は、センサアレイ21を制御することでマーカ検出処理P1を繰り返し実行する(S101:NO)。敷設箇所の上流側の磁気マーカ10Uが検出されたとき(S101:YES)、制御ユニット32は、タグリーダ34を制御することで、RFIDタグ15からのマーカ情報の読取を実行する(S102)。そして、制御ユニット32は、較正処理を実行可能である旨の情報がマーカ情報に含まれているか否かを判断する(S103)。
【0070】
較正処理を実行可能である旨の情報がマーカ情報に含まれていた場合(S103:YES)、制御ユニット32は、下流側に隣り合う磁気マーカ10Dを検出できるよう、センサアレイ21を制御することでマーカ検出処理P1を再開する。磁気マーカ10Dが検出された場合(S104:YES)、制御ユニット32は、磁気マーカ10U・Dに対する横ずれ量の差分値を演算する(S105)。
【0071】
制御ユニット32は、横ずれ量の差分値が所定の閾値(例えば5cm等。)以下であった場合(S106:YES)、直線の道路の方向に対する車両の方位のずれ角(図12中のAxに相当。)が十分に小さい直進状態と判断する。そして、車両5が直線状態にあると判断されたとき、ジャイロセンサ223の較正処理P2を実施する。この較正処理P2では、ジャイロセンサ223の計測値である角速度がゼロとなるようにジャイロセンサ223の較正が行われる。
【0072】
一方、RFIDタグ15が出力するマーカ情報に較正可能である旨の情報が含まれていなかった場合(S103:NO)や、磁気マーカ10U・Dに対する横ずれ量の差分値が所定の閾値を超えている場合(S106:NO)などでは、ジャイロセンサ223の較正処理P2がキャンセルされる。
【0073】
本例のマーカシステム1では、RFIDタグ15が出力するマーカ情報に、較正処理を実行可能である旨の情報を含めた例である。これに代えて、あるいは加えて、較正処理を実行可能な敷設箇所について、磁気マーカ10の配置個数を3つ等、他の敷設箇所とは異ならせても良い。この場合には、RFIDタグ15付きの磁気マーカ10が敷設されていない敷設箇所であっても、ジャイロセンサ223の較正が可能になる。
【0074】
なお、上記のずれ角については、実施例1で示したずれ角Axの式を利用する演算により求めることも良い。この場合には、ずれ角に関する閾値判断を実行すると良い。
なお、その他の構成及び作用効果については実施例1と同様である。
【0075】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0076】
1 マーカシステム
10 磁気マーカ
15 RFIDタグ(情報提供部、無線タグ)
2 計測ユニット
21 センサアレイ(磁気マーカ検出部)
212 検出処理回路
22 IMU
222 加速度センサ
223 ジャイロセンサ
32 制御ユニット
34 タグリーダ
5 車両
6 自動運転システム
61 車両ECU
65 地図データベース(地図DB
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14