(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】酸化鉱石の製錬方法
(51)【国際特許分類】
C22C 33/04 20060101AFI20220928BHJP
C22B 5/10 20060101ALI20220928BHJP
C22B 23/02 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
C22C33/04 H
C22B5/10
C22B23/02
(21)【出願番号】P 2018176524
(22)【出願日】2018-09-20
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】井関 隆士
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-136203(JP,A)
【文献】特開平10-102118(JP,A)
【文献】特開昭64-062438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00,
C22C 33/04,
C21B 13/00-13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤との混合物を還元することによって還元物である
フェロニッケルメタルを製造する
ニッケル酸化鉱石の製錬方法であって、
前記混合物を
バーナー炉である還元炉に装入し、該混合物を
該バーナー炉のバーナーにより加熱することによって
ニッケル酸化鉱石を還元し、溶融状態の
フェロニッケルメタルとスラグとを得る還元工程を含
み、
前記還元工程では、前記還元炉内で得られるフェロニッケルメタルの温度が1400℃以上1600℃以下の範囲であり、前記還元炉内で得られるスラグの温度が1480℃以上1680℃以下の範囲となるように、前記混合物を加熱する
ニッケル酸化鉱石の乾式製錬方法。
【請求項2】
前記還元工程では、
ニッケル酸化鉱石を還元することによって生成する溶融状態の
フェロニッケルメタルとスラグとを比重分離する
請求項
1に記載の
ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項3】
前記還元工程では、前記バーナーの空燃比を0.8以上1.1以下の範囲に制御して前記混合物を加熱する
請求項1
又は2に記載の
ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項4】
前記混合物を乾燥する乾燥工程をさらに含み、
前記乾燥工程では、前記還元炉にて発生するガスを用いて前記混合物を乾燥し、乾燥後の混合物を前記還元工程における処理に供する
請求項1乃至
3のいずれかに記載の
ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【請求項5】
前記乾燥工程では、前記還元炉に直接連結された乾燥設備にて前記混合物を乾燥し、
前記乾燥設備には、前記還元工程での還元処理により前記還元炉にて発生するガスが該還元炉から直接導入される
請求項
4に記載の
ニッケル酸化鉱石の製錬方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化鉱石の乾式製錬方法に関するものであり、より詳しくは、例えばニッケル酸化鉱石等の酸化鉱石を原料として炭素質還元剤により還元することで還元物であるメタルを製造する製錬方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化鉱石の一種であるリモナイトあるいはサプロライトと呼ばれるニッケル酸化鉱石の製錬方法として、熔錬炉を使用してニッケルマットを製造する乾式製錬方法、ロータリーキルンあるいは移動炉床炉を使用して鉄とニッケルの合金であるフェロニッケルを製造する乾式製錬方法、オートクレーブを使用して高温高圧で酸浸出し、ニッケルやコバルトが混在した混合硫化物(ミックスサルファイド)を製造する湿式製錬方法等が知られている。
【0003】
上述した様々な方法の中で、特に乾式製錬法を用いてニッケル酸化鉱石を還元して製錬する場合、反応を進めるために原料のニッケル酸化鉱石を適度な大きさに破砕する等して塊状物化する処理が前処理として行われる。
【0004】
具体的に、ニッケル酸化鉱石を塊状物化する、すなわち粉状や微粒状の鉱石を塊状にする際には、そのニッケル酸化鉱石と、それ以外の成分、例えばバインダーやコークス等の還元剤とを混合して混合物とし、さらに水分調整等を行った後に塊状物製造機に装入して、例えば一辺あるいは直径が10mm~30mm程度の塊状物(ペレット、ブリケット等を指す。以下、単に「ペレット」という)とするのが一般的である。
【0005】
塊状物化して得られるペレットには、含有する水分を「飛ばす」ために、ある程度の通気性が必要となる。さらに、その後の還元処理においてペレット内で均一に還元が進まないと、得られる還元物の組成が不均一になり、メタルが分散したり偏在したりする等の不都合が生じる。そのため、ペレットを作製する際には混合物を均一に混合したり、得られたペレットを還元する際には可能な限り均一な温度を維持することが重要となる。
【0006】
加えて、還元処理により生成するメタル(フェロニッケル)を粗大化させることも非常に重要な技術である。生成したフェロニッケルが、例えば数10μm~数100μm以下の細かな大きさであった場合、同時に生成するスラグと分離することが困難となり、フェロニッケルとしての回収率(収率)が大きく低下してしまう。そのため、還元後のフェロニッケルを粗大化する処理が必要となる。
【0007】
例えば、特許文献1には、金属酸化物と炭素質還元剤とを含む塊成物を加熱して塊成物に含まれる金属酸化物を還元溶融して粒状金属を製造するにあたり、粒状金属の生産性を一層高める技術を提案すること、を目的とする技術が開示されている。具体的には、金属酸化物と炭素質還元剤とを含む塊成物を、移動床型還元溶融炉の炉床上に供給して加熱し、金属酸化物を還元溶融した後、得られる粒状金属を冷却してから炉外へ排出して回収する粒状金属の製造方法であって、その加熱では、塊成物中の酸化鉄を固体還元する炉の前半領域における炉内温度を1300~1450℃とし、塊成物中の還元鉄を浸炭、溶融させ、凝集させる炉の後半領域における炉内温度を1400~1550℃とすると共に、炉床上に敷き詰めた塊成物同士の距離を0としたときの塊成物の炉床への最大投影面積率に対し、炉床上に敷き詰めた塊成物の炉床への投影面積率の相対値を敷密度としたとき、炉床上における塊成物の敷密度を0.5以上0.8以下として加熱する際に、平均直径が19.5mm以上32mm以下の塊成物を炉床上に供給することを特徴とする粒状金属の製造方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献1には、塊成物の敷密度と平均直径と併せて制御することによって、粒状金属鉄の生産性を向上できる、ことも示されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、あくまで塊生物の外面側での反応に関する技術であるが、還元反応に最も重要な要素は、還元反応が起きる塊成物内の状態であることは言うまでもない。すなわち、塊成物の内部での還元反応が制御することによって、反応効率や均一な還元反応が実現し、その結果高品質のメタルを製造することができると考えられる。
【0010】
さらに、特許文献1に記載の技術のように、塊成物の直径が決められた範囲に限定されると、塊成物を製造する際の収率の低下が避けられず、その結果としてコストアップになる懸念がある。なお、塊成物の敷密度が0.5~0.8の範囲では、細密充填でないうえ、塊成物を積層することも難しくなるため、効率の低い処理となってしまう。
【0011】
上述したように、ニッケル酸化鉱石を混合、還元して、ニッケルと鉄とを含むメタルを製造するにあたって、生産性を高くすること、低コスト化すること、高品質化することは、重要な要素であるにもかかわらず、多くの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、効率よく、かつ高品質のメタルを製造することができる酸化鉱石の製錬方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、バーナーを有する還元炉を用いて、酸化鉱石と炭素質還元剤とを含む混合物をバーナーにより加熱することによって溶融状態にして還元することで、上述した課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
(1)本発明の第1の発明は、酸化鉱石と炭素質還元剤との混合物を還元することによって還元物であるメタルを製造する酸化鉱石の製錬方法であって、前記混合物を還元炉に装入し、該混合物をバーナーにより加熱することによって酸化鉱石を還元し、溶融状態のメタルとスラグとを得る還元工程を含む、酸化鉱石の乾式製錬方法である。
【0016】
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記酸化鉱石は、ニッケル酸化鉱石であり、前記ニッケル酸化鉱石を含む混合物を還元することによってフェロニッケルを製造する、酸化鉱石の製錬方法である。
【0017】
(3)本発明の第3の発明は、第1又は2の発明において、前記還元工程では、酸化鉱石を還元することによって生成する溶融状態のメタルとスラグとを比重分離する、酸化鉱石の製錬方法である。
【0018】
(4)本発明の第4の発明は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記還元工程では、前記還元炉内で得られるメタルとスラグの温度がそれぞれ1300℃以上1700℃以下の範囲となるように前記混合物を加熱する、酸化鉱石の製錬方法である。
【0019】
(5)本発明の第5の発明は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記還元工程では、前記バーナーの空燃比を0.8以上1.1以下の範囲に制御して前記混合物を加熱する、酸化鉱石の製錬方法である。
【0020】
(6)本発明の第6の発明は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記混合物を乾燥する乾燥工程をさらに含み、前記乾燥工程では、前記還元炉にて発生するガスを用いて前記混合物を乾燥し、乾燥後の混合物を前記還元工程における処理に供する、酸化鉱石の製錬方法である。
【0021】
(7)本発明の第7の発明は、第6の発明において、前記乾燥工程では、前記還元炉に直接連結された乾燥設備にて前記混合物を乾燥し、前記乾燥設備には、前記還元工程での還元処理により前記還元炉にて発生するガスが該還元炉から直接導入される、酸化鉱石の製錬方法である。
【0022】
(8)本発明の第8の発明は、酸化鉱石と炭素質還元剤との混合物を溶融還元する溶融還元炉であって、前記混合物を乾燥する乾燥処理部と、バーナーを有し、前記乾燥処理部での乾燥後の混合物を該バーナーにより加熱することよって酸化鉱石を還元し、溶融状態のメタルとスラグとを得る還元処理部と、を備え、高さ方向の関係において、前記乾燥処理部が上方に、前記還元処理部が下方に、それぞれ位置して同一空間内に設けられており、前記乾燥処理部では、下方に位置する前記還元処理部にて発生したガスによって前記混合物を乾燥する、溶融還元炉である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、効率よく、かつ高品質のメタルを製造することができる酸化鉱石の製錬方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】ニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れの一例を示す工程図である。
【
図2】還元炉の構成の一例を示す模式図であり、その還元炉における還元処理の様子を説明するための図である。
【
図3】ニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れの他の例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書において、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0026】
≪1.本発明の概要≫
本発明は、例えばニッケル酸化鉱石等の酸化鉱石を原料として、その酸化鉱石と炭素質還元剤とを混合して得られる混合物を還元することによって、還元物であるメタルを製造する酸化鉱石の製錬方法である。例えば、原料鉱石としてニッケル酸化鉱石を用いる場合、還元物として鉄のニッケルの合金であるフェロニッケルメタルを製造する。
【0027】
具体的に、本発明に係る酸化鉱石の製錬方法は、酸化鉱石と炭素質還元剤との混合物を、バーナーを有する還元炉(バーナー炉)に装入して、その混合物をバーナーにより加熱することによって酸化鉱石を還元し、溶融状態のメタルとスラグとを得る還元工程を含むことを特徴とする。
【0028】
このような方法によれば、従来よりも短時間の処理で生産性高く、さらにコストを抑えながらメタルを生成させることができる。しかも、メタル化率を高めて、所望とする成分含有量の高い高品質なメタルを有効に製造することができる。
【0029】
また、バーナーを用いた乾式処理では、溶融状態となって生成するメタルとスラグとが、還元炉内で比重差によって分離(比重分離)する。これにより、短時間でかつ安価にメタルのみを効率的に回収することができる。
【0030】
≪2.ニッケル酸化鉱石の製錬方法≫
以下では、本発明の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)として、原料鉱石にニッケル酸化鉱石を用い、そのニッケル酸化鉱石に含まれるニッケル(酸化ニッケル)と鉄(酸化鉄)とを還元することで、鉄-ニッケル合金(フェロニッケル)のメタルを生成させ、さらに、そのメタルを分離することによってフェロニッケルを製造する製錬方法を例に挙げて説明する。
【0031】
<2-1.第1の実施形態>
図1は、ニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れを示す工程図である。
図1に示すように、本実施の形態(第1の実施形態)に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケル酸化鉱石を含む原料を混合する混合工程S1と、得られた混合物を乾燥する乾燥工程S2と、乾燥後の混合物を所定の還元温度に加熱して還元する還元工程S3と、得られた還元物であるメタルとスラグとを分離してメタルを回収する回収工程S4と、を有する。
【0032】
[混合工程]
混合工程S1は、ニッケル酸化鉱石を含む原料粉末を混合して混合物を得る工程である。具体的に、混合工程S1では、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石と、炭素質還元剤とを混合し、また任意成分の添加剤として、鉄鉱石、フラックス成分、バインダー等の、例えば粒径が0.1mm~0.8mm程度の粉末を混合して混合物を得る。
【0033】
混合に際して、所定量の水を添加して行うことができる。水を添加して混合することで、原料粉末の混合性を向上させることができる。なお、混合処理は、公知の混合機等を用いて行うことができる。
【0034】
混合工程S1では、各原料粉末の混合を行うとともに、混合性を向上させるために混練を行ってよい。混練を行うことで、原料粉末を混合して得られた混合物にせん断力を加え、原料鉱石や炭素還元剤等の凝集を解くことができ、より均一に混合できるとともに各々の粒子間における空隙を減らすことができ、還元処理に供したときに均一な反応を生じさせることが可能となる。なお、混練は、二軸混練機等を用いて行うことができる。
【0035】
ここで、原料鉱石であるニッケル酸化鉱石としては、特に限定されないが、リモナイト鉱、サプロライト鉱等を用いることができる。なお、ニッケル酸化鉱石は、構成成分として、酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)とを含有する。
【0036】
ニッケル酸化鉱石を用いるに際しては、所定の大きさに分級、粉砕等を行ってよい。分級、粉砕等を行うことで、ある程度の範囲に粒径を揃えることができ、粉砕等により大きなサイズの鉱石を無くすことで、炭素質還元剤等との混合性を高め、また還元処理に際しての均一性を向上させることができる。
【0037】
炭素質還元剤としては、特に限定されないが、例えば、石炭粉、コークス粉等が挙げられる。なお、炭素質還元剤は、上述した原料鉱石であるニッケル酸化鉱石の粒度と同等のものであることが好ましい。これにより、ニッケル酸化鉱石との混合性を高め、還元処理に際しての均一性を向上させることができる。
【0038】
炭素質還元剤の混合量としては、ニッケル酸化鉱石を構成する酸化ニッケルと酸化鉄とを過不足なく還元するのに必要な炭素質還元剤の量を100質量%としたとき、80質量%以下の割合とすることが好ましく、60質量%以下とすることがより好ましい。このように炭素質還元剤の混合量を、化学当量の合計値100質量%に対して80質量%以下の割合とすることで、還元反応を効率的に進行させることができる。また、炭素質還元剤の混合量の下限値としては、特に限定されないが、化学当量の合計値100質量%に対して15質量%以上の割合とすることが好ましく、20質量%以上の割合とすることがより好ましい。
【0039】
なお、酸化ニッケルと酸化鉄とを過不足なく還元するのに必要な炭素質還元剤の量とは、酸化ニッケルの全量をニッケルメタルに還元するのに必要な化学当量と、酸化鉄を鉄メタルに還元するのに必要な化学当量との合計値(以下、「化学当量の合計値」ともいう)と言い換えることができる。
【0040】
任意成分の添加剤である鉄鉱石としては、特に限定されないが、例えば、鉄品位が50質量%程度以上の鉄鉱石や、ニッケル酸化鉱石の湿式製錬により得られるヘマタイト等を用いることができる。
【0041】
バインダーとしては、例えば、ベントナイト、多糖類、樹脂、水ガラス、脱水ケーキ等を挙げることができる。また、フラックス成分としては、例えば、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、二酸化珪素等を挙げることができる。
【0042】
下記表1に、混合工程S1にて混合する、一部の原料粉末の組成(重量%)の一例を示す。なお、原料粉末の組成としてはこれに限定されない。
【0043】
【0044】
[乾燥工程]
乾燥工程S2は、得られた混合物を乾燥する工程である。本実施の形態においては、上述した混合工程S1を経て得られた混合物をそのまま、後述する還元炉に装入して還元処理(還元工程S3)を施してもよいが、還元処理に先立って混合物を乾燥させてもよい。なお、このように乾燥工程S2にて処理が施した場合、乾燥後の混合物が、還元炉に装入されて、次に還元工程S3における処理に供される。
【0045】
このように還元処理に先立って混合物を乾燥させることで、その混合物に対して均一に還元処理を施すことができるとともに、混合物を確実に溶融温度以上に加熱して還元することができる。
【0046】
乾燥温度としては、特に限定されないが、150℃以上400℃以下の範囲とすることが好ましい。このような範囲で乾燥処理を施すことで、その処理において混合物の反応が進むことを抑制しながら、効率的に混合物を乾燥させることができる。また、混合物を所定の形状に成形して還元処理に供するような場合でも、上記の温度範囲で乾燥しておくことで、成形物が還元処理により急減に加熱され破裂してしまうことを防ぐことができる。
【0047】
乾燥方法としては、特に限定されない。例えば、内部が所定の乾燥温度に調整された乾燥設備に混合物を装入し、所定の時間に亘保持することによって乾燥させる方法や、所定の乾燥温度の熱風を混合物に吹き付けて乾燥させる方法等を挙げることができる。
【0048】
あるいは、加熱還元を行う還元炉にて発生する排ガスを利用して乾燥してもよい。還元処理を経て発生する排ガスは、非常に高温であるため、ニッケル酸化鉱石を含む混合物の乾燥に適している。また、高温であることからガス流量を抑えた乾燥処理を行うことができ、それにより、乾燥処理でのダスト発生率を抑えることができる。還元炉からの排ガスを利用する場合、還元炉と乾燥設備との間を配管で繋ぐように構成して、還元炉から発生した排ガスを乾燥設備に直接移送することが好ましい。
【0049】
下記表2に、乾燥処理後の混合物における固形分中組成(重量部)の一例を示す。なお、混合物の組成としては、これに限定されるものではない。
【0050】
【0051】
なお、上述した混合工程S1において混合と同時に乾燥処理を施してもよく、このような混合工程S1にて乾燥も行う場合や、乾燥が必要のない鉱石を原料とする場合等では、乾燥工程S2を省略することもできる。また、例えば付着性の強い鉱石を原料とする場合には、乾燥を行った後に混合を行ってよく、鉱石、炭素質還元剤等の性状に応じて適宜、工程を選択すればよい。
【0052】
[還元工程]
還元工程S3は、混合物を還元炉に装入し、混合物を還元することによってメタルとスラグとを生成させる工程である。具体的に、本実施の形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法では、バーナーを有する還元炉(以下、「バーナー炉」ともいう)を用い、混合物をバーナーにより加熱することによって酸化鉱石を還元する。このバーナーによる加熱還元処理では、還元反応の進行と共に混合物が溶融していき、溶融状態のメタルとスラグとが生成する。
【0053】
ここで、還元工程S3におけるバーナー炉を用いた還元処理では、炉内に装入した混合物に対するバーナーによる加熱に伴って徐々にニッケル酸化鉱石の還元反応が進行するため、混合物が溶融状態となる前の固体状態においても還元反応が生じている。バーナー炉内では、ニッケル酸化鉱石に対する還元反応の進行と共に、次第に混合物がバーナー加熱によって固体状態から液体状態、すなわち溶融状態へと変化していき、最終的にはバーナーによる加熱還元処理により生成した、溶融状態のメタルとスラグとが得られる。
【0054】
従来のキルン等を用いて還元処理する方法等では、混合物を半溶融状態までしかできず、これではメタル粒が成長するのに長時間要してしまいコストが高くなるという問題があった。また、キルン内に半溶融物が付着し、それが成長してしまうと、メンテナンスのための操業を停止しなければならず、操業効率が著しく低下するという問題があった。
【0055】
これに対して、バーナー炉を用いて酸化鉱石を含む混合物をバーナーにより加熱して還元することで、短時間の処理時間で有効に還元することができる。そして、操業が十分可能な炉内雰囲気制御によってニッケルを略100%の割合で還元することができ、また鉄の還元割合を制御することができる。これにより、高品質のフェロニッケルを安価にかつ生産性高く製造することができる。なお、鉱石の還元の割合は、混合物における炭素質還元剤の混合比率により制御することができる。
【0056】
また、短時間の処理によって還元することができるため、生成したメタルの酸化等による組成ばらつきが生じ難くなる。
【0057】
さらに、バーナーを用いて加熱還元することで、還元反応の進行と共に混合物が溶融状態となっていき、最終的に溶融状態のメタルとスラグとが生成することから、その溶融状態のメタルとスラグとを比重差によって容易に分離することができる。また、比重差によって溶融状態のメタル(溶融メタル)がスラグの下に堆積した状態になると、炉内雰囲気において酸素分圧やCO分圧に変動が生じたとしても、スラグの下の炉底に溜まったメタルの組成への影響を抑制することができる。
【0058】
さらにまた、バーナーを用いた加熱では、電気等を用いた加熱に比べて格段に安価に処理を行うことができ、経済効率性を高めることもできる。具体的に、バーナー炉においては、燃料として、例えばLPGガス、LNGガス、石炭、コークス、微粉炭等が用いられるが、これらの燃料のコストは非常に安価であり、設備費やメンテナンス費に関しても電気炉等と比較して格段に安価に抑えることができる。
【0059】
また、バーナー炉では、メンテナンスが非常に容易であり、連続操業も有効に行うことができ、キルン等に比較して操業効率が高めることができる。例えば、キルンを用いた操業の場合では、炉内に鉱石が半溶融状態になって付着し、成長していくため、2週間に一度程度の頻度で操業を停止させて付着物の除去作業等を行うことが必要になる。それに対して、バーナー炉では、装入した鉱石を短時間の処理で還元してメタル及びスラグとして全量排出できるため、炉内に鉱石が付着することを抑制することができる。このため、基本的には付着物除去等のメンテナンスが不要であり、例えばエルケム法の電気炉のような連続操業が可能となる。また、エルケム法の電気炉よりも、構造が簡易であって付属設備が少ないため、操業コストや定期メンテナンスのコスト等を低減することができる。
【0060】
さらに、一般的に鉱山の近くで還元処理を行うオンサイト製錬では、産出したメタル分のみを市場に輸送すればよいため、原料鉱石を輸送して製錬するよりもコストを大きく低減でき、スラグの処分場所の確保等でも有利となるが、このとき、電気等を用いた加熱を行う場合には、発電所の建設が必要になってしまい非常にコストがかかり、発電費用も一般的に非常に高い。これに対して、ガスを熱源とするバーナーを用いる還元処理によれば、発電設備を簡略化することができ、オンサイト製錬においてより好適である。
【0061】
図2は、バーナーを有する還元炉の構成例を模式的に示す図(断面図)である。
図2に示すように、還元炉10は、混合物Mを加熱して還元処理を施す処理部11と、処理部11に混合物Mを装入する装入口12と、還元処理により得られたメタルを排出する排出口13と、を備えている。なお、処理部11の内壁や炉床は、スラグコーチングによって保護されていることが好ましい。これにより、炉の損傷を防ぎ、長期間に亘って連続な操業が可能となり、設備費やメンテナンス費を低減することができる。
【0062】
還元炉10の処理部11においては、例えばその上部にバーナー14が設けられている。処理部11では、装入口12から装入された混合物Mをバーナー14により加熱して、混合物Mに含まれる炭素質還元剤によってニッケル酸化鉱石を還元する還元反応を生じさせる。ここで、処理部11では、バーナー14による加熱によって、還元反応を生じさせるとともに、その還元反応の進行と共に混合を溶融状態としていく。すなわち、還元炉10は溶融還元炉である。処理部11の内部では、このような還元反応によって溶融状態のメタルとスラグとが生成し、比重差によってスラグとメタルとがそれぞれ上層と下層とに分離した還元物が得られる。
【0063】
排出口13からは、比重差により分離した溶融状態のメタルが排出される。排出口13は、還元物における下層を構成するメタル(メタル層)が存在する位置に設けられ、比重差により分離しているメタルを選択的に排出して回収することができる。また、
図3においては記載を省略しているが、排出口13よりも上方に、スラグ排出口を設けることができ、比重差により分離して上層を構成するスラグを選択的に排出させることもできる。
【0064】
バーナーの燃料としては、特に限定されず、固体であっても、液体であっても、または気体(ガス)であってよい。具体的には、例えば、コークス、石炭、微粉炭等の固体燃料や、A重油やC重油等の液体燃料、またはLNGやLPG等の気体燃料を用いることができる。その中でも特に、気体燃料を用いたバーナー(ガスバーナー)は、燃焼が比較的安定しており、温度制御し易く、また高い温度を実現できるため、好ましい。
【0065】
また、バーナーを用いた加熱においては、バーナーの空燃比を所定の範囲に制御して行うことが好ましい。具体的には、バーナーの空燃比を、好ましくは0.8以上1.1以下の範囲、より好ましくは0.85以上0.95以下の範囲に制御して混合物を加熱する。なお、空燃比とは、燃料に対する空気の質量比率をいう。
【0066】
還元工程S3における還元処理では、バーナーを用いて加熱しているため、短時間で還元反応を進行させ、また短時間で混合物を溶融させることができる。そしてまた、生成した溶融状態のメタルとスラグとを比重差によって短時間で分離することができる。これらのことから、還元反応により生成したメタルの酸化は比較的進行しにくい状態となっている。しかしながら、バーナーの空燃比を所定の範囲に制御することによって、炉内雰囲気における酸素濃度を低下させ、より一層メタルの酸化を抑えることができ、高品質のフェルニッケルを安定的に製造することが可能となる。この点、バーナーの空燃比を好ましくは0.8以上1.1以下に制御して加熱することで、高品質のフェロニッケルを安定して製造することができる。
【0067】
ここで、バーナーを用いた還元処理においては、得られるメタルとスラグのそれぞれの温度が1300℃以上1700℃以下の範囲となるように加熱することが好ましい。特に、得られるメタルの温度が1400℃以上1600℃以下の範囲であり、スラグの温度が1480℃以上1680℃以下の範囲となるよう加熱することが好ましい。メタルとスラグの温度がこのような範囲となるように加熱することで、還元反応を効果的に進行させて、ニッケル含有量の高い高品質なメタルを製造することができる。
【0068】
なお、得られるメタルとスラグの温度の制御は、バーナーにおける燃料加熱量を増減する等して加熱温度を制御して行うことができる。
【0069】
[回収工程]
回収工程S4は、還元により得られたメタルとスラグとを分離してメタルを回収する工程である。上述したように、還元工程S3における還元処理では、バーナーを用いた混合物を溶融状態にして還元するため、溶融メタルと溶融スラグとが生成する。メタルはスラグと比較して比重が大きく重いため、それぞれは比重差によって自然に分離し、メタルは還元炉の炉底に溜まる。そのため、還元炉の炉底付近からメタルを抜いて回収することで、メタルのみを選択的に回収することができる。一方、スラグはメタルの上に浮くため、例えば炉壁から抜いて回収することができる。このように、得られたメタルとスラグとは熔融状態にあるため、その比重差によって容易に分離させて回収することができる。
【0070】
あるいは、メタルとスラグとを、還元炉の1カ所の穴から混在した状態で回収してよい。このようにすることで、還元炉の構造を簡単なものとすることができ、作業性を向上させることもできる。1つの穴からメタルとスラグとが混在した状態で抜き出した場合、回収したメタルとスラグとは冷却し、固化して、その後、磁選等で分離することでメタルを回収することができる。なお、メタルとスラグとは溶融状態にあるときに既に分離しているため、基本的には固体の状態でもメタルとスラグとが分離した状態が維持されており、磁選等の方法でも容易にメタルを回収することができる。
【0071】
このようにしてメタルとスラグを簡単に分離することによって、高い回収率でメタルを回収することができる。
【0072】
<2-2.第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法の流れを示す工程図である。
図3に示すように、第2の実施形態に係る製錬方法では、第1の実施形態に係る製錬方法とは異なり、乾燥工程と還元工程とを合わせて実行するようにしている。
【0073】
具体的に、第2の実施形態に係るニッケル酸化鉱石の製錬方法は、ニッケル酸化鉱石を含む原料を混合する混合工程S11と、得られた混合物を還元炉に装入して、乾燥処理を行うとともに還元処理を行う乾燥・還元工程S12と、得られた還元物であるメタルとスラグとを分離してメタルを回収する回収工程S13と、を有する。
【0074】
なお、混合工程S11と回収工程S13は、第1の実施形態に係る製錬方法における混合工程S1と回収工程S4にそれぞれ対応し、同一の処理を行うものであるため、ここでの詳細な説明は省略する。また、乾燥・還元工程S12における処理に関しても、第1の実施形態に係る製錬方法における乾燥工程S2と還元工程S3でのそれぞれの処理と共通する内容については説明を省略し、相違する内容のみ詳細に説明する。
【0075】
[乾燥・還元工程]
乾燥・還元工程S12は、混合工程S11を経て得られたニッケル酸化鉱石と炭素質還元剤とを少なくとも含む混合物を還元炉に装入し、その還元炉内で混合物に対する乾燥処理を施すとともに、乾燥後の混合物を連続的な操作により、バーナーで加熱して還元する工程である。
【0076】
より具体的には、乾燥・還元工程S12では、乾燥設備が直接連結された還元炉を用い、その還元炉内で乾燥処理と還元処理とを行う。このとき、還元炉に連結された乾燥設備(還元炉内に乾燥設備)では、還元処理を行って発生するガス(排ガス)が還元炉から乾燥設備に直接導入され、そのガスを用いて乾燥処理が行われる。
【0077】
このように、乾燥設備が直接連結された還元炉を用いてその還元炉内で乾燥処理と還元処理とを行うようにすることで、還元処理により発生したガスを、混合物を乾燥させるためのガス、すなわち乾燥用ガスとして有効に使用することができる。これにより、乾燥処理のために別途熱源を確保する必要がなくなり、効率的な操業を行うことができる。
【0078】
図4は、バーナーを有する還元炉の構成例を模式的に示す図であり、乾燥設備が直接連結された還元炉の構成を示す図(断面図)である。
図4に示すように、還元炉20は、混合物Mを加熱して還元処理を施す還元処理部21と、還元処理部21における還元処理に先立って混合物Mに乾燥処理を施す乾燥処理部22と、を備えている。還元処理部21と乾燥処理部22とは直接連結されて還元炉20を構成している。また、還元炉20は、混合物Mを装入する装入口23と、還元処理により得られたメタルを排出する排出口24と、を備えている。なお、還元炉20の内壁、特に還元処理部21の内壁や炉床は、スラグコーチングによって保護されていることが好ましい。
【0079】
還元炉20においては、装入口23から装入された混合物Mが乾燥処理部22に供給される。乾燥処理部22は、例えば、
図4に示すようにベルトコンベヤ装置により構成されている。乾燥処理部22では、供給された混合物Mがベルトコンベヤ装置のベルト上に載置され、そのベルト上を所定の速度で移動する過程で乾燥処理が施される。
【0080】
還元処理部21には、例えばその上部にバーナー25が設けられている。還元処理部21では、乾燥処理部22での乾燥処理を経て移送されてきた混合物(乾燥後の混合物)Mが供給され、その混合物Mをバーナー25により加熱して溶融状態にし、混合物Mに含まれる炭素質還元剤によって還元反応を生じさせる。すなわち、還元炉20は、溶融還元炉である。還元処理部21の内部では、このような還元反応によってメタルとスラグとが生成し、比重差によってスラグとメタルとがそれぞれ上層と下層とに分離した還元物が得られる。
【0081】
ここで、還元炉20においては、上述したように、還元処理部21と乾燥処理部22とが直接連結されて構成されている。より具体的には、
図4に示すように、高さ方向の位置関係において、乾燥処理部22が上方に、還元処理部21が下方に、それぞれ位置して同一空間内に設けられている。そして、還元処理部21と乾燥処理部22とは、相互に連通した状態で、連結されている。したがって、このような還元炉20においては、還元処理部21での還元処理によって発生したガス(排ガス)が、
図4中の矢印G
1で示すように、その上昇流によって、還元処理部21よりも高さ方向で上方に位置する乾燥処理部22内へと直接導入されるようになっている。
【0082】
このような構成を有する還元炉20における乾燥処理部22では、還元処理部21から直接導入されたガスを乾燥用ガスとして用いて乾燥処理が施される(
図4中の矢印G
2)。還元処理部21での還元処理により発生したガスは、高温の還元温度での処理により発生した排ガスであることから、高温状態にある。したがって、乾燥用ガスとして好適に用いることができる。また、その高温のガスを乾燥用ガスとして用いれば、再度の加熱等の施す必要がなく、コストを有効に低減することができる。
【0083】
しかも、還元処理を経て得られたガスは、還元性のガスである。したがって、乾燥処理部22において、そのような還元性を有する高温ガスを乾燥用ガスとして用いて乾燥処理を施すことで、混合物の酸化を有効に防ぐことができる。これにより、乾燥後の混合物Mを還元処理に供したときに、過不足なく均一な還元反応を生じさせることができ、高品質なメタルを製造することができる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0085】
≪実施例1、比較例1≫
(混合工程)
原料鉱石としてのニッケル酸化鉱石、鉄鉱石、フラックス成分である珪砂及び石灰石、バインダー、及び炭素質還元剤(石炭粉、炭素含有量:82質量%、平均粒径:約65μm)を、適量の水を添加しながら混合機を用いて混合して混合物を得た。なお、炭素質還元剤については、ニッケル酸化鉱石に含まれる酸化ニッケル(NiO)と酸化鉄(Fe2O3)とを過不足なく還元するのに必要な量を100質量%としたときに27質量%の割合となる量で含有させた。
【0086】
(乾燥工程、還元工程)
実施例1では、得られた混合物を成形せずにそのまま乾燥設備に装入して180℃以上の温度で1時間の乾燥処理を施し、乾燥後の混合物を、バーナーを有する還元炉(バーナー炉)に装入した。バーナーとしては気体燃料を用いたガスバーナーを用いた。バーナー炉では、装入した混合物をバーナーにより加熱して溶融状態にして還元処理を施した。この還元処理により、バーナー炉では溶融状態にあるメタルとスラグとが生成し、比重差によってスラグが上層に、メタルが下層にそれぞれ分離した。なお、還元処理では、操業を実施例1-1~1-5に分け、それぞれの操業における還元温度として、得られるメタルとスラグの温度が下記表3に示す温度となるように混合物を加熱して還元した。
【0087】
一方、比較例1では、得られた混合物をパン型造粒機により造粒し、φ14.0±0.5mmの大きさに篩った。その後、乾燥設備で180℃以上の温度で1時間の乾燥処理を施した。その後、乾燥後の試料を4つに分け(比較例1-1~1-4)、回転炉床炉を用いて還元処理を施した。なお、還元処理では、還元温度として、下記表3に示す炉内温度となるようして還元した。
【0088】
実施例1、比較例1において、還元処理に要した時間(還元時間)を測定した。なお、還元時間とは、ニッケル酸化鉱石を含む混合物を還元炉に装入してから、生成した溶融状態のメタルとスラグとを還元炉から排出するまでの平均時間をいう。
【0089】
(回収工程)
実施例1では、バーナー炉の炉底付近から溶融したメタルを抜き出して回収した。一方で、比較例1では、還元処理後に得られた還元物を粉砕し、その後磁選してメタルを回収した。
【0090】
(得られたメタルの分析)
以上のようにして得られた各メタル試料について、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有量(ニッケル品位)、及びメタル回収率をそれぞれ分析した。下記表3に、分析結果を示す。また、表3には還元時間も併せて示す。
【0091】
ここで、ICP発光分光分析器(SHIMAZU S-8100)を用いてメタル中のニッケル含有量を測定し、ニッケルメタル率については下記(1)式により、メタル中ニッケル含有率については下記(2)式により算出した。
ニッケルメタル化率=ペレット中のメタル化したNiの量÷(ペレット中の全てニッケルの量)×100(%) ・・・(1)式
メタル中ニッケル含有率=ペレット中のメタル化したNiの量÷(ペレット中のメタルしたニッケルと鉄の合計量)×100(%) ・・・(2)式
【0092】
また、回収したメタルについて、還元処理に供したニッケル酸化鉱石中のニッケル含有率とその装入量、そして回収したニッケル量から、ニッケルメタル回収率を下記(3)式により算出した。
ニッケルメタル回収率=回収されたニッケル量÷(装入した鉱石の量×鉱石中のニッケル含有割合)×100 ・・・(3)式
【0093】
【0094】
表3の結果に示されるように、バーナー炉を用いて還元処理を施した実施例1-1~1-5では、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有率、及びメタル回収率のすべてにおいて良好な結果が得られた。しかも、実施例1-1~1-5の方法では、還元時間を極めて短い時間とすることができ、効率的な操業を行うことができた。
【0095】
一方で、回転炉床炉を用いた従来の方法により還元処理を施した比較例1-1~1-4では、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有率、及びメタル回収率のすべてにおいて実施例と比較して低い値となった。また、比較例1-1~1-4の方法では、実施例に比べて還元時間が長くなった。
【0096】
≪実施例2≫
実施例2では、
図4に例示するような、乾燥設備が直接連結された還元炉(バーナー炉)を用いて、乾燥処理と還元処理とを施した。具体的に、混合物を還元炉に装入した後、乾燥設備(
図4における乾燥処理部22)において還元処理により発生したガスを乾燥用ガスとして用いて混合物を乾燥した。その後、乾燥後の混合物を還元炉の本体部(
図4における還元処理部21)においてバーナーにより加熱して溶融させた。なお、それ以外は、実施例1と同様にして操業を行った。
【0097】
還元処理の後、バーナー炉の炉底付近から溶融したメタルを抜き出して回収し、得られたメタル試料について、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有量(ニッケル品位)、及びメタル回収率をそれぞれ分析した。下記表4に分析結果を示す。
【0098】
【0099】
表4の結果に示されるように、実施例2-1~2-5においても、ニッケルメタル化率、メタル中ニッケル含有率、及びメタル回収率のすべてにおいて良好な結果が得られた。また、還元時間を極めて短い時間とすることができ、効率的な操業を行うことができた。
【符号の説明】
【0100】
10,20 還元炉
11 処理部
21 還元処理部
22 乾燥処理部
12,23 装入口
13,24 排出口
14,25 バーナー