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特許7147484ホルダ付きウインドウガラス及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】ホルダ付きウインドウガラス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/38 20060101AFI20220928BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20220928BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20220928BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
E05F11/38 E
B29C45/14
B29C45/16
B60J1/17 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018207119
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2019105152
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2017236133
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和浩
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-039155(JP,A)
【文献】特表2015-533113(JP,A)
【文献】実開昭63-006839(JP,U)
【文献】実開平03-073216(JP,U)
【文献】特開2015-107588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/38-11/52
B60J 1/12- 1/18
B29C 45/14-45/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに昇降可能に組み付けられたウインドウガラスであって、前記ウインドウガラスの昇降装置と連結される連結部を有するホルダが前記ウインドウガラスの下縁部の一部に装着されたホルダ付きウインドウガラスにおいて、
前記ホルダは、内層部と外層部とからなる一体成形品であり、
前記内層部は、前記ウインドウガラスの下縁部の一部を下縁部の厚さ方向において挟持する断面U字形状であり、
前記外層部は、前記内層部の外側に位置し、前記内層部よりも硬質の材料からなり、かつ、断面U字形状であり、
前記外層部は、前記ウインドウガラスの下縁部から離間する方向に突出する前記連結部を有
前記ホルダの前記内層部は熱可塑性エラストマによって構成され、前記外層部は繊維が含有された熱可塑性エラストマによって構成される、
ホルダ付きウインドウガラス。
【請求項2】
前記ホルダ付きウインドウガラスは、前記ウインドウガラスと、前記ホルダとの一体成形品である、
請求項1に記載のホルダ付きウインドウガラス。
【請求項3】
前記ウインドウガラスは、単板ガラス又は合わせガラスである、
請求項1又は記載のホルダ付きウインドウガラス。
【請求項4】
前記ホルダは、前記内層部及び前記外層部の二色成形品である、
請求項1からのいずれか1項に記載のホルダ付きウインドウガラス。
【請求項5】
車両のドアに昇降可能に組み付けられたウインドウガラスであって、前記ウインドウガラスの昇降装置と連結される連結部を有するホルダが前記ウインドウガラスの下縁部の一部に装着されたホルダ付きウインドウガラスの製造方法において、
前記ウインドウガラスの下縁部の一部を下縁部の厚さ方向において挟持するための、断面U字形状の内層部を形成する第1成形工程と、
前記内層部よりも硬質の断面U字形状の外層部を前記内層部の外側に前記内層部と一体的に形成する第2成形工程と、を有し、
前記第2成形工程は、前記外層部とともに前記ウインドウガラスの下縁部から離間する方向に突出する前記連結部を成形する工程を含
前記ホルダの前記内層部は熱可塑性エラストマによって構成され、前記外層部は繊維が含有された熱可塑性エラストマによって構成される、
ホルダ付きウインドウガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルダ付きウインドウガラス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアに昇降可能に組み付けられたウインドウガラスは、ドアパネルの内部に配置された昇降装置(レギュレータとも言う。)に連結され、昇降装置からの駆動力により昇降移動される。昇降装置は、駆動源と、駆動源の動力をウインドウガラスに伝達する動力伝達部材とを備えている。一方、ウインドウガラスは、その下縁部の一部にホルダが装着されており、このホルダの連結部に動力伝達部材が連結される。
【0003】
特許文献1には、ウインドウガラスにホルダを装着する方法として、つまり、ホルダ付きウインドウガラスの製造方法として、ウレタン系接着剤を使用することが開示されている。また、特許文献1には、ホルダの材料として、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂などのエンジニアリングプラスティックが適していると記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、ホルダ(U型ブラケット)付きウインドウガラスの製造方法として、ウインドウガラスの下縁部にドリルで孔あけを行い、この孔にナット、リベットなどを通過させてホルダを装着することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-214817号公報
【文献】特表2015-533113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたホルダ付きウインドウガラス及びその製造方法は、以下の問題と懸念があった。
【0007】
すなわち、特許文献1のホルダ付きウインドウガラスの製造方法は、硬化に時間(24~48時間)のかかるウレタン系接着剤を使用している。このため、ウインドウガラスにホルダを組み付ける時間とは別に接着剤を硬化させる養生時間を要するので、ホルダ付きウインドウガラスの生産性が悪いという問題があった。また、特許文献1の製造方法では、上記の養生時間中に外力等によりホルダがウインドウガラスに対して位置ずれする虞があった。ウインドウガラスに対するホルダの装着位置は、昇降装置との連結において高い精度が要求される。このため、特許文献1の製造方法は、ホルダ付きウインドウガラスの品質に影響を与える懸念があった。更に、特許文献1のホルダ付きウインドウガラスは、ガラス製のウインドウガラスと硬質樹脂(エンジニアリングプラスティック)製のホルダとの線膨張率の違いによって、ウインドウガラスからホルダが剥がれる懸念があった。このように特許文献1のホルダ付きウインドウガラス及びその製造方法は、品質及び生産性において問題があった。
【0008】
一方、特許文献2のホルダ付きウインドウガラスは、ウインドウガラスの孔にホルダが機械的に装着される構成なので、上述したような特許文献1の問題は生じない。しかしながら、特許文献2のホルダ付きウインドウガラスは、孔の周辺部に応力が作用すると、孔の周辺に生じている微細なクラックを起点としてウインドウガラスが割れるという懸念があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、品質及び生産性を高めることができるとともに、ホルダの装着に起因するウインドウガラスの割れを防止することができるホルダ付きウインドウガラス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的を達成するため、本発明のホルダ付きウインドウガラスは、車両のドアに昇降可能に組み付けられたウインドウガラスであって、ウインドウガラスの昇降装置と連結される連結部を有するホルダがウインドウガラスの下縁部の一部に装着されたホルダ付きウインドウガラスにおいて、ホルダは、内層部と外層部とからなる一体成形品であり、内層部は、ウインドウガラスの下縁部の一部を下縁部の厚さ方向において挟持する断面U字形状であり、外層部は、内層部の外側に位置し、内層部よりも硬質の材料からなり、かつ、断面U字形状であり、外層部は、ウインドウガラスの下縁部から離間する方向に突出する連結部を有する。
【0011】
本発明の目的を達成するため、本発明のホルダ付きウインドウガラスの製造方法は、車両のドアに昇降可能に組み付けられたウインドウガラスであって、ウインドウガラスの昇降装置と連結される連結部を有するホルダがウインドウガラスの下縁部の一部に装着されたホルダ付きウインドウガラスの製造方法において、ウインドウガラスの下縁部の一部を下縁部の厚さ方向において挟持する断面U字形状の内層部を形成する第1成形工程と、内層部よりも硬質の断面U字形状の外層部を内層部の外側に内層部と一体的に形成する第2成形工程と、を有し、第2成形工程は、外層部とともにウインドウガラスの下縁部から離間する方向に突出する連結部を成形する工程を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、品質及び生産性を高めることができるとともに、ホルダの装着に起因するウインドウガラスの割れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両のサイドドアに昇降自在に備えられるホルダ付きウインドウガラスの正面図
図2】ホルダの外観を示す拡大斜視図
図3図2に示したホルダのA-A線に沿う断面図
図4】本実施形態のホルダ付きウインドウガラスの製造工程を示すフローチャート
図5】一次金型セット工程の説明図
図6】内層部成形工程の説明図
図7】二次金型セット工程の説明図
図8】外層部成形工程の説明図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に従って本発明に係るホルダ付きウインドウガラス及びその製造方法の好ましい実施形態を説明する。
【0015】
図1に示すホルダ付きウインドウガラス10は、車両(不図示)のサイドドアに昇降可能に組み付けられる。このホルダ付きウインドウガラス10は、サイドドアのドアパネルの内部に配置された昇降装置(不図示)に連結され、昇降装置からの駆動力により昇降移動される。これにより、ホルダ付きウインドウガラス10によってサイドドアの窓開口が開閉される。
【0016】
本実施形態では、ホルダ付きウインドウガラス10を構成するウインドウガラス12として、単板のガラス板を例示して説明する。このウインドウガラス12は、略水平な上縁部12A、下縁部12B、略垂直な右縁部12C、及び円弧状の左縁部12Dを有する略台形形状に構成される。
【0017】
上述の昇降装置は、モータ(不図示)と、モータの動力をホルダ付きウインドウガラス10に伝達するリンク部材又はワイヤなどの動力伝達部材(不図示)を備えている。この動力伝達部材は、ウインドウガラス12の下縁部12Bの一部に装着された一対のホルダ14、14の連結部16、16にそれぞれ連結される。
【0018】
これらのホルダ14、14は、ホルダ付きウインドウガラス10が最下部まで下降移動された窓全開放時にはもちろん、ホルダ付きウインドウガラス10が最上部まで上昇移動された窓全閉鎖時においても、ドアパネルの内部に位置し、外部から見えない部材である。なお、本実施形態では、ウインドウガラス12の下縁部12Bに2個のホルダ14、14が装着されたホルダ付きウインドウガラス10を例示して説明する。
【0019】
図2に示すホルダ14は、ホルダ本体18と連結部16とを有する。ホルダ本体18は、互いに対向する一対の挟持片20、20と、一対の挟持片20、20を連結する底部22とを備える。連結部16は、底部22と一体に形成されるとともに、一対の挟持片20、20とは反対側に突出して形成されている。この連結部16には、ネジ孔24が備えられており、このネジ孔24に前述の動力伝達部材が締結される。これによって、動力伝達部材がホルダ14の連結部16に連結される。
【0020】
図3に示すホルダ本体18は、内層部26と外層部28とからなる一体成形品である。図3において、ウインドウガラス12を二点鎖線で示している。
【0021】
内層部26は、ウインドウガラス12の下縁部12Bの一部を、下縁部12Bの厚さ方向(矢印B方向)において挟持する断面U字形状に構成される。また、外層部28は、内層部26の外側に位置し、内層部26よりも硬質の材料からなり、かつ、断面U字形状に構成されている。この外層部28に連結部16が備えられている。この連結部16は、図1に示すように、ウインドウガラス12の下縁部12Bから離間する方向に突出されている。
【0022】
内層部26の材料は、POM(polyacetal:ポリアセタール樹脂)などのエンジニアリングプラスティックと比較して、硬度の低い熱可塑性エラストマであり、PP(polypropylene:ポリプロレン樹脂)又はPVC(polyvinyl chloride:ポリ塩化ビニル)などの熱可塑性エラストマである。一例として上記材料のそれぞれの硬度について説明すると、POMのロックウェル硬度(Rスケール)は120であり、PPをベース材料(主材料)とする熱可塑性エストラマのロックウェル硬度(Aスケール)は50~95であり、PVCのショアA硬度は60~95である。なお、内層部26を形成する場合には、ウインドウガラス12の下縁部12Bのうち内層部26を形成する領域にプライマーを塗布した後、内層部26を形成することが好ましい。これにより、ウインドウガラス12と内層部26との接着性を高めることができる。
【0023】
一方、外層部28の材料は、内層部26よりも硬度及び強度の高い材料であり、既述のエンジニアリングプラスティックを選択してもよいが、以下の樹脂を選択することが好ましい。
【0024】
すなわち、本実施形態のホルダ14は、ホルダ付きウインドウガラス10の品質及び生産性を高めるために、内層部26と外層部28とが二色成形にて形成されている。つまり、ホルダ14は、内層部26を形成した後に、内層部26の外側に外層部28を形成することでホルダ14を形成する、二色成形により形成された二色成形品である。このため、外層部28の材料としては、内層部26との一体成形性(接着性)を考慮して、内層部26の材料と同じPP又はPVCにガラス繊維又は炭素繊維などの繊維を含有した熱可塑性エラストマを選択することが好ましい。
【0025】
本実施形態のホルダ付きウインドウガラス10は、ウインドウガラス12の下縁部12Bにおいて、ウインドウガラス12とホルダ14の内層部26と外層部28との一体成形品である。そのため、ホルダ付きウインドウガラス10を、ウレタン系接着剤を使用することなく形成できる。そして、接着剤を使用しないため、接着剤を硬化させる養生時間が不要であり、また、接着剤の劣化などにより、ウインドウガラス12からホルダ14が剥がれる懸念がない。さらに、ウインドウガラス12に孔を開けないため、ウインドウガラス12が割れる懸念がない。
【0026】
次に、本実施形態のホルダ付きウインドウガラス10の製造方法について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態の製造方法は、ウインドウガラス12に内層部26を形成した後に、その外側に外層部28を形成することでホルダ14を形成する、二色成形によって装着する製造方法である。
【0027】
図4に示すように、本実施形態の製造方法は、大別して第1成形工程と第2成形工程とを有する。
【0028】
第1成形工程は、工程順にプライマー塗布工程(S10)と、内層部用の一次金型をウインドウガラス12に取り付ける一次金型セット工程(S20)と、溶融したPP(PVCでもよい。)を一次金型に注入する内層部成形工程(S30)と、一次金型をウインドウガラス12から取り外す一次金型取り外し工程(S40)と、を有する。
【0029】
プライマー塗布工程(S10)では、ウインドウガラス12の下縁部12Bのうち内層部26を形成する領域にプライマーを塗布する。
【0030】
図5には、一次金型を構成する一対の金型30、32がウインドウガラス12のホルダ14の装着位置にセットされた断面図が示されている。図5によれば、内層部26を形成するキャビティ空間34が一対の金型30、32の内壁面によって形成されており、PPをキャビティ空間34に注入する注入口36が金型30に形成されている。なお、図5では、一対の金型30、32によって一次金型を構成した例を示しているが、一次金型の構成例は図5に限定されるものではない。
【0031】
次に、内層部成形工程(S30)では、図6の説明図の如く、溶融したPP38を射出シリンダ40によって注入口36からキャビティ空間34に注入する。これによって、ウインドウガラス12の下縁部12Bの一部に内層部26が形成される。この後、一次金型取り外し工程(S40)にて金型30、32をウインドウガラス12から取り外す。
【0032】
一方、第2成形工程は、工程順に外層部用の二次金型をウインドウガラス12に取り付ける二次金型セット工程(S50)と、ガラス繊維を30%含有する溶融したPP(PVCでもよい。)を二次金型に注入する外層部成形工程(S60)と、二次金型をウインドウガラス12から取り外す二次金型取り外し工程(S70)と、を有する。
【0033】
図7には、二次金型を構成する一対の金型42、44がウインドウガラス12のホルダ14の装着位置にセットされた断面図が示されている。図7によれば、外層部28を形成するキャビティ空間46が一対の金型42、44の内壁面によって形成されており、ガラス繊維を含有したPPをキャビティ空間に注入する注入口48が金型42に形成されている。なお、図7では、一対の金型42、44によって二次金型を構成した例を示しているが、二次金型の構成例は図7に限定されるものではない。
【0034】
次に、外層部成形工程(S60)では、図8の説明図の如く、ガラス繊維を30%含有する溶融したPP50を射出シリンダ52によって注入口48からキャビティ空間46に注入する。これによって、内層部26の外側に外層部28が一体に形成される。この後、二次金型取り外し工程(S70)にて金型42、44をウインドウガラス12から取り外す。これにより、内層部26と外層部28とからなる二色成形品のホルダ14をウインドウガラス12の下縁部12Bに一体成形することができる。
【0035】
なお、外層部成形工程(S60)において、外層部28とともに、ウインドウガラス12の下縁部12Bから離間する方向に突出する連結部16を形成することが出来る。連結部16と外層部28とが、同じ硬度及び強度の高い材料の材料により形成されるため、ウインドウガラス12の昇降装置と連結させることが可能となる。また、外層部28とともに、連結部16を形成するため、ホルダ付きウインドウガラス10の生産性を高めることができる。
【0036】
ここで、本実施形態の外層部成形工程(S60)では、内層部26の材料と同じベース材料(主材料)のPPを使用するので、ガラス繊維を30%含有する溶融したPP50が、PP製の内層部26の外側に良好に熱融着する。これにより、寸法精度の高い安定した形状のホルダ14を構成することができる。既述のガラス繊維の含有率(30%)は、外層部28に要求される硬度によって設定されるものであり、一例として30%~40%に設定される。また、ガラス繊維に代えて炭素繊維をPPに含有させてもよい。
【0037】
また、本実施形態の製造方法によれば、ウインドウガラス12の下縁部12Bにおいて、ウインドウガラス12とホルダ14の内層部26と外層部28とが射出成型により一体成形される。そして、ホルダ14は二色成形により形成されるので、S10~S70の工程を数分で実行することができる。これにより、ウインドウガラス12にホルダ14を短時間で一体成形することができる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、特許文献1と比較して、ホルダ付きウインドウガラスの生産性を高めることができる。更に、本実施形態の製造方法によれば、養生時間を要する特許文献1のようにホルダがウインドウガラスに対して位置ずれする虞もないので、ホルダ付きウインドウガラス10の品質も高めることができる。
【0038】
また、本実施形態のホルダ14は、軟質の内層部26及び硬質の外層部28とから構成されているので、線膨張率の違いによってウインドウガラス12と外層部28との膨縮量に差が生じても、その差を内層部26が弾性変形することによって吸収する。これにより、ウインドウガラス12と外層部28との線膨張率の違いによって生じる問題、つまり、ウインドウガラス12からホルダ14が剥がれるという問題を解消することができる。したがって、本実施形態のホルダ付きウインドウガラス10によれば、特許文献1のホルダ付きウインドウガラスよりも品質を高めることができる。
【0039】
更に、本実施形態のホルダ付きウインドウガラス10によれば、特許文献2のホルダ付きウインドウガラスようにホルダを装着するための孔を備えていないので、ホルダ14の装着に起因するウインドウガラス12の割れを防止することができる。
【0040】
以上の如く、本実施形態のホルダ付きウインドウガラス10及びその製造方法によれば、ホルダ付きウインドウガラス10の品質及び生産性を高めることができるとともに、ホルダ14の装着に起因するウインドウガラス12の割れを防止することができる。
【0041】
また、本実施形態の製造方法において、第1成形工程及び第2成形工程を以下のように実行することにより、ホルダ付きウインドウガラス10の製造時間を更に短縮することができる。
【0042】
つまり、第1成形工程において、内層部成形工程(S30)の前工程で、溶融したPP38の温度まで金型30、32を予め加熱しておき、その後、内層部成形工程(S30)を実行する。そして、内層部成形工程(S30)の終了直後に金型30、32を冷媒により急冷する。これにより、内層部26を短時間で成形することができる。同様に第2成形工程において、外層部成形工程(S60)の前工程で、ガラス繊維を30%含有する溶融したPP50の温度まで金型42、44を予め加熱しておき、その後、外層部成形工程(S60)を実行する。そして、外層部成形工程(S60)の終了直後に金型42、44を冷媒により急冷する。これにより、外層部28を短縮で形成することができる。このように、一次金型及び二次金型を、所定の時期に加熱して冷却することにより、ホルダ14の成形時間を短縮することができる。これにより、ホルダ付きウインドウガラス10の製造時間を更に短縮することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、サイドドアに適用されるホルダ付きウインドウガラス10について説明したが、ホルダ付きウインドウガラス10の適用箇所は、サイドドアに限定されるものではない。例えば、車両のバックドアに備えられるウインドウガラスであって、バックドアに昇降可能に組み付けられるウインドウガラスであれば適用可能である。
【0044】
また、本実施形態では、ウインドウガラス12の下縁部12Bの一部に2個のホルダ14、14が装着されたホルダ付きウインドウガラス10について説明したが、ウインドウガラス12に装着されるホルダ14の個数は1個であっても2個以上の複数個であってもよい。
【0045】
また、本実施形態では、ウインドウガラス12として、単板のガラス板を例示したが、これに限定されず、例えば合わせガラスを適用してもよい。
【0046】
また、ウインドウガラス12として非強化ガラスの他、強化ガラスを適用することもできる。強化ガラスとしては、風冷強化ガラス、化学強化ガラスのいずれでもよい。単板のガラス板に強化ガラスを適用する場合には、破損した際のガラス片の飛散を防止するために、単板のガラス板の表面に飛散防止フィルムを貼着してもよい。一方、合わせガラスのガラス板に強化ガラスを適用する場合には、飛散防止フィルムの機能を既知の中間膜で担うことができるので、飛散防止フィルムは不要となる。合わせガラスの中間膜は、一例としてPVB(poly vinyl butyral:ポリビニルブチラール)製又はEVA(ethylene vinyl acetate:エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)製などの公知の膜である。
【符号の説明】
【0047】
10…ホルダ付きウインドウガラス、12…ウインドウガラス、12B…下縁部、14…ホルダ、16…連結部、18…ホルダ本体、20…挟持片、22…底部、24…ネジ孔、26…内層部、28…外層部、30…金型、32…金型、34…キャビティ空間、36…注入口、38…溶融したPP、40…射出シリンダ、42…金型、44…金型、46…キャビティ空間、48…注入口、50…溶融したPP(ガラス繊維を30%含有する溶融したPP)、52…射出シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8