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特許7147485スライダ付きウインドウガラス及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】スライダ付きウインドウガラス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E05F 11/38 20060101AFI20220928BHJP
   B29C 70/68 20060101ALI20220928BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
E05F11/38 E
B29C70/68
B60J1/17 C
B60J1/17 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018207120
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2019105153
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2017236134
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和浩
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-094921(JP,A)
【文献】特開2003-206672(JP,A)
【文献】特開2014-234040(JP,A)
【文献】特開2006-341693(JP,A)
【文献】実開昭63-161017(JP,U)
【文献】特開2002-129839(JP,A)
【文献】特開昭57-158481(JP,A)
【文献】特開平02-179716(JP,A)
【文献】特開2004-353164(JP,A)
【文献】米国特許第5086589(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 11/38-11/52
B60J 1/12- 1/18
B29C 70/00-70/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサイドドアに昇降可能に組み付けられ、2つの側辺を有するウインドウガラスと、
前記ウインドウガラスの少なくとも一方の前記側辺の車内面に装着されるとともに昇降方向に沿って装着され、前記サイドドアに取り付けられた昇降ガイド部材に沿って昇降するスライダと、
を有するスライダ付きウインドウガラスにおいて、
前記スライダは、内層部と外層部とからなる一体成形品であり、
前記内層部は、前記ウインドウガラスの前記車内面に接着され、
前記外層部は、前記内層部の車内面側に位置し、かつ、前記内層部よりも硬質の材料からなり、
前記外層部は、前記昇降ガイド部材に係合する係合部を有
前記スライダの前記内層部は熱可塑性エラストマによって構成され、前記外層部は繊維が含有された熱可塑性エラストマによって構成される、
スライダ付きウインドウガラス。
【請求項2】
前記スライダ付きウインドウガラスは、前記ウインドウガラスと、前記スライダとの一体成形品である、
請求項1に記載のスライダ付きウインドウガラス。
【請求項3】
前記スライダは、前記ウインドウガラスの2つの側辺に配置される、
請求項1又は2に記載のスライダ付きウインドウガラス。
【請求項4】
前記係合部は、凹部又は凸部に構成される、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスライダ付きウインドウガラス。
【請求項5】
前記ウインドウガラスは、合わせガラス又は単板ガラスである、
請求項1からのいずれか1項に記載のスライダ付きウインドウガラス。
【請求項6】
前記スライダは、前記内層部及び前記外層部の二色成形品である、
請求項1からのいずれか1項に記載のスライダ付きウインドウガラス。
【請求項7】
前記昇降ガイド部材に前記スライダの前記係合部が係合されると、前記スライダ付きウインドウガラスは、その車両幅方向外側の車外面が車両の車両幅方向外側の車外面と面一に配置される、
請求項1からのいずれか1項に記載のスライダ付きウインドウガラス。
【請求項8】
前記スライダ付きウインドウガラスは、車両前後方向に隣接されたフロントサイドドア及びリアサイドドアにそれぞれ備えられ、
前記フロントサイドドア及びリアサイドドアにそれぞれ備えられた前記スライダ付きウインドウガラスは、車両幅方向外側の車外面が車両の車両幅方向外側の車外面と面一に配置される、
請求項1からのいずれか1項に記載のスライダ付きウインドウガラス。
【請求項9】
車両のサイドドアに昇降可能に組み付けられ、2つの側辺を有するウインドウガラスと、
前記ウインドウガラスの少なくとも一方の前記側辺の車内面に装着されるとともに昇降方向に沿って装着され、前記サイドドアに取り付けられた昇降ガイド部材に沿って昇降するスライダと、
を有するスライダ付きウインドウガラスの製造方法において、
前記ウインドウガラスの前記車内面に内層部を形成する第1成形工程と、
前記内層部よりも硬質の外層部を前記内層部の車内面側に前記内層部と一体的に形成する第2成形工程と、を有し、
前記第2成形工程は、前記外層部とともに前記昇降ガイド部材に係合する係合部を成形する工程を含む、
スライダ付きウインドウガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライダ付きウインドウガラス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のサイドドアに昇降可能に組み付けられるウインドウガラスは、サイドドアの内部に配置された昇降装置(レギュレータとも言う。)に連結され、昇降装置から伝達される駆動力により昇降移動される。
【0003】
特許文献1には、車両本体の車外面とウインドウガラスの車外面を面一(以下、フラッシュサーフェスともいう。)する構造に適したスライダ付きウインドウガラスが開示されている。このスライダ付きウインドウガラスは、車両後方側の側辺に第一のガイド部材(スライダ)が装着されるとともに、車両前方側の側辺に第二のガイド部材(スライダ)が装着されており、第一のガイド部材が第一のレール部材(昇降ガイド部材)に昇降自在に嵌合され、第二のガイド部材が第二のガイド部材(昇降ガイド部材)に昇降自在に嵌合されている。
【0004】
一方、特許文献2に開示されたスライダ付きウインドウガラスは、スライド溝部を有するスライダを有し、このスライダのスライド溝に、サイドドアに設けられた昇降ガイド片部(昇降ガイド部材)が挿入されている。特許文献2のスライダ付きウインドウガラスは、ウインドウガラスの昇降時にスライダが昇降ガイド片部に沿って昇降する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-1227号公報
【文献】特開2017-94921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示されたスライダ付きウインドウガラス及びその製造方法は、以下の問題と懸念があった。
【0007】
特許文献1では明記されていないが、ウインドウガラスにスライダを装着する場合には、特許文献2に開示されたように両面テープ又は接着剤を使用して装着される。ところで、接着剤を使用した場合には、ウインドウガラスにスライダを組み付ける時間とは別に接着剤を硬化させる養生時間を要するので、スライダ付きウインドウガラスの生産性が悪くなるという問題があった。また、接着剤の他、両面テープを使用した場合でも、ウインドウガラスにスライダを高い精度(例えば数百ミクロンオーダー)で装着することは非常に困難であった。ウインドウガラスに対するスライダの装着位置は、昇降ガイド部材との位置関係において高い精度が要求される。このため、両面テープ及び接着剤を使用した場合には、スライダ付きウインドウガラスの品質に影響を与える懸念があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、生産性及び品質を高めることができるスライダ付きウインドウガラス及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するため、本発明のスライダ付きウインドウガラスは、車両のサイドドアに昇降可能に組み付けられ、2つの側辺を有するウインドウガラスと、ウインドウガラスの少なくとも一方の側辺の車内面に装着されるとともに昇降方向に沿って装着され、サイドドアに取り付けられた昇降ガイド部材に沿って昇降するスライダと、を有するスライダ付きウインドウガラスにおいて、スライダは、内層部と外層部とからなる一体成形品であり、内層部は、ウインドウガラスの車内面に接着され、外層部は、内層部の車内面側に位置し、かつ、内層部よりも硬質の材料からなり、外層部は、昇降ガイド部材に係合する係合部を有する。
【0010】
本発明の目的を達成するため、本発明のスライダ付きウインドウガラスの製造方法は、車両のサイドドアに昇降可能に組み付けられ、2つの側辺を有するウインドウガラスと、ウインドウガラスの少なくとも一方の側辺の車内面に装着されるとともに昇降方向に沿って装着され、サイドドアに取り付けられた昇降ガイド部材に沿って昇降するスライダと、を有するスライダ付きウインドウガラスの製造方法において、ウインドウガラスの車内面に内層部を形成する第1成形工程と、内層部よりも硬質の外層部を内層部の車内面側に内層部と一体的に形成する第2成形工程と、を有し、第2成形工程は、外層部とともに昇降ガイド部材に係合する係合部を成形する工程を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、生産性及び品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係るスライダ付きウインドウガラスを備えた車両の要部外観図
図2図1に示したスライダ付きウインドウガラスの要部断面図
図3図2に示したスライダ付きウインドウガラスの要部拡大断面図
図4】本実施形態のスライダ付きウインドウガラスの製造工程を示すフローチャート
図5】一次金型セット工程の説明図
図6】内層部成形工程の説明図
図7】二次金型セット工程の説明図
図8】外層部成形工程の説明図
図9】他の形態のスライダ付きウインドウガラスの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明に係るスライダ付きウインドウガラス及びその製造方法の好ましい実施形態を説明する。なお、各図において示される矢印Aは車両前方側、矢印Bは車両上方側、矢印Cは車両幅方向外側をそれぞれ示している。
【0014】
図1には、本実施形態に係るスライダ付きウインドウガラス10が昇降可能に組み付けられた車両12のフロントサイドドア14が示されている。このフロントサイドドア14の後側には、ピラー16を介してリアサイドドア18が配置されている。このリアサイドドア18においても、本実施形態のスライダ付きウインドウガラス10(不図示)が昇降可能に組み付けられている。
【0015】
本実施形態では、スライダ付きウインドウガラス10を構成するウインドウガラス20として、合わせガラスを例示して説明する。このウインドウガラス20は、円弧状の上側縁部20A、略水平な下側縁部20B、略垂直な後側縁部20Cと前側縁部20Dを有する略台形形状に構成される。後側縁部20Cと前側縁部20Dとが、本発明のウインドウガラスの2つの側辺に相当する。
【0016】
フロントサイドドア14及びリアサイドドア18にそれぞれ組み付けられたウインドウガラス20は、図2の断面図に示すように、昇降ガイド部材22にスライダ24の係合部26が係合されると、その車両幅方向外側の車外面20Eが、後述するサッシュ30の車外面30Aとピラー16の車外面16Aと面一に配置される。このサッシュ30の車外面30Aとピラー16の車外面16Aが、本発明の車両の車両幅方向外側の車外面に相当する。これにより、本実施形態のスライダ付きウインドウガラス10によれば、フラッシュサーフェス構造を実現することができる。なお、昇降ガイド部材22及びスライダ24についても後述する。
【0017】
図1に戻り、フロントサイドドア14(リアサイドドア18も同様)は、スライダ付きウインドウガラス10の他、ドアパネル28、及び窓枠である既述のサッシュ30を備えている。ドアパネル28は、フロントサイドドア14の下部を構成している。このドアパネル28の内部に、スライダ付きウインドウガラス10を昇降移動させる昇降装置が設けられている。
【0018】
サッシュ30は、ドアパネル28の上部に設けられており、このサッシュ30とドアパネル28とによって窓開口32が画成される。スライダ付きウインドウガラス10は、サッシュ30の後側縦枠30Bに沿って昇降方向(車両上下方向)に昇降される。これによって、窓開口32がスライダ付きウインドウガラス10によって開閉される。
【0019】
上述の昇降装置は、モータ(不図示)と、モータの動力をスライダ付きウインドウガラス10に伝達するリンク部材又はワイヤなどの動力伝達部材(不図示)を備えている。この動力伝達部材は、ウインドウガラス20の下側縁部20Bに装着された一対のホルダ34、34にそれぞれ連結される。
【0020】
既述の図2は、窓開口32(図1参照)を閉じた状態のスライダ付きウインドウガラス10の要部断面図である。図2に示すように、ウインドウガラス20の後側縁部20Cの車内面20Fには、スライダ24が装着されている。このスライダ24は、図1に示すように昇降方向に沿って装着されている。また、スライダ24は、必要に応じてウインドウガラス20の前側縁部20Dの車内面20Fにも装着される。よって、本実施形態では、ウインドウガラス20の2つの側辺にスライダ24が装着されたスライダ付きウインドウガラス10が示されている。
【0021】
図3に示すように、スライダ24は、内層部36と外層部38とからなる一体成形品である。内層部36は、ウインドウガラス20の車内面20Fに接着され、外層部38は、内層部36の車内面側に位置し、かつ、内層部36よりも硬質の材料からなる。また、外層部38には、昇降ガイド部材22に係合する凹条の係合部26が形成されている。
【0022】
外層部38の係合部26の内部に、図2及び図3に示す凸条の昇降ガイド部材22が挿入される。これにより、昇降ガイド部材22に係合部26が係合される。昇降ガイド部材22は、図2に示したように、サッシュ30の後側縦枠30Bに沿って取り付けられている。また、昇降ガイド部材22は、図1に示したように、サッシュ30の前側縦枠30Cにも取り付けられている。
【0023】
図3に戻り、内層部36の材料は、POM(polyacetal:ポリアセタール樹脂)などのエンジニアリングプラスティックと比較して、硬度の低い熱可塑性エラストマであり、PP(polypropylene:ポリプロレン樹脂)又はPVC(polyvinyl chloride:ポリ塩化ビニル)などの熱可塑性エラストマである。一例として上記材料のそれぞれの硬度について説明すると、POMのロックウェル硬度(Rスケール)は120であり、PPをベース材料(主材料)とする熱可塑性エストラマのロックウェル硬度(Aスケール)は50~95であり、PVCのショアA硬度は60~95である。なお、内層部36を形成する場合には、ウインドウガラス20の後側縁部20Cの車内面20Fにプライマーを塗布した後、内層部36を形成することが好ましい。これにより、ウインドウガラス20と内層部36との接着性を高めることができる。
【0024】
一方、外層部38の材料は、内層部36よりも硬度及び強度の高い材料であり、エンジニアリングプラスティックを選択してもよいが、以下の樹脂を選択することが好ましい。
【0025】
すなわち、本実施形態のスライダ24は、スライダ付きウインドウガラス10の品質及び生産性を高めるために、内層部36と外層部38を二色成形にて形成している。つまり、スライダ24は、内層部36を形成した後に、内層部36の車内面側に外層部38を形成することでスライダ24を形成する、二色成形により形成された二色成形品である。このため、外層部38の材料としては、内層部36との一体成形性(接着性)を考慮して、内層部36の材料と同じPP又はPVCにガラス繊維又は炭素繊維などの繊維を含有する熱可塑性エラストマを選択することが好ましい。
【0026】
本実施形態のスライダ付きウインドウガラス10は、ウインドウガラス20の後側縁部20C及び前側縁部20Dの車内面20Fにおいて、ウインドウガラス20とスライダ24の内層部36と外層部38との一体成形品である。そのため、スライダ付きウインドウガラス10を、両面テープや接着剤を使用することなく形成できる。ウインドウガラス20とスライダ24とを接着剤を使用しないで形成するため、接着剤を硬化させる養生時間が不要であり、また、接着剤の劣化などにより、ウインドウガラス20からスライダ24が剥がれる懸念がない。さらに、ウインドウガラス20とスライダ24とを両面テープや接着剤を使用しないで形成するため、ウインドウガラス20にスライダ24を高い精度(例えば数百ミクロンオーダー)で形成することができる。
【0027】
次に、本実施形態のスライダ付きウインドウガラス10の製造方法について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。本実施形態の製造方法は、ウインドウガラス20の後側縁部20Cの車内面20Fにスライダ24を二色成形によって装着する製造方法である。なお、ウインドウガラス20の前側縁部20Dの車内面20Fにスライダ24を装着する製造方法については、下記の製造方法と同一なので、その説明は省略する。
【0028】
図4に示すように、本実施形態の製造方法は、大別して第1成形工程と第2成形工程とを有する。
【0029】
第1成形工程は、工程順にプライマー塗布工程(S10)と、内層部用の一次金型をウインドウガラス20に取り付ける一次金型セット工程(S20)と、溶融したPP(PVCでもよい。)を一次金型に注入する内層部成形工程(S30)と、一次金型をウインドウガラス20から取り外す一次金型取り外し工程(S40)と、を有する。
【0030】
プライマー塗布工程(S10)は、ウインドウガラス20の後側縁部20Cの車内面20Fにプライマーを塗布する。
【0031】
図5は、一次金型セット工程(S20)の説明図である。図5には、一次金型を構成する一対の金型40、42がウインドウガラス20のスライダ24の装着位置にセットされた断面図が示されている。図5によれば、内層部36を形成するキャビティ空間44が一対の金型40、42の内壁面によって形成されており、PPをキャビティ空間44に注入する注入口46が金型42に形成されている。なお、図5では、一対の金型40、42によって一次金型を構成した例を示しているが、一次金型の構成例は図5に限定されるものではない。
【0032】
次に、内層部成形工程(S30)では、図6の説明図の如く、溶融したPP48を射出シリンダ50によって注入口46からキャビティ空間44に注入する。これによって、ウインドウガラス20の後側縁部20Cの車内面20Fに内層部36が形成される。この後、一次金型取り外し工程(S40)にて金型40、42をウインドウガラス20から取り外す。
【0033】
一方、第2成形工程は、工程順に外層部用の二次金型をウインドウガラス20に取り付ける二次金型セット工程(S50)と、例えばガラス繊維を30%含有する溶融したPP(PVCでもよい。)を二次金型に注入する外層部成形工程(S60)と、二次金型をウインドウガラス20から取り外す二次金型取り外し工程(S70)と、を有する。
【0034】
図7は、二次金型セット工程(S50)の説明図である。図7には、二次金型を構成する金型52、54、55がウインドウガラス20のスライダ24の装着位置にセットされた断面図が示されている。図7によれば、外層部38を形成するキャビティ空間56が金型54、55の内壁面によって形成されており、ガラス繊維を30%含有するPPをキャビティ空間56に注入する注入口58が金型54に形成されている。なお、図7では、金型52、54、55によって二次金型を構成した例を示しているが、二次金型の構成例は図7に限定されるものではない。
【0035】
次に、外層部成形工程(S60)では、図8の説明図の如く、ガラス繊維を30%含有する溶融したPP60を射出シリンダ62によって注入口58からキャビティ空間56に注入する。これによって、内層部36の外側に外層部38が一体に形成される。この後、二次金型取り外し工程(S70)にて金型52、54、55をウインドウガラス20から取り外す。これにより、内層部36と外層部38とからなる二色成形品のスライダ24をウインドウガラス20の後側縁部20Cに一体成形することができる。
【0036】
ここで、本実施形態の外層部成形工程(S60)では、内層部36の材料と同じベース材料(主材料)のPPを使用するので、ガラス繊維を30%含有する溶融したPP60が、PP製の内層部36に良好に熱融着する。これにより、寸法精度の高い安定した形状のスライダ24を構成することができる。既述のガラス繊維の含有率(30%)は、外層部38に要求される硬度によって設定されるものであり、一例として30%~40%に設定される。また、ガラス繊維に代えて炭素繊維をPPに含有させてもよい。
【0037】
また、本実施形態の製造方法によれば、ウインドウガラス20の後側縁部20C及び前側縁部20Dの車内面20Fにおいて、ウインドウガラス20とスライダ24の内層部36と外層部38とが射出成型に一体成形される。そして、スライダ24は二色成形による形成されるので、S10~S70の工程を数分で実行することができる。これにより、ウインドウガラス20にスライダ24を短時間で装着することができる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、特許文献1、2と比較して、スライダ付きウインドウガラスの生産性を高めることができる。
【0038】
更に、本実施形態の製造方法によれば、二色成形による製法なので、ウインドウガラス20にスライダ24を高い精度(例えば数百ミクロンオーダー)で装着することができる。また、本実施形態の製造方法によれば、特許文献1、2のようにスライダがウインドウガラスに対して位置ずれする虞もないので、スライダ付きウインドウガラス10の品質も高めることができる。
【0039】
以上の如く、本実施形態のスライダ付きウインドウガラス10及びその製造方法によれば、スライダ付きウインドウガラス10の生産性及び品質を高めることができる。
【0040】
また、本実施形態のスライダ24は、軟質の内層部36及び硬質の外層部38とから構成されているので、線膨張率の違いによってウインドウガラス20と外層部38との膨縮量に差が生じても、その差を内層部36が弾性変形することによって吸収する。これにより、ウインドウガラス20と外層部38との線膨張率の違いによって生じる問題、つまり、ウインドウガラス20からスライダ24が剥がれるという問題も発生しない。よって、スライダ付きウインドウガラス10の品質を高めることができる。
【0041】
また、本実施形態の製造方法において、第1成形工程及び第2成形工程を以下のように実行することにより、スライダ付きウインドウガラス10の製造時間を更に短縮することができる。
【0042】
つまり、第1成形工程において、内層部成形工程(S30)の前工程で、溶融したPP48の温度まで金型40、42を予め加熱しておき、その後、内層部成形工程(S30)を実行する。そして、内層部成形工程(S30)の終了直後に金型40、42を冷媒により急冷する。これにより、内層部36を短時間で成形することができる。同様に第2成形工程において、外層部成形工程(S60)の前工程で、ガラス繊維を30%含有する溶融したPP60の温度まで金型52、54を予め加熱しておき、その後、外層部成形工程(S60)を実行する。そして、外層部成形工程(S60)の終了直後に金型52、54を冷媒により急冷する。これにより、外層部38を短縮で形成することができる。このように、一次金型及び二次金型を、所定の時期に加熱して冷却することにより、スライダ24の成形時間を短縮することができる。これにより、スライダ付きウインドウガラス10の製造時間を更に短縮することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、ウインドウガラス20の2つの側辺(後側縁部20C及び前側縁部20D)近傍の車内面20Fにスライダ24、24を装着した例を示しているが、スライダ24は、ウインドウガラス20の少なくとも一方の側辺近傍の車内面20Fに装着されていればよい。
【0044】
また、本実施形態では、ウインドウガラス20として、合わせガラスを例示したが、これに限定されず、例えば単板のガラス板でもよい。
【0045】
また、ウインドウガラス20として非強化ガラスの他、強化ガラスを適用することもできる。強化ガラスとしては、風冷強化ガラス、化学強化ガラスのいずれでもよい。単板のガラス板に強化ガラスを適用する場合には、破損した際のガラス片の飛散を防止するために、単板のガラス板の表面に飛散防止フィルムを貼着してもよい。一方、合わせガラスのガラス板に強化ガラスを適用する場合には、飛散防止フィルムの機能を既知の中間膜で担うことができるので、飛散防止フィルムは不要となる。合わせガラスの中間膜は、一例としてPVB(poly vinyl butyral:ポリビニルブチラール)製又はEVA(ethylene vinyl acetate:エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)製などの公知の膜である。
【0046】
また、実施形態では、図3に示したように、スライダ24側に凹条の係合部26を形成し、昇降ガイド部材22を凸条に形成したが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示す他の形態のスライダ付きウインドウガラス10Aの断面図の如く、スライダ24側に凸条の係合部26Aを形成し、昇降ガイド部材22側を凹条に形成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…スライダ付きウインドウガラス、10A…スライダ付きウインドウガラス、12…車両、14…フロントサイドドア、16…ピラー、18…リアサイドドア、20…ウインドウガラス、22…昇降ガイド部材、24…スライダ、26…係合部、26A…係合部、28…ドアパネル、30…サッシュ、32…窓開口、34…ホルダ、36…内層部、38…外層部、40…金型、42…金型、44…キャビティ空間、46…注入口、48…溶融したPP、50…射出シリンダ、52…金型、54…金型、55…金型、56…キャビティ空間、58…注入口、60…ガラス繊維を30%含有するPP、62…射出シリンダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9