IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立金属株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電波伝送ケーブル 図1
  • 特許-電波伝送ケーブル 図2
  • 特許-電波伝送ケーブル 図3
  • 特許-電波伝送ケーブル 図4
  • 特許-電波伝送ケーブル 図5
  • 特許-電波伝送ケーブル 図6
  • 特許-電波伝送ケーブル 図7
  • 特許-電波伝送ケーブル 図8
  • 特許-電波伝送ケーブル 図9
  • 特許-電波伝送ケーブル 図10
  • 特許-電波伝送ケーブル 図11
  • 特許-電波伝送ケーブル 図12
  • 特許-電波伝送ケーブル 図13
  • 特許-電波伝送ケーブル 図14
  • 特許-電波伝送ケーブル 図15
  • 特許-電波伝送ケーブル 図16
  • 特許-電波伝送ケーブル 図17
  • 特許-電波伝送ケーブル 図18
  • 特許-電波伝送ケーブル 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】電波伝送ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/127 20060101AFI20220928BHJP
   H01P 3/12 20060101ALI20220928BHJP
   H01P 3/14 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01P3/127
H01P3/12 200
H01P3/14
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018234637
(22)【出願日】2018-12-14
(65)【公開番号】P2020096323
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高武 直弘
(72)【発明者】
【氏名】黒川 翼
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-510434(JP,A)
【文献】特開2017-147548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/00- 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲性を有する線状の誘電体と、前記線状の誘電体の表面に形成した金属薄膜を備える電波伝送ケーブルであって、
前記誘電体の断面において、前記誘電体の中心部を除き、前記誘電体を2つに分ける中心に対して対称、或いは前記誘電体の中心に対して点対称になるように、前記誘電体内に空孔または前記誘電体よりも誘電率の低い低誘電率領域を有することを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記誘電体の断面形状が楕円形であり、楕円形の焦点よりも内側でかつ短軸に対して線対称になるように、前記誘電体内に空孔または前記誘電体よりも誘電率の低い低誘電率領域を有することを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項3】
請求項2に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記楕円形の誘電体の短軸と長軸の長さ比が1:1.5以上であることを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項4】
請求項2に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記空孔または前記低誘電率領域は、円形であることを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項5】
請求項2に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記空孔または前記低誘電率領域は長方形であり、長方形の前記空孔または前記低誘電率領域の長辺が前記誘電体の長軸と直交することを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項6】
請求項2に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記空孔または前記低誘電率領域は楕円形であり、楕円形の前記空孔または前記低誘電率領域の長軸が前記誘電体の長軸と直交することを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項7】
請求項1に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記誘電体の断面形状が楕円形であり、前記誘電体の楕円形状の長軸側の両端に、断面形状が弓形であり、弓形の長辺が楕円形状の長軸と直交し、かつ、短軸に対して線対称になるように前記誘電体よりも誘電率の低い低誘電率領域を有することを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項8】
請求項1に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記誘電体の断面形状が円形であり、円形の中心から半径に対して8割だけ離れた位置よりも内側でかつ中心に対して点対称になるように、前記誘電体内に空孔または前記誘電体よりも誘電率の低い低誘電率領域を有することを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項9】
請求項8に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記空孔または前記低誘電率領域は、円形であることを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項10】
請求項8に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記空孔または前記低誘電率領域は長方形であり、長方形の前記空孔または前記低誘電率領域の長辺が前記誘電体の径方向と直交することを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項11】
請求項8に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記空孔または前記低誘電率領域は楕円形であり、楕円形の前記空孔または前記低誘電率領域の長軸が前記誘電体の径方向と直交することを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項12】
請求項1に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記線状の誘電体の表面と前記金属薄膜の間に前記誘電体よりも誘電率の高い高誘電率領域を有することを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項13】
請求項1に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記線状の誘電体の材料は、ポリエチレンまたはフッ素系樹脂であることを特徴とする電波伝送ケーブル。
【請求項14】
請求項1に記載の電波伝送ケーブルにおいて、
前記線状の誘電体の材料は、発泡誘電体であることを特徴とする電波伝送ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波無線信号などを伝送する電波伝送ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高速無線通信システムや高分解能レーダシステムを実現するために、マイクロ波(3~30GHz)よりも周波数の高いミリ波(30~300GHz)無線信号の利用が進んでいる。ミリ波無線はマイクロ波に比べて直進性が高いため、空間伝搬ではなく伝送ケーブルを利用して配線を行う。図1および図2にミリ波帯伝送ケーブル適用時の概略図を示す。図1の車載レーダや図2の基地局内配線に伝送ケーブル1を適用する場合、伝送ケーブル1はアンテナ2と送受信モジュール3の接続に使用し、伝送ケーブル1は屈曲させて敷設される。そのため、伝送ケーブル1は屈曲性が必要になる。従来のミリ波帯の伝送ケーブルには同軸ケーブルと導波管が存在するが、同軸ケーブルは伝送損失が大きく、金属導波管は屈曲して敷設できないため、伝送損失が小さくかつ屈曲性が高いミリ波帯の伝送ケーブルとして、電波伝送ケーブルが提案されている。
【0003】
電波伝送ケーブルを示す文献として、特許文献1と特許文献2が知られている。特許文献1は、屈曲部における金属薄膜の短絡の防止と伝送特性の変化の抑制に関するものである。可撓性を有する中空で筒状の誘電体の外周面に網目状の導電体を作製し、さらにその外側に前記筒状の誘電体とは異なる中空の筒状の誘電体を作製することで、金属薄膜の短絡を防止し伝送特性の変化を抑制する。特許文献2は、低コストで伝送効率を低下させない導波管の実現に関するものである。屈曲性のある誘電体棒の表面に金属テープなどの薄い導体を隙間なく貼り付けることで、低コストで伝送効率を低下させない導波管を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-147548号公報
【文献】特開平8-195605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電波伝送ケーブル4の構成例を、図3に示す。電波伝送ケーブル4は、断面が円形または楕円形状に形成された屈曲性を有する線状の誘電体5と、線状の誘電体の表面に形成した金属薄膜6で構成される。ここで、電波伝送ケーブル4の動作例を図4を用いて説明する。送信アンテナ7から出力された無線信号は、電波伝送ケーブル4に入力され誘電体5および金属薄膜6を伝搬する。その後、電波伝送ケーブル4の端面に到達した無線信号は端面から放出され、受信アンテナ8で受信される。この際、信号対ノイズ比を増加させ高品質にミリ波無線信号を伝送するためには、電波伝送ケーブル4の断面径を増加させ、送信アンテナ7から出力される無線信号を効率よく電波伝送ケーブル4に入力し、電波伝送ケーブル4の端面から出力された無線信号を受信アンテナ8に入力することが必要になる。
【0006】
上述のように、電波伝送ケーブルの断面径を増加することで送信アンテナから出力された無線信号を効率よく電波伝送ケーブルに入力できるが、電波伝送ケーブルの断面径が増加するにつれて電界ベクトルの異なる伝搬モードが存在可能になる。ある断面径における電波伝送ケーブルに励起可能な電界ベクトルの一例を図5に示す。図5に示す伝搬モード9~13において、伝搬モード9が最低次の伝搬モードであり、通常、この伝搬モードを電波伝送ケーブル内に励起して伝搬する。ここで、図5の伝搬モード9~13の伝搬定数はモード毎に異なるため、伝搬モード9を電波伝送ケーブル内を伝搬させても、屈曲部で他の伝搬モード10~13にエネルギーが移行する伝搬モード分散と呼ばれる現象が発生する。この伝搬モード分散によって、無線信号の信号品質が劣化するため、屈曲部における伝搬モード分散を低減することが重要になる。
【0007】
特許文献1および2のように、屈曲性のある電波伝送ケーブルの伝送損失の低減と金属薄膜の短絡を抑制する技術は知られているが、屈曲部における伝搬モード分散を低減する電波伝送ケーブルは知られていない。
【0008】
本発明の目的は、屈曲部における伝搬モード分散を抑制し、高品質な信号伝送可能な電波伝送ケーブルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための、本発明の「電波伝送ケーブル」の一例を挙げるならば、
屈曲性を有する線状の誘電体と、前記線状の誘電体の表面に形成した金属薄膜を備える電波伝送ケーブルであって、前記誘電体の断面において、前記誘電体の中心部を除き、前記誘電体を2つに分ける中心に対して対称、或いは前記誘電体の中心に対して点対称になるように、前記誘電体内に空孔または前記誘電体よりも誘電率の低い低誘電率領域を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、屈曲部における伝搬モード分散を低減し、高品質な信号伝送可能な電波伝送ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電波伝送ケーブルの車載適用時の概略図である。
図2】電波伝送ケーブルの基地局内配線適用時の概略図である。
図3】従来の電波伝送ケーブルの概略図である。
図4】電波伝送ケーブルの通信環境の概略図である。
図5】電波伝送ケーブルの電界分布を示す図である。
図6】従来技術における電波伝送ケーブル屈曲時の電磁界シミュレーション結果を示す図である。
図7】従来技術における電波伝送ケーブル屈曲時の、入力ポートに対する出力ポートの信号パワーの変化量を示す図である。
図8】本発明の実施例1の電波伝送ケーブルの概略図である。
図9】実施例1の電波伝送ケーブルの通信環境の概略図である。
図10】実施例1の電波伝送ケーブルの断面図である。
図11】実施例1における電波伝送ケーブル屈曲時の電磁界シミュレーション結果を示す図である。
図12】実施例1における電波伝送ケーブル屈曲時の、入力ポートに対する出力ポートの信号パワーの変化量を示す図である。
図13】実施例1における空孔の位置に対する入力ポートから出力ポートへの信号パワーの変化量を示す図である。
図14】実施例2の電波伝送ケーブルの概略図である。
図15】実施例3の電波伝送ケーブルの概略図である。
図16】実施例4の電波伝送ケーブルの概略図である。
図17】実施例5の電波伝送ケーブルの概略図である。
図18】実施例5における空孔の位置に対する入力ポートから出力ポートへの信号パワーの変化量を示す図である。
図19】実施例6の電波伝送ケーブルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
従来の電波伝送ケーブルは、屈曲部において伝搬モード分散が発生し、無線信号の伝搬時に信号品質が劣化する恐れがある。伝搬モード分散について、図6および図7を用いて詳細に説明する。図6は、図5の最低次の伝搬モード9を入力ポート14に励起し、電波伝送ケーブル4を90度屈曲させて無線信号を伝搬したときの電磁界シミュレーションの解析結果である。図6を見ると、屈曲部において電界分布に変化が生じ、入力ポート14付近と出力ポート15付近で電界分布が変化していることを確認できる。このように電界分布に変化が生じる原因は以下のとおりである。電波伝送ケーブル4に屈曲が生じると、屈曲部外側4bは屈曲部内側4aよりもケーブル内の伝搬距離が増加する。このため、伝搬モード9の電界分布を維持するために、屈曲部外側4bにおける伝搬モードの伝搬速度vが屈曲部内側4aよりも増加する。伝搬速度vと位相定数βには以下の(1)式の関係が成立する。
【0013】
【数1】
ここで、fは無線信号の周波数である。(1)式より、屈曲部外側4bにおける伝搬速度vが増加、つまり位相定数βが低下する。ここで、図5の伝搬モード10~13の位相定数は、励起した伝搬モード9の位相定数よりも低いため、屈曲部における所望の伝搬モードの位相定数の低下によって、他の伝搬モードにエネルギーが移行し、電波伝送ケーブル内に複数の伝搬モードが存在するために電界分布に乱れが生じる。
【0014】
また、図7は、最低次の伝搬モード9の入力ポート14に対する出力ポート15の信号パワーの変化量を示している。比較のために、ケーブルに屈曲がないときの結果も併せて示しており、破線が屈曲がある場合、一点鎖線が屈曲がない場合のシミュレーション結果である。図7の結果より、屈曲によって伝搬モード9の信号パワーが大きく減少していることがわかる。
【0015】
本発明は、屈曲部における伝搬モード分散を抑制し、高品質な信号伝送可能な電波伝送ケーブルを提供するものである。
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための各図において、同一の構成要素にはなるべく同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【実施例1】
【0017】
本発明の実施例1の電波伝送ケーブルの構成例を、図8に示す。実施例1の電波伝送ケーブル16は、断面が楕円形状に形成された屈曲性を有する線状の誘電体17、線状の誘電体17の表面に形成した金属薄膜18、誘電体17内の空孔19または誘電体17よりも誘電率の低い低誘電率領域20で構成する。誘電体17の材料は電波伝送ケーブルの損失を低減するためにポリエチレンやフッ素系樹脂等の誘電正接の低い材料を用いる。誘電体17の好ましい誘電正接は、0.0001~0.01である。また、誘電体17の楕円形状の長軸と短軸の比は、電波伝送ケーブル内での無線信号の偏波回転を防ぐために、短軸と長軸の長さ比が1:1.5以上にする。ここで、誘電体17は、さらなる低損失化のために発泡ポリエチレンなどの発泡誘電体を用いても良い。さらに、空孔19または低誘電率領域20の断面形状は円形であり、誘電体17の焦点よりも内側で、かつ短軸に対して線対称になるように作製する。
【0018】
電波伝送ケーブル16の動作例は、図9を用いて上述の図4と同様に説明できる。送信アンテナ7から出力された無線信号は、電波伝送ケーブル16に入力され電波伝送ケーブル16を伝搬する。その後、電波伝送ケーブル16の端面に到達した無線信号は端面から放出され、受信アンテナ8で受信される。
【0019】
次に、電波伝送ケーブル16に作製した空孔19または低誘電率領域20によって、屈曲部における伝搬モード分散を低減する原理について図10を用いて説明する。一般に、電界は誘電率の高い物体に集中する性質があり、電波伝送ケーブルにおいても同様である。そのため、本実施例の電波伝送ケーブルに図5の最低次の伝搬モード9を励起させると、空孔19または低誘電率領域20は誘電体17よりも誘電率が低いため、図10のように誘電体17の中心部21に電界分布が集中した伝搬モード22を励起させることができる。これにより、屈曲時においても誘電体17の中心部21に電界分布を集中させることができるため、屈曲部の内側と外側の速度(位相定数)差の発生を防ぎ、伝搬モード分散を抑制できる。
【0020】
図11図12に、本実施例を用いた場合の屈曲させた電波伝送ケーブルのシミュレーション結果を示す。図11は電波伝送ケーブル16の電界分布を示し、図12は入力ポート14に対する出力ポート15における信号パワーの変化量を示している。図12において、実線は本実施例の、破線は図7の従来技術のシミュレーション結果である。図11を見ると、屈曲部においても入力ポート14付近と出力ポート15付近の電界分布に差がないことを確認できる。また、図12より、従来方式に比べて無線信号の減衰を低減できていることを確認できる。
【0021】
図13に、図11のように電波伝送ケーブルを屈曲させた状態で、空孔19または低誘電率領域20の位置を長軸に対して平行移動させたときの伝搬損失の変化を示す。図13の横軸は、誘電体17の断面の楕円体の長軸に対する誘電体17の断面の中心から空孔19(または低誘電率領域20)までの距離の割合を表しており、縦軸は入力ポート14から出力ポート15における信号パワーの変化量を示している。また、図13の点線部は誘電体17の焦点位置であり、空孔19または低誘電率領域20の位置が焦点距離を超えると損失が増加している。これにより、空孔19または低誘電率領域20は、焦点よりも内側に作製することで、伝搬モード分散の低減効果を増大させることができる。
【0022】
本実施例によれば、電波伝送ケーブルを、断面形状が楕円形に形成された屈曲性を有する線状の誘電体と、線状の誘電体の表面に形成した金属薄膜を有し、楕円形の焦点よりも内側で、かつ短軸に対して線対称になるように誘電体内に空孔または誘電体よりも誘電率の低い低誘電率領域を作製することで、屈曲部における伝搬モード分散を低減し、高品質な信号伝送可能な電波伝送ケーブルを提供することができる。
【実施例2】
【0023】
本発明の実施例2は、上記実施例1と同様に構成できる。ただし、本実施例の形態に係わる電波伝送ケーブルは、図14に示すように空孔または低誘電率領域の形状が長方形である点で上記の実施例1と異なる。
【0024】
図14に示された電波伝送ケーブル16は、断面が楕円形状に形成された線状の誘電体17、線状の誘電体の表面に形成した金属薄膜18、誘電体17内に設けた空孔23または誘電体17よりも誘電率の低い低誘電率領域24で構成される。ここで、空孔23または低誘電率領域24の断面形状は長方形であり、長方形の長辺を誘電体17の長軸と直交させる。さらに、誘電体17の焦点よりも内側でかつ短軸に対して線対称の位置に作製する。誘電体17に作製した空孔23または低誘電率領域24によって、電波伝送ケーブルに励起した電界を誘電体17の中心部に集中させることができるため、屈曲部における電波伝送ケーブルの内側と外側の速度差(位相差)を低減可能で、伝搬モード分散を抑制できる。
【0025】
本実施例によれば、屈曲部における伝搬モード分散を低減し、無線信号を高品質に伝送可能な電波伝送ケーブルを提供することができる。
【実施例3】
【0026】
本発明の実施例3は、上記実施例1および実施例2と同様に構成できる。ただし、本実施例の形態に係わる電波伝送ケーブルは、図15に示すように空孔または低誘電率領域の形状が楕円体である点で上記の実施例と異なる。
【0027】
図15に示された電波伝送ケーブル16は、断面が楕円形状に形成された線状の誘電体17、線状の誘電体の表面に形成した金属薄膜18、誘電体17内に形成した空孔25または誘電体17よりも誘電率の低い低誘電率領域26で構成される。ここで、空孔25または低誘電率領域26の断面形状は楕円体であり、誘電体17の焦点よりも内側で、かつ短軸に対して線対称の位置に作製する。ここで、空孔25または低誘電率領域26の楕円体の長軸を、誘電体17の長軸と直交させる。誘電体17に作製した空孔25または低誘電率領域26によって、電波伝送ケーブルに励起した電界を誘電体17の中心部に集中させることができるため、屈曲部における電波伝送ケーブルの内側と外側の速度差(位相差)を低減可能で、伝搬モード分散を抑制できる。
【0028】
本実施例によれば、屈曲部における伝搬モード分散を低減し、無線信号を高品質に伝送可能な電波伝送ケーブルを提供することができる。
【実施例4】
【0029】
本発明の実施例4は、上記実施例1~3と同様に構成できる。ただし、本実施例の形態に係わる電波伝送ケーブルは、図16に示すように誘電体の断面形状について、楕円形の長軸の両端に短軸に対して対称、かつ、長軸に垂直に弓形の低誘電率領域を有している点で上記の各実施例と異なる。
【0030】
図16に示された電波伝送ケーブル16は、断面が楕円形状に形成された線状の誘電体17、線状の誘電体の表面に形成した金属薄膜18、誘電体17よりも誘電率の低い低誘電率領域27で構成される。ここで、低誘電率領域27の断面形状は弓形であり、楕円形の長軸の両端に、弓形の長辺が長軸に直交し、かつ短軸に対して対称に作製する。誘電体17に作製した低誘電率領域27によって、電波伝送ケーブルに励起した電界を誘電体17の中心部に集中させることができるため、屈曲部における電波伝送ケーブルの内側と外側の速度差(位相差)を低減可能で、伝搬モード分散を抑制できる。
【0031】
本実施例によれば、屈曲部における伝搬モード分散を低減し、無線信号を高品質に伝送可能な電波伝送ケーブルを提供することができる。また、誘電体内に空孔を形成し低誘電率領域を形成する場合に比べて、製造が容易である。
【実施例5】
【0032】
本発明の実施例5は、上記実施例1~3と同様に構成できる。ただし、本実施例の形態に係わる電波伝送ケーブルは、図17に示すように誘電体28の断面が円形である点で上記の実施例と異なる。
【0033】
図17に示された電波伝送ケーブル16は、断面が円形状に形成された線状の誘電体28、線状の誘電体の表面に形成した金属薄膜18、誘電体28内に形成した空孔19または誘電体28よりも誘電率の低い低誘電率領域20で構成され、円の中心に対して点対称な位置に作製する。
【0034】
図18に、電波伝送ケーブルを屈曲させた状態で、空孔19または低誘電率領域20の位置を変化させたときの伝搬損失の変化を示す。図18の横軸は、誘電体28の断面の円形の半径に対する誘電体28の断面の中心から空孔19または低誘電率領域20までの距離の割合を表しており、縦軸は入力ポートから出力ポートまでの信号パワーの変化量を示している。図18の結果より、空孔19または低誘電率領域20の位置が 半径×0.8 を超えると損失が大きく増加している。これより、空孔19または低誘電率領域20は、誘電体28の円の中心から半径×0.8だけ離れた位置よりも内側に作製することで、伝搬モード分散の低減効果を増大させることができる。また、空孔19または低誘電率領域20の断面形状は、実施例1~3のように円形、長方形または楕円形のいずれかで構成する。誘電体28内に作製した空孔19または低誘電率領域20によって、電波伝送ケーブルに励起した電界を誘電体28の中心部に集中させることができるため、屈曲部における電波伝送ケーブルの内側と外側の速度差(位相差)を低減可能で、伝搬モード分散を抑制できる。
【0035】
本実施例によれば、電波伝送ケーブルを、断面形状が円形に形成された線状の誘電体と、誘電体表面に形成した金属薄膜を有し、円の中心から半径×0.8だけ離れた位置よりも内側で、かつ中心に対して点対称になるように誘電体に空孔または誘電体よりも誘電率の低い低誘電率領域を作製することで、屈曲部における伝搬モード分散を低減し、無線信号を高品質に伝送可能な電波伝送ケーブルを提供することができる。
【実施例6】
【0036】
本発明の実施例6は、上記実施例1~4と同様に構成できる。ただし、本実施例の形態に係わる電波伝送ケーブルは、図19に示すように誘電体17と金属薄膜18の間に誘電体17よりも誘電率の高い高誘電率領域30を有する点で上記の各実施例と異なる。
【0037】
図19に示された電波伝送ケーブル16は、断面が楕円形状に形成された線状の誘電体17、誘電体17の周囲に設けた誘電体17よりも誘電率の高い高誘電率領域30、その表面に形成した金属薄膜18、誘電体17内の空孔19または誘電体17よりも誘電率の低い低誘電率領域20で構成される。ここで、高誘電率領域30は、ポリエチレンやフッ素系樹脂等の誘電体を用いる。空孔19または低誘電率領域20の形状と位置は、高誘電率領域30の楕円体に対して実施例1~3と同様に作製する。誘電体17に作製した空孔19または低誘電率領域20によって、電波伝送ケーブルに励起した電界を前記誘電体17の中心部に集中させることができるため、屈曲部における電波伝送ケーブルの内側と外側の速度差(位相差)を低減可能で、伝搬モード分散を抑制できる。
【符号の説明】
【0038】
4 電波伝送ケーブル
5 誘電体
6 金属薄膜
7 送信アンテナ
8 受信アンテナ
9 最低次の伝送モード
14 入力ポート
15 出力ポート
16 電波伝送ケーブル
17,28 誘電体
18 金属薄膜
19,23,25 空孔
20,24,26 低誘電率領域
27 低誘電率領域
30 高誘電率領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19