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特許7147659逆浸透膜装置の運転方法及び逆浸透膜装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】逆浸透膜装置の運転方法及び逆浸透膜装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/08 20060101AFI20220928BHJP
   B01D 65/08 20060101ALI20220928BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20220928BHJP
   B01D 63/10 20060101ALI20220928BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
B01D61/08
B01D65/08
B01D65/06
B01D63/10
C02F1/44 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019063886
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020163252
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】増田 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】川勝 孝博
(72)【発明者】
【氏名】大塚 雄太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敦士
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-166034(JP,A)
【文献】国際公開第2018/182033(WO,A1)
【文献】特開2016-215179(JP,A)
【文献】特開2015-042385(JP,A)
【文献】国際公開第2003/106003(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ないし第n(nは2以上の整数)の膜エレメントを備え、第1の膜エレメントに原水が供給され、第k(kは1以上でnよりも小さい整数)の膜エレメントの濃縮水が第k+1の膜エレメントに供給され、第nの膜エレメントからの濃縮水が装置外に取り出され、各膜エレメントの透過水が装置外に取り出される逆浸透膜装置を運転する方法において、
第1、第n又は通水方向に連なる複数(ただしnよりも少数)の膜エレメントから装置外に取り出される単位時間当りの透過水流量を測定することを特徴とする逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項2】
前記第1の膜エレメントから装置外に取り出される透過水流量を測定することを特徴とする請求項1の逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項3】
原水にバイオファウリング防止剤を添加する工程を有することを特徴とする請求項2の逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項4】
前記第nの膜エレメントから装置外に取り出される透過水流量を測定することを特徴とする請求項1の逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項5】
原水にスケール分散剤を添加する工程を有することを特徴とする請求項4の逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項6】
2以上の前記膜エレメントが1つの圧力容器内に設置されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかの逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項7】
前記測定された透過水流量に基づいて前記膜エレメントの洗浄又は交換を行うことを特徴とする請求項1~6のいずれかの逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項8】
第1ないし第n(nは2以上の整数)の膜エレメントを備え、第1の膜エレメントに原水が供給され、第k(kは1以上でnよりも小さい整数)の膜エレメントの濃縮水が第k+1の膜エレメントに供給され、第nの膜エレメントからの濃縮水が装置外に取り出され、各膜エレメントの透過水が装置外に取り出される逆浸透膜装置であって、
2以上の前記膜エレメントが1つの円筒状の圧力容器内に設置されているとともに、
前記膜エレメントは、それぞれ、集水管の外周に袋状膜が巻回されたスパイラル型膜エレメントであり、前記圧力容器内に同軸上に設置されており、
先頭の前記膜エレメントの集水管と次段の前記膜エレメントの集水管とは、エンドキャップにより隔絶されており、
前記先頭の膜エレメントから装置外に取り出される透過水の流量測定手段と、前記次段の膜エレメントから装置外に取り出される透過水の流量測定手段とを有することを特徴とする逆浸透膜装置。
【請求項9】
先頭の前記膜エレメントの集水管の端部と次段の前記膜エレメントの集水管の端部とに、それぞれ別体のエンドキャップを装着するか、または、双方の集水管の端部に一体のエンドキャップを装着することを特徴とする請求項8の逆浸透膜装置。
【請求項10】
第1ないし第n(nは2以上の整数)の膜エレメントを備え、第1の膜エレメントに原水が供給され、第k(kは1以上でnよりも小さい整数)の膜エレメントの濃縮水が第k+1の膜エレメントに供給され、第nの膜エレメントからの濃縮水が装置外に取り出され、各膜エレメントの透過水が装置外に取り出される逆浸透膜装置であって、
2以上の前記膜エレメントが1つの円筒状の圧力容器内に設置されているとともに、
前記膜エレメントは、それぞれ、集水管の外周に袋状膜が巻回されたスパイラル型膜エレメントであり、前記圧力容器内に同軸上に設置されており、
最後尾の前記膜エレメントの集水管と前段の前記膜エレメントの集水管とは、エンドキャップにより隔絶されており、
前記最後尾の膜エレメントから装置外に取り出される透過水の流量測定手段と、前記前段の膜エレメントから装置外に取り出される透過水の流量測定手段とを有することを特徴とする逆浸透膜装置。
【請求項11】
最後尾の前記膜エレメントの集水管の端部と前段の前記膜エレメントの集水管の端部とに、それぞれ別体のエンドキャップを装着するか、または、双方の集水管の端部に一体のエンドキャップを装着することを特徴とする請求項10の逆浸透膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜装置の運転方法及び逆浸透膜装置に係り、特に、膜エレメントの性能低下を検出することを含む逆浸透膜装置の運転方法及び逆浸透膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透過水量一定の条件で多段逆浸透膜を運転する場合、膜間差圧、モジュール差圧が運転管理の情報として得られる。これらの情報によってファウリングが起こったことが判断される。
【0003】
特許文献1には、単段逆浸透膜装置の透過フラックス、モジュール差圧の変化より汚染原因を特定することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、供給水からバイオファウリング発生の有無を検知するセンサー、濃縮水からスケール析出の有無を検出するセンサーを設け、運転を制御することが記載されている。
【0005】
特許文献3には、バイオフィルム形成基材に供給水、濃縮水を通水し、バイオフィルム量を評価することで運転を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-153789号公報
【文献】国際公開WO2017/175334号公報
【文献】国際公開WO2008/038575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
膜間差圧、モジュール差圧の情報からファウリングの原因は推定できるが、多段逆浸透膜装置の場合は、膜にかかる負荷に偏りがあるため、差圧の上昇を確認した時点では、一部のエレメントの汚染が激しいことが考えられる。従って効率的な運転を行うために、エレメントの性能低下を鋭敏に検知する必要がある。
【0008】
本発明は、被処理水が直列に通水されるように多段に設置された膜エレメントを有する逆浸透膜装置における膜性能の低下を鋭敏に検知することができる逆浸透膜装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の逆浸透膜装置の運転方法は、第1ないし第n(nは2以上の整数)の膜エレメントを備え、第1の膜エレメントに原水が供給され、第k(kは1以上でnよりも小さい整数)の膜エレメントの濃縮水が第k+1の膜エレメントに供給され、第nの膜エレメントからの濃縮水が装置外に取り出され、各膜エレメントの透過水が装置外に取り出される逆浸透膜装置を運転する方法において、第1、第n又は通水方向に連なる複数(ただしnよりも少数)の膜エレメントの単位時間当りの透過水流量を測定することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様では、前記第1の膜エレメントの透過水流量を測定する。
【0011】
本発明の一態様では、原水にバイオファウリング防止剤を添加する工程を有する。
【0012】
本発明の一態様では、前記第nの膜エレメントの透過水流量を測定する。
【0013】
本発明の一態様では、原水にスケール分散剤を添加する工程を有する。
【0014】
本発明の一態様では、2以上の前記膜エレメントが1つの圧力容器内に設置されている。
【0015】
本発明の一態様では、前記測定された透過水流量に基づいて前記膜エレメントの洗浄又は交換を行う。
【0016】
本発明の逆浸透膜装置は、第1ないし第n(nは2以上の整数)の膜エレメントを備え、第1の膜エレメントに原水が供給され、第k(kは1以上でnよりも小さい整数)の膜エレメントの濃縮水が第k+1の膜エレメントに供給され、第nの膜エレメントからの濃縮水が装置外に取り出され、各膜エレメントの透過水が装置外に取り出される逆浸透膜装置であって、2以上の前記膜エレメントが1つの円筒状の圧力容器内に設置されているとともに、前記膜エレメントは、それぞれ、集水管の外周に袋状膜が巻回されたスパイラル型膜エレメントであり、前記圧力容器内に同軸上に設置されており、先頭の前記膜エレメントの集水管と次段の前記膜エレメントの集水管とは、エンドキャップにより隔絶されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様では、先頭の前記膜エレメントの集水管の端部と次段の前記膜エレメントの集水管の端部とに、それぞれ別体のエンドキャップを装着するか、または、双方の集水管の端部に一体のエンドキャップを装着する。
【0018】
本発明の逆浸透膜装置は、第1ないし第n(nは2以上の整数)の膜エレメントを備え、第1の膜エレメントに原水が供給され、第k(kは1以上でnよりも小さい整数)の膜エレメントの濃縮水が第k+1の膜エレメントに供給され、第nの膜エレメントからの濃縮水が装置外に取り出され、各膜エレメントの透過水が装置外に取り出される逆浸透膜装置であって、2以上の前記膜エレメントが1つの円筒状の圧力容器内に設置されているとともに、前記膜エレメントは、それぞれ、集水管の外周に袋状膜が巻回されたスパイラル型膜エレメントであり、前記圧力容器内に同軸上に設置されており、最後尾の前記膜エレメントの集水管と前段の前記膜エレメントの集水管とは、エンドキャップにより隔絶されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の一態様では、最後尾の前記膜エレメントの集水管の端部と前段の前記膜エレメントの集水管の端部とに、それぞれ別体のエンドキャップを装着するか、または、双方の集水管の端部に一体のエンドキャップを装着する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、膜エレメントの性能低下が鋭敏に検知されるので、膜エレメントの汚染が激しくなる前に膜エレメントを洗浄したり交換したりすることが可能となり、逆浸透膜装置の運転効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態に係る逆浸透膜装置の概略断面図である。
図2】従来例に係る逆浸透膜装置の概略断面図である。
図3】実施の形態に係る逆浸透膜装置の概略断面図である。
図4】実施の形態に係る逆浸透膜装置の概略断面図である。
図5】実施の形態に係る逆浸透膜装置の概略断面図である。
図6】実施の形態に係る逆浸透膜装置の概略断面図である。
図7】実験結果を示すグラフである。
図8】実験結果を示すグラフである。
図9】実験結果を示すグラフである。
図10】実験結果を示すグラフである。
図11】実施例の手順を示すフローチャートである。
図12】実験結果を示すグラフである。
図13】実験結果を示すグラフである。
図14】実験結果を示すグラフである。
図15】実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0023】
図1は実施の形態に係る逆浸透膜装置の運転方法に用いられる逆浸透膜装置1の耐圧容器(以下、ベッセルという。)長手方向に沿う概略断面図である。
【0024】
この逆浸透膜装置1は、円筒形状のベッセル2を備えている。ベッセル2の長手方向の一端側に原水の流入口3が設けられ、他端側に濃縮水の流出口4が設けられている。
【0025】
ベッセル2内に膜エレメント10,20が設置されている。この実施の形態では、膜エレメント10,20はスパイラル型膜エレメントであり、それぞれ中空管状の集水管11,21と、該集水管11,21の外周に巻回された複数の袋状膜12,22とを有する。
【0026】
袋状膜12,22は、封筒形であり、内部にメッシュスペーサ等よりなる透過水用流路材が配置されている。袋状膜12,22は、一辺部分が開放しており、該一辺部分が集水管11,21に設けられたスリット状開口に差し込まれて固定されている。袋状膜が集水管11,21の外周に巻き付けられることにより膜エレメントが構成される。袋状膜を透過して袋状膜内に流入してきた透過水は、前記一辺部分を通って集水管11,21内に流入し、該集水管11,21の端部のエンド管13,23から逆浸透膜装置1外へ流出する。
【0027】
なお、図1では、集水管11の左端と集水管21の右端にそれぞれ透過水取り出し用の短い円筒形のエンド管13,23が接続されている。エンド管13,23の先端側はベッセル2外に延出している。
【0028】
また、集水管11の右端と集水管21の左端にそれぞれエンドキャップ14,24が水密的に装着されている。
【0029】
各膜エレメント10,20の外周面のうち原水流入口3に近い側とベッセル2の内周面との間を封じるようにブラインシール15,25が装着されている。ブラインシール15,25は各膜エレメント10,20を周回している。
【0030】
図1の逆浸透膜装置1では膜エレメント10,20の集水管11,21に別体のエンドキャップ14,24が装着されているが、図3の逆浸透膜装置1Bのように、集水管11の右端と集水管21の左端とを共通のエンドキャップ18で封じてもよい。
【0031】
図3の逆浸透膜装置1Bのその他の構成は図1の逆浸透膜装置1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0032】
図2は、従来用いられていた逆浸透膜装置1Aの構成を示すものである。この逆浸透膜装置1Aにあっては、集水管11の左端がエンドキャップ16で封じられている。また、集水管11の右端と集水管21の左端とがインターコネクタ26によって接続され、集水管11,21内が連通している。
【0033】
図2の逆浸透膜装置1Aのその他の構成は図1の逆浸透膜装置1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0034】
図1,3ではベッセル2内に2個の膜エレメント10,20が配置されているが、3個以上の膜エレメントが配置されてもよい。ベッセル2内に3個の膜エレメント10,20,30が配置された逆浸透膜装置1C,1Dを図4,5に示す。
【0035】
膜エレメント30は、膜エレメント10,20と同一構成のものであり、集水管31と、該集水管31に巻回された袋状膜32とを有する。
【0036】
図4の逆浸透膜装置1Cでは、集水管21の右端と集水管31の左端とがインターコネクタ26で接続されている。また、集水管31の右端にエンド管33が接続され、該エンド管33がベッセル2外に延出している。集水管21内の透過水は集水管31を通ってエンド管33から取り出される。
【0037】
図4の逆浸透膜装置1Cのその他の構成は図1の逆浸透膜装置1と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0038】
図5の逆浸透膜装置1Dでは、膜エレメント10の集水管11の右端と膜エレメント20の集水管21の左端とがインターコネクタ26で接続されている。集水管22の右端と集水管31の左端はそれぞれエンドキャップ24,34で封じられている。集水管21内の透過水は、集水管11を通ってエンド管13から取り出される。
【0039】
図5の逆浸透膜装置1Dのその他の構成は図4の逆浸透膜装置1Cと同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0040】
これらの逆浸透膜装置を用いた逆浸透システムの構成例を図6に示す。
【0041】
この逆浸透システム40では、3個の逆浸透膜装置41,42,43を設置している。第1,第3逆浸透膜装置41,43は図1に示した逆浸透膜装置1と同一構成のものであり、第2逆浸透膜装置42は図2に示した逆浸透膜装置1Aと同一構成のものであり、同一符号は同一部分を示している。
【0042】
原水は、流量計F及び圧力計Pを有した配管50から配管51,52に分流し、逆浸透膜装置41,42の流入口3,3から各ベッセル2,2内に流入する。第1逆浸透膜装置41の膜エレメント10の透過水は、エンド管13から、流量計Fを有する配管53と合流配管54,55を介して取り出される。第1逆浸透膜装置41の膜エレメント20の透過水は、エンド管23から、配管56、合流配管57,54,55を介して取り出される。
【0043】
第2逆浸透膜装置42の膜エレメント10,20の透過水は、エンド管23から配管58、合流配管57,54,55を介して取り出される。
【0044】
第1,第2逆浸透膜装置41,42の濃縮水は、各々の流出口4,4から濃縮水配管60,61、濃縮水合流配管62を介して第3逆浸透膜装置43の流入口3からベッセル2内に流入する。第3逆浸透膜装置43の膜エレメント10の透過水は、エンド管13から配管63、合流配管54,55を介して取り出される。第3逆浸透膜装置43の膜エレメント20の透過水は、エンド管23から、流量計Fを有する配管64及び合流配管55を介して取り出される。合流配管55には圧力計Pと流量計Fが設けられている。
【0045】
第3逆浸透膜装置43の濃縮水は、その流出口4から配管65を介して流出する。配管65には圧力計Pと流量計Fとが設けられている。
【0046】
従来の逆浸透膜装置は、図2のように膜エレメント10,20がベッセル2内でインターコネクタ26によって接続されており、先頭、または最後尾のみの膜エレメント10又は20の透過水量を測定することができない。
【0047】
これに対し、図1,3の逆浸透膜装置では、膜エレメント10,20の集水管11,21同士を連通させず、また各膜エレメント10,20の集水管11,21にそれぞれエンド管13,23を接続しているので、膜エレメント10,20単独の透過水量を測定することができる。
【0048】
3個の膜エレメント(又はそれ以上の膜エレメント)を有する逆浸透膜装置の場合、図4のように構成することにより、先頭の膜エレメント10の透過水量を測定することができる。また、図5のように構成することにより、最後尾の膜エレメント30の透過水量を測定することができる。
【0049】
また、図6のように、先頭、最後尾エレメントの透過水側に流量計を設けることで、原因の推定、膜性能低下の検知を行うことができる。先頭あるいは最後尾エレメントが複数ある場合は、そのうち一本のみの透過水量を測定しても構わない。
【0050】
本発明の一態様では、先頭エレメントの透過水量すなわち第1逆浸透膜装置41の膜エレメント10の透過水流量(流量計F検出値)からバイオファウリングによる膜性能の低下を検出する。
【0051】
本発明の別の一態様では、最後尾エレメントの透過水量すなわち第3逆浸透膜装置43の膜エレメント20の透過水流量(流量計F検出値)からスケールによる膜性能の低下を検出する。
【0052】
これら流量計F又はF検出値の経時変化から、膜エレメントの性能低下を鋭敏に検出することができる点について以下の実施例で例証する。
【実施例
【0053】
[実施例1]
図6に示す逆浸透膜システムにおいて、原水供給水量4.7L/min、回収率15%の条件で試験を行った。原水は、生物処理水にIPAを1mg/L、リン酸二水素ナトリウム0.001mg/Lを添加した合成排水である。バイオファウリング防止剤(栗田工業株式会社製クリバーター(登録商標)IK110)を24時間毎に3時間にわたって40mg/Lで間欠添加した。
【0054】
図7に先頭エレメントの透過水フラックスの経時変化を示す。図7より、先頭エレメント(第1逆浸透膜装置41の膜エレメント10)の透過水流量(流量計Fの検出値)は、7日目に8%の低下を示した。
【0055】
[比較例1]
実施例1の実験期間中、並行してモジュール差圧(図6のP-P)の経時変化を測定した。結果を図8に示す。図8の通り、モジュール差圧は11日目に0.0025MPaの差圧上昇を示した。
【0056】
実施例1では、7日目に膜性能変化を検出しているため、比較例1のようにモジュール差圧を検知する場合よりも先頭エレメントのフラックスの低下を確認する実施例1の方がより鋭敏に膜性能の変化を検出できることが認められた。
【0057】
[実施例2]
図6に示す逆浸透膜システムにおいて、原水供給水量4.8L/min、回収率75%で通水115分、フラッシング5分を繰り返す試験を行った。供給水は純水にSiO100mg/L、Al 0.1mg/L、Ca 10mg/L、CO60mg/L、スケール分散剤(栗田工業株式会社製クリバーター(登録商標)N195)12.5mg/Lを添加し、pHを7.1に調整した合成排水を用いた。
【0058】
図9に先頭エレメント(第1逆浸透膜装置41の膜エレメント10)の透過水流量(図6のF)および最後尾エレメント(第3逆浸透膜装置43の膜エレメント20)の透過水流量(図6のF)の経時変化を示す。図9の通り、先頭エレメントのフラックスは低下しないが、最後尾エレメントは3日目に7%の低下を示した。
【0059】
[比較例2]
実施例2の実験期間中、並行して膜間差圧(図6の(P+P)/2-P)の経時変化を測定し、図10に示した。
【0060】
図10の通り、膜間差圧では6日目に0.0083MPaの差圧上昇を示した。実施例2では3日目に膜性能変化を検出しているため、膜間差圧よりも最後尾エレメントのフラックスの低下を確認する方がより鋭敏に膜性能の変化を検出できることが認められた。
【0061】
[実施例3]
実施例2と同様の通水試験を行い、アルカリ洗浄による膜性能の回復を試験した。試験は図11の手順で行い、膜性能は最後尾エレメントの通水前フラックスとの比で示した。
【0062】
<結果・考察>
図12に最後尾エレメントの膜性能が88%まで低下し、膜間差圧の上昇は検知していない条件で洗浄を行った結果を示す。1hの洗浄では膜性能が93%まで回復し、24hの洗浄では100%まで回復することが認められた。
【0063】
図13に最後尾エレメントの膜性能が82%まで低下し、膜間差圧の上昇は検知していない条件で洗浄を行った結果を示す。1hの洗浄では膜性能が83%まで回復し、24hの洗浄では100%まで回復することが認められた。
【0064】
図14に最後尾エレメントの膜性能が4%まで低下し、膜間差圧が0.088MPa上昇した条件で洗浄を行った結果を示す。1hの洗浄では膜性能が12%までしか回復せず、24hの洗浄でも47%までしか回復しないことが認められた。
【0065】
図15に最後尾エレメントの膜性能が50%まで低下し、膜間差圧が0.0083MPa上昇した条件で洗浄を行った結果を示す。1hの洗浄では膜性能が65%までしか回復せず、24hの洗浄でも89%までしか回復しないことが認められた。
【0066】
以上のように、最後尾エレメントの膜性能が88%又は82%まで減少し、膜間差圧が上昇していない条件で洗浄をおこなった場合は、24hのアルカリ洗浄で膜性能が100%回復した。しかし、膜性能が50%又は4%まで減少し、膜間差圧が上昇している条件で洗浄を行った場合は、24hのアルカリ洗浄で膜性能が100%まで回復しない。このように、最後尾フラックスが低下した段階で膜の洗浄、交換を行うことで、効率的に装置を運転することが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1,1A~1D、41~43 逆浸透膜装置
2 ベッセル
10,20,30 膜エレメント
11,21,31 集水管
12,22,32 袋状膜エレメント
15,25 ブラインシール
図1
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