(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】イミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20220928BHJP
【FI】
C07F7/18 P
(21)【出願番号】P 2019103828
(22)【出願日】2019-06-03
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】殿村 洋一
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-247295(JP,A)
【文献】米国特許第02942019(US,A)
【文献】特開2000-044817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のm価炭化水素基を表し、R
2は、水素原子または炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、mは、1~10の整数を表す。)
で示されるカルボニル基含有化合物と、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
3は、炭素数1~20の2価炭化水素基を表し、R
4およびR
5は、それぞれ独立して炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、nは、0、1または2を表す。)
で示されるアミノオルガノキシシラン化合物を反応させる、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
1~R
5、mおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
で示されるイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法であって、
副生物として生じた水を反応系外へ除去することなく前記反応を行い、前記反応の終了後に前記水を除去する工程を有
し、
前記水を除去する工程が、反応液の分液操作で二層分離した水層を除去することにより行われることを特徴とするイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法。
【請求項2】
前記R
2が、水素原子である請求項
1記載のイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
含窒素オルガノキシシラン化合物は、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤および表面処理剤等として有用である。
特に、イミノ基含有オルガノキシシラン化合物は、アミノ基が保護された構造を有しているため、エポキシ樹脂原料と混合して一液型組成物とすることができ、アミノ系シランカップリング剤添加の効果(接着性、補強性向上)を有する硬化性組成物として有用である。すなわち、イミノ基含有オルガノキシシラン化合物を含む組成物は、水分を遮断した系では反応性を示さず安定であるが、水分と接触することにより、イミノ基の加水分解による脱保護が起こってアミノ基が再生し、アミノ系シランカップリング剤を添加した場合と同等の効果を示す。
【0003】
イミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシランとシンナムアルデヒドを、有機溶媒を用いて共沸脱水させながら反応させる方法(特許文献1参照)、メチルイソブチルケトンの還流下、3-アミノプロピルトリメトキシシランを滴下して共沸脱水させながら反応させる方法(特許文献2参照)、トルエン還流下において、ベンズアルデヒドと3-アミノプロピルトリメトキシシランを共沸脱水させながら反応させる方法(特許文献3参照)等が提案されている。
これらのように、カルボニル基含有化合物とアミノオルガノキシシラン化合物との反応副生物として生じた水を、反応中の共沸脱水により、速やかに反応器内から水分を留出する方法が一般的に広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国第2942019号明細書
【文献】特開平7-247294号公報
【文献】特開2017-66335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1~3に記載された方法おいて、反応副生物として生じた水を反応中の共沸脱水によって速やかに反応器内から留去している理由は、(1)反応の平衡をイミノ基生成反応側に傾かせた状態で反応を進行させるため、および(2)副生した水によって、生成したイミノ基含有オルガノキシシランの加水分解縮合反応が生じることを防止するためである。
しかし、特にケイ素原子に結合しているオルガノキシ基がメトキシ基やエトキシ基のような嵩高くない基である場合は、共沸脱水時の温度が高温となり、その結果、水が留出するよりも先に目的物のイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の加水分解縮合反応に供されて目的物の収率が低下し、工業的に有利でない場合があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、イミノ基含有オルガノキシシラン化合物を、効率的かつ収率よく製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特にイミノ基生成反応が速く、イミノ基生成反応側に平衡が偏っている反応系、すなわち原料のカルボニル基含有化合物としてアルデヒド化合物を用いた系では、反応中に、反応副生物として生じた水を共沸脱水によって反応系外に除去するよりも、反応後に水を除去する方が、むしろ大きな収率低下を伴わずに目的のイミノ基含有オルガノキシシラン化合物が得られることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、
1. 下記一般式(1)
【化1】
(式中、R
1は、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のm価炭化水素基を表し、R
2は、水素原子または炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、mは、1~10の整数を表す。)
で示されるカルボニル基含有化合物と、
下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
3は、炭素数1~20の2価炭化水素基を表し、R
4およびR
5は、それぞれ独立して炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、nは、0、1または2を表す。)
で示されるアミノオルガノキシシラン化合物を反応させる、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
1~R
5、mおよびnは、前記と同じ意味を表す。)
で示されるイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法であって、
副生物として生じた水を反応系外へ除去することなく前記反応を行い、前記反応の終了後に前記水を除去する工程を有することを特徴とするイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法、
2. 前記水を除去する工程が、反応液の分液操作で二層分離した水層を除去することにより行われる1のイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法、
3. 前記R
2が、水素原子である1または2のイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塗料添加剤、接着剤、シランカップリング剤、繊維処理剤、表面処理剤等として有用な含窒素オルガノキシシラン化合物を、効率的かつ収率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の下記一般式(3)で示されるイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法は、下記一般式(1)で示されるカルボニル基含有化合物と、下記一般式(2)で示されるアミノオルガノキシシラン化合物を、反応時に副生物として生じた水を反応系外へ除去することなく反応させ、反応終了後に副生した水を除去することを特徴とする。
【0011】
【0012】
一般式(1)および(3)において、R1は、水素原子またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のm価炭化水素基を表し、R2は、水素原子または炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、mは、1~10の整数を表す。
また、一般式(2)および(3)において、R3は、炭素数1~20の2価炭化水素基を表し、R4およびR5は、それぞれ独立して炭素数1~20の1価炭化水素基を表し、nは、0、1または2を表す。
【0013】
上記R1のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10のm価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、テキシル、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル、アリル(2-プロペニル)、1-プロペニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;ピリジル、ピラジル基等のヘテロ原子含有アリール基;メチレン、エチレン、メチルエチレン(プロピレン)、トリメチレン、1-メチルトリメチレン、2-メチルトリメチレン(イソブチレン)、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン基等のアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基;メチレンフェニレン、メチレンフェニレンメチレン基等のアラルキレン基;1-オキサメチレン、1-アザメチレン基等のヘテロ原子含有アルキレン基等が挙げられる。
【0014】
これらの中でも、特に原料の入手容易性、生成物の有用性の観点から、R1は、メチル基、エチル基、n-プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6~7のアリール基;フェニレン基が好ましい。
【0015】
上記R2、R4およびR5の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5の1価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、テキシル、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状アルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル基等のアルケニル基;フェニル、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0016】
これらの中でも、特に原料の入手容易性、生成物の有用性の観点から、R2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基;アリル基、ブテニル基、ペンテニル基等の炭素数2~5のアルケニル基が好ましく、水素原子がより好ましく、R4およびR5は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
【0017】
上記R3の炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10、より好ましくは炭素数1~5の2価炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン、エチレン、メチルエチレン(プロピレン)、トリメチレン、1-メチルトリメチレン、2-メチルトリメチレン(イソブチレン)、テトラメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、デカメチレン基等のアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基;エチレンフェニレン、エチレンフェニレンメチレン基等のアラルキレン基等が挙げられる。
【0018】
これらの中でも、特に原料の入手容易性、生成物の有用性の観点から、R3は、メチレン基、エチレン基、メチルエチレン(プロピレン)基、トリメチレン基等の炭素数1~3のアルキレン基;フェニレン基が好ましい。
【0019】
上記一般式(1)中のmは1~10の整数を表すが、1~5の整数が好ましく、また、上記一般式(2)中のnは、0、1または2であるが、0または1が好ましい。
【0020】
一般式(1)で示されるカルボニル基含有化合物の具体例としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、シクロヘキサンカルバルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物;ベンズアルデヒド、トルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物;シンナムアルデヒド、α-メチルシンナムアルデヒド、α-ペンチルシンナムアルデヒド等のシンナムアルデヒド化合物;ピリジンカルバルデヒド等のピリジル基含有アルデヒド化合物;マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、o-フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物;1,2,4-ベンゼントリカルボアルデヒド、1,3,5-ベンゼントリカルボアルデヒド等のトリアルデヒド化合物;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン等の脂肪族ケトン化合物;アセトフェノン、ベンゾフェノン、ジアセチルベンゼン等の芳香族ケトン化合物等が挙げられる。
【0021】
一般式(2)で示されるアミノオルガノキシシラン化合物の具体例としては、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルジメトキシメチルシラン、アミノメチルメトキシジメチルシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルジエトキシメチルシラン、アミノメチルエトキシジメチルシラン等のアミノメチルオルガノキシシラン化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、3-アミノプロピルメトキシジメチルシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジエトキシメチルシラン、3-アミノプロピルエトキシジメチルシラン等のアミノプロピルオルガノキシシラン化合物等が挙げられる。
【0022】
上記反応により得られる一般式(3)で示されるイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の具体例としては、メチレンアミノメチルトリメトキシシラン、メチレンアミノメチルジメトキシメチルシラン、メチレンアミノメチルメトキシジメチルシラン、メチレンアミノメチルトリエトキシシラン、メチレンアミノメチルジエトキシメチルシラン、メチレンアミノメチルエトキシジメチルシラン、3-(メチレンアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(メチレンアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-(メチレンアミノ)プロピルメトキシジメチルシラン、3-(メチレンアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(メチレンアミノ)プロピルジエトキシメチルシラン、3-(メチレンアミノ)プロピルエトキシジメチルシラン等のメチレンアミノ基含有オルガノキシシラン化合物;ベンジリデンアミノメチルトリメトキシシラン、ベンジリデンアミノメチルジメトキシメチルシラン、ベンジリデンアミノメチルメトキシジメチルシラン、ベンジリデンアミノメチルトリエトキシシラン、ベンジリデンアミノメチルジエトキシメチルシラン、ベンジリデンアミノメチルエトキシジメチルシラン、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルメトキシジメチルシラン、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルジエトキシメチルシラン、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルエトキシジメチルシラン等のベンジリデンアミノ基含有オルガノキシシラン化合物;ピリジルメチレンアミノメチルトリメトキシシラン、ピリジルメチレンアミノメチルジメトキシメチルシラン、ピリジルメチレンアミノメチルメトキシジメチルシラン、ピリジルメチレンアミノメチルトリエトキシシラン、ピリジルメチレンアミノメチルジエトキシメチルシラン、ピリジルメチレンアミノメチルエトキシジメチルシラン、3-(ピリジルメチレンアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(ピリジルメチレンアミノ)プロピルジメトキシメチルシラン、3-(ピリジルメチレンアミノ)プロピルメトキシジメチルシラン、3-(ピリジルメチレンアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3-(ピリジルメチレンアミノ)プロピルジエトキシメチルシラン、3-(ピリジルメチレンアミノ)プロピルエトキシジメチルシラン等のピリジルメチレンアミノ基含有オルガノキシシラン化合物;N,N-ビス(トリメトキシシリルメチル)-1,4-キシレン-α,α’-ジイミン、N,N-ビス(ジメトキシメチルシリルメチル)-1,4-キシレン-α,α’-ジイミン、N,N-ビス(メトキシジメチルシリルメチル)-1,4-キシレン-α,α’-ジイミン、N,N-ビス(トリエトキシシリルメチル)-1,4-キシレン-α,α’-ジイミン、N,N-ビス(ジエトキシメチルシリルメチル)-1,4-キシレン-α,α’-ジイミン、N,N-ビス(メトキシジメチルシリルメチル)-1,4-キシレン-α,α’-ジイミン等のビスオルガノキシシリル基含有1,4-キシレン-α,α’-ジイミン化合物等が挙げられる。
【0023】
本発明の製造方法において、一般式(2)で示されるアミノオルガノキシシラン化合物の使用量は、特に限定されないが、反応性および生産性の点から、一般式(1)で示されるカルボニル基含有化合物のカルボニル基1モルに対し、0.5~2.0モルが好ましく、0.8~1.5モルがより好ましい。
【0024】
なお、本発明の目的を損なわない範囲で、上記反応時に溶媒を添加することもできる。
溶媒の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられるが、これらの中でも、イミノ基含有オルガノキシシラン化合物の水による加水分解縮合反応を抑制する観点から、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒が好ましく、炭化水素系溶媒がより好ましい。これらの溶媒は1種を単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、収率向上の観点から、0~200℃が好ましく、0~100℃がより好ましく、0~80℃がより一層好ましい。
【0026】
一般式(3)で示されるイミノ基含有オルガノキシシラン化合物の製造方法としては、溶媒を使用する場合は、カルボニル基含有化合物と溶媒を仕込み、アミノオルガノキシシラン化合物を滴下する方法、アミノオルガノキシシラン化合物と溶媒を仕込み、カルボニル基含有化合物を滴下する方法、溶媒にカルボニル基含有化合物およびアミノオルガノキシシラン化合物を同時に滴下する方法等のバッチ反応で行う方法;カルボニル基含有化合物、アミノオルガノキシシラン化合物および溶媒を反応器や反応管に連続的にフィードし、生成物を連続的に抜き出す方法等の連続反応で行う方法が挙げられる。
溶媒を使用しない場合は、カルボニル基含有化合物を仕込み、アミノオルガノキシシラン化合物を滴下する方法、アミノオルガノキシシラン化合物を仕込み、カルボニル基含有化合物を滴下する方法等のバッチ反応で行う方法;カルボニル基含有化合物、アミノオルガノキシシラン化合物を反応器や反応管に連続的にフィードし、生成物を連続的に抜き出す方法等の連続反応で行う方法が挙げられる。
【0027】
なお、本反応では副生物として水が生成するが、上述のとおり、本発明では、反応副生物として生じた水を反応系外へ除去することなく反応を行い、反応後、水を除去することを特徴としている。
生じた水を反応中に反応系外に除去するには共沸脱水を実施することになるが、この場合、溶媒を還流させる必要があるため、反応温度を高温としなければならない。加水分解縮合反応は、水が生成した段階において最も起こりやすいため、水が生成した時点で反応温度が高温であると、加水分解縮合反応が顕著に進行してしまう。そのため、反応中、すなわち水が生成している段階は、反応を温和な条件で実施し、反応後に水を除去する方が有利である。
【0028】
反応後に水を除去する方法としては、特に限定されるものではなく、常圧または減圧で共沸脱水を行う方法、二層分離した水層を分液操作により除去する方法、脱水剤を添加して除去する方法等が挙げられるが、実施の容易さおよび収率の観点から、分液操作によって二層分離した水層を除去する方法が好ましい。
分液操作によって二層分離した水層を除去する方法としては、バッチ反応で行う場合においては、反応後に撹拌機を停止し、水層が沈降した場合は反応器下部から水層を抜き出して除去する方法、水層が浮上した場合はまず有機層を反応器下部から抜き出し、その後水層を反応器下部から抜き出して廃棄する方法等が挙げられる。連続反応で行う場合においては、生成物をデカンターに供給し、デカンター内で二層分離した水層を抜き出す方法等が挙げられる。
上記のようにして得られた有機層からは、蒸留等の通常の方法で目的物を回収することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
[実施例1]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、ベンズアルデヒド509.3g(4.8モル)、トルエン1,200mlを仕込み、20~40℃で3-アミノプロピルトリメトキシシラン717.2g(4.0モル)を2時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。反応液を分液漏斗に移送し、二層に分離した下層の水層を除去した。上層を蒸留し、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルトリメトキシシランを沸点149℃/0.4kPaの留分として768.8g得た。収率は72%であった。
【0031】
[比較例1]
撹拌機、ディーンスターク装置、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、ベンズアルデヒド509.3g(4.8モル)、トルエン1,200mlを仕込み、トルエンが還流するまで加熱した。トルエン還流下(内温116℃)において、生じた水を留去しながら、3-アミノプロピルトリメトキシシラン717.2g(4.0モル)を2時間かけて滴下し、更に還流下で1時間撹拌した。得られた反応液を蒸留し、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルトリメトキシシランを沸点149℃/0.4kPaの留分として、540.9g得た。収率は51%であった。
【0032】
[実施例2]
3-アミノプロピルトリメトキシシラン717.2g(4.0モル)を、3-アミノプロピルトリエトキシシラン885.6g(4.0モル)に変更した以外は、実施例1と同様にして反応および分液を行い、さらに上層を蒸留し、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルトリエトキシシランを沸点164℃/0.4kPaの留分として1,195.5g得た。収率は97%であった。
【0033】
[実施例3]
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えたフラスコに、ベンズアルデヒド509.3g(4.8モル)、トルエン1,200mlを仕込み、70℃に加熱した。内温が安定した後、3-アミノプロピルトリエトキシシラン885.6g(4.0モル)を70~80℃で2時間かけて滴下し、その温度で1時間撹拌した。25℃まで冷却後、反応液を分液漏斗に移送し、二層に分離した下層の水層を除去した。上層を蒸留し、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルトリエトキシシランを沸点164℃/0.4kPaの留分として1,150.9g得た。収率は93%であった。
【0034】
[比較例2]
3-アミノプロピルトリメトキシシラン717.2g(4.0モル)を、3-アミノプロピルトリエトキシシラン885.6g(4.0モル)に変更した以外は、比較例1と同様にして反応を行い、さらに反応液を蒸留し、3-(ベンジリデンアミノ)プロピルトリエトキシシランを沸点164℃/0.4kPaの留分として1,001.5g得た。収率は81%であった。