(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】積層基板の製造方法、および製造装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20220928BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2019550958
(86)(22)【出願日】2018-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2018037624
(87)【国際公開番号】W WO2019087707
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2019-12-10
(31)【優先権主張番号】P 2017213066
(32)【優先日】2017-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 功
(72)【発明者】
【氏名】釜下 敦
(72)【発明者】
【氏名】三ッ石 創
(72)【発明者】
【氏名】福田 稔
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/093284(WO,A1)
【文献】特開2012-038860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの基板を接合して積層基板を製造する製造方法であって、
複数の基板の剛性および面方位の少なくとも一方に関する情報を取得する取得段階と、
互いに接合する2つの基板の間で互いに対応する位置における前記剛性および前記面方位の前記少なくとも一方が異なるように、2つの基板の組み合わせを決定する決定段階と、
を含む製造方法。
【請求項2】
前記決定段階において、2つの基板の接合後の位置ずれ量が予め定められた閾値以下となる組み合わせを決定する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記決定段階において、前記2つの基板の一方に対する他方の接合面内での回転の量を決定する段階をさらに含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記回転の量に基づいて露光をする露光条件を露光装置に出力する段階をさらに含む請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記回転の量に基づいて、前記2つの基板の少なくとも一方を接合時に保持する保持条件を接合装置に出力する段階をさらに含む請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項6】
2つの基板を接合して積層基板を製造する製造装置であって、
複数の基板の剛性および面方位の少なくとも一方に関する情報を取得する取得部と、
互いに接合する2つの基板の間で互いに対応する位置における前記剛性および前記面方位の前記少なくとも一方が異なるように、互いに接合する前記2つの基板の組み合わせを決定する決定部と、
を備える製造装置。
【請求項7】
2つの基板を接合して積層基板を製造する製造方法であって、
前記2つの基板の剛性分布および結晶構造の少なくとも一方に関する情報を取得する取得段階と、
前記2つの基板における前記剛性分布および前記結晶構造の前記少なくとも一方の組み合わせに基づいて、前記2つの基板を接合するときの前記2つの基板の少なくとも一方を保持する保持力の大きさを決定する決定段階と、
を含む製造方法。
【請求項8】
2つの基板を接合して積層基板を製造する製造装置であって、
2つの基板を接合する接合部と、
前記2つの基板の少なくとも一方を保持する保持部と
を備え、
接合される2つの基板の第1の組と、接合される2つの基板の第2の組と
のそれぞれにおいて、前記2つの基板の剛性および面方位の少なくとも一方の組み合わせが、前記第1の組と前記第2の組とで異なり、
前記第1の組と前記第2の組とで、
前記保持部による保持力が異なる製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層基板の製造方法、製造装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の基板を接合して積層基板を製造する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2013-098186号公報
【0003】
積層基板の製造においては、基板を接合する過程において、基板の異方性により接合前には認められなかった位置ずれや変形が生じる場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様においては、2つの基板を接合して積層基板を製造する製造方法であって、複数の基板の結晶構造に関する情報を取得する取得段階と、結晶構造に関する情報に基づいて、互いに接合する2つの基板の組み合わせを決定する決定段階と、を含む製造方法が提供される。
【0005】
本発明の第2の態様においては、2つの基板を接合して積層基板を製造する製造方法であって、複数の基板の剛性分布に関する情報を取得する取得段階と、剛性分布に関する情報に基づいて、互いに接合する2つの基板の組み合わせを決定する決定段階と、を含む製造方法が提供される。
【0006】
本発明の第3の態様においては、2つの基板を接合して積層基板を製造する製造方法であって、2つの基板の接合面の面方位、接合面に平行な方向の結晶方位、および、合成分布の少なくとも一方が異なる2つの基板を位置合わせする段階と、位置合わせした2つの基板を接合する段階と、を含む製造方法が提供される。
【0007】
本発明の第4の態様においては、2つの基板を接合して積層基板を製造する製造装置であって、複数の基板の結晶構造に関する情報を取得する取得部と、結晶構造に関する情報に基づいて、互いに接合する2つの基板の組み合わせを決定する決定部と、を備える製造装置が提供される。
【0008】
本発明の第5の態様においては、2つの基板を接合して積層基板を製造する製造装置であって、複数の基板の剛性分布に関する情報を取得する取得部と、剛性分布に関する情報に基づいて、互いに接合する2つの基板の組み合わせを決定する決定部と、を備える製造装置が提供される。
【0009】
本発明の第6の態様においては、2つの基板を接合して積層基板を製造する製造装置であって、2つの基板の接合面の面方位、接合面と平行な方向の結晶方位、および、剛性分布の少なくとも一つが異なる前記2つの基板を位置合わせする位置合わせ部と、位置合わせした2つの基板を接合する接合部と、を備える製造装置が提供される。
【0010】
本発明の第7の態様においては、基板にパターンを形成する露光装置であって、基板に接合される他の基板に対する基板の接合面内での回転角度に基づいて基板にパターンを露光し、回転角度は、基板および他の基板の結晶構造および剛性分布の少なくとも一方に関する情報に基づいて設定される露光装置が提供される。
【0011】
本発明の第8の態様においては、2つの基板を接合して積層基板を製造する場合に、複数の基板の結晶構造に関する情報を取得するステップと、結晶構造に関する情報に基づいて、互いに接合する2つの基板の組み合わせを決定する決定ステップとを、電子計算機に実行させるプログラムが提供される。
【0012】
本発明の第9の態様においては、2つの基板を接合して積層基板を製造する場合に、複数の基板の剛性分布に関する情報を取得するステップと、剛性分布に関する情報に基づいて、互いに接合する2つの基板の組み合わせを決定する決定ステップとを、電子計算機に実行させるプログラムが提供される。
【0013】
本発明の第10の態様においては、互いに積層された2つの基板を有する積層半導体装置であって、2つの基板の接合面の面方位、接合面と平行な方向の結晶方位、および、剛性分布の少なくとも一つが互いに異なる積層半導体装置が提供される。
【0014】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。これら特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図4】決定装置600の動作手順を示す流れ図である。
【
図5】格納部620が格納するテーブル629を例示する図である。
【
図8】基板213を保持した基板ホルダ223の模式的断面図である。
【
図9】第1基板211を保持した基板ホルダ221の模式的断面図である。
【
図10】接合部300の動作手順を示す流れ図である。
【
図12】接合部300における接合動作の手順を示す流れ図である。
【
図17】第1基板211および第2基板213の接合過程を示す部分拡大図である。
【
図18】第1基板211および第2基板213の接合過程を示す部分拡大図である。
【
図19】第1基板211および第2基板213の接合過程を示す部分拡大図である。
【
図20】積層基板230におけるずれ量の分布を示す図である。
【
図21】積層基板230におけるずれ量の分布を示す図である。
【
図22】積層基板230におけるずれ量の他の分布を示す図である。
【
図24】決定装置601の動作手順を示す流れ図である。
【
図25】第1基板211および第2基板213の接合過程を示す部分拡大図である。
【
図26】保持力と位置ずれ量との関係を例示するグラフである。
【
図27】決定装置601の他の動作手順を示す流れ図である。
【
図28】決定装置601の他の動作手順を示す流れ図である。
【
図29】決定装置601の他の動作手順を示す流れ図である。
【
図30】第1格納部621が格納するテーブル627を例示する図である。
【
図31】決定装置601の他の動作手順を示す流れ図である。
【
図32】積層基板240の製造過程を示す模式的分視図である。
【
図33】積層基板240の製造過程を示す模式的分視図である。
【
図34】積層基板240の製造過程を示す模式的分視図である。
【
図35】積層基板240の製造過程を示す模式的分視図である。
【
図36】積層基板240の構造を示す模式的斜視図である。
【
図37】決定装置601の他の動作手順を示す流れ図である。
【
図38】撮像素子700の製造過程におけるひとつの段階を示す図である。
【
図39】撮像素子700の製造過程における他の段階を示す図である。
【
図40】撮像素子700の製造過程におけるまた他の段階を示す図である。
【
図41】撮像素子700の製造過程におけるまた他の段階を示す図である。
【
図42】撮像素子700の製造過程におけるまた他の段階を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明する。下記の実施形態は、請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、基板を接合して積層基板を製造する製造装置901のブロック図である。製造装置901は、ウエハプロセス装置800、接合装置100、および決定装置600を備える。
【0018】
なお、基板の「接合」は、重ね合わせた二つの基板を、予め定められた値を超える接合強度が得られるように恒久的に一体化することを含む。また、「接合」は、基板が電気的な接続端子を備える場合に、二つの基板の接続端子が互いに電気的に結合され、基板の間で電気的な導通が確保された状態にすることを含む。
【0019】
更に、重ね合わせた基板の接合強度をアニール処理等により予め定められた値まで上昇させる場合、あるいは、アニール処理等により基板相互の電気的接続を形成する場合は、アニール処理前であって、二つの基板が一時的に結合している状態、すなわち仮接合の状態も接合された状態と記載する場合がある。この場合、仮接合された基板は、損耗することなく分離して再利用できる場合がある。
【0020】
ウエハプロセス装置800は、コータ810、露光装置820、成膜装置830、および制御部840を備える。更に、ウエハプロセス装置800は、乾燥装置、エッチング装置、洗浄装置、薄化装置等を備える場合がある。
【0021】
ウエハプロセス装置800において、コータ810は、装入された半導体単結晶ウエハ等の基板にレジストを塗布してレジスト層を形成する。露光装置820は、予め用意されたレチクルを用いてレジスト層にパターニングする。成膜装置830は、パターニングされたレジスト層を利用して素子、配線等の構造物を形成する薄膜を基板上に形成する。更に、ウエハプロセス装置800においては、上記のような処理を繰り返すことにより構造物を積み重ねて、基板上に立体的な構造物を形成する。
【0022】
ウエハプロセス装置800において、制御部840は、塗布、露光、成膜、エッチング、洗浄等の各段階における処理条件を各部に設定して、適切な条件で構造物を形成する。更に、制御部840は、露光装置820に処理条件を設定することにより、基板上に形成するパターンについて、設計仕様に対する変形、倍率等を補正する処理も制御する。
【0023】
図2は、ウエハプロセス装置800で製造する一例である第1基板211の模式的平面図である。第1基板211は、ノッチ214、複数の回路領域216、および複数のアライメントマーク218を有する。
【0024】
回路領域216は、第1基板211の表面に、第1基板211の面方向に周期的に配される。回路領域216の各々には、配線、素子、保護膜等の構造物が設けられる。また、回路領域216には、第1基板211を他の第1基板211、リードフレーム等に結合する場合に電気的な接続端子となるパッド、バンプ等の接続部も配される。接続部も、第1基板211の表面に形成された構造物のひとつである。
【0025】
アライメントマーク218も、第1基板211の表面に形成された構造物の一例であり、回路領域216における接続部等に対して予め定められた相対位置で配置される。これにより、アライメントマーク218を指標として、回路領域216を位置合わせできる。なお、第1基板211に対しては、上記のように構造物を有する半導体基板の他に、未加工の半導体基板、ガラス基板等を構造材として接合する場合もある。このような場合は、位置合わせは不要なので、アライメントマーク218も不要になる。
【0026】
第1基板211において、複数の回路領域216相互の間には、スクライブライン212が存在する。スクライブライン212は構造物ではなく、ダイシングにより回路領域216を含む第1基板211を個片化する場合に切断する仮想の切断線である。スクライブライン212は、ダイシングの切り代として、最終的に第1基板211から消滅する領域でもある。よって、半導体装置として完成した第1基板211からは不要になるアライメントマーク218は、スクライブライン212上に配置してもよい。
【0027】
第1基板211は、例えば、シリコン単結晶基板に、ウエハプロセス装置800で構造物を形成して作製される。また、第1基板211の材料として、Geを添加したSiGe基板、Ge単結晶基板、III-V族またはII-VI族等の化合物半導体ウエハを用いてもよい。
【0028】
再び
図1を参照すると、製造装置901において、接合装置100は、ウエハプロセス装置800において作製した複数の基板、例えば2つの基板を接合して積層基板を形成する。積層基板においては、2つの基板に形成された回路等が相互に結合され、単層の基板に比較すると、より大規模な構造物を形成できる。また、積層基板は、互いに異なる材料、または、プロセスで形成された基板を接合して作製することにより、単一の基板では形成できない高機能な半導体装置を形成できる。接合装置100の構造については、
図10を参照して後述する。
【0029】
製造装置901において、決定装置600は、ウエハプロセス装置800および接合装置100に設定される処理条件の少なくとも一部を決定する。決定装置600が決定した処理条件は、例えば、ウエハプロセス装置800の制御部840によりウエハプロセス装置800内の各部に設定され、ウエハプロセス装置800における基板の作製に反映される。また、決定装置600が決定した処理条件の一部を、接合装置100に設定して基板を接合してもよい。
【0030】
図3は、製造装置901における決定装置600の一例を示すブロック図である。決定装置600は、受付部610、格納部620、決定部640、および出力部650を備える。また、
図4は、決定装置600の動作を説明する流れ図である。
【0031】
受付部610は、接合装置100において接合する第1基板211に関する情報を受け付ける(
図4のステップS101)。ここで、受付部610が受け付ける情報は、第1基板211の接合面、すなわち、第1基板211を接合する場合に、他の基板に接して結合される接合面の結晶構造に関する情報を含む。第1基板211の結晶構造に関する情報は、第1基板211の組成を示す情報、接合面の面方位を示す情報、接合面と平行な結晶方位の方向を示す情報面方位を含んでもよい。接合面に平行な方向の結晶方位は、第1基板211の側面に垂直な方向の結晶方位を含む。また、当該情報は、第1基板211の接合面と平行な結晶方位に対応したノッチ214の位置を含んでもよい。なお、第1基板211におけるノッチ214の位置は、第1基板211の中心に対してノッチ214が位置する方向により表すことができ、
図2に示した状態を、例えば0°として、この状態から第1基板211の中心の周りに右方向に回転した角度で表す情報である。回転した状態では、接合面に平行な方向の結晶方位は、回転角度が0°の状態から接合面内において回転方向に傾く。第1基板211が第2基板213に対して回転した状態とは、第1基板211の接合面に平行な方向の結晶方位と第2基板213の接合面に沿った結晶方位とが互いに揃った状態から、第1基板211の結晶方位が傾いている状態である。
【0032】
決定装置600における格納部620は、第1基板211を含む一組の基板を接合して積層基板を作製した場合に、予め定めた条件が満たされる組合せを示す情報を格納している。そのような基板の組合せに関する情報は、予め実行した実験または解析により用意できる。また、稼働した製造装置901により製造された積層基板における基板の位置ずれ量や反り量を参照して組合せに関する情報を改訂してもよい。
【0033】
ここで、積層基板が満たすべき予め定めた条件とは、例えば、接合により作製した積層基板における基板相互の位置ずれが、予め定めた閾値を上回らないことである。また、予め定めた閾値とは、例えば、積層基板が形成された段階で、積層基板を形成する2つの基板相互の位置ずれについて、一方の基板の回路と、他方の基板の回路との間の電気的な接続が維持できる範囲の位置ずれ量の最大値を意味する。
【0034】
また、積層基板が満たすべき予め定めた条件は、積層基板全体の、反り等の変形の量であってもよい。変形の量は、観察により測定した基板表面の高低差等の物理量で表すことができる。また、接合された2つの基板の接合強度が、実用において2つの基板の回路の電気的接続を維持できる範囲の接合強度の最小値を、上記した予め定めた閾値として併せて用いてもよい。
【0035】
図5は、格納部620が格納するテーブル629の一例を例示する図である。図示のように、格納部620に格納されたテーブル629には、第1基板211および第2基板213の複数の組合せが記載されている。
【0036】
ここで、第1基板211の欄は、決定装置600の受付部610により受け付けられた、組合せの一方の候補となる基板の接合面の結晶構造に関する情報に対応する。図示の例では、第1基板211の接合面における面方位(100)と、接合面に平行な結晶方位に対応したノッチ214の位置0°とがテーブル629の左列に格納されている。なお、「(100)」等の記載は、ミラー指数による面方位の表示である。
【0037】
また、第2基板213の欄は、左列に記載された第1基板211に、予め定めた条件を満たして接合できる組合せとなる他方の基板の結晶構造に関する情報を示す。図示の例では、第1基板211の接合面と同じ面方位(100)を有する基板であって、ノッチの位置が異なる第2基板213が、テーブル629の右列に格納されている。
【0038】
再び
図3を参照すると、決定部640は、受付部610に第1基板211の情報が受け付けられた場合に、格納部620のテーブル629を参照して、組み合わせるべき第2基板213を決定する(
図4のステップS102)。図示の例では、決定部640は、第1基板211について結晶構造に関する左列最上段の情報(100)および0°が受け付けられた場合に、右列最上段の(100)45°または(100)315°を決定する。このように、決定装置600は、解析やパターンマッチング等の演算処理無しに、第1基板211に組合せる第2基板213を決定する。
【0039】
決定装置600においては、決定部640の決定は、出力部650を介して外部に出力される(
図4のステップS103)。ステップS103において、決定装置600の出力部650は、決定部640の決定を、例えば表示装置に表示することでユーザに伝達してもよい。また、製造装置901においてウエハプロセス装置800に決定を伝達して、決定の仕様を満足する第2基板213を作製させてもよい。
【0040】
更に、第2基板213が、精密な位置合わせを必要としない基板、すなわち、未加工の支持基板等である場合は、接合装置100に決定部640の決定を伝達して、第1基板211に接合する第2基板のノッチの位置を調整させてもよい。
【0041】
図6は、(100)45°の結晶構造が接合面に現れる第2基板213を模式的に示す平面図である。図示のように、第2基板213は、ノッチ214、回路領域216、およびアライメントマーク218を有する。
【0042】
第2基板213のアライメントマーク218は、第1基板の回路領域216と第2基板213の回路領域216とを位置合わせすることができる位置に配される。これにより、アライメントマーク218により位置合わせされた状態で接合されて積層基板が形成された場合、第1基板の回路領域216と第2基板213の回路領域216は電気的に結合される。
【0043】
ここで、第2基板213のノッチ214の位置は、第1基板211のノッチの位置に対して、接合面側から見た場合に右周りに45°回転した位置にある。この状態では、第1基板211の接合面に平行な方向の結晶方位と第2基板213の接合面に沿った結晶方位とが互いに揃った状態から、第2基板213の結晶方位が45°傾いている。よって、アライメントマーク218により位置合わせした場合、第1基板211と第2基板213とは、同じ面方位(100)を有し、且つ、接合面と平行な結晶方位が45°回転した状態で接合される。
【0044】
第2基板213は、決定装置600が第1基板211と組合せる基板として、「接合面と平行な結晶方位の方向が、同接合面内で第1基板211に対して45°回転した基板」と決定した情報がウエハプロセス装置800に伝達されて作製される。決定装置600から決定に関する情報を取得したウエハプロセス装置800の制御部840は、表面が(100)面となるウエハを露光装置820に装入し、ウエハのノッチ214が第1基板211のノッチ214の位置に対して45°回転した状態で構造物のパターンを形成する。すなわち、露光装置820は決定装置600により決定された回転角度に基づいて基板にパターンを露光する。これにより、
図6に示した仕様の第2基板213が作製される。
【0045】
次に、第1基板211および第2基板213を接合して積層基板230を作製する過程と、その過程で生じる第1基板および第2基板の間の位置ずれについて説明する。その後、格納部620において参照される結晶に関する情報について説明する。
【0046】
図7は、第1基板211および第2基板213を接合して積層基板230を製造する接合装置100の模式的平面図である。接合装置100は、筐体110と、筐体110の外側に取り付けた基板カセット120、130および制御部150と、筐体110の内部に収容した搬送部140、接合部300、ホルダストッカ400、およびプリアライナ500とを備える。
【0047】
筐体110の内部は温度管理され、例えば室温に保たれる。一方の基板カセット120には、接合するために接合装置100に搬入する基板211、213が収容される。他方の基板カセット130には、接合により形成された積層基板230が、接合装置100から搬出されて収容される。
【0048】
なお、基板カセット120は、第1基板211および第2基板213を識別可能な状態で収容してもよい。また、基板カセット120の数を増やして、第1基板211を収容した基板カセット120と、第2基板213を収容した基板カセット120とをそれぞれ設けてもよい。
【0049】
制御部150は、接合装置100の各部の動作を制御すると共に、相互に連携させて接合装置100全体を統括的に制御する。また、制御部150は、動作条件の設定等に関するユーザの指示を受け付けると共に、自身の動作状態をユーザに向かって表示するユーザインターフェイス、第1基板211、第2基板213、および積層基板230に関する情報を外部から受信する通信部等も有する。
【0050】
接合部300は、第1基板211および第2基板213を位置合わせした上で重ね合わせることにより接合して積層基板230を形成する。接合部300の構成と動作については、
図11および
図13から
図16を参照して後述する。
【0051】
プリアライナ500は、接合部300に搬入する第1基板211および第2基板213を、基板ホルダ221、223に保持させる。また、プリアライナ500においては、接合部300における位置合わせ精度に対して相対的に低い位置合わせ精度で、基板ホルダ221、223に対して第1基板211および第2基板213が位置合わせされる。これにより、プリアライナ500の精度で、第1基板211および第2基板213の基板ホルダ221、223に対する位置が決まるので、接合部300において高精度な位置合わせをする場合に処理時間を短縮できる。
【0052】
なお、第1基板211および第2基板213は、接合面の結晶方位が互いに回転方向に異なっている状態で接合される。このため、プリアライナ500において基板ホルダ221、223に保持させる場合の第1基板211および第2基板213の向きは、ノッチ214を異なる位置に合わせることにより決められる。また、第1基板211および第2基板213の基板ホルダ221、223上の位置は、ノッチ214基準ではなく、例えば、アライメントマーク218を基準にして揃えてもよい。
図6の例では、第2基板213にノッチ214を形成してから回転させているが、回転させた後にノッチ214を形成する場合は、ノッチ214を0°の位置に形成してもよい。この場合、第2基板213の位置はノッチ214の位置を基準に決められる。
【0053】
基板ホルダ221、213は、ホルダストッカ400から取り出されて、プリアライナ500において第1基板211または第2基板213を吸着して保持する。第1基板211または第2基板213を保持した基板ホルダ221、223は、第1基板211または第2基板213と共に接合部300に搬入される。なお、第1基板211および第2基板213を接合して形成された積層基板230が接合部300から搬出される場合、基板ホルダ221、223は、積層基板230から分離されてホルダストッカ400に戻される。このように、基板ホルダ221、223は、接合装置100の内部を循環して繰り返し使用される。
【0054】
搬送部140は筐体110の内部に位置し、接合前の第1基板211および第2基板213、基板ホルダ221、223、第1基板211または第2基板213を保持した基板ホルダ221、223、第1基板211および第2基板213を接合して形成された積層基板230のいずれかを搬送する。すなわち、搬送部140は、ホルダストッカ400から基板ホルダ221、223を搬出してプリアライナ500に搬送する。また、搬送部140は、基板カセット120から搬出した第1基板211および第2基板213をプリアライナ500に搬送する。更に、搬送部140は、第1基板211または第2基板213を保持した基板ホルダ221、223を、プリアライナ500から接合部300に搬入し、接合部300で形成された積層基板230を基板カセット130に収納する。
【0055】
図8は、ホルダストッカ400から取り出された基板ホルダ223が、基板カセット120から取り出された第2基板213を保持した状態を模式的に示す図である。図示のように、基板ホルダ223は、第2基板213よりも大きな厚さと径とを有し、平坦な吸着面225を有する。吸着面225は、静電チャック、真空チャック等により、基板213を吸着して、基板213と基板ホルダ223とを一体化する。
【0056】
図9は、ホルダストッカ400から取り出された基板ホルダ221が、基板カセット120から取り出された第1基板211を保持した状態を模式的に示す図である。基板ホルダ221は、第1基板211よりも大きな厚さと径とを有する点では基板ホルダ223と共通する。一方、基板ホルダ221は、第1基板211を吸着する吸着面225が、中央が盛り上がった凸状の形状を有する点で、
図8に示した基板ホルダ223と異なる。
【0057】
図10は、上記の接合装置100を用いて積層基板230を形成する手順を示す流れ図である。制御部150は、まず、ホルダストッカ400に収容された複数の基板ホルダ221、223のうちの一枚である基板ホルダ223を搬送部140により取り出して、プリアライナ500に待機させる(ステップS201)。続いて、制御部150は、基板カセット120に収容された第2基板213を、搬送部140により基板カセット120から取り出し(ステップS202)、プリアライナ500において基板ホルダ223に吸着させて保持させる(ステップS203)。更に、制御部150は、搬送部140により基板ホルダ223に保持された基板213を接合部300に搬入させる(ステップS204)。
【0058】
ここで、制御部150は、ステップS201からステップS204で接合部300に搬入させた基板213が、接合する一対の基板の1枚目であるか2枚目であるかを調べる(ステップS205)。直前に搬入した基板が1枚目であった場合(ステップS205:NO)、制御部150は、上記ステップS201からステップS204を繰り返して2枚目の第1基板211を基板ホルダ221と共に接合部300に搬入させる(ステップS204)。
【0059】
すなわち、制御部150は、ホルダストッカ400に収容された複数の基板ホルダ221、223のうちの他の一枚である基板ホルダ221を搬送部140により取り出して、プリアライナ500に待機させる(ステップS201)。続いて、制御部150は、基板カセット120に収容された第1基板211を搬送部140により基板カセット120から取り出し(ステップS202)、プリアライナ500において基板ホルダ221に吸着させて保持させる(ステップS203)。更に、制御部150は、搬送部140により基板ホルダ221に保持された第1基板211を接合部300に搬入させる(ステップS204)。
【0060】
こうして、接合部300に第1基板211および第2基板213が搬入されると、ステップS205において接合部300に搬入した第1基板211が2枚目であると判定されるので(ステップS205:YES)、制御部150は、第1基板211および第2基板213を接合する接合動作を、接合部300に実行させる(ステップS206)。続いて、制御部150は、第1基板211および第2基板213を接合して形成された積層基板230を、搬送部140により接合部300から搬出させて(ステップS207)、基板カセット130に収納させる。また、制御部150は、接合部300から搬出した積層基板230から分離した基板ホルダ221、223を、ホルダストッカ400に戻す。こうして、接合部300による接合動作が完了する。
【0061】
図11は、接合部300の模式的断面図である。接合部300は、枠体310、上ステージ322および下ステージ332を備える。
【0062】
枠体310は、それぞれが水平な底板312および天板316を有する。枠体310の天板316は、下向きに固定された上ステージ322を支持する。上ステージ322は、真空チャックおよび静電チャックの少なくとも一方を備え、基板213を保持した状態で搬入された基板ホルダ223を吸着して保持する。
【0063】
また、天板316には、顕微鏡324および活性化装置326が、上ステージ322の側方で固定されている。顕微鏡324は、下ステージ332が下方に移動してきた場合に、下ステージに搭載された第1基板211基板の上面を観察できる。活性化装置326は、下ステージ332が下方に移動してきた場合にプラズマを発生して、下ステージ332に保持された第1基板211の上面を清浄化する。
【0064】
枠体310の底板312には、順次積層されたX方向駆動部331、Y方向駆動部333、昇降駆動部338、および回転駆動部339が配される。X方向駆動部331は、図中に矢印Xで示すように、底板312と平行に移動する。
【0065】
Y方向駆動部333は、図中に矢印Yで示すように、X方向駆動部331上で、底板312と平行であり、且つ、X方向駆動部331とは異なる方向に移動する。X方向駆動部331およびY方向駆動部333の動作を組み合わせることにより、下ステージ332は、底板312と平行に二次元的に移動する。
【0066】
昇降駆動部338は、一端をY方向駆動部333に固定され、他端を回転駆動部339の一端に固定される。回転駆動部339の他端は、下ステージ332を支持する。昇降駆動部338は、図中に矢印Zで示すように、回転駆動部339を底板312に対して垂直に変位させる。また、回転駆動部339は、下ステージ332を、底板312に対して垂直な軸の周りに回転させる。X方向駆動部331、Y方向駆動部333、昇降駆動部338、および回転駆動部339の個々の動作により下ステージ332の移動量は、図示していない干渉計等を用いて高精密に計測される。
【0067】
Y方向駆動部333は、上記昇降駆動部338、回転駆動部339、および下ステージ332と共に、下ステージ332の側方に位置する顕微鏡334および活性化装置336を支持する。顕微鏡334および活性化装置336は、X方向駆動部331およびY方向駆動部333の動作に応じて、底板312と平行な方向に、下ステージ332と共に移動する。なお、下ステージ332と回転駆動部339との間に、底板312と平行な回転軸の周りに下ステージ332を揺動させる揺動駆動部を更に設けてもよい。
【0068】
これにより、顕微鏡334は、下ステージ332が上ステージ322の下方に移動した場合に、上ステージに保持された基板213の下面を観察できる。活性化装置336は、下ステージ332が上ステージ322の下方に移動した場合に、プラズマを発生して、上ステージ322に保持された基板213の下面を清浄化する。
【0069】
なお、
図11に示した状態においては、基板213を保持した平坦な吸着面225を有する基板ホルダ223が、搬入された接合部300の上ステージ322に保持されている。また、第1基板211を保持した凸状の吸着面225を有する基板ホルダ221が、搬入された接合部300の下ステージ332に保持されている。また、顕微鏡324、334が相互に合焦することにより、制御部150は、顕微鏡324、334の相対位置を較正している。
【0070】
図12は、接合部300における接合動作の手順を示す流れ図である。制御部150は、接合する第1基板211および第2基板213の両方が搬入されるまで待機していた(ステップS301:NO)接合部300に、接合する第1基板211および第2基板213が搬入されたことを以て接合動作を開始する(ステップS301:YES)。接合動作が開始されると、制御部150は、顕微鏡324、334を用いて、第1基板211および第2基板213それぞれの複数のアライメントマーク218の位置を検出する(ステップS302)。
【0071】
図13は、上記ステップS302における接合部300の状態を示す模式的断面図である。図示のように、制御部150は、X方向駆動部331およびY方向駆動部333を動作させることにより、下ステージ332および顕微鏡334を移動させる。
【0072】
これにより、顕微鏡324は第1基板211のアライメントマーク218を観察できる状態になる。観察対象のアライメントマーク218が、顕微鏡324の視野において予め定めた位置に来るまでの下ステージ332の移動量に基づいて、制御部150は、アライメントマーク218の位置を精度よく把握できる。同様に、顕微鏡334で基板213のアライメントマーク218を観察することにより、制御部150は、基板213のアライメントマーク218の位置を精度よく把握できる。
【0073】
次に、制御部150は、ステップS302で検出したアライメントマーク218の位置に基づいて、第1基板211および第2基板213相互の相対位置を算出する(ステップS303)。すなわち、当初の相対位置が既知である顕微鏡324、334で第1基板211および第2基板213のアライメントマーク218の位置を検出することにより、制御部150は、第1基板211および第2基板213の相対位置が判る。
【0074】
これにより、第1基板211および第2基板213を位置合わせする場合には、第1基板211および第2基板213で対応するアライメントマーク218間の位置ずれが閾値以下となるように、または、第1基板211および第2基板213間で対応する回路領域216または接続部の位置ずれが閾値以下となるように、第1基板211および第2基板213の相対移動量を算出すればよい。
【0075】
第1基板211および第2基板213のアライメントマーク218は、第1基板211および第2基板213を作製する段階で、接合面の結晶方位に対して異なる角度で配列されている。よって、第1基板211および第2基板213の少なくとも一方は、接合面に平行な方向の結晶方位に対して異なる方向で配列されたアライメントマーク218を形成される。従って、第1基板211および第2基板213のアライメントマーク218を位置合わせすると、接合面における第1基板211および第2基板213は互いに異なる結晶方位を有した状態になる。
【0076】
図14は、ステップS304における接合部300の他の状態を示す模式的断面図である。
図13に示した状態に続いて、制御部150は、第1基板211および第2基板213の接合面を活性化する(ステップS304)。図示のように、制御部150は、活性化装置326、336を稼働させてプラズマを生成しつつ、下ステージ332を移動させて、第1基板211および第2基板213のそれぞれの表面をプラズマに暴露させる。これにより、第1基板211および第2基板213の接合面が高度に清浄化され、化学的な活性が高くなる。
【0077】
接合面の活性化は、プラズマに暴露する方法の他に、不活性ガスを用いたスパッタエッチング、イオンビーム、または、高速原子ビーム等により第1基板211および第2基板213の表面を活性化することもできる。イオンビームや高速原子ビームを用いる場合は、接合部300全体を減圧下におく。また、紫外線照射、オゾンアッシャー等により第1基板211および第2基板213を活性化することもできる。更に、例えば、液体または気体のエッチャントを用いて、第1基板211および第2基板213の表面を化学的に清浄化することにより活性化してもよい。更に、第1基板211および第2基板213の表面を活性化した後、更に、第1基板211および第2基板213の表面を親水化装置により親水化してもよい。
【0078】
なお、接合部300の内部に設けた活性化装置326、336は、接合部300とは別の場所に配置して、活性化した第1基板211および第2基板213を接合部300に搬入するようにしてもよい。また、第1基板211および第2基板213のいずれか一方の接合面を活性化し、他方を活性化しないで第1基板211および第2基板213を接合してもよい。
【0079】
次に、制御部150は、第1基板211および第2基板213を位置合わせする(ステップS305)。
【0080】
図15は、ステップS305における接合部300の状態を示す模式的断面図である。図示のように、第1基板211および第2基板213の位置合わせは、ステップS303で検出したアライメントマーク218の相対位置に基づく移動量で下ステージ332を移動させて、第1基板211および第2基板213の各々のアライメントマーク218の位置を相互に一致させる。
【0081】
第1基板211および第2基板213が位置合わせされると、制御部150は、第1基板211および第2基板213の一部を接触させて、接合の起点を形成する(ステップS306)。
【0082】
図16は、ステップS306における接合部300の状態を示す模式的断面図である。図示のように、制御部150が昇降駆動部338を動作させて、第1基板211および第2基板213の接合面の一部を接触させることによりにより接合の起点が形成される。
【0083】
この段階において、第1基板211および第2基板213は、それぞれ、基板ホルダ221、213に保持されている。基板213を保持する基板ホルダ223は平坦な吸着面225を有し、第1基板211を保持する基板ホルダ221は凸状の吸着面225を有する。よって、第1基板211も、基板213に向かって凸状に変形しており、接触の当初、第1基板211および第2基板213は、接合面の一部で接触する。また、各々の第1基板211および第2基板213は基板ホルダ221、223に保持されているので、当初接触した領域以外の領域では第1基板211および第2基板213は接触しない。
【0084】
先に説明した通り、第1基板211および第2基板213の表面は活性化されているので、接触した領域において、第1基板211および第2基板213は分子間力により恒久的に接合される。こうして、第1基板211および第2基板213の一部に、接合の起点が形成される。
【0085】
続いて、制御部150は、第1基板211および第2基板213の一方、例えば、上ステージ322に保持された基板213の基板ホルダ223による保持を解除する(ステップS307)。これにより、第1基板211および第2基板213の接合領域が第1基板211および第2基板213の縁に向かって順次拡がるボンディングウェーブが発生し、やがて、第1基板211および第2基板213全体が接合される。このように、第1基板211および第2基板213の一部による接触を拡大して全体に重ね合わせることにより、第1基板211および第2基板213の間に気泡等が残ることを防止できる。
【0086】
制御部150は、ステップS307において基板213の保持を解除した後、接合領域の拡大を監視して、例えば、拡大する接合領域が第1基板211および第2基板213の縁に達したことをもって、第1基板211および第2基板213の接合完了を検出する(ステップS308:YES)。換言すれば、制御部150は、第1基板211および第2基板213の接合が完了するまでは(ステップS308:NO)、下ステージ332を固定して、接合領域の拡大を継続する。こうして積層基板230が形成されると(ステップS206:
図10)、接合部300から積層基板230が搬出され(ステップS207:
図10)、基板カセット130に収納される。
【0087】
なお、上記のように第1基板211および第2基板213の接触領域が拡大していく過程で、制御部150は、基板ホルダ223による基板213の保持を、部分的に、あるいは段階的に解除してもよい。また、上ステージ322において基板213を解放せずに、下ステージ332において第1基板211を解放することにより、第1基板211および第2基板213の接合を進行させてもよい。
【0088】
更に、二つの第1基板211および第2基板213の両方を解放してもよい。また更に、上ステージ322および下ステージ332の双方において基板213、211を保持したまま、上ステージ322および下ステージ332を更に近づけて上ステージ322および下ステージ332の少なくとも一方を変形させることにより、第1基板211および第2基板213を接合させてもよい。
【0089】
上記のように位置合わせして接合した積層基板230においても、第1基板211および第2基板213の間に位置ずれが残留する場合がある。残留する位置ずれは、第1基板211および第2基板213の個々の歪みのばらつきや、位置合わせの誤差に起因するものが含まれる。更に、ボンディングウェーブの発生を伴う第1基板211および第2基板213の接合過程で発生する他の歪みが積層基板230に残留する位置ずれの原因に含まれる。
【0090】
図17、18、19は、ボンディングウェーブの発生を伴う接合の過程で第1基板211および第2基板213の間に生じる歪みを説明する図である。
図17、18、19には、接合部300における接合の過程で、第1基板211および第2基板213が既に接触した接触領域と、第1基板211および第2基板213がまだ接触しておらず、これから接触する非接触領域との境界Kの付近の領域Qを拡大して示す。
【0091】
図17に示すように、重ね合わされた二つの第1基板211および第2基板213の接触領域が中央から外周に向かって面積を拡大する過程で、境界Kは、第1基板211および第2基板213の中央側から外周側に向かって移動する。境界K付近において、基板ホルダ223による保持から解放された基板213には伸びが生じる。具体的には、境界Kにおいて、基板213の厚さ方向の中央の面に対して、基板213の図中下面側においては基板213が伸び、図中上面側においては基板213が収縮する。
【0092】
これにより、図中に点線で示すように、基板213において、第1基板211に接合された領域の外端においては、基板213の表面における回路領域216の設計仕様に対する倍率が第1基板211の設計仕様に対する倍率に対して拡大したかのように歪む。このため、図中に点線のずれとして現れるように、基板ホルダ221に保持された下側の第1基板211と、基板ホルダ223から解放された上側の基板213との間に、基板213の伸び量すなわち倍率の相違に起因する位置ずれが生じる。
【0093】
図18に示すように、変形量が相違した状態のまま第1基板211および第2基板213が接触して恒久的に接合されると、基板213の拡大された倍率が固定される。更に、
図19に示すように、接合により固定される基板213の伸び量は、第1基板211および第2基板213の外周に境界Kが移動するほど累積されて大きくなる。
【0094】
図20は、積層基板230を構成する二つの第1基板211および第2基板213の倍率差による位置ずれの分布を示す図である。位置ずれの分布は、例えば、基板上の各部における位置ずれの二乗和平方根によりスカラ量として取り扱うことができる。
【0095】
図示のずれは、積層基板230の中心点から面方向に放射状に漸増するずれ量を有する。このような接合過程で生じる位置ずれの大きさは、接合する第1基板211および第2基板213の剛性、第1基板211および第2基板213に挟まれる雰囲気の粘性、および、第1基板211および第2基板213間に働く分子間力の大きさ等の物理量に基づいて算出できる。
【0096】
なお、ここでいう第1基板211および第2基板213の剛性は、第1基板211および第2基板213の曲げ剛性と、第1基板211および第2基板213の接合面に平行な変形に対抗する面内剛性とを含む。これら曲げ剛性および面内剛性は、第1基板211および第2基板213の表面に配された接合部の位置ずれに影響する。曲げ剛性は、第1基板211および第2基板213の厚さから計算され、単位はNm2である。また、面内剛性は、第1基板211および第2基板213のヤング率であり、単位はGPaである。
【0097】
第1基板211および第2基板213の面内剛性が均一であれば、
図20に示すように、位置ずれの分布は線形性を有するので、第1基板211および第2基板213を作製する段階の調整等により接合前に補償できる。しかしながら、次に説明するように、接合過程で生じる位置ずれの分布が非線形化する場合があり、非線形化した位置ずれの分布は、第1基板211および第2基板213を作製する段階の調整等で補償することが難しい。
【0098】
なお、第1基板211および第2基板213に生じる歪みとは、第1基板211および第2基板213における構造物の設計座標すなわち設計位置からの変位である。第1基板211および第2基板213に生じる歪みは、平面歪みと立体歪みとを含む。
【0099】
平面歪みは、第1基板211および第2基板213の接合面に沿った方向に生じた歪みであり、第1基板211および第2基板213のそれぞれの構造物の設計位置に対して変位した位置が線形変換により表される線形歪みと、線形変換により表すことができない、線形歪み以外の非線形歪みとを含む。
【0100】
線形歪みは、変位量が中心から径方向に沿って一定の増加率で増加する倍率を含む。倍率は、第1基板211および第2基板213の中心からの距離Xにおける設計値からのずれ量をXで除算することにより得られる値であり、単位はppmである。倍率には、設計位置からの変位ベクトルが同じ量のX成分およびY成分を有する等方倍率と、設計位置からの変位ベクトルが、互いに異なる量の成分を有する非等方倍率とが含まれる。
【0101】
本実施例では、貼り合わされる二つの第1基板211および第2基板213のそれぞれにおける構造物の設計位置は共通であり、二つの第1基板211および第2基板213のそれぞれにおける設計位置を基準とした倍率の差が、第1基板211および第2基板213の位置ずれ量となる。
【0102】
また、線形歪みは、直交歪みを含む。直交歪みは、基板の中心を原点として互いに直交するX軸およびY軸を設定したときに、構造物が原点からY軸方向に遠くなるほど大きな量で、設計位置からX軸方向に平行に変位している歪である。当該変位量は、X軸に平行にY軸を横切る複数の領域のそれぞれにおいて等しく、変位量の絶対値は、X軸から離れるに従って大きくなる。さらに直交歪は、Y軸の正側の変位の方向とY軸の負側の変位の方向とが互いに反対である。
【0103】
第1基板211および第2基板213の立体歪みは、第1基板211および第2基板213の接合面に沿った方向以外の方向すなわち接合面に交差する方向への変位である。立体歪みには、第1基板211および第2基板213が全体的にまたは部分的に曲がることにより第1基板211および第2基板213の全体または一部に生じる湾曲が含まれる。ここで、「基板が曲がる」とは、第1基板211および第2基板213上の3点により特定された平面上に存在しない点を第1基板211および第2基板213の表面が含む形状に変化することを意味する。
【0104】
また、湾曲とは、基板の表面が曲面をなす歪みであり、例えば第1基板211および第2基板213の反りが含まれる。本実施例においては、反りは、重力の影響を排除した状態で第1基板211および第2基板213に残る歪みをいう。反りに重力の影響を加えた第1基板211および第2基板213の歪みを、撓みと呼ぶ。なお、第1基板211および第2基板213の反りには、第1基板211および第2基板213の全体が概ね一様な曲率で屈曲するグローバル反りと、第1基板211および第2基板213の一部で局所的な曲率の変化が生じるローカル反りとが含まれる。
【0105】
図21は、単結晶基板を接合して作製した積層基板230において、接合過程で生じる非線形ずれ量の分布を示す図である。図示の例では、接合面が(100)面となる2枚のSi単結晶基板を用い、図中の下部に示すように、第1基板211および第2基板213の結晶方位が互いに一致するように重ね合わせて接合した。また、接合部300においては、第1基板211および第2基板213の中心に接合の起点を形成してボンディングウェーブを発生させて接合した。
【0106】
図示のように、第1基板211および第2基板213相互の位置ずれの分布は、積層基板230の径方向の変化に加え、周方向にも変化している。このような位置ずれの分布は、図中の下段に示すように、第1基板211および第2基板213の接合面内における結晶方位によって剛性分布が異なるため、接合時に結晶方位ごとに生じる倍率の変化が異なり、この倍率の相違により非線形歪みが生じているものと推測される。すなわち、図示のような位置ずれの分布の非線形性は、(100)面に現れる結晶異方性に起因するものと推測される。
【0107】
図22は、(100)面を接合面とする2枚のSi単結晶基板により作製した他の積層基板230において、接合過程で生じる位置ずれの分布を測定した結果を示す図である。図示の例では、図中の下部に示すように、また、テーブル629を参照した決定部640の決定に従って、接合面における結晶方位が45°回転した第2基板213と第1基板211とが接合されている。
【0108】
図示のように、この積層基板230においては、積層基板230の略全体に個々の位置ずれ量が小さく、また、積層基板230全体で均一である。これは、図中の下部に示すように、(100)面を接合面とした場合のSi単結晶基板の剛性分布が90°周期であることから、接合面に平行な方向の結晶方位を45°回転させて接合したことにより、第1基板211および第2基板213間の剛性分布の相違が接合面内で均一化され、結果的に位置ずれも均一化されたものと推測される。
【0109】
上記のように、位置ずれ量の分布が抑制されるような接合面に平行な結晶方位の回転角度は、接合する第1基板211および第2基板213の接合面に現れる面方位により異なる。よって、決定装置600の格納部620に格納するテーブル629は、第1基板211および第2基板213の組成、結晶構造、接合面と平行な結晶方位の方向の組合せについて、解析、シミュレーション、実験等により、位置ずれが予め定めた閾値よりも小さくなる回転角度を調べて予め作成する。
【0110】
なお、上記の例では、接合面の剛性分布を最も効率よく相殺できる組合せとして、第1基板211および第2基板213の接合面と平行な結晶方位を接合面内において45°回転させて接合した。しかしながら、接合面の面方位と、接合面に形成するトランジスターのような素子の特性等の関係等の他の何らかの事情により、第2基板213の結晶方位を45°まで回転できない場合がある。
【0111】
そのような場合、決定部640は、第1基板211および第2基板213に生じる位置ずれが予め定めた閾値を超えない範囲で、45°に達しない、あるいは45°を超える回転角度を決定するようにしてもよい。換言すれば、
図5に示したテーブル629に、位置ずれを抑制するという観点からは最良ではないものの、位置ずれ量が許容範囲にある結晶方位の組合せも含めてもよい。なお、接合面を(100)面とした上記の例では、第1基板211および第2基板213の接合面に平行な結晶方位の回転角度を、例えば、22.5°以上、且つ、67.5°以下とした場合であっても、結晶方位を一致させた場合に比較すると、歪み量の有意な改善が見られた。
【0112】
また、上記の例では、格納部620に格納したテーブル629は、互いに同じ面方位を有するが回転角度が異なる基板の組合せを格納した。しかしながら、テーブル629の内容はこのような組合せに限られない。例えば、面方位および回転角度の両方が異なる組合せをテーブル629に格納してもよい。
【0113】
図23は、他の決定装置601のブロック図である。決定装置601は、受付部610、格納部620、算出部630、決定部640、および出力部650を有する。更に、格納部620は、第1格納部621、第2格納部622、第3格納部623、および第4格納部624を含む。また、決定部640は、第1決定部641、第2決定部642、第3決定部643、第4決定部644、および第5決定部645を含む。
【0114】
受付部610は、積層半導体装置を製造する過程で積層基板230を形成する第1基板211および第2基板213に関する情報を外部から受け付ける。ここで、受付部610が受け付ける情報は、第1基板211および第2基板213の結晶構造、すなわち、第1基板211および第2基板213の組成および結晶構造を反映した接合面における結晶方位を含む。
【0115】
また、受付部610が受け付ける情報は、第1基板211および第2基板213に形成されている回路領域の素子の種類、配置等を含んでもよい。更に、第1基板211および第2基板213のいずれかが、既に接合により形成された積層基板である場合は、その積層基板における各基板の厚さ、換言すれば、どの基板が薄化されているかを示す情報も受付部610に受け付けられる。
【0116】
受付部610による情報の受け付けは、ユーザによる入力の他、製造に関連する他の装置から転送されたものであってもよい。例えば、第1基板211および第2基板213に回路領域216等の構造物を形成したプロセスに係わった装置から、第1基板211および第2基板213の状態に関する情報を取得してもよい。また、そのような情報は、第1基板211および第2基板213自体の記憶領域に記憶されたものを読み出してもよいし、通信回線を通じて受信してもよい。
【0117】
また、受付部610による情報の受け付けは、接合装置100または決定装置601に設けられた測定装置、センサ等を用いて、設計対象となる第1基板211および第2基板213から検出した情報であってもよい。例えば、接合装置100におけるプリアライナ500、接合部300の顕微鏡324、334を用いて情報を検出してもよいし、外部の他の測定装置により検出した検出結果を、通信回線を通じて受信してもよい。
【0118】
本実施例において、第1格納部621は、第1基板211および第2基板213の接合面における結晶方位と、当該接合面における剛性分布とを関連つけた第1参照情報を格納している。このような第1参照情報を参照することにより、例えば、基板の結晶構造に関する情報に基づいて、第1基板211および第2基板213の剛性分布を推定し、当該基板を接合して形成した積層基板における非線形な歪みの分布を算出できる。第1参照情報の一例は
図5に示したテーブル629である。
【0119】
第2格納部622は、接合装置100の接合部300において第1基板211および第2基板213を接合する場合に、基板ホルダ221、223のいずれかが第1基板211または第2基板213を保持する保持力の大きさと、第1基板211および第2基板213を接合して形成された積層基板230において生じる位置ずれとを関連付けた第2参照情報を格納する。このような第2参照情報を参照することにより、
図27を参照して後述するように、接合により形成された積層基板230における位置ずれが、予め定めた閾値よりも小さくなることを条件として、第1基板211および第2基板213を接合する場合の保持力を決定できる。また、第1基板211および第2基板213に対する保持力の大きさが固定されている場合は、第1基板211および第2基板213の組合せで接合して形成される積層基板230が、予め定めた条件に適合するかどうかを判断できる。
【0120】
第3格納部623は、接合装置100の接合部300において第1基板211および第2基板213を接合するときに、第1基板211および第2基板213の間に作用する接合力の大きさと、第1基板211および第2基板213を積層して形成された積層基板230において生じる位置ずれの大きさとの関係を関連付けた第3参照情報を格納する。このような第3参照情報を参照することにより、
図27を参照して後述するように、積層基板230における位置ずれがより少なくなる接合条件として、第1基板211および第2基板213の接合力を決定できる。また、第1基板211および第2基板213の接合力の大きさが予め決まっている場合は、第1基板211および第2基板213の組合せで接合して形成される積層基板230が、予め定めた条件に適合するかどうかを判断できる。
【0121】
第4格納部624は、第1基板211および第2基板213の接合面における結晶構造に関する情報と、第1基板211および第2基板213の回路領域216に形成される素子の特性とを関連付けけた第4参照情報を格納する。このような第4参照情報を参照することにより、
図31を参照して後述するように、既存の第1基板211に対して接合して積層基板230を形成した場合に、決定装置601は、積層基板位置ずれがより抑制され、且つ、基板上の素子の特性が劣化しない基板213のレイアウトを決定できる。
【0122】
算出部630は、接合装置100の接合部300において接合する第1基板211および第2基板213の結晶構造に関する情報が受付部610に受け付けられた場合に、上記の第1参照情報を参照して、接合の結果形成された積層基板230において発生する位置ずれの分布を算出する。出力部650を通じて外部に出力された算出結果を参照することにより、過大な、または局在化した位置ずれが生じるような接合を未然に防止できる。
【0123】
第1決定部641は、第1基板211および第2基板213の各々の結晶構造、すなわち接合面における面方位や接合面に平行な結晶方位の方向に関する情報が受付部610に受け付けられた場合に、第1基板211および第2基板213の接合面に平行な結晶方位が互いになす回転角度を変更しつつ算出部630の算出結果を参照して、位置ずれが極小となる回転角度を決定する。決定した回転角度は、第1基板211および第2基板213の設計仕様として、出力部650を通じて外部に出力される。位置ずれが極小となる回転角度を決定することに代えて、位置ずれが予め定められた閾値よりも小さくなる回転角度を決定してもよい。また、第1決定部641は、第1基板211および第2基板213の一方の結晶構造に関する情報を取得した場合は、回転角度を考慮して、その一方の基板に対して位置ずれが閾値よりも小さくなる結晶構造を有する他の基板を決定してもよい。
【0124】
第2決定部642は、第1決定部641等が決定した組合せにおける第1基板211および第2基板213の各々について、接合面と平行な結晶方位の向きに関する情報を第1決定部641から取得する。また、第2決定部642は、第1基板211および第2基板213の各々の結晶構造に関する情報を取得した場合に、第2格納部622から第2参照情報を参照して、接合装置100の接合部300で接合された積層基板230における位置ずれがより小さくなるように、接合装置100における第1基板211または第2基板213の保持力を決定する。第2決定部642が決定した保持力は、第1基板211および第2基板213を接合する場合の条件として、出力部650を通じて接合部300に出力される。
【0125】
第3決定部643も、第1決定部641等が決定した組合せにおける第1基板211および第2基板213の各々について、接合面と平行な結晶方位の向きに関する情報を第1決定部641から取得する。また、第3決定部643は、第1基板211および第2基板213の各々の結晶構造に関する情報を取得した場合に、第3格納部623から第3参照情報を参照して、接合装置100の接合部300で接合された積層基板230における位置ずれがより小さくなるように、接合部300における第1基板211および第2基板213の接合力を決定する。第3決定部643が決定した接合力は、第1基板211および第2基板213を接合する場合の条件として、出力部650を通じて接合部300に出力される。
【0126】
第4決定部644は、第1基板211および第2基板213の一方、例えば第1基板211の結晶構造、すなわち、第1基板211の接合面における結晶方位と、第1基板211の回路領域216における素子の種類、配置等に関する情報が受付部610に受け付けられた場合に、第1格納部621を参照して、接合後に形成される積層基板230における位置ずれが極小になるように、第1基板211に接合する基板213の結晶構造を決定する。更に、第4決定部644は、基板213における接合面の結晶方位に応じて、第4格納部624の第4参照情報を参照して、基板213における回路領域216の素子の配置および形成方向等の回路仕様を決定する。決定された基板213の回路仕様は、出力部650を通じて外部に出力される。
【0127】
第5決定部645は、
図32から
図36を参照して後述するように、接合装置100の接合部300において接合される基板の一方が、既に複数の基板を積層して形成された積層基板230であった場合に、第1格納部621の第1参照情報を参照して、積層基板230に接合する他の基板の接合面における結晶構造を決定する。決定結果は、接合する積層基板230に対して組み合わせるべき第3基板215の組合せを特定する決定として決定出力部650を通じて外部に出力される。
【0128】
決定装置601において、出力部650は、算出部630および決定部640のいずれかの出力を、外部に出力する。この場合の出力形式は、図示していない表示装置に決定を表示してもよいし、ウエハプロセス装置800および接合装置100の少なくとも一方に、露光条件または接合条件として送信してもよい。
【0129】
また、出力部650から出力される算出部630および決定部640の算出結果、決定、または判断は、更に他のデータベース等に蓄積して、外部から参照できるようにしてもよい。これにより、各格納部に格納された参照情報を更新して、将来の決定の精度を向上させてもよい。また、ひとつの製造装置901において出力された決定を、他の製造装置901で利用してもよい。
【0130】
上記のような決定装置601は、次に説明するように、接合装置100において接合に供する基板の表面に現れる結晶構造に関する情報を受け付けて、接合する基板の設計仕様、接合する基板の組合せ、ウエハプロセス装置800における処理条件、みよび、接合装置100における接合条件の少なくともひとつを決定する。これにより、予め定められた条件を満たす積層基板230を確実に製造することができる。
【0131】
図24は、決定装置601の動作手順のひとつを示す流れ図である。
図24に示す手順により、積層基板230に生じる非線形な位置ずれを、第1基板211および第2基板213を接合することなく知ることができる。
【0132】
まず、受付部610は、積層基板230を形成することを予定された、あるいは、仮に組み合わされた第1基板211および第2基板213に関する情報を受け付ける(ステップS401)。ここで、受付部610が受け付ける情報は、第1基板211および第2基板213の結晶構造、すなわち、第1基板211および第2基板213の組成に関する情報、接合面の面方位に関する情報、接合面と平行な結晶方位の方向に関する情報等、第1基板211および第2結晶基板213それぞれの接合面に現れる結晶構造に関する情報を含む。
【0133】
受付部610が受け付けた第1基板211および第2基板213に関する情報に基づいて、算出部630は、第1格納部に格納された第1参照情報を参照して、第1基板211および第2基板213の接合面における剛性分布に関する情報を取得する(ステップS402)。更に、算出部630は、第1基板211および第2基板213を接合した場合に、剛性分布に応じて積層基板230に生じる位置ずれ量を算出する(ステップS403)。
【0134】
次に、第1決定部641は、算出部630により算出された位置ずれ量に基づいて、第1基板211および第2基板213の組合せを接合して作製された積層基板230が、予め定められた条件、すなわち、積層基板230における第1基板211および第2基板213の位置ずれが予め定めた閾値を超えていないかどうかを判断し、出力部650を通じて、判断結果を決定として出力する(ステップS404)。こうして、決定装置601は、第1基板211および第2基板213を接合する前に、接合した結果生じる位置ずれに基づいて判断結果を出力するので、ユーザは、接合により過大な位置ずれを含む積層基板230の形成を未然に防止できる。
【0135】
なお、算出部630が剛性分布の情報を用いているという点において、決定装置601は第1基板211および第2基板213の剛性分布に関する情報に基づいて、これらを互いに接合する組み合わせとして選択するかどうかを決定しているともいえる。これに代えて、受付部610が第1基板211および第2基板213の剛性分布に関する情報を直接取得して、当該剛性分布に関する情報に基づいて、これらを互いに接合する組み合わせとして選択するかどうかを決定してもよい。
【0136】
図25は、接合部300において接合過程にある第1基板211および第2基板213の一部を示す図である。図示の例では、第1基板211および第2基板213の接合過程において、下側の基板ホルダ221による第1基板211の保持が、部分的に解除されている。
【0137】
ボンディングウェーブが進行しつつある接合過程において、図中下側に位置する第1基板211の基板ホルダ221による保持を弱くして部分的に解除し、あるいは、基板ホルダ221に対する摩擦力を低下させると、当該領域においては、上側の基板213との間で作用する吸着力により、下側の第1基板211が基板ホルダ221から浮き上がって湾曲する。これにより、下側の第1基板211の設計仕様に対する倍率が変化するので、積層基板230において発生する位置ずれ量が変化する。よって、第1基板211および第2基板213の接合条件には、第1基板211の保持を解除するタイミングおよび解除領域の大きさ等も含まれる。
【0138】
図26は、第1基板211および第2基板213のある組合せについて、接合部300における保持力の変化とそれに対応した積層基板230における位置ずれ量との関係を例示するグラフである。すなわち、当該グラフは上記第2参照情報の一例である。図中には、第1基板211および第2基板213として、接合面と平行な面内の結晶方位が一致した組合せと、接合面に沿った結晶方位が45°回転した関係にある組合せとについて、上記保持力が変化した場合に対応する、積層基板230における位置ずれ量を示す。
【0139】
図示のように、接合装置100における第1基板211または第2基板213の保持力が変化した場合、積層基板230において生じる位置ずれ量が変化する。また、その変化の態様は、接合する第1基板211および第2基板213の接合面における結晶構造に応じて異なる。よって、第1基板211および第2基板213のある組合せについて、
図26に示すグラフの情報を参照することにより、その組合せを接合して形成された積層基板230における位置ずれ量がより小さくなる保持力の範囲A、Bを取得できる。尚、保持力は、100Kpa以下に設定される。
【0140】
図27は、上記のように位置ずれ量の抑制を目的とした保持力を、第2決定部642に決定させる場合の動作手順を示す流れ図である。第2決定部642は、まず、第1決定部641において決定された第1基板211および第2基板213の結晶構造の組合せ、すなわち、第1基板211および第2基板213の各々の接合面と平行な結晶方位の方向の回転量を示す情報を取得する(ステップS501)。
【0141】
次に、第2決定部642は、第2格納部622の第2参照情報を参照して(ステップS502)、接合部300における第1基板211または第2基板213に対する保持力を決定する(ステップS503)。次に、第2決定部642は、ステップS503で決定された保持力を、第1基板211および第2基板213を接合する場合に適用する接合条件として、出力部650を通じて接合部300の制御部150に向かって出力する(ステップS504)。
【0142】
図28は、第3決定部643の動作手順を示す流れ図である。上記のように、第1基板211および第2基板213を接合する場合に、第1基板211および第2基板213を互いに接合させる接合力の大きさを適切にすることにより、積層基板230における位置ずれを抑制できる。
【0143】
すなわち、接合装置100において活性化した第1基板211および第2基板213が相互に引き合う接合力を変化させた場合、上記したように、第1基板211および第2基板213のいずれかの保持力を変化させた場合と同様の効果が生じる。そこで、決定装置601の受付部610は、積層基板230の仕様として、プラズマを用いた活性化等により第1基板211および第2基板213に与える接合力の適切な大きさを出力してもよい。
【0144】
なお、上記の接合力は、例えば、接合部300において接合面を活性化された第1基板211および第2基板213相互の間に作用する分子間力である。このような接合力の大きさは、接合部300において、第1基板211および第2基板213の接合面を活性化する処理の条件を変更することにより調整できる。
【0145】
まず、受付部610が、第1基板211および第2基板213の結晶構造、すなわち、第1基板211および第2基板213の各々の接合面と平行な方向の結晶方位の向きを示す情報等を取得する(ステップS601)。次に、算出部630は、第3格納部623の第3参照情報を参照しつつ(ステップS602)、一方の第1基板211に対する仮の接合力を設定して、その接合力で第1基板211および第2基板213を接合した場合に得られる積層基板230に生じる第1基板211および第2基板213の位置ずれ量を算出部630に算出させる(ステップS603)。
【0146】
次に、第3決定部643は、ステップS603で算出された位置ずれが、予め設定した閾値を超えていないという条件が満たされているか否かを調べる(ステップS604)。その結果、算出された位置ずれ量が予め設定した条件を満たしていた場合、(ステップS604:YES)は、そのときに想定されていた接合力を、第1基板211および第2基板213を接合する場合に適用する接合力として、接合部300に出力する(ステップS605)。
【0147】
ステップS603において算出された位置ずれ量が予め定めた条件を満たしていない場合(ステップS604:NO)、第3決定部643は、異なる仮の接合力を設定して(ステップS605)から、ステップS603、604の処理を繰り返す。このようにして、決定装置601は、積層基板230において生じる位置ずれの量が極小になるような接合力を決定し、出力部650を通じて接合部300に向かって出力する。尚、基板の組み合わせを決定する際、基板間の接合力が基板ホルダ221の保持力よりも大きくなるような組み合せにすることが好ましい。
【0148】
図29は、決定装置601のまた他の動作手順を示す流れ図である。ここで、決定装置は、第1格納部621に格納された第1参照情報を参照して、第1基板211および第2基板213の接合面における、当該接合面と平行な結晶方位の方向の組合せを決定することにより、第1基板211および第2基板213の接合により形成された積層基板230における位置ずれ量を抑制する。
【0149】
まず、受付部610が、第1基板211および第2基板213の接合面における結晶構造、すなわち、第1基板211および第2基板213の各々の接合面と平行な結晶方位の方向を含む結晶構造に関する情報を取得する(ステップS701)。次に、算出部630は、第1格納部621の第1参照情報を参照しつつ(ステップS702)、第1基板211および第2基板213の組合せにおける結晶方位の回転角度に基づいて、第1基板211および第2基板213を積層した積層基板230における位置ずれ量を算出部630に算出させる(ステップS703)。
【0150】
図30は、決定装置600の第1格納部621に格納されたテーブル627の内容を例示する図である。テーブル627は、基板の接合面における結晶構造である面方位および結晶方位と、その接合面における剛性分布のパターンとの組合せが格納されている。すなわち、テーブル627も第1参照情報の一例になっている。算出部630は、上記のようなテーブル627を参照することにより、受付部610が受け付けた第1基板211および第2基板213の接合面の結晶構造に対応する剛性分布のパターンを取得する。更に、算出部630は、取得した剛性分布のパターンに関する情報に基づいて、第1基板211および第2基板213を接合して形成される積層基板230における位置ずれ量を算出する。
【0151】
再び
図29を参照すると、次に、決定部640は、算出部630が算出した位置ずれ量を予め定められた閾値と比較して、受付部610が受け付けた第1基板211および第2基板213の組合せの適否を判断する(ステップS704)。その結果、積層基板230における歪みが閾値を超えると判断された場合(ステップS704:NO)、決定部640は、受付部610が受け付けた第1基板211および第2基板213の仮の組合せに対して否定的な決定を下し、出力部650から出力させる(ステップS705)。
【0152】
また、推定結果が予め定めた閾値を超えなかった場合(ステップS704:YES)、決定部640は、第1基板211および第2基板213の組合せに対して肯定的な決定を下し、出力部650を通じて出力する(ステップS7059)。こうして、第1格納部621に格納された第1参照情報に基づいて、第1基板211および第2基板213の組み合わせが決定される。
【0153】
更に、決定装置600は、第1基板211および第2基板213について、受付部610が受け付けた接合面の結晶構造の組合せとは異なる組合せについて、上記ステップS702からステップS705の処理を試みてもよい。これにより、例えば、受付部610に受け付けられた第1基板211および第2基板213の接合面の面方位を固定したまま、接合面と平行な結晶方位を回転させた組合せについて決定することができる。
【0154】
図31は、決定装置601のまた他の動作手順を示す流れ図である。半導体基板に素子を形成する場合は、半導体基板の結晶構造の異方性により、素子の形成方向に応じて素子特性が変化する場合がある。このため、積層基板230における第1基板211および第2基板213の位置ずれを抑制することを目的として、接合面に現れる結晶構造の組合せを決定した場合、第1基板211および第2基板213に形成される素子の特性が低下する場合がある。
【0155】
そこで、決定装置601において、受付部610が、第1基板211および第2基板213の結晶構造、すなわち、第1基板211および第2基板213の各々の接合面における結晶構造に関する情報を取得した場合(ステップS801)、第4決定部644は、第4格納部624を参照して、受付部610が受け付けた第1基板211および第2基板213の接合面に現れる結晶構造に応じた素子特性に関する情報を取得する(ステップS802)。
【0156】
次に、第4決定部644は、第1基板211および第2基板213に形成される素子の各々が、予め定めた閾値を下廻らないという条件を満たすか否かを調べる(ステップS803)。その結果、素子特性が条件を満たしていた場合、(ステップS803:YES)は、受付部610が受け付けた回転角度を、第1基板211および第2基板213の仕様として決定して、ウエハプロセス装置800に出力する。
【0157】
また、素子特性が条件を満たさない場合は(ステップS803:NO)、条件が満たされる素子特性が得られなかった基板の仕様を変更して(ステップS804)、変更した仕様に基づいてステップS803に処理を戻す。これにより、最終的に、積層基板230における位置ずれ量の条件と、素子特性に関する条件とを両方満たす素子の形成方向が決定され、出力部650を通じてウエハプロセス装置800に向かって出力される(ステップS805)。
【0158】
これにより、結晶方位の回転により第1基板211および第2基板213の間の位置ずれが抑制され、且つ、各第1基板211および第2基板213において素子の特性が効率よく発揮される積層基板230を製造する条件が、決定装置601から出力される(ステップS806)。
【0159】
図32から
図36は、他の積層基板240の製造過程を示す図である。ここで製造する積層基板240は、(100)面を接続面とする3枚の第1基板211および第2基板213、215を接合して形成される。よって、この3層構造の積層基板240を設計する場合、決定装置600は、まず第1基板211および第2基板213の接合に関して、接合面における結晶構造に関する組合せを決定する。次いで、決定装置600は、積層基板230に対して接合する第3基板215の接合面の結晶構造を決定する。
【0160】
まず、
図32に示すように、第1基板211に対して基板213を接合する。この段階では、第1基板211の接合面と平行な結晶方位に対して、基板213の接合面と平行な結晶方位が45°回転した状態で、第1基板211の接合面に、基板213の接合面を接合する。基板211、213が表面にパターンを有する基板である場合は、基板213の結晶方位が基板211の結晶方位に対して45度回転した状態で回路パターンの配置が基板211の回路パターンの配置と対応するように、回路パターンが基板213に形成されている。これにより、既に説明した通り、また、
図33に示すように、結晶異方性に起因する位置ずれの分布が抑制された2層の積層基板230が形成される。
【0161】
その後、
図34に示すように、積層基板230における基板213を機械化学研磨により薄化する。薄化により現れた基板213の新しい面は、積層基板230と他の基板とを接合する場合の接合面となる。ここで、新しい接合面に対して接合する接合面を有する3層目の基板215を用意する。
【0162】
なお、基板213側が薄化された積層基板230において、基板213分の厚さは、第1基板211分の厚さと比較して著しく薄くなる。このため、
図35に示すように、薄化により基板213に新たに形成された接合面における剛性分布は、薄化されていない第1基板211の接合面の剛性分布が反映される。
【0163】
そこで、3層目の基板215を接合する場合は、基板215の接合面と平行な結晶方位が、直接に接合される基板213の結晶方位ではなく、1層目の第1基板211の接合面と平行な結晶方位に対して45°回転した状態で、基板213に対して接合する。これにより、3層を接合して形成された積層基板240における位置ずれが、依然として抑制された状態になる。こうして、
図36に示すように、結晶の異方性に起因する位置ずれが抑制された3層の積層基板240が製造される。尚、図示の例では、45°回転した基板213を薄化した例を示したが、45°回転した基板に積層された基板を薄化してもよい。
【0164】
このように、既に積層構造を有する積層基板230を他の基板と接合する場合は、積層基板230の接合面に位置する基板213の接合面の特性ではなく、複数の基板により形成された積層基板230の接合面に現れる結晶構造に合わせて、接合する基板215の接合面の結晶構造を決定する。
【0165】
こうして、3層以上の多層の積層基板240を製造する場合も、決定部640により接合面の構造を決定することにより、積層基板240に生じる位置ずれを抑制できる。換言すれば、3層以上の積層基板240を製造する場合、1層目の第1基板211と2層目の基板213とを、接合面と平行な結晶方位を回転させた状態で接合すると、3層目以上の基板215については、直下の基板を薄化した後、常に2層目の基板213の結晶方位と同じ結晶方位にした状態で接合すればよい。決定部640にこのような判断を設けることにより、2層目以上の基板213、215の設計およびプロセスを複雑化することなく接合する基板における接合面の結晶構造を決定して、積層基板240における位置ずれを抑制できる。
【0166】
また、製造装置901の決定装置601は、第1基板211および第2基板213を接合した上で第2基板213を薄化した積層基板230に対して、更に他の基板215を重ねて接合する場合に、接合する基板215の直下に位置する第2基板213の接合面の結晶構造ではなく、積層基板230における接合面について支配的な第1基板211の接合面の結晶構造に応じて、基板215の接合面の結晶構造を判断することが好ましい。
【0167】
図37は、上記のように3層以上の基板を接合する場合の、決定装置601の動作手順を示す流れ図である。決定装置601においては、まず、第1決定部641等により、積層基板230を形成する第1基板211および第2基板213の結晶構造の組合せを決定する(ステップS901)。次に、第3基板215を積層する前に、第1基板211および第2基板213のいずれが薄化されるかを特定した上で(ステップS902)、第5決定部645が第1格納部621から第1参照情報を参照して、積層基板230に対する第3基板215の接合面における結晶構造を決定する。決定される結晶構造は、例えば、接合面と平行な結晶方位の方向の回転量である。
【0168】
ここで、既に説明した通り、第5決定部645は、第3基板215に直接に接して接合される第2基板213の結晶構造ではなく、第1基板211の第2基板213に対する接合面の結晶構造に基づいて、第1格納部621の第1参照情報を参照して、第3基板215の接合面と平行な結晶方位の方向を決定する(S903)。こうして、基板215の接合面における結晶方位の適切な回転角度が決定される。
【0169】
なお、上記の例では、接合面と平行な面内で、第1基板211および第2基板213の一方の接合面に平行な結晶方位の方向に対して他方の基板の結晶方位の方向を回転させる例について説明した。しかしながら、第1基板211および第2基板213を接合する場合の接合面の結晶構造の組合せは、一方が他方に対して回転した結晶方位の組合せには限らない。例えば、接合面において異なる面方位を有する第1基板211および第2基板213を組み合わせて接合することにより、位置ずれを減少させることもできる。更に、結晶方位と面方位との双方が異なる基板を組み合わせて、位置ずれを減少させることができる場合もある。
【0170】
なお、決定装置600、601の各機能が、PCなどのコンピュータにプログラムをインストールすることにより実現されてもよい。プログラムはインターネット等での通信でダウンロードされてもよいし、コンピュータ可読媒体に記録されてコンピュータに読み込まれてもよい。
【0171】
図38から
図42は、撮像素子700の製造過程を示す断面図である。完成した撮像素子700の断面構造は
図42に示す。
【0172】
図38に示すように、撮像素子700は、画素基板710と回路基板720とを重ねて接合して製造される。ここで、画素基板710は、下地基板711の表面に形成された受光素子712と、下地基板711の上に接合された絶縁層713内に形成された配線層714とを有する。また、回路基板720は、下地基板721の表面に接合された絶縁層723および配線層724の他に種々の素子を有する。なお、画素基板710の下地基板711の厚さと、回路基板720の下地基板721の厚さは互いに略等しい。
【0173】
撮像素子700を製造する場合は、まず、
図39に示すように、画素基板710および回路基板720は、画素基板710を反転して、絶縁層713、723同士が向かい合うように接合され、積層基板730を形成する。これにより、受光素子712および配線層714を含む画素基板710上の回路と、配線層724を含む回路基板720の回路とが結合される。
【0174】
上記した通り、画素基板710および回路基板720の各々の下地基板711、721の厚さは互いに略等しい。このため、上記の接合の過程で下地基板711、721に生じた歪みは、積層基板730においては、画素基板710および回路基板720の両方に略等しく分配される。
【0175】
例えば、接合の過程で画素基板710を解放してボンディングウェーブを発生させる接合方法で回路基板720に接合した場合、画素基板710側に設計値に対する倍率が増加する+50(相対値)の歪みが発生し、回路基板720側に設計値に対する倍率が減少する-50(相対値)の歪みが発生する。この段階の積層基板730においては、この歪みの割合が保持される。
【0176】
次に、
図40に示すように、回路基板720の下地基板721を機械化学研磨等の方法で薄化する。これにより、下地基板711、721の厚さは著しく相違した状態になる。このため、薄化された回路基板720の下地基板721の強度が低下し、画素基板710の下地基板711の応力が積層基板730全体に対して支配的になる。その結果、図中に数値(相対値)で示すように、画素基板710の応力は解放されて歪みは(0)になり、回路基板720に略すべての(-100)の歪みが集中する。
【0177】
次に、
図41に示すように、回路基板720の下地基板721の図中下面に、支持基板740を接合する。支持基板740は、下地基板711および薄化される前の下地基板721と略同じ厚さを有する。
【0178】
ここで、支持基板740には素子および配線等の構造物が形成されていないので、回路基板720に対する位置合わせ精度を考慮することなく、歪みが生じない接合方法で下地基板721の裏面に接合できる。そこで、支持基板740の接合対象となる回路基板720の下地基板721の接合面における結晶構造を調べ、下地基板721に接合した場合に新たな歪みが生じない支持基板740の接合面の結晶構造を、決定装置600により決定する。
【0179】
これにより、支持基板740の接合による歪みが生じることなく、下地基板721に集中している歪みを固定できる。換言すれば、回路基板720に新たな歪みが生じていないので、画素基板710の歪みが(0)の状態が維持される。
【0180】
次に、
図42に示すように、画素基板710の下地基板711を機械化学研磨等により薄化する。これにより、下地基板711を透過した入射光が受光素子712に届くようになり、裏面照射型の撮像素子700が形成される。なお、撮像素子700においては、画素基板710側で図中上面になる、薄化された下地基板711の裏面に、カラーフィルタ、マイクロレンズ等の光学素子等が更に積層される場合がある。
【0181】
上記のような撮像素子700においては、
図40に示した段階以降、画素基板710の歪みが低い状態が維持され、撮像素子700として完成した状態でも歪みが低い状態が維持される。これにより、受光素子712の配置が歪むことがなく、マイクロレンズ等の光学素子を、受光素子712の各々に精度よく位置合わせして形成できる。
【0182】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0183】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0184】
100 接合装置、110 筐体、120、130 基板カセット、140 搬送部、150 制御部、211、213、215 基板、212 スクライブライン、214 ノッチ、216 回路領域、218 アライメントマーク、221、223 基板ホルダ、225 吸着面、230、240 積層基板、300 接合部、310 枠体、312 底板、316 天板、322 上ステージ、324、334 顕微鏡、326、336 活性化装置、331 X方向駆動部、332 下ステージ、333 Y方向駆動部、338 昇降駆動部、339 回転駆動部、400 ホルダストッカ、500 プリアライナ、600、601 決定装置、610 受付部、620 格納部、621 第1格納部、622 第2格納部、623 第3格納部、624 第4格納部、627、629 テーブル、630 算出部、640 決定部、641 第1決定部、642 第2決定部、643 第3決定部、644 第4決定部、645 第5決定部、650 出力部、700 撮像素子、710 画素基板、711、721 下地基板、712 受光素子、713、723 絶縁層、714、724 配線層、720 回路基板、730 積層基板、740 支持基板、800 ウエハプロセス装置、810 コータ、820 露光装置、830 成膜装置、840 制御部、901 製造装置