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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/28 20210101AFI20220928BHJP
   G02B 7/34 20210101ALI20220928BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20220928BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20220928BHJP
   H04N 5/232 20060101ALI20220928BHJP
   H04N 5/225 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
G02B7/28 N
G02B7/34
G03B13/36
G03B5/00 J
H04N5/232 120
H04N5/225 300
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020531397
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 JP2019028559
(87)【国際公開番号】W WO2020017654
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2018137266
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】河津 鉄人
(72)【発明者】
【氏名】喜多 祐起
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194591(JP,A)
【文献】特開2015-200847(JP,A)
【文献】特開2012-226213(JP,A)
【文献】特開2020-008739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/28 - 7/40
G03B 5/00 - 5/08
G03B 13/00 - 13/28
H04N 5/222 - 5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系の第1の領域を通過した第1の光束を光電変換して蓄積した電荷に基づく第1信号を出力する第1画素と、前記光学系の第2の領域を通過した第2の光束を光電変換して蓄積した電荷に基づく第2信号を出力する第2画素とを有する撮像部と、
前記撮像部を移動させ移動部と、
前記第1画素と前記第2画素との電荷蓄積時間における前記移動部により移動された前記撮像部の位置情報に基づいて算出される前記光学系の光軸からの前記第1画素および前記第2画素の距離情報と、前記撮像部から出力される前記第1信号および前記第2信号とに基づいて、前記光学系の合焦位置を検出する検出部と、
を備える撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記検出部は、前記第1信号と前記第2信号とに基づいて、前記第1の光束による像と前記第2の光束による像との像ずれ量を算出し、
前記第1画素と前記第2画素との電荷蓄積時間における前記撮像部の位置情報に基づいて前記像ずれ量をデフォーカス量に変換する係数を決定し、前記
決定した前記係数に基づいて前記像ずれ量をデフォーカス量に変換する撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記検出部は前記距離情報に基づいて前記係数を決定する撮像装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の撮像装置において、
前記撮像部の位置と前記係数との対応関係に関する情報を記憶する記憶部を有し、
前記検出部は、前記位置情報と、前記記憶部に記憶された前記対応関係に関する情報とに基づいて、前記係数を決定する撮像装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記撮像部は、前記第1画素および前記第2画素を第1の方向に複数有し、
前記位置情報は、前記第1の方向の前記撮像部の位置に関する情報と、前記第1の方向とは異なる第2の方向の前記撮像部の位置に関する情報とを含む撮像装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記位置情報は、前記光学系の光軸に交差する面における前記撮像部の回転角に関する情報を含む撮像装置。
【請求項7】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記撮像部は、前記第1画素および前記第2画素をそれぞれ有する第1領域および第2領域を有し、
第1の期間において前記第1領域内の前記第1画素および前記第2画素にそれぞれ入射した光を光電変換して電荷を蓄積し、前記第1の期間とは異なる第2の期間において前記第2領域内の前記第1画素および前記第2画素にそれぞれ入射した光を光電変換して電荷を蓄積し、
前記検出部は、前記第1領域の画素に蓄積された電荷に基づく前記第1信号および前記第2信号に基づいて合焦位置を検出する場合と、前記第2領域の画素に蓄積された電荷に基づく前記第1信号および前記第2信号に基づいて合焦位置を検出する場合とで、互いに異なる前記位置情報を選択して焦点検出を行う撮像装置。
【請求項8】
請求項に記載の撮像装置において、
前記検出部は、前記第1領域の前記第1画素および前記第2画素の前記第1信号および前記第2信号に基づいて合焦位置を検出する場合は、前記第1の期間に蓄積された電荷に基づく前記第1領域の前記第1画素および前記第2画素の前記第1信号および前記第2信号と、前記第1の期間内に取得された前記位置情報とに基づいて、前記光学系の合焦位置を検出し、
前記検出部は、前記第2領域の前記第1画素および前記第2画素の前記第1信号および前記第2信号に基づいて合焦位置を検出する場合は、前記第2の期間に蓄積された電荷に基づく前記第2領域の前記第1画素および前記第2画素の前記第1信号および前記第2信号と、前記第2の期間内に取得された前記位置情報とに基づいて、前記光学系の焦点検出を行う撮像装置。
【請求項9】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記撮像装置の振れに関する振れ検出信号を入力する振れ信号入力部を有し、
前記移動制御部は、前記振れ信号入力部から入力された前記振れ検出信号に基づいて前記撮像部の位置を制御し、前記撮像装置の振れによる前記光学系による被写体像の像振れを補正する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子または防振用レンズを移動して手ブレを補正する防振部を有し、撮像素子または防振用レンズの移動量を用いて、焦点検出用画素からの信号に基づいて算出されたデフォーカス量を補正するカメラが知られている(特許文献1)。従来から焦点検出精度向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2015-200847号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様によると、撮像装置は、光学系の第1の領域を通過した第1の光束を光電変換して蓄積した電荷に基づく第1信号を出力する第1画素と、前記光学系の第2の領域を通過した第2の光束を光電変換して蓄積した電荷に基づく第2信号を出力する第2画素とを有する撮像部と、前記撮像部を移動させる移動制御部と、前記第1画素と前記第2画素との電荷蓄積時間における前記移動部により移動された前記撮像部の位置情報に基づいて算出される前記光学系の光軸からの前記第1画素および前記第2画素の距離情報と、前記撮像部から出力される前記第1信号および前記第2信号とに基づいて、前記光学系の合焦位置を検出する検出部と、備える
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】第1の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る撮像素子の撮像面の焦点検出領域を示す図である。
図3】第1の実施の形態に係る撮像素子の焦点検出領域内の画素の配置例を示す図である。
図4】第1の実施の形態に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。
図5】第1の実施の形態に係る撮像装置による像振れ補正を説明するための図である。
図6】第1の実施の形態に係る撮像装置における処理の一例を示す図である。
図7】第1の実施の形態に係る撮像素子内の小領域を示す図である。
図8】変形例に係る撮像素子の焦点検出用画素の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る撮像装置の一例であるカメラ1の構成例を示す図である。カメラ1は、カメラボディ2と交換レンズ3とから構成される。なお、本明細書では、カメラボディ2と交換レンズ3を有するカメラ1をカメラシステムとも呼ぶ。
【0007】
カメラボディ2には、交換レンズ3が取り付けられるボディ側マウント部201が設けられる。交換レンズ3には、カメラボディ2に取り付けられるレンズ側マウント部301が設けられる。交換レンズ3は、レンズ側マウント部301及びボディ側マウント部201により、カメラボディ2に着脱可能に装着される。レンズ側マウント部301及びボディ側マウント部201には、それぞれ通信端子群が備えられたレンズ側接続部302及びボディ側接続部202が設けられる。レンズ側接続部302及びボディ側接続部202には、それぞれクロック信号用の端子やデータ信号用の端子、電源供給用の端子等の複数の端子が設けられている。
【0008】
カメラボディ2に交換レンズ3が装着されると、ボディ側接続部202に設けられた複数の端子と、対応するレンズ側接続部302に設けられた複数の端子とが、それぞれ電気的に接続される。これにより、カメラボディ2から交換レンズ3への電力供給や、カメラボディ2と交換レンズ3の間の通信が可能となる。
【0009】
被写体からの光は、図1のZ軸プラス方向に向かって入射する。また、図1の座標軸に示すように、Z軸に直交する紙面手前方向をX軸プラス方向、Z軸及びX軸に直交する紙面下方向をY軸プラス方向とする。以降の図においては、図1の座標軸を基準として、それぞれの図の向きが分かるように座標軸を表示する場合もある。
【0010】
交換レンズ3は、撮影光学系(結像光学系)31と、レンズ制御部32と、レンズメモリ33とを備える。撮影光学系31は、焦点距離を変更するズームレンズ(変倍レンズ)31aやフォーカスレンズ(焦点調節レンズ)31bを含む複数のレンズと絞り31cとを含み、カメラボディ2の撮像素子22の撮像面22a上に被写体像を形成する。なお、撮像素子22の撮像面22aは、後述する光電変換部が配置される面、又はマイクロレンズが配置される面である。
【0011】
レンズ制御部32は、CPUやFPGA、ASIC等のプロセッサ、及びROMやRAM等のメモリによって構成され、制御プログラムに基づいて交換レンズ3の各部を制御する。レンズ制御部32は、カメラボディ2のボディ制御部210から出力される信号に基づき、ズームレンズ31a、フォーカスレンズ31b、及び絞り31cの駆動を制御する。レンズ制御部32は、ボディ制御部210からフォーカスレンズ31bの移動方向や移動量に関する信号が入力されると、その信号に基づいてフォーカスレンズ31bを光軸OA1に沿って移動させて撮影光学系31の焦点位置を調節する。また、レンズ制御部32は、カメラボディ2のボディ制御部210から出力される信号に基づき、ズームレンズ31aの位置や絞り31cの開口径を制御する。
【0012】
レンズメモリ33は、不揮発性の記憶媒体等により構成される。レンズメモリ33には、交換レンズ3に関連する情報がレンズ情報として記憶(記録)される。レンズ情報には、撮影光学系31の光学特性(射出瞳距離やF値)に関するデータが含まれる。射出瞳距離とは、撮影光学系31の射出瞳と撮影光学系31の結像面との間の距離である。なお、レンズ情報は、レンズ制御部32の内部のメモリに記憶するようにしてもよい。
【0013】
レンズメモリ33へのデータの書き込みや、レンズメモリ33からのデータの読み出しは、レンズ制御部32によって制御される。交換レンズ3がカメラボディ2に装着された後、レンズ制御部32は、レンズ側接続部302及びボディ側接続部202の通信端子を介して、レンズ情報をボディ制御部210に送信する。また、レンズ制御部32は、ズームレンズ31aの位置に関する情報や、フォーカスレンズ31bの位置に関する情報や、絞り31cの絞り値(F値)の情報などをボディ制御部210に送信する。
【0014】
次に、カメラボディ2の構成について、より詳しく説明する。カメラボディ2は、撮像素子22と、ボディメモリ23と、表示部24と、操作部25と、振れ検出部26と、位置検出部27と、防振制御部28と、ボディ制御部210とを備える。カメラボディ2は他に電源やメモリカード等を備えるが説明は省略する。
【0015】
撮像素子22は、CMOSイメージセンサ等の固体撮像素子である。撮像素子22は、CCDイメージセンサであってもよい。撮像素子22は、撮影光学系31を通過した光束を受光して、被写体像を撮像する。撮像素子22には、光電変換部を有する複数の画素が二次元状(例えば行方向及び列方向、X方向及びY方向)に配置される。光電変換部は、例えばフォトダイオード(PD)によって構成される。撮像素子22は、受光した光を光電変換して信号を生成し、生成した信号をボディ制御部210に出力する。
【0016】
撮像素子22は、後に説明するように、画像生成に用いる信号(撮像画像用信号)を出力する複数の撮像用画素と、焦点検出に用いる信号(焦点検出用信号)を出力する複数の焦点検出用画素(AF画素)とを有する。なお、撮像素子22は、画素内に複数の光電変換部を有し、撮像画像用信号と焦点検出用信号とを出力する画素を有しても構わない。
また、撮像素子22は、振れ補正(ブレ補正)のために防振制御部28によって駆動移動され、光軸OA1と垂直な面(XY平面)に沿って移動する。
【0017】
ボディメモリ23は、不揮発性の記憶媒体等により構成される。ボディメモリ23には、画像データや制御プログラム等が記録される。ボディメモリ23へのデータの書き込みや、ボディメモリ23からのデータの読み出しは、ボディ制御部210によって制御される。表示部24は、画像データに基づく画像、AF枠などの焦点検出領域(AFエリア)を示す画像、シャッター速度や絞り値(F値)等の撮影に関する情報、及びメニュー画面等を表示する。操作部25は、レリーズボタン、電源スイッチ、各種モードを切り替えるためのスイッチなどの各種設定スイッチ等を含み、それぞれの操作に応じた操作信号をボディ制御部210へ出力する。
【0018】
振れ検出部26は、角速度センサ(ジャイロセンサ)あるいは加速度センサ等によって構成され、カメラ1を持つユーザの手振れによってカメラ1に加えられた振れ(ブレ)を検出する。振れ検出部26は、カメラ1の振れ量に応じた信号(振れ信号)を生成し、生成した振れ信号を防振制御部28に出力する。
【0019】
位置検出部27は、光センサあるいは磁気センサ等によって構成され、光軸OA1と垂直な面(XY平面)に沿って移動する撮像素子22の位置を検出する。位置検出部27は、撮像素子22の位置を所定の周期で検出し、撮像素子22の位置に関する情報(位置情報)を繰り返し生成する。位置検出部27は、生成した位置情報を防振制御部28に順次出力する。この位置情報には、図1に示すX軸方向における撮像素子22の位置を示す情報や、Y軸方向における撮像素子22の位置を示す情報や、撮像素子22の光軸OA1を中心とした回転(傾き)を示す情報が含まれる。撮像素子22の傾きを示す情報は、撮影光学系31の光軸OA1に垂直な面(XY平面)における撮像素子22の回転角度を示す情報である。
【0020】
防振制御部28は、振れ検出部26から出力された振れ信号に基づき、カメラ1の振れに起因する被写体像の像振れを打ち消すように振れ補正を行う。防振制御部28は、振れ信号を用いてカメラ1の振れ量を算出し、算出したカメラ1の振れ量に基づいて、この振れ量による像振れを打ち消すための撮像素子22の移動量を算出(決定)する。撮像素子22の移動量は、現在の撮像素子22の位置から像振れを打ち消すために撮像素子22を移動させるための、X軸方向の移動量、Y軸方向の移動量、および光軸OA1を中心とした回転移動量が含まれる。防振制御部28は、算出した移動量に従って撮像素子22の駆動制御を行い、撮像素子22の位置を調整する。防振制御部28は、カメラ1の振れ量に応じて、撮影光学系31の光軸OA1に垂直な面において、撮像素子22を上下左右方向への移動(シフト)および回転(ロール)させる。このように、カメラ1では、カメラ1の振れ量に応じて撮像素子22の位置が調整されることで、被写体像の像振れが補正される。
【0021】
また、防振制御部28は、位置検出部27から出力される撮像素子22の位置情報を、防振制御部28の内部のメモリに記憶させる。防振制御部28の内部のメモリには、周期的に検出された複数の位置情報が記憶される。防振制御部28は、内部のメモリに記憶された複数の位置情報を、所定の周期で読み出してボディ制御部210に出力する。
以上のように、防振制御部28は、振れ検出部26からの振れ信号、及び位置検出部27からの位置情報を共に用いて撮像素子22の移動量を決定し、決定した撮像素子22の移動量に基づいて撮像素子22の位置を制御する。
【0022】
ボディ制御部210は、CPUやFPGA、ASIC等のプロセッサ、及びROMやRAM等のメモリによって構成され、制御プログラムに基づいてカメラ1の各部を制御する。ボディ制御部210は、撮像制御部211と、画像データ生成部212と、領域選択部213と、焦点検出部214とを有する。
【0023】
撮像制御部211は、撮像素子22の蓄積動作(撮像)を制御する信号を撮像素子22に供給して、撮像素子22の蓄積動作を制御する。撮像制御部211は、表示部24に被写体のスルー画像(ライブビュー画像)を表示する場合や、動画撮影を行う場合に、撮像素子22に所定周期のフレーム間隔で繰り返し被写体像を撮像させて、撮像画像用信号や焦点検出用信号を出力させる。撮像制御部211は、撮像素子22の画素を行単位で列方向に順次選択して、選択した画素から信号を読み出す、いわゆるローリングシャッタ方式の読み出し制御を行う。撮像素子22では、各画素の光電変換部に入射した光を光電変換して生成された電荷を蓄積する動作(蓄積動作)と蓄積した電荷に基づく信号を画素から読み出す動作(読み出し動作)とが、最上行から最下行に向かって1行または複数行毎に行われる。各行の蓄積動作の開始および終了時刻は、列方向では時間的にずれるがオーバーラップして行われる。蓄積動作に引き続いて行われる各行の読み出し動作の開始および終了時刻も、列方向では時間的にずれるがオーバーラップして行われる。
【0024】
画像データ生成部212は、撮像素子22から出力される撮像画像用信号に各種の画像処理を行って画像データを生成する。画像処理には、階調変換処理や色補間処理等の公知の画像処理が含まれる。生成された画像データは不図示のメモリカードに記録される。
【0025】
図2は、第1の実施の形態に係る撮像素子22の撮像面22aに設定された焦点検出領域100を示す図である。焦点検出領域100には複数の焦点検出用画素が配置されている。図2に示すように、撮像素子22の撮像面22aには、行方向(X方向)、列方向(Y方向)にマトリクス状に配置された複数の焦点検出領域100が設けられている。各焦点検出領域100は、カメラ1やユーザが選択可能な複数のAFエリアに対応する。図2では、複数の焦点検出領域100を間をあけて離散的に配置しているが、必ずしも全ての焦点検出領域100を離散的に配置する必要はなく、例えば行方向に配置する焦点検出領域は連続しても良いし、全ての焦点検出領域を間をあけることなく配置しても良い。
【0026】
領域選択部213は、図2に示した撮像素子22の撮像面22aに設定された複数の焦点検出領域100のうち、少なくとも一つの焦点検出領域100を選択(設定)する。各焦点検出領域100の領域は、表示部24に表示されたAF枠(範囲)に対応する。領域選択部213は、表示部24に表示された複数のAF枠のうちユーザが操作部25の操作によって選択したAF枠内の領域に対応する焦点検出領域100、又はカメラ1が自動的に選択した焦点検出領域100を、焦点検出を行う焦点検出領域として決定する。後述するが、領域選択部213により選択された焦点検出領域100内の複数の焦点検出用画素の焦点検出用信号を用いて、デフォーカス量の算出が行われる。
撮影光学系31が形成する被写体像の位置と、カメラボディ2の撮像素子22の撮像面22aの位置とのズレがデフォーカス量に対応する。
【0027】
なお、図2に示すように、複数の焦点検出領域100は、2次元方向(行方向及び列方向)に分布して配置されており、各焦点検出領域100の撮像素子22の撮像面22aの中心からの距離は異なっている。すなわち、撮像素子22の中心が光軸OA1上にあるときに、複数の焦点検出領域100は、種々の像高の位置に設けられている。撮像素子22の移動前(像振れ補正前)において、撮像素子22の中央位置の焦点検出領域100aは、撮影光学系31の光軸OA1上に位置し、その像高が略ゼロである。焦点検出領域100は、撮影光学系31の光軸OA1からの距離が長くなるに従って、その像高Hが高く(大きく)なる。図2では、像高Hが高い焦点検出領域100の例として、中央の焦点検出領域100aと同じ行の左端及び右端に位置する焦点検出領域に、符号100b、100cを付している。
【0028】
また、焦点検出領域100は、所定の面積を有するので、厳密に言えば、一つの焦点検出領域100内の画素位置毎に像高は異なるが、本実施の形態にあっては、同一の焦点検出領域100に配置される複数の画素は、その像高Hが一定であるとして扱っており、焦点検出領域100の中心位置の像高Hの値を、その焦点検出領域100全体の像高値としている。中央の焦点検出領域100aでは、その領域全体が像高ゼロであり、上記の焦点検出領域100b、100cでは、その領域全体が所定の像高Hである。以下、図3及び図4を用いて、撮像素子22の焦点検出領域100に配置される画素について説明する。
【0029】
図3は、第1の実施の形態に係る撮像素子22のうちの、1つの焦点検出領域100内の画素の配置例を示す図である。撮像素子22の焦点検出領域100には、複数の撮像用画素13と第1の焦点検出用画素11と第2の焦点検出用画素12とが配置される。
【0030】
各撮像用画素13には、R(赤)、G(緑)、B(青)の異なる分光特性を有する3つのカラーフィルタ(色フィルタ)51のいずれか1つが設けられる。Rのカラーフィルタ51は主に赤色の波長域の光を透過し、Gのカラーフィルタ51は主に緑色の波長域の光を透過し、Bのカラーフィルタ51は主に青色の波長域の光を透過する。画素は、配置されたカラーフィルタ51によって異なる分光特性を有する。これにより、撮像用画素13には、赤(R)の分光特性を有する画素13r(以下、R画素と称する)と、緑(G)の分光特性を有する画素13g(以下、G画素と称する)と、青(B)の分光特性を有す画素13b(以下、B画素と称する)とがある。R画素とG画素とB画素とは、ベイヤー配列に従って配置されている。
【0031】
第1の焦点検出用画素11及び第2の焦点検出用画素12は、上述のようにベイヤー配列されたR、G、Bの撮像用画素13の一部を置換して配置される。第1の焦点検出用画素11及び第2の焦点検出用画素12には、カラーフィルタ51及び遮光膜(遮光部)43が設けられる。第1の焦点検出用画素11及び第2の焦点検出用画素12には、カラーフィルタ51として、Gのカラーフィルタが配置される。第1の焦点検出用画素11と第2の焦点検出用画素12とは、その遮光部43の位置が異なる。図3に示す例では、第1の焦点検出用画素11には画素受光部の左側に遮光部を配置し、第2の焦点検出用画素12には画素受光部の右側に遮光部を配置している。なお、第1の焦点検出用画素11及び第2の焦点検出用画素12には、カラーフィルタ51として、白(W)の分光特性を有するカラーフィルタを配置してもよいし、B(青)あるいはR(赤)のカラーフィルタを配置してもよい。あるいは、第1の焦点検出用画素11及び第2の焦点検出用画素12には、遮光膜43だけを設け、カラーフィルタ51を配置しなくてもよい。
【0032】
撮像素子22は、図3に示すように、R画素13rとG画素13gとが行方向(左右方向)に交互に配置される第1の画素群行401と、G画素13gとB画素13bとが行方向に交互に配置される第2の画素群行402とを有する。さらに、撮像素子22は、G画素13g、第1の焦点検出用画素11、及び第2の焦点検出用画素12が行方向に配置される第3の画素群行403を有する。なお、撮像素子22に配置される画素の数および配置は、図示した例に限られない。
図3に示すように、1つの焦点検出領域100内には、第1の画素群行401、第2の画素群行402、第1の画素群行401、第3の画素群行403の4行が列方向にセットで配列され、この第1の画素群行401~第3の画素群行403の4行セットが列方向に繰り返し並んで配置される。
【0033】
なお、列方向に繰り返すセット行数は4行に限るものではない。セット行数に少なくとも1行の第3の画素群行403を含んでいればよく、例えば第1の画素群行401、第2の画素群行402、第1の画素群行401、第2の画素群行402、第1の画素群行401、第2の画素群行402、第1の画素群行401、および第3の画素群行403の8行、すなわち4行の第1の画素群行401と3行の第2の画素群行402と1行の第3の画素群行403とを列方向にセットで配列しても構わない。あるいは6行の第1の画素群行401と5行の第2の画素群行402と1行の第3の画素群行403との12行セットを列方向に繰り返すように配置しても構わない。
【0034】
また、図3に示す例では、2種類の焦点検出用画素を配置する焦点検出用画素行(第3の画素群行403)としてG画素13g、第1の焦点検出用画素11、及び第2の焦点検出用画素12を1行に配置しているが、これに限らない。例えばG画素13gと第1の焦点検出用画素11とを1行に配置し、G画素13gと第2の焦点検出用画素12とを異なる1行に配置しても構わない。つまり画素受光部の左側に遮光部を備える第1の焦点検出用画素11を配置する行と、画素受光部の右側に遮光部を備える第2の焦点検出用画素12を配置する行と、を異なる行としても良い。その場合、第1の焦点検出用画素11を配置する行を1行含む行セットと、第2の焦点検出用画素12を配置する行を1行含む行セットとを列方向に配列すると良い。具体的には、6行の第1の画素群行401と5行の第2の画素群行402と1行の第1の焦点検出用画素11を配置する行との12行セットおよび6行の第1の画素群行401と5行の第2の画素群行402と1行の第2の焦点検出用画素12を配置する行との12行セットの合計24行セットを列方向に繰り返すように配置しても構わない。
【0035】
図4は、第1の実施の形態に係る撮像素子22で生成される信号を説明するための図である。図4は、撮像素子22に設けられた画素のうち、1つの第1の焦点検出用画素11(図4(a))と、1つの第2の焦点検出用画素12(図4(b))と、1つの撮像用画素13(図4(c))とを示している。
【0036】
撮像用画素13は、マイクロレンズ44と、カラーフィルタ51と、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を透過(通過)した光束を受光する光電変換部(受光部、PD)42とを有する。第1及び第2の焦点検出用画素11、12は共に、マイクロレンズ44と、カラーフィルタ51と、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を透過した光束の一部を遮光する遮光部43と、マイクロレンズ44及びカラーフィルタ51を透過し、遮光部43で遮光されなかった光束が入射する光電変換部(受光部、PD)42とを有する。
【0037】
撮影光学系31の射出瞳を略2等分した一方の第1の瞳領域を通過した光束を第1の光束61とし実線矢印で示し、略2等分した他方の第2領域を通過した光束を第2の光束62とし、破線矢印で示す。
図4(a)において、第1の焦点検出用画素11には、第1及び第2の光束61、62のうちの第2の光束62を遮光する左側遮光部43Lが設けられる。左側遮光部43Lは、カラーフィルタ51と光電変換部42との間に位置し、光電変換部42の上に設けられている。図4(a)に示すように、第1の焦点検出用画素11は左側遮光部43Lを設けているため、光電変換部42には、撮影光学系31の射出瞳のうちの第1の瞳領域を通過した第1の光束61のみが入射する。第1の焦点検出用画素11の光電変換部42は、第1の光束61を受光する。第1の焦点検出用画素11は、光電変換部42において第1の光束61を光電変換して電荷を蓄積し、蓄積した電荷量に基づく第1の焦点検出用信号Sig1を出力する。なお左側遮光部43Lは光電変換部42の上ではなく、カラーフィルタ51と光電変換部42の中間の位置に設けてもよい。
【0038】
図4(b)において、第2の焦点検出用画素12には、第1の光束61を遮光する右側遮光部43Rが設けられる。右側遮光部43Rは、カラーフィルタ51と光電変換部42との間に位置し、光電変換部42の上に設けられている。図4(b)に示すように、第1の焦点検出用画素11は右側遮光部43Rを設けているため、光電変換部42には、撮影光学系31の射出瞳のうちの第2の瞳領域を通過した第2の光束62のみが入射する。第2の焦点検出用画素12の光電変換部42は、第2の光束62を受光する。第2の焦点検出用画素12は、光電変換部42において第2の光束62を光電変換して電荷を蓄積し、蓄積した電荷量に基づく第2の焦点検出用信号Sig2を出力する。なお右側遮光部43Rは光電変換部42の上ではなく、カラーフィルタ51と光電変換部42の中間の位置に設けてもよい。
【0039】
図4(c)に示すように、遮光部を備えていない撮像用画素13の光電変換部42は、第1及び第2の光束61、62をそれぞれ受光する。上述したように、撮像用画素13のカラーフィルタ51は、R(赤)、G(緑)、B(青)いずれか1つが設けられる。撮像用画素13は、第1及び第2の光束61、62を光電変換して電荷を蓄積し、蓄積した電荷量に基づく撮像画像用信号を出力する。
【0040】
図1に戻り、焦点検出部214は、撮影光学系31の自動焦点調節(AF)に必要な処理を行う。焦点検出部214は、デフォーカス量を算出する処理と、デフォーカス量に基づいて、撮影光学系31を通過した被写体光束を撮像面22aに結像させるためにフォーカスレンズ31bを移動する移動量(駆動量)を計算する処理とを行う。焦点検出部214は、領域選択部213により選択された焦点検出領域100内の第1及び第2の焦点検出用画素11、12から出力される第1及び第2の焦点検出用信号Sig1、Sig2を用いて、瞳分割型の位相差検出方式によりデフォーカス量を算出する。また焦点検出部214は、算出したデフォーカス量に基づいてフォーカスレンズ31bの移動量を算出する。
【0041】
より詳しくデフォーカス量の算出処理を説明すると、焦点検出部214は、第1の焦点検出用信号Sig1と第2の焦点検出用信号Sig2とを相関演算して、像ずれ量Δを算出する。焦点検出部214は、この像ずれ量Δを所定の換算式に基づきデフォーカス量に換算する。像ずれ量Δをデフォーカス量Defに換算する換算式は、換算係数(変換係数)Kを用いて以下のように表すことができる。
Def=K×Δ …(1)
【0042】
上述したように、防振制御部28は、位置検出部27により検出された撮像素子22の位置情報をボディ制御部210に出力する。ボディ制御部210の焦点検出部214は、後述するが、防振制御部28から出力された位置情報に基づいて、選択された焦点検出領域100の光軸OA1からの像高を加味して換算係数Kを決定する。焦点検出部214は、決定した換算係数Kと上記の式(1)とに基づき、像ずれ量Δをデフォーカス量Defに換算する。
【0043】
焦点検出部214は、デフォーカス量が所定の許容値以内か否かを判定する。焦点検出部214は、デフォーカス量が許容値以内であれば合焦していると判断する。一方、焦点検出部214は、デフォーカス量が許容値を超えている場合は合焦していないと判断し、算出したデフォーカス量Defに基づいて、合焦位置までのフォーカスレンズ31bの移動量を算出する。そして、焦点検出部214は、交換レンズ3のレンズ制御部32へフォーカスレンズ31bの移動量とレンズ駆動を指示する信号を送信する。焦点検出部214からの指示を受けたレンズ制御部32が、移動量に応じてフォーカスレンズ31bを移動することにより、焦点調節が自動で行われる。
【0044】
図5は、第1の実施の形態に係るカメラ1による像振れ補正を説明するための図である。図5(a)は、水平方向(X軸方向)に加わった手振れによって被写体像の位置が変化した例を示している。図5(a)において、点線で示す被写体像71aは、カメラ1の振れが生じる前の被写体像を示し、点線で示す撮像面22a1は、移動前(補正前)の撮像素子22の撮像面(の位置)を示している。カメラ1の振れが生じる前は、被写体像71aが撮像面22a1の中央に位置している。
【0045】
実線で示す被写体像71bは、カメラ1の振れが生じた場合の被写体像を示しており、撮像面22a1の中央よりも右側(+X方向)に位置している。防振制御部28は、手振れによってカメラ1に振れが与えられると、像振れを打ち消すように撮像素子22を移動させる。図5(a)に示すような像振れが生じた場合、防振制御部28は、上述したように、カメラ1の振れ量に応じて光軸OA1と垂直な面(XY平面)に沿って撮像素子22を矢印75で示すように+X方向に移動させる。実線で示す撮像面22a2は、移動後(補正後)の撮像素子22の撮像面の位置を示している。撮像素子22(の撮像面)は、防振制御部28によって駆動制御されて、点線で示す位置から実線で示す位置に移動する。移動後の撮像面22a2においては、被写体像71bは撮像面22a2の中央に位置している。
【0046】
図5(b)は、被写体像の位置の変化の別の例を示しており、手振れによって被写体像がZ軸回りに回転した場合を示している。図5(b)において、点線で示す被写体像71aは、カメラ1の振れが生じる前の被写体像を示し、点線で示す撮像面22a1は、移動前の撮像素子22の撮像面を示している。また、実線で示す被写体像71cは、カメラ1の振れが生じた場合の被写体像を示し、実線で示す撮像面22a3は、移動後の撮像素子22の撮像面を示している。図5(b)に示す例の場合、防振制御部28は、カメラ1のロール方向の回転振れを打ち消すように、矢印76で示すように撮像素子22を回転させることで、像振れを補正する。
【0047】
上述のように、防振制御部28は、カメラ1の振れを打ち消すように、撮像素子22を移動させる。撮像素子22がシフト量(x、y)だけ移動された場合、撮像面22aの中心はシフト量(x、y)だけ移動し、各焦点検出領域100はいずれもシフト量(x、y)だけ移動する。図2に示す中央の焦点検出領域100aも、焦点検出領域100b、100cも、シフト量(x、y)だけ移動する。このように、撮像素子22の移動によって、撮影光学系31の光軸OA1と撮像素子22の中心との相対位置関係が変化し、各焦点検出領域100の像高が変化する。
【0048】
撮像素子22の移動によって焦点検出領域100の像高が変わると、撮影光学系31を通過した光束のその焦点検出領域100の第1及び第2の焦点検出用画素への入射角が変わるため、第1及び第2の焦点検出用画素のそれぞれで蓄積される電荷量が変わる。また、第1及び第2の焦点検出用画素は、電荷の蓄積動作が行われる期間(電荷蓄積期間)の間に蓄積された電荷量に基づいて、第1及び第2の焦点検出用信号を生成する。このため、電荷蓄積期間における撮像素子22の位置に応じて、第1及び第2の焦点検出用画素において蓄積される電荷量が変わり、第1及び第2の焦点検出用信号を用いて算出される像ずれ量の大きさが変化する。
中央の焦点検出領域100aを例にとって説明すると、振れ補正により撮像素子22が移動し焦点検出領域100aが光軸OA1上に位置しない場合に、焦点検出領域100aが光軸OA1上に位置する場合を想定した換算係数Kの値をそのまま上述した像ずれ量Δをデフォーカス量Defに換算する換算式に用いると、算出されるデフォーカス量の精度が低下することになる。
【0049】
そこで、本実施の形態に係る焦点検出部214は、電荷の蓄積が行われる電荷蓄積期間における撮像素子22の位置に応じて、デフォーカス量の算出に用いる換算係数Kの値を変更する。この場合、焦点検出部214は、焦点検出に用いる焦点検出領域100の電荷蓄積期間中の位置が光軸OA1から離れるほど、上述の換算係数Kの値が大きくなるように設定(補正)する。換言すると、焦点検出領域100の電荷蓄積期間中の像高が撮像素子22の移動に伴って大きくなる程、上述の換算係数Kの値が大きくなるように設定する。これにより、像振れ補正が行われて撮像素子22の中心と撮影光学系31の光軸OA1とがずれる場合に、焦点検出精度が低下することを抑制することができる。以下に、焦点検出部214が行う処理について説明する。
【0050】
焦点検出部214は、防振制御部28を介して取得した撮像素子22の位置情報のうち、領域選択部213により選択された焦点検出領域100の電荷蓄積期間に、位置検出部27により検出された位置情報を選択する。上述したように、撮像素子22では、画素における電荷の蓄積動作が、最上行から最下行に向かって行毎に走査しながら行われる。焦点検出領域100の電荷蓄積期間は、その焦点検出領域100に配置された画素が含まれる画素行において電荷の蓄積動作が行われる期間である。このように、焦点検出部214は、位置検出部27により検出された複数の位置情報のうち、領域選択部213により選択された焦点検出領域100の電荷蓄積期間における撮像素子22の位置を示す位置情報を選択する。
【0051】
焦点検出部214は、選択した撮像素子22の位置情報に基づいて、デフォーカス量の算出に用いる換算係数Kを算出する。焦点検出領域100毎に、撮影光学系31を通過した光束の焦点検出用画素への入射角と換算係数Kとの対応関係が予めシミュレーションや実験等により求められ、データテーブルや計算式としてボディ制御部210の内部のメモリに記憶されている。焦点検出部214は、選択した撮像素子22の位置情報に基づいて、領域選択部213により選択された焦点検出領域100の像高Hを算出し、算出した像高Hを用いてその焦点検出領域100の焦点検出用画素への光束の入射角を算出する。焦点検出部214は、算出した入射角に基づいて、領域選択部213により選択された焦点検出領域100についての上述の対応関係を参照することにより、デフォーカス量の算出に用いる換算係数Kを決定する。このように、本実施の形態では、電荷蓄積期間における撮像素子22の位置に関する位置情報に基づいて、デフォーカス量の算出に用いる換算係数Kの値を変更する。このため、像振れ補正が行われた場合に焦点検出の精度が低下することを抑えることができる。
【0052】
なお、換算係数Kを決定する方法は、上記の方法に限らない。焦点検出部214は、撮像素子22の位置と換算係数Kとの対応関係を参照して、換算係数Kを決定するようにしてもよい。この場合、撮像素子22の位置と換算係数Kとの対応関係が、焦点検出領域100毎に予め実験等により求められ、データテーブル等としてボディ制御部210の内部のメモリに記憶されている。焦点検出部214は、選択した撮像素子22の位置情報から撮像素子22の位置を把握して、領域選択部213により選択された焦点検出領域100についての上記の対応関係を参照し、デフォーカス量の算出に用いる換算係数Kを決定する。
【0053】
図6は、第1の実施の形態に係るカメラ1における処理の一例を示す図である。図6において、複数の横軸は共通の時間軸である。図6では、同一の時間軸に、撮像素子22のV信号(垂直同期信号とも称する)(図6(a))と、撮像素子22の位置の検出処理(図6(b))と、撮像素子22による電荷蓄積処理(図6(c))と、位置情報の通信処理(図6(d))と、AF処理(図6(e)、(f))と、レンズ制御部32によるレンズ制御(図6(g))と、フォーカスレンズ31bの位置(図6(h))とを示している。
【0054】
V信号(垂直同期信号)は、撮影のフレームレートに基づいて撮像素子22内のパルス発生回路等によって生成される。V信号は、1フレームごとに生成される信号であり、フレームレートに従った時間間隔で生成される。図6において、位置検出処理と、電荷蓄積処理と、位置情報の通信処理と、AF処理と、レンズ制御とは、それぞれV信号に同期して行われる。
【0055】
図6(b)の実線の矢印A1~A15は、第Nフレーム~第(N+3)フレームの処理を行っている間に位置検出部27により撮像素子22の位置の検出が行われて、撮像素子22の位置情報が生成されるタイミングを示している。位置検出部27は、1フレームよりも短く、かつ一定の間隔(△t)で位置検出を行い、1フレームの間に複数の位置情報を取得する。
【0056】
撮像素子22の電荷蓄積処理を、図6(c)に示す。図6(c)に示す例では、図7に示す撮像素子22内の第1、第2、及び第3の小領域81、82、83において順次に電荷蓄積が行われる場合を示している。第1~第3の小領域81~83は、撮像面22aを上下方向に3分割したもので、上領域(小領域81)、中領域(小領域82)、下領域(小領域83)と分けている。第1~第3の小領域81~83は、図7に示すように、それぞれ複数の焦点検出領域100を含む。
【0057】
図6(c)は、第1~第3の小領域81~83のそれぞれにおいて、最上行の画素における電荷蓄積が開始されて最下行の画素における電荷蓄積が終了するまでの処理を、フレーム毎に模式的に示している。図6(c)の平行四辺形の領域内で、各フレームの電荷蓄積が行われる。すなわち、最初の行(第1の小領域81の一番上のライン)が電荷の蓄積を行う時間と最後の行(第3の小領域83の一番下のライン)が電荷の蓄積を行う時間は、ずれている(ローリングシャッタとも呼ばれる)。撮像素子22は、V信号に基づいて撮像素子22の電荷蓄積を行ってフレーム毎に繰り返し被写体像を撮像し、第1~第3の小領域81~83内の撮像用画素の撮像画像用信号及び焦点検出用画素の焦点検出用信号(第1及び第2の焦点検出用信号)を出力する。
【0058】
以下では、第1の小領域81内の複数の焦点検出領域100のうち、その第1の小領域81の上下の中央の行に位置する焦点検出領域100d(図7参照)から出力された焦点検出用信号を用いてAF処理を行う例について説明する。AF処理は、図6(e)及び図6(f)に示されている。時刻t1から時刻t6、時刻t6から時刻t12、及び時刻t12から時刻t18までの期間は、それぞれ、第Nフレーム、第(N+1)フレーム、及び第(N+2)フレームにおいて第1の小領域81の最上行から最下行に向かって順次に走査(ローリングシャッタ)しながら電荷蓄積処理が行われる期間である。また、時刻t2から時刻t5、時刻t7から時刻t11、及び時刻t13から時刻t17までの期間は、それぞれ、第Nフレーム、第(N+1)フレーム、及び第(N+2)フレームにおいて第1の小領域81の中央行の焦点検出領域100dで電荷蓄積処理が行われる期間である。
【0059】
図6(d)に示すように、時刻t3から時刻t4までの期間において、防振制御部28は、時刻t0から時刻t3までの間に△t間隔で発生する撮像素子22の位置情報(矢印A1~A4の4つ)を、ボディ制御部210に出力する。ボディ制御部210は、防振制御部28により出力された4つの位置情報を、内部のメモリに記憶させる。
【0060】
図6(e)に示すように、時刻t5から時刻t8までの期間において、焦点検出部214は、電荷蓄積処理された第Nフレームにおける焦点検出領域100dから出力される一対の焦点検出用信号、即ち、時刻t2から時刻t5までの期間に焦点検出領域100dの第1及び第2の焦点検出用画素において蓄積された電荷に基づく一対の信号列に対して相関演算処理を行う。
時刻t9から時刻t10までの期間において、防振制御部28は、時刻t3から時刻t8までの間に△t間隔で発生する撮像素子22の位置情報(矢印A5~A8の4つ)を、ボディ制御部210に出力する。ボディ制御部210は、すでに記憶されている4つの位置情報(矢印A1~A4の4つ)に加えて、防振制御部28により出力された4つの位置情報(矢印A5~A8の4つ)を、内部のメモリに記憶させる。
【0061】
図6(f)に示すように、時刻t11から時刻t14までの期間においては、焦点検出部214は、第Nフレームにおける電荷蓄積処理によって焦点検出領域100dから出力される信号を用いた相関演算結果(図6(e)の時刻t5~t8で示す第Nフレームにおける相関演算結果)に基づき、像ずれ量Δを算出する。また、焦点検出部214は、内部のメモリに記憶された撮像素子22の複数の位置情報(矢印A1~A8の8つ)のうち、第Nフレームにおいて焦点検出領域100dにおいて電荷蓄積が行われるときに検出された位置情報を選択する。説明対象の焦点検出領域100dは第1の小領域81の中央行の中央(図7参照)に位置するので、焦点検出領域100dにおいて電荷蓄積が行われる時刻t2から時刻t5までの期間の中心時刻に最も近い時刻に検出された位置情報を選択する。図6に示す例の場合、焦点検出部214は、時刻t2から時刻t5までの期間の中心時刻に最も近いタイミングA3で検出された位置情報を選択する。これにより、焦点検出部214は、焦点検出領域100dの第Nフレーム蓄積時における光軸OA1からの距離(像高)を求める。つまり、焦点検出部214は、撮像面22a上での焦点検出領域100dの位置の情報(撮像面22aの中心からの距離)及び焦点検出領域100dにおいて電荷蓄積が行われる時刻での撮像素子22の位置情報により、焦点検出領域100dの第Nフレーム蓄積時における光軸OA1からの距離(像高)を求める。
【0062】
また、焦点検出部214は、時刻t11から時刻t14までの期間中に、第Nフレームにおける焦点検出領域100dから出力された信号を用いて算出した像ずれ量Δをデフォーカス量に換算するための換算係数Kを、上述した焦点検出領域100dの第Nフレーム蓄積時における光軸OA1からの距離(像高H)に基づき決定する。焦点検出部214は、決定した換算係数Kに基づき、上述した換算式で像ずれ量をデフォーカス量に換算する。また、ボディ制御部210は、算出したデフォーカス量に基づき、フォーカスレンズ31bの移動量を算出する。焦点検出部214は、フォーカスレンズ31bの駆動を指示する信号と、算出したフォーカスレンズ31bの移動量に関する情報とを、レンズ制御部32に送信する。換算係数Kの決定処理、及びフォーカスレンズ31bの移動量の算出処理は、図6(f)のAF処理に含まれている。
【0063】
図6(g)に示すように、時刻t14から時刻t15までの期間において、交換レンズ3のレンズ制御部32は、時刻t11から時刻t14までの期間において焦点検出部214により算出されたフォーカスレンズ31bの移動量に基づき、フォーカスレンズ31bの移動を開始させて焦点調節を行う。
【0064】
以上第Nフレームの処理に引き続き、第(N+1)フレームの処理が行われる。時刻t6から第(N+1)フレームの蓄積が行われ、時刻t7から時刻t11までの期間で第(N+1)フレームにおける第1の小領域81の中央行の焦点検出領域100dで電荷蓄積処理が行われる。
上述したように時刻t9から時刻t10までの期間において、防振制御部28は、4つの位置情報(矢印A5~A8、図6(b)参照))を、ボディ制御部210に出力する。ボディ制御部210は、防振制御部28により出力された4つの位置情報を、内部のメモリに記憶させる。
時刻t11から時刻t16までの期間(図6(e)参照)において、焦点検出部214は、第(N+1)フレームにおける電荷蓄積処理によって焦点検出領域100dから出力される一対の焦点検出用信号、即ち、時刻t7から時刻t11までの期間に焦点検出領域100dの第1及び第2の焦点検出用画素において蓄積された電荷に基づく一対の信号列に対して相関演算処理を行う。
【0065】
時刻t17から時刻t19までの期間(図6(f)参照)において、焦点検出部214は、第(N+1)フレームにおける電荷蓄積処理によって焦点検出領域100dから出力される信号を用いた相関演算結果に基づき、像ずれ量Δを算出する。また、焦点検出部214は、内部のメモリに記憶された複数の位置情報のうち、第(N+1)フレームにおいて焦点検出領域100dにおいて電荷蓄積が行われるときに検出された位置情報を選択する。第Nフレームと同様に、焦点検出領域100dは第1の小領域81の中央行の中央(図7参照)に位置するので、焦点検出領域100dにおいて電荷蓄積が行われる時刻t7から時刻t11までの期間の中心時刻に最も近いタイミングA7で検出された位置情報を選択する。これにより、焦点検出部214は、焦点検出領域100dの第(N+1)フレーム蓄積時における光軸OA1からの距離(像高)を求める。
【0066】
そして、焦点検出部214は、時刻t17から時刻t19までの期間中に、第(N+1)フレームにおける焦点検出領域100dから出力された信号を用いて算出した像ずれ量をデフォーカス量に換算するための換算係数Kを、上述した焦点検出領域100dの第(N+1)フレーム蓄積時における光軸OA1からの距離(像高)に基づき決定する。焦点検出部214は、選択した位置情報に基づいて換算係数Kを決定し、決定した換算係数Kに基づいて像ずれ量をデフォーカス量に換算する。また、ボディ制御部210は、算出したデフォーカス量に基づき、フォーカスレンズ31bの移動量を算出する。焦点検出部214は、フォーカスレンズ31bの駆動を指示する信号と、算出したフォーカスレンズ31bの移動量に関する情報とを、レンズ制御部32に送信する。
【0067】
時刻t19から時刻t20までの期間(図6(g)参照)において、レンズ制御部32は、時刻t17から時刻t19までの期間において焦点検出部214により算出されたフォーカスレンズ31bの移動量に基づき、フォーカスレンズ31bの移動を開始させて焦点調節を行う。
【0068】
以上のように、本実施の形態に係るカメラ1は、撮像素子22の位置情報を1フレーム間隔より短い所定の時間間隔で記録して(図6(b))、焦点検出を行う焦点検出領域100の撮像面22a内の位置に応じて、焦点検出を行う焦点検出領域100の電荷蓄積が行われた時刻に最も近い時刻に検出された位置情報を選択する。図6に示す例の場合、焦点検出部214は、第Nフレームの処理において、時刻t2から時刻t5までの期間の中心時刻に最も近いタイミングA3で検出された位置情報を選択する。選択した撮像素子22の位置情報と、焦点検出を行う焦点検出領域100dの撮像面22a内の位置の情報(撮像面22aの中心から焦点検出領域100dまでの距離)とより、焦点検出部214は、焦点検出領域100dの第Nフレーム蓄積時における光軸OA1からの距離(像高H)を求める。対象とする焦点検出領域100dの蓄積時における光軸OA1からの距離(像高H)に基づいて換算係数Kを求める。蓄積された電荷に基づく信号について相関演算処理(図6(e))を行い像ずれ量を算出し、算出した像ずれ量を電荷蓄積時における像高Hに基づいて求めた変換係数Kを用いてデフォーカス量に換算して(図6(f))、フォーカスレンズ31bを駆動する(図6(g))。
【0069】
繰り返しになるが、カメラ1は、時刻t2から時刻t5で蓄積された電荷に基づく第Nフレームの焦点検出用信号について、時刻t3から時刻t4で位置情報を記録し、時刻t5から時刻t8で相関演算処理を行い、時刻t11から時刻t14でデフォーカス換算して、時刻t14から時刻t15でフォーカスレンズ31bの駆動を開始する。さらに、カメラ1は、時刻t7から時刻t11で蓄積された電荷に基づく第(N+1)フレームの焦点検出用信号について、時刻t9から時刻t10で位置情報を記録し、時刻t11から時刻t16で相関演算処理を行い、時刻t17から時刻t19でデフォーカス換算して、時刻t19から時刻t20でフォーカスレンズ31bの移動を開始する。
【0070】
図6を用いて、撮像面22aを上下方向に3分割したうちの上領域である第1の小領域81の中央の焦点検出領域100d(図7参照)から出力された焦点検出用信号を用いてAF処理を行う例について説明したが、同様にして中領域である第2の小領域82の中央の焦点検出領域100eや、下領域である第3の小領域83の中央の焦点検出領域100f等の他の焦点検出領域100から出力された焦点検出用信号を用いてAF処理を行う場合も同様にAF処理を行うことができる。第2の小領域82の中央の焦点検出領域100eでAF処理を行う場合は、第Nフレームにおいて矢印A4の位置検出により生成された位置情報を選択して、焦点検出領域100eの電荷蓄積時の光軸OA1からの距離(像高H)を求めて換算係数Kを決定し、決定した換算係数Kを用いてデフォーカス量の算出を行う。また、引き続く第(N+1)フレームにおいて焦点検出領域100eから出力される信号を用いたデフォーカス量の算出では、矢印A8の位置検出により生成された位置情報を選択して換算係数Kを決定し、決定した換算係数Kを用いてデフォーカス量の算出を行う。
【0071】
また、第3の小領域83の中央の焦点検出領域100fでAF処理を行う場合は、第Nフレームにおいて、矢印A5の位置検出により生成された位置情報を選択して、焦点検出領域100eの電荷蓄積時の光軸OA1からの距離(像高)を求めて換算係数Kを決定し、決定した換算係数Kを用いてデフォーカス量の算出を行う。なお、矢印A5の位置情報は時刻t9からt10の間で受信(図6(d))するので、その後の相関演算(図6(e))は時刻t11~t16で行い、デフォーカス量算出(図6(f))は時刻t17~t19で行い、レンズ制御(図6(g))は時刻t19~t20で行う。そして引き続く第(N+1)フレームにおいて焦点検出領域100fから出力される信号を用いてデフォーカス量の算出を行う場合、矢印A9の位置検出により生成された位置情報を選択して換算係数Kを決定し、決定した換算係数Kを用いてデフォーカス量の算出を行う。
【0072】
なお、第1~第3の小領域81~83内の中央以外の焦点検出領域、例えば左上隅あるいは右下隅の焦点検出領域100から出力される信号を用いてデフォーカス量の算出を行う場合も、焦点検出部214は、その中央以外の焦点検出領域100における電荷蓄積期間の中心時刻に最も近いタイミングで検出された位置情報を選択する。対象とする焦点検出領域100の撮像面22a内の位置(撮像面22aの中心から対象とする焦点検出領域100までの距離)と、選択された撮像素子22の位置情報とにより、対象とする焦点検出領域100の電荷蓄積時の光軸OA1からの距離(像高H)を求めて換算係数Kを決定する。そして、決定した換算係数Kに基づいてデフォーカス量の算出を行う。
【0073】
このように、本実施の形態に係る焦点検出部214は、焦点検出に用いる焦点検出領域100の電荷蓄積期間において検出された撮像素子22の位置情報に基づき、対象とする焦点検出領域100の電荷蓄積時の光軸OA1からの距離(像高H)を求めて、デフォーカス量の算出に用いる換算係数Kを変更する。このため、焦点検出部214は、像振れ補正のために撮像素子22が移動された場合に、電荷蓄積期間の撮像素子22の位置を考慮して、デフォーカス量の算出に適した換算係数Kを決定することができ、焦点検出精度が低下することを抑えることができる。
【0074】
上述した実施形態についてまとめると、以下のとおりである。
(1)撮像装置(カメラ1)は、光学系(撮影光学系31)の第1の領域を通過した第1の光束を光電変換して蓄積した電荷に基づく第1信号を出力する第1画素(第1の焦点検出用画素11)と、第2の領域を通過した第2の光束を光電変換して蓄積した電荷に基づく第2信号を出力する第2画素(第2の焦点検出用画素12)とを有する撮像部(撮像素子22)と、撮像部を移動し、撮像部の位置に関する位置情報を出力する移動制御部(防振制御部28)と、移動制御部により出力された位置情報と、撮像部により出力される第1信号および第2信号とに基づいて、光学系の合焦状態を検出する検出部(ボディ制御部210)と、を備える。本実施の形態では、カメラ1は、撮像素子22の位置情報と第1及び第2の焦点検出用信号を用いてデフォーカス量の算出を行う。このため、カメラ1は、撮像素子22の位置に応じてデフォーカス量の算出に用いる換算係数Kを変更して、焦点検出精度の低下を抑制することが可能となる。
【0075】
(2)検出部(ボディ制御部210)は、第1信号と第2信号とに基づいて、第1の光束による像と第2の光束による像との像ずれ量を算出する。検出部は、撮像素子の位置情報に基づいて対象とする焦点検出領域の電荷蓄積時の光軸OA1からの距離(像高)を求めて、像ずれ量をデフォーカス量に変換する換算係数Kを決定し、決定した換算係数Kに基づいて像ずれ量をデフォーカス量に変換する。このようにしたので、カメラ1は、撮像素子22の位置情報に基づき、デフォーカス量の算出に用いる換算係数を変更することができる。これにより、算出されるデフォーカス量の精度が低下することを抑制することができる。
【0076】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0077】
(変形例1)
上述した実施の形態では、焦点検出領域100において電荷蓄積が行われる期間の中心時刻に最も近い時刻に検出された1つの位置情報を選択して、換算係数Kを決定する例について説明した。しかし、焦点検出領域100において電荷蓄積が行われる期間内に検出された複数の位置情報を選択して、それぞれの位置情報を用いて換算係数Kを決定するようにしてもよい。
【0078】
図6(b)に示す矢印A2~A4の位置検出により生成された3つの位置情報の各々が示す位置の平均位置を、Nフレームの電荷蓄積時における撮像素子22の位置として用いて、換算係数Kを決定するようにしてもよい。また、矢印A2~A5の位置検出により生成された4つの位置情報の各々が示す位置の平均位置を、Nフレームの電荷蓄積時における撮像素子22の位置として用いて、換算係数Kを決定するようにしてもよい。
【0079】
更に、複数の位置情報を補間処理して、各フレームの電荷蓄積期間の中心時刻における撮像素子22の位置を算出し、算出した撮像素子22の位置に基づいて換算係数Kを決定するようにしてもよい。
【0080】
また、焦点検出領域100において電荷蓄積が行われる期間内に検出された複数の位置情報(例えば、図6(b)の矢印A2~A5の位置検出により生成された4つの位置情報)と、この期間の前後に取得された位置情報(例えば、矢印A1、A6の位置検出により生成された2つの位置情報)とを用いて、換算係数Kを決定するようにしてもよい。
なお、焦点検出領域100において電荷蓄積が行われる期間内に検出された位置情報がない場合は、この期間に近い時刻に取得された位置情報を用いて、換算係数Kを決定するようにしてもよい。
【0081】
(変形例2)
上述した実施の形態では、本発明をローリングシャッタ方式の読み出し制御を行うカメラ1に適用する例について説明した。しかし、グローバルシャッタ方式の読み出し制御を行うカメラ1に適用できる。その場合には、撮像素子の全ての焦点検出領域について、同一の位置情報を用いて換算係数Kの決定を行うようにすればよい。
【0082】
(変形例3)
ボディ制御部210は、撮像素子22の電荷蓄積期間(シャッタースピードに相当する)に応じて、位置検出部27による撮像素子22の位置検出の周期を切り替えるようにしてもよい。ボディ制御部210は、電荷蓄積期間が短くなる程、位置検出部27による位置検出の間隔を短くすると良い。
【0083】
(変形例4)
上述した実施の形態および変形例では、撮像素子22の位置を移動することによって、振れ補正を行う例について説明した。しかし、撮影光学系31に像振れ補正レンズを搭載し、像振れ補正レンズの位置を調整することによって振れ補正を行うようにしてもよい。
【0084】
この場合、交換レンズ3の撮影光学系31は、光学系の光軸と直交する面に沿って移動する像振れ補正レンズ(防振用レンズとも称する)を有する。像振れ補正レンズを移動駆動した場合は撮像素子22における光軸OA1の位置が変化することになる。像振れ補正レンズを移動したことによる光軸OA1の位置の変化は、上述した撮像素子22を移動することで対象とする焦点検出領域100の像高が変化するのと同等である。そこで、交換レンズ3は、像振れ補正レンズの位置を検出するレンズ位置検出部を有する。レンズ位置検出部は、光センサあるいは磁気センサ等によって構成され、像振れ補正レンズの位置を所定の周期で検出し、像振れ補正レンズの位置に関する情報(レンズ位置情報)を繰り返し生成する。レンズ位置検出部は、生成したレンズ位置情報をレンズ制御部32に順次出力する。
【0085】
レンズ制御部32は、レンズ位置検出部から繰り返し出力されるレンズ位置情報を、レンズ制御部32の内部のメモリに記憶させる。レンズ制御部32は、内部のメモリに記憶された複数のレンズ位置情報を、所定の周期で読み出してボディ制御部210に出力する。
【0086】
ボディ制御部210は、振れ信号を用いてカメラ1の振れ量を算出し、カメラ1の振れ量に基づいて像振れ補正レンズの位置を制御する。具体的には、ボディ制御部210は、カメラ1の振れ量に基づいて像振れ補正レンズの移動量を決定し、決定した像振れ補正レンズの移動量とレンズ駆動を指示する信号を、レンズ制御部32に送信する。レンズ制御部32は、ボディ制御部210から像振れ補正レンズの移動量とレンズ駆動を指示する信号が入力されると、その信号に基づいて像振れ補正レンズを制御する。ボディ制御部210は、カメラ1の振れ量に応じて、撮影光学系31の光軸OA1に垂直な面に沿って、像振れ補正レンズを移動(シフト)させる制御を行う。このように、本変形例に係るカメラ1では、カメラ1の振れ量に応じて像振れ補正レンズの位置が調整されることで、被写体像の像振れが補正される。
【0087】
像振れ補正レンズの位置が変わると、被写体からの光の焦点検出領域100(の第1及び第2の焦点検出用画素11、12)への入射角が変わる。そこで、本変形例に係る焦点検出部214は、像振れ補正レンズの位置に応じて、デフォーカス量の算出に用いる換算係数Kを変更する。以下に、焦点検出部214が行う処理について説明する。
【0088】
ボディ制御部210の焦点検出部214は、レンズ制御部32から取得した複数のレンズ位置情報のうち、領域選択部213により選択された焦点検出領域100において電荷の蓄積が行われるときの像振れ補正レンズの位置を示す位置情報を選択する。撮影光学系31の像振れ補正レンズの位置と換算係数Kとの対応関係が、焦点検出領域100毎に予めシミュレーションや実験等により求められ、データテーブルや計算式として、カメラ1内のメモリに記憶されている。焦点検出部214は、選択した位置情報に基づいて、像振れ補正レンズの位置を算出する。そして、焦点検出部214は、焦点検出領域100の情報及び像振れ補正レンズの位置の情報に基づいて、メモリに記憶された上述の対応関係を参照して、デフォーカス量の算出に用いる換算係数Kを決定する。
【0089】
上述のように、焦点検出部214は、焦点検出を行う焦点検出領域100において電荷蓄積が行われる期間に検出された像振れ補正レンズのレンズ位置情報を用いて、デフォーカス量の算出に用いる換算係数Kを決定し、決定した換算係数Kを用いてデフォーカス量の算出を行う。このため、像振れ補正が行われた場合に、焦点検出の精度が低下することを抑えることができる。
【0090】
(変形例5)
ボディ制御部210は、撮像素子22の位置の制御および像振れ補正レンズの位置の制御の両方を行うようにしてもよいし、撮像素子22の位置の制御と像振れ補正レンズの位置の制御とを切り替え可能としてもよい。ユーザによる操作部25の操作等によって、カメラ1の振れに応じて撮像素子22の位置を調節するモードと、カメラ1の振れに応じて像振れ補正レンズの位置を調節するモードとを選択可能としてもよい。
【0091】
(変形例6)
上述した実施の形態および変形例では、撮像素子22の位置や像振れ補正レンズの位置に応じて、デフォーカス量の算出に用いる換算係数Kを変更する例について説明した。しかし、撮像素子22の位置や像振れ補正レンズの位置に応じて、デフォーカス量の補正を行うようにしてもよい。
また、撮像素子22の位置や像振れ補正レンズの位置に応じて、焦点検出に用いる焦点検出用画素対を切り替えるようにしてもよい。
【0092】
図8は、撮像素子22の焦点検出用画素の変形例の構成を示す図である。本変形例に係る撮像素子22の各焦点検出領域100には、撮像用画素に加えて、遮光部の配置位置が互いに異なる複数種の焦点検出用画素対、図8に示す例では第1~第3の焦点検出用画素対が配置される。図8は、図2の中央の焦点検出領域100aから右方向に離れた像高が高い焦点検出領域100cに配置される3種類の焦点検出用画素対の断面図である。図8(a)は、第1の焦点検出用画素対を構成する第1及び第2の焦点検出用画素11a、12aの断面の一例を示し、図8(b)は、第2の焦点検出用画素対を構成する第1及び第2の焦点検出用画素11b、12bの断面の一例を示す。図8(c)は、第3の焦点検出用画素対を構成する第1及び第2の焦点検出用画素11c、12cの断面の一例を示す。なお、図中、上述の実施の形態と同一もしくは相当部分には、同一の参照番号を付す。
【0093】
図8(a)において、第1の焦点検出用画素11aは、遮光部43Lの右端が、マイクロレンズ44の光軸に対して相対的に右方向に所定量d1ずれている。以下、遮光部43(遮光部43L、43R)がマイクロレンズ44の光軸に対してずれている量を、ずれ量と称する。第1の焦点検出用画素11aは、遮光部43Lの右端が、マイクロレンズ44の光軸OA2よりもずれ量d1だけ右側に位置する。第2の焦点検出用画素12aは、遮光部43Rの左端が、マイクロレンズ44の光軸に対して第1の焦点検出用画素11aのずれ方向と同方向に同量d1、ずれている。即ち、第2の焦点検出用画素12aは、遮光部43Rの左端が、マイクロレンズ44の光軸OA2よりもずれ量d1だけ右側に位置する。
【0094】
第2及び第3の焦点検出用画素対と第1の焦点検出用画素対とは、上述のずれ量が相違する。第2の焦点検出用画素対を構成する第1及び第2の焦点検出用画素11b、12bのずれ量d2は、第1のAF画対を構成する第1及び第2の焦点検出用画素11a、12aのずれ量d1よりも大きい。第3の焦点検出用画素対を構成する第1及び第2の焦点検出用画素11c、12cのずれ量d3は、第2の焦点検出用画素対を構成する第1及び第2の焦点検出用画素11b、12bのずれ量d2よりも大きい。即ち、d1<d2<d3である。
【0095】
なお、中央の焦点検出領域100aから左方向に離れた像高が高い焦点検出領域100bに配置される第1~第3の焦点検出用画素対では、図8に示したずれ方向と反対方向に同様のずれ量d1~d3が付与される。また、各焦点検出領域100の第1~第3の焦点検出用画素対のずれ量は、像高が高い焦点検出領域ほど、大きくなる。
【0096】
このように、本変形例では、第1~第3の焦点検出用画素対は、遮光部の配置位置が相違するため、互いに異なる入射角に対応して瞳分割を行うことができる。像振れ補正が行われた場合に焦点検出に用いる焦点検出領域100の像高が大きくなると、その焦点検出領域100の焦点検出用画素への光束の入射角が大きくなる。そこで、焦点検出部214は、焦点検出に用いる焦点検出領域100の像高が大きくなった場合には、その焦点検出領域100の複数種の焦点検出用画素対のうち、上述したずれ量が比較的大きな焦点検出用画素対を選択する。焦点検出部214は、選択した焦点検出用画素対(第1及び第2の焦点検出用画素)から出力される第1及び第2の焦点検出用信号を用いてデフォーカス量の算出を行う。これにより、焦点検出用画素対の各々の光電変換部42の受光量を確保することができ、像振れ補正が行われた場合に焦点検出精度が低下することを防ぐことができる。
【0097】
(変形例7)
上述した実施の形態では、撮像素子22に、原色系(RGB)のカラーフィルタを用いる場合について説明したが、補色系(CMY)のカラーフィルタを用いるようにしてもよい。
【0098】
(変形例8)
上述した実施の形態では、手振れに起因する像振れの補正が行われる場合について説明したが、像振れ補正および焦点検出に関する説明は、カメラ1に取り付けられた三脚に生じる振れに起因する像振れの補正が行われる場合にも当てはまるものである。
【0099】
(変形例9)
上述の実施の形態及び変形例で説明した撮像装置は、カメラ、スマートフォン、タブレット、PCに内蔵のカメラ、車載カメラ、無人航空機(ドローン、ラジコン機等)に搭載されるカメラ等に適用してもよい。
【0100】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0101】
次の優先権基礎出願の開示内容は引用文としてここに組み込まれる。
日本国特願2018-137266号(2018年7月20日出願)
【符号の説明】
【0102】
1…カメラ(カメラシステム)、2…カメラボディ、3…交換レンズ、11…焦点検出用画素、12…焦点検出用画素、13…撮像用画素、22…撮像素子、23…ボディメモリ、26…振れ検出部、27…位置検出部、31…撮影光学系、31a…ズームレンズ、31b…フォーカスレンズ、31c…絞り、32…レンズ制御部、33…レンズメモリ、210…ボディ制御部、211…撮像制御部、212…画像データ生成部、213…領域選択部、214…焦点検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8