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特許7147863基板貼り合わせ装置および基板貼り合わせ方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-27
(45)【発行日】2022-10-05
(54)【発明の名称】基板貼り合わせ装置および基板貼り合わせ方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20220928BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220928BHJP
【FI】
H01L21/02 B
H01L21/68 P
【請求項の数】 33
(21)【出願番号】P 2020552996
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2019037303
(87)【国際公開番号】W WO2020084983
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-02-17
(31)【優先権主張番号】P 2018200723
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ッ石 創
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 功
(72)【発明者】
【氏名】角田 真生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一弘
(72)【発明者】
【氏名】塩見 隆
(72)【発明者】
【氏名】福田 稔
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-010922(JP,A)
【文献】特開2015-084369(JP,A)
【文献】国際公開第2018/092861(WO,A1)
【文献】特開2018-056481(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115684(WO,A1)
【文献】特表2019-514197(JP,A)
【文献】特開2013-258377(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217431(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/67-21/687
B23K 20/00-20/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板を保持する第1の保持部と、
第2の基板を保持する第2の保持部と、
を備え、
前記第1の基板の一部と前記第2の基板の一部との間の接触領域拡大して初期貼り合わせ領域を形成し、前記初期貼り合わせ領域が形成された前記第2の基板を前記第2の保持部から解放することにより、前記第1の基板および前記第2の基板を貼り合わせ
前記初期貼り合わせ領域は、前記第2の基板の歪みに関する情報に基づいて設定される基板貼り合わせ装置。
【請求項2】
前記初期貼り合わせ領域を設定する設定部を更に備え、
前記設定部は、前記第2の基板の前記歪みに関する情報に基づいて前記初期貼り合わせ領域を設定する、
請求項1に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項3】
前記設定部は、貼り合わされた前記第1の基板および前記第2の基板の間の位置ずれの量が閾値以下となるように、前記初期貼り合わせ領域を設定する、
請求項2に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項4】
前記設定部は、前記第2の基板の貼り合わせ面内における反りの発生位置と反りの大きさとに基づいて前記初期貼り合わせ領域を設定する、
請求項2または3に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項5】
前記歪みに関する情報は、前記第2の基板における反りの発生位置と、反りの大きさと、反りの方向と撓みの大きさと、撓みの方向の少なくとも一つの情報を含む、
請求項2から4の何れか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項6】
前記歪みに関する情報は、前記第2の基板の外周部分における反りの振幅の最大値と平均値との少なくとも一つの情報を含む、
請求項2から5の何れか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項7】
前記第2の基板の局所的な湾曲の特性を計測する計測部を更に備え、
前記設定部は、前記計測部によって計測される前記第2の基板の前記局所的な湾曲の特性に基づいて前記初期貼り合わせ領域を設定する、
請求項2から6の何れか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項8】
前記第2の基板の前記歪みに関する情報に含まれる前記第2の基板の局所的な湾曲に関する情報に基づいて前記第2の基板の局所的な湾曲の特性を推定する推定部を更に備え、
前記設定部は、前記推定部によって推定される前記第2の基板の前記局所的な湾曲の特性に基づいて前記初期貼り合わせ領域を設定する、
請求項2から6の何れか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項9】
前記局所的な湾曲に関する情報は、前記第2の基板の種類を示す情報と、製造プロセスを示す情報と、応力分布を示す情報と、表面に形成された構造物の構成を示す情報との少なくとも一つを含む、
請求項8に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項10】
前記初期貼り合わせ領域が形成されたことを判断する判断部を更に備え、
前記第2の保持部は、前記初期貼り合わせ領域が形成されたと前記判断部により判断された場合に前記第2の基板を解放する、
請求項2から9の何れか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項11】
前記設定部は、前記第1の基板および前記第2の基板を貼り合わせる毎に前記初期貼り合わせ領域を設定して、設定した情報を前記判断部に出力する、
請求項10に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項12】
前記判断部は、前記第1の基板と前記第2の基板との接触領域の広がりを観察する観察部を備える請求項10または11に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項13】
前記設定部は、前記第1の基板の製造ロット毎、及び、前記第2の基板の製造ロット毎に前記初期貼り合わせ領域を設定して、設定した情報を前記判断部に出力する、
請求項11に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項14】
前記設定部は、前記第1の基板の種類毎、及び、前記第2の基板の種類毎に前記初期貼り合わせ領域を設定して、設定した情報を前記判断部に出力する、
請求項11に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項15】
前記設定部は、前記第1の基板の製造プロセス毎、及び、前記第2の基板の製造プロセス毎に前記初期貼り合わせ領域を設定して、設定した情報を前記判断部に出力する、
請求項11に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項16】
前記第2の保持部は、
前記第2の基板の少なくとも外周部分を吸着する吸着部と、
前記第2の基板に向かって突出することで、前記第2の基板の中心部分を押圧して変形させる突出部と
を有し、
前記突出部の突出量は可変である、
請求項1から15の何れか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項17】
前記突出部は、着脱可能であり、
前記突出量は、高さの異なる複数の前記突出部を交換することにより可変である、
請求項16に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項18】
前記突出量は、前記突出部が前記第2の基板に向かって動くことにより可変である、
請求項16に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項19】
制御部と、
前記第1の保持部と前記第2の保持部との相対位置を変位させる変位部と
を備え、
前記制御部は、前記接触領域が広がるに連れて前記突出量が小さくなるように、前記突出部および前記変位部の少なくとも一方を制御する、
請求項18に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項20】
前記制御部は、前記第2の基板が前記第2の保持部によって変形された場合の前記接触領域の外周部分の変形角度を一定に維持した状態で、前記接触領域が広がるように、前記突出部および前記変位部の少なくとも一方を制御する、
請求項19に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項21】
前記突出量は、前記第2の基板が前記第2の保持部によって変形された場合に前記第2の基板に生じる非線形歪みの量が予め定められた閾値以下となるように設定される、
請求項16から20の何れか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項22】
前記突出量は、前記第2の基板の歪みに関する情報に基づいて設定される、
請求項16から21の何れか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項23】
前記吸着部は、互いに隔離されて独立している複数の吸着領域を含み、
前記接触領域が広がるに連れて、前記複数の吸着領域における吸着が前記第2の保持部の中央側から外周側に向けて順次に解除される、
請求項16から22の何れか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項24】
前記第2の保持部は、前記初期貼り合わせ領域が形成されるまで、前記第2の基板の内周部を保持せず且つ前記第2の基板の外周部を保持し、前記初期貼り合せ領域が形成されたときに前記第2の基板の前記外周部を解放する、
請求項1から23のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項25】
前記第2の保持部は、前記接触領域の拡大が前記第1の基板の半径の半分以上進んだ状態で、前記第2の基板を解放する、
請求項1から24のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項26】
第1の基板を保持する第1の保持部と、
第2の基板を保持する第2の保持部と、
を備え、
前記第1の基板の一部と前記第2の基板の一部との間に接触領域を形成した後、少なくとも前記第2の基板の外周部を前記第2の保持部で保持した状態で前記接触領域を拡大して初期貼り合わせ領域を形成した後、前記第2の基板の前記外周部を前記第2の保持部から解放することにより、前記第1の基板および前記第2の基板を貼り合わせる基板貼り合わせ装置であって、
前記初期貼り合わせ領域は、前記第2の基板の歪みに関する情報に基づいて設定される基板貼り合わせ装置。
【請求項27】
前記第1の基板および前記第2の基板の複数の組み合わせを貼り合わせ、
前記複数の組み合わせのそれぞれの前記第2の基板の歪みに関する情報に応じて、前記接触領域を形成してから前記第2の基板を前記第2の保持部から解放するまでの時間が前記組み合わせごとに異なる、請求項1から26のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項28】
前記初期貼り合わせ領域は、前記第2の基板の前記歪みに関する情報に基づいて算出される、前記第2の基板を凸状に変形させる凸量、前記第2の基板を保持すべく前記第2の基板の外周部分を吸着する吸着面積、前記第2の基板の径方向の吸着位置、および、前記第2の基板の保持を解除するタイミング、の少なくとも一つのパラメータを用いて設定される、請求項1から27の何れか一項に記載の基板貼り合わせ装置。
【請求項29】
第1の基板を第1の保持部に保持する段階と、
第2の基板を第2の保持部に保持する段階と、
前記第1の基板の一部と前記第2の基板の一部との間接触領域拡大して初期貼り合わせ領域を形成する段階と、
前記初期貼り合わせ領域が形成された前記第2の基板を前記第2の保持部から解放することにより、前記第1の基板および前記第2の基板を貼り合わせる段階と
を含
前記初期貼り合わせ領域は、前記第2の基板の歪みに関する情報に基づいて設定される基板貼り合わせ方法。
【請求項30】
前記第2の基板の前記歪みに関する情報に基づいて前記初期貼り合わせ領域を設定する段階を更に含み、
前記初期貼り合わせ領域を設定する段階は、貼り合わされた前記第1の基板および前記第2の基板の間の位置ずれの量が閾値以下となるように、前記初期貼り合わせ領域を設定する段階を含む、
請求項29に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項31】
前記初期貼り合わせ領域を前記設定する段階は、前記第2の基板の貼り合わせ面内における反りの発生位置と反りの大きさとに基づいて、前記初期貼り合わせ領域を設定する段階を含む、
請求項30に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項32】
前記初期貼り合わせ領域が形成されたことを判断する段階と、
前記初期貼り合わせ領域が形成されたと判断された場合に、前記初期貼り合わせ領域が形成された前記第2の基板を前記第2の保持部から解放することにより、前記第1の基板および前記第2の基板を貼り合わせる段階と、
を更に含む、請求項29から31のいずれか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【請求項33】
前記初期貼り合わせ領域は、前記第2の基板の前記歪みに関する情報に基づいて算出される、前記第2の基板凸状に変形させる凸量、前記第2の基板を保持すべく前記第2の基板の外周部分を吸着する吸着面積、前記第2の基板の径方向の吸着位置、および、前記第2の基板の保持を解除するタイミング、の少なくとも一つのパラメータを用いて設定される、請求項29から32の何れか一項に記載の基板貼り合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板貼り合わせ装置、算出装置、基板貼り合わせ方法および算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一対の基板のうち、一方の基板を保持した状態を維持し、他方の基板の保持を解除することにより他方の基板を一方の基板に向けて解放することで、一対の基板を貼り合わせる基板貼り合わせ方法が知られている(例えば、特許文献1)。
[特許文献1]特開2015-95579号公報
【0003】
上記の方法において、貼り合わせ時に解放される一方の基板は、その基板の湾曲状態にかかわらず同一の条件で中心部を押圧して中凸形状に変形させ、その中心部を他方の基板の中心部と当接させて、互いに貼り合わされた領域を外周方向に向けて順次拡大させている。そのため、貼り合わせる一方の基板の湾曲状態に応じて、貼り合わせた二つの基板間に生じる位置ずれ量が大きく異なる場合があった。
【一般的開示】
【0004】
本発明の一態様においては、第1の基板を保持する第1の保持部と、第2の基板を保持する第2の保持部と、を備え、第1の基板の一部と第2の基板の一部との間に初期貼り合わせ領域を形成し、初期貼り合わせ領域が形成された第2の基板を第2の保持部から解放することにより、第1の基板および第2の基板を貼り合わせる基板貼り合わせ装置であって、初期貼り合わせ領域は、第2の基板の歪みに関する情報に基づいて設定される基板貼り合わせ装置が提供される。
【0005】
本発明の一態様においては、第1の基板と凸状に変形させている第2の基板とをそれぞれ保持した状態で互いに接触させ、第2の基板の保持を解除することにより第1の基板と第2の基板とを貼り合わせるときに用いられるパラメータを算出する算出装置であって、第2の基板を凸状に変形させる凸量、第2の基板を保持すべく第2の基板の外周部分を吸着する吸着面積、および、第2の基板の保持を解除するタイミング、の少なくとも一つを、第2の基板の歪みに関する情報に基づいて、算出する、算出装置が提供される。
【0006】
本発明の一態様においては、第1の基板を保持する第1の保持部と、第2の基板を保持する第2の保持部と、を備え、第1の基板の一部と第2の基板の一部とを接触させた後に初期貼り合わせ領域を形成し、初期貼り合わせ領域が形成された第2の基板を第2の保持部から解放することにより、第1の基板および第2の基板を貼り合わせる基板貼り合わせ装置であって、初期貼り合わせ領域は、第1の基板と第2の基板との間の貼り合せ後の位置ずれが閾値以下となる大きさである、基板貼り合わせ装置が提供される。
【0007】
本発明の一態様においては、第1の基板を保持する第1の保持部と、第2の基板を保持する第2の保持部と、を備え、第1の基板の一部と第2の基板の一部との間に初期貼り合わせ領域を形成し、初期貼り合わせ領域が形成された第2の基板を第2の保持部から解放することにより、第1の基板および第2の基板を貼り合わせる基板貼り合わせ装置であって、初期貼り合わせ領域が形成されたことを判断する判断部を更に備え、第2の保持部は、初期貼り合わせ領域が形成されたと判断部により判断された場合に第2の基板を解放する、基板貼り合わせ装置が提供される。
【0008】
本発明の一態様においては、第1の基板を第1の保持部に保持する段階と、第2の基板を第2の保持部に保持する段階と、第1の基板の一部と第2の基板の一部との間に初期貼り合わせ領域を形成する段階と、初期貼り合わせ領域が形成された第2の基板を第2の保持部から解放することにより、第1の基板および第2の基板を貼り合わせる段階とを備え、初期貼り合わせ領域は、第2の基板の歪みに関する情報に基づいて設定される、基板貼り合わせ方法が提供される。
【0009】
本発明の一態様においては、第1の基板と凸状に変形させている第2の基板とをそれぞれ保持した状態で互いに接触させ、第2の基板の保持を解除することにより第1の基板と第2の基板とを貼り合わせるときに用いられるパラメータを算出する算出方法であって、第2の基板を凸状に変形させる凸量、第2の基板を保持すべく第2の基板の外周部分を吸着する吸着面積、および、第2の基板の保持を解除するタイミング、の少なくとも一つのパラメータを、第2の基板の歪みに関する情報に基づいて算出する段階を備える、算出方法が提供される。
【0010】
本発明の一態様においては、第1の基板を第1の保持部に保持する段階と、第2の基板を第2の保持部に保持する段階と、第1の基板の一部と第2の基板の一部との間に初期貼り合わせ領域を形成する段階と、初期貼り合わせ領域が形成された第2の基板を第2の保持部から解放することにより、第1の基板および第2の基板を貼り合わせる段階と、を備え、初期貼り合わせ領域は、第1の基板と第2の基板との間の貼り合せ後の位置ずれが閾値以下となる大きさである、基板貼り合わせ方法が提供される。
【0011】
本発明の一態様においては、第1の基板を第1の保持部に保持する段階と、第2の基板を第2の保持部に保持する段階と、第1の基板の一部と第2の基板の一部との間に初期貼り合わせ領域を形成する段階と、初期貼り合わせ領域が形成されたことを判断する段階と、初期貼り合わせ領域が形成されたと判断された場合に、初期貼り合わせ領域が形成された第2の基板を第2の保持部から解放することにより、第1の基板および第2の基板を貼り合わせる段階とを備える、基板貼り合わせ方法が提供される。
【0012】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】基板貼り合わせ装置100の模式的平面図である。
図2】基板210、230の模式的平面図である。
図3】基板210、230を積層して積層基板290を作製する手順を示す流れ図である。
図4】基板ホルダ220の模式的平面図(A)と、模式的平面図(A)のI-I線で切断した場合の基板210を保持した基板ホルダ220の模式的断面図(B)である。
図5】基板ホルダ240の模式的平面図(A)と、模式的平面図(A)のII-II線で切断した場合の基板230を保持した基板ホルダ240の模式的断面図(B)である。
図6】貼り合わせ部300の模式的断面図である。
図7】貼り合わせ部300の模式的断面図である。
図8】貼り合わせ部300の模式的断面図である。
図9】貼り合わせ部300の模式的断面図である。
図10】貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的断面図である。
図11】貼り合わせ部300の模式的断面図である。
図12】貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的断面図である。
図13】貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的平面図である。
図14】貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的断面図である。
図15】検出器342の動作を説明する模式的断面図である。
図16】検出器342の動作を説明する模式的断面図である。
図17】貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的平面図である。
図18】貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的断面図である。
図19】平坦な保持面を有する固定側用の基板ホルダ240上での基板210、230の貼り合わせ過程を示す部分拡大図である。
図20】平坦な保持面を有する固定側用の基板ホルダ240上での基板210、230の貼り合わせ過程を示す部分拡大図である。
図21】平坦な保持面を有する固定側用の基板ホルダ240上での基板210、230の貼り合わせ過程を示す部分拡大図である。
図22】平坦な保持面を有する固定側用の基板ホルダ240を用いた場合に生じる空気抵抗起因の倍率歪みによる積層基板290での位置ずれを示す模式図である。
図23】湾曲した保持面を有する固定側用の基板ホルダ240を用いて空気抵抗起因の倍率歪みを補正した場合の、基板ホルダ240上での基板210、230の貼り合わせ過程を示す部分拡大図である。
図24】シリコン単結晶基板208における結晶異方性とヤング率との関係を示す模式である。
図25】シリコン単結晶基板209における結晶異方性とヤング率との関係を示す模式である。
図26】貼り合わせの際に生じ得る空気抵抗起因の倍率歪み、及び、結晶異方性起因の歪みによる積層基板290での位置ずれの量が予め定められた閾値以下となるように予め配置が補正された複数の回路領域216が表面に形成されている基板610、630を示す模式図である。
図27】解除側の基板210が局所的な湾曲を有していた場合に生じる非線形歪みによる積層基板290での位置ずれを示す模式図である。
図28】撓み計測と反りの算出方法を説明する図である。
図29】外周通気路822を有する基板ホルダ820を用いて基板210、230を貼り合わせる過程(A)と、最外周通気路622を有する基板ホルダ220を用いて基板210、230を貼り合わせる過程(B)との対比を説明する説明図である。
図30】基板ホルダ920の模式的平面図である。
図31図30の模式的平面図のIII-III線で切断した場合の、基板210を保持した基板ホルダ920の模式的断面図である。
図32】内周通気路931、外周通気路932および最外周通気路933を有する基板ホルダ920を用いて基板210、230を貼り合わせる過程を説明する説明図である。
図33】解除側の基板210におけるグローバル反りの有無に応じて初期貼り合わせ領域の設定を変更する場合を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、発明の実施の形態を説明する。下記の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
図1は、基板貼り合わせ装置100の模式的平面図である。基板貼り合わせ装置100は、筐体110と、貼り合わせる基板210、230を収容する基板カセット120と、少なくとも2つの基板210、230を貼り合わせて作製された積層基板290を収容する基板カセット130と、制御部150と、搬送部140と、貼り合わせ部300と、基板210、230を保持する基板ホルダ220、240を収容するホルダストッカ400と、プリアライナ500とを備える。筐体110の内部は温度管理されており、例えば、室温に保たれる。
【0016】
搬送部140は、単独の基板210、230、基板ホルダ220、240、基板210、230を保持した基板ホルダ220、240、複数の基板210、230を積層して形成した積層基板290等を搬送する。制御部150は、基板貼り合わせ装置100の各部を相互に連携させて統括的に制御する。また、制御部150は、外部からのユーザの指示を受け付けて、積層基板290を製造する場合の製造条件を設定する。更に、制御部150は、基板貼り合わせ装置100の動作状態を外部に向かって表示するユーザインターフェイスも有する。
【0017】
貼り合わせ部300は、各々が基板ホルダ220、240を介して基板210、230を保持する、対向する一対のステージを有する。貼り合わせ部300は、一対のステージに保持させた一対の基板210、230を相互に位置合わせした後、一対の基板210、230のうち一方の保持を維持した状態で、他方の保持を解除することにより他方をその一方に向けて解放することで、一対の基板210、230を互いに接触させて貼り合わせることにより積層基板290を形成する。以降の説明において、基板210を固定側の基板210と呼び、基板230を解除側の基板230と呼ぶ場合がある。
【0018】
プリアライナ500は、基板210、230と基板ホルダ220、240との位置合わせをそれぞれ行い、基板210、230を基板ホルダ220、240に保持させる。基板ホルダ220、240は、アルミナセラミックス等の硬質材料により形成されており、静電チャックや真空チャック等により基板210、230を吸着して保持する。
【0019】
上記のような基板貼り合わせ装置100においては、素子、回路、端子等が形成された基板210、230の他に、未加工のシリコンウエハ、Geを添加したSiGe基板、Ge単結晶基板、III-V族またはII-VI族等の化合物半導体ウエハ、および、ガラス基板等を貼り合わせることもできる。貼り合わせる対象は、回路基板および未加工基板であっても、未加工基板同士であってもよい。貼り合わされる基板210、230は、それ自体が、既に積層された複数の基板を有する積層基板290であってもよい。
【0020】
図2は、基板貼り合わせ装置100において貼り合わせる基板210、230の模式的平面図である。基板210、230はそれぞれ、ノッチ214、234と、複数の回路領域216、236と、複数のアライメントマーク218、238とを有する。
【0021】
複数の回路領域216、236は、基板210、230のそれぞれの表面に形成された構造物の一例であり、基板210、230のそれぞれの表面で面方向に周期的に配される。複数の回路領域216、236の各々には、フォトリソグラフィ技術等によって形成された配線、保護膜等の構造物が設けられる。複数の回路領域216、236には、基板210、230を他の基板230、210、リードフレーム等に電気的に接続する場合に接続端子となるパッド、バンプ等の接続部も配される。接続部も、基板210、230の表面に形成された構造物の一例である。
【0022】
複数のアライメントマーク218、238もまた、基板210、230の表面に形成された構造物の一例であり、複数の回路領域216、236の相互の間に配されたスクライブライン212、232に配される。複数のアライメントマーク218、238は、基板210、230を他の基板230、210と位置合わせする際の指標である。
【0023】
図3は、基板貼り合わせ装置100において一対の基板210、230を積層して積層基板290を作製する手順を示す流れ図である。ここでは、基板230を貼り合わせ部300の一対のステージの固定側にし、基板210を解除側にすると予め決定しているものとする。先ず、制御部150が、少なくとも解除側の基板210における局所的な湾曲に関する情報を取得し(ステップS101)、取得した情報に含まれる基板210の局所的な湾曲の特性に基づいて、解除側の基板210の貼り合わせ面の一部の領域である初期貼り合わせ領域を予め設定する(ステップS102)。なお、局所的な湾曲に関する情報は、歪みに関する情報に含まれる。また、制御部150は、歪に関する情報に基づいて初期貼り合わせ領域を設定する設定部の一例である。
【0024】
次に、制御部150からの出力に基づき、搬送部140は、解除側用の基板ホルダ220と、解除側の基板210とを、順次プリアライナ500に搬入する(ステップS103)。プリアライナ500において、基板210を解除側用の基板ホルダ220に保持させる(ステップS104)。固定側の基板230についても基板210と同様に、制御部150からの出力に基づき、搬送部140が、固定側用の基板ホルダ240と、固定側の基板230とを、順次プリアライナ500に搬入し(ステップS103)、プリアライナ500において、基板230を固定側用の基板ホルダ240に保持させる(ステップS104)。
【0025】
図4は、ステップS104で用いられる基板ホルダ220の模式的平面図(A)と、模式的平面図(A)の基板ホルダ220の中心で屈折するI-I線で切断した場合の基板210を保持した基板ホルダ220の模式的断面図(B)である。基板ホルダ220は、本体部229と突出部材250とを有する。
【0026】
本体部229は、平坦な保持面221と、保持面221上において基板ホルダ220の中心と同心円状に形成された3つの円環状の支持部225、226、227と、保持面221上における複数の支持部225等の間に略等間隔で複数形成された支持ピン224と、保持面221上の略中央において一端が解放されている円筒状に形成された凹部223とを有する。3つの支持部225、226、227は、基板ホルダ220の中心側からこの順で位置する。支持部225は、内周面が円筒状の凹部223の内周面と揃っていて、保持面221上で凹部223の周囲を囲む。支持部227は、基板ホルダ220に保持される基板210の外形と略同一の外形を有する。支持部226は、保持面221上において支持部227よりも少し中心側に位置し、支持部227と共に基板ホルダ220の最外周側に円環状の溝を形成する。支持部225と支持部226との間に形成されている複数の支持ピン224の密度は、支持部226と支持部227との間に形成されている複数の支持ピン224の密度よりも粗である。支持部225等および複数の支持ピン224は、保持面221から同じ量だけ突出し、突出した各先端部は同一平面上に位置する。そのため、支持部225等および複数の支持ピン224の突出した各先端部は何れも、基板ホルダ220に載置された基板210に接する。なお、図4の(A)では、説明の明確化のため、複数の支持ピン224の図示を省略している。以下、基板210の面内における径方向の中央側の領域であって、基板ホルダ220の支持部225と支持部226との間で吸着される領域を、基板210の内周領域と呼ぶ場合がある。また、基板210の面内における径方向の外側の領域であって、基板ホルダ220の支持部226と支持部227との間で吸着される領域を、基板210の最外周領域と呼ぶ場合がある。
【0027】
本体部229は更に、凹部223の内周壁に外周が接続された2枚の板バネ255と、外周が2枚の板バネ255の内周に接続された円柱状の突出部材250とを有する。突出部材250は、板バネ255が外部から一定以上の凹部223から離れる方向の力を受けて弾性変形することによって、支持部225等および複数の支持ピン224の突出した各先端部が位置する平面から突出する。突出部材250は、板バネ255が外部から一定以上の凹部223から離れる方向の力を受けていない状態において、該平面から突出しない。なお、突出部材250は、板バネ255の弾性力によって該平面から突出し、外部から凹部223側への一定以上の押し込み荷重を受けた場合に、凹部223内へと押し込まれる構成としてもよい。この場合の板バネ255の弾性力は、少なくとも基板210を変形させるのに必要な力を有する。
【0028】
本体部229は更に、中心通気路625と、内周通気路621と、最外周通気路622とを有する。中心通気路625は、凹部223の底面に開口した排気孔を一端に有し、他端が基板ホルダ220の外部の制御バルブ721を介して正圧源731および開放端741に選択的に結合される。内周通気路621は、保持面221上における支持部225と支持部226との間であって複数の支持ピン224が形成されていない箇所に開口した、略等間隔で位置する複数の吸気孔を一端に有し、他端が基板ホルダ220の外部の制御バルブ724を介して負圧源734および開放端744に選択的に結合される。最外周通気路622は、保持面221上における支持部226と支持部227との間であって複数の支持ピン224が形成されていない箇所に開口した、略等間隔で位置する複数の吸気孔を一端に有し、他端が基板ホルダ220の外部の制御バルブ727を介して負圧源737および開放端747に選択的に結合される。最外周通気路622の一端における複数の吸気孔は、内周通気路621の一端における複数の吸気孔よりも数が多く、より密に配されている。最外周通気路622の一端における複数の吸気孔は、基板210の最外周領域を吸着可能とすべく基板ホルダ220の最外周に設けられているが、図4の(B)に示されるように最外周通気路622を基板ホルダ220の内部で面方向に延びるように形成することで、その他端を基板ホルダ220の中心側に寄せて配置している。これにより、基板ホルダ220は、基板ホルダ220を保持して基板ホルダ220の各通気路に吸気又は排気を与えるための空気配管が基板ホルダ220保持面の中央に集中して形成されているバキュームプレートや基板貼り合わせステージなどにも適応可能である。
【0029】
制御バルブ724、727は、制御部150の制御の下に、内周通気路621、最外周通気路622のそれぞれを負圧源734、737に選択的に連通させる。基板210が支持部225等および複数の支持ピン224上に載置された状態で、制御バルブ724、727が内周通気路621、最外周通気路622のそれぞれを負圧源734、737に連通させた場合、内周通気路621および最外周通気路622のそれぞれの複数の吸気孔に負圧が作用する。これにより、基板210と保持面221との間であって、支持部225と支持部226との間の空間、及び、支持部226と支持部227との間の空間がそれぞれ減圧され、基板210が基板ホルダ220に吸着される。一方で、基板210が基板ホルダ220に吸着された状態から、制御バルブ724、727が内周通気路621、最外周通気路622のそれぞれを開放端744、747に連通させた場合、基板ホルダ220による基板210の吸着が解除される。内周通気路621と最外周通気路622とは、制御部150によって別個に制御される制御バルブ724、727にそれぞれ結合され、それぞれの一端の複数の吸着孔が支持部226によって互いに隔離された各空間に開口しているので、基板ホルダ220は、制御部150の制御の下に、基板210の内周領域と最外周領域とを別個に吸着でき、且つ、別個に吸着を解除できる。換言すると、基板ホルダ220は、互いに隔離されて独立している2つの吸着領域を有している。
【0030】
制御バルブ721は、制御部150の制御の下に、中心通気路625を正圧源731および開放端741に選択的に連通させる。制御バルブ721が中心通気路625を正圧源731に連通させた場合、中心通気路625の排気孔に正圧が作用して、凹部223、板バネ255および突出部材250で包囲された空間が加圧され、板バネ255が凹部223から離れる方向に弾性変形されることによって突出部材250が上記の平面から突出し、その結果、支持部225の内側に位置する基板210の一部の領域が同方向に変形される。基板ホルダ220は、制御部150の制御の下に、基板210を吸着した状態でこのように基板210を変形させることによって、基板210の該一部の領域を基板ホルダ220から離れる方向に急峻に突出させることができ、また、加える荷重を調整することによって、その突出量を調整できる。突出部材250の突出量は、制御部150によって、基板210の局所的な湾曲の特性に基づいて設定される。制御部150は、突出部材250の突出量を調整することによって、初期貼り合わせ領域803の大きさを調整する。
【0031】
図4の(B)における模式的断面図には、基板ホルダ220が、基板210を吸着した状態で、突出部材250を上記の平面から突出させることによって基板210の中央付近の領域Cを急峻に突出させた状態が示されている。図中、突出部材250の当接部251までの高さAは、凹部223の深さと支持部225の高さとの和Bよりも高く、当接部251は上記の平面から突出している。これにより、基板ホルダ220に吸着された平坦な基板210の中央付近の領域Cには急峻に突出した隆起部215が形成される。隆起部215の高さDは、突出部材250の当接部251が上記の平面から突出する量と同程度またはそれよりも僅かに高く、例えば、当接部251が突出する量が50μmの場合、隆起部215の高さDは約70μmとなる。
【0032】
本体部229は更に、保持面221上における支持部225と支持部226との間であって複数の支持ピン224が形成されていない3箇所に形成された、基板ホルダ220を厚さ方向に貫通する3つの観察孔601、602、603と、保持面221上における支持部226と支持部227との間に形成された、基板ホルダ220を厚さ方向に貫通する観察孔604とを有する。4つの観察孔601、602、603、604は、図4の(A)の模式的平面図において基板ホルダ220の中心で屈折する直線状のI-I線と重なって示されるように、基板ホルダ220の径方向に沿う略同一直線上に位置する。3つの観察孔601、602、603は、基板ホルダ220の中心寄りに、基板ホルダ220の中心側からこの順で略等間隔に位置する。なお、観察孔601等はそれぞれ、基板210を観察する場合に使用する照明光の波長に対して透明な材料で充填され、観察孔601等の両端は、基板ホルダ220の両平面と共に、円滑に形成される。
【0033】
基板ホルダ220の観察孔601等に対して、基板210の所定の箇所が対向するように、基板ホルダ220と基板210とが位置合わせされる。具体的には、基板貼り合わせ装置100の制御部150から送信される基板210の局所的な湾曲に関する情報に基づいて、プリアライナ500が、基板ホルダ220に設けられた観察孔601から604が位置する線上に、基板210の所定の箇所が位置するように、基板ホルダ220と基板210とを位置合わせする。例えば、プリアライナ500は、基板210の面内における局所的な湾曲が最も大きい箇所が、基板ホルダ220に設けられた観察孔601から604が位置する線上に位置するよう位置合わせする。
【0034】
なお、基板ホルダ220の突出部材250は、空圧によって突出量が調整される構成として説明したが、この構成に代えて、突出部材250を着脱可能にし、高さが異なる複数の突出部材250を交換することによって突出量を可変としてもよい。これによっても、空圧式の突出部材250と同様に、所望の突出量を提供できる。
【0035】
図5は、基板ホルダ240の模式的平面図(A)と、模式的平面図(A)のII-II線で切断した場合の基板230を保持した基板ホルダ240の模式的断面図(B)である。基板ホルダ240は、本体部249を有する。
【0036】
本体部249は、平坦な保持面241と、保持面241上において基板ホルダ240の中心と同心円状に形成された円環状の支持部247と、保持面241上における支持部247の内側に略等間隔で複数形成された支持ピン244とを有する。支持部247は、基板ホルダ240に保持される基板230の外形と略同一の外形を有する。支持部247および複数の支持ピン244は、保持面241から同じ量だけ突出し、突出した各先端部は同一平面上に位置する。そのため、支持部247および複数の支持ピン244の突出した各先端部は何れも、基板ホルダ240に載置された基板230に接する。なお、図5の(A)では、説明の明確化のため、複数の支持ピン244の図示を省略している。
【0037】
本体部249は更に、保持面241上における支持部247の内側であって複数の支持ピン244が形成されていない箇所に開口した、略等間隔で位置する複数の吸気孔を一端に有し、他端が基板ホルダ240の外部の制御バルブ751を介して負圧源761および開放端771に選択的に結合される通気路640を備える。通気路640の一端における複数の吸気孔は基板ホルダ240の最外周にまで設けられているが、図5の(B)に示されるように通気路640を基板ホルダ240の内部で面方向に延びるように形成することで、その他端を基板ホルダ220の略中央に配置している。これにより、基板ホルダ240は、基板ホルダ220と同様に、基板ホルダ240を保持して基板ホルダ240の通気路640に吸気を与えるための空気配管が基板ホルダ240保持面の中央に集中して形成されているバキュームプレートや基板貼り合わせステージなどにも適応可能である。
【0038】
制御バルブ751は、制御部150の制御の下に、通気路640を負圧源761に選択的に連通させる。基板230が支持部247および複数の支持ピン244上に載置された状態で、制御バルブ751が通気路640を負圧源761に連通させた場合、通気路640の複数の吸気孔に負圧が作用する。これにより、基板230と保持面241との間であって支持部227の内側の空間が減圧され、基板230が基板ホルダ240に吸着される。一方で、基板230が基板ホルダ240に吸着された状態から、制御バルブ751が通気路640を開放端771に連通させた場合、基板ホルダ240による基板230の吸着が解除される。図5の(B)における模式的断面図には、基板ホルダ240が、基板230を吸着した状態が示されており、基板ホルダ240に吸着された基板230は、上記の平面に位置し、平坦な状態である。
【0039】
なお、図4および図5のそれぞれに示された基板ホルダ220、240は何れも、本体部229、249の断面形状が略方形のものとして説明したが、これに代えて、周縁部から中央部に向けて厚さが徐々に増加する断面形状等を有してもよい。これにより、基板ホルダ220、240に吸着して保持された基板210、230は、保持面221、241に密着して、保持面221、241の形状に倣って全体が湾曲する。よって、保持面221、241の表面が曲面、例えば、円筒面、球面、放物面等をなす場合は、吸着された基板210、230も、そのような曲面をなすように全体の形状が変化する。
【0040】
基板210、230を個別に保持した基板ホルダ220、240を、図6に示すように、貼り合わせ部300に順次搬入して各ステージに固定する(ステップS105)。ここからの説明において適宜参照する図6から図9、及び、図11は、貼り合わせ部300の模式的断面図である。ここで、貼り合わせ部300は、枠体310、上ステージ322および下ステージ332を備える。
【0041】
上ステージ322は、枠体310の天板316に下向きに固定される。上ステージ322は、真空チャック、静電チャック等の保持機能を有する。図示の状態において、上ステージ322には、既に、基板210を保持した基板ホルダ220が保持されている。上ステージ322は、保持した基板ホルダ220の4つの観察孔601、602、603、604の各位置に対応して設けられた4つの観察窓361、362、363、364を有する。観察窓361等の各々は、基板210を観察する場合に使用する照明光の波長に対して透明な材料で充填され、上ステージ322の下面は、観察窓361等が形成された領域も含めて、平坦な面を形成している。
【0042】
貼り合わせ部300は更に、上ステージ322の4つの観察窓361等に対応する位置に、枠体310の天板316を厚さ方向に貫通して設けられた4つの検出器341、342、343、344を備える。4つの検出器341等は、上ステージ322の下面に光学的に連通する4つの観察窓361等と、基板ホルダ220の4つの観察孔601等とを通じて、貼り合わせ部300内で基板210、230間における貼り合わせ領域の広がりを観察する観察部345を形成する。観察部345は、初期貼り合わせ領域が貼り合わされたと判断する判断部の一例である。
【0043】
4つの検出器341等は、例えば、受光部と光源とを用いて形成できる。この場合、上ステージ322に基板210を保持した基板ホルダ220が保持されると、4つの観察窓361等、及び、4つの観察孔601等を通じて、基板210、230等による反射光の光強度を4つの検出器341等で検出できる。
【0044】
貼り合わせ部300の下ステージ332は、枠体310の底板312に配されたX方向駆動部331に重ねられたY方向駆動部333の図中上面に搭載される。下ステージ332も、真空チャック、静電チャック等の保持機能を有する。図示の状態において、下ステージ332には、既に、基板230を保持した基板ホルダ240が保持されている。
【0045】
天板316には、顕微鏡324および活性化装置326が上ステージ322の側方に固定される。顕微鏡324は、下ステージ332に間接的に保持された基板210の上面を観察できる。活性化装置326は、下ステージ332に間接的に保持された基板210の上面を清浄化するプラズマを発生する。
【0046】
X方向駆動部331は、底板312と平行に、図中に矢印Xで示す方向に移動する。Y方向駆動部333は、X方向駆動部331上で、底板312と平行に、図中に矢印Yで示す方向に移動する。X方向駆動部331およびY方向駆動部333の動作を組み合わせることにより、下ステージ332は、底板312と平行に二次元的に移動する。
【0047】
また、下ステージ332は、底板312に対して垂直に、矢印Zで示す方向に昇降する昇降駆動部338により支持される。これにより、下ステージ332は、Y方向駆動部333に対して昇降できる。このように、下ステージ332は、基板210を保持した基板ホルダ220を保持している上ステージ322との間で、基板ホルダ220に保持された基板210と基板ホルダ240に保持された基板230との相対位置を変位させる。
【0048】
X方向駆動部331、Y方向駆動部333および昇降駆動部338による下ステージ332の移動量は、干渉計等を用いて精密に計測される。
【0049】
Y方向駆動部333には、顕微鏡334および活性化装置336が、それぞれ下ステージ332の側方に搭載される。顕微鏡334は、上ステージ322に間接的に保持された下向きの基板230の下面を観察できる。活性化装置336は、上ステージ322に間接的に保持された基板230の下面を清浄化するプラズマを発生する。尚、この活性化装置326および336を貼り合わせ部300とは別の装置に設け、上面を活性化した基板および基板ホルダをロボットによって活性化装置326、336から貼り合わせ部300へと搬送するようにしてもよい。
【0050】
なお、貼り合わせ部300は、底板312に対して垂直な回転軸の回りに下ステージ332を回転させる回転駆動部、および、下ステージ332を揺動させる揺動駆動部を更に備えてもよい。これにより、下ステージ332を上ステージ322に対して平行にすると共に、下ステージ332に間接的に保持された基板210を回転させて、基板210、230の位置合わせ精度を向上させることができる。
【0051】
顕微鏡324、334は、制御部150により、焦点を相互に合わせたり共通の指標を観察させたりすることによって較正される。これにより、貼り合わせ部300における一対の顕微鏡324、334の相対位置が測定される。
【0052】
図6に示した状態に続いて、図7に示すように、制御部150は、X方向駆動部331およびY方向駆動部333を動作させて、顕微鏡324、334により基板210、230の各々に設けられたアライメントマーク218、238を検出させる(ステップS106)。
【0053】
次に、相対位置が既知である顕微鏡324、334で基板210、230のアライメントマーク218、238の位置を検出することにより、基板210、230の相対位置を算出する(ステップS107)。これにより、基板210、230を位置合わせする場合には、一対の基板210、230において対応するアライメントマーク218、238間の位置ずれ量が予め定められた閾値以下となるように、または、基板210、230間で対応する回路領域216、236または接続部の位置ずれ量が予め定められた閾値以下となるように、基板210、230の相対移動量を算出すればよい。位置ずれは、積層された基板210、230の間における、対応するアライメントマーク218、238同士の位置ずれ、および、対応する接続部同士の位置ずれを指し、二つの基板210、230のそれぞれに生じる歪みの量の差に起因する位置ずれを含む。
【0054】
ここで、上記の位置ずれ量に対する閾値とは、基板210、230の相互の貼り合わせが完了したときに、基板210、230間に電気的な導通が可能となるずれ量であってもよく、基板210、230にそれぞれ設けられた構造物同士が少なくとも一部で接触するときのずれ量であってもよい。制御部150は、基板210、230間の位置ずれが閾値以上になった場合に、接続部同士が接触しない又は適切な電気的導通が得られない状態、もしくは接合部間に所定の接合強度が得られない状態であると判断してもよい。また、基板210、230の貼り合わせ過程で生じる歪みを貼り合わせ前に予め対処する場合、すなわち、貼り合わせを完了したときにその歪みによる位置ずれが補正されるように基板210、230の少なくとも一方を貼り合わせ前に変形させる場合は、一方の基板が変形した状態での位置を基準に閾値が設定されてもよい。
【0055】
図7に示した状態に続いて、図8に示すように、制御部150は、一対の基板210、230の相対位置を記録し、一対の基板210、230の各々の貼り合わせ面を化学的に活性化する(ステップS108)。制御部150は、まず、下ステージ332の位置を初期位置にリセットした後に水平に移動させて、活性化装置326、336の生成したプラズマにより基板210、230の表面を走査させる。これにより、基板210、230のそれぞれの表面が清浄化され、化学的な活性が高くなる。なお、ステップS108における、基板210、230の活性化は、ステップS106の前に行ってもよい。また、基板210、230の活性化は、基板210、230を基板貼り合わせ装置100に搬入する前に行ってもよい。また、基板210、230の活性化は、基板210、230を一旦基板貼り合わせ装置100の外部に搬出して、外部で活性化した後、再度基板貼り合わせ装置100に搬入してもよい。
【0056】
プラズマに暴露する方法の他に、不活性ガスを用いたスパッタエッチング、イオンビーム、または、高速原子ビーム等により基板210、230の表面を活性化することもできる。イオンビームや高速原子ビームを用いる場合は、貼り合わせ部300を減圧下にして生成することが可能である。また更に、紫外線照射、オゾンアッシャー等により基板210、230を活性化することもできる。更に、例えば、液体または気体のエッチャントを用いて、基板210、230の表面を化学的に清浄化することにより活性化してもよい。基板210、230の表面の活性化後、基板210、230の表面を親水化装置により親水化してもよい。
【0057】
図8に示した状態に続いて、図9に示すように、制御部150は、基板210、230を相互に位置合わせする(図3のステップS109)。制御部150は、まず、最初に検出した顕微鏡324、334の相対位置と、ステップS106において検出した基板210、230のアライメントマーク218、238の位置とに基づいて、基板210、230の互いに対応する構造物の位置ずれ量が、少なくとも貼り合わせを完了したときに閾値以下となるように、下ステージ332を移動させる。
【0058】
図10は、貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的断面図である。図10は、図9に示したステップS109の状態における基板210、230の状態を示している。図示のように、それぞれが基板ホルダ220、240を介して上ステージ322および下ステージ332に保持された基板210、230は、互いに位置合わせされた状態で対向する。図示される通り、基板ホルダ220に吸着された平坦な基板210の中央付近の領域Cには急峻に突出した隆起部215が形成されているので、対向する基板210、230の間隔は、基板210、230の中央付近が周縁部よりも小さい。
【0059】
図9及び図10に示した状態に続いて、図11に示すように、制御部150は、昇降駆動部338を動作させて下ステージ332を上昇させ、基板210、230を相互に接近させる。そして、基板210、230の一部が互いに接触して、接触領域である貼り合わせ領域が形成される(ステップS110)。具体的には、基板210の隆起部215と、隆起部215に対向する基板230の一部の領域とが互いに接触して、既に活性化されている接触箇所に貼り合わせ領域が形成される。
【0060】
図12は、貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的断面図である。図12は、図11に示したステップS110の状態における基板210、230の状態を模式的に断面で示している。この段階において、制御部150は、制御バルブ724、727、751を制御して、基板ホルダ220の内周通気路621及び最外周通気路622と、基板ホルダ240の通気路640とを、それぞれ負圧源734、737、761に連通させている。よって、基板210、230は、それぞれ基板ホルダ220、240に吸着されており、上記の接触箇所以外の部分で、基板210、230が接触することは抑制されている。このように、突出部材250を有する基板ホルダ220を用いることにより、基板210、230にはただひとつの接触箇所が形成され、その結果、複数の接触箇所が別個に形成されることに起因する貼り合わせ面内のボイドの発生を抑止することができる。
【0061】
図13は、貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的平面図である。具体的には、図11および12に示したステップS110の状態における基板210、230の状態を模式的に基板210の背面の側から平面視で示している。基板210、230の間には、その面方向中央付近に貼り合わせ領域801が形成されている。このため、基板210、230は、中央付近から、基板210、230の径方向外側に向かって貼り合わせ領域801を広げる。
【0062】
図13には、制御部150によって予め設定された、基板210、230と略同心円状の円形の初期貼り合わせ領域803が示されている。本実施形態では、制御部150が、半径が異なる3つの同心円状の初期貼り合わせ領域803を予め定めておき、解除側の基板210の局所的な湾曲に関する情報に含まれる基板210の局所的な湾曲の特性に基づいて、この3つの初期貼り合わせ領域803のうちから1つの初期貼り合わせ領域803を選択する構成としている。このような構成に伴い、3つの初期貼り合わせ領域803に対応して、基板ホルダ220には予め3つの観察孔601、602、603が設けられ、貼り合わせ部300の上ステージ322には3つの観察窓361から363が設けられている。制御部150が解除側の基板210の局所的な湾曲の特性に基づいて1つの初期貼り合わせ領域803を選択した場合、対応する観察孔と観察窓と検出器とが使用される。図13では、選択された初期貼り合わせ領域803の周縁に、対応する観察孔602が位置している様子が示されている。
【0063】
図14は、貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的断面図である。図12及び図13に示した状態に続いて、図14に示すように、制御部150は、上ステージ322において制御バルブ724を切り替えて、基板ホルダ220の内周通気路621を開放端744に連通させる。これにより、図中上側の基板210の内周領域は、基板ホルダ220による保持を解除され(ステップS111)、活性化された表面相互の分子間力等により、基板210、230が相互に自律的に貼り合わされる。この間、基板ホルダ220の最外周通気路622は未だ負圧源737に連通された状態が維持されている。これにより、図中上側の基板210の最外周領域は、基板ホルダ220による保持が維持され続ける。
【0064】
基板210、230の表面は活性化されているので、一部が接触すると、基板210、230同士の分子間力により、隣接する領域が自律的に相互に吸着されて貼り合わされる。よって、例えば、上ステージ322に保持された基板ホルダ240による基板230の保持を解除することにより、基板210、230が貼り合わされた領域は、接触した部分から隣接する領域に順次拡がる。これにより、貼り合わされた領域が順次拡がっていくボンディングウェーブが発生し、基板210、230の貼り合わせが進行する。
【0065】
ステップS111の実行後に、制御部150は、初期貼り合わせ領域803が貼り合わされたか否かを判断する(ステップS112)。図15および16は、検出器342の動作を説明する模式的断面図である。図15は、ステップS111の実行後に、3つの初期貼り合わせ領域803のうちから選択された1つの初期貼り合わせ領域803に対して使用される検出器342による検出範囲で、基板210、230が接触する直前の状態を部分的に拡大して示す図である。図15に示した領域は、図14に点線Bで示した領域に対応する。
【0066】
図示の状態においては、基板210、230相互の間に間隙G2が残っている。間隙G2は、貼り合わせ部300内部の雰囲気等が基板210、230に挟まれることにより形成される。基板210、230に挟まれた雰囲気等は、基板210、230同士の分子間力により隣接する領域が自律的に相互に吸着されて順次貼り合わされることによって押し出され、やがて、基板210、230は相互に密着して貼り合わされるが、解除側の基板210の局所的な湾曲の特性、挟まれる雰囲気の密度等により、基板210、230が貼り合わされるまでに要する時間は、基板210、230の周方向に異なり得る。もちろん、当該時間は、基板210、230毎に、基板210、230の種類毎に、製造プロセス毎に、又は、製造ロット毎に異なり得る。
【0067】
貼り合わせ部300においては、基板210、230が上ステージ322および下ステージ332に挟まれた状態であっても、基板210の初期貼り合わせ領域803の周縁における領域が、観察孔602および観察窓362を通じて検出器342に光学的に連通する。図示の例では、検出器342は、光源351および受光部352を有する。
【0068】
光源351は、少なくとも一部が基板210を透過する波長の照射光を発生する。光源351が発生した照射光は、観察窓362および観察孔602を通じて基板210に向かって照射される。受光部352は、フォトダイオード等の光電気変換素子を有し、基板210、230等により反射された照射光を受光して、反射光強度に応じた電気信号を発生する。受光部352が発生した電気信号は、制御部150に入力される。
【0069】
図中に一点鎖線で示すように、上ステージ322および下ステージ332の間では、屈折率が異なる媒体の境界に反射面が形成される。図示の例では、観察孔602と間隙G1との境界、間隙G1と基板210との境界、基板210と間隙G2との境界、間隙G2と基板230との境界、基板230と間隙G3との境界、間隙G3と基板ホルダ240との境界のそれぞれに反射面O、P、Q、R、S、Tが形成される。よって、観察窓362および観察孔602を通じて検出器341の光源351から照射された照射光は、反射面O、P、Q、R、S、Tの各々において反射され、再び観察孔602および観察窓362を通じて受光部352に入射することで、反射光の強度が検出される。
【0070】
図16は、図15と同じ視点において、ステップS111の実行後に、基板210の初期貼り合わせ領域803が貼り合わされた状態を部分的に拡大して示す図である。基板210、230が貼り合わされて互いに密着すると、基板210、230とギャップG2との間に形成された一対の反射面R、Qが消滅する。このため、検出器342の照射光を反射する反射面の数が減り、検出器342が検出する反射光強度が低下する。よって、検出器342から出力される検出情報に基づいて、制御部150は、基板210の初期貼り合わせ領域803が貼り合わされたと判断できる。なお、ギャップG2が消滅する前のギャップG2の減少過程では、検出器342が検出する反射光強度に変化はあるものの、ギャップG2の減少に連れて反射光強度が減少するのではなく、照射光と反射光との間で干渉が起きることで反射光の明暗が繰り返される。
【0071】
図17は、貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的平面図である。具体的には、図16に示した基板210、230の状態を模式的に基板210の背面の側から平面視で示している。図13に示した基板210、230における貼り合わせ領域801は、基板210、230の中央付近から径方向外側に向かって広がったことが示されているが、貼り合わせ領域801の広がりの進行度合いは、基板210、230の周方向に不規則である。
【0072】
ステップS111の実行後に、制御部150は、検出器342から出力される検出情報に基づいて、基板210の初期貼り合わせ領域803が貼り合わされていないと判断した場合(ステップS112:NO)、引き続き検出器342からの検出情報を受信して判断を続行し、基板210の初期貼り合わせ領域803が貼り合わされたと判断した場合(ステップS112:YES)、上ステージ322において制御バルブ727を切り替えて、基板ホルダ220の最外周通気路622を開放端747に連通させる。これにより、図中上側の基板210の最外周領域も、基板ホルダ220による保持を解除され(ステップS113)、活性化された表面相互の分子間力等により、基板210、230の周縁まで相互に自律的に貼り合わされる。
【0073】
すなわち、図示の例では、制御バルブ724を切り替えて基板ホルダ220の内周通気路621を開放端744に連通させることにより基板210のボンディングウェーブが発生してから、基板210の最外周領域が基板ホルダ220により保持されていることによって基板210に生じる吊り上げ力によりボンディングウェーブが停止するまでの間において、初期貼り合わせ領域803が貼り合わされたと判断されたとき又はその後に、最外周通気路622が開放端747に連通されることにより基板210の最外周領域が基板ホルダ220から解放される。
【0074】
なお、図15および図16では、図中で照射光と反射光とを区別しやすくする目的で、照射光を基板210、230に対して傾けて照射しているかのように記載した。しかしながら、照射光を基板210、230に対して垂直に照射しても、ハーフミラー等の光学デバイスを用いることにより、反射光強度を検出する光学系を形成することができる。また、検出器342は、受光部352に換えて、CCD、CMOSセンサ等のイメージセンサを用いてもよい。また、検出器342の上記構造は、図6等に示した他の検出器341、343、344にも適用できる。
【0075】
図18は、貼り合わせ過程における基板210、230の状態を示す模式的断面図である。ステップS113の実行後に、制御部150は、基板210の周縁に位置する検出器344から出力される検出情報に基づいて、基板210、230の貼り合わせが完了していないと判断した場合(ステップS114:NO)、引き続き検出器344からの検出情報を受信して判断を続行し、基板210、230の貼り合わせが完了したと判断した場合(ステップS114:YES)、すなわち、図18に示されるように基板210、230の貼り合わせ面内におけるボンディングウェーブの進行が完了した場合、所定時間の後に、基板210、230から形成された積層基板290を、搬送部140によって基板ホルダ240と共に貼り合わせ部300から搬出する(ステップS115)。その後、プリアライナ500において積層基板290と基板ホルダ240とを分離し、搬送部140によって積層基板290を基板カセット130に搬送する。なお、貼り合わせ部300において積層基板290と基板ホルダ240とを分離し、積層基板290単体を搬送部140によって貼り合わせ部300から搬出し、基板カセット130に搬送してもよい。
【0076】
次に、初期貼り合わせ領域803の設定方法について説明する。特に、局所的な湾曲の特性に基づいて初期貼り合わせ領域803を設定する例を説明する。ここで、貼り合わせる前における解除側の基板210に局所的な湾曲が生じていると、貼り合わせ時に非線形歪みが生じる一要因となる。この場合、貼り合わせ部300において、アライメントマーク218、238等に基づいて基板210、230の面方向における位置合わせをした場合であっても、基板210、230間の位置ずれを解消することができない場合がある。そこで、図3に示したステップS101およびステップS102においては、制御部150が、解除側の基板210の局所的な湾曲に関する情報を取得し、取得した情報に含まれる基板210の局所的な湾曲の特性に基づいて、解除側の基板210の初期貼り合わせ領域803を予め設定する。そして、制御部150は、図14から18に示したように、貼り合わせ領域801が基板210、230の中央付近から外周に向かって広がることで予め設定した初期貼り合わせ領域803が貼り合わされることを検出するまで、基板ホルダ220による基板210の最外周領域の保持を維持する。
【0077】
ここで、基板210、230に生じる歪みとは、基板210、230のそれぞれにおける構造物の設計座標すなわち設計位置からの変位である。基板210、230に生じる歪みは、平面歪み及び立体歪みを含む。
【0078】
平面歪みは、基板210、230の貼り合わせ面に沿った方向に生じた歪みであり、基板210、230のそれぞれの構造物の設計位置に対して変位した位置が線形変換により表される線形歪みと、線形変換により表すことができない、線形歪み以外の非線形歪みと、を含む。
【0079】
線形歪みは、変位量が中心から径方向に沿って一定の増加率で増加する倍率歪みを含む。倍率歪みは、基板210、230の中心からの距離Xにおける設計値からのずれ量をXで除算することにより得られる値であり、単位はppmである。倍率歪みには、等方倍率歪みが含まれる。等方倍率歪みは、設計位置からの変位ベクトルが有するX成分およびY成分が等しい、すなわち、X方向の倍率とY方向の倍率とが等しい歪みである。一方で、設計位置からの変位ベクトルが有するX成分およびY成分が異なる、すなわち、X方向の倍率とY方向の倍率とが異なる歪みである非等方倍率歪みは、非線形歪みに含まれる。
【0080】
本実施形態では、二つの基板210、230のそれぞれにおける構造物のうち、少なくとも回路領域216、236の設計位置を基準とした倍率歪みの差が、二つの基板210、230間の位置ずれ量に含まれる。なお、貼り合わされる二つの基板210、230のそれぞれにおける回路領域216、236の設計位置は、貼り合わせによって生じる倍率歪みの差に起因する位置ずれ量を考慮して、異なるように設計されてもよい。
【0081】
また、線形歪みは、直交歪みを含む。直交歪みは、基板の中心を原点として互いに直交するX軸およびY軸を設定したときに、構造物が原点からY軸方向に遠くなるほど大きな量で、設計位置からX軸方向に平行に変位している歪みである。当該変位量は、X軸に平行にY軸を横切る複数の領域のそれぞれにおいて等しく、変位量の絶対値は、X軸から離れるに従って大きくなる。さらに直交歪みは、Y軸の正側の変位の方向とY軸の負側の変位の方向とが互いに反対である。
【0082】
基板210、230の立体歪みは、基板210、230の貼り合わせ面に沿った方向以外の方向すなわち貼り合わせ面に交差する方向への変位である。立体歪みには、基板210、230が全体的にまたは部分的に曲がることにより基板210、230の全体または一部に生じる湾曲が含まれる。ここで、「基板が曲がる」とは、基板210、230が、当該基板210、230上の3点により特定された平面上に存在しない点を基板210、230の表面が含む形状に変化することを意味する。
【0083】
また、湾曲とは、基板の表面が曲面をなす歪みであり、例えば基板210、230の反りが含まれる。本実施形態においては、反りは、重力の影響を排除した状態で基板210、230に残る歪みをいう。反りに重力の影響を加えた基板210、230の歪みを、撓みと呼ぶ。なお、基板210、230の反りには、基板210、230全体が概ね一様な曲率で屈曲するグローバル反りと、基板210、230の一部で局所的な曲率が変化して屈曲する、ローカル反りとが含まれる。
【0084】
ここで、倍率歪みは、発生原因によって初期倍率歪み、吸着倍率歪み、及び、貼り合わせ過程倍率歪みに分類される。
【0085】
初期倍率歪みは、アライメントマーク218、回路領域216等を基板210、230に形成するプロセスで生じた応力、スクライブライン212、回路領域216等の配置に起因する周期的な剛性の変化等により、基板210、230の設計仕様に対する乖離として、基板210、230を貼り合わせる前の段階から生じている。よって、基板210、230の初期倍率歪みは、基板210、230の積層を開始する前から知ることができ、例えば、基板210、230を製造した前処理装置から初期倍率歪みに関する情報を制御部150が取得してもよい。
【0086】
吸着倍率歪みは、反り等の歪みが生じた基板210、230が、貼り合わせされることにより、または、平坦な保持部材に吸着されることにより、基板210、230に生じる歪みである。反りが生じた基板210、230を平坦な基板ホルダ220、240や下ステージ332に吸着して保持させると、基板210、230は、平坦な基板ホルダ220、240や下ステージ332の保持面の形状に倣って変形する。ここで、基板210、230が、反りを有する状態から基板ホルダ220、240や下ステージ332の保持面の形状に倣った状態に変化すると、保持する前に比べて基板210、230の歪み量が変化する。
【0087】
これにより、基板210、230の表面における回路領域216の設計仕様に対する歪み量が保持する前に比べて変化する。基板210、230の歪み量の変化は、基板210、230に形成された回路領域216等の構造物の構造、当該構造物を形成するためのプロセス、保持前の基板210、230の反りの大きさ等に応じて異なる。吸着倍率歪みの大きさは、基板210、230に反り等の歪みが生じている場合に、その歪みと吸着倍率歪みとの相関を予め調べておくことにより、基板210、230の反り量および反り形状等を含む歪みの状態から算出できる。
【0088】
貼り合わせ過程倍率歪みは、貼り合わせの過程で基板210、230に生じる歪みに起因して、新たに生じる倍率歪みの変化である。図19図20および図21は、平坦な保持面を有する固定側用の基板ホルダ240上での基板210、230の貼り合わせ過程を示す部分拡大図である。図19図20および図21には、貼り合わせ部300で貼り合わされる過程にある基板210、230における、基板210、230が相互に接触した接触領域と、基板210、230が相互に接触せずに離れていてこれから貼り合わされる非接触領域との境界Kの付近の領域Qを拡大して示す。
【0089】
図19に示すように、互いに部分的に接触している基板210、230の接触領域が中央から外周に向かって面積を拡大する過程で、境界Kは、基板210、230の中央側から外周側に向かって移動する。境界K付近において、基板ホルダ220による保持を解除された基板210には、基板230との間に介在する雰囲気に起因して、より具体的には、例えば基板230との間に介在する空気を追い出す際の空気抵抗に起因して伸びが生じる。更に具体的には、境界Kにおいて、基板210の厚さ方向の中央の面に対して、基板210の図中下面側においては基板210が伸び、図中上面側においては基板210が収縮する。
【0090】
これにより、図中に点線で示すように、基板210において、基板230に貼り合わされた領域の外端においては、基板210の表面における回路領域216の設計仕様に対する位置ずれが基板230に対して拡大したかのように歪む。このため、図中に点線のずれとして現れるように、基板ホルダ240に保持された下側の基板230と、基板ホルダ220による保持を解除された上側の基板210との間に、基板210の伸び量すなわち倍率歪みの相違に起因する位置ずれが生じる。
【0091】
更に、図20に示すように、上記の状態で基板210、230が互いに接触して貼り合わされると、基板210の拡大された倍率歪みが固定される。更に、図21に示すように、貼り合わせにより固定される基板210の伸び量は、基板210、230の外周に境界Kが移動するほど累積される。
【0092】
上記のような貼り合わせ過程倍率歪みの量は、貼り合わされる基板210、230の剛性、基板210、230に挟まれる雰囲気の粘性等の物理量に基づいて算出できる。また、貼り合わされる基板210、230と同一のロットで製造された基板を貼り合わせて生じたずれ量を予め測定して記録し、記録した測定値を当該ロットの基板210、230の貼り合わせにおいて生じる貼り合わせ過程倍率歪みに関する情報として制御部150が取得してもよい。なお、本実施形態において、貼り合せ過程は、基板210および基板230が、互いに一部で接触してから、接触領域の拡大が終了するまでの過程を含む。
【0093】
図22は、図19から図21を用いて説明した貼り合わせ方法に起因して生じる倍率歪みによる積層基板290での位置ずれを示す模式図である。図中の矢印は、解除側の基板210を基準としたときの固定側の基板230の位置ずれを示すベクトルであり、その方向により位置ずれの方向を表し、その長さにより位置ずれの大きさを表す。図示のずれは、積層基板290の中心点から面方向に放射状に漸増するずれ量を有する。なお、図示の倍率歪みは、基板210、230を貼り合わせる前に生じた初期倍率歪みおよび吸着倍率歪みと、基板210、230を貼り合わせる過程で生じた貼り合わせ過程倍率歪みとを含む。
【0094】
なお、図19から図21を用いて説明した貼り合わせ方法によって基板210、230を貼り合わせる場合は、基板ホルダ240による基板230の保持を維持した状態で基板ホルダ220による基板210の保持を解除する。このため、基板210、230が貼り合わされる時点では、保持された基板230が形状を固定されているのに対して、保持が解除された基板210は歪みつつ貼り合わされる。よって、固定されたまま貼り合わされる基板230については貼り合わせ過程倍率歪みを考慮しなくてもよいが、保持を解除される基板210については、貼り合わせ過程倍率歪みを考慮することが望ましい。
【0095】
固定側の基板230が、基板ホルダ240の形状等により歪んだ状態で保持されている場合、保持を解除された基板210に対しては、貼り合わせ過程倍率歪みと吸着倍率歪みとの両方を考慮することが望ましく、更には、歪んだ基板230の形状に基板210が倣うことにより生じる吸着倍率歪みのような歪みも考慮することが好ましい。
【0096】
このように、図19から図21を用いて説明した貼り合わせ方法では、基板210、230の貼り合わせ後の最終的な倍率歪みの差は、基板210、230が当初より有している初期倍率歪みの差に、基板210、230を基板ホルダ220、240等に保持させた場合に生じる吸着倍率歪みの差と、貼り合わせの過程で保持が解除される基板210の貼り合わせ過程倍率歪みとが重なって形成される。
【0097】
上述のように、図19から図21を用いて説明した方法で基板210、230を積層して形成される積層基板290に生じる位置ずれは、初期倍率歪みの差、吸着倍率歪みの差、および貼り合わせ過程倍率歪みの差の大きさと関連する。また、基板210、230に生じる倍率歪みは、反り等の基板の歪みと関連する。
【0098】
更に、これら初期倍率歪みの差、吸着倍率歪みの差、および貼り合わせ過程倍率歪みの差は、上記のように、貼り合わせ前の測定、計算等により推定できる。よって、貼り合わせる基板210、230について推定された貼り合わせ後の最終的な倍率歪みの差に基づいて、この差を補正するための対策を予め講じることができる。
【0099】
対策の一例として、固定側用の複数の基板ホルダ240から、その保持面の曲率が最終的な倍率歪みの差を補正できるものを選択することが考えられる。図23は、湾曲した保持面を有する固定側用の基板ホルダ240を用いて空気抵抗起因の倍率歪みを補正した場合の、基板ホルダ240上での基板210、230の貼り合わせ過程を示す部分拡大図である。
【0100】
図23に示されるように、固定側用の基板ホルダ240の保持面241は湾曲している。このような形状の保持面241に基板230が吸着された場合、基板230が湾曲した状態では、図中に一点鎖線で示す基板230の厚さ方向の中心部Aに比較して、基板230の図中の上面である表面では、基板230の表面が中心から周縁部に向けて面方向に拡大するように形状が変化する。また、基板230の図中の下面である裏面においては、基板230の表面が中心から周縁部に向けて面方向に縮小するように形状が変化する。
【0101】
このように、基板230を基板ホルダ240に保持させることにより、基板230の図中上側の表面は、基板230が平坦な状態に比較すると拡大される。このような形状の変化により、他の基板210との最終的な倍率歪みの差、すなわち、この差に起因する位置ずれを補正できる。更に、湾曲した保持面241の曲率が異なる複数の基板ホルダ240を用意し、最終的な倍率歪みの差に起因する位置ずれの量が予め定められた閾値以下となる曲率の保持面241を有する基板ホルダ240を選択することで、その補正量を調節できる。
【0102】
図23における実施形態では、基板ホルダ240の保持面241は、中央で盛り上がる形状を有していた。これに代えて、保持面241の周縁部に対して中央部が陥没した基板ホルダ240を用意して基板230を保持させることで、基板230の貼り合わせ面における倍率を縮小させ、貼り合わせ面に形成された回路領域236の設計仕様に対する位置ずれを調整することもできる。
【0103】
以上、図19から22を参照して、貼り合わせる基板210、230に生じる平面歪みに含まれる線形歪みのうちの倍率歪み、特に貼り合わせ過程倍率歪みを説明した。また、図23を参照して、貼り合わせる基板210、230について推定された貼り合わせ後の最終的な倍率歪みの差に基づいて、この差を補正するための対策の一例を説明した。この対策の他の例として、貼り合わせ部300の下ステージ332の保持面をアクチュエータによって変形させてもよい。
【0104】
次に、貼り合わせる基板210、230に生じる平面歪みに含まれる非線形歪みのうち、基板210、230の結晶配向に起因する異方性、すなわち結晶異方性に起因する歪みを説明する。
【0105】
図24は、シリコン単結晶基板208における結晶方位とヤング率との関係を示す模式である。図24に示すように、(100)面を表面とするシリコン単結晶基板208においては、中心に対するノッチ214の方向と反対の方向を0°とするX-Y座標において、0°方向および90°方向においてヤング率が169GPaと高く、45°方向においては、ヤング率が130GPaと低い。このため、シリコン単結晶基板208を用いて作製した基板210、230においては、基板210、230の周方向に曲げ剛性の不均一な分布が生じる。すなわち、ボンディングウェーブが基板210、230の中心から周縁部に向けて進行したときの進行方向によって、基板210、230の曲げ剛性が異なっている。曲げ剛性は、基板210、230を曲げる力に対する変形のし易さを示しており、弾性率としてもよい。
【0106】
図25は、シリコン単結晶基板209における結晶方位とヤング率との関係を示す模式である。図25に示すように、(110)面を表面とするシリコン単結晶基板209においては、中心に対するノッチ214の方向と反対の方向を0°とするX-Y座標において、35.3°方向のヤング率が188GPaと最も高く、0°方向のヤング率がそれに続いて169GPaである。更に、90°方向におけるヤング率は最も低い130GPaである。このため、シリコン単結晶基板209を用いて作製した基板210、230においては、基板210、230の周方向に曲げ剛性の不均一且つ複雑な分布が生じる。
【0107】
このように、結晶異方性がそれぞれ異なるシリコン単結晶基板208、209の何れを用いた基板210、230においても、その周方向に曲げ剛性の不均一な分布が生じる。曲げ剛性が異なる領域間では、その曲げ剛性の大きさに応じて、図19から図21までを参照して説明した貼り合わせ過程で生じる歪みの大きさが異なる。具体的には、剛性が低い領域の歪みの大きさが、剛性が高い領域に比べて小さくなる。このため、図19から図21を用いて説明した方法で基板210、230を積層して製造した積層基板290においては、積層基板290の周方向について不均一な回路領域216、236の位置ずれが生じる。結晶異方性に起因する歪みによる貼り合わせ基板間の位置ずれは、解除側の基板230の結晶異方性に起因する。
【0108】
図26は、貼り合わせの際に生じ得る空気抵抗起因の倍率歪み、及び、結晶異方性起因の歪みによる積層基板290での位置ずれの量が予め定められた閾値以下となるように予め配置が補正された複数の回路領域216、236が表面に形成されている基板610、630を示す模式図である。基板610が貼り合わせ部300での解除側の基板であり、基板610、630は、図24を用いて説明したシリコン単結晶基板208から形成されている。
【0109】
図23の実施形態においては、空気抵抗起因の倍率歪みを予め補正する方法として、固定側用の基板ホルダ240として保持面241が湾曲したものを選択した。しかしながら、基板ホルダ220、240または上ステージ322、下ステージ332の加工、取扱い等がより容易であるのは、それらの保持面が平坦な方である。そこで、本実施形態は、保持面241が湾曲した固定側用の基板ホルダ240によって補正する方法に代えて、解除側の基板610の表面に形成する複数の回路領域216の配置を予め補正して形成することによって、貼り合わせの際に生じ得る空気抵抗起因の倍率歪み、及び、結晶異方性起因の歪みによる積層基板290での位置ずれの量が予め定められた閾値以下となるようにする。
【0110】
固定側にする基板630には、貼り合わせの際に固定された状態が維持されるので、空気抵抗起因の倍率歪み、及び、結晶異方性起因の歪みが生じないものと予測する。そのため、基板630においては、同じマスクを用いた露光を繰り返して基板630全体に複数の回路領域236を形成する場合に、ショットマップを補正しないで、基板630の全体に渡って複数の回路領域236を等間隔で形成する。
【0111】
一方で、解除側にする基板610には、貼り合わせの際に解放されて空気抵抗起因の倍率歪み、及び、結晶異方性起因の歪みが生じるものと予測する。そこで、基板610においては、同じマスクを用いた露光を繰り返して基板610全体に複数の回路領域216を形成する場合に、空気抵抗起因の倍率歪み、及び、結晶異方性起因の歪みによる位置ずれの量が予め定められた閾値以下となるようにショットマップを補正して、基板610の中心から周縁部に向けて、複数の回路領域216の間隔を全体に渡って徐々に狭くしつつ、0°方向及び90°方向の間隔を、45°方向の間隔よりも狭くする。これによって、固定側用の基板ホルダ240の保持面241が平坦であっても、貼り合わせの際に生じ得る空気抵抗起因の倍率歪み、及び、結晶異方性起因の歪みによる積層基板290での位置ずれを予め定められた閾値以下に抑えることができる。
【0112】
次に、貼り合わせる基板210、230に生じる平面歪みに含まれる非線形歪みについて説明する。図27は、平坦な状態で基板ホルダ240に固定された基板230に対して、解除側の基板210がグローバル反りを有さず局所的な湾曲を有していた場合に生じる非線形歪みによる積層基板290での位置ずれを示す模式図である。図27に示す非線形歪みによる位置ずれは、図22に示した倍率歪みによる位置ずれを含んでいない。なお、図27に示す、基板210における非線形歪みによる位置ずれは、基板210を保持する基板ホルダ220の突出部材250の突出量に応じて異なる結果を示す場合がある。
【0113】
図中の矢印は、解除側の基板210を基準としたときの固定側の基板230の位置ずれを示すベクトルであり、その方向により位置ずれの方向を表し、その長さにより位置ずれの大きさを表す。図27に示される通り、積層基板290における局所的な湾曲により生じた非線形歪みによる位置ずれは、Xが正でYが正の第1象限すなわち45°方向と、Xが負でYが負の第3象限すなわち225°方向とで同様の傾向を示し、Xが正でYが負の第2象限すなわち315°方向と、Xが正でYが負の第2象限すなわち135°方向とで同様の傾向を示し、第1象限および第3象限と、第2象限および第4象限とで、異なる傾向を示している。また、積層基板290の中心から径方向に沿う位置ずれ量の規則的な分布は無い。図27を参照すれば、非線形歪み起因の位置ずれとは、基板210、230のそれぞれの構造物の設計位置に対して変位した位置を線形変換により表すことができないものであることがわかる。
【0114】
非線形歪みは、多種多様な要因が相互に影響し合うことによって生じるが、その主たる要因は、図24および図25を参照して説明したシリコン単結晶基板208、209における結晶異方性、及び、基板210、230の製造プロセスである。図27に示す積層基板290での位置ずれは、結晶異方性による非線形歪みが生じている状態において、ローカル反りによる非線形が重なった結果でもある。図2を参照して説明した通り、基板210、230の製造プロセスにおいて、基板210、230には複数の構造物が形成される。例えば、構造物として、複数の回路領域216、236と、スクライブライン212、232と、複数のアライメントマーク218、238とが基板210、230に形成される。複数の回路領域216、236の各々には、構造物として、フォトリソグラフィ技術等より形成された配線、保護膜等の他、基板210、230を他の基板230、210、リードフレーム等に電気的に接続する場合に接続端子となるパッド、バンプ等の接続部も配されている。これらの構造物の構造や配置、すなわち構造物の構成は基板210、230の面内の剛性分布や内面応力分布に影響を与え、剛性分布や内面応力分布にムラが生じると、基板210、230には局所的な湾曲が発生する。
【0115】
これらの構造物の構成は、基板210、230毎に異なっていても、ロジックウェハ、CISウェハ、メモリウェハ等の基板210、230の種類毎に異なっていてもよい。また、製造プロセスが同じであっても、製造装置に依って構造物の構成が多少異なることも考えられるので、それらの構造物の構成は基板210、230の製造ロット毎に異なっていてもよい。このように、基板210、230に形成される複数の構造物の構成は、基板210、230毎、基板210、230の種類毎、基板210、230の製造ロット毎、又は、基板210、230の製造プロセス毎に異なり得る。それゆえに、基板210、230の面内の剛性分布も同様に異なる。従って、製造プロセスおよび貼り合わせ過程で生じる基板210、230の湾曲状態も同様に異なる。
【0116】
一対の基板210、230を貼り合わせる際、解除側の基板210に局所的な湾曲が発生していると、基板210において局所的な湾曲が生じている箇所は、局所的な湾曲が生じていない箇所に比べて、他の基板230と貼り合わされるときに基板230との間の距離が大きくなる場合がある。例えば、解除側の基板210において貼り合わせ面が伸びるような反りが生じている場合である。そのため、局所的な湾曲が生じている箇所では局所的な湾曲が生じていない箇所に比べてボンディングウェーブの進行が遅くなり、解除側の基板210における局所的な湾曲が生じていた箇所にしわ寄せが生じ、これが原因で貼り合わせた積層基板290に非線形歪みが生じることになる。すなわち、局所的な湾曲と非線形歪みとの間には相関があり、貼り合わせる前における解除側の基板210の局所的な湾曲が大きかった箇所は、貼り合わせた後における積層基板290に発生する非線形歪みも大きくなる。ただし、この因果関係は、局所的な湾曲による歪み以外の歪みが無い場合に当てはまる。一方で、貼り合わせる基板210、230が局所的な湾曲を有する場合であっても、局所的な湾曲により生じ得る非線形歪みが、例えば結晶異方性に起因する歪みでキャンセルされる場合もあり得る。
【0117】
一対の基板210、230のうち、固定側の基板230に、貼り合わせ前から局所的な湾曲が生じていた場合、その貼り合わせ面の裏側の全面が基板ホルダ240等によって吸着されて固定された状態が維持されるので、自身の局所的な湾曲に起因する非線形歪みは生じず、貼り合わせ後の基板210、230間には固定側の基板230の局所的な湾曲に起因する非線形な位置ずれも発生しない。ただし、固定側の基板230には吸着倍率歪み等は生じているかもしれないが、このような歪みは、解除側の基板210に生じる歪みに比べたら小さく、その影響は殆ど無いので無視してもよい。一方で、解除側の基板210に、貼り合わせの前から局所的な湾曲が生じていた場合、上記の理由で、貼り合わせた一対の基板210、230間には非線形歪み起因の位置ずれが生じる。
【0118】
このような非線形歪み起因の位置ずれを抑止すべく、制御部150は、基板210、230の貼り合わせ前に少なくとも解除側の基板210の局所的な湾曲に関する情報を取得し、取得した情報に含まれる基板210の局所的な湾曲の特性に基づいて解除側の基板210の初期貼り合わせ領域803を予め設定し、貼り合わせ領域801が基板210、230の中央付近から外周に向かって広がることで予め設定した初期貼り合わせ領域803が貼り合わされることを検出するまで、基板ホルダ220による基板210の少なくとも最外周領域の保持を維持する。
【0119】
例えば本実施形態のように、基板210における局所的な湾曲が少なくとも部分的に基板210の中心側から外周側へと径方向に沿って漸増すると仮定した場合、基板210の予め設定した初期貼り合わせ領域803が貼り合わされるまでの間、基板210の最外周領域における局所的な湾曲が生じている箇所も局所的な湾曲が生じていない箇所も基板ホルダ220によって保持した状態を維持する。これにより、基板210の最外周領域の全体にわたって、貼り合わされる他の基板230との間の距離を所定の範囲内で一定にする。
【0120】
予め設定した初期貼り合わせ領域803が貼り合わされるまでの間は、強制的に基板210の最外周領域の全体にわたって同じ大きさの反りを形成するので、基板210の局所的な湾曲が生じている箇所と局所的な湾曲が生じていない箇所との間で、ボンディングウェーブの進行度合いの差を抑止できる。
【0121】
初期貼り合わせ領域803と局所的な湾曲が生じている箇所とが重なっている領域ではボンディングウェーブの進行度合いの差を抑止できるので、重なりの度合いを大きくするほど、貼り合わせた基板210、230間に発生する非線形な位置ずれを抑止する効果が大きくなる。従って、制御部150は、解除側の基板210の初期貼り合わせ領域803を、貼り合わされた基板210、230間に発生する非線形な位置ずれの量が予め定められた閾値以下となるように予め設定する。
【0122】
上述した通り、基板210の局所的な湾曲に関する情報は、基板210に生じる歪みに関する情報に含まれる。基板210に生じる歪みに関する情報には、基板210全体が概ね一様な曲率で屈曲するグローバル反りに関する情報と、基板210の一部で局所的な曲率の変化、すなわち局所的な湾曲が生じるローカル反りに関する情報とが含まれる。
【0123】
グローバル反りに関する情報には、基板210の全体的な反りの大きさ、反りの方向、撓みの大きさ、撓みの方向等の全体的な湾曲の特性のように、基板210の全体的な湾曲を計測することにより得られる情報と、基板210の結晶異方性、製造プロセス、基板210の種類、基板210に形成された構造物の構成といった、基板210に全体的な湾曲を生じさせる原因に関する情報とが含まれる。
【0124】
ローカル反りに関する情報には、基板210の局所的な反りの大きさ、反りの方向、反っている部分、反りの振幅、撓みの大きさ、撓みの方向、撓みの振幅、撓んでいる部分、内部応力、応力分布等の局所的な湾曲の特性のように、基板210の局所的な湾曲を計測することにより得られる情報と、基板210の結晶異方性、製造プロセス、基板210の種類、基板210に形成された構造物の構成といった、基板210に局所的な湾曲を生じさせる原因に関する情報とが含まれる。
【0125】
制御部150は、基板210に生じる歪みに関する情報を、基板貼り合わせ装置100よりも前に行われるプロセスで使用される露光装置、成膜装置等の前処理装置から取得してもよい。また、基板貼り合わせ装置100において、貼り合わせ部300よりも前に行われるプロセスで使用される、例えばプリアライナ500から取得してもよい。制御部150は、取得した情報に基づいて決定した情報を、搬送部140、プリアライナ500および貼り合わせ部300の少なくとも何れかに出力する。
【0126】
本実施形態においては、例えば前処理装置において、基板210、230の歪みの一例として局所的な湾曲を実際に計測する。図28は、撓み計測と反りの算出方法を説明する図である。図28における方法では、先ず、対象基板としての基板210、230の撓みを計測する。具体的には、重力下において、基板210、230の裏面の面方向の中心を支持して中心の周りに回転させながら、顕微鏡等の非接触距離計により基板210、230の表面または裏面を観察し、顕微鏡の光学系が有する自動合焦機能から得られた距離情報の分布に基づいて、表面または裏面の位置を計測する。
【0127】
これにより、重力下における基板210、230の撓みの大きさと向きとを含む撓み量を測定できる。基板210、230の撓み量は、支持された中心を基準としたときの基板210、230の厚さ方向の表面または裏面の位置の変位から求められる。次に、制御部150が基板210、230の撓み量の情報を取得し、これを基板中心から径方向に沿う線形的な成分と非線形的な成分とに分解する。図28において、基板210、230の撓み量の線形的な成分は平均撓み(A)として放物線状に示され、非線形的な成分は外周での撓みの振幅(B)として波線状に示されている。
【0128】
次に、基準基板としてのベアシリコンの撓みを計測する。ベアシリコンは、構造物が形成されていない基板210、230であって、反りが生じていない基板210、230と見なすことができる。ただし、ベアシリコンであっても若干の反りがある場合には、ベアシリコンの表裏の撓み計測から、基準となる撓み量を算出することが好ましい。基板210、230と同じ測定条件で、ベアシリコンの撓み量を測定する。そして、制御部150がベアシリコンの撓み量の情報を取得し、これをベアシリコン中心から径方向に沿う線形的な成分(図28の(A))と非線形的な成分(図28の(B))とに分解する。
【0129】
そして、基板210、230の外周での撓みの振幅から、ベアシリコンの外周での撓みの振幅を減算する。これにより、無重力下での計測値と見なすことができ、基板210、230の反り量の非線形的な成分を算出できる。図28において、基板210、230の反り量の非線形的な成分は外周での反りの振幅(B)として波線状に示されおり、上記のローカル反りに対応する。なお、無重力下で計測される変形量としての反り量がこの方法で算出できる理由は、重力下で計測される変形量としての撓み量に含まれる、自重による変形量が上記減算によって実質的に差し引かれるためである。
【0130】
なお、基板210、230の平均撓みから、ベアシリコンの平均撓みを減算することによって、無重力下での計測値と見なすことができる基板210、230の反り量の線形的な成分を算出でき、これは上記のグローバル反りに対応する。図28において、基板210、230の反り量の線形的な成分は平均反り(A)として放物線状に示されている。
【0131】
最後に、貼り合わせるときの、解除側の基板210の状況を反映させる。具体的には、解除側にする基板210の表面が下向きとなる姿勢および重力方向を考慮して基板210の外周での反りの振幅を変換することで、基板210の表面の面方向の中心を支持して上記のように計測したと仮定した場合における基板210の外周での反りの振幅を予測値として算出する。
【0132】
このようにして算出された、解除側の基板210と固定側の基板230との局所的な湾曲に関する情報としての、基板210、230のそれぞれの外周での反りの振幅のうち、少なくとも解除側の基板210の外周での反りの振幅に基づいて、制御部150は、解除側の基板210の初期貼り合わせ領域803を予め設定する。初期貼り合わせ領域803は、例えば、外周での反りの振幅の最大値または平均値に基づいて予め設定されてもよく、基板210の貼り合わせ面内における反りの発生位置と反りの大きさとに基づいて予め設定されてもよい。
【0133】
上記の通り、基板210、230の局所的な湾曲は、基板210、230毎、基板210、230の種類毎、基板210、230の製造ロット毎、又は、基板210、230の製造プロセス毎に異なり得る。よって、制御部150は、基板210の初期貼り合わせ領域803を、基板210、230を貼り合わせる毎に予め設定してもよく、基板210、230の種類毎に予め設定してもよく、基板210、230の製造ロット毎に予め設定してもよく、又は、基板210、230の製造プロセス毎に予め設定してもよい。なお、製造ロットや同一種類に含まれる最初の基板210、230に対して初期貼り合わせ領域803を設定した後は、同一ロット内や同一種類内の基板210、230に対しても同じ初期貼り合わせ領域803を適用してもよい。
【0134】
なお、基板210、230を基板ホルダ240等により吸着して強制的に平坦にした状態で、ラマン散乱等により基板210、230の残留応力を計測して、この残留応力を基板の局所的な湾曲に関する情報としてもよい。また、基板210、230の局所的な湾曲は、プリアライナ500において測定してもよい。
【0135】
一方、基板210、230の局所的な湾曲を測定せずに、制御部150は、解析的に基板210、230の局所的な湾曲に関する情報を取得して、取得した情報から少なくとも基板210の局所的な湾曲の特性を推定し、推定した基板210の局所的な湾曲の特性に基づいて、基板210の初期貼り合わせ領域803を予め設定してもよい。その場合は、基板210、230の製造プロセス、基板210、230に形成した回路領域216、236等の構造物の構成や材料、基板210、230の種類、基板210、230における応力分布に関する情報に基づいて、基板210、230に生じる反りの大きさおよび向き、基板210、230の形状等の局所的な湾曲の特性を推定してもよい。また、上記構造物を形成する過程で生じた基板210、230に対する製造プロセス、すなわち、成膜等に伴う熱履歴、エッチング等の化学処理に関する情報を反りの原因となる情報として、これらの情報に基づいて基板210、230に生じる反りを推定してもよい。
【0136】
また、基板210、230に生じる局所的な湾曲の特性を推定する場合に、基板210、230に生じた局所的な湾曲の原因となり得る基板210、230の表面構造、基板210に積層された薄膜の膜厚、成膜に用いたCVD装置等の成膜装置の傾向、ばらつき、成膜の手順、条件等の周辺情報を併せて参照してもよい。これらの周辺情報は、局所的な湾曲の特性を推定することを目的として、改めて測定してもよい。
【0137】
更に、上記のような基板210、230の局所的な湾曲の特性を推定するには、同等の基板を処理した過去のデータ等を参照してもよいし、貼り合わせる基板210、230と同等の基板に対して想定されるプロセスの実験をして、局所的な湾曲である反り量と非線形歪みとの関係、反り量の違いと両基板間の非線形歪み差との関係、または、両基板間の非線形歪み差すなわち位置ずれ量が閾値以下となる反り量の組み合わせのデータを予め用意してもよい。更に、貼り合わせる基板210、230の成膜構造、成膜条件に基づいて、有限要素法等により反り量を解析的に求めてデータを用意してもよい。
【0138】
なお、基板210、230に対する歪み量の測定は、基板貼り合わせ装置100の外部で実行してもよいし、基板貼り合わせ装置100、または、基板貼り合わせ装置100を含むシステムの内部に基板210、230の歪みを測定する装置を組み込んでもよい。更に、内外の測定装置を併用して、測定項目を増やしてもよい。
【0139】
ここで、初期貼り合せ領域が大きいことの利点を、図29を用いて説明する。図29は、外周通気路822を有する基板ホルダ820を用いて基板210、230を貼り合わせる過程(A)と、最外周通気路622を有する基板ホルダ220を用いて基板210、230を貼り合わせる過程(B)との対比を説明する説明図である。
【0140】
図29に示されるように、基板ホルダ820の外周通気路822は、基板ホルダ220の最外周通気路622よりも内側にあるとする。この場合に図29の(A)および(B)の左側の図に示す通り、基板210の最外周領域が保持されている間に貼り合わされる初期貼り合わせ領域803の外形を、基板ホルダ820よりも基板ホルダ220の方が大きく設定できる。よって、基板ホルダ220の方が基板ホルダ220自体の構成を変更しなくても、多様な初期貼り合せ領域の大きさに対応することができる。
【0141】
さらに、図29の(A)および(B)の右側に対比して示すように、初期貼り合せ領域が貼り合されてから、外周通気路822および最外周通気路622を解放した場合に、基板210に生じていた局所的な湾曲が解放により復元されようとする。この場合に、基板ホルダ220の方がより外周に近い側まですでに貼り合わされているので、湾曲の大きさC2は基板ホルダ820の湾曲の大きさC1よりも小さく、よって貼り合せにより歪みに与える影響も小さい。よって、初期貼り合せ領域が大きいことにより、基板210の局所的な湾曲が貼り合せの歪みに与える影響を小さく抑えることができる。
【0142】
なお、主たる実施形態では、制御部150が、所定の数の初期貼り合わせ領域803を予め定めておき、基板ホルダ220および貼り合わせ部300において対応する数の観察孔601等、観察窓361等、検出器341等を予め設けておく構成とした。これに代えて、制御部150が、解除側の基板210の局所的な湾曲の特性に基づいて任意の大きさの初期貼り合わせ領域803を予め設定する場合、基板ホルダ220および貼り合わせ部300には連続する直線状の観察孔、窓を予め設け、これらに対応する位置に検出器としてラインセンサを予め設けてもよい。これによって、観察部345は、任意の大きさの初期貼り合わせ領域803が貼り合わされるのを観察できる。
【0143】
図30は、他の実施形態による、基板ホルダ920の模式的平面図である。図31は、図30の模式的平面図の基板ホルダ920の中心で屈折するIII-III線で切断した場合の、基板210を保持した基板ホルダ920の模式的断面図である。本実施形態においては、主たる実施形態で用いた解除側用の基板ホルダ220に代えて、基板ホルダ920を用いる。なお、固定側用の基板ホルダ240は、主たる実施形態で用いたものと同じなので、重複する説明は省略する。また、基板ホルダ920のうち、基板ホルダ220と同一の構成については、同一の又は対応する参照番号を用いており、重複する説明は省略する。なお、図30では、説明の明確化のため、複数の支持ピン924の図示を省略している。
【0144】
基板ホルダ920の本体部929は、保持面921上において基板ホルダ920の中心と同心円状に形成された4つの円環状の支持部925、926、927、928と、保持面921状において基板ホルダ920の中心から放射状に形成された複数の直線状の支持部922とを有する。4つの支持部925、926、927、928は、基板ホルダ920の中心側からこの順で位置する。支持部925は、支持部925の内周面が、本体部929の略中央に設けられた円筒状の凹部923の内周面と揃っていて、保持面921上で凹部923の周囲を囲む。支持部928は、基板ホルダ920に保持される基板210の外形と略同一の外形を有する。支持部927は、保持面921上において支持部928よりも少し中心側に位置し、支持部928と共に基板ホルダ920の最外周側に円環状の溝を形成する。支持部926は、基板ホルダ920の径方向における、支持部925と支持部927との中間に位置し、支持部925と支持部927との間の領域を内周側と外周側とに分割する。複数の支持部922は、支持部925等と交差するように形成され、支持部925と支持部926との間の領域、支持部926と支持部927との間の領域、及び、支持部927と支持部928との間の領域をそれぞれ複数に分割する。
【0145】
本体部929は更に、内周通気路931と、外周通気路932と、最外周通気路933とを有する。内周通気路931は、保持面921上における支持部925と支持部926との間であって複数の支持部922によって互いに隔離された複数の扇形領域の各々に位置し、複数の支持ピン924が形成されていない箇所に開口した複数の吸気孔を一端に有する。内周通気路931の他端は、基板ホルダ920の外部の制御バルブ723を介して負圧源733および開放端743に選択的に結合される。外周通気路932は、保持面921上における支持部926と支持部927との間であって複数の支持部922によって互いに隔離された複数の扇形領域の各々に位置し、複数の支持ピン924が形成されていない箇所に開口した複数の吸気孔を一端に有する。外周通気路932の他端は、基板ホルダ920の外部の制御バルブ725を介して負圧源735および開放端745に選択的に結合される。最外周通気路933は、保持面921上における支持部927と支持部928との間であって複数の支持部922によって互いに隔離された複数の扇形領域の各々に位置し、複数の支持ピン924が形成されていない箇所に開口した複数の吸気孔を一端に有する。最外周通気路933の他端は、基板ホルダ920の外部の制御バルブ727を介して負圧源737および開放端747に選択的に結合される。以下、基板210の面内における径方向の中央側の領域であって、基板ホルダ920の支持部925と支持部926との間で吸着される領域を、基板210の内周領域と呼ぶ場合がある。また、基板210の面内における径方向の外側の領域であって、基板ホルダ920の支持部227と支持部228との間で吸着される領域を、基板210の最外周領域と呼ぶ場合がある。また、基板210の面内における内周領域と最外周領域との間の領域であって、基板ホルダ920の支持部226と支持部227との間で吸着される領域を、基板210の外周領域と呼ぶ場合がある。
【0146】
外周通気路932および最外周通気路933の一端における複数の吸気孔は、基板210の外周領域および最外周領域を吸着可能とすべく基板ホルダ920の外周および最外周に設けられているが、図31に示されるように外周通気路932および最外周通気路933を基板ホルダ920の内部で互いに厚さ方向にずれて、且つ、面方向に延びるように形成することで、その他端を基板ホルダ920の中心側に寄せて配置している。これにより、基板ホルダ920は、基板ホルダ920を保持して基板ホルダ920の各通気路に吸気又は排気を与えるための空気配管が基板ホルダ920保持面の中央に集中して形成されているバキュームプレートや基板貼り合わせステージなどにも適応可能である。
【0147】
制御バルブ723、725、727は、制御部150の制御の下に、内周通気路931、外周通気路932、最外周通気路933のそれぞれを負圧源733、735、737に選択的に連通させる。基板210が支持部925等および複数の支持ピン924上に載置された状態で、制御バルブ723、725、727が内周通気路931、外周通気路932、最外周通気路933のそれぞれを負圧源733、735、737に連通させた場合、内周通気路931、外周通気路932、最外周通気路933のそれぞれの複数の吸気孔に負圧が作用する。これにより、基板210と保持面921との間であって、それぞれが複数の支持部922によって周方向に複数分割されている、支持部925と支持部926との間の空間、支持部926と支持部927との間の空間、及び、支持部927と支持部928との間の空間がそれぞれ減圧され、基板210が基板ホルダ920に吸着される。一方で、基板210が基板ホルダ920に吸着された状態から、制御バルブ723、725、727が内周通気路931、外周通気路932、最外周通気路933のそれぞれを開放端743、745、747に連通させた場合、基板ホルダ920による基板210の吸着が解除される。
【0148】
このように、内周通気路931と外周通気路932と最外周通気路933とは、制御部150によって別個に制御される制御バルブ723、725、727にそれぞれ結合され、それぞれの一端の複数の吸着孔が支持部926と支持部927と支持部928とによって互いに隔離された各空間に開口している。これによって、基板ホルダ920は、制御部150の制御の下に、基板210の径方向における内周領域、外周領域および最外周領域とを別個に吸着でき、且つ、別個に吸着を解除できる。換言すると、基板ホルダ920は、互いに隔離されて独立している、径方向に沿って同心円状に配された内周吸着領域、外周吸着領域および最外周吸着領域を有している。なお、これに加えて、各領域の周方向においても、互いに独立して吸着および解放を可能にしてもよい。
【0149】
本体部929は更に、保持面921上における支持部925と支持部926との間、及び、支持部926と支持部927との間であって複数の支持ピン924が形成されていない4箇所に形成された、基板ホルダ920を厚さ方向に貫通する4つの観察孔901、902、903、904と、保持面921上における支持部927と支持部928との間に形成された、基板ホルダ920を厚さ方向に貫通する観察孔905とを有する。5つの観察孔901、902、903、904、905は、図30の模式的平面図において基板ホルダ920の中心で屈折する直線状のIII-III線と重なって示されるように、基板ホルダ920の径方向に沿う略同一直線上に位置する。3つの観察孔901、902、903は、基板ホルダ920の中心寄りである支持部925と支持部926との間に、基板ホルダ920の中心側からこの順で略等間隔に位置する。観察孔904は、支持部926と支持部927との間における外周側に位置する。なお、観察孔901等はそれぞれ、基板210を観察する場合に使用する照明光の波長に対して透明な材料で充填され、観察孔901等の両端は、基板ホルダ920の両平面と共に、円滑に形成される。
【0150】
図32は、基板ホルダ920を用いて基板210、230を貼り合わせる過程を説明する説明図である。制御部150は、基板ホルダ920の観察孔901等を通じて観察部345により貼り合わせ領域801の広がりを観察し、貼り合わせ領域801が広がるに連れて、上記の複数の吸着領域における吸着を、基板ホルダ920の中央側から外周側に向けて順次に解除する。基板ホルダ920において、内周通気路931、外周通気路932および最外周通気路933の負圧からの解放のタイミングは、基板210が貼り合わせ領域から立ち上がった部分と貼り合せ領域との間で成す角Rをなるべく一定に維持しつつ貼り合せ領域が広がるようにすることが好ましい。これにより、空気抵抗起因で生じる歪みを一定にして、歪みの非線形性を抑えることができる。
【0151】
特に基板ホルダ920は、内周から外周に向かって、内周通気路931、外周通気路932および最外周通気路933を有するので、基板ホルダ220のように内周通気路621および最外周通気路622の二つで制御することに比べて、Rをより一定に維持することができる。なお、通気路の数を増やすことに代えて、またはこれに加えて、貼り合せ領域の広がりに伴って突出部材950の突出量を変えることで、Rを一定に維持してもよい。この場合に、突出部材950の突出量自体を能動的に変化させてもよいし、対向する基板ホルダ240からの押上げ力によって、基板210および230を介して突出部材950の突出量自体を受動的に変化させてもよい。
【0152】
ここで、解除側の基板210の最外周領域が保持されている間に貼り合わされる初期貼り合わせ領域803の大きさと、解除側の基板ホルダ220、920における突出部材250、950の高さ、および、解除側の基板ホルダ220、920が基板210を吸着する吸着面積の大きさとは、相関を有する場合がある。例えば、基板ホルダ220、920が基板210を保持している状態で突出部材250、950の高さを小さくするほど、基板210が保持された状態での基板210の中央付近の凸状の曲率が小さくなるので、初期貼り合わせ領域803が大きくなる。これにより、ローカル反りによる非線形歪みが低減される場合がある。また、突出部材250、950によって解除側の基板210の中央付近が凸状に変形される量が小さくなるので、基板210の中央付近における非線形歪みが低減される場合がある。
【0153】
また、一例として、基板ホルダ220、920による基板210の吸着面積を小さく設定すると、すなわち、基板210の外周端部の側のみを保持した状態で基板210、230の貼り合わせを行うと、基板210が保持された状態での基板210において基板230に引き寄せられる面積が大きくなるので、初期貼り合わせ領域803が大きくなる。これにより、ローカル反りによる非線形歪みが低減され、更に、吸着倍率歪みが低減される場合がある。
【0154】
図33は、解除側の基板210におけるグローバル反りの有無に応じて初期貼り合わせ領域の設定を変更する場合を説明する説明図である。図33には、解除側の基板210にグローバル反りが無い場合と有る場合とのそれぞれと、初期貼り合わせ領域を形成しない場合と形成する場合とのそれぞれとの、4通りの組み合わせに対して、貼り合わせた基板の半径方向の位置と貼り合わせた基板間に生じる位置ずれとの関係の模式的なグラフがテーブル内に示されている。図33に示される各グラフにおいて、実線は位置ずれを示し、破線は平均倍率を示す。平均倍率は、より具体的には、最小二乗法によって求めた倍率である。また、各グラフにおける実線と破線との差分は、非線形歪みの大きさを意味する。
【0155】
解除側の基板210におけるグローバル反りが大きいと、空気抵抗起因の倍率歪みが基板210の中央側から外周側に向かうに連れて大きくなる場合がある。その場合、グローバル反りが大きい基板210では、外周側で非線形歪みが大きくなる。
【0156】
図33のテーブル左上に示される通り、解除側の基板210におけるグローバル反りが無い場合において、初期貼り合わせ領域を形成しなくても、非線形歪みが生じ難い場合がある。ただし、厳密には、グローバル反りが無い基板210においても、空気抵抗起因の倍率歪みが基板210の面内で徐々に変化するため、非線形歪みが発生し得る。
【0157】
一方で、図33のテーブル左下に示される通り、解除側の基板210におけるグローバル反りが無い場合において、例えば基板ホルダ220による最外周吸着領域を小さくしたり突出部材250の凸量を小さくしたりすることで初期貼り合わせ領域を形成する場合には、解除側の基板210の面内中央領域および面内外周領域における非線形歪みが大きくなり、この非線形歪みによる位置ずれが生じる場合がある。
【0158】
また、図33のテーブル右上に示される通り、解除側の基板210におけるグローバル反りが有る場合において、初期貼り合わせ領域を形成しない場合には、解除側の基板210の面内外周領域における非線形歪みが大きくなり、この非線形歪みによる位置ずれが生じる場合がある。
【0159】
一方で、図33のテーブル右下に示される通り、解除側の基板210におけるグローバル反りが有る場合において、初期貼り合わせ領域を形成した場合には、解除側の基板210の面内中央領域において非線形歪みが生じるが、面内外周領域における非線形歪みが緩和し、全体として非線形歪みによる位置ずれが小さくなる場合がある。基板210の全体で見た非線形歪みにとって好適な大きさの初期貼り合わせ領域を発生させることが好ましい。
【0160】
このように、解除側の基板210にグローバル反りが無い場合に、初期貼り合わせ領域を形成するよりも形成しない方が好ましい場合があり、解除側の基板210にグローバル反りが有る場合に、初期貼り合わせ領域の大きさを拡大する方が好ましい場合がある。よって、解除側の基板210の面内中央領域における非線形歪みと、面内外周領域における非線形歪みとのバランスを考慮して、全体として非線形歪みが小さくなるように初期貼り合わせ領域の大きさを設定してもよい。例えば、各グラフにおける実線と破線との差分として示される非線形歪みの大きさの最大値、平均値、および、3σ(σは標準偏差)の少なくとも一つが予め定められた閾値以下となるように初期貼り合わせ領域の大きさを設定してもよい。
【0161】
以上の複数の実施形態において、基板貼り合わせ装置100は、以下の(1)から(6)の順に基板貼り合わせを行うシーケンスを実行してもよい。(1)解除側の基板ホルダ220、920によって、基板210の内周領域および最外周領域、または、基板210の内周領域、外周領域および最外周領域を吸着する。(2)EGA(エンハンスト・グローバル・アライメント)計測を行う。(3)基板210、230の一部を互いに接触させて、貼り合わせ領域801を形成する。(4)解除側の基板ホルダ220、920による基板210の吸着を、基板210の最外周領域のみに変更する。(5)上記の貼り合わせ領域801が拡大することによって、予め設定した初期貼り合わせ領域803が貼り合わされるまで待機する。(6)初期貼り合わせ領域803が貼り合わされたことを検出したことに応じて、解除側の基板ホルダ220、920による基板210の最外周領域の吸着も解除することにより、基板210の保持を解除する。基板ホルダ220によって基板210の最外周領域を吸着した状態で基板210、230を位置合わせする場合に、基板210に形成されているEGA計測マークの検出が困難になる場合があるが、基板貼り合わせ装置100は当該シーケンスを実行することによって、EGA計測マークを正しく検出することができる。
【0162】
以上の複数の実施形態において、基板貼り合わせ装置100は、解除側の基板210の歪みに関する情報に基づいて、基板210を凸状に変形させる凸量、基板ホルダ220によって基板210を保持すべく基板210の外周部分を吸着する吸着面積、および、基板ホルダ220による基板210の保持を解除するタイミング、の少なくとも何れかのパラメータを算出する算出装置を更に備えてもよい。各パラメータは、基板210における非線形歪みとの関係が予め求められているのが好ましい。また、この場合、当該算出装置によって算出された各パラメータが、基板貼り合わせ装置100に自動的に設定されてもよい。また、当該算出装置は、基板貼り合わせ装置100とは別個に設けられ、例えば算出装置によって算出された各パラメータをユーザが取得し、基板貼り合わせ装置100に手動で入力してもよい。なお、基板210を凸状に変形させる凸量は、例えば突出部材250の突出量であってもよく、互いに貼り合わせる基板210、230間のギャップに応じた値であってもよい。なお、基板210の外周部分を吸着する吸着面積は、例えば基板ホルダ220の複数の支持部で区分された複数の吸着領域のそれぞれに応じた基板ホルダ220の面積や、基板210の、基板230と貼り合わされる面の裏面における、基板ホルダ220によって保持されている基板210の面積であってもよい。
【0163】
以上の複数の実施形態において、複数の支持部を用いた吸着領域の区分方式に代えて、ボンディングウェーブの進行方向に沿って複数のバキューム孔を設けてもよい。この場合、バキューム孔の間隔を、吊り上げにより生じる歪み量が許容される大きさに設定してもよい。
【0164】
以上の複数の実施形態において、突出部材の駆動は空圧式としたが、これに代えて、空圧を用いないバネ式の突出部材としてもよい。この場合、バネは基板を変形させるだけの与圧を有し、バネの与圧は一対の基板を接触させるときの押し込み荷重よりも大きい。バネ式とする場合、一対の基板を接触させた後にステージによる押し込み荷重を増大させて突出部材を徐々に押し込むようにしてもよく、この場合には、両基板ホルダをバネ式の突出部材を有する構成としてもよい。これによって、貼り合わせる一対の基板の変形を互いに鏡像関係にすることができ、非線形歪みを抑えることができる。
【0165】
以上の複数の実施形態において、突出部材の突出量を一定にするか徐々に小さくするかに拘わらず、突出部材の突出量またはその最大値は、解除側の基板が突出部材によって変形された場合に、当該基板に生じる非線形歪みの量が予め定められた閾値以下となるように設定されてもよい。
【0166】
以上の複数の実施形態の各々において、結晶異方性起因の非線形歪みや空気抵抗起因の倍率歪み、及び、基板の局所的な湾曲に起因する非線形歪みへの対策を個別に説明した。これらの様々な歪みに起因して、基板を貼り合わせて形成された積層基板に生じる位置ずれを解消すべく、幾つかの対策を組み合わせてもよく、好ましくは全ての対策を講じてもよい。
【0167】
以上の複数の実施形態において、観察部は光学的に初期貼り合わせ領域が貼り合わされたことを観察する構成として説明した。これに代えて、又は、これに加えて、観察部は、例えば基板同士が最初に接触してから予め定められた時間が経過したことを検出することによって、初期貼り合わせ領域が貼り合わされたと判断してもよい。この場合、経過時間と初期貼り合わせ領域の大きさとの関係を示すデータが予め記憶されており、観察部は、このデータに基づいて、初期貼り合わせ領域が貼り合わされたと判断する。また、観察部は、貼り合わせる基板間の距離の変化を観察することによって、または、基板と基板ホルダとの間の距離の変化を観察することによって、初期貼り合わせ領域が貼り合わされたと判断してもよい。この場合、観察部は、例えば貼り合わせる基板に対して同じ側に配された光源および撮像部と、反対の側に配された背景板とを備え、光源が撮像部の撮像視野内で貼り合わせる基板を照射し、背景板に形成される基板の貼り合わせ状態の画像を、撮像部が撮像してもよい。なお、撮像部により取得する画像は、基板の形状を直接に撮像した画像に限られず、例えば、貼り合わせる基板間で生じる干渉等の光学現象で生じた干渉縞像の変化等に基づいて、基板の貼り合わせの状態を判断してもよい。
【0168】
また、観察部は、貼り合わせる基板の少なくとも一方における電気的特性の変化を観察することによって、初期貼り合わせ領域が貼り合わされたと判断してもよい。この場合、観察部は例えば静電容量検出部を備え、静電容量検出部は、測定対象となる一対の基板間の静電容量と標準インダクタとを含んで形成されたLC共振回路に周期的に変化する電気信号を印加する。このとき、静電容量検出部は、静電チャックの機能を有する基板ホルダに印加されるDC電圧にAC電圧を重畳し、一対の基板における静電容量の変化に応じて変化する電気信号のAC成分を検出する。ボンディングウェーブが進行するに従って、貼り合わせる基板間の間隔が狭くなり、間隔が狭くなるほど一対の基板間の静電容量が大きくなる。そこで、観察部は、貼り合わせる各基板に電気端子を接触させ、基板の貼り合わせ状態の変化に応じた静電容量の変化を検出することで、基板の貼り合わせ状態を判断してもよい。解除側の基板ホルダにおいては、例えば突出部材250を電気端子として用いてもよい。制御部は、静電容量の値が一定になり、一定の負荷値が閾値時間を維持したことを検出して、貼り合わせが完了したと判断してもよい。
【0169】
上記実施例では、基板210を基板ホルダ220,920に全面的に保持された状態で上ステージ322に搬入され、基板ホルダ220、920の一部の保持を解除することによりボンディングウェーブを発生させて、初期貼り合わせ領域803を形成した例を示したが、これに代えて、以下の実施例を用いてもよい。基板210の外周部のみを基板ホルダ220、920に保持した状態で上ステージ322に搬入し、基板210の一部を基板230に接触させて接触領域を形成した後、基板210の外周部を基板ホルダ220、920に保持した状態で、活性化された表面相互の分子間力等により基板210、230間のボンディングウェーブを自律的に生じさせることにより、初期貼り合わせ領域803を形成する。この場合も、ボンディングウェーブが停止するまでの間に判断部により初期貼り合わせ領域803の形成が判断されたとき又はその後に、基板ホルダ220、920による基板210の外周部の保持を解除する。または、基板210のボンディングウェーブが停止したときに形成される初期貼り合わせ領域803の大きさが予め設定した大きさになるように、基板ホルダ220、920による基板210の保持面積の大きさを設定してもよい。
【0170】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加え得ることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態もまた、本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
【0171】
請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0172】
100 基板貼り合わせ装置、110 筐体、120、130 基板カセット、140 搬送部、150 制御部、208、209 シリコン単結晶基板、210、230、610、630 基板、212、232 スクライブライン、214 ノッチ、215 隆起部、216、236 回路領域、218、238 アライメントマーク、220、240、920 基板ホルダ、221、241、921 保持面、223 凹部、224、244、924 支持ピン、225、226、227、247、922、925、926、927、928 支持部、229、929 本体部、250 突出部材、251 当接部、255 板バネ、290 積層基板、300 貼り合わせ部、310 枠体、312 底板、316 天板、322 上ステージ、324、334 顕微鏡、326、336 活性化装置、331 X方向駆動部、332 下ステージ、333 Y方向駆動部、338 昇降駆動部、341、342、343、344 検出器、345 観察部、351 光源、352 受光部、361、362、363、364 観察窓、400 ホルダストッカ、500 プリアライナ、601、602、603、604、901、902、903、904、905 観察孔、621 内周通気路、622、933 最外周通気路、625 中心通気路、640 通気路、721、723、724、725、727、751 制御バルブ、731 正圧源、733、734、735、737、761 負圧源、741、743、744、745、747、771 開放端、801 貼り合わせ領域、803 初期貼り合わせ領域、931 内周通気路、932 外周通気路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図21
図22
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図29
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図32
図33